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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】水電解システム
(51)【国際特許分類】
   C25B 15/023 20210101AFI20241120BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20241120BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20241120BHJP
   H01M 8/0656 20160101ALI20241120BHJP
【FI】
C25B15/023
C25B1/04
C25B9/00 A
H01M8/0656
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022171062
(22)【出願日】2022-10-26
(65)【公開番号】P2024063273
(43)【公開日】2024-05-13
【審査請求日】2023-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】田村 航輝
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-29892(JP,A)
【文献】国際公開第2020/095543(WO,A1)
【文献】特開2019-210205(JP,A)
【文献】特開2023-128165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B1/00-15/08
H01M8/06-8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜がアノード電極とカソード電極とに挟持される膜電極構造体を有し、水を電気分解する水電解スタックと、
前記水電解スタックによる前記水の電気分解によって発生した水素ガスと、前記水とを分離する気液分離器と、
電解質膜がアノード電極とカソード電極とに挟持される膜電極構造体を有し、前記気液分離器によって分離された前記水素ガスを昇圧する水素昇圧スタックと、
を有する水電解システムであって、
前記水電解スタックの前記アノード電極と前記カソード電極とに電圧を印加し、前記水電解スタックの前記アノード電極と前記カソード電極との間に電流を通電させる第1電源装置と、
前記水素昇圧スタックの前記アノード電極と前記カソード電極とに電圧を印加し、前記水素昇圧スタックの前記アノード電極と前記カソード電極との間に電流を通電させる第2電源装置と、
前記気液分離器内の前記水の温度を検出する温度センサと、
前記水素昇圧スタックの前記アノード電極と前記カソード電極とに所定の電圧を印加する前記第2電源装置の電気抵抗値を取得し、前記電気抵抗値と、前記温度とに基づいて、前記水電解スタックに通電させる電流値を制御する制御装置と、
を備え
前記電気抵抗値が所定の抵抗閾値よりも高く、かつ、前記温度が所定の温度閾値以下である場合、前記制御装置は、前記電流値を増加させる、水電解システム。
【請求項2】
請求項に記載の水電解システムであって、
前記気液分離器は、前記水電解スタックに供給される前記水の供給源であり、
前記気液分離器に外部からの水の供給がある場合、前記制御装置は、前記外部から前記気液分離器への水の供給を停止させた状態で、前記電流値を増加させる制御を実施する、水電解システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水電解システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する燃料電池に関する研究開発が行われている。また、環境に与える負荷を軽減するため、内燃機関を有する自動車等の移動体の排気ガス規制が一段と進んでいる。したがって、移動体において、内燃機関に代替して燃料電池を搭載することが試みられている。燃料電池が搭載された移動体では、CO、SOおよびNO等が排出されないため、環境に与える負荷が軽減される。
