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特許7590964抗Taq DNAポリメラーゼ抗体及びその用途
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  • 特許-抗Taq  DNAポリメラーゼ抗体及びその用途 図1
  • 特許-抗Taq  DNAポリメラーゼ抗体及びその用途 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】抗Taq DNAポリメラーゼ抗体及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/40 20060101AFI20241120BHJP
   C07K 16/12 20060101ALI20241120BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241120BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241120BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241120BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241120BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241120BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20241120BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20241120BHJP
【FI】
C07K16/40 ZNA
C07K16/12
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/13
C12P21/08
C12Q1/686 Z
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021526467
(86)(22)【出願日】2019-10-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-01
(86)【国際出願番号】 CN2019109791
(87)【国際公開番号】W WO2020125135
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-05-12
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】201811566184.2
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521204910
【氏名又は名称】ファポン バイオテック インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】FAPON BIOTECH INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ,ペン
(72)【発明者】
【氏名】フー,ジーチアン
(72)【発明者】
【氏名】メン,ユアン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ドンメイ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ハオ
(72)【発明者】
【氏名】リアン,ビー
(72)【発明者】
【氏名】ヨウ,フイ
(72)【発明者】
【氏名】マー,チウヤン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ウェイジー
【合議体】
【審判長】上條 肇
【審判官】深草 亜子
【審判官】福井 悟
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107828755(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108546749(CN,A)
【文献】Biotechnology,1994,Vol.12,No.5,pp.506-509
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N1/00-7/08
C07K1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAPLUS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗Taq DNAポリメラーゼの抗原結合ドメインを含む分離された結合タンパク質であって、
前記抗原結合ドメインは、下記アミノ酸配列から選ばれる6つの相補性決定領域を含み、
相補性決定領域CDR-VH1は、S-V-X1-T-F-X2-T-Y-Y-X3-Yであり、ここで、X1はD、E又はNであり、X2はS又はTであり、X3はIであり、
相補性決定領域CDR-VH2は、G-X1-N-P-T-S-X2-P-V-F-X3-E-Kであり、ここで、X1はI、V又はLであり、X2はN又はGGであり、X3はNであり、
相補性決定領域CDR-VH3は、T-R-S-X1-X2-R-R-G-Y-Y-X3-D-Yであり、ここで、X1はI、V又はLであり、X2はI、V又はLであり、X3はFであり、
相補性決定領域CDR-VL1は、R-X1-S-Q-D-I-X2-N-Y-X3-Nであり、ここで、X1はAであり、X2はN又はQであり、X3はI、V又はLであり、
相補性決定領域CDR-VL2は、I-Y-X1-T-S-R-L-X2-S-G-X3-Pであり、ここで、X1はYであり、X2はQ、H又はNであり、X3はI、V又はLであり、
相補性決定領域CDR-VL3は、Q-D-D-T-X1-P-X2-T-X3-Gであり、ここで、X1はI、V又はLであり、X2はI、V又はLであり、X3はFであり、
前記6つの相補性決定領域の突然変異部位は、下記の突然変異の組み合わせから選ばれるいずれか1種であ
前記結合タンパク質は、配列が順に配列番号1~4に示される軽鎖フレームワーク領域FR-L1、FR-L2、FR-L3及びFR-L4、並びに/又は、配列が順に配列番号5~8に示される重鎖フレームワーク領域FR-H1、FR-H2、FR-H3及びFR-H4を含む、ことを特徴とする結合タンパク質。
【請求項2】
前記結合タンパク質はF(ab’)2、Fab’、Fab、Fv、scFv、二重特異性抗体及び抗体の最小認識単位のうちの1つであることを特徴とする請求項1に記載の結合タンパク質。
【請求項3】
前記結合タンパク質は、さらに抗体定常領域配列を含む、ことを特徴とする請求項に記載の結合タンパク質。
【請求項4】
前記定常領域配列は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgE、IgDから選ばれるいずれか1つの定常領域の配列である、ことを特徴とする請求項に記載の結合タンパク質。
【請求項5】
前記定常領域はウシ、ウマ、乳牛、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ラット、マウス、イヌ、ネコ、ウサギ、ラクダ、ロバ、シカ、テン、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、シチメンチョウ、シャモ又はヒトの物種に由来する、ことを特徴とする請求項に記載の結合タンパク質。
【請求項6】
前記定常領域はマウスに由来し、
軽鎖定常領域配列は配列番号9に示され、
重鎖定常領域配列は配列番号10に示されることを特徴とする請求項5に記載の結合タンパク質。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の結合タンパク質をコードすることを特徴とする分離された核酸。
【請求項8】
請求項に記載の核酸を含むことを特徴とするベクター。
【請求項9】
請求項に記載の核酸又は請求項8に記載のベクターを含むことを特徴とする宿主細胞。
【請求項10】
培地において請求項に記載の宿主細胞を培養し、産生された結合タンパク質を培地から又は培養された宿主細胞から回収するステップを含むことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の結合タンパク質の生産方法。
【請求項11】
PCRにおける請求項1~のいずれか1項に記載の結合タンパク質の使用。
【請求項12】
請求項1~のいずれか1項に記載の結合タンパク質、請求項10に記載の分離された核酸又は請求項11に記載のベクターの1種又は複数種を含むことを特徴とするキット。
【請求項13】
請求項1~のいずれか1項に記載の結合タンパク質と、Taq DNAポリメラーゼとを含む組成物。
【請求項14】
さらに4種のデオキシリボヌクレオシド三リン酸、プライマー、プローブ、MgCl、または鋳型としての核酸を含む請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1~のいずれか1項に記載の結合タンパク質又は請求項13又は14に記載の組成物を用いてホットスタートPCRを行うことを含む核酸増幅方法。
【請求項16】
前記ホットスタートPCRはマルチプレックスPCR、リアルタイムPCR及びリアルタイム定量PCRからなる群から選ばれる請求項15に記載の方法。
