(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20241120BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241120BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
B41J2/175 501
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/165 211
B41J2/165 207
(21)【出願番号】P 2021099643
(22)【出願日】2021-06-15
【審査請求日】2024-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】澤田 哲平
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-180099(JP,A)
【文献】特開2019-136901(JP,A)
【文献】特開2020-131609(JP,A)
【文献】特開2020-131497(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0222829(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/175
B41J 2/01
B41J 2/165
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体にインクを吐出する複数のノズルと、複数の前記ノズルが形成されたノズル面と、を有するインクヘッドと、
インクを貯留するインクカートリッジに着脱可能に接続される上流側端部と、前記インクヘッドに接続された下流側端部と、前記上流側端部と前記下流側端部との間に位置する中途部と、を有するインク経路と、
前記中途部に配置され、前記インクカートリッジから前記インクヘッドに向けてインクを送液可能な送液ポンプと、
開口が形成されたケース本体と、前記ケース本体の前記開口を覆うように前記ケース本体に取り付けられ、前記ケース本体と共にインクが一時的に貯留される貯留室を区画し、前記貯留室の内側および外側に撓み変形可能な感圧膜と、を有し、前記送液ポンプと前記インクヘッドとの間に位置するように前記中途部に配置されたダンパーと、
前記感圧膜が前記貯留室の内側に撓むときに前記貯留室に近づく方向に移動し、かつ、前記感圧膜が前記貯留室の外側に撓むときに前記貯留室から離れる方向に移動するレバーと、所定の光を発する発光部と、前記発光部から発せられた光を受光する受光部と、前記発光部と前記受光部との間に設けられた検出領域と、を備え、かつ、前記レバーが前記検出領域を遮ったとき、前記貯留室内の圧力が第1圧力以下であることを検出する検出装置と、
前記インクヘッドに着脱可能に形成され、前記インクヘッドに取り付けられたときに前記ノズル面を覆いかつ前記ノズル面との間に密閉空間を形成するキャップと、
前記密閉空間内の流体を吸引する吸引ポンプと、
前記インクヘッドおよび前記送液ポンプおよび前記吸引ポンプを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
所定の圧力で前記貯留室にインクを送液する第1インク送液部と、
前記第1インク送液部によって前記貯留室にインクが送液された後に、前記吸引ポンプを駆動して前記密閉空間内の流体を吸引する吸引動作を実行する第1吸引制御部と、
前記検出装置によって前記貯留室内の圧力が前記第1圧力以下であることが検出されるまでに前記吸引ポンプによって吸引された第1インク量を推定する推定部と、
前記推定部によって推定された前記第1インク量に基づいて、前記感圧膜の状態を判断する判断部と、を備えている、インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記上流側端部に前記インクカートリッジが取り付けられているとき、前記インクカートリッジは、前記ダンパーより上方に位置し、
前記送液ポンプは、前記中途部を開放および閉鎖可能に構成され、
前記第1インク送液部は、前記送液ポンプを制御して前記中途部を開放させた状態で、前記所定の圧力として前記インクカートリッジと前記ダンパーとの間の水頭圧で前記貯留室にインクを送液する、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記第1インク量が予め設定された所定のインク量よりも少ない場合、前記判断部は、前記感圧膜が収縮していると判断する、請求項1または2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記第1吸引制御部は、前記判断部によって前記感圧膜が収縮していると判断されたとき、前記吸引動作をさらに実行して、前記貯留室内の圧力を前記第1圧力より小さい第2圧力にする、請求項3に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記制御装置は、前記判断部によって前記感圧膜が収縮していると判断されたとき、前記感圧膜に不具合が発生していることを通知する通知部を備えている、請求項3または4に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記検出装置によって前記貯留室内の圧力が前記第1圧力以下であることが検出されるまで、前記ノズルからインクを吐出させるフラッシング動作を実行する第1フラッシング制御部と、
前記送液ポンプを制御して、第2インク量だけインクを前記貯留室に送液する第2インク送液部と、
前記第2インク送液部によって前記貯留室に前記第2インク量のインクが送液された後に、前記吸引動作を実行する第2吸引制御部と、
前記推定部によって推定された前記第1インク量と前記第2インク送液部によって送液された前記第2インク量とに基づいて、前記吸引ポンプの吸引能力を補正する第1補正部と、を備えている、請求項1から5のいずれか一項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記制御装置は、
前記第2インク送液部によって前記貯留室に前記第2インク量のインクが送液された後に、前記検出装置によって前記貯留室内の圧力が前記第1圧力以下であることが検出されるまで、前記フラッシング動作を実行する第2フラッシング制御部と、
