(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】遺伝子I177Lの欠失に基づく新規なアフリカ豚熱弱毒化生ワクチンの開発
(51)【国際特許分類】
C12N 7/01 20060101AFI20241120BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20241120BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20241120BHJP
C12N 7/04 20060101ALI20241120BHJP
C12N 15/34 20060101ALN20241120BHJP
【FI】
C12N7/01 ZNA
A61K39/12
A61P31/12 171
C12N7/04
C12N15/34
(21)【出願番号】P 2022518213
(86)(22)【出願日】2020-03-13
(86)【国際出願番号】 US2020022569
(87)【国際公開番号】W WO2021061189
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-03-09
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515257782
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ レプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー オブ アグリカルチャー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】グラドゥー、 ダグラス ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ボルカ、 マヌエル ブイ.
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-520827(JP,A)
【文献】XIONG, Dongyan et al.,“Rapid phylogenetic analysis of African swine fever virus from metagenomic sequences”,bioRxiv,2019年09月05日,DOI: 10.1101/756726
【文献】KRUG, Peter W. et al.,“The Progressive Adaptation of a Georgian Isolate of African Swine Fever Virus to Vero Cells Leads to a Gradual Attenuation of Virulence in Swine Corresponding to Major Modifications of the Viral Genome”,Journal of Virology,2015年02月15日,Vol. 89,No. 4,pp.2324-2332,DOI: 10.1128/JVI.03250-14
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00- 7/08
C12N 15/00- 15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子改変ウイルスであって、そのウイルスゲノムが配列番号2に対して少なくとも99%同一であるウイルスゲノムを含
み、前記ウイルスゲノムは配列番号1の位置174560~174671に対応する配列を欠く、遺伝子改変ウイルス。
【請求項2】
前記ウイルスゲノムが配列番号2を含む、請求項1に記載のウイルス。
【請求項3】
請求項1に記載の遺伝子改変ウイルスを含む、アフリカ豚熱ウイルス(ASFV)に対するワクチン組成物。
【請求項4】
前記ASFVがASFV-ジョージア2007単離株(ASFV-G)である、請求項3記載のワクチン組成物。
【請求項5】
ASFVから豚を保護するための方法であって、前記豚を臨床的ASFV疾患から保護するのに有効な量の請求項1に記載の遺伝子改変ウイルスを含む弱毒化生ワクチンを豚に投与することを含む、方法。
【請求項6】
前記ASFVがASFV-Gである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記豚を臨床的ASFV疾患から保護するのに有効な量が、10
2~10
6 HAD
50の請求項1に記載の遺伝子改変ウイルスを含むワクチンである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
組換えASFV突然変異体ウイルスであって、I177Lオープンリーディングフレーム中、またはI177Lタンパク質の発現を制御する調節エレメント中に合成突然変異を含んで非機能的ゲノムI177L遺伝子をもたらしている、組換えASFV突然変異体ウイルス。
【請求項9】
前記合成突然変異が、配列番号1の位置174471~位置175004の1つ以上のヌクレオチドの欠失を生じる欠失突然変異である、請求項8に記載の組換えウイルス。
【請求項10】
前記合成突然変異が、配列番号1の位置174471~位置175004の1つ以上のヌクレオチドのフレームシフト突然変異、挿入突然変異、ナンセンス突然変異である、請求項8に記載の組換えウイルス。
【請求項11】
前記突然変異体ASFVがASFV-ジョージア単離株である、請求項8記載の組換えウイルス。
【請求項12】
前記突然変異体ASFVが配列番号2に対して少なくとも95%同一であるゲノムを含む、請求項8記載の組換えウイルス。
【請求項13】
前記突然変異体ASFVが配列番号2に対して少なくとも99%同一であるゲノムを含む、請求項8記載の組換えウイルス。
【請求項14】
請求項8に記載の組換えウイルスを含む、ASFV-Gに対するワクチン組成物。
【請求項15】
ASFVから豚を保護するための方法であって、前記豚を臨床的ASFV疾患から保護するのに有効な量の請求項8に記載の組換えウイルスを含む弱毒化生ワクチンを豚に投与することを含む、方法。
【請求項16】
前記ASFVがASFV-Gである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記豚を臨床的ASFV疾患から保護するのに有効な量が、10
2~10
6 HAD
50の請求項8に記載の遺伝子改変ウイルスを含むワクチンである、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
【0002】
本開示は、高度毒性のジョージア2007単離株(「ASFV-G」)のようなアフリカ豚熱ウイルス(ASFV:African Swine Fever Virus)の種々の株により引き起こされるASFの予防のための、組換えASFV弱毒化生ワクチンの構築に関する詳細を提供する。例示的なワクチンは、I177L ORFの一部を欠失させてI177L遺伝子を機能しないようにすることにより改変された組換えASFV-Gである、ASFV-GΔI177l改変ウイルスを含む。
【背景技術】
【0003】
背景
【0004】
アフリカ豚熱(ASF:African Swine Fever)は豚の伝染性ウイルス病である。原因ウイルスであるASFウイルス(ASFV)は、約190キロベースペアの二本鎖DNAゲノムを含有する大型エンベロープウイルスである。ASFVは、Poxviridae、lridoviridaeおよびPhycodnaviridaeを含む他の大型二本鎖DNAウイルスとゲノム構造および複製戦略の側面を共有する(Costard et al, Phil. Trans. Royal Soc. B, (2009) 364:2683-96)。家畜ブタにおけるASFV感染はしばしば致死的であり、発熱、出血、運動失調および重度の抑うつにより特徴付けられる。しかしながら、感染の経過は様々であり、宿主の性質および特定のウイルス株に応じて、高度に致死的なものから亜臨床的なものにまで及ぶ(Tulman et al, Curr. Top. Microbial. lmmunol. (2009) 328:43-87)。
