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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】ストルバイトの分解
(51)【国際特許分類】
   C01B 25/45 20060101AFI20241120BHJP
   C01B 25/34 20060101ALI20241120BHJP
   C01F 11/46 20060101ALI20241120BHJP
   C02F 1/58 20230101ALI20241120BHJP
   C05F 7/00 20060101ALN20241120BHJP
【FI】
C01B25/45 D
C01B25/34
C01F11/46 B
C02F1/58 P
C05F7/00
【請求項の数】 47
(21)【出願番号】P 2021573517
(86)(22)【出願日】2020-06-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-23
(86)【国際出願番号】 SE2020050605
(87)【国際公開番号】W WO2020256622
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-05-10
(31)【優先権主張番号】1950734-2
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】509263386
【氏名又は名称】イージーマイニング スウェーデン エービー
【氏名又は名称原語表記】EASYMINING SWEDEN AB
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(72)【発明者】
【氏名】ヤリーブ、コーエン
(72)【発明者】
【氏名】パトリック、エンフェルト
(72)【発明者】
【氏名】ヨン、スベルド
(72)【発明者】
【氏名】カール-ヨハン、ヘーグバリ
(72)【発明者】
【氏名】エミリ、ノルドストレーム
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-001259(JP,A)
【文献】特表2011-510809(JP,A)
【文献】国際公開第2013/136677(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0062289(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 25/00 - 25/46
C01F 11/00 - 11/48
C02F 1/58
C05F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストルバイトの分解方法であって、前記方法は:
-ストルバイトを含んでなる供給材料(13)を鉱酸(15)中に溶解し(S10)、これにより、酸性pHを有する溶液を製造する工程と;
-前記溶液からマグネシウムを除去する工程(S30)であって、前記マグネシウム除去工程(S30)は:
-前記溶液のpHを4.5~6の範囲のpHまで増加させる部分工程(S32)と;
-アンモニウムを含まないマグネシウム化合物を沈殿させる部分工程(S34)と;
-前記溶液から前記沈殿マグネシウム化合物を分離する部分工程(S36)と、
を含む、工程と
を含み;
これにより、前記マグネシウム除去工程(S30)後の前記溶液は前記鉱酸のアンモニウム塩を含んでなる、
方法。
【請求項2】
前記供給材料はカルシウム化合物を更に含んでなり、これにより、前記供給材料の前記溶解(S10)は前記カルシウム化合物を前記溶液に溶解することと;
前記マグネシウム除去工程(S30)前に前記酸性溶液からカルシウムを取り出す(S20)工程であって、前記カルシウム取出し工程(S20)は:
-前記溶液からカルシウム化合物を沈殿させる部分工程(S22)と;
-前記溶液から前記沈殿カルシウム化合物をろ過する部分工程(S24)と
を含む、工程の更なる工程と、
を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
-前記カルシウム取出し工程(S20)後に、後続の前記供給材料の溶解工程(S10)に添加しようとする前記溶液の一部をフィードバックする(S29)更なる工程、
を特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記フィードバック工程(S29)におけるフィードバック量を、前記カルシウム取出し工程(S20)が1モル濃度を超えた後に、最終リン酸イオン濃度を得るように制御することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記鉱酸は、塩酸、リン酸および硝酸のうちの少なくとも1つであることと;
これにより、前記カルシウム化合物の沈殿工程は、硫酸を添加して(S22B)、これにより、石膏として前記カルシウム化合物の沈殿を起こすことを含むこと、
を特徴とする、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記鉱酸は硝酸であることと;
これにより、前記カルシウム化合物の沈殿工程は、前記供給材料の溶解工程(S10)後に、前記溶液を冷却して(22C)、これにより、硝酸カルシウムの沈殿を起こすことと、
を特徴とする、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記鉱酸は硝酸であり、これにより、前記マグネシウム除去工程(S30)後の前記溶液は硝酸アンモニウムを含んでなることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記鉱酸は塩酸であり、これにより、前記マグネシウム除去工程(S30)後の前記溶液は塩化アンモニウムを含んでなることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記鉱酸はリン酸であり、これにより、前記マグネシウム除去工程(S30)後の前記溶液はリン酸アンモニウムを含んでなることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記鉱酸は硫酸であることと;
これにより、前記供給材料の溶解工程(S10)および前記カルシウム化合物の沈殿工程(S22)は同時に起こることと、
これにより、前記沈殿カルシウム化合物は石膏を含んでなることと、
を特徴とする、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記鉱酸は硫酸であり、これにより、前記マグネシウム除去工程(S30)後の前記溶液は硫酸アンモニウムを含んでなることを特徴とする、請求項1、2、3、4または10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記供給材料(13)の溶解工程(S10)およびアンモニウムを含まない前記マグネシウム化合物の沈殿工程(S34)は少なくとも部分的に同時に起こり、これにより、前記供給材料中のストルバイトはニューベリーアイト中に再結晶化することを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記pHの増加工程(S32)は前記溶液へのアンモニアの添加(S31)を含むことと;
前記マグネシウム化合物の沈殿工程(S34)は50℃以上、好ましくは65℃以上、最も好ましくは80℃以上まで前記溶液を加熱すること(S33)を含むことと、
を特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記沈殿マグネシウム化合物はニューベリーアイトを含んでなることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記沈殿ニューベリーアイトをpH<5の酸性洗浄水で洗浄する更なる工程を特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記マグネシウム除去工程(S30)は:
-前記沈殿マグネシウム化合物の分離工程(S36)後に前記溶液により多くのアンモニアを添加し(S41)、これにより、ストルバイトの沈殿を起こすことと;
-前記溶液から前記沈殿ストルバイトを取り出すこと(S42)と、
の更なる工程を含むことを特徴とする、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記pHの増加工程(S32)および前記マグネシウム化合物の沈殿工程(S34)を少なくとも部分的に一段階過程として行い、前記一段階過程は前記ろ過工程後に前記溶液に塩基を添加すること(S32A)であることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記塩基はストルバイトであることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記沈殿マグネシウム化合物はニューベリーアイトを含んでなることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記沈殿ニューベリーアイトをpH<5の酸性洗浄水で洗浄する更なる工程を特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記マグネシウム除去工程(S30)は:
-前記沈殿マグネシウム化合物の前記分離工程(S36)後に前記溶液に更なる塩基を添加し(S38)、これにより、ストルバイトとして残存するマグネシウムおよびリンの少なくとも一部の沈殿を起こすことと;
-前記溶液から前記沈殿ストルバイトを取り出すこと(S39)と、
の更なる工程を含むことを特徴とする、請求項18~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
-後続の前記塩基の添加工程(S32A)において使用しようとする前記取り出された沈殿ストルバイトの少なくとも一部を再循環する(S40)更なる工程を特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
-前記溶液から前記鉱酸の前記アンモニウム塩を凝固する(S50)更なる工程を特徴とする、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記鉱酸の前記アンモニウム塩の前記凝固工程(S50)は、前記マグネシウム除去工程(S30)後の前記溶液を加熱(S52)し、これにより、前記鉱酸の前記アンモニウム塩の固体製品および高温凝縮液を製造することを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記pHの増加工程(S32)は前記溶液へのアンモニアの添加(S31)を含むことと;
前記マグネシウム化合物の沈殿工程(S34)は50℃以上、好ましくは65℃以上、最も好ましくは80℃以上まで前記溶液を加熱すること(S33)を含むことと、
前記溶液を加熱すること(S33)は、前記マグネシウム除去工程(S30)後の先の前記溶液の前記加熱工程(S52)により製造された前記高温凝縮液、および前記溶液間の熱交換を行う工程(S37)を含むことと、を特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ストルバイトは、アンモニウムストルバイトおよびカリウムストルバイトの少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
廃棄物からの少なくとも窒素の回収方法であって、前記方法は:
-アンモニウムを含まないマグネシウム化合物を廃棄物の初回液に添加して(S4)、前記廃棄物の初回液のpHをアルカリ性pHまで調整すること(S5)によって、前記廃棄物の初回液からストルバイトを沈殿させる(S1)工程と;
-前記廃棄物の初回液から前記沈殿ストルバイトを分離する(S2)工程と;
-請求項1~26のいずれか一項に記載の方法によって前記分離ストルバイトを分解する(S3)工程と、
を含む、方法。
【請求項28】
