IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 能美防災株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-消火設備の放水方法、消火設備 図1
  • 特許-消火設備の放水方法、消火設備 図2
  • 特許-消火設備の放水方法、消火設備 図3
  • 特許-消火設備の放水方法、消火設備 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】消火設備の放水方法、消火設備
(51)【国際特許分類】
   A62C 37/36 20060101AFI20241120BHJP
   A62C 3/00 20060101ALI20241120BHJP
   A62C 31/24 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
A62C37/36
A62C3/00 H
A62C31/24
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022051286
(22)【出願日】2022-03-28
(65)【公開番号】P2023144358
(43)【公開日】2023-10-11
【審査請求日】2024-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】岡澤 政志
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-92972(JP,A)
【文献】特開2016-59426(JP,A)
【文献】特開平8-266657(JP,A)
【文献】特開2005-224524(JP,A)
【文献】特開平10-258136(JP,A)
【文献】特開平11-206906(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0163827(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104751593(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 37/00
A62C 3/00
A62C 31/00
A62C 35/00
A62C 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
競技や演技等を行うフィールド部と、該フィールド部の競技や演技等を観るための客席部とに区分された施設に設置され、前記フィールド部を防護範囲として該防護範囲に生じた火災に対して放水する旋回ノズルを備えた消火設備の放水方法であって、
火災が発生して放水を開始する際には、火災発生場所とは関係なく、前記フィールド部であって前記客席部から離れた位置に、位置をずらして放水するずらし放水工程と、
該ずらし放水工程の後、放水を継続した状態で火源に向かって旋回して火源に対して放水する本放水工程と、を備えたことを特徴とする消火設備の放水方法。
【請求項2】
吹き抜け部を有し、該吹き抜け部の周囲に階層構造部が設けられた施設に設置され、前記吹き抜け部の床部を防護範囲として該防護範囲に生じた火災に対して放水する旋回ノズルを備えた消火設備の放水方法であって、
火災が発生して放水を開始する際には、火災発生場所とは関係なく、前記床部であって前記階層構造部から離れた位置に、位置をずらして放水するずらし放水工程と、
該ずらし放水工程の後、放水を継続した状態で火源にむかって旋回して火源に対して放水する本放水工程と、を備えたことを特徴とする消火設備の放水方法。
【請求項3】
火災を探査する火災探査装置と、防護範囲を旋回して消火水を放水する旋回ノズルと、前記火災探査装置の情報に基づいて前記旋回ノズルの旋回と放水を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、火災探査装置からの火災探査情報を入力した際に、火災発生場所とは関係ない予め設定された位置に向けて前記ノズルを旋回し、当該位置において放水するずらし放水を行い、所定時間の経過後に放水を継続した状態で前記火災発生場所に向かって前記ノズルを旋回させて、前記火災発生場所に対して放水する本放水を行うように制御することを特徴とする消火設備。
【請求項4】
火災を探査する火災探査装置と、防護範囲を旋回して消火水を放水する旋回ノズルと、火災が発生した場所を指定する火災場所指定情報に基づいて前記旋回ノズルの旋回を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記火災場所指定情報を入力した際に、火災発生場所とは関係ない予め設定された位置に向けて前記ノズルを旋回し、当該位置において放水するずらし放水を行い、所定時間の経過後に放水を継続した状態で前記火災発生場所に向かって前記ノズルを旋回させて、前記火災発生場所に対して放水する本放水を行うように制御することを特徴とする消火設備。
