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特許7590957対流加熱および無標識マイクロアレイを用いたDNAの多重増幅および検出のための装置および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】対流加熱および無標識マイクロアレイを用いたDNAの多重増幅および検出のための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20241120BHJP
   G01N 1/44 20060101ALI20241120BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
G01N35/00 B
G01N1/44
G01N21/64 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021514009
(86)(22)【出願日】2019-09-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-23
(86)【国際出願番号】 US2019051057
(87)【国際公開番号】W WO2020056292
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-08-24
(31)【優先権主張番号】62/731,495
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510166102
【氏名又は名称】ウィリアム マーシュ ライス ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】WILLIAM MARSH RICE UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】6100 Main Street,Houston,TX 77005, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】チャン デビッド ユ
(72)【発明者】
【氏名】ホダコフ ドミトリー エー
(72)【発明者】
【氏名】チャン シュエモン
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0160205(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0099279(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0075380(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0176479(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00 - 35/10
G01N 1/00 - 1/44
G01N 21/00 - 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の核酸標的の多重増幅および検出のための装置であって、
チップの装填、垂直配置、およびクランプを提供するように構成された、機械システムと、
前記チップの第1の温度および前記チップの第2の温度を維持するように構成された、熱制御システムであって、前記第1の温度が、前記第2の温度とは異なる、熱制御システムと、
少なくとも40ピクセル×40ピクセルのアレイ内の空間情報を収集するように構成された、光学蛍光イメージングシステムと、
前記機械システム、前記熱制御システム、および前記光学蛍光イメージングシステムに電気エネルギーを提供するように構成された、電力システムと、
前記機械システム、前記熱制御システム、前記電力システム、および前記光学イメージングシステムの動作を制御するように構成された、コントローラと、
ユーザがユーザインターフェースソフトウェアを介して前記装置を操作できるように構成された、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)と
を含み、かつ、
前記チップが、前記試料が装填されるための環状チャンバを有し、前記装置が、前記チップの前記環状チャンバ内に対流を生成するように構成された、装置。
【請求項2】
前記チップが、10mm~320mmの高さ、10mm~320mmの幅、および0.5mm~10mmの厚さを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記機械システムが、チップホルダ、フレーム、摺動構成要素、および支持構成要素を含む、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記チップホルダが、挿入スロット、位置決めスロット、およびモーション制御セットを含む、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記モーション制御セットが、リニアアクチュエータまたはステップモータを含む、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記支持構成要素が、レールスタンドを含む、請求項3に記載の装置。
【請求項7】
前記熱制御システムが、複数の温度センサ、複数の加熱ブロック、および熱源を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記複数の温度センサのうちの1つの温度センサが、加熱ブロックに埋め込まれている、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記複数の加熱ブロックが、アルミニウム、ステンレス鋼、または真鍮を含む、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記複数の加熱ブロックが、集合的に、前記チップの前記環状チャンバの総表面積の少なくとも50パーセントに接触する、請求項7に記載の装置。
【請求項11】
前記蛍光イメージングシステムが、光源、光学モジュール、および少なくとも40×40ピクセルを有する検出器を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記光源が、アークランプ、蒸気ランプ、発光ダイオード(LED)、またはレーザを含む、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記機械システムが、ポリ乳酸(PLA)、ポリカーボネート(PC)、アセトニトリルブタジエンスチレン(ABS)、またはセラミックを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記電力システムが、AC/DC電源、MOSFET、スイッチ、増幅器、ダイオード、トランジスタ、および抵抗器を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記コントローラが、マイクロコントローラおよび/またはPIDコントローラを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年9月14日に出願された米国特許出願仮第62/731,495号の優先権を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
背景
本発明は、米国国立衛生研究所および国立癌研究所によって授与された助成金番号R01CA203964の下で政府の支援を受けてなされた。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
A.分野
本開示は、対流加熱および無標識マイクロアレイを用いたDNAの多重増幅および検出のための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0004】
B.関連技術