前記分離ストルバイトの分解工程(S3)においてアンモニウムを含まない前記沈殿マグネシウム化合物の少なくとも一部を、廃棄物(13)の初回液から後続の前記ストルバイトを沈殿させる工程(S1)においてアンモニウムを含まない前記添加マグネシウム化合物の少なくとも一部として使用することを特徴とする、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ストルバイトの沈殿工程(S1)は種晶として前記廃棄物の初回液にストルバイトを添加することを更に含むことを特徴とする、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
前記初回液のpHの前記調整(S5)を、カルシウム化合物を少なくとも部分的に添加すること(S6)によって行い、これにより、いずれかの沈殿カルシウム化合物を前記沈殿ストルバイトと一緒に分離することを特徴とする、請求項27~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
ストルバイトの分解装置であって、前記装置は:
-ストルバイトを含んでなる供給材料(13)を鉱酸(15)中に溶解し、これにより、酸性pHを有する溶液(17)を作製するために配置された溶解機(10)であって、 前記溶解機は、前記供給材料(13)のためのインプット(11)、前記鉱酸(15)のためのインプット(14)および前記酸性pHを有する溶液(17)のためのアウトプット(18)を備える、溶解機と;
-前記溶液からマグネシウム(S30)を取り出し、これにより、前記鉱酸のアンモニウム塩を含んでなる溶液(39)を得るために配置されたマグネシウム除去部(30)であって、
前記マグネシウム除去部(30)は、前記溶解機(10)の前記酸性pHを有する溶液(17)用前記アウトプット(18)と連結されたインプット(34)、沈殿マグネシウム化合物のためのアウトプット(32)、および前記鉱酸のアンモニウム塩を含んでなる前記溶液(39)のためのアウトプット(38)を備え、
前記マグネシウム除去部(30)は、前記溶解機(10)からの前記溶液のpHを4.5~6の範囲のpHまで増加させ、アンモニウムを含まないマグネシウム化合物を沈殿させ、前記溶液からの前記沈殿マグネシウム化合物を分離するために配置されている、マグネシウム除去部と、
を備える、装置。
【請求項32】
前記供給材料はカルシウム化合物を更に含んでなり、これにより、前記溶解機(10)は前記カルシウム化合物を前記溶液に更に溶解すること、および前記溶解機(10)は前記酸性溶液からカルシウムを取り出すために配置されたカルシウム取出し部(20)を更に備えることを特徴とし、
前記カルシウム取出し部(20)は前記溶液からカルシウム化合物(22)の沈殿を起こすための手段、および前記溶液から前記沈殿カルシウム化合物をろ過するためのフィルター(24)を備える、
請求項31に記載の装置。
【請求項33】
-前記カルシウム取出し部(20)の前記ろ過後の溶液のためのアウトプットおよび前記供給材料の後続の溶解のために添加しようとする前記ろ過後の溶液の一部を添加するための前記溶解機(10)へのインプット間のフィードバック結合(60)、
を特徴とする、請求項32に記載の装置。
【請求項34】
前記鉱酸は、塩酸、リン酸および硝酸のうちの少なくとも1つであることと;
これにより、前記カルシウム化合物(22)の沈殿を起こすための前記手段は、硫酸(27)を添加し、これにより、石膏として前記カルシウム化合物の沈殿を起こすためのインプット(23)を備えることと、
を特徴とする、請求項32または33に記載の装置。
【請求項35】
前記鉱酸は硝酸であることと;
これにより、前記カルシウム化合物(22)の沈殿を起こすための前記手段は、前記供給材料の前記溶解後に前記溶液を冷却し、これにより、硝酸カルシウムの沈殿を起こすために配置された冷却装置(21)を備えることと、
を特徴とする、請求項32または33に記載の装置。
【請求項36】
前記鉱酸は硫酸であることと;
これにより、前記供給材料の前記溶解は前記カルシウム取出し部(20)において起こることと;
これにより、前記カルシウム化合物(22)の沈殿を起こすための手段は前記鉱酸(15)のための前記インプットを備えることと;
これにより、前記沈殿カルシウム化合物は石膏を含んでなることと、
を特徴とする、請求項32または33に記載の装置。
【請求項37】
前記マグネシウム除去部(30)は:
-前記溶液と混合してそのpHを増加させるためのアンモニア(31)のための入口(35)と;
-前記溶液およびアンモニアの混合物を加熱し、これにより、マグネシウム化合物(41)の沈殿を起こすための加熱装置(33)であって、
前記加熱装置(33)は50℃以上、好ましくは65℃以上、最も好ましくは80℃以上の温度まで前記溶液およびアンモニアの混合物を加熱するために配置される、加熱装置と、
を備えることを特徴とする、請求項31~36のいずれか一項に記載の装置。
【請求項38】
前記マグネシウム除去部(30)は前記溶液への塩基のための入口(35)を備え、これにより、前記マグネシウム化合物の沈殿を起こし、前記塩基のための入口(35)はストルバイトの入口用に配置されていることを特徴とする、請求項31~36のいずれか一項に記載の装置。
【請求項39】
前記マグネシウム除去部(30)は:
-前記沈殿マグネシウム化合物の前記分離工程後の前記溶液のための入口(46)およびアンモニア(31)のための入口(48)を備え、これにより、ストルバイト(31B)の沈殿を起こす混合容積(44)と;
-前記溶液から前記沈殿ストルバイト(31B)を取り出すためのストルバイト取出し装置(49A)と、
を更に備えることを特徴とする、請求項38に記載の装置。
【請求項40】
前記ストルバイト取出し装置(49A)から後続の塩基添加で使用しようとする塩基用の前記入口(35)への前記取り出された沈殿ストルバイト(31B)の少なくとも一部を再循環するために配置された再循環装置(43)を更に備えることを特徴とする、請求項39に記載の装置。
【請求項41】
-マグネシウム除去部(30)の前記鉱酸のアンモニウム塩を含んでなる前記溶液(39)のための前記アウトプットと連結しており、前記溶液から前記鉱酸の前記アンモニウム塩を結晶化するために配置された末端凝固装置(50)であって、
前記末端凝固装置(50)は前記鉱酸の前記アンモニウム塩の凝固生成物(51)のためのアウトプット(52)を備える、末端凝固装置と
を更に備えることを特徴とする、請求項31~40のいずれか一項に記載の装置。
【請求項42】
前記末端凝固装置(50)は、前記鉱酸の前記アンモニウム塩を含んでなる前記溶液(39)を加熱し、これにより、前記鉱酸の前記アンモニウム塩の前記固体生成物および高温凝縮液を生成するために配置された加熱装置(54)を備えることと;
これにより、前記末端凝固装置(50)は、前記高温凝縮液のためのアウトプット(53)を備えることと、
を特徴とする、請求項41に記載の装置。
【請求項43】
前記マグネシウム除去部(30)は:
-前記溶液と混合してそのpHを増加させるためのアンモニア(31)のための入口(35)と;
-前記溶液およびアンモニアの混合物を加熱し、これにより、マグネシウム化合物(41)の沈殿を起こすための加熱装置(33)であって、
前記加熱装置(33)は50℃以上、好ましくは65℃以上、最も好ましくは80℃以上の温度まで前記溶液およびアンモニアの混合物を加熱するために配置される、加熱装置と、
を備えるものであり、
前記末端凝固装置(50)の前記高温凝縮液のための前記アウトプット(53)は、前記溶液および前記マグネシウム除去部(30)のアンモニアの混合物を加熱するための前記加熱装置(33)と連結しており、これにより、前記溶液およびアンモニアの前記混合物を加熱するための前記加熱装置(33)を、前記末端凝固装置(50)における前記溶液の前の加熱により生成された前記高温凝縮液ならびに前記マグネシウム除去部(30)の前記溶液およびアンモニアの前記混合物間の熱交換を行うために配置すること、を特徴とする、請求項42に記載の装置。
【請求項44】
廃棄物から少なくとも窒素を回収するための装置であって、
-ストルバイト沈殿装置(2)であって、
前記ストルバイト沈殿装置(2)は、廃棄物の初回液(135)のためのインプット(3)およびアンモニウムを含まないマグネシウム化合物(136)のためのインプット(5)を備え、
前記ストルバイト沈殿装置(2)は、前記廃棄物の初回液(135)および前記マグネシウム化合物(136)を混合するため、ならびに前記廃棄物の初回液のpHをアルカリ性pHに調整し、これにより、ストルバイト(100)が沈殿するために配置され、
前記ストルバイト沈殿装置(2)は、前記廃棄物の初回液(135)から前記沈殿ストルバイトを分離するために配置された分離装置(7)、および前記沈殿ストルバイト(100)のためのアウトプット(6)を備える、ストルバイト沈殿装置と;
-請求項31~43のいずれか一項に記載のストルバイト(100)を分解するための装置(1)と、
を備え、
前記溶解反応槽(10)の前記フィードインプット(11)は、前記ストルバイト沈殿装置(2)の前記沈殿ストルバイト(100)のための前記アウトプット(6)と連結している、
装置。
【請求項45】
前記マグネシウム除去部(30)の沈殿マグネシウム化合物のための前記アウトプットは、後続のストルバイト沈殿においてストルバイト(100)を分解するための前記装置(1)において製造されるアンモニウムを含まない前記沈殿マグネシウム化合物の少なくとも一部を使用するために、前記ストルバイト沈殿装置(2)のアンモニウムを含まないマグネシウム化合物(136)のための前記インプット(5)と連結していることを特徴とする、請求項44に記載の装置。
【請求項46】
前記ストルバイト沈殿装置(2)は、前記pH調整を行うためのカルシウム化合物を添加し、これにより、いずれかの沈殿カルシウム化合物を前記沈殿ストルバイトと共に分離するためのインプットを備えることを特徴とする、請求項44または45に記載の装置。
【請求項47】
前記ストルバイト沈殿装置(2)は、前記廃棄物の初回液中に種晶としてストルバイトを添加するためのインプットを備えることを特徴とする、請求項44~46のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、概して、ストルバイトの化学処理の方法および装置、特に、そのストルバイト分子から少なくともアンモニアを回収するためにストルバイトを分解するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
窒素は、生命に必須であり、全ての生物により大量に消費される栄養素である。アンモニアは、肥料産業により大規模に合成される。ハーバー・ボッシュ法を用いて世界的に毎年約100Mtの反応性窒素が合成される。この人為的起源のアンモニア製造は、天然窒素固定と同様な規模であり、地球上で毎年約150~200Mtの窒素と推定される。
【0003】
ヒトおよび動物は、摂取する食料に含まれる栄養素のかなりの割合を排泄する。他の農業起源と並んで、これらの栄養素は、都市下水流出物として環境に戻る道を見つけ、処理された有機物、農業食品加工流出物、その他から流出物を埋め立てる。栄養素の人為的起源負荷は、受ける水塊の富栄養化の主原因である。したがって、排水処理プラントは、栄養素豊富な流出物を処理するために必要である。
【0004】
アンモニアの合成および排水からの取出しプロセスは両方共、エネルギー集約的および資源集約的である。ハーバー・ボッシュ法では、それぞれ、約450℃および30MPaの温度および圧において水素ガスと大気窒素を結合することによって、アンモニアが合成される。アンモニア製造産業は、水素のための再生できない前駆体として天然ガスおよびエネルギーに大きく依存する。アンモニア合成は、世界の天然ガス消費の約5%に関与していると考えられる。世界的規模のアンモニア製造は、世界の化石燃料由来エネルギー利用の1.3%を占め、温室効果ガス発生のかなりな一因となっている。
【0005】
典型的な環境条件では、排水中の大部分の窒素は、溶解アンモニウムイオンとして存在する。窒素排出の目標を達成するために、排水処理プラントは、硝化などの生物窒素取出しプロセスを使用し、次いで、通常、脱窒反応して最終的にアンモニアを大気窒素に変換する。
【0006】
窒素を取り出すための生物プロセスは、高価かつ複雑である。かかるプロセスにおける操作細菌は、広範囲の毒性化合物に感受性が高い。高塩分の流出物は処理することができない。加えて、生物処理の実施は、非常に温度依存性が高く、寒冷気候において低効率である。操作細菌は、長い滞留時間を必要とし、これは大きなボウルを意味する。さらに、プロセスはエネルギー集約的でもあり、全アンモニウムを硝酸に酸化するために大規模なエアレーションを要する。脱窒反応により硝酸の窒素ガスへの効率的変換を得るために、メタノールなどの炭素の高価な源が通常必要である。プロセスは、亜酸化窒素の形態のかなりの量の気候ガスも生成する。結局、反応性窒素は破壊され変換されて大気窒素に戻り、資源集約的なハーバー・ボッシュ法により再び回収される必要がある。
