IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バイオファイア・ダイアグノスティクス,リミテッド・ライアビリティ・カンパニーの特許一覧

特許7590954シーケンシングデータの正規化および定量化のための方法
<>
  • 特許-シーケンシングデータの正規化および定量化のための方法 図1
  • 特許-シーケンシングデータの正規化および定量化のための方法 図2
  • 特許-シーケンシングデータの正規化および定量化のための方法 図3
  • 特許-シーケンシングデータの正規化および定量化のための方法 図4
  • 特許-シーケンシングデータの正規化および定量化のための方法 図5
  • 特許-シーケンシングデータの正規化および定量化のための方法 図6A
  • 特許-シーケンシングデータの正規化および定量化のための方法 図6B
  • 特許-シーケンシングデータの正規化および定量化のための方法 図7
  • 特許-シーケンシングデータの正規化および定量化のための方法 図8A
  • 特許-シーケンシングデータの正規化および定量化のための方法 図8B
  • 特許-シーケンシングデータの正規化および定量化のための方法 図9
  • 特許-シーケンシングデータの正規化および定量化のための方法 図10
  • 特許-シーケンシングデータの正規化および定量化のための方法 図11
  • 特許-シーケンシングデータの正規化および定量化のための方法 図12
  • 特許-シーケンシングデータの正規化および定量化のための方法 図13
  • 特許-シーケンシングデータの正規化および定量化のための方法 図14
  • 特許-シーケンシングデータの正規化および定量化のための方法 図15
  • 特許-シーケンシングデータの正規化および定量化のための方法 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】シーケンシングデータの正規化および定量化のための方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6869 20180101AFI20241120BHJP
   C12Q 1/6806 20180101ALI20241120BHJP
   C12Q 1/6853 20180101ALI20241120BHJP
   C12Q 1/6855 20180101ALI20241120BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20241120BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20241120BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6806 Z
C12Q1/6853 Z
C12Q1/6855 Z
C12N15/09 Z
C12N15/11 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021506373
(86)(22)【出願日】2019-04-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 US2019028096
(87)【国際公開番号】W WO2019204588
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】62/660,460
(32)【優先日】2018-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514118217
【氏名又は名称】バイオファイア・ダイアグノスティクス,リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【弁理士】
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【弁理士】
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【弁理士】
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】ブロードベント ケイト マリエル
(72)【発明者】
【氏名】クリスプ ロバート ジョン
(72)【発明者】
【氏名】デモギネス アン ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ マシュー カム
(72)【発明者】
【氏名】ロガチェバ マルガリータ
(72)【発明者】
【氏名】スポールディング ウシャ ケー.
【審査官】林 康子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/039556(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0136951(US,A1)
【文献】Nucleic Acids Research,2015年,Vol.43, No.14, e89,pp.1-10
【文献】Nygren M. et al.,Analytical Biochemistry,2001年,Vol. 288, No. 1,pp 28-38
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/6869
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーケンシングアッセイのリード値の正規化のための方法であって:
シーケンスされるべき1または複数の未知核酸を含むサンプルを提供するステップ;
公知量の内部定量化標準を前記サンプルに添加するステップ;
前記内部定量化標準に関する最小数のシーケンシングリードを設定するステップ;
シーケンシングのために前記内部定量化標準を含むサンプルを調製するステップ、
ここで、前記の調製するステップは、前記サンプル中の前記1または複数の未知核酸および前記内部定量化標準へ、シーケンシング特異的アダプター部位およびサンプル特異的識別配列を導入するステップを含む;
シーケンシングをして前記サンプルに関するシーケンシングデータセットを生産するステップ、
ここで、前記シーケンシングデータセットは、前記1または複数の未知核酸から観察される未知核酸シーケンシングリードおよび前記内部定量化標準から観察される内部定量化標準シーケンシングリードを含む;
前記1または複数の未知核酸および前記内部定量化標準に由来する前記シーケンシングデータセット内のシーケンシングリード数をカウントするステップ;
前記シーケンシングデータセットにおいて前記内部定量化標準に関するシーケンシングリードの最小数に達したか否かを判定し、前記サンプル中に存在する前記1または複数の未知核酸の少なくとも1つを検出限界(LOD)以上で検出するために、前記シーケンシングデータセットにおいて十分なシーケンシングリード深度に達したこと判定するステップ;
前記サンプルの十分なシーケンシングリード深度に達したとの判定に応答して、正規化されたシーケンシングデータセットを提供するために、前記シーケンシングデータセットを正規化するステップ;および
前記正規化されたシーケンシングデータセットに基づいて、LODより高い濃度で前記サンプル中に存在する前記1または複数の未知核酸の少なくとも1つを定量化するステップ;または、
前記シーケンシグデータセットにおいて、前記内部定量化標準に関するシーケンシングリードの最小数に達していなかった場合には、サンプルを追加のシーケンシングに供するステップ、
を含む、
方法。
【請求項2】
請求項1の方法であって、
前記サンプル中のそれぞれの未知核酸は、約10~10コピー/mlの濃度を有する、
方法。
【請求項3】
請求項1の方法であって、
前記サンプルに添加される公知量の前記内部定量化標準は、約10~10コピー/mlの範囲内である、
方法。
【請求項4】
請求項1の方法であって、
前記シーケンシングデータセットを正規化するステップは、NORMシーケンシングリードを維持し、
ここで、NORM=シーケンシングリード数*(F/前記内部定量化標準に由来する観察されたシーケンシングリード数)であり、ここで、「F」は、前記内部定量化標準のシーケンシングリードの固定された最小期待数である、
方法。
【請求項5】
請求項4の方法であって、
ここで前記未知核酸のリードおよび前記内部定量化標準のリードは、同一の比ALPHAによってそれぞれ別個に正規化されて、ここで、ALPHA=F/前記内部定量化標準に由来する観察されたシーケンシングリード数である、
方法。
【請求項6】
請求項1の方法であって、
正規化後に前記サンプル中の前記1または複数の未知核酸の少なくとも1つのインプット量(IQT)を計算するステップをさらに含み、
ここで、前記内部定量化標準のインプット量は公知であるので、前記1または複数の未知核酸の少なくとも1つのインプット量(IQT)は、IQT=前記未知核酸に起因する未知核酸シーケンシングリードの正規化数*(内部定量化標準のインプット量/F)によって計算することができる、
方法。
【請求項7】
請求項1の方法であって、
前記サンプルを調製するステップは、サンプルを溶解させるステップ、溶解物から核酸を回収するステップであって回収された核酸を精製してもよいステップ、および、シーケンスされるべき核酸の領域内にプライマー結合部位およびサンプル特異的識別配列を導入するステップを含む、
方法。
【請求項8】
請求項7の方法であって、
前記サンプルを調製するステップは、
シーケンシングプライマー結合部位およびサンプル特異的識別配列を含むデュアルインデックスのシーケンシングオーバーハングを有する標的特異的プライマーを用いて、前記シーケンスされるべき核酸を増幅反応において増幅させるステップ、または、
前記シーケンスされるべき核酸をフラグメント化して、シーケンシングプライマー結合部位およびサンプル特異的識別配列を含むシーケンシング特異的アダプターを、前記フラグメント化された核酸にライゲーションするステップ
のうちの1つを含む、
方法。
【請求項9】
請求項8の方法であって、
前記シーケンスされるべき核酸を増幅させるステップは、
カスタムのオーバーハングを有する標的特異的プライマーを用いて第1のマルチプレックスPCR反応を行なうステップ、
第1の核酸精製を行なうステップ、
前記の第1のPCRにおいて導入された前記オーバーハングに対してアニーリングまたはライゲーションするデュアルインデックスのシーケンシングアダプタープライマーを用いて第2のPCR反応を行なうステップ、
ここで、前記のデュアルインデックスのシーケンシングアダプタープライマーは、標的非依存性であり、シーケンシングプライマー結合部位およびサンプル特異的識別配列を含む、
第2の核酸精製を行なうステップ、
を含む、
方法。
【請求項10】
請求項1の方法であって、
2以上のサンプルをプールするステップおよびそれらを同時にシーケンシングに供するステップをさらに含み、
ここで、前記2以上のサンプルは、調製後、シーケンシング前にプールされる、
方法。
【請求項11】
請求項1の方法であって、
前記シーケンシングアッセイは、次世代シーケンシングアッセイである、
方法。
【請求項12】
請求項1の方法であって、
前記シーケンシングアッセイは、
相対的な定量化を行なうステップ、前記シーケンシングアッセイとは別の反応において定量化を行なうステップ、アッセイまたはテンプレートに特異的な定量化標準を用いるステップ、または、競合テンプレートを定量化標準として用いるステップ
を含まない、
方法。
【請求項13】
請求項1の方法であって、
前記正規化されたシーケンシングデータセットに基づいて、LODより高い濃度で前記サンプル中に存在する前記1または複数の未知核酸の少なくとも1つを定量化するステップは、前記サンプルに添加された既知量の内部定量化標準、前記内部定量化標準に関してカウントされたシーケンシングリードの数、および前記1または複数の未知核酸の少なくとも1つに関してカウントされたシーケンシングリードの数を用いて濃度を定量化することを含む、
方法。
【請求項14】
請求項1の方法であって、
前記シーケンシングアッセイのためのLODは、前記サンプルに添加された既知量の内部定量化標準、および前記内部定量化標準に必要なシーケンシングリードのセットの最小数に基づく、
方法。
【請求項15】
請求項1の方法であって、
前記シーケンシングデータセットを正規化するステップは、前記サンプルについての内部定量化標準に関するシーケンシングリードの最小数に基づくシーケンシングデータセットにデータ合否基準を適用すること、およびシーケンシングアッセイにおける未知のすべての核酸に実質的に同じ検出限界(LOD)を適用すること、を含む
方法。
【請求項16】
請求項15の方法であって、
前記正規化されたシーケンシングデータは、前記内部定量標準についてカウントされたシークエンシングリードの数に対する、前記内部定量標準についてのシークエンシングリードの最小数の比によってスケーリングされる、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年4月20日に出願された米国仮特許出願No.62/660,460の利益および優先権を主張し、その全体は参照により本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
ポリヌクレオチドを含む塩基配列を解読する能力が生物学的研究に対して影響を及ぼしてきたということは誇張ではない。過去40年間の大部分、ジデオキシDNA「サンガー」シーケンシングが、多くの実験室において標準的なシーケンシング技術として用いられていて、その全盛期はヒトゲノムシーケンスの完了であった。しかしながら、サンガーシーケンシングは単一アンプリコンで行なわれるので、サンガーシーケンシングのスループットは制限され、大スケールのサンガーシーケンシングプロジェクトは高価かつ大変である。
【0003】
DNAシーケンシングの方法論は、「次世代」シーケンシング(NGS)技術の出現によって変わり、その技術は、何十万~何百万ものDNAフラグメントを並行して処理し、生産される配列の塩基あたり低コストかつ単一のシーケンシングランにおいてギガベース(Gb)~テラベース(Tb)スケールのスループットをもたらす。2001年にScienceおよびNatureが共に堂々公開した最初のヒトゲノムは、配列解析に15年を要し、30億ドル近くかかったという事実を顧みると、このことは驚くべきことである。対照的に、現代のNGSシーケンサーは、およそ1000ドルで1日に45を超えるヒトゲノムをシーケンスすることができる。結果として、今では、NGSを用いて全ゲノムの特徴を定義してそれらの間の違いを描写することができ、研究者が遺伝的変異の全範囲をより深く理解して、表現型変異におけるその役割および複雑な体質の病因を定義するのを可能にする。
【0004】
それにもかかわらず、臨床および診断用途へのNGSの適用は、ラボ内およびラボ間の変動が高いことによって制限され得る。これらの問題は、任意の結果の価値を減少させて、分子診断におけるこれらのシーケンシング方法の使用を妨げている。例えば、NGSライブラリーの調製およびシーケンシング反応の準備の複雑性および可変性は、サンプル間およびラボ間の変動をもたらし得て、このことは、例えば、サンプル中に検出される病原体または遺伝的変異の普及を決定するのを困難にさせ得る。
【0005】
別の例では、診断アッセイにおいて標的化される病原体の多くは(例えば、FilmArrayパネル、BioFire,SLC,UT)、環境中に、およびサンプル採取地の共生生物として見られる。例えば、肺炎のような疾患においては、最も頻繁に遭遇する細菌性病原体は、中咽頭管の「常在菌叢」としても存在し得て、中咽頭管はしばしば、サンプル回収部位(唾液および気管吸引液または鼻咽頭スワブ(NPS))または気管支肺胞洗浄(BAL)のようなより侵襲性の検体回収経路である。常在菌叢による頻繁な汚染またはその共回収は、そのような場合において本質的に不可避である。そのような状況では、NGSの診断力は、NGSが、シーケンシングデータにおいて検出の臨床関連性を解釈するための非常に多くの固有のコンテキストを提供することなく、高く濃縮された生物および最小限に濃縮された生物の両方の存在を検出することができる可能性(すなわち、NGSは、ほとんど無限のダイナミックレンジを有する)に起因して(例えば、NGSは、検出される病原体が臨床的に関連のある濃度で存在するかどうかについていかなる示度も提供せずに、病原体(すなわち、病原体由来の核酸)の存在および他の検出される核酸または生物に対するその相対存在量(%)を検出し得る)、臨床的に関連のある生物を共生生物または汚染から容易に区別することができないという事実によって制限され得る。
【0006】
微生物学実験における伝統的なプラクティスでは、臨床的に関連のない共生生物のキャリッジ(carriage)から細菌の病原体ロード(pathogenic loads)を区別するために、半定量的または定量的な培養を行なってきた。異なる診断力価ガイドラインが、異なるタイプの検体に関して存在する。同様の手法がNGSアッセイに対して適用されている。元来、NGSは、半定量的データを提供するので、サンプル調製誤差またはシーケンシング効率の違いのような混同因子の不存在下では、標的に関するシーケンシングリード数は、標的の多さに関連し得る。いくつかのグループが、この関連性の利点を用いて、NGSにおいて未知核酸に関する相対的定量化データを得ている。例えば、サンプル中の核酸の相対存在量は、1または複数のサンプルの一連の段階希釈(実例として、10倍希釈)を行なって、一連の希釈サンプルをシーケンスして、それから、それぞれで見られたリード数をプロットすることによって決定することができる。これらのグループは、一連の希釈サンプルにおけるリード数の間の関係が線形関係を有する場合(例えば、10倍希釈はシーケンシングリード数が約10分の1に減少して、約100倍希釈はシーケンシングリード数が100分の1に減少するなど)、シーケンシングリード数は、サンプル中に存在する異なる標的を相対的に定量化する(例えば、高濃度および低濃度の標的を相対的に定量化する)ために用いることができると仮定している。例えば、第1のシーケンスした核酸のシーケンシングリードが10であり、第2のシーケンシングリードが100である場合、このシナリオでは、第2の核酸は第1の核酸よりも10倍濃いと結論付けることができる。これを用いて、例えば、遺伝子重複を検出することができ、および/または、ゲノム中の遺伝子のコピー数を決定することができる。それにもかかわらず、この手法は単に相対的なものであり、結果として、参照として用いることのできる公知の絶対的濃度の核酸が存在しないので、第1の核酸または第2の核酸の濃度を決定することができない。結果として、この手法はそれほど正確ではない。例えば、高濃度と低濃度の検出の間の違いが大きい場合(例えば、数桁)、低濃度および/または高濃度における分解能が失われ得て、本当の違いと比べて、高低間に倍数差(fold difference)の低下をもたらす。この手法はまた、単に相対的なだけであり、サンプル/シーケンシングラン特異的であり、ラボ内およびラボ間の変動を説明するものではないという事実に起因して、それほど具体的なものではない。
【0007】
定量化するための別の一般的な手法は、NGSに関して用いられるサンプル中の核酸を別個の反応において定量化することである。例えば、定量的PCR(qPCR)は、しばしば検量線手法を用いて、絶対的定量化のために機能することができる。この手法では、公知量の単一の参照テンプレートに対するリアルタイムPCRから得られたクロッシングポイント(Cp)の値をプロットすることによって作成される検量線は、目的サンプル中の同一の標的遺伝子の量を推定するために用いることのできる回帰直線を提供する。参照テンプレートの段階希釈(実例として、10倍希釈)は、定量化される必要のある特定の遺伝子標的を含むサンプルと一緒に設定される。様々な別個の反応が行われて、それは通常、各レベルの参照標的に関する反応と、目的サンプルに関するそれぞれの反応である。また、アッセイ特異的なPCR効率の差は定量化にしばしば影響するので、別個の参照テンプレートを用いた別個の検量線が、異なる遺伝子標的に関して設定され得る。
【0008】
しかしながら、NGSの力は、その大規模な並行処理にあり-すなわち、10s~100s~1000sのサンプル(10s to 100s to 1000s of samples)を同時かつ並行して処理することができる。標的を定量化するためにqPCRを用いることは、このシナリオでは挑戦であり得る。別個の核酸反応物の100s~1000sの標的の定量化がqPCRを用いて実施されているが(例えば、High-Throughput Droplet Digital PCR System for Absolute Quantitation of DNA Copy Number,Hindson et al.,Anal Chem.2011 Nov 15;83(22):8604-8610を参照)、この手法は技術的に挑戦であり、特別な設備を必要とする。また、qPCR手法は一般に、シングルプレックスおよびマルチプレックスの反応においてアッセイが同一のPCR効率を有すると仮定し、またはそれを必要とするが、そういうことはないであろう。さらに、現在までに公表されている検量線に基づく定量化手法は全て、外部の反応および検量線の計算をセットアップすることを要する。
【0009】
NGSにおいて核酸を定量するための別の手法は、アッセイ特異的な競合テンプレートを用いる(例えば、US2015/0292001を参照)。そのような方法は、ネイティブの標的配列のために特に設計したそれぞれの競合内部増幅コントロールに対する、ネイティブの標的配列の比例関係に依拠することによって、サンプル中の核酸コピー数の測定において再現性を与えることを目的としている。US2015/0292001に記載される競合テンプレートは、ネイティブの目的核酸テンプレートと同一のプライミング部位であるが、PCR反応におけるネイティブ標的のカイネティクスに似せてPCR効率における標的特異的な変動について制御するように設計された(例えば、人工の)プライマー間配列を用いる。しかしながら、結果として、そのような手法はアッセイおよび目的テンプレートに特異的である(すなわち、競合テンプレートは、標的およびサンプルに特異的である)。US2015/0292001に記載される方法を用いるためには、新しいアッセイおよび/またはシーケンスされるべきテンプレートのそれぞれについて新しい競合内部増幅コントロールを設計する必要があり、そのことは、この手法の一般的適用性を制限する。さらに、標的は一般に、標的+競合テンプレートのシーケンシング応答から標的のシーケンシング応答のみをデコンヴォルーションするために、競合テンプレートとともにおよび伴わずにシーケンスされる必要がある。このことは、この手法の複雑レベルを上げ、計算に誤差を生じさせる潜在性を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、NGSに関する普遍的な内部定量化標準および関係がある定量化方法が、当該分野において必要とされている。患者サンプルからの核酸の精製がNGSのワークフローに組み込まれるので、核酸抽出におけるサンプル由来(driven)の可変性の効果、および、PCR(したがって定量化)に対する任意のサンプル由来のインヒビターの効果を、外部検量線によって簡単に概算することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、複数の標的種の同時の定量化を提供することができて、シーケンシング成果におけるアッセイ特異的およびマトリックス由来の分散の効果も考慮する、普遍的な内部標準に関する方法、システム、およびキットを提供する。標準は、普遍的な標準であるので、標的、サンプル、またはアッセイに特異的でなく、したがって、本明細書中に記載の標準、方法、およびキットは、任意のシーケンシングアッセイ(例えば、NGSアッセイ)において用いることができる。本開示はまた、アッセイ特異的な補正のためのプロセスコントロールおよび/または検出限界(LOD)コントロール(単数または複数)の使用を教示する。
【0012】
本開示の一態様では、シーケンシングアッセイのリード値の正規化のための方法が開示される。当該方法は、シーケンスされるべき1または複数の未知核酸を含むサンプルを提供するステップ;公知量の内部定量化標準(IQS)をサンプルに添加するステップ;シーケンシングのために内部定量化標準を含むサンプルを調製するステップ;シーケンシングをしてサンプルに関するシーケンシングデータセットを生産するステップ(ここでシーケンシングデータセットは、未知核酸(単数または複数)および内部定量化標準から観察されるシーケンシングリードを含む);未知核酸(単数または複数)および内部定量化標準に由来するシーケンシングデータセット内のシーケンシングリード数をカウントするステップ;およびシーケンシングデータセットを正規化するステップを含み、ここで正規化は、(1)サンプルに関する内部定量化標準に関する最小数のシーケンシングリードの存在に基づいて、データ合否基準をシーケンシングデータセットに適用し(例えば、シーケンシングリードの正規化数が維持される)および(2)実質的に同一の検出限界(LOD)がシーケンシングアッセイにおいて全ての未知核酸に適用されるのを確実にする。一実施態様では、シーケンシングのために内部定量化標準を含むサンプルを調製するステップは、シーケンシングプライマー結合部位およびサンプル特異的識別配列を、サンプル中の未知核酸および内部定量化標準に導入するステップを含んでよい。別の実施態様では、シーケンシングのために内部定量化標準を含むサンプルを調製するステップは、サンプル中の細胞の溶解、溶解物からの核酸の回収、核酸精製、オーバーハングを有する標的特異的プライマーを用いた第1のマルチプレックスPCR、第2の核酸精製、サンプル特異的シーケンシングアダプタープライマーを用いた第2のマルチプレックスPCR、第3の核酸精製、および、複数の同様に調製されたサンプルをシーケンシングのためにプールするステップのうちの1つまたは複数を含んでよい。標準は、サンプル調製の最初に添加されるので、標準は全てのステップを通して保有されて(carried)、体系的な喪失および効率が全てのステップについて説明される(accounted for)。