【請求項17】
核酸を増幅させるための、請求項1~のいずれか1項に記載の結合タンパク質の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は2018年12月20日に中国国家知識産権局に提出された出願番号が201811566184.2で、発明の名称が「抗Taq DNAポリメラーゼ抗体及びその用途」である中国特許出願の優先権を主張し、その全内容は引用によりに組み込まれる。
【0002】
本開示は生物工学及び医療技術分野に関し、特に抗Taq DNAポリメラーゼ抗体及びその用途に関する。
【背景技術】
【0003】
Randall K.Saikiらが1988年にテルムス・アクウァーティクス(Thermus aquaticus)に対する分離・精製でTaq DNAポリメラーゼを得た。Taqポリメラーゼは活性を失わずに90℃以上の高温に耐えられ、これは高温環境を必要とするPCR反応にとって特に重要である。したがって、TaqポリメラーゼはこれまでにPCR反応によく使用される大腸菌(Escherichia coli)中のDNAポリメラーゼに取って代わっている。PCR反応でTaqポリメラーゼを用いる場合、サイクルごとに酵素を加える必要がないため、PCR技術は実行しやすく、コストが大幅に低下し、幅広く用いられるようになり、臨床的にも利用される。しかしTaq DNAポリメラーゼは使用中にいくつかの欠点がある。即ち、常温で一定の酵素特性を有するため、PCR増幅プロセスでの非特異的な増幅及びプライマー二量体の形成を招いて、長期安定性に問題がある。
【0004】
よって、PCR技術の利用拡大とPCR増幅の品質要件の向上に伴い、新たな方法と技術が次々と開発され、中でもホットスタート酵素技術が登場して以来、通常のTaq DNAポリメラーゼの酵素特性が確実に改善されている。現在よく用いられる方法として、抗体修飾によるホットスタート酵素、化学修飾によるホットスタート酵素があり、このうち抗体修飾によるホットスタート酵素の方が一般的に用いられる。
【0005】
抗体修飾によるホットスタート酵素は、特異性Taq酵素が用いられたモノクローナル抗体であり、特異性Taq酵素のモノクローナル抗体がTaq DNAポリメラーゼと結合すると抗原抗体複合体が形成され、室温でTaq DNAポリメラーゼの活性を効果的にブロックして、低温ではポリメラーゼ活性を発揮しないようにし、高温では、当該複合体が解離し、活性を有するTaq DNAポリメラーゼを放出してから、PCR増幅反応が行われるため、プライマー二量体の形成が効果的に避けられ、非特異的産物の増幅が緩和されるとともに、Taq DNAポリメラーゼの長期安定性が改善される。
【0006】
抗体修飾によるホットスタート酵素に使用される特異性Taq酵素の抗体にはさらなる開発の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示はTaq DNAポリメラーゼ抗原結合ドメインを含む分離された新規結合タンパク質に関し、当該結合タンパク質の製造、用途などについて研究する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記抗原結合ドメインは、下記アミノ酸配列から選ばれる少なくとも1つの相補性決定領域を含むか、又は下記アミノ酸配列の相補性決定領域と少なくとも80%の配列同一性を有し且つTaq DNAポリメラーゼに対してKD≦8.568×10-9mol/Lの親和性を有し、
相補性決定領域CDR-VH1は、S-V-X1-T-F-X2-T-Y-Y-X3-Yであり、ただし、 X1はD、E又はNであり、X2はS又はTであり、X3はI又はLであり、
相補性決定領域CDR-VH2は、G-X1-N-P-T-S-X2-P-V-F-X3-E-Kであり、ただし、 X1はI、V又はLであり、X2はN又はGGであり、X3はD、E又はNであり、
相補性決定領域CDR-VH3は、T-R-S-X1-X2-R-R-G-Y-Y-X3-D-Yであり、ただし、 X1はI、V又はLであり、X2はI、V又はLであり、X3はF又はPであり、
相補性決定領域CDR-VL1は、R-X1-S-Q-D-I-X2-N-Y-X3-Nであり、ただし、 X1はA又はGであり、X2はN又はQであり、X3はI、V又はLであり、
相補性決定領域CDR-VL2は、I-Y-X1-T-S-R-L-X2-S-G-X3-Pであり、ただし、 X1はY又はFであり、X2はQ、H又はNであり、X3はI、V又はLであり、
相補性決定領域CDR-VL3は、Q-D-D-T-X1-P-X2-T-X3-Gであり、ただし、 X1はI、V又はLであり、X2はI、V又はLであり、X3はW又はFである。
【0009】
1つの大きな利点は、前記結合タンパク質は活性が強く、Taq DNAポリメラーゼに対して非常に高い親和性を有することである。
【0010】
1つ又は複数の実施形態では、
前記相補性決定領域CDR-VH1で、X3はIであり、
前記相補性決定領域CDR-VH2で、X3はNであり、
前記相補性決定領域CDR-VH3で、X3はFであり、
前記相補性決定領域CDR-VL1で、X1はAであり、
前記相補性決定領域CDR-VL2で、X1はYであり、
前記相補性決定領域CDR-VL3で、X3はFである。
【0011】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH1で、X1はDであり、X2はSである。
【0012】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH1で、X1はEであり、X2はSである。
【0013】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH1で、X1はNであり、X2はSである。
【0014】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH1で、X1はDであり、X2はTである。
【0015】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH1で、X1はEであり、X2はTである。
【0016】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH1で、X1はNであり、X2はTである。
【0017】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH2で、X1はIであり、X2はNである。
【0018】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH2で、X1はIであり、X2はGGである。
【0019】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH2で、X1はVであり、X2はNである。
【0020】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH2で、X1はVであり、X2はGGである。
【0021】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH2で、X1はLであり、X2はNである。
【0022】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH2で、X1はLであり、X2はGGである。
【0023】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH3で、X1はIであり、X2はIである。
【0024】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH3で、X1はIであり、X2はVである。
【0025】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH3で、X1はIであり、X2はLである。
【0026】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH3で、X1はVであり、X2はIである。
【0027】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH3で、X1はVであり、X2はVである。
【0028】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH3で、X1はVであり、X2はLである。
【0029】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH3で、X1はLであり、X2はIである。
【0030】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH3で、X1はLであり、X2はVである。
【0031】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH3で、X1はLであり、X2はLである。
【0032】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL1で、X2はNであり、X3はIである。
【0033】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL1で、X2はNであり、X3はVである。
【0034】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL1で、X2はNであり、X3はLである。
