(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】電気的に隔絶されたトンネル磁気抵抗応力感知素子を利用した水素ガス・センサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/04 20060101AFI20241120BHJP
H10N 50/10 20230101ALI20241120BHJP
G01L 1/00 20060101ALI20241120BHJP
G01N 27/74 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
G01N27/04 F
H10N50/10 Z
H10N50/10 U
G01L1/00 F
G01N27/74
(21)【出願番号】P 2022524943
(86)(22)【出願日】2020-10-27
(86)【国際出願番号】 CN2020123946
(87)【国際公開番号】W WO2021083137
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-06-01
(31)【優先権主張番号】201911048138.8
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514116947
【氏名又は名称】江▲蘇▼多▲維▼科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】MULTIDIMENSION TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building D & E, No.2 Guangdong Road,Zhangjiagang Free Trade Zone,Zhangjiagang,Jiangsu,215634 China
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディーク、ジェイムズ ゲーザ
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、チーミン
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-307636(JP,A)
【文献】特開2003-037312(JP,A)
【文献】特開2017-216461(JP,A)
【文献】特表2015-513667(JP,A)
【文献】特開2002-357489(JP,A)
【文献】米国特許第07791150(US,B1)
【文献】特開平10-170377(JP,A)
【文献】米国特許第07900527(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0199071(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/00 - G01L 1/26
G01L 25/00
G01N 27/00 - G01N 27/10
G01N 27/14 - G01N 27/24
G01N 27/72 - G01N 27/9093
H01L 29/82
H10N 50/00 - H10N 59/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的に隔絶されたトンネル磁気抵抗応力感知素子を利用した水素ガス・センサであって、
変形可能な基板と、
該変形可能な基板上に位置する磁気抵抗ブリッジ応力センサ、該磁気抵抗ブリッジ応力センサを覆う電気的隔絶層、および該電気的隔絶層上に位置する磁気シールド層と、
水素ガスと直接反応するように該磁気シールド層上または該変形可能な基板の該磁気シールド層との反対面に位置する水素感知層と、を備え、該水素感知層は、該変形可能な基板と二重層構造を直接または間接的に形成し、該水素感知層は、水素ガスを吸収または放出して膨張変形または収縮変形を生じさせ、それによって該変形可能な基板の応力変化を引き起こすために使用され、該磁気抵抗ブリッジ応力センサは、該変形可能な基板の該応力変化を利用して水素ガス濃度を測定するために使用され、
前記変形可能な基板は、片持ち梁であり、
該片持ち梁は、固定部と、固定部の一方の側に配設された自由部とを含み、前記磁気抵抗ブリッジ応力センサは、該片持ち梁の自由部に配設され、または
前記変形可能な基板は膜アセンブリであり、該膜アセンブリはフレーム、および該フレームに取り囲まれた膜を備え、前記磁気抵抗ブリッジ応力センサは該膜上に配設され、
前記変形可能な基板の長さ方向はX軸方向であり、前記変形可能な基板の幅方向はY軸方向であり、前記磁気抵抗ブリッジ応力センサは複数の磁気抵抗センサ・ユニットを備え、その各々は平面X-Yに平行なマルチ・フィルム層スタック構造を備え、該マルチ・フィルム層は順にスタックされているピン止め層、基準層、バリア層、自由層、およびバイアス層を少なくとも備える、水素ガス・センサ。
【請求項2】
前記変形可能な基板は、Z軸方向に沿って配置された第1の面および第2の面を有し、
前記磁気抵抗ブリッジ応力センサは、プッシュ・プル・ブリッジ構造を有し、プッシュ磁気抵抗センサ・ユニットおよびプル磁気抵抗センサ・ユニットを備え、
該プッシュ磁気抵抗センサ・ユニットは、該第1の面に配設され、該プル磁気抵抗センサ・ユニットは、該第2の面に配設され、該プッシュ磁気抵抗センサ・ユニットおよび該プル磁気抵抗センサ・ユニットは、同じ大きさで反対方向の応力に耐える、請求項
1記載の水素ガス・センサ。
【請求項3】
各プッシュ磁気抵抗センサ・ユニットの前記自由層の初期磁気モーメントが前記Y軸から逸れる角度はαであり、
前記プッシュ磁気抵抗センサ・ユニットの前記自由層の磁気モーメントおよび前記プル磁気抵抗センサ・ユニットの前記自由層の磁気モーメントが、前記ピン止め層の対応する磁気モーメントを得るように同じ角度だけ時計回りまたは反時計回りに同時に回転させられるとき、各プル磁気抵抗センサ・ユニットの前記自由層の初期磁気モーメントが前記Y軸から逸れる角度は、90-αもしくは270-αであり、または
前記プッシュ磁気抵抗センサ・ユニットの前記自由層の該磁気モーメントおよび前記プル磁気抵抗センサ・ユニットの前記自由層の該磁気モーメントが、異なる方向におよび同じ角度だけ回転させられるとき、各プル磁気抵抗センサ・ユニットの前記自由層の該初期磁気モーメントが前記Y軸から逸れる角度は、90+αもしくは270+αであり、
αの値の範囲は、0°から360°までであり、
前記自由層が正の磁歪係数を有する材料で作製されて引張応力に耐えるとき、または負の磁歪係数を有する材料で作製されて圧縮応力に耐えるとき、αは0°または180°ではなく、前記自由層が正の磁歪係数を有する材料で作製されて圧縮応力に耐えるとき、または負の磁歪係数を有する材料で作製されて引張応力に耐えるとき、αは90°または270°ではない、請求項
2記載の水素ガス・センサ。
【請求項4】
前記変形可能な基板は、Z軸方向に沿って配置された第1の面および第2の面を有し、
前記磁気抵抗ブリッジ応力センサは、プッシュ・プル・ブリッジ構造を有し、プッシュ磁気抵抗センサ・ユニットおよびプル磁気抵抗センサ・ユニットを備え、
該プッシュ磁気抵抗センサ・ユニットおよび該プル磁気抵抗センサ・ユニットは、同時に該第1の面または該第2の面に配設され、該プッシュ磁気抵抗センサ・ユニットおよび該プル磁気抵抗センサ・ユニットは、同じ大きさで同じ方向の応力に耐える、請求項
1記載の水素ガス・センサ。
【請求項5】
各プッシュ磁気抵抗センサ・ユニットの前記自由層の初期磁気モーメントが前記Y軸から逸れる角度は、αであり、
前記プッシュ磁気抵抗センサ・ユニットの前記自由層の磁気モーメントおよび前記プル磁気抵抗センサ・ユニットの前記自由層の磁気モーメントが、前記ピン止め層の対応する磁気モーメントを得るように90°だけ時計回りまたは反時計回りに同時に回転させられるとき、各プル磁気抵抗センサ・ユニットの前記自由層の初期磁気モーメントが前記Y軸から逸れる角度は、180-αもしくは360-αであり、または
前記プッシュ磁気抵抗センサ・ユニットの前記自由層の該磁気モーメントおよび前記プル磁気抵抗センサ・ユニットの前記自由層の該磁気モーメントが、異なる方向におよび同じ角度だけ回転させられるとき、各プル磁気抵抗センサ・ユニットの前記自由層の該初期磁気モーメントが前記Y軸から逸れる角度は、αもしくは180+αであり、
αの値の範囲は、0°から360°までであり、
前記自由層が正の磁歪係数を有する材料で作製されて引張応力に耐えるとき、または負の磁歪係数を有する材料で作製されて圧縮応力に耐えるとき、αは0°または180°ではなく、前記自由層が正の磁歪係数を有する材料で作製されて圧縮応力に耐えるとき、または負の磁歪係数を有する材料で作製されて引張応力に耐えるとき、αは90°または270°ではない、請求項
4記載の水素ガス・センサ。
【請求項6】
前記水素感知層と同じ層内に非水素感知層をさらに備え、
前記片持ち梁は固定部ならびに該固定部の2つの辺にそれぞれ配設されている基準片持ち梁および感知片持ち梁を備え、該基準片持ち梁は基準エリアを備え、該感知片持ち梁は感知エリアを備え、または
