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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】レーザ加工装置およびレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/08 20140101AFI20241120BHJP
   B23K 26/10 20060101ALI20241120BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20241120BHJP
   B23K 26/38 20140101ALI20241120BHJP
   B23K 26/12 20140101ALI20241120BHJP
【FI】
B23K26/10
B23K26/00 M
B23K26/38 A
B23K26/12
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021100988
(22)【出願日】2021-06-17
(65)【公開番号】P2023000269
(43)【公開日】2023-01-04
【審査請求日】2024-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】394019082
【氏名又は名称】コマツ産機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 義博
(72)【発明者】
【氏名】高田 伸浩
(72)【発明者】
【氏名】野崎 茂
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-175778(JP,A)
【文献】特開平08-132270(JP,A)
【文献】特開平07-299574(JP,A)
【文献】特開平02-030393(JP,A)
【文献】特開2017-100233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を用いて被加工材を加工するレーザ加工装置であって、
前記レーザ光の透過を抑制する透過抑制液を貯留可能で、前記被加工材を加工するレーザ光が前記被加工材を貫通した後に透過抑制液内に入射するように配置される容器と、
前記容器の外部に配置され、内部空間を有し、前記容器に貯留された透過抑制液が前記
内部空間に入るように前記容器に接続された液収納部と、
少なくとも前記内部空間の透過率を検出する透過率検出センサーと、
前記透過率検出センサーにより検出された透過率に基づいて報知およびレーザ光射出動作の少なくとも一方の制御指令を発するコントローラと、を備える、レーザ加工装置。
【請求項2】
前記被加工材の下面を支持する載置部を有する支持部材をさらに備え、
前記容器は、透過抑制液を少なくとも前記載置部の高さ位置まで貯留可能である、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記液収納部は、透過抑制液が入る透明部分を有し、
前記透過率検出センサーは、発光部と、前記発光部から発せられ前記透明部分を透過した光を受光する受光部とを有する、請求項1または請求項に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記液収納部は、透過抑制液が入る透明部分を有し、
前記透過率検出センサーは、発光部と、前記発光部から発せられ前記透明部分を透過した光を反射する反射部とを有する、請求項1または請求項に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記液収納部は、前記載置部よりも下方に位置する接続部にて前記容器に接続され、かつ前記接続部から前記載置部よりも上方へ延びている、請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記液収納部は、第1部分と、前記第1部分よりも細い第2部分とを有し、
前記透過率検出センサーは、少なくとも前記内部空間の透過率を前記第2部分で検出する、請求項1から請求項のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
容器内の載置部に載置された被加工材を、レーザ光を用いて加工するレーザ加工方法であって、
前記被加工材を加工するレーザ光が前記被加工材を貫通した後に、前記レーザ光の透過を抑制する透過抑制液内に入射するように透過抑制液を前記容器内に貯留するステップと、
前記容器の外部に配置され、前記載置部よりも下方の位置で前記容器に接続され、前記容器に貯留された透過抑制液が入る内部空間を有する液収納部における少なくとも前記内部空間の透過率を検出するステップと、
検出された前記透過率に基づいて報知およびレーザ光射出動作の少なくとも一方の制御指令を発するステップと、を備える、レーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ加工装置およびレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ファイバレーザを用いたレーザ加工装置には、マシンルーム型ファイバレーザ加工装置、ガントリー型ファイバレーザ加工装置などがある。マシンルーム型ファイバレーザ加工装置は、被加工材が比較的小さい場合に用いられる。このタイプの加工装置では、レーザ光が装置外部へ漏れないように切断テーブル全体がマシンルームで覆われる。
【0003】
またガントリー型ファイバレーザ加工装置は、被加工材が比較的大きい場合に用いられる。このタイプの加工装置では、切断テーブル全体を覆うことができないため、レーザ光が装置外部へ漏れないようにレーザヘッド周りがカバーで覆われる。
【0004】
ガントリー型ファイバレーザ加工装置は、たとえば特許第5940582号公報(特許文献1)に開示されている。特許文献1には、レーザノズル側カバー体とガーター側カバー体との各々の下端側に遮光部材が取り付けられている。この遮光部材により、レーザノズル側カバー体およびガーター側カバー体の各々の下端部と定盤の上面との間の隙間からレーザ光が漏れることが防止されている。
【0005】
