(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】管理装置、測位システム、管理システム、及び管理方法
(51)【国際特許分類】
G01S 19/11 20100101AFI20241120BHJP
G01S 19/05 20100101ALI20241120BHJP
G01S 19/43 20100101ALI20241120BHJP
G01S 5/14 20060101ALI20241120BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20241120BHJP
【FI】
G01S19/11
G01S19/05
G01S19/43
G01S5/14
G05D1/43
(21)【出願番号】P 2022211884
(22)【出願日】2022-12-28
【審査請求日】2023-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】津野 康一
(72)【発明者】
【氏名】松久 哲也
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-061509(JP,A)
【文献】特開2019-033323(JP,A)
【文献】特開2000-206222(JP,A)
【文献】再公表特許第2006/046298(JP,A1)
【文献】中国特許出願公開第106658707(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00-G01S 5/30
G01S 19/00-G01S 19/55
H04B 7/24-H04B 7/26
H04W 4/00-H04W 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを有する管理装置であって、
前記プロセッサが、
自律移動が可能であり且つ測位の基地局の機能を有する複数の移動機の運行計画のデータに基づき、所定の期間における運行の予定が無い第1の移動機を特定し、
前記複数の移動機が運行するエリアのデータに基づき、第1の条件を満たす第1の位置を特定し、
前記所定の期間において前記第1の移動機を前記基地局として動作させる指示を、前記第1の移動機に対して送信
し、
前記指示は、前記第1の位置への移動指示を含み、
前記プロセッサが、
前記第1の位置に移動した前記第1の移動機から、前記第1の位置の周囲環境のデータを受信し、
前記周囲環境のデータが第2の条件を満たす場合に、前記複数の移動機が運行するエリアのデータに基づき、前記第1の条件を満たし且つ前記第1の位置とは異なる第2の位置を特定する、
管理装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の管理装置であって、
前記第1の条件が、前記第1の位置の周囲にある物体と前記第1の移動機との仰角についての条件、及び、前記第1の位置の周囲にある前記物体の高さについての条件、の少なくともいずれかを含む、
管理装置。
【請求項3】
請求項
2に記載の管理装置であって、
前記第1の位置の周囲にある前記物体は、建造物である、
管理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の管理装置であって、
前記プロセッサが、前記第1の移動機のバッテリーの残量が所定量未満であるか判定し、前記残量が前記所定量未満である場合、前記所定の期間の残りの期間において運行の予定が無い第2の移動機を特定する、
管理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の管理装置であって、
前記測位は、RTK-GNSS(Real Time Kinematic Global Navigation Satellite System)である、
管理装置。
【請求項6】
測位システムであって、
請求項1に記載の前記管理装置と、
請求項1に記載の前記複数の移動機と、
を有する測位システム。
【請求項7】
コンピュータにより実行される管理方法であって、
自律移動が可能であり且つ測位の基地局の機能を有する複数の移動機の運行計画のデータに基づき、所定の期間における運行の予定が無い第1の移動機を特定し、
前記複数の移動機が運行するエリアのデータに基づき、第1の条件を満たす第1の位置を特定し、
前記所定の期間において前記第1の移動機を前記基地局として動作させる指示を、前記第1の移動機に対して送信
し、
前記指示は、前記第1の位置への移動指示を含み、
前記コンピュータが、
前記第1の位置に移動した前記第1の移動機から、前記第1の位置の周囲環境のデータを受信し、
前記周囲環境のデータが第2の条件を満たす場合に、前記複数の移動機が運行するエリアのデータに基づき、前記第1の条件を満たし且つ前記第1の位置とは異なる第2の位置を特定する、
