(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】導電接続アセンブリ
(51)【国際特許分類】
H01M 50/517 20210101AFI20241120BHJP
H01M 50/591 20210101ALI20241120BHJP
H01M 50/588 20210101ALI20241120BHJP
H01M 50/271 20210101ALI20241120BHJP
H01M 50/505 20210101ALI20241120BHJP
H01M 50/296 20210101ALI20241120BHJP
【FI】
H01M50/517
H01M50/591
H01M50/588 101
H01M50/271 B
H01M50/505
H01M50/296
(21)【出願番号】P 2022197003
(22)【出願日】2022-12-09
【審査請求日】2023-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 英樹
(72)【発明者】
【氏名】武富 春美
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-116086(JP,A)
【文献】国際公開第2019/065034(WO,A1)
【文献】特開2009-266614(JP,A)
【文献】米国特許第9054370(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/517
H01M 50/591
H01M 50/588
H01M 50/271
H01M 50/211
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の接続対象物間を電気的に接続
する導電接続アセンブリであって
、
導電接続部材と、
前記導電接続部材を前記接続対象物に接続する締結部材と、
前記導電接続部材
と前記締結部材とを覆うカバーと、を備え
、
前記カバーには、前記締結部材を締結するための工具が挿通可能な挿通孔が設けられており、
前記カバーは、前記締結部材から離間して配置され、且つ、前記挿通孔及び前記締結部材が対向する第1位置と、前記挿通孔及び前記締結部材が対向しない第2位置と、を遷移可能であり、
前記第2位置における前記カバーは、前記第1位置における前記カバーよりも前記導電接続部材側に位置する、
導電接続アセンブリ。
【請求項2】
請求項1に記載の導電接続アセンブリであって、
前記導電接続部材を保持する保持部をさらに備え、
前記カバー及び前記保持部のうち、一方には突起部が設けられ、他方には前記突起部と係合可能なガイド溝が設けられ、
前記突起部が前記ガイド溝に沿って移動することで、前記カバーは前記第1位置と前記第2位置との間で遷移する、
導電接続アセンブリ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の導電接続アセンブリであって、
前記カバーは、前記第1位置から前記第2位置に遷移するとき、水平方向に移動し、且つ、前記導電接続部材側に移動する、
導電接続アセンブリ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の導電接続アセンブリであって、
前記カバーは、前記第1位置から前記第2位置に遷移するとき、鉛直方向に延びる軸回りに回転し、且つ、前記導電接続部材側に移動する、
導電接続アセンブリ。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の導電接続アセンブリであって、
前記導電接続アセンブリは
、セル群を備えるバッテリパックに設けられ、
前記導電接続アセンブリは、前記バッテリパックに設けられる他の締結部材を覆うインターロック部をさらに備える、
導電接続アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層された複数のバッテリセルを含むセル群に接続される導電接続アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する二次電池に関する研究開発が行われている。
【0003】