政府機関、病院、診療所、および民間の消費者において、迅速かつ多重化されたDNA診断に対する強い市場需要がある。現在の市販のqPCRシステムは大型で高価なものであり、さらに、4~6個の対象のDNAマーカー(4~6プレックス)の同時検出に限定されている。単一のDNA試料のクローズドチューブ20プレックス分析を可能にする市販のqPCRシステムの例として、LuminexのxTagおよびBiofireのFilmArrayの2つがある。どちらのシステムも、大型で(>20kg)高価な(>$50,000)機器を必要とするものであり、ポイントオブケアアプリケーションには適していない。Alere i Influenzaアッセイなどの等温DNA増幅法は、大型または複雑な機器を必要としないが、3プレックスに制限されている。また、次世代シーケンシング(NGS)は、非常に高度なDNAのマルチプレックス分析を可能にするが、多大な労力を要するライブラリ調製ワークフロー(12時間以上)および長時間のシーケンシング実行(24時間以上)を必要とする。これらの労力と時間を要するという特性から、NGSは、ポイントオブケアアプリケーションとして実用的ではない。これらの多重化能力および機器の価格/携帯性に基づく様々なプラットフォームの比較を図1に示す。本発明に関連する実施形態(以下でより詳細に論じられる「ドーナツ式PCR」プラットフォームとして説明される)は、低価格で携帯可能な機器を用いて高度に多重化されたDNA試験を独自に可能にするものである。
【0005】
国際特許出願第PCT/US2017/02453号(特許文献1)およびPCT特許出願公開WO2017/172760号(‘760号公開)(特許文献2)は、係属中の出願の発明者によって開発されたシステムおよび方法を開示しており、ポイントオブケア設定において高度に多重化されたDNA分析を可能にするものである。‘760号公開に開示されたシステムは、実施形態の円形の性質に関連して、本明細書では「ドーナツ式PCRシステム」(または同様の用語)と称される。‘760号公開は、ドーナツ式PCR消耗チップ、流体反応チャンバの内面へのプローブの共有結合の方法、増幅プライマーを含むPCR試薬、および検出プローブの設計を開示している。‘760号公開では、PCR増幅、マイクロアレイ蛍光イメージング、画像分析、およびデータ解釈を実行するために、一部の異なる機器が使用された。さらに、アッセイの実行には、多数の手動介入ステップが必要であった。ここでは、全ての機械的、熱的、光学的、およびユーザインターフェース構成要素を組み込んだ単一の統合機器が開示され、DNAサンプルインアンサーアウト型のプラットフォームを可能としている。
【0006】
ドーナツ式PCRシステムの高度に多重化された携帯性により、これまで非充足であったニーズが独自に充足された分野として、少なくとも3つのアプリケーション分野があると考えられる。すなわち、(1)家庭および薬局における感染症の検出とサブタイピング、(2)病院のベッドサイドでの院内感染の分析、および(3)フィールドでの農業および獣医の遺伝子プロファイリングおよび疾病検出アプリケーションである。
【0007】
前述のように、‘760号公開は、ドーナツ式PCRアッセイおよび消耗品チップを開示している。本明細書で使用される場合、「チップ」という用語は、‘760号公開に記載されているような対流流体デバイスを含む。機器のうちの一部の必要な構成要素が説明されているが、‘760号公開には、チップの初期装填を過ぎても手動の介入が不要な、完全に統合されたドーナツ式PCR機器については記載されていない。特に、ドーナツ式PCRチップを装填し、チップをヒータに自動クランプして良好な熱接触を形成するために必要な機械的構成要素について記載されていない。さらに、‘760号公開は、蛍光顕微鏡を使用することについて説明するものであり、スタンドアロンの読み出しデバイスに必要な光学構成要素(フィルタ、レンズ、ミラー)については記載されていない。結果として、本発明は、‘760号公開に対して新規性および進歩性を有する。
【0008】
多数の定量PCR(qPCR)機器がApplied Biosystems社、Bio-Rad Laboratories社、Qiagen社、Cepheid社、Roche社などの企業によって発明および商品化されている。これらのqPCR機器は全て、アクティブな冷却機構を備えており、電力を大量に消費する。さらに、これらのqPCR機器はいずれも、高プレックスの読み出しを実現するために必要な蛍光スポットの画像取得に、ピクセル解像度100μm未満のカメラを利用していない。結果として、本発明は、過去のqPCR機器に対して新規性および進歩性を有する。
【0009】
対流式PCRは、2002年に学術文献で報告されており、2つのヒータを異なる温度で利用している。ただし、報告された対流式PCR機器は、高プレックスDNA分析用のマイクロアレイを統合していないため、対流式PCR機器において、高プレックス読み出しに必要な蛍光スポットの画像取得にピクセル解像度100μm以下のカメラを使用しているものは報告されていない。結果として、本発明は、過去の対流式PCR機器に対して新規性および進歩性を有する。
【0010】
マイクロアレイは、特定のプローブの空間的分離を使用して、DNA分析のための高プレックス読み出しを実現する。ただし、市販のマイクロアレイは、アクティブな流体装置(ポンプなど)および/または手動洗浄を使用して、非結合標識試薬またはアンプリコンを除去するため、汚染されやすいオープンなシステムとなっている。対照的に、本発明では、ドーナツ式PCRチップに埋め込まれたマイクロアレイは、垂直に取り付けられ、2つの別個のヒータを使用して95℃および60℃に示差的に加熱される。結果として、本発明は、過去のマイクロアレイ技術に対して新規性および進歩性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際特許出願第PCT/US2017/02453号
【文献】PCT特許出願公開WO2017/172760号
【発明の概要】
【0012】
概要
簡潔に言えば、本開示は、生体試料中の核酸標的の多重増幅および検出のための装置および方法を提供する。本開示の実施形態は、チップの装填、垂直配置、およびクランプを提供するように構成された機械システムと、チップの異なる温度を維持するように構成された熱制御システムと、光学蛍光イメージングシステムと、を含む。
【0013】
特定の実施形態は、試料中の核酸標的の多重増幅および検出のための装置を含み、装置は、チップの装填、垂直配置、およびクランプを提供するように構成された機械システムと、チップの第1の温度およびチップの第2の温度を維持するように構成された熱制御システムであって、第1の温度が、第2の温度とは異なる、熱制御システムと、少なくとも40ピクセル×40ピクセルのアレイ内の空間情報を収集するように構成された光学蛍光イメージングシステムと、機械システム、熱制御システム、および光学蛍光イメージングシステムに電気エネルギーを提供するように構成された電力システムと、機械システム、熱制御システム、電力システム、および光学イメージングシステムの動作を制御するように構成されたコントローラと、ユーザがユーザインターフェースソフトウェアを介して制御システムを操作できるように構成されたグラフィカルユーザインターフェース(GUI)と、を含む。
【0014】
特定の実施形態では、チップは、10mm~320mmの高さ、10mm~320mmの幅、および0.5mm~10mmの厚さを有する。一部の実施形態では、GUIはタッチスクリーンインターフェースである。特定の実施形態では、タッチスクリーンインターフェースはスマートフォンに組み込まれている。特定の実施形態では、機械システムは、チップホルダ、フレーム、摺動構成要素、および支持構成要素を含む。特定の実施形態では、チップホルダは、挿入スロット、位置決めスロット、およびモーション制御セットを含む。一部の実施形態では、フレームは、ベース、主構造キャリア、プレスバーロケータ、プレスバー、およびモーション制御セットを含む。特定の実施形態では、モーション制御セットは、電動可動構成要素およびそのホルダを含む。
【0015】