管理方法。
【請求項8】
複数の自律移動機と、情報処理装置と、を備える管理システムであって、
複数の前記自律移動機は、それぞれ
自律移動を制御する自律移動制御部と、
衛星測位システムにおける衛星からの信号を受信する受信部と、を備え、
前記情報処理装置は、
前記複数の自律移動機の運行計画のデータに基づき、所定の期間における運行の予定が無い第1自律移動機を特定し、
前記第1自律移動機を所定の地理的位置に移動させ、当該所定の地理的位置にてサーベイインさせる指示を、前記第1自律移動機に対して送信する、
管理システム。
【請求項9】
複数の自律移動機と、情報処理装置と、を備える管理システムであって、
複数の前記自律移動機は、それぞれ
自律移動を制御する自律移動制御部と、
衛星測位システムにおける衛星からの信号を受信する受信部と、を備え、
前記情報処理装置は、
前記複数の自律移動機の運行計画のデータに基づき、所定の期間における運行の予定が無い第1自律移動機を特定し、
前記第1自律移動機を所定の地理的位置に移動させ、
前記所定の地理的位置にて前記第1自律移動機のバッテリーの残量が所定量未満となった場合に、前記所定の地理的位置への移動指示を、前記第1自律移動機とは異なる第2自律移動機に対して送信する、
管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理装置、測位システム、管理システム、及び管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
相対測位方式は、複数の受信機が受信する複数の衛星からの信号に基づき受信機間の相対的な位置関係を求める測位方式である。例えばRTK-GNSS(Real Time Kinematic Global Navigation Satellite System)においては、位置が既知である基地局と位置が既知ではない移動局とが衛星から受信する信号を利用して測位が行われる。
【0003】
相対測位方式は、GPS(Global Positioning System)等の単独測位方式に比べて測位が高精度であるため、様々な産業分野への応用が期待されている。
【0004】
特許文献1は、基地局装置を開示する。当該基地局装置は、二次電池と、二次電池から供給される電力を変換する電力変換部と、他装置とのアドホック通信を行う通信部と、自律的に自装置を移動させるための駆動部と、を筐体内に収容した一体的なユニットを含む。
【0005】
特許文献2は、運行管理システムを開示する。当該運行管理システムは、作業エリアに接続された搬送路を走行して運搬対象物を搬送する複数の運搬車両と、作業エリアに常駐する常駐車両と、運搬車両と常駐車両とを管理する管制システムと、運搬車両と管制システムとの間で行われる無線通信を中継する無線中継局とを有する。当該運行管理システムにおいて、複数の運搬車両のそれぞれに無線通信を行うための無線通信装置が配設される。当該運行管理システムは、常駐車両に無線中継局を搭載し、無線中継局にアクセスする運搬車両を運搬車両の車体情報に基づいて決定する。
【0006】
特許文献3は、サーバ装置を開示する。当該サーバ装置は、無線通信部を備えた複数台の自律走行装置と無線基地局を介して通信し、自律走行装置毎に動作を指示する。自律走行装置の無線通信部が、無線基地局と別の自律走行装置に設けられた他の無線通信部との通信を中継する中継機能を有し、当該自律走行装置の位置情報及び無線通信用電波の受信強度の情報を前記サーバ装置に送信する。サーバ装置は、目的地が無線基地局による無線通信エリアの外側にある場合にいずれかの自律走行装置が別の自律走行装置の中継機能を利用し目的地に到達するよう、位置情報及び受信強度の情報に基づいて、動作を指示する情報を自律走行装置に送信する通信部を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2019-33323号公報
【文献】特開2016-146010号公報
【文献】特開2017-033121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
地表にある建造物や樹木が衛星からの信号を遮ることがあるため、基地局が設置される場所によって、測位の精度および測位が可能なエリアの広さは変わる。
【0009】
本発明は、より広範囲で高精度の測位を可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明は、
プロセッサを有する管理装置であって、
前記プロセッサが、
自律移動が可能であり且つ測位の基地局の機能を有する複数の移動機の運行計画のデータに基づき、所定の期間における運行の予定が無い第1の移動機を特定し、
前記複数の移動機が運行するエリアのデータに基づき、第1の条件を満たす第1の位置を特定し、
