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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】回転電機および突極形回転子
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/24 20060101AFI20241120BHJP
   H02K 9/06 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
H02K3/24 P
H02K9/06 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021082687
(22)【出願日】2021-05-14
(65)【公開番号】P2022175909
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】住吉 一倖
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-069681(JP,A)
【文献】特開2008-283737(JP,A)
【文献】特開2020-156264(JP,A)
【文献】特開2017-216837(JP,A)
【文献】特開2003-309947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/24
H02K 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子と、
前記固定子の内側に位置した突極形回転子と、
を備え、
前記突極形回転子は、
中心軸回りの第1回転方向に回転するシャフトと、
前記中心軸の周方向に互いに間隔を空けて設けられ前記中心軸の軸方向に延びた複数の鉄心突極部を有し、前記シャフトに固定された回転子鉄心と、
前記鉄心突極部に巻回された回転子巻線と、
前記中心軸の周方向に隣り合う二つの前記鉄心突極部の間に位置した二つの前記回転子巻線の間に介在した状態で前記回転子鉄心に固定され、前記軸方向に互いに間隔を空けて並び、前記二つの前記回転子巻線を前記二つの鉄心突極部に押し付けた複数のコイルブラケットと、
前記コイルブラケットとは別の部材に含まれ、前記コイルブラケットに固定され、前記中心軸の径方向に沿った視線で、前記二つの回転子巻線の間に位置するとともに、前記軸方向で隣り合う二つの前記コイルブラケットの間に位置し、前記シャフトと一体に回転し、前記第1回転方向に回転することにより、前記二つの回転子巻線間における前記二つの前記コイルブラケット間の空間に当該空間の前記径方向の外側の空気を導入する導入部と、
前記回転子鉄心と前記軸方向に並んで前記シャフトに設けられ、前記第1回転方向に回転することにより前記回転子鉄心に向けて気体を送るファンと、
を備えた、回転電機。
【請求項2】
前記コイルブラケットの前記径方向の外側に位置した頭部を有し、前記コイルブラケットを前記回転子鉄心に固定した雄ネジ部材と、
前記頭部と前記コイルブラケットとの間に介在した座金と、
を備え、
前記導入部と前記座金とは、一つの前記部材に含まれた、請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
中心軸回りの第1回転方向に回転するシャフトと、
前記中心軸の周方向に互いに間隔を空けて設けられ前記中心軸の軸方向に延びた複数の鉄心突極部を有し、前記シャフトに固定された回転子鉄心と、
前記鉄心突極部に巻回された回転子巻線と、
前記中心軸の周方向に隣り合う二つの前記鉄心突極部の間に位置した二つの前記回転子巻線の間に介在した状態で前記回転子鉄心に固定され、前記軸方向に互いに間隔を空けて並び、前記二つの前記回転子巻線を前記二つの鉄心突極部に押し付けた複数のコイルブラケットと、
前記コイルブラケットとは別の部材に含まれ、前記コイルブラケットに固定され、前記中心軸の径方向に沿った視線で、前記二つの回転子巻線の間に位置するとともに、前記軸方向で隣り合う二つの前記コイルブラケットの間に位置し、前記シャフトと一体に回転し、前記第1回転方向に回転することにより、前記二つの回転子巻線間における前記二つの前記コイルブラケット間の空間に当該空間の前記径方向の外側の空気を導入する導入部と、