特定の実施形態では、電動可動構成要素は、リニアアクチュエータまたはステップモータを含む。特定の実施形態では、摺動構成要素は、摺動プラットフォームおよび摺動バーを含む。一部の実施形態では、支持構成要素は、レールスタンドを含む。特定の実施形態では、熱制御システムは、複数の温度センサ、複数の熱ブロック、および熱源を含む。特定の実施形態では、複数の温度センサは、抵抗温度検出器(RTD)、サーミスタ、熱電対、またはIRセンサを含む。特定の実施形態では、複数の温度センサのうちの1つの温度センサは、加熱ブロックに埋め込まれている。一部の実施形態では、複数の温度センサのうちの1つの温度センサは、複数の加熱ブロックのうちの1つの加熱ブロックの表面に結合されている。特定の実施形態では、複数の加熱ブロックは、アルミニウム、ステンレス鋼、または真鍮を含む。
【0016】
特定の実施形態では、複数の加熱ブロックは、集合的に、チャンバの総表面積の少なくとも50パーセントに接触する。特定の実施形態では、熱源は、接着性の可撓性ヒータ、加熱プローブ、または加熱ワイヤを含む。一部の実施形態では、蛍光イメージングシステムは、光源、光学モジュール、および少なくとも40×40ピクセルを有する検出器を含む。特定の実施形態では、検出器はカメラである。特定の実施形態では、カメラは、科学的カメラまたはスマートフォンカメラを含む。特定の実施形態では、光源は、アークランプ、蒸気ランプ、発光ダイオード(LED)、またはレーザを含む。一部の実施形態では、光学モジュールは、励起フィルタ、ダイクロイックミラー、ビームスプリッタ、発光フィルタ、フラットミラー、対物レンズ、および/または光学レンズを含む。特定の実施形態では、機械システムは、1つ以上のプラスチックを含む。特定の実施形態では、機械システムは、ポリ乳酸(PLA)、ポリカーボネート(PC)、アセトニトリルブタジエンスチレン(ABS)、またはセラミックを含む。特定の実施形態では、電力システムは、AC/DC電源、MOSFET、スイッチ、増幅器、ダイオード、トランジスタ、および抵抗器を含む。一部の実施形態では、コントローラは、マイクロコントローラおよび/またはPIDコントローラを含む。特定の実施形態では、マイクロコントローラは、ラズベリーパイ、アルドゥイーノ、またはジェヌイーノを含む。
【0017】
特定の実施形態は、本明細書に記載の装置(例えば、請求項1に記載の装置を含む)を使用して、チップ内の試料を分析するための方法を含む。特定の実施形態では、本方法は、装置にチップを装填することと、機械システムを操作して、第1の加熱ブロックと第2の加熱ブロックとの間にチップをクランプすることと、第1の加熱ブロックを第1の温度に加熱することと、第2の加熱ブロックを第2の温度に加熱することであって、第2の温度が、第1の温度とは異なる、加熱することと、光源からの励起光をチップの表面に向けることと、チップからの放出光を検出することと、チップからの放出光を分析することと、を含む。
【0018】
一部の実施形態は、チップからの放出光の分析を文書化するデータレポートを生成することをさらに含む。特定の実施形態は、第1の加熱ブロックと第2の加熱ブロックとの間からチップをクランプ解除することをさらに含む。特定の実施形態は、装置からチップをアンロードすることをさらに含む。特定の実施形態では、チップを装填することは、直線移動のためにモータを操作することを含む。一部の実施形態では、チップを装填することは、チップを装置に引き込むように構成された機構を操作することを含む。特定の実施形態では、チップをクランプすることは、セルフロックモータ、カムフォロアの組み合わせ、またはバネを備えた機構を操作することを含む。
【0019】
特定の実施形態では、第1の温度は、動作中、75℃~105℃に維持される。特定の実施形態では、第2の温度は、動作中、30℃~75℃に維持される。一部の実施形態では、第1および第2の温度は、温度センサからのフィードバックに基づいて熱源電力を変更するマイクロコントローラプログラムによって制御される。特定の実施形態では、第1および第2の温度は、比例積分微分(PID)コントローラによって制御される。特定の実施形態では、第1の温度センサは、第1の加熱ブロックに埋め込まれている。特定の実施形態では、第2の温度センサは、第2の熱ブロックに埋め込まれている。特定の実施形態では、第1の温度センサは、第1の加熱ブロックの表面に結合されている。一部の実施形態では、第2の温度センサは、第2の加熱ブロックの表面に結合されている。特定の実施形態では、励起光源は、チップの表面に対して30°~90°の角度を形成する。特定の実施形態では、チップからの放出光を検出することは、カメラを操作して、2分ごとに1画像以上の頻度で画像を連続的に取得することを含む。
【0020】
本発明の方法、組成物、キット、およびシステムのいずれかの任意の実施形態は、記載されたステップおよび/または特徴から構成されるか、または本質的にそれらから構成され(含む(comprise)/含む(include)/含有する/有する)てもよい。したがって、請求項のいずれにおいても、「から構成される」または「から本質的に構成される」という用語を、上述のオープンエンドリンク動詞のいずれかに置き換えて、オープンエンドリンク動詞を使用した場合とは異なる請求項の範囲を変更することができる。
【0021】
特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、代替物のみを指すように明示的に示されない限り、または代替物が相互に排他的である場合を除き、「および/または」を意味するために使用されるが、本開示は代替物ならびに「および/または」のみを参照する定義をサポートするものである。
【0022】
本出願全体を通して、「約」という用語は、値が、値を決定するために使用されているデバイスまたは方法の誤差の標準偏差を含むことを示すために使用される。
【0023】
長年の特許法に従い、クレームまたは明細書で「含む」という単語と組み合わせて使用される場合、「a」および「an」という単語は、特に明記しない限り、1つ以上を示す。
【0024】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。ただし、本発明の精神と範囲内での様々な変更および修正がこの詳細な説明から当業者に明らかになるため、詳細な説明と具体的な実施例は、本発明の特定の実施形態を示す一方で、例示としてのみ与えられることを理解されたい。
[本発明1001]
試料中の核酸標的の多重増幅および検出のための装置であって、
チップの装填、垂直配置、およびクランプを提供するように構成された、機械システムと、
前記チップの第1の温度および前記チップの第2の温度を維持するように構成された、熱制御システムであって、前記第1の温度が、前記第2の温度とは異なる、熱制御システムと、
少なくとも40ピクセル×40ピクセルのアレイ内の空間情報を収集するように構成された、光学蛍光イメージングシステムと、
前記機械システム、前記熱制御システム、および前記光学蛍光イメージングシステムに電気エネルギーを提供するように構成された、電力システムと、
前記機械システム、前記熱制御システム、前記電力システム、および前記光学イメージングシステムの動作を制御するように構成された、コントローラと、
ユーザがユーザインターフェースソフトウェアを介して前記制御システムを操作できるように構成された、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)と
を含む、装置。
[本発明1002]
前記チップが、10mm~320mmの高さ、10mm~320mmの幅、および0.5mm~10mmの厚さを有する、本発明1001または1002の装置。
[本発明1003]
前記GUIが、タッチスクリーンインターフェースである、前記本発明のいずれかの装置。
[本発明1004]
前記タッチスクリーンインターフェースが、スマートフォンに組み込まれている、本発明1003の装置。
[本発明1005]
前記機械システムが、チップホルダ、フレーム、摺動構成要素、および支持構成要素を含む、前記本発明のいずれかの装置。
[本発明1006]
前記チップホルダが、挿入スロット、位置決めスロット、およびモーション制御セットを含む、本発明1005の装置。
[本発明1007]
前記フレームが、ベース、主構造キャリア、プレスバーロケータ、プレスバー、およびモーション制御セットを含む、本発明1005の装置。
[本発明1008]
前記モーション制御セットが、電動可動構成要素およびそのホルダを含む、本発明1007の装置。