前記第2フラッシング制御部による前記フラッシング動作によって吐出された第3インク量と前記第2インク送液部によって送液された前記第2インク量とに基づいて、前記送液ポンプの送液能力を補正する第2補正部と、を備えている、請求項6に記載のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、インクを貯留するインクタンクと、インクを吐出する記録ヘッドと、インクヘッドに向けてインクを供給するインクポンプと、インクポンプから供給されたインクを一時的に貯留するインク室を有するサブタンクと、を備えた液体吐出装置が開示されている。サブタンクは、密閉容器であるタンクの内部をインク室と気体室とに分割する可撓膜を有する。可撓膜は、インク室にインクが供給されると気体室側に撓み、インク室内のインクが減少するとインク室側に撓むように構成されている。可撓膜は、インクとの接触により劣化状態が進む。より詳細には、可撓膜が収縮してしまい伸長しがたくなるという問題がある。
【0003】
また、例えば、特許文献2には、インクを一時的に貯留する貯留室を区画する感圧膜の撓み変形に基づいて貯留室内の圧力を検出し、インク供給装置から貯留室にインクを供給するインクジェットプリンタが開示されている。より詳細には、感圧膜の撓み変形に連動するレバーが検出領域を遮ることにより、インクの供給が開始され、レバーが検出領域から外れるとインクの供給が停止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-28963号公報
【文献】特開2021-59087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献2に記載のインクジェットプリンタにおいて、感圧膜が正常の場合には、貯留室に所定量のインクが供給されると感圧膜が貯留室の外側に撓み、レバーが検出領域から外れるためインクの供給が停止する。即ち、貯留室内に適切な量のインクが貯留され、貯留室内の圧力が適切に保たれる。一方、感圧膜が収縮してしまうと、貯留室に所定量のインクが供給されても、感圧膜が貯留室の外側に十分に撓まず、レバーが検出領域から外れない。このため、貯留室へのインクの供給が継続される。貯留室に過度のインクが供給されてしまうと貯留室内の圧力が適正値を超えて上昇してしまう。この結果、インクヘッドのノズルからインクが漏れて記録媒体を汚してしまう虞がある。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、感圧膜の状態を判断することによってインクヘッドのノズルからインクが漏れ出すことを抑制することができるインクジェットプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るインクジェットプリンタは、記録媒体にインクを吐出する複数のノズルと、複数の前記ノズルが形成されたノズル面と、を有するインクヘッドと、インクを貯留するインクカートリッジに着脱可能に接続される上流側端部と、前記インクヘッドに接続された下流側端部と、前記上流側端部と前記下流側端部との間に位置する中途部と、を有するインク経路と、前記中途部に配置され、前記インクカートリッジから前記インクヘッドに向けてインクを送液可能な送液ポンプと、開口が形成されたケース本体と、前記ケース本体の前記開口を覆うように前記ケース本体に取り付けられ、前記ケース本体と共にインクが一時的に貯留される貯留室を区画し、前記貯留室の内側および外側に撓み変形可能な感圧膜と、を有し、前記送液ポンプと前記インクヘッドとの間に位置するように前記中途部に配置されたダンパーと、前記感圧膜が前記貯留室の内側に撓むときに前記貯留室に近づく方向に移動し、かつ、前記感圧膜が前記貯留室の外側に撓むときに前記貯留室から離れる方向に移動するレバーと、所定の光を発する発光部と、前記発光部から発せられた光を受光する受光部と、前記発光部と前記受光部との間に設けられた検出領域と、を備え、かつ、前記レバーが前記検出領域を遮ったとき、前記貯留室内の圧力が第1圧力以下であることを検出する検出装置と、前記インクヘッドに着脱可能に形成され、前記インクヘッドに取り付けられたときに前記ノズル面を覆いかつ前記ノズル面との間に密閉空間を形成するキャップと、前記密閉空間内の流体を吸引する吸引ポンプと、前記インクヘッドおよび前記送液ポンプおよび前記吸引ポンプを制御する制御装置と、を備えている。前記制御装置は、所定の圧力で前記貯留室にインクを送液する第1インク送液部と、前記第1インク送液部によって前記貯留室にインクが送液された後に、前記吸引ポンプを駆動して前記密閉空間内の流体を吸引する吸引動作を実行する第1吸引制御部と、前記検出装置によって前記貯留室内の圧力が前記第1圧力以下であることが検出されるまでに前記吸引ポンプによって吸引された第1インク量を推定する推定部と、前記推定部によって推定された前記第1インク量に基づいて、前記感圧膜の状態を判断する判断部と、を備えている。
【0008】
本発明のインクジェットプリンタによると、第1インク送液部は、所定の圧力で貯留室にインクを送液する。ここで、感圧膜が正常の場合には、貯留室に所定の圧力でインクを送液すると感圧膜が外側に大きく撓む。このため、貯留室にインクが送液されてレバーが検出領域から外れたときには、貯留室内には比較的多量のインクが貯留される。一方、感圧膜が収縮している場合には、貯留室に所定の圧力でインクを送液しても感圧膜が外側にあまり撓まない。このため、貯留室にインクが送液されてレバーが検出領域から外れたときには、貯留室内には比較的少量のインクが貯留される。そして、第1吸引制御部によって吸引動作が実行されて貯留室内のインクがノズルから排出される。推定部は、例えば、吸引動作が実行されてから検出装置によって貯留室内の圧力が第1圧力以下であることが検出されるまでの時間等に基づいて、吸引ポンプによって吸引された第1インク量を推定する。上述のように、感圧膜の状態によって貯留室内に貯留されるインク量が異なるため、判断部は推定部によって推定された第1インク量によって、感圧膜の状態を判断することができる。判断部によって感圧膜が正常でないと判断された場合には、貯留室に過度なインクが供給される虞があるため、感圧膜の交換等を事前に実施することによってインクヘッドのノズルからインクが漏れ出すことを抑制することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、感圧膜の状態を判断することによってインクヘッドのノズルからインクが漏れ出すことを抑制することができるインクジェットプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】一実施形態に係るプリンタの主要部の正面図である。
【
図3】一実施形態に係るインク供給システムの一部を示す模式図である。
【
図4】一実施形態に係るキャリッジの底面図である。
【
図5】一実施形態に係る送液ポンプの構成を示す縦断面図である。