またレーザ加工装置において水を用いた装置が、たとえば特開平8-132270号公報(特許文献2)、特開昭62-168692号公報(特許文献3)などに開示されている。
【0006】
特許文献2では、加工テーブルの水槽内において被加工材の下部が冷却水に浸けられた状態でレーザ加工が行なわれる。これにより、被加工材の全体を下部から冷却し、安定した加工が可能になる。
【0007】
特許文献3では、剣山ピンの取付箱に水を入れた状態で、剣山ピンに支持された被加工材がレーザ加工される。水槽に入った水は、レーザ切断中に被加工材を冷却し、粉塵の飛散を抑える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5940582号公報
【文献】特開平8-132270号公報
【文献】特開昭62-168692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載のレーザ加工装置では、レーザ光が被加工材を貫通し、被加工材の下方において切断テーブル内を反射することにより装置外部へ漏れ出るおそれがある。このレーザ光の漏れ出しを防止するためには被加工材の下方に切断テーブル側遮光部材を設置する必要がある。このためレーザ加工装置の構造が複雑となる。
【0010】
また特許文献1において被加工材の下方に配置された切断テーブル側遮光部材はレーザ光により少しずつ削り取られていく。このため時間の経過とともに遮光が万全ではなくなり、レーザ光が装置外部へ漏れ出す。
【0011】
また特許文献2および3では、水槽内の水は被加工材の冷却または粉塵の飛散防止の目的で用いられるものであり、レーザ光の遮光は考慮されていない。
【0012】
本開示の目的は、簡易な装置構成で、レーザ光の外部への漏れ出しを防止できるレーザ加工装置およびレーザ加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示のレーザ加工装置は、レーザ光を用いて被加工材を加工するレーザ加工装置であって、容器と、液収納部と、透過率検出センサーとを備える。容器は、レーザ光の透過を抑制する透過抑制液を貯留可能である。液収納部は、容器の外部に配置され、内部空間を有し、容器に貯留された透過抑制液が内部空間に入るように容器に接続されている。透過率検出センサーは、少なくとも内部空間の透過率を検出する。
【0014】
本開示のレーザ加工方法は、容器内の載置部に載置された被加工材を、レーザ光を用いて加工するレーザ加工方法であって、以下のステップを有する。
【0015】
レーザ光の透過を抑制する透過抑制液が容器内に貯留される。容器の外部に配置され、載置部よりも下方の位置で容器に接続され、容器に貯留された透過抑制液が入る内部空間を有する液収納部における少なくとも内部空間の透過率が検出される。検出された透過率に基づいてレーザ光射出動作が制御される。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、簡易な装置構成で、レーザ光の外部への漏れ出しを防止できるレーザ加工装置およびレーザ加工方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態におけるレーザ加工装置の構成を示す斜視図である。
図2図1のレーザ加工装置に用いられる容器の内部構成を示す断面斜視図である。
図3図2の透過率検出センサーおよび液収納部の構成の一例を示す斜視図である。
図4図2の透過率検出センサーおよび液収納部の構成の変形例を示す斜視図である。
図5図1のレーザ加工装置に用いられるレーザヘッドの構成を示す断面図である。
図6図1のレーザ加工装置に用いられるレーザ光遮光部材の構成を示す断面図である。
図7図1のレーザ加工装置に用いられる液位調整機構の構成を示す断面図である。
図8】一実施形態におけるレーザ加工方法を示すフロー図である。
図9】被加工材をレーザ加工する様子を示す断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、明細書および図面において、同一の構成要素または対応する構成要素には、同一の符号を付し、重複する説明を繰り返さない。また、図面では、説明の便宜上、構成を省略または簡略化している場合もある。また実施の形態と変形例との少なくとも一部は、互いに任意に組み合わされてもよい。
【0019】
<レーザ加工装置の構成>
本実施形態におけるレーザ加工装置の構成について図1図7を用いて説明する。
【0020】
図1は、一実施形態におけるレーザ加工装置の構成を示す斜視図である。図2図1のレーザ加工装置に用いられる容器の内部構成を示す断面斜視図である。図3および図4のそれぞれは図2の透過率検出センサーと液収納部との構成の一例および変形例を示す斜視図である。図5図6および図7のそれぞれは、図1のレーザ加工装置に用いられるレーザヘッド、レーザ光遮光部材および液位調整機構の構成を示す断面図である。
【0021】
図1および図2に示されるように、本実施形態のレーザ加工装置20は、容器1と、切断パレット2(支持部材)と、スラッジトレイ3と、液位調整タンク4と、レーザヘッド10と、駆動機構25と、操作盤30とを主に有している。
【0022】
図2に示されるように、容器1は、矩形状の底壁1aと、底壁1aの4辺の各々から立ち上がる4つの側壁1bとを有している。容器1は、上方が開口した有底筒形状を有している。容器1は、上端の開口部と、その開口部から容器1の内部へ延びる内部空間とを有している。
【0023】
容器1は、内部に液体(透過抑制液LI:図6)を貯留できるように構成されている。側壁1bには、パレット支持部1cが設けられている。パレット支持部1cは、側壁1bの壁面から容器1の内部空間に向かって側方へ突き出している。
【0024】
液位調整タンク4は、容器1の内部空間内に配置されている。液位調整タンク4は、下端に開口部を持つ箱形状を有している。この開口部を通じて、液位調整タンク4の内部空間は容器1の内部空間と繋がっている。
【0025】
液位調整タンク4は、液位調整タンク4の内部空間にガスを貯留できるように構成されている。液位調整タンク4の内部空間に対してガスを供給または排出することが可能である。液位調整タンク4の内部空間にガスを供給することにより、液位調整タンク4内の透過抑制液LIを液位調整タンク4の外部へ押し出すことができる。また液位調整タンク4の内部空間からガスを排出することにより、液位調整タンク4の外部から内部へ透過抑制液LIを取り入れることができる。これにより、容器1内の液位を調整することが可能である。
