(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】金属注入およびエピタキシャル成長により構成要素を製造するための金型、および付随する製造方法
(51)【国際特許分類】
C30B 11/14 20060101AFI20241120BHJP
C30B 11/00 20060101ALI20241120BHJP
C30B 29/52 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
C30B11/14
C30B11/00 C
C30B29/52
(21)【出願番号】P 2021568038
(86)(22)【出願日】2020-04-03
(86)【国際出願番号】 EP2020059628
(87)【国際公開番号】W WO2020229055
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-03-27
(32)【優先日】2019-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】315008740
【氏名又は名称】サフラン エアークラフト エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】セルジュ アラン ファルジャ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ ロマン バンジャマン ルリッシュ
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-250869(JP,A)
【文献】特開2007-022842(JP,A)
【文献】特開2008-062300(JP,A)
【文献】特開2009-184016(JP,A)
【文献】特開2004-345930(JP,A)
【文献】特開2004-131330(JP,A)
【文献】特開2010-064936(JP,A)
【文献】特開平06-080493(JP,A)
【文献】特開平07-291777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 11/14
C30B 11/00
C30B 29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属鋳造およびエピタキシャル成長により単結晶構成要素を製造するのに使用するための金型(1)であって、前記構成要素が中で形成されるキャビティ(10)と単結晶シード(2)が内部に配置される楕円形横断面を有するハウジング(12)とを含み、前記
単結晶シードが、短軸(P1)および長軸(P2)によって画定される楕円形横断面を有し、前記ハウジングは、溶融金属が中を通って流れる円形横断面の開口部(13)を介して前記キャビティと流体連通状態にあり、前記単結晶シードおよび前記開口部が同じ垂直軸(Z)を中心としており、
前記
単結晶シード断面の前記長軸および前記短軸がそれぞれ、前記単結晶シードを形成する前記単結晶の二次結晶学的配向(X、Y)を決定しており、
前記単結晶シード(2)の前記楕円形横断面が0.55~0.82の偏心率を有し、前記短軸(P1)が13mm~16mmの長さを有し、前記開口部(13)が4mm~5mmの半径(Rd)を有し、前記単結晶シードの頂部表面と前記ハウジングの頂部表面の間の距離(d)が5mm~10mmである金型。
【請求項2】
前記
単結晶シード断面の短軸の長さの半分(P1/2)と前記開口部(13)の半径(Rd)の間の差に対応する遮断距離(Db)が2.4mm以上である、請求項
1に記載の金型。
【請求項3】
前記
単結晶シードと前記ハウジングの側方表面の間のクリアランス(J)が0.03mm以下である、請求項1
又は2に記載の金型。
【請求項4】
前記単結晶シード(2)がその頂縁部の周りに面取りまたは丸み付け(2b)を有する、請求項1~
3のいずれか1項に記載の金型。
【請求項5】
ターボ機械の羽根を製造するのに使用するための請求項1~
4のいずれか1項に記載の金型。
【請求項6】
エピタキシャル成長により単結晶構成要素を製造するための方法であって:
- 前記構成要素が中で形成されるキャビティ(10)と単結晶シード(2)が内部に配置される楕円形横断面を有するハウジング(12)とを含む金型(1)を製造するステップ(E2)であって、前記
単結晶シードが、短軸(P1)および長軸(P2)によって画定される楕円形横断面を有し、前記
単結晶シード横断面の前記長軸および前記短軸が、前記単結晶シードを形成する前記単結晶
の二次結晶学的配向(X、Y)に応じて配向されており