【請求項5】
競技や演技等を行うフィールド部と、該フィールド部の競技や演技等を観るための客席部とに区分された施設に設置され、
前記旋回ノズルが前記フィールド部を防護範囲とし、
前記制御部は、前記フィールド部であって前記客席部から離れた予め設定された位置に向けて前記ノズルを旋回し、当該位置において放水するずらし放水を行うように前記旋回ノズルを制御することを特徴とする請求項3又は4に記載の消火設備。
【請求項6】
前記ずらし放水は、火災発生場所に放水すると前記客席部に放水の一部がかかる場合に行い、火災発生場所に放水しても前記客席部に放水がかからない場合にはずらし放水を行うことなく本放水を行うように前記制御部が前記旋回ノズルを制御することを特徴とする請求項5に記載の消火設備。
【請求項7】
吹き抜け部を有し、該吹き抜け部の周囲に階層構造部が設けられた施設に設置され、
前記旋回ノズルが前記吹き抜け部の床部を防護範囲とし、
前記制御部は、前記床部であって前記階層構造部から離れた予め設定された位置に向けて前記ノズルを旋回し、当該位置において放水するずらし放水を行うように前記旋回ノズルを制御することを特徴とする請求項3又は4に記載の消火設備。
【請求項8】
前記ずらし放水は、火災発生場所に放水すると前記階層構造部に放水の一部がかかる場合に行い、火災発生場所に放水しても前記階層構造部に放水がかからない場合にはずらし放水を行うことなく本放水を行うように前記制御部が前記旋回ノズルを制御することを特徴とする請求項7に記載の消火設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災に対して放水する旋回ノズルを備えた消火設備の放水方法、消火設備に関する。
【背景技術】
【0002】
火源の方向に旋回し、火源に向かって放水する旋回ノズルを備えた消火設備は種々の施設に設置され、その防護範囲が予め決められている。
例えば、野球場、競技場、アリーナ等の、競技や演技等を行うフィールド部と、該フィールド部の競技や演技等を観るための客席部とに区分された施設においては、フィールド部を防護範囲として設定されるのが一般的である。
また、ショッピングモールのように吹き抜け部を有し、該吹き抜け部の周囲に階層構造部が設けられた施設においては、前記吹き抜け部の床部を防護範囲として設定されるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-258136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような施設、例えば野球場のフィールド部内の端の方で火災が発生した際に、旋回ノズルを火災発生場所の火災に向けて放水すると、放水の一部がスタンド(客席部)にもかかってしまう場合がある。
一方、スタンドにいる人からするとフィールド部とはフェンス等によってエリアが分けられていたり、階層が違っていたりするため、発生している火災に対して危機感が少なく、野次馬となって、スタンドから火災を見るためスタンドにおけるフィールド部側に集まることが考えられる。
この状況で放水を開始すると、スタンドにいる人に放水した水の一部がかかってしまい、放水による被害が発生する可能性があるという課題があった。
【0005】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、フィールド部と客席部とに区分された施設や吹き抜け部の周囲に階層構造部が設けられた施設において、防護範囲であるフィールド部や吹き抜け部に放水した際に、客席部や階層構造部にいる人に放水した水がかからないように避難を促すことができる消火設備の放水方法、消火設備を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る消火設備の放水方法は、競技や演技等を行うフィールド部と、該フィールド部の競技や演技等を観るための客席部とに区分された施設に設置され、前記フィールド部を防護範囲として該防護範囲に生じた火災に対して放水する旋回ノズルを備えた消火設備の放水方法であって、
火災が発生して放水を開始する際には、火災発生場所とは関係なく、前記フィールド部であって前記客席部から離れた位置に、位置をずらして放水するずらし放水工程と、
該ずらし放水工程の後、放水を継続した状態で火源に向かって旋回して火源に対して放水する本放水工程と、を備えたことを特徴とするものである。
【0007】
(2)また、吹き抜け部を有し、該吹き抜け部の周囲に階層構造部が設けられた施設に設置され、前記吹き抜け部の床部を防護範囲として該防護範囲に生じた火災に対して放水する旋回ノズルを備えた消火設備の放水方法であって、