前記回転子鉄心と前記軸方向に並んで前記シャフトに設けられ、前記第1回転方向に回転することにより前記回転子鉄心に向けて気体を送るファンと、
を備えた、突極形回転子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機および突極形回転子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シャフトと、複数の鉄心突極部を有しシャフトに固定された回転子鉄心と、鉄心突極部に巻回された回転子巻線と、回転子巻線を二つの鉄心突極部に押し付けた複数のコイルブラケットと、を備える、回転電機の突極形回転子が知られている。この種の突極形回転子として、突極形回転子の軸方向に回転子鉄心と並んでシャフトに設けられたファンによって、回転子鉄心に向けて気体を送り、回転子巻線を冷却する構成のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-309947号公報
【文献】特開2019-170062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の回転電機では、複数のコイルブラケットが中心軸の軸方向に並べられているため、ファンによって送られた気体は、複数のコイルブラケットの列のうち端に位置するコイルブラケットに当たって、径方向外側に流れてしまう。このため、回転子巻線の冷却が妨げられる問題がある。
【0005】
そこで、本発明の課題の一つは、回転子巻線が冷却されやすい新規な構成の回転電機および突極形回転子を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の回転電機は、固定子と、前記固定子の内側に位置した突極形回転子と、を備え、前記突極形回転子は、中心軸回りの第1回転方向に回転するシャフトと、前記中心軸の周方向に互いに間隔を空けて設けられ前記中心軸の軸方向に延びた複数の鉄心突極部を有し、前記シャフトに固定された回転子鉄心と、前記鉄心突極部に巻回された回転子巻線と、前記中心軸の周方向に隣り合う二つの前記鉄心突極部の間に位置した二つの前記回転子巻線の間に介在した状態で前記回転子鉄心に固定され、前記軸方向に互いに間隔を空けて並び、前記二つの前記回転子巻線を前記二つの鉄心突極部に押し付けた複数のコイルブラケットと、前記コイルブラケットとは別の部材に含まれ、前記コイルブラケットに固定され、前記中心軸の径方向に沿った視線で、前記二つの回転子巻線の間に位置するとともに、前記軸方向で隣り合う二つの前記コイルブラケットの間に位置し、前記シャフトと一体に回転し、前記第1回転方向に回転することにより、前記二つの回転子巻線間における前記二つの前記コイルブラケット間の空間に当該空間の前記径方向の外側の空気を導入する導入部と、前記回転子鉄心と前記軸方向に並んで前記シャフトに設けられ、前記第1回転方向に回転することにより前記回転子鉄心に向けて気体を送るファンと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態の回転電機によれば、回転子巻線が冷却されやすい新規な構成の回転電機および突極形回転子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態の回転電機の構成の例示的な断面図である。
図2図2は、実施形態の突極形回転子の例示的な図であって、径方向に沿った視線での図である。
図3図3は、図2のIII-III断面図である。
図4図4は、図3の一部の拡大図である。
図5図5は、実施形態の突極形回転子におけるコイルブラケットを含む部分の例示的な図であって、径方向に沿った視線での図である。
図6図6は、実施形態の突極形回転子におけるコイルブラケットを含む部分の例示的な図であって、軸方向に沿った視線での図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、実施形態について詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0010】