従来より電動車両などには、複数のバッテリモジュールを備えた大容量のバッテリパックが搭載される。例えば、特許文献1には、ケース内に複数のバッテリモジュールが搭載されたバッテリパックが記載されている。複数のバッテリモジュールは、互いに隣接するバッテリモジュール間をバスバーを介して電気的に導通させることにより電気的に直列に接続されている。
【0004】
また、特許文献1には、メンテナンス時に、作業者が上方から工具を用いて、バスバー固定ボルトを取り外し、隣接するバッテリモジュールの電気的な導通を解除することが記載されている。ここで、バスバー固定ボルトの上方のスペースには、工具を挿入可能なアクセス許容部(開口部)が設けられているとともに、作業者の指が誤ってバスバー固定ボルトやバスバーといった活電部へ接触することを回避するために接触規制部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、接触規制部により作業者が工具を用いてメンテナンス等の作業する際の安全性を確保できているものの、バッテリパックの省スペース化については改善の余地があった。
【0007】
本発明は、工具を用いて作業する際の安全性を確保しつつ、且つ、省スペース化を図ることができる導電接続アセンブリを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
複数の接続対象物間を電気的に接続する導電接続アセンブリであって、
導電接続部材と、
前記導電接続部材を前記接続対象物に接続する締結部材と、
前記導電接続部材と前記締結部材とを覆うカバーと、を備え、
前記カバーには、前記締結部材を締結するための工具が挿通可能な挿通孔が設けられており、
前記カバーは、前記締結部材から離間して配置され、且つ、前記挿通孔及び前記締結部材が対向する第1位置と、前記挿通孔及び前記締結部材が対向しない第2位置と、を遷移可能であり、
前記第2位置における前記カバーは、前記第1位置における前記カバーよりも前記導電接続部材側に位置する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、工具を用いて作業する際の安全性を確保しつつ、且つ、省スペース化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】バッテリパック1の内部構造を示す概略斜視図である。
【
図2】バッテリパック1の電気流路を模式的に示す概略平面図である。
【
図4】バッテリパック1に設けられた本発明の第1実施形態の導電接続アセンブリ5の斜視図である。
【
図5】第1実施形態の導電接続アセンブリ5の分解斜視図である。
【
図6】第1ガイド溝61Aに設けられた切り欠き部62と第2ガイド溝61Bに設けられた切り欠き部62との距離L1と、第1突起部72Aと第2突起部72Bとの距離L2と、を比較した図である。
【
図7】第1実施形態の導電接続アセンブリ5において、第1位置P1から第2位置P2までのカバー70の遷移を示す図である。
【
図9】バッテリパック1に設けられた本発明の第2実施形態の導電接続アセンブリ5の斜視図である。
【
図10】第2実施形態の導電接続アセンブリ5の分解斜視図である。
【
図11】第2実施形態の導電接続アセンブリ5において、第1位置P1から第2位置P2までのカバー70の遷移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の各実施形態の導電接続アセンブリについて、図面を参照して説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとし、以下の説明において、説明を簡単にするため、便宜上、前後、左右、上下を設定し、図面に前方をFr、後方をRr、左方をL、右方をR、上方をU、下方をD、として示す。
【0012】
《第1実施形態》
先ず、本発明の第1実施形態の導電接続アセンブリ5が設けられるバッテリパック1について説明する。
【0013】
(バッテリパック)
図1~
図3に示すように、バッテリパック1は、水平方向(本実施形態では、左右方向)に積層された複数のラミネート型セル2と、複数のラミネート型セル2を収容するバッテリケース3と、を備えて構成され、例えば、車両(図示せず)の床下(フロアパネルの下方)に配置される。