火災が発生して放水を開始する際には、火災発生場所とは関係なく、前記床部であって前記階層構造部から離れた位置に、位置をずらして放水するずらし放水工程と、
該ずらし放水工程の後、放水を継続した状態で火源にむかって旋回して火源に対して放水する本放水工程と、を備えたことを特徴とするものである。
【0008】
(3)本発明に係る消火設備は、火災を探査する火災探査装置と、防護範囲を旋回して消火水を放水する旋回ノズルと、前記火災探査装置の情報に基づいて前記旋回ノズルの旋回と放水を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、火災探査装置からの火災探査情報を入力した際に、火災発生場所とは関係ない予め設定された位置に向けて前記ノズルを旋回し、当該位置において放水するずらし放水を行い、所定時間の経過後に放水を継続した状態で前記火災発生場所に向かって前記ノズルを旋回させて、前記火災発生場所に対して放水する本放水を行うように制御することを特徴とするものである。
【0009】
(4)また、本発明に係る消火設備は、火災を探査する火災探査装置と、防護範囲を旋回して消火水を放水する旋回ノズルと、火災が発生した場所を指定する火災場所指定情報に基づいて前記旋回ノズルの旋回を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記火災場所指定情報を入力した際に、火災発生場所とは関係ない予め設定された位置に向けて前記ノズルを旋回し、当該位置において放水するずらし放水を行い、所定時間の経過後に放水を継続した状態で前記火災発生場所に向かって前記ノズルを旋回させて、前記火災発生場所に対して放水する本放水を行うように制御することを特徴とするものである。
【0010】
(5)また、上記(3)又は(4)に記載のものにおいて、競技や演技等を行うフィールド部と、該フィールド部の競技や演技等を観るための客席部とに区分された施設に設置され、
前記旋回ノズルが前記フィールド部を防護範囲とし、
前記制御部は、前記フィールド部であって前記客席部から離れた予め設定された位置に向けて前記ノズルを旋回し、当該位置において放水するずらし放水を行うように前記旋回ノズルを制御することを特徴とするものである。
【0011】
(6)また、上記(5)に記載のものにおいて、前記ずらし放水は、火災発生場所に放水すると前記客席部に放水の一部がかかる場合に行い、火災発生場所に放水しても前記客席部に放水がかからない場合にはずらし放水を行うことなく本放水を行うように前記制御部が前記旋回ノズルを制御することを特徴とするものである。
【0012】
(7)また、上記(3)又は(4)に記載のものにおいて、吹き抜け部を有し、該吹き抜け部の周囲に階層構造部が設けられた施設に設置され、
前記旋回ノズルが前記吹き抜け部の床部を防護範囲とし、
前記制御部は、前記床部であって前記階層構造部から離れた予め設定された位置に向けて前記ノズルを旋回し、当該位置において放水するずらし放水を行うように前記旋回ノズルを制御することを特徴とするものである。
【0013】
(8)また、上記(7)に記載のものにおいて、前記ずらし放水は、火災発生場所に放水すると前記階層構造部に放水の一部がかかる場合に行い、火災発生場所に放水しても前記階層構造部に放水がかからない場合にはずらし放水を行うことなく本放水を行うように前記制御部が前記旋回ノズルを制御することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、火災が発生して放水を開始する際には、火災発生場所とは関係なく、前記フィールド部であって前記客席部から離れた位置に、位置をずらして放水するずらし放水工程と、該ずらし放水工程の後、放水を継続した状態で火源に向かって旋回して火源に対して放水する本放水工程と、を備えたことにより、ずらし放水をすることで客席部にいる人に対して放水が始まったことを認知させ、さらに放水を継続したまま火源に向かって旋回するので、フィールド寄りの客席部にいる人に対して放水が近づくことを認識させ、放水によって濡れたり怪我をしたりしないように避難を促すことができる。
また、本発明においては、火災が発生して放水を開始する際には、火災発生場所とは関係なく、前記吹き抜け部の床部であって前記階層構造部から離れた位置に、位置をずらして放水するずらし放水工程と、該ずらし放水工程の後、放水を継続した状態で火源にむかって旋回して火源に対して放水する本放水工程と、を備えたことにより、ずらし放水をすることで階層構造部にいる人に対して放水が始まったことを認知させ、さらに放水を継続したまま火源に向かって旋回するので、吹き抜け寄りの階層構造部にいる人に対して放水が近づくことを認識させ、放水によって濡れたり怪我をしたりしないように避難を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態1に係る消火設備の放水方法を説明するための図であって、競技場のフィールド部を防護範囲とした場合の放水範囲を示す図である。