以下の複数の実施形態には、同様の構成要素が含まれている。それら同様の構成要素には共通の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合がある。また、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0011】
<実施形態>
図1は、実施形態の回転電機1の構成の例示的な断面図である。図1に示されるように、回転電機1は、筐体10と、突極形回転子20と、固定子30と、を有する。突極形回転子20が、筐体10および固定子30に対して中心軸Ax1回りに回転する。以後、特に言及しない限り、軸方向、径方向、および周方向は、中心軸Ax1の軸方向、径方向、および周方向、すなわち突極形回転子20の軸方向、径方向、および周方向である。
【0012】
筐体10は、箱型に形成されている。筐体10は、突極形回転子20の一部と固定子30と、を収容している。筐体10は、フレームとも称される。
【0013】
固定子30は、固定子鉄心31と、固定子巻線32と、を有する。固定子鉄心31は、中心軸Ax1回りの円筒状に形成されている。固定子鉄心31は、筐体10に固定されている。
【0014】
固定子巻線32は、固定子鉄心31の内周部に設けられたスロット(不図示)内に入れられて固定子鉄心31に固定されている。固定子巻線32は、軸方向に延びる。
【0015】
突極形回転子20は、シャフト21と、回転子鉄心22と、回転子巻線24と、巻線支持部25(図2)と、ファン26と、を有する。
【0016】
シャフト21は、中心軸Ax1回りに回転可能に、二つの軸受23を介して筐体10に支持されている。二つの軸受23は、軸方向に間隔を空けて設けられている。軸受23は、例えば、すべり軸受やころがり軸受等である。ここで、中心軸Ax1は、例えばシャフト21の中心軸(中心線)である。
【0017】
シャフト21の軸方向の両端部は、筐体10から筐体10の外部に突出している。シャフト21の軸方向の一方の端部には、結合部21aが設けられている。結合部21aは、結合対象(不図示)と結合される。
【0018】
回転子鉄心22は、シャフト21のうち二つの軸受23の間の部分に固定されている。詳細には、回転子鉄心22は、固定子30の固定子鉄心31の内側に位置している。すなわち、突極形回転子20は、固定子30の内側に位置している。回転子鉄心22は、シャフト21と一体に回転する。回転子鉄心22は、例えば軸方向に電磁鋼板を積層した積層構造となっている。なお、回転子鉄心22は、一つの塊状の部材によって構成されていてもよい。回転子鉄心22に回転子巻線24が固定されている。回転子鉄心22および回転子巻線24の詳細は、後述する。
【0019】
図1および図2に示されるように、ファン26と、回転子鉄心22と軸方向に並んでシャフト21に固定されている。一例として、本実施形態では、二つのファン26が設けられている。二つのファン26の間に回転子鉄心22および回転子巻線24が位置している。すなわち、二つのファン26は、回転子鉄心22および回転子巻線24の軸方向の両側に位置している。ファン26は、シャフト21に固定されてシャフト21と一体に回転する。
【0020】
図2は、実施形態の突極形回転子20の例示的な図であって、径方向に沿った視線での図である。図2に示されるように、ファン26は、例えば軸流ファンであり、ファンディスク26aと、複数のファンブレード26bと、を有する。ファンディスク26aは、シャフト21に固定されている。複数のファンブレード26bは、ファンディスク26aから径方向外側に突出している。複数のファンブレード26bは、互いに周方向に間隔を空けて設けられている。ファン26は、第1回転方向R1に回転することにより、回転子鉄心22とは反対側すなわち軸受23側から気体(冷却媒体)を吸い込んで、軸方向に沿って当該気体を回転子鉄心22側に送る。すなわち、ファン26は、第1回転方向R1(図2)に回転することにより回転子鉄心22に向けて気体を送る。
【0021】
図3は、図2のIII-III断面図である。図3に示されるように、回転子鉄心22は、複数の鉄心突極部22aを有する。複数の鉄心突極部22aは、周方向に互いに間隔を空けて設けられ軸方向に延びている。鉄心突極部22aは、それぞれ、略直方体形状である。なお、図3では、四つの鉄心突極部22aが設けられた例が示されているが、鉄心突極部22aの数は四つに限定されない。
