(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】ブロックポリイソシアネート組成物、熱硬化性樹脂組成物、硬化物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 18/20 20060101AFI20241120BHJP
C08G 18/80 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
C08G18/20
C08G18/80
C08G18/80 077
(21)【出願番号】P 2022518106
(86)(22)【出願日】2021-04-28
(86)【国際出願番号】 JP2021016919
(87)【国際公開番号】W WO2021221090
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2024-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2020079968
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000167646
【氏名又は名称】広栄化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮城 元嘉
(72)【発明者】
【氏名】小野田 光貴
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/065953(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/025970(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/066029(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/067431(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/181753(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロックポリイソシアネート化合物及び下記式(2)で表される少なくとも1種のアミデート化合物を含有するブロックポリイソシアネート組成物。
式(2):
【化1】
(式中、Bは置換若しくは無置換の炭化水素基を示す。R
4、R
5、R
6、R
9、R
10及びR
11は同一または異なって、ヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~20の炭化水素基を示す。R
7及びR
8は、同一または異なって、水素原子又はヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~20の炭化水素基を示す。R
4とR
5、R
5とR
6、R
7とR
8、R
9とR
10、或いは、R
10とR
11は、それらが結合している炭素原子と一緒になって環構造を形成しても良い。yは1以上20以下の整数である。CR
4R
5R
6で表される基又はCR
9R
10R
11で表される基は、アダマンチル基であってもよい。)
【請求項2】
Bが置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基である、請求項1に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項3】
R
4、R
5、R
9及びR
10が、同一または異なって、ヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~6の炭化水素基である、請求項1又は2に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項4】
R
6及びR
11が、同一または異なって、ヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~12の炭化水素基である、請求項1~3のいずれか1項に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項5】
R
7及びR
8が水素原子である、請求項1~4のいずれか1項に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項6】
式(2)で表されるアミデート化合物が下記式
【化2】
(式中、nは0または1~4の整数である。)
で表される5種の化合物のいずれかである、請求項1に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項7】
前記ブロックポリイソシアネート化合物がブロック剤とポリイソシアネートの反応生成物であり、前記ブロック剤がオキシム系ブロック剤である、請求項1~6のいずれか1項に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項8】
前記ブロックポリイソシアネート化合物がブロック剤とポリイソシアネートの反応生成物であり、前記ブロック剤がメチルエチルケトンオキシムである請求項1~6のいずれか1項に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のブロックポリイソシアネート組成物、及びイソシアネート反応性基を有する化合物を含む熱硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
イソシアネート反応性基を有する化合物がポリオール化合物である、請求項9に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項12】
請求項9又は10に記載の熱硬化性樹脂組成物を加熱して硬化させる工程を含む硬化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックポリイソシアネート組成物、熱硬化性樹脂組成物、硬化物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブロックポリイソシアネート組成物とは、ブロックポリイソシアネート化合物とブロック剤の解離触媒を含む組成物である。ブロックポリイソシアネート化合物とは、ポリイソシアネート化合物とイソシアネート基と反応し得る活性水素基を有するブロック剤とを反応させて得られる化合物である。ブロックポリイソシアネート化合物は、ポリイソシアネートのイソシアネート基がブロック剤により封止されることで、常温においては不活性化されているが、加熱によりブロック剤が解離し、イソシアネート基が再生されるという性質を持つ。このような性質から、ブロックポリイソシアネート組成物は、一液型の熱硬化性ポリウレタン樹脂の原料や架橋剤として、塗料や接着剤などの用途で広く使用されている。
近年ではエネルギーコストの削減や耐熱性の低い樹脂材料への加工を目的として、より低温での硬化が要求されている。
硬化温度を下げる目的で、触媒が添加されることもあり、触媒として使用されている化合物としては、ジブチル錫ジラウレート(以下、DBTDLという。)などの錫化合物が一般に知られている。
上記のブロック剤を使用して形成されたブロックポリイソシアネート化合物と錫化合物を含有する熱硬化性樹脂組成物では、通常120℃以上の硬化温度を要する。
また、ブロック剤解離触媒としては下記構造式で示される1-メチル-3-n-オクチルイミダゾリウム-2-N-フェニルアミデートが知られている(特許文献1)。
【0003】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献1に記載の1-メチル-3-n-オクチルイミダゾリウム-2-N-フェニルアミデートをブロック剤解離触媒として用い、メチルエチルケトオキシムでブロックされたブロックポリイソシアネート及びポリオールを含有する熱硬化性樹脂組成物の硬化性を評価したところ、30分以内に硬化させるには100℃超の温度が必要であり(後述の比較例2)、低温硬化性について満足のいくものではなかった。
このことから、低温硬化性に優れるブロックポリイソシアネート組成物並びに該ブロックポリイソシアネート組成物を含有する熱硬化性樹脂組成物及びその硬化物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のブロックポリイソシアネート組成物、熱硬化性組成物及び硬化物を提供するものである。
〔1〕
ブロックポリイソシアネート化合物及び下記式(2)で表されるアミデート化合物を含有するブロックポリイソシアネート組成物。
式(2):
【0007】
【化2】
(式中、Bは置換若しくは無置換の炭化水素基を示す。R
4、R
5、R
6、R
9、R
10及びR
11は同一または異なって、ヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~20の炭化水素基を示す。R
7及びR
8は、同一または異なって、水素原子又はヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~20の炭化水素基を示す。R
4とR
5、R
5とR
6、R
7とR
8、R
9とR
10、或いは、R
10とR
11は、それらが結合している炭素原子と一緒になって環構造を形成しても良い。yは1以上20以下の整数である。CR
4R
5R
6で表される基又はCR
9R
10R
11で表される基は、アダマンチル基であってもよい。)
〔2〕
式(2)のBが置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基である、〔1〕に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
〔3〕
R
4、R
5、R
9及びR
10が、同一または異なって、ヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~6の炭化水素基である、〔1〕又は〔2〕に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
〔4〕
式(2)のR
6及びR
11が、同一または異なって、ヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~12の炭化水素基である、〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
〔5〕
式(2)のR
7及びR
8が水素原子である、〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
〔6〕
式(2)で表されるアミデート化合物が下記式
【0008】
【化3】
(式中、nは0または1~4の整数である。)
で表される5種の化合物のいずれかである、〔1〕に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
〔7〕
前記ブロックポリイソシアネート化合物がブロック剤とポリイソシアネートの反応生成物であり、前記ブロック剤がオキシム系ブロック剤である、〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
〔8〕
前記ブロックポリイソシアネート化合物がブロック剤とポリイソシアネートの反応生成物であり、前記ブロック剤がメチルエチルケトンオキシムである〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
〔9〕
〔1〕~〔8〕のいずれか1項に記載のブロックポリイソシアネート組成物、及びイソシアネート反応性基を有する化合物を含む熱硬化性樹脂組成物。
〔10〕
イソシアネート反応性基を有する化合物がポリオール化合物である、〔9〕に記載の熱硬化性樹脂組成物。
〔11〕
〔9〕又は〔10〕に記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
〔12〕
〔9〕又は〔10〕に記載の熱硬化性樹脂組成物を加熱して硬化させる工程を含む硬化物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低温硬化性に優れるブロックポリイソシアネート組成物並びに該ブロックポリイソシアネート組成物を含有する熱硬化性樹脂組成物、その硬化物および硬化物の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<ブロックポリイソシアネート化合物と式(2)で表されるアミデート化合物を含有するブロックポリイソシアネート組成物>
本発明のブロックポリイソシアネート組成物はブロックポリイソシアネート化合物と式(2)で表されるアミデート化合物を含有する。
【0011】
ブロックポリイソシアネート化合物について説明する。
【0012】
ブロックポリイソシアネ-ト化合物としては、例えばポリイソシアネートとブロック剤とを反応させ、ポリイソシアネート中のイソシアネート基をブロック剤で封止した化合物を挙げることができる。ブロックポリイソシアネ-ト化合物は単独であっても、2種以上が混合されたものであっても良い。
【0013】
ブロックポリイソシアネ-ト化合物を構成するポリイソシアネートは、2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であれば特に限定されないが、ポリイソシアネートとしては、以下のものが挙げられる。
(i)脂肪族ポリイソシアネート、
(ii)脂環式ポリイソシアネート、
(iii)芳香族ポリイソシアネート、
(iv)芳香脂肪族ポリイソシアネート、
(v)脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート及び芳香脂肪族ポリイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種から形成された変性イソシアネート。
【0014】
好ましくは(i)脂肪族ポリイソシアネート、(ii)脂環式ポリイソシアネート、及び (v)脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート及び芳香脂肪族ポリイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種から形成された変性イソシアネートである。
これらのポリイソシアネートは単独であっても、2種以上が混合されたものであっても良い。
【0015】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等が挙げられる。
【0016】
脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、3-イソシアナトメチル-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート(IPDI))、ビス-(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン、ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。
【0017】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、粗製ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5-ナフチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0018】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0019】
