(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】印画物及び印画物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B41M 5/385 20060101AFI20241120BHJP
B41M 5/382 20060101ALI20241120BHJP
B41M 5/52 20060101ALI20241120BHJP
B41M 5/388 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
B41M5/385 400
B41M5/382 420
B41M5/52 400
B41M5/388
(21)【出願番号】P 2022148151
(22)【出願日】2022-09-16
【審査請求日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2021185268
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】城田 衣
(72)【発明者】
【氏名】八島 正孝
(72)【発明者】
【氏名】新藤 太一
(72)【発明者】
【氏名】三東 剛
(72)【発明者】
【氏名】野田 智之
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-037767(JP,A)
【文献】特開2021-006403(JP,A)
【文献】特開2004-300224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/00-5/52
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イエロー画像を形成するためのイエロー色材層及び表面保護層を形成するための表面保護層形成層を面順次に有する感熱転写記録用シートを用いて、該イエロー色材層及び該表面保護層形成層に対して順次熱を印加し、色材受容層を有する受像シート上にイエロー画像を形成し、その上に表面保護層を形成する、昇華型感熱転写記録方式による印画物の製造方法であって、
該製造方法は、以下の(i)および(ii)のいずれかの工程を有しており、
(i)該イエロー画像を形成後、且つ該表面保護層を形成する前に、該イエロー画像が形成された受像シートを70℃以上で1分間以上加熱する工程、
(ii)イエロー色材層に熱を加えて最大濃度のイエロー画像を得るために必要な熱量の60%~80%の熱量を用いて、該表面保護層の形成を行う工程、
該イエロー画像には、イエロー色材として、下記一般式(1)で表される化合物が含有されており、
該印画物において、該一般式(1)で表される化合物が、該色材受容層の表面から深さが2μm以上浸透している、ことを特徴とする印画物の製造方法。
【化2】
[ 一般式(1)中、
R
1及びR
2は、
少なくとも一方は、2-エチルヘキシル基であって、もう一方は、水素原子または2-エチルヘキシル基を表し、
R
3は、炭素数1~
2の直鎖
状のアルキル
基を表す。
R
4は
、シアノ
基を表す。
R
5は、炭素数1~
4の直鎖
状のアルキル
基を表し
、
Xは
、カルボニル基またはスルホニル基を表し、
nは
1を表す。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印画物及び印画物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、4K、8Kなどの高精細・高画質な携帯式カラーディスプレイデバイスの普及に伴い、デバイスで撮影、または、作成した写真や書類を手軽にカラープリントする需要が高まっている。これらに対応するカラープリント方式としては、電子写真方式、インクジェット方式、感熱転写記録方式などが挙げられる。その中でも感熱転写記録方式は、ドライプロセスでプリントできること、小型でプリンタの携帯性に優れることから、周囲の環境によらず、手軽にプリントできる方法として優れている。
【0003】
また、感熱転写記録方式の中でも昇華型感熱転写記録方式は、ドット単位で染料の移行を制御できるため、階調性画像の形成に優れている。そのため、風景や人物のプリントに多く用いられている。この方式に用いられる色材には、彩度が高いこと、熱により移行することが求められる。また、感熱転写記録用シートの製造プロセスを踏まえると、トルエンなどの溶剤に溶けることも求められる。そのような色材として、例えば、ピリドンアゾ染料を用いることが検討されている(特許文献1~2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平07-257053号公報
【文献】特開2012-76322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した文献に記載されたピリドンアゾ染料は、昇華型熱転写方式において、色材層から熱によって受像シートの受容層に染料を移行させる際に、受容層の中にわずかしか染み込まず表面付近に留まる性質があった。そのため、光に暴露されると、直接色材に作用するため色材の分解が進んでしまうという課題があった。そこで、ピリドンアゾ染料の分解を抑制することができる印画物の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