[本発明1009]
前記電動可動構成要素が、リニアアクチュエータまたはステップモータを含む、本発明1008の装置。
[本発明1010]
前記摺動構成要素が、摺動プラットフォームおよび摺動バーを含む、本発明1005の装置。
[本発明1011]
前記支持構成要素が、レールスタンドを含む、本発明1005の装置。
[本発明1012]
前記熱制御システムが、複数の温度センサ、複数の熱ブロック、および熱源を含む、前記本発明のいずれかの装置。
[本発明1013]
前記複数の温度センサが、抵抗温度検出器(RTD)、サーミスタ、熱電対、またはIRセンサを含む、本発明1012の装置。
[本発明1014]
前記複数の温度センサのうちの1つの温度センサが、加熱ブロックに埋め込まれている、本発明1012の装置。
[本発明1015]
前記複数の温度センサのうちの1つの温度センサが、前記複数の加熱ブロックのうちの1つの加熱ブロックの表面に結合されている、本発明1012の装置。
[本発明1016]
前記複数の加熱ブロックが、アルミニウム、ステンレス鋼、または真鍮を含む、本発明1012の装置。
[本発明1017]
前記複数の加熱ブロックが、集合的に、チャンバの総表面積の少なくとも50パーセントに接触する、本発明1012の装置。
[本発明1018]
前記熱源が、接着性の可撓性ヒータ、加熱プローブ、または加熱ワイヤを含む、本発明1012の装置。
[本発明1019]
前記蛍光イメージングシステムが、光源、光学モジュール、および少なくとも40×40ピクセルを有する検出器を含む、前記本発明のいずれかの装置。
[本発明1020]
前記検出器が、カメラである、本発明1019の装置。
[本発明1021]
前記カメラが、科学的カメラまたはスマートフォンカメラを含む、本発明1020の装置。
[本発明1022]
前記光源が、アークランプ、蒸気ランプ、発光ダイオード(LED)、またはレーザを含む、本発明1019の装置。
[本発明1023]
前記光学モジュールが、励起フィルタ、ダイクロイックミラー、ビームスプリッタ、発光フィルタ、フラットミラー、対物レンズ、および/または光学レンズを含む、本発明1019の装置。
[本発明1024]
前記機械システムが、1つ以上のプラスチックを含む、前記本発明のいずれかの装置。
[本発明1025]
前記機械システムが、ポリ乳酸(PLA)、ポリカーボネート(PC)、アセトニトリルブタジエンスチレン(ABS)、またはセラミックを含む、前記本発明のいずれかの装置。
[本発明1026]
前記電力システムが、AC/DC電源、MOSFET、スイッチ、増幅器、ダイオード、トランジスタ、および抵抗器を含む、前記本発明のいずれかの装置。
[本発明1027]
前記コントローラが、マイクロコントローラおよび/またはPIDコントローラを含む、前記本発明のいずれかの装置。
[本発明1028]
前記マイクロコントローラが、ラズベリーパイ、アルドゥイーノ、またはジェヌイーノを含む、本発明1027の装置。
[本発明1029]
本発明1001の前記装置を使用してチップ内の試料を分析するための方法であって、
前記装置にチップを装填することと、
前記機械システムを操作して、第1の加熱ブロックと第2の加熱ブロックとの間に前記チップをクランプすることと、
前記第1の加熱ブロックを第1の温度に加熱することと、
前記第2の加熱ブロックを第2の温度に加熱することであって、前記第2の温度が、前記第1の温度とは異なる、加熱することと、
光源からの励起光を前記チップの表面に向けることと、
前記チップからの放出光を検出することと、
前記チップからの前記放出光を分析することと
を含む、方法。
[本発明1030]
前記チップから放出された前記光の分析を文書化するデータレポートを生成することをさらに含む、本発明1029の方法。
[本発明1031]
前記第1の加熱ブロックと前記第2の加熱ブロックとの間から前記チップをクランプ解除することをさらに含む、本発明1029の方法。
[本発明1032]
前記装置から前記チップをアンロードすることをさらに含む、本発明1029の方法。
[本発明1033]
前記チップを装填することが、直線移動のためにモータを操作することを含む、本発明1029の方法。
[本発明1034]
前記チップを装填することが、前記チップを前記装置に引き込むように構成された機構を操作することを含む、本発明1029の方法。
[本発明1035]
前記チップをクランプすることが、セルフロックモータ、カムフォロアの組み合わせ、またはバネを備えた機構を操作することを含む、本発明1029の方法。
[本発明1036]
動作中、前記第1の温度が、75℃~105℃に維持される、本発明1029の方法。
[本発明1037]
動作中、前記第2の温度が、30℃~75℃に維持される、本発明1029の方法。
[本発明1038]
前記第1および第2の温度が、温度センサからのフィードバックに基づいて熱源電力を変更するマイクロコントローラプログラムによって制御される、本発明1029の方法。
[本発明1039]
前記第1および第2の温度が、比例積分微分(PID)コントローラによって制御される、本発明1029の方法。
[本発明1040]
第1の温度センサが、前記第1の熱ブロックに埋め込まれている、本発明1029の方法。
[本発明1041]
第2の温度センサが、前記第2の熱ブロックに埋め込まれている、本発明1029の方法。
[本発明1042]
前記第1の温度センサが、前記第1の熱ブロックの表面に結合されている、本発明1029の方法。
[本発明1043]
前記第2の温度センサが、前記第2の熱ブロックの表面に結合されている、本発明1042の方法。
[本発明1044]
前記励起光源が、前記チップの表面に対して30°~90°の角度を形成する、本発明1029の方法。
[本発明1045]
前記チップからの放出光を検出することが、カメラを操作して、2分ごとに1画像以上の頻度で連続的に画像を取得することを含む、本発明1029の方法。
【図面の簡単な説明】
【0025】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明の特定の態様をさらに実証するために含まれている。本発明は、本明細書に提示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせて、これらの図面の1つ以上を参照することによってよりよく理解され得る。特許または出願ファイルには、カラーで描かれた図面が少なくとも1つ含まれている場合がある。本特許または本特許出願公開のカラー図面付きコピーは、要求と必要な料金の支払いに応じて、特許庁から提供される。
【0026】
図1】多重化能力ならびに機器の価格および携帯性に関する様々なプラットフォームのグラフによる比較である。
図2】本開示による毛細管内の対流およびチップ内の流れ、ならびに関連する製造原理および動作原理を示す。
図3】本開示による装置の操作のためのワークフロー図を示す。
図4】本開示による装置の部分分解図、ならびにプロトタイプ装置の写真およびプロトタイプからのイメージング結果を示す。
図5】本開示による装置の概念的な機能フローチャートを示す。
図6】本開示による装置のチップホルダおよびチップの斜視図および写真図を示す。
図7】本開示による装置の代替のチップホルダ、装填機構、およびクランプ機構の概略図を示す。
図8】本開示による装置の個々のサブフレームおよび組み立てフレームの斜視図を示す。
図9】本開示による装置のプレスバーおよび組み立てフレームの斜視図を示す。
図10】クランプ解除位置およびクランプ位置における本開示による装置の機械システムを示す。
図11】本開示による、個別の状態、および装置の組み立てフレーム内の状態の加熱ブロックの正投影図および斜視図を示す。
図12】本開示による装置の熱制御システム構成要素の正投影図、透視図および写真図、ならびに加熱ブロック温度の応答曲線を示す。
図13】本開示による装置の蛍光イメージングシステムの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
発明の詳細な説明