【0035】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL1で、X2はQであり、X3はIである。
【0036】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL1で、X2はQであり、X3はVである。
【0037】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL1で、X2はQであり、X3はLである。
【0038】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL2で、X2はQであり、X3はIである。
【0039】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL2で、X2はQであり、X3はVである。
【0040】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL2で、X2はQであり、X3はLである。
【0041】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL2で、X2はHであり、X3はIである。
【0042】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL2で、X2はHであり、X3はVである。
【0043】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL2で、X2はHであり、X3はLである。
【0044】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL2で、X2はNであり、X3はIである。
【0045】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL2で、X2はNであり、X3はVである。
【0046】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL2で、X2はNであり、X3はLである。
【0047】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL3で、X1はIであり、X2はIである。
【0048】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL3で、X1はIであり、X2はVである。
【0049】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL3で、X1はIであり、X2はLである。
【0050】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL3で、X1はVであり、X2はIである。
【0051】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL3で、X1はVであり、X2はVである。
【0052】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL3で、X1はVであり、X2はLである。
【0053】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL3で、X1はLであり、X2はIである。
【0054】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL3で、X1はLであり、X2はVである。
【0055】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL3で、X1はLであり、X2はLである。
【0056】
1つ又は複数の実施形態では、各相補性決定領域の突然変異部位は、下記の突然変異の組み合わせから選ばれるいずれか1種である。
【0057】
【0058】
1つ又は複数の実施形態では、前記結合タンパク質は少なくとも3つのCDRを含み、又は、前記結合タンパク質は少なくとも6つのCDRを含む。
【0059】
1つ又は複数の実施形態では、前記結合タンパク質は可変領域及び定常領域を含む完全な抗体である。
【0060】
1つ又は複数の実施形態では、前記結合タンパク質はナノボディ、F(ab’)2、Fab’、Fab、Fv、scFv、二重特異性抗体及び抗体の最小認識単位のうちの1つである。
【0061】
1つ又は複数の実施形態では、前記結合タンパク質は配列が順に配列番号1~4に示される軽鎖フレームワーク領域FR-L1、FR-L2、FR-L3及びFR-L4、及び/又は、配列が順に配列番号5~8に示される重鎖フレームワーク領域FR-H1、FR-H2、FR-H3及びFR-H4を含む。
1つ又は複数の実施形態では、前記結合タンパク質はさらに抗体定常領域配列を含む。
【0062】
1つ又は複数の実施形態では、前記定常領域配列はIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgE、IgDから選ばれるいずれか1つの定常領域の配列である。
【0063】
1つ又は複数の実施形態では、前記定常領域はウシ、ウマ、乳牛、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ラット、マウス、イヌ、ネコ、ウサギ、ラクダ、ロバ、シカ、テン、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、シチメンチョウ、シャモ又はヒトの物種に由来する。
【0064】
1つ又は複数の実施形態では、前記定常領域はマウスに由来し、
軽鎖定常領域配列は配列番号9に示され、
重鎖定常領域配列は配列番号10に示される。
【0065】
本開示はさらに、前記結合タンパク質をコードする分離された核酸を提供する。
【0066】
本開示はさらに、前記核酸を含むベクターを提供する。
【0067】
本開示の発現ベクターは形質転換宿主細胞に用いられる。このような形質転換細胞は本開示に含まれており、本開示の核酸断片及びベクターを増殖させるために用いられ、もしくは本開示のポリペプチドの培養細胞又は細胞株の組換え製造に用いられてもよい。
【0068】
本開示はさらに、培地において前記宿主細胞を培養し、産生された結合タンパク質を培地から又は培養された宿主細胞から回収するステップを含む前記結合タンパク質の生産方法を提供する。
本開示はさらに、PCRにおける前記結合タンパク質の使用を提供する。
【0069】
本開示はさらに、前記キットは前記結合タンパク質、前記分離された核酸又は前記ベクターの1種又は複数種を含むことを特徴とするキットを提供する。
【0070】
本開示はさらに、本開示に記載の結合タンパク質とTaq DNAポリメラーゼとを含む組成物を提供する。
【0071】
1つ又は複数の実施形態では、前記組成物はさらに4種のデオキシリボヌクレオシド三リン酸を含む。
【0072】
1つ又は複数の実施形態では、前記組成物はさらにプライマー及び/又はプローブを含む。
【0073】
1つ又は複数の実施形態では、前記組成物はさらにMgCl2を含む。
【0074】
1つ又は複数の実施形態では、前記組成物はさらに鋳型としての核酸を含む。
【0075】
本開示はさらに、本開示に記載の結合タンパク質又は本開示に記載の組成物を用いてホットスタートPCRを行うことを含む核酸増幅方法を提供する。
【0076】
1つ又は複数の実施形態では、ホットスタートPCRはマルチプレックスPCR、リアルタイムPCR及びリアルタイム定量PCRからなる群から選ばれる。
【0077】
本開示はさらに、試料中のTaq DNAポリメラーゼの検出方法であって、
a)抗体/抗原結合反応を行わせるのに十分な条件で、前記試料中のTaq DNAポリメラーゼを本開示の結合タンパク質に接触させて免疫複合体を形成するステップと、
b)前記免疫複合体の存在を検出し、前記複合体が存在することは前記試料に前記Taq DNAポリメラーゼが存在することを示すステップと、を含む方法を提供する。
【0078】
1つ又は複数の実施形態では、前記免疫複合体はさらに前記結合タンパク質に結合する第2抗体を含む。
【0079】
1つ又は複数の実施形態では、ステップa)で、前記免疫複合体はさらに前記Taq DNAポリメラーゼに結合する第2抗体を含む。
【0080】
本開示はさらに、核酸を増幅させるための本明細書に記載の結合タンパク質の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0081】
次に、本開示の特定の実施形態又は従来技術に係る技術案を一層明瞭に説明するために、特定の実施形態又は従来技術の説明で用いる図面を簡単に説明し、言うまでもないが、次に記載される図面は本開示のいくつかの実施形態であり、当業者が新規性のある作業をしなくても、これらの図面から他の図面を得ることができる。
図1図1は本開示の抗Taq DNAポリメラーゼの組換え抗体のモノクローナル抗体の電気泳動図である。
図2図2はTaq DNAポリメラーゼのPCR電気泳動図である。
【発明を実施するための形態】
【0082】
本開示は本開示のいくつかの実施形態に関する次の説明及び言及される実施例の詳細な内容から理解しやすくなるだろう。
【0083】
