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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/20 20230101AFI20241120BHJP
   G09B 19/00 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
G06Q10/20
G09B19/00 H
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021208835
(22)【出願日】2021-12-23
(65)【公開番号】P2023093796
(43)【公開日】2023-07-05
【審査請求日】2024-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000229564
【氏名又は名称】株式会社バルカー
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】油谷 康
【審査官】永野 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-52857(JP,A)
【文献】特開2007-66263(JP,A)
【文献】特開2020-70943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G09B 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランジの締結に使用されたシール材の損傷状態と、前記シール材および前記フランジにおいて発生した不具合の問い合わせに対する回答候補と、前記損傷状態および前記回答候補の第1関連度とが関連付けられた第1関連付け情報を記憶する第1記憶部と、
前記シール材および前記フランジにおいて発生した不具合の内容と、現在の前記シール材の損傷状態とを含む問い合わせ情報の入力を受け付ける第1情報入力部と、
前記第1関連付け情報に基づいて、前記問い合わせ情報に含まれる前記損傷状態と関連付けられた複数の前記回答候補を特定する第1特定部と、
前記シール材および前記フランジの外観とプロセス条件とに関する複数の状況情報の各々について、当該状況情報と、前記回答候補と、当該状況情報と前記回答候補との第2関連度とが関連付けられた第2関連付け情報を記憶する第2記憶部と、
前記複数の状況情報の中から1以上の状況情報の入力を受け付ける状況情報入力部と、
前記第2関連付け情報に基づいて、受け付けた前記1以上の状況情報の各々に関連付けられた前記回答候補を特定する第2特定部と、
前記第1特定部により特定された複数の前記回答候補の中に、前記第2特定部により特定された前記回答候補が存在するか否かを判断する第1判断部と、
前記第1判断部の判断結果に基づいて、前記問い合わせ情報に対する回答情報を出力する出力制御部とを備える、情報処理装置。
【請求項2】
前記第1特定部により特定された複数の前記回答候補の中に前記第2特定部により特定された前記回答候補が存在する場合、前記出力制御部は、前記第2特定部により特定された前記回答候補を最終回答として選定し、前記最終回答を含む前記回答情報を出力する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記第1特定部により特定された複数の前記回答候補の中に前記第2特定部により特定された前記回答候補が2つ以上存在する場合、前記出力制御部は、当該2つ以上の前記回答候補のうち最も大きい前記第2関連度に関連付けられた回答候補を最終回答として選定し、前記最終回答を含む前記回答情報を出力する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記最終回答の正解の有無を含む評価結果の入力を受け付ける評価結果入力部と、
前記評価結果に基づいて、前記最終回答に対応する前記回答候補に関連付けられた前記第2関連度の値を設定する設定部とをさらに備える、請求項2または3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記設定部は、
前記最終回答が正解である場合、前記最終回答に対応する前記回答候補に関連付けられた前記第2関連度の値を増大し、
前記最終回答が不正解である場合、前記最終回答に対応する前記回答候補に関連付けられた前記第2関連度の値を低減する、請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記出力制御部は、前記第1特定部により特定された複数の前記回答候補のうち前記第1関連度が最も大きい回答候補を、前記問い合わせ情報に対する簡易的な回答として出力する、請求項1~5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記シール材の使用条件と、前記フランジに関する締付管理条件と、前記フランジの仕様とを含む条件情報の入力を受け付ける第2情報入力部と、
前記条件情報に基づいて、前記シール材および前記フランジの使用環境が推奨使用環境に該当するか否かを判断する第2判断部とをさらに備え、
前記使用環境が前記推奨使用環境に該当する場合に、前記第1情報入力部は、前記問い合わせ情報の入力を受け付ける、請求項1~6のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記状況情報入力部は、予め用意された前記複数の状況情報の中から、ユーザにより選択された前記1以上の状況情報の入力を受け付ける、請求項1~7のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記1以上の状況情報と前記最終回答とを含む学習用データを取得するデータ取得部と、
前記学習用データを用いて、前記1以上の状況情報から前記最終回答を推定するための学習済モデルを生成するモデル生成部とをさらに備える、請求項2または3に記載の情報処理装置。
【請求項10】
フランジの締結に使用されたシール材の損傷状態と、前記シール材および前記フランジにおいて発生した不具合の問い合わせに対する回答候補と、前記損傷状態および前記回答候補の関連度とが関連付けられた関連付け情報を記憶する記憶部と、
前記シール材および前記フランジにおいて発生した不具合の内容と、現在の前記シール材の損傷状態とを含む問い合わせ情報の入力を受け付ける情報入力部と、
前記関連付け情報に基づいて、前記問い合わせ情報に含まれる前記損傷状態と関連付けられた複数の前記回答候補を特定する特定部と、
前記特定部により特定された複数の前記回答候補のうち前記関連度が最も大きい回答候補を、前記問い合わせ情報に対する簡易的な回答として出力する出力制御部とを備える、情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、急速に発展しているデジタル技術を使って既存の生活やビジネスを変革するデジタルトランスフォーメーションが注目されている。デジタルトランスフォーメーションの実現に向けて、既存の業務における様々な事象がデータとして収集され、そのデータを利活用した新しいサービスに期待がよせられている。
【0003】