【
図6】一実施形態に係るダンパーおよび検出装置の平面断面図であり、貯留室内の圧力が第1圧力以下である状態を示す図である。
【
図7】一実施形態に係るダンパーおよび検出装置の平面断面図であり、貯留室内の圧力が第1圧力より大きい状態を示す図である。
【
図8】一実施形態に係るキャッピング装置の周辺の構成を示す図であり、インクヘッドからキャップが取り外された状態を示す正面図である。
【
図9】一実施形態に係るキャッピング装置の周辺の構成を示す図であり、インクヘッドにキャップが取り付けられた状態を示す正面図である。
【
図10】一実施形態に係るプリンタの制御系のブロック図である。
【
図11】一実施形態に係る感圧膜の状態を判断する手順を示すフローチャートである。
【
図12】一実施形態に係る吸引ポンプの吸引能力を補正する手順を示すフローチャートである。
【
図13】一実施形態に係る送液ポンプの送液能力を補正する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係るインクジェットプリンタ10(以下、プリンタ10とする。)について説明する。ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0012】
以下の説明では、左、右、上、下とは、プリンタ10の正面にいるユーザから見た左、右、上、下をそれぞれ意味することとする。また、プリンタ10から上記ユーザに近づく方を前方、遠ざかる方を後方とする。図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表す。図面中の符号Yは主走査方向を表す。本実施形態では、主走査方向Yは、左右方向である。図面中の符号Xは副走査方向を表す。副走査方向Xは主走査方向Yと交差する方向(例えば、平面視で垂直に交差する方向)である。本実施形態では、副走査方向Xは前後方向である。ただし、上記方向は便宜的に定めたものに過ぎず、限定的に解釈すべきものではない。
【0013】
図1に示すように、プリンタ10は、記録媒体12に印刷を行う。記録媒体12は、例えば、長尺に形成され、ロール状に巻かれて用いられる。なお、記録媒体12は、ロール状に巻かれたものが所定の長さに切断されたシート状のものであってもよい。記録媒体12は、例えば、記録紙である。ただし、記録媒体12は、記録紙に限定されない。例えば、記録媒体12には、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエステルなどの樹脂材料から形成されたシート、台紙と台紙上に積層されかつ接着剤が塗布された剥離紙とからなるシール材等が含まれる。
【0014】
図1に示すように、プリンタ10は、ベース部材40と、本体ケース50と、右脚部16Rと、左脚部16Lと、インクヘッドユニット20(
図2参照)と、制御装置100(
図2参照)とを備えている。ベース部材40は、主走査方向Yに延びる。ベース部材40は、プラテン15を備えている。プラテン15は、主走査方向Yに延びる。右脚部16Rおよび左脚部16Lは、ベース部材40の下部に取り付けられている。右脚部16Rおよび左脚部16Lは、ベース部材40を支持する。
【0015】
図2に示すように、インクヘッドユニット20は、ベース部材40に設けられている。インクヘッドユニット20は、本体ケース50の内方に配置されている。インクヘッドユニット20は、プラテン15より上方に配置されている。インクヘッドユニット20は、キャリッジ22、後述するインクヘッド21およびダンパー80を備えている。
【0016】
図2に示すように、プリンタ10は、ベース部材40に設けられたガイドレール13を備えている。ガイドレール13は、主走査方向Yに延びている。ガイドレール13には、インクヘッドユニット20のキャリッジ22が係合している。キャリッジ22は、キャリッジ移動機構8によって、ガイドレール13に沿って主走査方向Yに往復移動する。キャリッジ移動機構8は、ガイドレール13の左端側に配置された左側のプーリ19aと、ガイドレール13の右端側に配置されたプーリ19bとを有している。プーリ19bには、キャリッジモータ8aが連結されている。なお、キャリッジモータ8aはプーリ19aに連結されていてもよい。プーリ19bは、キャリッジモータ8aによって駆動される。プーリ19aおよびプーリ19bには、それぞれ無端状のベルト16が巻き掛けられている。キャリッジ22はベルト16に固定されている。プーリ19aおよびプーリ19bが回転してベルト16が走行すると、キャリッジ22が主走査方向Yに移動する。このように、キャリッジ22はガイドレール13に沿って主走査方向Yに移動可能に構成されている。
【0017】
図2に示すように、プラテン15は、ベース部材40の中央部に設けられている。プラテン15は、本体ケース50の左前カバー54Lと右前カバー54Rとの間に配置されている。プラテン15には、記録媒体12が載置される。プラテン15は、主走査方向Yに延びる。プラテン15には、複数のグリットローラ17が設けられている。グリットローラ17は、ベース部材40に設けられた図示しないピンチローラと対向する位置に配置されている。グリットローラ17はフィードモータ17aに連結されている。グリットローラ17はフィードモータ17aによって回転駆動される。記録媒体12がグリットローラ17とピンチローラとの間に挟まれた状態でグリットローラ17が回転すると、記録媒体12は副走査方向X(
図1参照)に搬送される。
【0018】
図2に示すように、本体ケース50には、複数のインクカートリッジ25が収容される。インクカートリッジ25はインクを密封して貯留する容器である。本実施形態では、8個のインクカートリッジ25が本体ケース50に収容される。インクカートリッジ25は、後述するインク経路60(
図3参照)の上流側端部62(
図3参照)に着脱自在に接続されている。上流側端部62にインクカートリッジ25が取り付けられているとき、インクカートリッジ25は後述するダンパー80より上方に位置する。インクカートリッジ25には、例えば、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ライトシアンインク、ライトマゼンタインク、および、ブラックインクなどのプロセスカラーインクや、ホワイトインク、メタリックインク、および、クリアインクなどの特色インクのうち何れかのインクが貯留されている。
【0019】
図2に示すように、プリンタ10は、インク供給システム55を備えている。インク供給システム55は、インクカートリッジ25に加えて、インクヘッド、インク経路60(
図3参照)、送液ポンプ68、ダンパー80および検出装置90(