【0026】
スラッジトレイ3は、液位調整タンク4の上方に配置されている。スラッジトレイ3は、上端に開口部を有する箱形状を有している。スラッジトレイ3は、レーザ加工で被加工材を切断した際に生じるスラッジを溜めることが可能である。レーザ加工の際に生じたスラッジは、被加工材WO(図7)から落下し、スラッジトレイ3の上端における開口部を通じてスラッジトレイ3の内部に溜められる。
【0027】
切断パレット2は、パレット支持部1cにより容器1に支持されている。切断パレット2は、容器1の内部空間内であって、スラッジトレイ3の上方に配置されている。切断パレット2は、複数の第1支持板2aと、複数の第2支持板2bとを有している。複数の第1支持板2aと複数の第2支持板2bとは、縦横に配置されることにより格子状に組み上げられている。
【0028】
切断パレット2は、被加工材WO(図7)の下面を支持する載置部2cを有している。切断パレット2の載置部2cは、たとえば複数の第2支持板2bの各々の上端により構成されている。載置部2cは、容器1の上端(側壁1bの上端)よりも低い位置にある。容器1の上端は、載置部2cに被加工材WOを載置した状態で、被加工材WOの上面よりも高い位置にある。これにより、載置部2cに被加工材WOが載置された状態で容器1内に透過抑制液LIを満たした場合、透過抑制液LIの液位を被加工材WOの上面より高くすることができる。
【0029】
本実施形態のレーザ加工装置20は、透過率検出センサー42と、液収納部43とを有している。液収納部43は、容器1の外部に配置されている。液収納部43は、管形状を有しており、内部空間43aを有している。液収納部43は、接続部43bにおいて容器1の側壁1bに接続されている。
【0030】
液収納部43は、たとえば横方向延在部43Lと、縦方向延在部43Vとを有している。液収納部43は、横方向延在部43Lの一方端に縦方向延在部43Vの下端が接続されることにより、たとえばL字形状を構成している。液収納部43は、横方向延在部43Lの他方端部において容器1の側壁1bに接続されている。縦方向延在部43Vの上端は、外部に開放されていてもよい。これにより液収納部43の内部空間43aは、液収納部43の外部と繋がっている。
【0031】
液収納部43の内部空間43aは、容器1の内部空間と繋がっている。これにより容器1の内部空間において透過抑制液LIが接続部43b以上の液位で貯留された場合、透過抑制液LIは液収納部43の内部空間43a内に入る。
【0032】
液収納部43の一部または全体は、透明部分を有している。液収納部43は、透過抑制液LIの入る部分が透明部分となるように構成されている。液収納部43の透明部分は、被加工材WOの加工に用いられるレーザ光の波長に対して透明であることが好ましい。液収納部43の透明部分は、たとえばガラス管よりなっている。液収納部43における縦方向延在部43Vの一部または全体が透明部分であり、ガラス管よりなっていてもよい。
【0033】
液収納部43と容器1との接続部43bは、載置部2cの高さ位置よりも下方に位置している。液収納部43は、接続部43bから載置部2cの高さ位置よりも上方へ延びている。具体的には液収納部43の縦方向延在部43Vは、載置部2cの高さ位置よりも低い位置から載置部2cの高さ位置よりも高い位置まで延びている。また縦方向延在部43Vは、載置部2cに被加工材WOを載置した場合、被加工材WOの上面の高さ位置よりも高い位置まで延びていることが好ましい。
【0034】
透過率検出センサー42は、液収納部43における少なくとも内部空間43aの透過率を検出する。透過率検出センサー42は、たとえば縦方向延在部43Vにおける内部空間43aの透過率を検出する。透過率検出センサー42は、液収納部43における透明部分における内部空間43aの透過率を検出する。透過率検出センサー42は、載置部2cの高さ位置より下方に位置する液収納部43の部分における内部空間43aの透過率を検出する。
【0035】
透過率検出センサー42は、液収納部43に透過抑制液LIが入っている状態では、透過抑制液LIおよび液収納部43の両方を透過する際の透過率を検出することができる。透過率検出センサー42は、液収納部43に透過抑制液LIが入っていない状態では、内部空間43a内の空気および液収納部43の両方を透過する際の透過率を検出することができる。
【0036】
したがって透過率検出センサー42は、液収納部43に透過抑制液LIが入っている状態の透過率と空気が入っている状態の透過率との差分をとることにより、液収納部43自体の透過率を検出することもできる。これにより透過率検出センサー42で透過率を検出することにより、液収納部43の汚れ具合などを知ることもできる。
【0037】
図3に示されるように、透過率検出センサー42は、たとえば透過型レーザ判別センサーである。透過率検出センサー42は、たとえば発光部42aと、受光部42bとを有している。発光部42aと受光部42bとは液収納部43を挟み込んでいる。具体的には発光部42aと受光部42bとは液収納部43の縦方向延在部43Vを横方向に挟み込んでいる。
【0038】
発光部42aから発せられた検出光が、縦方向延在部43Vの内部空間43aを通過した後に受光部42bにより受光される。これにより液収納部43における内部空間43aの透過率が測定される。なお発光部42aから発せられる検出光は、たとえばレーザ光である。この検出光は、レーザヘッド10から射出されるレーザ光と同じ波長を有するレーザ光であることが好ましい。
【0039】
透過率検出センサー42は、発光部42aと、反射部42bとを有していてもよい。発光部42aと反射部42bとは、液収納部43を挟み込んでいる。具体的には発光部42aと反射部42bとは液収納部43の縦方向延在部43Vを横方向に挟み込んでいる。
【0040】
発光部42aから発せられた検出光が、縦方向延在部43Vの内部空間43aを通過した後に反射部42bにより反射される。反射部42bで反射した検出光は、縦方向延在部43Vの内部空間43aを再度通過した後に発光部42aで受光されてもよい。この場合、発光部42aは、受光部としての機能も有している。また反射部42bで反射した検出光は、発光部42aとは別体の受光部(図示せず)により受光されてもよい。
