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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】昆虫ベースのバイオ廃棄物処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/02 20060101AFI20241120BHJP
【FI】
C02F11/02 ZAB
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021573731
(86)(22)【出願日】2020-06-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-24
(86)【国際出願番号】 IL2020050661
(87)【国際公開番号】W WO2020255121
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】267413
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(73)【特許権者】
【識別番号】521541930
【氏名又は名称】ワイビー インセクト ファーミング リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バー、ヤニフ
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/169398(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/053439(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2015/0296760(US,A1)
【文献】中国特許第103736709(CN,B)
【文献】特開2014-083025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00-11/20
C02F 3/28- 3/34
B09B 1/00- 5/00
B09C 1/00- 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に持続的な昆虫ベースのバイオ廃棄物処理機であって、
a)長手軸及び内部を有する管状のドラムと、
b)前記ドラムを前記軸の周りで回転駆動するための駆動装置と、
c)前記ドラムの内側表面に固定して接続されたシャフトレス・スクリュ・コンベヤと、
d)前記内側ドラム表面に接続され且つ前記ドラムにわたって長手方向にそれぞれが延在する、円周方向に離間された複数の片持ちブレードと、
e)バイオ廃棄物及び昆虫幼虫を含む集塊部分を前記ドラム内部内へ導入するための手段と、
を備え、前記スクリュ・コンベヤが、前記ドラム内部を導入された前記昆虫幼虫のための長手方向に離間された複数の飼育チャンバに細分、前記飼育チャンバのそれぞれが、前記スクリュ・コンベヤの長手方向に隣接する2つのフライトと、前記円周方向に離間された複数の片持ちブレードとによって画定され、前記飼育チャンバ内には、実質的に一様な発達的段階の昆虫幼虫が保留され、
前記集塊部分は、半固体であり、前記片持ちブレードによって保持されたときにそれ自体の重量を支持するのに十分な構造強度を有しており、2つの隣接する前記片持ちブレードの間に配置された前記集塊部分は、前記ドラムの回転によって上方に位置したときでも、前記片持ちブレードが下方から前記集塊部分に係合するので、落ちることがなく、
前記円周方向に離間された複数の片持ちブレードのうちの2つ以上が、前記バイオ廃棄物及び昆虫幼虫を含む集塊部分を前記ドラム内部内へ導入するための手段に対して遠位に前記集塊部分が運ばれている間、前記ドラム内部内での前記集塊部分の滞在期間にわたっていかなる場合でも前記集塊部分をしっかりと保持し且つ一様化するように構成され、
前記昆虫幼虫が、より遠位に配置された飼育チャンバ内で漸進的により発達する、バイオ廃棄物処理機。
【請求項2】
若い昆虫幼虫を含む集塊の新規供給が、遠位の飼育チャンバからの完全に発達した昆虫幼虫の排出と同時に近位の飼育チャンバ内に導入可能である、請求項1に記載のバイオ廃棄物処理機。
【請求項3】