図2】実施の形態1における旋回ノズルのずらし放水位置と本放水位置の一例を示す図である。
図3】実施の形態2に係る消火設備の要部構成のブロック図である。
図4】実施の形態2に係る消火設備の本放水における放水方法の一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施の形態1]
図1は、フィールド部1と客席部3を有する競技場5の一部を平面視した図であり、競技場5に設置された消火設備における一つの旋回ノズル7の防護範囲に相当する部分を示している。
旋回ノズル7は消火水を放水するものであり、図1に示す扇形の範囲が防護範囲である。
また、最も遠方に放水する遠方放水、中間距離に放水する中間放水、近距離に放水する近傍放水というように放水距離を使い分けることができる。
【0017】
旋回ノズル7の防護範囲は、フィールド部1を扇形のようにカバーする範囲であるが、図1に示すように、フィールド部1の端の方では放水範囲が客席にかかる部分も存在する。
そのため、図1に示すように、図中右側の客席に近いフィールド部1で火災が発生した場合、火災発生場所と客席とはフェンス等による仕切りや、高低差がある場合、危険を感じない観客の一部が野次馬となって火災を見るために火災発生場所寄りの客席部3に集まることが考えられる。
【0018】
この状態で、旋回ノズル7を火災発生場所に向けて、放水を開始すると、火災発生場所寄りの客席部3に集まった人に消火水の一部がかかる場合があり、濡れたり怪我をしたりすることも想定される。
そこで、本実施の形態の消火設備の放水方法は、火災が発生して放水を開始する際には、火災発生場所とは関係なく、フィールド部1であって客席部3から離れた位置に、位置をずらして放水するずらし放水工程と、ずらし放水工程の後、放水を継続した状態で火源に向かって旋回して火源に対して放水する本放水工程と、を備えたものである。
以下、各工程を詳細に説明する。
【0019】
<ずらし放水工程>
ずらし放水工程は、上述したように、火災が発生して放水を開始する際に、火災発生場所とは関係なく、フィールド部1であって客席部3から離れた位置に、位置をずらして放水する工程である。
ずらし放水を行う位置は、特に限定されるものではなく、客席部3から離れており、仮に客席に人がいても消火水がかからない位置であればよい。
図1に示す例では、旋回ノズル7の旋回角度が108°の場合を例示しており、この場合、ずらし放水の位置は、例えば防護範囲の真ん中、すなわち両端から54°の位置とすればよい。
【0020】
ずらし放水の位置を防護範囲の真ん中とすれば、図1の白抜き矢印に示すように、火災発生場所がずらし放水の位置を挟んでいずれの側であっても、本放水のために火源位置まで旋回する時間が極端に長くなることがない。
なお、図2には、火源の方向がずらし放水の位置から図中右側に32°の場合を示しており、この場合、本放水工程においては、図2に示すように、ずらし放水を行った位置から旋回ノズル7を図中右側に32°旋回すればよい。
【0021】
ずらし放水工程は、細分化すると、旋回ノズル7を待機位置からずらし放水を行う位置まで旋回するノズル旋回工程と、ずらし放水位置において放水を行う放水工程との2つの工程で構成されるが、放水工程の時間は、例えば5秒~30秒程度とすればよい。
【0022】
なお、ずらし放水工程における放水位置や放水時間は、人が操作する場合には操作する人が適宜決めればよく、また後述のように装置による操作の場合には装置の設置場所に応じて予め装置に設定しておくようにすればよい。
【0023】
<本放水工程>
本放水工程は、ずらし放水工程の後、放水を継続した状態で火源に向かって旋回ノズル7を旋回して火源に対して放水する工程である。
本放水工程は、細分化するとずらし放水工程の後、放水を継続した状態で火源に向かって旋回ノズル7を旋回する放水旋回工程と、火源に向かって放水する火源放水工程に分けることができる。
【0024】
放水旋回工程では、放水を継続しているので、客席部3で火災を見ていた人がずらし放水が始まったことで放水開始を認識し、その後、放水が近づいてくることを認識する。これによって、その場にとどまっていると、放水がかかることを認識し、その場を離れようという意識を起こさせることができる。
【0025】
ずらし放水工程のあと本放水工程へ移行することで、客席部3にいた人は放水が自身に近づいてくることを認識させることができ、この時点で客席部3にいた人に避難の必要性を認識させることができる。