変性イソシアネートとしては、例えば、上記ポリイソシアネート化合物と活性水素基を有する化合物との反応によるイソシアネート基末端化合物やポリイソシアネート化合物又は/及び該イソシアネート基末端化合物の反応物(例えば、アダクト型ポリイソシアネートや、アロファネート化反応、カルボジイミド化反応、ウレトジオン化反応、イソシアヌレート化反応、ウレトンイミン化反応、ビウレット化反応等によるイソシアネート変性体等)が挙げられ、アダクト型ポリイソシアネート、イソシアヌレート化反応により変性されたポリイソシアネート、ビウレット化反応で変性されたポリイソシアネート(ビウレット結合を有するポリイソシアネート)が好ましい。
【0020】
ビウレット結合を有するポリイソシアネートは、水、tert-ブタノール、尿素などのいわゆるビウレット化剤とポリイソシアネートとを、ビウレット化剤/ポリイソシアネートのイソシアネート基のモル比が約1/2~約1/100で反応させた後、未反応ポリイソシアネートを除去精製して得られる。イソシアヌレート結合を有するポリイソシアネートは、例えば、触媒などにより環状3量化反応を行い、転化率が約5~約80質量%になったときに反応を停止し、未反応ポリイソシアネートを除去精製して得られる。この際に、1~6価のアルコール化合物を併用することができる。
ビウレット結合を有するポリイソシアネートは、例えば、下記に示す1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のビウレット変性体、イソホロンジイソシアネート(IPDI)のビウレット変性体、トルエンジイソシアネート(TDI)のビウレット変性体が挙げられ、市販されている製品としては、住化コベストロウレタン株式会社製のデスモジュールN75、デスモジュールN100、デスモジュールN3200や旭化成株式会社製のデュラネート24A-100、デュラネート22A-75P、デュラネート21S-75Eなどが挙げられる。
【0021】
【化4】
イソシアヌレート結合を有するポリイソシアネートは、例えば、触媒などにより環状3量化反応を行い、転化率が約5~約80質量%になったときに反応を停止し、未反応ポリイソシアネートを除去精製して得られる。この際に、1~6価のアルコール化合物を併用することができる。
上記イソシアヌレート化反応の触媒としては、一般に塩基性を有するものが好ましい。
上記触媒の例としては、
(1)テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドや、例えば、酢酸、カプリン酸等の有機弱酸塩、
(2)トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウム等のヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドや、例えば酢酸、カプリン酸等の有機弱酸塩、
(3)アルキルカルボン酸の例えば錫、亜鉛、鉛等の金属塩、
(4)ナトリウム、カリウム等の金属アルコラート、
(5)ヘキサメチルジシラザン等のアミノシリル基含有化合物、
(6)マンニッヒ塩基類、
(7)第3級アミン類とエポキシ化合物との併用、
(8)トリブチルホスフィン等の燐系化合物
等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
上記触媒が塗料または塗膜物性に悪影響を及ぼす可能性がある場合には、該触媒を酸性化合物などで中和してもよい。上記酸性化合物としては、例えば、塩酸、亜燐酸、燐酸などの無機酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸メチルエステル、p-トルエンスルホン酸エチルエステル等のスルホン酸またはその誘導体、燐酸エチル、燐酸ジエチル、燐酸イソプロピル、燐酸ジイソプロピル、燐酸ブチル、燐酸ジブチル、燐酸2-エチルヘキシル、燐酸ジ(2-エチルヘキシル)、燐酸イソデシル、燐酸ジイソデシル、オレイルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、エチルグリコールアシッドホスフェート、ピロリン酸ブチル、亜燐酸ブチル等があり、2種以上を併用してもよい。
【0022】
イソシアヌレート結合を有するポリイソシアネートは、例えば、下記に示すHDIのイソシアヌレート変性体、IPDIのイソシアヌレート変性体、TDIのイソシアヌレート変性体が挙げられ、市販されている製品としては、住化コベストロウレタン株式会社製のスミジュールN3300、デスモジュール3900、デスモジュールZ4470BA、デスモジュールXP2763、デスモジュールIL1351BA、デスモジュールHLBAや旭化成株式会社製のデュラネートTPA-100、デュラネートMFA-75B、デュラネートTUL-100、デュラネートTSA-100などが挙げられる。
【化5】
【0023】
ウレタン結合を有するポリイソシアネートは、例えば、トリメチロールプロパン(以下、TMPという。)などの2~6価のアルコール系化合物とジイソシアネートとを、アルコール系化合物の水酸基/ポリイソシアネートのイソシアネート基のモル比が約1/2~約1/100で反応させた後、未反応ポリイソシアネートを除去精製して得られる。未反応ポリイソシアネートの除去精製は必ずしも必要ではない。
ウレタン結合を有するポリイソシアネートは、例えば、下記に示すHDIとTMPの反応物、IPDIとTMPの反応物、TDIとTMPの反応物が挙げられ、市販されている製品としては、住化コベストロウレタン株式会社製のスミジュールN3300、デスモジュール3900、デスモジュールZ4470BA、デスモジュールXP2763、デスモジュールIL1351BA、デスモジュールHLBAや旭化成株式会社製のデュラネートTPA-100、デュラネートMFA-75B、デュラネートTUL-100、デュラネートTSA-100などが挙げられる。
【0024】
【0025】
上記ポリイソシアネートや前記変性イソシアネートのイソシアネート基の一部が公知のブロック剤で封止されているイソシアネートの公知のブロック剤としては、例えばフェノール、チオフェノール、メチルチオフェノール、キシレノール、クレゾール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノール等のフェノール類、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t-ブチルアルコール、t-ペンタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコールなどのアルコール類、3,5-ジメチルピラゾール、1,2-ピラゾール等のピラゾール類、1,2,4-トリアゾール等のトリアゾール類、エチレンクロルヒドリン、1,3-ジクロロ-2-プロパノール等のハロゲン置換アルコール類、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム、β-プロピルラクタム等のラクタム類、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、マロン酸メチル、マロン酸エチル等の活性メチレン化合物類が挙げられ、その他にもアミン類、イミド類、メルカプタン類、イミン類、尿素類、ジアリール類等も挙げられる。
【0026】
ブロック剤としては、例えば、アルコール系化合物、フェノール系化合物、アミン系化合物、ラクタム系化合物、オキシム系化合物、活性メチレン系化合物、ピラゾール系化合物、トリアゾール系化合物が挙げられ、ラクタム系化合物、オキシム系化合物、ピラゾール系化合物が好ましく、式(2)で表されるアミデート化合物と組み合わせることで、特に100℃未満という低温でもブロック剤の解離が短時間でできるため、オキシム系化合物が特に好ましい。
【0027】
アルコール系化合物としては、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t-ブチルアルコール、t-ペンタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコール等が挙げられる。
【0028】
フェノール系化合物としては、フェノール、チオフェノール、メチルチオフェノール、キシレノール、クレゾール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノール2-ヒドロキシピリジン等が挙げられる。
【0029】
アミン系化合物としては、ジイソプロピルアミン等が挙げられる。
【0030】
ラクタム系化合物としては、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム等が挙げられ、好ましくはε-カプロラクタムである。
【0031】
オキシム系化合物としては、好ましくは下記式(B)で表される化合物が挙げられる。
式(B):
HO-N=R (B)
(式中、Rは水素原子または炭素数1~20のアルキル基である)
Rは水素原子または炭素数1~20のアルキル基であり、好ましくは炭素数1~20のアルキル基、より好ましくは炭素数1~6のアルキル基、特に好ましくは炭素数1~4のアルキル基である。
炭素数1~20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、1-メチルプロピル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、1-エチルペンチル基、ノニル基、2-エチルヘキシル基、ウンデシル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘプタデシル基が挙げられる。
【0032】
オキシム系化合物の具体例としては、ホルムアルデヒドオキシム、アセトアルデヒドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム等が挙げられ、好ましくはメチルエチルケトオキシムである。
【0033】
ピラゾール系化合物としては、1,2-ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール等、トリアゾール系化合物としては、1,2,4-トリアゾール等が挙げられ、好ましくは3,5-ジメチルピラゾールである。
【0034】
活性メチレン系化合物としては、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、マロン酸メチル、マロン酸エチル等が挙げられる。
【0035】
式(2)で表されるアミデート化合物(以下、アミデート化合物(2)という。)について説明する。
式(2):
【0036】
【化7】
(式中、Bは置換若しくは無置換の炭化水素基を示す。R
4、R
5、R
6、R
9、R
10及びR
11は同一または異なって、ヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~20の炭化水素基を示す。R
7及びR
8は、同一または異なって、水素原子又はヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~20の炭化水素基を示す。R
4とR
5、R
5とR
6、R
7とR
8、R
9とR
10、或いは、R
10とR
11はそれらが結合している炭素原子と一緒になって環構造を形成しても良い。yは1以上20以下の整数である。CR
4R
5R
6で表される基又はCR
9R
10R
11で表される基が、アダマンチル基であってもよい。)
【0037】
1つの様態としては、式(2)中、Bは置換若しくは無置換の炭化水素基であり、好ましくは置換若しくは無置換の炭素数1~100の炭化水素基、より好ましくは置換若しくは無置換の炭素数1~50の炭化水素基、特に好ましくは置換若しくは無置換の炭素数1~30の炭化水素基である。別の様態としては、Bは置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基であり好ましくは置換若しくは無置換の炭素数1~100の芳香族炭化水素基、より好ましくは置換若しくは無置換の炭素数1~50の芳香族炭化水素基、特に好ましくは置換若しくは無置換の炭素数1~30の芳香族炭化水素基である。
本明細書において、「置換もしくは無置換の炭化水素基」は、(i)置換基を有していても良い炭化水素基と、(ii)ヘテロ原子で置換されていても良い炭化水素基、(iii)置換基を有し、かつ、ヘテロ原子で置換された炭化水素基を含む。また、「置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基」は(iv)置換基を有していても良い芳香族炭化水素基と、(v)ヘテロ原子で置換されていても良い芳香族炭化水素基、(vi)置換基を有し、かつ、ヘテロ原子で置換された芳香族炭化水素基を含む。
【0038】
Bにおいて、無置換の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、トリル基、アリル基等が挙げられる。
【0039】
Bが置換基を有する炭化水素基である場合、置換基の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、メチルアミノ基等のアルキルアミノ基、ジメチルアミノ基等のジアルキルアミノ基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等のアリールオキシ基、ベンジルオキシ基、ナフチルメトキシ基等のアラルキルオキシ基、トリフルオロメチル基等のハロゲン化アルキル基、ニトロ基、シアノ基、スルホニル基、アルキルカルボニルアミノ基、アルキルオキシカルボニルアミノ基、(アルキルアミノ)カルボニルアミノ基、又は(ジアルキルアミノ)カルボニルアミノ基等が挙げられる。また、Bの炭化水素基が、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等の少なくとも1種のヘテロ原子で置換されていても良い。Bの炭化水素基が、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等の少なくとも1種のヘテロ原子で置換されていている場合、炭化水素基は例えば、-O-、-N<、-NH-、-S-、-SO2-等の基の少なくとも1種を有し、炭化水素鎖がこれらの基により中断されている。
【0040】
上記アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、アルキルカルボニルアミノ基、アルキルオキシカルボニルアミノ基、(アルキルアミノ)カルボニルアミノ基及び(ジアルキルアミノ)カルボニルアミノ基のアルキル部分としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、1-エチルペンチル、ヘプチル、オクチル、2-エチルへキシル等の直鎖状又は分枝鎖状の炭素数1~12のアルキル基が挙げられる。アルキル基の炭素数は、好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1又は2である。
【0041】
上記アリールオキシ基のアリール部分としては、例えば、炭素数6~10のアリール基が挙げられる。アリール部分として具体的には、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0042】
上記アラルキルオキシ基のアラルキル部分としては、例えば、炭素数7~12のアラルキル基が挙げられる。アラルキル部分として具体的には、例えばベンジル基、ナフチルメチル基などが挙げられる。
【0043】
置換基の数は1~5個、好ましくは1~3個、より好ましくは1又は2個とすることができる。
【0044】
R7及びR8は、同一または異なって、水素原子又はヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~20の炭化水素基を示し、好ましくは水素原子である。
【0045】