本開示の例示的な実施形態は、3つの主要な構成要素、すなわち、(1)チップ(アクティブな冷却または流体装置を必要としない信頼性の高い対流式PCRのための環状反応チャンバ)と、(2)アッセイおよび読み出し(単一の蛍光チャネルを使用した50以上のDNA標的の同時検出と分析クローズドチューブ方式のマイクロアレイ)と、(3)装置(多重増幅およびリアルタイム読み出しを実装するポータブルで低価格の機器)と、を含む。
【0028】
対流式PCRの原理は、温度によって引き起こされる密度差(レイリーベナール対流)によって、水溶液を制御可能に循環させ得ることである。要するに、暖かい溶液は密度が低く、冷たい溶液は密度が高いので、重力により、示差的に加熱された溶液の循環を駆動することができる。アクティブな冷却または流体装置構成要素が必要ないため、対流式PCR機器のサイズと重量は、ペルチェシステムを利用する従来のPCRよりも大幅に軽量になる。
【0029】
対流式PCRは、2002年に最初に概念的に導入され、実験的に実証されたものであり、図2のセクションAに示すように、反応チャンバとして垂直毛細管を使用する。ただし、この反応チャンバには循環速度の遅い「デッドゾーン」があり、非特異的なDNA増幅とプライマーダイマーの形成をもたらす。このように、毛細管チューブを用いた対流式PCRは、従来のPCRに比べて相対的に不利であるため、商業的な導入が進んでいないのが現状である。対照的に、図2のセクションBに示される操作中の環状反応チャンバにより、チップ内のデッドゾーンを排除し、95℃および60℃の温度ゾーンを介したチャンバ内でのPCR溶液の均一な循環が促進される。セクションBに示されているドーナツ式PCR流体チップ100は、診断グレードのDNA分析のための対流式PCRを可能にするために、毛細管チューブよりも均一な温度制御を実現するように設計されている。PCR溶液は、入口ポートを介して反応チャンバに注入され、もう一方のポートは空気のバイパスを可能にする。中央の内部円形インサート(「アイランド部」)は、PCR混合物が制御されていない温度で長期間滞留する可能性のあるデッドスペースを防ぐ。ドーナツ式PCRチップ100の製造および組み立てプロセスが図2のセクションCに示されている。ドーナツ式PCRチップ100と組み合わせて使用され得る無標識マイクロアレイ技術の概要が図2のセクションDに示されている。アンプリコンおよびdNTPは標識されておらず、標識されていないアンプリコンによるクエンチャー標識オリゴヌクレオチドの置換によって、局所的な蛍光の増加が達成される。したがって、この技術により、オープンチューブ洗浄ステップが回避される。図2のセクションEは、アンプリコン混合物へのハイブリダイゼーションの前(上部)および後(下部)の無標識マイクロアレイの蛍光画像を提供している。この画像は、Zeiss Axio Observer蛍光顕微鏡を使用して撮影された。
【0030】
従来の定量PCR(qPCR)機器では、様々なスペクトル波長を使用して、様々なDNA標的の多重分析が実現されている。しかしながら、重複しない可視波長の蛍光物質の数は5~6に制限されている。感染症および抗生物質耐性プロファイリングから農業遺伝子プロファイリングまで、多くのアプリケーションで、20を超える異なる標的を検出する必要がある。例えば、それぞれ5つの標的を試験する4つの反応を介して、試料内の20の異なるDNA標的をプロファイリングすることにより、試料の分割を実行できる。ただし、実際には、これは煩雑であり、試料が限られている場合は感度が犠牲になる。マイクロアレイにより、空間分離を使用して単一の蛍光波長を使用して高度の多重化を実現できるが、蛍光バックグラウンドの抑制に多大な労力を要するオープンチューブの洗浄ステップが必要である。このマイクロアレイのワークフローが複雑であるために、従来のマイクロアレイはインビトロ診断(IVD)での使用に適していない。対照的に、環状ドーナツ式PCRチップの内面に印刷されたマイクロアレイは、無標識マイクロアレイであり、余分なアンプリコンまたは反応試薬を除去するために洗浄する必要はない。
【0031】
ドーナツ式PCRチップで多くのDNA標的の多重増幅と検出を実行するには、温度の異なる2つのヒータにチップを軽く密着させて、熱的接触を形成する必要がある。過剰なバックグラウンド光を防ぐためには、ドーナツ式PCRチップを暗い場所に移動するか、チップ装填ドアを密閉する必要がある。また、ドーナツ式PCRチップは、適切に選択および配置されたフィルタおよび光学系を使用して、適切な波長、強度、およびフォーカスの光で照明する必要がある。カメラによってマイクロアレイの写真を定期的に撮影し、ソフトウェアを使用して画像を解釈し、輝点の有無を判断する。本開示の例示的な実施形態は、上記のプロセスのそれぞれを達成する統合装置を提供する。
【0032】
ここで図3を参照すると、試料中の核酸標的の多重増幅および検出のための装置200の概略図が、装置200とともに使用するためのワークフロー図の概要とともに提供されている。図3に示すように、試料110は、1つ以上のPCR試薬と混合され、次いで、トランスファピペットを介してチップ100に装填することができる。次に、チップ100(試料110を含む)を密封し、分析のために装置200に挿入することができる。ユーザは、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)210を介して装置200の動作を制御することができる。特定の実施形態では、GUI210は、装置200に無線で結合することができ、特定の実施形態では、GUI210は、モバイルデバイス220(例えば、スマートフォン、ラップトップコンピュータ、タブレットまたは他の適切なデバイスを含む)に組み込むことができる。GUI210は、装置200を介して試料110の分析を開始し、画像結果を表示するために使用することができる。デバイス220は、医師、看護師、または他の医療専門家に試験結果を送るために使用することができる。
【0033】
ここで図4を参照すると、装置200の概要が提供されている。図4のセクションAは、(外部ハウジングを除く)組み立て後の構成要素の3D図を示している。図4のセクションBは、装置200のエンジニアリングプロトタイプの写真を提供している(ここでも、外部ハウジングを除く)。図4のセクションCは、セクションBに示される装置200の実施形態によってイメージングされた、ドーナツ式PCRチップ100内の100スポットアレイの蛍光画像を示す。装置200の特定の実施形態は、(例えばUltimaker3などの適切なデバイスを使用して)3D印刷された構造的構成要素を含んでもよい。他の構成要素として、市販されている広く入手可能なモジュールが含まれてもよい。セクションBに示される実施形態では、スマートフォンは、カメラ、画像処理ユニット、ユーザインターフェース、および無線データ送信機として機能する。図4に示す実施形態では、壁電源を使用しているが、内部にパワーバンクを備えており、最大60分の動作を(例えば、1回の完全な試料分析に加えて、必要となる可能性のある余分な時間を考慮して)行うことができる。
【0034】
図5は、装置200によって実行される分析の概念図またはフローチャートを提供しており、これは、4つの主要なシステム、すなわち、蛍光イメージングシステム210、ユーザインターフェース220、機械システム230、および熱制御システム240で実行されるステップを含む。装置200を操作するための一般的なプロセスの概要を、適切な試料、dNTP、DNAポリメラーゼ、およびバッファー試薬が装填されたドーナツ式PCRチップ100と併せて以下に提供する。
【0035】
ユーザは、最初に装置200の電源を入れることができ、これにより、初期化の前に、システムチェック(例えば、コントローラが接続されていることの確認、カメラ機能および光源照明のチェック)が実行される。装置200の初期化中に、熱制御システムがオンになり、次に、加熱ブロックを所定の温度に加熱し、それらを安定した温度に維持することできる。より詳細な温度制御方法の情報は、熱制御システムのセクションでさらに説明される。加熱ブロックプロセスに加えて、温度記録も同時に開始できる。熱制御システムは、実験が完了するまで連続的に動作し得る。また、システム初期化プロセスには、蛍光イメージングシステムの電源を起動し、光源のエネルギーパワーをチェックし、カメラのフォーカスを確認し、初期化画像を記録に残せる状態であることを確認することが含まれる。次に、システムは、可動機械部品の位置をリセットする。これには、例えば、加熱ブロックを保持しているフレームをクランプ解除位置に戻すことと、チップホルダをアンロード/排出位置に設定することと、チップを装填する準備をすることと、が含まれる。