【0014】
ラミネート型セル2は、例えば、固体電池である。固体電池からなるラミネート型セル2は、
図3に示すように、正極タブリード21が連結された正極と、負極タブリード22が連結された負極と、正極と負極との間に配置された固体電解質と、これらを収容するラミネートフィルム23と、を有しており、固体電解質を介した正極と負極との間のリチウムイオンの授受により充放電を行う。
【0015】
固体電池の固体電解質としては、リチウムイオン伝導性及び絶縁性を有するものであれば特に制限は無く、一般的に全固体型リチウムイオン電池に用いられる材料を用いることができる。例えば、硫化物固体電解質材料、酸化物固体電解質材料、リチウム含有塩などの無機固体電解質や、ポリエチレンオキシドなどのポリマー系の固体電解質、リチウム含有塩やリチウムイオン伝導性のイオン液体を含むゲル系の固体電解質等を挙げることができる。固体電解質材料の形態としては、特に制限は無いが、例えば粒子状を挙げることができる。
【0016】
図1及び
図2に示すように、複数のラミネート型セル2は、複数のセル群2A~2Dに分割されている。例えば、バッテリケース3の左側後部に配置される第1セル群2Aと、バッテリケース3の左側前部に配置される第2セル群2Bと、バッテリケース3の右側前部に配置される第3セル群2Cと、バッテリケース3の右側後部に配置される第4セル群2Dと、に分割されている。複数のセル群2A~2Dは、水平方向に所定の間隔を介して離間して配置されている。
【0017】
各セル群2A~2Dを構成する複数のラミネート型セル2は、例えば、隣接する2つのラミネート型セル2、2が並列接続され、そしてこの並列接続されたラミネート型セル2、2が、隣接する並列接続されたラミネート型セル2、2と電気的に直列接続されている。なお、複数のラミネート型セル2は、全てのセルが直列に接続されていてもよく、接続方式は限定されるものではない。
【0018】
各セル群2A~2Dは、導電接続アセンブリ5を介して電気的に直列接続されている。例えば、第1セル群2Aの電気流路始端は、配線接続ボックス6に接続され、第1セル群2Aの電気流路終端は、導電接続アセンブリ5を介して第2セル群2Bの電気流路始端に接続されている。また、第2セル群2Bの電気流路終端は、導電接続アセンブリ5を介して第3セル群2Cの電気流路始端に接続され、第3セル群2Cの電気流路終端は、導電接続アセンブリ5を介して第4セル群2Dの電気流路始端に接続されている。また、第4セル群2Dの電気流路終端は、配線接続ボックス6に接続されている。なお、導電接続アセンブリ5の詳細は後述する。
【0019】
図1に示すように、バッテリケース3は、平面視格子状のフレーム構造を有する。
図1及び
図2に示すように、このフレーム構造には、セル群2A~2Dを挟むように左右方向に対向する一対のサイドフレーム31、32と、セル群2A~2Dを挟むように前後方向に対向する前フレーム33及び後フレーム34と、第1セル群2Aと第2セル群2Bとの間、及び第3セル群2Cと第4セル群2Dとの間に配置される中間横フレーム35と、第2セル群2Bと第3セル群2Cとの間に配置される第1中間縦フレーム36と、第1セル群2Aと第4セル群2Dとの間に配置される第2中間縦フレーム37と、が含まれる。このようなバッテリケース3によれば、バッテリケース3の衝突時の変形を抑制できるだけでなく、衝突時の衝撃からセル群2A~2Dを保護することができる。
【0020】
(導電接続アセンブリ)
次に、本発明の第1実施形態の導電接続アセンブリ5について、
図4~
図7を参照して説明する。なお、以下の説明では、第1セル群2Aと第2セル群2Bとを接続する導電接続アセンブリ5について説明するが、第2セル群2Bと第3セル群2Cとを接続する導電接続アセンブリ5や、第3セル群2Cと第4セル群2Dとを接続する導電接続アセンブリ5も同様の構成を有する。
【0021】
導電接続アセンブリ5は、
図4に示すように、第1セル群2Aと第2セル群2Bとの間に配置される中間横フレーム35の上方に設けられている。
図5に示すように、導電接続アセンブリ5は、導電接続部材50と、保持部60と、カバー70と、インターロック部80と、を備える。
【0022】