yは1以上20以下の整数であり、好ましくは1~6、より好ましくは1~4、特に好ましくは1又は2である。
【0046】
R4、R5、R6、R9、R10及びR11は同一または異なって、ヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~20の炭化水素基であり、好ましくはヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~12の炭化水素基、より好ましくはヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~12の炭化水素基、さらに好ましくは炭素数1~6のヘテロ原子で置換されていても良い炭化水素基、特に好ましくはヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~4の炭化水素基である。炭化水素基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、へキシル基、オクチル基、ベンジル基、フェニル基等が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、ネオペンチル基、フェニル基であり、より好ましくはメチル基、ネオペンチル基である。
また、別の様態として、R4、R5、R9、R10は、同一または異なって、ヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~4の炭化水素基が、R6、R11は、同一または異なって、ヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~12の炭化水素基が好ましい。
【0047】
R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10及びR11はそれらが結合している炭素原子と一緒になって環構造を形成しても良い。
R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10及びR11はそれらが結合している炭素原子と一緒になって環構造を形成する場合、例えば、以下の式(2x)に示すようなベンゾイミダゾリウム環構造をとることが出来る。
【0048】
【化8】
(式中、B、R
4、R
5、R
6、R
9、R
10、R
11およびyは、前記に定義される通りである。R
w、R
x、R
y及びR
zはそれぞれ水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基を示す。CR
4R
5R
6で表される基、CR
9R
10R
11で表される基が、アダマンチル基であってもよい。)
【0049】
また、CR4R5R6で表される基、CR9R10R11で表される基がアダマンチル基であってもよく、例えば、下記式(IV)で表されるような1-アダマンチル基であってもよい。
【0050】
【0051】
式(IV)で表されるような1-アダマンチル基を有する場合、例えば、以下の式(2y)に示すような1-アダマンチル基を有する構造をとることが出来る。
【0052】
【化10】
(式中、B、R
7、R
8およびyは、前記に定義される通りである。)
【0053】
式(2)で表されるアミデート化合物としては、式(2-1)、式(2-2)又は式(2-3)のいずれかで表されるアミデート化合物であることが好ましい。
式(2-1):
【0054】
【化11】
(式中、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11は前記に定義される通りである。CR
4R
5R
6で表される基、CR
9R
10R
11で表される基が、アダマンチル基であってもよい。R
12は置換若しくは無置換の炭化水素基を示す。)
式(2-2):
【0055】
【化12】
(式中、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10及びR
11は前記に定義される通りである。CR
4R
5R
6で表される基、CR
9R
10R
11で表される基が、アダマンチル基であってもよい。R
13は置換若しくは無置換の二価の炭化水素基を示す。)
式(2-3):
【0056】
【化13】
(式中、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10及びR
11は前記に定義される通りである。CR
4R
5R
6で表される基、CR
9R
10R
11で表される基が、アダマンチル基であってもよい。E
1、E
2及びE
3はそれぞれ独立して、置換若しくは無置換の炭化水素基、ハロゲン原子、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルアリールオキシ基、ニトロ基、シアノ基、スルホニル基、(アルキルアミノ)カルボニルアミノ基、(ジアルキルアミノ)カルボニルアミノ基又はイソシアネート基を示す。f及びgはそれぞれ独立して0~4の整数を示す。a及びbは各々0又は1であり、c、d及びeはそれぞれ独立して0~4の整数を示す。但し、fが0の場合、a又はbの少なくとも1つが1である。)
【0057】
式(2-1)中、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11は前記に定義される通りである。CR4R5R6で表される基、CR9R10R11で表される基が、アダマンチル基であってもよい。
R12は置換若しくは無置換の炭化水素基であり、好ましくは置換若しくは無置換の炭素数1~50の炭化水素基、より好ましくは置換若しくは無置換の炭素数1~30の炭化水素基、特に好ましくは置換若しくは無置換の炭素数1~12の炭化水素基である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、トリル基、アリル基等が挙げられ、好ましくはベンジル基、フェニル基である。
【0058】
R12が置換基を有する場合、置換基の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、メチルアミノ基等のアルキルアミノ基、ジメチルアミノ基等のジアルキルアミノ基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等のアリールオキシ基、ベンジルオキシ基、ナフチルメトキシ基等のアラルキルオキシ基、トリフルオロメチル基等のハロゲン化アルキル基、ニトロ基、シアノ基、スルホニル基、アルキルカルボニルアミノ基、アルキルオキシカルボニルアミノ基、(アルキルアミノ)カルボニルアミノ基、(ジアルキルアミノ)カルボニルアミノ基又はイソシアネート基等が挙げられる。また、R12の炭化水素基が、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等の少なくとも1種のヘテロ原子で置換されていても良い。炭化水素基が、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等の少なくとも1種のヘテロ原子で置換されている場合、炭化水素基は例えば、-O-、-N<、-NH-、-S-、-SO2-等の少なくとも1種の基を有し、炭化水素鎖がこれらの基により中断されている。R12が置換基を有する場合、置換基の数は、好ましくは1~5個、より好ましくは1~3個、さらに好ましくは1~2個である。
【0059】
上記アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、アルキルカルボニルアミノ基、アルキルオキシカルボニルアミノ基、(アルキルアミノ)カルボニルアミノ基、(ジアルキルアミノ)カルボニルアミノ基のアルキル部分としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、1-エチルペンチル、ヘプチル、オクチル、2-エチルへキシル等の直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~12のアルキル基が挙げられる。アルキル基の炭素数は、好ましくは1~8、より好ましくは炭素数1又は2である。
【0060】
上記アリールオキシ基のアリール部分としては、例えば、炭素数6~10のアリール基が挙げられる。アリール部分として具体的には、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0061】
上記アラルキルオキシ基のアラルキル部分としては、例えば、炭素数7~12のアラルキル基が挙げられる。アラルキル部分として具体的には、例えばベンジル基、ナフチルメチル基などが挙げられる。
【0062】
置換基の数は1~5個、好ましくは1~3個、より好ましくは1又は2個とすることができる。
【0063】
R12はハロゲン原子で置換されていても良い炭化水素基又はヘテロ原子で置換されていても良い炭化水素基であることが好ましい。なかでも、ハロゲン原子で置換されていても良い炭素数1~50の炭化水素基又はヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~50の炭化水素基がより好ましく、さらに好ましくはハロゲン原子で置換されていても良い炭素数1~30の炭化水素基又はヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~30の炭化水素基、特に好ましくはハロゲン原子で置換されていても良い炭素数1~12の炭化水素基又はヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~12の炭化水素基である。また、炭化水素基として好ましくは、アリール基、アリールアルキル基などの芳香族炭化水素基である。
【0064】
R12において、ハロゲン原子で置換されている炭化水素基としては、たとえば、クロロフェニル基などが挙げられる。
【0065】
R12において、ヘテロ原子で置換されている炭素数1~20の炭化水素基としては、2-メトキシメチル基、2-エトキシメチル基、2-(ジメチルアミノ)メチル基などが挙げられる。
【0066】
式(2-2)中、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10及びR11は前記に定義される通りである。CR4R5R6で表される基、CR9R10R11で表される基が、アダマンチル基であってもよい。
R13は置換若しくは無置換の二価の炭化水素基であり、好ましくは置換若しくは無置換の炭素数1~100の二価の炭化水素基、より好ましくは置換若しくは無置換の二価の炭素数1~50の炭化水素基、特に好ましくは置換若しくは無置換の炭素数1~30の二価の炭化水素基である。具体的には、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキシレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基、n-ノニレン基、n-デシレン基、n-ドデシレン基、n-オクタデシレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘキサン-1,2-ジイルビスメチレン、シクロヘキサン-1,4-ジイルビスメチレン等のアルキレン基、m-フェニレン基、p-フェニレン基、2-メチル-m-フェニレン基、4-メチル-m-フェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基、フェニルエチレン基、1-フェニルプロピレン基、2-フェニルプロピレン基、1-フェニルブチレン基、2-フェニルブチレン基、ナフチルメチレン基、ナフチルエチレン基等のアリールアルキレン基、前述のアルキレン基とアリーレン基が適宜組み合わされて成るp-キシリレン基などのアリーレンアルキレン基やメチレンジフェニレン基、ポリメチレンポリフェニレン基等のアルキレンアリーレン基等が挙げられる。これらの二価の炭化水素基が反復して又は組み合わされて、1つの二価の炭化水素基を構成していても良い。
【0067】
R13の二価の炭化水素基が置換基を有する場合、置換基の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、メチルアミノ基等のアルキルアミノ基、ジメチルアミノ基等のジアルキルアミノ基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等のアリールオキシ基、ベンジルオキシ基、ナフチルメトキシ基等のアラルキルオキシ基、トリフルオロメチル基等のハロゲン化アルキル基、ニトロ基、シアノ基、スルホニル基、(アルキルアミノ)カルボニルアミノ基、(ジアルキルアミノ)カルボニルアミノ基又はイソシアネート基等が挙げられる。また、R13の炭化水素基が、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等の少なくとも1種のヘテロ原子で置換されていても良い。炭化水素基が、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等の少なくとも1種のヘテロ原子で置換されている場合、炭化水素基は例えば、-O-、-N<、-NH-、-S-、-SO2-等の少なくとも1種の基を有し、炭化水素鎖がこれらの基により中断されている。R13が置換基を有する場合、置換基の数は、好ましくは1~5個、より好ましくは1~3個、さらに好ましくは1~2個である。
【0068】
R13はハロゲン原子で置換されていても良い二価の炭化水素基又はヘテロ原子で置換されていても良い二価の炭化水素基であることが好ましい。なかでも、ハロゲン原子で置換されていても良い炭素数1~50の二価の炭化水素基又はヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~50の二価の炭化水素基がより好ましく、さらに好ましくはハロゲン原子で置換されていても良い炭素数1~30の二価の炭化水素基又はヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~30の二価の炭化水素基、特に好ましくはハロゲン原子で置換されていても良い炭素数1~12の二価の炭化水素基又はヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~12の二価の炭化水素基である。
【0069】
上記アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、アルキルカルボニルアミノ基、アルキルオキシカルボニルアミノ基、(アルキルアミノ)カルボニルアミノ基、(ジアルキルアミノ)カルボニルアミノ基のアルキル部分としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、1-エチルペンチル、ヘプチル、オクチル、2-エチルへキシル等の直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~12のアルキル基が挙げられる。アルキル基の炭素数は、好ましくは1~8、より好ましくは炭素数1又は2である。
【0070】
上記アリールオキシ基のアリール部分としては、例えば、炭素数6~10のアリール基が挙げられる。アリール部分として具体的には、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0071】
上記アラルキルオキシ基のアラルキル部分としては、例えば、炭素数7~12のアラルキル基が挙げられる。アラルキル部分として具体的には、例えばベンジル基、ナフチルメチル基などが挙げられる。
【0072】
置換基の数は1~5個、好ましくは1~3個、より好ましくは1又は2個とすることができる。
【0073】