前記片持ちブレードのそれぞれが、三角形断面を有して構成される、請求項1に記載のバイオ廃棄物処理機。
【請求項4】
前記片持ちブレードのそれぞれが、前記内側ドラム表面に接続される支持ビームと、前記支持ビームに接続される三角形先端とを備える、請求項3に記載のバイオ廃棄物処理機。
【請求項5】
前記片持ちブレードのそれぞれが、内部空洞を有して構成される、請求項1に記載のバイオ廃棄物処理機。
【請求項6】
前記片持ちブレードの前記内部空洞と前記ドラム内部が連通しており、前記ドラム内部内への空気の流れ込みを促進するために、前記片持ちブレードのそれぞれと流体連通している空気供給管をさらに備える、請求項に記載のバイオ廃棄物処理機。
【請求項7】
前記飼育チャンバのうちの1つに受け入れられた前記集塊部分に関連する重要なパラメータを監視するための、また、逸脱していることが分かった前記パラメータのうちの1つ又は複数の値を調整するための、制御システムをさらに備える、請求項1に記載のバイオ廃棄物処理機。
【請求項8】
前記制御システムが、前記ドラムの回転速度を1時間当たり2分の1回転以下であるように調節するために、前記駆動装置とデータ通信する制御装置を備える、請求項に記載のバイオ廃棄物処理機。
【請求項9】
前記ドラムの前記回転速度が、1日当たり1から10回転に及ぶように調節される、請求項に記載のバイオ廃棄物処理機。
【請求項10】
前記制御システムが、前記ドラム内部に対するガスの流入又は流出を生じさせるための流体交換ユニットをさらに備える、請求項に記載のバイオ廃棄物処理機。
【請求項11】
前記流体交換ユニットが、それぞれが前記内側ドラム表面の異なる領域の近位に動作可能に取り付けられる弁の2つのアレイと、前記弁のそれぞれと流体連通している空気管と、圧縮機とを備える、請求項10に記載のバイオ廃棄物処理機。
【請求項12】
前記弁のそれぞれが、一方弁である、請求項11に記載のバイオ廃棄物処理機。
【請求項13】
前記弁のそれぞれが、電気制御弁である、請求項11に記載のバイオ廃棄物処理機。
【請求項14】
前記制御装置が、現在の酸素レベルを補正するために、前記圧縮機を作動させ、且つ、酸素レベルが逸脱していることが分かった飼育チャンバの近位の前記弁のうちの1つを開かせるように動作可能である、請求項13に記載のバイオ廃棄物処理機。
【請求項15】
前記流体交換ユニットが、ファンを備え、前記制御装置が、前記ドラム内部内への対応する空気流入が前記1つ又は複数の弁を通じた余分なガスの排除を推進するように、前記ファン、及び前記弁のうちの1つ又は複数の動作を命令するように動作可能である、請求項13に記載のバイオ廃棄物処理機。
【請求項16】
前記制御装置が、自己学習型制御モジュールである、請求項に記載のバイオ廃棄物処理機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的処理機の分野に関する。より詳細には、本発明は、昆虫ベースのバイオ廃棄物処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以下「バイオ廃棄物」と呼ばれる、絶えず量を増している下水汚泥や食品廃棄物などの有機廃棄物の処分又は処理は、地方自治体、工業化市場、及び国家に立ちはだかる大きな課題である。
【0003】
昆虫幼虫は、1日に最大でその体重の2倍のバイオ廃棄物を摂取して昆虫タンパク質に変換させることができるので、近年バイオ廃棄物を処理するためのエフェクト手段の対象とされている。そして、昆虫のタンパク質及び脂質は、鶏や魚などの様々な動物に供給することが可能である。一部の昆虫幼虫は、その脂肪含有量に応じて比較的高いエネルギー値を有する。さらに、昆虫幼虫が生成し得る固体及び液体の廃棄物は、肥料として使用することができる。昆虫幼虫にバイオ廃棄物を供給することの別の大きな利益は、バイオ廃棄物に通常付随する、疾病を伝播するバクテリアを不活性化するその能力に関連する。
【0004】
昆虫幼虫を利用してバイオ廃棄物を大規模に処理するために、幾つかの試みがなされてきた。
【0005】