本開示のさらなる説明を行う前に理解されたいのは、実施形態と言っても様々な形態があるため、本開示は特定の実施形態に限定されないことである。さらに理解されたいのは、本明細書で使用される用語は特定の実施形態を説明するためのもので、本開示の範囲は特許請求の範囲によって限定されるため、前記用語は限定させるために使用するものではない。
【0084】
本明細書で特に定義がない限り、本開示で使用される科学用語及び技術用語は当業者が理解する通常の意味を有する。用語の意味及び範囲は明瞭にすべきであり、ただし不明瞭になる恐れがある場合は、本明細書に記載の定義は辞書又は外部の定義より優先する。本願で、特に説明がない限り、「又は」は「及び/又は」の意味で使用される。また、用語「含む」及びその他形態は非限定的に使用される。
【0085】
一般に、本明細書に記載の細胞と組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学とタンパク質-核酸化学及びハイブリダイゼーションで用いられる命名法及び関連の技術は本分野で周知され、一般的に用いられるものである。特に説明がない限り、本開示の方法及び技術は一般に本分野で周知され、しかも一般的な及びより具体的な参照文献に記載の通常の方法に従って行われ、前記参照文献は本明細書の全体に組み込まれ、検討される。酵素反応及び精製技術はメーカーの取扱説明書、本分野で通常の実施形態又は本明細書の記載に従って行われる。本明細書の説明で言及される分析化学、有機合成化学、医学及び製薬化学で用いられる命名法、その実験手順及び技術は本分野で周知され、一般的に利用されるものである。
【0086】
本開示を理解しやすいように選択された用語は、次の定義を有する。
【0087】
用語「アミノ酸」は天然に存在する又は天然には存在しないカルボキシルα-アミノ酸を表す。用語「アミノ酸」は本願で用いられる場合、天然に存在するアミノ酸及び天然には存在しないアミノ酸を含む。天然に存在するアミノ酸はアラニン(3文字略号はA1a、1文字略号はA)、アルギニン(Arg、R)、アスパラギン(Asn、N)、アスパラギン酸(Asp、D)、システイン(Cys、c)、グルタミン(G1n、Q)、グルタミン酸(G1u、E)、グリシン(G1y、G)、ヒスチジン(His、H)、イソロイシン(I1e、I)、ロイシン(Leu、L)、リシン(Lys、K)、メチオニン(Met、M)、フェニルアラニン(Phe、F)、プロリン(Pro、P)、セリン(Ser、S)、トレオニン(Thr、T)、トリプトファン(Trp、W)、チロシン(Tyr、Y)、バリン(Va1、V)を含む。天然には存在しないアミノ酸はα-アミノアジピン酸、アミノ酪酸、シトルリン、ホモシトルリン、ホモロイシン、ホモアルギニン、ヒドロキシプロリン、ノルロイシン、ピリジルアラニン、サルコシンなどを含み、これらに限定されない。
【0088】
用語「分離された結合タンパク質」とは、誘導起源又は由来のため、天然の状態において付随する天然結合成分と結合されないタンパク質、同じ種からの他のタンパク質を実質的に含まないタンパク質、異なる種の細胞によって発現されたタンパク質、又は自然界に存在しないタンパク質である。したがって、化学合成されたタンパク質又は天然由来細胞と異なる細胞系において合成されたタンパク質は、その天然結合成分と「分離された」ものである。また、分離、例えば本分野で周知されるタンパク質精製技術により、天然結合成分を実質的に含まないタンパク質であってもよい。
【0089】
用語「抗原結合ドメインを含む分離された結合タンパク質」とは一般にCDR領域を含むあらゆるタンパク質/タンパク質断片をいう。用語「抗体」はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体及びこれらの抗体の抗原化合物結合断片を含み、Fab、F(ab’)2、Fd、Fv、scFv、二重特異性抗体、抗体の最小認識単位、及びこれらの抗体と断片の一本鎖誘導体を含む。抗体のタイプはIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgE、IgDから選ばれる。また、用語「抗体」は天然に存在する抗体及び天然には存在しない抗体を含み、例えばキメラ(chimeric)、二機能性(bifunctional)、ヒト化(humanized)抗体、及び関連の合成アイソフォーム(isoforms)を含む。用語「抗体」は「免疫グロブリン」と入れ替えて使用する。
【0090】
抗体の「可変領域」又は「可変ドメイン」とは抗体の重鎖又は軽鎖のアミノ末端ドメインをいう。重鎖の可変ドメインは「VH」とも呼ばれる。軽鎖の可変ドメインは「VL」とも呼ばれる。これらのドメインは一般に抗体の最も可変的な部分で、しかも抗原結合部位を含む。軽鎖又は重鎖可変領域は、3つの「相補性決定領域」又は「CDR」とこれらを分断したフレームワーク領域(framework region)とから構成される。抗体のフレームワーク領域、即ち構成要素である軽鎖と重鎖の組み合わせのフレームワーク領域は、CDRを位置決め及び整列する役割を果たし、前記CDRは主に抗原に結合するように機能する。
【0091】
本明細書で使用される場合、「フレームワーク領域」、「骨格領域」、又は「FR」は抗体可変ドメインにおけるCDRとして定義された領域を除いた領域を意味する。各抗体可変ドメインのフレームワーク領域はさらにCDRによって分断された隣接領域(FR1、FR2、FR3及びFR4)に分けられる。
【0092】
一般には、重鎖及び軽鎖の可変領域VL/VHは、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4に示す順番でCDRとFRが組み合わせて接続されたものであってもよい。
【0093】
本明細書で使用される場合、ポリペプチド又は核酸に関連する用語「精製された」又は「分離された」とはポリペプチド又は核酸が天然の環境にない又は天然の状態ではないことをいう。したがって、用語「分離された」はその由来環境、例えば、天然に存在する場合は、天然環境から取り出されたポリペプチド又は核酸を含む。例えば、分離されたポリペプチドは通常、一般的にそれと結合もしくは混合している又は溶液中の少なくとも特定のタンパク質もしくはその他細胞成分を含まない。分離されたポリペプチドは細胞溶解物に含まれる天然に産生した前記ポリペプチド、精製された又は部分的に精製された前記ポリペプチド、組換えポリペプチド、細胞によって発現又は分泌された前記ポリペプチド、及び異種宿主細胞もしくは培養物における前記ポリペプチドを含む。核酸に関連して使用される場合、用語「分離された」又は「精製された」とは、例えば前記核酸がその天然のゲノムにないことをいう(例えば、ベクターにおいて、発現カセットとしてプロモーターに接続され、又は人工的に異種宿主細胞に導入されている)。
【0094】
本明細書で使用される用語「二重特異性抗体」又は「二機能性抗体」とは、2対の異なる重鎖/軽鎖及び2つの異なる結合部位を有する人工ハイブリッド結合タンパク質をいう。二重特異性結合タンパク質は、融合ハイブリドーマ又はFab’断片接続など様々な方法より生成されてもよい。
【0095】
本明細書で使用される用語「配列同一性」とは少なくとも2種の異なる配列間の類似性をいう。このパーセンテージ同一性は、例えばBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)、Needlemanらのアルゴリズム、又はMeyersらのアルゴリズムなどの標準的なアルゴリズムにより決定されてもよい。1つ又は複数の実施形態では、パラメータセットはBlosum 62スコアリング行列及びギャップペナルティ12、ギャップ伸張ペナルティ4、フレームシフトギャップペナルティ5であってもよい。
【0096】
1つ又は複数の実施形態では、2種のアミノ酸又はヌクレオチド配列間のパーセンテージ同一性はMeyersとMiller((1989)CABIOS 4:11-17)のアルゴリズムより決定されてもよく、当該アルゴリズムは既にALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれており、PAM120重み付き残差表、ギャップ長ペナルティ12、ギャップペナルティ4が用いられる。パーセンテージ同一性は一般に長さが近い配列の比較により計算される。
【0097】
本明細書で使用される用語「親和性」とはタンパク質又は抗体に結合する抗原結合ドメインと抗原又はエピトープの結合強度をいう。親和性はKD値で示してもよく、KD値が小さい方は親和性が高い。
【0098】
本開示は抗原結合ドメインを含む分離された結合タンパク質を提供し、前記抗原結合ドメインは、下記アミノ酸配列から選ばれる少なくとも1つの相補性決定領域を含むか、又は下記アミノ酸配列の相補性決定領域と少なくとも80%の配列同一性を有し且つTaq DNAポリメラーゼに対してKD≦8.568×10-9mol/Lの親和性を有し、
相補性決定領域CDR-VH1は、S-V-X1-T-F-X2-T-Y-Y-X3-Yであり、ただし、X1はD、E又はNであり、X2はS又はTであり、X3はI又はLであり、
相補性決定領域CDR-VH2は、G-X1-N-P-T-S-X2-P-V-F-X3-E-Kであり、ただし、X1はI、V又はLであり、X2はN又はGGであり、X3はD、E又はNであり、
相補性決定領域CDR-VH3は、T-R-S-X1-X2-R-R-G-Y-Y-X3-D-Yであり、ただし、X1はI、V又はLであり、X2はI、V又はLであり、X3はF又はPであり、
相補性決定領域CDR-VL1は、R-X1-S-Q-D-I-X2-N-Y-X3-Nであり、ただし、X1はA又はGであり、X2はN又はQであり、X3はI、V又はLであり、