式(2-3)中、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10及びR11は前記に定義される通りである。CR4R5R6で表される基、CR9R10R11で表される基が、アダマンチル基であってもよい。
【0074】
E1、E2及びE3は、それぞれ独立して、置換若しくは無置換の炭化水素基、ハロゲン原子、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ニトロ基、シアノ基、スルホニル基、(アルキルアミノ)カルボニルアミノ基、(ジアルキルアミノ)カルボニルアミノ基又はイソシアネート基であり、好ましくはハロゲン原子で置換されていても良い炭化水素基、ヘテロ原子で置換されていても良い炭化水素基、(アルキルアミノ)カルボニルアミノ基、(ジアルキルアミノ)カルボニルアミノ基、イソシアネート基であり、より好ましくは(アルキルアミノ)カルボニルアミノ基、(ジアルキルアミノ)カルボニルアミノ基である。
E1、E2又はE3が置換若しくは無置換の炭化水素基の場合、好ましくは置換若しくは無置換の炭素数1~50の炭化水素基、より好ましくは置換若しくは無置換の炭素数1~30の炭化水素基、さらに好ましくは置換若しくは無置換の炭素数1~12の炭化水素基である。
E1、E2又はE3が置換基を有する炭化水素基である場合、置換基の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、メチルアミノ基等のアルキルアミノ基、ジメチルアミノ基等のジアルキルアミノ基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、ベンジルオキシ基等のアラルキルオキシ基、トリフルオロメチル基等のハロゲン化アルキル基、ニトロ基、シアノ基、スルホニル基、アルキルカルボニルアミノ基、アルキルオキシカルボニルアミノ基、(アルキルアミノ)カルボニルアミノ基、(ジアルキルアミノ)カルボニルアミノ基等のカルボニルアミノ基等が挙げられる。
【0075】
また、E1、E2又はE3の炭化水素基が、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等の少なくとも1種のヘテロ原子で置換されていても良い。E1、E2又はE3の炭化水素基が、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等の少なくとも1種のヘテロ原子で置換されている場合、炭化水素基は例えば、-O-、-N<、-NH-、-S-、-SO2-等の基の少なくとも1種を有し、炭化水素鎖がこれらの基により中断されている。
【0076】
上記アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、アルキルカルボニルアミノ基、アルキルオキシカルボニルアミノ基、(アルキルアミノ)カルボニルアミノ基及び(ジアルキルアミノ)カルボニルアミノ基のアルキル部分としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、1-エチルペンチル、ヘプチル、オクチル、2-エチルへキシル等の直鎖状又は分枝鎖状の炭素数1~12のアルキル基が挙げられる。アルキル基の炭素数は、好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1又は2である。
【0077】
上記アリールオキシ基のアリール部分としては、例えば、炭素数6~10のアリール基が挙げられる。アリール部分として具体的には、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0078】
上記アラルキルオキシ基のアラルキル部分としては、例えば、炭素数7~12のアラルキル基が挙げられる。アラルキル部分として具体的には、ベンジル基、ナフチルメチル基などが挙げられる。
【0079】
置換基の数は1~5個、好ましくは1~3個、より好ましくは1又は2個とすることができる。
E1、E2又はE3がハロゲン原子で置換されていても良い炭化水素基又はヘテロ原子で置換されていても良い炭化水素基である場合、好ましくはハロゲン原子で置換されていても良い炭素数1~50の炭化水素基又はヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~50の炭化水素基、より好ましくはハロゲン原子で置換されていても良い炭素数1~30の炭化水素基又はヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~30の炭化水素基、特に好ましくはハロゲン原子で置換されていても良い炭素数1~12の炭化水素基又はヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~12の炭化水素基である。
また、ハロゲン原子で置換されていても良い炭化水素基又はヘテロ原子で置換されていても良い炭化水素基の炭化水素基として好ましくは、アリール基、アリールアルキル基などの芳香族炭化水素基である。ハロゲン原子で置換されていても良い炭化水素基又はヘテロ原子で置換されていても良い炭化水素基の炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、トリル基、アリル基等が挙げられ、好ましくはベンジル基、フェニル基である。
【0080】
E1、E2又はE3がハロゲン原子で置換されていても良い炭化水素基である場合のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。また、E1、E2及びE3の炭化水素基が、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子で置換されていても良い。E1、E2又はE3の炭化水素基が、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等の少なくとも1種のヘテロ原子で置換されている場合、炭化水素基は例えば、-O-、-N<、-NH-、-S-、-SO2-等の少なくとも1種の基を有し、炭化水素鎖がこれらの基により中断されている。
【0081】
E1、E2又はE3において、ハロゲン原子で置換されている炭化水素基としては、たとえば、クロロフェニル基などが挙げられる。
【0082】
E1、E2又はE3において、ヘテロ原子で置換されている炭素数1~20の炭化水素基としては、2-メトキシメチル基、2-エトキシメチル基、2-(ジメチルアミノ)メチル基などが挙げられる。
【0083】
E1、E2及びE3は、それぞれ独立してハロゲン原子である場合、ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0084】
E1、E2及びE3がアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、(アルキルアミノ)カルボニルアミノ基又は(ジアルキルアミノ)カルボニルアミノ基である場合のこれらのアルキル部分としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル等の直鎖状又は分枝鎖状の炭素数1~6のアルキル基が挙げられる。アルキル基の炭素数は、好ましくは炭素数1~3、より好ましくは炭素数1又は2である。
【0085】
E1、E2及びE3がアリールオキシ基の場合、アリールオキシ基のアリール部分としては、例えば、炭素数6~10のアリール基が挙げられる。アリール部分として具体的には、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0086】
E1、E2及びE3がアラルキルオキシ基の場合、アラルキルオキシ基のアラルキル部分としては、例えば、炭素数7~12のアラルキル基が挙げられる。アラルキル部分として具体的には、ベンジル基、ナフチルメチル基などが挙げられる。
【0087】
f及びgはそれぞれ独立して0~4の整数を示す。a及びbは各々0又は1であり、c、d及びeはそれぞれ独立して0~4の整数を示す。但し、fが0の場合、a又はbの少なくとも1つが1である。
【0088】
アミデート化合物(2)としては、下記の化合物が挙げられる。tBuはt-ブチル基、tOctは1,1,3,3-テトラメチルブチル基、1Adは1-アダマンチル基、Meはメチル基、Heptはヘプチル基、1EtPentは1-エチルペンチル基を示す。
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
式(2-1-28)~(2-1-36)中、nは0~4の整数である。
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
式(2-3-1)~(2-3-3)中、nは0~4の整数である。
【0098】
アミデート化合物(2)として好ましくは式(2-1-1)~(2-1-6)、(2-1-7)、(2-1-9)、(2-1-10)、(2-1-12)、(2-1-13)、(2-1-15)、(2-1-37)~(2-1-45)、(2-2-1)~(2-2-3)、(2-3-1)~(2-3-3)で表される化合物であり、より好ましくは式(2-1-1)、(2-1-2)、(2-3-2)で表される化合物である。
【0099】
アミデート化合物(2)は、例えば、下記に示す方法により製造できる。
(方法1)式(5)で表されるイミダゾリウムカルボン酸塩と式(6)で表される炭酸エステルを反応させ(反応1)、得られた反応物と式(10)で表されるイソシアネート化合物を反応(反応2)させる方法
(方法2)イミダゾリウムカルボン酸塩とイソシアネート化合物を反応させる方法
(方法3)特許文献1に記載のイミダゾリウム-2-カルボキシレート化合物とイソシアネート化合物を反応させる方法。
(方法4)Structual Chemistry 2013年 24巻 2059-2068頁に記載のイミダゾリウム-2-イリデン化合物とイソシアネート化合物を反応させる方法。
【0100】
以下、(方法1)について説明する。
【0101】
(反応1)
下記式(5)で表されるイミダゾリウムカルボン酸塩(以下、イミダゾリウムカルボン酸塩(5)という。)と下記式(6)で表される炭酸エステル(以下、炭酸エステル(6)という。)を反応させる。
【0102】
【化21】
(式中、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10及びR
11は各々前記に定義される通りである。CR
4R
5R
6で表される基、CR
9R
10R
11で表される基が、アダマンチル基であってもよい。R
14は水素原子又はヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~20の炭化水素基を示す。)
式(6):
【0103】
【化22】
(式中、R
15及びR
16は、同一又は異なって、炭素数1~6の炭化水素基を示す。R
15及びR
16はそれらが結合している酸素原子と一緒になって環構造を形成しても良い。)
【0104】
(反応2)
次いで、得られた反応物と下記式(10)で表されるイソシアネート化合物を必要に応じて溶媒の存在下に反応させることによりアミデート化合物(2)が製造される。
式(10):
【0105】
【化23】
(式中、B、yは各々前記に定義される通りである。)
【0106】
イミダゾリウムカルボン酸塩(5)について説明する。
式(5)中、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10及びR11は各々前記に定義される通りである。CR4R5R6で表される基、CR9R10R11で表される基が、アダマンチル基であってもよい。
【0107】
R14は水素原子又はヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~20の炭化水素基を示し、好ましくはヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~20の炭化水素基である。ヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~20の炭化水素基として好ましくは、ヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~8の炭化水素基であり、特に好ましくはヘテロ原子で置換されていても良い1又は2の炭化水素基である。ヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~20の炭化水素基の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、1-エチルペンチル基、ノニル基、2-エチルヘキシル基、ウンデシル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘプタデシル基、ビニル基、アリル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、フェニル基等が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘプチル基、シクロヘキシル基、1-エチルペンチル基、フェニル基、特に好ましくはメチル基、エチル基、ヘプチル基、1-エチルペンチル基が挙げられる。
【0108】
R14においてヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などが挙げられる。炭化水素基が、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等の少なくとも1種のヘテロ原子で置換されている場合、炭化水素基は例えば、-O-、-N<、-NH-、-S-、-SO2-等の少なくとも1種の基を有し、炭化水素鎖がこれらの基により中断されている。炭化水素基が、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等の少なくとも1種のヘテロ原子で置換されている場合、炭化水素基が酸素原子で置換されており、炭化水素鎖が-O-の基により中断されていることが好ましい。また、別の様態として、炭化水素基が、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等の少なくとも1種のヘテロ原子で置換されている場合、-OH、-NH2等の基を有する炭化水素基を形成していても良い。
【0109】
R14において、ヘテロ原子で置換されている炭素数1~20の炭化水素基としては、2-メトキシメチル基、2-エトキシメチル基、2-(ジメチルアミノ)メチル基などが挙げられる。
【0110】
式(5)において、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11からなる群から選ばれる隣接する2つの基が、それらが結合している炭素原子と一緒になって環構造を形成する場合、例えば、以下に示すようなベンゾイミダゾリウム環構造(5x)をとることが出来る。
【0111】
【化24】
(式中、R
4、R
5、R
6、R
9、R
10、R
11、R
14、R
w、R
x、R
y、及びR
zは、各々前記に定義される通りである。)
【0112】
また、式(5)において、CR4R5R6で表される基、CR9R10R11で表される基が、アダマンチル基であってもよく、この場合、例えば、以下に示すような1-アダマンチル基を有する構造(5y)をとることが出来る。
【0113】
【化25】
(式中、R
7、R
8、及びR
14は各々前記に定義される通りである)。
【0114】
イミダゾリウムカルボン酸塩(5)としては、例えば、1,3-ジ-tert-ブチルイミダゾリウムギ酸塩、1,3-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミダゾリウムギ酸塩、1,3-ビス(1-アダマンチル)イミダゾリウムギ酸塩;