【0041】
縦方向延在部43Vは、高さ方向の全体において同じ寸法を維持している。
【0042】
図4に示されるように、液収納部43の縦方向延在部43Vは、高さ方向の一部においてくびれた部分(細い部分)R3を有していてもよい。具体的には縦方向延在部43Vは、第1部分R1、R2に対して第2部分R3が細くなったくびれた形状を有していてもよい。
【0043】
液収納部43の縦方向延在部43Vは、第1部分R1、R2と、第2部分R3とを有している。液収納部43の縦方向延在部43Vにおいて、第1部分R1、第2部分R2および第1部分R3が、下からこの順で並んでいる。第1部分R1、R1の各々は第1寸法W1を有し、第2部分R3は第2寸法W2を有している。第2寸法W2は第1寸法W1よりも小さい。
【0044】
液収納部43の縦方向延在部43Vがくびれた形状を有する場合、透過率検出センサー42は、第2部分R3(くびれ部)における少なくとも内部空間43aの透過率を検出する。このため透過率検出センサー42が発光部42aと受光部42bとを有する場合、発光部42aと受光部42bとは第2部分R3を挟み込んでいる。また透過率検出センサー42が発光部42aと反射部42bとを有する場合、発光部42aと反射部42bとは第2部分R3を挟み込んでいる。
【0045】
図1に示されるように、駆動機構25は、レーザヘッド10を、X方向(容器1の長手方向)、Y方向(容器1の短手方向)およびZ方向(上下方向)に移動させる。駆動機構25は、左右1対の支持台21と、X方向可動台22と、Y方向可動台23と、レーザヘッド10とを主に有している。
【0046】
左右1対の支持台21は、容器1をY方向に挟み込むように配置されている。左右1対の支持台21は、X方向に延びている。X方向可動台22は、Y方向に延びることにより、左右1対の支持台21に跨って配置されている。X方向可動台22は、X軸モータ(図示せず)により支持台21に沿ってX方向に駆動される。
【0047】
Y方向可動台23は、たとえばラックピニオン機構により、X方向可動台22に対してY方向に移動可能に支持されている。Y方向可動台23は、Y軸モータ(図示せず)によりY方向に駆動される。
【0048】
レーザヘッド10は、たとえばラックピニオン機構により、Y方向可動台23に対してZ方向に移動可能に支持されている。レーザヘッド10は、Z軸モータ(図示せず)によりZ方向に駆動される。
【0049】
操作盤30は、被加工材WOの板厚、材質、速度などの加工条件の入力を受け付ける。操作盤30は、ディスプレイ、スイッチ、報知器などを有する。ディスプレイには、加工条件の入力画面、レーザ加工装置20の稼働状況を示す画面などが表示される。
【0050】
図5に示されるように、レーザヘッド10は、ヘッド本体5と、集光レンズ6aとを主に有している。ヘッド本体5は、本体部5aを有している。
【0051】
本体部5aは、中空の円筒形状を有している。集光レンズ6aは、本体部5aの中に収納されている。集光レンズ6aは、レーザ光RLを被加工材WOに集光する。集光レンズ6aによって集光されたレーザ光RLは、本体部5aのレーザ射出口5aa(射出部)から被加工材WOに向かって射出される。
【0052】
本実施形態のレーザ加工装置20に用いられるレーザ光RLは、可視光、近赤外光、中赤外光および遠赤外光のいずれかの波長を有し、0.7μm以上10μm以下の波長を有する。このレーザ光RLは、たとえばファイバレーザを光源とするレーザ光であり、YAG(Yttrium Aluminum Garnet)を含む固体レーザを光源とするレーザ光であってもよい。ファイバレーザとは、光ファイバを増幅媒体とする固体レーザの一種である。ファイバレーザでは、光ファイバの中心にあるコアに希土類元素Yb(イッテルビウム)がドープされている。ファイバレーザを光源とするレーザ光RLは、約1.06μmの波長を有する近赤外光である。ファイバレーザでは、炭酸ガスレーザよりもランニングコスト、メンテナンスコストが安い。
【0053】
本体部5aは、ガス吹出口5aaと、ガス供給部5abとを有している。ガス供給部5abから本体部5a内にアシストガスが供給される。本体部5a内に供給されたアシストガスは、ガス吹出口5aaから被加工材WOに向かって吹き出される。ガス吹出口5aaは、レーザ射出口5aaを兼ねている。
【0054】
ヘッド本体5は、アウターノズル5bをさらに有してもよい。アウターノズル5bは、本体部5aのガス吹出口5aaの周囲を取り囲むように本体部5aに取り付けられている。アウターノズル5bの内周面と本体部5aの外周面との間には、隙間空間が設けられている。
【0055】
アウターノズル5bは、ガス吹出口5baと、ガス供給部5bbとを有している。ガス吹出口5baおよびガス供給部5bbの各々は、上記隙間空間に繋がっている。ガス吹出口5baは、ガス吹出口5aaの外周に配置され、円環形状を有している。
【0056】
ガス供給部5bbから本体部5aとアウターノズル5bとの間の隙間空間に2次ガス(シールドガス)が供給される。隙間空間内に供給された2次ガスは、ガス吹出口5baから被加工材WOに向かって吹き出される。これによりガス吹出口5aaから吹き出されるアシストガスの外周側に、ガス吹出口5baから2次ガスが吹き出される。
【0057】
上記のようにレーザヘッド10は、ガス吹出口5aa、5baを有する。ガス吹出口5aa、5baは、アシストガスを吹き出すガス吹出口5aaと、2次ガスを吹き出すガス吹出口5baとを含んでいてもよい。ガス吹出口5aaとガス吹出口5baとは、2重ノズル構造を構成している。
【0058】
図6に示されるように、レーザヘッド10は、レーザ光遮光部材7を有している。レーザ光遮光部材7は、レーザヘッド10の周囲を取り囲んでいる。レーザ光遮光部材7は、たとえば剛性を有する金属板よりなっている。レーザ光遮光部材7は、たとえば板部材7である。板部材7は、たとえば環形状を有する。板部材7は、たとえばボルトなどの固定部材(図示せず)によってヘッド本体5に取り付けられている。板部材7は、平面視においてガス吹出口5aaを中心としてヘッド本体5との取り付け位置から外周側へ延びている。これにより板部材7は、レーザヘッド10のレーザ射出口5aaの周囲を取り囲んでいる。
【0059】