【0013】
一実施態様では、サンプル中のそれぞれの未知核酸は、約0~1013コピー/mlの濃度を有してよく、-すなわち、場合によっては、未知核酸は存在しなくてよく(0コピー/ml)、または、未知核酸の濃度は非常に高くてもよい(例えば、1013コピー/mlまで)。典型的なサンプルでは、未知核酸の濃度は、約10~10コピー/mlの範囲であってよい。一実施態様では、サンプルに加えられるIQSの公知量とは、約10~10コピー/mlの範囲内である(例えば、約5×10コピー/ml)。検出限界(LOD)に応じて、または(LOD)に影響を与えるために、より多いIQSまたはより少ないIQSがサンプルに加えられてよい。一実施態様では、1つのタイプのIQSがサンプルに加えられてよい。別の実施態様では、2以上の参照点を用いて検量線が定量化のために作成され得るように、2以上のタイプのIQSが、異なるインプット濃度でサンプルに添加されてよい。
【0014】
一実施態様では、サンプルに添加された内部定量化標準の量と、内部定量化標準に関するシーケンシングリード数との間に、線形関係が好ましくは存在してよい。すなわち、内部定量化標準に起因するシーケンシングリード数は、内部定量化標準のインプット量と等しくなくてよいが、リード数はインプット量に線形で関係すべきである。関係が線形でないならば、それは、添加する内部定量化標準、サンプル調製、またはシーケンシングの1つまたは複数に問題があることの示度として解釈され得る。
【0015】
一実施態様では、正規化は、シーケンシングリードの正規化数(NORM)を維持し、ここで、NORM=シーケンシングリード数*(F/内部定量化標準に由来する観察されたシーケンシングリード数)である。「F」は、固定された、IQSシーケンシングリードの最小期待数を定義するユーザー設定の正規化係数である。一実施態様では、Fの値は、アッセイ特異的であってよい。「F」は、シーケンシングアッセイの検出限界(LOD)に十分なシーケンシングリード深度を確実にするように設定されたシーケンシングリード数の値である。NORMは、シーケンシングデータのサブセットを表わしてよく、さらなる分析および定量化のために保存されるシーケンシングリードの数である。例えば、内部定量化標準に由来する観察されたシーケンシングリード数が「F」と同じならば、NORMは、記録されるシーケンシングリード数と等しい。一方で、データセット内の内部定量化標準のシーケンシングリードの数が「F」よりも大きいならば、NORMは、データを縮小させて(downscale)、オーバーリード(over read)を説明して(account for)、同一のLODが全てのサンプルにわたって適用されるのを確実にする。データセット内の内部定量化標準のシーケンシングリードの数が「F」未満ならば、そのサンプル由来のデータは却下され得る。一実施態様では、データは、関係ALPHAによって正規化されてよく、ここで未知核酸のリードおよび内部定量化標準のリードは、同一の比ALPHAによってそれぞれ別個に正規化されて、ここで、ALPHA=F/内部定量化標準に由来する観察されたシーケンシングリード数である。
【0016】
一実施態様では、シーケンシングリード深度は、約1000の内部定量化標準シーケンシングリード~約100,000の内部定量化標準シーケンシングリードの範囲内、好ましくは約2000の内部定量化標準シーケンシングリード~約75,000の内部定量化標準シーケンシングリード、より好ましくは約5000の内部定量化標準シーケンシングリード~約50,000の内部定量化標準シーケンシングリード、または、最も好ましくは少なくとも5000の内部定量化標準シーケンシングリードである。もし、「F」よりも少ないシーケンシングリードが内部定量化標準に対して記録されたら、不十分な「F」リード数と関連するサンプルに関するデータは却下されてよい。
【0017】
一実施態様では、当該方法は、正規化後にサンプル中の未知核酸のインプット量(IQT)を計算するステップを含んでよく、ここで、内部定量化標準のインプット量は公知であるので、未知核酸のインプット量(IQT)は、IQT=未知核酸に起因する未知核酸シーケンシングリードの正規化数*(内部定量化標準のインプット量/F)によって計算することができる。一実施態様では、当該方法は、IQTn=「nth」未知核酸に起因する未知「n」核酸シーケンシングリードの正規化数*(内部定量化標準のインプット量/F)として、正規化後、サンプル中の、存在するならば複数の未知核酸のインプット量(IQTi、IQTj、IQTk・・・IQTn)を計算することにより、サンプル中の2以上の未知核酸のインプット量を計算するステップを含んでよい。
【0018】
一実施態様では、2以上のサンプルは、それらをシーケンシングに供する前にプールされてよい。一実施態様では、サンプルは、個々のサンプルがシーケンシングのために調製された後、実際のシーケンシングの前に、プールされてよい。一実施態様では、2~1000サンプルが、調製後、シーケンシング前にプールされてよく、好ましくは2~500サンプルが、調製後、シーケンシング前にプールされてよく、より好ましくは2~100サンプルが、調製後、シーケンシング前にプールされてよく、より好ましくは2~50サンプルが、調製後、シーケンシング前にプールされてよく、または最も好ましくは2~32サンプルが、調製後、シーケンシング前にプールされてよい。シーケンシングのためにプールされ得るサンプルの数は、一般に、生じるデータ内のサンプル間を区別する能力によってのみ制限される。例えば、プール内のサンプルは、特異的なサンプルに由来するシーケンシングデータを特定するために用いられるサンプル特異的シーケンシングアダプタープライマーによって区別され得る。この例では、区別は、シーケンシングアダプタープライマーの長さおよび多様性によって制限され得る。
【0019】
一実施態様では、それぞれのプールされたサンプルは、サンプル特異的識別配列の独特なセットをそれと関連付けていて、それにより、プール内の各サンプル由来のシーケンシングデータを区別および分離することができる。一実施態様では、それぞれのプールされたサンプルは、サンプル特異的識別配列の独自の独特なセットと関連付けられた独自の内部定量化標準を有し、ここで、正規化は、プール内の各サンプルに別個に適用される。一実施態様では、正規化は、別個に、(1)データ合否基準をプール内の各サンプルに適用して、(2)実質的に同一の検出限界(LOD)がそれぞれのサンプル中の全ての未知核酸に適用されるのを確実にする。
【0020】
一実施態様では、当該方法は、各サンプルに起因するデータが正規化された後に、それぞれのサンプル中の未知核酸のインプット量(IQT)を計算するステップを含んでよい。各サンプルにおける内部定量化標準のインプット量は公知なので、未知核酸のインプット量(IQT)を計算することができる。プールされたサンプル中の複数の未知核酸のインプット量(IQTi、IQTj、IQTk・・・IQTn)は、IQTn=「nth」未知核酸に起因する未知「n」核酸シーケンシングリードの正規化数*(内部定量化標準のインプット量/F)として正規化後に計算することができる。
【0021】
一実施態様では、シーケンシングのためにサンプル(単数または複数)を調製するステップは、溶解物を産生するためのサンプル溶解、溶解物からの核酸の回収(回収された核酸を精製してもよい)、および、シーケンスされるべき核酸の領域にプライマー結合部位およびサンプル特異的識別配列を導入するステップを含んでよい。付着は、シーケンシングプライマー結合部位およびサンプル特異的識別配列を含むデュアルインデックスのシーケンシングオーバーハングを有する標的特異的プライマーを用いて増幅反応においてシーケンスされるべき核酸を増幅させるステップ、または、シーケンスされるべき核酸をフラグメント化して、シーケンシングプライマー結合部位およびサンプル特異的識別配列を含むシーケンシング特異的アダプターを、フラグメント化された核酸にライゲーションするステップ、のうちの1つを含んでよい。
【0022】
一実施態様では、シーケンスされるべき核酸を増幅させるステップは、カスタムのオーバーハングを有する標的特異的プライマーを用いて第1のマルチプレックスPCR反応を行なうステップ、第1の核酸精製を行なうステップ、第1のPCRにおいて導入されたカスタムのオーバーハングにアニーリングまたはライゲーションするデュアルインデックスのシーケンシングアダプタープライマーを用いて第2のPCR反応を行なうステップ、および第2の核酸精製を行なうステップを含んでよい。一実施態様では、デュアルインデックスのシーケンシングアダプタープライマーは、標的非依存性であり、シーケンシングプライマー結合部位およびサンプル特異的識別配列を含む。
【0023】
一実施態様では、増幅は、シーケンスされるべきサンプル中の核酸の濃度のダイナミックレンジの上限を制限または圧縮する(compress)ように行なわれてよい。このことは、シーケンシングおよびデータ分析の負荷を減少させ得て、非常に高く濃縮された核酸のみがシーケンシングデータセット内に現れる事例の数を減少させ得る。一実施態様では、増幅は、所望のダイナミックレンジよりも高い濃度で存在する核酸の増幅をプラトーにするように、第1のマルチプレックスPCR反応におけるサイクル数または標的特異的プライマーの濃度の1つまたは複数を制限することを含んでよく、例としては、圧縮が行われて、核酸のダイナミックレンジを約10コピー/mlのプラトー濃度まで圧縮させてよく、一方で、10コピー未満/mlで存在する核酸は、指数増幅段階の濃度範囲で存在する。他の実施態様では、増幅は、ダイナミックレンジの他の部分を限定または圧縮するために用いられ得る。例えば、シーケンシングアッセイにおいて高い濃度種のみが興味対象ならば、より高い濃度の核酸(例えば、>10コピー/ml)のみが観察されるように増幅を制限してよい。
【0024】
任意の前述の方法の実施態様では、シーケンシングアッセイは次世代シーケンシングアッセイであってよい。
【0025】
別の態様では、定量的な次世代シーケンシング(NGS)アッセイを行なうための方法が開示される。当該方法は、シーケンスされるべき1または複数の未知核酸を含むサンプルを提供するステップ(ここで、未知核酸は約0~1013コピー/mlの濃度を有する);サンプルに公知量のIQSを添加するステップ(ここで、公知量のIQSは、(アッセイの目的とされるダイナミックレンジに応じて)約10~10コピー/mlの範囲内である;シーケンシングのために内部定量化標準を含むサンプルを調製するステップ;サンプル中の未知核酸および内部定量化標準をシーケンシングしてシーケンシングデータを生産するステップ;未知核酸(単数または複数)および内部定量化標準に由来するシーケンシングデータセット内のシーケンシングリード数をカウントするステップ;およびシーケンシングデータセットを正規化するステップおよび 中の未知核酸のインプット量(IQT)を、IQT=未知核酸に由来する未知核酸シーケンシングリードの正規化数*(内部定量化標準のインプット量/F)によって計算するステップ(ここで、「F」は、内部定量化標準のシーケンシングリードの固定された最小期待数である)を含む。
【0026】
一実施態様では、正規化するステップは、シーケンシングリードの正規化数(NORM)を維持するステップを含んでよく、ここで、NORM=シーケンシングリード数*(F/内部定量化標準に由来する観察されたシーケンシングリード数)である。正規化は、別個に、(1)アッセイにおける各サンプルにデータ合否基準を適用して、(2)実質的に同一の検出限界(LOD)がそれぞれのサンプル中の全ての未知核酸に適用されるのを確実にする。
【0027】
一実施態様では、未知核酸は、約10~1012コピー/mlまたは、好ましくは、約10~10コピー/mlの濃度を有してよい。一実施態様では、「F」はアッセイのLODに関連する。例えば、約10コピー/mlのIQSのインプット濃度に関して「F」が約10~10ならば、サンプル中の未知核酸に関するLODは約10~10コピー/mlである。同一インプット濃度のIQSに関して「F」が約10~10ならば(すなわち、リード深度が増大して、各リードのウエイト(weight)が相応して増大する)、サンプル中の未知核酸に関するLODは約10~10コピー/mlである。所定のインプット濃度のIQSに関して、リード深度を増大または低減させることにより(すなわち、「F」の程度を増大または低減させることにより)、および、相応して、それぞれの個々のシーケンシングリードに起因するウエイトを増大または低減させることにより、LODを強める(raised)または弱める(lowered)ことができる。
【0028】
一実施態様では、定量的次世代シーケンシング(NGS)アッセイを実施するための方法は、サンプル中の、存在するならば複数の未知核酸のインプット量(IQTi、IQTj、IQTk・・・IQTn)を、IQTn=「nth」未知核酸に起因する未知「n」核酸シーケンシングリードの正規化数*(内部定量化標準のインプット量/F)として計算するステップを含んでよい。
【0029】
一実施態様では、定量的次世代シーケンシング(NGS)アッセイを実施するための方法は、2以上のサンプルをプールするステップおよびそれらをシーケンシングに同時に供するステップを含んでよく、ここで、2以上のサンプルは、調製後、シーケンシング前にプールされる。一実施態様では、それぞれのプールされたサンプルは、サンプル特異的識別配列の独特なセットをそれと関連付けていてよく、それにより、プール内の各サンプル由来のシーケンシングデータを区別および分離することができる。一実施態様では、それぞれのプールされたサンプルは、サンプル特異的識別配列の独自の独特なセットと関連付けられた独自の内部定量化標準を有してよく、ここで、定量化は、プール内の各サンプル由来の各核酸に別個に適用される。上記の1つのサンプル中の複数の核酸と同じように、正規化および定量化を、複数のサンプル中の複数の核酸に適用することができる。当該方法は、プールされたサンプル中の複数の未知核酸のインプット量(IQTi、IQTj、IQTk・・・IQTn)を、IQTn=「nth」未知核酸に起因する未知「n」核酸シーケンシングリードの正規化数*(内部定量化標準のインプット量/F)として計算するステップを含む。
【0030】
一実施態様では、定量的次世代シーケンシング(NGS)アッセイを実施するための方法は、シーケンスされるべきアッセイ特異的なポジティブコントロールのセットを提供するステップを含んでよく、ここで、ポジティブコントロールは、アッセイにおいてシーケンスされる1または複数の未知核酸のそれぞれに対応するポジティブコントロールを含む。一実施態様では、定量的次世代シーケンシング(NGS)アッセイを実施するための方法は、アッセイ特異的なポジティブコントロールのシーケンスリード数に基づいて、アッセイ特異的な補正因子を1または複数の未知核酸のそれぞれに適用するステップを含んでよい。PCR増幅の効率が完全でない場合、または、標的および内部標準の効率が異なる場合、補正因子は、反応にインプットされるポジティブコントロールの量に依存し得る。したがって、一実施態様では、ポジティブコントロールの量は、対応する標的の目的とするダイナミックレンジの中間であるべきである。
【0031】
さらに別の態様では、次世代シーケンシング(NGS)アッセイにおいて未知核酸を正規化および定量化するためのキットが記載される。当該キットは、内部定量化標準(IQS)(ここでIQSとは、シーケンスされるべき未知核酸を含むサンプルに公知量で添加されるように構成された核酸である);ならびに、シーケンシングデータセットを正規化するためおよび未知核酸のインプット量を計算するための、IQSの使用に関する説明書を含んでよい。一実施態様では、当該キットは、未知核酸の定量化のための検量線を作成するために異なる公知濃度で加えられるIQSのセットを含んでよい。一実施態様では、キットに提供されるIQSは、約10~10コピー/mlの範囲内でサンプルに加えられるように構成され得るが;IQS(単数または複数)の量は、検出範囲の上限および下限を膨張または圧縮させるために増大または低減され得る。一実施態様では、内部定量化標準を用いて、シーケンシングリードの正規化数(NORM)を維持するようにシーケンシングデータが正規化されて(ここで、NORM=シーケンシングリード数*(F/内部定量化標準に由来する観察されたシーケンシングリード数)であり、「F」は、内部定量化標準のシーケンシングリードの固定された最小期待数である)、そして、内部定量化標準を用いて、IQT=未知核酸に由来する未知核酸シーケンシングリードの正規化数*(内部定量化標準のインプット量/F)によって未知核酸のインプット量(IQT)が計算される。
【0032】
一実施態様では、当該キットは、シーケンシングアダプター部位およびサンプル特異的識別配列を含む、少なくとも内部定量化標準に関するシーケンシング特異的アダプターをさらに含む。一実施態様では、当該キットは、内部定量化標準の増幅およびシーケンシング特異的アダプターに対するアニーリングまたはライゲーションのために構成されたカスタムのオーバーハングを有する標的特異的プライマーをさらに含んでよい。
【0033】
さらに別の態様では、コンパレーター試験を行なうための方法が記載される。コンパレーター試験を実施するための方法は:1または複数の標的核酸のシングルまたはマルチプレックスの増幅および検出を含む第1のアッセイを提供するステップ(第1のアッセイは、ある検出限界(LOD)を有する)、および、第1のアッセイの検出およびLODを確認するために、第1のアッセイとは異なる第2のアッセイを提供するステップを含んでよい。第2のアッセイは、第1のアッセイと少なくとも同一のLODを有するべきであるが、より低いLODを有してもよい。1つまたは複数の実施態様では、第2のアッセイは:シーケンシングのために少なくとも1つの内部定量化標準を含むサンプルを調製するステップ;シーケンシングをしてサンプルに関するシーケンシングデータセットを生産するステップ(ここで、シーケンシングデータセットは、標的核酸(単数または複数)および内部定量化標準から観察されるシーケンシングリードを含む);標的核酸(単数または複数)および内部定量化標準に由来するシーケンシングデータセットにおけるシーケンシングリード数をカウントするステップ;およびシーケンシングデータセットを正規化するステップ(ここで正規化は、(1)サンプルに関する内部定量化標準に関する最小数のシーケンシングリードの存在に基づいて、データ合否基準をシーケンシングデータセットに適用して、(2)実質的に同一の検出限界(LOD)がシーケンシングアッセイにおいて全ての未知核酸に適用されることを確実にする)、を含んでよく、ここで、第2のアッセイのLODは、第1のアッセイのLODと実質的に同じである。
【0034】
一実施態様では、第1のアッセイは、定性的分子診断アッセイであってよい。別の実施態様では、第1のアッセイは、半定量的分子診断アッセイであってよい。一実施態様では、第1のアッセイは、1つまたは複数の内部定量化標準をサンプルに添加するステップ、および、定量的2ステップ増幅を実施するステップをさらに含んでよい。一実施態様では、定量的2ステップ増幅は:第1段階のマルチプレックス増幅混合物においてサンプルを増幅させるステップ(ここで増幅混合物は、複数の標的プライマーおよび少なくとも1つの定量化標準プライマーペアを含み、各標的プライマーペアはサンプル中に存在し得る異なる標的を増幅するように構成されて、定量化標準プライマーペアは内部定量化標準核酸を増幅するように構成される)、第1段階の増幅混合物を複数の第2段階の個々の反応に分割するステップ(ここで、複数の第2段階の個々の反応の第1のグループは、サンプル中に存在し得る異なる標的の1つをさらに増幅するように構成された少なくとも1つのプライマーペアをそれぞれ含み、複数の第2段階の個々の反応の第2のグループは、内部定量化標準核酸の1つをさらに増幅するように構成された少なくとも1つのプライマーペアをそれぞれ含む)、および、複数の第2段階の個々の反応を、1つまたは複数の標的アンプリコンおよび複数の定量化標準アンプリコンを産生する増幅条件に供するステップ(それぞれの定量化標準アンプリコンは、関係がある定量化標準クロッシングポイント(Cp)を有し、ここで、それぞれの標的核酸はあるCpを有し、それぞれの内部標準は第1のアッセイにおける公知の濃度および公知の定量化標準Cpを有する)を含んでよい。
【0035】
一実施態様では、当該方法は:第1のアッセイにおける2以上の定量化標準のクロッシングポイント(Cp)から検量線を作成するステップ;および、検量線を用いて1または複数の標的核酸のそれぞれを定量化するステップをさらに含んでよい。一実施態様では、標的核酸のそれぞれは、
log10(濃度)=(Cp-b)/a
にフィットされた最小二乗法の回帰直線を用いて作成された検量線を用いて第1のアッセイにおいて定量化されてよく、
ここでCpは、各標的に関して測定されたクロッシングポイントであり、b(切片)は、標的のlog10(濃度)がゼロの場合のCp値を表わし、aは傾きであり、濃度における単一単位(single unit)の変化によってCpが変化する程度を表わす。
【0036】
一実施態様では、第2のアッセイは、NORMシーケンシングリードを維持するようにシーケンシングデータセットを正規化するステップをさらに含んでよく、ここで、NORM=シーケンシングリード数*(F/内部定量化標準に由来する観察されたシーケンシングリード数)である。一実施態様では、第2のアッセイにおける核酸は、サンプル中のそれぞれの標的核酸のインプット量(IQT)を、IQT=標的核酸に由来する標的核酸シーケンシングリードの正規化数*(内部定量化標準のインプット量/F)によって計算することにより定量化され得て、ここで「F」は、内部定量化標準のシーケンシングリードの固定された最小期待数である。同一の原理が、サンプル中の複数の未知核酸のインプット濃度の計算に当てはまる。サンプル中の、存在するならば複数の標的核酸のインプット量(IQTi、IQTj、IQTk・・・IQTn)は、IQTn=「nth」未知核酸に起因する未知「n」核酸シーケンシングリードの正規化数*(内部定量化標準のインプット量/F)として計算され得る。
【0037】
一実施態様では、第2のアッセイにおける「F」は、第2のアッセイの検出限界(LOD)に関連してよい。第2のアッセイのLODは、第1のアッセイのLODと実質的に同一であるように選択される。一実施態様では、「F」は、アッセイのLODに関連する。例えば、約10コピー/mlのIQSのインプット濃度に関して「F」が約10ならば、サンプル中の未知核酸に関するLODは約10コピー/mlである。同一のインプット濃度のIQSに関して「F」が約10ならば(すなわち、リード深度が増大して、各リードのウエイトが相応して増大する)、サンプル中の未知核酸に関するLODは約10コピー/mlである。所定のインプット濃度のIQSに関して、リード深度を増大または低減させることにより(すなわち、「F」の程度を増大または低減させることにより)、および、相応して、それぞれの個々のシーケンシングリードに起因するウエイトを増大または低減させることにより、LODを強める(raised)または弱める(lowered)ことができる。
【0038】
一実施態様では、コンパレーター試験を実施するための方法は、2以上のサンプルをプールするステップおよびそれらをシーケンシングに同時に供するステップを含んでよく、ここで、2以上のサンプルは、調製後、シーケンシング前にプールされる。一実施態様では、それぞれのプールされたサンプルは、サンプル特異的識別配列の独特なセットをそれと関連付けていてよく、それにより、プール内の各サンプル由来のシーケンシングデータを区別および分離することができる。一実施態様では、それぞれのプールされたサンプルは、サンプル特異的識別配列の独自の独特なセットと関連付けられた独自の内部定量化標準を有してよい。1つのサンプル中の複数の核酸で上述したように、正規化および定量化は、複数のプールされたサンプル中の複数の核酸に適用され得る。当該方法は、プールされたサンプル中の複数の未知核酸のインプット量(IQTi、IQTj、IQTk・・・IQTn)を、IQTn=「nth」未知核酸に起因する未知「n」核酸シーケンシングリードの正規化数*(内部定量化標準のインプット量/F)として計算するステップを含む。
【0039】
任意の前述の実施態様において、本明細書中に記載されるシーケンシングアッセイ、方法、およびキットは、相対的定量化を行なうステップを含まない。すなわち、本明細書中に記載されるシーケンシングアッセイ、方法、およびキットは、公知濃度の内部定量化標準を含むので、未知の相対的濃度を決定するためにシーケンシングリードの相対数または検出された核酸の相対存在量に依拠する必要がない。
【0040】
任意の前述の実施態様において、本明細書中に記載されるシーケンシングアッセイ、方法、およびキットは、シーケンシングアッセイとは別の反応において定量化を行なうステップを含まない。すなわち、本明細書中に記載されるシーケンシングアッセイ、方法、およびキットは、公知濃度の内部定量化標準を含むので、シーケンシング反応における核酸のインプット濃度を決定するために別の別個の反応(例えばqPCR)を実施する必要がない。
【0041】
任意の前述の実施態様において、本明細書中に記載されるシーケンシングアッセイ、方法、およびキットは、アッセイまたはテンプレートに特異的な定量化標準を用いるステップを含まない。すなわち、本明細書中に記載されるシーケンシングアッセイ、方法、およびキットは、特定のアッセイまたは特定の標的のために設計された標準に依拠する代わりに、任意のシーケンシングアッセイ(例えばNGSアッセイ)における複数の標的種の同時の定量化を提供することができる、普遍的な内部標準を含む。