1,3-ジ-tert-ブチルイミダゾリウム酢酸塩、1,3-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミダゾリウム酢酸塩、1,3-ビス(1-アダマンチル)イミダゾリウム酢酸塩;
1,3-ジ-tert-ブチルイミダゾリウム2-エチルヘキサン酸塩、1,3-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミダゾリウム2-エチルヘキサン酸塩、1,3-ビス(1-アダマンチル)イミダゾリウム2-エチルヘキサン酸塩;が挙げられる。好ましくは1,3-ジt-ブチルイミダゾリウム酢酸塩、1,3-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミダゾリウム酢酸塩が挙げられる。
【0115】
イミダゾリウムカルボン酸塩(5)は市販のものを使用してもよい。イミダゾリウムカルボン酸塩(5)は、公知の方法により得られたものを使用してもよく、また、次に説明する方法により製造したものを使用することもできる。
【0116】
下記式(7)で表されるジカルボニル化合物、下記式(8x)及び下記式(8y)で表されるアミン化合物、ホルムアルデヒド、下記式(9)で表されるカルボン酸を反応させて式(5)のイミダゾリウムカルボン酸塩を得る。
式(7):
【0117】
【化26】
(式中、R
7及びR
8は、前記に定義される通りである。)
【0118】
式(8x):
【化27】
(式中、R
4、R
5及びR
6は前記に定義される通りである。CR
4R
5R
6で表される基、が、アダマンチル基であってもよい。)
式(8y):
【化28】
(式中、R
9、R
10及びR
11は前記に定義される通りである。CR
9R
10R
11で表される基が、アダマンチル基であってもよい。)
式(9):
【0119】
【化29】
(式中、R
14は前記に定義される通りである。)
【0120】
式(7)で表されるジカルボニル化合物(以下、ジカルボニル化合物(7)という。)としては、好ましくはグリオキサール、ジアセチル、3,4-ヘキサンジオン、2,3-ペンタンジオン、2,3-ヘプタンジオン、5-メチル-2,3-ヘキサンジオン、3-メチル-2,3-シクロペンタンジオン、1,2-シクロヘキサンジオン、1-フェニル-1,2-プロパンジオン、ジベンゾイルが挙げられ、より好ましくはグリオキサール、ジアセチルが挙げられ、より好ましくはグリオキサールである。
【0121】
式(8x)で表されるアミン化合物(以下、アミン化合物(8x)という。)及び式(8y)で表されるアミン化合物(以下、アミン化合物(8y)という。)としては、tert-ブチルアミン、1,1,3,3-テトラメチルブチルアミン、1-アダマンチルアミンが挙げられ、好ましくは、1,1,3,3-テトラメチルブチルアミンである。
【0122】
式(9)で表されるカルボン酸(以下、カルボン酸(9)という。)としては、好ましくはギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、カプリン酸、ラウリン酸、テトラデシル酸、パルミチン酸、オクタデシル酸、シクロヘキサン酸、エトキシ酢酸、プロポキシ酢酸、2-(2-メトキシエトキシ)酢酸、2-(2-エトキシエトキシ)酢酸、2-(2-プロポキシエトキシ)酢酸、3-メトキシプロパン酸、3-エトキシプロパン酸、3-(2-メトキシエトキシ)プロパン酸、3-(2-エトキシエトキシ)プロパン酸、3-(2-プロポキシエトキシ)プロパン酸、3-(3-メトキシプロポキシ)プロパン酸、3-(3-エトキシプロポキシ)プロパン酸、3-(3-プロポキシプロポキシ)プロパン酸、オレイン酸、リノール酸、ソルビン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、乳酸、サリチル酸、トリフルオロ酢酸等のカルボン酸が挙げられ、より好ましくはギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸が挙げられ、特に好ましくは酢酸、2-エチルヘキサン酸である。
【0123】
ジカルボニル化合物(7)は水溶液やメタノール、ブタノール等のアルコール溶液をそのまま使用しても良い。
【0124】
アミン化合物(8x)及びアミン化合物(8y)(以下、アミン化合物(8x)及びアミン化合物(8y)を合わせてアミン化合物(8)という。)の使用量としては、通常、ジカルボニル化合物(7)1モルに対して、アミン化合物(8)が0.1~10モルであり、好ましくは0.5~3モルである。ジカルボニル化合物(7)1モルに対しアミン化合物(8)が2モル反応して1モルのイミダゾリウムカルボン酸塩(5)になるが、例えばアミン化合物(8)が2モル未満の場合、目的のイミダゾリウムカルボン酸塩(5)の他にジカルボニル化合物(7)(原料)と、ジカルボニル化合物(7)の重合物が存在することになる。また、ジカルボニル化合物(7)1モルに対しアミン化合物(8)を2モル超使用した場合、目的のイミダゾリウムカルボン酸塩(8)の他に過剰量のアミン化合物(8)が存在することになる。これらのイミダゾリウムカルボン酸塩以外の化合物が共存するイミダゾリウムカルボン酸塩(5)を用いても、アミデート化合物(2)を得ることができる。
【0125】
アミン化合物(8x)とアミン化合物(8y)の割合は、特に限定するものではなく、アミン化合物(8x):アミン化合物(8y)=0:100~100:0の範囲である。なお、アミン化合物(8x):アミン化合物(8y)=0:100あるいはアミン化合物(8x):アミン化合物(8y)=100:0の場合、CR4R5R6で表される基=CR9R10R11で表される基になる。また、CR4R5R6で表される基=CR9R10R11で表される基以外の場合、すなわち、アミン化合物(8x):アミン化合物(8y)が0:100もしくは100:0ではない場合、式(5)で表される化合物は、下記式(5-1)、式(5-2)、式(5-3)で表される化合物の混合物となりうる。
【0126】
【化30】
(式(5-1)、式(5-2)、及び式(5-3)中、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11及びR
14は各々前記に定義される通りである。CR
4R
5R
6で表される基、CR
9R
10R
11で表される基が、アダマンチル基であってもよい。)
【0127】
この混合物中の式(5-1)で表される化合物、式(5-2)で表される化合物、式(5-3)で表される化合物の割合は、反応に使用するアミン化合物(8x)とアミン化合物(8y)の割合によって異なる。式(5-1)で表される化合物、式(5-2)で表される化合物、式(5-3)で表される化合物はいずれもイミダゾリウムカルボン酸塩(5)に包含される。
【0128】
ホルムアルデヒドは水溶液やメタノール、ブタノール等のアルコール溶液をそのまま使用してもよい。ホルムアルデヒドの使用量としては、通常、ジカルボニル化合物(9)1モルに対して、ホルムアルデヒドが0.1~10モルであり、好ましくは0.5~5.0モルである。
【0129】
カルボン酸(9)の使用量としては、通常、ジカルボニル化合物(7)1モルに対して、0.1~10モルであり、好ましくは0.5~2モル、さらに好ましくは1~1.5モルである。
【0130】
反応温度は、使用する原料、溶媒等によって最適な温度が異なるが、通常、-10℃以上であり、好ましくは0℃~100℃である。反応時間は、通常、0.1~48時間、好ましくは0.5~12時間である。
【0131】
溶媒は使用してもしなくてもよい。溶媒を使用する場合、使用する溶媒は反応に影響を与えないものであれば特に制限されない。溶媒の具体例としては、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族又は脂環式炭化水素、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル類、メタノール、エタノール等の低級アルコール類、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、水等が挙げられ、好ましくは芳香族炭化水素、低級アルコール類、水であり、特に好ましくはトルエン、水である。溶媒は必要に応じて2種以上を混合して使用することもできる。
【0132】
溶媒の使用量は、ジカルボニル化合物(7)1質量部に対して、通常50質量部以下、好ましくは0.1~10質量部である。
【0133】
必要に応じて、窒素、アルゴン、ヘリウム等の反応に影響を与えない不活性ガス雰囲気下で反応させてもよい。
【0134】
反応終了後は、有機溶媒を用いた洗浄による不純物(例えば、未反応の原料)の除去や、反応液の濃縮等により、イミダゾリウムカルボン酸塩(5)を単離することができ、必要に応じ、再結晶等の精製をしても良い。
【0135】
炭酸エステル(6)について説明する。
【0136】
式(6)において、R15及びR16は同一又は異なって炭素数1~6の炭化水素基、好ましくは炭素数1~4の炭化水素基、特に好ましくはメチル基を示す。R15及びR16はそれらが結合している酸素原子と一緒になって環構造を形成しても良い。炭素数1~6の炭化水素基としては、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、フェニル基等が挙げられる。炭酸エステル(6)の具体例としては、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸ジブチル、炭酸ジペンチル、炭酸ジヘキシル等の炭酸ジアルキル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン等の炭酸アルキレンが挙げられ、好ましくは炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸ジブチルであり、特に好ましくは炭酸ジメチルである。
【0137】
炭酸エステル(6)の使用量は、イミダゾリウムカルボン酸塩(5)1モルに対して通常1モル以上、好ましくは1~6モルである。また、イミダゾリウムカルボン酸塩(5)中に過剰のカルボン酸や水が含まれる場合には、それらが炭酸エステル(6)と反応するため、イミダゾリウムカルボン酸塩(5)中の過剰のカルボン酸及び水の合計1モルに対して、炭酸エステル(6)を通常1モル以上、好ましくは1~6モル過剰に使用することが好ましい。
【0138】
反応1において、溶媒は使用してもしなくてもよい。溶媒を使用する場合、使用する溶媒は反応に影響を与えないものであれば特に制限されない。溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、1-メトキシ-2-プロパノール、エトキシエタノール等の1価のアルコール溶媒、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等のポリオール溶媒、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、等のグリコールモノアルキルエーテル溶媒、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素溶媒、酢酸エチルや酢酸ブチル等のエステル溶媒、メチルエチルケトン、4-メチル-2-ペンタノン等のケトン溶媒等が挙げられ、好ましくは1価のアルコール溶媒であり、特に好ましくはメタノールである。溶媒の使用量は、イミダゾリウムカルボン酸塩(5)1質量部に対して、通常50質量部以下、好ましくは10質量部以下である。
【0139】
反応1において、反応温度は、使用する原料、溶媒等によって最適な温度が異なることができ、通常、室温以上であり、好ましくは20~200℃である。なお、本明細書において室温は20℃程度を意味する。反応時間は、通常、0.1~48時間、好ましくは1~24時間である。
【0140】
反応1において、必要に応じて、窒素、アルゴン、ヘリウム等の反応に影響を与えない不活性ガス雰囲気下で反応させてもよい。
【0141】
反応終了後は、必要に応じ、反応液を濃縮し、溶媒を除去しても良い。また、反応液中に炭酸エステル(6)や溶媒が残存している場合、反応液を濃縮して炭酸エステル(6)や溶媒を除去することもできる。
【0142】
反応2について説明する。
反応1で得られた反応物(以下、反応物(R)ということがある。)と式(10)で表されるイソシアネート化合物を反応させて、アミデート化合物(2)を製造する。
【0143】
式(10)で表されるイソシアネート化合物(以下、イソシアネート化合物(10)という。)について説明する。
【0144】
【化31】
(式中、B及びyは各々前記に定義される通りである。)
【0145】
本発明において、イソシアネート化合物(10)としては下記式(10-1)、(10-2)及び(10-3)で表される化合物が好ましい。
【0146】
式(10-1):
【0147】
【化32】
(式中、R
12は前記に定義される通りである。)
【0148】
式(10-2):
【0149】
【化33】
(式中、R
13は前記に定義される通りである。)
【0150】
式(10-3):
【0151】
【化34】
(式中、E
1、E
2、E
3、a、b、c、d、e、f、gは各々前記に定義される通りである。)
【0152】
本発明においてイソシアネート化合物(10)としてはポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)等の重合物を使用することもできる。
【0153】
以下にイソシアネート化合物(10)の具体例を示す。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。下記具体例中、Meはメチル基、iPrはイソプロピル基、Buはn-ブチル基、Octはn-オクチル基、MeOはメトキシ基を示す。
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
【化38】
(式中、nは前記に定義される通りである。)
【0158】
イソシアネート化合物(10)として好ましくは式(10-1-5)、(10-1-19)、(10-2-3)、(10-3-1)で表される化合物、より好ましくは式(10-1-19)、(10-3-1)で表される化合物である。
【0159】
イソシアネート化合物(10)は1種単独であっても、2種以上の混合物であっても良い。
【0160】
反応2において、通常、イソシアネート化合物(10)の使用量としては、イミダゾリウムカルボン酸塩(5)1モルに対してイソシアネート化合物(10)中のイソシアネート基を0.8モル以上、好ましくは1~3モルとなる量を反応させる。
【0161】
反応温度は、特に制限されないが、通常-10℃以上、好ましくは0~200℃、より好ましくは20~150℃である。反応時間は、通常、0.1~48時間、好ましくは0.5~24時間である。
【0162】
溶媒を使用する場合、溶媒としては、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素溶媒、ブチルクロライド、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒、クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素溶媒、酢酸エチルや酢酸ブチル等のエステル溶媒、メチルエチルケトン、4-メチル-2-ペンタノン等のケトン溶媒等が挙げられ、好ましくは芳香族炭化水素溶媒とハロゲン化芳香族炭化水素溶媒、エステル溶媒、ケトン溶媒であり、特に好ましくはトルエン、キシレン、クロロベンゼン、酢酸ブチル、4-メチル-2-ペンタノンである。溶媒は必要に応じて2種以上を混合して使用することもできる。また、反応物(R)に、反応1で使用した溶媒が含まれている場合、この溶媒を反応2でも溶媒として使用することが出来るが、さらに上記の溶媒を追加してもよい。この場合、反応1と異なる溶媒を使用してもよい。