【0003】
燃料電池は、水素ガスと酸素ガスとの電気化学反応により発電する。水素ガスを生成するためのシステムとして、例えば特許文献1が開示されている。特許文献1のシステムでは、水電解スタック(水電解装置)と、気液分離器(水分除去部)と、水素昇圧スタック(水素ガス昇圧部)とが備えられている。
【0004】
水電解スタックは、水を電気分解して水素ガスと、水素ガスよりも高圧の酸素ガスとを生成する。気液分離器は、水電解スタックから供給される水素ガスと水とを分離する。水素昇圧スタックは、気液分離器によって分離される水素ガスを昇圧する。気液分離器によって分離される水は、水供給部を介して水電解スタックに供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2022-029892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の水供給部が取り外され、気液分離器から直接的に水電解スタックに水を供給する場合がある。この場合、気液分離器に貯留される水を補充するために、外部から水が供給される。しかし、外部から供給される水によって気液分離器の露点温度が低下する場合がある。気液分離器の露点温度が低下すると、気液分離器から水素昇圧スタックに水素ガスとともに供給される水蒸気量が少なくなる。その結果、水素昇圧スタックに備えられる電解質膜が乾燥して劣化することが懸念される。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様は、電解質膜がアノード電極とカソード電極とに挟持される膜電極構造体を有し、水を電気分解する水電解スタックと、前記水電解スタックによる前記水の電気分解によって発生した水素ガスと、前記水とを分離する気液分離器と、電解質膜がアノード電極とカソード電極とに挟持される膜電極構造体を有し、前記気液分離器によって分離された前記水素ガスを昇圧する水素昇圧スタックと、を有する水電解システムであって、前記水電解スタックの前記アノード電極と前記カソード電極とに電圧を印加し、前記水電解スタックの前記アノード電極と前記カソード電極との間に電流を通電させる第1電源装置と、前記水素昇圧スタックの前記アノード電極と前記カソード電極とに電圧を印加し、前記水素昇圧スタックの前記アノード電極と前記カソード電極との間に電流を通電させる第2電源装置と、前記気液分離器内の前記水の温度を検出する温度センサと、前記水素昇圧スタックの前記アノード電極と前記カソード電極とに所定の電圧を印加する前記第2電源装置の電気抵抗値を取得し、前記電気抵抗値と、前記温度とに基づいて、前記水電解スタックに通電させる電流値を制御する制御装置と、を備え、前記電気抵抗値が所定の抵抗閾値よりも高く、かつ、前記温度が所定の温度閾値以下である場合、前記制御装置は、前記電流値を増加させる。
【発明の効果】
【0009】
上記の態様によれば、水素昇圧スタックの電解質膜が乾燥しているか否かを正確に判定し、気液分離器から水素昇圧スタックに水素ガスとともに供給される水蒸気量を調整することができる。その結果、乾燥による水素昇圧スタックの電解質膜の劣化を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態による水電解システムを示す概略図である。
図2図2は、温度調整処理の手順を示すフローチャートである。
図3図3は、変形例による温度調整処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、水電解システム10を示す概略図である。水電解システム10は、水電解スタック12と、第1電源装置13と、気液分離器14と、酸素タンク16と、水素昇圧スタック18と、第2電源装置19と、水素タンク20と、燃料電池22と、第1水回収機24と、第2水回収機26と、制御装置28とを備える。
【0012】