特開2019-82858号公報(特許文献1)では、情報分析装置を開示している。情報分析装置は、ユーザが入力した検索条件に従ってデータベースからデータを取得し、取得したデータを時間軸に従って整理し、特許情報と事業動向と市場情報とを含むデータが時間軸に従って整理された画面を表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-82858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、ユーザからの入力に従って様々な情報を整理および分析して、ユーザにとって有用な情報を提供する技術に対するニーズは益々高まっており、また、ユーザからの問い合わせに対して迅速かつ適切な回答が求められる。例えば、シール材やフランジに関するトラブルの問い合わせについては、技術的知識および経験が必要とされるため、知識や経験が乏しい者では即時に適切な回答ができず、特定の熟練者に頼らざるを得なかった。特に、熟練者が不在等により対応が困難な場合には、迅速かつ適切な回答をユーザに提示することができない。
【0006】
本開示のある局面における目的は、シール材およびフランジに関する不具合の問い合わせに対して、迅速かつ適切な回答を提示することが可能な情報処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ある実施の形態に従う情報処理装置は、フランジの締結に使用されたシール材の損傷状態と、シール材およびフランジにおいて発生した不具合の問い合わせに対する回答候補と、損傷状態および回答候補の第1関連度とが関連付けられた第1関連付け情報を記憶する第1記憶部と、シール材およびフランジにおいて発生した不具合の内容と、現在のシール材の損傷状態とを含む問い合わせ情報の入力を受け付ける第1情報入力部と、第1関連付け情報に基づいて、問い合わせ情報に含まれる損傷状態と関連付けられた複数の回答候補を特定する第1特定部と、シール材およびフランジの外観とプロセス条件とに関する複数の状況情報の各々について、当該状況情報と、回答候補と、当該状況情報と回答候補との第2関連度とが関連付けられた第2関連付け情報を記憶する第2記憶部と、複数の状況情報の中から1以上の状況情報の入力を受け付ける状況情報入力部と、第2関連付け情報に基づいて、受け付けた1以上の状況情報の各々に関連付けられた回答候補を特定する第2特定部と、第1特定部により特定された複数の回答候補の中に、第2特定部により特定された回答候補が存在するか否かを判断する第1判断部と、第1判断部の判断結果に基づいて、問い合わせ情報に対する回答情報を出力する出力制御部とを備える。
【0008】
好ましくは、第1特定部により特定された複数の回答候補の中に第2特定部により特定された回答候補が存在する場合、出力制御部は、第2特定部により特定された回答候補を最終回答として選定し、最終回答を含む回答情報を出力する。
【0009】
好ましくは、第1特定部により特定された複数の回答候補の中に第2特定部により特定された回答候補が2つ以上存在する場合、出力制御部は、当該2つ以上の回答候補のうち最も大きい第2関連度に関連付けられた回答候補を最終回答として選定し、最終回答を含む回答情報を出力する。
【0010】
好ましくは、情報処理装置は、最終回答の正解の有無を含む評価結果の入力を受け付ける評価結果入力部と、評価結果に基づいて、最終回答に対応する回答候補に関連付けられた第2関連度の値を設定する設定部とをさらに備える。
【0011】
好ましくは、設定部は、最終回答が正解である場合、最終回答に対応する回答候補に関連付けられた第2関連度の値を増大し、最終回答が不正解である場合、最終回答に対応する回答候補に関連付けられた第2関連度の値を低減する。
【0012】
好ましくは、出力制御部は、第1特定部により特定された複数の回答候補のうち第1関連度が最も大きい回答候補を、問い合わせ情報に対する簡易的な回答として出力する。
【0013】
好ましくは、情報処理装置は、シール材の使用条件と、フランジに関する締付管理条件と、フランジの仕様とを含む条件情報の入力を受け付ける第2情報入力部と、条件情報に基づいて、シール材およびフランジの使用環境が推奨使用環境に該当するか否かを判断する第2判断部とをさらに備える。使用環境が推奨使用環境に該当する場合に、第1情報入力部は、問い合わせ情報の入力を受け付ける。
【0014】
好ましくは、状況情報入力部は、予め用意された複数の状況情報の中から、ユーザにより選択された1以上の状況情報の入力を受け付ける。
【0015】
好ましくは、情報処理装置は、1以上の状況情報と最終回答とを含む学習用データを取得するデータ取得部と、学習用データを用いて、1以上の状況情報から最終回答を推定するための学習済モデルを生成するモデル生成部とをさらに備える。
【0016】
他の実施の形態に従う情報処理装置は、フランジの締結に使用されたシール材の損傷状態と、シール材およびフランジにおいて発生した不具合の問い合わせに対する回答候補と、損傷状態および回答候補の関連度とが関連付けられた関連付け情報を記憶する記憶部と、シール材およびフランジにおいて発生した不具合の内容と、現在のシール材の損傷状態とを含む問い合わせ情報の入力を受け付ける情報入力部と、関連付け情報に基づいて、問い合わせ情報に含まれる損傷状態と関連付けられた複数の回答候補を特定する特定部と、特定部により特定された複数の回答候補のうち関連度が最も大きい回答候補を、問い合わせ情報に対する簡易的な回答として出力する出力制御部とを備える。
【発明の効果】
【0017】
本開示に係る情報処理装置によると、シール材およびフランジに関する不具合の問い合わせに対して、迅速かつ適切な回答を提示できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】情報処理システムの全体構成を説明するための図である。
図2】情報処理サーバのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図3】情報処理システムの動作概要の一例を説明するためのシーケンス図である。
図4】ログイン画面の一例を示す図である。
図5】使用環境に関する条件情報の入力画面の一例を示す図である。
図6】問い合わせ画面の一例を示す図である。
図7】シール材およびフランジの状況情報の入力画面の一例を示す図である。
図8】回答画面の一例を示す図である。
図9】情報処理サーバにより用いられるテーブルの一例を示す図である。
図10】回答情報の生成方式の一例を説明するための図である。
図11】回答情報の生成方式の他の例を説明するための図である。
図12】情報処理サーバにより用いられるテーブルの他の例を示す図である。
図13】回答情報の生成方式の他の例を説明するための図である。
図14】回答情報の生成方式の他の例を説明するための図である。
図15】情報処理サーバの機能構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0020】
<システム構成>
図1は、情報処理システム1000の全体構成を説明するための図である。図1を参照して、情報処理システム1000は、シール材およびフランジに関する不具合の問い合わせに対する回答を提供するためのシステムである。情報処理システム1000は、情報処理サーバ(装置)10と、端末装置20と、外部サーバ30とを含む。
【0021】