1つの方法では、昆虫幼虫は、平らなトレイ又は容器内へ導入される。昆虫幼虫は、空気の十分な供給を必要とするので、定期的に追加されるバイオ廃棄物の山の上部表面から10~30cmの距離に留まる傾向がある。平らなトレイ又は容器は30~40cmの最大高さを有して構成されて、不十分な運用表面利用につながるので、この方法は不完全である。また、昆虫幼虫は、空気供給にさらされない大量のバイオ廃棄物を忌避するため、バイオ廃棄物の嫌気性分解、悪臭の強い状況、及び望ましくない副産物が生じる。さらに、幼虫及び嫌気性分解によって生じる代謝熱により、平らなトレイ及び容器内の温度調節に関わる問題が存在する。内部温度が35℃よりも著しく高くなると、昆虫幼虫は這い出るか、死亡することすらあり、したがってバイオマス処理効率は大幅に不足する。
【0006】
別の方法では、昆虫幼虫及びバイオ廃棄物を含むドラムが回転されて、昆虫幼虫とバイオ廃棄物の混合及び曝気、並びに生じた熱の散逸を促進する。しかし、ドラムは過度に高速で回転され、例えば中国特許第102351394号は10分間当たり1回転の速度を開示しており、これは、昆虫幼虫の代謝活動を制限する。したがって、昆虫幼虫は、前蛹段階に発達するまでのその幼虫寿命(larval lifetime)に実質的に等しい長期間にわたってドラム内に保留されなければならない。全ての昆虫幼虫が、実質的に同じ年齢及びサイズのものであり、且つ、同時に排出されるので、ドラムは、若い幼虫の導入時期と発達した幼虫の排出時期との間のかなりの停滞期間により、実質的に持続的な処理機として機能することができず、したがって、昆虫タンパク質は、常に容易に入手できるわけではない。この従来技術の方法のさらなる欠点には、投入量当たりに処理されるバイオ廃棄物の量が限られること、及び、自動化の欠如が含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】中国特許第102351394号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、実質的に持続的な昆虫ベースのバイオ廃棄物処理装置を提供することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、バイオ廃棄物を処理する速度が比較的速い昆虫ベースのバイオ廃棄物処理装置を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、自動化された昆虫ベースのバイオ廃棄物処理装置を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的及び利点は、説明が進むにつれて明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
実質的に持続的な昆虫ベースのバイオ廃棄物処理機が、長手軸及び内部を有する管状のドラムと、前述のドラムを前述の軸の周りで回転駆動するための駆動装置と、前述のドラムの内側表面に固定して接続されたシャフトレス・スクリュ・コンベヤと、前述の内側ドラム表面に接続され且つ前述のドラムにわたって長手方向にそれぞれが延在する、円周方向に離間された複数の片持ちブレード(cantilevered blade)と、バイオ廃棄物及び昆虫幼虫を含む集塊部分を前述のドラム内部内へ導入するための手段と、を備え、前述のスクリュ・コンベヤは、導入された昆虫幼虫のための長手方向に離間された複数の飼育チャンバに細分され、前述の飼育チャンバのそれぞれは、前述のスクリュ・コンベヤの長手方向に隣接する2つのフライトと、前述の円周方向に離間された片持ちブレードとによって画定され、飼育チャンバ内には、実質的に一様な発達的段階の昆虫幼虫が保留され、前述の円周方向に離間された片持ちブレードのうちの2つ以上は、前述の集塊部分が遠位に運ばれている間、前述のドラム内部内での集塊部分の滞在期間にわたっていかなる場合でも前述の集塊部分をしっかりと保持し且つ一様化するように構成され、昆虫幼虫は、より遠位に配置された飼育チャンバ内で漸進的により発達する。
【0013】
若い昆虫幼虫を含む集塊の新規供給は、遠位の飼育チャンバからの完全に発達した昆虫幼虫の排出と同時に近位の飼育チャンバ内に導入可能であることが好ましい。
【0014】
1つの態様では、バイオ廃棄物処理機は、飼育チャンバのうちの1つに受け入れられた集塊部分に関連する重要なパラメータを監視するための、また、逸脱していることが分かったパラメータのうちの1つ又は複数の値を調整するための、制御システムをさらに備える。駆動装置とデータ通信している制御装置が、ドラムの回転速度を1時間当たり僅か2分の1回転であるように調節するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】バイオ廃棄物処理機の一実施例の斜視図である。