相補性決定領域CDR-VL2は、I-Y-X1-T-S-R-L-X2-S-G-X3-Pであり、ただし、X1はY又はFであり、X2はQ、H又はNであり、X3はI、V又はLであり、
相補性決定領域CDR-VL3は、Q-D-D-T-X1-P-X2-T-X3-Gであり、ただし、X1はI、V又はLであり、X2はI、V又はLであり、X3はW又はFである。
【0099】
本分野で周知されるように、抗体の結合特異性及び親和性はいずれも主にCDR配列により決定され、成熟した技術、公知の各種従来技術により非CDR領域のアミノ酸配列を容易に変更して生物学的活性が近い変異体を得られる。したがって、本開示には当該結合タンパク質の「機能的誘導体」が含まれる。「機能的誘導体」とはアミノ酸が置き換えられた変異体を言い、機能的誘導体には検出可能な結合タンパク質活性が、好ましくはTaq DNAポリメラーゼに結合できる抗体の活性が保持されている。「機能的誘導体」は「変異体」及び「断片」を含んでもよく、本開示に記載の結合タンパク質と完全に同じCDR配列を有するため、生物学的活性が近い。
【0100】
1つ又は複数の実施形態では、前記抗原結合ドメインは下記アミノ酸配列の相補性決定領域と少なくとも50%、又は少なくとも55%、又は少なくとも60%、又は少なくとも65%、又は少なくとも70%、又は少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも91%、又は少なくとも92%、又は少なくとも93%、又は少なくとも94%、又は少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有し且つTaq DNAポリメラーゼに対してKD≦8.568×10-9mol/L、例えば8.568×10-9mol/L、5.126×10-9mol/L、3.018×10-9mol/L、2.196×10-10mol/L、3.839×10-10mol/L、4.075×10-10mol/L、6.772×10-10mol/L、8.499×10-10mol/L、9.870×10-10mol/L、3.145×10-11mol/L、5.067×10-11mol/L、6.643×10-11mol/L、もしくは1.328×10-11mol/L≦KD≦8.568×10-9mol/L、もしくは1.328×10-11mol/L≦KD≦9.870×10-10mol/L、又はKD≦5.126×10-9mol/L、3.018×10-9mol/L、2.196×10-10mol/L、3.839×10-10mol/L、4.075×10-10mol/L、6.772×10-10mol/L、8.499×10-10mol/L、9.870×10-10mol/L、3.145×10-11mol/L、5.067×10-11mol/Lもしくは6.643×10-11mol/Lの親和性を有する。
【0101】
ただし、親和性は本開示の明細書の方法に従って測定される。
【0102】
1つ又は複数の実施形態では、
前記相補性決定領域CDR-VH1で、X3はIであり、
前記相補性決定領域CDR-VH2で、X3はNであり、
前記相補性決定領域CDR-VH3で、X3はFであり、
前記相補性決定領域CDR-VL1で、X1はAであり、
前記相補性決定領域CDR-VL2で、X1はYであり、
前記相補性決定領域CDR-VL3で、X3はFである。
【0103】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH1で、X1はDであり、X2はSである。
【0104】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH1で、X1はEであり、X2はSである。
【0105】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH1で、X1はNであり、X2はSである。
【0106】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH1で、X1はDであり、X2はTである。
【0107】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH1で、X1はEであり、X2はTである。
【0108】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH1で、X1はNであり、X2はTである。
【0109】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH2で、X1はIであり、X2はNである。
【0110】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH2で、X1はIであり、X2はGGである。
【0111】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH2で、X1はVであり、X2はNである。
【0112】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH2で、X1はVであり、X2はGGである。
【0113】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH2で、X1はLであり、X2はNである。
【0114】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH2で、X1はLであり、X2はGGである。
【0115】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH3で、X1はIであり、X2はIである。
【0116】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH3で、X1はIであり、X2はVである。
【0117】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH3で、X1はIであり、X2はLである。
【0118】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH3で、X1はVであり、X2はIである。
【0119】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH3で、X1はVであり、X2はVである。
【0120】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH3で、X1はVであり、X2はLである。
【0121】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH3で、X1はLであり、X2はIである。
【0122】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH3で、X1はLであり、X2はVである。
【0123】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH3で、X1はLであり、X2はLである。
【0124】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL1で、X2はNであり、X3はIである。
【0125】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL1で、X2はNであり、X3はVである。
【0126】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL1で、X2はNであり、X3はLである。
【0127】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL1で、X2はQであり、X3はIである。
【0128】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL1で、X2はQであり、X3はVである。
【0129】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL1で、X2はQであり、X3はLである。
【0130】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL2で、X2はQであり、X3はIである。
【0131】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL2で、X2はQであり、X3はVである。
【0132】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL2で、X2はQであり、X3はLである。
【0133】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL2で、X2はHであり、X3はIである。
【0134】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL2で、X2はHであり、X3はVである。
【0135】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL2で、X2はHであり、X3はLである。
【0136】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL2で、X2はNであり、X3はIである。