、前記ハウジングは、溶融金属が中を通って流れる円形横断面の開口部(13)を介して前記キャビティと流体連通状態にあり、前記単結晶シードおよび前記開口部が同じ垂直軸(Z)を中心として
おり、前記単結晶シード(2)の前記楕円形横断面が0.55~0.82の偏心率を有し、前記短軸(P1)が13mm~16mmの長さを有し、前記開口部(13)が4mm~5mmの半径(Rd)を有し、前記単結晶シードの頂部表面と前記ハウジングの頂部表面の間の距離(d)が5mm~10mmである、ステップと;
- 溶融金属を前記金型内に鋳込むステップ(E5)と;
- 前記
鋳込まれた金属を方向性凝固させて構成要素を得るステップ(E6)と;
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属鋳造により単結晶構成要素を製造するための方法の一般的分野に関する。本発明は、詳細には、このような方法において使用するための金型に関する。
【背景技術】
【0002】
一部のケース、詳細には航空ターボ機械においては、制御された単結晶構造を有する金属または金属合金構成要素を得ることが必要である。例えば、航空ターボ機械のタービンノズルにおいては、羽根は、それらが受ける高い温度および遠心力に起因する多大な熱機械応力に耐えなければならない。これらの羽根を形成する金属合金中の制御された単結晶構造が、これらの応力の効果を制限する。
【0003】
金属鋳造により単結晶構成要素を生産するためには、第一に、生産すべき構成要素のモデル(例えばワックスモデル)からセラミックス金型を作製することができる。単結晶シード(すなわちシード全体にわたり、公知の恒常な結晶学的配向を有するもの)が金型内に置かれ、その上に溶融金属が注がれ、その後それが、構成要素を形成するように意図された金型内のキャビティを満たす。冷却中、金属は凝固し、単結晶シードからの結晶粒のエピタキシャル成長が、鋳造された構成要素内の結晶学的配向を保証する。
【0004】
しかしながら、シードは同様に、このようなプロセスによって得られる構成要素内の欠陥発生源でもあり得る。実際、現在のシード構成は、鋳造構成要素内へと伝播する寄生結晶粒の成長を導き得る。
【0005】
仏国特許第3042725号は、円筒形単結晶シードが中に置かれ、このような寄生結晶粒の出現を削減するように適応された寸法を有する金型を開示している。しかしながら、使用される単結晶シードは、単結晶シードの結晶学的配向の方向にしたがって配向されるその下部部分上にピンなどの割出し要素を有していなければならない。この割出し要素は同様に、方向性凝固の時点で寄生結晶粒の出現の原因となる可能性もあることから、得られた構成要素中の欠陥の発生源でもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、上述のデメリットを有していない、金属鋳造およびエピタキシャル成長により構成要素を製造するための金型ならびにこのような金型を使用した製造方法に対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、金属鋳造およびエピタキシャル成長により単結晶構成要素を製造するのに使用するための金型において、構成要素が中で形成されるキャビティと単結晶シードが内部に配置される楕円形横断面を有するハウジングとを含む金型であって、シードが、短軸および長軸によって画定される楕円形横断面を有し、ハウジングは、溶融金属が中を通って流れる円形横断面の開口部を介してキャビティと流体連通状態にあり、単結晶シードおよび開口部が同じ垂直軸(Z)を中心としており、
シード断面の長軸および短軸がそれぞれ、単結晶シードを形成する単結晶の二次結晶学的配向を決定している、
金型に関する。
【0008】
このような金型は、構成要素内の欠陥をひき起こすと考えられる円筒形シード上のピンまたは平担部分などの細工を必要とせずに単結晶シードの結晶学的方向の容易な割出しを可能にする。シードの楕円形状は同様に、詳細にはクリアランスが少ないハウジング内での位置付けが難かしいことを理由として、平担な側方表面を有する(したがって楕円形ではない)細長いシードに比べて、生成する欠陥が少ない。
【0009】
二次結晶学的配向は、シードを形成する単結晶の<100>および<010>方向であり得る。詳細には、短軸および長軸は、それぞれ前記二次結晶学的配向と一致するか、または任意にはそれと既定かつ既知の角度を成していてよい。
【0010】
1つの例示的実施形態において、シードの楕円形横断面は、0.5以上1未満の偏心率を有し得る。このような偏心率は、結晶学的配向のより容易な位置特定および複雑な金型幾何形状と両立する設置面積の削減を可能にする。
【0011】
1つの例示的実施形態において、シードの楕円形横断面は、0.55~0.82の偏心率を有し得る。