前記膜アセンブリは前記フレームに取り囲まれた基準膜および感知膜を備え、該基準膜は基準エリアを備え、該感知膜は感知エリアを備え、
前記水素感知層は該感知エリア内の前記磁気シールド層上に配設され、前記非水素感知層は該基準エリア内の前記磁気シールド層上に配設される、請求項
1記載の水素ガス・センサ。
【請求項7】
前記変形可能な基板の基準エリアおよび感知エリアは、同じ平面上に位置し、
前記磁気抵抗ブリッジ応力センサは、基準ブリッジ構造を有し、基準磁気抵抗センサ・ユニットおよび感知用磁気抵抗センサ・ユニットを備え、
該基準磁気抵抗センサ・ユニットは、該基準エリア内に配設され、該感知用磁気抵抗センサ・ユニットは、該感知エリア内に配設される、請求項
6記載の水素ガス・センサ。
【請求項8】
各基準磁気抵抗センサ・ユニットの前記自由層の初期磁気モーメントが前記Y軸から逸れる角度はαであり、各感知用磁気抵抗センサ・ユニットの前記自由層の初期磁気モーメントが前記Y軸から逸れる角度はαであり、
前記基準磁気抵抗センサ・ユニットの前記自由層の磁気モーメントおよび前記感知用磁気抵抗センサ・ユニットの前記自由層の磁気モーメントは、前記ピン止め層の対応する磁気モーメントを得るように同じ角度だけ時計回りまたは反時計回りに同時に回転させられ、
αの値の範囲は、0°から360°までであり、
前記自由層が正の磁歪係数を有する材料で作製されて引張応力に耐えるとき、または負の磁歪係数を有する材料で作製されて圧縮応力に耐えるとき、αは0°または180°ではなく、前記自由層が正の磁歪係数を有する材料で作製されて圧縮応力に耐えるとき、または負の磁歪係数を有する材料で作製されて引張応力に耐えるとき、αは90°または270°ではない、請求項
7記載の水素ガス・センサ。
【請求項9】
前記磁気抵抗ブリッジ応力センサは、電気伝達ポート・アセンブリを備え、該電気伝達ポート・アセンブリは、前記変形可能な基板と直接接続され、封止材によって前記変形可能な基板上で封止される、請求項1記載の水素ガス・センサ。
【請求項10】
前記水素感知層は、AB
5、AB
3、AB
2、AB、およびA
2B型金属間化合物の少なくとも1つを含み、Aは強金属水素化物形成元素を表し、Bは遷移金属元素を表す、請求項1記載の水素ガス・センサ。
【請求項11】
前記Aは、希土類金属Ca、Mg、Zr、またはTiとすることができ、前記Bは、Ni、Co、Fe、Mn、またはCrとすることができる、請求項
10記載の水素ガス・センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、ガス・センサ技術に関し、より詳細には、電気的に隔絶されたトンネル磁気抵抗応力感知素子を利用した水素ガス・センサに関する。
【背景技術】
【0002】
有害な排出のない再生可能な新しいエネルギーとして、水素ガスが、化石燃料エネルギーの代替として使用され得る。水素ガスは、近年世界中でますます注目を集めており、急速に発展している。現在、米国、欧州連合、および日本などの世界の主要経済大国は、将来の自動車および家財用の新しいエネルギーおよび新しい燃料として水素ガスを促進する努力を惜しんでいない。トヨタおよび他の企業は、水素燃料自動車を設計および生産し始めている。
【0003】
水素ガスは、人間の感覚器官によって知覚することができないが、水素ガスは、空気の約4%の可燃性の閾値で、非常に燃えやすく、爆発を起こしやすい。水素ガス駆動機器の安全性を確実にするために、信頼でき、非常に感度のよい水素ガス・センサが必要とされる。
【0004】
たくさんの種類の従来の水素ガス・センサが存在するが、それらの多くは、光学測定法を利用して複雑であること、貧弱な水素ガス濃度測定レンジ、感度の低さ、遅い応答時間等などの欠点を有する。加えて、多くの既存のセンサが働く間、感知ユニットには電流および電圧があり、空気中の水素ガスの濃度が爆発限界に到達すると、ガスが点火可能になり、これによって爆発という結果になる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の実施形態は、水素ガス・センサの性能を改善するために電気的に隔絶されたトンネル磁気抵抗応力感知素子を利用した水素ガス・センサを提供する。
【0006】
本開示の実施形態は、電気的に隔絶されたトンネル磁気抵抗応力感知素子を利用した水素ガス・センサであって、変形可能な基板と、
変形可能な基板上に位置する磁気抵抗ブリッジ応力センサ、磁気抵抗ブリッジ応力センサを覆う電気的隔絶層、および電気的隔絶層上に位置する磁気シールド層と、
変形可能な基板の上方に位置する水素感知層と、を含み、水素感知層は、電気的隔絶層を覆う基板の変形に直角な平面内に位置し、水素感知層は、水素ガスを吸収または放出して膨張変形または収縮変形を生じさせ、それによって変形可能な基板の応力変化を引き起こすために使用され、磁気抵抗ブリッジ応力センサは、変形可能な基板の応力変化を利用して水素ガス濃度を測定するために使用される、水素ガス・センサを提供する。
【0007】
本開示の実施形態では、電気的に隔絶されたトンネル磁気抵抗応力感知素子を利用した水素ガス・センサが提供される。水素ガス・センサは、変形可能な基板、変形可能な基板上に位置するトンネル磁気抵抗(TMR)ブリッジ応力センサ、TMRブリッジ応力センサ上に位置する磁気シールド層、および水素感知層を備え、水素感知層は、水素ガスを吸収または放出して膨張または収縮を生じさせ、それによって変形可能な基板の応力変化を引き起こすために使用され、磁気抵抗ブリッジ応力センサは、応力信号を収集し、それを電気信号に変換するように構成され、それによって応力と水素ガス濃度との間の関係に従って水素ガス濃度の測定を実現する。各実施形態では、変形可能な基板は、水素感知層の変化に従ってリアル・タイムで対応する変化を感度よくもたらすことができ、これにより水素ガス・センサの感度および応答速度を改善し、さらに、この測定方法はシンプルである。加えて、水素ガス環境と磁気抵抗ブリッジ応力センサとの間の電気的隔絶が、電気的隔絶層の存在下で実現することができ、それによって安全性が保証され、水素ガス・センサは、高い水素ガス濃度を有する環境中で使用することもでき、したがって、測定レンジを拡大する。それにより、性能が改善された水素ガス・センサになる。
【0008】
本開示の実施形態および先行技術における技術的解決策をより明確に示すために、実施形態および先行技術の説明に必要とされる図面が、以下により簡単に説明されており、図面は単に本開示のいくつかの実施形態であり、創作的な労力なしでこれらの図面に従って他の図面を得ることもできることが当業者に明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態によって提供される水素ガス・センサの概略図である。
【
図2】本開示の実施形態によって提供される水素感知層および片持ち梁の構造および応力分布の概略図である。
【
図3】本開示の実施形態によって提供される水素感知層および片持ち梁の構造および応力分布の概略図である。
【
図4】本開示の実施形態によって提供される水素感知層および膜アセンブリの構造および応力分布図である。
【
図5】本開示の実施形態で説明されるような磁気抵抗センサ・ユニットのスタック構造の概略図である。
【
図6】本開示の実施形態によって提供されるプッシュ・プル磁気抵抗ブリッジ応力センサ、ならびに片持ち梁上のその構造および応力分布の概略図である。
【
図7】本開示の実施形態によって提供されるプッシュ・プル磁気抵抗ブリッジ応力センサ、ならびに膜アセンブリ上のその構造および応力分布の概略図である。
【
図8】本開示の実施形態によって提供されるプッシュ・プル磁気抵抗ブリッジ応力センサ、ならびに膜アセンブリ上のその構造および応力分布の概略図である。
【
図9A-9P】異なる初期磁気モーメントにおける引張応力および圧縮応力の作用下の磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の回転角の図である。
【
図10A-10D】引張応力および圧縮応力の作用下の自由層の初期磁気モーメント角および回転角の周方向の分布図である。
【
図11】本開示の実施形態によって提供されるプッシュ・プル磁気抵抗ブリッジ応力センサ、ならびに片持ち梁上のその構造および応力分布の概略図である。
【
図12】本開示の実施形態によって提供されるプッシュ・プル磁気抵抗ブリッジ応力センサ、ならびに片持ち梁上のその構造および応力分布の概略図である。
【
図13】本開示の実施形態によって提供されるプッシュ・プル磁気抵抗ブリッジ応力センサ、ならびに膜アセンブリ上のその構造および応力分布の概略図である。
【
図14】本開示の実施形態によって提供されるプッシュ・プル磁気抵抗ブリッジ応力センサ、ならびに膜アセンブリ上のその構造および応力分布の概略図である。
【
図15A-15F】引張応力および圧縮応力の作用下の自由層の初期磁気モーメント角および回転角の周方向の分布図である。
【
図16】本開示の実施形態によって提供される基準磁気抵抗ブリッジ応力センサ、ならびに片持ち梁上のその構造および応力分布の概略図である。
【
図17】本開示の実施形態によって提供される基準磁気抵抗ブリッジ応力センサ、ならびに膜アセンブリ上のその構造および応力分布の概略図である。
【