本実施の形態では、端末装置20のユーザである作業者は、作業中に生じたシール材およびフランジの不具合に対する問い合わせ情報を、端末装置20を用いて情報処理サーバ10に送信する。情報処理サーバ10は、当該問い合わせ情報に対する回答を端末装置20に提供する。外部サーバ30は、情報処理サーバ10が実行する処理に用いられる各種情報を格納する。
【0022】
シール材は、一対のフランジ同士が接合する部分に挟み込まれ、フランジのボルトの締め付けによって固定されることで、フランジの隙間から流体が漏洩することを防止する。シール材は、例えば、ガスケットと称される固定用のシール材である。ガスケットは、設置される部位の隙間を封止し、その部位に密封性を持たせることが可能なシール材である。ガスケットには様々な種類が存在し、配管の使用態様に応じて適宜選択される。なお、シール材は、パッキンと称される運動用のシール材であってもよい。
【0023】
端末装置20は、情報処理サーバ10と通信可能に構成される。端末装置20は、Webページを表示するためのデータ(例えば、HTMLファイル、画像データ等)を情報処理サーバ10から受信する。具体的には、端末装置20は、情報処理サーバ10にログインするための画面を表示するためのデータ、シール材およびフランジにおいて発生した不具合の問い合わせ用のデータ入力画面を表示するためのデータ、問い合わせに対する回答画面を表示するためのデータ等を情報処理サーバ10から受信する。端末装置20で表示される画面例については後述する。
【0024】
端末装置20は、典型的には、スマートフォンであるが、これに限られず、例えば、タブレット端末装置、パーソナルコンピュータであってもよい。なお、端末装置20は、外部サーバ30と通信可能に構成されていてもよい。
【0025】
情報処理サーバ10は、端末装置20のユーザに対して各種情報を提供するための装置である。情報処理サーバ10は、単一の業者の自社サーバであってもよいし、複数の業者で共有されるシェアードサーバであってもよいし、クラウドサーバ管理会社が提供するクラウドサーバであってもよい。情報処理サーバ10は、典型的には、汎用的なコンピュータアーキテクチャに従う構造を有しており、予めインストールされたプログラムをプロセッサが実行することで、後述する各種の処理を実現する。
【0026】
外部サーバ30は、情報処理サーバ10と通信可能に構成される。外部サーバ30は、情報処理サーバ10による各種処理結果を受信して、これらをデータベース化して記憶する。あるいは、外部サーバ30は、情報処理サーバ10の処理に用いられる各種情報を記憶する。
【0027】
<ハードウェア構成>
(情報処理サーバ)
図2は、情報処理サーバ10のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図2を参照して、情報処理サーバ10は、プロセッサ101と、メモリ103と、ディスプレイ105と、入力装置107と、入出力インターフェイス(I/F)109と、通信インターフェイス(I/F)111とを含む。これらの各部は、互いにデータ通信可能に接続される。
【0028】
プロセッサ101は、典型的には、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Multi Processing Unit)等といった演算処理部である。プロセッサ101は、メモリ103に記憶されたプログラムを読み出して実行することで、情報処理サーバ10の各部の動作を制御する。プロセッサ101は、当該プログラムを実行することによって、情報処理サーバ10の各機能を実現する。
【0029】
メモリ103は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read-Only Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスクなどによって実現される。メモリ103は、プロセッサ101によって実行されるプログラム等を記憶する。
【0030】
ディスプレイ105は、例えば、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等である。ディスプレイ105は、情報処理サーバ10と一体的に構成されてもよいし、情報処理サーバ10とは別個に構成されてもよい。
【0031】
入力装置107は、情報処理サーバ10に対する操作入力を受け付ける。入力装置107は、例えば、キーボード、ボタン、マウスなどによって実現される。また、入力装置107は、タッチパネルとして実現されていてもよい。入出力インターフェイス109は、プロセッサ101と外部装置との間のデータ伝送を仲介する。
【0032】
通信インターフェイス111は、プロセッサ101と外部サーバ30および端末装置20等との間のデータ伝送を仲介する。通信インターフェイス111を介した通信は、インターネット、ワイドエリアネットワーク(WAN)、ローカルエリアネットワーク(LAN)、イーサネット(登録商標)ネットワーク、有線ネットワークまたは無線ネットワーク等、あるいは、これらの組み合わせを用いて行なわれる。
【0033】
(端末装置)
端末装置20は、後述するような情報処理を全体として提供できればよく、そのハードウェア構成については公知のものを採用することができる。例えば、端末装置20は、プロセッサと、メモリと、情報処理サーバ10と各種データを送受信するための通信インターフェイスと、ユーザからの指示を受け付けるためのタッチパネルと、各種情報を表示するためのディスプレイとを含む。
【0034】
(外部サーバ)
外部サーバ30のハードウェア構成については公知のものを採用することができる。例えば、外部サーバ30は、各種処理を実行するためのプロセッサと、プログラムやデータなどを格納するためのメモリと、情報処理サーバ10と各種データを送受信するための通信インターフェイスと、ユーザからの指示を受け付けるための入力装置とを含む。
【0035】
<動作概要>
図3は、情報処理システムの動作概要の一例を説明するためのシーケンス図である。以下では説明の便宜上、端末装置20が情報処理サーバ10から提供されたログイン画面を表示するためのデータを受信した後の処理を説明する。図4は、ログイン画面200の一例を示す図である。図5は、使用環境に関する条件情報の入力画面210の一例を示す図である。図6は、問い合わせ画面220の一例を示す図である。図7は、シール材およびフランジの状況情報の入力画面230の一例を示す図である。図8は、回答画面240の一例を示す図である。
【0036】
図3を参照して、端末装置20は、図4のログイン画面200を表示して、ユーザIDおよびパスワードの入力を受け付ける(シーケンスSQ10)。ログイン画面200は、ユーザIDの入力欄201と、パスワードの入力欄202と、次の画面に遷移するためのボタン203とを含む。ユーザは、ユーザIDを入力欄201に入力するとともに、パスワードを入力欄202に入力する。
【0037】
端末装置20は、ユーザIDおよびパスワードの入力後に、ユーザによりボタン203が選択されると、ユーザIDおよびパスワードを情報処理サーバ10に送信する(シーケンスSQ12)。
【0038】
情報処理サーバ10は、端末装置20から受信したユーザIDおよびパスワードに基づいて、端末装置20のユーザ認証を行なう(シーケンスSQ14)。情報処理サーバ10は、図5の入力画面210を表示するためのデータを端末装置20に送信する(シーケンスSQ16)。