【0042】
任意の前述の実施態様において、本明細書中に記載されるシーケンシングアッセイ、方法、およびキットは、競合テンプレートを定量化標準として用いるステップを含まない。一般に、競合テンプレートは、アッセイまたはテンプレートに特異的な定量化標準の特定のタイプである。しかしながら、新しい競合内部増幅コントロールが、それぞれの新しいアッセイおよび/またはシーケンスされるべきテンプレートのために設計される必要がある。その代わりに、本明細書中に記載されるシーケンシングアッセイ、方法、およびキットは、任意のシーケンシングアッセイ(例えばNGSアッセイ)における複数の標的種の同時の定量化を提供することのできる普遍的な内部標準を含む。
【0043】
本明細書において記載されるのは:
A1.シーケンシングアッセイのリード値の正規化のための方法であって、以下のステップを含む:
シーケンスされるべき1または複数の未知核酸を含むサンプルを提供するステップ;
公知量の内部定量化標準をサンプルに添加するステップ;
シーケンシングのために内部定量化標準を含むサンプルを調製するステップ(ここで、調製するステップは、サンプル中の未知核酸および内部定量化標準へ、シーケンシング特異的アダプター部位およびサンプル特異的識別配列を導入するステップを含む);
シーケンシングをしてサンプルに関するシーケンシングデータセットを生産するステップ(ここで、シーケンシングデータセットは、未知核酸(単数または複数)および内部定量化標準から観察されるシーケンシングリードを含む);
未知核酸(単数または複数)および内部定量化標準に由来するシーケンシングデータセット内のシーケンシングリード数をカウントするステップ;および
シーケンシングデータセットを正規化するステップ(ここで正規化は、(1)サンプルに関する内部定量化標準に関する最小数のシーケンシングリードの存在に基づいて、データ合否基準をシーケンシングデータセットに適用して、(2)実質的に同一の検出限界(LOD)がシーケンシングアッセイにおいて全ての未知核酸に適用されることを確実にする)。
【0044】
A2.条項A1の方法であって、サンプル中のそれぞれの未知核酸は、約0~1013コピー/ml(例えば、約10~10コピー/ml)の濃度を有する。
【0045】
A3.条項A1または条項A2の少なくとも1つの方法であって、サンプルに添加される公知量の内部定量化標準は、約10~10コピー/ml(例えば、約10~10コピー/ml)の範囲内である。
【0046】
A4.条項A1~A3の1つまたは複数の方法であって、サンプルに添加される内部定量化標準の公知量と、内部定量化標準に関するシーケンシングリード数との間に、線形関係が存在する。
【0047】
A5.条項A1~A4のいずれか1つまたは複数の方法であって、シーケンシングデータセットを正規化するステップは、NORMシーケンシングリードを維持し、ここで、NORM=シーケンシングリード数*(F/内部定量化標準に由来する観察されたシーケンシングリード数)であり、ここで「F」は、内部定量化標準のシーケンシングリードの固定された最小期待数である。
【0048】
A6.条項A1~A5のいずれか1つまたは複数の方法であって、ここで「F」は、シーケンシングアッセイのLODに十分なシーケンシングリード深度を確実にするように設定されたシーケンシングリード数の値である。
【0049】
A7.条項A1からA6のいずれか1つまたは複数の方法であって、シーケンシングリード深度は、約1000の内部定量化標準シーケンシングリード~約100,000の内部定量化標準シーケンシングリードの範囲内、好ましくは約2000の内部定量化標準シーケンシングリード~約75,000の内部定量化標準シーケンシングリード、より好ましくは約5000の内部定量化標準シーケンシングリード~約50,000の内部定量化標準シーケンシングリード、または最も好ましくは少なくとも5000の内部定量化標準シーケンシングリードである。
【0050】
A8.条項A1~A7のいずれか1つまたは複数の方法であって、未知核酸のリードおよび内部定量化標準のリードは、同一の比ALPHAによってそれぞれ別個に正規化されて、ここで、ALPHA=F/内部定量化標準に由来する観察されたシーケンシングリード数である。
【0051】
A9.条項A1~A8のいずれか1つまたは複数の方法であって、正規化後にサンプル中の未知核酸のインプット量(IQT)を計算するステップをさらに含み、ここで、内部定量化標準のインプット量は公知なので、未知核酸のインプット量(IQT)は、IQT=未知核酸に起因する未知核酸シーケンシングリードの正規化数*(内部定量化標準のインプット量/F)によって計算することができる。
【0052】
A10.条項A1~A9のいずれか1つまたは複数の方法であって、IQTn=「nth」未知核酸に起因する未知「n」核酸シーケンシングリードの正規化数*(内部定量化標準のインプット量/F)として、正規化後、サンプル中の、存在するならば複数の未知核酸のインプット量(IQTi、IQTj、IQTk・・・IQTn)を計算するステップをさらに含む。
【0053】
A11.条項A1~A10のいずれか1つまたは複数の方法であって、サンプルを調製するステップは、サンプル溶解、溶解物から核酸を回収するステップであって回収された核酸を精製してもよいステップ、および、シーケンスされるべき核酸の領域内にプライマー結合部位およびサンプル特異的識別配列を付着させるステップ 導入するステップを含む。
【0054】
A12.条項A1~A11のいずれか1つまたは複数の方法であって、付着させるステップは、
シーケンシングプライマー結合部位およびサンプル特異的識別配列を含むデュアルインデックスのシーケンシングオーバーハングを有する標的特異的プライマーを用いて、シーケンスされるべき核酸を増幅反応において増幅させるステップ、または
シーケンスされるべき核酸をフラグメント化して、シーケンシングプライマー結合部位およびサンプル特異的識別配列を含むシーケンシング特異的アダプターを、フラグメント化された核酸にライゲーションするステップ
のうちの1つを含む。
【0055】
A13.条項A1~A12のいずれか1つまたは複数の方法であって、シーケンスされるべき核酸を増幅させるステップは、
カスタムのオーバーハングを有する標的特異的プライマーを用いて第1のマルチプレックスPCR反応を行なうステップ、
第1の核酸精製を行なうステップ、
第1のPCRにおいて導入されたオーバーハングに対してアニーリングまたはライゲーションするデュアルインデックスのシーケンシングアダプタープライマーを用いて第2のPCR反応を行なうステップ(ここで、デュアルインデックスのシーケンシングアダプタープライマーは、標的非依存性であり、シーケンシングプライマー結合部位およびサンプル特異的識別配列を含む)、
第2の核酸精製を行なうステップ、
を含む。
【0056】
A14.条項A1~A13のいずれか1つまたは複数の方法であって、約10コピー/mlよりも高い濃度で存在する核酸の増幅をプラトーにするように、および指数増幅段階において約10コピー未満/mlの核酸を保存するように、第1のマルチプレックスPCR反応におけるサイクル数または標的特異的プライマーの濃度の1または複数を制限するステップをさらに含む。
【0057】
A15.条項A1~A14のいずれか1つまたは複数の方法であって、2以上のサンプルをプールするステップおよびそれらを同時にシーケンシングに供するステップをさらに含み、ここで、2以上のサンプルは、調製後、シーケンシング前にプールされる。
【0058】
A16.条項A1~A15のいずれか1つまたは複数の方法であって、2~1000サンプルが、調製後、シーケンシング前にプールされて、好ましくは2~500サンプルが、調製後、シーケンシング前にプールされて、より好ましくは2~100サンプルが、調製後、シーケンシング前にプールされて、より好ましくは2~50サンプルが、調製後、シーケンシング前にプールされて、または最も好ましくは、2~32サンプルが、調製後、シーケンシング前にプールされる。
【0059】
A17.条項A1~A16のいずれか1つまたは複数の方法であって、それぞれのプールされたサンプルは、サンプル特異的識別配列の独特なセットをそれと関連付けていて、それにより、プール内の各サンプル由来のシーケンシングデータを区別および分離することができる。
【0060】
A18.条項A1~A17のいずれか1つまたは複数の方法であって、それぞれのプールされたサンプルは、サンプル特異的識別配列の独自の独特なセットと関連付けられた独自の内部定量化標準を有し、ここで、正規化は、プール内の各サンプルに別個に適用される。
【0061】
A19.条項A1~A18のいずれか1つまたは複数の方法であって、正規化は、別個に、(1)プール内の各サンプルにデータ合否基準を適用して、(2)実質的に同一の検出限界(LOD)がそれぞれのサンプル中の全ての未知核酸に適用されるのを確実にする。
【0062】
A20.条項A1~A19のいずれか1つまたは複数の方法であって、正規化後に、プールされたサンプル中の複数の未知核酸のインプット量(IQTi、IQTj、IQTk・・・IQTn)を、IQTn=「nth」未知核酸に起因する未知「n」核酸シーケンシングリードの正規化数*(内部定量化標準のインプット量/F)として計算するステップをさらに含む。
【0063】
A21.条項A1~A20のいずれか1つまたは複数の方法であって、シーケンシングアッセイは、次世代シーケンシングアッセイである。
【0064】
A22.条項A1~A21のいずれか1つまたは複数の方法であって、シーケンシングアッセイは、相対的定量化を行なうステップを含まない。
【0065】
A23.条項A1~A22のいずれか1つまたは複数の方法であって、シーケンシングアッセイは、シーケンシングアッセイとは別の反応において定量化を行なうステップを含まない。
【0066】
A24.条項A1~A23のいずれか1つまたは複数の方法であって、シーケンシングアッセイは、アッセイまたはテンプレートに特異的な定量化標準を用いるステップを含まない。
【0067】
A25.条項A1~A24のいずれか1つまたは複数の方法であって、シーケンシングアッセイは、競合テンプレートを定量化標準として用いるステップを含まない。
【0068】
B1.定量的な次世代シーケンシング(NGS)アッセイを行なうための方法であって、以下のステップを含む:
シーケンスされるべき1または複数の未知核酸を含むサンプルを提供するステップ;
公知量の内部定量化標準をサンプルに添加するステップ;
シーケンシングのために内部定量化標準を含むサンプルを調製するステップ;
サンプル中の未知核酸および内部定量化標準をシーケンシングしてシーケンシングデータを生産するステップ;
未知核酸(単数または複数)および内部定量化標準に由来するシーケンシングデータセット内のシーケンシングリード数をカウントするステップ;および
シーケンシングデータセットを正規化するステップおよび 中の未知核酸のインプット量(IQT)を、IQT=未知核酸に由来する未知核酸シーケンシングリードの正規化数*(内部定量化標準のインプット量/F)によって計算するステップ(ここで「F」は、内部定量化標準のシーケンシングリードの固定された最小期待数である)。
【0069】
B2.条項B1の方法であって、サンプル中のそれぞれの未知核酸は、約0~1013コピー/ml(例えば、約10~10コピー/ml)の濃度を有する。
【0070】
B3.条項B1または条項B2の少なくとも1つの方法であって、サンプルに添加される公知量の内部定量化標準は、約10~10コピー/mlの範囲内である(例えば、約10~10コピー/ml)。
【0071】
B4.条項B1~B3のいずれか1つまたは複数の方法であって、NORM=シーケンシングリード数*(F/内部定量化標準に由来する観察されたシーケンシングリード数)によってシーケンシングデータセットを正規化するステップをさらに含む。
【0072】
B5.条項B1~B4のいずれか1つまたは複数の方法であって、正規化は、別個に、(1)アッセイにおける各サンプルにデータ合否基準を適用して、(2)実質的に同一の検出限界(LOD)が、一緒にプールされた複数のサンプルにわたってそれぞれのサンプル中の全ての未知核酸に適用され、複数のユーザー、日数などにわたって用いられるのを確実にする。
【0073】
B6.条項B1~B5のいずれか1つまたは複数の方法であって、未知核酸は、約10~1010コピー/mlまたは、好ましくは、約10~10コピー/mlの濃度を有する。
【0074】
B7.条項B1~B6のいずれか1つまたは複数の方法であって、「F」は、NGSアッセイの検出限界(LOD)に関連し、ここで「F」が約1×10~5×10ならば、未知核酸に関するLODは約10~10コピー/mlである。
【0075】
B8.条項B1~B7のいずれか1つまたは複数の方法であって、「F」は、NGSアッセイの検出限界(LOD)に関連し、ここで「F」が約1×10~5×10ならば、未知核酸に関するLODは約10~10コピー/mlである。
【0076】
B9.条項B1~B8のいずれか1つまたは複数の方法であって、サンプル中の、存在するならば複数の未知核酸のインプット量(IQTi、IQTj、IQTk・・・IQTn)を、IQTn=「nth」未知核酸に起因する未知「n」核酸シーケンシングリードの正規化数*(内部定量化標準のインプット量/F)として計算するステップをさらに含む。
【0077】
B10.条項B1~B9のいずれか1つまたは複数の方法であって、2以上のサンプルをプールするステップおよびそれらを同時にシーケンシングに供するステップをさらに含み、ここで、2以上のサンプルは、調製後、シーケンシング前にプールされる。
【0078】
B11.条項B1~B10のいずれか1つまたは複数の方法であって、それぞれのプールされたサンプルは、サンプル特異的識別配列の独特なセットをそれと関連付けていて、それにより、プール内の各サンプル由来のシーケンシングデータを区別および分離することができる。
【0079】
B12.条項B1~B11のいずれか1つまたは複数の方法であって、それぞれのプールされたサンプルは、サンプル特異的識別配列の独自の独特なセットと関連付けられた独自の内部定量化標準を有し、ここで、定量化は、プール内の各サンプル由来の各核酸に別個に適用される。
【0080】
B13.条項B1~B12のいずれか1つまたは複数の方法であって、プールされたサンプル中の複数の未知核酸のインプット量(IQTi、IQTj、IQTk・・・IQTn)を、IQTn=「nth」未知核酸に起因する未知「n」核酸シーケンシングリードの正規化数*(内部定量化標準のインプット量/F)として計算するステップをさらに含む。
【0081】
B14.条項B1~B13のいずれか1つまたは複数の方法であって、シーケンスされるべきアッセイ特異的なポジティブコントロールのセットをサンプル中に提供するステップをさらに含み、ここで、ポジティブコントロールは、アッセイにおいてシーケンスされる1または複数の未知核酸のそれぞれに対応するポジティブコントロールを含む。
【0082】
B15.条項B1~B14のいずれか1つまたは複数の方法であって、アッセイ特異的なポジティブコントロールのシーケンシングに基づいて、1または複数の未知核酸のそれぞれに対してアッセイ特異的な補正因子を適用するステップをさらに含む。
【0083】
B16.条項B1~B15のいずれか1つまたは複数の方法であって、定量的NGSアッセイを実施するステップは、相対的定量化を行なうステップを含まない。
【0084】
B17.条項B1~B16のいずれか1つまたは複数の方法であって、定量的NGSアッセイを実施するステップは、シーケンシングアッセイとは別の反応において定量化を行なうステップを含まない。
【0085】
B18.条項B1~B17のいずれか1つまたは複数の方法であって、定量的NGSアッセイを実施するステップは、アッセイまたはテンプレートに特異的な定量化標準を用いるステップを含まない。
【0086】
B19.条項B1~B18のいずれか1つまたは複数の方法であって、定量的NGSアッセイを実施するステップは、競合テンプレートを定量化標準として用いるステップを含まない。
【0087】
C1.次世代シーケンシング(NGS)アッセイにおいて未知核酸を正規化および定量化するためのキットであって、以下を含むキット:
内部定量化標準(ここで内部定量化標準は、シーケンスされるべき未知核酸を含むサンプルに公知量で添加されるように構成された核酸である);および
シーケンシングデータセットを正規化するためおよび未知核酸のインプット量を計算するための、内部定量化標準の使用に関する説明書、
ここで、内部定量化標準は、約10~10コピー/mlの範囲内でサンプルに添加されるように構成され、
ここで、内部定量化標準を用いて、シーケンシングデータは、NORM=シーケンシングリード数*(F/内部定量化標準に由来する観察されたシーケンシングリード数)によって正規化されて、ここで「F」は、内部定量化標準のシーケンシングリードの固定された最小期待数であり、および
ここで、内部定量化標準を用いて、未知核酸のインプット量(IQT)は、IQT=未知核酸に由来する未知核酸シーケンシングリードの正規化数*(内部定量化標準のインプット量/F)によって計算される。
【0088】
C2.条項C1のキットであって、シーケンシングプライマー結合部位およびサンプル特異的識別配列を含む、少なくとも内部定量化標準に関するシーケンシング特異的アダプターをさらに含む。
【0089】
C3.条項C1または条項C2の少なくとも1つのキットであって、内部定量化標準の増幅のためおよびシーケンシング特異的アダプターに対するアニーリングまたはライゲーションのために構成されたカスタムのオーバーハングを有する標的特異的プライマーをさらに含む。
【0090】
C4.条項C1~C3の少なくとも1つのキットであって、2以上の内部定量化標準をさらに含み、ここで、2以上の内部定量化標準のそれぞれは、未知核酸の定量化のための検量線を作成するために、異なる公知濃度でサンプルに添加されるように構成される。
【0091】
D1.コンパレーター試験を行なうための方法であって、以下のステップを含む:
1または複数の標的核酸のマルチプレックスの増幅および検出を含む第1のアッセイを提供するステップ(第1のアッセイは、ある検出限界(LOD)を有する);
第1のアッセイの検出およびLODを確認するために、第1のアッセイとは異なる第2のアッセイを提供するステップ、
ここで第2のアッセイは、以下を含む:
シーケンシングのために少なくとも1つの内部定量化標準を含むサンプルを調製するステップ;
シーケンシングをしてサンプルに関するシーケンシングデータセットを生産するステップ(ここで、シーケンシングデータセットは、標的核酸(単数または複数)および内部定量化標準から観察されるシーケンシングリードを含む);
標的核酸(単数または複数)および内部定量化標準に由来するシーケンシングデータセットにおけるシーケンシングリード数をカウントするステップ;および
シーケンシングデータセットを正規化するステップ(ここで正規化は、(1)サンプルに関する内部定量化標準に関する最小数のシーケンシングリードの存在に基づいて、データ合否基準をシーケンシングデータセットに適用して、(2)実質的に同一の検出限界(LOD)がシーケンシングアッセイにおいて全ての未知核酸に適用されることを確実にし、ここで、第2のアッセイのLODは、第1のアッセイのLODと実質的に同じである)。
【0092】
D2.条項D1の方法であって、第1のアッセイは、サンプルに1つまたは複数の内部定量化標準を添加するステップ、および、サンプルに対して定量的な2ステップの増幅を行なうステップをさらに含み、定量的な2ステップの増幅は、以下のステップを含む:
第1段階のマルチプレックス増幅混合物においてサンプルを増幅させるステップ(ここで増幅混合物は、複数の標的プライマーおよび少なくとも1つの定量化標準プライマーを含み、各標的プライマーはサンプル中に存在し得る異なる標的を増幅するように構成されて、定量化標準プライマーは内部定量化標準核酸を増幅するように構成される)、
第1段階の増幅混合物を複数の第2段階の個々の反応に分割するステップ(複数の第2段階の個々の反応の第1のグループは、サンプル中に存在し得る異なる標的の1つをさらに増幅するように構成された少なくとも1つのプライマーをそれぞれ含み、複数の第2段階の個々の反応の第2のグループは、内部定量化標準核酸の1つをさらに増幅するように構成された少なくとも1つのプライマーをそれぞれ含む)、および
複数の第2段階の個々の反応を、1つまたは複数の標的アンプリコンおよび複数の定量化標準アンプリコンを産生する増幅条件に供するステップ(それぞれの定量化標準アンプリコンは、関係がある定量化標準Cpを有する)、
ここで、それぞれの標的核酸は、あるクロッシングポイント(Cp)を有し、それぞれの内部標準は第1のアッセイにおける公知の濃度および公知の定量化標準Cpを有する。
【0093】
D3.条項D1または条項D2の少なくとも1つの方法であって:
定量化標準Cpから検量線を作成するステップ;および
検量線を用いて1または複数の標的核酸のそれぞれを定量化するステップ
をさらに含む。
【0094】
D4.条項D1~D3のいずれか1つまたは複数の方法であって、標的核酸のそれぞれは、以下にフィットされた最小二乗法の回帰直線を用いて作成される検量線を用いて定量化される:
log10(濃度)=(Cp-b)/a
ここでCpは、各標的に関して測定されたクロッシングポイントであり、
b(切片)は、標的のlog10(濃度)がゼロの場合のCp値を表わし、および
aは傾きであり、濃度における単一単位の変化によってCpが変化する程度を表わす。
【0095】
D5.条項D1~D4のいずれか1つまたは複数の方法であって、第2のアッセイにおいて、NORM=シーケンシングリード数*(F/内部定量化標準に由来する観察されたシーケンシングリード数)によって、シーケンシングデータセットを正規化するステップをさらに含む。
【0096】
D6.条項D1~D5のいずれか1つまたは複数の方法であって、IQT=標的核酸に由来する標的核酸シーケンシングリードの正規化数*(内部定量化標準のインプット量/F)によって、サンプル中の各標的核酸のインプット量(IQT)を計算するステップ、ここで「F」は、内部定量化標準のシーケンシングリードの固定された最小期待数である。
【0097】
D7.条項D1~D6のいずれか1つまたは複数の方法であって、「F」は第2のアッセイの検出限界(LOD)に関連し、ここで第2のアッセイのLODは、第1のアッセイのLODと実質的に同一であるように選択される。
【0098】
D8.条項D1~D7のいずれか1つまたは複数の方法であって、「F」が約1×10~5×10ならば、第2のアッセイにおける標的核酸(単数または複数)の検出に関するLODは、約10~10コピー/mlである。
【0099】
D9.条項D1~Dのいずれか1つまたは複数の方法であって、「F」が約1×10~5×10ならば、第2のアッセイにおける標的核酸(単数または複数)の検出に関するLODは、約10~10コピー/mlである。
【0100】
D10.条項D1~D9のいずれか1つまたは複数の方法であって、サンプル中の、存在するならば複数の標的核酸のインプット量(IQTi、IQTj、IQTk・・・IQTn)を、IQTn=「nth」未知核酸に起因する未知「n」核酸シーケンシングリードの正規化数*(内部定量化標準のインプット量/F)として計算するステップをさらに含む。
【0101】
D11.条項D1~D10のいずれか1つまたは複数の方法であって、第2のアッセイにおいて2以上のサンプルをプールするステップおよびそれらを同時にシーケンシングに供するステップをさらに含み、ここで、2以上のサンプルは、調製後、シーケンシング前にプールされる。
【0102】
D12.条項D1~D11のいずれか1つまたは複数の方法であって、それぞれのプールされたサンプルは、サンプル特異的識別配列の独特なセットをそれと関連付けていて、それにより、プール内の各サンプル由来のシーケンシングデータを区別および分離することができる。
【0103】
D13.条項D1~D12のいずれか1つまたは複数の方法であって、それぞれのプールされたサンプルは、サンプル特異的識別配列の独自の独特なセットと関連付けられた独自の内部定量化標準を有し、ここで、定量化は、プール内の各サンプル由来の各核酸に別個に適用される。
【0104】
D14.条項D1~D13のいずれか1つまたは複数の方法であって、プールされたサンプル中の複数の未知核酸のインプット量(IQTi、IQTj、IQTk・・・IQTn)を、IQTn=「nth」未知核酸に起因する未知「n」核酸シーケンシングリードの正規化数*(内部定量化標準のインプット量/F)として計算するステップをさらに含む。
【0105】
D15.条項D1~D14のいずれか1つまたは複数の方法であって、定量化標準核酸および標的核酸は全て、同様の増幅効率およびシーケンシング効率を有する。
【0106】
D16.条項D1~D15のいずれか1つまたは複数の方法であって、第2のアッセイは、次世代シーケンシングアッセイである。
【0107】
D17.条項D1~D16のいずれか1つの方法であって、第2のアッセイは、相対的定量化を行なうステップを含まない、
【0108】
D18.条項D1~D17のいずれか1つの方法であって、第2のアッセイは、シーケンシングアッセイとは別の反応において定量化を行なうステップを含まない、
【0109】
D19.条項D1~D18のいずれか1つの方法であって、第2のアッセイは、アッセイまたはテンプレートに特異的な定量化標準を用いるステップを含まない、
【0110】
D20.条項D1~D19のいずれか1つの方法であって、第2のアッセイは、競合テンプレートを定量化標準として用いるステップを含まない。
【0111】
コンパレーター試験を実施するための方法の任意の前述の実施態様において、第2のアッセイは次世代シーケンシングアッセイであってよい。