【0163】
溶媒の使用量は、イミダゾリウムカルボン酸塩(5)1質量部に対して、通常50質量部以下、好ましくは0.1質量部以上35質量部以下である。
【0164】
必要に応じて、窒素、アルゴン、ヘリウム等の反応に影響を与えない不活性ガス雰囲気下で反応させてもよい。
【0165】
反応終了後は、反応液を濃縮又はろ過により溶媒を除去することにより、アミデート化合物(2)を得ることができ、必要に応じ、再結晶やカラム分取等の精製をしても良い。
【0166】
本発明において、アミデート化合物(2)はブロックポリイソシアネート用ブロック剤解離触媒として好適に機能する。例えば、メチルエチルケトオキシム等のオキシム系化合物でブロックされたブロックポリイソシアネート化合物に対してブロック剤解離触媒として使用した場合、メチルエチルケトオキシムなどのオキシムを解離させ、ポリイソシアネートとし、さらに後述するイソシアネート反応性基を有する化合物との反応を促進させる効果に優れる。
【0167】
本発明のブロックポリイソシアネート組成物において、ブロックポリイソシアネート化合物とアミデート化合物(2)との配合比率は、必要とする物性により決定され、特に限定するものではなく、通常アミデート化合物(2)のアミデート基(mol)/[ブロックポリイソシアネート化合物の有効イソシアネート基(mol)]=0.001~0.5、好ましくは、0.01~0.1の範囲である。なお、アミデート化合物(2)のアミデート基とは下記式(A)で表される官能基を意味し、ブロックポリイソシアネート化合物の有効イソシアネート基とは、ブロックポリイソシアネート化合物からブロック剤が解離した際に再生されるイソシアネート基を意味する。
式(A):
【0168】
【化39】
(式中、R
4~R
11は各々前記に定義する通りである。CR
4R
5R
6又はCR
9R
10R
11は、アダマンチル基であってもよい。)
【0169】
本発明のブロックポリイソシアネート組成物においては、必要に応じて、当該技術分野で常用される公知のポリウレタン製造用触媒、添加剤、顔料、溶剤等を使用することができる。
【0170】
公知のポリウレタン製造用触媒としては特に限定するものではなく、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジ-2-エチルヘキサネート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオキサイド、ジオクチル錫ジオキサイド、錫アセチルアセトナート、酢酸錫、オクチル酸錫、ラウリン酸錫等の錫化合物や、オクチル酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス、ビスマスアセチルアセトナート等のビスマス化合物、チタン酸テトラ-n-ブチル、チタン酸テトライソプロピル、テレフタル酸チタン等のチタン化合物、トリエチルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジプロピレントリアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルグアニジン、1,3,5-トリス(N,N-ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、トリエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N-メチル-N’-(2-ジメチルアミノエチル)ピペラジン、N,N’-ジメチルピペラジン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エ-テル、1-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、1-ジメチルアミノプロピルイミダゾール等の3級アミン化合物、テトラメチルアンモニウムクロライド等のテトラアルキルアンモニウムハロゲン化物、水酸化テトラメチルアンモニウム塩等のテトラアルキルアンモニウム水酸化物、テトラメチルアンモニウム-2-エチルヘキサン酸塩、2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムギ酸塩、2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム-2-エチルヘキサン酸塩等のテトラアルキルアンモニウム有機酸塩類等の4級アンモニウム塩化合物が挙げられる。
【0171】
添加剤としては、特に限定するものではなく、例えば、ヒンダードアミン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の紫外線吸収剤、過塩素酸塩系、ヒドロキシルアミン系等の着色防止剤、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系、ヒドラジド系等の酸化防止剤、錫系、亜鉛系、アミン系等のウレタン化触媒、その他、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、顔料分散剤等が挙げられる。
【0172】
顔料としては、特に限定するものではなく、例えば、キナクリドン系、アゾ系、フタロシアニン系等の有機顔料、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ等の無機顔料、その他、炭素系顔料、金属箔状顔料、防錆顔料等の顔料が挙げられる。
【0173】
溶剤としては、特に限定するものではなく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ミネラルスピリット、ナフサ等の炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブ等のエステル類、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ブタノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、水等が挙げられ、これらの溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0174】
本発明の熱硬化性樹脂組成物について説明する。
【0175】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、本発明のブロックポリイソシアネート組成物およびイソシアネート反応性基を有する化合物を含む。
【0176】
イソシアネート反応性基を有する化合物としては、ポリオール、ポリアミン、アルカノールアミン等の活性水素基を2つ以上有する化合物が挙げられる。これらのイソシアネート反応性基を有する化合物は、2種以上の混合物であってもよい。
【0177】
本発明においてポリオールはヒドロキシル基を2つ以上有する化合物である。例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール、フッ素ポリオール等が挙げられる。中でも、ポリオールとしては、耐候性、耐薬品性、及び硬度の観点からは、アクリルポリオールが好ましい。又は、ポリオールとしては、機械強度、及び耐油性の観点からは、ポリエステルポリオールが好ましい。これらのポリオールは、2種以上の混合物であってもよい。
【0178】
ポリエーテルポリオールとしては、脂肪族アミンポリオール、芳香族アミンポリオール、マンニッヒポリオール、多価アルコール、多価フェノール、ビスフェノール類等の活性水素化合物及び、それらにアルキレンオキサイドを付加した化合物等が挙げられる。これらのポリエーテルポリオールは、2種以上の混合物であってもよい。
【0179】
脂肪族アミンポリオールとしては、アルキレンジアミン系ポリオールや、アルカノールアミン系ポリオール等が挙げられる。これらのポリオール化合物は、アルキレンジアミンやアルカノールアミンを開始剤としてエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等の環状エーテルの少なくとも1種を開環付加させた末端水酸基の多官能ポリオール化合物である。アルキレンジアミンとしては、公知の化合物が限定なく使用できる。具体的にはエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ネオペンチルジアミン等の炭素数が2~8のアルキレンジアミンの使用が好適である。これらの脂肪族アミンポリオールは、2種以上の混合物であってもよい。
【0180】
芳香族アミンポリオールは、芳香族ジアミンを開始剤としてエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等の環状エーテルの少なくとも1種を開環付加させた末端水酸基の多官能ポリエーテルポリオール化合物である。開始剤としては、公知の芳香族ジアミンを限定なく使用することができる。具体的には2,4-トルエンジアミン、2,6-トルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、p-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、ナフタレンジアミン等が挙げられる。これらの中ではトルエンジアミン(2,4-トルエンジアミン、2,6-トルエンジアミン又はこれらの混合物)の使用が特に好ましい。これらの芳香族アミンポリオールは、2種以上の混合物であってもよい。
【0181】
マンニッヒポリオールは、フェノール及び/又はそのアルキル置換誘導体、ホルムアルデヒド及びアルカノールアミンのマンニッヒ反応により得られた活性水素化合物又はこの化合物にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドの少なくとも1種を開環付加重合させることによって得られるポリオール化合物である。これらのマンニッヒポリオールは、2種以上の混合物であってもよい。
【0182】
多価アルコールとしては、二価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等)や3価以上のアルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、メチルグルコシド、ソルビトール、シュクロース等)等が挙げられる。これらの多価アルコールは、2種以上の混合物であってもよい。
【0183】
多価フェノールとしては、ピロガロール、ハイドロキノン等が挙げられる。これらの多価フェノールは、2種以上の混合物であってもよい。
【0184】
ビスフェノール類としては、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、フェノールとホルムアルデヒドとの低縮合物等が挙げられる。これらのビスフェノール類は、2種以上の混合物であってもよい。
【0185】
ポリエステルポリオールは、例えば、二塩基酸の単独又は2種類以上の混合物と、多価アルコールの単独又は2種類以上の混合物とを、縮合反応させることによって得ることができる。
前記二塩基酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等のカルボン酸等が挙げられる。
前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチルペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、2-メチロールプロパンジオール、エトキシ化トリメチロールプロパン等が挙げられる。
ポリエステルポリオールの具体的な製造方法としては、例えば、上記の成分を混合し、約160~220℃で加熱することによって、縮合反応を行うことができる。又は、例えば、ε-カプロラクトン等のラクトン類を、多価アルコールを用いて開環重合して得られるようなポリカプロラクトン類等もポリエステルポリオールとして用いることができる。
これらのポリエステルポリオールは、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、及びこれらから得られるポリイソシアネート等を用いて変性させることができる。中でも、耐候性及び耐黄変性等の観点から、ポリエステルポリオールは、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、及びこれらから得られるポリイソシアネートを用いて変性させることが好ましい。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物を水系ベース塗料として用いる場合には、ポリエステルポリオール中の二塩基酸等に由来する一部のカルボン酸を残存させておき、アミン、アンモニア等の塩基で中和することで、ポリエステルポリオールを水溶性又は水分散性の樹脂とすることができる。
【0186】
ポリエーテルポリオールは、例えば、以下(1)~(3)のいずれかの方法等を用いて得ることができる。
(1)触媒を使用して、アルキレンオキシドの単独又は混合物を、多価ヒドロキシ化合物の単独又は混合物に、ランダム又はブロック付加して、ポリエーテルポリオール類を得る方法。
【0187】
前記触媒としては、例えば、水酸化物(リチウム、ナトリウム、カリウム等)、強塩基性触媒(アルコラート、アルキルアミン等)、複合金属シアン化合物錯体(金属ポルフィリン、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛錯体等)等が挙げられる。
前記アルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド等が挙げられる。
【0188】
(2)ポリアミン化合物にアルキレンオキシドを反応させて、ポリエーテルポリオール類を得る方法。
前記ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン類等が挙げられる。
前記アルキレンオキシドとしては、(1)で例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0189】
(3)(1)又は(2)で得られたポリエーテルポリオール類を媒体としてアクリルアミド等を重合して、いわゆるポリマーポリオール類を得る方法。
前記多価ヒドロキシ化合物としては、例えば、以下の(i)~(vi)のものが挙げられる。
(i)ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等。
(ii)エリトリトール、D-トレイトール、L-アラビニトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール、ラムニトール等の糖アルコール系化合物。
(iii)アラビノース、リボース、キシロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、ラムノース、フコース、リボデソース等の単糖類。
(iv)トレハロース、ショ糖、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、メリビオース等の二糖類。
(v)ラフィノース、ゲンチアノース、メレチトース等の三糖類。
(vi)スタキオース等の四糖類。
【0190】
アクリルポリオールは、例えば、一分子中に1個以上の活性水素を有する重合性モノマーを重合させる、又は、一分子中に1個以上の活性水素を有する重合性モノマーと、必要に応じて、当該重合性モノマーと共重合可能な他のモノマーとを、共重合させることによって得ることができる。
【0191】
前記一分子中に1個以上の活性水素を有する重合性モノマーとしては、例えば、以下の(i)~(vi)のものが挙げられる。これらを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(i)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸-2-ヒドロキシブチル等の活性水素を有するアクリル酸エステル類。