板部材7は、たとえばカーボンプレートからなっていてもよい。板部材7の下面(被加工材WOと対向する面)は、レーザ光を吸収しやすいように黒色とされていてもよい。また板部材7の下面には、反射材が貼付けられていてもよい。あるいは、金属製の板部材7の下面には、カーボンシートまたはゴムシートが貼付けられていてもよい。
【0060】
板部材7は、ヘッド本体5のレーザ射出口5aaから射出されて被加工材WOで反射したレーザ光を吸収または反射する。レーザ光は、板部材7で吸収されることにより、その強度を減ずる。またレーザ光は、板部材7で反射されて透過抑制液LI内を通ることにより、その強度を減ずる。これにより板部材7と被加工材WOとの間からレーザ光が漏れ出すことが抑制される。
【0061】
また図中矢印RLで示されるように、板部材7に当たらずに板部材7と被加工材WOとの隙間から外部へ漏れ出ようとするレーザ光がある。このレーザ光が透過抑制液LI内を所定距離L2だけ通過するように板部材7の寸法(直径L1)が設定されている。レーザ光が透過抑制液LI内を所定距離L2だけ通過することにより、レーザ光の強度は十分に減ぜられる。これにより板部材7と被加工材WOとの間からレーザ光が漏れ出すことが抑制される。
【0062】
図7に示されるように、容器1の内部に透過抑制液LI(図6)を供給するための供給配管36が設けられている。供給配管36には、供給バルブ31が取り付けられている。供給バルブ31を開くことにより容器1の内部空間への透過抑制液LIの供給が開始され、供給バルブ31を閉じることにより容器1の内部空間への透過抑制液LIの供給が停止される。
【0063】
液位調整タンク4には、容器1の外部からガス配管37が接続されている。ガス配管37には加圧バルブ32と、減圧バルブ33とが取り付けられている。加圧バルブ32を開くことにより液位調整タンク4内にガスが供給され、加圧バルブ32を閉じることにより液位調整タンク4内へのガスの供給が停止される。減圧バルブ33を開くことにより液位調整タンク4内のガスが外部へ排出され、減圧バルブ33を閉じることにより液位調整タンク4内からのガスの排出が停止される。液位調整タンク4、ガス配管37、加圧バルブ32および減圧バルブ33は液位調整機構に含まれる。この液位調整機構は、後述のように、液位検出センサー41の検出結果に基づいて容器1内における透過抑制液LIの液位を調整する。
【0064】
容器1には、オーバーフロー配管(図示せず)が取り付けられている。容器1内の透過抑制液LIの液位が所定液位以上になった場合に、容器1内の透過抑制液LIがオーバーフロー配管を通じて貯液槽35へ排出される。貯液槽35は、容器1の外部に配置されている。
【0065】
容器1には、液排出配管39が取り付けられている。液排出配管39には排出バルブ34が取り付けられている。排出バルブ34を開くことにより容器1内の透過抑制液LIが貯液槽35に排出され、排出バルブ34を閉じることにより容器1からの透過抑制液LIの排出が停止される。
【0066】
容器1は、少なくとも載置部2cの高さ位置HLまで透過抑制液LIを貯留可能に構成されている。また容器1は、載置部2cに載置された被加工材WOの上面よりも高い位置PLまで透過抑制液LIを貯留可能である。
【0067】
容器1に貯留される透過抑制液LIは、光を吸収してレーザ光の透過を抑制する。透過抑制液LIは、たとえば波長が0.7μm以上10μm以下である光の透過を抑制する。
【0068】
透過抑制液LIにおける0.7μm以上10μm以下の波長域における光の透過率は、たとえば10%/cm以下である。また透過抑制液LIにおける0.7μm以上10μm以下の波長域における光の透過率は、たとえば5%/cm以下であることが好ましい。また透過抑制液LIにおける0.7μm以上10μm以下の波長域における光の透過率は、たとえば3%/cm以下であることがより好ましい。
【0069】
透過抑制液LIは、0.7μm以上10μm以下の波長域における光の透過を抑制するため、0.7μm以上10μm以下の波長域における光を吸収または散乱する添加剤を含む。この添加剤はたとえば炭素を含む。添加剤は、黒色であることが好ましい。透過抑制液LIは、たとえば水に炭素を添加した水溶液である。透過抑制液LIは、たとえば水に0.1容積%の墨汁を加えた水溶液である。本明細書における水とは、水道水であってもよく、純水であってもよい。墨汁は、膠またはその他の水溶性樹脂の水溶液に、カーボンブラック(炭素)を分散させてなるものであり、カーボンブラックの混合比率は全量に対して4.0~20.0重量%であり、好ましくは5.0~10.0重量%である。墨汁は、たとえば市販の「呉竹 濃墨墨滴 BA7-18」である。
【0070】
透過抑制液LIは、防錆剤を含むことが好ましい。防錆剤は、鋼材などの腐食を抑制する腐食抑制剤である。防錆剤は、たとえば水溶性である。防錆剤としては、たとえば沈殿皮膜型インヒビター、不動態型インヒビター、脱酸素型インヒビターなどが用いられてもよい。
【0071】
レーザ加工装置20は、液位検出センサー41と、コントローラ50と、報知器51と、加工開始スイッチ52とをさらに有している。液位検出センサー41は、容器1に設置され、容器1内に貯留された透過抑制液LIの液位を検出する機能を有している。液位検出センサー41は、たとえばガイドパルス型のレベルセンサーである。
【0072】
透過率検出センサー42は、液収納部43の内部空間43aにおける透過率を検出する。液収納部43の内部空間43aに透過抑制液LIが入っている場合、透過率検出センサー42は透過抑制液LIの透過率を検出する。透過率検出センサー42により透過抑制液LIの透過率を検出することにより、透過抑制液LIに含まれる添加剤(たとえば炭素)の濃度を知ることができる。
【0073】
報知器51は、表示、音などによりレーザ加工装置20の状態を外部へ報知する。報知器51は、操作盤30(図1)に設けられた警告灯、ディスプレイまたはスピーカであってもよい。加工開始スイッチ52は、外部からの操作によりレーザ加工装置20によるレーザ加工開始の指令を発する。加工開始スイッチ52は、操作盤30に設けられてもよい。加工開始スイッチ52は、操作盤30に設けられたタッチパネルであってもよい。
【0074】
コントローラ50は、供給バルブ31、加圧バルブ32、減圧バルブ33、排出バルブ34を開閉するよう制御する。なおコントローラ50と排出バルブ34とを繋ぐ線は図7に示されていないが、これは図の簡略化のためである。コントローラ50は、レーザヘッド10のX、Y、Z方向への移動、レーザヘッド10からのレーザ照射などを制御する。コントローラ50は、報知器51による報知を制御する。