【0005】
現在、サハラ砂漠以南のアフリカ20カ国超で風土病となっている。ヨーロッパでは、サルデーニャ島(イタリア)で依然としてASFが流行しており、2007年以降コーカサス地方で新たな突発的流行(outbreaks)が宣言されており、ジョージア、アルメニア、アゼルバイジャン、およびロシアが影響を受けている。最近、ウクライナ、ベラルーシ、リトアニア、ラトビア、およびポーランドで突発的流行が報告され、野生豚と養豚場の両方が影響を受けている。2018~2019年にはASFは中国、モンゴル、ベトナム、カンボジア、および北朝鮮に広がった(野生豚と養豚場の両方において)。2019年には、ASFはベルギーの野生豚群にも広がり、この国では現在ASFの影響は小さな区域だけに食い止められている。近年のASFの突発的流行は、近隣諸国へのさらなる伝播のリスクを有している。流行性の親ウイルスASFVジョージア2007/1は、遺伝子型IIに属する高度に病原性の分離株であり(Chapman et al, Emerging Infect. Dis. (2011) 17:599-605)、アジアとヨーロッパにおける最近の全ての突発的流行の原因であって、突発的流行のウイルスは該親株に対して90%以上の類似性を有している。
【0006】
現在、ASFに利用可能な市販のワクチンはなく、病気の突発的流行は動物検疫と屠殺によってコントロールされている。感染細胞抽出物、感染ブタ末梢血白血球の上清、精製され不活化されたビリオン、グルタルアルデヒドで固定された感染マクロファージ、または界面活性剤で処理された感染肺胞マクロファージを用いて動物にワクチン接種する試みは、防御免疫を誘導することができなかった(Coggins, L., Prag. Med. Viral. (1974) 18:48-63; Forman et al, Arch. Viral., (1982) 74:91-100; Kihm et al, (1987) In: African Swine Fever, Becker, Y. (ed), Martinus Nijhoff, Boston, pp 127-44; Mebus, C. A., Adv. Virus Res., (1988) 35:251-69)。ウイルス感染を経て生き延びた豚では、相同性防御免疫(homologous protective immunity)が発達する。中程度毒性または弱毒化のASFVバリアントによる急性感染を経て生き延びた豚は、相同的なウイルスの負荷に対する長期的な耐性を発達させるが、異種のウイルスに対しては稀である(Hamdy and Dardiri, Am. J. Vet. Res. (1984) 45:711-14; Ruiz-Gonzalvo et al, (1981) In: FAO/CEC Expert Consultation in ASF Research, Wilkinson, P. J. (ed), Rome, pp 206-16)。本明細書では、ASFV‐GゲノムからI177L遺伝子の一部を欠失させた組換えワクチンの開発を報告する。このウイルスによる豚のワクチン接種は、ASF発生から豚を保護した。現在利用可能なASFVワクチンが存在しないため、この疾患の致死的顕出に対する保護を誘導し得るワクチンの開発は大きな関心事である。
【発明の概要】
【0007】
本開示は遺伝子改変ウイルスを提供し、そのウイルスは、配列番号2に対して少なくとも99%の同一性であるウイルスゲノムを含む。特定の実施形態では、ウイルスゲノムは配列番号2を含む。
【0008】
配列番号2に対して少なくとも99%の同一性であるウイルスゲノムを含む遺伝子改変ウイルスを含む、アフリカ豚熱ウイルス(ASFV)に対するワクチン組成物も本明細書において提供される。いくつかの実施形態において、ASFV株はASFV-ジョージア2007単離株である。
【0009】
本明細書ではさらに、豚をASFVから保護するための方法であって、遺伝子改変ウイルスを含む弱毒化生ワクチンを豚に投与することを含み、ここで該ウイルスは、配列番号2に対して少なくとも99%の同一性であるウイルスゲノムを、臨床的ASFV疾患から豚を保護するのに有効な量で含む、方法が提供される。いくつかの実施形態において、ASFVはASFV-Gである。特定の実施形態において、臨床的ASFV疾患から豚を保護するのに有効な量とは、102~106 HAD50の遺伝子改変ウイルスを含むワクチンである。
【0010】
本明細書で提供されるさらなる一実施形態は、I177Lオープンリーディングフレームにおける、またはI177Lタンパク質の発現を制御する調節エレメントにおける合成突然変異を含んで非機能的なゲノムI177L遺伝子をもたらす、組換えASFV突然変異体ウイルスである。特定の実施形態において、合成突然変異は、配列番号1の位置174471~175004の1つ以上のヌクレオチドの欠失をもたらす欠失突然変異である。他の実施形態において、合成突然変異は、配列番号1の位置174471~175004の1つ以上のヌクレオチドのフレームシフト突然変異、挿入突然変異、ナンセンス突然変異である。ある実施形態において、突然変異体ASFVは、ASFV-ジョージア分離株である。特定の実施形態では、突然変異体ASFVは、配列番号2に対して少なくとも95%の同一性、または少なくとも99%の同一性であるゲノムを含む。
【0011】
本明細書ではさらに、I177Lオープンリーディングフレームにおける、またはI177Lタンパク質の発現を制御する調節エレメントにおける合成突然変異を含んで非機能的なゲノムI177L遺伝子をもたらす組換えASFV突然変異体ウイルスを含む、ASFV-Gに対するワクチン組成物が提供される。
【0012】
本明細書ではまた、豚をASFVから保護するための方法であって、I177Lオープンリーディングフレームにおける、またはI177Lタンパク質の発現を制御する調節エレメントにおける合成突然変異を含んで非機能的なゲノムI177L遺伝子をもたらす組換えASFV突然変異体ウイルスを含む弱毒化生ワクチンを、臨床的ASFV疾患から前記豚を保護するのに有効な量で豚に投与する工程を含む、方法が提供される。特定の実施形態では、ASFVはASFV-Gである。いくつかの実施形態において、臨床的ASFV疾患から豚を保護するのに有効な量とは、102~106 HAD50の遺伝子改変ウイルスを含むワクチンである。
【0013】
参照による組み入れ
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許、および特許出願は、個々の刊行物、特許、または特許出願がそれぞれ参照によって組み入れられることが具体的かつ個別に示されている場合と同じ程度に、参照によって本明細書に組み入れられる。
【0014】
特許出願ファイルは、色付きで描かれた少なくとも1つの図面を含む。色付き図面を有するこの特許又は特許出願公開物の写しは、請求及び必要な手数料の納付があったときは庁によって提供される。
【0015】
本発明の新規な特徴は、請求項に具体的に記載されている。本発明の特徴および利点が、以下の詳細な説明および添付の図面において参照される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、ASFV-GΔI177L組換え突然変異ウイルスを作製するために使用されたカセットの図解を提供する。
【0017】
【
図2】
図2は、ASFV-G-ΔI177Lおよび親ASFV-Gのインビトロ成長特性のグラフ表示を提供する。初代豚マクロファージ細胞培養物に各ウイルスを感染させ (MOI=0.01) 、感染後の示された時間にウイルス収量を滴定した。データは3つの独立した実験からの平均を表す。ウイルス検出感度≧1.8 log