図3参照)を備えている。インクヘッド21およびダンパー80はキャリッジ22に搭載され、主走査方向Yに往復移動する。一方、インクカートリッジ25は、キャリッジ22に搭載されておらず、主走査方向Yに往復移動しない。そのため、キャリッジ22が主走査方向Yに移動してもインク経路60が破損しないように、インク経路60の大部分(少なくとも全長の半分以上)は、主走査方向Yに延びた状態で配置されている。インク経路60は、ケーブル類保護案内装置46で覆われている。
【0020】
図4に示すように、インクヘッド21は、副走査方向X(前後方向)の長さが主走査方向Y(左右方向)の長さよりも長い形状に形成されている。インクヘッド21は、同じ形状かつ同じ大きさに形成されている。インクヘッド21は、副走査方向Xに並ぶ複数のノズル23と、ノズル23が形成されたノズル面24とを備えている。ノズル23内は、負圧(大気圧より低い圧力)に設定されている。なお、ノズル23は微小であるため、
図4では複数のノズル23を直線で表している。インクヘッド21は、ノズル面24がそれぞれ外部に露出されるようにキャリッジ22に収容されている。
【0021】
図3に示すように、インクカートリッジ25とインクヘッド21とは、インク経路60を介して連通している。インク経路60は、上流側端部62と、下流側端部63と、中途部65と、を有する。上流側端部62は、インクカートリッジ25のインク取り出し口に着脱可能に接続されている。下流側端部63は、インクヘッド21に接続されている。中途部65は、上流側端部62と下流側端部63との間に位置する。インク経路60は、インクカートリッジ25からインクヘッド21にインクを導く流路を形成している。インク経路60は、柔軟性や可撓性を有し、弾性変形可能なように構成されている。インク経路60の構成は特に限定されないが、本実施形態では樹脂製の変形容易なチューブである。ただし、チューブ以外の材料で構成されていてもよい。インク経路60の一部がチューブによって構成されていてもよい。
【0022】
図3に示すように、中途部65は、チューブ65A、チューブ65Bおよびチューブ65Cを備えている。チューブ65Aは、インクカートリッジ25と送液ポンプ68とを連通する。チューブ65Bは、送液ポンプ68とダンパー80とを連通する。チューブ65Cは、ダンパー80とインクヘッド21とを連通する。上流側端部62は、チューブ65Aに設けられている。下流側端部63は、チューブ65Cに設けられている。
【0023】
図3に示すように、送液ポンプ68は、中途部65に配置されている。送液ポンプ68は、インクカートリッジ25とダンパー80との間に配置されている。送液ポンプ68は、中途部65を開放および閉鎖可能に構成されている。送液ポンプ68は、インクカートリッジ25からインクヘッド21に向けてインクを送液可能に構成されている。送液ポンプ68は、検出装置90において、ダンパー80の貯留室81内の圧力が第1圧力以下(例えば貯留室81内の絶対圧が第1圧力以下)であると検出されたときに駆動される。送液ポンプ68によって貯留室81にインクが所定の量だけ供給されると、貯留室81内の圧力が第1圧力より大きく(例えば貯留室81内の絶対圧が第1圧力より大きく)なる。第1圧力は、例えば、凡そ-1.5kPa~凡そ-0.1kPa(好ましくは-0.9kPa~-0.7kPa)である。
【0024】
図5は、送液ポンプ68の構成を示す縦断面図である。
図5に示すように、送液ポンプ68は、チューブポンプである。チューブポンプは、円弧状に形成された壁を有するケース71と、ケース71内に配置されたチューブ72と、チューブ72の一部を押圧可能な押圧体73と、押圧体73を支持しかつ押圧体73をケース71内で移動させるための回転円板74と、回転円板74を回転駆動させるためのモータ75とを備えている。チューブ72は、内部にインクが流通しかつ弾性変形可能に形成されている。チューブ72の一端72Aは、チューブ65A(
図3参照)に接続されている。チューブ72の他端72Bは、チューブ65B(
図3参照)に接続されている。押圧体73は、回転円板74が回転したときにチューブ72に沿って移動するよう、回転円板74上に固定されている。押圧体73は、回転円板74が
図5の矢印R1の方向に回転することによって、チューブ72の一部を押圧しながら移動する。これにより、チューブ72を閉鎖しながらチューブ72内のインクを移動させる。また、押圧体73は、回転円板74が
図5の矢印R2の方向に回転することによって、チューブ72から離反する。これにより、チューブ72を開放する。押圧体73がチューブ72から離反することにより中途部65が開放され、押圧体73がチューブ72を押圧することにより中途部65が閉鎖される。モータ75は、制御装置100によって制御される。
【0025】
図3に示すように、ダンパー80は、中途部65に配置されている。ダンパー80は、送液ポンプ68とインクヘッド21との間に配置されている。ダンパー80は、インクが一時的に貯留される貯留室81を有している。貯留室81には、インクカートリッジ25から供給されたインクが一時的に貯留される。ダンパー80は、インクヘッド21と連通している。ダンパー80は、例えばインクヘッド21の上部に設けられる。
【0026】
図6は、ダンパー80および検出装置90の構成を示す断面図である。ダンパー80は、インクの圧力変動を緩和して、インクヘッド21からのインクの吐出動作を安定させるものである。本実施形態では、
図6に示すように、ダンパー80は、ケース本体82と、感圧膜83とを備えている。
【0027】
図6に示すように、ケース本体82は一面(
図6の右側の面)に開口82Aが形成された中空構造である。ケース本体82は、典型的には樹脂材料から形成されている。感圧膜83は開口82Aを覆うようにケース本体82の外壁面に取り付けられている。貯留室81は、ケース本体82と感圧膜83とに囲まれた空間である。感圧膜83は、例えば可撓性を有する樹脂製のフィルムによって構成されている。
図6および
図7に示すように、感圧膜83は、貯留室81内のインクの貯留量や、貯留室81内の圧力に応じて、撓み変形可能なように構成されている。感圧膜83は、貯留室81の内側および外側に撓み変形可能である。感圧膜83は、貯留室81の内側および外側にそれぞれ撓むことができる程度の張力で、ケース本体82に取り付けられている。
【0028】
図6に示すように、貯留室81には、バネ85が設けられている。バネ85は、圧縮された状態で貯留室81に配置されており、感圧膜83に向かって弾性力を付与する。ここでは、バネ85は、感圧膜83の貯留室81側の面に接触している。なお、バネ85の種類は特に限定されない。本実施形態では、バネ85はコイルバネである。感圧膜83には、押圧体86が設けられている。押圧体86は、バネ85に支持されている。押圧体86は、感圧膜83の撓み変形に追従して貯留室81の内側および外側に移動可能である。