【0112】
この要約は、簡略化された形態での概念の選択を紹介するために提供され、それらは図面および詳細な説明において以下にさらに詳述される。この要約は、特許請求の範囲に記載された要旨の重要な特徴または本質的な特徴を特定することを意図せず、また、特許請求の範囲に記載された要旨の範囲を決定するのを助けるものとして用いられることも意図しない。
【0113】
さらなる特徴および利点が、以下の説明において示され、一部はその説明に基づいて明らかになり、または、本発明の実施によって学習され得る。これらのおよび他の特徴は、以下の説明および添付の特許請求の範囲によってより完全に明らかになり、または、以下に記載される本発明の実施によって学習され得る。
【0114】
本発明の上記および他の利点および特徴を得ることのできる様式を説明するために、簡単に上述された本発明のより具体的な説明が、添付の図面において説明されるそれらの具体的な実施態様を参照することによって与えられる。これらの図面は本発明の典型的な実施態様を示しているだけであること、およびしたがって、その範囲を限定するものと考えるべきでないことを理解して、本発明は、以下の付随する図面の使用を介してさらに具体的かつ詳細に記載および説明される。
【図面の簡単な説明】
【0115】
図1】本発明の一実施態様に係る、柔軟なパウチを示す。
図2】本発明の例示の実施態様に係る、図1のパウチを含んでいる、図1のパウチとともに使用するための機器の分解斜視図を、一緒になって形成する。
図3】本発明の例示の実施態様に係る、図2のブラダーコンポーネントを含む図2の機器の部分的横断面図を示し、図1のパウチは破線で示される。
図4図2の機器の1つの実例的な実施態様において用いられるモーターを示す。
図5】4つの異なる予期される(prospective)合成の定量化標準の5つの希釈にわたるCpを示す。
図6A図5と似ているが、定量化標準のうちの3つについてのみデータを示す。
図6B】3つの定量化標準の全てからのデータを用いた単一の曲線を示す。
図7】3つの定量化標準から作成された曲線とともにプロットされたA.baumanniiに関する検量線を示す。x軸は反応内に含まれるA.baumanniiまたは定量化標準の量であり、y軸はCpである。
図8A】A.baumanniiに特異的な外部検量線および定量化標準からの混成の(composite)検量線(補正なし)を示す。
図8B】アッセイ特異的な補正因子を用いた、図8Aと同一のデータを示す。
図9】3つのサンプルA、B、およびCに関する仮定のシーケンシングデータセットを説明する。
図10】プールされたサンプルセットに関する生のシーケンシングカウントを示す。
図11図10のプールされたサンプルセット内のサンプルあたりの内部定量化標準(本明細書中でQSMとも呼ばれる)フラグメントカウントを示す。
図12】シーケンシングデータセットをビニング(binning)および正規化するための2つの代替方法を説明する。
図13】シーケンシングサンプル調製のワークフローの一例を説明する。
図14】唾液サンプルの集団中の細菌および/またはウイルスのロード分布を示す。
図15】シーケンシング反応のダイナミックレンジを保存するための方法を説明するPCR増幅曲線を示し、ここで反応は、高コピーの標的がプラトー相に存在し、低コピーの標的が指数増幅段階に存在するように設定および停止される。
図16】アッセイによるバッチポジティブコントロール(PC)定量化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0116】
例示の実施態様が、付随する図面に関して以下に説明される。多くの異なる形態および実施態様が、本開示の主旨および教示から逸脱せずに可能であり、したがって、本開示は本明細書中に示される例示の実施態様に制限されると解釈されるべきでない。むしろ、これらの例示の実施態様は、本開示が徹底的かつ完全なものとなり、本開示の範囲を当業者に伝えるように提供される。図面において、層および領域のサイズおよび相対的サイズは、明確性のために誇張され得る。同様の参照番号は、説明全体を通じて同様のエレメントを指す。
【0117】
別段の定義がされない限り、本明細書中で用いられる全ての用語(技術的用語および科学的用語を含む)は、本開示が関連する分野における通常の知識を有する者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。一般に用いられる辞書において定義される用語のような用語は、本出願および関連分野のコンテキストにおけるそれらの意味と一貫した意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書中に明白にそのように定義されていない限り、理想化されたまたは過剰に形式的な意味で解釈されるべきではないことがさらに理解されよう。本明細書中、本発明の説明において用いられる専門用語は、特定の実施態様を説明する目的のみのものであり、本発明を制限することを意図しない。本明細書中に記載されるものと同様または同等の複数の方法および材料を、本開示の実施において用いることができるが、特定の例示的な材料および方法のみが本明細書において記載される。
【0118】
本明細書中で言及される全ての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、それらの全体で参照により援用される。専門用語において矛盾する場合は、本明細書が支配する。
【0119】
デバイス、システム、方法などを含む本開示の様々な態様は、1つまたは複数の例示的な実施に関して説明され得る。本明細書において用いられる用語「例示の(exemplary)」および「実例的な(illustrative)」は、「例示(example)、例(instance)、または実例(illustration)としての役割をする」ことを意味し、本明細書中に開示される他の実施よりも好ましいまたは有利であると必ずしも解釈されるべきではない。さらに、本開示または本発明の「実施(implementation」または「実施態様」に対する言及は、その実施態様の1つまたは複数に対する特定の言及を含み、逆もまた同様であり、以下の説明よりもむしろ添付の特許請求の範囲によって示される本発明の範囲を制限せずに、実例的な例示を提供することが意図される。
【0120】
本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられるように、単数形「a」、「an」および「the」は、内容が明確に別段の指示をしない限り、複数形の参照対象を含むことに注意されたい。したがって、例えば、「1つのタイル(a tile)」に対する言及は、1、2、またはそれよりも多くのタイルを含む。同様に、複数の参照対象に対する言及は、内容および/またはコンテキストが明確に別段の指示をしない限り、単一の参照対象および/または複数の参照対象を含むものとして解釈されるべきである。したがって、「タイル(tiles)」に対する言及は、複数のそのようなタイルを必ずしも要さない。その代わりに、結合(conjugation)とは独立に;1つまたは複数のタイルが本明細書において検討されることが理解されよう。
【0121】
本出願の全体を通じて用いられる単語「can」および「may」は、強制的観念(すなわち、欠かせないこと(must)を意味する)よりむしろ、許容的観念で用いられる(すなわち、潜在性を有することを意味する)。さらに、実例として、用語「含む(including)」、「有する(having)」、「含む(involving)」、「含む(containing)」、「特徴付けられる(characterized by)」、それらの変形(例えば、「含む(includes)」、「有する(has)」、「含む(involves)」、「含む(contain)」など)、および、本明細書(特許請求の範囲を含む)において用いられる同様の用語は、包括的および/またはオープンエンドであり、単語「含む(comprising)」およびその変形(例えば、「含む(comprise)」および「含む(comprises)」)と同じ意味を有し、さらなる挙げられていないエレメントまたは方法ステップを排除しない。
【0122】
本明細書において用いられる、方向的および/または任意的な(arbitrary)用語、例えば、「上(top)」、「底(bottom)」、「左(left)」、「右(right)」、「上(up)」、「下(down)」、「上側(upper)」、「下側(lower)」、「内側(inner)」、「外側(outer)」、「内部(internal)」、「外部(external)」、「内部(interior)」、「外部(exterior)」、「近位(proximal)」、「遠位(distal)」、「前(forward)」、「逆(reverse)」などは、相対的な方向および/または方位を示すためにのみ用いられ得て、本明細書、本発明、および/または特許請求の範囲を含む本開示の範囲を制限することをその他の点で意図し得ない。
【0123】
あるエレメントが、別のエレメントに対して(to)、またはその上に「(on)」、「連結される(coupled)」、「接続される(connected)」または「応答性である(responsive)」と言及される場合、それは、他のエレメントに対して、またはその上に、直接的に連結され、接続され、または応答性であってよく、または、介在するエレメントが存在してもよいことが理解される。対照的に、あるエレメントが、別のエレメントに対して、または「その直接的に上に(directly on)」、「直接的に連結される(directly coupled)」、「直接的に接続される(directly connected)」、または、「直接的に応答性である(directly responsive)」と言及される場合、介在するエレメントは存在しない。
【0124】
本発明の概念の例示の実施態様は、例示の実施態様の理想化された実施態様の図式的な実例である断面図(および中間構造)に関して本明細書中で説明される。したがって、例えば、製造技術および/または許容誤差の、結果としての実例の形状からの変動が予期される。したがって、本発明の概念の例示の実施態様は、本明細書において実例で説明される領域の特定の形状に制限されると解釈されるべきではないが、例えば製造によって生じる形状の逸脱を含むはずである。したがって、図面において実例として説明される領域は、実際には図式的なものであり、それらの形状は、デバイスの領域の実際の形状を実例として説明することを意図せず、例示の実施態様の範囲を制限することを意図しない。
【0125】
用語「第1」、「第2」などは、様々なエレメントを説明するために本明細書において用いられ得るが、これらのエレメントは、これらの用語によって制限されるべきでないことが理解されよう。これらの用語は、一方のエレメントを他方から区別するためにのみ用いられる。したがって、「第1」のエレメントは、本実施態様の教示を逸脱せずに「第2」のエレメントと呼ばれ得る。
【0126】
また、本明細書中に記載される様々な実施は、本開示の範囲を逸脱せずに、記載または開示される任意の他の実施と組み合わせて使用され得ることも理解されよう。したがって、本開示の特定の実施に係る、産物、部材、エレメント、デバイス、器具、システム、方法、プロセス、組成物、および/またはキットは、本開示の範囲を逸脱せずに、本明細書中に開示される他の実施(システム、方法、器具、および/または同様のものを含む)において記載される、特性、特徴、コンポーネント、部材、エレメント、ステップ、および/または同様のものを、含んでよく、取り込んでよく、または他の方法で含んでよい。したがって、ある実施に関する特定の特徴に対する言及は、前記実施内の適用のみに制限されると解釈されるべきでない。
【0127】
本明細書中で用いられる見出しは、構造化の目的のみのためであり、説明または特許請求の範囲を制限するために用いられることを意味しない。理解を助けるために、可能な場合は、図面に共通の同様のエレメントを指定するために同様の参照番号が用いられている。さらに、可能な場合は、様々な図面において、エレメントの同様の番号付けが用いられている。さらに、特定のエレメントの代替の構造は、エレメント番号に添えられた別個の文字をそれぞれ含んでよい。
【0128】
用語「約」は、本明細書において、「およそ(approximately)」、「領域内(in the region of)」、「大まかに(roughly)」、または「付近(around)」を意味するために用いられる。用語「約」が数値範囲とともに用いられる場合、それは、示される数値よりも上および下に境界を拡張することによってその範囲を改変する。一般に、用語「約」は、本明細書において、5%の分散によって規定値の上および下に数値を改変するために用いられる。そのような範囲が表現された場合、別の実施態様は、ある特定の値から、および/または、他方の特定の値までを含む。同様に、値が近似値として表現された場合、先行する「約」の使用によって、特定の値が別の実施態様を形成することが理解されよう。それぞれの範囲のエンドポイントは、他方のエンドポイントに対する関係において、および、他方のエンドポイントとは独立に、重大であることがさらに理解されよう。
【0129】
本明細書において用いられる単語「または(or)」は、特定のリストの任意の1つのメンバーを意味し、そのリストのメンバーの任意の組み合わせも含む。
【0130】
「サンプル」によって、動物;動物由来の組織または臓器;細胞(対象内であって対象から直接得られたもの、または、培地中で維持された細胞もしくは培養細胞株由来の細胞);細胞溶解物(または溶解画分)または細胞抽出物;細胞、細胞材料、またはウイルス材料に由来する1または複数の分子(例えば、ポリペプチドまたは核酸)を含む溶液;または、非天然起源の核酸(実例としてcDNAまたは次世代シーケンシングライブラリー)を含む溶液であって、本明細書中に説明されるようにアッセイされるものを意味する。サンプルは、宿主または病原体の細胞、細胞構成要素、または核酸を含んでいてもよく、または含んでいなくてもよい、任意の体液または排泄物(例えば、制限されないが、血液、尿、便、唾液、涙、胆汁、または脳脊髄液)であってもよい。
【0131】
本明細書において用いられる語句「核酸」は、ワトソン-クリック塩基対合によって相補核酸にハイブリダイゼーションすることが可能な、DNAまたはRNAまたはDNA-RNAハイブリッド、一本鎖または二本鎖、センスまたはアンチセンスであろうとなかろうと、天然起源または合成のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを指す。本発明の核酸はまた、ヌクレオチドアナログ(例えば、BrdU)、改変または処理された塩基、および、非ホスホジエステルのヌクレオシド間リンケージ(例えば、ペプチド核酸(PNA)またはチオジエステルのリンケージ)を含んでもよい。特に、核酸は、制限されずに、コードまたは非コード領域を含む、DNA、cDNA、gDNA、ssDNA、dsDNA、RNA(miRNA、mtRNA、rRNAのような全てのRNAタイプを含む)、またはそれらの任意の組み合わせを含んでよい。
【0132】
「プローブ」、「プライマー」または「オリゴヌクレオチド」によって、相補配列を含む第2の核酸分子(「標的」)に塩基対合することができる、既定の配列の一本鎖核酸分子を意味する。生じるハイブリッドの安定性は、生じる塩基対合の長さ、GC含有量、および程度に依存する。塩基対合の程度は、プローブと標的分子の間の相補性の程度およびハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーの程度のようなパラメーターによって影響を受ける。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーの程度は、温度、塩濃度、および、ホルムアミドのような有機分子の濃度のようなパラメーターによって影響を受け、当業者に公知の方法によって決定される。プローブ、プライマー、およびオリゴヌクレオチドは、当業者によく知られた方法によって、放射能、蛍光、または非放射能のいずれかで検出可能に標識され得る。dsDNA結合色素を用いてdsDNAを検出し得る。「プライマー」は、ポリメラーゼによって伸長されるように特異的に構成されて、一方で、「プローブ」または「オリゴヌクレオチド」は、そのように構成されてよく、またはそのように構成されなくてよいことが理解される。プローブとして、オリゴヌクレオチドは、当技術分野で知られている多くの蛍光PCRプライマー-およびプローブ-に基づく化学の一部として用いることができ、それには、蛍光クエンチングおよび/または蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)構造の使用を共有するもの、例えば、5’ヌクレアーゼプローブ(TaqMan(登録商標)プローブ)、デュアルハイブリダイゼーションプローブ(HybProbes(登録商標))、またはEclipse(登録商標)プローブまたはモレキュラービーコン、またはAmplifluor(登録商標)アッセイ、例えば、Scorpions(登録商標)、LUX(登録商標)またはQZyme(登録商標)PCRプライマー(天然または改変塩基によるものを含む)が含まれる。
【0133】
「dsDNA結合色素」によって、二本鎖DNAに結合した場合に、一本鎖DNAに結合した場合または溶液内でフリーの場合とは異なる蛍光を発する(通常、より強く蛍光を発する)色素を意味する。言及はdsDNA結合色素に対してなされるが、米国特許番号7,387,887(参照により本明細書中に援用される)に記載されるいくつかの非限定の実例的な色素とともに、任意の適切な色素が本明細書において用いられ得ることが理解される。他のシグナル産生物質が、核酸の増幅および融解を検出するために用いられ得る(実例として、当技術分野で知られている酵素、抗体など)。
【0134】
「特異的にハイブリダイズする」によって、プローブ、プライマー、またはオリゴヌクレオチドが、高いストリンジェンシー条件下で実質的に相補の核酸(例えば、サンプル核酸)を認識して、物理的に相互作用(すなわち、塩基対合)し、そして、他の核酸とは実質的に塩基対合しないことを意味する。
【0135】
「高いストリンジェンシー条件」によって、だいたい融解温度(Tm)-5℃(すなわち、核酸のTmの5度下)を意味する。機能上、高いストリンジェンシー条件は、少なくとも80%配列同一性を有する核酸配列を同定するために用いられる。
【0136】
PCRが本明細書における実施例において用いられる増幅方法であるが、プライマーを使用する任意の増幅方法が適切であり得ることが理解される。そのような適切な手順は、任意のタイプ(シングルステップ、2ステップ、またはその他)のポリメラーゼ連鎖反応(PCR);鎖置換増幅(SDA);核酸配列に基づく増幅(nucleic acid sequence-based amplification)(NASBA);カスケードローリングサークル増幅(CRCA)、ループ介在等温DNA増幅(LAMP);等温キメラプライマー核酸増幅(ICAN);標的に基づくヘリカーゼ依存性増幅(HDA);転写介在増幅(TMA)、次世代シーケンシング(NGS)技術などを含む。したがって、用語PCRが用いられる場合、アミノ酸定量化方法を含む他の代替の増幅方法を含むことが理解されるべきである。不連続のサイクルがない増幅方法に関して、反応時間は、サイクルまたはCpにおいて測定がされる場合に用いられてよく、本明細書中に記載される実施態様においてさらなるPCRサイクルが加えられる場合は、さらなる反応時間が加えられてよい。プロトコルは適宜調整される必要があり得ることが理解される。
【0137】
本明細書において用いられる用語「クロッシングポイント」(Cp)(あるいは、サイクル閾値(Ct)、定量化サイクル(Cq)、または当該分野において用いられる同義の用語)は、実験的に決定される、所定のPCR産物(例えば、標的または内部標準(単数または複数))に関するなんらかの閾値よりも上の蛍光シグナルを得るために必要なPCRのサイクル数を指す。それぞれの反応が閾値を超えるサイクルは、PCR反応の最初に存在する標的(すなわち、反応テンプレート)の量に依存する。閾値は典型的に、産物の蛍光シグナルがバックグラウンドの蛍光よりも上に検出可能であるポイントに設定されてよいが、他の閾値を用いてもよい。いくぶん任意の(somewhat arbitrary)閾値を設定する代わりとして、一次、二次、またはn次の導関数がその最大値を有する反応に関するポイントを計算することによってCpが決定され得て、それにより、増幅曲線の曲率が最大であるサイクルが決定される。実例的な導関数の方法は、米国特許番号6,303,305に教示されたものであり、その全体で参照により本明細書中に援用される。それにもかかわらず、比較されている全ての反応について同一の閾値が用いられる限り、どこにまたはどのように閾値が設定されるのかについては通常、大して問題とならない。他のポイントが、当技術分野で知られているように同様に用いられ得て、任意のそのようなポイントは、本明細書において議論される任意の方法において、Cp、Ct、またはCqに関して代用され得る。
【0138】
「サンプル処理コントロール」によって、病原体もしくはその一部、または核酸、およびサンプルのワークフロー中のその挙動を模倣する能力を保有する、病原体、微生物、細胞(生きていようとなかろうと)、核酸、または任意の粒子(天然または合成)を指す。サンプル処理コントロールはしばしば、サンプルが従うワークフローの一部または全てのステップをコントロールするために、実例として、サンプルが正しく溶解されていること、潜在的に感染する標的病原体の核酸が正しく抽出および精製されていること、および、標的病原体の特定の配列の正しい増幅および検出が行われていることを確実にするために、公知量でデバイス内に含まれる。
【0139】
実例として、サンプル処理コントロールとして用いられる微生物(実例としてSchizosaccharomyces pombe(S.pombe))は、検出および定量化されるべき標的微生物をできる限り近く模倣する。サンプル処理コントロール粒子は、検出されるべき病原体の構造(例えば膜(単数または複数)および/またはキャプシドおよび/またはエンベロープ)を再現し得て、病原体の挙動およびその標的核酸をワークフローに沿って模倣するのを可能にさせる。サンプル処理コントロールのゴールは、標的の溶解および核酸抽出の収率がサンプル処理コントロールの収率と同様であること、および、最適な増幅/検出を確実にするために精製された核酸が適切に処理されることを確実にすることである。定性的な結果に関して、病原体は、陽性または陰性として報告され得て、または、ランコントロールが失敗した場合は未確定として報告され得る。いくつかの阻害条件が抽出、精製、またはPCR増幅/検出の収率を低減させ得るので、ランを検証するためには、サンプル処理コントロールは、いくつかのランコントロールのうちの1つであってよく、それは陽性(おそらく規定された範囲内)であるべきである。サンプル処理コントロールは、この種の阻害を監視するために用いることができ、収率の減少はサンプル処理コントロールと標的病原体の間で似ている。定性的な結果に関して、そのような阻害は、検出されない場合であっても、偽陰性の結果を導き得る。定量的な結果に関して、ワークフローのステップのうちの1つを阻害すると、過少に見積もられた定量化結果を提供し得る。したがって、本発明のいくつかの実例的な実施態様は、少なくとも1つのサンプル処理コントロール(SPC)を、少なくとも2つのゴールのために使用する:
1)ワークフローをコントロールおよび検証するため:上述のようにSPCの古典的な役割、および
2)試験サンプル中の標的とされる核酸(単数または複数)の定量化を助けるため:定量化標準としても用いられるSPCの新しい役割。
【0140】
実例として、SPCは、サンプルが供せられる処理の一部または全てに従う。したがって、SPCは、サンプルを溶解させるステップ前またはステップ中に加えられ得る。サンプル処理コントロールは、標的病原体(単数または複数)のタイプに基づいて選択され得る。例えば、PhiX 174のようなバクテリオファージはウイルスに注目したアッセイのために選択され得て、バクテリオファージは標的ウイルスを模倣する良い候補であり、または、S.pombeのような酵母は、幅広い細菌および酵母の定量化アッセイにおける使用のためのものである。
【0141】
単一の病原体が検出されるべきであるならば、2つの増幅アッセイ、実例としてPCRアッセイ(標的病原体および定量化標準として用いられるサンプル処理コントロール)が、同一または同様の熱力学的特性に到達するように設計され得て、合成の定量化標準を用いて正確な定量化を可能にする(例えば実施例5)。
【0142】
複数の病原体の定量化(すなわち、マルチプレックス増幅)に関して、サンプル処理コントロールの増幅プロトコル(実例としてPCRデザイン)を、それぞれの病原体に関する増幅アッセイ(実例としてPCRアッセイ)のプロトコルとフィットさせて、同一の熱力学的特性を得ることは、実例として配列可変性およびアンプリコン長のため、困難であり得る。結果として、異なる標的病原体のPCR効率は異なり得る。この目的のために、定量化標準およびインポートされた検量線を用いて得られる定量化を補正する補正因子が各病原体に関して計算され得る。
【0143】
合成の定量化標準の代わりに、公知濃度の公知の天然の微生物または他の天然起源の核酸テンプレートに対してキャリブレーションが行われ得る。
【0144】
本発明の別の実施態様では、少なくとも2つの異なる(実例として3つまたは4つの異なる)サンプル処理コントロールを用いた任意の増幅システムにおける病原体の信頼できる定量化も、これらのサンプル処理コントロールが、当技術分野で知られているような蛍光、放射能、化学発光、酵素、または同様のもので標識された配列特異的プローブなどの公知の同定技術を介して同定され得る限り、可能である。
【0145】