10 HAD
50/ml。
【0018】
【
図3】
図3は、10
2 HAD
50のASFV-G-ΔI177Lまたは10
2 HAD
50のASFV-GのいずれかをIM接種されたブタにおいて検出されたウイルス血症力価のグラフ表示を提供する。各曲線は、各群の個々の動物からの値を表す。ウイルス検出感度≧log
10 1.8 log
10TCID
50/ml。
【0019】
【
図4】
図4は、10
2、10
4、または10
6 HAD
50のASFV-G-ΔI177L(黒記号)、模擬接種(背景、赤で表示)、または10
2 HAD
50のASFV-G(白記号)のいずれかをIM接種されたブタ(左側のパネル)、および10
2 HAD
50のASFV-Gによるチャレンジ後のブタ(右側のパネル)における体温値の動態をグラフで表したものである。各曲線は、各群の個々の動物の値を表す。
【0020】
【
図5】
図5は、10
2、10
4、または10
6 HAD
50のASFV-G-ΔI177Lまたは10
2 HAD
50のASFV-GのいずれかをIM接種されたブタで検出されたウイルス血症力価のグラフ表示を提供する。10
2 HAD
50のASFV-Gによるチャレンジ後のウイルス血症。各曲線は各群の個々の動物からの値を表す。ウイルス検出感度≧log
10 1.8 TCID
50/ml。
【0021】
【
図6】
図6は、10
2、10
4、または10
6 HAD
50のASFV-G-ΔI177LのいずれかをIM接種されたブタにおいてELISAによって検出された抗ASFV抗体(IgM媒介は左欄のパネルに示され、IgG媒介は右欄のパネルに示されている)力価のグラフ表示を提供する。IgMによって媒介される抗体応答。各曲線は、各群の個々の動物からの値を表す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
アフリカ豚熱ウイルス(ASFV)は、豚産業に重大な経済的影響をもたらす、家畜豚の伝染性かつしばしば致死的であるウイルス性疾患の病原体である。アフリカ豚熱(ASF)のコントロールは、ワクチンが利用できないために妨げられている。自然発生、細胞培養適応、または遺伝子改変した弱毒生ASFVに由来する実験的ワクチンが以前に報告されている。しかし、これらのワクチンはいずれも商業的使用には開発されていない。本願では、高毒性ASFV分離株であるジョージア分離株(ASFV‐G)からの、これまで特徴付けされていなかった遺伝子I177Lの欠失が、ブタにおいてその完全な弱毒化を生じさせるという発見を報告する。機能的I177L遺伝子を欠くウイルス(例えば本明細書中に記載される特定のASFV-G-ΔI177L突然変異体)を筋肉内(IM)投与で接種された動物は、28日間の観察期間中、臨床的に正常なままであり続ける。重要なことに、ASFV-G-ΔI177L感染動物は、病原性の親株ASFV-Gで攻撃(challenge)された場合に保護された。
【0023】
本発明の好ましい実施形態がここに示され、説明される。このような実施形態が単なる例として提供されることは当業者には明らかであろう。本発明から逸脱することなく、多数の変形、変更、および置換が当業者には思い付くであろう。本明細書に記載される発明の実施形態に対する種々の代替物を、本発明の実施において使用することができる。含まれる請求項が、本発明の範囲を定義し、これらの請求項の範囲内の方法および構造ならびにそれらの等価物がそれらによってカバーされることが意図される。
【0024】
本明細書で使用される技術的および科学的用語は、他に定義されない限り、本発明が関係する技術分野の当業者によって一般に理解される意味を有する。本明細書では、当業者に知られている種々の材料および方法が言及される。組換えDNA技術の一般的原理を記載する標準的な参考文献としては、Sambrook et al., “Molecular Cloning: A Laboratory Manual”, 2d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Plainview, N.Y., 1989; Kaufman et al., eds., “Handbook of Molecular and Cellular Methods in Biology and Medicine”, CRC Press, Boca Raton, 1995; およびMcPherson, ed., “Directed Mutagenesis: A Practical Approach”, IRL Press, Oxford, 1991が挙げられる。
【0025】
当業者に知られる任意の適切な材料および/または方法を本発明の実施において利用することができる。本発明を実施するための材料および/または方法が記述される。以下の説明および実施例において言及される材料、試薬等は、別段の記載がない限り、市販の供給源から入手可能である。本発明は、ASFVの遺伝的に改変された株を生産するための方法を教示し、ツールを記述する。
【0026】
明細書および特許請求の範囲において使用される場合の、単数形「a」、「an」、および「the」の使用は、文脈が明確に他を指示しない限り、複数形の参照を含む。
【0027】
本明細書で使用される場合の、「単離された」、「精製された」、または「生物学的に純粋な」という用語は、天然状態でその参照材料に通常付随する成分を実質的にまたは本質的に含まない材料を表す。
【0028】
「約」という用語は、記載された値のプラスまたはマイナス10%として定義される。例えば、約1.0 gは、0.9 g~1.1 g、および具体的に言及されているかどうかにかかわらずその範囲内のすべての値を意味する。
【0029】
「本質的に~からなる核酸」という用語およびその文法的変形は、基準核酸配列から20以下の核酸残基だけ異なっており、かつ基準核酸配列の機能も果たす核酸を意味する。そのようなバリアントは、基準核酸配列よりも短いかもしくは長い配列、特定の位置に異なる残基を有する配列、またはそれらの組み合わせを含む。
【0030】
用語「アジュバント」は、抗原に対する免疫応答を非特異的に増強させる物質またはビヒクルを意味する。アジュバントは、抗原が吸着されるミネラル(ミョウバン、水酸化アルミニウム、またはホスフェート)の懸濁物;または、抗原溶液が鉱物油中で乳化された油中水型エマルジョン(例えばフロイントの不完全アジュバント)を含み得、これは、抗原性をさらに増強するために殺したマイコバクテリアの含有を伴うこともある(フロイントの完全アジュバント)。免疫刺激性オリゴヌクレオチドもアジュバントとして使用され得る(例えば、米国特許第6,194,388号;第6,207,646号;第6,214,806号;第6,218,371号;第6,239,116号;第6,339,068号;第6,406,705号;および第6,429,199号参照)。アジュバントは、共刺激分子などの生物学的分子も含む。
【0031】
投与する/「投与」という用語は、任意の有効な経路によって、対象に治療剤等の物質を提供する方法を意味する。投与経路の例としては、注射(皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、静脈内など)、経口、管内、舌下、直腸、経皮、鼻腔内、膣および吸入経路が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
本明細書中で使用される場合の用語「コード配列」および「コード領域」は、RNA、タンパク質、またはRNAもしくはタンパク質の任意の部分の合成のための遺伝情報をコードする、ヌクレオチド配列および核酸配列(RNAおよびDNAの両方を含む)を指す。
【0033】