【0029】
図3に示すように、検出装置90は、ダンパー80の側方に配置されている。検出装置90は、ダンパー80の貯留室81内の圧力(言い換えると、貯留室81に流入するインクの量。)を検出する。貯留室81内の圧力に基づいて送液ポンプ68が制御される。
【0030】
図6に示すように、検出装置90は、レバー84を備えている。レバー84は、押圧体86と接触可能にケース本体82に設けられている。本実施形態では、ケース本体82には、支持バネ87が設けられおり、レバー84は、支持バネ87に支持されている。レバー84の形状は特に限定されない。ここでは、レバー84は、略U字状に形成されている。詳しくは、レバー84は、押圧体86の右方において、前後方向に延びた接触部84Aと、接触部84Aの後端から左方に延びた支持部84Bと、接触部84Aの前端から左方に延びた被検出部84Cとを有している。接触部84Aには、押圧体86が接触可能である。支持部84Bは、支持バネ87に支持されている。被検出部84Cは、後述する検出部95によって検出される部位である。レバー84は、感圧膜83が貯留室81の内側に撓むとき(即ち貯留室81内のインクが減少して圧力が低下するとき)貯留室81に近づく方向に移動する。
図7に示すように、レバー84は、感圧膜83が貯留室81の外側に撓むとき(即ち貯留室81内のインクが増加して圧力が増大するとき)に貯留室81から離れる方向に移動する。
【0031】
図6に示すように、検出装置90は、検出部95を備えている。検出部95は、例えば、赤外線などの光を発する発光素子を有する発光部91と、発光部91から発せられた光を感知する受光素子を有する受光部92と、発光部91と受光部92との間に設けられた検出領域93と、を備えている。発光部91と受光部92は、互いに対向するように配置されている。検出装置90は、レバー84の位置変化に基づいて、貯留室81内の圧力が第1圧力以下であるかを検出することができる。
図7に示すように、貯留室81の圧力が第1圧力より大きくなるにしたがって、感圧膜83が貯留室81の外側に撓む。このとき、押圧体86によって、レバー84が貯留室81の外側に押されることで、レバー84は、支持バネ87を軸に回転する。そして、貯留室81の圧力が第1圧力より大きくなったとき、レバー84の被検出部84Cが検出装置90の検出領域93から外れた位置に移動する。検出装置90は、レバー84の被検出部84Cが検出領域93から外れたとき(即ち被検出部84Cが検出領域93に位置していないとき)、貯留室81の圧力が第1圧力よりも大きいことを検出する。一方、検出装置90は、レバー84の被検出部84Cが検出領域93を遮ったとき(即ち被検出部84Cが検出領域93に位置するとき)、貯留室81の圧力が第1圧力以下であることを検出する。
【0032】
図2に示すように、プリンタ10は、キャッピング装置41を備えている。キャッピング装置41は、本体ケース50内に設けられている。キャッピング装置41は、プラテン15より右方に配置されている。
図8に示すように、キャッピング装置41は、インクヘッド21に着脱可能な8個のキャップ42と、キャップ移動機構43と、吸引ポンプ44とを備えている。キャップ42およびキャップ移動機構43は、ガイドレール13(
図2参照)の右端部に位置するホームポジションHPに配置されている。ここで、ホームポジションHPとは、印刷待機時、すなわち、印刷が行われていないときに、キャリッジ22およびインクヘッド21が待機する位置である。ただし、ホームポジションHPの位置は特に限定されず、ガイドレール13の左端部であってもよい。なお、
図8および
図9に示す例では、ダンパー80の図示を省略している。
【0033】
キャップ42は、インクヘッド21のノズル23(
図4参照)に付着したインクが硬化してノズル23が目詰まりすることを抑制する部材である。キャップ42は、主走査方向Yに並んでいる。
図9に示すように、キャップ42は、印刷待機時において、それぞれインクヘッド21にそれぞれ装着され、ノズル面24を覆う。即ち、キャリッジ22がホームポジションHPに移動すると、キャップ42は、インクヘッド21にそれぞれ装着される。
【0034】
キャップ移動機構43は、キャップ42を支持している。キャップ移動機構43は、キャップ42をインクヘッド21に対してそれぞれ着脱可能なように移動させる機構である。本実施形態では、キャップ移動機構43は、キャップ42を上下方向に移動させるものである。キャップ移動機構43の構成は特に限定されないが、例えば、駆動モータ43Aを備えている。駆動モータ43Aを駆動させることによって、キャップ移動機構43は、キャップ42を上下方向に移動させる。キャップ移動機構43は、キャップ42を上方に移動させることによって、キャップ42を、キャップ位置CP(
図9参照)に移動させる。ここで、キャップ位置CPとは、キャップ42がインクヘッド21のノズル面24を覆う位置である。これにより、キャップ42は、インクヘッド21にそれぞれ装着される。キャップ42がインクヘッド21にそれぞれ取り付けられたときに、キャップ42とノズル面24との間に密閉空間48(
図9参照)が形成される。キャップ移動機構43は、印刷を開始するときに、キャップ42を下方に移動させることによって、キャップ42をキャップ位置CP(
図9参照)から離隔位置DP(
図8参照)に移動させる。ここで、離隔位置DPとは、キャップ42がノズル面24から離隔した位置である。これにより、キャップ42は、それぞれ、インクヘッド21から取り外される。
【0035】
図9に示すように、キャッピング装置41は、2つの吸引ポンプ44を備えている。吸引ポンプ44は、インクヘッド21にキャップ42が装着されている状態において、密閉空間48内の流体(例えばインク)を吸引してノズル23(
図4参照)からインクを吐出させる吸引動作を行う。吸引ポンプ44を駆動することにより、密閉空間48内は、大気圧より低い圧力(即ち負圧)となる。この結果、インクヘッド21のノズル23からインクが強制的に排出される。各吸引ポンプ44の吸引口は、可撓性を有するチューブ45を介して4個のキャップ42に接続されている。吸引ポンプ44の排出口は、廃液タンク49に接続されている。吸引ポンプ44に吸引された密閉空間48内の流体は、廃液タンク49に貯留される。吸引ポンプ44は、制御装置100(
図2参照)に制御される。2つの吸引ポンプ44は、相互に独立して制御される。
【0036】