【0039】
端末装置20は、入力画面210を表示して、ガスケットの使用条件と、ガスケットを一対のフランジ間に挟み、複数のボルトとナットで締め付ける際の締付管理条件と、フランジ仕様とを含む条件情報の入力を受け付ける(シーケンスSQ18)。入力画面210は、使用条件の入力欄211と、締付管理条件の入力欄212と、フランジ仕様の入力欄213と、次の画面に遷移するためのボタン214とを含む。
【0040】
使用条件は、使用流体、使用温度、使用圧力、シール材の品番および型番等を含む。締付管理条件は、使用期間、ボルトの材質、トルク管理の有無、増締めの有無等を含む。フランジ仕様は、フランジの材質、寸法、および座形状等を含む。ユーザは、使用条件を入力欄211に入力し、締付管理条件を入力欄212に入力し、フランジ仕様を入力欄213に入力する。
【0041】
端末装置20は、条件情報が入力された後、ユーザによりボタン214が選択されると、使用環境に関する条件情報(使用条件、締付管理条件およびフランジ仕様)を情報処理サーバ10に送信する(シーケンスSQ20)。
【0042】
情報処理サーバ10は、各種条件に基づいて、使用環境が推奨使用環境に該当するか否かを判定する(シーケンスSQ22)。具体的には、情報処理サーバ10は、使用条件が予め規定された推奨使用条件と一致するか否か、締付管理条件およびフランジ仕様が予め規定された推奨管理条件と一致するか否かを判定する。情報処理サーバ10は、使用条件が推奨使用条件と一致し、締付管理条件が推奨締付管理条件と一致し、フランジ仕様が推奨仕様と一致する場合、使用環境が推奨使用環境に該当すると判定する。そうではない場合、情報処理サーバ10は、使用環境が推奨使用環境に該当しないと判定する。
【0043】
以下の説明では、使用環境が推奨使用環境に該当するものとする。なお、使用環境が推奨使用環境に該当しない場合、情報処理サーバ10は、推奨使用環境を示す情報等を表示するためのデータを端末装置20に送信する。これにより、端末装置20のユーザは、推奨使用環境を確認することができる。
【0044】
情報処理サーバ10は、図6の問い合わせ画面220および図7の入力画面230を表示するためのデータを端末装置20に送信する(シーケンスSQ24)。なお、入力画面230を表示するためのデータは、後述するシーケンスSQ30の処理において送信される構成であってもよい。
【0045】
端末装置20は、問い合わせ画面220を表示して、不具合の内容およびガスケットの損傷状態を含む問い合わせ情報の入力を受け付ける(シーケンスSQ26)。問い合わせ画面220は、不具合の内容の選択欄221と、ガスケットの損傷状態の選択欄222と、簡易回答欄223と、次の画面に遷移するためのボタン224とを含む。ユーザは、ガスケットおよびフランジに関する不具合の内容を選択欄221からの選択し、ガスケットの損傷状態を選択欄222から選択する。なお、不具合の内容および損傷状態については一例であって、図6の内容に限定されるものではない。
【0046】
端末装置20は、ユーザにより選択欄221,222が選択されると、不具合の内容および損傷状態を含む問い合わせ情報を情報処理サーバ10に送信する(シーケンスSQ28)。図6の例では、不具合「液・ガス漏れ」および損傷状態「ガスケット非破壊」が選択されているため、これらを含む問い合わせ情報が送信される。
【0047】
情報処理サーバ10は、問い合わせ情報に基づいて、不具合の問い合わせに対する簡易回答を生成し、当該簡易回答を送信する(シーケンスSQ30)。図6の例では、情報処理サーバ10は、過去事例のデータベースを参照して、損傷状態「ガスケット非破壊」の場合に、不具合「液・ガス漏れ」が発生した多数の実際の原因のうち、最も件数の多かった原因を簡易回答として送信する。
【0048】
端末装置20は、情報処理サーバ10から受信した簡易回答を示す情報を図6の簡易回答欄223に表示する(シーケンスSQ32)。この場合、簡易回答欄223には、ガスケット非破壊の場合に液・ガス漏れが発生している原因として最も可能性の高い「締め付け不足」が表示される。
【0049】
端末装置20は、ユーザによりボタン224が選択されると、図7の状況情報の入力画面230を表示する(シーケンスSQ34)。入力画面230は、ガスケット、フランジの外観およびプロセス条件等の現場の状況の詳細(状況情報)を選択するための選択欄231と、次の画面に遷移するためのボタン232とを含む。
【0050】
選択欄231は、区分「外観」において、ガスケットの外観状況(非対称な欠損、テープ仮止め実施等)の選択欄と、フランジの外観状況(フランジ径1m以上、フランジ表面錆・傷疑い等)の選択欄とを含む。また、選択欄231は、区分「プロセス条件」において、締結プロセス(緩めて規定トルクへ調節、作業時間いつもより早い等)と、条件変更(流体変更あり、液体の染込みあり等)とを含む。
【0051】
端末装置20は、ガスケットおよびフランジの外観と、プロセス条件とを含む状況情報の入力を受け付ける(シーケンスSQ36)。具体的には、ユーザは、選択欄231に含まれる複数の状況情報の中から、使用したガスケットおよびフランジの外観状況に該当する内容とプロセス条件の状況に該当する内容とを選択する。図7の例では、「テープ仮止め実施」、「ボルト錆・変形疑い」、「緩めて規定トルクへ調節」および「稼働ON/OFFあり」が選択されている。
【0052】
端末装置20は、ユーザによりボタン232が選択されると、選択された状況情報を情報処理サーバ10に送信する(シーケンスSQ38)。情報処理サーバ10は、問い合わせ情報と、選択された状況情報とに基づいて、不具合の問い合わせ情報に対する回答情報を生成する(シーケンスSQ40)。情報処理サーバ10は、図8の回答画面240を表示するためのデータと回答情報とを端末装置20に送信する(シーケンスSQ42)。
【0053】
端末装置20は、回答画面240を表示する(シーケンスSQ44)。回答画面240は、選択された状況情報を考慮した回答欄241と、対処法の動画欄242と、推奨製品のリンク領域243と、技術資料のリンク領域244と、詳細情報に遷移するためのボタン245と、最終回答に対する評価結果を入力するためのボタン246とを含む。
【0054】
回答欄241には最終回答が表示される。動画欄242には、回答欄241に表示された原因に関連する不具合の対処法の動画が表示される。リンク領域243を選択すると、今回の不具合の発生を防ぐために推奨される製品のWebページに遷移する。リンク領域244を選択すると、今回の不具合の発生を防ぐために有用な技術資料のWebページに遷移する。ボタン245を選択すると、詳細情報が表示される。ボタン246を選択すると、回答欄241に表示された最終回答(不具合の原因)に対する評価結果を入力するための画面に遷移する。
【0055】
図8の回答欄241には、不具合の原因として「ゆるみ」が表示されており、図6の簡易回答欄223には、不具合の原因として「締め付け不足」が表示されており、それぞれの回答内容が異なっている。「ゆるみ」とは、プロセス変動によりフランジのボルトの締め付けに緩みが生じたことを示している。「締め付け不足」とは、そもそも、フランジをボルトで締め付ける際の締め付け力が不足していたことを示している。
【0056】