本明細書で提供される組成物の「有効量」という用語は、有効量が表されているところの特定の機能を実行することができる組成物の量を表す。必要とされる正確な量は、関与する組成およびプロセスのような認識された可変要素に依存して、組成物ごとに、および機能ごとに変化し得る。有効量は1以上の施用で送達され得る。従って、正確な量を特定することは不可能であるが、しかし適切な「有効量」は、ルーチンの実験を介して当業者によって決定され得る。
【0034】
「I177L」、「ASFV I177L」、および「ゲノムI177L」という用語は同義であり、配列番号3として本明細書に定義される遺伝子、または配列番号4と同一の配列を有するタンパク質をもたらす塩基置換を有する配列番号3のいずれかのバージョンを表す。これらの用語は、適切な文脈において、欠失、挿入、および他の組換え改変を含むものなど、これらの配列番号の改変バージョンを指すこともできる。ASFV-GのオープンリーディングフレームI177Lは、177アミノ酸のタンパク質(配列番号4)をコードし、配列番号1のヌクレオチド位置174471と175004との間のリバース鎖上に位置する。
【0035】
本発明の文脈において、用語「非機能的ゲノムI177L」は、ASFVのゲノムに位置する改変されたI177L遺伝子を指し、ASFV I177L遺伝子のそのような改変は、改変されていない機能的ASFV I177L遺伝子と比較して、ASFV I177L遺伝子産物を全く生じないか、または生物学的に非機能的なASFV I177L遺伝子産物をもたらす。そのような改変には、コード配列の完全なもしくは部分的な欠失、オープンリーディングフレームの破壊(例えば、シフト変異の挿入やナンセンスコドンの挿入)、上流もしくは下流の調節エレメントの改変、および/またはそのようなASFV I177L遺伝子の機能的発現を不活性化またはノックアウトする現在知られているもしくは考えられるその他の方法が含まれるが、これらに限定されない。
【0036】
用語「免疫化する」は、対象をワクチン接種などにより感染性疾患から保護することを意味する。
【0037】
本発明の目的のために、2つの関連するヌクレオチドまたはアミノ酸配列の、パーセンテージとして表される「配列同一性」は、2つの最適に整列された配列中で同一の残基を有する位置の数(x 100)を、比較された位置の数で割ったものを表す。ギャップ、すなわちアラインメント中で一方の配列には残基が存在するが他方の配列には残基が存在しないところの位置は、非同一の残基を有する位置とみなされる。2つの配列のアラインメントは、Needleman and Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch, J Mol Biol, (1970) 48:3, 443-53)によって実行される。コンピュータ支援による配列アラインメントは、例えばWisconsin Package Version 10.1(Genetics Computer Group, Madison, Wisconsin, USA)の一部であるGAP(ギャップ作成ペナルティ50とギャップ拡張ペナルティ3でデフォルトのスコアリングマトリクスを使用)のような標準的ソフトウェアプログラムを使って、簡便に行うことができる。
【0038】
2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチドに関連した「高いパーセント同一」あるいは「高いパーセント同一性」という語句、およびその文法的変形は、配列比較アルゴリズムを用いて、または目視検査によって測定され、最大の対応のために比較および整列された場合に、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のヌクレオチドまたはアミノ酸同一性を有する2つ以上の配列またはサブ配列を表す。1つの例示的な実施形態において、配列は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の全長にわたって高いパーセント同一である。
【0039】
用語「ブタ」は、Suidae科の任意のメンバーを一般的に表すことができ、家畜および野生のブタ(pigs)、豚(hogs)、およびイノシシ(boars)を含む。
【0040】
「ワクチン」とは、本明細書において、それが送達された動物において防御応答を提供することができるが、重篤な疾患の原因になることはできない生物剤として定義される。ワクチンの投与は、疾患に対する免疫がもたらされる。従ってワクチンは、疾患を引き起こす病原体(例えばASFV)に対する抗体産生または細胞性免疫を刺激する。免疫とは、本明細書では、豚集団におけるワクチン接種後に、非ワクチン接種群と比較して致死性および臨床症状に対する有意に高いレベルの保護が誘導されることと定義される。特に、本発明によるワクチンは、ワクチン接種された動物の大部分を、疾患の臨床症状および致死性の発生から保護する。本開示のワクチンは、典型的には、遺伝子操作(組換え)された突然変異体ウイルスワクチンである。
【0041】
本開示の文脈において、「複製が欠損していない」という用語は、インビトロおよび/またはインビボで、複製することができ、および/またはウイルス子孫を産生することができる(ただし、そのような複製および/またはウイルス子孫産生は非改変親株と比較して低減されたレベルでも起こる場合もある)、非天然の組換えASFVを表す。従って、そのようなASFVは、インビトロで(例えば細胞培養において)は複製が欠損していないが、哺乳動物におけるインビボでは少なくとも部分的に複製が欠損しており例えば検出限界未満の複製および/またはウイルス子孫産生をもたらす場合があり得る。
【0042】
本明細書中で使用される場合、用語「最小用量」または「最小有効用量」とは、レシピエントに対して毒性の不在または最小の存在を示すが、それでいて所望の結果(例えば防御免疫)の産生をもたらす用量を表す。
【0043】
ウイルス/ワクチン
【0044】
本明細書では、親ASFV-Gゲノム(配列番号1)のI177L遺伝子(配列番号3)の一部の組換え欠失から生じる新規突然変異体ASFV-GΔI177Lウイルス(配列番号2)が提供される。特定の組換え突然変異体ASFV-GΔI177L(配列番号2)のゲノムヌクレオチド配列が本明細書に記載され、これは親ASFV-Gをコードするゲノムヌクレオチド配列(配列番号1)とは異なる。ASFV‐G I177Lにコードされる177アミノ酸のタンパク質(配列番号4)は、ASFV‐GΔI177Lの変異体ヌクレオチド配列によりコードされる予測変異体I177Lタンパク質とは異なる。ASFV-GΔI177L由来のI177Lタンパク質(配列番号6)は、野生型I177Lタンパク質のアミノ酸112から150までを欠くと予測される。p72Mcherryカセットがこの位置に挿入されるので(実施例のセクション参照)、この挿入後に残るコード領域が転写されるとは考えられず、その結果、ウイルス感染の際に機能的なI177Lタンパク質は産生されない。
【0045】
例示的な突然変異株(ASFV-GΔI177L(配列番号2))は、ASFV I177L遺伝子が非機能性とされた組換えワクチンの属(genus)の代表であり、その属には、欠失突然変異体、ナンセンス突然変異体、挿入突然変異体、フレームシフト突然変異体、およびI177Lタンパク質の非発現または非機能的I177Lタンパク質の発現をもたらす他の突然変異体が含まれるがこれらに限定されない。想定される他の組換えウイルスには、I177Lタンパク質の非発現または非翻訳をもたらす調節エレメントの突然変異体が含まれる。
【0046】