(ii)メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸-2-ヒドロキシブチル、メタクリル酸-3-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸-4-ヒドロキシブチル等の活性水素を有するメタクリル酸エステル類。
(iii)グリセリンやトリメチロールプロパン等のトリオールの(メタ)アクリル酸モノエステル等の多価活性水素を有する(メタ)アクリル酸エステル類。
(iv)ポリエーテルポリオール類(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等)と上記の活性水素を有する(メタ)アクリル酸エステル類とのモノエーテル。
(v)グリシジル(メタ)アクリレートと一塩基酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、p-tert-ブチル安息香酸等)との付加物。
(vi)上記の活性水素を有する(メタ)アクリル酸エステル類の活性水素にラクトン類(例えば、ε-カプロラクタム、γ-バレロラクトン等)を開環重合させることにより得られる付加物。
【0192】
前記重合性モノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、以下の(i)~(iv)のものが挙げられる。これらを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(i)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸-n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸-n-ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル酸エステル類。
(ii)アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等、不飽和アミド類(アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等の不飽和カルボン酸類。
(iii)ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロプロピルトリメトキシシラン等の加水分解性シリル基を有するビニルモノマー類。
(iv)スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、フマル酸ジブチル等のその他の重合性モノマー。
【0193】
アクリルポリオールの具体的な製造方法としては、例えば、上記の単量体(モノマー)成分を、公知の過酸化物やアゾ化合物等のラジカル重合開始剤の存在下で溶液重合し、必要に応じて有機溶剤等で希釈することによって、アクリルポリオールを得る方法等が挙げられる。
【0194】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物を水系ベース塗料として用いる場合には、上記の単量体(モノマー)成分を溶液重合し、水層に転換する方法や乳化重合等の公知の方法を用いることで、水系ベースのアクリルポリオールを製造することができる。その場合、アクリル酸、メタアクリル酸等のカルボン酸含有モノマーやスルホン酸含有モノマー等の酸性部分を、アミンやアンモニアで中和することによって、アクリルポリオールに水溶性又は水分散性を付与することができる。
【0195】
ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、水酸基を2個以上有するポリブタジエン、水酸基を2個以上有する水素添加ポリブタジエン、水酸基を2個以上有する水素添加ポリイソプレン等が挙げられる。
また、ポリオレフィンポリオールにおいて、水酸基の数は、より高い塗膜強度を得られることから、3個であることが好ましい。
【0196】
本明細書において、「フッ素ポリオール」とは、分子内にフッ素を含むポリオールを意味する。フッ素ポリオールとして具体的には、例えば、特開昭57-34107号公報、特開昭61-275311号公報等で開示されているフルオロオレフィン、シクロビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、モノカルボン酸ビニルエステル等の共重合体等が挙げられる。
【0197】
ポリオールの水酸基価の下限値は、10mgKOH/g以上であることが好ましく、20mgKOH/g以上であることがより好ましく、30mgKOH/g 以上がさらに好ましい。
一方、ポリオールの水酸基価の上限値は、特別な限定はなく、例えば、200mgKOH/g以下であればよい。
すなわち、ポリオールの水酸基価は、10mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることが好ましく、20mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることがより好ましく、30mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。
【0198】
また、ポリオールの酸価は、0mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であることが好ましい。
水酸基価及び酸価は、JIS K1557に準拠して測定することができる。
【0199】
前記ポリオールの水酸基に対する、上述のブロックポリイソシアネート組成物のイソシアネート基のモル当量比(NCO/OH)は、0.2以上5.0以下が好ましく、0.4以上3.0以下がより好ましく、0.5以上2.0以下がさらに好ましい。
【0200】
前記ポリアミンとしては、1級アミノ基あるいは2級アミノ基を1分子中に2個以上有するものが用いられ、その中でも、1分子中に3個以上有するものが好ましい。
【0201】
ポリアミンの具体例としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4 ,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、ピペラジン、2-メチルピペラジン、イソホロンジアミン等のジアミン類、ビスヘキサメチレントリアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタメチレンヘキサミン、テトラプロピレンペンタミン等の3個以上のアミノ基を有する鎖状ポリアミン類、1,4,7,10,13,16-ヘキサアザシクロオクタデカン、1,4,7,10-テトラアザシクロデカン、1,4,8,12-テトラアザシクロペンタデカン、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン等の環状ポリアミン類が挙げられる。
【0202】
前記アルカノールアミンとは、1分子中に、アミノ基と水酸基を有する化合物を意味する。アルカノールアミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、N-(2-ヒドロキシプロピル) エチレンジアミン、モノ-、ジ-(n-またはイソ-)プロパノールアミン、エチレングリコール-ビス-プロピルアミン、ネオペンタノールアミン、メチルエタノールアミン等が挙げられる。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて完全アルキル型、メチロール型、アルキルアミノ基型アルキル等のメラミン系硬化剤を含有していてもよい。
【0203】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、有機溶剤を含有していてもよい。
【0204】
また、前記イソシアネート反応性基を有する化合物及び上述のブロックポリイソシアネート組成物は、有機溶剤を含有していてもよい。
【0205】
有機溶剤としては、上述のブロックポリイソシアネート組成物と相溶するものであることが好ましい。
【0206】
有機溶剤として具体的には、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ミネラルスピリット、ナフサ等の炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブ等のエステル類、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ブタノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、水等が挙げられ、これらの溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0207】
また、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、水中に溶解または分散した水性熱硬化性樹脂組成物として用いることができる。本発明の熱硬化性樹脂組成物が水性熱硬化性樹脂組成物として使用される場合、熱硬化性樹脂組成物における配合性を向上させるために、本発明におけるブロックポリイソシアネート組成物に対して、界面活性剤や水に対し混和性の傾向を示す溶剤等を使用してもよい。 界面活性剤としては、例えば、脂肪族セッケン、ロジン酸セッケン、アルキルスルホン酸塩、ジアルキルアリールスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸塩などのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマーなどのノニオン性界面活性剤が挙げられる。水に対し混和性の傾向を示す溶剤としては、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレグリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、イソブタノール、ブチルグリコール、N-メチルピロリドン、ブチルジグリコールまたはブチルジグリコールアセテート等が挙げられる。
【0208】
上記溶剤の中でも、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、イソブタノール、ブチルグリコール、N-メチルピロリドン、ブチルジグリコールが好ましく、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルがより好ましい。これらの溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸セロソルブ等のエステル類の溶剤は、溶剤自体が貯蔵中に加水分解する場合があり、好ましくない。
【0209】
本発明の熱硬化性樹脂組成物において、ブロックポリイソシアネート組成物とイソシアネート反応性基を有する化合物との配合比率は、必要とする物性により決定され、特に限定するものではなく、通常[ブロックポリイソシアネート組成物中のブロックポリイソシアネート化合物の有効イソシアネート基の量(mol)]/[イソシアネート反応性基を有する化合物の活性水素基の量(mol)]=0.2~5の範囲であり、好ましくは0.5~3の範囲である。なお、ブロックポリイソシアネート化合物の有効イソシアネート基とは、ブロックポリイソシアネート化合物からブロック剤が解離した際に再生されるイソシアネート基を意味する。
【0210】
本発明の熱硬化性樹脂組成物においては、必要に応じて、当該技術分野で常用される公知のポリウレタン製造用触媒、添加剤、顔料等を使用することができ、公知のブロックポリイソシアネートと混合して使用しても良い。
【0211】
公知のポリウレタン製造用触媒としては特に限定するものではなく、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジ-2-エチルヘキサネート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオキサイド、ジオクチル錫ジオキサイド、錫アセチルアセトナート、酢酸錫、オクチル酸錫、ラウリン酸錫等の錫化合物や、オクチル酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス、ビスマスアセチルアセトナート等のビスマス化合物、チタン酸テトラ-n-ブチル、チタン酸テトライソプロピル、テレフタル酸チタン等のチタン化合物、トリエチルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジプロピレントリアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルグアニジン、1,3,5-トリス(N,N-ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、トリエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N-メチル-N’-(2-ジメチルアミノエチル)ピペラジン、N,N’-ジメチルピペラジン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エ-テル、1-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、1-ジメチルアミノプロピルイミダゾール等の3級アミン化合物、テトラメチルアンモニウムクロライド等のテトラアルキルアンモニウムハロゲン化物、水酸化テトラメチルアンモニウム塩等のテトラアルキルアンモニウム水酸化物、テトラメチルアンモニウム-2-エチルヘキサン酸塩、2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムギ酸塩、2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム-2-エチルヘキサン酸塩等のテトラアルキルアンモニウム有機酸塩類等の4級アンモニウム塩化合物が挙げられる。
【0212】
添加剤としては、特に限定するものではなく、例えば、ヒンダードアミン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の紫外線吸収剤、過塩素酸塩系、ヒドロキシルアミン系等の着色防止剤、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系、ヒドラジド系等の酸化防止剤、錫系、亜鉛系、アミン系等のウレタン化触媒、その他、レベリング剤、消泡剤、レオロジーコントロール剤、チクソトロピー付与剤・増粘剤等、光安定剤、可塑剤、界面活性剤、カップリング剤、難燃剤、防錆剤、蛍光増白剤、顔料分散剤等の当該技術分野で使用されている各種添加剤が挙げられる。
【0213】
顔料としては、特に限定するものではなく、例えば、キナクリドン系、アゾ系、フタロシアニン系等の有機顔料、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ等の無機顔料、その他、炭素系顔料、金属箔状顔料、防錆顔料等の顔料が挙げられる。
【0214】