【0036】
装置200は、装置が実験または分析の準備ができていることを示すディスプレイを含み得る。次に、ユーザは、装置200に装填するためにチップを準備することができる。次に、ユーザはチップを挿入して装填し、チップが装填されて配置されていることを確認できる。装置200は、加熱ブロックがチップをクランプするように構成することができる。次に、装置200は、開始の準備ができていることを示し、実験/分析のためのカウントダウンを表示する。次に、装置200は、カメラを使用して、所定の間隔(例えば、45秒ごと)で1つの画像を撮影することにより、蛍光イメージングシステムタイマーを開始/リセットする。所定の各間隔の後、チップ内の蛍光物質を励起するために光源がオンになる。特定の実施形態では、励起フィルタを備えたレーザまたはLED光を、潜在的な光源と見なすことができる。
【0037】
次に、装置200は、カメラを使用して、現在のチップの蛍光画像を捕捉して保存することができる。異なるタイプの蛍光物質と機器の設計には、異なる蛍光フィルタセットが必要になる。次に、光源の電源を切り、所定の間隔で次の画像が撮影され得る。これを実験/分析が完了するまで繰り返すことができる。実験が完了すると、熱制御システムと蛍光イメージングシステムがスイッチオフになる。分析終了後、チップは自動的に排出される。チップの温度が高いため、ユーザは注意する必要がある。次に、機械システムの加熱ブロックをクランプ解除して、チップを排出する。装置200は、画像の分析を続け、データレポートを最終的に完成させることができる。その後、ユーザは次の実験に進むか、装置200の電源を切ることができる。
【0038】
ここで図6を参照すると、セクションAは、1つ以上のチップ100を保持するように構成されたチップホルダ205の3D図を示している。図6のセクションBは、ホルダ205に装填した後のチップ100の位置を示し、セクションCは、非装填位置(左側)と装填位置(右側)のチップ100を示している。図6のセクションDは、チップ100が装填されたチップホルダ205(この例では3D印刷により製造)の写真を提供している。
【0039】
装置200は、チップ装填および加熱ブロッククランプを含むが、これらに限定されない機能を実行する機械システム内の構成要素を含む。
【0040】
装置200におけるチップホルダ205の機能は、ドーナツ式PCRチップ100を挿入し、チップを所定の位置に垂直に移動するように導くことである。チップホルダは、3つの主要な部品、すなわち挿入スロット206、位置決めスロット207、およびモーション制御セット208を含む。挿入スロット206は、チップ挿入のために機器表面から押し出される。チップ100は、モーション制御セット208を導くとともに、チップ100が垂直方向に上下に移動するのを支持する挿入スロット206に挿入される。チップ100は、次に、位置決めスロット207に正確に配置される。
【0041】
位置決めスロット207の横側にある2つの垂直バーは、ガイドレール209として機能し、チップ100を垂直に上下に移動させるよう導くために使用される。モーション制御セット208は、2つの部品、すなわち可動構成要素211およびその固定具213を含む。特定の実施形態では、可動構成要素211は、直線モーションモータ、例えば、リニアアクチュエータまたはステップモータを利用する。モーション制御セット208の固定具213が固定のために使用され、チップ100の移動中の可動構成要素211の安定化を確実にする。挿入スロット206、位置決めスロット207、ガイドレール209、および固定具213は、集合的に、統合チップホルダ205を形成する。例示的な実施形態では、モーション制御セット208の可動構成要素211は、チップホルダ205上に組み立てられる。チップホルダ205全体と可動構成要素211を組み立てた後、それらは装置200内に固定される。チップ100の垂直移動のプロセスは、モーション制御セット208によって導かれ、指示される。ここで、ドーナツ式PCRチップ100は、垂直に移動されている物体である。
【0042】
実験の前に、チップホルダ205は非装填位置にリセットされ、可動構成要素211(例えば、リニアアクチュエータ)は、図6のセクションCの左側の図に示すように伸長する。チップ100を挿入した後、チップ100が位置決めスロット207に正確に配置されるまで、チップは短縮されたリニアアクチュエータとともに垂直に下に移動する。その際、図6のセクションDおよびセクションCの右図に示すように、チップ100の上端と下端の両方が挿入スロット206(チップ100の下端の一部)および位置決めスロット207に取り付けられ、垂直に留まる。実験後、可動構成要素211は、伸長し、チップ100を上方に移動させて、チップ100を排出するように指示する。
【0043】
他の実施形態(図示せず)では、チップホルダは、異なる形状を含んでもよく、異なるタイプの機器を収容してもよい。特定の実施形態では、チップホルダは、チップ自体のみを移動させるのではなく、垂直に上下に移動させることができる。
【0044】
チップホルダ205は、実験または分析が実行される前に、可動構成要素211によって駆動され、チップ挿入のために挿入スロット206を装置200から押し出す。チップ100を挿入した後、チップ100は、位置決めスロット207の下部に直接接触し、チップの上端は、挿入スロット206と平行になる。次に、可動構成要素211は、チップホルダ205全体を駆動して下方に移動させ、次に挿入スロット206の一部を装置200に引き戻し、チップ装填のプロセスを完了する。
【0045】
実験後、可動構成要素211は、チップ100を運ぶチップホルダ205とともに上方に移動して、挿入スロット206を機器200の表面から押し出す。その後、チップ100を取り外すことができる。
【0046】
図7のセクションAは、チップ100を保持するように構成されたチップホルダ205の代替設計を示している。図7のセクションBは、チップホルダ205を装填するように構成された装填機構215のための4つの異なる構成を提供している。各実施形態は、ヒータを含むが、チップホルダ205をヒータ間の位置に出し入れするための異なる構成要素も含む。第1の実施形態は、リードスクリューおよびリードナットを備えたステッピングモータを含む。第2の実施形態は、チップホルダに結合されたフォロアを上下させるために水平軸の周りを回転するカムを備えたステッピングモータを含む。第3の実施形態は、チップホルダに結合されたフォロアを上下させるために垂直軸の周りを回転するカムを備えたステッピングモータを含む。第4の実施形態は、チップホルダ205に係合して上昇および下降するように構成されたローラーギアおよびローラーに結合されたモータを含む。図7のセクションCは、チップホルダおよびチップの各側のヒータをクランプするように構成されたクランプ機構225の3つの異なる実施形態を示している。各実施形態は、構成要素の移動を制御するように構成されたステッピングモータと、ヒータに接触するように構成されたクランプブロックと、を含む。第1の実施形態は、ステッピングモータに結合されたカムと、クランプブロックに結合されたフォロアとを含む。この実施形態はまた、ガイドレール上の複数のバネを含み、バネは、クランプブロックにヒータに向かって力を印加するように付勢されている(例えば、バネはクランプ位置に向かって付勢されている)。カムが回転すると、フォロアと係合し、バネ力を打ち消して、クランプブロックをヒータから(例えば、クランプ解除位置に)遠ざけることができる。
【0047】
図7のセクションCの第2の実施形態は、前述の実施形態と同様の構成を有するクランプ機構225を示している。しかしながら、この実施形態は、カムの代わりに、リードスクリューおよびリードナットの配置を利用して、クランプブロックをヒータに近づけたり、ヒータから遠ざけたりする。図7のセクションCに示される第3の実施形態は、ヒンジ機構の周りを旋回するクランプブロックと係合するステッピングモータおよびカムを備えたクランプ機構225を示している。この実施形態はまた、旋回クランプブロックをヒータに向かって付勢するように構成されたねじりバネを含む。