前記所定の期間において前記第1の移動機を前記基地局として動作させる指示を、前記第1の移動機に対して送信し、
前記指示は、前記第1の位置への移動指示を含み、
前記プロセッサが、
前記第1の位置に移動した前記第1の移動機から、前記第1の位置の周囲環境のデータを受信し、
前記周囲環境のデータが第2の条件を満たす場合に、前記複数の移動機が運行するエリアのデータに基づき、前記第1の条件を満たし且つ前記第1の位置とは異なる第2の位置を特定する、
管理装置である。
第2発明は、
測位システムであって、
上記の管理装置と、
上記の複数の移動機と、
を有する測位システムである。
第3発明は、
コンピュータにより実行される管理方法であって、
自律移動が可能であり且つ測位の基地局の機能を有する複数の移動機の運行計画のデータに基づき、所定の期間における運行の予定が無い第1の移動機を特定し、
前記複数の移動機が運行するエリアのデータに基づき、第1の条件を満たす第1の位置を特定し、
前記所定の期間において前記第1の移動機を前記基地局として動作させる指示を、前記第1の移動機に対して送信し、
前記指示は、前記第1の位置への移動指示を含み、
前記コンピュータが、
前記第1の位置に移動した前記第1の移動機から、前記第1の位置の周囲環境のデータを受信し、
前記周囲環境のデータが第2の条件を満たす場合に、前記複数の移動機が運行するエリアのデータに基づき、前記第1の条件を満たし且つ前記第1の位置とは異なる第2の位置を特定する、
管理方法である。
第4発明は、
複数の自律移動機と、情報処理装置と、を備える管理システムであって、
複数の前記自律移動機は、それぞれ
自律移動を制御する自律移動制御部と、
衛星測位システムにおける衛星からの信号を受信する受信部と、を備え、
前記情報処理装置は、
前記複数の自律移動機の運行計画のデータに基づき、所定の期間における運行の予定が無い第1自律移動機を特定し、
前記第1自律移動機を所定の地理的位置に移動させ、当該所定の地理的位置にてサーベイインさせる指示を、前記第1自律移動機に対して送信する、
管理システム。
第5発明は、
複数の自律移動機と、情報処理装置と、を備える管理システムであって、
複数の前記自律移動機は、それぞれ
自律移動を制御する自律移動制御部と、
衛星測位システムにおける衛星からの信号を受信する受信部と、を備え、
前記情報処理装置は、
前記複数の自律移動機の運行計画のデータに基づき、所定の期間における運行の予定が無い第1自律移動機を特定し、
前記第1自律移動機を所定の地理的位置に移動させ、
前記所定の地理的位置にて前記第1自律移動機のバッテリーの残量が所定量未満となった場合に、前記所定の地理的位置への移動指示を、前記第1自律移動機とは異なる第2自律移動機に対して送信する、
管理システムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、より広範囲で高精度の測位が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施の形態に係るシステムの概要を示す図である。
【
図2】管理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】管理装置の機能ブロック図の一例を示す図である。
【
図4】自律移動機のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図5】自律移動機の機能ブロック図の一例を示す図である。
【
図6】未使用の自律移動機を基地局として動作させる処理のフローを示す図である。
【
図7】アンテナの位置と衛星の位置との関係を示す図である。
【
図8】自律移動機の移動について説明するための図である。
【
図9】本実施の形態における測位の概要を示す図である。
【
図10】自律移動機を交代する処理のフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、本実施の形態のシステムの概要を示す図である。本実施の形態のシステムは、管理装置1と、1又は複数の自律移動機(
図1の例では、自律移動機21、22)とを含む。管理装置1と自律移動機21、22とは、インターネット等のネットワーク5を介して通信することができる。
図1の例では自律移動機の数は2であるが、3以上であってもよい。自律移動機21、22は、建設現場、農場および港湾などの作業場所において、荷物、資材および機器等を運ぶために移動する。
【0014】
自律移動機21、22はRTK-GNSSのアンテナを有し、管理装置1はRTK-GNSSを利用して自律移動機21、22の位置を把握することができる。自律移動機21、22が動作する作業場所には、地表に設置された、RTK-GNSSの固定基地局が設けられてもよい。
【0015】