図18】本開示の実施形態によって提供される基準磁気抵抗ブリッジ応力センサ、ならびに膜アセンブリ上のその構造および応力分布の概略図である。
【
図19A-19D】基準引張応力および圧縮応力の作用下の自由層の初期磁気モーメント角および回転角の周方向の分布図である。
【
図20A-20D】磁気抵抗ブリッジ応力センサのブリッジ構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の実施形態の目的、技術的解決策、および利点をより明確にするために、本開示の実施形態における技術的解決策は、本開示の実施形態における図面を参照して以下により明確かつ完全に説明される。説明される実施形態は、一部であり、本開示の実施形態の全てではないことが明らかである。本開示の実施形態に基づいて、創作的な労力なしで当業者によって得られる全ての他の実施形態は、本開示の保護範囲内に入るものとする。
【0011】
図1を参照すると、電気的に隔絶されたトンネル磁気抵抗応力感知素子を利用した水素ガス・センサが、本開示の一実施形態によって与えられる。本実施形態によって与えられる水素ガス・センサは、変形可能な基板1と、変形可能な基板1上に位置する磁気抵抗ブリッジ応力センサ2と、磁気抵抗ブリッジ応力センサ2を覆う電気的隔絶層3と、電気的隔絶層3上に位置する磁気シールド層4と、変形可能な基板1の上方に位置する水素感知層5とを含む。水素感知層5は、電気的隔絶層3を覆う基板1の変形に直角な平面内に位置する。水素感知層5は、水素ガスを吸収または放出して膨張変形または収縮変形を生じさせ、変形可能な基板1の応力変化を引き起こすために使用される。磁気抵抗ブリッジ応力センサ2は、変形可能な基板1の応力変化を利用して水素ガス濃度を測定するために使用される。
【0012】
本実施形態によれば、変形可能な基板1は、適宜、任意の種類の変形可能なフィルム層または基板であってもよく、変形可能な基板1は、元の状態において平坦な状態にあり、変形可能な基板1は、変形させられ、変形した状態で応力変化をもたらす。適宜、変形可能な基板1は片持ち梁であり、または変形可能な基板は膜アセンブリであり、膜アセンブリは、フレームに取り囲まれたフレームおよび膜を含み、磁気抵抗ブリッジ応力センサは、膜上に配設される。
【0013】
本実施形態によれば、変形可能な基板1は、磁気抵抗ブリッジ応力センサ2を備え、磁気抵抗ブリッジ応力センサ2は、磁気抵抗センサ・ユニットを含み、磁気抵抗ブリッジ応力センサ2は、電気的隔絶層3、および電気的隔絶層3上に位置する磁気シールド層4で覆われる。電気的隔絶層3は、磁気抵抗ブリッジ応力センサ2の電源環境と外部環境との間の電気的絶縁隔絶、特に、水素ガス環境の場合には水素ガス環境と電源環境との間の隔絶を実現するように構成され、これによって水素ガスの爆発を防ぎ、製品試験の安全性を改善する。磁気シールド層4は、磁気抵抗ブリッジ応力センサ2に対する外部環境の磁場の影響を防ぐように磁気抵抗ブリッジ応力センサ2から外部環境の磁場を隔絶することができ、それによって磁気抵抗ブリッジ応力センサ2は、変形可能な基板1の変形信号を主に収集し、それに応じて、磁気抵抗ブリッジ応力センサ2の試験の正確さが改善される。適宜、磁気抵抗ブリッジ応力センサ2は、トンネル磁気抵抗ブリッジ応力センサであり、電気的隔絶層は、適宜、電気的隔絶を実現することができる任意の種類のフィルム層であり、磁気シールド層は、適宜、電磁シールドを実現することができる任意の種類のフィルム層である。
【0014】
本実施形態によれば、水素感知層5は、変形可能な基板1の上方に配設され、適宜、
図1に示されるように、水素感知層5は、磁気シールド層4に取り付けられ、他の実施形態では、水素感知層は、変形可能な基板に適宜直接取り付けることもできる。水素感知層5は、電気的隔絶層3を覆う基板1の変形に直角な平面内に位置し、次いで、水素感知層によって覆われたエリア内の変形可能な基板1の変形は、水素ガスを吸収または放出する水素感知層5の変形によって引き起こされることが可能であり、それによって水素感知層によって覆われたエリア内に位置する磁気抵抗ブリッジ応力センサ2は、変形可能な基板1の応力変化に従って水素ガス濃度測定を実行することができる。水素感知層5は、水素ガスを吸収するときに膨張変形を受け、水素ガスを放出するときに収縮変形を受ける。適宜、水素感知層は、非Pd系水素貯蔵金属または合金で作製され、したがって水素ガスと反応して水素化物を形成することができ、これにより、格子定数、体積、および長さの増加という結果になる。膜構造が基板と一緒に水素感知層によって形成されるとき、引張応力は、水素感知層と接触している基板面に形成され得、圧縮応力は、水素感知層に接触していない基板面に形成され得る。適宜、水素感知層は、AB
5、AB
3、AB
2、AB、およびA
2B型金属間化合物のうちの少なくとも1つを含み、ただし、Aは、強金属水素化物形成元素を表し、Bは、遷移金属元素を表す。適宜、Aは、希土類金属Ca、Mg、Zr、またはTiを含み、Bは、Ni、Co、Fe、Mn、またはCrを含む。
【0015】
図1に示されたように、適宜、磁気抵抗ブリッジ応力センサ2は、変形可能な基板1の上面に位置することができる。他の実施形態では、磁気抵抗ブリッジ応力センサは、適宜、変形可能な基板の下面に位置してもよく、または他の実施形態では、磁気抵抗ブリッジ応力センサは、適宜、変形可能な基板の上面と下面の両方に同時に分布することもできる。磁気抵抗ブリッジ応力センサが、変形可能な基板の一方の側における面上に配設される場合でも、または両側における面上に配設される場合でも、磁気抵抗ブリッジ応力センサは、順にスタックされている電気的隔絶層および磁気シールド層を備えることが理解できる。
【0016】
適宜、磁気抵抗ブリッジ応力センサ2は、電気伝達ポート・アセンブリ7を備え、電気伝達ポート・アセンブリ7は、変形可能な基板1と直接接続され、封止材8によって変形可能な基板7上で封止され、変形可能な基板7は、基板6を含み、電気伝達ポート・アセンブリ7は、磁気抵抗ブリッジ応力センサ2の電源ポート、接地ポート、および出力ポートなどの様々なポートを含み、電気伝達ポート・アセンブリ7は、基板6の上方に位置し、封止材8によって封止される。応力と水素ガス濃度との間の対応する関係は、以下の公式によって推定および説明される。
【0017】
水素ガス雰囲気中において、水素感知層5は、水素ガスを吸収し、金属水素化物になり、その体積および長さは、膨張しまたは長くなり、非水素ガス雰囲気において、水素感知層5内の水素化物は、水素ガスを解放し、したがって金属および合金に還元され、それによって水素感知層5の体積および長さは、元の状態に戻る。水素ガスを吸収または放出する水素感知層5の特性は、材料の熱膨張、冷間収縮に類似する。水素膨張係数γが、水素感知層5のために定められ得る。水素膨張係数γと水素感知層5との間の関係は、熱膨張係数と材料との間の関係に類似する。水素膨張係数γは、水素ガスを吸収または放出する水素感知層5の特性を表し、水素膨張係数γの式(1)は、以下の通りである。
【数1】
ただし、Lは水素感知層の元の長さであり、cは水素ガス濃度である。明らかに、水素膨張係数γは、水素ガス濃度cの関数であり、水素ガス濃度cに比例する。
【0018】
図2および
図3は、水素感知層の変形、および変形可能な基板の応力分布を示す概略図である。適宜、変形可能な基板1は、片持ち梁であり、片持ち梁1は、固定部1aと、固定部1aの一方の側に配設された自由部1bとを含み、自由部1bの延在方向は、X軸方向であり、磁気抵抗ブリッジ応力センサ2は、片持ち梁1の自由部1bに配設される。二重層構造は、水素感知層5および片持ち梁1によって形成され、ここで二重層は、水素感知層5および片持ち梁1が二重層構造を直接または間接的に形成することを意味する。水素感知層5の変形は、片持ち梁1によって制約を受ける。
【0019】
図2に示されるように、水素感知層5は、片持ち梁1の上面に位置し、水素ガスを吸収することによって膨張および変形し、結果として片持ち梁1の自由部1bの変形、および片持ち梁1の断面11に対する内部応力の変化になる。片持ち梁1の自由部1bは下向きに曲がり、片持ち梁1の上面はストレッチ応力(引張応力とも呼ばれる)12を生じ、片持ち梁1の下面は圧縮応力13を生じ、片持ち梁1内の平面10は断面11内のゼロ歪み平面に対応する。
【0020】
図3に示されるように、水素感知層5は、片持ち梁1の下面に位置し、水素ガスを吸収することによって膨張および変形し、結果として片持ち梁1の自由部1bの変形、および片持ち梁1の断面11’に対する内部応力の変化になる。片持ち梁1の自由部1bは上向きに曲がり、片持ち梁1の上面は圧縮応力12’を生じ、片持ち梁1の下面は引張応力13’を生じ、片持ち梁1内の平面10’は断面11’内のゼロ歪み平面に対応する。
【0021】
応力はσであり、引張応力σは0よりも大きく、圧縮応力σは0未満である。引張応力は、変形可能な基板の表面に対する水素感知層によるストレッチ応力、または水素感知層に対する変形可能な基板の表面によるストレッチ応力として特徴付けることができ、圧縮応力は、変形可能な基板の表面に対する水素感知層による圧縮応力、または水素感知層に対する変形可能な基板の表面による圧縮応力として特徴付けることができる。水素感知層5の変形は片持ち梁1によって制約を受けるので、水素感知層5内の片持ち梁1によって生じる応力σは、以下の公式によって表すことができる。