【0012】
1つの例示的実施形態において、シード断面の短軸の長さの半分と開口部の半径の間の差に対応する遮断距離は2.4mm以上であり得る。開口部の半径とシードの短軸の半分との間の差が2.4mm以上である場合、寄生性シードの伝播は著しく削減される。この差は構成要素内の寄生結晶粒の伝播の遮断の特徴であることから、本明細書では、これを「遮断距離」と呼ぶ。
【0013】
1つの例示的実施形態において、シードとハウジングの側方表面の間のクリアランスは、0.03mm以下であり得る。クリアランスが少ないと、ハウジング内におけるシードの適切な位置付けが可能になるのと同時に、寄生性シードの伝播が削減される。
【0014】
1つの例示的実施形態において、シードの頂部表面とハウジングの頂部表面の間の距離は、5mm~10mmである。このような距離は同様に、適切なエピタキシーを達成しながら寄生結晶粒の伝播を削減する。
【0015】
1つの例示的実施形態において、単結晶シードはその頂縁部の周りに面取りまたは丸み付けを有し得る。「頂部」とは、金型が垂直位置にあるときにシードが載っているベースとは反対のシードの側に位置する縁部を意味するものとして理解される。この丸み付けは、鋭い縁部が金型と接触するのを防ぎ、金属の鋳造中の寄生結晶粒の出現を導き得る金型の小片を除去することを可能にする。
【0016】
1つの例示的実施形態において、金型は、ターボ機械の羽根を製造するために使用されるように意図され得る。それは、例えば航空ターボ機械ノズルの羽根であり得る。
【0017】
この場合、シードの楕円形横断面は0.55~0.82の偏心率を有することができ、短軸は13mm~16mmの長さを有することができ、開口部は4mm~5mmの半径を有することができ、シードの頂部表面とハウジングの頂部表面の間の距離は5mm~10mmであり得る。パラメータのこの組合せにより、寄生結晶粒に関係する欠陥の数が削減されたターボ機械の羽根を製造し、頑強な金型を得ることが可能になった。
【0018】
本発明は、エピタキシャル成長により単結晶構成要素を製造するための方法であって:
- 構成要素が中で形成されるキャビティと単結晶シードが内部に配置される楕円形横断面を有するハウジングとを含む金型を製造するステップであって、シードが、短軸および長軸によって画定される楕円形横断面を有し、シード横断面の長軸および短軸が、単結晶シードを形成する単結晶の二次結晶学的配向に応じて配向されており、ハウジングは、溶融金属が中を通って流れる円形横断面の開口部を介してキャビティと流体連通状態にあり、単結晶シードおよび開口部が同じ垂直軸を中心としている、ステップと;
- 溶融金属を金型内に鋳込むステップと;
- 鋳造金属を方向性凝固させて構成要素を得るステップと;
を含む方法にも関する。
【0019】
例示的実施形態において、製造すべき単結晶構成要素は、航空構成要素であり得る。「航空構成要素」とは、航空機を推進するように意図されたターボジェットエンジン内で使用され得る構成要素、例えば航空ターボ機械羽根、タービンリング、低圧ノズル、航空燃焼室噴射システム、航空噴射システム構成要素、フランジ、挟持システム、エンジン機器支持体、エンジンカバーなどを意味するものとして理解される。
【0020】
本発明の特徴部および利点は、その非限定的な実施例を例示する添付図面を参照しながら、以下の説明から明らかになるものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は本発明に係る方法のさまざまなステップを表わす流れ図である。
【
図2】
図2は方向性凝固炉内に配置された本発明に係る金型の概略的横断面図である。
【
図3】
図3は本発明の一実施形態に係る金型内で使用するための単結晶シードを示す。
【
図4】
図4は単結晶シードハウジングにおける
図2の拡大図である。
【
図5】
図5は本発明の一実施形態に係る金型のハウジングの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明についてここで、金属鋳造およびエピタキシャル成長により単結晶構成要素を製造するための方法との関連において説明する。例示された実施例においては、金属合金(例えば市販合金「AM1」などのニッケルベース合金)製の単結晶航空ターボ機械ノズル羽根の製造に焦点があてられている。このような方法のステップは、
図1の流れ図に要約されている。
【0023】
それ自体公知のように、金属鋳造およびエピタキシャル成長による製造方法の第1のステップは、製造すべき構成要素の例えばワックス製モデルを得ることからなる(ステップE1)。
【0024】