回答欄241の内容は、ユーザによる状況情報を考慮した回答内容であるため、簡易回答欄223の内容よりも精度が高いと考えられる。そのため、ユーザは、回答欄241に表示された不具合の原因が、実際の原因と一致しているか否かを確認する。例えば、これらが一致している場合、ユーザは、ボタン246を選択して評価入力画面(図示しない)に遷移し、回答内容が正解であるとの評価結果を入力する。一方、これらが一致していない場合、ユーザは、評価入力画面において、回答内容が不正解であるとの評価結果を入力する。端末装置20は、入力された評価結果を情報処理サーバ10に送信する。評価結果は、情報処理サーバ10が回答情報を生成する際の処理にフィードバックされる。これにより、情報処理サーバ10は、精度の高い回答情報を生成することが可能となる。
【0057】
上記の情報処理システム1000によると、シール材およびフランジの状況を入力することにより、回答者による知識に依存することなく、不具合の問い合わせに対する適切な回答が迅速に提供される。そのため、知識、技能を有する熟練者が不在の場合でも、対応に遅れが生じることがなく、事態の深刻化や重大トラブルの発生を防止できる。
【0058】
<回答情報の生成方式>
図9は、情報処理サーバ10により用いられるテーブルの一例を示す図である。図9には、不具合の内容「液・ガス漏れ」に対応するテーブル310,320が示されている。
【0059】
テーブル310は、損傷状態と、不具合が発生した原因についての回答候補と、損傷状態と回答候補との関連度R1とを関連付けた関連付け情報である。
【0060】
損傷状態「ガスケット破壊」には、回答候補「エロージョン」および「圧縮/切裂」が関連付けられ、損傷状態「ガスケット非破壊」には、回答候補「締め付け不足」,「意図せぬ片締め」および「ゆるみ」が関連付けられている。損傷状態「区別不明」には、すべての回答候補が関連付けられている。回答候補「エロージョン」,「圧縮/切裂」,「締め付け不足」,「意図せぬ片締め締め」,「ゆるみ」は、それぞれ分類A~Eに分類されている。各回答候補には関連度R1が関連付けられている。
【0061】
関連度R1は、損傷状態および回答候補がどの程度関連しているのかを示す値である。関連度R1の値が大きいほど、損傷状態と回答候補が示す原因との関連性が高いことを意味する。例えば、不具合の内容「液・ガス漏れ」において損傷状態「ガスケット破壊」である場合、回答候補「エロージョン」の関連度R1(すなわち、0.1)よりも、回答候補「圧縮/切裂」の関連度R1(すなわち、0.2)の方が大きい。そのため、不具合の内容「液・ガス漏れ」において損傷状態「ガスケット破壊」である場合、不具合の原因としては、「エロージョン」よりも「圧縮/切裂」の方が可能性が高いといえる。
【0062】
また、「ガスケット破壊」に対応する各回答候補(「エロージョン」および「圧縮/切裂」)の関連度R1の和P1は“0.3”であり、「ガスケット非破壊」に対応する各回答候補(「締め付け不足」,「意図せぬ片締め」および「ゆるみ」)の関連度R1の和P2は“0.6”であり、「区別不明」に対応する各回答候補の関連度R1の和P3は“0.1”である。和P1~P3のうち和P2が最も大きいことから、「液・ガス漏れ」の不具合の場合には、「ガスケット非破壊」の可能性が最も高いといえる。なお、本実施の形態では、和P1~P3の加算値は“1.0”になるように調整されているが、これに限られない。
【0063】
テーブル320は、複数の状況情報の各々について、当該状況情報と、回答候補(の分類)と、当該状況情報と回答候補との関連度R2とが関連付けられた関連付け情報である。関連度R2は、状況情報および回答候補がどの程度関連しているのかを示す値である。分類Aの回答候補「エロージョン」には、状況情報「非対称な欠損」,「テープ仮止め実施」,「フランジ径1m以上」および「流体変更あり(濃度・流量)」が関連付けられている。分類Bの回答候補「圧縮/切裂」には、状況情報「ペースト塗布実施」,「フランジ表面錆・傷疑い」,および「緩めて規定トルクへ調節」が関連付けられている。分類C,D,Eの回答候補「締め付け不足」,「意図せぬ片締め」,「ゆるみ」についても同様である。
【0064】
なお、テーブル310における損傷状態に関連付けられた回答候補Xの関連度R1は、テーブル320における状況情報に関連付けられた各回答候補Xの関連度R2の和と一致する。例えば、分類Aの回答候補「エロージョン」に関連付けられた状況情報「非対称な欠損」,「テープ仮止め実施」,「フランジ径1m以上」に設定された関連度R2は、それぞれ“0.01”,“0.04”,“0.04”,“0.01”である。これらの関連度の和は“0.1”であり、これは、テーブル310における回答候補「エロージョン」の関連度R1と一致する。他の分類B~Eについても同様である。ただし、関連度R1と関連度R2とは、このような関係を満たさなくてもよい。
【0065】
図10は、回答情報の生成方式の一例を説明するための図である。図10を参照して、情報処理サーバ10は、端末装置20から受信した問い合わせ情報に対応するテーブルを読み出す。図10の例では、問い合わせ情報に含まれる不具合の内容が「液・ガス漏れ」であることから、テーブル310,320が読み出される。
【0066】
情報処理サーバ10は、テーブル310に基づいて、問い合わせ情報に含まれる損傷状態「ガスケット非破壊」と関連付けられた各回答候補を特定する。この場合、回答候補「締め付け不足」,「意図せぬ片締め」および「ゆるみ」が特定される。
【0067】
情報処理サーバ10は、特定された各回答候補のうち、設定されている関連度R1が最も大きい回答候補を特定し、当該回答候補を問い合わせに対する簡易的な回答として出力する(すなわち、端末装置20に送信する)。この場合、回答候補「締め付け不足」に設定された関連度R1(すなわち、0.3)が最も大きいため、「締め付け不足」が簡易的な回答として出力される。この処理は、図3のシーケンスSQ30に対応する。
【0068】
次に、情報処理サーバ10は、テーブル320に基づいて、端末装置20から受信した各状況情報に関連付けられた回答候補を特定する。図10の例では、状況情報「ペースト塗布実施」、「フランジ径1m以上」、「作業時間がいつもより早い」および「熱サイクルあり」が受信されている。そのため、これらの状況情報に関連付けられた回答候補「圧縮/切裂」、「エロージョン」、「締め付け不足」、および「ゆるみ」が特定される。
【0069】
情報処理サーバ10は、テーブル310を用いて特定した、損傷状態と関連付けられた複数の回答候補の中に、テーブル320を用いて特定した、状況情報と関連付けられた回答候補が存在するか否かを判断する。図10の例では、情報処理サーバ10は、テーブル310を用いて特定した複数の回答候補の中に、テーブル320を用いて特定した回答候補「締め付け不足」および「ゆるみ」が存在すると判断する。
【0070】
情報処理サーバ10は、上記判断結果に基づいて、問い合わせに対する回答情報を生成し、当該回答情報を出力する。具体的には、情報処理サーバ10は、当該存在する回答候補「締め付け不足」および「ゆるみ」を問い合わせに対する最終回答として選定し、最終回答を含む回答情報を出力する。回答情報は、最終回答に関連する詳細情報および提案情報をさらに含む。
【0071】