水電解スタック12は、水素ガスと、水素ガスの圧力よりも高圧の酸素ガスとを水電解により生成する差圧式水電解スタックである。水電解するための水は、気液分離器14から水供給路30を介して水電解スタック12に供給される。水供給路30は、気液分離器14と水電解スタック12とを連通する。水供給路30には、ポンプ31が設けられる。ポンプ31のオンオフは制御装置28によって制御される。ポンプ31は、オンにされると、気液分離器14に貯留される水に流動力を付与し、気液分離器14から水電解スタック12に水を供給する。
【0013】
水電解スタック12は、1以上の単位セルを有する。単位セルは、電解質膜M_12がアノード電極A_12とカソード電極C_12とで挟持される膜電極接合体MEA_12を含む。水電解スタック12は、気液分離器14から供給される水を単位セルのカソード電極C_12に供給する。単位セルは、アノード電極A_12とカソード電極C_12とに印加される電圧に基づいて水電解する。この場合、アノード電極A_12では昇圧された酸素ガスが生成され、カソード電極C_12では昇圧された水素ガスが生成される。アノード電極A_12で生成される酸素ガスは、カソード電極C_12で生成される水素ガスよりも高圧である。酸素ガスは、例えば、酸素排出路32に設けられる絞り弁等によって昇圧される。
【0014】
水電解スタック12の単位セルで生成される酸素ガスは、酸素排出路32を介して酸素タンク16に貯留される。酸素排出路32は、水電解スタック12から酸素タンク16に酸素ガスを排出するための管路であり、水電解スタック12と酸素タンク16とを連通する。
【0015】
水電解スタック12の単位セルで生成される水素ガスと未反応水とを含む排出流体は、水排出路34を介して気液分離器14に供給される。水排出路34は、水電解スタック12から気液分離器14に排出流体を排出するための管路であり、水電解スタック12と気液分離器14とを連通する。
【0016】
第1電源装置13は、アノード電極A_12とカソード電極C_12とに電圧を印加し、アノード電極A_12とカソード電極C_12との間に電流を通電させる。第1電源装置13は、アノード電極A_12とカソード電極C_12との間に通電される電流の電流値を変更可能に構成される。電流値は、制御装置28によって制御される。
【0017】
気液分離器14は、水電解スタック12から排出される排出流体を気体成分(水素含有ガス)と、液体成分(液水)とに分離する。気液分離器14によって分離される水素含有ガスは、水素ガスの他に水蒸気を含む。水素含有ガスは、水素供給路36を介して水素昇圧スタック18に供給される。水素供給路36は、気液分離器14と水素昇圧スタック18とを連通する。水素供給路36には、ポンプ37が設けられる。ポンプ37のオンオフは制御装置28によって制御される。ポンプ37は、オンにされると、気液分離器14に貯留される水素ガスに流動力を付与し、気液分離器14から水素昇圧スタック18に水素ガスを供給する。
【0018】
気液分離器14によって分離された液体成分(液水)は、気液分離器14に一時的に貯留され、水供給路30を介して水電解スタック12に再び供給される。気液分離器14に貯留される水は、給水路38を介して供給される水を含む。給水路38は、第1水回収機24および第2水回収機26から気液分離器14に水を供給するための管路である。給水路38は、第1給水路38_1と第2給水路38_2とを含む。
【0019】
第1給水路38_1は、第1水回収機24と気液分離器14とを連通する。第2給水路38_2は、第2水回収機26と気液分離器14とを連通する。本実施形態では、第1給水路38_1の下流端部と第2給水路38_2の下流端部とは1つの合流路38_3として形成される。第1給水路38_1には第1給水弁39が設けられ、第2給水路38_2には第2給水弁40が設けられる。第1給水弁39および第2給水弁40の開閉は制御装置28によって制御される。合流路38_3には、ポンプ41が設けられる。ポンプ41のオンオフは制御装置28によって制御される。ポンプ41は、オンにされると、第1水回収機24または第2水回収機26に貯留される水に流動力を付与し、第1水回収機24または第2水回収機26から気液分離器14に水を供給する。
【0020】