すなわち、発生している火災だけであれば、火災発生場所と客席部3が離れているので危険を感じなくても、放水という勢いのある水による被害発生の危険を察知させることができる。
【0026】
そして、火源放水工程が開始されるときには、放水がかかる客席部3には人がいなくなり、客席部3に放水の一部がかかる場合でも、人には被害が及ばないようにできる。
このように、本実施の形態の消火設備の放水方法によれば、防護範囲であるフィールド部1と客席部3のように防護範囲と客席部3にフェンス等による仕切りがあったり、階層により、防護範囲が客席部3の下階にあったりして、客席部3にいる人が防護範囲で発生した火災に対して避難意識が低くなるような場合において、客席部3の人に対して避難動作を誘起させることができ、放水がかかることによる被害を防止することができる。
【0027】
なお、本放水工程における火源位置を特定して火源位置に対して放水ノズルを旋回させる動作は、ずらし放水工程と同様に、人が操作するようにしてもよいし、後述するように装置が自動的に行うようにしてもよい。
【0028】
<他の態様>
上記の説明は、競技や演技等を行うフィールド部1と、フィールド部1の競技や演技等を観るための客席部3とに区分された施設に設置され、フィールド部1を防護範囲として防護範囲に生じた火災に対して放水する場合であった。
しかし、本実施の形態は上記の場合に限定されるものではなく、例えばショッピングモールのように、吹き抜け部を有し、該吹き抜け部の周囲に階層構造部が設けられた施設に設置され、前記吹き抜け部の床部を防護範囲として該防護範囲に生じた火災に対して放水する消火設備にも適用できる。
【0029】
このような消火設備における放水方法は、火災が発生して放水を開始する際には、火災発生場所とは関係なく、前記床部であって前記階層構造部から離れた位置に、位置をずらして放水するずらし放水工程と、該ずらし放水工程の後、放水を継続した状態で火源にむかって旋回して火源に対して放水する本放水工程と、を備えるようにすればよい。
ずらし放水工程及び本放水工程の具体的な内容は上述したフィールド部1と客席部3を有する設備に設置された消火設備の場合と同様である。
【0030】
なお、ずらし放水工程は、火災発生場所に放水すると客席部3に放水の一部がかかる場合に行い、火災発生場所に放水しても前記客席部3に放水の一部がかからない場合にはずらし放水を行うことなく本放水工程を行うようにしてもよい。
【0031】
[実施の形態2]
実施の形態1は消火設備の放水方法に関するものであり、人が操作する場合と機械によって自動的に行われる場合を含むものであったが、本実施の形態はそのうち機械によって行われる場合において、かかる放水方法を実現できる消火設備に関するものである。
例えば、競技や演技等を行うフィールド部1と、フィールド部1の競技や演技等を観るための客席部3とに区分された施設に設置され、フィールド部1を防護範囲として該防護範囲に生じた火災に対して放水する旋回ノズル7を備えた消火設備に関するものである。
【0032】
そして、本実施の形態にかかる消火設備9は、図3に示すように、例えば3台の旋回ノズル7と、火災を探査する火災探査装置11と、火災探査装置11の情報に基づいて旋回ノズル7の旋回と放水を制御する制御部13とを備えている。
以下、各構成について詳細に説明する。
なお、消火設備9には、消火水を貯留する消火水槽、消火水を揚水する消火ポンプ、消火ポンプの起動制御盤、旋回ノズル7の自動と手動を切り替えるための装置等、種々の装置が備わっているが、このような一般的なものについては図示と説明を省略する。
【0033】
<火災探査装置>
火災探査装置11は、防護範囲を探査して火災を検知するものであり、例えば赤外線カメラ、赤外線カメラ制御部、赤外線カメラを旋回させる旋回装置を備えている。
火災探査装置11は、赤外線カメラを防護範囲に対して旋回させて、その画像データに基づいて赤外線カメラ制御部が火災の有無を検知する。
火災探査装置11によって火災の発生とその位置が検知されると、その情報が制御部13に入力される。
【0034】
<制御部>
制御部13は、火災探査装置11からの火災探査情報を入力した際に、旋回ノズル7の旋回と放水の制御を行う。具体的には、旋回ノズル7を以下のように制御する。
火災探査情報が入力されると、火災発生場所とは関係なくフィールド部1であって客席部3から離れた予め設定された位置に向けてノズルを旋回させ、当該位置において放水するずらし放水を行う。そして、所定時間の経過後に放水を継続した状態で火災発生場所に向かってノズルを旋回させて、火災発生場所に対して放水する本放水を行うように旋回ノズル7を制御する。
【0035】
予め設定された位置においてずらし放水を行う時間は、制御部13において予め設定された時間とすればよく、例えば5秒~30秒程度とすればよい。