【0048】
ここで、図8および9を参照すると、個々のフレームおよび組み立てフレームの斜視図が示されている。フレームの主な機能は、加熱ブロックを垂直に固定することである。ここに示されているフレームには2つの部品が存在し、本明細書ではフレームアルファおよびフレームベータと称されることもある。
【0049】
図8のセクションAは、サブフレーム410(フレームアルファとも称される)の斜視図を提供し、一方、図8のセクションBは、サブフレーム420(フレームベータとも称される)の斜視図を提供している。図8のセクションCは、フレーム450を形成するためにサブフレーム410の近位に配置されたサブフレーム420を示している。両方のフレームは、ベース、主構造キャリア、およびプレスバーの3つの主要な構成要素を含む。ベースは、フレーム全体と摺動プラットフォーム間の接続および固定に使用される。図8のセクションAは、ベース411および主構造キャリア412を備えたサブフレーム410を示し、図8のセクションBは、ベース421および主構造キャリア422を備えたサブフレーム420を示している。図9のセクションAは、サブフレーム410と組み合わせて使用するためのプレスバー413および414、ならびにサブフレーム420と組み合わせて使用するためのプレスバー423および424を示している。さらに、図9のセクションAは、プレスバー413および414に結合された加熱ブロック415および416、ならびにプレスバー423および424に結合された加熱ブロック425および426を示している。図9のセクションBは、サブ構成要素が組み立てられたフレーム450を示している。明確化のために、セクションBで全ての個々の構成要素にラベル付けされているわけではない。
【0050】
主構造キャリア412および422は、フレーム450において主な役割を果たし、それらの主な機能は、プレスバー413、414、423および424を爪部417および427(図8のセクションAおよびBにラベル付けされている)に固定することである。特定の実施形態では、製造用ベース411および421ならびに構造キャリア412および422は、それぞれ、単一の部品として作製することができる。各構成要素を硬質材料から製造して、その形状および形態を維持することができる。3D印刷のプロトタイプ作成には、ポリ乳酸(PLA)材料およびアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)材料などが適した材料になり得る。
【0051】
プレスバー413、414、423および424の機能は、加熱ブロック415、416、425および426を固定することである。図9に示すように、プレスバー413、414、423および424の形状は、扁平U字形である。プレスバーは高温でその形状を維持する必要があるため、耐熱材料が提案されている。特定の実施形態では、ポリカーボネート(PC)またはセラミック材料をプレスバーに使用することができる。
【0052】
プレスバー413、414、423および424をフレーム450に(サブフレーム410および420を介して)結合した後、加熱ブロック415、416、425および426は、垂直に直立して配置される。サブフレーム410により、前部の2つの加熱ブロック415および416を組み立て、サブフレーム420により、後部の2つの加熱ブロック425および426を組み立てる。サブフレーム410および420(フレームアルファおよびフレームベータとも称される)の構成(例えば、形状および寸法)は異なっており、これにより、2つの完全に組み立てサブフレームの入れ子を容易にする。図8に示すように、リニアアクチュエータ430は、サブフレーム410とサブフレーム420との間に結合される。リニアアクチュエータ430が伸長すると、加熱ブロック425および426は、加熱ブロックがチップ100に完全に係合またはクランプするまで、加熱ブロック415および416に近づく。リニアアクチュエータ430が短くなると、加熱ブロック425および426は、加熱ブロックがチップ100を正常に係合解除またはクランプ解除するまで、加熱ブロック415および416から離れる方向に移動する。
【0053】
図10は、チップ100の垂直装填およびクランプを提供するように構成された機械システム500の概要を提供する。図10のセクションAは、クランプ解除位置にある機械システム500の側面図を示している。この図では、リニアアクチュエータ430は後退位置にあり、サブフレーム420はリニアアクチュエータ430に向かって移動している。
【0054】
図10のセクションBは、クランプ位置にある機械システム500の側面図を示している。この図では、リニアアクチュエータ430は伸長位置にあり、サブフレーム420はリニアアクチュエータ430から離れてチップ100に向かって移動している。
【0055】
図10のセクションCは、クランプ位置にある機械システム500の斜視図を提供し、セクションDは、装填されたドーナツ式PCRチップ100を備えた機械システム500の写真を提供している。明確のために、図10では全ての構成要素に参照番号をラベル付けしていない。
【0056】
サブフレーム410および420は、フレームの前後への移動を容易にするために、摺動構成要素460で支持することができる。特定の実施形態では、(構成要素番号SC8UUによって識別される)市販のリニアベアリングプラットフォームを摺動構成要素に使用することができる。特定の実施形態では、摺動構成要素は、摺動プラットフォーム、摺動バー、およびクランプスタンドを含むことができる。摺動式プラットフォームの表面は水平であり、フレームベース411および421に結合されている。摺動プラットフォームは、摺動バーに結合されており、摺動バーに沿って前後に移動し得る。
【0057】
例示的な実施形態では、摺動プラットフォームの設計をカスタマイズして、摩擦を最小限に抑える機能を維持することができる。一実施形態では、摺動バーは、直径8mmのステンレス鋼の表面ガラスシリンダである。特定の実施形態では、2つの摺動バーをプラットフォームに使用することができる。摺動バーは、多くの市販製品から選択でき、様々な寸法および材料のうちのいずれかであり得る。クランプスタンドは、摺動バーの固定および配置に使用される。特定の実施形態では、3セットのクランプスタンドを使用することができ、各セットは2つのクランプスタンドを含む。クランプスタンドのうちの1つのセットは、クランププロセス中にドーナツ式PCRチップ100を破壊することを回避するために、過度の移動を防止する目的で、2つのセットの摺動プラットフォームの間に仕切りおよび緩衝物を形成する。
【0058】
本発明の例示的な実施形態はまた、加熱ブロック415、416、425および426を介してチップ100の2つの異なる温度を維持するように構成された熱制御システムを含む。ここで図11のセクションAを参照すると、加熱ブロック415および416について正面図および背面図が提供されている。図11に示すように、加熱ブロック416は、ブロック416の一方の縁に近位の先細開口418を含む。以下でさらに説明するように、先細開口418により、蛍光イメージングが可能となる。先細開口418の中心は、加熱ブロック416がクランプ位置にあるときに、装填されたドーナツ式PCRチップ100上の無標識マイクロアレイの位置に対応する。示される実施形態では、加熱ブロック415および425は、動作中に95℃に設定され、加熱ブロック416および426は、動作中に60℃に設定される。
【0059】
図12は、本発明による熱制御システムの例示的な実施形態の異なる態様を示している。セクションAは、加熱ブロックに取り付けられた熱源431の3D図の概略斜視図を示し、セクションBは、ヒータブロック(例えば、ブロック426)に結合された接着性の可撓性ヒータとして構成された熱源431の写真を提供している。図12のセクションCは、ドーナツ式PCRチップチャンバの下の加熱ブロック425および426に埋め込まれた温度センサ432の部分断面図を示している。図12のセクションDは、チップ100の横側および加熱ブロック425および426の表面に取り付けられた温度センサ432を示している。図12のセクションEは、熱電対およびサーミスタとして構成された温度センサ432の写真を提供している。さらに、図12のセクションEは、表面接着RTDセンサを含む様々な温度センサを示している。図12のセクションFは、熱制御ボード610のプロトタイプを含む、熱制御システム600の写真を提供している。図12のセクションGは、摂氏測定された加熱ブロック温度と秒単位の時間の応答曲線を示している。