酸素タンク16は、水電解スタック12の水電解により生成される酸素ガスを貯留する。酸素タンク16に貯留された酸素ガスは、酸素ガス供給路42を介して燃料電池22に供給される。酸素ガス供給路42は、酸素タンク16に貯留された酸素ガスを燃料電池22に供給するための管路であり、酸素タンク16と燃料電池22とを連通する。酸素ガス供給路42には、酸素放出弁44と減圧弁46とが設けられる。酸素放出弁44は、酸素タンク16の出口近傍に配置される。酸素放出弁44の開閉は制御装置28によって制御される。減圧弁46は、酸素タンク16に貯留された酸素ガスを減圧する。減圧弁46によって減圧された酸素ガスの圧力は、基準圧よりも大きい。
【0021】
水素昇圧スタック18は、電気化学的に水素ガスを圧縮する電気化学式水素圧縮機(EHC:Electrochemical Hydrogen Compressor)である。水素昇圧スタック18は、気液分離器14から供給される水素ガスを昇圧する。気液分離器14から供給される水素ガスは、水電解スタック12によって生成される水素ガスである。水素昇圧スタック18によって生成される水素ガスは、水電解スタック12によって生成される水素ガスよりも高圧である。
【0022】
水素昇圧スタック18は、1以上の単位セルを有する。単位セルは、電解質膜M_18がアノード電極A_18とカソード電極C_18とで挟持される膜電極接合体MEA_18を含む。水素昇圧スタック18は、気液分離器14から供給される水素ガスを単位セルのアノード電極A_18に供給する。単位セルは、アノード電極A_18とカソード電極C_18とに印加される電圧に基づいて水素ガスをイオン化する。水素ガスのイオン化により得られるプロトンが、電解質膜M_18を介してカソード電極C_18に到達すると、昇圧された水素ガスが生成される。
【0023】
水素昇圧スタック18の単位セルで生成される水素ガスは、水素排出路48を介して水素タンク20に貯留される。水素排出路48は、水素昇圧スタック18から水素タンク20に酸素ガスを排出するための管路であり、水素昇圧スタック18と水素タンク20とを連通する。
【0024】
第2電源装置19は、アノード電極A_18とカソード電極C_18とに電圧を印加し、アノード電極A_18とカソード電極C_18との間に電流を通電させる。第2電源装置19は、アノード電極A_18とカソード電極C_18との間に通電される電流の電流値を変更可能に構成される。電流値は、制御装置28によって制御される。
【0025】
水素タンク20は、水素昇圧スタック18により昇圧された水素ガスを貯留する。水素タンク20に貯留された水素ガスは、水素ガス供給路52を介して燃料電池22に供給される。水素ガス供給路52は、水素タンク20に貯留された水素ガスを燃料電池22に供給するための管路であり、水素タンク20と燃料電池22とを連通する。水素ガス供給路52には、水素放出弁54と減圧弁56とが設けられる。水素放出弁54は、水素タンク20の出口近傍に配置される。水素放出弁54の開閉は制御装置28によって制御される。減圧弁56は、水素タンク20に貯留された水素ガスを減圧する。減圧弁56によって減圧された水素ガスの圧力は、基準圧よりも大きい。
【0026】
燃料電池22は、複数の単位セルを有する。各単位セルは、電解質膜がアノード電極とカソード電極とで挟持される膜電極接合体を含む。燃料電池22は、酸素タンク16から減圧弁46を介して供給される基準圧よりも高圧の酸素ガスを、各単位セルのカソード電極に供給する。燃料電池22は、水素タンク20から減圧弁56を介して供給される基準圧よりも高圧の水素ガスを、各単位セルのアノード電極に供給する。各単位セルは、酸素ガスと水素ガスとの電気化学反応により発電する。
【0027】
燃料電池22の各単位セルで未反応の酸素ガスを含む酸素含有ガスは、酸素循環路58を介して酸素ガス供給路42に供給される。酸素循環路58は、燃料電池22から排出される酸素含有ガスを酸素ガス供給路42に戻すための管路である。酸素循環路58は、上流部58_1と下流部58_2とを含む。上流部58_1は、燃料電池22と第1水回収機24とを連通する。下流部58_2は、第1水回収機24と酸素ガス供給路42を連通する。酸素循環路58には、ポンプ59が設けられる。ポンプ59のオンオフは制御装置28によって制御される。ポンプ59は、オンにされると、燃料電池22から排出される酸素含有ガスに流動力を付与し、酸素含有ガスを循環させる。