イエロー画像を形成するためのイエロー色材層及び表面保護層を形成するための表面保護層形成領域を面順次に有する感熱転写記録用シートを用いて、該イエロー色材層及び該表面保護層形成領域に対して順次熱を印加し、色材受容層を有する受像シート上にイエロー画像を形成し、その上に表面保護層を形成した印画物であって、
該イエロー色材層には、イエロー色材として、下記一般式(1)で表される化合物が含有されており、
該イエロー画像及び該表面保護層が形成された印画物において、該色材受容層に、該一般式(1)で表される化合物が、深さが2μm以上浸透している印画物。
【0007】
【0008】
[一般式(1)中、
R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基を表し、
R3は、炭素数1~4の直鎖状、分岐状のアルキル基、フェニル基、無置換のアミノ基を表す。
R4は、水素原子、シアノ基、無置換のカルバモイル基(-C(=O)NH2)、カルボン酸エステル基、または、カルボン酸アミド基を表す。
R5は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~20の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基、または-N(-R6)R7を表し、
R6及びR7は、炭素数1~8の直鎖状、分岐状のアルキル基、無置換のアリール基、置換基を有するアリール基、無置換のアシル基、または置換基を有するアシル基、-N(-R6)R7を表し、R6及びR7は、以下の(i)又は(ii)の規定を満たす。
(i)各々独立して、水素原子、炭素数1~8の直鎖状、分岐状のアルキル基、アリール基又はアシル基を表す。
(ii)R6とR7とが互いに結合して環を形成しており、R6とR7は、環を形成するために必要な原子団を表し、
Xはカルボニル基またはスルホニル基を表し、nは1~3の整数を表す。]
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、表面保護層の転写後の受像シート中の色材受容層に、一般式(1)で表される化合物が、深さが2μm以上浸透しており、高濃度であり、耐光性に優れた印画物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、以下の感熱転写記録用シート及び印画プロセスにより、高濃度、かつ、高耐光な印画物が得られることを見出した。
本発明の高濃度、かつ、高耐光な印画物は、少なくとも
感熱転写記録用シートを用いて、該イエロー色材層及び該表面保護層形成領域に対して順次熱を印加し、色材受容層を有する受像シート上にイエロー画像を形成し、その上に表面保護層を形成した印画物であって、
該イエロー色材層には、イエロー色材として、一般式(1)で表される化合物が含有されており、
該イエロー画像及び該表面保護層が形成された印画物において、該色材受容層に、該一般式(1)で表される化合物が、深さが2μm以上浸透していることを特徴とする。
前記感熱転写記録用シートは、イエロー画像を形成するためのイエロー色材層及び表面保護層を形成するための表面保護層形成領域を面順次に有する。
【0011】
以下に、本発明の高濃度、かつ、高耐光な印画物の画像形成方法について、より詳細に説明する。
一般的に、感熱転写記録用シートは、被転写体、例えば色材受容層を表面に有する受像シートと重ね合わせて使用する。感熱転写記録用シートは、イエロー画像を形成するためのイエロー色材層、シアン画像を形成するためのシアン色材層層、マゼンタ画像を形成するためのマゼンタ色材層、表面保護層を形成するための表面保護層形成層を面順次に有する。そして、この感熱転写記録用シートの各色材層をサーマルヘッドなどの加熱方法を用いて加熱することにより、感熱転写記録用シート中の色材を受像シートに転写させて、画像形成を行う。さらに、この受像シートに形成された画像上に感熱転写記録用シートの表面保護層形成層を重ね合わせ、サーマルヘッドなどの加熱方法を用いて加熱することにより、画像上に表面保護層を転写(形成)する。
【0012】
一般式(1)の化合物を色材受容層の深さが2μm以上浸透させる方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、表面保護層を形成する前に印画物を加熱する、表面保護層の印画熱量の調整する方法等が挙げられる。
表面保護層を形成する前に印画物を加熱する方法においては、特に限定されるものではないが、色材受容層を構成する樹脂の組成により前後する。例えば、70℃以上、1分間以上加熱した後に、表面保護層を転写した場合、色材受容層内に本発明に係る一般式(1)の化合物が2μm以上浸透した印画物を得ることができる。
加熱温度の上限は、受像シートの構成により適宜選択される。例えば、シール紙のような背面に接着層を有するシートでは、120℃以上の高温にすると、接着層がはがれにくくなる不具合が生じるため、120℃より低温で行うことが選択される。
【0013】
一方、表面保護層の印画熱量の調整することでも色材受容層内に本発明の一般式(1)の化合物が2μm以上浸透した印画物を得ることができる。例えば、表面保護層の転写熱量を、イエロー色材層の最大濃度を得る熱量の60%~90%の範囲に調整することで、色材受容層内に本発明の一般式(1)の化合物を2μm以上浸透させることができる。この場合、表面保護層の転写熱量を90%より強くすると、表面保護層が基材から剥離しないなどの不具合が生じる場合がある。
また、印画物の加熱と、表面保護増の印画熱量の調整を組み合わせても良い。