【0007】
流出物からの窒素を取り出すための現在ある技術は、高価かつ複雑である。生物処理に加えて、代替法は:a)アンモニアストリッピング-高温および/または高pH、比較的低アンモニア含有率を含む流れを処理するための高資本および高運転コストを必要とし、b)アンモニア吸着-例えば、ゼオライト上への吸着は、再生のための化学薬品、高資本および高運転コストを必要とし、アンモニアを回収するのは困難であり、ならびにc)不連続点塩素処理-必要な化学薬品のせいで高運転コストであり、窒素を失い回収されない。
【0008】
論理的帰結としては、窒素含有流出物は、廃棄物ではなくて窒素源として見做され、窒素含有流出物は、農業または他の産業により使用することができるだろう形態で窒素の回収により利用されるべきである。スウェーデンでは、生活排水から窒素の回収のための環境目標が提案されている。
【0009】
リンも、生命に必須の重要な要素である。地表水へのリンの放出、およびその結果としての富栄養化への寄与は、水質に対する懸念の増大につながった。したがって、生活および産業廃水からリンを取り出すための技術の実行により、地表水に入るリンのレベルを低減させるために、政策が世界中で実行された。窒素と対照的に、無機リン源は、限定的および有限であると考えられる。加えて、世界のリン貯蔵の大部分は、少数の国でしか制御されていない。したがって、生活廃棄物中に存在するリンの再循環および有益な再使用に対する興味は増大している。いくつかの国は、近年、都市下水からリンを回収するための必須条件を導入した。
【0010】
カリウムも、全ての生物により大量に消費されている栄養素である。リンと同様に、カリウムも、鉱物または塩湖の限定的な岩鉱床から抽出される。世界中のカリウム貯蔵も、少数の国でしか制御されていない。カリウムの回収は、水域環境における制限栄養塩でないので、窒素およびリンなどの富栄養化に寄与していないことが原因で、社会的には未だにあまり議論されていない。加えて、希釈流出物からカリウムを回収するための今日の実行可能な技術はない。
【0011】
排水からのストルバイトの沈殿は、肥料としてストルバイトを製造するために使用されてきた。ストルバイトは結晶であり、6水分子と結合したマグネシウム、アンモニウムおよびリン酸の等モル濃度で生成される(MgNHPO・6HO)。その分子量は、モル当たり245.43gであり、中性およびアルカリ性条件下難溶性であるが酸には易溶である。ストルバイト結晶格子中のアンモニウムイオンは、カリウムまたはナトリウムなどの他のアルカリイオンと交換され得る。したがって、ストルバイトの2つの更なる形態がある:a)モル当たり266.46gの分子量を有するカリウムストルバイト(MgKPO・6HO)、およびモル当たり250.36gの分子量を有するナトリウムストルバイト(MgNaPO・6HO)。
【0012】
他の栄養素に対するマグネシウムの比率(N+P、またはK+P)が充分で、pHを中性またはアルカリ性レベルに調整する場合、排水からストルバイトを容易に沈殿させることができる。排水からのストルバイト沈殿は、従来技術の実践において容易に適用される。ストルバイト沈殿の応用は、これまでに、リンの回収に主に焦点が当てられてきた。ほとんどの排水は、ストルバイトとしてリンを取り出すために充分なアンモニウムを含有し、ストルバイト沈殿に必要になる唯一の添加は、通常、マグネシウム源である。
【0013】
アンモニウム窒素は、リンと比較してずっと高い濃度において流出物中に通常存在する。排水からストルバイトの形態で窒素を取り出すために、大量に外部リンおよびマグネシウムが必要である。しかしながら、単にアンモニウム-窒素を回収するために、リンの高品質源をストルバイトに変換することは非実用的である。ストルバイトの商品価値は低いので、かかるプロセスは、経済的に実行可能ではないであろう。
【0014】
ストルバイトを多くの異なる種類の排水から沈殿させることが文献中に報告されてきた。可能性のある応用としては:ブタ排水、仔ウシ堆肥排水、革なめし排水、下水処理返流水、酪農排水、下水スラッジ蒸煮がまスラリー、ダイジェスター上澄液、産業廃水、埋立地浸出水、ラグーン排水、鶏糞排水、農産工業廃棄物、屠殺場排水、堆肥製造装置流出物、動物堆肥、所品加工流出物、分別尿、および肥料工場排水が挙げられる。
【0015】
最新ストルバイト沈殿は、リンの取り出しに焦点が当てられている。これは、通常、pH調整のために塩化マグネシウムおよび水酸化ナトリウムの形態でマグネシウムを添加、あるいは、pH調整のためにマグネシウム源およびヒドロキシルイオンの両方を提供する水酸化マグネシウムを添加することによって行う。概して、生活排水からストルバイトを回収するための2つの理由があり、第一は、排水処理工場におけるストルバイトのスケーリング問題を解決することである。第二の理由は、限定的な源であるリンの回収を可能とすることである。
【0016】
通常、従来の散布装置を用いて耕地に散布することができる特定の大きさの範囲のストルバイトペレットを成形することを可能とする特定の晶析装置内で、ストルバイトの沈殿を行う。その後、沈殿されたストルバイトは、通常、緩効性リン肥料として使用される。ストルバイトペレットの製造は、複雑なタスクである。プロセスは、8~50日の長い固体滞留時間を必要とするが、典型的な水理学的滞留時間は10分未満である。反応器内で流動化されたペレットを保持するために、約25%以下の流入に対する再循環流が必要である。設置は、複雑かつ高価である。ペレットが必要でない場合、ストルバイトは、短い反応時間で簡単な反応器内で沈殿し、次いで、ろ過および/または遠心沈降によるなど簡単な固液分離を行うことができることは明白である。
【0017】
ストルバイトの最新沈殿の裏にある主要アイデアは、肥料としてこれを使用することである。しかしながら、ストルバイトは、最適な肥料ではない。ストルバイトは、窒素、リンまたはカリウムに対してマグネシウムを多く含有しすぎる。例えば、国際連合食糧農業機関によれば、ジャガイモの収穫のための栄養素の要件は、Mg:N:P:Kのモル比で1:78:5:36である。冬コムギのための栄養素の要件は、Mg:N:P:Kのモル比で1:18:1:7である。実際の肥料の要件は、作物の種類および粘土または土壌鉱物からの放出による、例えば、マグネシウムまたはカリウムのために送達する土壌の能力に依存する。肥料としてのストルバイトの主要な問題は、水可溶性でないことである。これは、ストルバイト中の栄養素が容易に植物可給性にならないことを意味する。したがって、ストルバイトを主要な肥料として使用することができないが、ニッチな応用のための追加の緩効性肥料としてのみ使用することができる。最近、ストルバイトの植物可給性は、土壌中の高マグネシウム含有率により抑制されていることが分かった。これは、肥料としてストルバイトの大規模な応用を更に限定し得る。上記理由のせいで、肥料の価値、ならびにストルバイトの経済的価値は一般的に低い。
【0018】
排水からの全ての主要な植物栄養素:リン、窒素および場合によりカリウムを同時に回収することを可能とすることができる方法および装置の必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
全般的目的は、排水から主要な植物栄養素の回収を可能とする方法および装置を提供することである。
【0020】
上記目的は、独立クレームによる方法およびデバイスによって達成される。好ましい実施形態は、従属クレームで定義される。
【課題を解決するための手段】
【0021】
一般的に言えば、第一態様では、ストルバイトの分解方法は、鉱酸中のストルバイトを含んでなる供給材料を溶解することを含む。これにより、酸性pHを有する溶液を生成する。マグネシウムを溶液から除去する。マグネシウム除去は、4.5~6の範囲のpHまで溶液のpHを増加させ、アンモニウムを含まないマグネシウム化合物を沈殿させ、溶液から沈殿マグネシウム化合物を分離する。これにより、マグネシウム除去後の溶液は、鉱酸のアンモニウム塩を含んでなる。
【0022】
第二態様では、廃棄物から少なくとも窒素を回収する方法は、アンモニウムを含まないマグネシウム化合物を廃棄物の初回液に添加して、廃棄物の初回液のpHをアルカリ性pHまで調整することによって、廃棄物の初回液からストルバイトを沈殿させることを含む。沈殿ストルバイトを廃棄物の初回液から分離する。分離ストルバイトを、第一態様による方法によって分解する。
【0023】
第三態様では、ストルバイトを分解するための装置は、鉱酸中のストルバイトを含んでなる供給材料を溶解するために配置された溶解機を備える。これにより、酸性pHを有する溶液を生成する。溶解機は、供給材料のためのインプット、前記鉱酸のためのインプットおよび酸性pHを有する溶液のためのアウトプットを備える。装置は、溶液からマグネシウムを除去するために配置されたマグネシウム除去部を更に備える。これにより、鉱酸のアンモニウム塩を含んでなる溶液を得る。マグネシウム除去部は、溶解機の酸性pHを有する溶液のためのアウトプットと連結されたインプット、沈殿マグネシウム化合物のためのアウトプット、および鉱酸のアンモニウム塩を含んでなる溶液のためのアウトプットを備える。マグネシウム除去部は、溶解機からの溶液のpHを4.5~6の範囲のpHまで増加させ、アンモニウムを含まないマグネシウム化合物を沈殿させ、溶液からの沈殿マグネシウム化合物を分離するために配置されている。
【0024】
第四態様では、廃棄物から少なくとも窒素を回収するための装置は、ストルバイト沈殿装置を備える。ストルバイト沈殿装置は、廃棄物の初回液のためのインプットおよびアンモニウムを含まないマグネシウム化合物のためのインプットを備える。前記ストルバイト沈殿装置は、廃棄物の初回液およびマグネシウム化合物を混合するため、ならびに廃棄物の初回液のpHをアルカリ性pHに調整するために配置されている。これにより、ストルバイトは沈殿する。ストルバイト沈殿装置は、廃棄物の初回液から沈殿ストルバイトを分離するために配置された分離装置、および沈殿ストルバイトのためのアウトプットを備える。装置は、第三態様によるストルバイトを分解するための装置を更に備える。溶解反応槽のフィードインプットは、ストルバイト沈殿装置の沈殿ストルバイトのためのアウトプットと連結している。
【0025】
提案された技術を用いる1つの利点は、ストルバイトの対費用効果の高い分解方法を提供することであり、次に、ストルバイトそれ自体における窒素含有物を用いた有用なアンモニウム塩の生成を可能とし、同時に、窒素沈殿を反復するためにマグネシウム源の再利用を可能とすることである。他の利点は、詳細な説明を読めば理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
更なる目的およびその利点と共に、本発明は、添付の図面と共に以下の説明を参照することによって最良に理解される。
図1】ストルバイトの分解方法の実施形態の工程を例証するフローダイヤグラムを示す。
図2】ストルバイトの分解するための装置の実施形態を模式的に示す。
図3】廃棄物から少なくとも窒素を回収するための方法の実施形態の工程のフローダイヤグラムを示す。
図4】廃棄物から少なくとも窒素を回収するための装置の実施形態を示す。
図5】ストルバイトの分解方法の他の実施形態の工程のフローダイヤグラムを示す。
図6】ストルバイトの分解方法の他の実施形態の工程のフローダイヤグラムを示す。
図7】ストルバイトの分解方法の他の実施形態の工程のフローダイヤグラムを示す。
図8】ストルバイト分解のための装置の実施形態の一部を示す。
図9】ストルバイト分解のための装置の別の実施形態の一部を示す。
図10】ストルバイト分解のための装置の更に別の実施形態の一部を示す。
図11】溶液からマグネシウムを除去する工程の実施形態の部分工程のフローダイヤグラムを示す。
図12】溶液からマグネシウムを除去する工程の別の実施形態の部分工程のフローダイヤグラムを示す。
図13】マグネシウム除去部の実施形態を模式的に示す。
図14】溶液からマグネシウムを除去する工程の更に他の実施形態の部分工程のフローダイヤグラムを示す。
図15】溶液からマグネシウムを除去する工程の更に他の実施形態の部分工程のフローダイヤグラムを示す。
図16】マグネシウム除去部の別の実施形態を模式的に示す。
図17】溶液からマグネシウムを除去する工程の更に別の実施形態のフローダイヤグラムを示す。