【0028】
燃料電池22の各単位セルで未反応の水素ガスを含む水素含有ガスは、水素循環路60を介して水素ガス供給路52に供給される。水素循環路60は、燃料電池22から排出される水素含有ガスを水素ガス供給路52に戻すための管路である。水素循環路60は、上流部60_1と下流部60_2とを含む。上流部60_1は、燃料電池22と第2水回収機26とを連通する。下流部60_2は、第2水回収機26と水素ガス供給路52を連通する。水素循環路60には、ポンプ61が設けられる。ポンプ61のオンオフは制御装置28によって制御される。ポンプ61は、オンにされると、燃料電池22から排出される水素含有ガスに流動力を付与し、水素含有ガスを循環させる。
【0029】
第1水回収機24は、燃料電池22から排出される酸素含有ガスから液水を回収するための気液分離器である。液水は、燃料電池22での酸素と水素との酸化還元反応により生成される。第1水回収機24によって分離される液水は、第1水回収機24に一時的に貯留され、気液分離器14に供給される。第1水回収機24によって分離される酸素含有ガスは、未反応の酸素ガスの他に水蒸気を含む。酸素含有ガスは、酸素循環路58の下流部58_2を介して酸素ガス供給路42に供給される。
【0030】
第2水回収機26は、燃料電池22から排出される水素含有ガスから液水を回収するための気液分離器である。液水は、燃料電池22での酸素と水素との酸化還元反応により生成される。第2水回収機26によって分離される液水は、第2水回収機26に一時的に貯留され、気液分離器14に供給される。第2水回収機26によって分離される水素含有ガスは、未反応の水素ガスの他に水蒸気を含む。水素含有ガスは、水素循環路60の下流部60_2を介して水素ガス供給路52に供給される。
【0031】
制御装置28は、水電解システム10を制御するコンピュータである。制御装置28は、1以上のプロセッサと、記憶媒体とを含む。記憶媒体は、揮発性メモリと不揮発性メモリとによって構成され得る。プロセッサとしては、CPU、MCU等が挙げられる。揮発性メモリとしては、例えばRAM等が挙げられる。不揮発性メモリとしては、例えばROM、フラッシュメモリ等が挙げられる。
【0032】
制御装置28は、第1電源装置13を制御して水電解スタック12のアノード電極A_12とカソード電極C_12とに所定の電圧を印加する。これに加えて、制御装置28は、ポンプ31をオンにして気液分離器14から水電解スタック12に水を供給する。この場合、水電解スタック12は運転状態であり、水の電気分解(水電解)が行われる。制御装置28が水電解スタック12への電圧の印加および水の供給を停止すると、水電解スタック12は非運転状態になる。
【0033】
気液分離器14に貯留される水の水位が所定の下限値未満になると、制御装置28は、第1給水弁39および第2給水弁40の少なくとも1つを開弁する。また、制御装置28は、ポンプ41をオンにして、第1水回収機24および第2水回収機26の少なくとも1つから気液分離器14に水を供給する。気液分離器14に貯留される水の水位が所定の水位閾値以上になると、制御装置28は、第1給水弁39および第2給水弁40を閉弁し、ポンプ41をオフにする。気液分離器14に貯留される水は、気液分離器14に設けられた水位センサによって検出される。
【0034】
制御装置28は、第2電源装置19を制御して水素昇圧スタック18のアノード電極A_18とカソード電極C_18とに所定の電圧を印加する。これに加えて、制御装置28は、ポンプ37をオンにして気液分離器14から水素昇圧スタック18に水素ガスを供給する。この場合、水素昇圧スタック18は運転状態であり、水素ガスの昇圧が行われる。制御装置28が水素昇圧スタック18への電圧の印加および水素ガスの供給を停止すると、水素昇圧スタック18は非運転状態になる。
【0035】
水電解スタック12の運転と水素昇圧スタック18の運転とはセットで実施される。すなわち、制御装置28は、水電解スタック12を運転状態にすると、水素昇圧スタック18も運転状態にする。一方、制御装置28は、水電解スタック12を非運転状態にすると、水素昇圧スタック18も非運転状態にする。