【0022】
各鉄心突極部22aに回転子巻線24が巻回されている。各鉄心突極部22aの周方向の一対の側面22cのそれぞれに回転子巻線24が重なる。回転子巻線24は、単一の導体によって構成されていてもよいし、複数の導体が並列に束ねられた構成であってもよい。
【0023】
図4は、図3の一部の拡大図である。図2図4に示されるように、巻線支持部25は、ポールヘッド41、押さえ板42、コイルブラケット43、ボルト44、座金45、および導入部46を有する。
【0024】
ポールヘッド41は、各鉄心突極部22aに設けられている。ポールヘッド41は、鉄心突極部22aの径方向外側の端面に重ねられた状態で、ボルト等の結合具(不図示)によって鉄心突極部22aに固定されている。ポールヘッド41は、鉄心突極部22aの周方向の両側に位置する回転子巻線24の径方向外側に位置する覆部41aを有する。覆部41aは、回転子巻線24を覆っている。ポールヘッド41は、回転子巻線24に作用する径方向外側への遠心力による回転子巻線24の径方向外側への移動を制限する。
【0025】
押さえ板42は、各回転子巻線24の周方向の側面に重ねられている。押さえ板42は、絶縁材料によって構成されている。
【0026】
複数のコイルブラケット43は、周方向に隣り合う二つの鉄心突極部22aの間に位置した二つの回転子巻線24の間に介在した状態で、回転子鉄心22にボルト44によって固定されている。複数のコイルブラケット43は、軸方向に互いに間隔を空けて並び、二つの回転子巻線24を二つの鉄心突極部22aに押し付けている。具体的には、コイルブラケット43は、押さえ板42を介して回転子巻線24を鉄心突極部22aに押し付けている。詳細には、コイルブラケット43は、ボルト44により、シャフト21に向けて締め付けられている。この結果、コイルブラケット43が押さえ板42を介して回転子巻線24をシャフト21側に締め付けており、この締め付け力の回転子巻線24の側部に垂直な方向の成分が、回転子巻線24を鉄心突極部22aに押し付けている。
【0027】
図5は、実施形態の突極形回転子20におけるコイルブラケット43を含む部分の例示的な図であって、径方向に沿った視線での図である。図6は、実施形態の突極形回転子20におけるコイルブラケット43を含む部分の例示的な図であって、軸方向に沿った視線での図である。
【0028】
図5および図6に示されるように、コイルブラケット43は、径方向外側の端面43aと、周方向の一対の側面43bと、を有する。コイルブラケット43は、全体として略二等辺三角形の断面形状を有する。側面43bは、押さえ板42に接触する。コイルブラケット43には、それぞれにボルト44が入れられた二つの孔が設けられている。
【0029】
図4に示されるように、ボルト44は、頭部44aと、軸部44bと、を有する。頭部44aは、端面43aに座金45を介して重ねられている。軸部44bは、頭部44aから径方向内側に延びている。軸部44bには、回転子鉄心22に設けられた雌ネジと結合した雄ネジが形成されている。
【0030】
図5に示されるように、座金45は、二つのボルト44に対して一つ設けられている。座金45には、導入部46が接続部47を介して接続されている。座金45、導入部46、および接続部47は、一つの部材48を構成している。すなわち、座金45、導入部46、および接続部47は、一体に形成されている。部材48は、板金の折り曲げによって形成されている。
【0031】
図2に示されるように、導入部46は、中心軸Ax1の径方向に沿った視線で、二つの回転子巻線24の間に位置するとともに、軸方向で隣り合う二つのコイルブラケット43の間に位置する。換言すると、導入部46は、二つの回転子巻線24の間に位置するとともに、中心軸Ax1の径方向から見た場合に、軸方向で隣り合う二つのコイルブラケット43の間に位置する。導入部46は、二つの回転子巻線24のうち第1回転方向R1側の回転子巻線に寄せられている。導入部46は、二つの回転子巻線24のうち第1回転方向R1側(図2の左側)の回転子巻線24に寄せられている。導入部46は、平板状に形成されている。導入部46は、軸方向からの視線で、第1回転方向R1に向かうにつれて、二つの回転子巻線24の中間および中心軸Ax1を通る線L1から離間するように形成されている。