詳細情報は、最終回答に対応する回答候補(例えば、「締め付け不足」)に関連付けられた状況情報(例えば、「作業時間がいつもより早い」)に設定されている詳細な原因(例えば、「低面圧によりクリープ緩和の発生」)を含む。例えば、詳細情報によると、作業時間がいつもより早くフランジの締め付け不足であったため、低面圧によりクリープ緩和が進んだこと、熱サイクルの変動(プロセス変動)によりガスケットが膨張・収縮したことが示唆される。そして、その結果、液・ガス漏れが発生したことが示唆される。
【0072】
提案情報は、最終回答に対応する回答候補(例えば、「締め付け不足」)に関連付けられた状況情報(例えば、「作業時間がいつもより早い」)に設定されているアドバイス情報(例えば、「締結法の確認」)を含む。
【0073】
なお、テーブル310を用いて特定した複数の回答候補の中に、テーブル320を用いて特定した回答候補が存在しない場合、情報処理サーバ10は、簡易的な回答として特定された回答候補を最終回答として出力する。
【0074】
図11は、回答情報の生成方式の他の例を説明するための図である。図11を参照して、図10と同様にテーブル310,320が読み出される。「締め付け不足」が簡易的な回答として出力される点については図10の例と同様である。
【0075】
図11の例では、情報処理サーバ10は、状況情報「テープ仮止め実施」、「フランジ表面錆・傷疑い」、「緩めて規定トルクへ調節」および「熱サイクルあり」を受信している。そのため、これらの状況情報に関連付けられた回答候補「エロージョン」、「圧縮/切裂」、および「ゆるみ」が特定される。
【0076】
図11の例では、情報処理サーバ10は、テーブル310を用いて特定した複数の回答候補の中に、テーブル320を用いて特定した回答候補「ゆるみ」が存在すると判断する。情報処理サーバ10は、特定された回答候補「ゆるみ」を問い合わせ情報に対する最終回答として選定し、最終回答を含む回答情報を出力する。このように、簡易的な回答「締め付け不足」とは異なる最終回答「ゆるみ」が出力される。
【0077】
図12は、情報処理サーバにより用いられるテーブルの他の例を示す図である。図12には、不具合の内容「異物混入」に対応するテーブル410,420が示されている。テーブル410は図9のテーブル310と同様の構造であり、テーブル420は図9のテーブル320と同様の構造である。テーブル410とテーブル310との相違点は、損傷状態と回答候補との関連度である。テーブル420とテーブル320との相違点は、状況情報と回答候補との関連度である。このように、不具合の内容に応じて「関連度」が異なることが理解される。
【0078】
図13は、回答情報の生成方式の他の例を説明するための図である。図13の例では、問い合わせ情報に含まれる不具合の内容が「異物混入」であることから、テーブル410,420が読み出される。
【0079】
情報処理サーバ10は、テーブル410に基づいて、損傷状態「ガスケット破壊」と関連付けられた回答候補「エロージョン」および「圧縮/切裂」を特定する。
【0080】
情報処理サーバ10は、特定された各回答候補のうち、設定されている関連度R1が最も大きい「圧縮/切裂」を簡易的な回答として出力する。
【0081】
次に、情報処理サーバ10は、テーブル420に基づいて、端末装置20から受信した各状況情報に関連付けられた回答候補を特定する。図13の例では、状況情報「テープ仮止め実施」、「ボルト錆・変形疑い」、「緩めて規定トルク調節」および「稼働ON/OFFあり」が受信されている。そのため、これらの状況情報に関連付けられた回答候補「エロージョン」、「締め付け不足」、「圧縮/切裂」、および「ゆるみ」が特定される。
【0082】
情報処理サーバ10は、テーブル410を用いて特定した複数の回答候補の中に、テーブル420を用いて特定した回答候補「エロージョン」および「圧縮/切裂」が存在すると判断する。
【0083】
情報処理サーバ10は、回答候補「エロージョン」および「圧縮/切裂」のうち、最も大きい関連度R2に関連付けられた回答候補を問い合わせに対する最終回答として選定し、最終回答を含む回答情報を出力する。この場合、回答候補「エロージョン」に対応する関連度R2(すなわち、0.15)の方が、「圧縮/切裂」に対応する関連度R2(すなわち、0.1)よりも高いため、「エロージョン」が最終回答として選定される。このように、関連度R2を用いて最終回答を1つに絞って出力する構成であってもよい。なお、図10の例のように、2つ以上の回答候補が存在する場合、2つ以上の回答候補を最終回答として選定する構成であってもよい。この場合には、「エロージョン」および「圧縮/切裂」が最終回答として選定される。
【0084】
詳細情報は、最終回答に対応する回答候補「エロージョン」に関連付けられた状況情報「テープ仮止め実施」に設定されている詳細な原因「テープ成分の混入」を含む。詳細情報によると、テープによるガスケットの仮止めを実施した結果、流体の流れの妨げや停留渦が誘引されてエロージョンが発生し、仮止めしたテープ成分の混入のみならず、ガスケットが破壊されたことが示唆される。
【0085】
図14は、回答情報の生成方式の他の例を説明するための図である。図14の例では、図13と同様にテーブル410,420が読み出される。
【0086】
テーブル410において、損傷状態「区別不明」にはすべての回答候補が関連付けられている。したがって、情報処理サーバ10は、回答候補を1つに絞ることができないため、「理由不明」を簡易的な回答として出力する。
【0087】
次に、情報処理サーバ10は、テーブル420に基づいて、端末装置20から受信した各状況情報に関連付けられた回答候補を特定する。図14の例では、状況情報「ボルト錆・変形疑い」、「無理な体勢で締結」、および「流体変更あり(濃度・流量)」が受信されている。そのため、これらの状況情報に関連付けられた回答候補「締め付け不足」、「意図せぬ片締め」、および「エロージョン」が特定される。
【0088】
情報処理サーバ10は、テーブル410を用いて特定した複数の回答候補の中に、テーブル420を用いて特定した回答候補「締め付け不足」、「意図せぬ片締め」、および「エロージョン」が存在すると判断する。情報処理サーバ10は、回答候補「締め付け不足」、「意図せぬ片締め」および「エロージョン」のうち、最も大きい関連度R2に関連付けられた回答候補「エロージョン」を問い合わせに対する最終回答として選定し、最終回答を含む回答情報を出力する。
【0089】
詳細情報は、最終回答に対応する回答候補「エロージョン」に関連付けられた状況情報「流体変更あり(濃度・流量)」に設定されている詳細な原因「プロセス変動により流体の濃度・流量が変化」を含む。
【0090】
<機能構成>
図15は、情報処理サーバ10の機能構成の一例を示すブロック図である。図15を参照して、情報処理サーバ10は、主たる機能構成として、第1記憶部150と、第1情報入力部152と、第1特定部154と、第2記憶部156と、状況情報入力部158と、第2特定部160と、第1判断部162と、出力制御部164と、第2情報入力部166と、第2判断部168と、評価結果入力部170と、設定部172とを含む。これらの各機能のうちの第1記憶部150および第2記憶部156以外の構成は、例えば、情報処理サーバ10のプロセッサ101がメモリ103に格納されたプログラムを実行することによって実現される。これらの機能の一部または全部はハードウェアで実現されるように構成されていてもよい。第1記憶部150および第2記憶部156は、メモリ103によって実現される。