本明細書中の様々な例はヒト標的およびヒト病原体について言及しているが、これらの例は単に実例的なものである。本明細書中に記載される方法、キット、およびデバイスは、ヒト、獣医学、産業、および環境を含む、多種多様のサンプル由来の多種多様の核酸配列を検出およびシーケンスするために用いられ得る。
【0146】
本明細書において開示される様々な実施態様は、実例として単一の密閉系において、様々な生物学的物質(実例として抗原および核酸配列)の存在に関してサンプルを分析するための、自己完結型(self-contained)核酸分析パウチを使用する。パウチおよびパウチと一緒に使用するための機器を備えるそのようなシステムは、米国特許番号8,394,608;および8,895,295;および米国特許出願番号2014-0283945にさらに詳細に開示されていて、参照により本明細書中に援用される。しかしながら、そのような機器およびパウチは単に実例的なものであり、本明細書中で議論される核酸調製および増幅反応は、当技術分野で知られている様々な核酸精製および増幅システムを用いて、96ウェルプレート、他の構造のプレート、アレイ、カルーセルなどを含む当技術分野で知られている任意の様々な開放系または密閉系のサンプル容器内で行われ得ることが理解される。用語「サンプルウェル」、「増幅ウェル」、「増幅コンテナー」、または同様のものが本明細書において用いられるが、これらの用語は、ウェル、チューブ、および、これらの増幅システムにおいて用いられる様々な他の反応コンテナーを包含することを意味する。そのような増幅システムは、1つの増幅コンテナーにおける単一のマルチプレックスステップを含んでよく、複数の個々の反応ウェルにおける複数の2段階の個々の反応または低次のマルチプレックス反応を含んでもよい。一実施態様では、パウチは、複数の病原体に関するアッセイのために用いられる。パウチは、実例として密閉系において、サンプルウェルとして用いられる1つまたは複数のブリスターを備えてよい。実例として、様々なステップが使い捨てであってもよいパウチ内で行われ得て、それには、核酸調製、一次大容量マルチプレックスPCR、一次増幅産物の希釈、および二次PCRが含まれ、さらには(culminating with)、オプショナルのリアルタイム検出または融解曲線分析などの増幅後分析が含まれる。さらに、様々なステップが本発明のパウチ内で行われ得るが、1つまたは複数のステップが特定の使用のために省略され得て、パウチの構造がそれに従って変更され得ることが理解される。
【0147】
図1は、様々な実施態様において用いられ得る、または、様々な実施態様のために再構成され得る、実例的なパウチ510を示す。パウチ510は、米国特許番号8,895,295の図15と同様であり、同様のアイテムは同じ番号が付けられている。フィットメント590は、入口チャネル515a~515lを備え、それらは試薬リザーバーまたは廃棄物リザーバーとしての働きもある。実例として、試薬はフィットメント590内で凍結乾燥されてよく、そして使用前に再水和される。ブリスター522、544、546、548、564、および566は、それぞれのチャネル514、538、543、552、553、562、および565を有していて、米国特許番号8,895,295の図15の同じ番号のブリスターと同様である。図1の第2段階の反応ゾーン580は、米国特許出願番号8,895,295のものと同様だが、高密度アレイ581の第2段階のウェル582は、いくぶん異なるパターンで配列されている。図1の高密度アレイ581のより円形のパターンは、角のウェルを取り除き、第2段階のウェル582のより均一な充填をもたらし得る。示されるように、高密度アレイ581は、102個の第2段階のウェル582を備える。パウチ510は、FilmArray(登録商標)機器(BioFire Diagnostics,LLC,Salt Lake City,UT)における使用に適切である。しかしながら、パウチの実施態様は単に実例的であることが理解される。
【0148】
他のコンテナーが用いられ得るが、実例として、パウチ510は、押し出し加工、プラズマ沈着、およびラミネート加工を含む当技術分野で知られている任意の処理によって作製され得る、2層の柔軟なプラスチックフィルムまたは他の柔軟な材料、例えばポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、およびそれらの混合物で形成される。アルミニウムラミネート加工をしたプラスチックまたは金属箔を用いてもよい。一緒に密封されてブリスターおよびチャネルを形成することのできる他のバリア材料が当技術分野で知られている。プラスチックフィルムが用いられる場合、層同士は、実例としてヒートシーリングによって接着され得る。実例として、材料は低い核酸結合能を有する。
【0149】
蛍光モニタリングを用いた実施態様に関しては、吸光度が適切に低くて操作波長において自己蛍光であるプラスチックフィルムが好ましい。そのような材料は、異なるプラスチック、異なる可塑剤、および混成比、ならびに異なる厚さのフィルムを試験することによって特定することができる。アルミニウムまたは他の箔積層を有するプラスチックに関し、蛍光検出デバイスによってリードされるパウチの部分は、箔が無いままでよい。例えば、パウチ510の第2段階の反応ゾーン580の第2段階のウェル582内で蛍光が監視されるならば、ウェル582の一方または両方の層は、箔が無いままである。PCRの例では、約0.0048インチ(0.1219mm)の厚さのポリエステルからなるフィルム積層体(Mylar,DuPont,Wilmington DE)および0.001~0.003インチ(0.025~0.076mm)の厚さのポリプロピレンフィルムがうまくいく。実例として、パウチ510は、入射光のおよそ80%~90%を伝導することが可能な透明材料から作られる。
【0150】
実例的な実施態様では、材料は、ブリスターおよびチャネルに対する圧力(実例として空気圧)の適用によってブリスターの間を移動する。したがって、圧力を用いる実施態様では、パウチ材料は、実例として、圧力が所望の効果を有するように十分に柔軟である。用語「柔軟」は、パウチの材料の物理的特性を説明するために本明細書において用いられる。用語「柔軟」は、本明細書において用いられる圧力レベルによって、ひび割れ、破損、クレーズ、または同様のものを生じさせずに容易に変形可能であるものとして本明細書において定義される。例えば、薄いプラスチックシート、例えば、サラン(登録商標)ラップおよびジプロック(登録商標)バッグ、ならびに、アルミニウム箔のような薄い金属箔が柔軟である。しかしながら、空気圧を用いる実施態様であっても、ブリスターおよびチャネルの特定の領域のみが柔軟である必要がある。さらに、ブリスターおよびチャネルが容易に変形可能である限り、ブリスターおよびチャネルの片側のみが柔軟である必要がある。パウチ510の他方の領域は、剛性材料で作られてよく、または剛性材料で補強されてよい。
【0151】
実例として、プラスチックフィルムがパウチ510に用いられる。金属(実例としてアルミニウム、または他の適切な材料)のシートは、圧延(mill)または他の方法で切断されて、盛り上がった表面のパターンを有するダイス(die)を作製し得る。実例として195℃の運転温度で制御された空気圧プレス(実例としてA-5302-PDS、Janesville Tool Inc.,Milton WI)内にフィットされる場合は、空気圧プレスは印刷機のように作用して、ダイスがフィルムに接触するところのみプラスチックフィルムのシーリング表面を溶かす。様々な成分、例えばPCRプライマー(実例としてフィルム上にスポットされて乾燥される)、抗原結合基質、磁気ビーズ、およびケイ酸ジルコニウムビーズは、パウチ510が形成されるときに様々なブリスター内部に密封され得る。サンプル処理のための試薬は、一緒にまたは別個に、シーリングの前にフィルム上にスポットされ得る。一実施態様では、ヌクレオチドトリ-ホスフェート(NTP)は、ポリメラーゼおよびプライマーとは別にフィルム上にスポットされて、反応が水性サンプルによって水和されるまでポリメラーゼの活性を本質的に排除する。水性サンプルが水和の前に加熱されている場合は、本来のホットスタートPCRのための状況を作り出していて、高価な化学的ホットスタート成分の必要性を減少または排除する。
【0152】
パウチ510は、米国特許番号8,895,295に記載されるのと同様の様式で用いられ得る。1つの実例的な実施態様では、試験されるべきサンプル(100μl)および溶解バッファー(200μl)を含む300μlの混合物が、入口チャネル515a付近のフィットメント590内の注入口(図示せず)に注入されて、サンプル混合物が入口チャネル515a内に引き込まれる。入口チャネル515lに隣接するフィットメント590の第2の注入口(図示せず)に水も注入されて、フィットメント590内に提供されるチャネル(図示せず)を介して分配されて、それにより、入口チャネル515b~515lにおいて乾燥形態でそれぞれ事前に提供された11種までの異なる試薬が水和される。これらの試薬は、実例として、凍結乾燥されたPCR試薬、DNA抽出試薬、洗浄溶液、免疫測定試薬、または他の化学物質を含んでよい。実例として、試薬は、核酸抽出、第1段階マルチプレックスPCR、マルチプレックス反応の希釈、および第2段階PCR試薬の調製、ならびにコントロール反応のためのものである。図1に示される実施態様では、注入される必要があるものは、一方の注入口におけるサンプル溶液および他方の注入口における水だけである。注入後、2つの注入口は密封されてよい。パウチ510およびフィットメント590の様々な構成に関するさらなる情報に関しては、既に参照により援用されている米国特許番号8,895,295を参照。
【0153】
注入後、サンプルは注入チャネル515aからチャネル514を介して溶解ブリスター522へ移動する。溶解ブリスター522は、ビーズまたは粒子534、例えばセラミックビーズが供給されていて、FilmArray(登録商標)機器内に供給された回転羽根またはパドルを用いた嵌入によるボルテックスのために構成されている。ケイ酸ジルコニウム(ZS)ビーズ534のような溶解粒子の存在下でサンプルをシェイクまたはボルテックスすることによるビーズミリングが、溶解物を形成する効果的な方法である。本明細書において用いられる用語、例えば「溶解する(lyse)」、「溶解する(lysing)」および「溶解物(lysate)」は、細胞を破裂させることに制限されないが、そのような用語は、ウイルスのような非細胞粒子の破壊を含むことが理解される。
【0154】
図4は、ビーズビーティングモーター819を示し、それは、図2に示される機器800の支持部材802の第1の面811上に取り付けることのできる刃821を備える。刃は、スロット804を通って伸長してパウチ510に接触してよい。しかしながら、モーター819は機器800の他の構造上に取り付けてよいことが理解される。1つの実例的な実施態様では、モーター819は、支持部材802上に取り付けられたMabuchi RC-280SA-2865 DC Motor(千葉、日本)である。1つの実例的な実施態様では、モーターは、5,000~25,000rpm、より実例的には10,000~20,000rpm、さらにより実例的にはおよそ15,000~18,000rpmで回転する。Mabuchiモーターに関しては、7.2Vで溶解に十分なrpmが提供されることが見いだされている。しかしながら、実際の速度は、刃821がパウチ510に衝突している場合は、いくぶん遅くてよいことが理解される。用いられるモーターおよびパドルに応じて、他の電圧および速度が溶解のために用いられ得る。任意選択で、制御された少量の空気が溶解ブリスター522に隣接するブラダー822内に提供されてよい。一部の実施態様では、1または複数の少量の空気で隣接ブラダーを部分的に充填することは、溶解処理中に溶解ブリスターを配置および支持するのを助けることが見いだされている。あるいは、他の構造、実例として剛性または準拠したガスケットまたは溶解ブリスター522の周囲の他の維持構造を用いて、溶解中にパウチ510を拘束することができる。モーター819は単に実例的なものであり、サンプルのミリング、シェイクまたはボルテックスのために他のデバイスを用いてよいことも理解される。
【0155】
細胞が適切に溶解した時点で、サンプルを、チャネル538、ブリスター544、およびチャネル543を通して、ブリスター546へ移動させて、そこでサンプルはシリカコート磁気ビーズ533のような核酸結合物質と混合される。混合物は、適切な時間、実例として約10秒~10分インキュベートされる。ブリスター546に隣接する機器内に置かれた格納式マグネットは、溶液から磁気ビーズ533を捕捉して、ブリスター546の内部表面に対してペレットを形成する。液体はそれから、ブリスター546の外に移動して、ブリスター544を通ってブリスター522内に戻り、それはここでは廃棄物レセプタクルとして用いられる。注入チャネル515c~515eのうちの1つまたは複数からの1または複数の洗浄バッファーが、ブリスター544およびチャネル543を介してブリスター546に提供される。任意選択で、マグネットが格納されて、ブリスター544および546からチャネル543を介して前後にビーズを動かすことによって、磁気ビーズ533が洗浄される。磁気ビーズ533が洗浄された時点で、マグネットの活性化によって磁気ビーズ533がブリスター546内に再捕捉されて、洗浄溶液はブリスター522内に移動する。この処理は、溶解バッファーおよびサンプルデブリを核酸結合磁気ビーズ533から洗浄するために必要に応じて繰り返してよい。
【0156】
洗浄後、注入チャネル515f内に保管された溶出バッファーがブリスター548に移動して、マグネットが格納される。溶液は、ブリスター546と548の間を、チャネル552を介してサイクルされて、ブリスター546内の磁気ビーズ533のペレットを分散させて、捕捉された核酸がビーズから解離して溶液内に入るのを可能にする。マグネットがもう一度活性化されてブリスター546内の磁気ビーズ533をキャプチャーして、溶出した核酸溶液はブリスター548へ移動する。
【0157】
注入チャネル515gからの第1段階PCRマスターミックスが、ブリスター548内の核酸サンプルと混合される。任意選択で、混合物は、チャネル553を介して548と564の間で混合物を押しやることによって混合される。数サイクルの混合後、溶液はブリスター564内に含まれていて、そこに、第1段階PCRプライマーのペレットが提供されて(各標的に関して少なくとも1セットのプライマー)、第1段階マルチプレックスPCRが行われる。RNA標的が存在するならば、第1段階マルチプレックスPCRの前またはそれと同時に逆転写(RT)ステップが行われてよい。FilmArray(登録商標)機器における第1段階マルチプレックスPCRの温度サイクルは、実例として15~30サイクル行われるが、特定の適用の要件に応じて他のレベルの増幅が好ましくあり得る。第1段階PCRマスターミックスは、当技術分野で知られている任意の様々なマスターミックスであってよい。1つの実例的な例では、第1段階PCRマスターミックスは、1サイクルあたり20秒またはそれ未満のPCRプロトコルでの使用に関してUS2015/0118715(参照により本明細書中に援用される)に開示される任意の化学物質であってよい。
【0158】
第1段階PCRが所望のサイクル数進められた後に、実例として、大部分のサンプルをブリスター548に戻して、少量のみをブリスター564内に残して、そして注入チャネル515iから第2段階PCRマスターミックスを添加することによって、サンプルが希釈され得る。あるいは、515iからの希釈バッファーがブリスター566に移動して、それから、ブリスター564と566の間で流体を前後に移動させることによってブリスター564内の増幅されたサンプルと混合されてよい。必要に応じて、希釈は、注入チャネル515jおよび515kからの希釈バッファーを用いて数回繰り返されてよく、または、注入チャネル515kは、シーケンシングまたは他のPCR後分析のために取っておいてよく、それから、第2段階PCRマスターミックスが、注入チャネル515hから、希釈された増幅サンプルの一部または全部に添加される。希釈のレベルは、希釈ステップの数を変更することにより、または、希釈バッファーもしくは増幅のための成分(実例として、ポリメラーゼ、dNTP、および、他の成分が特に非PCR増幅方法には適切であり得るが適切なバッファー)を含む第2段階PCRマスターミックスと混合する前に捨てられるサンプルのパーセンテージを変更することにより、調節され得ることが理解される。必要に応じて、サンプルおよび第2段階PCRマスターミックスのこの混合物は、第2段階増幅のための第2段階のウェル582に移動する前に、ブリスター564内で事前に加熱されてよい。そのような事前の加熱は、第2段階PCR混合物におけるホットスタート成分(抗体、化学物質、またはその他)の必要をなくすことができる。
【0159】
実例的な第2段階PCRマスターミックスは、プライマーペアがない不完全なものであり、102個の第2段階のウェル582のそれぞれに、特定のPCRプライマーペア(または時には、複数ペアのプライマー)が事前にローディングされている。必要に応じて、第2段階PCRマスターミックスは、他の反応成分が不足していてよく、これらの成分は、同様に第2段階のウェル582に事前にローディングされてよい。各プライマーペアは、第1段階PCRプライマーペアと同様または同一であってよく、または、第1段階プライマーペア内でネスト化したものであってよい。ブリスター564から第2段階のウェル582へのサンプルの移動は、PCR反応混合物を完成させる。高密度アレイ581が満たされた時点で、個々の第2段階の反応は、当技術分野で知られている任意の数の手段によって、それぞれの第2段階ブリスター内に密封される。相互汚染を伴わずに高密度アレイ581を充填およびシールする実例的な方法は、既に参照により援用される米国特許番号8,895,295において議論されている。実例として、高密度アレイ581のウェル582における様々な反応は、温度サイクリングのための他の手段が当技術分野で知られているが実例として1つまたは複数のペルチェ素子を用いて、同時に温度サイクルされる。
【0160】
特定の実施態様では、第2段階PCRマスターミックスは、増幅を示すシグナルを産生させるためにdsDNA結合色素LCGreen(登録商標)Plus(BioFire Diagnostics,LLC)を含む。しかしながら、この色素は単に実例的であり、他のdsDNA結合色素および当技術分野で知られている蛍光、放射能、化学発光、酵素、または同様のもので標識されたプローブを含む他のシグナルが用いられ得ることが理解される。あるいは、アレイ581のウェル582は、シグナル不在で提供されてよく、結果はその後の処理を通して報告される。
【0161】
パウチ510内の材料を移動させるために空気圧が用いられる場合、一実施態様では、「ブラダー」が用いられ得る。ブラダーアセンブリ810(その一部は図2および図3に示される)は、複数の膨脹式のブラダー822、844、846、848、864、および866(それぞれ、実例として圧縮気体源によって個々に膨張可能であってよい)を収納しているブラダープレート824を備える。ブラダーアセンブリ810は、圧縮気体に供され得て、そして複数回用いられ得るので、ブラダーアセンブリ810は、パウチよりも頑丈または分厚い材料から作られ得る。あるいは、ブラダー822、844、846、848、864、および866は、ガスケット、シール、バルブ、およびピストンと一緒に固定された一連のプレートから形成されてよい。他の配置は本発明の範囲内である。
【0162】
二次PCR反応の成功は、マルチプレックスの第1段階の反応によって生産されるテンプレートに依存する。典型的に、PCRは高純度のDNAを用いて行われる。フェノール抽出または市販のDNA抽出キットのような方法は、高純度のDNAを提供する。パウチ510を通して処理されたサンプルは、より低い純度の調製を補うために調整(accommodation)がなされる必要があり得る。PCRは、潜在的な障害である生物学的サンプルの成分によって阻害され得る。実例として、ホットスタートPCR、より高い濃度のtaqポリメラーゼ酵素、MgCl濃度の調節、プライマー濃度の調節、および、アジュバント(例えばDMSO、TMSO、またはグリセロール)の添加が、より低い核酸純度を補うために用いられてもよい。純度の問題は、第1段階の増幅およびシングルステージのPCRでより重要である可能性があるが、同様の調節が第2段階増幅において同様に提供され得ることが理解される。
【0163】
パウチ510が機器800内に置かれると、ブラダーアセンブリ810は、パウチ510の一方の面に対して押されるので、特定のブラダーが膨張すると、圧力によって液体がパウチ510内の対応するブリスターの外に押し出される。パウチ510の多くのブリスターに対応するブラダーに加えて、ブラダーアセンブリ810は、さらなる空気圧アクチュエーター、例えば、パウチ510の様々なチャネルに対応するブラダーまたは空気圧によって駆動されるピストンを有してよい。図2および図3は、実例的な複数のピストンまたはパウチ510のチャネル538、543、553、および565に対応するハードシール838、843、852、853、および865、ならびに、フィットメント590へのバックフローを最小にするシール871、872、873、874を示す。アクティブ化されると、ハードシール838、843、852、853、および865は、ピンチバルブを形成して、対応するチャネルをピンチオフして閉じる。パウチ510の特定のブリスター内に液体を閉じ込めるためには、ハードシールは、ブリスターにつながるチャネルおよびブリスターからつながるチャネルに対してアクティブにされて、その結果、アクチュエーターがピンチバルブとして作用してチャネルをつまんで閉じる。実例として、異なるブリスター内の2つの容量の液体を混合するためには、接続チャネルをシールしているピンチバルブアクチュエーターがアクティブ化されて、ブリスター上の空気圧ブラダーが交互に加圧されて、ブリスターを接続しているチャネルを通して液体を前後に押しやり、その中で液体を混合する。ピンチバルブアクチュエーターは、様々な形状およびサイズであってよく、1つよりも多いチャネルを同時にピンチオフするように構成されてよい。空気圧アクチュエーターが本明細書において議論されるが、リニアステッパモーター、モーターによって駆動されるカム、空気圧、水圧または電磁気の力によって駆動される剛性パドル、ローラー、ロッカーアーム、および場合によっては、コックトスプリング(cocked spring)のような、様々な電気機械的アクチュエーターを含む、パウチに圧力を提供する他の方法が検討されることが理解される。さらに、チャネルの軸に対して垂直に圧力をかけるのに加えて、チャネルを可逆的または不可逆的に閉じる様々な方法が存在する。これらには、チャネルを横切ってバッグをねじること、ヒートシーリング、アクチュエーターの回転(rolling)、ならびに、バタフライバルブおよびボールバルブのようなチャネル内に密封される様々な物理的バルブが含まれる。さらに、小さなペルチェ素子または他の温度制御因子がチャネルに隣接して置かれてよく、流体を凍らせるのに十分な温度に設定されてよく、効果的にシールが形成されてよい。また、図1の設計は、ブリスターおよびチャネルのそれぞれの上に配置されたアクチュエーターエレメントを特徴とする自動化機器に適応されるが、アクチュエーターは静止したままであってよく、パウチ510を一次元または二次元で移行させ得て、それにより、サンプル破壊、核酸捕捉、第1および第2段階のPCR、ならびに、イムノアッセイおよびイムノPCRのようなパウチ510の他の適用を含む処理ステーションのうちのいくつかのために、少数のアクチュエーターが用いられ得ることも検討される。チャネルおよびブリスターに対して作用するローラーは、パウチ510がステーション間で移行される構造において特に有用であることを証明することができる。したがって、ここに開示される実施態様においては空気圧アクチュエーターが用いられるが、用語「空気圧アクチュエーター」が本明細書において用いられる場合、他のアクチュエーターおよび圧力を提供する他の方法が、パウチおよび機器の構造に応じて用いられ得ることが理解される。
【0164】
他の従来技術の機器は、密封された柔軟なコンテナー内でのPCRを教示する。例えば、米国特許番号6,645,758、6,780,617、および9,586,208(参照により本明細書中に援用される)を参照。しかしながら、特に、試験されるサンプルがバイオハザードを含み得る場合、密封されたPCR容器内に細胞溶解物を含むことは、使いやすさおよび安全性を改善することができる。本明細書において実例として説明される実施態様では、細胞溶解、および全ての他のステップからの廃棄物は、密封されたパウチ内に残る。しかしながら、パウチ内容物は、さらなる試験のために取り除かれてよいことが理解される。
【0165】
図2は、パウチ510とともに用いられ得る実例的な機器800を示す。機器800は、ケーシングの壁を形成し得て、またはケーシング内に取り付けられ得る、支持部材802を備える。機器800は第2の支持部材(図示せず)を備えてもよく、それは、支持部材802に対して動くことができてもよくて、パウチ510の挿入および引き込みを可能にする。実例として、パウチ510が機器800の中に挿入された時点で、蓋がパウチ510を覆ってよい。別の実施態様では、両方の支持部材は固定されてよく、パウチ510は他の機械的手段または空気圧によって所定の位置に維持される。
【0166】