【0075】
コントローラ50は、液位検出センサー41により検出された容器1内における透過抑制液LIの液位を示す信号を受ける。コントローラ50は、透過率検出センサー42により検出された液収納部43における内部空間43aの透過率を示す信号を受ける。コントローラ50は、加工開始スイッチ52による加工開始の指令を示す信号を受ける。
【0076】
コントローラ50は、液位検出センサー41の検出結果に基づいて、加圧バルブ32または減圧バルブ33の開閉を制御する。これにより液位調整タンク4内に貯留されるガスの量が調整され、容器1に貯留される透過抑制液LIの液位が調整される。このようにコントローラ50が加圧バルブ32または減圧バルブ33の開閉を制御することにより、液位調整機構(液位調整タンク4、ガス配管37、加圧バルブ32および減圧バルブ33)が容器1内に貯留される透過抑制液LIの液位を調整する。
【0077】
コントローラ50は、透過率検出センサー42の検出結果に基づいて、報知器51による報知およびレーザ光射出動作の少なくとも一方の制御指令を発する。透過率検出センサー42により検出された透過抑制液LIの透過率が所定値(たとえば10%/cm、5%/cmまたは3%/cm)より大きいとき、コントローラ50は報知器51による報知を実行する制御指令、またはレーザ光射出動作の実施を停止する(またはレーザ光射出動作を開始しない)制御指令を発する。報知器51による報知は、たとえば表示または音によって行なわれる。
【0078】
一方、透過率検出センサー42により検出された透過抑制液LIの透過率が所定値(たとえば10%/cm、5%/cmまたは3%/cm)以下のとき、コントローラ50はレーザ光射出動作を開始する制御指令を発する。この際、コントローラ50は、レーザ光射出動作の実行を報知するよう報知器51を制御してもよく、また報知を実行しないよう報知器51を制御してもよい。
【0079】
コントローラ50は、たとえばプロセッサであり、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。
【0080】
<レーザ加工方法>
次に、本実施形態におけるレーザ加工装置を用いたレーザ加工方法について図7図9を用いて説明する。
【0081】
図8は一実施形態におけるレーザ加工方法を示すフロー図である。図9は被加工材をレーザ加工する様子を示す断面斜視図である。
【0082】
図7に示されるように、レーザ加工装置20の容器1内に、透過抑制液LIが供給される。この際、コントローラ50は、供給バルブ31を開くように制御する。これにより供給配管36から透過抑制液LIが容器1内に供給される。この際、コントローラ50は、液位検出センサー41により容器1内における透過抑制液LIの液位を検出する。コントローラ50は、液位検出センサー41の検出結果に基づいて容器1内の透過抑制液LIの液位が所望の液位SLになったと判断したら、供給バルブ31を閉じるように制御する。このとき、透過抑制液LIは、たとえば切断パレット2の載置部2cの高さ位置HLよりも低い位置SLまで供給される。
【0083】
レーザ加工装置20に被加工材WOが搬入される。被加工材WOは、切断パレット2の載置部2c上に配置される(ステップS1:図8)。被加工材WOは、たとえば鋼材である。この状態で、レーザ加工装置20によるレーザ加工動作が開始される。
【0084】
レーザ加工装置20におけるレーザ加工動作の開始は、たとえば加工開始スイッチ52を操作することにより行なわれる。レーザ加工動作が開始されると、コントローラ50は、液位検出センサー41の検出結果に基づいて、容器1に貯留される透過抑制液LIの液位を待機液位に調整する。具体的には、コントローラ50は、たとえば加圧バルブ32を開くように制御する。これにより液位調整タンク4内にガスが供給され、容器1に貯留される透過抑制液LIの液位が待機液位まで高くなるように調整される。
【0085】
この後、被加工材WOの上面高さが検出され、その上面高さに基づいて透過抑制液LIの目標液位PLが決定される。目標液位PLは、載置部2cの高さ位置HLか、その高さ位置HLよりも上方に設定される。本実施形態では目標液位PLは、たとえば被加工材WOの上面よりも高い位置に設定される。
【0086】
目標液位PLが決定されると、透過抑制液LIの液位調整により、透過抑制液LIの液位が、目標液位PLとして、少なくとも載置部2cの高さ位置HLまで調整される(ステップS2:図8)。本実施形態においては、透過抑制液LIの液位は、たとえば被加工材WOの上面よりも高い位置PLに調整される。これにより図9に示されるように、被加工材WOの全体は、透過抑制液LI内に沈む(浸漬される)。
【0087】
また液収納部43の内部空間43aにも透過抑制液LIが入り、内部空間43a内における透過抑制液LIの液位も液位PLとなる。コントローラ50は、この状態で液収納部43における内部空間43aの透過率を検出するよう透過率検出センサー42を制御する(ステップS3:図8)。
【0088】
この際、透過率検出センサー42は、透過率検出センサー42による検出高さ位置まで透過抑制液LIが入っている状態では、透過抑制液LIおよび液収納部43の両方を透過する際の透過率を検出することができる。また透過率検出センサー42は、透過率検出センサー42による検出高さ位置まで透過抑制液LIが入っていない状態では、内部空間43a内の空気および液収納部43の両方を透過する際の透過率を検出することができる。
【0089】
コントローラ50は、透過率検出センサー42により検出された透過率に基づいてレーザ光射出動作を制御する(ステップS4:図8)。具体的には以下のとおりである。
【0090】
コントローラ50は、透過率検出センサー42により検出された透過率が液位上昇前の透過率に対して変化したか否かを判定する。液位上昇前の透過率とは、透過率検出センサー42により検出される部分における内部空間43a内に透過抑制液LIが入っていない状態で検出される透過率である。液位上昇前の透過率は、たとえば透過抑制液LIの液位が載置部2cの高さ位置よりも低い液位SLである場合の内部空間43aの透過率である。
【0091】