【0091】
第1記憶部150は、フランジの締結に使用されたシール材(例えば、ガスケット)の損傷状態(例えば、図9のテーブル310の「損傷状態」)と、シール材およびフランジにおいて発生した不具合の問い合わせに対する回答候補(例えば、テーブル310の「回答候補」)と、損傷状態および回答候補の第1関連度(例えば、テーブル310の「関連度R1」)とが関連付けられた第1関連付け情報(例えば、テーブル310)を記憶する。
【0092】
第1情報入力部152は、シール材およびフランジにおいて発生した不具合の内容(例えば、図6の問い合わせ画面220の「不具合の内容」)と、現在のシール材の損傷状態(例えば、問い合わせ画面220の「損傷状態」)とを含む問い合わせ情報の入力を受け付ける(例えば、問い合わせ情報を受信する)。
【0093】
第1特定部154は、第1関連付け情報に基づいて、問い合わせ情報に含まれる損傷状態と関連付けられた複数の回答候補を特定する。例えば、第1特定部154は、損傷状態「ガスケット非破壊」と関連付けられた複数の回答候補(「締め付け不足」,「意図せぬ片締め」および「ゆるみ」)を特定する(図10参照)。
【0094】
第2記憶部156は、シール材およびフランジの外観とプロセス条件とに関する複数の状況情報(例えば、図9のテーブル320の「状況の詳細」)の各々について、当該状況情報と、回答候補(例えば、テーブル320の「分類」に対応する回答候補)と、当該状況情報と回答候補との第2関連度(例えば、テーブル320の「関連度R2」)とが関連付けられた第2関連付け情報(例えば、テーブル320)を記憶する。
【0095】
状況情報入力部158は、複数の状況情報の中から1以上の状況情報の入力を受け付ける(例えば、状況情報を受信する)。具体的には、状況情報入力部158は、予め用意された複数の状況情報の中から、ユーザにより選択された1以上の状況情報の入力を受け付ける。例えば、状況情報入力部158は、複数の状況情報の中からユーザに選択された状況情報「テープ仮止め実施」,「ボルト錆・変形疑い」,「緩めて規定トルクへ調節」および「稼働ON/OFFあり」の入力を受け付ける(図7参照)。
【0096】
第2特定部160は、第2関連付け情報に基づいて、受け付けた1以上の状況情報の各々に関連付けられた回答候補を特定する。第2特定部160は、例えば、状況情報「ペースト塗布実施」、「フランジ径1m以上」、「作業時間がいつもより早い」および「熱サイクルあり」にそれぞれ関連付けられた回答候補「圧縮/切裂」、「エロージョン」、「締め付け不足」、および「ゆるみ」を特定する(図10参照)。
【0097】
第1判断部162は、第1特定部154により特定された複数の回答候補(例えば、テーブル310に基づいて特定された、損傷状態と関連付けられた複数の回答候補)の中に、第2特定部160により特定された回答候補(例えば、テーブル320に基づいて特定された、状況情報と関連付けられた回答候補)が存在するか否かを判断する(図10参照)。
【0098】
出力制御部164は、第1判断部162の判断結果に基づいて、問い合わせ情報に対する回答情報を出力(送信)する。ある局面では、第1特定部154により特定された複数の回答候補の中に第2特定部160により特定された回答候補が存在する場合、出力制御部164は、第2特定部160により特定された回答候補を最終回答として選定する。図10の例では、テーブル310を用いて特定した複数の回答候補の中に、テーブル320を用いて特定した回答候補「締め付け不足」および「ゆるみ」が存在するため、出力制御部164は、「締め付け不足」および「ゆるみ」を最終回答として選定し、当該最終回答を含む回答情報を出力する。
【0099】
他の局面では、第1特定部154により特定された複数の回答候補の中に第2特定部160により特定された回答候補が2つ以上存在する場合、出力制御部164は、当該2つ以上の回答候補のうち最も大きい第2関連度に関連付けられた回答候補を最終回答として選定する。図13の例では、テーブル410を用いて特定した複数の回答候補の中に、テーブル420を用いて特定した2つの回答候補「エロージョン」および「圧縮/切裂」が存在するため、出力制御部164は、当該2つの回答候補のうち、最も大きい関連度R2に関連付けられた回答候補「エロージョン」を最終回答として選定し、当該最終回答を含む回答情報を出力する。
【0100】
さらに他の局面では、出力制御部164は、第1特定部154により特定された複数の回答候補のうち第1関連度が最も大きい回答候補を、問い合わせ情報に対する簡易的な回答として出力する。図10の例では、テーブル310に基づいて特定された複数の回答候補「締め付け不足」,「意図せぬ片締め」および「ゆるみ」のうち、回答候補「締め付け不足」に設定された関連度R1が最も大きい。そのため、出力制御部164は、「締め付け不足」を簡易的な回答として出力する。
【0101】
さらに他の局面では、第1特定部154により特定された複数の回答候補の中に第2特定部160により特定された回答候補が存在しない場合、出力制御部164は、簡易的な回答として選定された回答候補を最終回答として出力する。
【0102】
第2情報入力部166は、シール材の使用条件(例えば、図5の入力画面210の「使用条件」)と、フランジに関する締付管理条件(例えば、入力画面210の「締付管理条件」)と、フランジの仕様(例えば、入力画面210の「フランジ仕様」)とを含む条件情報の入力を受け付ける。
【0103】
第2判断部168は、条件情報に基づいて、シール材およびフランジの使用環境が推奨使用環境に該当するか否かを判断する。具体的には、第2判断部168は、条件情報に含まれる使用条件および締付管理条件の各々が、対応する推奨条件と一致し、かつフランジ仕様が推奨仕様と一致する場合、使用環境が推奨使用環境に該当すると判断する。そうではない場合、情報処理サーバ10は、使用環境が推奨使用環境に該当しないと判定する。ある局面では、使用環境が推奨使用環境に該当する場合に、第1情報入力部152は問い合わせ情報の入力を受け付ける。
【0104】
評価結果入力部170は、最終回答の正解の有無を含む評価結果の入力を受け付ける。設定部172は、評価結果に基づいて、最終回答に対応する回答候補に関連付けられた第2関連度の値を設定する。
【0105】
例えば、図11のように、最終回答が「ゆるみ」である場合、設定部172は、回答候補「ゆるみ」に関連付けられた関連度R2(例えば、テーブル320の分類Eの「関連度R2」)を設定する。最終回答が正解である場合、設定部172は、最終回答に対応する回答候補に関連付けられた第2関連度の値(例えば、テーブル320の分類Eの「関連度R2」)を増大する。この場合、テーブル320における、状況情報と、回答候補が示す原因との関連性が高くなる。最終回答が不正解である場合、設定部172は、最終回答に対応する回答候補に関連付けられた第2関連度の値を低減する。この場合、テーブル320における、状況情報と、回答候補が示す原因との関連性が低くなる。このように、評価結果をフィードバックすることにより、精度よく回答候補の選定をすることができる。
【0106】
<利点>
本実施の形態によると、シール材およびフランジに関する不具合の問い合わせに対して適切な回答が迅速に提供される。また、知識、技能を有する熟練者が不在の場合でも、対応に遅れが生じることがなく、事態の深刻化や重大トラブルの発生を防止できる。