図2図1のバイオ廃棄物処理機の近位セクションの鉛直断面の斜視図である。
図3図1のバイオ廃棄物処理機の遠位セクションの鉛直断面の斜視図である。
図4】スクリュ・コンベヤを含まずに示されている、図1のバイオ廃棄物処理機の近位端部からの斜視図である。
図5】スクリュ・コンベヤを含んで示されている、図1のバイオ廃棄物処理機の近位端部からの斜視図である。
図6図1の処理機とともに使用されるスクリュ・コンベヤの斜視図である。
図7】シャフトレス・スクリュ・コンベヤと複数の片持ちブレード及び駆動ユニットとの間の接続を示す、図1のバイオ廃棄物処理機の中央セクションの鉛直断面の斜投影図である。
図8図1のバイオ廃棄物処理機とともに使用される制御システムの概略図である。
図9図1のバイオ廃棄物処理機とともに使用される流体交換ユニットの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実質的に持続的な昆虫ベースのバイオ廃棄物処理機が、長手方向に離間された複数の飼育チャンバに細分されるシャフトレス・スクリュ・コンベヤを有するドラムを含んで構成され、複数の飼育チャンバのそれぞれの中には、異なる発達的段階の昆虫幼虫、特に双翅目幼虫が保留され得る。未発達の幼虫とバイオマスの混合物(以下、「集塊」)が、第1の近位飼育チャンバと連通している入口ポートを介してドラム内に導入される。ドラム内部内での昆虫幼虫の滞在期間を最大限にする、スクリュ・コンベヤと共にドラムが低速回転している間、飼育チャンバのうちの1つに入れられた幼虫を含んだ集塊は、完全に発達した昆虫幼虫の収穫を可能にする出口ポートを介して集塊がドラムの遠位端部から排出されるまで、昆虫幼虫がバイオマスを消化することにより肉体的に発達しながら、ドラムに沿って運ばれる。
【0017】
バイオ廃棄物処理機は、昆虫幼虫の集約的な養殖を推進し、且つ、大規模施設におけるサブユニットとして、又は小規模運営のための単独ユニットとして構成され得る。バイオ廃棄物処理作業は、人間の介入を何も伴うことなしに昆虫大量養殖を完全に制御し且つ維持するために、自己学習モジュールによって監視され且つ制御され得る。
【0018】
図1は、全体的に番号10によって示されたバイオ廃棄物処理機の一実施例を示す。バイオ廃棄物処理機10は、管状のドラム5を備え、ドラム5の内側表面には、シャフトレス・スクリュ・コンベヤが固定して接続される。ドラム5は、任意のステンレス鋼合金と比較して重量が著しく軽減すること、並びに付随する製造費用及び運用費用の削減のために、ガラス繊維強化プラスチック(FRP:glass fiber-reinforced plastic)で作られ得るが、他の材料も同様に使用され得る。ドラム材料の外側層は、忌光性の昆虫幼虫のために、ドラム内部への光の透過を制限するか又は完全に阻止するように黒化されることが好ましい。ドラム5は、近位入口端部1、及び遠位出口端部4を有する。ドラム5は、10~60mに及ぶ長さを有することが好ましい。
【0019】
シャフトレス・スクリュ・コンベヤの使用は、従来のスクリュ・コンベヤの中心シャフトに付着する集塊の傾向を有利に回避し、また、より高い充填率及び低速度を推進する。さらに、シャフトレス・スクリュ・コンベヤは、回転シャフトに通常必要とされる軸受を必要とせず、したがって、集塊の直接導入、及び保全作業の減少を促進する。
【0020】
幼虫-バイオマス集塊は、スクリュ・コンベヤのシャフトのない中央領域と一致した入口ポート2を介して導入可能である。集塊は、基質とバイオ廃棄物と昆虫幼虫の混合物によって作製される。基質は一般に、切った枝及び草、木材廃棄物、並びに紙に由来するセルロース系の都市廃棄物などの、セルロース・ベースの廃棄物であり、これは、アンモニアなどの硝酸化合物のレベルを調節するために、また、バイオ廃棄物処理作業からの余分な流体を吸収するために使用される。バイオ廃棄物は、昆虫幼虫のための食料として使用される。
【0021】