【0014】
(I)感熱転写記録用シート
本発明に係る感熱転写記録用シートは、基材、並びに基材上に、少なくともイエロー色材層及び表面保護層形成層を面順次に有する。
イエロー色材層は、受像シート上にイエロー画像を形成するための層である。イエロー色材層には、一般式(1)で表される化合物が少なくとも1種以上含有されている。
表面保護層形成層は、受像シート上に形成された画像面を保護するための表面保護層を形成するための層である。
【0015】
以下に、感熱転写記録用シートの構成について詳細に説明する。
(I-1)基材
本発明に係る感熱転写記録用シートが有する基材は、少なくとも上記の色材層を支持するものである。基材としては特に限定されず、感熱転写記録用シートの分野で従来公知の、適度な耐熱性と強度とを有する基材を用いることができる。
基材としては、例えば、以下のものが挙げられる。ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、アラミドフィルム、ポリスチレンフィルム、1,4-ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートフィルム、ポリサルホンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリフェニレンサルフィドフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、セロハンフィルム、セルロース誘導体フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ナイロンフィルム、コンデンサー紙、パラフィン紙。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレートフィルムが、優れた機械的強度、耐溶剤性、及び経済性を有するという観点から、基材として好ましい。
【0016】
基材の厚さは、0.5μm以上50μm以下の範囲で用いることが好ましい。優れた転写性を得ることができるという観点から、3μm以上10μm以下の範囲で用いることがより好ましい。
基材上に、各色材層を形成するために染料を含む組成物(インキ)を塗布する場合、塗工液(染料組成物)の濡れ性及び接着性等が不足する場合がある。そのため基材は、必要に応じてその塗工面に接着処理を行うことが好ましい。
接着処理としては特に限定されないが、感熱転写記録用シートの分野で公知の方法を用いることができる。接着処理としては、例えば、オゾン処理、コロナ放電処理、紫外線処理、プラズマ処理、低温プラズマ処理、プライマー処理、化学薬品処理等を挙げることができる。また、これらの処理を2つ以上組み合わせて行っても良い。
【0017】
また、基材の接着処理には、基材上に接着層を塗工する方法を用いても良い。この接着層としては特に限定されず、感熱転写記録用シートの分野で公知の接着層を用いることができる。接着層に用いる材料としては、例えば、以下のものが挙げられる。ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等の有機材料、シリカ、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン等の無機微粒子。
【0018】
耐熱性やサーマルヘッドの走行性を向上させる目的で、基材の色材層がある面と反対側の面に耐熱滑性層を設けることが好ましい。
耐熱滑性層は、耐熱樹脂を含む層からなる。耐熱樹脂としては特に限定されないが、例えば、以下のものが挙げられる。ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリブタジエン樹脂、塩化ビニル―酢酸ビニル共重合体樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体樹脂、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂等。
【0019】
また、耐熱滑性層は、架橋剤、離型剤、潤滑剤及び滑り性付与剤等の添加剤を含んでいても良い。
潤滑剤としては、例えば、アミノ変性シリコーン化合物、カルボキシ変性シリコーン化合物が挙げられる。
滑り性付与剤としては、例えば、耐熱性微粒子であるシリカ等の微粒子が挙げられる。
耐熱滑性層は、上述の耐熱樹脂及び添加剤等を溶剤に加え、溶解または分散させて調製した耐熱滑性層塗布液を、基材に塗布及び乾燥することで形成することができる。耐熱滑性層塗布液を塗布する方法としては特に限定されず、例えば、バーコーター、グラビアコーター、リバースロールコーター、ロッドコーター、エアドクタコーターを用いた方法を用いることができる。この中でも、膜厚の調整が容易なグラビアコーターを用いた塗布方法が好ましい。
耐熱滑性層塗布液の基材に対する塗布量は、乾燥後の耐熱滑性層の厚さが、0.1μm以上5μm以下の範囲となるように塗布することが、優れた転写性を得ることができるという観点から好ましい。
【0020】
(I-2-1)色材層
感熱転写記録用シートは、少なくとも、イエロー色材層を有する。そして、イエロー色材層には、一般式(1)で表される化合物が少なくとも1種以上含有されている。一般式(1)の化合物は、1種を単独で用いてもよく、また、用途に応じて、色調等を調整するために、2種以上を併用してもよい。さらに、熱転写用として公知の染料と組み合わせて用いることもできる。