管理装置1は、自律移動機21、22の動作を管理する装置である。管理装置1は、各自律移動機21、22に動作モードを設定し、動作モードに従って動作するように自律移動機21、22を制御する。本実施の形態において、動作モードは、基地局モードと、移動局モードとを含む。基地局モードにおいて、自律移動機21、22はRTK-GNSSの基地局として動作する。移動局モードにおいて、自律移動機21、22はRTK-GNSSの移動局として動作する。また、管理装置1は、移動先、移動先までのルート、移動開始時刻および移動速度などの情報を含む移動指示を自律移動機21、22に送信し、自律移動機21、22を移動させる。
【0016】
自律移動機21、22は、自律移動が可能な移動体である。自律移動とは、人の操縦によらない移動のことである。自律移動機21,22は、予めインストールされたプログラムに従って移動することが可能であり、また、管理装置1からの移動指示に従って移動することも可能である。
【0017】
基地局モードにおける自律移動機21、22は、管理装置1から指定された位置に移動すると移動を停止し、その位置においてRTK-GNSSの基地局として動作する。自律移動機21、22は、移動局モードおよび基地局モードのいずれでもない場合、例えば作業場所の所定の位置において待機する。自律移動機21、22は、待機中は移動せず、また基地局として動作することもない。自律移動機21、22は、待機中に充電されることによって、予め決められた計画における次の動作の開始に備える。
【0018】
図2は、管理装置1のハードウェア構成の一例を示す図である。管理装置1は、プロセッサ11と、メモリ12と、通信インタフェース13と、ユーザインタフェース14とを備える。プロセッサ11、メモリ12、通信インタフェース13、及びユーザインタフェース14は、例えばバス19によって接続される。
【0019】
プロセッサ11は信号処理を行う回路であり、例えば、管理装置1の全体の制御を行うCPU(Central Processing Unit)である。プロセッサ11は、FPGA(Field Programmable Gate Array)またはDSP(Digital Signal Processor)などの他のデジタル回路により実現されてもよい。また、プロセッサ11は、複数のデジタル回路を組み合わせて実現されてもよい。
【0020】
メモリ12には、例えばメインメモリ及び補助メモリが含まれる。メインメモリは、例えばRAM(Random Access Memory)である。メインメモリは、プロセッサ11のワークエリアとして使用される。
【0021】
補助メモリは、非一時的でコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であり、例えば、磁気ディスク、光ディスク、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリである。補助メモリには、管理装置1を動作させる各種のプログラムが記憶されている。補助メモリに記憶されたプログラムは、メインメモリにロードされてプロセッサ11によって実行される。
【0022】
また、補助メモリは、管理装置1から取り外し可能な可搬型のメモリを含んでもよい。可搬型のメモリは、例えば、USB(Universal Serial Bus)フラッシュドライブ、SD(Secure Digital)メモリカードなどのメモリカード、又は外付けハードディスクドライブである。
【0023】
通信インタフェース13は、管理装置1の外部(例えば自律移動機21、22)との間で通信を行う通信インタフェースである。通信インタフェース13は、プロセッサ11によって制御される。
【0024】
ユーザインタフェース14は、例えば、ユーザ(例えば管理装置1を操作する人)からの操作入力を受け付ける入力デバイス、及び情報を出力する出力デバイスなどを含む。入力デバイスは、例えば、ポインティングデバイス(例えばマウス)、キー(例えばキーボード)、又はリモコンなどにより実現される。出力デバイスは、例えば、ディスプレイ又はスピーカなどにより実現される。また、タッチパネルなどによって入力デバイス及び出力デバイスの両方を実現してもよい。ユーザインタフェース14は、プロセッサ11によって制御される。
【0025】
図3は、管理装置1の機能ブロック図の一例を示す図である。管理装置1においては、プログラム(ソフトウエア)がプロセッサ11に実行されることで
図3に示す第1管理部151、第2管理部152、第3管理部153、及び第4管理部154の機能が実現される。データ格納部155は、メモリ12に実現される。
【0026】
第1管理部151は、データ格納部155に格納されているデータに基づき、基地局モードで動作する自律移動機を特定する処理、及び当該自律移動機が動作する場所である候補地を特定する処理などを実行する。
【0027】
第2管理部152は、データ格納部155に格納されているデータに基づき、自律移動機21、22の配置を管理する処理などを実行する。