また、火源に対して本放水を行う場合には、図4に示すように、旋回ノズル7を左右に微小旋回させる揺動放水を行うようにしてもよい。揺動しない場合の放水幅が2mの場合、揺動させたときの放水幅は例えば約6mとなる。
揺動放水は、火災の成長が早い場合に有効である。
【0036】
本実施の形態の消火設備9によれば、実施の形態1で説明した消火方法を実現でき、防護範囲であるフィールド部1と客席部3のように防護範囲と客席部3にフェンス等による仕切りがあったり、階層により、防護範囲が客席部3の下階にあったりして、客席部3にいる人が防護範囲で発生した火災に対して避難意識が低くなるような場合において、客席部3の人に対して避難動作を誘起させることができ、放水がかかることによる被害を防止することができる。
【0037】
なお、上記の説明においては、制御部13は火災探査装置11による火災探査情報に基づいて旋回ノズル7を制御するものであったが、本発明の制御部13はこれに限られず、火災探査情報に代えて、火災場所指定情報を入力し、旋回ノズル7の旋回と放水を制御するようにしてもよい。
具体的には、制御部13は、火災場所指定情報を入力した際に、火災場所指定情報による指定場所とは関係なくフィールド部1であって客席部3から離れた予め設定された位置に向けて旋回ノズル7を旋回し、当該位置において放水するずらし放水を行い、所定時間の経過後に放水を継続した状態で前記指定場所に向かって旋回ノズル7を旋回させて、前記火災発生場所に対して放水する本放水を行うように旋回ノズル7を制御する。
【0038】
なお、火災場所指定情報とは、例えば操作者が防護範囲を映すスクリーン等の画面情報に基づいて火災発生場所を特定した場合において、特定された場所の位置情報のことである。
【0039】
<他の態様>
上記の説明は、競技や演技等を行うフィールド部1と、フィールド部1の競技や演技等を観るための客席部3とに区分された施設に設置され、フィールド部1を防護範囲として該防護範囲に生じた火災に対して放水する場合であった。
しかし、本実施の形態は上記の場合に限定されるものではなく、例えばショッピングモールのように、吹き抜け部を有し、該吹き抜け部の周囲に階層構造部が設けられた施設に設置され、前記吹き抜け部の床部を防護範囲として該防護範囲に生じた火災に対して放水する消火設備9にも適用できる。
【0040】
このような消火設備9の構成は、吹き抜け部を有し、該吹き抜け部の周囲に階層構造部が設けられた施設に設置され、前記吹き抜け部の床部を防護範囲として該防護範囲に生じた火災に対して放水する旋回ノズル7を備えた消火設備9であって、旋回ノズル7の旋回と放水を制御する制御部13が、火災探査装置11からの火災探査情報又は火災場所指定情報を入力された際に、火災発生場所とは関係なく前記吹き抜け部の床部であって前記階層構造部から離れた予め設定された位置に向けて旋回ノズル7を旋回し、当該位置において放水するずらし放水を行い、所定時間の経過後に放水を継続した状態で前記火災発生場所に向かって旋回ノズル7を旋回させて、前記火災発生場所に対して放水する本放水を行うように旋回ノズル7を制御するようにすればよい。
【0041】
なお、上記の説明において、制御部13は火災探査情報又は火災場所指定情報を入力された場合には、必ずずらし放水を行うようにしたものであった。
しかし、制御部13は、火災発生場所に放水すると客席部3や階層構造部に放水の一部がかかる場合に行い、火災発生場所に放水しても客席部3や階層構造部に放水がかからない場合にはずらし放水を行うことなく本放水を行うように旋回ノズル7を制御するようにしてもよい。
【0042】
この場合、制御部13は火災探査情報又は火災場所指定情報を入力された場合、その位置が客席部3や階層構造部との位置関係で放水がかかるかどうかを判断することになる。そのため、制御部13は、防護範囲内で放水を行った場合に放水客席部3や階層構造部に放水がかかる領域とかからない領域を予め設定しておくようにすればよい。
【0043】
また、ずらし放水は遠方放水や中間放水の場合のみ行う態様としてもよい。近傍放水の場合、人に放水がかかっても濡れる被害はあるものの、水勢は弱いため怪我の恐れは低く、より早期に火源へ放水することを優先してもよい。
【0044】
さらに、本実施の形態において消火設備9を設置する場所として、競技や演技等を行うフィールド部1とフィールド部1の競技や演技等を観るための客席部3とに区分された施設、及び、吹き抜け部を有し、該吹き抜け部の周囲に階層構造部が設けられた施設を例示したが、本発明に係る消火設備9が設置される施設はこれらに限られるものではなく、火源に向けていきなり本放水することで、人に放水による被害が及ぶ可能性があると考えられるような施設であれが広く適用できる。
【符号の説明】
【0045】
1 フィールド部
3 客席部
5 競技場
7 旋回ノズル
9 消火設備
11 火災探査装置
13 制御部
図1
図2
図3
図4