図18】マグネシウム除去部の別の実施形態を模式的に示す。
図19】ストルバイトの分解方法の別の実施形態の一部のフローダイヤグラムを示す。
図20】ストルバイトの分解するための装置の別の実施形態の一部を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図面を通して、同類または対応する要素に対して同じ照合番号を使用している。
【0028】
マグネシウムおよびリンの安価な源を利用可能である場合、アンモニアを生物学的に変換して大気窒素に戻すよりむしろ、栄養分に富んだ排水からアンモニアを回収するためにストルバイト沈殿の使用によるところに可能性がある。
【0029】
ストルバイト分解に関連する全ての従来技術に共通しているのは、アンモニウム窒素の回収または取り出しに専ら焦点が当てられている。ストルバイトの形態で窒素沈殿を反復するためのマグネシウムおよびリン源の再利用を可能とし得る従来技術の方法は全くない。
【0030】
したがって、窒素の回収ならびに、例えば、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムまたはカリウムストルバイトにより再生効率が影響されない後続のアンモニウム窒素取出しのためのマグネシウムおよびリン源の再利用を可能とするストルバイトの分解を可能とすることができるロバストな方法が必要である。
【0031】
例えば、リン酸二マグネシウムまたは高品質のニューベリーアイトなどの反応性形態のストルバイトからのマグネシウムおよびリンの再利用を可能とすることができる方法が必要である。ストルバイト組成および反復サイクル数に依存しないで、回収されたマグネシウムおよびリン源の一定品質は保証されるべきである。
【0032】
エネルギーを大量消費しないロバストなストルバイトの分解方法が必要である。
【0033】
排水処理中に高い資本および運転費用を必要とする専用流動床反応器中にペレットの形態でストルバイトを沈殿させる必要性を省くことができるストルバイトの処理方法が必要である。
【0034】
インプットされた化学薬品が最終商品に変換される好ましいマスバランスを有するストルバイトの分解方法が必要である。
【0035】
異なるアンモニウム塩形態においてアンモニアの回収を可能とする方法が必要である。
【0036】
ストルバイトそれ自体における窒素含有物を用いた有用なアンモニウム塩の生成を可能とし、同時に、窒素沈殿を反復するためにマグネシウムおよびリン源の再利用を可能とするストルバイトの対費用効果の高い分解方法が必要である。
【0037】
本技術によれば、マグネシウムおよびリンの安価な源を、ストルバイト分子それ自体から誘導することができる。その後、このマグネシウムおよびリンを水溶出物からストルバイト沈殿のために使用することができる。これは、ストルバイト内に結合されているが、水溶出物に由来するアンモニウムの回収を可能とする。
【0038】
文献において、アンモニアの回収または取出しを可能とするストルバイトの分解方法を提供するためのいくつかの試みが成された。
【0039】
広範な研究が、例えば、Stefanowicz et al. 1992による加熱によるストルバイトからのアンモニアの遊離を可能とするストルバイトの熱分解に力を注いだ。このアプローチの主な欠点は、ストルバイトの熱分解後、排水からのアンモニウム窒素の沈殿に有効でないピロリン酸マグネシウム残渣が生成されることである。
【0040】
ストルバイトの熱分解は、数段階で起こる。第一段階では、アンモニウムストルバイト(MgNHPO・6HO)は、水の除去によりジットマライト(MgNHPO・HO)に変換される。ジットマライトは、ストルバイトより熱安定性が高い。生成されたジットマライトの更なる加熱の結果、追加の水およびアンモニアを遊離して、最終的にピロリン酸マグネシウム(Mg)を生成する。
【0041】
Farhana, 2015は、85℃の温度および95%の相対湿度において2~4時間反応器内でストルバイトペレットの流動化を維持する流動床反応器においてアンモニウムストルバイトを熱分解することを提案した。目的は、比較的低温および高湿度を有することによって、ピロリン酸マグネシウムではなくリン酸二マグネシウムにストルバイトを分解することであった。この方法の欠点としては、流動化を維持するために特定の大きさおよび硬度のストルバイトペレットが必要であることによる高い複雑性が挙げられる。リン酸二マグネシウムへのストルバイトの変換は、試験されたストルバイトペレットのいくつかでは不完全であることが分かった。ペレットの硬度および大きさは、変換効率およびプロセス運転に関する主要因である。軟質ペレットは、粉塵を生成するので処理できないだろう。加えて、プロセスは、大量の熱気および蒸気を必要としてエネルギーを大量消費する。
【0042】
全ての熱ストルバイト変換処理に共通するのは、プロセスはカリウムストルバイトまたはリン酸カルシウムの分解に適していないことである。多くの排水は、かなりの量の溶解カリウムおよびカルシウムを含む。これは、ストルバイトが高pHにおいてかかる排水から沈殿する場合、ストルバイトのいくつかの形態の混合物は、カリウムストルバイト(MgKPO・6HO)と共にアンモニウムストルバイト(MgNHPO・6HO)などで通常存在することを意味する。溶解カルシウムの存在は、ストルバイトと共にリン酸カルシウムの共沈殿をもたらす。熱ストルバイト再生は気体のアンモニアを熱的に取り出すことに基づいているので、リン酸カルシウムまたはカリウムストルバイトを再生することができない。これは、熱処理からのストルバイト分解生成物が排水処理に再利用される場合、再生することができない残渣中のカルシウムおよびカリウムの蓄積が原因で効率は経時的に急速に低下するだろう。
【0043】
Zhang, S. et al. 2004は、4~5.5のpHにおいて熱塩酸溶液中でアンモニウムストルバイトを分解する方法を提案した。原則は、僅かに酸性のpHおよび25℃以上の温度において、リン酸二マグネシウムがストルバイトと比較して低い溶解度を有することに基づいてストルバイトをリン酸二マグネシウムに変換することであった。この方法の欠点としては、リン酸二マグネシウムへのストルバイトの再結晶化の低効率が挙げられる。加えて、リン酸カルシウムの溶解度は酸性pHにおけるリン酸二マグネシウムよりかなり低いので、方法は、共沈殿リン酸カルシウムからリンを再生することができない。更に、低pHにおける高リン溶解度は、各再生サイクルにおいてかなりのリン損失をもたらす。加えて、Zhang et al.による再結晶化の条件は、輸送に費用のかかるリットル当たりほんの約7グラムの窒素濃度しか有しない非常に薄い塩化アンモニウム溶液をもたらす。
【0044】
Zhang, T. et al. 2009は、高温アルカリ性水溶液中で熱的にアンモニウムストルバイトを分解することを試験した。アイデアは、第一にリン酸三マグネシウムを生成する水溶液にアンモニアを遊離することであった。高温アルカリ性溶液中のアンモニアは気体に転換し、分離することができる。方法は、いくつかの欠点を有する。リン酸三マグネシウムへのストルバイトの変換は不完全であることが分かった。リン酸カルシウムはアルカリ性溶液に可溶でなく、これは分解生成物が徐々にカルシウムで塞がれてその効率を低下させることを意味するので、方法は、共沈殿リン酸カルシウムからリンを再生することができない。
【0045】
Huang et al. 2015は、次亜塩素酸ナトリウムの添加によりストルバイトを分解してリン酸二マグネシウムを生成する方法を提案した。方法の主な欠点は、窒素を回収することができず、窒素ガスの形態で失うことである。加えて、方法は高運転コストを有し、他と同様に、ストルバイト分解方法は、カリウムストルバイトもリン酸カルシウムも再生することができず、実際の排水中で繰り返し使用される場合、分解生成物の効率を低下させる。
【0046】
Huang et al. 2015は、マイクロ波照射を用いることによるストルバイトの分解方法を更に提案した。ストルバイトは水酸化ナトリウムと混合され、マイクロ波照射により処理されてアンモニアを遊離し、ストルバイト沈殿による水性アンモニア取出しに対して反応性を有するとクレームされたストルバイトをリン酸ナトリウムマグネシウム化合物に変換する。この方法の欠点としては、高運転コストおよび高資本を必要とすること、複雑な装置を必要とすること、ならびに大量の水酸化ナトリウムを必要とすることが挙げられる。加えて、方法は、カリウムストルバイトまたはリン酸カルシウムの再生に適しておらず、経時的に不良となるアンモニア取出し能力をもたらす。
【0047】
Hao et al., 2011は、ストルバイトの電気化学的分解方法を提案した。主な欠点は、窒素を回収することができず、窒素ガスの形態で失う上に、高資本および高運転コストを必要とする。
【0048】
しかしながら、ここで提供された技術によれば、鉱酸を用いてストルバイトを溶解する。酸性溶液は、好ましくは、第一にカルシウムを含有しない。次いで、マグネシウム、好ましくは、更にリン酸成分の少なくとも主要部分をアンモニウムから分離する。抽出されたアンモニウムは、商業的に魅力のある形態で提供される。分離されたリンおよびマグネシウムを、例えば、排水応用において再利用することができる。異なる部分方法の多くの魅力ある溶液がある。
【0049】
図1は、ストルバイトの分解方法の実施形態の工程を例証するフローダイヤグラムを示す。工程S10では、ストルバイトを含んでなる供給材料を鉱酸に溶解する。この溶解の結果、酸性pHを有する溶液を生成する。そのように生成された溶液は、通常、透明溶液であるが、下記本明細書に述べられているようにいくらかの沈殿化合物を示し得る。この酸性溶液は、リン酸イオン、マグネシウムイオンおよびアンモニウムイオンを含んでなる。通常の鉱酸全てはこの点において使用することができる。
【0050】
硫酸中のストルバイトの溶解は、以下の化学反応に従って起こる:
2NHMgPO・6HO+3HSO4 → 2HPO+(NHSO+2MgSO+12H
硫酸は、硫化銅鉱石の精錬、硫化鉄鉱石の製錬、その他などのいくつかの工業プロセスから副産物として製造される。
【0051】
硫酸がいくつかの有用な製品の製造の避けられない副産物であるので、かかる製品の製造は、多くの場合、副産物の硫酸のための出口を見つけることによって限定される。通常、これは産業共生によって解決し、すわわち、副産物である硫酸は別の製品の製造の原料として使用される。
【0052】
塩酸中のストルバイトの溶解は、以下の化学反応に従って起こる:
【0053】
NHMgPO・6HO+3HCl → HPO+NHCl+MgCl+6H
【0054】
塩酸は、塩素アルカリ工業、塩化ビニルの製造、ポリテトラフルオロエチレンの製造、PVCの焼却、硫酸ナトリウムの製造、硫酸カリウムの製造、塩素の燃焼、パークロロエチレンの製造、ジクロロメタンの製造、トリクロロエチレンの製造、ホスゲン-ポリウレタン鎖の副産物としてなどのいくつかの工業プロセスからの副産物として製造される。
【0055】
塩酸がいくつかの有用な製品の製造の避けられない副産物であるので、かかる製品の製造は、多くの場合、副産物である塩酸のための出口を見つけることによって限定される。通常、これは産業共生によって解決し、すなわち、副産物である塩酸は、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、その他などの別の製品の製造の原料として使用される。
【0056】
硝酸中のストルバイトの溶解は、以下の化学反応に従って起こる:
NHMgPO・6HO+3HNO → HPO+NHNO+Mg(NO+6H
【0057】
硝酸は、肥料における所望の成分である。
リン酸中のストルバイトの溶解は、以下の化学反応に従って起こる:
NHMgPO・6HO+3HPO → NHPO+HPO+Mg(HPO+6H
序文で述べられているように、ストルバイトは、アンモニウムストルバイトの純粋な形態で沈殿することは希である。排水は、通常、かなりの量のカルシウム、カリウムおよび炭酸類を含有し、これらは、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、カリウムストルバイト、および炭酸マグネシウムのかなりの共沈殿をもたらす。
【0058】
本技術によれば、上記共沈殿は、容易に取り出すことができるか、またはストルバイト処理方法を妨げない。これは、本発明による方法を、異なる応用に由来し、したがって、異なる化学組成物を有する、異なるストルバイト沈殿物の混合物を単一中央プラントにおいて処理することができるロバストな技術とする。これは、異なる好ましい実施形態により示される。