【0028】
第3管理部153は、データ格納部155に格納されているデータ及び自律移動機21、22から受信したデータに基づき、基地局モードの自律移動機が動作する場所として候補地に問題が無いか確認する処理などを実行する。
【0029】
第4管理部154は、データ格納部155に格納されているデータに基づき、自律移動機を交代する処理などを実行する。
【0030】
データ格納部155は、作業場の点群データ、管理対象の自律移動機の一覧のデータ、各自律移動機の運行計画のデータ、各自律移動機のバッテリー残量を特定するためのデータ、及び各自律移動機の状態(たとえば、基地局モード、移動局モード、又は待機中)を示すデータなどを格納する。
【0031】
図4は、自律移動機21、22のハードウェア構成の一例を示す図である。自律移動機21、22は、プロセッサ211と、メモリ212と、無線通信インタフェース213と、センサ214と、移動機構215と、を備える。プロセッサ211、メモリ212、無線通信インタフェース213、センサ214、移動機構215、及びアンテナは、例えばバス219によって接続される。
【0032】
自律移動機21、22のプロセッサ211及びメモリ212は、それぞれ管理装置1のプロセッサ11及びメモリ12と同様の構成を有する。
【0033】
無線通信インタフェース213は、自律移動機21、22の外部(例えば管理装置1)との間で無線通信を行う通信インタフェースである。無線通信インタフェース213は、プロセッサ211によって制御される。
【0034】
センサ214は、自律移動機21、22の移動状態の情報及び外部の情報などを取得可能な各種のセンサを含む。センサ214はプロセッサ11によって制御され、センサ214のセンシングデータはプロセッサ11によって取得される。
【0035】
センサ214は、例えば、カメラ、LiDAR(Light Detection And Ranging)センサと、ホイールエンコーダと、IMU(Inertial Measurement Unit)とを含む。
【0036】
カメラは、画像データを取得するためのセンサである。LiDARセンサは、自律移動機21、22の外部を3次元的に認識するための3次元センサである。具体的には、LiDARセンサは、レーザ光を照射し、照射したレーザ光が物体に当たって跳ね返ってくるまでの時間を計測し、物体までの距離や方向を測定する。LiDARセンサは、例えば自律移動機21、22の前方をセンシング可能なように設けられる。LiDARセンサは、複数の方向をセンシング可能なように複数設けられていてもよい。LiDARセンサは、首振り(パンおよびチルト)やズーム等が可能であってもよい。ホイールエンコーダは、車輪の回転速度(車輪速度)を測定するセンサであり、ホイールエンコーダによる測定の結果から自律移動機21、22の車速を求めることができる。IMUは、自律移動機21、22の前後方向、左右方向及び上下方向における加速度と、ピッチ方向、ロール方向及びヨー方向における角速度を測定するセンサである。
【0037】
移動機構215は、自律移動機21、22が自律移動するための機構である。移動機構215は、例えば、車輪又は歩行用の脚である。移動機構215は、プロセッサ211によって制御される。以下の例では、移動機構15は車輪であるものとする。図示されていないが、自律移動機21、22は、モータユニット等のアクチュエータを備え、このアクチュエータによって移動機構15を駆動して移動する。
【0038】
アンテナ216は、RTK-GNSSとの間で信号の送受信をするためのアンテナである。人工衛星が送信した信号を、アンテナ216を介して通信モジュール(図示せず)が受信し、通信モジュールによって位置情報を算出することができる。算出された位置情報は、プロセッサ211によって処理されるか、又は、無線通信インタフェース213を介して管理装置1に送信される。
【0039】
図5は、自律移動機21、22の機能ブロック図の一例を示す図である。自律移動機21、22においては、プログラム(ソフトウエア)がプロセッサ211に実行されることで
図5に示す各種機能が実現される。
【0040】
移動制御部251は、データ格納部254に格納されているデータに基づき、自律移動機21、22の移動を制御する処理を実行する。
【0041】
環境データ処理部252は、データ格納部254に格納されている、センサ214によって取得されたデータを管理装置1に送信する処理などを実行する。
【0042】
測位処理部253は、データ格納部254に格納されているデータに基づき、RTK-GNSSの測位のための処理を実行する。
【0043】
データ格納部254は、作業タスクに関する情報、自機のモードに関する情報、及びセンサ214によって取得されたデータなどを格納する。
【0044】