また、イエロー色材層に隣接し、マゼンタ色材層及びシアン色材層を設けることもできる。マゼンタ及びシアンの色材層には、熱転写用として従来公知の染料を使用できる。
【0021】
(I-2-2)色材層に含まれる成分
以下に、色材層に含まれる各成分について説明する。
(i)一般式(1)で表される化合物
まず、一般式(1)で表される化合物について説明する。
【0022】
【0023】
[一般式(1)中、
R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~20の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基を表し、
R3は、炭素数1~4の直鎖状、分岐状のアルキル基、フェニル基、無置換のアミノ基を表す。
R4は、水素原子、シアノ基(-C≡N)、無置換のカルバモイル基(-C(=O)NH2)、カルボン酸エステル基、または、カルボン酸アミド基を表す。
R5は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~20の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基、-N(-R6)R7を表し、
R6及びR7は、炭素数1~8の直鎖状、分岐状のアルキル基、無置換のアリール基、置換基を有するアリール基、無置換のアシル基、または置換基を有するアシル基、-N(-R6)R7を表し、
R6及びR7は、以下の(i)又は(ii)の規定を満たす。
(i)各々独立して、水素原子、炭素数1~8の直鎖状、分岐状のアルキル基、アリール基又はアシル基を表す。
(ii)R6とR7とが互いに結合して環を形成しており、R6とR7は、環を形成するために必要な原子団を表し、
Xはカルボニル基またはスルホニル基を表し、nは1~3の整数を表す。]
【0024】
<R1及びR2>
R1及びR2が表すアルキル基としては、例えば、炭素数1~20の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基が挙げられる。
より具体的には、以下のものが挙げられる。メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、オクチル基、ドデシル基、ノナデシル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、2-エチルプロピル基、2-エチルヘキシル基等。
これらのアルキル基の中では、高濃度、かつ、高耐光な印画物が得られやすいことから、各々独立して、
エチル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ドデシル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、2-エチルプロピル基又は2-エチルヘキシル基であることが好ましく、n-ブチル基又は2-エチルヘキシル基であることがより好ましい。
また、Xはカルボニル基、かつ、R1及びR2が同一のアルキル基である場合、高濃度、かつ、高耐光な印画物を得ることができるため好ましい。
【0025】
<R3>
R3が表すアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1~4のアルキル基が挙げられる。
【0026】
R3は、アルキル基だけではなくフェニル基、無置換のアミノ基も表すが、これらの中でも、高濃度、かつ、高耐光な印画物が得られやすいことから、R3はアルキル基であることが好ましい。さらに同様の観点から、R3はメチル基であることがより好ましい。
【0027】
<R4>
R4が表すカルボン酸エステル基としては、例えば、カルボン酸メチルエステル基、カルボン酸エチルエステル基、カルボン酸フェニルエステル基等が挙げられる。
【0028】
R4が表すカルボン酸アミド基としては、例えば、カルボン酸メチルアミド基、カルボン酸ブチルアミド、カルボン酸フェニルアミド、カルボン酸エチルアミド基、カルボン酸ジメチルアミド、カルボン酸ジエチルアミド等が挙げられる。
【0029】
<R5>
R5が表すアルキル基としては、例えば、炭素数1~20の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基が挙げられる。
より具体的には、以下のものが挙げられる。メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、オクチル基、ドデシル基、ノナデシル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、2-エチルプロピル基、2-エチルヘキシル基。
【0030】
これらのアルキル基の中では、高濃度、かつ、高耐光な印画物が得られやすいことから、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基及び2-エチルヘキシル基が好ましい。さらに同様の観点から、特にエチル基、及びn-プロピル基がより好ましい。
R5が表すアリール基としては、具体的に以下のものが挙げられる。例えば、フェニル基、4-メチルフェニル基、4-メトキシフェニル基等。
【0031】
<R6及びR7>
R6及びR7が表す炭素数1~8の直鎖状、分岐状のアルキル基としては、具体的に以下のものが挙げられる。例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、2-エチルプロピル基、2-エチルヘキシル基等。これらのアルキル基の中では、高濃度、かつ、高耐光な印画物が得られやすいことから、メチル基、エチル基、ブチル基、2-エチルヘキシル基がより