上記により透過率検出センサー42により検出された透過率が液位上昇前の透過率に対して変化していないと判定された場合、透過抑制液LIの液位が透過率検出センサー42により検出される高さ位置の液位まで上昇していないとコントローラ50は判定する。この場合、コントローラ50は、レーザ光射出動作を開始しない、またはレーザ光射出動作を停止するようにレーザ加工装置20を制御する。また、この場合、コントローラ50は、透過抑制液LIの液位が透過率検出センサー42により検出される高さ位置の液位まで上昇していないことを、表示または音によって報知するよう報知器51を制御する。
【0092】
コントローラ50は、透過率検出センサー42により検出された透過率が液位上昇前の透過率に対して変化したと判定した場合、透過抑制液LIの液位が少なくとも透過率検出センサー42により検出される高さ位置の液位まで上昇していると判定する。
【0093】
この場合、コントローラ50は、透過率検出センサー42により検出された透過抑制液LIの透過率が、所定の透過率以下になっているか否かを判定する。液収納部43の汚れなどによる影響を補正するために、液面が上がる前の透過率と上がった後の透過率の差分の値より透過抑制液LIの透過率が算定されてもよい。所定の透過率とは、被加工材WOに照射されたレーザ光がレーザ加工装置20の外部へ漏れ出すことを防止できる程度の透過率のことである。所定の透過率は、たとえば10%/cm、5%/cm、または3%/cmである。
【0094】
コントローラ50は、透過抑制液LIの透過率が所定の透過率より大きい場合、レーザ光射出動作を開始しない、またはレーザ光射出動作を停止するようにレーザ加工装置20を制御する。またコントローラ50は、透過抑制液LIの透過率が所定の透過率より大きい場合、透過抑制液LIの透過率が所定の透過率より大きいことを表示または音によって報知するよう報知器51を制御する。
【0095】
一方、コントローラ50は、透過抑制液LIの透過率が所定の透過率以下である場合、レーザ加工装置20によるレーザ光射出動作を開始する、またはレーザ光射出動作を停止しないようレーザ加工装置20を制御する。上記におけるレーザ光射出動作は、以下のようにレーザヘッド10が加工開始位置へ移動する動作と、レーザヘッド10からレーザ光を被加工材WOへ射出する動作とを含む。
【0096】
透過抑制液LIの透過率が所定の透過率以下であると判定された場合、レーザヘッド10が加工開始位置へ移動する。レーザヘッド10の移動は、コントローラ50により制御される。具体的にはレーザヘッド10は、加工開始位置の高さ位置まで被加工材WOに向かってZ方向に下降する。
【0097】
この後、図9に示されるように、レーザ加工装置20によるレーザ加工が開始される。レーザ加工時には、レーザヘッド10から被加工材WOに向けてレーザ光が射出される。またレーザヘッド10からアシストガスが被加工材WOに向けて吹き出される。
【0098】
アシストガスの吹き出し力により、被加工材WOの加工点において透過抑制液LIが押しのけられる。これにより被加工材WOの加工点において被加工材WOの上面が透過抑制液LIから露出する。
【0099】
透過抑制液LIから露出した被加工材WOの上面にレーザ光が照射される。このレーザ光の照射により被加工材WOが加工される。これにより被加工材WOが、たとえば切断などされる。被加工材WOを切断することにより被加工材WOを貫通したレーザ光は、被加工材WOの下方に貯留された透過抑制液LIに入射する。
【0100】
レーザヘッド10から吹き出されたアシストガスは、レーザ光遮光部材7の下面と透過抑制液LIの液面との間から外部へ抜ける。このためアシストガスの吹き出しによって、レーザ光遮光部材7の下面と透過抑制液LIの液面との間においてガスの圧力が上昇することは防止される。
【0101】
レーザ加工により被加工材WOを切断した際に生じたスラッジは透過抑制液LI内に沈み、スラッジトレイ3内に溜まる。スラッジとは、たとえば溶融鉄が固まった酸化鉄の粒である。このように被加工材WOが透過抑制液LI内に浸漬された状態でレーザ加工が行なわれることにより、加工時に生じるスラッジの周囲への飛散が防止される。
【0102】
図7に示されるように、上記のレーザ加工が終了すると、レーザヘッド10が初期位置へ移動するようコントローラ50により制御される。具体的には、図1に示されるX方向可動台22が左右1対の支持台21に対してX方向に移動する。またY方向可動台23がX方向可動台22に対してY方向に移動する。またレーザヘッド10は、Y方向可動台23に対してZ方向に移動する。
【0103】
図7に示されるように、レーザヘッド10が初期位置に移動した後、透過抑制液LIの液位調整により、透過抑制液LIの液位が被加工材WOの下面よりも低い位置に調整される。これにより被加工材WOの全体は、透過抑制液LIから露出する。
【0104】
具体的にはコントローラ50は、レーザ加工終了を検出した後に、たとえば減圧バルブ33が開くように制御する。これにより液位調整タンク4内に貯留されるガスの量が減ぜられ、液位調整タンク4内に透過抑制液LIが流れ込む。このため容器1内における透過抑制液LIの液位が下がる。この際、コントローラ50は、液位検出センサー41により容器1内の透過抑制液LIの液位を検出する。コントローラ50は、容器1内の透過抑制液LIの液位が所望の液位SLになったと判断したら、減圧バルブ33を閉じるように制御する。
【0105】
容器1内の透過抑制液LIの液位が所定液位SLになった後に、被加工材WOがレーザ加工装置20から搬出される。また必要に応じて、切断パレット2およびスラッジトレイ3が容器1内から取り出される。この後、スラッジトレイ3内のスラッジが撤去される。
【0106】
以上のように本実施形態におけるレーザ加工装置20を用いたレーザ加工が行なわれる。なお上記においてはレーザ加工方法として被加工材WOを切断する方法について説明したが、レーザ加工方法はレーザ光を用いた溶接などの加工方法であってもよい。
【0107】
<本実施形態の効果>
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0108】