導電接続部材50は、第1セル群2Aの電気流路終端と第2セル群2Bの電気流路始端とを接続する部材であり、例えばバスバーである。導電接続部材50には長手方向の両端部にボルト孔が設けられている。導電接続部材50は、ボルト孔を挿通するボルトB等の締結部材により、第1セル群2Aの電気流路終端(例えばバスバー)及び第2セル群2Bの電気流路始端(例えばバスバー)に固定される。
【0023】
保持部60は、中間横フレーム35の上部に配置され、導電接続部材50を保持する。保持部60は、導電接続部材50が第1セル群2Aの電気流路終端及び第2セル群2Bの電気流路始端にボルトBにより固定されることで、バッテリパック1に固定される。なお、保持部60には、インターロック部80が一体に設けられている。
【0024】
保持部60には、カバー70の移動をガイドするガイド溝61が設けられている。ガイド溝61は、保持部60の左側部において前後方向に離れて設けられた一対の第1ガイド溝61Aと、保持部60の右側部において前後方向に離れて設けられた一対の第2ガイド溝61Bと、を含む。また、ガイド溝61は、導電接続部材50の長手方向(ここでは前後方向)から見たとき、略L字形状をしており、水平方向に延びる横溝611と、横溝611から導電接続部材50側(本実施形態では下側)に延びる縦溝612と、により構成される。
【0025】
また、ガイド溝61には、切り欠き部62が設けられている。切り欠き部62は、後述するカバー70の突起部72が上方からガイド溝61に導入可能なように、ガイド溝61に設けられている。突起部72は、切り欠き部62からガイド溝61に導入され、ガイド溝61に沿って移動する。
【0026】
カバー70は、保持部60に対して取り外し可能に設けられており、導電接続部材50を覆う。カバー70の上面には、工具アクセス孔71が設けられており、絶縁性の工具(不図示)が工具アクセス孔71を挿通して導電接続部材50及びボルトBにアクセスできる。ボルトBは、例えばボルトヘッドの上面に六角穴が設けられた六角穴付きボルトである。工具アクセス孔71は、ボルトBの六角穴よりも大きく、且つ、ボルトヘッドよりも小さい。作業者は工具を工具アクセス孔71に挿通させ、工具を用いてボルトBを締結したり緩めたりする。
【0027】
カバー70には、水平方向に突出した突起部72が4つ設けられている(
図5では3つのみ図示)。突起部72は、カバー70の左側部において前後方向に離れて設けられた一対の第1突起部72Aと、カバー70の右側部において前後方向に離れて設けられた一対の第2突起部72Bと、を含む。また、突起部72は、上下方向において、カバー70の上面から離れて設けられている。一対の第1突起部72Aは、一対の第1ガイド溝61Aに係合し、第1ガイド溝61Aに沿って移動する。また、一対の第2突起部72Bは、一対の第2ガイド溝61Bに係合し、第2ガイド溝61Bに沿って移動する。突起部72は、カバー70の移動をガイドするガイドピンとして機能する。
【0028】
また、カバー70の上面には、ガイド溝61の一部が嵌め込まれる嵌込孔73が前後方向に離れて2つ設けられている。詳細は後述するが、カバー70がガイド溝61の縦溝612に沿って導電接続部材50側に移動したとき、
図4に示すように、ガイド溝61の一部が嵌込孔73に嵌め込まれる。これにより、カバー70が導電接続部材50側に移動しても、カバー70とガイド溝61とが干渉しない。
【0029】
図6に示すように、一対の第1ガイド溝61Aに設けられた切り欠き部62と一対の第2ガイド溝61Bに設けられた切り欠き部62との距離L1は、一対の第1突起部72Aと一対の第2突起部72Bとの距離L2と異なる。本実施形態では、距離L1が距離L2よりも長い。このような構成によると、突起部72を切り欠き部62からガイド溝61に導入するとき、例えば、先ず一対の第1突起部72Aを切り欠き部62から一対の第1ガイド溝61Aに導入する。次に、一対の第1ガイド溝61A内で一対の第1突起部72Aをスライド移動させ、一対の第2突起部72Bを切り欠き部62から一対の第2ガイド溝61Bに導入する。したがって、第1突起部72A及び第2突起部72Bのうちいずれか一方が切り欠き部62から外れた場合であっても、カバー70はガイド溝61に保持され続け、カバー70が安易に外れてしまうことを抑制できる。
【0030】