【0036】
水電解スタック12および水素昇圧スタック18の運転中、制御装置28は、酸素放出弁44および水素放出弁54を閉弁する。この場合、水電解スタック12の水電解により生成される高圧の酸素ガスは酸素タンク16に貯留され、水素昇圧スタック18により昇圧される高圧の水素ガスは水素タンク20に貯留される。また、燃料電池22には、酸素タンク16に貯留される酸素ガスと、水素タンク20に貯留される水素ガスとは供給されない。そのため、燃料電池22は非運転状態にあり、発電が行われない。
【0037】
一方、水電解スタック12および水素昇圧スタック18の非運転中、制御装置28は、酸素放出弁44および水素放出弁54を開弁し、燃料電池22を運転状態にする。この場合、酸素タンク16に貯留された酸素ガスは、減圧弁46により減圧された後に燃料電池22に供給される。また、水素タンク20に貯留された水素ガスは、減圧弁56により減圧された後に燃料電池22に供給される。燃料電池22では発電が行われる。燃料電池22の運転中、制御装置28は、ポンプ59をオンにして、燃料電池22から排出される酸素含有ガスを、第1水回収機24を介して、燃料電池22に供給する。また、制御装置28は、ポンプ61をオンにして、燃料電池22から排出される水素含有ガスを、第2水回収機26を介して、燃料電池22に供給する。
【0038】
水電解スタック12および水素昇圧スタック18の運転と、燃料電池22の運転とは交互に実施されてもよい。
【0039】
水電解スタック12および水素昇圧スタック18の運転中、制御装置28は、気液分離器14の露点温度を調整する温度調整処理を実行する。図2は、温度調整処理の手順を示すフローチャートである。
【0040】
水電解スタック12の運転が開始されると、水の電解反応時に生じる熱等に応じて水電解スタック12の温度が上昇する。温度調整処理は、水電解スタック12の温度が所定の温度閾値を超えると、ステップS1に移行する。水電解スタック12の温度は、水電解スタック12に設けられた温度センサによって検出される。
【0041】
ステップS1において、制御装置28は、気液分離器14に貯留される水の温度(貯水温度)の監視を開始する。この場合、制御装置28は、気液分離器14の貯水温度を記憶媒体に時系列で記憶する。貯水温度は、気液分離器14に設けられる温度センサ70(図1)によって検出される。
【0042】
また、制御装置28は、水素昇圧スタック18のアノード電極A-18とカソード電極C_18とに所定の電圧を印加する第2電源装置19の電気抵抗値の監視を開始する。この場合、制御装置28は、第2電源装置19の電気抵抗値を記憶媒体に時系列で記憶する。電気抵抗値は、複数の単セルの平均等の統計値であってもよいし、代表の単セルの電気抵抗値であってもよい。電気抵抗値は、第2電源装置19に設けられる電圧センサ72および電流センサ74によって検出される値から演算により取得される。第2電源装置19に抵抗測定器が設けられている場合は、電気抵抗値は、抵抗測定器から取得されてもよい。貯水温度および電気抵抗値の監視が開始されると、温度調整処理は、ステップS2に移行する。
【0043】
ステップS2において、制御装置28は、記憶媒体に記憶された貯水温度を所定の温度閾値と比較する。貯水温度が温度閾値以下である場合、温度調整処理は、ステップS3に移行する。一方、貯水温度が温度閾値よりも高い場合、温度調整処理は、ステップS5に移行する。
【0044】
ステップS3において、制御装置28は、記憶媒体に記憶された電気抵抗値を所定の抵抗閾値と比較する。電気抵抗値が抵抗閾値よりも高い場合、温度調整処理は、ステップS4に移行する。一方、電気抵抗値が抵抗閾値以下である場合、温度調整処理は、ステップS5に移行する。
【0045】
ステップS4において、制御装置28は、第1電源装置13を制御して、水電解スタック12のアノード電極A_12とカソード電極C_12との間に通電される電流の電流値を現在値よりも増加させる。電流値が増加されると、温度調整処理は、ステップS5に移行する。
【0046】