図6は、待機中の自律移動機を基地局として動作させる処理のフローを示す図である。管理装置1の第1管理部151は、所定イベントの発生を検出する(ステップS101)。所定イベントとは、例えば、(1)基地局がカバーしているエリアの外での作業タスクが設定される、(2)基地局がダウンする(すなわち、動作できなくなる)、または(3)固定基地局の設置無しで運用を行う指示がユーザから入力される、といったイベントである。所定イベントの発生により、管理装置1の第1管理部151は、自律移動機を基地局として動作させるべきエリアおよび期間を把握できる。作業タスクとは、例えば、物を届けるというタスクである。
【0045】
管理装置1の第1管理部151は、データ格納部155に格納されている運行計画のデータに基づき、対象の期間中に待機中である(すなわち、運行の予定が無い)自律移動機を1台特定する。ここでは、特定された自律移動機が自律移動機21であるとする。そして、管理装置1の第1管理部151は、特定した自律移動機21に基地局モードを開始させる(ステップS103)。具体的には、管理装置1の第1管理部151は、基地局モードの開始の指示を自律移動機21に送信し、これに応じて自律移動機21が基地局モードを開始する。
【0046】
管理装置1の第1管理部151は、データ格納部155に格納されている点群データに基づき、ステップS103において特定された自律移動機21が基地局として動作する場所の候補を、作業場内から1つ特定する(ステップS105)。ステップS105においては、例えば、障害物が衛星から自律移動機21への信号を遮らず且つ他の自律移動機の移動ルート上ではない場所が特定される。障害物が衛星から自律移動機21への信号を遮らない場所の特定においては、1つの例として、仰角が考慮される。
図7は、自律移動機21のアンテナの位置CPと衛星の位置との関係を示す図である。例えば、アンテナの位置CPを基準として仰角30度以上に建造物や樹木などの障害物が無い、或いは比較的少ない場所が特定される。この場合、例えば、アンテナの位置CPを基準として、周囲360度の所定の仰角以上の障害物が所定数以下であること、或いは、アンテナの位置CPを基準として、周囲360度の所定の仰角以上の障害物が占める面積(体積)が所定値以下であることを条件にしてもよい。より厳しい基準として、仰角15度以上を採用してもよい。或いは、自律移動機21の半径所定長以内における障害物の高さ(メートル)が代わりに又は追加で考慮されてもよい。
【0047】
管理装置1の第1管理部151は、ステップS105において特定された候補地をユーザに提示する。そして、管理装置1の第1管理部151は、ユーザからOKの入力があった(すなわち、特定された候補地についてユーザの承認が得られた)か判定する(ステップS107)。なお、ユーザが管理装置1に対してOKの入力を行うことができないような場合、またはステップS107の処理をスキップしてもよいことをユーザが予め入力している場合には、ステップS107の処理をスキップしてもよい。
【0048】
ユーザからOKの入力がない場合(ステップS107:Noルート)、管理装置1の第1管理部151は別の候補地を特定するため、処理はステップS105に戻る。一方、ユーザからOKの入力があった場合(ステップS107:Yesルート)、処理はステップS109に移行する。なお、候補地を特定し直す場合には、ユーザが手動で候補地を入力してもよい。
【0049】
管理装置1の第2管理部152は、自律移動機21の基地局タスクを生成する(ステップS109)。基地局タスクとは、自律移動機21による基地局としての動作に関するタスクであり、例えば、ステップS105において特定された候補地の緯度および経度の情報などを含む。
【0050】
管理装置1の第2管理部152は、ステップS105において特定された候補地までの移動指示を自律移動機21に対して送信する(ステップS111)。移動指示は、ステップS109において生成された基地局タスクの情報を含む。移動指示を受信すると、自律移動機21の251は、移動機構215によって自律移動機21を候補地まで移動させる。
【0051】
図8は、自律移動機21の移動について説明するための図である。
図8において、自律移動機21は、作業場WF内を移動している。移動前においては自律移動機21が基地局として動作する場合にカバーできるエリアはエリアR1であるが、移動後においては自律移動機21が基地局として動作するとエリアR2をカバーできる。したがって、エリアR2においても他の自律移動機(例えば自律移動機22)が作業タスクを実行できるようになる。このように、本実施形態においては、対象の期間(数時間、一日、一週間など)に特定の場所において自律移動機による作業タスクを実行する必要がある場合に、基地局として動作する自律移動機21がその場所をカバーするように移動される。
【0052】