【0059】
1つの実施形態、例えば、図1に示されている実施形態では、方法は、Caが酸性溶液から取り出される必要に応じて選択される工程S20を含んでよい。この必要に応じて選択される実施形態は、点線で示されている。この実施形態は、供給材料がカルシウム化合物を更に含んでなる場合に好ましい。このような場合、供給材料の溶解工程S10は、少なくとも一時的にカルシウム化合物を溶液中に溶解することを更に含む。酸性溶液からのカルシウムのこの取出しS20は、下記に更に記載されるように、マグネシウムおよびリンを溶液から取り出す前に行われる。
【0060】
部分工程S22では、カルシウム化合物は溶液から沈殿する。部分工程S24では、沈殿されたカルシウム化合物は溶液からろ過する。これらの工程の詳細は、使用される実際の鉱酸に応じていくらか異なり得る。これは、下記に更に述べられる。
【0061】
沈殿されたストルバイトは、砂、その他などのいくつかの酸性に不溶な成分を含有し得る。したがって、不溶性でない残渣を、ろ過、遠心分離、遠心沈降、その他などのいずれかの適切な固液分離技術を用いて分離する。もしあれば、工程S20の前または組み合わせて、これを行うことができる。
【0062】
いくつかの有機材料はストルバイトと共沈殿することもできるので、いくつかの溶解有機物はストルバイト浸出液に入ることができる。したがって、溶解有機物は、ストルバイト浸出液から分離するのが好ましい。活性炭への吸着、化学酸化、凝結、その他などの溶解有機物の分離のためにいくつかの選択肢がある。
【0063】
ここに提示された技術に従って、好ましくは可能な限り高濃度を有する浸出液の製造を可能とする方法で、ストルバイトの溶解を行う。ストルバイト溶解中の濃縮液の製造は、肥料の形態で鉱酸から塩の効率的回収を可能とする。
【0064】
この目的を達成するために、好ましい実施形態では、図1の矢印S29により示されているように、溶解処理後の浸出液の一部のバックブリードを行う。すなわち、浸出液の一部を再循環し、後続の溶解工程における追加溶媒として利用する。実験は、浸出液の20%のブリードバックにより、硫酸を使用する場合、ブリードバックしないアプローチと比較して、浸出液中の高濃度のリン酸イオンの2倍に至る可能性がある。30%のブリードバックにより、最終リン酸イオン高濃度のほとんど2.5倍になる。
【0065】
すなわち、好ましい実施形態では、カルシウム取出し工程後の溶液の一部を肯定S29にフィードバックして、後続の供給材料溶解工程において添加する。
【0066】
好ましい実施形態では、工程S29におけるブリードバック量を、少なくとも1モル濃度のカルシウム取出し工程S20後の最終リン酸イオン濃度を得るように制御する。
【0067】
前処理後のストルバイト浸出液は、いつでも化学処理する状態になっている。
【0068】
したがって、共沈殿の組成物に応じて、ストルバイト浸出液は、可溶性の形態で少なくとも次の要素を含有するだろう:アンモニウムおよびマグネシウム、ならびに使用された鉱酸に対応するアニオン。
【0069】
本技術の主な利点は、処理プラントに入るストルバイトは、例えば、最新ストルバイト沈殿技術におけるようなペレットの形態である必要がない。この主な理由は、農地にストルバイトを散布しないが、代わりに鉱酸中に溶解する考えであることである。ペレットは必要としないので、ストルバイト沈殿法を簡単かつ低コストの方法で行うことができる。ストルバイトは、短い反応時間で簡単な反応器内で沈殿し、次いで、ろ過および/または遠心沈降によるなど簡単な固液分離を行うことができる。
【0070】
また、図1に戻って、工程S30において、マグネシウムを酸性溶液から除去する。図1の実施形態では、除去は、いくつかの部分工程を含む。工程S32において、溶液のpHは、4.5~6の範囲のpHまで増加する。アンモニウムを含まないマグネシウム化合物を、工程S34において沈殿する。工程S36では、沈殿されたマグネシウム化合物を、溶液から分離する。これは、マグネシウム除去工程S30後、溶液は鉱酸のアンモニウム塩を含んでなる。
【0071】
1つの実施形態では、ストルバイトの溶解は、完全に完了しないかもしれない。ストルバイトのニューベリーアイトへの再結晶化は、固体部分の完全溶解が起こる前にでさえ起こるかもしれないことが分かった。あたかも供給材料の溶解工程S10およびアンモニウムを含まないマグネシウム化合物の沈殿工程S34が少なくとも部分的に同時に起こるかのように、これを説明することができる。ストルバイトは溶解し、また、リン酸イオンおよびマグネシウムイオンは、アンモニウムイオンの代わりに水素を含んで即時に沈殿する。
【0072】
全体の反応は、おおよそ以下のように記載され得る:
NHMgPO・6HO(s)+Hac(aq) → MgHPO・3HO(s)・+3HO+NHAc(aq)、
式中、Acは鉱酸アニオンである。
【0073】
この実施例は、下記に更に述べられる。
【0074】
溶液中にカルシウムが存在し、溶解のために硫酸を使用するか、さもなければ添加する場合、ニューベリーアイトと共に石膏が沈殿するだろう。他でも記載されているように、このニューベリーアイトを、例えば、排水への暴露によって新しいストルバイトを生成するために再利用する場合、石膏は徐々に濃縮するだろう。したがって、このような場合には、石膏を取り出すことができるようになるために、ストルバイトを時々完全に溶解させる必要があるかもしれない。代替の方法は、石膏含有量を限定的に維持するように浸出流を使用してもよい。
【0075】
鉱酸のアンモニウム塩の溶液を、最終産物として使用してもよく、他のプロセスへの供給化学薬品として使用してもよい。しかしながら、これらの塩の肥沃化特性を利用するために、塩溶液を固体最終産物に変換することが好ましい。
【0076】
すなわち、必要に応じて選択される工程S50により示されているように、鉱酸のアンモニウム塩を溶液から凝固する。
【0077】
図2は、ストルバイトを分解するための装置1の実施形態の概略図を示す。この実施形態では、ストルバイトを分解するための装置1は、溶解機10およびマグネシウム除去部30を備える。溶解機10は、鉱酸15中ストルバイトを含んでなる供給材料13を溶解するために配置されている。これにより、酸性pH17を有する溶液を生成する。溶解機10は、ストルバイトを含んでなる供給材料13を入れるためのインプット11を備える。溶解機10は、鉱酸15を入れるためのインプット14も備える。溶解機10は、溶解ストルバイト19を含んでなる酸性溶液のためのアウトプット18を更に備える。これにより、溶解機10は、供給材料13のストルバイトおよびストルバイトの上記溶解を起こすための鉱酸15を混合するように構成されている。
【0078】
好ましい実施形態では、溶解溶液の前処理を、次の運転工程のための溶液を調製するために行う。特に、供給材料がカルシウム化合物を更に含んでなる応用において、望ましくない物質の分離は重要であり得る。このような場合、溶解機10は、少なくとも一時的に、カルシウム化合物を溶液中に更に溶解する。溶解機10は、好ましくは、酸性溶液からカルシウムを取り出すために配置されたカルシウム取出し部20を更に備える。カルシウム取出し部20は、溶液からカルシウム化合物22の沈殿を起こすための手段、および溶液から沈殿カルシウム化合物をろ過するためのフィルター24を備える。フィルター24を、例えば、ストルバイトを含有していたかもしれない砂などの他の不溶性物質をろ過して取り除くために使用することもできる。
【0079】
更なる好ましい実施形態では、溶解機10は、有機化合物取出し装置を備えてもよい。活性炭の使用、化学酸化または当技術分野において周知であるような他の方法によって、有機化合物を、例えば、取り出してよい。これにより、更なる物質を溶解機10に添加してよく、不純物を取り出してよい。
【0080】
更に上記のように、必ずしも必要であるわけではないけれども、溶液のバックブリードは通常有利である。したがって、好ましい実施形態では、溶解機の特徴の一部として、バックブリード結合60が提供される。バックブリード結合60は、後続のストルバイト溶解において使用しようとするカルシウム取出し部20に出て行く溶液の一部61を再循環するために配置されている。通常、バックブリード部分61は、インプット14を通って鉱酸15と共に溶解機10中に再び入る。あるいは、バックブリードは、溶解機10中への別のインプットを備えることもできる。
【0081】
すなわち、カルシウム取出し部のろ過後の溶液のためのアウトプットおよび供給材料の後続の溶解のために添加しようとするろ過後の溶液の一部を添加するための溶解機へのインプット間に、フィードバック結合は提供される。
【0082】
沈殿槽40は、溶液のpHを増加することによって入ってくる溶液からマグネシウム化合物43を沈殿させるように構成される。沈殿槽40は、残っている溶液から沈殿マグネシウム化合物43を分離するための分離装置48を備える。沈殿槽40は、リン酸イオン取出し部20のリン酸イオン抽出25後の溶液のためのアウトプット24と直接的または間接的に連結された溶液のためのインプット41を備える。沈殿槽40は、pH調整物質45のためのインプット44も備える。沈殿槽40は、沈殿マグネシウム化合物43のためのアウトプット42および硫酸アンモニウム47を含んでなる溶液のためのアウトプット46を更に備える。
【0083】
ストルバイトを分解するための装置1は、溶液からマグネシウムを除去するために配置されたマグネシウム除去部30を更に備える。これにより、鉱酸のアンモニウム塩を含んでなる溶液39を製造する。マグネシウム除去部30は、溶解機10の酸性pH17を有する溶液のためのアウトプット18と連結されたインプット31を備える。マグネシウム除去部30は、沈殿マグネシウム化合物41のためのアウトプット32、および鉱酸のアンモニウム塩を含んでなる溶液39のためのアウトプット38を更に備える。マグネシウム除去部30は、溶解機10からの溶液のpHを4.5~6の範囲のpHまで増加させ、アンモニウムを含まないマグネシウム化合物を沈殿させるように配置されている。マグネシウム除去部30は、例えば、フィルター42によって溶液から沈殿マグネシウム化合物を分離するように更に配置されている。かかる装置の異なる実施形態は、下記で更に述べられるだろう。
【0084】
好ましい実施形態では、ストルバイトを分解するための装置1は、塩溶液を処理するためにも配置されている。かかる実施形態では、ストルバイトを分解するための装置1は、マグネシウム除去部30の鉱酸のアンモニウム塩を含んでなる溶液39のためのアウトプット38と連結された末端凝固装置50を備える。末端凝固装置50は、溶液から鉱酸のアンモニウム塩を結晶化するように配置されている。末端凝固装置50は、鉱酸のアンモニウム塩の固体生成物51のためのアウトプット52を備える。
【0085】
図1に記載の方法および図2に記載の装置を、ストルバイトの一般的分解のための方法および装置などのように操作することができる。これにより、成分、典型的にはマグネシウムまたはアンモニウム化合物の形態のリン、典型的にはアンモニウム塩の形態の窒素、および典型的にはリン酸化合物の形態のマグネシウムを含んでなる有用な物質に、ストルバイトを分解する。
【0086】
下記にも更に述べられるように、マグネシウムおよびストルバイト浸出液からリンの少なくとも一部を分離する好ましい方法は、マグネシウム化合物の沈殿を使用することである。
【0087】
したがって、マグネシウム含有物は利用可能になり、下記のように、好ましくは、排水処理のためのマグネシウム源として再利用するか、またはいずれかの他のポイントにおいてプロセスに再導入する。しかしながら、商業的関心の他の製品に変えてもよい。
【0088】
しかしながら、ストルバイトの分解を、他の工業プロセスの一部として実行することもできる。背景技術において述べられているように、いくつかの排水処理アプローチは、ストルバイトの沈殿によって窒素およびリンを抽出する。上記提示されているストルバイト分解にアクセスすることによって、特に、分離マグネシウム生成物がストルバイト沈殿のために再利用することができる場合、より経済的および効率的になるように、かかる排水処理を更に開発することができる。
【0089】
図3は、廃棄物から少なくとも窒素を回収するための方法の実施形態の工程のフローダイヤグラムを示す。工程S1では、ストルバイトは、廃棄物の初回液から沈殿する。これは、廃棄物の初回液にマグネシウム源を添加し、アルカリ性pHになるように廃棄物の初回液のpHを調整することによって行う。工程S2では、沈殿ストルバイトを廃棄物の初回液から分離する。工程S3では、分離されたストルバイトを分解する。好ましくは、上記本明細書に記載したものに従った方法によって、これを行う。