図7は、突起部72が切り欠き部62からガイド溝61に導入された後における、カバー70の移動を示した図である。
図7に示すように、カバー70は、ボルトBから離間して配置され、且つ、工具アクセス孔71及びボルトBが対向する第1位置P1と、工具アクセス孔71及びボルトBが対向しない第2位置P2と、を遷移可能に構成される。そして、第2位置P2におけるカバー70は、第1位置P1におけるカバー70よりも導電接続部材50側(本実施形態では下側)に位置する。
【0031】
以下、第1位置P1から第2位置P2までのカバー70の遷移について、詳しく説明する。カバー70が第1位置P1にあるとき、作業者は工具を用いてボルトBを導電接続部材50に締結したり緩めたりできる。第1位置P1では、突起部72は、ガイド溝61の横溝611に配置されている。第1位置P1では、カバー70はボルトBから離間して配置されているので、工具アクセス孔71とボルトBとの間に安全スペースS0が設けられる。安全スペースS0は、作業者の指(
図7中の符号F)等が誤って工具アクセス孔71から侵入しても活電部(ボルトBや導電接続部材50)に接触することを防止できる大きさのスペースであり、安全性確保のために設けられている。
【0032】
作業者が工具を用いてボルトBを導電接続部材50に締結した後、作業者は工具を工具アクセス孔71から抜き、カバー70を横溝611に沿って水平方向(
図7では右方向)に移動させる。カバー70の突起部72が縦溝612に到達した後、カバー70は縦溝612に沿って導電接続部材50側に(下方に)移動し、第2位置P2に位置する。カバー70は導電接続部材50側に移動する前に水平方向に移動するので、工具アクセス孔71と活電部とは対向しなくなる。よって、カバー70が導電接続部材50側に移動したとしても、作業者の指Fが誤って工具アクセス孔71から侵入しても活電部に接触することを防止できる。
【0033】
第2位置P2は、工具がボルトBにアクセスできない位置であり、カバー70の装着が完了した位置である。本実施形態では、カバー70が第2位置P2に位置するとき、
図4に示すように、上下方向において、カバー70の上面の位置とセル群2A~2Dの上面の位置が略同一となる。
【0034】
このように、突起部72がガイド溝61に沿って移動することで、カバー70は第1位置P1から第2位置P2に遷移する。突起部72と係合したガイド溝61に沿ってカバー70は移動するので、カバー70は安易に外れない状態で第1位置P1から第2位置P2に遷移できる。なお、図示は省略するが、突起部72をガイド溝61の縦溝612から横溝611へ移動させることで、カバー70を第2位置P2から第1位置P1へも遷移可能である。
【0035】
以上説明したとおり、作業者が工具を用いてボルトBを導電接続部材50に締結したり緩めたりしてメンテナンス作業を行うとき、作業者の指等が誤って活電部に接触しないよう、カバー70はボルトBから離間して配置されている。よって、カバー70から活電部までのスペースが安全スペースS0となり、作業の安全性を確保できる。さらに、作業の終了後、カバー70を第1位置P1から第2位置P2まで移動させることでカバー70を第1位置P1よりも導電接続部材50側に位置させる。よって、作業の終了後にはカバー70から活電部までの安全スペースS0を小さくでき、省スペース化を図ることができる。
【0036】
ここで、省スペース化について、バッテリケース3のバッテリカバー3aと併せて具体的に説明する。導電接続アセンブリのカバーから活電部まで安全スペースが設けられており、且つ、導電接続アセンブリのカバーが第1位置P1から第2位置P2まで遷移できない構成である場合を考える。このような構成では、カバーは常に第1位置P1に位置するので、メンテナンス作業の終了後であっても、カバーから活電部までの間には安全スペースが維持される。よって、バッテリカバー3aの高さ位置は、第1位置P1におけるカバーの高さ位置よりも高く設計される。
【0037】
一方、本実施形態では、メンテナンス作業の終了後に導電接続アセンブリ5のカバー70が第1位置P1から第2位置P2まで遷移する。第2位置P2ではカバー70が導電接続部材50側に位置するので、高さ方向において省スペース化を図ることができる。本実施形態では、第2位置P2に位置しているカバー70を考慮してバッテリカバー3aの高さ位置を設計できる。例えば、