標的タンパク質(例えばI177L)の機能的発現排除することを意図した改変または標的タンパク質の発現低下もしくは活性低下には、標的遺伝子の全部または一部(標的遺伝子座のオープンリーディングフレーム、標的遺伝子座のプロモーター等の転写調節因子、およびオープンリーディングフレームの5’または3’に位置するその他の調節核酸配列を含むがこれらに限定されない)の欠失、オープンリーディングフレームへの未熟な終止コドンの挿入、およびリーディングフレームをシフトさせて翻訳の未熟な終結をもたらす挿入または欠失を含め、標的タンパク質をコードするDNAまたは遺伝子の突然変異が関わり得る。このような欠失性突然変異は、当業者に知られる任意の技術を用いて達成することができる。標的タンパク質のレベルの低下または標的タンパク質の活性の低下は、標的タンパク質をコードするDNAまたは遺伝子における点突然変異または挿入によっても達成することができる。開示されたヌクレオチド配列および遺伝子の突然変異性、挿入性、および欠失性バリアントは、当業者によく知られた方法によって容易に調製することができる。標的タンパク質の低下したレベルおよび/または低下した活性を達成するために使用される技術には、CRISPR/Cas、TALEN、およびZnフィンガーヌクレアーゼが含まれ得る。本明細書に開示された特定のものと機能的に等価である突然変異性、挿入性、および欠失性変異を作製することは、十分に当業者の技量の範囲内である。
【0047】
ASFV-GにおいてI117Lの欠失突然変異体を作製するために使用された本明細書に記載のアプローチは、機能性I117Lが存在するASFVの異なる分離株(アジア、ヨーロッパ、またはアフリカに分布する分離株等)において使用することができる。そのようなアプローチは、当該技術分野で公知の方法により変化させることができ、例えば蛍光タンパク質、発色基質と共に使用することができるベータ-グルクロニダーゼまたはベータ-ガラクトシダーゼのような酵素、および薬物選択マーカー等があるがこれらに限定されない、精製によって組換えウイルスを選択することができる異なる選択マーカーが使用され得る。このようなアプローチを用いて、I177LのORFへの任意の突然変異、ならびにI177L遺伝子の発現および翻訳を制御する調節エレメントへの突然変異であって非機能的I177Lタンパク質をもたらすものを作製することもできる。
【0048】
他のASFVの株および遺伝子型におけるI177L(および関連する株特異的アリル)の突然変異体もまた、本開示に包含される。配列番号3に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を示す核酸配列における合成突然変異を含むASFV株が、本発明に包含される。配列番号2に対して95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の同一性を有する全ゲノムを含むASFV株も本発明に包含される。
【0049】
本開示はさらに、非機能的I177L遺伝子と他の組換え突然変異との組み合わせも企図する。従って、本明細書中に開示されるように改変され得るのは野生型ウイルスだけではなく、他の遺伝子またはゲノム領域において非天然の突然変異を含有する株も改変され得る(例えば米国特許第9,814,771号参照)。
【0050】
本開示は、そのように合理的に設計された、生きた弱毒化ASFV-GΔI177Lを免疫原性組成物に組み込んで、ASFV-Gで攻撃された場合にブタ等の動物を臨床的ASF疾患から保護するために有効なワクチンを製造することができることを提示する。したがって、本発明の1つの目的は、合理的に設計された有効量の弱毒化ASFV-GΔI177L生ワクチンを投与することによってASFV-Gから動物を保護する方法を提供することである。別の実施形態では、本開示は、好ましくはSuidae科(例えば、家畜豚(Sus scrofa domesticus)、野生豚(Sus scrofa scrofa)、イボイノシシ(Potamochoerus porcus)、ヤブイノシシ(Potamochoerus larvatus)、モリイノシシ(Hylochoerus meinertzhageni)、および野生化豚)の動物において保護免疫応答を誘発するための方法を提供する。そのような方法は、典型的には、本明細書に記載のASFV免疫原性組成物およびワクチンの1つ以上をそのような動物に投与することを含む。
【0051】
本開示のさらなる目的は、野生型ASFVに感染した動物を、本明細書に記載の組換えウイルスでワクチン接種された動物から識別する方法を提供することである。ワクチン接種動物から感染動物を区別するためのそのような方法論(DIVA)は、野生型I177Lタンパク質と突然変異体I177Lタンパク質との間の違いを検出する血清学的試験により達成することができる。代替的に、そのような方法論は、PCR増幅および異なる産物の検出に基づくもの等の遺伝子スクリーニングアプローチを含み得る。典型的には、そのようなアプローチは、変異部位に隣接して同じ領域を拡大し、異なる長さまたは配列の産物を生じる1つ以上のプライマーセットを利用する。
【0052】
本発明の免疫原性組成物(複数可)は、含まれる他の成分にかかわらず、非機能的I177L遺伝子/タンパク質を有する組換えASFVを含む。本発明のI177Lタンパク質は、配列番号4の全体および配列番号4のタンパク質に対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の同一性を有するタンパク質を含み得る。
【0053】
本明細書に開示される免疫原性組成物の免疫原的有効量は、複数のパラメータに基づいて変動し得る。しかし、一般には、筋肉内投与のための投与単位当たりの有効量は、約102 50%血液吸着量(「HAD50」)~106 HAD50であり得る。1、2、またはそれ以上の投与単位が、本発明の方法を実施する際に利用され得る。投与単位は、所望の容積または質量に適合するように当業者によって容易に改変され得る。投与単位パラメータにかかわらず、本明細書に開示される免疫原性組成物は、免疫応答を生じるために有効な量で投与することができる。
【0054】
本明細書に開示されるワクチン中の活性成分の投与量レベルは、対象における、または用途ごとの所望の結果を達成するために当業者によって変化され得る。そのように、選択された投与量レベルは、製剤、他の治療との組み合わせ、既存状態の重症度、およびアジュバントの有無を含むがこれに限定されない様々な因子に依存し得る。好ましい実施形態において、最小用量の免疫原性組成物が投与される。最小用量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0055】
本発明のワクチンは、市販の弱毒化ASFV生ワクチンのために使用される従来の方法によって調製することができる。特定の実施形態では、感受性の基質(susceptible substrate)にASFV-GΔI177L突然変異体を接種し、ウイルスが所望のタイターに複製されるまで増殖させ、その後、ASFV-GΔI177L含有材料を収穫する。これに続いて、収穫された材料を、免疫原的特性を有するワクチン調製物に製剤化することができる。本明細書に提供される組換えウイルスの複製を支持することができるあらゆる基質を、本発明において使用することができ、それには豚末梢血マクロファージの初代培養物または感染豚からの血液が含まれる。
【0056】
製剤及び投与
【0057】
本明細書で提供されるワクチンは、生存形態での、上記で定義された組換えウイルスの1つと、このような組成物に慣用的に使用される薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む。担体としては、安定剤、保存剤および緩衝剤が挙げられる。適切な安定剤としては、例えば、SPGA(スクロース、ホスフェート、グルタメート、およびアルブミン)、炭水化物(ソルビトール、マンニトール、デンプン、スクロース、デキストラン、グルタメート、およびグルコース)、タンパク質(乾燥乳、血清、アルブミン、カゼイン)、またはそれらの分解産物が挙げられる。適切な緩衝剤としては、例えば、アルカリ金属リン酸塩が挙げられる。利用可能な保存剤としては、チメロサール、メルチオラートおよびゲンタマイシンが挙げられるが、これらに限定されない。希釈剤としては、水、水性緩衝液(例えば緩衝食塩水)、アルコールおよびポリオール(例えばグリセロール)が挙げられる。
【0058】