本実施形態においては図7に示されるように、容器1は、透過抑制液LIを貯留可能である。このため被加工材WOを加工するレーザ光は、被加工材WOを貫通した後に、透過抑制液LI内に入射される。透過抑制液LIは、レーザ光の透過を抑制する。このため、透過抑制液LI内に入射したレーザ光は透過抑制液LIにより透過を抑制される。これによりレーザ光は透過抑制液LI内で強度を減じられ、レーザ加工装置20の外部へのレーザ光の漏れ出しが防止される。
【0109】
また透過抑制液LIを容器1内に貯留するだけで、レーザ加工装置20の外部へのレーザ光の漏れ出しが防止される。このため被加工材WOの下方にレーザ光の漏れ出しを防止するための遮光部材を設置する必要がない。よって簡易な構造で、レーザ加工装置20の外部へのレーザ光の漏れ出しが防止される。
【0110】
またマシンルーム型ファイバレーザ加工装置のように容器1の全体をマシンルームで覆うことなく、レーザ光の漏れ出しが防止される。
【0111】
また透過抑制液LIは、波長が0.7μm以上10μm以下である光の透過を抑制するものであってもよい。この場合、レーザ光として波長が0.7μm以上10μm以下のレーザ光を用いると、透過抑制液LI内に入射したレーザ光は透過抑制液LIにより透過を抑制される。これによりレーザ光は透過抑制液LI内で強度を減じられ、レーザ加工装置20の外部へのレーザ光の漏れ出しが防止される。
【0112】
またレーザ光源としてファイバレーザが用いられることにより、レーザ加工における消費電力が低減され、かつ寿命が長くなる。ファイバレーザの光は炭酸ガスレーザの光(波長10.6μm)に比較して水などを透過しやすい。しかし本実施形態においては、上記のとおり透過抑制液LIが0.7μm以上10μm以下の波長を有する光の透過を抑制するため、レーザ光源としてファイバレーザが用いられてもレーザ光がレーザ加工装置20の外部へ漏れ出すことが防止される。
【0113】
また液収納部43における内部空間43aの透過率を検出する透過率検出センサー42が設けられている。これにより透過抑制液LIの透過率を検出し、レーザ光がレーザ加工装置20の外部へ漏れ出さないことを確認したうえでレーザ加工を行なうことが可能となる。
【0114】
また透過率検出センサー42により液収納部43自体の透過率を検出することもできる。透過抑制液LIの液面が低い場合の透過率を検出することで、液収納部43の汚れを検出することもでき、液収納部43の清掃や交換を促すことができる。また透過率検出センサー42における検出光の強度(射出パワー)が小さくなった場合には、検出光の強度低下を検出することもできる。
【0115】
また本実施形態においては図7に示されるように、容器1は、少なくとも載置部2cの高さ位置HLまで透過抑制液LIを貯留可能である。このため被加工材WOを貫通した後のレーザ光がレーザ加工装置20の外部へ漏れ出すことをより確実に防止することができる。
【0116】
また本実施形態においては図7に示されるように、コントローラ50は、透過率検出センサー42の検出結果に基づいて報知およびレーザ光射出動作の少なくとも一方の制御指令を発する。これにより透過抑制液LIの透過率が所定の透過率より大きい場合には、レーザ光射出動作の開始、透過率が大きい旨の報知などを実行することができる。また透過抑制液LIの透過率が所定の透過率以下である場合には、レーザ光射出動作の開始などを実行することができる。このためレーザ加工時におけるレーザ加工装置20の外部へのレーザ光の漏れ出しを確実に防止することができる。
【0117】
また本実施形態においては図3に示されるように、液収納部43は、透過抑制液LIが入る透明部分を有している。透過率検出センサー42は、発光部42aと、発光部42aから発せられ液収納部43の透明部分を透過した光を受光する受光部42bとを有している。これにより液収納部43における内部空間43aの透過率を透過率検出センサー42により検出することができる。
【0118】
また本実施形態においては図3に示されるように、液収納部43は、透過抑制液LIが入る透明部分を有している。透過率検出センサー42は、発光部42aと、発光部42aから発せられ液収納部43の透明部分を透過した光を反射する反射部42bとを有している。これにより液収納部43における内部空間43aの透過率を透過率検出センサー42により検出することができる。
【0119】
また本実施形態においては図7に示されるように、液収納部43は、載置部2cの高さ位置HLよりも下方に位置する接続部43bにて容器1に接続され、かつ接続部43bから載置部2cの高さ位置HLよりも上方へ延びている。これにより透過抑制液LIが少なくとも載置部2cの高さ位置HLまで貯留されたか否かを透過率検出センサー42により検出することが可能となる。
【0120】
また本実施形態においては図4に示されるように、液収納部43は、第1部分R1、R2と、第1部分R1、R2よりも細い第2部分R3とを有している。透過率検出センサー42は、第2部分R3でレーザ光の透過率を検出する。これにより第2部分R3に透過率の低い透過抑制液LIが入っていても、透過率検出センサー42から発せられる検出光が第2部分R3を透過しやすくなる。このため透過率検出センサー42による透過率の検出が容易となる。
【0121】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0122】
1 容器、1a 底壁、1b 側壁、1c パレット支持部、2 切断パレット、2a 第1支持板、2b 第2支持板、2c 載置部、3 スラッジトレイ、4 液位調整タンク、5 ヘッド本体、5a 本体部、5aa,5ba ガス吹出口、5ab,5bb ガス供給部、5b アウターノズル、6a 集光レンズ、7 レーザ光遮光部材、10 レーザヘッド、20 レーザ加工装置、21 支持台、22 X方向可動台、23 Y方向可動台、25 駆動機構、30 操作盤、31 供給バルブ、32 加圧バルブ、33 減圧バルブ、34 排出バルブ、35 貯液槽、36 供給配管、37 ガス配管、39 液排出配管、41 液位検出センサー、42 透過率検出センサー、42a 発光部、42b 受光部または反射部、43 液収納部、43L 横方向延在部、43V 縦方向延在部、43a 内部空間、43b 接続部、50 コントローラ、51 報知器、52 加工開始スイッチ、LI 透過抑制液、R1,R3 第1部分、R2,R3 第2部分、WO 被加工材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9