【数2】
ただし、Esは片持ち梁のヤング率であり、dsは片持ち梁の厚さであり、Cは片持ち梁の曲げ半径であり、Vsは片持ち梁のポアソン比であり、σ
fは水素感知層の内部応力であり、d
fは水素感知層の厚さである。
【0022】
他方で、水素感知層5における応力σは、水素膨張係数γに関して以下のように表すこともできる。
【数3】
ただし、E
fは水素感知層のヤング率であり、V
fは水素感知層のポアソン比である。
【0023】
したがって、応力σは、水素ガス濃度cに比例し、水素ガス濃度は、それによって測定された応力σに基づいて磁気抵抗ブリッジ応力センサによって得ることができる。
【0024】
図4は、水素感知層の変形および変形可能な基板の応力分布を示す概略図である。適宜、変形可能な基板1は、膜アセンブリであり、膜アセンブリは、フレーム61(3)、およびフレーム61(3)に取り囲まれた膜62(3)を含み、磁気抵抗ブリッジ応力センサは、膜62(3)上に配設される。適宜、磁気抵抗ブリッジ応力センサは、膜62(3)の上面もしくは下面に位置し、または膜62(3)の上面と下面に同時に位置する。磁気抵抗ブリッジ応力センサは、複数の磁気抵抗センサ・ユニット64(1)を含む。膜62(3)に対するフィルム層の残留応力の作用下で、複数のフィルム層でコーティングされた膜62(3)はたわむ。この変形はとても小さいが、たわみの曲率半径は、レーザ干渉計またはプロフィロメータによって測定することができる。膜62(3)に対するたわみの程度は、マルチ・フィルム層の残留応力の大きさを反映し、具体的には、マルチ・フィルム層は、膜に対して形成されたフィルム層の集合を指す。同様に、応力の公式は、以下の通りである。
【数4】
ただし、t
sおよびt
fは、それぞれフィルム層および膜の厚さに対応し、rは、曲率半径であり、Eおよびvは、それぞれ膜の弾性率およびポアソン比である。
【0025】
同様に、膜上の水素感知層における応力は、水素膨張係数γにやはり比例し、これは、以下の公式によって表すことができる。
【数5】
ただし、E
fは水素感知層のヤング率であり、V
fは水素感知層のポアソン比である。
【0026】
したがって、応力σは、水素ガス濃度cに比例し、水素ガス濃度は、それによって測定された応力σに基づいて磁気抵抗ブリッジ応力センサによって得ることができる。
【0027】
上述したように、片持ち梁と膜アセンブリの両方について、基板は、水素感知層でコーティングされる。水素ガスを吸収した後、水素感知層は、体積および長さの拡張または収縮変形を受ける。このようにして、水素感知層の応力変化は、基板によって制約を受け、これにより基板の応力およびたわみの変化を引き起こし、したがって片持ち梁の膜および表面に対して生じる応力の方向および大きさは、類似した関係を有する。片持ち梁の基板は梁本体であり、膜アセンブリの基板は膜であることが理解できる。上記の図面に示されるように、片持ち梁と膜アセンブリとの違いは、片持ち梁は固定端を有する一方、膜は全ての辺で固定されることである。
【0028】
本開示の実施形態では、電気的に隔絶されたトンネル磁気抵抗応力感知素子を利用した水素ガス・センサが提供される。水素ガス・センサは、変形可能な基板と、変形可能な基板上に位置するトンネル磁気抵抗(TMR)ブリッジ応力センサと、TMRブリッジ応力センサ上に位置する磁気シールド層と、水素感知層と、を含み、水素感知層は、水素ガスを吸収または放出して膨張または収縮を生じさせ、それによって変形可能な基板の応力変化を引き起こすために使用され、磁気抵抗ブリッジ応力センサは、応力信号を収集し、それを電気信号に変換するように構成され、それによって応力と水素ガス濃度との間の関係に従って水素ガス濃度の測定を実現する。本実施形態では、変形可能な基板は、水素感知層の変化に従ってリアル・タイムで対応する変化を感度よくもたらすことができ、これにより水素ガス・センサの感度および応答速度を改善し、さらに、この測定方法はシンプルである。加えて、水素ガス環境と磁気抵抗ブリッジ応力センサとの間の電気的隔絶が、電気的隔絶層の存在下で実現することができ、それによって安全性が保証され、水素ガス・センサは、高い水素ガス濃度を有する環境中で使用することもでき、したがって、測定レンジを拡大する。それにより、性能が改善された水素ガス・センサになる。
【0029】
一例示的実施形態では、上記の技術的解決策に基づいて、適宜、
図5に示されるように、変形可能な基板の長さ方向はX軸方向であり、変形可能な基板の幅方向はY軸方向であり、磁気抵抗ブリッジ応力センサは複数の磁気抵抗センサ・ユニットを含み、その各々は平面X-Yに平行なマルチ・フィルム層スタック構造2’を含み、マルチ・フィルム層2’は順にスタックされているピン止め層2e、基準層2d、バリア層2c、自由層2b、およびバイアス層2aを少なくとも含む。
【0030】
図1を参照すると、片持ち梁の側面図、および固定部の正面図が示されており、X軸方向は、片持ち梁の長さ方向に平行であり、Y軸方向は、片持ち梁の幅方向、すなわち、固定部の幅方向に平行であり、平面X-Yは、X軸方向およびY軸方向によって形成された平面である。具体的には、磁気抵抗ブリッジ応力センサが配設された、変形可能な基板の表面が長いストリップであるとき、例えば、変形可能な基板は、片持ち梁であり、長いストリップの長い側の方向は、変形可能な基板の長さ方向、すなわち、X軸方向であり、長いストリップの短い側の方向は、変形可能な基板の幅方向、すなわち、Y軸方向である。磁気抵抗ブリッジ応力センサが配設されている、変形可能な基板の表面が正方形であるとき、例えば、変形可能な基板は膜アセンブリであり、膜は正方形であり、正方形の隣接した2つの辺は、変形可能な基板の長さ方向および幅方向、すなわち、X軸方向およびY軸方向である。代替として、磁気抵抗ブリッジ応力センサは、変形可能な基板の表面上に配設され、磁気抵抗ブリッジ応力センサにおける磁気抵抗センサ・ユニットの配列方向は、変形可能な基板の長手方向、すなわち、X軸方向であり、磁気抵抗ブリッジ応力センサにおける磁気抵抗センサ・ユニットの延在方向は、変形可能な基板の幅方向、すなわち、Y軸方向である。
【0031】
図5は、磁気抵抗ブリッジ応力センサのマルチ・フィルム層スタック構造を示す。基準層2dの磁化方向は、ピン止め層2eに依存し、自由層2bのバイアス方向は、バイアス層2aに依存する。適宜、自由層2bが、高い正の磁歪係数(λs=30ppm)を有するCoFeB、CoFe、またはNiFeなどの磁歪材料で作製される。TMR応力センサの原理は、応力の作用下で自由層2bの磁気歪み効果を使用して自由層2bの磁気モーメントを回転させ、それによって自由層2bと基準層2eとの間の角度αを変化させることである。磁気抵抗センサ・ユニット同士の抵抗間の関係、および自由層2bと基準層2eとの間の角度αは、
【数6】
である。
【0032】
RAPおよびRP、R⊥は、φがそれぞれ0°、90°、および180°に等しいときの抵抗値を表す。
【0033】
自由層における応力によってもたらされるたわみは、外部磁場H
σに等価であり、
【数7】
である。
ただし、λsは磁歪係数であり、M
sは飽和磁化であり、引張応力σが0よりも大きいとき、H
σは、引張応力σの方向に位置し、圧縮応力σが0よりも小さいとき、H
σは、圧縮応力σに直角な方向に位置する。
【0034】
一例示的実施形態では、上記の技術的解決策に基づいて、適宜、変形可能な基板は、Z軸方向に沿って配置された第1の面および第2の面を有し、磁気抵抗ブリッジ応力センサは、プッシュ・プル・ブリッジ構造を有し、プッシュ磁気抵抗センサ・ユニットおよびプル磁気抵抗センサ・ユニットを含み、プッシュ磁気抵抗センサ・ユニットは、第1の面に配設され、プル磁気抵抗センサ・ユニットは、第2の面に配設され、プッシュ磁気抵抗センサ・ユニットおよびプル磁気抵抗センサ・ユニットは、同じ大きさで反対方向の応力に耐える。適宜、変形可能な基板は、片持ち梁または膜アセンブリであり、その第1の面および第2の面は、両方とも平面X-Yに平行であり、そのZ軸方向は、平面X-Yに直角であり、プッシュ磁気抵抗センサ・ユニットおよびプル磁気抵抗センサ・ユニットは、変形可能な基板の2つの反対面にそれぞれ位置し、例えば、プッシュ磁気抵抗センサ・ユニットは、変形可能な基板の上面に位置し、プル磁気抵抗センサ・ユニットは、変形可能な基板の下面に位置し、またはプッシュ磁気抵抗センサ・ユニットは、変形可能な基板の下面に位置し、プル磁気抵抗センサ・ユニットは、変形可能な基板の上面に位置する。代替として、2つの適宜のタイプの変形可能な基板を利用するときの水素ガス・センサの構造および作動原理が、以下詳細に説明される。
【0035】
図6は、プッシュ・プル磁気抵抗ブリッジ応力センサ、ならびに片持ち梁上のその構造および応力分布図を示す。水素感知層5は、片持ち梁1の上面に位置し、プッシュ磁気抵抗センサ・ユニット20およびプル磁気抵抗センサ・ユニット21は、それぞれ、片持ち梁1の上方および下方に位置し、対応する電気的隔絶層3(1)は、プッシュ磁気抵抗センサ・ユニット20の表面を覆い、電気的隔絶層3(2)は、プル磁気抵抗センサ・ユニット21の表面を覆い、磁気シールド層4(1)および磁気シールド層4(2)は、それぞれ、プッシュ磁気抵抗センサ・ユニット20およびプル磁気抵抗センサ・ユニット21の表面上に位置する。