【0137】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL2で、X2はNであり、X3はVである。
【0138】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL2で、X2はNであり、X3はLである。
【0139】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL3で、X1はIであり、X2はIである。
【0140】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL3で、X1はIであり、X2はVである。
【0141】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL3で、X1はIであり、X2はLである。
【0142】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL3で、X1はVであり、X2はIである。
【0143】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL3で、X1はVであり、X2はVである。
【0144】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL3で、X1はVであり、X2はLである。
【0145】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL3で、X1はLであり、X2はIである。
【0146】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL3で、X1はLであり、X2はVである。
【0147】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL3で、X1はLであり、X2はLである。
【0148】
1つ又は複数の実施形態では、各相補性決定領域の突然変異部位は、下記の突然変異の組み合わせから選ばれるいずれか1種である。
【0149】
1つ又は複数の実施形態では、本開示に記載の結合タンパク質の6つのCDR領域で出するX1はそれぞれ互いに独立して、本開示で限定されたアミノ酸を表し、本開示に記載の結合タンパク質の6つのCDR領域で出現するX2はそれぞれ互いに独立して、本開示で限定されたアミノ酸を表し、本開示に記載の結合タンパク質の6つのCDR領域で出現するX3はそれぞれ互いに独立して、本開示で限定されたアミノ酸を表す。
【0150】
1つ又は複数の実施形態では、前記結合タンパク質は少なくとも3つのCDRを含み、又は、前記結合タンパク質は少なくとも6つのCDRを含む。
【0151】
1つ又は複数の実施形態では、前記結合タンパク質は可変領域及び定常領域を含む完全な抗体である。
【0152】
1つ又は複数の実施形態では、前記結合タンパク質はナノボディ、F(ab’)2、Fab’、Fab、Fv、scFv、二重特異性抗体及び抗体の最小認識単位のうちの1つである。
【0153】
1つ又は複数の実施形態では、前記結合タンパク質は配列が順に配列番号1~4に示される軽鎖フレームワーク領域FR-L1、FR-L2、FR-L3及びFR-L4、及び/又は、配列が順に配列番号5~8に示される重鎖フレームワーク領域FR-H1、FR-H2、FR-H3及びFR-H4を含む。
【0154】
1つ又は複数の実施形態では、前記結合タンパク質はさらに抗体定常領域配列を含む。
【0155】
1つ又は複数の実施形態では、前記定常領域配列はIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgE、IgDから選ばれるいずれか1つの定常領域の配列である。
【0156】
1つ又は複数の実施形態では、前記定常領域はウシ、ウマ、乳牛、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ラット、マウス、イヌ、ネコ、ウサギ、ラクダ、ロバ、シカ、テン、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、シチメンチョウ、シャモ又はヒトの物種に由来する。
【0157】
1つ又は複数の実施形態では、前記定常領域はマウスに由来し、
軽鎖定常領域配列は配列番号9に示され、
重鎖定常領域配列は配列番号10に示される。
【0158】
本開示はさらに、前記結合タンパク質をコードする分離された核酸を提供する。
【0159】
本明細書では、核酸は保存的に置換されたその変異体(例えば縮重コドンの置換)及び相補的配列を含む。用語「核酸」は「ポリヌクレオチド」と同じ意味で、遺伝子、cDNA分子、mRNA分子及びそれらの断片、例えばオリゴヌクレオチドを含む。
【0160】
本開示はさらに、前記核酸を含むベクターを提供する。
【0161】
ここで、核酸配列は少なくとも1種の調節配列に操作可能に接続される。「操作可能に接続される」とはコード配列はコード配列を発現できるように調節配列に接続されることをいう。調節配列は適切な宿主細胞において目的タンパク質の発現を指示するよう選ばれ、プロモーター、エンハンサー及びその他発現制御要素を含む。
【0162】
本明細書では、ベクターとは本開示の核酸又はその断片を含み、遺伝情報を持ち且つ遺伝情報を細胞に送達する分子又は試薬をもいう。典型的なベクターにはプラスミド、ウイルス、バクテリオファージ、コスミド、ミニ染色体を含む。ベクターはクローニングベクター(遺伝情報を細胞に移すために用いられ、前記細胞を増殖させ且つ前記遺伝情報が存在し又は存在しない前記細胞を選択できるベクター)又は発現ベクター(前記ベクターの遺伝情報が細胞で発現できるように必要な遺伝的要素を含むベクター)であってもよい。したがって、クローニングベクターは選択マーカーと、前記クローニングベクターによって指定された細胞種にマッチする複製起点とを含み、発現ベクターは所定の標的細胞における発現を影響するのに必要な調節要素を含む。
【0163】
本開示の核酸又はその断片を適切なベクターに挿入して本開示の核酸断片を持つクローニングベクター又は発現ベクターを形成できる。このような新たなベクターも本開示に含まれる。前記ベクターはプラスミド、バクテリオファージ、コスミド、ミニ染色体、ウイルスを含み、又は特定の細胞内においてのみ一過性発現される裸DNAを含む。本開示のクローニングベクター及び発現ベクターは自発的に複製されるため、後に高レベル発現又は高レベル複製をクローニングするために高コピー数が提供される。発現ベクターは本開示の核酸断片の発現を駆動させるプロモーターを含み、前記ペプチド発現産物を膜に分泌させ又は組み込ませるシグナルペプチドを所望によりコードする核酸配列、本開示の核酸断片、及び所望によりターミネーターをコードする核酸配列を含んでもよい。生産菌株又は細胞株において発現ベクターを操作し、ベクターを宿主細胞に導入する時、宿主細胞のゲノムに組み込まれてもよいし、宿主細胞ゲノムに組み込まれなくてもよい。ベクターは一般に複製部位、及び形質転換細胞において表現型の選択を提供するマーカー配列を持つ。
【0164】
本開示の発現ベクターは形質転換宿主細胞に用いられる。このような形質転換細胞は本開示に含まれており、本開示の核酸断片及びベクターを増殖させるために用いられ、もしくは本開示のポリペプチドの組換え製造に用いられる培養細胞又は細胞株であってもよい。本開示の形質転換細胞は例えば細菌(大腸菌、バシラス属など)の微生物を含む。さらに宿主細胞は多細胞生物、例えば真菌、昆虫細胞、植物細胞又は哺乳動物に由来する細胞、好ましくは哺乳動物に由来する細胞、例えばCHO細胞を含む。前記形質転換細胞は本開示の核酸断片を複製できる。本開示のペプチドの組み合わせの組換え製造時は、前記発現産物が培地に分泌され又は前記形質転換細胞の表面に取り込まれる。
【0165】
本開示はさらに、培地において前記宿主細胞を培養し、産生された結合タンパク質を培地から又は培養された宿主細胞から回収するステップを含む前記結合タンパク質の生産方法を提供する。
【0166】
前記方法は例えば次のとおりである。少なくとも結合タンパク質の一部をコードする核酸ベクターで宿主細胞をトランスフェクトし、適切な条件下で当該宿主細胞を培養して当該結合タンパク質を発現させる。1つ又は複数の発現ベクターで宿主細胞をトランスフェクトしてもよく、当該発現ベクターは単独で又は組み合わせて少なくとも結合タンパク質の一部をコードするDNAを含んでもよい。通常のタンパク質及びペプチド精製技術を利用して培地又は細胞溶解物から結合タンパク質を分離でき、前記技術は硫酸アンモニウム沈殿法、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、ゲル濾過、アフィニティークロマトグラフィーなど)及び/又は電気泳動を含む。
【0167】
所望のコード及び制御配列を含む適切なベクターの構築は本分野で周知される標準的なライゲーション及び制限技術を用いて行われてもよい。分離されたプラスミド、DNA配列又は合成されたオリゴヌクレオチドを切断、テーリング及び再ライゲーションして所望の形態を得る。本開示の変異体は任意の方法でコード配列に突然変異を導入することで得られてもよく、これらの突然変異は欠失、挿入、置換などを含む。
【0168】
本開示はさらに、Taq DNAポリメラーゼのエピトープと反応する抗体を提供し、前記抗体はモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を含む。当該抗体は完全な結合タンパク質、又はその断片、誘導体を含む。結合タンパク質全体又はその一部を含む抗体が好ましい。