好ましい。
【0032】
R6及びR7が表すアシル基としては、例えば、以下のものが挙げられる。アセチル基(-C(=O)CH3)、エチルヘキサノイル基(-C(=O)C(-C2H5)-(CH2)3CH3)等のアルキルカルボニル基、ベンゾイル基(-C(=O)-C6H5)等のアリールカルボニル基。
【0033】
R6及びR7が互いに結合して形成する環としては、高濃度、かつ、高耐光な印画物を得ることができる観点から、例えば、ピロリジン環、ピペリジン環、アゼパン環、及びアゾカン環が挙げられる。
なお、これらの中でも、R6及びR7のうちの少なくとも一方がアルキル基である場合、高濃度、かつ、高耐光な印画物を得ることができるため好ましい。さらに同様の観点から、R6及びR7のうちの少なくとも一方がメチル基の場合が、より好ましい。
【0034】
一般式(1)中、Xは、カルボニル基またはスルホニル基であるが、カルボニル基を示す場合、高濃度、かつ、高耐光な印画物を得ることができるため好ましい。
一般式(1)中、nは1~3の整数であるが、nが1である場合、高濃度、かつ、高耐光な印画物が得られやすいため好ましい。
なお、一般式(1)ではアゾ体が記載されているが、ヒドラゾ体である互変異性体も本発明の範疇である。
一般式(1)で表される化合物の具体例として、以下に化合物(1-1)~(1-15)を示すが、下記の化合物に限定されるものではない。
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
表1に、化合物(1-1)~(1-15)のX、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7を示す。
【0039】
【0040】
一般式(1)の化合物としては、上記化合物(1-3)~(1-5)、(1-10)のうちの少なくとも1種を用いることが、高濃度、かつ、高耐光な印画物を得ることができるため、好ましい。
一般式(1)で表される化合物は、1種を単独で用いてもよく、また、用途に応じて、色調等を調整するために、2種以上を併用してもよい。さらに、公知の顔料や染料と組み合わせて用いることもできる。組み合わせる公知の顔料や染料は、2種以上であってもよい。
【0041】
(iii)結着樹脂
感熱転写記録用シートの各色材層に用いることができる結着樹脂としては、特に限定されず、様々な樹脂を用いることができる。その中でも、以下の水溶性樹脂及び有機溶剤可溶性の樹脂を用いることが好ましい。
水溶性樹脂:セルロース樹脂、ポリアクリル酸樹脂、澱粉樹脂、及びエポキシ樹脂等。
有機溶剤可溶性の樹脂:ポリアクリレート樹脂、ポリメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エチルセルロース樹脂、アセチルセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、AS樹脂、及びフェノキシ樹脂等。
なお、これらの結着樹脂は、単独で用いても良いし、必要に応じて2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0042】
(iv)界面活性剤
感熱転写記録用シートの各色材層に、サーマルヘッド加熱時(印画時)に十分な滑性を持たせるために、界面活性剤を添加してもよい。各色材層中に添加することができる界面活性剤としては、例えば、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、及びノニオン界面活性剤が挙げられる。
上記カチオン界面活性剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイドが挙げられる。
上記アニオン界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム等の脂肪酸石鹸、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。
上記ノニオン界面活性剤としては、例えば、ドデシルポリオキシエチレンエーテル、ヘキサデシルポリオキシエチレンエーテル、ノニルフェニルポリオキシエチレンエーテル、ラウリルポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンモノオレアートポリオキシエチレンエーテル、モノデカノイルショ糖が挙げられる。
【0043】
(v)ワックス
感熱転写記録用シートの各色材層に、サーマルヘッド非加熱時に十分な滑性を持たせるために、ワックスを添加してもよい。各色材層中に添加することができるワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、脂肪酸エステルワックスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
(vi)その他の添加剤
感熱転写記録用シートの各色材層には、上記した添加物以外にも必要に応じて、紫外線吸収剤、防腐剤、酸化防止剤、帯電防止剤、及び粘度調整剤等を添加しても良い。
【0045】
(vii)媒体