【0036】
水素感知層5の厚さdfが、片持ち梁1の厚さdsよりもずっと少ないと仮定すると、ゼロ応力の平面10は、片持ち梁1の中間位置ds/2に位置し、したがって、プッシュ磁気抵抗センサ・ユニット20およびプル磁気抵抗センサ・ユニット21は、同じ大きさで反対方向の応力に耐える。適宜、プッシュ磁気抵抗センサ・ユニット20は、引張応力12を受け、引張応力σ1は、0よりも大きく、プル磁気抵抗センサ・ユニット21は、圧縮応力13を受け、圧縮応力σ2は、0よりも小さく、引張応力12および圧縮応力13は、方向が反対であるが、同じ大きさを有し、すなわち、σ1は-σ2に等しい。
【0037】
他の実施形態では、適宜、水素感知層は、片持ち梁の下面に位置してもよく、または水素感知層は、プル磁気抵抗センサ・ユニットの上部を覆ってもよい。
【0038】
図7は、プッシュ・プル磁気抵抗ブリッジ応力センサ、ならびにその構造および膜に関する応力分布図を示す。膜アセンブリは、周辺フレーム(図示せず)、および周辺フレームによって画定された膜1(21)を含む。水素ガス・センサは、膜1(21)上に位置するプッシュ磁気抵抗センサ・ユニット20(21)および電気的隔絶層3(21)、膜1(21)の下に位置するプル磁気抵抗センサ・ユニット21(21)および電気的隔絶層31(21)、プッシュ磁気抵抗センサ・ユニット20(21)の上方に位置する磁気シールド層4(21)、プル磁気抵抗センサ・ユニット21(21)の上方に位置する磁気シールド層41(21)、ならびに磁気シールド層4(21)上に位置する水素感知層5(21)も含み、この点で、水素感知層5(21)は、水素ガスを吸収した後、体積が膨張しまたは長くなり、膜は、それに応じて上向きに曲がる。
【0039】
水素感知層の厚さが、膜の厚さよりもずっと少ないと仮定すると、ゼロ応力の平面は、膜の中間に位置し、したがって、プッシュ磁気抵抗センサ・ユニットおよびプル磁気抵抗センサ・ユニットは、同じ大きさで反対方向の応力に耐え、すなわち、σ1は-σ2に等しい。
【0040】
図8は、プッシュ・プル磁気抵抗ブリッジ応力センサ、ならびにその構造および膜に関する応力分布図を示す。膜アセンブリは、周辺フレーム(図示せず)、および周辺フレームによって画定された膜1(23)を含む。水素ガス・センサは、膜1(23)上に位置するプッシュ磁気抵抗センサ・ユニット20(23)および電気的隔絶層3(23)、膜1(23)の下に位置するプル磁気抵抗センサ・ユニット21(23)および電気的隔絶層31(23)、プッシュ磁気抵抗センサ・ユニット20(23)の上方に位置する磁気シールド層4(23)、プル磁気抵抗センサ・ユニット21(23)の上方に位置する磁気シールド層41(23)、ならびに磁気シールド層41(23)上に位置する水素感知層5(23)も含み、この点で、水素感知層5(23)は、水素ガスを吸収した後、体積が膨張しまたは長くなり、膜は、それに応じて下向きに曲がる。水素感知層の厚さが、膜の厚さよりもずっと少ないと仮定すると、ゼロ応力の平面は、膜の中間に位置し、したがって、プッシュ磁気抵抗センサ・ユニットおよびプル磁気抵抗センサ・ユニットは、同じ大きさで反対方向の応力に耐え、すなわち、σ1は-σ2に等しい。
【0041】
適宜、各プッシュ磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の初期磁気モーメントがY軸から逸れる角度はαであり、プッシュ磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の磁気モーメントおよびプル磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の磁気モーメントがピン止め層の対応する磁気モーメントを得るように同じ角度だけ時計回りまたは反時計回りに同時に回転させられるとき、各プル磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の初期磁気モーメントがY軸から逸れる角度は、90-αもしくは270-αであり、またはプッシュ磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の磁気モーメントおよびプル磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の磁気モーメントが、異なる方向におよび同じ角度だけ回転させられるとき、各プル磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の初期磁気モーメントがY軸から逸れる角度は、90+αもしくは270+αであり、αの値の範囲は、0°から360°までであり、自由層が正の磁歪係数を有する材料で作製されて引張応力に耐えるとき、または負の磁歪係数を有する材料で作製されて圧縮応力に耐えるとき、αは0°または180°ではなく、自由層が正の磁歪係数を有する材料で作製されて圧縮応力に耐えるとき、または負の磁歪係数を有する材料で作製されて引張応力に耐えるとき、αは90°または270°ではない。本開示の実施形態に含まれる角度の記号および数値は全て(記号°によって示される)度の単位であることに留意されたい。
【0042】
図9A~
図9Pは、異なる初期磁気モーメント角における引張応力および圧縮応力の作用下の磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の磁気モーメント回転角の図である。具体的には、自由層の初期磁気モーメント角は、自由層の初期磁気モーメントがY軸(具体的には、+Y軸)から逸れる角度を指し、自由層の磁気モーメントは、応力を受けた後に回転させられる。ここで、変形可能な基板の長手方向は、X軸方向として定義され、変形可能な基板の幅方向は、Y軸方向として定義され、応力σの軸方向は、X軸方向である。
【0043】
図9Aを参照すると、自由層の初期磁気モーメントが角度αでY軸から逸れ、自由層が0よりも大きい引張応力σに耐えるとき、自由層の磁気モーメントの回転角はβである。
図9Bを参照すると、自由層の初期磁気モーメントが角度αでY軸から逸れ、自由層が0よりも小さい圧縮応力σに耐えるとき、自由層の磁気モーメントの回転角はβ1である。
図9Cを参照すると、自由層の初期磁気モーメントが角度90-αでY軸から逸れ、自由層が0よりも大きい引張応力σに耐えるとき、自由層の磁気モーメントの回転角はβ1である。
図9Dを参照すると、自由層の初期磁気モーメントが角度90-αでY軸から逸れ、自由層が0よりも小さい圧縮応力σに耐えるとき、自由層の磁気モーメントの回転角はβである。
図9Eを参照すると、自由層の初期磁気モーメントが角度90+αでY軸から逸れ、自由層が0よりも大きい引張応力σに耐えるとき、自由層の磁気モーメントの回転角はβ1である。
図9Fを参照すると、自由層の初期磁気モーメントが角度90+αでY軸から逸れ、自由層が0よりも小さい圧縮応力σに耐えるとき、自由層の磁気モーメントの回転角はβである。
図9Gを参照すると、自由層の初期磁気モーメントが角度180-αでY軸から逸れ、自由層が0よりも大きい引張応力σに耐えるとき、自由層の磁気モーメントの回転角はβである。
図9Hを参照すると、自由層の初期磁気モーメントが角度180-αでY軸から逸れ、自由層が0よりも小さい圧縮応力σに耐えるとき、自由層の磁気モーメントの回転角はβ1である。
図9Iを参照すると、自由層の初期磁気モーメントが角度180+αでY軸から逸れ、自由層が0よりも大きい引張応力σに耐えるとき、自由層の磁気モーメントの回転角はβである。
図9Jを参照すると、自由層の初期磁気モーメントが角度180+αでY軸から逸れ、自由層が0よりも小さい圧縮応力σに耐えるとき、自由層の磁気モーメントの回転角はβ1である。
図9Kを参照すると、自由層の初期磁気モーメントが角度270-αでY軸から逸れ、自由層が0よりも大きい引張応力σに耐えるとき、自由層の磁気モーメントの回転角はβ1である。
図9Lを参照すると、自由層の初期磁気モーメントが角度270-αでY軸から逸れ、自由層が0よりも小さい圧縮応力σに耐えるとき、自由層の磁気モーメントの回転角はβである。
図9Mを参照すると、自由層の初期磁気モーメントが角度270+αでY軸から逸れ、自由層が0よりも大きい引張応力σに耐えるとき、自由層の磁気モーメントの回転角はβ1である。
図9Nを参照すると、自由層の初期磁気モーメントが角度270+αでY軸から逸れ、自由層が0よりも小さい圧縮応力σに耐えるとき、自由層の磁気モーメントの回転角はβである。
図9Oを参照すると、自由層の初期磁気モーメントが角度360-αでY軸から逸れ、自由層が0よりも大きい引張応力σに耐えるとき、自由層の磁気モーメントの回転角はβである。
図9Pを参照すると、自由層の初期磁気モーメントが角度360-αでY軸から逸れ、自由層が0よりも小さい圧縮応力σに耐えるとき、自由層の磁気モーメントの回転角はβ1である。上述したように、引張応力および圧縮応力が自由層に加えられた後、自由層の磁気モーメントが回転させられ、それらの回転角の値はそれぞれβおよびβ1であることが理解できる。それらの回転角の計算過程は、以下の通りである。