ステップS5において、制御装置28は、電気抵抗値と抵抗閾値との比較が完了してから単位時間が経過したか判定する。単位時間が経過していない場合、温度調整処理は、ステップS5に留まる。一方、単位時間が経過すると、温度調整処理は、ステップS2に戻る。
【0047】
このように、本実施形態では、水素昇圧スタック18の電解質膜M_18が乾燥しているか否かを判定するために、第2電源装置19の電気抵抗値と、気液分離器14の貯水温度とが用いられる。
【0048】
一般に、水素昇圧スタック18の電解質膜M_18の含水量が少なくなると、膜抵抗(内部抵抗)が大きくなる。そのため、水素昇圧スタック18の電解質膜M_18の乾燥状態は、第2電源装置19の電気抵抗値のみから判定可能である。しかし、水素昇圧スタック18の電解質膜M_18の含水量以外の要因で第2電源装置19の電気抵抗値が変化する場合がある。そこで、本実施形態では、第2電源装置19の電気抵抗値の他に、気液分離器14の貯水温度が用いられる。貯水温度は、水素昇圧スタック18に供給される水素含有ガス中の水蒸気量と極めて高い相関を有する。したがって、第2電源装置19の電気抵抗値と、気液分離器14の貯水温度とに基づいて、水素昇圧スタック18の電解質膜M_18が乾燥しているか否かを正確に判定することができる。
【0049】
また、水素昇圧スタック18の電解質膜M_18が乾燥していると判定される場合、本実施形態では、水電解スタック12に通電される電流値が増加される。この場合、電流値の増加に伴う水電解スタック12の発熱によって水電解スタック12から気液分離器14に供給される水の温度が上昇する。そのため、気液分離器14の内部の湿度が高くなり、気液分離器14から水素昇圧スタック18に水素ガスとともに供給される水蒸気量が多くなる。したがって、水素昇圧スタック18の電解質膜M_18における乾燥による劣化が抑制される。
【0050】
このように、本実施形態の制御装置28は、定電圧を印加する第2電源装置19の電気抵抗値と、気液分離器14の貯水温度とに基づいて水電解スタック12に通電させる電流値を制御する。これにより、水素昇圧スタック18の電解質膜M_18が乾燥しているか否かを正確に判定し、気液分離器14から水素昇圧スタック18に供給される水素含有ガス中の水蒸気量を調整することができる。その結果、乾燥による水素昇圧スタック18の電解質膜M_18の劣化を低減することができる。
【0051】
上記の実施形態は、下記のように変形されてもよい。
【0052】
図3は、変形例による温度調整処理の手順を示すフローチャートである。本変形例では、ステップS11~S13が新たに加わる。
【0053】
本変形例では、ステップS1で貯水温度および電気抵抗値の監視が開始されると、温度調整処理は、ステップS11に移行する。
【0054】
ステップS11において、制御装置28は、気液分離器14の外部から気液分離器14に給水されているか否か判定する。気液分離器14の外部として、第1水回収機24および第2水回収機26が含まれる。気液分離器14に給水タンク等の給水ユニットが接続されている場合、気液分離器14の外部として、給水ユニットが含まれる。気液分離器14の外部から気液分離器14に給水されていない場合、温度調整処理は、ステップS2に移行する。一方、気液分離器14の外部から気液分離器14に給水されている場合、温度調整処理は、ステップS12に移行する。
【0055】
ステップS12において、制御装置28は、気液分離器14と連通される給水路38に設けられる第1給水弁39および第2給水弁40を閉弁し、気液分離器14への給水を停止する。給水ユニットから気液分離器14に給水されている場合、制御装置28は、給水ユニットを制御して給水を停止する。気液分離器14への給水が停止されると、温度調整処理は、ステップS2に移行する。
【0056】
本変形例では、ステップS4で電流値が増加されると、温度調整処理は、ステップS13に移行する。
【0057】
ステップS13において、制御装置28は、ステップS12で気液分離器14への給水を停止した場合に限り、気液分離器14への給水を再開する。気液分離器14への給水が再開されると、温度調整処理は、ステップS5に移行する。なお、ステップS12で気液分離器14への給水が停止されていない場合、制御装置28は特に処理を実行することなく、温度調整処理はステップS5に移行する。