次にワックスモデルは、例えば好適なスラリ内への連続的な浸漬およびセラミック粉末中でのスタッコ塗布によって、セラミックシェルでカバーされる(ステップE2)。その後、シェルを取付けたモデルは焼成され脱炭素される(ステップE3)、すなわち結果として得られたセラミック金型内のワックスは除去される。
【0025】
ワックスモデルから得られた本発明に係る金型1の一実施例が、
図2~4に例示されている。セラミック金型1は、詳細には、頂端部で開放し円錐形構成要素またはカップ11内に開放するチャネルにより互いに連結されている、製造すべき構成要素(ここでは航空ターボ機械ノズル羽根)の形状を有する1つ以上のキャビティ10(ここでは
図1中に2つのキャビティが示されている)を含む。その後、キャビティ10に到達する前に、金属はこのカップ11内に鋳込まれる。
【0026】
金型1は同様に、ハウジング12を含み、その中に単結晶シード2が挿入される(ステップE4)。典型的には、キャビティ10と同数のハウジング12が存在する。1つのハウジング12が1つのキャビティ10の下方に位置設定され、開口部13を介しその上方のキャビティと流体連通状態にあり、こうして液体金属をキャビティ10からハウジング12内に導入することができるようになっている。開口部13とキャビティ10を連結するチャネルは、ここでは円筒形の形状をしている。金型1には螺旋タイプの結晶粒選別機ダクトが不在であるということが指摘される。
【0027】
ハウジング12および単結晶シード2は、楕円形状を有している(すなわち、これらはその高さ全体にわたり恒常な楕円形横断面を有する)。ハウジング12およびシード2の寸法は、近いものであり、ハウジング12の側壁とシード2の間には可能なかぎり少ないクリアランスJ(
図5)しか残さず、液体金属が鋳造中にシード2の周りに浸み出し金属の凝固中に寄生結晶粒を生成するのを防ぐようになっている。このクリアランスJは0.03mm以下であってよい。
【0028】
金型1の根元には、ハウジング12内にシード2を保持するベース14があり、このベースは同様に、垂直位置にあるとき金型1全体を支持する。
【0029】
図3に斜視図で示されているシード2は、短軸P1と長軸P2を伴う楕円形横断面を有する。シードの頂部表面上には破線で樹枝状結晶2aが示されており、シード2を形成する単結晶の二次的結晶学的配向を図式化している。こうして樹枝状結晶は、結晶学的配向<100>に対応する方向X、配向<010>に対応する方向Y、および配向<001>に対応し方向XおよびYに直交する方向Zを画定している。この実施例において、短軸P1および長軸P2は、それぞれ方向YおよびXと一致する。シード2(ならびにハウジング12)を画定する楕円の偏心率は、企図されている利用分野については、好ましくは、0.5~1(0.5超1未満)であり、さらに一層好ましくは0.55~0.82である。ここで、シード2は、その頂縁部2bの周りに丸み付けを有する。代替的には、シードプレート2は、丸み付けの代りに面取りを有していてよい。典型的には、シード2はハウジング12を完全には占有せず、シード2の頂端部と開口部13の間には空間が設けられ、この中に液体金属を注入することができる。
【0030】
図4は、シード2が中に配置されているハウジング12の詳細図を示す。シード2および開口部13は同じ垂直軸Zを中心としている。
【0031】
シードセル2は、例えば40~45mmである長さLgを有する。開口部13(またはハウジング12の頂部壁)は、適切なエピタキシを達成するため5mm~10mmの距離dだけシード2の頂部表面から離隔されていてよい。開口部13は例えば、およそ5mmの長さLdにわたり延在し得る。好ましくは、開口部の半径Rdは、金型1の強度に対する開口部の影響を削減するため4mm以上である。さらに一層好ましくは、開口部の半径Rdは、溶融金属による金型1の正しい充填を保証するため、5mm以下である。シード2の短軸P1は、金型1の信頼性を増大させるため、13mm超の長さを有する。
【0032】
遮断距離Db(
図5)は、シードの短軸(P1)/2と開口部の半径Rdの間の差、すなわちDb=(P1)/2-Rd、として定義される。この遮断距離は、シードハウジング12からキャビティ10への寄生結晶粒の伝播の特徴的数量である。遮断距離Dbは、寄生結晶粒のさらに優れた遮断を保証するため、2.4mm以上であり得る。
【0033】
シード2がひとたびそのハウジング12内に挿入され配向されたならば、金型1はそのベース14上で、方向性凝固炉3の可動プレート30上に設置される。有利には、炉3は、頂部ウィンドウ31を有し、これを通って金属を金型1の中に注入することができる。可動プレート30は、金型1を炉3の高温エンクロージャから迅速に取出して金型の温度を調節できるようにする。プレート30は、冷却された銅板であり得る。シード2は、例えばプレート30に接着することによって固定され得る。