いくつかの例において、本発明のワクチンはまた、1つ以上のアジュバントを含有または包含し、アジュバントには、免疫原性組成物によって誘導されるレシピエントにおける免疫応答を増強させる、免疫原性組成物製剤に含まれる任意の物質を含む。ある場合には、そのようなアジュバントは、組換えウイルスと共に含まれるタンパク質、その他の成分を含み得る。他のアジュバントは、免疫原性組成物の追加成分として含めることができ、それらにはアルミニウム塩(ミョウバン)、油エマルジョン、サポニン、免疫刺激複合体(ISCOM)、リポソーム、マイクロ粒子、非イオン性ブロック共重合体、誘導体化多糖類、サイトカイン、および広範な細菌誘導体などのカテゴリーが含まれる。当技術分野で知られる任意の関連するアジュバントを、本明細書に開示される発明を実施する際に利用することができる。アジュバントの選択に影響を及ぼす因子としては、動物の種、具体的な病原体、抗原、免疫化の経路、および必要とされる免疫のタイプが挙げられ、当業者によって容易に決定することができる。
【0059】
本開示の免疫原性組成物は、組換えウイルスに加えて担体も含むことができる。本明細書で提供される免疫原性組成物を実施する際に利用される担体は、当該分野で公知の任意のものであり得、液体、固体、半固体またはゲルであり得る。製剤のタイプは、抗原の投与経路に応じて変更することができる。好ましくは、担体は、レシピエントに対して非毒性である。当業者は、家禽などのレシピエント動物への適用のためにこのような担体を容易に選択することができる。
【0060】
本開示は、少なくとも組換えウイルスを含む組成物中の、機能的I177L遺伝子/タンパク質を欠く組換えASFVを標的(例えばブタ)に導入するための、免疫原性組成物を提供する。したがって、本明細書に提供される組成物は、ASFV疾患に対する免疫または耐性を誘導するために利用することができる。
【0061】
本明細書で提供されるワクチンは、ASFVの毒性株による攻撃から動物を保護するために有効な量において、筋肉内、皮下、鼻腔内、または注射によって投与され得る。ワクチンは、直接経口接種、飲料水中投与、またはベイト(bait)送達システムを介して、経口的に投与され得る。組換えウイルスの有効量は、当業者によって考慮されるパラメータに従って変化し得る。有効量は、公知の方法または本明細書の実施例に提供されるガイダンスに従って、当業者によって必要に応じて実験的に決定され得る。
【0062】
本発明を一般的に説明してきたが、それは特定の実施例を参照することによってよりよく理解され、その実施例は、本発明をさらに説明するために本明細書に含まれ、特許請求の範囲によって定義される発明の範囲を限定することは意図していない。
【実施例】
【0063】
[実施例1]
【0064】
細胞培養およびウイルス。
【0065】
ブタ初代マクロファージ細胞培養物は、以前に記述されたように、脱線維素化ブタ血液から調製した(Zsak et al, J.Virol., (1998) 72:1028-35)。簡単に述べれば、ヘパリン処理したブタ血液を37℃で1時間インキュベートし、赤血球画分を沈降させた。Ficoll-Paque(Pharmacia, Piscataway, N.J.)密度勾配上の浮遊により単核白血球を分離した(比重1.079)。単球/マクロファージ細胞画分を、30% L929上清および20%ウシ胎児血清(HI-FBS, Thermo Scientific, Waltham, MA)を伴うRPMI 1640培地(Life Technologies, Grand Island, NY)からなるマクロファージ培地を含有するプラスチックPrimaria(Falcon; Becton Dickinson Labware, Franklin Lakes, N.J.)組織培養フラスコ中で、5% CO2下37℃にて48時間培養した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の10 mM EDTAを用いて接着細胞をプラスチックから分離し、次いで、24時間後のアッセイで使用するために、5×106細胞/mlの密度でPrimaria T25、6または96ウェルディッシュに再播種した。
【0066】
96ウェルプレートにおける豚マクロファージ細胞初代培養物を用いてウイルスの力価測定を行った。ウイルスの希釈および培養はマクロファージ培地を用いて行った。ウイルスの存在は血液吸着(HA)によって評価し、Reed and Muench法によりウイルスタイターを算出した(Amer. J. Hygiene, (1938) 27:493-497)。
【0067】
本研究に用いたASFVジョージア(ASFV‐G)は、ジョージア共和国トビリシの農業省研究所(LMA)のNino Vepkhvadze博士の厚意で提供されたフィールド分離株であった。
【0068】
[実施例2]
【0069】
組換えASFV-GΔI177Lの構築
【0070】
組換えASFVは、ブタマクロファージ細胞培養物を用いた感染およびトランスフェクション手順(Neilan et al, Virol., (2004) 319:337-42; Zsak et al, supra)において親ASFVゲノムと組換え移入ベクターとの間の逐次的相同組換えによって作製された。当該遺伝子の左側(1 kbp)および右側(1 kbp)にマッピングしI177Lの一部を含む隣接ゲノム領域と、ASFV p72後期遺伝子プロモーターを伴うmCherry遺伝子を含有するレポーター遺伝子カセット、p72mCherryとを含有する組換え移入ベクター(p72GUSΔI177L)を使用した。この構築物は、I177L ORFに112ヌクレオチドの欠失を創出した(アミノ酸残基112~150)(
図1)。DNA合成(Epoch Biosciences, Bothwell, WA, USA)により組換え移入ベクターp72mCherryΔI177Lを得た。マクロファージ細胞培養物をASFV‐Gに感染させ、p72mCherryΔI177Lでトランスフェクトした。プラークアッセイ精製の連続したラウンドにより、独立した一次プラークを表す組換えウイルスを均一状態にまで精製した。組換えウイルスは、豚マクロファージ細胞初代培養物の単層上で14回の連続したプラーク精製イベント後に取得された。
【0071】
[実施例3]
【0072】
親ASFV‐Gと対比されるASFV‐GΔI177Lの全ゲノム配列解析。
【0073】
遺伝子組換えの正確性および組換えウイルスのゲノムの完全性を評価するために、ASFV‐GΔI177Lおよび親ASFV‐Gの全ゲノム配列を次世代配列決定法(NGS)を用いて取得し、比較した。第一段階として、ASFV-GΔI177L突然変異体ウイルスを構築するために使用された親ASFV-G実験室株と、オリジナルのASFVジョージア2007/1(Chapman et al, Emerg. Infect. Dis., (2001) 17:599-605; GenBank accession FR682468)との間の全長ゲノム比較を実施した。ASFV DNAはTrizol法(Life Technologies, Grand Island, NY, USA)を用いて感染細胞の細胞質から得た。DNA濃度は、Qubit(登録商標)dsDNA HSアッセイキット(Life Technologies)を用いて測定し、Qubit(登録商標)2フルオロメーター(Life Technologies)上で読み取った。手短に述べると、サイズ断片化の分布について評価された酵素反応を用いてウイルスDNAを剪断し、次いで、アダプター配列を用いた識別バーコードのライゲーションをDNA断片に加えた。Pippin Prep(商標)(Sage Science, Beverly, MA)を用いて、ライブラリの必要サイズ域を収集し、正規化した。それからこのDNAライブラリーを、製造会社のプロトコールに従ってNextSeq(Illumnia, San Diego,CA)を用いたNGS配列決定のために用いた。配列分析はCLC Genomics Workbenchソフトウェア(CLCBio, Waltham, MA)を用いて行った。