候補地まで移動すると、自律移動機21の環境データ処理部252は、自律移動機21の周囲の環境のデータ(以下、周囲環境データと呼ぶ)を取得する。周囲環境データは、例えば、カメラによって取得された画像データ及びLiDARによって取得されたデータを含む。自律移動機21の環境データ処理部252は、取得した周囲環境データを管理装置1に送信し、管理装置1の第3管理部153は、周囲環境データを受信する(ステップS113)。
【0053】
管理装置1の第3管理部153は、受信した周囲環境データに基づき、周囲環境に問題が無いか判定する(ステップS115)。周囲環境に問題がある(例えば、周囲に障害物がある)場合(ステップS115:Noルート)、処理はステップS105に戻る。なお、候補地を特定し直す場合には、ユーザが手動で候補地を入力してもよい。ステップS105の処理において点群データを用いて候補地が特定されているものの、点群データに反映されていない障害物が存在したり、周囲環境にその他の問題がある場合もあるため、ステップS115の処理が実行される。なお、ステップS115の処理に加えて、RTK-GNSSの信号の受信状態を確認する処理を実行してもよい。
【0054】
一方、周囲環境に問題が無い場合(ステップS115:Yesルート)、管理装置1の第3管理部153は、サーベイインの開始指示を自律移動機21に送信する(ステップS117)。
【0055】
サーベイインの開始指示を受信すると、自律移動機21の測位処理部253は、サーベイインを開始するとともに、基地局としての動作を開始するためのその他の処理を実行する。
図9は、本実施の形態における測位の概要を示す図である。
図9の例は、固定基地局がカバーするエリア外に自律移動機22が実行する作業タスクが設定されたケースを示している。自律移動機22は移動局モードで動作する。固定基地局がカバーするエリア内に作業タスクが設定されていれば、固定基地局が発する補正信号SG1を用いて自律移動機22の位置を特定できる。しかし、固定基地局がカバーするエリア内に作業タスクが設定されていない場合、自律移動機22の位置を特定できない。
【0056】
そこで本実施の形態においては、自律移動機21が自律移動機22にとっての基地局として動作するように、自律移動機21が移動する。自律移動機21の移動時、固定基地局が発する補正信号SG1を用いて自律移動機21の位置を特定することができる。自律移動機21は移動後、基地局としての動作を開始すると、補正信号SG2を発する。この補正信号SG2を用いて、自律移動機22の位置を正確に特定することができるようになる。よって、高精度の位置情報によって作業場内における安全な運行および遠隔制御を実現できる。
【0057】
また、作業上の必要性に応じて、作業可能なエリアを動的に拡大することが可能になる。
【0058】
また、固定基地局の設置には比較的に多くのコストがかかるが、自律移動機21を基地局として動作させることにより、コストを低減させることができる。さらに、メンテナンスにかかるコストも削減することができる。
【0059】
図10は、自律移動機を交代する処理の処理フローを示す図である。本フローの処理は、例えば所定時間が経過する度に実行される。管理装置1の第4管理部154は、データ格納部155に格納されているモード管理データに基づき、作業場において基地局モードである(すなわち、基地局として動作する)自律移動機を特定する(ステップS131)。
【0060】
管理装置1の第4管理部154は、特定された自律移動機のバッテリー残量が所定量未満であるか判定する(ステップS133)。バッテリー残量の情報は、自律移動機から定期的に提供されてもよいし、基地局モードの開始時の残量と開始から経過した時間とに基づき算出されてもよい。
【0061】
バッテリー残量が所定量未満ではない場合(ステップS133:Noルート)、作業機を交代しなくてもよいので、処理は終了する。一方、バッテリー残量が所定量未満である場合(ステップS133:Yesルート)、管理装置1の第4管理部154は、特定された自律移動機に代わって基地局として動作する自律移動機の設定を行う(ステップS135)。ステップS135においては、例えば、対象の期間の残りの期間において待機中である(すなわち運行の予定が無い)自律移動機の基地局タスクを生成し、ステップS131において特定された自律移動機がいる場所までの移動指示を送信する。また、ステップS131において特定された自律移動機に対しては、代わりの自律移動機が到着後に基地局モードを終了して所定場所で待機するように指示をする。
【0062】
以上のような処理を実行すれば、バッテリーの制約がある自律移動機を基地局として使用する場合においても、作業タスクの実行中に基地局が動作を停止することを防げるようになる。なお、ここでは基地局モードの自律作業機について交代を行う例を示したが、移動局モードの自律作業機についても同様の処理によって交代を行うようにしてもよい。
【0063】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0064】