図7に示すように、バッテリカバー3aの高さ位置は、第1位置P1におけるカバー70の高さ位置よりも低く、且つ、第2位置P2におけるカバー70の高さ位置よりも高い位置に設計すればよい。
【0038】
図4及び
図5に戻り、導電接続アセンブリ5のインターロック部80は、プレート形状を有し、保持部60から延在して設けられている。インターロック部80は、中間横フレーム35に上下方向に対向して設けられており、中間横フレーム35に設けられたボルトB0を覆う。
【0039】
図8は、
図4中のX-X線断面図である。
図8に示すように、ボルトB0は、バッテリカバー3aの一部品であるカバー支持部3bを中間横フレーム35に固定する締結部材である。本実施形態では、インターロック部80がボルトB0を覆っているので、インターロック部80を取り外さない限り、すなわち導電接続アセンブリ5を取り外さない限り、作業者はボルトB0にアクセスできず、ボルトB0を取り外せない構成となっている。換言すると、インターロック部80は、導電接続アセンブリ5を取り外した後にボルトB0を取り外すという作業の順番を規制する。
【0040】
《第2実施形態》
続いて、本発明の第2実施形態である導電接続アセンブリ5について説明する。なお、第1実施形態と共通の構成については、共通の符号を付してその説明を省略する。
【0041】
図9に示すように、第2実施形態の導電接続アセンブリ5も、第1実施形態と同様に、第1セル群2Aと第2セル群2Bとの間に配置される中間横フレーム35の上方に設けられている。
図10に示すように、導電接続アセンブリ5は、導電接続部材50と、保持部60Xと、カバー70Xと、インターロック部80Xと、を備える。
【0042】
保持部60Xは、中間横フレーム35の上部に配置され、導電接続部材50を保持する。また、保持部60Xの中央部には、円柱形状のカバー支持部63Xが設けられている。カバー支持部63Xの上部には断面円形状の凹部64Xが設けられており、後述するカバー70Xの凸部74Xが凹部64Xに嵌め込まれることで、カバー70Xが保持部60Xに支持される。より詳細には、カバー70Xは、円柱状の凸部74Xの中心軸回り(すなわち鉛直方向に延びる軸回り)に回転可能に保持部60Xに支持される。
【0043】
保持部60Xには、カバー70Xの移動をガイドするガイド溝61Xが設けられている。詳細には、ガイド溝61Xは、保持部60Xのカバー支持部63Xの外周面に形成されている。ガイド溝61Xは、カバー支持部63Xの外周面上部において、外周に沿って水平方向に延びる横溝611Xと、横溝611Xから導電接続部材50側(本実施形態では下側)に延びる一対の縦溝612Xと、により構成される。一対の縦溝612Xは、カバー支持部63Xの外周面のうち左側及び右側に設けられる。
【0044】
カバー70Xは、保持部60Xに対して取り外し可能に設けられており、導電接続部材50を覆う。カバー70Xの上面には、工具アクセス孔71X(
図9参照)が設けられており、絶縁性の工具が工具アクセス孔71Xを挿通してボルトBにアクセスできる。
【0045】
カバー70Xは、プレート本体部75Xと、プレート本体部75Xの下面から突出して設けられ、保持部60Xの凹部64Xに嵌め込まれる凸部74Xと、プレート本体部75Xの下面から突出して設けられ、工具アクセス孔71Xに連通する工具ガイド部76Xと、作業者がつまんでカバー70Xを手動で回転させることができるつまみ部77X(
図9参照)と、を有する。プレート本体部75Xは、導電接続部材50を覆うことができる径の大きさの円形状を有する。凸部74Xは、保持部60Xの断面円形状の凹部64Xに嵌め込み可能なように、凹部64Xと略同一の径を有する円柱状に形成される。カバー70Xは、凸部74Xの中心軸回りに回転する。工具ガイド部76Xは、ボルトBの位置に対応して2つ設けられており、ボルトBと対向するときに、工具アクセス孔71XからボルトBまで工具をガイドする。つまみ部77Xは、プレート本体部75Xの上部における中央に設けられている。
【0046】