感熱転写記録用シートの各染料組成物の調製に用いることができる媒体は、特に限定されるものではないが、例えば水及び有機溶剤が挙げられる。有機溶剤としては、例えば以下のものを好ましく用いることができる。メタノール、エタノール、イソプロパノール及びイソブタノール等のアルコール類;メチルセロソルブ及びエチルセロソルブ等のセロソルブ類;トルエン、キシレン及びクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類;塩化メチレン、クロロホルム及びトリクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素類;テトラヒドロフラン及びジオキサン等のエーテル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等。これらの有機溶剤は、単独で用いてもよいし、必要に応じて2種類以上組み合わせて用いてもよい。また、水と有機溶剤を併用することもできる。
【0046】
(I-2-3)色材層形成用の染料組成物の組成
・染料の含有量(使用量)
各染料組成物中の各色材の使用量は、シートの保存性の観点から、結着樹脂100質量部に対して、合計で1~200質量部であることが好ましい。色材の分散の観点からは、結着樹脂100質量部に対して、50~180質量部であることがより好ましい。なお、上記色材の使用量は、2種以上混合して用いる場合は、各色材の質量部の合計量を意味する。例えばイエロー染料として、上記一般式(1)の化合物と、既存の染料とを併用した場合も、上記染料の使用量とは、これらの染料の合計の質量部数を意味する。
・その他の成分の含有量(使用量)
その他の成分(添加剤)の使用量は、適宜設定することができ、特に限定されない。
【0047】
(I-2-4)表面保護層形成層
感熱転写記録用シートは、基材上に、画像形成後に画像面を保護するための表面保護層形成層と、上述の色材層とを面順次に有する。
表面保護層形成層で使用される結着樹脂としては、特に限定されるものではないが、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のアクリル系樹脂、ポリα-メチルスチレン等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等のビニル系樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、石油樹脂、アイオノマー、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体等の合成樹脂等が好適である。
表面保護層形成層の厚みは0.1μm~5μm程度が好ましい。
また、前記化合物を含む層の下に、シートからの剥離を容易にするため、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のアクリル系樹脂等を含み、厚み0.1μm~1.5μm程度の剥離層を有することがより好ましい。
転写性表面保護層は、剥離層を有することから少ない熱量の印加で転写することが可能で、その熱量は色材層を転写する最大熱量の20%程度である。
【0048】
(II)感熱転写受像シート(受像シート)
受像シートに関して詳細に説明する。受像シートは、基材上に少なくとも1層の色材受容層を有する。
基材と色材受容層との間には少なくとも1層の中間層(例えば、断熱層(多孔質層))を有することが好ましい。また、断熱層以外の中間層として、例えば、光沢制御層、白地調整層、隠蔽性能向上層、耐溶剤性向上層、帯電調節層、接着層、プライマー層などが含まれていてもよい。さらに、受像シートの基材の裏面側にはカール調整層、筆記層、帯電調整層が形成されていてもよい。
なお、各層は、塗布や張り合わせで形成することが可能である。塗布方法としては、特に限定されるものではないが、ロールコート、バーコート、グラビアコート、マイクログラビアリバースコート、カーテンコート、スライドホッパーコート、ダイコート等の一般的に公知の製造方法を用いることができる。
【0049】
<受像シート用基材>
受像シートに用いることができる基材としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンフィルム、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド等の合成樹脂フィルム、上質紙、コート紙、写真ベース紙であるレジンコート紙(広葉樹パルプ主体の中紙をポリエチレン、ポリプロピレン等で両面ラミネートしたもの)、アート紙、キャストコート紙、樹脂ラミネート紙、合成紙(商品名:ユポコーポレーション ユポFPG)などを単独で、または組み合わせた複合体として用いることができる。
基材の厚みは、プリンタの搬送性、印画物の腰を考慮し50~300μmが好ましい。
【0050】
<断熱層>
受像シートの基材上には、印画時の熱効率を高め印画濃度を向上させるための断熱層を設けることが好ましい。
断熱層としては特に限定されるものではないが、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム(商品名:東洋紡クリスパーなど)、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンフィルムと炭酸カルシウム、酸化チタン等の填料を主成分とした、ボイド(空隙)を有する二軸延伸フィルム(商品名:東洋紡トヨパール、ユポコーポレーション ユポFPGなど)等を用いることができる。