【0090】
すなわち、廃棄物から少なくとも窒素を回収する方法の実施形態は、アンモニウムを含まないマグネシウム化合物を廃棄物の初回液に添加して、廃棄物の初回液のpHをアルカリ性pHまで調整することによって、廃棄物の初回液からストルバイトを沈殿させることを含む。沈殿されたストルバイトを、廃棄物の初回液から分離し、分離されたストルバイトを、本開示の他の箇所で開示されている手順に従った方法によって分解する。
【0091】
好ましくは、分離ストルバイトの分解工程においてアンモニウムを含まない沈殿マグネシウム化合物の少なくとも一部を、廃棄物の初回液から後続のストルバイトを沈殿させる工程においてアンモニウムを含まない添加マグネシウム化合物の少なくとも一部として使用する。これにより、マグネシウムを、消費されることなくシステム内で再循環することができる。したがって、マグネシウムは、アンモニウムの形態で窒素の抽出に寄与するが、後に生成されたストルバイトから回収され、次の窒素抽出操作のために使用することができる。
【0092】
1つの実施形態では、アンモニウムを含まないこの沈殿マグネシウム化合物は、ニューベリーアイトを含んでなる。
【0093】
ストルバイト結晶を他のマグネシウム化合物と共に廃棄物に添加する場合、マグネシウム化合物の使用により廃棄物からストルバイトを沈殿させる速度論をかなり改善することができることが更に見出された。したがって、廃棄物の初回液に提供されるこれらのストルバイトを種晶として機能する。
【0094】
上記考えられたように、ストルバイトと共に提供されたカルシウムを、石膏として取り出し、例えば、沈殿してもよく、残りのプロセスを妨げないだろう。石灰は比較的安価な塩基であり、したがって廃棄物の初回液のpHを調整するために適切な選択である。すなわち、好ましくは、廃棄物の初回液のアルカリ性pHへの調整を、石灰を添加することによって行う。これにより、沈殿されたカルシウム化合物を、前記沈殿されたストルバイトと共に分離する。
【0095】
図4は、同様に、廃棄物から少なくとも窒素を回収するための装置9の実施形態を示す。この実施形態では、廃棄物から少なくとも窒素を回収するための装置9は、本明細書において廃棄物処理槽の形態のストルバイト沈殿装置2、およびストルバイトを分解するための装置1を備える。好ましくは、ストルバイトを分解するための装置1は、本開示で提示されているストルバイトを分解するための装置の実施形態のいずれかに従って配置されている。
【0096】
ストルバイト沈殿装置2は、廃棄物の初回液135のための入口3を備える。ストルバイト沈殿装置2は、マグネシウム源136のための入口5も備える。マグネシウム源136の種類に応じて、必要に応じて塩基137のための入口4も備える必要もあるかもしれない。もちろん、入口4および5は、1つの共通入口として配置されていてもよい。ストルバイト沈殿装置2は、廃棄物の初回液135からストルバイト100を沈殿するように構成される。マグネシウム源136を添加し、廃棄物の初回液135のpHをアルカリ性pHに調整することによって、これを行う。例えば、水酸化マグネシウムを使用する場合、マグネシウム源によって、このpH調整を行ってよい。例えば、ニューベリーアイトなどの他のマグネシウム源に関し、pHを調整するために、追加の塩基137を添加してよい。上記のように、石灰は安価な塩基であり、カルシウムは、連続法で石膏として容易に分離される。
【0097】
1つの実施形態では、ストルバイト沈殿装置2は、廃棄物の初回液135のpHをアルカリ性pHに調整することを可能とするために、石灰のためのインプットを備える。
【0098】
ストルバイト沈殿装置2は、廃棄物の初回液135から沈殿ストルバイト100を分離するように構成された分離装置7を備える。ストルバイト沈殿装置2は、沈殿ストルバイト100から分離された廃棄物の初回液138のための出口8、および沈殿ストルバイト100のための出口6を備える。
【0099】
すなわち、廃棄物から少なくとも窒素を回収するための装置の実施形態は、ストルバイト沈殿装置およびストルバイトを分解するための装置を備える。ストルバイト沈殿装置は、廃棄物の初回液のためのインプットおよびアンモニウムを含まないマグネシウム化合物のためのインプットを備える。前記ストルバイト沈殿装置は、廃棄物の初回液およびマグネシウム化合物を混合するため、ならびに廃棄物の初回液のpHをアルカリ性pHに調整し、これによりストルバイトが沈殿するために配置されている。ストルバイト沈殿装置は、廃棄物の初回液から沈殿ストルバイトを分離するために配置された分離装置、および沈殿ストルバイトのためのアウトプットを備える。
【0100】
ストルバイトを分解するための装置は、本開示の他の箇所で提示されている原理に従って配置されている。溶解反応槽のフィードインプットは、ストルバイト沈殿装置の沈殿ストルバイトのためのアウトプットと連結している。
【0101】
好ましくは、マグネシウム除去部の沈殿マグネシウム化合物のためのアウトプットは、後続のストルバイト沈殿においてストルバイトを分解するための装置において製造されるアンモニウムを含まない沈殿マグネシウム化合物の少なくとも一部を使用するために、ストルバイト沈殿装置のアンモニウムを含まないマグネシウム化合物のためのインプットと連結している。1つの実施形態では、かかるマグネシウム化合物は、ニューベリーアイトを含んでなる。
【0102】
更に、上記本明細書で述べられているものと同様に、ストルバイト沈殿装置2は、好ましくは、種晶として使用するための廃棄物の初回液にストルバイトを添加するためのインプットを備える。
【0103】
好ましくは、ストルバイト沈殿装置は、pH調整を行うためのカルシウム化合物を添加し、これにより、いずれかの沈殿カルシウム化合物を沈殿ストルバイトと共に分離するためのインプットを備える。
【0104】
下記より詳細に述べるように、ストルバイトを分解するための装置1におけるストルバイトの分解中に取り出されるマグネシウム化合物41の少なくとも一部を、ストルバイト沈殿装置2に入るマグネシウム源136の少なくとも一部として再利用してよい。これにより、マグネシウム再循環連結99を、廃棄物処理槽2中にストルバイトを分解するための装置から提供する。
【0105】
Caが酸性溶液から取り出される図1の好ましい実施形態の工程S20を、ストルバイト溶解において使用される実際の鉱酸に応じて異なる方法で行うことができる。硫酸を使用する場合、硫酸イオンが溶液に提供され、結果的に、ストルバイトと共沈殿されるリン酸カルシウムは、次式に従って石膏としてカルシウムと結合して硫酸中で再結晶化する:
【0106】
Ca(PO(s)+3HSO → 2HPO+3CaSO(s)
【0107】
共沈殿された炭酸カルシウムは、二酸化炭素の発生下硫酸に同様に溶解し、カルシウムは次式に従って石膏として沈殿する:
CaCO(s)+HSO → CaSO(s)+CO↑+H
【0108】
かかる応用では、工程S22は、図5に示されているように、実際の溶解工程S10の部分工程であると見做すことができる。工程S10Aでは、ストルバイトは、硫酸に溶解し、これにより、酸性溶液を生成する。工程S22Aでは、石膏が沈殿し、工程S24Aでは、沈殿された石膏をろ過する。
【0109】
すなわち、鉱酸が硫酸である場合、供給材料を溶解する工程S10Aおよびカルシウム化合物を沈殿する工程S22Aは、同時に起こる。沈殿されたカルシウム化合物は、石膏を含んでなる。
【0110】
ストルバイトを溶解するための硫酸の使用により、概して、マグネシウムを除去する工程S30の後、溶液は硫酸アンモニウムを含んでなることにつながる。
【0111】
あるいは、上記のように、他の鉱酸を、ストルバイトを溶解するために使用することもできる。鉱酸が塩酸、リン酸および硝酸のうち少なくとも1つである実施形態では、いずれもの共溶解カルシウム化合物を、石膏として更に取り出すことができる。図6は、かかる実施形態を示す。工程S10Bでは、ストルバイトを、塩酸、リン酸および硝酸の少なくとも1つに溶解する。工程S22Bでは、既に酸性である溶液に硫酸を添加することによって、硫酸イオンを導入する。これらの硫酸イオンは、溶液中のいずれかのカルシウムイオンと共に、石膏として沈殿する。この選択的沈殿を、主要な溶解酸として塩酸、リン酸および硝酸の全てに対して操作可能であることを試験した。
【0112】
好ましくは、硫酸量を、ストルバイト供給材料中のカルシウム量に適応する。これにより、硫酸量は、酸性溶液から全カルシウムイオンの沈殿を起こすのに充分であるべきである。同時に、最終産物の詳細が明らかである場合、過剰量の硫酸を低く維持するべきである。
【0113】
すなわち、鉱酸が塩酸、リン酸および硝酸のうちの少なくとも1つである実施形態では、カルシウム化合物の沈殿工程は、硫酸を添加し、これにより、石膏として前記カルシウム化合物を沈殿させることを含む。
【0114】
あるいは、鉱酸が硝酸を含んでなる実施形態では、Caを取り出す他の可能性も存在する。図7は、かかる実施形態を示す。工程S10Cでは、ストルバイトを硝酸に溶解する。Caイオンを含んでなる硝酸溶液は、室温または室温以上において硝酸カルシウムに対して比較的高溶解度を有する。しかしながら、酸性溶液の冷却によって、溶解度は即時に低下し、最終的に硝酸カルシウムの沈殿をもたらし、沈殿を容易にろ過して取り出すことができる。したがって、工程S22Cでは、酸性溶液を冷却し、硝酸カルシウムの沈殿を起こす。工程S24Cでは、硝酸カルシウムをろ過して取り出す。
【0115】
すなわち、鉱酸が硝酸である実施形態では、カルシウム化合物の沈殿工程は、供給材料の溶解工程S10後に、溶液を冷却S22Cして、これにより、硝酸カルシウムの沈殿を起こすことを含む。
【0116】
ストルバイトを溶解するための硝酸の使用により、概して、マグネシウムを除去する工程S30の後、溶液は硝酸アンモニウムを含んでなることにつながる。
【0117】
ストルバイトを溶解するための塩酸の使用により、概して、マグネシウムを除去する工程S30の後、溶液は塩化アンモニウムを含んでなることにつながる。
【0118】
ストルバイトを溶解するためのリン酸の使用により、概して、マグネシウムを除去する工程S30の後、溶液はリン酸アンモニウムを含んでなることにつながる。
【0119】
異なる鉱酸の使用は、装置の詳細な構成に対しても影響を与えない。図8では、硫酸をストルバイトの溶解のために使用する装置の実施形態の一部を示す。インプット14は、溶解機10に硫酸15Aを提供する。しかしながら、同時に、硫酸イオンによって、いずれものCaは石膏として沈殿する。すなわち、供給材料13の溶解は、カルシウム取出し部20Aにおいて起こると解釈することができる。カルシウム化合物22Aの沈殿を起こす手段は、かかる観点から、硫酸15Aのためのインプット14を備える。沈殿されたカルシウム化合物は、石膏を含んでなる。
【0120】
図9では、ストルバイト分解のための装置の別の実施形態の一部を示す。ここで、鉱酸は、塩酸、リン酸および硝酸のうちの少なくとも1つである。インプット14は、溶解機10に塩酸、リン酸または硝酸15Bを提供する。この実施形態では、カルシウム化合物22の沈殿を起こすための手段は、硫酸27を添加し、これにより、石膏としてカルシウム化合物の沈殿を起こすためのインプット23を備える。
【0121】
図10では、ストルバイト分解のための装置の更に別の実施形態の一部を示す。ここで、鉱酸は、硝酸を含んでなる。インプット14は、溶解機10に硝酸15Cを提供する。カルシウム化合物22の沈殿を起こすための手段は、供給材料13の溶解後に溶液を冷却し、これにより、硝酸カルシウムの沈殿を起こすために配置された冷却装置21を備える。
【0122】
マグネシウムイオンの取出しを、異なる方法で行うことができる。マグネシウムイオンをいずれかの特定の方法で使用しようとする場合、マグネシウムイオン取出しの形態を、イオンのその最終用途に適応するようにすることができる。上記本明細書で示唆されるように、リン酸イオンと共にマグネシウムイオンは、廃棄物からストルバイト沈殿を起こすのに必要である。廃棄物中のリンの利用可能な量が、例えば、窒素含有量と比較して低すぎる場合、ストルバイト沈殿に関連してマグネシウムイオンおよびリン酸イオンの両方を添加することは興味深いことかもしれない。次いで、溶解ストルバイトから分離されたマグネシウムイオンを再使用することができ、マグネシウムイオンが取り出される形態はかかる再循環に適するようにしてよい。好ましい実施形態では、マグネシウムイオンを、マグネシウムおよびリン酸の両方を含んでなる物質の沈殿によって取り出す。