【0074】
これらの2つのウイルスの間で、以下の違いが観察された(ヌクレオチド位置はASFVジョージア2007/1、GenBank accession FR682468?に基づいて提供されている):(i)3箇所のヌクレオチド挿入、すなわち位置433におけるT、ゲノムの非コード領域中の位置441におけるA、およびI177L遺伝子中の位置174954におけるA、これはI177LをORF ASFV_G_ACD_01760とマージさせるが、この追加のヌクレオチドは、ORF I117Lを他の分離株と同様の全長遺伝子に類似させ、なぜなら追加のAを伴って、参照ゲノムにおいて記述されているような早期終止コドンおよびアウトオブフレーム突然変異は存在しないからである;(ii)2ヌクレオチド欠失、すなわちMGF 360-1L遺伝子ORF中の位置1602におけるTおよび位置1603におけるT、これはフレームシフトをもたらす;(iii)一ヌクレオチド欠失、すなわちMGF 360-1L遺伝子ORF中の位置1620におけるT、これはフレームシフトをもたらす;(iv)一ヌクレオチド変異、すなわちORF B438Lにサイレント変異をもたらす位置97391におけるA→G;(v)一ヌクレオチド変異、すなわちORF E199Lの残基位置85において残基置換(AlaからPro)をもたらす位置166192におけるC→G;および(vi)ゲノムの非コードセグメントである位置183303におけるヌクレオチド挿入。
【0075】
組換えウイルスが親株から追加の遺伝的変化を獲得したかどうかを決定するために、ASFV‐GΔI177Lと親株ASFV‐Gとの間の全長ゲノム比較を行った。ASFV‐GΔI177LとASFV‐GのDNA配列アセンブリーは、導入した改変に対応するI177L遺伝子における112ヌクレオチド欠失を明らかにした。ASFV‐GΔI177lゲノムのコンセンサス配列は、標的遺伝子において112ヌクレオチド欠失を生成するために導入されたp72‐mcherryカセット配列に対応して、I177L遺伝子において3944ヌクレオチドの挿入を示した。該カセットの挿入の他に、ASFV‐GΔI177lとASFV‐Gのゲノム間に追加の違いは観察されなかった。要約すると、ASFV‐GΔI177lウイルスは相同組換えおよびプラーク精製の過程で有意な変異は蓄積していなかった。
【0076】
[実施例4]
【0077】
ブタにおけるASFV‐GΔI177L病原性の評価
【0078】
動物実験は、機関の動物実験委員会によって承認されたプロトコールに従って、PIADCの動物施設においてバイオセーフティレベル3の条件下で実施された。
【0079】
80~90ポンドの商業用種豚を用いて、病原性親ASFV-Gウイルスと比較したASFV-GΔI177Lの病原性表現型を評価した。5頭のブタに、102、104、106 HAD50のASFV‐GΔI177Lまたは102 HAD50のASFV‐Gウイルスを筋肉内(IM)接種した。臨床徴候(食欲不振、抑うつ、発熱、紫の皮膚変色、よろめき歩行、下痢、および咳嗽)と体温の変化を実験期間全体を通して毎日記録した。保護実験では、動物を102、104、106 HAD50のASFV-GΔI177LでIM接種し、28日後に、102 HAD50の病原性親ASFV-ジョージア2007株でIM攻撃した。疾患に関連する臨床徴候の存在を、前述のように評価した。
【0080】
10
4 HAD
50のASFV-GをIM経由で接種したすべてのブタは、感染後3~4日までに体温上昇(>104°F)を示した。ブタは、食欲不振、抑うつ、紫の皮膚変色、よろめき歩行、および下痢を含む、該疾患に関連する臨床症状を呈した(表1)。疾患の徴候は時間の経過とともに次第に悪化し、感染後7日目または9日目までに動物は死亡したか、最終的に安楽死させられた。逆に、10
2、10
4、または10
6 HAD
50のASFV-GΔI177LでIM接種された動物は、全観察期間(21日間)中に臨床疾患の徴候を示さなかった。したがって、I177L遺伝子の欠失は、病原性の親ASFV-Gの完全な弱毒化を生じさせた。模擬(Mock)ワクチン接種群の全動物は、対応するIACUCプロトコールに従って人道的理由により安楽死させられた。
表1:10
2 HAD
50用量のASFV-G-ΔI177Lまたは親ASFV-Gによる感染後のブタの生存率および発熱応答。
【表1】
【0081】
ASFV-Gに感染した動物は、pi 4日目に予想された高い同種力価(homogenous titers)(10
7.5~10
8.5 HAD
50/ml)を示し、pi 7日目までに増加して(約10
8.5 HAD
50/ml)全ての動物が安楽死させられた。逆に、ASFV-G-ΔI177Lは、pi 4日目に低いウイルス血症(10
1.8~10
2.3 HAD
50/ml)、pi 11日目までにピーク値に達し(10
3.8~10
7.5 HAD
50/ml)、その後pi 28日目まで力価を減少させる(10
2.3~10
4 HAD
50/ml)という、異なるパターンを示した(
図3)。なお、ASFV-G-ΔI177Lを接種された5頭のうち1頭では、当群の他の動物の平均ウイルス血症値よりも顕著に低いウイルス血症が認められた(評価時点によって、1,000~10,000倍低い)。従って、I177L遺伝子の欠失は、低用量で接種した場合に高度に病原性である親ASFV‐Gウイルスの完全な弱毒化を生じ、感染動物は比較的低い値での長いウイルス血症を示した。
【0082】
[実施例5]
【0083】
親ASFV‐Gによる攻撃に対するASFV‐GΔI177Lの保護効果。
【0084】
102 HAD50~106 HAD50のASFV-GΔI177LでIM接種されたブタは、疾患の徴候なしに感染を生き延びたので、102 HAD50~106 HAD50のASFV-GΔI177Lで接種された動物群(n=5)を、接種後28日目に、102 HAD50の親ASFV-GによってIMを介して攻撃した(相同チャレンジ)。同じ経路と用量で攻撃した5頭の未処置動物が、非接種/被攻撃対照群となった。すべての動物は102 HAD50のASFV-GΔI177LでIMワクチン接種し、28日後に102 HAD50のASFV-GウイルスでIM攻撃した。模擬ワクチン接種群のすべての動物は、対応するIACUCプロトコールに従って人道的理由により安楽死させられた。ASFV-GΔI177Lワクチン接種群の全動物は、攻撃後の21日間の観察期間中、臨床的に正常なままであった。
【0085】
ASFV-GΔI177Lを接種され攻撃された動物5頭は、全観察期間(21日間)のあいだ完全に無症状のままであった(表2)。模擬ワクチン接種/被攻撃対照群のすべての動物は、10
2 HAD
50のASFV-Gを接種された動物で観察されたもの(上記参照)と同様の臨床経過で疾患を発症した。従って、ASFV‐GΔI177Lは、高度に毒性である親ウイルスで攻撃された場合に臨床的疾患を発現することに対する防御を誘導することができる。
表2:ASFV-G-ΔI177L感染後28日目にASFV-Gウイルスで攻撃されたブタにおける生存率と発熱応答。
【表2】
【0086】
ASFV-Gで感染された動物におけるウイルス血症の分析では、pi 4日目に予想された高い力価(10
7.3~10
8.3 HAD
50/ml)が提示され、これはpi 7日目までに上昇して(平均10
8.5 HAD
50/ml)全動物が安楽死させられた。攻撃後いずれのASFV-G-ΔI177L感染動物においても、攻撃時に存在したものよりも高い値でのウイルス血症は認められず、ウイルス血症値は実験期間の最後(攻撃後21日目)まで漸減し、重要なことにその時にはこれらの動物のいずれの血液にも循環ウイルスは検出されなかった(
図5)。
【0087】
要約すると、ここでは、I177L遺伝子の欠失がASFV‐Gの病原性を劇的に改変し、ASFV‐GΔI177Lと名付けられる完全弱毒化ウイルスを産生する証拠を提示する。ASFV‐GΔI177Lで免疫化された動物は、病原性親ASFV‐Gによる攻撃から保護された。