【0034】
金型1は、炉3内で加熱され、液体金属40は、炉のウィンドウ31を通って湯だまり4から金型1内に注入される(ステップE5)。シード2のハウジング12には金属が充填され、構成要素が内部で形成されるキャビティ10がハウジングに続いて充填される。金型1は、金型1の温度を低下させ金型内の金属の凝固を制御する目的で、例えば可動プレート30を降下させることによって炉3から漸進的に取出される(ステップE6)。
【0035】
方向性凝固中、結晶学的配向が周知であり制御されている金属結晶粒は、シードからのエピタキシによって成長する。本発明に係る金型の特定の寸法を遵守することによって、配向が制御されていない寄生結晶粒の成長は回避され、離型の後、制御された単結晶構造を有する構成要素が得られる。
【0036】
金型の離型の後(ステップE7)、仕上った単結晶構成要素を得るために、従来の仕上げ機械加工(ステップE8)を実施することができる。
【0037】
テスト中に、ニッケルベースの金属合金AM1でできたターボ機械羽根は、
図2および3中に示されたセラミック製金型1などの金型内で鋳造された。シード2およびハウジング12を定義する楕円の偏心率はおよそ0.75であり、開口部の半径はおよそ4.5mmであり、短軸は14.5mmの長さを有し、シード2の頂部表面とハウジングの頂部表面の離隔距離は6mmである。鋳造および方向性凝固を実施するための炉の温度は、この実施例において、1480℃~1600℃である。生産された金型はロバストであり、得られる羽根には、平面を伴う円筒形シードが使用された場合に比べて、特に寄生結晶粒の伝播に関連する欠陥が少ない。
発明の実施態様の一部を以下の項目[1]-[10]に記載する。
[1]
金属鋳造およびエピタキシャル成長により単結晶構成要素を製造するのに使用するための金型(1)であって、前記構成要素が中で形成されるキャビティ(10)と単結晶シード(2)が内部に配置される楕円形横断面を有するハウジング(12)とを含み、前記シードが、短軸(P1)および長軸(P2)によって画定される楕円形横断面を有し、前記ハウジングは、溶融金属が中を通って流れる円形横断面の開口部(13)を介して前記キャビティと流体連通状態にあり、前記単結晶シードおよび前記開口部が同じ垂直軸(Z)を中心としており、
前記シード断面の前記長軸および前記短軸がそれぞれ、前記単結晶シードを形成する前記単結晶の二次結晶学的配向(X、Y)を決定している、
金型。
[2]
前記シード(2)の前記楕円形横断面が、0.5以上1未満の偏心率を有する、項目1に記載の金型。
[3]
前記シード(2)の前記楕円形横断面が、0.55~0.82の偏心率を有する、項目2に記載の金型。
[4]
前記シード断面の短軸の長さの半分(P1/2)と前記開口部(13)の半径(Rd)の間の差に対応する遮断距離(Db)が2.4mm以上である、項目1~3のいずれか1項に記載の金型。
[5]
前記シードと前記ハウジングの側方表面の間のクリアランス(J)が0.03mm以下である、項目1~4のいずれか1項に記載の金型。
[6]
前記シードの頂部表面と前記ハウジングの頂部表面の間の距離(d)が5mm~10mmである、項目1~5のいずれか1項に記載の金型。
[7]
前記単結晶シード(2)がその頂縁部の周りに面取りまたは丸み付け(2b)を有する、項目1~6のいずれか1項に記載の金型。
[8]
ターボ機械の羽根を製造するのに使用するための項目1~7のいずれか1項に記載の金型。
[9]
前記シード(2)の前記楕円形横断面が0.55~0.82の偏心率を有し、前記短軸(P1)が13mm~16mmの長さを有し、前記開口部(13)が4mm~5mmの半径(Rd)を有し、前記シードの頂部表面と前記ハウジングの頂部表面の間の距離(d)が5mm~10mmである、項目8に記載の金型。
[10]
エピタキシャル成長により単結晶構成要素を製造するための方法であって:
- 前記構成要素が中で形成されるキャビティ(10)と単結晶シード(2)が内部に配置される楕円形横断面を有するハウジング(12)とを含む金型(1)を製造するステップ(E2)であって、前記シードが、短軸(P1)および長軸(P2)によって画定される楕円形横断面を有し、前記シード横断面の前記長軸および前記短軸が、前記単結晶シードを形成する前記単結晶の前記二次結晶学的配向(X、Y)に応じて配向されており、前記ハウジングは、溶融金属が中を通って流れる円形横断面の開口部(13)を介して前記キャビティと流体連通状態にあり、前記単結晶シードおよび前記開口部が同じ垂直軸(Z)を中心としている、ステップと;
- 溶融金属を前記金型内に鋳込むステップ(E5)と;
- 前記鋳造金属を方向性凝固させて構成要素を得るステップ(E6)と;
を含む方法。