カバー70Xの工具ガイド部76Xには、水平方向且つカバー支持部63Xに向かって突出した突起部72Xが2つ設けられている。突起部72Xは、各工具ガイド部76Xに設けられており、各突起部72Xは互いに対向して設けられている。突起部72Xは、ガイド溝61Xに係合し、ガイド溝61Xに沿って移動することでカバー70Xの移動をガイドする。
【0047】
図11に示すように、カバー70Xは、ボルトBから離間して配置され、且つ、工具アクセス孔71X及びボルトBが対向する第1位置P1と、工具アクセス孔71X及びボルトBが対向しない第2位置P2と、を遷移可能に構成される。そして、第2位置P2におけるカバー70Xは、第1位置P1におけるカバー70Xよりも導電接続部材50側(本実施形態では下側)に位置する。
【0048】
以下、第1位置P1から第2位置P2までのカバー70Xの遷移について、詳しく説明する。カバー70Xが第1位置P1にあるとき、作業者は工具を用いてボルトBを導電接続部材50に締結したり緩めたりできる。第1位置P1では、突起部72Xは、ガイド溝61Xの横溝611Xに配置されている。第1位置P1では、カバー70XはボルトBから離間して配置されているので、工具アクセス孔71XとボルトBとの間に安全スペースS0が設けられる。安全スペースS0は、作業者の指等が誤って工具アクセス孔71Xから侵入しても活電部に接触することを防止できる大きさのスペースであり、安全性確保のために設けられている。
【0049】
作業者が工具を用いてボルトBを導電接続部材50に締結した後、つまみ部77Xをつまんで凸部74Xの中心軸回りに90°回転させると、カバー70Xは横溝611Xに沿って回転する。カバー70Xの突起部72Xが縦溝612Xに到達した後、カバー70Xは縦溝612Xに沿って導電接続部材50側に(下方に)移動し、第2位置P2に位置する。
【0050】
第2位置P2は、工具がボルトBにアクセスできない位置であり、カバー70Xの装着が完了した位置である。本実施形態では、カバー70Xが第2位置P2に位置するとき、
図9に示すように、上下方向において、カバー70Xの上面の位置とセル群2A~2Dの上面の位置が略同一となる。
【0051】
突起部72Xがガイド溝61Xに沿って移動することで、カバー70Xは第1位置P1から第2位置P2に遷移する。なお、図示は省略するが、突起部72Xをガイド溝61Xの縦溝612Xから横溝611Xへ移動させることで、カバー70Xを第2位置P2から第1位置P1へも移動可能である。
【0052】
以上説明した第2実施形態の導電接続アセンブリ5によっても、第1実施形態の導電接続アセンブリ5と同様に、作業の安全性を確保でき、また、省スペース化を図ることができる。
【0053】
図9及び
図10に戻り、導電接続アセンブリ5のインターロック部80Xは、カバー70Xの工具ガイド部76Xにより構成される。カバー70Xが第2位置P2にあるとき、インターロック部80X(工具ガイド部76X)は、中間横フレーム35に設けられたボルトB0を上方から覆う。第1実施形態の場合と同様に、インターロック部80Xは、導電接続アセンブリ5を取り外した後にボルトB0を取り外すという作業の順番を規制する。
【0054】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0055】
例えば、前述した実施形態では、セル群2A~2Dを構成するセルとしてラミネート型セル2を一例に説明したが、これに限られず、例えば角型セル等であってもよい。
【0056】
また、前述した実施形態では、カバー70、70Xに突起部72、72Xを設け、保持部60、60Xにガイド溝61、61Xを設けたが、これに限られない。例えば、カバー70及びカバー70Xにガイド溝を設け、保持部60、60Xに突起部を設ける構成であってもよい。
【0057】
また、前述した実施形態では、カバー70が導電接続部材50の上方に設けられており、第2位置P1におけるカバー70、70Xは、第1位置P1におけるカバー70、70Xよりも導電接続部材50側として下側に位置したが、これに限られない。例えば、カバー70を導電接続部材50の側方に設ける場合には、第2位置P1におけるカバー70、70Xは、第1位置P1におけるカバー70、70Xよりも導電接続部材50側、すなわち、導電接続部材50に近づければよい。この構成によっても、導電接続部材50の側方部分の省スペース化を図ることができる。