【0088】
[実施例6]
【0089】
豚マクロファージにおけるASFV-G-I117Lの増殖能
【0090】
ブタ感染時にASFVの標的とされる主要細胞である豚マクロファージ細胞初代培養物を用いて、ASFV-G-ΔI177Lのin vitroの増殖特性を評価し、多段階増殖曲線において親ASFV-Gと比較した(
図2)。細胞培養物を0.01のMOIで感染させ、感染の2、24、48、72および96時間後(hpi:hours post-infection)にサンプルを収集した。結果は、ASFV‐G‐ΔI177Lが、親ASFV‐Gと比較して著しく減少した増殖キネティックスを示すことを示した。ASFV‐G‐ΔI177Lの収率は、評価した時点に応じてASFV‐Gより約100~1,000倍低くなっている。
【0091】
従って、I177L遺伝子の欠失は、親ASFV‐G単離株と比較してASFV‐G‐ΔI177Lが豚マクロファージ細胞初代培養物においてin vitroで複製する能力を著しく減少させた。
【0092】
[実施例7]
【0093】
ASFV-G-ΔI117L感染動物はワクチンウイルスを放出しない
【0094】
異なる群の5頭のブタを10
2、10
4、または10
6 HAD
50のASFV-GΔI177LでIM感染させた上記の実施例では、感染動物から放出される可能性のあるウイルスを検出するための見張り(センチネル)として、各群に模擬感染動物が共存していた。すべてのセンチネル動物は、臨床的に正常なままであった(
図4)。センチネル動物から得られた検体のいずれにもウイルスは検出されなかったことから(全採血時点ならびにpi 28日目に得た扁桃および脾臓検体)、ASFV-G-ΔI177L感染動物は、28日間という比較的長い共存期間のあいだ、ナイーブ豚を感染させるために十分なウイルスを放出することができないことが示された。
【0095】
要約すると、ワクチン接種された動物と28日間一緒にいた非ワクチン接種動物はいかなる臨床症状も示さず、採取した血液、扁桃および脾臓の検体はすべてワクチンウイルスについて陰性であったことから、当該ワクチンウイルスは非ワクチン接種動物へと放出することができないことが示された。
【0096】
[実施例8]
【0097】
ASFV-G-ΔI177Lに感染された動物における宿主抗体反応
【0098】
ASFV-G-ΔI177Lに感染されたすべての動物は、投与されたウイルスの用量に関わらず、同様に高い循環抗ASFV抗体価を有していた(
図6)。IgMおよびIgGアイソタイプによって媒介される抗体応答は、pi 12日目までに3群全てにおいて検出され始める。pi 14日目までに、両抗体アイソタイプによって媒介される応答は全群で最大レベルに達した。IgM媒介抗体応答はpi 21日目までに全ての動物で消失したが、IgG媒介応答はpi 28日目まで最小の変動で高く維持され、ASFV‐G‐ΔI177Lが接種された3群の動物間で有意な差がなかった。従って、攻撃の時点での抗ASFV抗体の存在と保護との間には密接な相関がある。なお、センチネル動物から得られた血清検体では、10
6 HAD
50のG-ΔI177Lを受けた群においてASFVによる感染後28日目の1つの検体で低い抗体価が観察されたことを除き、抗体は検出されなかったことが言及されるべきである。
【0099】
[実施例9]
【0100】
無菌免疫の誘導
【0101】
攻撃ウイルスのみを特異的に検出するためにI177L特異的リアルタイムPCR(約10 HAD50の検出を可能にする)を使用すると、試験された全ての血液試料は攻撃ウイルスの存在について陰性であった。さらに、観察期間の終了時(攻撃後21日目)に全ての動物から扁桃および脾臓試料を採取し、豚マクロファージ培養物におけるウイルス分離によりウイルスの存在について試験した。各群のほとんどの動物は、扁桃または脾臓のどちらかに感染性ウイルスの存在を示した(データは示していない)。次いで、全ての陽性試料を、I177L特異的リアルタイムPCRを用いて評価し、最初に102 HAD50/mlのASFV-G-ΔI177Lで感染させていた動物のうちの1頭に属する1つの脾臓のみにおいて、攻撃ウイルスの存在を検出した。これらの結果から、104 HAD50/ml以上を投与された被感染動物の全て、および102 HAD50/mlのASFV-G-ΔI177Lを投与された動物の大部分において、攻撃ウイルスの複製は不在であったことが示唆される。
【0102】
要約すると、102 HAD50/mlのASFV-G-ΔI177Lでワクチン接種した動物では部分的に無菌免疫(攻撃ウイルスの複製を許さない免疫)が達成され、104 HAD50/mlまたは106 HAD50/mlの用量のASFV-G-ΔI177Lでは完全に達成された。
【0103】
本開示は以下の実施形態を含む。
実施形態1
遺伝子改変ウイルスであって、そのウイルスゲノムが配列番号2に対して少なくとも99%同一であるウイルスゲノムを含む、遺伝子改変ウイルス。
実施形態2
前記ウイルスゲノムが配列番号2を含む、実施形態1に記載のウイルス。
実施形態3
実施形態1に記載の遺伝子改変ウイルスを含む、アフリカ豚熱ウイルス(ASFV)に対するワクチン組成物。
実施形態4
前記ASFVがASFV-ジョージア2007単離株(ASFV-G)である、実施形態3記載のワクチン組成物。
実施形態5
ASFVから豚を保護するための方法であって、前記豚を臨床的ASFV疾患から保護するのに有効な量の実施形態1に記載の遺伝子改変ウイルスを含む弱毒化生ワクチンを豚に投与することを含む、方法。
実施形態6
前記ASFVがASFV-Gである、実施形態5に記載の方法。
実施形態7
前記豚を臨床的ASFV疾患から保護するのに有効な量が、10
2
~10
6
HAD
50
の実施形態1に記載の遺伝子改変ウイルスを含むワクチンである、実施形態5に記載の方法。
実施形態8
組換えASFV突然変異体ウイルスであって、I177Lオープンリーディングフレーム中、またはI177Lタンパク質の発現を制御する調節エレメント中に合成突然変異を含んで非機能的ゲノムI177L遺伝子をもたらしている、組換えASFV突然変異体ウイルス。
実施形態9
前記合成突然変異が、配列番号1の位置174471~位置175004の1つ以上のヌクレオチドの欠失を生じる欠失突然変異である、実施形態8に記載の組換えウイルス。
実施形態10
前記合成突然変異が、配列番号1の位置174471~位置175004の1つ以上のヌクレオチドのフレームシフト突然変異、挿入突然変異、ナンセンス突然変異である、実施形態8に記載の組換えウイルス。
実施形態11
前記突然変異体ASFVがASFV-ジョージア単離株である、実施形態8記載の組換えウイルス。
実施形態12
前記突然変異体ASFVが配列番号2に対して少なくとも95%同一であるゲノムを含む、実施形態8記載の組換えウイルス。
実施形態13
前記突然変異体ASFVが配列番号2に対して少なくとも99%同一であるゲノムを含む、実施形態8記載の組換えウイルス。
実施形態14
実施形態8に記載の組換えウイルスを含む、ASFV-Gに対するワクチン組成物。
実施形態15
ASFVから豚を保護するための方法であって、前記豚を臨床的ASFV疾患から保護するのに有効な量の実施形態8に記載の組換えウイルスを含む弱毒化生ワクチンを豚に投与することを含む、方法。
実施形態16
前記ASFVがASFV-Gである、実施形態14に記載の方法。
実施形態17
前記豚を臨床的ASFV疾患から保護するのに有効な量が、10
2
~10
6
HAD
50
の実施形態8に記載の遺伝子改変ウイルスを含むワクチンである、実施形態14に記載の方法。
図示された実施形態の詳細を参照して本発明を説明したが、これらの詳細は、添付の特許請求の範囲に定義される発明の範囲を限定することを意図していない。排他的所有権または特権が主張される本開示の実施形態は、特許請求の範囲において規定される。
【配列表】