実例的な例では、ヒーター886および888が支持部材802上に取り付けられる。しかしながら、この配置は単に実例的なものであり、他の配置があり得ることが理解される。ブラダー822、844、846、848、864、866を有するブラダープレート810、ハードシール838、843、852、853、シール871、872、873、874は、ブラダーアセンブリ808を形成し、実例として、パウチ510に向かって動かされ得る可動の支持構造に取り付けられてよく、それにより、空気圧アクチュエーターがパウチ510と接触して配置される。パウチ510が機器800の中に挿入されて、可動の支持部材が支持部材802に向かって動くと、パウチ510の様々なブリスターは、ブラダーアセンブリ810の様々なブラダーおよびアセンブリ808の様々なシールに隣接する位置になり、それにより、空気圧アクチュエーターのアクティブ化が、パウチ510のブリスターの1つまたは複数から液体を押し出し得て、または、パウチ510の1つまたは複数のチャネルとともにピンチバルブを形成し得る。パウチ510のブリスターおよびチャネルと、アセンブリ808のブラダーおよびシールとの間の関係は、図3により詳細に説明される。
【0167】
それぞれの空気圧アクチュエーターは、バルブ899を介して圧縮空気源895に接続される。いくつかのホース878だけが図2に示されるが、それぞれの空気圧フィッティングがホース878を介して圧縮気体源895に接続されることが理解される。圧縮気体源895はコンプレッサであってもよく、あるいは、圧縮気体源895は、圧縮ガスシリンダ、例えば炭酸ガスシリンダであってよい。圧縮ガスシリンダは、持ち運びが所望である場合に特に有用である。他の圧縮気体源は、本発明の範囲内である。
【0168】
アセンブリ808は、実例として可動の支持部材上に取り付けられるが、他の構造があり得ることが理解される。
【0169】
機器810のいくつかの他のコンポーネントも圧縮気体源895に接続される。支持部材802の第2の面814に取り付けられるマグネット850は、実例としてホース878を介した圧縮気体源895からのガスを使用して展開および格納されるが、マグネット850を動かす他の方法が当技術分野で知られている。マグネット850は、支持部材802内の凹所851に存在する。凹所851は支持部材802を通る通路であってよく、したがって、マグネット850はパウチ510のブリスター546に接触することができることが理解される。しかしながら、支持部材802の材料に応じて、マグネット850が展開された場合にはマグネット850はブリスター546において十分な磁場を提供するのに十分近く、そしてマグネット850が格納された場合にはマグネット850はブリスター546内に存在するいかなる磁気ビーズ533にも著しく影響しない限り、凹所851は、支持部材802を貫通して伸長している必要はないことが理解される。マグネット850の格納に対して言及がなされるが、電磁石を用いてよく、電磁石は、電磁石を通る電気の流れを制御することによって活性化および不活性化され得ることが理解される。したがって、本明細書はマグネットの引き込みまたは格納について議論するが、これらの用語は、磁場を取り除く他の方法を組み込むのに十分広いことが理解される。空気圧の接続は、空気圧ホースまたは空気圧空気マニホールドであってよく、したがって、必要とされるホースまたはバルブの数が低減されることが理解される。
【0170】
空気圧ピストンアレイ869の様々な空気圧ピストン868も、ホース878を介して圧縮気体源895に接続される。空気圧ピストン868を圧縮気体源895に接続している2本のホース878だけが示されているが、空気圧ピストン868のそれぞれが圧縮気体源895に接続されることが理解される。12個の空気圧ピストン868が示されている。
【0171】
加熱/冷却デバイスのセット(実例としてペルチェヒーター)は、支持体802の第2の面814に取り付けられる。第1段階のヒーター886は、第1段階PCRのためにブリスター564の内容物を加熱および冷却するように配置される。第2段階ヒーター888は、第2段階PCRのためにパウチ510の第2段階ブリスター582の内容物を加熱および冷却するように配置される。しかしながら、これらのヒーターは他の加熱目的に用いることもできること、および、特定の適用のために他のヒーターが適宜用いられてよいことが理解される。他の構造があり得る。
【0172】
蛍光検出が所望の場合、光学アレイ890が提供されてよい。図2に示されるように、光学アレイ890は、光源898(実例としてフィルターのついたLED光源、フィルターの付いた白色光、またはレーザー照明)、およびカメラ896を備える。カメラ896は、実例として複数の光検出器を有し、それぞれがパウチ510内の第2段階のウェル582に対応している。あるいは、カメラ896は、第2段階のウェル582の全てを含む画像を撮影し得て、その画像が第2段階のウェル582のそれぞれに対応する別個のフィールドに分割され得る。構造に応じて、光学アレイ890は静止していてよく、または、光学アレイ890は、1つまたは複数のモーターに取り付けられたムーバー上に置かれて、個々の第2段階のウェル582のそれぞれからシグナルを得るように動かされ得る。他の配置があり得ることが理解される。
【0173】
示されるように、コンピューター894は、圧縮空気源895のバルブ899を制御し、したがって、機器800の全ての空気圧を制御する。コンピューター894はまた、ヒーター886および888、ならびに光学アレイ890も制御する。これらのコンポーネントのそれぞれは、電気的に、実例としてケーブル891を介して接続されるが、他の物理的接続またはワイヤレス接続が本発明の範囲内である。コンピューター894は機器800内に収納されてよく、または機器800の外部であってよいことが理解される。さらに、コンピューター894は、コンポーネントの一部または全部を制御するビルトイン回路基板を備えてよく、増幅曲線、融解曲線、Cp、Ct、検量線、および他の関連するデータを計算し得て、そしてまた、光学アレイからのデータを受信および表示するためのデスクトップまたはラップトップPCのような外部コンピューターを備えてもよい。インターフェース、実例として、温度、サイクル時間などの情報および変数を入力するためのキーを備えるキーボードインターフェースが提供され得る。実例として、ディスプレイ892も提供される。ディスプレイ892は、例えば、LED、LCD、または他のそのようなディスプレイであってよい。
【実施例
【0174】
[実施例1-高密度PCR]
一例では、一般的な呼吸器ウイルスに関する標準的な市販の免疫蛍光アッセイは、7つのウイルス:アデノウイルス、PIV1、PIV2、PIV3、RSV、インフルエンザA、およびインフルエンザBを検出できることが知られている。より完全なパネルは、実例として、コロナウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ライノウイルス、および非HRVエンテロウイルスを含む他のウイルスに関するアッセイを含む。アデノウイルスまたはHRVのような高度に可変のウイルスについては、ウイルスの系統の全てのブランチを標的化するために複数のプライマー(実例として、それぞれ4つのアウタープライマーと4つのインナープライマーのセット)を使用することが望ましい。コロナウイルスのような他のウイルスについては、季節ごとに変化しない4つの別系統(229E、NL63、OC43、HKU1)が存在するが、それらは十分に分岐しているので別個のプライマーセットが必要である。FilmArray(登録商標)Respiratory Panel(BioFire Diagnostics,LLC of Salt Lake City,UT)は、アデノウイルス、コロナウイルスHKU1、コロナウイルスNL63、コロナウイルス229E、コロナウイルスOC43、ヒトメタニューモウイルス、ヒトライノウイルス/エンテロウイルス、インフルエンザA、インフルエンザA/H1、インフルエンザA/H3、インフルエンザA/H1-2009、インフルエンザB、パラインフルエンザウイルス1、パラインフルエンザウイルス2、パラインフルエンザウイルス3、パラインフルエンザウイルス4、および呼吸器合胞体ウイルスを含む。これらのウイルスに加えて、FilmArray(登録商標)Respiratory Panelは、3つの細菌:百日咳菌(Bordetella pertussis)、肺炎クラミジア(Chlamydophila pneumoniae)、および肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)を含む。高密度アレイ581は、そのようなパネルを単一のパウチ510内に収容することが可能である。それぞれが少なくとも20の病原体に関してアッセイする他のパネルがFilmArray(登録商標)に利用可能である。
【0175】
実例的な第2段階PCRのマスターミックスは、増幅を示すシグナルを産生するためにdsDNA結合色素LCGreen(登録商標)Plusを含む。しかしながら、この色素は単に実例的であり、他のdsDNA結合色素、および、当技術分野で知られている蛍光、放射能、化学発光、酵素、または同様のもので標識されたプローブを含む他のシグナルが用いられ得ることが理解される。
【0176】
実例的なFilmArray機器は、PCR後の融解に基づいてそれぞれの第2段階の反応に関してポジティブまたはネガティブのコール(call)を作成するようにプログラムされている。融解曲線は、コールがポジティブになるためには、事前に規定された温度範囲内に融解ピーク(一次導関数の最大値または負の一次導関数の最大値)を生じなければならない。それぞれの第2段階の反応をコールするこの方法は単に実例的であり、リアルタイム増幅のデータを用いて、または当技術分野で知られている他の手段によって、コールを作成することができることが理解される。
【0177】
[実施例2-マルチプレックスPCRのための定量化標準の設計]
単一のマルチプレックスPCRが1つの反応チャンバー内で行われるFilmArrayのようなシステムでは、個々のレベルを簡単に区別することができないので、単一の参照テンプレートの10倍希釈を用いて検量線を作成するのは不便である。例えば、単一の参照テンプレートが単一の第1段階反応チャンバーに10コピー、100コピーおよび1000コピーの濃度で添加される場合、そのチャンバー内の参照テンプレートの最終濃度は1110コピーとなり、なんらかの他のラベルが存在せず、個々の希釈を区別することができない。さらに、2ステップのマルチプレックスPCRシステムでは、シングルプレックスの標準テンプレートの増幅反応はサンプルが受ける上流の操作の全てを正確に反映し得ず、または同様の効率で増幅され得ず、したがって、プロセス全体を反映し得ないので、ネスト化された第2段階PCRでのみ作成される検量線は、定量化に関して限定された値であり得る。
【0178】
この実例的な実施例では、異なる核酸テンプレート(実例として配列および/または長さが異なる)、実例として合成の定量化標準が、異なるレベルの希釈系列を表わすために用いられる。1つの実例的な実施態様では、全ての合成の定量化標準に関するアッセイは、同様の増幅効率を有し、マルチプレックスの設定で、それぞれの所定の希釈点において同一または同様のCp値を生じさせる。実例として、全ての標的アッセイは、同一のパフォーマンス特性(効率を含む)に関して最適化されるが、効率におけるアッセイ特異的な変動について調節するために補正が適用され得る。
【0179】
1つの実例的な例では、定量化標準に関する外側アンプリコンおよび内側アンプリコンのサイズは、定量的標的アッセイに関するアンプリコンのサイズの代表(representative)であってよい。また、配列またはGC含有量は、プライミング領域間で同一または同様であってよい。実例として、配列は、少なくとも1つの内側プライミング領域を除き(内側アッセイ間の交差反応性を避けるのに十分に異なるべきである)、同一であってよい。内側プライマー結合領域のみ配列が異なるならば、同一のPCR1プライマーを用いて全ての定量化標準を増幅させてよく、したがって、PCR1アッセイのパフォーマンスにおける潜在的な差異を最小限にする。さらに、標識が用いられるならば配列は同一であってよく、標識が用いられないならば、配列におけるわずかな違いさえ検出に関して提供され得る(実例として第2段階シングルプレックス反応において)。しかしながら、これらのパラメーターは単に実例的なものであり、増幅効率を検出および制御するための他の手段があり得ることが理解される。マルチプレックス反応において存在する定量化標準は、Mg2+、プライマー濃度、Tm、およびサイクル条件のような反応パラメーターにマッチするように設計されるべきであることが理解される。また、マルチプレックスPCR反応における合成テンプレートの非特異的な増幅を最小限にすることが望ましいことも理解される。
【0180】
図5は、4つの予期される(prospective)内部定量化標準の濃度に対するCpを示す。この実例的な実施態様では、内部定量化標準は合成配列を有する。この実例的な実施例では、第2段階の内側の反応に関して、4つの定量化標準は、全てが1つの共通のプライマーを共有し、それぞれが1つの独特な特異的プライマーを有する。それらはまた、第1段階PCRに関する外側プライマーの両方を共有するように設計された。したがって、定量化標準を検出するために用いられる第2段階のウェルのそれぞれに、共通のプライマーおよびその定量化標準に関するプライマーがスポットされていて、それにより、1つの定量化標準のみがそのようなウェルのそれぞれにおいて増幅するはずである。しかしながら、これは単に実例的な実施例であり、他の構造があり得ることが理解される。Syn2、Syn3、およびSyn4はそれぞれ同様の増幅効率を有していて、さらなる試験に選択された。Syn1の挙動は異なり、さらなる試験からは省略した。したがって、一実施態様では、同様の増幅効率を有する複数の定量化標準を有することが望ましい。
【0181】
この実例的な実施例では、dsDNA結合色素LCGreen Plusを用いて増幅を検出した。しかしながら、これは単に実例的なものであり、他のdsDNA結合色素、プローブ、シグナル、または増幅を検出する他の方法が本発明の範囲内である。
【0182】
同様の増幅効率を有する定量化標準を設計する様々な方法が存在することが理解される。一実施態様では、定量化標準は、内側プライマーの間は同一配列であり、内側プライマーの結合配列のみが異なっている。別の実施態様では、定量化標準は全て、実質的に同一の長さおよび実質的に同一のGC含有量である。さらに別の実施態様では、配列は、長さが異なるが、GC含有量も異なっていて釣り合っている(compensate)。同様の増幅効率を有する核酸を設計する他の方法が当技術分野で知られている。
【0183】
一実施態様では、実例として定量化標準が2ステップのネスト化マルチプレックスPCR反応において用いられる場合、定量化標準は全て、第1段階PCR反応における同一の外側プライマーを用いてよく、二次構造の形状に起因する違いを避けるためにプライマーを囲んでいる同一の領域も潜在的に共有する。定量化標準は、個々の第2段階PCR反応において異なる内側プライマーを用いることによって区別され得て、それぞれのキャリブレーターは、独特な内側プライマーペアを有していて、または上記のように、1つの内側プライマーを共有して1つの独特な内側プライマーを有している。そのような実施態様は、定量化標準のそれぞれが、その第1段階プライマーに同一のカイネティクスで結合して、第1段階マルチプレックスPCR反応の複雑性が最小化され得るという点で有利である。
【0184】
2ステップPCRに対して言及されるが、同一の原理をシングルステップのマルチプレックスPCRにおいて用いることができる。この場合、定量化標準は、異なるフォワードまたはリバースプライマーを有してよく、または、同一のフォワードおよびリバースプライマー(実例として、それぞれ、特異的な蛍光プローブまたは他の同定可能な標識、例えば、化学発光、生物発光、放射蛍光、電気発光、電気化学発光、機械的発光、結晶発光、熱発光、音ルミネセンス、リン光および他の形態の光ルミネセンス、酵素、放射能などを有するもの)が、本明細書において検討される。適用は、任意のシステムにおいて利用可能な検出チャネルまたは当技術分野で知られている標識を区別するための他の方法の数によってのみ制限される。いくつかの標識は、増幅後の処理が必要であってよい。さらに、標識された定量化標準が2ステップPCRにおいて用いられ得て、ここで、同一または異なるプライマー配列を用いてよく、第2段階PCRにおいて検出するために標識が用いられることが理解される。そのような実施態様では、標識された定量化標準は、第2段階PCRにおいて多様であってもよく、標識によって区別される。
【0185】
合成の定量化標準が本実施例において用いられるが、定量化標準に用いられる配列は天然に生じたものであってよいことが理解される。例えば、酵母がSPCとして用いられるならば、定量化標準配列の1つまたは複数に酵母配列を用いてよい。分裂酵母Schizosaccharomyces pombeについては、Tf2-型のレトロ転移因子/トランスポゾンが13コピーで存在するが、リボソームRNA遺伝子は47回繰り返される。別の例では、異なるコピー数で存在する遺伝子配列が用いられ得る。実例として、真菌病原体は、核ゲノムあたり50~200コピーのリボソームRNA遺伝子を有する。これらの病原体は、ゲノムあたり5~20コピーで変化するトランスポゾンも有する。細菌病原体は、ゲノムあたり1~15コピーを有するが、大部分は5コピーより多く有している。他の天然起源または合成のテンプレート(例えば、ウイルスに関してバクテリオファージ、ならびに、膜および/またはキャプシドおよび/またはエンベロープ構造を模倣することのできる合成の粒子)を用いてよい。さらに、3つの定量化標準が本明細書中の実施例の多くにおいて用いられるが、線形の検量線を規定するためには2つの定量化標準のみが必要であり、広範囲の標的濃度が予想される実施態様または非線形の検量線が予想される実施態様では、より多くの定量化標準が所望で有り得ることが理解される。実例として、定量化標準の数は、系のダイナミックレンジおよびアッセイの要件に基づいて選択され得る。
【0186】
あるいは、実施例5に示されるように、それぞれの実験ランにおいて1つの定量化標準のみを使用することも可能であり(実施例5において議論されるサンプル処理コントロール(SPC)を参照)、および、実例として、この分析に関してソフトウェア内に含まれ得る少なくとも3つの定量化標準(実施例5においてQSという名称)を用いて、定量化標準の範囲で以前に作成された定量化のためのインポートされた検量線に依拠することができる。
【0187】
[実施例3-多重のキャリブレーション]
図6A図5と似ているが、3つの選択されたキャリブレーター配列からのデータのみ示す。図6Aは、3つの実例的な定量化標準に関して、直線性およびほぼ同一の増幅効率を証明している。図6Bは、合計5つの希釈にわたって3つの定量化標準のそれぞれの3つのポイントの組み合わせから作成された混成の検量線を示す。
【0188】
実例的なキャリブレーションプロットが作成されたので、それぞれの標的アッセイについてアッセイ特異的な参照テンプレートを用いた検量線が作成され得る。図7は、Acinetobacter baumanniiに関する十分に定量化された合成の参照テンプレートを用いて外部で作成された検量線を、定量化標準を用いて作成された混成の内部検量線と比較する。ここでは、3つの「Syn」テンプレートが、反応チューブに加えられる前に予め混合されて;1回の反応あたり、Syn4は10コピーで添加されて、Syn2は10コピーで添加されて、Syn3は10コピーで添加された。これらのテンプレートからのCp値を用いて、各反応について混成の内部検量線を作成した。外部検量線は、合成の参照テンプレートA.baumannii参照テンプレートを用いて作成されて、「Syn」テンプレートと同じ濃度で試験された。混成の内部検量線とA.baumannii検量線は非常に似ている。同様の傾きは効率が同様であることを示す。内部検量線を用いて、A.baumanniiサンプルの未知の最初の濃度を予測することができると期待される。しかしながら、y切片が2つの曲線間でシフトしているので、A.baumanniiの定量化は、この内部検量線を用いる場合は補正因子によって恩恵を受け得る。
【0189】
したがって、標的生物の濃度は、混成の内部検量線を用いて計算され得る。内部標準はそれぞれ異なる公知濃度であり、標的生物と同じ工程で増幅されることに注意されたい。当該方法は、実例としてサイクル閾値(Ct)の値(あるいはCp値または他の同様の方法)を用い、それは、実験的に決定される、標的および内部標準に関する、バックグラウンドの蛍光よりも高い蛍光シグナルを得るために必要とされるPCRのサイクル数である。実例として米国特許番号6,303,305(その全体で参照により本明細書中に援用される)において教示されるように、例えば一次、二次、またはn次導関数を用いて、他のポイントが同様に用いられ得る。他のポイントが、当技術分野で知られているように同様に用いられ得て、任意のそのようなポイントは、本明細書中で議論される任意の方法において、CpまたはCtに代用され得る。実例として、2ステップのマルチプレックスシステムでは、Cp値はネスト化された第2段階の反応において決定される。しかしながら、他の実施態様では、Cpは、増幅システムに適切であるように決定され得ることが理解される。例えば、Cpは、単一のマルチプレックス反応またはその後の第2段階の反応においてオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって決定され得て、オリゴヌクレオチドプローブのそれぞれは定量化標準配列に特異的であり、区別可能な蛍光シグナルを有する。
【0190】
単一の内部標準が用いられる実例的な実施例では、標的生物の濃度は、標的生物のCp(Cp)、内部標準の濃度およびCp(濃度、Cp)、ならびに標的生物の効率(効率)を用いて、以下の式に従って計算され得る。
濃度=濃度*効率 (Cps-Cpt) [等式1]、
ここで、下付きのsおよびtは、それぞれ内部定量化標準および標的生物を表わし、
効率=1+パーセントとしての効率/100 [等式2]
である。
【0191】
例えば、各PCRサイクルで100%増幅を有する標的に関する可変の効率=2である。効率が事前に定義されていてダイナミックレンジにわたって一定であると仮定されることに注意されたい。上述のように、内部キャリブレーターの効率は、全て同様(実例として、互いに1%内、2%内、5%内、または10%内)であるべきである。同様に、標的の効率は、キャリブレーターの効率と、それぞれ同様(実例として、キャリブレーターの2%内、5%内、10%内または12%内)であるべきである。正確な定量化のためには、より狭い範囲内(実例として、1%内、2%内、または5%内)の効率が望ましいことが理解される。しかしながら、半定量的または「ビニング(binning)」の結果(以下を参照)のためには、効率におけるより大きな変動が許容され得る。
【0192】
2以上の定量化標準が用いられる場合、図6A~6Bに説明されるように、実例として、内部定量化標準に関する(Cp,log10(濃度))データにフィットさせた最小二乗法の回帰直線を用いて、標準定量化曲線が作成され得る。実例として、回帰フィットは以下の式である:
log10(濃度)=(Cp-b)/a [等式3]、
ここで、bは切片であり、log10(濃度)=0の場合のCpの値を表わし、aは傾きであり、テンプレート濃度における単一単位の変化によってCpが変化する程度を表わす(効率の関数)。未知の標的に関する計算されたCp値が与えられると、この式は、標的濃度をLog10単位で与える。他のアルゴリズムまたは等式が、定量化の正確性および精度を改善するために必要に応じて適用され得る。これらには、抽出および/または増幅における、プラットフォーム特異的、マトリックス特異的、またはアッセイ特異的な偏りに関して必要とされる調整が含まれてよい。これらはまた、任意のマルチステップの増幅工程の別個のステップにおけるアッセイ効率の違いを説明することのできるアルゴリズムを含んでもよい。一部の実施態様では、定量化検量線は非線形であってよく、または特定のダイナミックレンジ内でのみ線形であってよい。実例として、濃度依存性の可変の傾きがある場合は、S字型の用量応答曲線を用いてよい。他の非線形曲線は本発明の範囲内である。
【0193】
上述の方法は、標的に関する観察されたCp値および内部定量化標準を用いて作成された検量線に関する回帰等式に基づいて、未知濃度を有する標的生物に関して用いることができる。理想的には、この手法を用いて定量化される全ての標的は、内部定量化標準アッセイと同等または同様のPCR効率を有するアッセイを有するべきである。しかしながら、標的アッセイ標準曲線の傾きまたは切片には、少しの変動があってよい。標的アッセイは内部標準とは異なる増幅特性を有し得ることを考慮すれば、未知標的の計算される濃度の精度を改善すべく、体系的なアッセイ特異的な偏りに関して調節するために、アッセイ特異的な補正因子を用いることができる。実例として、線形の定量化曲線が用いられる場合、aは、異なるアッセイ特異的な効率を示す補正因子によって補正され得て(傾きを変更する)、または、bは、特定の標的に関する最適なPCR条件が存在しないことに起因して補正され得る(標的のCpを遅らせる)。適切な場合は両方の補正を用いてよい。別の例では、実例として、ネスト化PCRが用いられる場合は、PCR2において観察されるbの違いは、PCR1効率の変動に起因した、PCR1アッセイの全成果の結果であってよい。この場合、補正因子は、Cp値の関数として計算されてよく、または、所望の定量化精度に応じた定数であってよい。
【0194】
例えば、一組の制御された実験が、公知の標的生物濃度を用いて行われてよい。単一の濃度で複数のレプリケートが使われる場合は、アッセイ特異的な補正因子が、公知濃度および計算された濃度の平均差としてLog10単位で計算され得る。実例として、標的生物の補正されたlog濃度を得るために、アッセイ特異的な補正因子を標的生物のlog濃度(内部定量化標準の方法によって上記で計算される)に加えてよい。マルチプレックスアッセイにおけるそれぞれの標的配列は、実例として、独自の補正を有する(または、混成の検量線と非常に似ている場合は、補正は全くいらない)。