【0123】
溶解ストルバイトを含む溶液のpHレベルがアンモニアの添加により増加する場合、固体物質は、pHが約4.5のレベルを超える場合に沈殿し始める。アンモニウムイオンは溶液中に既に存在し、したがって、追加イオンを導入しないので、アンモニアは当然の選択である。
【0124】
0.5モル/リットル以下の濃度を有する希釈溶解ストルバイト溶液に関する文献(Abbona et al, 1982)によれば、4.5を超えるpH増加は、ニューベリーアイトの沈殿をもたらすだろう。しかしながら、4.5~6のpHレベルにおいて約1モル濃度の濃度を有するアンモニアの溶解ストルバイト溶液への添加を含む出願者の広範な実験後、得られた固体物質の分析は、ストルバイトを構成し、すなわち、ストルバイトの溶解は逆進行されているだけであることを示している。
【0125】
結論は、1モル濃度以上の濃度を有する溶解ストルバイトにアンモニアを添加することによって、ニューベリーアイトの沈殿を得ることは不可能であることであった。
【0126】
ストルバイト(S)およびニューベリーアイト(N)の過飽和(β)は、次式に従って定義することができる:
β = a(Mg2+)a(NH)a(HPO 2-)/KSP(S)
β = a(Mg2+)a(HPO 2-)/KSP(N)
式中、a(X)はXの活量であり、KSPは反応における化学種の溶解度積である。
【0127】
上式から、ニューベリーアイトと対照的に、高濃度のアンモニアはストルバイトの沈殿に有利に働く。
【0128】
アンモニアを用いてpHを増加させる場合に実験的に得られたがっかりする結果は、最も可能性あるのはおそらく、溶液中のアンモニウムイオンの高活量が原因であろう。
【0129】
文献によれば、ニューベリーアイトの過飽和を、溶液の温度の上昇により増大することができる。しかしながら、1モル濃度以上の高濃度において溶解ストルバイト溶液にアンモニアを添加する系における挙動についての情報がない。
【0130】
したがって、本出願者は、加熱を伴う1モル濃度以上の高濃度におけるアンモニアを、溶解ストルバイト溶液を添加するアプローチを実験的に試験した。
【0131】
1つの実施形態では、アンモニアの添加を、50℃以上の温度までの溶液の加熱と同時に行う。個別にまたは少なくとも部分的に同時に、これを行うことができる。驚くべきことに、アンモニアの添加により起こる4.5~6の範囲のpHを有する溶液の加熱は、ニューベリーアイトの沈殿を起こし、高濃度にもかかわらず溶液中にアンモニアを残すことが分かった。先行試験は、いずれかの少量のストルバイトの共沈殿は、高温度においてさえ減少することを示している。65℃以上の温度では、ほんの微量のストルバイトしか見出すことができず、80℃以上では、全沈殿物質は本質的にストルバイトを含まず、使用された分析の検出限界以下である。
【0132】
80℃まで加熱したストルバイト溶液を用いた実験では、約5までpHを増加させるためにアンモニアを使用した。得られた沈殿物質は、約0.96のP(PO)/Mgの原子比率を有したが、一方、N(NH)/Mgの原子比率は0.01であった。
【0133】
このアプローチの小さい欠点は、加熱の必要があることである。しかしながら、下記に更に述べられるように、全体のエネルギー必要性を低減するために、アンモニウム塩溶液の後処理を組み合わせることができる実施形態がある。他の代替法も下記に更に記載する。
【0134】
図11は、溶液からマグネシウムを除去する工程S30の実施形態の部分工程のフローダイヤグラムを示す。ここで、pHを増加させる工程S32を、アンモニアを添加する工程S33により行う。ここで、Mg化合物を沈殿させる工程S34を、50℃以上、好ましくは65℃以上、最も好ましくは80℃以上まで溶液の温度を上昇させることによって行う。工程S32およびS34は、別々に行われるように示されている。しかしながら、工程S32~S35を、少なくとも部分的に重複して行うこともできる。
【0135】
溶液のpHが増加するほど、ニューベリーアイトとストルバイトとが共沈殿する傾向は増加する。しかしながら、この実験によれば、溶液からのマグネシウムの完全除去が、6のpHにおいて達成することができるだろう。したがって、本発明によれば、好ましくは、二段階でマグネシウムの沈殿を行うことができる。第一段階では、アンモニアを4.5以上のpHまで添加するが、溶液の加熱中に6未満になり、ニューベリーアイトを沈殿させる。第二段階では、溶液中の残存マグネシウムを、pHを6まで増加させることによってストルバイトの形態で沈殿させ、沈殿ストルバイトを溶解反応器に再循環する。
【0136】
1つの実施形態では、これらのアイデアによれば、2つの追加工程が提供される。工程S41では、工程S36における沈殿マグネシウム化合物の分離後に行って、追加のアンモニアを添加してpHを更に増加させて、ストルバイトとしていずれもの残存マグネシウムの沈殿を起こす。工程S42では、いずれもの沈殿ストルバイトを分離し、好ましくは、出発物質の一部として後続のストルバイト分解方法にリエントリーする。
【0137】
特定の実施形態では、図12に示されているように、工程S33を工程S35の後に行ってもよいかもしれない。次いで、工程S33は工程S32の部分工程になり、次に、工程S34の部分工程である。この場合、ニューベリーアイトとしておそらく時間がかかる再結晶化を後に行わなければならないストルバイトの第一生成のリスクを低減する。
【0138】
図13は、マグネシウム除去部30の実施形態を示す。この実施形態では、マグネシウム除去部30は、溶液と混合してそのpHを増加させるためにアンモニア31のための入口35を備える。マグネシウム除去部30は、前記溶液およびアンモニアの混合物を加熱し、これにより、マグネシウム化合物41の沈殿を起こすための加熱装置33を更に備える。加熱装置33は、溶液およびアンモニアの混合物を50℃以上、好ましくは65℃以上、最も好ましくは80℃以上の温度まで加熱することができるように配置される。フィルター42を使用して、残存溶液から沈殿マグネシウム化合物41を分離する。加熱装置33に関する更なる好ましい実施形態を下記に更に述べる。
【0139】
上記二段階分離アプローチを操作するべき場合、入口35およびフィルター42を、残存ストルバイトをろ過するために再利用することができる。あるいは、これらの追加工程を行うための分離手段を、同様に提供することができる。
【0140】
上記更に述べられているように、生成されたニューベリーアイトを、例えば、廃棄物の初回液からストルバイトを沈殿させるために利用してよい。かかる応用のため、その上他の応用と同様に、ニューベリーアイトを、好ましくは、不純物を取り出すために洗浄する。しかしながら、例えば、脱イオン水を用いた洗浄は、ストルバイトの再生成をもたらすことが分かった。おそらく、これは、水およびいくらかの残存アンモニウムに起因するpHの増加が原因であろう。かかるストルバイト生成を避けるために、pH<5の酸性洗浄水で沈殿ニューベリーアイトを洗浄するのが好ましい。かかる場合、ストルバイトへの変換は見られなかった。
【0141】
しかしながら、上記に簡単に述べられている「ように、ニューベリーアイトを、例えば、廃棄物の初回液からストルバイトを沈殿させるために使用する場合、種晶として操作するいくつかのストルバイトは有効であるかもしれない。
【0142】
別の実施形態では、pHを増加させる工程S32およびマグネシウム化合物を沈殿させる工程S34を、少なくとも部分的に単一プロセスとして行う。この単一プロセスは、ろ過工程後に、アンモニア以外の塩基を溶液に添加する工程S32Aである。この方法では、溶液に追加のアンモニウムイオンを添加せず、マグネシウムおよびリン含有量の少なくとも一部を、例えば、ニューベリーアイトとして沈殿させてよい。たとえこの実施形態が基本的にほとんどの場合に機能し得るが、しかしながら、この実施形態は、多くの応用では、特定の少数の欠点を有する。添加された塩基は、溶液中に追加の種類のイオンを導入し得る。例えば、水酸化ナトリウムを添加する場合、ナトリウムイオンは溶液中に残り、アンモニウム塩と混合された最終製品中に存在するだろう。また、沈殿物質は、ニューベリーアイトおよび他の化合物、例えば、ストルバイト間の混合物を含んでなる傾向にある。
【0143】
ストルバイト溶液を用いた実験では、室温および約1モル濃度の溶解ストルバイトの高濃度においてNaOHを用いてpHは約5まで増加した。得られた沈殿物質は、約0.86のP(PO)/Mgの原子比率を有したが、一方、N(NH)/Mgの原子比率は0.01以下であった。
【0144】
したがって,このタイプの実施形態は、アンモニアを含まない塩基としてハイドロマグネサイトの使用を含んでなる。これは、追加の種類のイオンを系に導入しないことを保証する。ハイドロマグネサイトの追加は、以下の反応に従うと考えられる:
10MgNHPO(aq)+15HSO(aq)+2Mg(CO(OH) → 10MgHPO・3HO(s)+8HCO(aq)+5(NHSO(aq)+10MgSO(aq)
【0145】
上記第二反応では、溶液から放出し得る気体の二酸化炭素も生成することができる。かかる気体の二酸化炭素の取扱いを、後で本書類中に記載する。
【0146】
マグネシウムは系に添加されるので、これは、リンがニューベリーアイトと共にマグネシウムの1/2と一緒に取り出されることを意味する。したがって、これは、マグネシウムが、ニューベリーアイトの取出し後でさえ溶液中になお存在するだろうことを意味する。これは、pHをさらに増加させるためにアンモニアを使用する後続の工程において付加的に処理することができる。リン酸イオンの非存在下、これは、以下に従って再度ハイドロマグネサイトの沈殿をもたらす:
8HCO(g)+5(NHSO(aq)+10MgSO(aq)+20NH(g)+4HO → 2Mg(CO(OH)(s)+15(NHSO(aq)
【0147】
次いで、沈殿されたハイドロマグネサイトを、アンモニアを含まない塩基の添加工程のために次のバッチにおいて再利用することができる。
【0148】
二酸化炭素ガスが反応器から放出されるようにする場合、添加されたアンモニアでガス洗浄することができ、沈殿ハイドロマグネサイトを生成するために炭酸アンモニウムのコンポスト化されたガス洗浄溶液をアンモニアの添加に並行して添加する。
【0149】
図14は、溶液からマグネシウムを除去する工程S30の実施形態の部分工程のフローダイヤグラムを示す。ここで、アンモニアを使用しないでpHが増加する工程S32Aによって、ここでMg化合物を沈殿させる工程S34を行う。沈殿Mg化合物を、工程S36において分離する。
【0150】
図15は、溶液からマグネシウムを除去する工程S30の1つの好ましい実施形態の部分工程のフローダイヤグラムを示す。ここで、アンモニアを使用しないでpHが増加する工程S32Aによって、ここでMg化合物を沈殿させる工程S34を行い、次に、ハイドロマグネサイトの添加によって行う。これは、工程S36において分離されるニューベリーアイトを沈殿させる。
【0151】
残りの溶液はマグネシウムをなお含有し、好ましくは、工程S30は工程S38も含み、アンモニアを添加し、これは、結果として、ハイドロマグネサイトが再度沈殿することになる。工程S39において、溶液からハイドロマグネサイトを取り出す。
【0152】
実施形態では、矢印S40により示されている後の溶液のpHを増加させるために、後続の工程S37において取り出されたハイドロマグネサイトを使用する。すなわち、アンモニアを含まない塩基を添加する後続の工程、すなわち、工程S32Aにおいて使用するために、取り出された沈殿ハイドロマグネサイトの少なくとも一部をS40において再循環する。
【0153】
図16は、マグネシウム除去部30の実施形態の概略図を示す。マグネシウム除去部30は、溶液へのアンモニアを含まない塩基のための入口35を備える。この塩基の添加は、マグネシウム化合物の沈殿を起こす。特定の実施形態では、入口35は、ハイドロマグネサイトの入口31Aのために提供される。マグネシウム化合物33を沈殿させ、フィルター42によって分離し、出口32を通して取り出す。
【0154】
1つの実施形態では、マグネシウム除去部30は、沈殿マグネシウム化合物32の分離後の溶液のための入口46およびアンモニア31のための入口48を備える混合体積44を更に備える。アンモニアおよび溶液の混合は、更にpHを増加させ、これにより、ハイドロマグネサイト31Aの沈殿を起こす。ハイドロマグネサイト取出し装置49、例えば、フィルターは、溶液から沈殿ハイドロマグネサイト31Aを取り出すために提供される。