また、基材上にボイド構造を有する断熱層を形成してもよい。その形成方法は特に限定されるものではないが、例えば、マイクロカプセル等の中空粒子(発泡溶剤を含有しても良い)をバインダーとともに塗工、熱乾燥することで、ボイド層を形成する。
【0051】
<断熱層以外の中間層>
受像シートは、上述した通り、断熱層以外の中間層として、例えば、光沢制御層、白地調整層、隠蔽性能向上層、耐溶剤性向上層、帯電調節層、接着層、プライマー層などが含まれていてもよい。中間層は、多層となっていてもよい。
【0052】
<色材受容層>
本発明の受像シートの色材受容層は、インクシートから昇華あるいは熱拡散によって移行する染料を受容し、画像を形成する機能をもつ。
色材受容層に用いることができる樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化ポリマー、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂、ポリアクリル酸エステル等のアクリル樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等のアセタール樹脂、飽和・不飽和の各種ポリエステル樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロースアセテート等のセルロース系樹脂、ポリスチレン、アクリルースチレン共重合体、アクリロニトリルースチレン共重合体等のスチレン系樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、相溶する範囲内で任意に混合してもよい。
【0053】
また水溶性樹脂や水系分散樹脂をバインダー樹脂として用いることが可能である。水溶性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ゼラチン等が挙げられる。水系分散樹脂としては、塩ビ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン樹脂等のエマルジョン、ディスパージョンが挙げられる。
色材受容層の樹脂は、画像形成の熱転写の際に、インクシートのバインダー樹脂と熱融着を起こす場合もあるので、離型材を添加しても構わない。離型性を得る為には、シリコーン化合物、シリコーンオイル、シリコーン樹脂、リン酸エステル、界面活性剤、フッ素系化合物、フッ素系樹脂等の離型剤を色材受容層に添加することが好ましく、特に変性シリコーンオイルを添加し、硬化させたものが好ましい。
【0054】
離型剤としては1種若しくは2種以上のものが使用される。また、離型剤は乾燥塗工量としては0.001~1g/m2程度である。この添加量の範囲を満たさない場合は、インクシートと受像シートの色材受容層との融着あるいは印画感度の低下が生じることがある。離型剤を色材受容層に添加することによって、表面に離型剤がブリードして離型層が形成される。また、これらの離型剤は色材受容層の樹脂中に添加せず、色材受容層上に別途塗工しても構わない。
さらに、分散、レベリングのために界面活性剤、消泡剤等と併用することも可能である。また、色材受容層の白色度を向上させる目的で、白色顔料や蛍光増白剤等を添加することも可能である。
色材受容層は任意の厚さでよいが、3μm~6μmの厚さであることが好ましい。
【実施例】
【0055】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、文中「部」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
[本発明の一般式(1)で表される化合物]
上記一般式(1)で表わされる化合物は、公知の方法によって合成した。化合物の同定は、1H核磁気共鳴分光分析(1H-NMR)装置(AVANCE-600 NMR spectrometer、BRUKER社製)、及び、MALDI-TOF/MS(MALDI-TOF/MS ultraFleXtreme、BRUKER社製)装置を用いて行った。
[比較化合物]
比較化合物として、以下の比較化合物(1)~(3)を使用した。
【0056】
【0057】
(I)感熱転写記録用シート
[各染料組成物の作製]
<インクの作製例1>
メチルエチルケトン45部及びトルエン45部の混合溶液に、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:KS-3、積水化学(株)製)5部を少しずつ添加して溶解させた。この溶液に、化合物(1-5)5部を添加して完全に溶解させることで、感熱転写記録用シート作製用のイエロー染料組成物(イエローインク)(Y1)を得た。
<インクの作成例2~9>
上記インクの作製例1において、化合物(1-5)を、表2に示す化合物に変更した以外は、同じ方法で、感熱転写記録用シート作製用のイエロー染料組成物(イエローインク)(Y2~Y9)をそれぞれ作製した。
【0058】
[画像サンプルの作製]
〔実施例1〕
基材として、厚さ4.5μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:ルミラー、東レ(株)製)を用いた。この基材上に、乾燥後の厚みが1μmになるように感熱転写記録用シート作成用の上記イエロー染料組成物(Y1)を塗布し、乾燥することによって、イエロー色材層を形成した。
Canon製Selphy(商品名)用のカラーインク/ペーパーセットKL-361P(商品名)のカラーインクリボンのイエロー、マゼンタ、シアン色材層を切り取り、代わりに上記イエロー色材層を貼り込み、KL-361Pの表面保護層と繋げ、インクリボンを作成した。