また、導入部46の径方向外側の端(先端)は、ポールヘッド41の径方向外側の端の回転軌跡L2上に位置する。導入部46は、第1回転方向R1に回転することにより二つの回転子巻線24間の外側の空気を二つの回転子巻線24間に導入する。このときの空気の流れが図4中に矢印Eで示されている。なお、導入部46は、上記に限られない。例えば、導入部46は、二つの回転子巻線24の中間位置に設けられていてもよいし、二つの回転子巻線24のうち第1回転方向R1とは反対側の回転子巻線24に寄せられていてもよい。また、導入部46は、軸方向からの視線で、線L1と平行であってもよい。また、二つの回転子巻線24の対向する二つの導入部46を設けてもよい。導入部46は、フィンとも称される。
【0032】
以上の構成の突極形回転子20が第1回転方向R1に回転すると、ファン26が、回転子鉄心22の軸方向の反対側の気体を、回転子鉄心22側に軸方向に沿って送る。これにより、複数のコイルブラケット43の列の外側の回転子巻線24が冷却される。また、導入部46が、二つの回転子巻線24間の外側の空気を二つの回転子巻線24間に導入する。二つの回転子巻線24間に導入された空気は、二つの回転子巻線24に沿って流れ、第1回転方向R1の反対方向側の回転子巻線24側から二つの回転子巻線24の外側に流出する。これにより、隣り合う二つのコイルブラケット43間の回転子巻線24が冷却される。なお、回転子巻線24を冷却した気体は、熱交換器(不図示)によって冷却され、再び、ファン26に戻る。
【0033】
次に、回転子巻線24の冷却のシミュレーションについて説明する。このシミュレーションの条件は以下の通りである。突極形回転子20の外径は1240[mm]とし、突極形回転子20は第1回転方向R1に毎分1800回転するものとし、回転子巻線24の径方向の長さを212[mm]とし、回転子巻線24のうち隣り合う二つのコイルブラケット43に挟まれた部分の表面積G1を144247[mm]とした。また、回転電機1の三相短絡試験の結果に合わせて、回転子巻線24を流れる電流を512[A]とし、このときの回転子巻線24のうち隣り合う二つのコイルブラケット43に挟まれた部分の温度および抵抗値は、導入部46が設けられていないときは、それぞれ85[℃]および1.908×10-3[Ω]とした。筐体10内の気体(冷媒)のうち熱交換機出口部分の温度は43℃とした。
【0034】
回転子巻線24のうち隣り合う二つのコイルブラケット43に挟まれた部分で、抵抗損によって発生する熱量G2は、次式の通りである。
G2=(512[A])×1.908×10-3[Ω]=500[W]
このうち半分程度は、周囲の構造物への熱伝導によって放熱されるとし、回転子巻線24のうち隣り合う二つのコイルブラケット43の表面から筐体10内の気体(冷媒)への放熱量G3は、250[W]とする。
【0035】
以下では簡略化のため、回転子巻線24のうち隣り合う二つのコイルブラケット43に挟まれた部分は、中心軸Ax1に垂直な方向の気体(冷媒)の流れにより冷却されると仮定し、放射による冷却は無視する。
【0036】
上記の諸条件(回転子巻線24の径方向の長さ=212[mm]、回転子巻線24のうち隣り合う二つのコイルブラケット43に挟まれた部分の温度=85[℃]、表面積G1=144247[mm]、放熱量G3=250[W]、筐体10内の気体(冷媒)の温度=43[℃])を適用した場合の、隣り合う二つのコイルブラケット43間の風速G4は、導入部46が設けられていないときは、次式の通り推定される。
G4=(250[W]÷((85[℃]-43[℃])×144247[mm]×10-6×3.86))×212[mm]×10-3=24.2[m/s]
【0037】
これに対して、導入部46が設けられた場合は、以下の通りである。なお、このとき、突極形回転子20の外径は1240[mm]であるから、その周速は1240[mm]×10-3÷2×1800÷60×2π=117[m/s]である。この周速の8割程度の風速が出ていると見込んで、回転子外周の風速を93.6[m/s]と仮定する。
【0038】