【0169】
本開示はさらに、PCRにおける前記結合タンパク質の使用を提供する。
【0170】
本開示はさらに、前記キットは前記結合タンパク質、前記分離された核酸又は前記ベクターの1つ又は複数を含むことを特徴とするキットを提供する。
【0171】
本開示はさらに、本開示に記載の結合タンパク質とTaq DNAポリメラーゼとを含む組成物を提供する。
【0172】
1つ又は複数の実施形態では、前記組成物はさらに4種のデオキシリボヌクレオシド三リン酸を含む。
【0173】
1つ又は複数の実施形態では、前記組成物はさらにプライマー及び/又はプローブを含む。
【0174】
1つ又は複数の実施形態では、前記組成物さらにMgClを含む。
【0175】
1つ又は複数の実施形態では、前記組成物はさらに鋳型としての核酸を含む。
【0176】
本開示はさらに、本開示に記載の結合タンパク質又は本開示に記載の組成物を用いてホットスタートPCRを行うことを含む核酸増幅方法を提供する。
【0177】
1つ又は複数の実施形態では、ホットスタートPCRはマルチプレックスPCR、リアルタイムPCR及びリアルタイム定量PCRからなる群から選ばれる。
【0178】
本明細書で使用される用語「ホットスタートPCR(hot start PCR)」とは、サンプル温度が少なくとも所定の温度を超える時だけTaq DNAポリメラーゼがその役割を果たすPCRであり、これによって反応の特異性が高められ、核酸の非特異的な増幅が避けられる。
【0179】
本開示はさらに、試料中のTaq DNAポリメラーゼの検出方法であって、
a)抗体/抗原結合反応を行わせるのに十分な条件で、前記試料中のTaq DNAポリメラーゼを本開示の結合タンパク質に接触させて免疫複合体を形成するステップと、
b)前記免疫複合体の存在を検出し、前記複合体が存在することは前記試料に前記Taq DNAポリメラーゼが存在することを示すステップと、を含む方法を提供する。
【0180】
1つ又は複数の実施形態では、前記免疫複合体はさらに前記結合タンパク質に結合する第2抗体を含み、
1つ又は複数の実施形態では、ステップa)で、前記免疫複合体はさらに前記Taq DNAポリメラーゼに結合する第2抗体を含む。
【0181】
本開示はさらに、核酸を増幅させるための本明細書に記載の結合タンパク質の使用を提供する。
【0182】
次に本開示を例示的に説明するためにいくつかの例が示されるが、本開示の範囲はこれに限定されない。
【0183】
(実施例1)
本実施例で制限酵素、Prime Star DNAポリメラーゼは株式会社Takaraから購入した。MagExtractor-RNA抽出キットは株式会社TOYOBOから購入した。SMARTERTM RACE cDNA Amplification Kitキットは株式会社Takaraから購入した。pMD-18Tベクターは株式会社Takaraから購入した。プラスミド抽出キットは天根生化科技有限公司から購入した。プライマー合成及び遺伝子配列決定は株式会社Invitrogenが実施した。Anti-TAQ 2C7モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ細胞株は既存のハイブリドーマ細胞株であり、使用に備えて蘇生させておく。
【0184】
1.プライマー
重鎖及び軽鎖5’増幅RACEプライマー:
SMARTER II Aオリゴヌクレオチド:
5’-AAGCAGTGGTATCAACGCAGAGTACXXXXX-3’、
5’-RACE CDSプライマー(5’-CDS):5’-(T)25VN-3’(N=A、C、G又はT、V=A、G又はC)、
ユニバーサルプライマーAミックス(UPM):5’-CTAATACGACTCACTATAGGGCAAGCAGTGGTATCAACGCAGAGT-3’、
ネスト化されたユニバーサルプライマーA(NUP):5’-AAGCAGTGGTATCAACGCAGAGT-3’、
mIg-KR:5’-CTAACACTCATTCCTGTTGAAGCTCTTGACAAT-3’、
mIg-HR:5’-TCATTTACCAGGAGAGTGGGAGAGGC-3’。
【0185】
2.抗体可変領域の遺伝子クローニング及び配列決定
Anti-Taq 2C7クローニング抗体を分泌するハイブリドーマ細胞株からRNAを抽出し、SMARTERTMRACE cDNA Amplification Kitキット及びキット中のSMARTER II Aオリゴヌクレオチド、5’-CDSプライマーを用いて第1鎖cDNAを合成し、第1鎖cDNA産物を得てこれをPCR増幅鋳型とした。軽鎖遺伝子はユニバーサルプライマーAミックス(UPM)、ネスト化されたユニバーサルプライマーA(NUP)及びmKRプライマーで増幅させ、重鎖遺伝子はユニバーサルプライマーAミックス(UPM)、ネスト化されたユニバーサルプライマーA(NUP)及びmHRプライマーで増幅させた。このうち軽鎖のプライマーペアによる増幅で約0.7KBの目的バンドを、重鎖のプライマーペアによる増幅で約1.4KBの目的バンドを得た。アガロースゲル電気泳動により精製及び回収し、rTaq DNAポリメラーゼを用いて産物のAテーリング反応を行った後pMD-18Tベクターに挿入し、DH5α形質転換受容性細胞に形質転換し、コロニーが認められたらそれぞれ重鎖及び軽鎖遺伝子をそれぞれクローニングし、各4つのクローンに対し株式会社Invitrogenより配列決定を行った。
【0186】
3.Anti-Taq 2C7抗体の可変領域遺伝子の配列分析
上記のように配列決定した遺伝子配列をIMGT抗体データベースに入力して分析し、ソフトウェアVNTI11.5において分析したところ、重鎖及び軽鎖プライマーペアで増幅させた遺伝子がいずれも正しいことが判明し、このうち軽鎖で増幅させた遺伝子断片において、VL遺伝子配列が378bpで、VkII遺伝子ファミリーに属し、その前方に57bpのリーダーペプチド配列があり、重鎖プライマーペアで増幅させた遺伝子断片において、VH遺伝子配列が417bpで、VH1遺伝子ファミリーに属し、その前方に57bpのリーダーペプチド配列がある。
【0187】
4.組換え抗体発現プラスミドの構築
pcDNATM3.4 TOPO(登録商標)ベクターは構築された組換え抗体真核発現ベクターであり、当該発現ベクターには既にHindIII、BamHI、EcoRIなどのポリクローナル酵素切断部位が導入され、pcDNA 3.4A発現ベクターと命名され、以下3.4A発現ベクターと略称する。前記pMD-18Tの抗体可変領域の遺伝子配列決定結果に基づいて、Anti-TAQ 2C7抗体のVL及びVH遺伝子特異的なプライマーを設計し、両端にはそれぞれHindIII、EcoRI酵素切断部位及び保護塩基があり、プライマーは以下のとおりである。
【0188】
Anti-Taq 2C7-HF:5’-CCCAAGCTTGCCACCATGGGATGGAGCTATATCATCCTC-3’、
Anti-Taq 2C7-HR:
5’-CCCGAATTCTCATTATTTACCAGGAGAGTGGGAGAGGCTCTTCTC-3’、
Anti-Taq 2C7-LF:5’-CCCAAGCTTGCCACCATGTCCTCTGCTCAGTTCCTTGGTCTC-3’、
Anti-Taq 2C7-LR:
5’-CCCGAATTCTCATTAACACTCATTCCTGTTGAAGCTCTTGACAA-3’。
【0189】
PCR増幅により0.75KBの軽鎖遺伝子断片及び1.42KBの重鎖遺伝子断片を得た。重鎖及び軽鎖遺伝子断片はそれぞれHindIII/EcoRIでダブルダイジェストし、3.4AベクターはHindIII/EcoRIでダブルダイジェストし、断片及びベクターを精製及び回収した後、重鎖遺伝子及び軽鎖遺伝子をそれぞれ3.4A発現ベクターに接続させて、重鎖及び軽鎖の組換え発現プラスミドをそれぞれ得た。
【0190】
5.安定型細胞株スクリーニング
5.1 組換え抗体発現プラスミドによるCHO細胞一過性トランスフェクション、発現プラスミド活性決定
超純水でプラスミドを400ng/mlに希釈し、CHO細胞を1.43×107cells/mlに調整して遠心分離管に入れ、100μLのプラスミドと700μlの細胞を混合した後、エレクトロポレーションカップに移し、エレクトロポレーションを行い、3日目、5日目、7日目にサンプルを採取してカウントし、7日目に回収して検出した。
【0191】
コーティング溶液でTaq酵素を所定の濃度に希釈し、1ウェル当たり100μLで、4℃で一晩保持させた。翌日に、洗浄液で2回洗浄し、軽く叩いて乾燥させた。ブロッキング液(20%BSA+80%PBS)を1ウェル当たり120μL加え、37℃で1時間保持させて、軽く叩いて乾燥させた。希釈後の細胞上清を100μL/ウェル加え、37℃で30分間(一部の上清は1時間)保持させた。洗浄液で5回洗浄し、軽く叩いて乾燥させた。ヤギ抗マウスIgG-HRPを1ウェル当たり100μL加え、37℃で30分間保持させた。洗浄液で5回洗浄し、軽く叩いて乾燥させた。発色液A液を(50μL/ウェル)、そして発色液B液を(50μL/ウェル)加え、10分間保持させた。停止液を50μL/ウェル加えた。マイクロプレートリーダーにおいて450nm(630nm参照)でOD値を読み取った。結果では細胞上清を1000倍希釈した後、反応ODが依然として1.0を超えており、細胞上清を加えないウェルは反応ODが0.1未満であることから、プラスミドの一過性トランスフェクション後に産生された抗体はTaq酵素に活性があることが示された。
【0192】