図1に示すように、本体ケース50のうち右前カバー54Rの後方には、操作パネル18が設けられている。操作パネル18は、プリンタの状態を表示する表示部(図示せず)と、ユーザによって操作される入力キー(図示せず)が設けられている。操作パネル18は、プリンタ10の各種の動作を制御する制御装置100(
図2参照)に接続されている。
【0037】
図10に示すように、プリンタ10の全体の動作は、制御装置100によって制御されている。制御装置100の構成は特に限定されない。制御装置100は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェアの構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータなどの外部機器から印刷データなどを受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、プログラムや各種データを格納するメモリなどの記憶装置と、を備えている。
図2に示すように、制御装置100は、本体ケース50の内部に設けられている。ただし、制御装置100は本体ケース50の内部に設けられていなくてもよい。例えば、制御装置100は、プリンタ10の外部に設置されたコンピュータなどであってもよい。この場合、制御装置100は、有線または無線を介してプリンタ10と通信可能に接続されている。
【0038】
図10に示すように、制御装置100は、インクヘッド、キャリッジモータ8a、フィードモータ17a、送液ポンプ68、検出装置90、駆動モータ43Aおよび吸引ポンプ44と通信可能に接続している。制御装置100は、インクヘッド21、キャリッジモータ8a、フィードモータ17a、送液ポンプ68、駆動モータ43Aおよび吸引ポンプ44を制御する。
【0039】
図10に示すように、制御装置100は、記憶部102と、第1インク送液部104と、第1吸引制御部106と、推定部108と、判断部110と、通知部112と、第1フラッシング制御部114と、第2インク送液部116と、第2吸引制御部118と、第2フラッシング制御部120と、第1補正部122と、第2補正部124とを備えている。制御装置100の各部の機能は、プログラムによって実現されている。このプログラムは、例えばプリンタ10の内部の基板に実装されたROMにLAN経由でPCから書き込まれたり、プリンタ10の内部の基板に実装されたFPGAに専用の書き込み治具を使用してPCから書き込まれたりする。このプログラムは、例えば、インターネットを通じてPCにダウンロードされる。また、制御装置100の各部の機能は、プロセッサおよび/または回路などによって実現可能なものであってもよい。なお、これら各部の具体的な機能については後述する。
【0040】
次に、ダンパー80の感圧膜の83の状態を判断する方法について説明する。
図11は、印刷開始前やクリーニング時において、ダンパー80の感圧膜83の状態を判断する手順を示すフローチャートである。ここで、感圧膜83はインクと接触した状態で使用されるため、使用時間の経過とともに感圧膜83が収縮することがあり得る。感圧膜83が収縮してしまうと、貯留室81に送液ポンプ68から所定の量のインクが送液されたときに感圧膜83が貯留室81の外側に十分に撓まず、検出装置90のレバー84の被検出部84Cが検出領域93から外れないことが起き得る。この場合、送液ポンプ68から貯留室81にさらにインクが送液されるため、貯留室81内の圧力が所定の設定値を超えて上昇し、インクヘッド21のノズル23からインクが漏れ出す虞がある。本実施形態では、ノズル23からインクが漏れ出すことを未然に防ぐために、事前に感圧膜83の状態を判断することとしている。
【0041】
まず、ステップS110において、貯留室81内の圧力が第1圧力以下になるまでインクヘッド21のノズル23からインクを吐出させる。ここでは、フラッシング動作によってノズル23からインクを吐出させてもよいし、吸引動作によってノズル23からインクを吐出させてもよい。例えば、第1フラッシング制御部114は、検出装置90によって貯留室81内の圧力が第1圧力以下であることが検出されるまで、ノズル23からインクを吐出させるフラッシング動作を実行する。フラッシング動作は、例えば、インクヘッド21にキャップ42が取り付けられた状態で行われる。なお、フラッシング動作および吸引動作が行われるときには、送液ポンプ68によって中途部65が閉鎖されている。即ち、インクカートリッジ25からインクが供給されない。
【0042】
ステップS120において、第1インク送液部104は、所定の圧力(一定の圧力)で貯留室81にインクを送液する。例えば、第1インク送液部104は、送液ポンプ68を制御して中途部65を開放させた状態で、所定の圧力としてインクカートリッジ25とダンパー80との間の水頭圧で貯留室81にインクを送液する。即ち、中途部65を開放させてインクカートリッジ25と貯留室81とが連通した状態で、インクの自重によって貯留室81にインクを送液する。第1インク送液部104は、中途部65を開放してから(即ちインクの供給開始から)一定時間が経過した後、送液ポンプ68を制御して中途部65を閉鎖する。
【0043】
ステップS130において、判断部110は、第1インク送液部104によって貯留室81にインクが送液された後、貯留室81内の圧力が第1圧力より大きいかを判断する。より詳細には、判断部110は、検出装置90のレバー84の被検出部84Cが検出領域93から外れた場合には貯留室81内の圧力が第1圧力より大きいと判断し、検出装置90のレバー84の被検出部84Cが検出領域93を遮っている場合には貯留室81内の圧力が第1圧力以下であると判断する。貯留室81内の圧力が第1圧力より大きい場合には、ステップS140に進む。一方、貯留室81内の圧力が第1圧力以下の場合には、ステップS170に進む。
【0044】
ステップS140において、第1吸引制御部106は、第1インク送液部104によって貯留室81にインクが送液された後に、吸引ポンプ44を駆動して密閉空間48内の流体を吸引する吸引動作を実行する。第1吸引制御部106は、検出装置90によって貯留室81内の圧力が第1圧力以下であることが検出されるまで、吸引動作を実行する。第1吸引制御部106は、駆動モータ43Aおよび吸引ポンプ44を制御する。
【0045】
ステップS150において、推定部108は、検出装置90によって貯留室81内の圧力が第1圧力以下であることが検出されるまでに吸引ポンプ44によって吸引された第1インク量を推定する。推定部108は、例えば、吸引動作の開始から終了(即ち貯留室81内の圧力が第1圧力以下であることが検出されるとき)までの時間に基づいて、第1インク量を推定する。第1インク量は、記憶部102に記憶される。なお、推定部108は、吸引動作の開始から終了までの吸引ポンプ44の回転数から第1インク量を推定してもよい。