【0058】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0059】
(1) 積層された複数のバッテリセル(ラミネート型セル2)を含むセル群(セル群2A~2D)に接続される導電接続アセンブリ(導電接続アセンブリ5)であって、
前記セル群に接続される導電接続部材(導電接続部材50)と、
前記導電接続部材を覆うカバー(カバー70)と、を備え、
前記導電接続部材は、締結部材(ボルトB)により前記セル群に接続され、
前記カバーには、前記締結部材を締結するための工具が挿通可能な挿通孔(工具アクセス孔71、71X)が設けられており、
前記カバーは、前記締結部材から離間して配置され、且つ、前記挿通孔及び前記締結部材が対向する第1位置(第1位置P1)と、前記挿通孔及び前記締結部材が対向しない第2位置(第2位置P2)と、を遷移可能であり、
前記第2位置における前記カバーは、前記第1位置における前記カバーよりも前記導電接続部材側に位置する、
導電接続アセンブリ。
【0060】
(1)によれば、カバーが挿通孔及び締結部材が対向する第1位置にあるとき、カバーは締結部材から離間して配置されるので、カバーから活電部までのスペースが安全スペースとなり、作業者が工具を用いて作業を行う際に作業者の指等が誤って活電部に接触することを防止できる。よって、作業の安全性を確保できる。さらに、カバーは挿通孔及び締結部材が対向しない第2位置に遷移可能であり、第2位置にあるとき、カバーは導電接続部材側に位置するので、カバーから活電部までの安全スペースを小さくでき、省スペース化を図ることができる。
【0061】
(2) (1)に記載の導電接続アセンブリであって、
前記導電接続部材を保持する保持部(保持部60、60X)をさらに備え、
前記カバー及び前記保持部のうち、一方には突起部(突起部72、72X)が設けられ、他方には前記突起部と係合可能なガイド溝(ガイド溝61、61X)が設けられ、
前記突起部が前記ガイド溝に沿って移動することで、前記カバーは前記第1位置と前記第2位置との間で遷移する、
導電接続アセンブリ。
【0062】
(2)によれば、突起部と係合したガイド溝に沿ってカバーは移動するので、カバーは安易に外れない状態で第1位置と第2位置との間で遷移できる。
【0063】
(3) (1)又は(2)に記載の導電接続アセンブリであって、
前記カバーは、前記第1位置から前記第2位置に遷移するとき、水平方向に移動し、且つ、前記導電接続部材側に移動する、
導電接続アセンブリ。
【0064】
(3)によれば、作業の安全性を確保できる第1位置から省スペース化を図れる第2位置へのカバーの遷移を、水平方向への移動と導電接続部材側への移動により行うことができる。
【0065】
(4) (1)又は(2)に記載の導電接続アセンブリであって、
前記カバーは、前記第1位置から前記第2位置に遷移するとき、鉛直方向に延びる軸回りに回転し、且つ、前記導電接続部材側に移動する、
導電接続アセンブリ。
【0066】
(4)によれば、作業の安全性を確保できる第1位置から省スペース化を図れる第2位置へのカバーの遷移を、鉛直方向に延びる軸回りの回転と導電接続部材側への移動により行うことができる。
【0067】
(5) (1)から(4)のいずれかに記載の導電接続アセンブリであって、
前記導電接続アセンブリは、前記セル群を備えるバッテリパック(バッテリパック1)に設けられ、
前記導電接続アセンブリは、前記バッテリパックに設けられる他の締結部材(ボルトB0)を覆うインターロック部(インターロック部80、80X)をさらに備える、
導電接続アセンブリ。
【0068】
(5)によれば、導電接続アセンブリは、バッテリパックのインターロック機能を兼ねることができるので、インターロック機能を備えた部品を導電接続アセンブリとは別に設ける必要がなく、省スペース化を図ることができる。
【符号の説明】
【0069】
1 バッテリパック
2 ラミネート型セル(バッテリセル)
2A~2D セル群
5 導電接続アセンブリ
50 導電接続部材
60、60X 保持部
61、61X ガイド溝
70、70X カバー
71、71X 工具アクセス孔(挿通孔)
72、72X 突起部
80、80X インターロック部
B ボルト(締結部材)
B0 ボルト(他の締結部材)
P1 第1位置
P2 第2位置