基質及びバイオ廃棄物は、結果として生じる昆虫幼虫による効率的な消化に適した粒径及び質感を作り出すために、滅菌、破砕、及び保管を含み得る様々な前処理により、施設の入口において処置される。各前処理は、専用の装置を必要とし、且つ、粘性のあるパルプが得られるまで行われ、その後で、基質及びバイオ廃棄物は、独立した貯槽内へ受け入れられる。ドラム5へ導入されるのに先立ち、基質及びバイオ廃棄物は、対応するポンプ、例えば蠕動ポンプにより、対応する貯槽からローラ・コンベヤ・システム15上に支持された容器へ送達され、ローラ・コンベヤ・システム15は一般に、入口ポート2の近くへの容器の搬送を容易にするために、水平に配置される。次いで、基質及びバイオ廃棄物は、容器内で共に混ぜ合わせられる。
【0022】
例えば3~5日齢の若い昆虫幼虫は、1つの処理機の場合であれ複数の処理機の場合であれ、毎日の昆虫幼虫の持続的な供給を提供するために、ドラム5から離れて配置されたタンク内に昆虫幼虫を手作業で挿入することにより、酸素富化液体で希釈される。昆虫幼虫の具体的な濃度は、運転可能な処理機の数に依存する。一般的に言えば、昆虫幼虫の最小濃度は、バイオ廃棄物処理機10の費用効率の高い運転を確実にするために、1立方メートル当たりに幼虫4万匹から7万匹に及ぶ。ドラムへの送達に先立つタンク内への昆虫幼虫の挿入は、処理作業に関連する人力を伴う唯一の処置であり、この処置ですらドラムから離れて行われることが、理解されるであろう。
【0023】
酸素富化液体と昆虫幼虫の混合物は、幼虫送達機構、例えば空気圧式の機構により、ローラ・コンベヤ・システム15上に支持された容器に近接した領域へ送達され、次いで、入口ポート2に導入されるのに先立って容器内に配置された基質とバイオ廃棄物の混合物の上部表面上にスプリンクラーによって排出される。幼虫は、集塊を形成するために、混合物1cm当たりに幼虫おおよそ4匹の密度で基質-バイオ廃棄物混合物に加えられ得る。その後、形成された集塊は、蠕動ポンプにより、又は任意の他の適切な送達機構により、入口ポート2へ送達される。すると、昆虫幼虫は、バイオマスを消化して大きくなることができる。
【0024】
集塊内の基質の割合及びバイオ廃棄物の割合は、基質及びバイオ廃棄物の相対的な液体含有量に基づいて決定される。例えば、バイオ廃棄物が、75%の液体含有量を有する地方自治体の供給源に由来する汚泥である場合、基質の割合は、集塊の60~80%であるべきである。廃棄物の液体含有量が低い場合、例えば乾燥肥料である場合、基質は、集塊の30~40%を占めるべきである。
【0025】
ドラム5の外側表面6に固定された、長手方向に離間された複数のリング7が、横方向に離間されたローラ・ホイール9の対応する対により、下方から回転可能に支持される。歯付きリング(geared ring)11が、ドラム5の外側表面6の長手方向中心領域に固定され、且つ、図7に示されたモータ駆動装置29の歯車22によって回転可能に駆動され、モータ駆動装置29は、一般に1日当たり1~10回転に及ぶ、1時間当たり僅か2分の1回転の所定の低速度でドラム5を回転させるように構成されており、この速度は、処理機10によって収穫される昆虫幼虫の成長周期の持続期間に依存する。リング7及び11は一般に、ドラム5の管状の外側表面6に対して同心であるが、スクリュ・コンベヤの種々のフライトは、外側表面6に対して斜めに位置決めされる。
【0026】
図2に示されるように、各ローラ・ホイール9は、実質的に水平方向に配向され且つ長手方向に延在するピン12の周りでドラム5の回転に応答して回転することができ、ピン12は、例えば三角形の形状とされた、長手方向に離間された2つのフォーク14に固定される。各フォーク14の底側は、横方向に離間された複数の垂直棒足19により基礎表面Sから持ち上げられ得る水平支持板16に接続され得る。
【0027】
図1に戻り参照すると、矩形構成を取ると示されている空気供給管8が、集塊への確実な空気の流れ込みを保証するために、したがって集塊に由来する不要なガスの排出を生じさせるために、ドラム5の入口端部1と流体連通して位置決めされる。空気供給管8の一方の端部は、ローラ・コンベヤ・システム15の下側に固定された圧縮機に接続される。図3に示されるように、内部にドラム5の内部から不要なガスを追い出すためのファン36が収容される、遠位に狭窄するシュラウド17が、ドラム5の出口端部4に固定される。
【0028】
ドラム5及びシャフトレス・スクリュ・コンベヤ22の構造は、図2~7に示されている。
【0029】