【0060】
特定の例示的な実施形態では、加熱ブロックは、表面がガラスで覆われた熱導電性ボードである。特定の実施形態では、加熱ブロックは、ドーナツ式PCRチップの少なくとも半分をカバーし得る幅および長さを有する。加熱ブロックの原理は、加熱された加熱ブロックのガラスで覆われた表面にチップをクランプすることにより、チップを所定の温度に加熱することである。図に示される特定の実施形態では、合計4つの個別の加熱ブロックが使用される。機器の動作中、2つの加熱ブロックは95℃の温度を維持し、他の2つは60℃の温度を維持する。
【0061】
安定した温度制御に使用される加熱ブロックの総数は様々であり得る。例えば、図11では、温度を維持するための良好なフィードバック制御ループを考慮すると、ヒータ415および416のみの使用で十分であり得る。図に示す実施形態では、温度の堅牢性と耐故障性のために4つの加熱ブロックを使用している。加熱ブロックに使用される材料は、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮、または熱伝導に適した他の材料であり得る。加熱ブロックの厚さは、所望の温度および熱源の特性に基づいて調整できる。図に示される例示的な実施形態では、3ミリメートルの厚さのアルミニウム板が加熱ブロックに使用される。
【0062】
例示的な実施形態では、温度センサは、図12のセクションCおよびDに示すように、加熱ブロックの表面上に組み立てられるか、または加熱ブロックに埋め込まれ得る。図示の実施形態では、温度センサは、ドーナツ式PCRチップ温度の最も正確な温度読み取りを達成するために、加熱ブロックがドーナツ式PCRチップに接触する位置で加熱ブロックに埋め込まれている(図12のセクションCを参照されたい)。例示的な実施形態では、温度センサは、20℃~105℃までの温度を、応答時間≦1秒、精度≦1.5℃で正確に測定できることが望ましい。図に示されている実施形態は、OMEGA熱電対タイプTを利用した。実験的に、他のタイプの熱電対でも同様の結果が得られることが観察されている。または、代わりに抵抗温度検出器(RTD)またはサーミスタを使用することもできる。埋め込み温度センサ方式を適用する場合、加熱ブロックの形状は温度センサの形状に対応する必要があることに注意されたい。
【0063】
本開示の例示的な実施形態はまた、加熱ブロックに熱を提供する熱源を含む。図示の実施形態は、カプトンポリイミド接着剤可撓性ヒータを含む。このヒータは加熱ブロックの表面に付着するが、ドーナツ式PCRチップには直接接触しない。ヒータは、熱源に供給される電力を変更することで温度を維持する。あるいは、加熱ワイヤを含む加熱プレートは、加熱ブロックまたはヒータを置き換えることができる。具体的には、熱源は、電気エネルギーの熱への変換を介して加熱ブロックの急速な加熱を提供することができるが、急速な冷却はできないことに留意されたい。
【0064】
例示的な実施形態は、温度コントローラの中心的な態様として、温度センサのフィードバックループをさらに含む。温度コントローラは、温度センサから温度を読み取り、(1)目的の温度への加熱を迅速に実行し、(2)環境による潜在的変動があっても温度を正確に維持するように、加熱ブロックへの電力供給を導く。例示的な実施形態は、アルドゥイーノマイクロコントローラを使用して、増幅器モジュールを介して熱電対の温度を正確に読み取り、熱源の電力を制御することができる。あるいは、一般的なPID(比例積分微分)コントローラにより、同じ機能を実現できる。
【0065】
本発明の例示的な実施形態はまた、少なくとも40ピクセル×40ピクセルのアレイ内の空間情報を収集するように構成された光学蛍光イメージングシステムを含む。ここで図13を参照すると、例示的な光学蛍光イメージングシステムの概要が示されている。図13のセクションAは、従来のまたは典型的な蛍光顕微鏡構成を含むシステム700を示し、セクションBは、プロトタイプ機器に使用される光学システム800の概略図を示す。
【0066】
ドーナツ式PCRチップ100の蛍光イメージングには、光源710、光をチップ100の適切な領域に誘導および集束するための光学モジュール720、他の波長のバックグラウンド信号を低減するための発光フィルタ730、ならびに光検出器アレイ740または画像取得用カメラが必要である。
【0067】
図13のセクションAに示す実施形態では、システム700はまた、より長い波長の光を通過させながら、より短い波長の光を反射するハイパスミラーであるダイクロイックミラー750を含む。これにより、励起光は試料に反射されて対物レンズを通過し、蛍光物質を励起する。放出された光子は約20nm赤方偏移し、ダイクロイックミラー750を通過する。信号対雑音比を改善するために、発光フィルタ730を適用して、他の波長のバックグラウンド光を遮断する。最後に、放出光は、より良い倍率および集束のために接眼レンズ760を通過する。
【0068】
上記は、蛍光顕微鏡で使用される蛍光イメージングの標準的な方法を説明している。図13のセクションBは、より携帯性が高く、スマートフォンカメラと互換性のあるシステム800の単純化された代替設計を提示している。システム800は、1つの発光フィルタ830および1つの緑色光レーザ(532nm)810のみを使用する。示される実施形態では、緑色レーザ810は、コヒーレント光源として機能し、チップ表面に対して45℃の角度に向けられる。DNAマイクロアレイは、発光フィルタ830を通して明確に視覚化することができる。レーザの代わりに代替光源(例えば、発光ダイオード(LED)またはアークランプ)を使用することもできるが、追加の励起フィルタが必要になり、フォーカスを合わせる必要がある。
【0069】
図13のセクションAを参照すると、光学レンズ760を使用して倍率が提供される。科学的カメラまたは携帯電話カメラのいずれかにより、専用ソフトウェアによるダウンストリーム画像処理用の鮮明なマイクロアレイ画像を生成できる。図2のセクションEに示される画像は、標準のフィルタセットを備えた科学的カメラを使用して撮影された。図4のセクションCの画像は、図12のセクションBに示されるセットアップを使用して、iPhone6sを使用して撮影された。あるいは、適切に配置された光検出器のアレイは、マイクロアレイのスポット輝度に関する関連情報を提供するように機能してもよい。
【0070】
本明細書に開示および請求される全ての方法は、本開示に照らして過度の実験なしに作成および実行することができる。本発明の組成物および方法は、好ましい実施形態に関して説明されてきたが、当業者には、本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載されている方法およびそのステップまたはステップの順序に変形例を適用できることが明らかであろう。より具体的には、化学的および生理学的に関連する特定の試薬が、同じまたは同様の結果が達成される一方で、本明細書に記載の試薬の代わりになり得ることが明らかであろう。当業者に明らかなかかる全ての同様の代替物および修正物は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神、範囲および概念の範囲内であると見なされる。
【0071】
V.参考文献
以下の参考文献は、それらが本明細書に記載されたものを補足する例示的な手順または他の詳細を提供する範囲で、参照により本明細書に具体的に組み込まれる。
PCT特許出願公開第WO2017/172760号
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6a
図6b
図6c
図6d
図7a
図7b
図7c
図8a
図8b
図8c
図9
図10a
図10b
図10c
図10d
図11
図12a
図12b
図12c
図12d
図12e
図12f
図12g
図13