【0046】
ステップS160において、判断部110は、推定部108によって推定された第1インク量に基づいて、感圧膜83の状態を判断する。判断部110は、第1インク量が予め設定された所定のインク量よりも少ない場合、感圧膜83が収縮していると判断する。判断部110は、第1インク量が予め設定された所定のインク量と同じである場合、感圧膜83が収縮していないと判断する。所定のインク量は、記憶部102に記憶されている。第1インク量が所定のインク量よりも少ない場合には、ステップS170に進む。一方、第1インク量が所定のインク量と同じである場合には、感圧膜83は正常であるため処理を終了する。
【0047】
ステップS170において、通知部112は、感圧膜83に不具合が発生していることを通知する。通知部112による通知方法は特に限定されず、例えば、視覚的な表示、音声等による通知が挙げられる。本実施形態では、通知部112は、操作パネル18を通じて視覚的にユーザに対する通知を行う。なお、不具合の発生の通知と合わせて、あるいは、不具合の発生の通知に代えて、第1吸引制御部106は、吸引動作をさらに実行して、貯留室81内の圧力を第1圧力より小さい第2圧力にしてもよい。これにより、感圧膜83を強制的に引き延ばして、感圧膜83の状態を改善することができる。第2圧力は、例えば、凡そ-90kPa~凡そ-80kPaである。
【0048】
次に、吸引ポンプ44の吸引能力を補正する方法について説明する。
図12は、吸引ポンプ44の吸引能力を補正する手順を示すフローチャートである。上述した感圧膜83の状態を判断する前に、吸引ポンプ44の吸引能力の補正を行うことによって、推定部108はより正確に第1インク量を推定することができる。なお、吸引ポンプ44の吸引能力の補正を行うかは任意である。
【0049】
まず、ステップS210において、貯留室81内の圧力が第1圧力以下になるまでインクヘッド21のノズル23からインクを吐出させる。ここでは、フラッシング動作によってノズル23からインクを吐出させる。例えば、第1フラッシング制御部114は、検出装置90によって貯留室81内の圧力が第1圧力以下であることが検出されるまで、ノズル23からインクを吐出させるフラッシング動作を実行する。第1フラッシング制御部114は、貯留室81内の圧力が第1圧力以下であることが検出されると、フラッシング動作を停止する。
【0050】
ステップS220において、第2インク送液部116は、送液ポンプ68を制御して、第2インク量だけインクを貯留室81に送液する。第2インク送液部116は、送液ポンプ68のモータ75を制御して回転円板74を所定の回転量数A(r)だけ回転することによって、第2インク量のインクを貯留室81に送液する。送液後には、送液ポンプ68によって中途部65は閉鎖されている。第2インク量は、記憶部102に記憶されている。
【0051】
ステップS230において、第2吸引制御部118は、第2インク送液部116によって貯留室81に第2インク量のインクが送液された後に、吸引ポンプ44を駆動して密閉空間48内の流体を吸引する吸引動作を実行する。第2吸引制御部118は、検出装置90によって貯留室81内の圧力が第1圧力以下であることが検出されるまで、吸引動作を実行する。第2吸引制御部118は、駆動モータ43Aおよび吸引ポンプ44を制御する。第2吸引制御部118は、貯留室81内の圧力が第1圧力以下であることが検出されると、吸引動作を停止する。第2吸引制御部118は、吸引動作における吸引ポンプ44の回転数B(r)を計数する。
【0052】
ステップS240において、推定部108は、検出装置90によって貯留室81内の圧力が第1圧力以下であることが検出されるまでに吸引ポンプ44によって吸引された第1インク量を推定する。推定部108は、例えば、吸引動作の開始から終了までの時間に基づいて、第1インク量を推定する。第1インク量は、記憶部102に記憶される。
【0053】
ステップS250において、第1補正部122は、推定部108によって推定された第1インク量と第2インク送液部116によって送液された第2インク量とに基づいて、吸引ポンプ44の吸引能力を補正する。即ち、送液ポンプ68の送液能力をPP(ml/r)としたとき、第1補正部122は、以下の式(1)により吸引ポンプ44の吸引能力NP(ml/r)を求める。
【0054】
【0055】
次に、送液ポンプ68の送液能力を補正する方法について説明する。
図13は、送液ポンプ68の送液能力を補正する手順を示すフローチャートである。上述した吸引ポンプ44の吸引能力の補正を行う前に、送液ポンプ68の送液能力の補正を行うことによって、より正確に吸引ポンプの吸引能力を補正することができる。なお、送液ポンプ68の送液能力の補正を行うかは任意である。
【0056】
まず、ステップS310において、貯留室81内の圧力が第1圧力以下になるまでインクヘッド21のノズル23からインクを吐出させる。ここでは、フラッシング動作によってノズル23からインクを吐出させる。例えば、第1フラッシング制御部114は、検出装置90によって貯留室81内の圧力が第1圧力以下であることが検出されるまで、ノズル23からインクを吐出させるフラッシング動作を実行する。第1フラッシング制御部114は、貯留室81内の圧力が第1圧力以下であることが検出されると、フラッシング動作を停止する。
【0057】
ステップS320において、第2インク送液部116は、送液ポンプ68を制御して、第2インク量だけインクを貯留室81に送液する。第2インク送液部116は、送液ポンプ68のモータ75を制御して回転円板74を所定の回転数量A(r)だけ回転することによって、第2インク量のインクを貯留室81に送液する。送液後には、送液ポンプ68によって中途部65は閉鎖されている。第2インク量は、記憶部102に記憶されている。
【0058】
ステップS330において、第2フラッシング制御部120は、第2インク送液部116によって貯留室81に第2インク量のインクが送液された後に、検出装置90によって貯留室81内の圧力が第1圧力以下であることが検出されるまで、フラッシング動作を実行する。第2フラッシング制御部120は、貯留室81内の圧力が第1圧力以下であることが検出されると、フラッシング動作を停止する。第2フラッシング制御部120は、フラッシング動作におけるフラッシング発数FL(shot)を計数する。第2フラッシング制御部120のフラッシング動作によって吐出された第3インク量は、記憶部102に記憶される。
【0059】