【0107】
<その他の実施の形態>
(1)上述した実施の形態において、情報処理サーバ10は、端末装置20から提供されたシール材およびフランジの画像データを考慮して、問い合わせに対する回答を生成する構成であってもよい。例えば、情報処理サーバ10は、提供されたシール材の画像データと予め用意された標準画像データとを比較して、当該シール材が通常よりも大きく変色していると判断したものとする。この場合、情報処理サーバ10は、シール材の変色を考慮して最終回答を生成する。
【0108】
図9を参照して、回答候補「締め付け不足」に関連付けられた状況情報「液体の染み込みあり」の関連度と、回答候補「ゆるみ」に関連付けられた状況情報「熱サイクルあり」の関連度とは一致している。最終回答を1つのみに絞る場合、関連度のみでは回答候補「締め付け不足」および「ゆるみ」のどちらを最終回答として選定するか判断できない。ここで、熱サイクルが存在する場合には、シール材の変色が発生すると想定される。したがって、情報処理サーバ10は、シール材の変色という判断結果に基づいて、状況情報「熱サイクルあり」に関連付けられた回答候補「ゆるみ」を最終回答として選定する。
【0109】
なお、情報処理サーバ10は、シール材およびフランジの各種測定結果であるセンサデータを考慮して、最終回答を生成する構成であってもよい。
【0110】
(2)上述した実施の形態では、状況情報に設定された関連度を用いて、問い合わせに対する最終回答を生成する構成について説明したが、人工知能(AI:Artificial Intelligence)の機械学習を利用して最終回答を推定する学習済モデルを生成してもよい。例えば、情報処理サーバ10は強化学習を行なうように構成される。
【0111】
強化学習の代表的な手法として、Q学習(Q-learning)が知られている。Q学習では、時刻t+1における最もQ値の高い行動aの行動価値Qが、時刻tにおいて実行された行動aの行動価値Qよりも大きければ、行動価値Qを大きくし、逆の場合は、行動価値Qを小さくする。すなわち、時刻tにおける行動aの行動価値Qを、時刻t+1における最良の行動価値に近づけるように、行動価値関数Q(s,a)が更新される。これにより、ある環境における最良の行動価値が、それ以前の環境における行動価値に順次伝播していくようになる。
【0112】
情報処理サーバ10の学習部は、端末装置20から受信した状況情報と、問い合わせに対する最終回答とを含む学習用データを取得するデータ取得部と、学習用データを用いて、1以上の状況情報から最終回答を推定するための学習済モデルを生成するモデル生成部とを含む。モデル生成部が用いる学習アルゴリズムは教師あり学習、教師なし学習、強化学習等の公知のアルゴリズムを用いることができる。
【0113】
学習部の入力パラメータは状態変数である。本実施の形態では、状態変数は、状況情報と、最終回答とを含む。学習装置の出力パラメータは行動値である。行動値は、将来的に得られる報酬が最大になるような最終回答である。
【0114】
情報処理サーバ10は、状況情報および最終回答を学習用データとして取得する。情報処理サーバ10は、報酬基準と、状況情報および最終回答とに基づいて、報酬を増大させるか減少させるかを判断する。具体的には、報酬基準は、最終回答が正解であった場合に報酬を増大し(例えば、「+1」の報酬を与える)、不正解であった場合に報酬を低減する(例えば、「-1」の報酬を与える)ように設定される。
【0115】
情報処理サーバ10は、取得した状況情報が示す状態のときに、取得した最終回答を設定した場合に、最終回答が正解であれば報酬を増大し、不正解であれば報酬を低減する。情報処理サーバ10は、学習用データを取得する処理と、報酬を増大または低減する処理とを繰り返し実行し、生成された行動価値関数Q(s,a)を学習済モデルとしてメモリ103に記憶する。
【0116】
情報処理サーバ10は、端末装置20から状況情報を取得する。情報処理サーバ10は、メモリ103に記憶された学習済モデルに状況情報を入力することにより、最終回答を推定する。情報処理サーバ10は、推定した最終回答を端末装置20に出力する。
【0117】
(3)上述した実施の形態において、予め用意された複数の状況情報の中から、ユーザに状況情報を選択させる構成について説明したが、当該構成に限られない。ユーザは、テキスト入力または音声入力により状況情報を入力する構成であってもよい。
【0118】
(4)上述した実施の形態において、コンピュータを機能させて、上述のフローチャートで説明したような制御を実行させるプログラムを提供することもできる。このようなプログラムは、コンピュータに付属するフレキシブルディスク、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、二次記憶装置、主記憶装置およびメモリカードなどの一時的でないコンピュータ読取り可能な記録媒体にて記録させて、プログラム製品として提供することもできる。あるいは、コンピュータに内蔵するハードディスクなどの記録媒体にて記録させて、プログラムを提供することもできる。また、ネットワークを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。
【0119】
プログラムは、コンピュータのオペレーティングシステム(OS)の一部として提供されるプログラムモジュールのうち、必要なモジュールを所定の配列で所定のタイミングで呼出して処理を実行させるものであってもよい。その場合、プログラム自体には上記モジュールが含まれずOSと協働して処理が実行される。このようなモジュールを含まないプログラムも、本実施の形態にかかるプログラムに含まれ得る。また、本実施の形態にかかるプログラムは他のプログラムの一部に組込まれて提供されるものであってもよい。その場合にも、プログラム自体には上記他のプログラムに含まれるモジュールが含まれず、他のプログラムと協働して処理が実行される。このような他のプログラムに組込まれたプログラムも、本実施の形態にかかるプログラムに含まれ得る。
【0120】
(5)上述の実施の形態として例示した構成は、本発明の構成の一例であり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、一部を省略する等、変更して構成することも可能である。また、上述した実施の形態において、その他の実施の形態で説明した処理や構成を適宜採用して実施する場合であってもよい。
【0121】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0122】
10 情報処理サーバ、20 端末装置、30 外部サーバ、101 プロセッサ、103 メモリ、105 ディスプレイ、107 入力装置、109 入出力インターフェイス、111 通信インターフェイス、150 第1記憶部、152 第1情報入力部、154 第1特定部、156 第2記憶部、158 状況情報入力部、160 第2特定部、162 第1判断部、164 出力制御部、166 第2情報入力部、168 第2判断部、170 評価結果入力部、172 設定部、1000 情報処理システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15