図4中の寸法D1が30[mm]であり、寸法D2が80[mm]であるとする。この場合、図4の寸法D1の範囲を通過した気体(冷媒)が導入部46によって二つの鉄心突極部22a間に導入され、導入部46と回転子巻線24の間は、80[mm]程度の距離があるので、その比率から回転子巻線24のうち隣り合う二つのコイルブラケット43に挟まれた部分の表面の風速G5は、次式の通り推定される。
G5=93.6[m/s]×30[mm]÷80[mm]=35.1[m/s]
【0039】
このとき、回転子巻線24のうち隣り合う二つのコイルブラケット43に挟まれた部分の表面の熱伝達率は、3.86×√(35.1[m/s]÷(212[mm]×10-3))=49.7[W/m/K]、であるから、回転子巻線24のうち隣り合う二つのコイルブラケット43に挟まれた部分の温度G6は、次式の通り推定される。
G6=250[W]÷(144247[mm]×10-6×49.7[W/m/K])+43[℃]=77.9[℃]
【0040】
したがって、導入部46を設けることにより、回転子巻線24のうち隣り合う二つのコイルブラケット43に挟まれた部分の温度は、約7[℃]低減されると見込まれる。
【0041】
以上のように、本実施形態では、回転電機1は、固定子30と、固定子30の内側に位置した突極形回転子20と、を備える。突極形回転子20は、シャフト21と、回転子鉄心22と、回転子巻線24と、複数のコイルブラケット43と、導入部46と、ファン26と、を備える。シャフト21は、中心軸Ax1回りの第1回転方向R1に回転する。回転子鉄心22は、中心軸Ax1の周方向に互いに間隔を空けて設けられ中心軸Ax1の軸方向に延びた複数の鉄心突極部22aを有し、シャフト21に固定されている。回転子巻線24は、鉄心突極部22aに巻回されている。複数のコイルブラケット43は、中心軸Ax1の周方向に隣り合う二つの鉄心突極部22aの間に位置した二つの回転子巻線24の間に介在した状態で回転子鉄心22に固定され、軸方向に互いに間隔を空けて並んでいる。複数のコイルブラケット43は、二つの回転子巻線24を二つの鉄心突極部22aに押し付けている。導入部46は、中心軸Ax1の径方向に沿った視線で、軸方向で隣り合う二つのコイルブラケット43の間に位置する。導入部46は、シャフト21と一体に回転し、第1回転方向R1に回転することにより二つの回転子巻線24間の外側の空気を二つの回転子巻線24間に導入する。ファン26は、回転子鉄心22と軸方向に並んでシャフト21に設けられている。ファン26は、第1回転方向R1に回転することにより回転子鉄心22に向けて気体を送る。
【0042】
このような構成によれば、導入部46が、二つの回転子巻線24間の外側の空気を二つの回転子巻線24間に導入するので、隣り合うコイルブラケット43間の回転子巻線24を冷却することができる。よって、導入部46が設けられていない構成に比べて、回転子巻線24が冷却されやすい。
【0043】
また、本実施形態では、回転電機1は、ボルト44(雄ネジ部材)と、座金45と、を備える。ボルト44は、コイルブラケット43の径方向の外側に位置した頭部44aを有し、コイルブラケット43を回転子鉄心22に固定している。座金45は、頭部44aとコイルブラケット43との間に介在している。導入部46と座金45とは、一つの部材48に含まれている。
【0044】
このような構成によれば、導入部46と座金45とが一つの部材48に含まれているので、それらが別個に設けられた構成に比べて、回転電機1の部品点数を削減することができる。
【0045】
なお、上記実施形態では、導入部46が座金45に一体に形成されたが、これに限定されない。例えば、導入部46は、座金45とは別の部材に設けられていてもよい。例えば、軸方向で隣り合う二つのコイルブラケット43に亘る部材を設け、当該部材を二つのコイルブラケット43にボルト44によって固定し、当該部材に導入部46を設けてもよい。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1…回転電機、20…突極形回転子、21…シャフト、22…回転子鉄心、22a…鉄心突極部、24…回転子巻線、26…ファン、30…固定子、43…コイルブラケット、44…ボルト(雄ネジ部材)、44a…頭部、45…座金、46…導入部、48…部材、Ax1…中心軸、R1…第1回転方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6