円周方向に離間された複数の補強ビーム24、例えば12本のビームが、ドラム5の内側薄壁表面21に接続され、且つ、ドラムの長さにわたって入口端部1から出口端部4まで長手方向に延在する。各ビーム24は、ドラム5が回転するときに導入済みの集塊に対するしっかりとした保持を提供するために、その基部が内側表面21に接続されまたその片持ち三角ブレード34がドラム内部内に位置決めされるように、三角形の断面を有することができる。さらに、三角ブレード34は、特に回転変位後に集塊を飼育チャンバの中央領域へ導くように、また、隣接する飼育チャンバへの集塊の通過を防ぐように、適合される。
【0030】
すきの歯と同様に構成され得る三角ブレード34は、長手方向ビーム24の延長部であってよく、且つ、長手方向ビーム24に接続されてもよい。或いは、各三角ブレード34は、対応するビーム24と一体的に形成されてもよい。
【0031】
1つの実施例では、三角形断面を有する各補強ビーム24は、中空の内部空洞37を有し、この内部空洞37は、三角形断面の少なくとも一部分を占め、且つ、ビームの全長にわたって延在し得る。内部空洞37の存在は、空気供給管8を介した集塊への空気の流れ込み及び余分な流体の排水を促進するという点で、有利である。また、各ビーム24の重量は、結果的に削減され、その重量は、ガラス繊維で作られた場合にはさらになお削減され、そのため、ビーム24は、容易に取り扱われ得る。したがって、ビームは、おおよそ40cmの長さを有するビーム・セクションが、ドラム5の長さに従って隣のセクションに連結されるか又は隣のセクションから分離され、且つ、ドラム内側表面21に接続され得るという意味で、モジュール式とされ得る。さらに、重量の減少したビーム24は、回転するドラム24の抵抗を減少させ、したがってエネルギー節約を実現する。
【0032】
ガラス繊維で作られ得るシャフトレス・スクリュ・コンベヤ22は、例えば4.5度の進み角及び2~5度のねじれ角を有する連続的ならせん輪郭を有して構成される。シャフトレス・スクリュ・コンベヤ22の各フライト28の径方向外方縁部31は、ドラム5の内側表面21に接続される。各補強ビーム24の片持ち三角ブレード34の存在に適応するために、各フライト28の径方向外方縁部31は、三角形の切欠き33を有して構成され、この切欠き33により、フライトは片持ち三角ブレードに接続される。横材26が、隣り合うフライト28の間で長手方向に延在して、隣り合うフライト28の構造強度を高めることができる。スクリュ・コンベヤ22は、その長手軸の周りでのドラムと共に回転を促進するためにドラム5の内側表面21に接続されるので、その径方向内側縁部27は、上記で説明された利点を提供するために、シャフトに接続される必要がなく、したがって邪魔するものがない。
【0033】
本発明の重要な側面は、各飼育チャンバ内に配置された全ての昆虫幼虫が、隣接する飼育チャンバ内に配置された昆虫幼虫の発達段階とは異なる実質的に一様な発達的段階によって特徴付けられることを確実にする、処理機の能力である。昆虫幼虫は、より遠位に配置された飼育チャンバ内で漸進的により発達するので、処理機は、完全に発達した昆虫幼虫の排出と同時の集塊の新規供給の導入が可能である限り、タンパク質のための昆虫幼虫を有利に持続的に収穫し得る。
【0034】
所与の飼育チャンバ内の実質的に一様に発達した昆虫幼虫の提供は、円周方向に離間された片持ち三角ブレード34によって可能とされる。
【0035】
スクリュ・コンベヤ22の長手方向に離間された2つの隣接するフライト28は、昆虫幼虫のための飼育チャンバRの長手方向長さを、それらの間に画定する。スクリュ・コンベヤ22のフライト28は、実質的に相互に平行であり、ドラムの長手軸に対して実質的に垂直に配向されており、且つ、ドラム5の内部断面を実質的に占有するので、また、各フライト28の径方向外方縁部31は、ドラム内側表面21に固定されるので、昆虫幼虫の移動性は、1つの飼育チャンバから別の飼育チャンバへの昆虫幼虫の通過を防止するために、著しく制限される。
【0036】
飼育チャンバRの有効体積は、飼育チャンバR内に導入されている集塊の一部分をしっかりと保持し且つ集塊の一部分にある程度貫通する三角ブレード34によって画定される。半固体の集塊は、ブレードによって保持されたときにそれ自体の重量を支持するのに十分な構造強度を有するので、2つの隣接するブレード34の間に配置された集塊部分は、他の集塊のまとまりから分離してドラム5の内側表面まで落ちることがない。飼育チャンバRの典型的な有効体積は、長さ25mのドラム及び1.25mのスクリュ径の場合、6~7mである。