【0155】
1つの実施形態では、マグネシウム除去部30は、ハイドロマグネサイト取出し装置49からアンモニアを含まない塩基の後続の添加において使用するためのアンモニアを含まない塩基のための入口35へ取り出された沈殿ハイドロマグネサイト31Aの少なくとも一部を再循環するように配置された再循環装置43を更に備える。
【0156】
別の実施形態では、溶液からのマグネシウムの取出しは、ストルバイトの添加により支援することができる。図17は、溶液からマグネシウムを除去する工程S30の1つの好ましい実施形態の部分工程のフローダイヤグラムを示す。ここで、アンモニアを使用しないでpHが増加する工程S32Aによって、ここでMg化合物を沈殿させる工程S34を行う。この実施形態では、このpH増加は、塩基であるストルバイトS37Aの添加に起因する。追加のアンモニウムイオンを添加するという事実にもかかわらず、このpH増加は、ニューベリーアイトを沈殿させる。ニューベリーアイト沈殿に好ましいpH増加による効果は、増加されたアンモニウム濃度の効果より強い。ニューベリーアイトを、工程S36において分離する。
【0157】
残りの溶液はなおマグネシウムを含有し、好ましくは、工程S30は、工程S38Aも含み、該工程では、追加の塩基、例えば、アンモニアを添加し、これは、結果として、残存リン酸およびマグネシウムイオンの少なくとも一部を取り出して、ストルバイトが再度沈殿する。工程S39Aにおいて、溶液からストルバイトを取り出す。
【0158】
実施形態では、矢印S40により示されている後の溶液のpHを増加させるために、後続の工程S37Aにおいて取り出されたストルバイトを使用する。すなわち、アンモニアを含まない塩基を添加する後続の工程、すなわち、工程S32Aにおいて使用するために、取り出されたストルバイトの少なくとも一部をS40において再循環する。
【0159】
試験では、3つの異なるストルバイトを調製した;水を用いたもの、0.35M(NHSO溶液を用いたものおよび2.75M(NHSO溶液を用いたもの。硫酸を添加して3~6の範囲内にpHを低減した。より高いpH範囲のマグネシウムイオンまたはリン酸イオンの濃度と比較して、溶液中のアンモニウム窒素濃度は高いことに気付くことができるだろう。より低いpH値になる場合、マグネシウムイオンまたはリン酸イオンの濃度も増加する。これは、ニューベリーアイトがより高いpHにおいて沈殿するが、より低いpHにおいて溶解すると解釈される。
【0160】
pH3の値から始まり、ストルバイトを、3つのサンプルスラリーに添加した。アンモニウム窒素の濃度は増加し、これは、より多いアンモニウムが添加されるので、明白であると考えてよい。しかしながら、同時に、マグネシウムイオンおよびリン酸イオン両方は、スラリーへのこれらのイオンの添加にもかかわらず、溶液中で減少した。約4.5のpHから約6のpHまで、この効果は増強した。これは、あたかも添加されたストルバイトが溶解し、代わりにニューベリーアイトとして再沈殿したかのように解釈される。この効果は、比較的高濃度の硫酸イオンにおいても存在することも分かった。
【0161】
したがって、マグネシウムイオンおよびリン酸イオンのほとんどを、かかる手順により取り出すことができる。しかしながら、マグネシウムイオンおよびリン酸イオンの最後の少量の残存物を、ストルバイトの沈殿が著しくなるpHの更なる増加により取り出してもよい。かかる段階では、アンモニアでさえ、pHを増加するために使用することができる。次いで、そのように生成されたストルバイトを、プロセスの早期工程においてpHを増加する添加として再利用することができる。
【0162】
溶液中に存在する硫酸イオンを用いて、すなわち、硫酸を用いた溶解と同様な状態で上記実験を行った。しかしながら、例えば、塩素イオン、硝酸イオンまたはリン酸イオンの比較的高濃度が生じる他の鉱酸を用いることによっても、同様な挙動を達成する。
【0163】
図18は、マグネシウム除去部30の実施形態の概略図を示す。マグネシウム除去部30は、溶液へのストルバイトのための入口35Aを備える。この塩基の添加は、マグネシウム化合物、通常ニューベリーアイトの沈殿を起こす。マグネシウム化合物33を沈殿させ、フィルター42によって分離し、出口32を通して取り出す。
【0164】
1つの実施形態では、マグネシウム除去部30は、沈殿マグネシウム化合物32の分離後の溶液のための入口46および塩基、例えば、アンモニア31のための入口48を備える混合体積44を更に備える。アンモニアおよび溶液の混合は、更にpHを増加させ、これにより、ストルバイト31Bの沈殿を起こす。ストルバイト取出し装置49A、例えば、フィルターは、溶液から沈殿ストルバイト31Bを取り出すために提供される。
【0165】
1つの実施形態では、マグネシウム除去部30は、ストルバイト取出し装置49Aから塩基の後続の添加において使用しようとするストルバイトのための入口35Aへ取り出された沈殿ストルバイト31Bの少なくとも一部を再循環するように配置された再循環装置43を更に備える。
【0166】
上記に更に述べられているように、特定の実施形態では、生成されたニューベリーアイトを、上記に更に述べられている原理に従って洗浄してよい。
【0167】
以前に言及したように、鉱酸のアンモニウム塩の溶液を、工程S50に記載されているように、固体最終産物に変換してよい。かかる結晶化を異なる方法で行うことができるが、最も単刀直入なアプローチは、溶媒、すなわち、水を蒸発させることである。図19では、ストルバイトの分解方法の一部の実施形態の工程を示す。ここで、鉱酸のアンモニウム塩を凝固する工程S50は、マグネシウムを除去する工程S30後に溶液を加熱する工程S52を含む。これにより、鉱酸のアンモニウム塩の固体生成物が、高温凝縮液と共に形成される。
【0168】
上記に更に記載されている実施形態の1つでは、溶液の温度を上昇させる。高温凝縮液は加熱工程S52において生成したので、この熱エネルギーをより先の工程のために利用することもできる。この目的を達成するために、特定の実施形態では、矢印S54により示されているように、溶液を加熱する工程S35は、マグネシウムを除去する工程S30後に溶液を加熱する前の工程S52により生成される高温凝縮液、および溶液間の熱交換を行う工程S37を含む。
【0169】
図20は、ストルバイトを分解するための装置の実施形態の部分;マグネシウム除去部30および末端凝固装置50を示す。末端凝固装置50は、鉱酸のアンモニウム塩を含んでなる溶液39を加熱するために配置された加熱装置54を備える。これにより、鉱酸のアンモニウム塩の固体生成物51が生成し、出口52を取ってアウトプットされる。この加熱の結果として、高温凝縮液55も、通常、水蒸気が生成する。したがって、末端凝固装置50は、高温凝縮液55のためのアウトプット53も備える。この実施形態は、マグネシウム除去部の全ての前に記載されている代替物を用いて機能する。
【0170】
更なる実施形態では、マグネシウム除去部30を、溶液およびアンモニアの混合物を加熱するための加熱装置33と共に配置する場合、更なる利点を得ることができる。かかる実施形態では、末端凝固装置50の高温凝縮液55のためのアウトプット53を、マグネシウム除去部30の溶液およびアンモニアの混合物を加熱するための加熱装置33と連結する。次いで、溶液およびアンモニアの混合物を加熱するための加熱装置33を、末端凝固装置50における溶液の前の加熱により生成された高温凝縮液55、ならびにマグネシウム除去部30の溶液およびアンモニアの混合物間の熱交換を行うために配置するのが好ましい。かかる方法では、末端凝固装置50において必要な熱エネルギーは、少なくとも一部、マグネシウム除去部30において再使用し、これにより、エネルギー効率を改善することができる。さらに、マグネシウム除去部30の溶液を、少なくとも50℃、好ましくは少なくとも80℃の温度まで加熱するので、鉱酸のアンモニウム塩を含んでなる溶液39は既に高温であり、凝固を完遂するために必要な更なる加熱は、冷たい溶液に対して操作するよりずっと小さい。
【0171】
本発明の主な利点は、前に記載されているように、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムおよびカリウムストルバイトなどのアンモニウムストルバイトを伴う全ての共沈殿不純物の取扱いを可能とすることである。
【0172】
大量の共沈殿リン酸カルシウムにより、1より大きいマグネシウムに対するリンの比率を有する溶解ストルバイト溶液を得ることができる。カルシウムおよびマグネシウムの取り出し後、過剰のリンは、リン酸アンモニウムの形態で肥料製品において最終的に存在する。リンは、肥料において所望の要素である。リンが最終産物において望ましくない場合、石灰を用いた沈殿、溶媒抽出、その他などの公知の方法により分離することができる。
【0173】
共沈殿カリウムストルバイトは、最終肥料製品においてカリウムイオンをもたらすだろう。カリウムは、肥料において所望の要素である。
【0174】
上記説明では、直接的および間接的の両方で、マグネシウム化合物を沈殿するために外部アンモニアを使用する。しかしながら、本アイデアによれば、使用されたアンモニアを、生成されたアンモニウム塩溶液それ自体の部分流から再循環することもできる。この実施形態では、いずれかの外部アンモニアをプロセスに添加する必要がない。
【0175】
第一代替法では、アンモニウム塩溶液の部分流を、双極性膜電気透析法により処理して、両方がプロセス内に再循環されるアンモニアおよび酸を回収する。この方法では、インプットする化学薬品の代わりに電気を使用する。
【0176】
別の代替法は、塩基を用いてアンモニウム塩溶液の部分流のpHを増加させ、プロセス内に再循環するための気体のアンモニアをストリップすることである。石灰、水酸化カリウム、その他などのいずれかの種類の塩基を、この目的のために使用することができる。塩基のカチオンを肥料製品に組み込むかまたは、例えば、沈殿によりアンモニウム塩溶液から取り出すことができる。
【0177】
石灰をアンモニアストリッピングとして使用する場合、硫酸またはリン酸源などの適切な反応物の添加後に硫酸カルシウムまたはリン酸カルシウムとして沈殿によりアンモニウム塩溶液から取り出すことができる。硫酸アンモニウム溶液への石灰の添加により、硫酸カルシウムを沈殿させるだろう。
【0178】
ストルバイト溶解のために硝酸を使用する場合、硝酸アンモニウムの部分流に石灰を添加してpHを増加させ、高温においてアンモニアストリッピングを可能とする。アンモニアストリッピング後、溶液は、所望の肥料である硝酸アンモニウムおよび硝酸カルシウムの混合物からなるだろう。より限定された硝酸アンモニウム肥料を製造するために、冷却によりこの溶液から硝酸カルシウムを沈殿することもできる。
【0179】
上記説明では、ストルバイトは、アンモニウムストルバイトであると記載した。これは、おそらく、本技術的発見の最も興味深い特徴であろう。しかしながら、背景技術において指摘したように、廃物中の他の物質も興味深いものであり得る。
【0180】
上記に提示したように、同様の試験を、カリウムストルバイトを用いても行った。0.33M KSO溶液を含むストルバイトのスラリーを、硫酸の添加により6~3のpHにした。溶液中のカリウムイオン濃度はpH6において既に高いが、一方、マグネシウムイオンおよびリン酸イオン濃度は低いpHにおいてしか増加しない。これは、高いpH端におけるニューベリーアイトの沈殿およびより低いpH値における完全溶解を示す。
【0181】
かかる溶液にカリウムストルバイトを添加する場合、カリウムイオン濃度は増加したが、マグネシウムイオンおよびリン酸イオン濃度は、少なくともpH4.5~pH6のPHの増加と共に低下した。これは、アンモニウムストルバイトに関して記載されているように同じ手順は、カリウムストルバイトに対しても実行可能であることを示す。
【0182】
上記実施形態は、本発明の少数の例証的実施例として理解されるべきである。本発明の範囲から逸脱することなく実施形態に対して様々な修正、組合せおよび変更を行ってよいことを、当業者は理解するだろう。特に、技術的に可能である場合、異なる実施形態における異なる部分溶液を、他の構成において組み合わせることができる。しかしながら、本発明の範囲は、添付のクレームにより定義される。
参考文献
【0183】
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