なお、測位方式はRTK-GNSSに限られない。基地局(或いは基準点)を利用するその他の相対測位方式を使用することも可能である。
【0065】
また、本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0066】
(1)プロセッサ(プロセッサ11)を有する管理装置(管理装置1)であって、
前記プロセッサが、
自律移動が可能であり且つ測位の基地局の機能を有する複数の移動機の運行計画のデータに基づき、特定の期間における運行の予定が無い第1の移動機を特定し、(ステップS103)
前記特定の期間において前記第1の移動機を前記基地局として動作させる指示を、前記第1の移動機に対して送信する、(ステップS111)
管理装置。
【0067】
(1)によれば、運行の予定が無い移動機が基地局として動作するので、測位が可能なエリアをより柔軟に設定できるようになる。よって、より広範囲において高精度の測位が可能となる。
【0068】
(2)(1)に記載の管理装置であって、
前記プロセッサが、前記複数の移動機が運行するエリアのデータに基づき、第1の条件を満たす第1の位置を特定し、
前記指示は、前記第1の位置への移動指示を含む、
管理装置。
【0069】
複数の移動機が運行するエリアにおいて、基地局の配置に適していない位置がある可能性がある。(2)によれば、基地局の配置に適した場所に移動機を移動させることができるようになる。
【0070】
(3)(2)に記載の管理装置であって、
前記第1の条件が、前記第1の位置の周囲にある物体と前記第1の移動機との仰角についての条件、及び、当該物体の高さについての条件、の少なくともいずれかを含む、
管理装置。
【0071】
(3)によれば、衛星との間でやりとりされる信号が遮られにくい位置を選べるようになるので、さらに広範囲において高精度の測位が可能になる。
【0072】
(4)(3)に記載の管理装置であって、
前記第1の位置の周囲にある前記物体は、建造物である、
管理装置。
【0073】
(5)(2)~(4)のいずれか1つに記載の管理装置であって、
前記プロセッサが、前記第1の位置に移動した前記第1の移動機から、前記第1の位置の周囲環境のデータを受信し、
前記プロセッサが、前記周囲環境のデータが第2の条件を満たす場合に、前記複数の移動機が運行するエリアのデータに基づき、前記第1の条件を満たし且つ前記第1の位置とは異なる第2の位置を特定する、
管理装置。
【0074】
実際に第1の位置に移動したときに、第1の位置が基地局の配置に適していないことが判明する可能性がある。(5)によれば、第1の位置が基地局の配置に適していないことが判明した場合に、第1の移動機を、第1の位置とは異なる第2の位置に移動させることができるようになる。
【0075】
(6)(1)に記載の管理装置であって、
前記プロセッサが、前記第1の移動機のバッテリーの残量が所定量未満であるか判定し、前記残量が前記所定量未満である場合、前記特定の期間の残りの期間において運行の予定が無い第2の移動機を特定する、
管理装置。
【0076】
(6)によれば、基地局として動作する移動機が停止する前に次の移動機を配置できるようになる。
【0077】
(7)(1)に記載の管理装置であって、
前記測位は、RTK-GNSS(Real Time Kinematic Global Navigation Satellite System)である、
管理装置。
【0078】
(7)によれば、RTK-GNSSの測位を広範囲において高精度に行うことができるようになる。
【0079】
(8)測位システムであって、
(1)に記載の前記管理装置と、
(1)に記載の前記複数の移動機と、
を有する測位システム。
【0080】
(9)コンピュータにより実行される管理方法であって、
自律移動が可能であり且つ測位の基地局の機能を有する複数の移動機の運行計画のデータに基づき、特定の期間における運行の予定が無い第1の移動機を特定し、
前記特定の期間において前記第1の移動機を前記基地局として動作させる指示を、前記第1の移動機に対して送信する、
管理方法。
【0081】
(9)によれば、運行の予定が無い移動機が基地局として動作するので、測位が可能なエリアをより柔軟に設定できるようになる。よって、より広範囲において高精度の測位が可能となる。
【符号の説明】
【0082】
1 管理装置 21、22 自律移動機 5 ネットワーク
11 プロセッサ 12 メモリ 13 通信インタフェース
14 ユーザインタフェース 19 バス 151 第1管理部
152 第2管理部 153 第3管理部 154 第4管理部
155 データ格納部 211 プロセッサ 212 メモリ
213 無線通信インタフェース 214 センサ 215 移動機構
251 移動制御部 252 環境データ処理部 253 測位処理部
254 データ格納部