【0037】
導入された集塊部分をしっかりと保持することにより、円周方向に離間されたブレード34は、集塊部分が例えば12~20日間に及ぶドラム5内でのその滞在期間にわたって実質的に一体化されたままになることを確実にする。ドラム5の回転中、ブレード34のセットによって保持された同じ集塊部分は、ドラム内部内で遠位に進むように、下向き回転運動が続く上向き回転運動によって特徴付けられる特定のらせん経路に沿って付勢される。重力の影響下で下向き回転運動に従っても、ブレード34は下方から集塊部分に係合して、集塊部分の大部分、例えば75~80%がドラム内部にわたって崩壊すること及び隣接する飼育チャンバに放出されることを防ぐ。
【0038】
集塊部分は、特定のらせん経路に沿って移動されている間に混合作用を受ける。混合作用は、複数のブレード34によって保持されている間の集塊部分の上向き及び下向きの回転運動と、基質内で活発に穿孔することを特徴とする幼虫の活動性との組合せからもたらされる。これら2つの要因はどちらも、バイオ廃棄物処理作業をより効率的にする形で、養分、基質、及び昆虫幼虫の実質的に一様且つ均質な分布を作り出すのに役立つ。
【0039】
このプロセスは、ドラムの長さにわたる集塊部分の長手方向搬送を促進するために、スクリュ・コンベヤの各回転中に繰り返される。より遠位に配置された飼育チャンバへ集塊部分が搬送されるにつれて、昆虫幼虫は、さらなるバイオマスを消化して、バイオマス量を減少させるが、昆虫幼虫のサイズは増大する。昆虫幼虫は、最遠位の飼育チャンバと比較して最近位の飼育チャンバにおいて、50~70%に及ぶバイオ廃棄物減少能力を示す。昆虫幼虫の代謝活動及び消化活動、並びにバイオ廃棄物処理作業中に生じる熱による蒸発の結果として、集塊部分の液体含有量は、正常な活動を保証するために昆虫幼虫に必要とされる値である最近位の飼育チャンバにおける50~70%から、最遠位の飼育チャンバにおける20~40%まで減少される。複数のブレード34は、集塊部分の体積の減少、集塊部分の水分含有量の減少、及び集塊部分の下向き回転運動にもかかわらず、集塊部分を保持及び把持し続けることができる。したがって、所与の飼育チャンバ内に見られる昆虫幼虫は、同じ発達的段階のものであり、且つ、実質的に一様な速度で重量が増加する。
【0040】
図8は、飼育チャンバ内に受け入れられた所与の集塊部分Cに関連する重要な生物学的パラメータ及び物理学的パラメータを監視するための制御システム50を概略的に示す。
【0041】
制御システム50は、ドラム5の外側に配置された制御装置52と、集塊Cを近位の飼育チャンバへ送達するための送達機構54とを備え、送達機構54の動作は、制御装置52によって制御される。
【0042】
送達機構54は、処理されるバイオ廃棄物に基づいて重量対体積比を画定しそれにより近位の飼育チャンバ内へ導入されるべき集塊の体積を決定する、重量制御送達機構(weight controlled delivery mechanism)であり得る。例えば、25%固体下水汚泥の比重は、10%固体とは異なり、農業廃棄物の比重は、パン製造所廃棄物とは異なる、などである。処理されるバイオ廃棄物の重量対体積比に基づいて、各集塊部分は、調整された重量対体積比が割り当てられるであろう。
【0043】
制御装置52はまた、所定の低速度でドラム5を駆動するようにモータ駆動装置29が命令されるように、モータ駆動装置29と電気通信している。制御装置52は、処理に関連するセンサから受信したデータに応じて処理作業の経過中に必要であればドラム5の速度を調整するように構成された、コンピュータ化された制御機及び制御モジュールであり得るが、ドラム速度は、1時間当たり2分の1回転の速度を超えることはない。酸素センサ61、重量センサ63、及び液体センサ66を含む、複数のセンサは、所与の飼育チャンバR内に設けられ、且つ、制御装置52と電気通信し、好ましくは制御装置52と無線通信する。センサは、ドラム内側表面に、例えばガラス繊維要素の下に埋め込まれ得る。
【0044】