5.2 組換え抗体発現プラスミド線形化
次の試薬を用意する。バッファー50μl、DNA 100μg/管、Puv I酵素10μl、滅菌水で500μlに補足、37℃水浴で一晩消化。まず等体積のフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール25:24:1(下層)、次に等体積のクロロホルム(水相)で抽出し、0.1倍の体積の3M酢酸ナトリウムと2倍の体積のエタノール(水相)を用いて氷上で沈殿させ、70%エタノールで沈殿をすすぎ、有機溶媒を除去し、エタノールが完全に揮発したら適量の滅菌水で再溶解し、最後に濃度を測定した。
【0193】
5.3 組換え抗体発現プラスミドの安定トランスフェクション、安定型細胞株の加圧スクリーニング
超純水でプラスミドを400ng/mlに希釈し、CHO細胞を1.43×107cells/mlに調整して遠心分離管に入れ、100μlのプラスミドと700μlの細胞を混合した後、エレクトロポレーションカップに移し、エレクトロポレーションを行い、翌日にカウントした。25μmol/LのMSXを含む96ウェルで約25日加圧培養した。
【0194】
顕微鏡下で観察し、細胞が認められたクローニングウェルをマークし、コンフルエンスを記録した。培養上清を取得し、サンプルを検出した。抗体濃度、相対濃度が高い方の細胞株を選択して24ウェルプレートに移し、約3日後6ウェルプレートに移した。3日後に菌種を保存しバッチ培養し、細胞密度を0.5×106cells/mlに調整し、2.2mlを取得してバッチ培養し、細胞密度が0.3×106cells/mlになると、2mlを取得して菌種を保存した。6ウェルプレートで上清を7日間バッチ培養して検出し、抗体濃度と細胞直径が小さい方の細胞株を選択してTPPに移し、菌種を保存して継代させた。
【0195】
6.組換え抗体の生産
6.1 細胞拡大培養
蘇生後、まず125ml振盪フラスコで細胞を培養し、接種体積は30mlで、培地を100%ダイナミス培地とし、毎分120回転、温度37℃及び二酸化炭素8%の振盪機に入れた。72時間培養した後、50万cells/mlの接種密度で接種して拡大培養し、拡大培養体積は生産量に応じて計算し、培地を100%ダイナミス培地とした。その後、72時間ごとに1回拡大培養した。細胞量が生産ニーズを満たすと、接種密度を約50万cells/mlに正確に制限して生産した。
【0196】
6.2 振盪フラスコによる生産及び精製
振盪フラスコのパラメータ:毎分120回転で、温度が37℃で、二酸化炭素は8%であった。原料の流加補足:振盪フラスコで72時間培養すると毎日原料を補足し、HyCloneTMCell BoostTMFeed 7aは毎日初期培養体積の3%を流加し、Feed 7bは毎日初期培養体積の千分の1の割合で流加し、補足は12日目まで続いた(12日目の補足)。6日目にグルコースを3g/L補足した。13日目に回収した。proteinAアフィニティークロマトグラフィーカラムを用いてアフィニティー精製を行った。4μgの精製抗体に対し還元SDS-PAGEを行い、4μgの外来対照抗体を対照とし、電気泳動図は図1に示される。還元SDS-PAGE後、2つのバンドが示され、一方はMrが50KD(重鎖)で、配列は配列番号11に示され、他方はMrが28KD(軽鎖)で、配列は配列番号12に示される。
【0197】
(実施例2)
実施例1で得たサンプル1の抗体(配列が配列番号11に示される重鎖及び配列番号12に示される軽鎖を有する)はTaq DNAポリメラーゼに結合する能力を有するが、親和性と抗体活性は好ましくないため、出願人が当該抗体の軽鎖CDR及び重鎖CDRに突然変異を行った。
【0198】
分析したところ、重鎖の相補性決定領域(WT)は次のとおりである。
CDR-VH1はS-V-D(X1)-T-F-S(X2)-T-Y-Y-L(X3)-Yであり、
CDR-VH2はG-V(X1)-N-P-T-S-N(X2)-P-V-F-D(X3)-E-Kであり、
CDR-VH3はT-R-S-I(X1)-L(X2)-R-R-G-Y-Y-P(X3)-D-Yである。
【0199】
軽鎖の相補性決定領域は次のとおりである。
CDR-VL1はR-G(X1)-S-Q-D-I-Q(X2)-N-Y-V(X3)-Nであり、
CDR-VL2はI-Y-F(X1)-T-S-R-L-Q(X2)-S-G-I(X3)-Pであり、
CDR-VL3はQ-D-D-T-I(X1)-P-V(X2)-T-W(X3)-Gであり、
ただし、X1、X2、X3はいずれも突然変異部位である。
【0200】
【0201】
突然変異後、抗体の活性を検出し、コーティング溶液でTaq DNAポリメラーゼを所定の濃度に希釈し、1ウェル当たり100μLで、4℃で一晩保持させた。翌日に、洗浄液で2回洗浄し、軽く叩いて乾燥させた。ブロッキング液(20%BSA+80%PBS)を1ウェル当たり120μL加え、37℃で1時間保持させて、軽く叩いて乾燥させた。希釈後のTaqモノクローナル抗体を100μL/ウェル加え、37℃で30分間(一部の上清は1時間)保持させた。洗浄液で5回洗浄し、軽く叩いて乾燥させた。ヤギ抗マウスIgG-HRPを1ウェル当たり100μL加え、37℃で30分間保持させた。洗浄液で5回洗浄し、軽く叩いて乾燥させた。発色液A液を(50μL/ウェル)、そして発色液B液を(50μL/ウェル)加え、10分間保持させた。停止液を50μL/ウェル加えた。マイクロプレートリーダーにおいて450nm(630nm参照)でOD値を読み取った。
【0202】
一部の結果は次のとおりである。
【0203】
親和性分析:
AMCセンサにおいて、PBSTで前記抗体を10μg/mlに希釈し、PBSTでTaq DNAポリメラーゼを1000nmol/ml、500nmol/ml、250nmol/ml、125nmol/ml、62.5nmol/ml、31.3nmol/ml、15.6nmol/ml、0nmol/mlのとおりに勾配希釈した。
【0204】
実行プロセス:バッファー1(PBST)で60秒平衡化、抗体溶液で300秒抗体固化、バッファー2(PBST)で180秒インキュベート、抗原溶液で420秒結合、バッファー2で1200秒解離後、pH1.69の10mMのGLY溶液及びバッファー3でセンサを蘇生させ、データを出力した。KDは平衡解離定数、即ち親和性を表し、Konは結合速度、Kdisは解離速度を表す。
【0205】
【0206】
表2及び表3から分かるように、突然変異1は活性が最も高く親和性が最も優れるため、力価が高い突然変異部位をスクリーニングするために突然変異1をフレームワーク配列に利用し(スクリーニング後、抗体活性が突然変異1に近いことを保証し、抗体活性は±10%であった)、一部の結果は次のとおりである。
【0207】
【0208】
親和性分析の方法は上記と同じで、結果は表5に示される。
【0209】
【0210】
表5から分かるように、表4に示す突然変異部位は抗体の親和性に大きな影響がない。
【0211】
前記結果を検証するために、WTをフレームワーク配列として前記実験を繰り返し、突然変異部位の親和性検証を行った。一部の結果は次のとおりである。
【0212】
【0213】
【0214】
表6及び表7を分析したところ、表6に示す突然変異部位も抗体の親和性に大きな影響がない。
【0215】
本開示のTaq DNAポリメラーゼは抗体修飾後、70℃以下で酵素の活性をブロックされ、70℃以上で解離し、95℃では1~3分間だけで完全に解離し、酵素の活性成分が放出される。
【0216】
同等な条件下で、抗体修飾がある及び抗体修飾のないTaq DNAポリメラーゼに特異性検出を行い、結果を図2のPCR電気泳動図に示し、このうち1はTaq DNAポリメラーゼ(抗体修飾なし)、2及び4は突然変異1抗体で修飾されたTaq DNAポリメラーゼ、3及び5はWT抗体で修飾されたTaq DNAポリメラーゼであった。結果を分析して分かるように、抗体修飾のあるTAQ酵素の方が増幅特異性は明らかに高められた。各レーンに出現する非特異的なバンドを分析したところ、突然変異1抗体で修飾されたTaq DNAポリメラーゼはWT抗体で修飾されたTaq DNAポリメラーゼより特異性がわずか優れていることが分かった。本開示では表4の突然変異の組み合わせについて抗体とTaq DNAポリメラーゼの結合安定性、迅速な活性化及び対応pH範囲を検出したところ、いずれも効果が良好であったことから、本開示に係る抗Taq DNAポリメラーゼ抗体は分子検出に関する用途が期待できることが示される。
【0217】
なお、上記の各実施例は限定を加えず本開示の技術案を説明するものである。前記各実施例を用いて本開示を詳細に説明しているが、当業者が理解したように、なおも前記各実施例に記載の技術案に修正を行い、又はその一部の又は全ての技術特徴に同等な置き換えを行うことができる。かかる修正又は置き換えより技術案の趣旨が本開示の各実施例の技術案の範囲から逸脱することはない。
【産業上の利用可能性】
【0218】
本開示に係る結合タンパク質はTaq酵素に特異的に結合して抗体-酵素複合体を形成するため、室温でTaq DNAポリメラーゼの活性を効果的にブロックでき、高温では、当該複合体が解離し、活性を有するTaq DNAポリメラーゼを放出して、PCR増幅反応が行われる。プライマー二量体の形成が効果的に避けられ、非特異的産物の増幅が緩和されるとともに、Taq DNAポリメラーゼの長期安定性が改善される。本開示の結合タンパク質は様々なホットスタートPCRに幅広く利用できる。
図1
図2
【配列表】
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