ステップS340において、第2補正部124は、第2フラッシング制御部120によるフラッシング動作によって吐出された第3インク量と第2インク送液部116によって送液された第2インク量とに基づいて、送液ポンプ68の送液能力を補正する。即ち、フラッシング1発あたりの吐出量をC(ml/shot)としたとき、第2補正部124は、以下の式(2)により送液ポンプ68の送液能力PP(ml/r)を求める。
【0060】
【0061】
以上のように、本実施形態のプリンタ10によると、第1インク送液部104は、所定の圧力で貯留室81にインクを送液する。ここで、感圧膜83が正常の場合には、貯留室81に所定の圧力でインクを送液すると感圧膜83が外側に大きく撓む。このため、貯留室81にインクが送液されてレバー84が検出領域93から外れたときには、貯留室81内には比較的多量のインクが貯留される。一方、感圧膜83が収縮している場合には、貯留室81に所定の圧力でインクを送液しても感圧膜83が外側にあまり撓まない。このため、貯留室81にインクが送液されてレバー84が検出領域93から外れたときには、貯留室81内には比較的少量のインクが貯留される。そして、第1吸引制御部106によって吸引動作が実行されて貯留室81内のインクがノズル23から排出される。推定部108は、例えば、吸引動作が実行されてから検出装置90によって貯留室81内の圧力が第1圧力以下であることが検出されるまでの時間等に基づいて、吸引ポンプ44によって吸引された第1インク量を推定する。上述のように、感圧膜83の状態によって貯留室81内に貯留されるインク量が異なるため、判断部110は推定部108によって推定された第1インク量によって、感圧膜83の状態を判断することができる。判断部110によって感圧膜83が正常でないと判断された場合には、貯留室81に過度なインクが供給される虞があるため、感圧膜83の交換等を事前に実施することによってインクヘッド21のノズル23からインクが漏れ出すことを抑制することができる。
【0062】
本実施形態のプリンタ10によると、上流側端部62にインクカートリッジ25が取り付けられているとき、インクカートリッジ25は、ダンパー80より上方に位置し、送液ポンプ68は、中途部65を開放および閉鎖可能に構成され、第1インク送液部104は、送液ポンプ68を制御して中途部65を開放させた状態で、所定の圧力としてインクカートリッジ25とダンパー80との間の水頭圧で貯留室81にインクを送液する。これにより、貯留室81に適切にインクを送液しつつ、貯留室81に過剰なインクが送液されることが抑制される。
【0063】
本実施形態のプリンタ10によると、第1インク量が予め設定された所定のインク量よりも少ない場合、判断部110は、感圧膜83が収縮していると判断する。感圧膜83が収縮している場合には、貯留室81に貯留された第1インク量が所定のインク量より少なくなるため、判断部110は、感圧膜83が収縮していると判断することができる。
【0064】
本実施形態のプリンタ10によると、第1吸引制御部106は、判断部110によって感圧膜83が収縮していると判断されたとき、吸引動作をさらに実行して、貯留室81内の圧力を第1圧力より小さい第2圧力にしてもよい。これにより、貯留室81内の負圧が高くなり、収縮した感圧膜83を強制的に引き延ばして、感圧膜83の状態を改善することができる。
【0065】
本実施形態のプリンタ10によると、制御装置100は、判断部110によって感圧膜83が収縮していると判断されたとき、感圧膜83に不具合が発生していることを通知する通知部112を備えている。これにより、作業者は感圧膜83が収縮していることを認識することができるため、ダンパー80自体の交換や感圧膜83の交換を実施することができる。
【0066】
本実施形態のプリンタ10によると、制御装置100は、検出装置90によって貯留室81内の圧力が第1圧力以下であることが検出されるまで、ノズル23からインクを吐出させるフラッシング動作を実行する第1フラッシング制御部114と、送液ポンプ68を制御して、第2インク量だけインクを貯留室81に送液する第2インク送液部116と、第2インク送液部116によって貯留室81に第2インク量のインクが送液された後に、吸引動作を実行する第2吸引制御部118と、推定部108によって推定された第1インク量と第2インク送液部116によって送液された第2インク量とに基づいて、吸引ポンプ44の吸引能力を補正する第1補正部122と、を備えている。このように、第1補正部122によって事前に吸引ポンプ44の吸引能力を補正することによって、推定部108は吸引ポンプ44によるインクの吸引量の推定をより正確に行うことができ、感圧膜83の状態をより精度よく判断することができる。
【0067】
本実施形態のプリンタ10によると、制御装置100は、第2インク送液部116によって貯留室81に第2インク量のインクが送液された後に、検出装置90によって貯留室81内の圧力が第1圧力以下であることが検出されるまで、フラッシング動作を実行する第2フラッシング制御部120と、第2フラッシング制御部120によって吐出された第3インク量と第2インク送液部116によって送液された第2インク量とに基づいて、送液ポンプ68の送液能力を補正する第2補正部124と、を備えている。このように、第2補正部124によって事前に送液ポンプ68の送液能力を補正することによって、送液ポンプ68によるインクの送液量がより正確になり、吸引ポンプ44の吸引能力の補正をより精度よく行うことができる。
【0068】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。
【0069】
上述した実施形態では、中途部65には、送液ポンプ68のみが配置されていたが、これに限定されない。例えば、インクカートリッジ25と送液ポンプ68との間に中途部65を開放および閉鎖可能なバルブを備えていてもよい。
【0070】
上述した実施形態では、所定の圧力としてインクカートリッジ25とダンパー80との間の水頭圧で貯留室81にインクを送液していたが、これに限定されない。例えば、送液ポンプ68として、所定の圧力(一定の圧力)でインクを送液することが可能なポンプを用いてもよい。
【符号の説明】
【0071】
10 プリンタ(インクジェットプリンタ)
21 インクヘッド
23 ノズル
25 インクカートリッジ
42 キャップ
44 吸引ポンプ
62 上流側端部
65 中途部
68 送液ポンプ
80 ダンパー
81 貯留室
83 感圧膜
84 レバー
90 検出装置
91 発光部
92 受光部
93 検出領域
100 制御装置
104 第1インク送液部
106 第1吸引制御部
108 推定部
110 判断部
112 通知部
114 第1フラッシング制御部
116 第2インク送液部
118 第2吸引制御部
120 第2フラッシング制御部
122 第1補正部
124 第2補正部