制御装置52は、酸素センサ61によって検出された酸素レベルが所定のレベルから逸脱している場合に、例えば換気ユニットである流体交換ユニット57の動作を命令する。換気ユニットは、従来の集塊の曝気と、ドラム5の回転に起因する、発生したプロセス由来の熱の散逸とに加えて、ドラム内部を換気するように構成される。
【0045】
流体交換ユニット57は、例えば不要なガスの高い値又は低い酸素レベルが検出された後で、ドラム内部に対するガスの流入又は流出を生じさせる。
【0046】
1つの実施例では、図9に概略的に示されるように、流体交換ユニット57は、弁の2つのアレイ72及び73を備え、アレイ72及び73のそれぞれは、スクリュ・コンベヤ22の異なる領域の近位に動作可能に接続されている。弁の2つのアレイ72及び73は、第1のアレイ72の即座に下方に位置決めされる弁が余分な液体を排水することを可能にする一方で、第2のアレイ73の即座に上方に位置決めされる弁がガス移送動作を行うことができるように、互いに直径方向に向かい合わせにされ得る。弁のそれぞれは、一方弁又は電気制御弁であってよい。
【0047】
スクリュ・コンベヤ22は、設置費用及び製造費用をより安くするために、また、効率的且つ容易なメンテナンスを促進するために、三角ブレード34に加えて中空構造とされ得る。したがって、各弁は、ドラム内部13、空洞37、及び空気供給管8(図2)と流体連通するように、スクリュ・コンベヤ22のフライト内で内側ドラム表面21の近くに取り付けられ得る。
【0048】
第1のアレイ72は、1つ又は複数の弁74と、交換される液体がそれに沿って流れることができる導管76とを備える。弁74が一方弁である場合、幾つかは、ドラム内部13内への液体の流入のみを可能にするように適合され、また、幾つかは、ドラム内部13からの液体の流出のみを可能にするように適合される。弁74が制御弁である場合、それらは、検知された状態に応答して制御可能に開閉可能であるように適合される。別の制御弁78が、多通路流れ接合部81から弁74まで延在する導管77に動作可能に接続され得る。流れ接合部81は、同時に起こる液体の流入及び流出を促進するか、或いは、いかなるときでも液体流入のみ又は液体流出のみを促進し得る。ドラム内部13からの液体流出は、排水管などの収集要素79へ排出され得る。
【0049】
第2のアレイ73は、1つ又は複数の弁84と、各弁84及びドラム内部13と流体連通している空気管86とを備える。弁84が一方弁である場合、幾つかは、ドラム内部13内への空気の流入のみを可能にするように適合され、また、幾つかは、ドラム内部13からの空気の流出のみを可能にするように適合される。弁84が制御弁である場合、それらは、検知された状態に応答して制御可能に開閉可能であるように適合される。
【0050】
制御弁93及び圧縮機94が動作可能に接続される共通の流入ライン91と、制御弁97及び真空ポンプ98又はドラム内部13からのガスの排除を生じさせるための他の手段が動作可能に接続される共通の流出ライン96とが、各弁84と流体連通している。制御装置52(図8)は、現在の酸素レベルを補正するために、1つ又は複数の制御信号を生じさせる。例えば、制御装置52は、現在の酸素レベルを補正するために、圧縮機94を作動させ、且つ、酸素レベルが逸脱していることが分かった飼育チャンバの近位に配置された制御弁84を開かせる。
【0051】
制御装置52は、ドラム内部内への対応する空気流入が余分なガスの排除を推進し且つ生じさせるように、ファン36及び1つ又は複数の弁の動作を命令することができる。ファンを通じて引き込まれる空気は、悪臭のあるガスの流入を防ぐために、また、不要なガスを除去するために、外部のフィルタを通って流れることができる。
【0052】
ドラム内部13に対するガス交換の量及び割合は、バイオ廃棄物処理作業を最適化するために、センサ信号に応答して制御装置52によって制御される。自己学習型のコンピュータ化されたモジュールに供給される様々なパラメータは、ガス交換の量及び割合並びにドラム速度を調整するために、低酸素レベル、高二酸化炭素レベル、アンモニア・レベル、及び低温を含む。
【0053】
本発明の幾つかの実施例が例示として説明されてきたが、本発明は、当業者の範囲内で、特許請求の範囲から逸脱することなしに、多くの修正、変形、及び翻案とともに、また、多数の均等物又は代替的な解決手段とともに実施され得ることが、明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9