【0195】
アッセイ特異的検量線によって計算された標的生物の定量化を、混成の内部検量線によって計算されたものと比較するための実験を設定した。この実験では、10倍段階希釈の公知量のA.baumanniiゲノム核酸を、ベンチトップ反応において内部定量化標準を用いて多重化した。外部のアッセイ特異的検量線も、図7に関して上述のとおり設定した。図8Aは、A.baumanniiに特異的な外部検量線および定量化標準からの混成の検量線を用いた結果を示す。混成の検量線を補正せずに用いる場合、標的生物(A.baumannii)の明白な体系的な過定量化(約0.5logコピー単位)が存在するが、0.5logコピー単位の補正が適用される場合、補正されたアッセイ特異的検量線は、サンプルにおけるA.baumannii力価のかなり正確な概算を与える。図8Bは、定量化におけるこの体系的な偏りが、上述のように作成された平均アッセイ特異的補正因子を、内部検量線方法によって計算された量に適用することによって、どのように補正され得るのか示す。同様の補正が、マルチプレックス反応において各アッセイに関してなされてよい。
【0196】
多くの実施態様において、絶対的な定量化は必要でなく、半定量的な結果で十分であり得る。結果は、絶対濃度として報告されてよく(システムエラーを含むまたは含まない(実例として95%予測区間))、または、複数の範囲のうちの1つにビニングされてよい(実例として、「高」、「中」、または「低」濃度を報告し、それぞれ、1桁または複数桁をカバーしている)。特定のアッセイで適切なようにビンの数を変更してよく、任意の数のビンを用いてよいことが理解される。また、半定量的結果に関するビニングの範囲(桁または他の尺度)は、特定の例に適切なように調節され得る。
【0197】
[実施例4-シーケンシングデータを正規化および定量化するための方法]
実施例1~3に記載されるアッセイ方法およびシステムに加えてまたは代わりに、次世代シーケンシング(NGS)方法。NGSは、例えば、サンプル中の潜在的に病原性の生物の検出、同定および定量化のために用いられ得る。別の例では、NGSは、実施例1~3に記載されるアッセイ方法およびシステムのうちの1つのような別のアッセイのパフォーマンスを確認するためのいわゆる「コンパレーター」として用いられ得る。特定の例では、NGSは、PCRを含み、その後に次世代シーケンシングが続けられる。
【0198】
現代のシーケンシング機器(例えば、NGS機器)は、計算的に分析がやっかいであり得る大量のデータを産生し得る。さらに、シーケンシング工程(例えば、サンプルのタイプ、サンプルの調製、増幅、およびシーケンシング)および得られたデータは、実験間、ラボ間などでデータを分析および/または比較するのを困難にさせ得る複数の混乱させる因子を含み得る。例えば、サンプルは、ヒューマンエラー(すなわち、偶発誤差)および系統誤差に起因して、シーケンシングのために均一に調製され得ない。別の例では、サンプルは、複数の生物由来の核酸または複数の長さ範囲が様々な濃度で存在することに起因して、均一にシーケンスされ得ない。例えば、唾液は、特に豊富なサンプルタイプであり、サンプル1mlあたり約0~1013生物の範囲の生物ロードを有し得て、1mlあたり約10~10生物がかなり典型的である。排泄物または血液培養培地のような他の臨床サンプルは、同様の生物ロードを有し得る。同様に、臨床サンプルは、大量の宿主DNA(例えば、ヒトDNA)を含み得る。さらに、複数のサンプル由来のシーケンシングライブラリーは、シーケンシングの前に一緒にプールされ得て、それにより、複数のサンプルが同時に分析されるのでシーケンシングに必要な時間を短縮させるが、単一のシーケンシングランにおいて集められるデータ量が劇的に増え得る。さらに、サンプルプール内の個々のサンプルは、上述の因子に起因して、均一に調製され得ない。個々のプールされたサンプル由来のデータは典型的に、個々のアライメントおよび分析のためにデータセット内で分離される。
【0199】
これらおよび他の同様の問題を対処するために、サンプル調製に先立って(例えば、核酸の抽出および増幅に先立って)、シーケンシング前に、公知量の参照DNA配列(本明細書において定量化標準材料(QSM)または内部定量化標準と呼ばれる)を、シーケンシングが意図されるサンプルに加えることができることが見いだされた;その結果、内部定量化標準は、全てのサンプル処理およびシーケンシングステップを通して保有される。サンプル処理の最初に内部定量化標準が加えられるので、シーケンスされた標準に関するシーケンシングリード数(すなわち、シーケンスされた標準の分子数)は、制限されないが、サンプル調製、増幅、核酸回収、精製、およびシーケンシングのようなステップを通して、サンプルが受け得る操作および体系的損失の全てを正確に反映する。同様に、内部定量化標準は、抽出、ライブラリーの調製およびプールの前に各サンプルに対して別個に添加されるので、各サンプルに添加された標準は、各サンプルが供せられる処理ステップの全てを正確に反映することができる。一実施態様では、サンプルプール内の各サンプルに別個に添加される内部定量化標準は同一である。一実施態様では、プール内のそれぞれの増幅配列は、各サンプル由来の核酸が、サンプルごとにトラック、分離、および正規化されるのを可能にする独自のサンプル特異的な識別配列(例えば、DNAバーコード)を有する。
【0200】
内部定量化標準(すなわち、参照DNA配列)は、シーケンスされ得るサンプル中の他の核酸から区別可能である限り、本質的に任意の天然または合成の核酸配列であってよい。例えば、内部定量化標準は、天然起源または改変されたプラスミド、天然起源または合成の線状DNAフラグメント、または同様のものであってよい。サンプル調製、DNA増幅、精製、およびシーケンシングの効率は全て、DNAのサイズによって影響を受けるので、内部定量化標準は、サンプル中の未知配列と近いサイズ範囲内であるべきである。例えば、シーケンスされるDNAのフラグメントが200~500塩基対の範囲内のサイズを有するならば、内部定量化標準もまた、200~500塩基対の範囲内のサイズを有するべきである。さらに、内部定量化標準の組成(例えば、相対的G-C含有量)もまた、シーケンスされるDNAの組成と相対的に同様であるべきである。
【0201】
一実施態様では、公知量の内部定量化標準が、シーケンスされるサンプルに添加されてよい。複数のサンプルがシーケンスされるならば、内部定量化標準は、それぞれのサンプルに別個に添加されてよい。一実施態様では、公知量の内部定量化標準は、アッセイに基づいて決定される。例えば、アッセイに十分な内部定量化標準の量は、制限されないが、アッセイの所望の分解能、核酸抽出効率、シーケンスされる核酸の濃度範囲、検出される遺伝子突然変異の普及度、または、所望のシーケンシングリード深度のような因子に依存し得る。一実施態様では、公知量の内部定量化標準は、アッセイの線形範囲内の量、すなわち、例えば、検出限界(LOD)よりも上かつアッセイに期待される最大濃度の下で添加されてよい。例えば、本明細書において議論される特定の例では、シーケンシングアッセイにおいてシーケンスおよび区別され得るDNAコピー/mlの線形範囲は、約10~約10~10コピー/mlであり、この場合、内部定量化標準は、約10~10コピー/mlの量で添加されてよい。以下により詳細に説明されるように、添加される内部定量化標準の量およびシーケンシングリード深度は、アッセイのLODと関連している。
【0202】
サンプル中の核酸をシーケンスするために、RNAまたはDNAがサンプル組織/細胞から抽出されてフラグメント化される。RNAは、逆転写によってcDNAに変換される。シーケンシングのために内部定量化標準を含むサンプルを調製するステップは、DNAフラグメントの作製を含み、DNAフラグメントは、シーケンシングプラットフォームと相互作用するように設計された特異的な配列および特定のサンプルに由来するシーケンシングデータを特定するために用いられ得るサンプル特異的識別配列(例えば、DNA「バーコード」)を含むシーケンシングアダプターにアニーリングまたはライゲーションすることによって、「ライブラリー」に転換される。2以上のサンプルが並行してプールおよびシーケンスされる場合は、各サンプルは、各サンプルに由来するデータを区別するために用いることのできる独自のサンプル特異的識別配列または「バーコード」を有する。この手順は主に、Illuminaシーケンシング技術と適合する。しかしながら、本明細書中で議論されるほとんどすべての原理が、最小限の改変によって、Life Technologies、Roche、Pacific Biosciences、およびその他によって開発されたNGSプラットフォームに適用され得ることに注意すべきである。
【0203】
次のステップは、DNAのシーケンシングを含む。シーケンシングの正確な方法は、シーケンシングプラットフォームに依存するが、全ての現代の大規模に並行したシーケンシング技術は多少似ていて、同様のデータを産生する。
【0204】
シーケンシング後に、内部定量化標準に由来するリードが各サンプルにおいてカウントされて、各サンプルのNGSデータセットが正規化され得る。最初のチェックとして、サンプルに加えられた内部定量化標準の量と内部定量化標準に関して観察されたシーケンシングリード数との間に線形関係が存在すべきである。さらに、内部定量化標準シーケンシングリードの最小数(「F」)が記録されるべきである。正規化は、(1)サンプルに関する内部定量化標準に関する最小数のシーケンシングリードの存在に基づいて、データ合否基準をシーケンシングデータセットに適用し、(2)実質的に同一の検出限界(LOD)がシーケンシングアッセイにおいて全ての未知核酸に適用されることを確実にする。サンプルがプールされる場合は、正規化は、全てのサンプルが十分な深度まで読まれることを確実にして、全てのサンプルが同一数のQSMリードペアを維持することを確実にして、そして、実質的に同一の検出限界(LOD)がシーケンシングアッセイにおいて全てのサンプル中の全ての未知核酸に適用されることを確実にする。
【0205】
線形関係が存在し、「F」内部定量化標準/QSMリードが記録されると仮定すると、シーケンシングデータは、シーケンシングリードの正規化数を維持するように等式4に従って処理され得る:
NORM=シーケンシングリード数*(F/内部定量化標準に由来する観察されたシーケンシングリード数) [等式4]
「F」は、固定された、アッセイに特異的な内部定量化標準シーケンシングリードのユーザー設定の最小期待数である。例えば、「F」は、シーケンシングアッセイの検出限界(LOD)において、またはその付近で、核酸を検出するのに十分なシーケンシングリード深度を確実にするように設定されるシーケンシングリード数の値である。
【0206】
NORMはシーケンシングデータのサブセットを表わしてよく、シーケンシングリード数であり、さらなる分析および定量化のために保存される。等式4から分かるように、内部定量化標準に由来するシーケンシングリードの観察される数が「F」と同じならば、丸括弧内の量は「1」となって、その結果、NORMは、記録されたシーケンシングリード数と等しくなる。一方で、データセットにおける内部定量化標準のシーケンシングリード数が「F」よりも大きいならば、丸括弧内の量は<1になり、NORM等式は、データを縮小させて(downscale)、オーバーリード(over read)を説明して(account for)、同一のLODが全てのサンプルにわたって適用されることを確実にする。データセット内の内部定量化標準のシーケンシングリード数が「F」未満ならば、そのサンプル由来のデータは却下され得て、そのサンプルは、「F」内部定量化標準リードが記録されるまでさらなるシーケンシングに供されてよい。
【0207】
維持すべきQSMリードの数「F」は、アッセイ進行中に選択されるパラメーターであり、リード深度およびアッセイの検出限界(LOD)に関連する。この効果は以下の表1に説明される。

【0208】
例えば、内部定量化標準がサンプルに5×10コピー/mlの濃度で加えられるならば、LOD以上の全ての未知核酸が十分にシーケンスおよび検出されるのを確実にするために、異なる数のQSMリードが記録される必要がある。これは、シーケンシングのリード深度と呼ばれる。例えば、内部定量化標準/QSMがサンプルに5×10コピー/mlで添加されて、「F」が500ならば、未知核酸の検出のためのアッセイに関するLODは、10コピー/ml以上であり(典型的に、10~10コピー/mlの範囲内);「F」が5000ならば、アッセイのLODは10コピー/ml以上であり(典型的に、10~10コピー/mlの範囲内);または、「F」が50,000ならば、アッセイのLODは10コピー/ml以上である(典型的に、10~10コピー/mlの範囲内)。したがって、アッセイのLODは、アッセイのリード深度を増加(すなわち、「F」を増加)させることにより、低くすることができることが分かる。しかしながら、「F」を勝手気ままに高く設定することは、シーケンシング負荷も増加するので意味がない。例えば、アッセイのLODが10コピー/ml以上であり(「F」=50,000)、最も優勢の(prevalent)種が10コピー/mlで存在するならば(それは珍しいことではない)、10コピー/mlで入れられた最も優勢の標的は、10~10コピー/mlの範囲で存在する標的のほんの1~10(例えば、4)リードを達成するために、1億回シーケンスされる。このことは実用的ではないだろう。
【0209】
本明細書中に記載される実施例において、「F」は典型的に5000QSMリードに設定される。なぜならば、これが、10~10コピー/mlの範囲内またはそれよりも多く存在する核酸の検出を再現性良く確実にするのに十分であるからである。よりストリンジェントなアッセイまたはよりストリンジェントでないアッセイについては、「F」は異なって設定されてよい。したがって、一実施態様では、シーケンシングリード深度(すなわち、「F」)は、100~1000QSMリードという低さ、または約1000内部定量化標準シーケンシングリード~約100,000内部定量化標準シーケンシングリードの範囲内、好ましくは約2000内部定量化標準シーケンシングリード~約75,000内部定量化標準シーケンシングリード、より好ましくは約5000内部定量化標準シーケンシングリード~約50,000内部定量化標準シーケンシングリード、または最も好ましくは少なくとも5000内部定量化標準シーケンシングリードであってよい。
【0210】
内部標準の力および「F」の値は、図9を参照してさらに説明される。図9は、3つのサンプル(A、B、およびC)に関するシーケンシングデータセットの仮想事例を説明する。各サンプルは、10QSMコピーがスパイクされて(spiked with)、各サンプルは未知量の核酸XおよびYを含んでいた。各サンプルにおいて、20,000シーケンシングリードを集めた。サンプルAにおいては、サンプルはXまたはYを明白に含まず、全ての20,000リードはQSMに起因するものであった。サンプルBにおける20,000リードのうち、18182リードがQSMに起因し、1818リードがXに起因し、Yに起因するリードは存在しなかった。サンプルCは、異なる事例を説明する。サンプルCにおける20,000リードのうち、20リードがQSMに起因し、2リードがXに起因し、19978リードがYに起因するものであった。最初のリード属性から、サンプルCは、非常に高濃度のYおよび相対的に低いXを有することが分かる。それにもかかわらず、サンプルCは、5000よりも少ないQSMリードを有し、したがって、サンプルは、少なくとも5000QSMリードが記録されるまで、さらなるシーケンシングに供されなければならない。しかしながら、サンプルCの事例では、そのことは、最小のQSMカバレッジを達成するためにYは500万回近くシーケンスされることを意味する。このことは、産業上の標準(各サンプルについて最小の合計リード値(例えば、20,000リードまたは200,000リードまたは200万リード)を設定し得て、この合計が達成される場合は全ての検出可能な核酸がシーケンスされると仮定する)と比較すると煩わしく思えるかもしれないが、本明細書中に記載される方法は、同一のリード深度が全ての3つのサンプルA、B、およびCにわたって達成されることを確実にし、シーケンシングが、それぞれのサンプル中の稀な核酸を検出する等しい機会を有することを確実にする。サンプルCの事例では、200万の合計リードが記録された場合でさえ、サンプルはまだ「アンダーリード(under read)」であり、それは十分な数であるはずのように思えるが、この場合、200万リードではまだ不十分な数のQSMリードをもたらし、サンプルはアッセイのLODに関してアンダーリードである。しかしながら、未知量の核酸を有する実際の臨床検体をシーケンシングする場合は、内部定量化標準を用いずに、どのポイントにおいて十分なリード深度が達成されるかを知ることは不可能であり得る。すなわち、サンプル中の未知核酸(例えば、サンプルC中のXおよびY)は、QSMリードが十分になるまでLODで検出される等しい機会が与えられない。また、200万または200,000リードでさえ、XおよびYを検出することが可能であるはずだが、QSMが存在しなければXおよびYを定量化することは不可能であり得て、サンプル中の全ての稀な核酸を検出するのに十分なリード深度がいつ達成されるかを決定することは不可能であり得る。サンプルAおよびBでは、5000を超えるリードがQSMに起因するものであったので、「F」の要件は満たされ、サンプルAおよびBは合格する(pass)。したがって、前述の仮想事例から、本明細書中で議論した内部定量化標準が頼もしいツールであることが分かる。
【0211】
さらに図9を参照し、「F」は、固定された、アッセイ-設定の(assay-set)内部定量化標準シーケンシングリードの最小期待数であり、NORM[等式4]は、さらなる分析および定量化のために保存されるシーケンシングリードのサブセットを生じさせ得る。内部定量化標準に由来する観察されたシーケンシングリード数と「F」が同一ならば、NORMは、記録されたシーケンシングリード数と等しい。対照的に、サンプルが「オーバーリード(over read)」ならば(例えば図9のサンプルAおよびB)、NORMは、データを縮小させて(downscale)、オーバーリード(over reading)を説明して(account for)、同一のLODが全てのサンプルにわたって適用されるのを確実にする。例えば、サンプルAでは、QSMに起因する20,000リードが存在したが;このサンプルはQSMに関して「オーバーリード」であり、NORM=20,000*(5000/20,000)=5000である。すなわち、サンプルAにおけるデータのたった4分の1がさらなる分析のために保存される。同様に、サンプルBでは、NORM=20,000*(5000/18182)=5500である。サンプルCは、QSMに関して「アンダーリード」なので、正規化またはさらなる分析がされず、その代わりに、さらなるシーケンシングに供される。
【0212】
ここで図10および図11を参照し、臨床サンプルのセットに関する生のリード数およびQSMリードが説明される。図10および図11において説明されるサンプルは、QSMがスパイクされた後にシーケンシングのためにプールされたサンプルであり;シーケンシングライブラリー調製物およびシーケンシングデータコレクションを用いて分析が進められる。図10および図11は、シーケンシングのためにプールされた32サンプルを説明する。各サンプルは独自のQSMがスパイクされていて、それぞれのサンプルは、サンプル調製中にサンプル中の全ての未知核酸および各サンプルのQSMとアニーリング、ライゲーションまたは他の方法で関連する独自の独特なトラッキング配列(例えばDNAバーコード)を有する。これらの独特なトラッキング配列は、それぞれの異なるサンプル中の全ての核酸と関連し、サンプル調製およびシーケンシングの全てのステップを通して保有されて、そして、この独特なトラッキング配列は、それぞれのサンプル中の核酸に由来するデータが、プールされたシーケンシングデータセットからデータ分析のために分離されるのを可能にする。図10および図11において説明される例では32サンプルが一緒にプールおよびシーケンスされるが、より多いサンプルまたはより少ないサンプルが実際にはプールされ得る。例えば、1回のシーケンシングランに関して1000以上のサンプルがプールされ得て、十分な識別力のあるバーコードおよび十分なリード深度が全てのサンプルに関して存在すると仮定される。一実施態様では、2~1000サンプルがサンプル調製後およびシーケンシング前にプールされ得て、好ましくは2~500サンプルがサンプル調製後およびシーケンシング前にプールされ得て、より好ましくは2~100サンプルがサンプル調製後およびシーケンシング前にプールされ得て、より好ましくは2~50サンプルがサンプル調製後およびシーケンシング前にプールされ得て、または最も好ましくは2~32サンプルがサンプル調製後およびシーケンシング前にプールされ得る。
【0213】
図10および図11では、32サンプルが同時にプールおよびシーケンシングされた。各サンプルに添加されたQSMおよび各サンプルと関連する独特なトラッキング配列は、それぞれの個々のサンプルに由来する配列が分離されて別個に分析されるのを可能にする。図10において、各サンプルと関連する広範囲のシーケンシングリードに注目することは興味深い。例えば、サンプル15は、データセットにおける全てのシーケンシングリードのうちの1/3以上を占めるが、いくつかのサンプル(例えば、サンプル13)は、サンプル15の10分の1未満のリードを有する。図11はQSMリードを示す。3つのサンプル、12、27、および29は、5000よりも少ないQSMリードを有し、最初のQSMチェックに失敗した。サンプル23は、合格するのにかろうじて十分なQSMリードを有したが、サンプル6、9、10、および14などは、QSMに関して実質的にオーバーリードであった。興味深いことに、サンプル15はかなり高い生リード数を有したが、そのQSMリードレベルはそれほど高くなかった。それにもかかわらず、本明細書中に記載される正規化のため、合格する全てのサンプルは等しいウエイトが与えられる。すなわち、ほんの約5000QSMリードを有するサンプル23などは、正規化処理においてそれほどトリミングされないが、サンプル6、9、10、および14などに由来するデータについてはトリミングされ得る。なぜならば、これらのサンプルにおいてQSMリードが豊富であることは、これらのサンプル由来のデータが、データセットにおいてかなり大きな比率を占めていることを示すからである。したがって、ここに記載される正規化処理によって、全てのサンプルに等しいウエイトが与えられて同一のLODが全てのサンプルに適用されることが確実になることが分かる。
【0214】
一実施態様では、未知核酸リードと内部定量化標準リードは、等式5に従って同一の比ALPHAによってそれぞれ別個に正規化され得る:
ALPHA=F/内部定量化標準に由来する観察されたシーケンシングリード数
[等式5]
【0215】
これは図12において絵的に説明される。サンプルに関するデータは、QSMリードおよび非QSMリードを含む。これらが一緒に正規化される場合は(および一緒にダウンリードされる場合は)、正規化データセット内のQSMリードの最終的な数は厳密には「F」(例えば、5000)になり得ず-その代わり、例えば、ビニングされたデータセット内に約4970~5030QSMリードが存在し得る。これは、NORMデータセットを作成するために用いられたサンプリング工程が無作為化され、無作為のサンプリングイベントに関する根底にある確率モデルは、NORMデータセットを作製するときに乱数シードがデータセット全体から正確に「F」QSMリードを引くことはないだろうと予測するためである。あるいは、QSMおよび非QSMデータは、分離およびビニングされ得て、そしてALPHAを用いて正規化され得て、それにより、正確に、QSMビン内の「F」QSMリード(例えば、5000)および非QSMビン内の適切なリード数を生じさせる。具体的には、擬似乱数によって層別化されたサブサンプリングを用いて、各サンプルのデータセットにおけるQSMに由来する適切なリード数を維持し得る。この正規化は、シーケンシング深度およびLODがサンプルにわたって均一であることを確実にして、その後の分析ステップの計算的負荷を減少させる。QSMのアライメントおよび正規化を行なうために、QSMリードは、当技術分野で知られている十分に確立された手順に従ってアライメントにより非QSMリードから分離される。これにより、リードペアは、QSMに由来するセットおよびQSMに由来しないセットに分離される。QSMリードペアのカウントを用いて、各サンプルに関するサブサンプリングのフラクション(subsampling fraction)が計算され、サブサンプリングのフラクションは等式5によって与えられる。サブサンプリングのフラクションおよび非QSMリードペアのカウントを用いて、各サンプルに関するサブサンプルに対する非QSMリードペアの数が計算される。擬似乱数リードサブサンプリングは、既定の数の非QSMリードペアをシードに従って無作為に選択する。シードは、サブサンプリング全体が無作為であることを確実にし、それはまた再現可能である。
【0216】
一実施態様では、サンプルに添加された公知量の内部定量化標準は、等式6による正規化後にサンプル中の未知核酸(単数または複数)のインプット量(IQT)を計算するために用いることができる。
IQT=未知核酸に起因する未知核酸シーケンシングリードの正規化数*(内部定量化標準のインプット量/F) [等式6]
【0217】
例えば、図9のサンプルBを再度参照して、等式6を用いて、未知核酸XのIQTを以下のように計算することができる:正規化後、Xに起因する500リードが存在し、「F」は、5000で設定され、したがってIQT=500*(10/5000)=1であった。多くのサンプルは、1よりも多い未知核酸を有する。したがって、サンプル中の複数の未知核酸のインプット量(IQTi、IQTj、IQTk・・・IQTn)は、正規化後に等式7によって計算され得る。