【0058】
このように、本変形例では、水電解スタック12の電極間に通電する電流値を増加させる制御の実施中、制御装置28は、気液分離器14への外部からの水の供給を停止する。これにより、外部からの水によって気液分離器14の貯水が冷却されることを回避することができる。そのため、電流値の増加に伴う水電解スタック12の発熱に基づいて気液分離器14に貯留される水の温度を迅速に上昇させることができる。したがって、気液分離器14から水素昇圧スタック18に水素ガスとともに供給される水蒸気量を迅速に増加させることができる。
【0059】
以上の記載から把握し得る発明および効果について以下に記載する。
【0060】
(1)本発明は、電解質膜(M_12)がアノード電極(A_12)とカソード電極(C_12)とに挟持される膜電極構造体(MEA_12)を有し、水を電気分解する水電解スタック(12)と、前記水電解スタック(12)による前記水の電気分解によって発生した水素ガスと、前記水とを分離する気液分離器(14)と、電解質膜(M_18)がアノード電極(A_18)とカソード電極(C_18)とに挟持される膜電極構造体(MEA_18)を有し、前記気液分離器(14)によって分離された前記水素ガスを昇圧する水素昇圧スタック(18)と、を有する水電解システム(10)である。水電解システム(10)は、前記水電解スタック(12)の前記アノード電極(A_12)と前記カソード電極(C_12)とに電圧を印加し、前記水電解スタック(12)の前記アノード電極(A_12)と前記カソード電極(C_12)との間に電流を通電させる第1電源装置(13)と、前記水素昇圧スタック(18)の前記アノード電極(A_18)と前記カソード電極(C_18)とに電圧を印加し、前記水素昇圧スタック(18)の前記アノード電極(A_18)と前記カソード電極(C_18)との間に電流を通電させる第2電源装置(19)と、前記気液分離器(14)内の前記水の温度を検出する温度センサ(70)と、前記水素昇圧スタック(18)の前記アノード電極(A_18)と前記カソード電極(C_18)とに所定の電圧を印加する前記第2電源装置(19)の電気抵抗値を取得し、前記電気抵抗値と、前記温度とに基づいて、前記水電解スタック(12)に通電させる電流値を制御する制御装置(28)と、を備える。
【0061】
これにより、水素昇圧スタックの電解質膜が乾燥しているか否かを正確に判定し、気液分離器から水素昇圧スタックに水素ガスとともに供給される水蒸気量を調整することができる。その結果、乾燥による水素昇圧スタックの電解質膜の劣化を低減することができる。
【0062】
(2)本発明は、水電解システム(10)であって、前記電気抵抗値が所定の抵抗閾値よりも高く、かつ、前記温度が所定の温度閾値以下である場合、前記制御装置(28)は、前記電流値を増加させてもよい。これにより、水素昇圧スタックの電解質膜の乾燥状態を正確に判定し、気液分離器から水素昇圧スタックに水素ガスとともに供給される水蒸気量を増加させることができる。
【0063】
(3)本発明は、水電解システム(10)であって、前記気液分離器(14)は、前記水電解スタック(12)に供給される前記水の供給源であり、前記電流値を増加させる制御の実施中、前記制御装置(28)は、前記気液分離器(14)への外部からの水の供給を停止してもよい。これにより、外部からの水によって気液分離器の貯水が冷却されることを回避することができる。そのため、電流値の増加に伴う水電解スタックの発熱に基づいて気液分離器に貯留される水の温度を迅速に上昇させることができる。したがって、気液分離器から水素昇圧スタックに水素ガスとともに供給される水蒸気量を迅速に増加させることができる。
【0064】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0065】
10…水電解システム 12…水電解スタック
13…第1電源装置 14…気液分離器
16…酸素タンク 18…水素昇圧スタック
19…第2電源装置 20…水素タンク
22…燃料電池 24…第1水回収機
26…第2水回収機 28…制御装置
70…温度センサ
図1
図2
図3