公知のブロックポリイソシアネートとしては、例えば、ポリイソシアネートと公知のブロック剤を反応させたブロックポリイソシアネートが挙げられる。公知のブロック剤としては、例えばフェノール、チオフェノール、メチルチオフェノール、キシレノール、クレゾール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノール等のフェノール系化合物、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム系化合物、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t-ブチルアルコール、t-ペンタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコールなどのアルコール系化合物、3,5-ジメチルピラゾール、1,2-ピラゾール等のピラゾール系化合物、1,2,4-トリアゾール等のトリアゾール系化合物、エチレンクロルヒドリン、1,3-ジクロロ-2-プロパノール等のハロゲン置換アルコール系化合物、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム、β-プロピルラクタム等のラクタム系化合物、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、マロン酸メチル、マロン酸エチル等の活性メチレン化合物系化合物が挙げられ、その他にもアミン系化合物、イミド系化合物、メルカプタン系化合物、イミン系化合物、尿素系化合物、ジアリール系化合物等も挙げられる。
【0215】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、自動車用、建物用、鋼製家具などの金属製品用、楽器などの木工製品用、建設機械などの機械車両用、サッシなどの建築資材用、事務機などの電機家電用などの塗料、人工皮革用やゴムロール用などのコーティング材、インク、接着剤、粘着剤、電子部品用の封止材、自動車用や建物用などのシーリング材、3Dプリンター用などの成形材料等に使用することができる。
【0216】
次いで、本発明の熱硬化性樹脂組成物の硬化方法について説明する。
【0217】
本発明の方法において、上記ブロックポリイソシアネート組成物とイソシアネート反応性基を有する化合物の混合物である熱硬化性樹脂組成物を加熱する。
【0218】
反応温度は、使用するブロックポリイソシアネート組成物中のブロックポリイソシアネート化合物およびアミデート化合物(2)によっても異なるが、60~250℃程度、好ましくは80~200℃程度とすることができる。反応時間は、30秒~5時間程度、好ましくは1分~60分程度とすることができる。
本発明の硬化物は、上記の本発明の熱硬化性樹脂組成物の硬化方法を経ることにより製造できる。
【実施例】
【0219】
本発明を製造例及び実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。
【0220】
(1)赤外分光分析条件
装置:日本分光株式会社製FT-IR-6600
測定方法:全反射測定法(クリスタル:ゲルマニウム)
積算回数:16回
(2)1H-NMR分析条件
装置:ブルカー株式会社製AV400
周波数:400MHz
(3)硬化温度、時間測定条件
装置:株式会社サイバー製 自動硬化時間測定装置まどか
撹拌棒:型番3JC-5060W
撹拌速度:自転100rpm、公転25rpm
【0221】
(4)固形分の算出方法
試料約1.5gを110℃で3時間加熱し、加熱前後の質量から試料中の固形分(%)を算出した。
【0222】
(5)熱硬化性樹脂組成物の組成
有効NCO基(mol):水酸基(mol):アミデート基(mol)=1.00:0.95:0.05になるように、ブロックポリイソシアネート化合物、イソシアネート反応性基を有する化合物、アミデート化合物を加え、ブロックポリイソシアネート化合物の固形分(g):溶剤(g)=1.0:1.0になるようにメチルイソブチルケトンを加えた。なお、ここでの溶剤とはブロックポリイソシアネート化合物の希釈に使用している溶剤を含む。有効NCO基(mol)と水酸基(mol)は下記式より算出した。
有効NCO基(mol)=ブロックポリイソシアネート仕込量(g)÷ブロックポリイソシアネートの有効NCO基含有率(%)÷4.202
水酸基(mol)=ポリオール仕込量(g)×ポリオールの水酸基価(mgKOH/g)÷56.1
【0223】
製造例B-1 ビウレット型HDIのMEKOブロック体の合成
窒素置換した200mL3つ口反応器に、ビウレット型HDI(デスモジュールN3200A、NCO基含有率:22.8(%)、住化コベストロウレタン株式会社製)60.0g(NCO基:0.33mol)、メチルイソブチルケトン(以下、MIBKという。)36.9gを仕込み65℃に昇温し、トリエチルアミン(以下、TEAという。)0.6gを加えた。その後、メチルエチルケトオキシム(以下、MEKOという。)29.0g(0.33mol)とMIBK22.9gを滴下し、65℃で2時間攪拌し、赤外分光分析でイソシアネート基の2270cm-1付近の赤外吸収ピークの消失を確認した。得られた反応溶液を減圧濃縮し、TEAと大部分のMIBKを除き、MIBK17.4gを加えてビウレット型HDIのMEKOブロック体のMIBK溶液を117.9g得た。得られたビウレット型HDIのTFEブロック体の固形分は74.7%、有効NCO基含有率は11.6%であった。
【0224】
製造例A-1 DOIm_PIの合成
【化40】
(工程1)
窒素置換した3Lの4つ口反応器に、n-オクチルアミン1049.9g(8.12mol)を仕込み、80℃まで昇温した。その後、反応器内に酢酸366.0g(6.09mol)と42wt%ホルマリン水溶液290.4g(ホルムアルデヒド純分4.06mol)の混合液を1時間かけて滴下した。滴下後の溶液を30分間撹拌し、40℃に冷却した。40℃に冷却した溶液に41wt%グリオキサール水溶液581.0g(グリオキサール純分4.06mol)を30分かけて滴下し、5時間攪拌した。攪拌後、得られた反応溶液を減圧濃縮し、1,3-ジ-n-オクチルイミダゾリウム酢酸塩を含む反応物を1582.0g得た。内部標準物質としてテトラリンを加えて
1H-NMR分析した結果、1,3-ジ-n-オクチルイミダゾリウム酢酸塩純分は1224.9g(3.47mol,収率85.5%)であった。
(工程2)
5Lの耐圧容器に、工程1で得られた反応物1070.1g(純分:828.6g、2.35mol)、トルエン1069.5g、炭酸ジメチル756.0g(8.39mol)を仕込み、窒素置換を行った。その後、120℃で15時間攪拌した。攪拌後、得られた反応混合物を1043.5gになるまで減圧濃縮し、そこへトルエンを加えて、トルエン溶液2058.6gを得た。
(工程3)
窒素置換した3Lの4つ口反応器に、工程2で得られたトルエン溶液1700.2g、トルエン807.4gを仕込み、加熱還流させた。加熱還流後の反応液に、フェニルイソシアネート229.7g(1.93mol)を2時間かけて滴下し、10時間攪拌した。攪拌後、得られた反応混合物を1433.1gになるまで濃縮し、ヘプタン761.0gを加えて、50℃まで加熱し、固体を全て溶解させ、混合溶液とした。次いで、得られた混合溶液を50℃から30℃まで冷却して結晶を析出させ、30℃で1時間攪拌した後に、毎時10℃ずつ2時間かけて10℃まで冷却し、10℃で更に1時間攪拌させることでスラリー液を得た。得られたスラリー液をろ過することで、微黄色固体として、上記式で表される化合物(DOIm_PI)を426.8g(1.04mol、工程2からの通し収率53.2%)得た。DOIm_PIの
1H-NMR分析結果を以下に示す。
1H-NMR(DMSO-d6)δ(ppm)=9.32(s,1H)、7.80(s,2H)、4.17(t,J=9.6Hz,4H)、1.78(m,4H)、1.63(s,3H)、1.23(m,20H)、0.85(t,J=6.4Hz,6H)
【0225】
製造例A-2 DtBIm_PIの合成
【化41】
(工程1)
窒素置換した300mLの4つ口反応器に、tert-ブチルアミン100.0g(1.36mol)を仕込み、40℃まで昇温した。その後、反応器内に酢酸62.1g(1.03mol)と40wt%ホルマリン水溶液50.8g(ホルムアルデヒド純分0.68mol)の混合液を1時間かけて滴下し、30分間撹拌撹拌した。撹拌後の溶液に後、40wt%グリオキサール水溶液99.0g(グリオキサール純分0.68mol)を30分かけて滴下し、5時間攪拌した。攪拌後、得られた反応溶液を減圧濃縮し、H
2O100.0gとトルエン100.0gを加えて分液操作を行った。分液後得られた水層を減圧濃縮し、1,3-ジ-tert-ブチルイミダゾリウム酢酸塩を含む反応物を123.2g得た。
(工程2)
180mLの耐圧容器に、工程1で得られた1,3-ビス-tert-ブチルイミダゾリウム酢酸塩を含む反応物40.0g、炭酸ジメチル52.6g(0.58mol)を仕込み、窒素置換を行った。その後、120℃で6時間攪拌した。攪拌後、得られた反応混合物を減圧濃縮し、黒色固体を得た。得られた黒色固体を、アセトン100.0gで洗浄し、白色固体を38.6g得た。
(工程3)
窒素置換した100mLの3つ口反応器に、工程2で得られた白色固体10.0g、クロロベンゼン40.0gを仕込み、加熱還流した。加熱還流後、反応器内にフェニルイソシアネート5.9g(0.043mol)とクロロベンゼン10.0gの混合液を10分かけて滴下し、1時間攪拌した。攪拌後、得られた反応混合物を濾過し、濾残をヘプタン50.0gで洗浄し、上記式で表される化合物(DtBIm_PI)を含む組成物を7.84g(0.017mmol、工程1からの通し収率30.0%)得た。DtBIm_PIの
1H-NMR分析結果を以下に示す。
1H-NMR(CDCl
3)δ(ppm)=7.56(d, J=6.6Hz,2H)、7.31(t,J=6.6Hz,2H)、7.07(s,2H)6.93(t,J=7.2Hz,1H)、1.87(s,18H)
【0226】
製造例A-3 DtOIm_PIの合成
【化42】
(工程1)
窒素置換した100mlの3つ口反応器に、酢酸6.97g(0.116mol)と40wt%ホルマリン水溶液5.80g(ホルムアルデヒド純分0.077mol)、40wt%グリオキサール水溶液11.2g(グリオキサール純分0.077mol)を仕込み、50℃まで昇温した。その後、反応器中の混合液に1,1,3,3-テトラメチルブチルアミン20.00g(0.154mol)を2時間かけて滴下し、2時間攪拌した。攪拌後、得られた反応溶液を減圧濃縮することで、1,3-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミダゾリウム酢酸塩を含む反応物を24.8g得た。
(工程2)
180mLの耐圧容器に、工程1で得られた1,3-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミダゾリウム酢酸塩を含む反応物24.8g、炭酸ジメチル27.0g(0.297mol)、トルエン30.0gを仕込み、窒素置換を行った。その後、耐圧容器中の混合液を120℃で6時間攪拌した。攪拌後、得られた反応混合物を減圧濃縮し、暗褐色固体を20.0g得た。
(工程3)
窒素置換した100mLの3つ口反応器に、工程2で得られた暗褐色固体10.4g、クロロベンゼン40.0gを仕込み、加熱還流した。加熱還流後の混合液を60℃まで冷却し、そこへフェニルイソシアネート3.9g(0.032mol)とクロロベンゼン12.2gの混合液を10分かけて滴下し、60℃で1時間攪拌した。攪拌後、得られた反応混合物を室温まで冷却し、そこへヘプタン50.0gを加えた後に濾過し、濾残をヘプタン50.0gで洗浄し、上記式で表される化合物(DtOIm_PI)を含む組成物を7.55g(0.014mmol、工程1からの通し収率36.0%)得た。DtOIm_PIの
1H-NMR分析結果を以下に示す。
1H-NMR(CDCl
3)δ(ppm)=7.59(d, J=9.2Hz,2H)、7.30(t,J=7.6Hz,2H)、7.08(s,2H)6.93(t,J=7.2Hz,1H)、2.40(m,4H)、1.87(m,12H)、0.99(s,18H)
【0227】
製造例A-4 DtOIm_crMDIの合成
【化43】
窒素置換した100mLの3つ口反応器に、製造例A-3の工程2で得られた暗褐色固体5.0g、クロロベンゼン20.0gを仕込み、加熱還流した。加熱還流後、反応器内にポリメリックMDI(Sumidur44V20:固形分100%、NCO基含有率32.0%、住化コベストロウレタン株式会社製)1.52g(NCO基0.012mol)、クロロベンゼン5.0gの混合液を10分かけて滴下し、1時間攪拌した。攪拌後、得られた反応混合物を、ヘプタン50.0gに滴下した後に濾過し、濾残をヘプタン50.0gで洗浄し、上記式で表される化合物(DtOIm_crMDI)を含む組成物を4.28g(0.014mmol、工程1からの通し収率52.0%)得た。DtOctIm_crMDIの
1H-NMR分析結果を以下に示す。
1H-NMR(CDCl
3)δ(ppm)=7.52-7.48(m)、7.35-7.30(m)、7.13-7.11(m)7.04-7.00(m)、1.87(m)、1.32(m)、0.93(m)
【0228】
製造例A-5 OMIm_PIの合成
【化44】
(工程1)
窒素置換した180mLのオートクレーブに1-オクチルイミダゾール25.0g(139mmol)、炭酸ジメチル16.7g(185mmol)、メタノール25.1gを仕込み、125℃で29時間撹拌した。撹拌後、反応混合物を室温まで冷却した。冷却した反応混合物に炭酸ジメチル8.5g(94mmol)を追加し、130℃で更に3時間撹拌した。得られた反応混合物を25℃に冷却し、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウム-2-カルボキシレート(以下、OMIm-CO
2と略記する。)のメタノール溶液を44.0g得た(純分33.0g、139mmol、収率99%)。
(工程2)
窒素置換した200mL試験管に工程2で得られたOMIm-CO
2のメタノール溶液4.0g(純分13mmol)、フェニルイソシアネート1.5g(13mmol)、トルエン100mLを仕込み、得られた混合物を内温110℃で3時間撹拌した。減圧濃縮し、上記式で表される化合物(OMIm-PI)を3.3g得た。さらに、酢酸ブチルで再結晶することで高純度のOMIm-PIを取得した。上記式で表される化合物の
1H-NMR分析結果を以下に示す。
1H-NMR(CD
3OD)δ(ppm)=7.51(s,1H)、7.45―7.33(m,6H)、4.37(t,J=7.4Hz,2H)、3.97(s,3H)、1.91-1.86(m,2H)、1.35-1.27(m,10H)、0.88(t,J=6.8Hz,3H)
【0229】
実施例1
熱硬化性樹脂組成物の組成が有効NCO基(mol):水酸基(mol):アミデート基(mol)=1.00:0.95:0.05になるように、製造例B-1で得られたビウレット型HDIのMEKOブロック体、ポリエステルポリオール(P-510、株式会社クラレ製)、製造例A-1で得られたDtBIm_PIを加えた。さらにブロックポリイソシアネート化合物物に対して溶媒量が1.0重量倍になるようにMIBKを加え30分間攪拌して、熱硬化性樹脂組成物を調製した。
あらかじめ所定の温度に加熱しておいた自動硬化時間測定装置のホットプレート上に調製した熱硬化性樹脂組成物 約0.6mLを注ぎ、撹拌した。その際に、攪拌開始直後の攪拌トルク1%(0.04mN・m)未満の状態から撹拌トルクが20%(0.86mN・m)を超えるまでの時間を硬化時間とし、150℃から80℃までの各温度における硬化時間の測定、30分以内で硬化した最低温度を導き出した。結果を表1に示す。
【0230】
実施例2、3、比較例1~3
実施例1において、DtBIm_PIに代え、ブロック剤解離触媒を表1に示すものに変えた以外は実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を調製し、各温度における硬化時間を測定し、30分以内で硬化した最低温度を導き出した。結果を表1に示す。
【0231】
【表1】
30分以内で硬化した最低温度 S:85℃以下、A:95℃以下、B:100℃以下、C:100℃を越える。