一座標系において、0よりも大きい引張応力σは、X軸方向に沿った等価磁場Hσに等価であり、0よりも小さい圧縮応力σは、Y軸方向に沿った別の等価磁場Hσに等価である。自由層の磁気モーメントMfおよびY軸が、異なる初期たわみ角度を有するとき、異方性磁場Hkが存在し、自由層の磁気モーメントは、反磁場および他のバイアス磁場の影響を考慮に入れないとき、ある角度で回転させられた後に異方性磁場H
efを有し、ただし、Hefは、磁場HkおよびHσのベクトル和であり、Hefは、自由層の磁気モーメントの最終的な磁気モーメントの向きである。一例として、
図9Aに示されるように、自由層の磁気モーメントの回転角β、および自由層の初期磁気モーメントのたわみ角度αをとると、計算は、
X:H
σ+H
k*sinα=H
ef*sin(α+β)
Y:H
k*cosα=H
ef*cos(α+β) (6)
【数8】
となる。
【0044】
一例として、
図9Bに示されるように、自由層の磁気モーメントの回転角β1、および自由層の初期磁気モーメントのたわみ角度αをとると、計算は、
X:H
k*sinα=H
ef*sin(α-β
1)
Y:H
σ+H
k*cosα=H
ef*cos(α-β
1) (8)
【数9】
となる。
【0045】
各磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の磁気モーメントとピン止め層の磁気モーメントとの間に含まれる角度Φが始めに90°であり、自由層の磁気モーメントの回転角は、±βまたは±β1であるので、したがって、Φ=90°±β、Φ=90°±β、そして、明らかに、β1は、概してβに等しくない。
【0046】
図9A~
図9Pを参照すると、ピン止め層の磁気モーメントMrと自由層の磁気モーメントMfとの間の相対関係は、以下の通りであり、すなわち、自由層の磁気モーメントMfは、ピン止め層の磁気モーメントMrを得るように90°だけ反時計回りに回転させられ、それにより、ピン止め層の自由層の磁気モーメントを反時計回りに回転させることによって得られる磁気モーメントは、CCW(反時計回り)として定義され、反対に、自由層の磁気モーメントMfは、ピン止め層の磁気モーメントMrを得るように90°だけ時計回りに回転させられ、それにより、ピン止め層の自由層の磁気モーメントを時計回りに回転させることによって得られる磁気モーメントは、CW(時計回り)として定義される。
【0047】
表1は、自由層の磁気モーメントが異なる初期たわみ角度にあるときの引張応力および圧縮応力下の自由層の回転磁気モーメントを挙げており、ただし、+は、自由層とピン止め層との間に含まれる角度の増加を表し、-は、自由層とピン止め層との間に含まれる角度の減少を表す。同じ初期たわみ角度を有する自由層の回転角振幅は、引張応力σが0よりも大きく、圧縮応力σが0よりも小さいという条件下で異なり、これらはそれぞれ、β1およびβ、またはβおよびβ1であることが表1から理解することができる。加えて、同じ初期たわみ角度を有する自由層の回転方向も異なり、これらはそれぞれ、+および-、または-および+である。表1は、以下の通りである。
【0048】
【0049】
図10A~
図10Dは、引張応力および圧縮応力の作用下の自由層の初期磁気モーメント角および回転角の周方向の分布図であり、ただし、βは濃い円を示し、+βは濃い円内に存在する+を示し、-βは濃い円内に存在する-を示し、β1は中空の円を示し、+β1は中空の円内に存在する+を示し、-β1は中空の円内に存在する-を示す。xxx noは角度位置が無効であることを意味し、内側の円は引張応力(σ>0)を表し、外側の円は圧縮応力(σ<0)を表し、矢印は片持ち梁に関する自由層の磁気モーメントMfの初期磁気モーメント角の向きを表す。
【0050】
図10Aは、
図9A~
図9Pに表された内側リングTMR/外側リングTMR=CCWσ>0/CCWσ<0を示し、
図10Bは、
図9A~
図9Pに表された内側リングTMR/外側リングTMR=CWσ>0/CWσ<0を示し、
図10Cは、
図9A~
図9Pに表された内側リングTMR/外側リングTMR=CCWσ>0/CWσ<0を示し、
図10Dは、
図9A~
図9Pに表された内側リングTMR/外側リングTMR=CWσ>0/CCWσ<0を示す。
【0051】
図6に示された水素ガス・センサの構造によれば、プッシュ磁気抵抗センサ・ユニットおよびプル磁気抵抗センサ・ユニットは、0よりも大きい引張応力σおよび0よりも小さい圧縮応力σの作用下で同じ大きさで反対方向の応力に耐え、次いで、各プッシュ磁気抵抗センサ・ユニットおよび各プル磁気抵抗センサ・ユニットの自由層とピン止め層との間に含まれる角度変化値は、大きさが等しくおよび方向が反対である特性を有する。つまり、引張応力σが0よりも大きいときに、プッシュ磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の回転角は+βであることが必要とされ、圧縮応力σが0よりも小さいときに、プル磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の回転角は-βであることが必要とされ、または、引張応力σが0よりも大きいときに、プッシュ磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の回転角は+β1であることが必要とされ、圧縮応力σが0よりも小さいときに、プル磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の回転角は-β1であることが必要とされる。
図10A~
図10Dの周方向の分布図との組合せにおいて、内側リングおよび外側リングにおいて+βおよび-βに対応する記号または+β1および-β1に対応する記号をそれぞれ見つけることが必要とされる。
【0052】
図6に示されたプッシュ・プル・ブリッジ構造は、CCW/CCW構造およびCW/CW構造に対応し、すなわち、プッシュ磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の磁気モーメントおよびプル磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の磁気モーメントは、ピン止め層の対応する磁気モーメントを得るように同じ角度だけ時計回りまたは反時計回りに同時に回転させられ、プッシュ・アームおよびプル・アームの対応する初期磁気モーメント角の関係が、以下に示される。
【0053】
図10Aを参照すると、引張応力σが0よりも大きいときに、プッシュ磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の回転角は+βであり、そして、それらの内側の円がチェックされるべきであり、+βに対応する角度は、αおよび180+αを含み、同時に、圧縮応力σが0よりも小さいときに、プル磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の回転角は-βであるべきことが必要とされ、そして、それらの外側リングがチェックされるべきであり、-βに対応する角度は、90-αおよび270-αを含む。
図10Bを参照すると、引張応力σが0よりも大きいときに、プッシュ磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の回転角は+βであり、そして、それらの内側の円がチェックされるべきであり、+βに対応する角度は、360-αおよび180-αを含み、同時に、圧縮応力σが0よりも小さいときに、プル磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の回転角は-βであるべきことが必要とされ、そして、それらの外側リングがチェックされるべきであり、-βに対応する角度は、90+αおよび270+αを含む。
【0054】
図10Aを参照すると、引張応力σが0よりも大きいときに、プッシュ磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の回転角は+β1であり、そして、それらの内側の円がチェックされるべきであり、+β1に対応する角度は、90-αおよび270-αを含み、同時に、圧縮応力σが0よりも小さいときに、プル磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の回転角は-β1であるべきことが必要とされ、そして、それらの外側リングがチェックされるべきであり、-β1に対応する角度は、αおよび180+αを含む。
図10Bを参照すると、引張応力σが0よりも大きいときに、プッシュ磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の回転角は+β1であり、そして、それらの内側の円がチェックされるべきであり、+β1に対応する角度は、90+αおよび270+αを含み、同時に、圧縮応力σが0よりも小さいときに、プル磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の回転角は-β1であるべきことが必要とされ、そして、それらの外側リングがチェックされるべきであり、-β1に対応する角度は、360-αおよび180-αを含む。