次に、Canon製Selphy(商品名)の改造機で、KL-361Pの印画紙(受像シート)に、3cm×3cmのイエロー画像を形成した。尚、イエロー画像の形成に際し、イエロー色材層には、イエロー画像の最大濃度を得ることができる熱量を基準として、80%の熱量を供給した。
作製したイエロー画像を90℃のオーブンに1分間入れた後に、イエロー画像上にCanon製Selphy(商品名)の改造機で、表面保護層を形成し、実施例1の画像サンプルを得た。尚、表面保護層の形成は、イエロー画像の最大濃度を得ることができる熱量を基準として、50%の熱量で行った。
【0059】
〔実施例2~7、比較例1~3〕
実施例1において、イエロー色材として含有される化合物及びオーブンの温度を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~7、並びに比較例1~3の画像サンプルを得た。
【0060】
〔実施例8〕
作製した画像をオーブンにて加熱することなく、表面保護層を形成して、実施例8の画像サンプルを得た。尚、表面保護層の形成は、イエロー画像の最大濃度を得ることができる熱量を基準として、60%の熱量で行った。
【0061】
〔実施例9~14、比較例4~8〕
実施例8において、イエロー色材として含有される化合物、及び表面保護層を形成する際の熱量を表2に示すように変更した以外は、実施例8と同様にして、実施例9~14、比較例4~8の画像サンプルを得た。
〔実施例15〕
作製したイエロー画像を実施例1と同様にオーブンにて70℃に加熱した後に、表面保護層を印画して、実施例15の画像サンプルを得た。尚、表面保護層の形成は、イエロー画像の最大濃度を得ることができる熱量を基準として、70%の熱量で行った。
〔実施例16〕
作製した画像を実施例1と同様にオーブンにて70℃に加熱した後に、表面保護層を印画して、実施例16の画像サンプルを得た。尚、表面保護層の形成は、イエロー画像の最大濃度を得ることができる熱量を基準として、60%の熱量で行った。
出力した画像を、剃刀法にて断面を切断し、レーザー顕微鏡(Carl Zeiss社製 LSM5 Pastel)を用いて色材の浸透深さを測定した。結果を表2に示した。
【0062】
【0063】
次に、上記実施例1~16及び比較例1~8の画像サンプルの濃度評価及び耐光性評価を行った。なお、画像サンプルの測色は、反射濃度計FD-7(商品名、コニカミノルタ社製)を用いて行った。結果を表3に示す。
【0064】
<濃度評価>
上述のようにして印画したイエロー画像の光学濃度(O.D.)を測定し、以下の評価基準に基づき、それぞれ評価(ランク付け)した。これらの各値及びその評価結果を表3に示す。
評価基準:
ランクA(非常に良好):2.0≦O.D.
ランクB(良好):1.7≦O.D.<2.0
ランクC(劣る):O.D.<1.7
【0065】
<耐光性評価>
実施例1~16、比較例1~8で得られた画像サンプルをキセノン試験装置(商品名:AtlasCi4000、スガ試験機(株)製)に投入し、照度:340nmで0.28W/m2、温度:40℃、相対湿度:50%の条件下、35時間曝露した。
初期の光学濃度(O.D.)をOD0とし、35時間曝露後のO.D.をOD35とした時、O.D.残存率を下式のように定義し、以下の評価基準に基づいて、それぞれ評価(ランク付け)した。結果を表3に示す。
O.D.残存率=100×(OD35/OD0)
評価基準:
ランクA(非常に良好):70%≦O.D.残存率
ランクB (良好):50%≦O.D.残存率<70%
ランクC (劣る):O.D.残存率<50%
【0066】
【0067】
〔実施例17〕
実施例7にて、イエロー画像を形成した後、このイエロー画像に重ねて、Canon製Selphy(商品名)を用いて、マゼンタ画像、シアン画像を形成した。各画像の形成に際しては、各画像の最大濃度を得ることができる熱量を基準として、80%の熱量とした。
その後に、表面保護層を、イエロー画像の最大濃度を得ることができる熱量を基準として熱量60%で形成し、フルカラー画像を得た。このフルカラー画像につき、色材の浸透深さを測定した。イエロー色材の浸透深さは、2.8μmであり、マゼンタ色材層、シアン色材層を重ねない画像と同様であった。
【0068】
〔実施例18〕
実施例1と同様にしてイエロー画像を形成した後、このイエロー画像に重ねて、Canon製Selphy(商品名)を用いて、マゼンタ画像、シアン画像を形成し、自然画を含む印画サンプルを形成した後、続けて表面保護層を形成した。
表面保護層の印字熱量は、画像上にイエロー画像が露出されている領域か否かを判別し、その熱量を変化させた。具体的には、イエローが存在する領域ではイエロー画像の最大濃度を得る熱量の60%の熱量で像形成し、イエロー画像が露出していない領域では、イエロー画像の最大濃度を得る熱量の30%の熱量で印画した。
その結果、印画物を得るために必要な消費エネルギーを低減することができた。
【0069】
以上より明らかなように、実施例に記載の画像サンプルは、比較例の感熱転写記録用シートを用いて形成した画像サンプルと比較して、高濃度、かつ、高耐光な印画物を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明によれば、表面保護層を転写後、色材受容層に一般式(1)の化合物が深さ2μm以上浸透していることで高濃度、かつ、高耐光な印画物を提供することができる。