IQTn=「nth」未知核酸に起因する未知「n」核酸シーケンシングリードの正規化数*(内部定量化標準のインプット量/F) [等式7]
【0218】
それぞれの異なる未知核酸に起因するリードの正規化数をカウントした後(例えば、アライメント、擬似アライメント、またはアセンブリ方法による)、これらの正規化されたリード数を用いて、それぞれの未知核酸のインプット濃度を決定することができる。
【0219】
同一の原理はプールサンプルにも当てはまる。それぞれのプールされたサンプルは、独自のQSMおよびサンプル特異的識別配列の独自の独特なセットを有するので、プール内の各サンプル由来のシーケンシングデータを区別および分離することができる。したがって、正規化は、プール内の各サンプルに由来するシーケンシングデータに別個に適用することができる。したがって、サンプルプール内の各サンプルは、独自の(1)データ合否基準を有し、(2)実質的に同一の検出限界(LOD)がそれぞれのサンプル中の全ての未知核酸に適用される。これは重要なことである。なぜならば、図10および図11で説明したように、一部のサンプルは非常に濃縮され得て、一部はほんのLODまたはその付近の核酸を有し得て、そして、一部のサンプルはQSMに関してオーバーリードまたはアンダーリードであり得るが、一部のサンプルはQSMに関して合格基準またはその付近でリードされ得る。例えば、サンプル6、9、10、および14に関して説明したように、一部のサンプルに関するQSMは、プールされたデータセットにおいて大きな比率を占めている場合があり、一方で、他の15、17、26、および32などは合格基準またはその付近のQSM値を有する。QSMを別個に評価すること、および、各サンプルに正規化を適用することは、以下の理由から有力である(1)各サンプルが十分なリード深度を有することを確実にする(データセット全体を不合格にする必要なく一部の個々のサンプルを不合格にすることができる)、(2)非常に濃縮されたサンプルが低濃度サンプルを追いやる(swamp out)ことがないのを確実にする(3)同一のLODが全てのサンプルに適用されるのを確実にする、(4)客観的にかなりの量のデータが、各サンプルから、正規化および定量化のために評価されるのを確実にする。したがって、プール内の複数のサンプル中の複数の核酸のインプット量を計算するために等式7を用いることができる。
【0220】
一部の実施態様では、シーケンシングのためにサンプルを調製するステップは、特定の手順を含んでよい。一実施態様では、シーケンシングのためにサンプルを調製するステップは、サンプル溶解、溶解物からの核酸回収(回収された核酸を精製してもよい)、および、シーケンスされる核酸の領域へのシーケンシングアダプター部位およびサンプル特異的識別配列の導入を含んでよい。一実施態様では、シーケンシングアダプター部位は、シーケンシングのためのプラットフォーム(例えば、フローセル)に核酸を付着させるための領域およびシーケンシングプライマー結合部位を含んでよい。サンプル調製ワークフローの例が図13に説明される。一部の実施態様では、内部定量化標準/QSMは、例えば溶解プロトコルによってQSMが損傷またはフラグメント化され得る可能性に応じて、溶解の前または後に添加されてよい。例えば、サンプル溶解がビーズビーティングまたは超音波処理を含む場合は、QSMは、溶解後であるが核酸の回収および精製前に添加されてよい。化学的溶解または穏やかな機械的溶解を用いる場合は、QSMは溶解前に添加されてよい。
【0221】
実例的な例では、内部定量化標準を用いて、サンプル調製およびシーケンシング中の損失を計算に入れることにより、元のサンプル中の未知核酸の真のインプット濃度を概算することができると考えられる。すなわち、内部定量化標準は分析の全てのステップを通して保有される。したがって、任意の損失が体系的であり、シーケンスされた濃度は、損失をサンプル抽出、シーケンシングなどに起因させることにより真のインプット濃度を逆算するために用いられ得て、工程全体を通して各サンプルについて同様である。
【0222】
一実施態様では、シーケンシングアダプター部位およびサンプル特異的識別配列を導入するステップは:(1)サンプル特異的識別配列およびシーケンシングプライマー結合部位を含む標的特異的プライマーを用いて増幅反応においてシーケンスされるべき核酸を増幅させるステップ、または(2)シーケンスされるべき核酸をフラグメント化して、シーケンシングプライマー結合部位およびサンプル特異的識別配列を含むシーケンシング特異的アダプターを、フラグメント化された核酸にライゲーションするステップのうちの1つを含んでよい。
【0223】
一実施態様では、シーケンスされるべき核酸を増幅させるステップは:カスタムのオーバーハングを有する標的特異的プライマーを用いて第1のマルチプレックスPCR反応を行なうステップ、第1の核酸精製を行なうステップ、第1のPCRにおいて導入されたカスタムのオーバーハングにアニーリングまたはライゲーションするシーケンシングアダプタープライマーを用いて第2のPCR反応を行なうステップ、および、第2の核酸精製を行なうステップを含んでよい。一実施態様では、シーケンシングアダプタープライマーは標的非依存性であり、シーケンシングプライマーアダプター部位およびサンプル特異的識別配列を含む。
【0224】
図14に説明されるように、典型的なサンプル中の合計の生物ロードは、広く-約0~1013生物/ml(典型的に約10~10)変化し得る。このことは、シーケンシング反応にインプットされる非常に広範な核酸コピー/mlをもたらし得る。一実施態様では、増幅反応を用いて反応の上側範囲を抑えることができるので、シーケンシングに供されるサンプルは、より狭い相対的ダイナミックレンジ内の核酸数(例として約10~10)を効果的に有する。一実施態様では、本明細書において記載される方法は、約10コピー/mlよりも高い濃度で存在する核酸の増幅をプラトーにするように、および、指数増幅段階において約10コピー/ml未満の核酸を保存するように、第1のマルチプレックスPCR反応において、サイクル数または標的特異的プライマーの濃度の1つまたは複数を制限するステップを含んでよい。これは図15に説明される。例えば、シーケンシングアッセイの上側LODは、各核酸の約10~10コピーの範囲において線形であり得る。約10核酸コピー/mlよりも上では、アッセイの線形範囲外のそのように濃縮された核酸を過剰シーケンスする必要を避けることが望ましく、そのような核酸は、>10核酸コピー/mlとして報告されるインプット濃度を有するものとして報告され得て、一方で、約10~10の核酸は全てアッセイの線形範囲内に保存されて、対応する正規化されたシーケンシングリードの数によってそれらの真のインプット量で報告される。一部の実施態様では、増幅サイクル数を制限することによってダイナミック濃度レンジの下限を抑えることが望ましく有り得る。一実施態様では、アッセイのLODは、下側の報告レンジを指定し得て、LODよりも下の核酸は「検出されず」として報告され得る。
【0225】
一実施態様では、サンプルにおける核酸のインプット量は、その代わりに、半定量的に、または「ビニングされた(binned)」範囲で報告され得る。多くの実施態様において、絶対的な定量化は必要ではなく、半定量的な結果で十分であり得る。さらに、ビニングされた範囲を報告することはより単純であり得て、報告がデータ内の標的特異的な誤差を説明するのを可能にし得る。結果は絶対的な濃度として報告され得て(システムエラー(実例として95%予測区間)とともにまたは伴わずに)、または、複数の範囲のうちの1つへとビニングされ得て、実例として「高」、「中」または「低」濃度を報告し、それぞれ1桁または複数桁をカバーしている。
【0226】
同様に、サンプル中の核酸のインプット量は数値的なビンで報告され得る。例を以下の表2に示す。

【0227】
それぞれのビンは1logに及ぶ値を包含し;ビンは、ビンラベル(bin label)の両側(either side)に0.5logを含めた範囲として定義される(すなわち10^5ビンは、10^4.5~10^5.5の量を含むなど)。ビン範囲の両側の余分の0.5logは、ビンの境界付近に見られる測定可変性を説明するためのものである(to account for)。表2において説明される例外は、10^3.5よりも低い任意の値が「検出されず」と報告され得る最も低いビンと、10^6.5以上の任意の値が>10^7と報告され得る最も高いビンである。しかしながら、これらの下側および上側の報告値は単に実例的なものであり、異なる下側および上側の報告値の範囲が、制限されないが、所定のアッセイのLODおよびダイナミックレンジのような因子に応じて用いられ得ることが理解される。2つの標準偏差、すなわちビン境界から0.5logは、ビン境界に集まらないデータポイントの95%を捕捉する理論範囲である。ビンの数は特定のアッセイに適切なように変化してよく、任意の数のビンを用いてよいことが理解される。また、半定量的な結果のためのビニングの範囲(桁または他の尺度)も、特定の例に適切なように調節され得る。
【0228】
[実施例5:コンパレーター試験を行なうための方法]
診断試験の提供者(例えばBioFire Diagnostics)が新たな市販診断試験を開発する場合、その試験の提供者は、提供者が主張する結果をその新たな市販試験がもたらすことの確認を提供するためのコンパレーター研究を行なうことをFDAからしばしば要求される。典型的に、コンパレーターアッセイは、新規のアッセイの結果をチェックするために、標準治療(SOC)培養方法のような独自かつ十分に認められた至適基準技術を使用する。しかしながら、現在のSOC培養方法は、臨床サンプル中の細菌標的の高度に正確または一貫した検出および定量化を提供し得ない。これは、培養に対する分子アッセイのしばしば高められた感度、培養は生きている生物を検出することができるだけであるという事実、および、複雑な、生物の多い検体タイプから独特のコロニー形態をワークアップする(working up)チャレンジを含む、多くの因子のためである。
【0229】
PCRおよび蛍光検出を用いてサンプル中の生物の存在を検出する、本明細書中に記載されるFilmArrayシステムのような分子アッセイに関しては、サンガーシーケンシングは、SOC培養方法に対する認められた代替のコンパレーターである。しかしながら、分子アッセイがより複雑になってくると、伝統的なサンガーシーケンシングによるシーケンシング負荷はより大きくなってくる。同様に、市販試験によって定量化が主張される場合、コンパレーターシーケンシングアッセイは、定量的または半定量的な結果を提供する必要もあり得る。
【0230】
当該分野において以前に用いられていた従来のPCRおよび双方向性のシーケンシングコンパレーター方法に対するハイスループットの代替が本明細書中に記載される。好ましくは、コンパレーター試験において用いられるシーケンシング方法は、次世代シーケンシング(NGS)または同様の大規模に並行したシーケンシング技術である。半定量的な生物ロードの報告を必要とする診断パネル上の標的(例えば、細菌、ウイルス、菌類など)、または、一部の細菌と関連する抗生物質耐性マーカーに関して、臨床試験中にコンパレーターとして使用するための定量的または半定量的な分子参照方法が、好ましい実施態様として開発された。本明細書中に記載される新規の分子参照方法は、NGSの本質的にデジタルであって大規模に並行した性質を活用する。本明細書中で議論される特定の実施態様においてはIllumina NGSを用いたが、本明細書中に記載される原理は、最小限の改変によって他のシーケンシングプラットフォームに適用され得る。
【0231】
一実施態様では、コンパレーター試験を実施するための方法が記載される。コンパレーター試験を実施するための方法は、1または複数の標的核酸のマルチプレックスの増幅および検出を含む第1のアッセイを提供するステップ(ここで第1のアッセイは、ある検出限界(LOD)を有している)、および、第1のアッセイの検出およびLODを確認するための、第1のアッセイとは異なる第2のアッセイを提供するステップを含んでよい。第2のアッセイは:シーケンシングのために少なくとも1つの内部定量化標準を含むサンプルを調製するステップ、シーケンシングをしてサンプルに関するシーケンシングデータセットを生産するステップ(ここで、シーケンシングデータセットは、標的核酸(単数または複数)および内部定量化標準から観察されるシーケンシングリードを含む)、標的核酸(単数または複数)および内部定量化標準に由来するシーケンシングデータセットにおけるシーケンシングリード数をカウントするステップ、および、シーケンシングデータセットを正規化するステップ(ここで正規化は、(1)サンプルに関する内部定量化標準に関する最小数のシーケンシングリードの存在に基づいて、データ合否基準をシーケンシングデータセットに適用して、(2)実質的に同一の検出限界(LOD)がシーケンシングアッセイにおいて全ての未知核酸に適用されることを確実にする)を含んでよい。第2のアッセイのLODは、第1のアッセイのLODと好ましくは実質的に同一である。
【0232】
第2のアッセイの結果を第1のアッセイの結果と比較してよい。好ましくは、第1のアッセイにおいて検出される生物および生物の量は、第2のアッセイによって報告される検出および量と合致するはずである。
【0233】
一実施態様では、第1のアッセイは、1つまたは複数の内部定量化標準をサンプルに加えるステップ、およびサンプルに対して定量的な2ステップの増幅を行なうステップを含んでよい。一実施態様では、第1のアッセイにおける定量的な2ステップの増幅は:第1段階のマルチプレックス増幅混合物においてサンプルを増幅させるステップ(ここで、増幅混合物は複数の標的プライマーおよび少なくとも1つの定量化標準プライマーを含み、各標的プライマーはサンプル中に存在し得る異なる標的を増幅するように構成されて、定量化標準プライマーは内部定量化標準核酸を増幅するように構成される)、第1段階の増幅混合物を複数の第2段階の個々の反応に分割するステップ(ここで、複数の第2段階の個々の反応の第1のグループは、サンプル中に存在し得る異なる標的の1つをさらに増幅するように構成された少なくとも1つのプライマーをそれぞれ含み、複数の第2段階の個々の反応の第2のグループは、内部定量化標準核酸の1つをさらに増幅するように構成された少なくとも1つのプライマーをそれぞれ含む)、および、複数の第2段階の個々の反応を、1つまたは複数の標的アンプリコンおよび複数の定量化標準アンプリコンを産生する増幅条件に供するステップ(ここで、それぞれの定量化標準アンプリコンは、関係がある定量化標準Cpを有する)を含む。それぞれの標的核酸は、あるクロッシングポイント(Cp)を有し、それぞれの内部標準は第1のアッセイにおける公知の濃度および公知の定量化標準Cpを有する。
【0234】
一実施態様では、第1のアッセイにおける未知核酸のインプット濃度を、定量化標準の公知のインプット濃度との比較によって決定することが可能であり得る。一実施態様では、当該方法は、定量化標準Cpから検量線を作成するステップ、および、検量線を用いて1または複数の標的核酸のそれぞれを定量化するステップをさらに含んでよい。一実施態様では、標的核酸のそれぞれは、等式3にフィットされた最小二乗法の回帰直線を用いて作成される検量線を用いて定量化される。
Log10(濃度)=(Cp-b)/a [等式3]
【0235】
等式3において、Cpは各標的に関して測定されたクロッシングポイントであり、b(切片)は、標的のlog10(濃度)がゼロの場合のCp値を表わし、そして、aは傾きであり、濃度における単一単位の変化によってCpが変化する程度を表わす。
【0236】
第2のアッセイを再度参照し、第2のアッセイからのデータは正規化され得て、未知核酸のインプット量は上記の実施例4で述べたように決定され得る。重要なことに、QSMリードの事前に決定された期待数に基づくリード深度の閾値チェックポイントは、標的特異的な分析に先行する。不十分なリード深度を有するサンプルは、さらなるシーケンシングのためにフラグが立てられる(flagged for)が、十分なリード深度を有するサンプルは正規化される。このことは、リードの定量的な値(quantitative value)が全てのサンプルにわたって同一であること、および、標的検出が標的ロード全体から独立していることを確実にする。
【0237】
QSMリードの事前に決定された期待数(すなわち、「F」)は、異なる検出限界に関して第1のアッセイと同等であるように選択され得る。例えば、QSMがサンプル中に5×10コピー/mlでスパイクされて、「F」が5×10ならば、第2のアッセイにおける標的核酸(単数または複数)の検出に関するLODは、約10~10コピー/mlの範囲内である。同様に、「F」が5×10ならば、第2のアッセイにおける標的核酸(単数または複数)の検出に関するLODは、約10~10コピー/mlの範囲内である。一般に、「F」の大きさが大きければ大きいほどほど、シーケンシングアッセイに関するLODは小さくなる。このようになるのは、実施例4において詳細に説明したように、「F」の大きさが大きければ大きいほど、アッセイのシーケンシング深度が大きくなるためである。QSMのスパイクレベル(例えば、5×10コピー/ml)、「F」(例えば、「F」=5000)、リードカウント、および、それぞれの報告レベルにおける代表的な正規化後リードカウントに関する半定量的なビニングされた標的報告の間の関係は、表3に説明される。
【0238】
同様に、上述したように、複数のサンプルがシーケンシングアッセイのためにプールされ得る。プールは、必要ではないが、大規模に並行したDNAシーケンシングである場合には、その本当の力を示す。例えば、プールして、並行してシーケンスする能力は、コンパレーター試験を行なうのに必要な時間と人員を大いに減少させる。サンプルは、実施例4において上述したように、プールされ得て、正規化され得て、定量化され得る。
【0239】
[実施例6:アッセイ特異的な補正因子]
理想的には、次世代シーケンシング(NGS)は、デジタルPCRのような任意の他の定量的分子方法と全く同じ標的定量化を報告するはずである。しかしながら、本当のところは、サンプリングおよび測定における可変性がそれぞれの参照方法に存在し得て、そのような無作為性が、この完全な一致シナリオの達成をしばしば妨げる。1つのあり得る解決策は、適切な誤差範囲とともにデータを報告すること、または、データをビニングすることである。しかしながら、誤差がアッセイ特異的であり、全てのサンプルタイプにわたって均一/体系的でない場合は、誤差範囲またはビニングはデータ内の誤差の全てを説明し得ない。
【0240】
一方で、アッセイ特異的な補正因子を用いて、核酸増幅効率の違い、核酸精製効率の違い、シーケンシングライブラリー調製の違い、および、シーケンシング効率の違いのような反復的かつ体系的な因子をさらに説明することが可能である。そのような違いは所定のサンプル、分析物、および/またはアッセイに関して反復的かつ体系的なので、違いを測定して用いて、標的定量化を補正するためのアッセイ特異的な補正因子をもたらすことができる。本明細書中に記載されるNGS方法は、アッセイ特異的な補正因子を用いて、多くの(例えば50を超える)実験的測定にわたって観察される複数の標的に関する標的定量化のパフォーマンスにおける体系的な違いを取り除き得る。
【0241】
本実施例に記載されるアッセイ特異的な補正因子は、50を超えるバッチポジティブコントロールにおいてアッセイ特異的なポジティブコントロール(PC)配列を分析することによって得られた。PC配列は試験サンプルに添加され得て、または、それぞれのランに別個のサンプルとして含められ得る。増幅の前に、バッチポジティブコントロールは、PC配列の混合物(例えば、改変されたgBlock)を公知濃度で(例えば、1反応あたり50コピーの各PC gBlock)、ならびに定量化標準材料(例えば、1反応あたり500コピーのQSM)がスパイクされ得る。PCR増幅の効率が完全でない場合、または、標的と内部標準の効率が異なる場合、補正因子は、反応にインプットされたポジティブコントロールの量に依存し得る。したがって、一実施態様では、ポジティブコントロールの量は、対応する標的の目的とするダイナミックレンジの真ん中であるべきである。一実施態様では、サンプル特異的シーケンシングアダプタープライマーが、試験アッセイと同一の様式で、増幅されたPC配列にアニールすることができるように、PC配列は、試験アッセイにおいて用いられるオーバーハングを有する同一の標的特異的プライマーを用いて増幅されるように設計され得る。当然、ポジティブコントロールは、保存されたプライマー結合部位領域の間に独自の独特な同定配列領域を有するように設計される。このようにして、ポジティブコントロールに由来するシーケンシングデータを同定および別個に分析することができる。PC配列は、アッセイ特異的な標的を含んでよく、各アッセイが同じパフォーマンス(例えば、104.7コピー/mL)を有する場合、同等のレベルで定量化されることが期待される。
【0242】
しかしながら、図16は、アッセイの2つの集団が観察されたことを示す。この実施例の目的に関して、アッセイの2つの集団を、グッド・パフォーマー(good performer)およびバッド・パフォーマー(bad performers)と呼ぶ。グッド・パフォーマーと呼ばれるアッセイは、グラフの左に見られ(A~M)、バッド・パフォーマーと呼ばれるアッセイはグラフの右に見られる(O~X)。サンプルNは中間のパフォーマーである。グッド・パフォーマーの平均log10定量化は一貫して、期待される定量化に近いが、バッド・パフォーマーの平均log10定量化はそうではない。すなわち、「グッド・パフォーマー」は試験アッセイにおいて一貫して、その期待されるパフォーマンス付近で定量化されると推測することができるが、「バッド・パフォーマー」は試験アッセイにおいて一貫して、その期待されるパフォーマンスよりも著しく悪い値で定量化されると推測することができる。より具体的には、グッド・パフォーマーは、期待される定量化の0.5log10以内の平均log10定量化を有するアッセイとして定義されるが、バッド・パフォーマーは、期待される定量化よりも0.5log10以上低い平均log10定量化を有するアッセイとして定義される。グッド・パフォーマーの平均log10定量化は、期待される定量化よりも0.23log10低いが、バッド・パフォーマーの平均log10定量化は、期待される定量化よりも1.0log10低い。中間パフォーマンスの1つのアッセイが観察された(Nに示される)。
【0243】
この実施例に記載されるアッセイ特異的な補正因子は、それぞれのアッセイの平均log10定量化とグッド・パフォーマーの平均log10定量化(104.47コピー/mL)の間の違いであると定義されて、1.0log10までの補正因子を可能にした。この実施例では、アッセイ特異的な補正因子は、アッセイの特定のセットに関して得られた。しかしながら当業者は、この実施例に記載される原理は、ほんの最小限のアッセイ特異的な改変によって他のアッセイに適応および適用され得ることを理解するであろう。
【0244】
[実施例7:次世代シーケンシング(NGS)アッセイにおいて未知核酸を正規化および定量化するためのキット]
一実施態様では、次世代シーケンシング(NGS)アッセイにおいて未知核酸を正規化および定量化するためのキットが開示される。当該キットは、内部定量化標準(ここで内部定量化標準は、シーケンスされるべき未知核酸を含むサンプルに公知量で添加されるように構成された核酸である)、および、シーケンシングデータセットを正規化および定量化するためならびに未知核酸(単数または複数)のインプット量を計算するために内部定量化標準を使用するための説明書を含んでよい。一実施態様では、当該キットは、未知核酸の定量化のための検量線を作成するために異なる公知濃度で添加される内部定量化標準のセットを含んでよい。一実施態様では、内部定量化標準は、約10~10コピー/mlの範囲内でサンプルに添加されるように構成されてよい。一実施態様では、内部定量化標準を用いて、シーケンシングデータは、等式5によって正規化され得る。
NORM=シーケンシングリード数*(F/内部定量化標準に由来する観察されたシーケンシングリード数) [等式5]
ここで、「F」は、内部定量化標準のシーケンシングリードの固定された最小期待数である。一実施態様では、内部定量化標準を用いて、未知核酸のインプット量(IQT)は等式6によって計算され得る:
IQT=未知核酸に起因する未知核酸シーケンシングリードの正規化数*(内部定量化標準のインプット量/F) [等式6]
【0245】
一実施態様では、当該キットは、シーケンシングプライマー結合部位およびサンプル特異的識別配列を含む、少なくとも内部定量化標準に関するシーケンシング特異的アダプターをさらに含んでよい。一実施態様では、当該キットは、内部定量化標準の増幅のためならびにシーケンシング特異的アダプターに対するアニーリングまたはライゲーションのために構成されたカスタムのオーバーハングを有する標的特異的プライマーをさらに含んでよい。
【0246】
本発明は、その主旨または本質的な特徴を逸脱せずに他の特定の形態で具現化され得る。記載される実施態様は、全ての点において単なる実例的なものであって非限定的なものとして理解されるべきである。したがって、本発明の範囲は、前述の説明よりむしろ添付の特許請求の範囲によって示される。特定の実施態様および詳細が本発明を説明する目的で本明細書および添付の発明開示に含まれているが、本明細書中に開示される方法および器具における様々な変更が、添付の特許請求の範囲において定義される本発明の範囲を逸脱せずになされ得ることが当業者に明らかである。特許請求の範囲の等価性の意味および範囲内に入る全ての変更は、その範囲内に包含されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16