【0055】
プッシュ・アームの初期磁気モーメント角とプル・アームの初期磁気モーメント角との間の関係は、表2に示され、プッシュ・アームおよびプル・アームは、CCW/CCW構造を有するプッシュ・プル磁気抵抗ブリッジ応力センサ構造、およびCW/CW構造を有するプッシュ・プル磁気抵抗ブリッジ応力センサ構造に別々に対応する。CCWσ>0/CCWσ<0およびCWσ>0/CWσ<0であるTMRの2つの構成について、自由層の回転角が+βおよび-β、または+β1および-β1であるとき、プル・アームの初期磁気モーメント角90-αおよび270-αは、プッシュ・アームの初期磁気モーメント角αのいずれか1つに対応する。表2は、以下の通りである。
【0056】
【0057】
同様に、
図6に示されたプッシュ・プル・ブリッジ構造は、CCW/CW構造およびCW/CCW構造に対応し、すなわち、プッシュ磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の磁気モーメントおよびプル磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の磁気モーメントは、ピン止め層の対応する磁気モーメントを得るように同じ角度だけ異なる方向に回転させられ、対応するプッシュ・アームの初期磁気モーメント角と対応するプル・アームの初期磁気モーメント角の間の関係は、
図10Cおよび
図10Dを指し、それによって表3の内容が得られる。CCWσ>0/CWσ<0およびCWσ>0/CCWσ<0であるTMRの2つの構成について、自由層の回転角が+βおよび-β、または+β1および-β1であるとき、プル・アームの初期磁気モーメント角90+αおよび270+αは、プッシュ・アームの初期磁気モーメント角αのいずれか1つに対応する。表3は、以下の通りである。
【0058】
【0059】
一例示的実施形態では、上記の技術的解決策に基づいて、適宜、変形可能な基板は、Z軸方向に沿って配置された第1の面および第2の面を有し、磁気抵抗ブリッジ応力センサは、プッシュ・プル・ブリッジ構造を有し、プッシュ磁気抵抗センサ・ユニットおよびプル磁気抵抗センサ・ユニットを含み、プッシュ磁気抵抗センサ・ユニットおよびプル磁気抵抗センサ・ユニットは、同時に第1の面または第2の面に配設され、プッシュ磁気抵抗センサ・ユニットおよびプル磁気抵抗センサ・ユニットは、同じ大きさで同じ方向の応力に耐える。適宜、変形可能な基板は、片持ち梁または膜アセンブリであり、その第1の面および第2の面は、両方とも平面X-Yに平行であり、そのZ軸方向は、平面X-Yに直角であり、プッシュ磁気抵抗センサ・ユニットおよびプル磁気抵抗センサ・ユニットは、変形可能な基板の同じ面に位置し、例えば、プッシュ磁気抵抗センサ・ユニットおよびプル磁気抵抗センサ・ユニットは共に、変形可能な基板の下面にまたは変形可能な基板の上面に同時に位置する。
【0060】
図11は、プッシュ・プル磁気抵抗ブリッジ応力センサ、ならびに片持ち梁上のその構造および応力分布図を示す。プッシュ磁気抵抗センサ・ユニット20(11)とプル磁気抵抗センサ・ユニット20(12)の両方は、片持ち梁1(11)の上面に位置し、それらの表面を電気的隔絶層3(11)で覆うことによって隔絶され、磁気シールド層4(11)は、外部磁場の影響をシールドするためにプッシュ磁気抵抗センサ・ユニット20(11)およびプル磁気抵抗センサ・ユニット20(12)の上方に位置し、水素感知層5(11)は、水素ガスと直接反応するように上部に位置し、平面10(11)は、片持ち梁1(11)のゼロ歪み平面である。水素感知層5(11)の変形により、片持ち梁1(11)は下向きに曲がり、0よりも大きい引張応力σ12(11)が、プッシュ磁気抵抗センサ・ユニット20(11)とプル磁気抵抗センサ・ユニット20(12)の両方に生じる。
【0061】
図12は、プッシュ・プル磁気抵抗ブリッジ応力センサ、ならびに片持ち梁上のその構造および応力分布図を示す。プッシュ磁気抵抗センサ・ユニット21(12)とプル磁気抵抗センサ・ユニット210(12)の両方は、片持ち梁1(12)の上面に位置し、それらの表面を電気的隔絶層3(12)で覆うことによって隔絶され、磁気シールド層4(12)は、外部磁場の影響をシールドするためにプッシュ磁気抵抗センサ・ユニット21(12)およびプル磁気抵抗センサ・ユニット210(12)の上方に位置し、水素感知層5(12)は、水素ガスと直接反応するように片持ち梁1(12)の上面に位置し、平面10(11)は、片持ち梁のゼロ歪み平面である。片持ち梁は、下向きに曲がり、0よりも小さい圧縮応力σ13(12)は、プッシュ磁気抵抗センサ・ユニット20(11)とプル磁気抵抗センサ・ユニット20(12)の両方に生じる。
【0062】
図13は、プッシュ・プル磁気抵抗ブリッジ応力センサ、ならびにその構造および膜に関する応力分布図を示す。構造は、
図1(20)、
図1(20)上に位置するプッシュ磁気抵抗センサ・ユニット20(20)およびプル磁気抵抗センサ・ユニット21(20)、電気的隔絶層3(20)、プッシュ磁気抵抗センサ・ユニット20(20)およびプル磁気抵抗センサ・ユニット21(20)の上方に位置する磁気シールド層4(20)、ならびに上部に位置する水素感知層5(20)を含み、この点で、水素感知層5(20)は、水素ガスを吸収した後に体積が膨張しまたは長くなり、それに応じて、膜は、上向きに曲がる。
【0063】
図14は、プッシュ・プル磁気抵抗ブリッジ応力センサ、ならびにその構造および膜に関する応力分布図を示す。構造は、
図1(22)、
図1(22)上に位置するプッシュ磁気抵抗センサ・ユニット20(22)およびプル磁気抵抗センサ・ユニット21(22)、電気的隔絶層3(22)、プッシュ磁気抵抗センサ・ユニット20(22)およびプル磁気抵抗センサ・ユニット21(22)の上方に位置する磁気シールド層4(22)、ならび底に位置する水素感知層5(22)を含み、この点で、水素感知層5(22)は、水素ガスを吸収した後に体積が膨張しまたは長くなり、それに応じて、膜は、下向きに曲がる。
【0064】
適宜、各プッシュ磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の初期磁気モーメントがY軸から逸れる角度はαであり、プッシュ磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の磁気モーメントおよびプル磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の磁気モーメントがピン止め層の対応する磁気モーメントを得るように90°だけ時計回りまたは反時計回りに同時に回転させられるとき、各プル磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の初期磁気モーメントがY軸から逸れる角度は、180-αもしくは360-αであり、または
プッシュ磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の磁気モーメントおよびプル磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の磁気モーメントが、異なる方向におよび同じ角度だけ回転させられるとき、各プル磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の初期磁気モーメントがY軸から逸れる角度は、αもしくは180+αであり、αの値の範囲は、0°から360°までであり、自由層が正の磁歪係数を有する材料で作製されて引張応力に耐えるとき、または負の磁歪係数を有する材料で作製されて圧縮応力に耐えるとき、αは0°または180°ではなく、自由層が正の磁歪係数を有する材料で作製されて圧縮応力に耐えるとき、または負の磁歪係数を有する材料で作製されて引張応力に耐えるとき、αは90°または270°ではない。
【0065】
図15A~
図15Fは、引張応力および圧縮応力の作用下の、
図11~
図14に示された水素ガス・センサの自由層の初期磁気モーメント角および回転角の周方向の分布図である。
図15Aは、CCWσ>0/CCWσ>0の構成であり、
図15Bは、CWσ>0/CWσ>0の構成であり、
図15Cは、CCWσ<0/CCWσ<0の構成であり、
図15Dは、CWσ<0/CWσ<0の構成であり、プッシュ磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の磁気モーメントおよびプル磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の磁気モーメントは、ピン止め層の対応する磁気モーメントを得るように90°だけ時計回りまたは反時計回りに同時に回転させられる。
図15Eは、CWσ>0/CCWσ>0の構成であり、
図15Fは、CCWσ<0/CWσ<0の構成であり、プッシュ磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の磁気モーメントおよびプル磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の磁気モーメントは、同じ角度だけ、異なる方向に回転させられる。周方向分布プロセスの解析方法は、
図9A~
図9Pのものに類似し、ここでは繰り返されない。
【0066】
表4は、CCWσ>0/CCWσ>0、CWσ>0/CWσ>0、CCWσ<0/CCWσ<0、CWσ<0/CWσ<0の4つの構成を有するプッシュ・プル磁気抵抗ブリッジ応力センサに別々に対応するプッシュ・アームの初期磁気モーメント角とプル・アームの初期磁気モーメント角との間の関係を示し、自由層の回転角が+βおよび-β、または+β1および-β1であるとき、プル・アームの初期磁気モーメント角180-αおよび360-αは、プッシュ・アームの初期磁気モーメント角αのいずれか1つに対応する。表4は、以下の通りである。
【0067】
【0068】
表5は、CWσ>0/CCWσ>0およびCCWσ<0/CWσ<0の2つの構成を有するプッシュ・プル磁気抵抗ブリッジ応力センサの構造IIに別々に対応するプッシュ・アームの初期磁気モーメント角とプル・アームの初期磁気モーメント角との間の関係を示し、自由層の回転角が+βおよび-β、または+β1および-β1であるとき、プル・アームの初期磁気モーメント角αおよび180+αは、プッシュ・アームの初期磁気モーメント角αのいずれか1つに対応する。表5は、以下の通りである。
【0069】
【0070】
上記の概略提示では、プッシュ磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の初期磁気モーメント角αは、0~360°の範囲内のいずれかの角度であり得、一方、プル磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の初期磁気モーメント角が360°を超える場合、それらの値は、一周期360°を差し引くことによって0~360°の範囲に戻すことができ、加えて、0よりも大きい引張応力σについて、αは90°および270°に等しくなく、および0よりも小さい圧縮応力σについて、αは、0°および180°に等しくないことに留意されたい。
【0071】
一例示的実施形態では、上記の技術的解決策に基づいて、適宜、水素ガス・センサは、水素感知層と同じ層に非水素感知層をさらに含み、変形可能な基板は、片持ち梁または膜アセンブリを含み、片持ち梁は、固定部、ならびにこの固定部の2つの辺にそれぞれ配設された基準片持ち梁および感知片持ち梁を含み、基準片持ち梁は基準エリアを備え、感知片持ち梁は感知エリアを備え、または膜アセンブリはフレームに取り囲まれた基準膜および感知膜を含み、基準膜は基準エリアを備え、感知膜は感知エリアを備え、水素感知層は、感知エリア内の磁気シールド層上に配設され、非水素感知層は、基準エリア内の磁気シールド層上に配設される。ここで、磁気抵抗ブリッジ応力センサは、例えば上面に配設された変形可能な基板の同じ側面に配設され、他の実施形態では、下面に適宜配設することもできる。
【0072】
適宜、変形可能な基板の基準エリアおよび感知エリアは、同じ平面上に位置し、磁気抵抗ブリッジ応力センサは、基準ブリッジ構造を有し、基準磁気抵抗センサ・ユニットおよび感知用磁気抵抗センサ・ユニットを含み、基準磁気抵抗センサ・ユニットは、基準エリア内に配設され、感知用磁気抵抗センサ・ユニットは、感知エリア内に配設される。ここで、基準磁気抵抗センサ・ユニットおよび感知用磁気抵抗センサ・ユニットは、変形可能な基板の同じ側面に配設され、例えば、両方が、上面または下面に配設される。
【0073】
図16は、基準ブリッジ型磁気抵抗ブリッジ応力センサ、ならびに片持ち梁上のその構造および応力分布図を示す。変形可能な基板は、それぞれ感知片持ち梁1(14)および基準片持ち梁1(15)である2つの片持ち梁を含む。感知用磁気抵抗センサ・ユニット30(14)は、基準片持ち梁1(14)の表面上に位置し、基準磁気抵抗センサ・ユニット30(15)は、基準片持ち梁1(15)の表面上に位置し、電気的隔絶層3(14)および3(15)は、それぞれ、感知用磁気抵抗センサ・ユニット30(14)および基準磁気抵抗センサ・ユニット30(15)の表面上に位置し、加えて、水素感知層5(14)および非水素感知層5’(15)は、それぞれ、感知片持ち梁1(14)および基準片持ち梁1(15)の上層に位置する。水素感知層5(14)が水素ガスに遭遇するとき、水素感知層5(14)は、寸法変化を受け、応力σ1を生じるが、非水素感知層5’(15)は、変わらず、したがって、水素感知層および非水素感知層は、基準ブリッジ型磁気抵抗ブリッジ応力センサの感知ブリッジ・アームおよび基準ブリッジ・アームを形成する。
【0074】
図17は、基準ブリッジ型磁気抵抗ブリッジ応力センサ、ならびに膜アセンブリ上のその構造および応力分布の図を示す。変形可能な基板は、感知膜62(1)および基準膜62(2)を含み、感知膜62(1)の全ての辺は基板フレーム61(1)上に位置し、基準膜62(2)の全ての辺は基板フレーム61(2)上に位置し、感知用磁気抵抗センサ・ユニット63(1)は感知膜62(1)上に位置し、基準磁気抵抗センサ・ユニット63(2)は基準膜62(2)上に位置し、感知用磁気抵抗センサ・ユニット63(1)および基準磁気抵抗センサ・ユニット63(2)は、基準ブリッジ型トンネル磁気抵抗ブリッジ応力センサを形成するように電気的に接続される。
【0075】
図18は、基準ブリッジ型磁気抵抗ブリッジ応力センサ、および膜アセンブリ上のその構造の側面図を示す。構造は、基準膜1(17)、感知膜1(16)、基準膜1(17)上に位置する基準磁気抵抗センサ・ユニット20(16)、感知膜1(16)上に位置する感知用磁気抵抗センサ・ユニット20(17)、基準磁気抵抗センサ・ユニット20(16)間で覆われた電気的隔絶層3(16)、感知用磁気抵抗センサ・ユニット20(17)間で覆われた電気的隔絶層3(17)、磁気抵抗センサ・ユニット20(16)および20(17)の上方に位置する磁気シールド層4(16)および4(17)、ならびに最上の水素感知層5(16)および非水素感知層5(17)を含み、基準膜1(16)および感知膜1(17)、磁気シールド層4(16)および4(17)、ならびに電気的隔絶層3(16)および3(17)は、同じ層で連続材料であり、一方、水素感知層5(16)および非水素感知層5(17)は、同じ層にあるが、不連続材料である。
【0076】
水素ガス・センサが空気にさらされるとき、水素感知層5(16)は水素ガスを吸収し、膨張するが、感知膜1(16)によって制約を受け、それによって膜が曲がり、感知用磁気抵抗センサ・ユニット20(16)はこの時に圧縮応力を受け、水素感知層が膜の上方に位置するとき、膜は下向きに曲がり、感知用磁気抵抗センサ・ユニット20(17)は引張応力を受け、水素感知層が膜の下に位置するとき、膜は上向きに曲がるが、非水素感知層5(17)は水素ガスによって影響を受けず、曲がらず、固有応力を受ける。
【0077】
適宜、各基準磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の初期磁気モーメントがY軸から逸れる角度はαであり、各感知用磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の初期磁気モーメントがY軸から逸脱する角度はαであり、基準磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の磁気モーメントおよび感知用磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の磁気モーメントがピン止め層の対応する磁気モーメントを得るように同じ角度だけ時計回りまたは反時計回りに同時に回転させられ、αの値の範囲は、0°から360°までであり、自由層が正の磁歪係数を有する材料で作製されて引張応力に耐えるとき、または負の磁歪係数を有する材料で作製されて圧縮応力に耐えるとき、αは0°または180°ではなく、自由層が正の磁歪係数を有する材料で作製されて圧縮応力に耐えるとき、または負の磁歪係数を有する材料で作製されて引張応力に耐えるとき、αは90°または270°ではない。
【0078】
図19A~
図19Dは、基準引張応力および圧縮応力の作用下の自由層の初期磁気モーメント角および回転角の周方向の分布図である。トンネル磁気抵抗センサ・ユニットは、追加の応力をもたらすこともできるので、基準磁気抵抗センサ・ユニット30(15)の層内の残留応力はほぼ0であり、すなわち、σは0にほぼ等しい。基準磁気抵抗センサ・ユニット30(15)は、感知用磁気抵抗センサ・ユニット30(14)と同じ位置および磁気モーメントの向きの関係を選ぶことが必要であり、したがって、残留応力の影響は、できる限りなくすことができる。これに基づいて、感知用磁気抵抗センサ・ユニットまたは基準磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の初期磁気モーメントの角度向きは、以下の通りである。
【0079】
図19Aは、CCWσ>0/CCWσ≒0の条件下の周方向分布を示し、
図19Bは、CCWσ<0/CCWσ≒0の条件下の周方向分布を示し、
図19Cは、CWσ>0/CWσ≒0の条件下の周方向分布を示し、
図19Dは、CWσ<0/CWσ≒0の条件下の周方向分布を示し、したがって、感知用磁気抵抗センサ・ユニットまたは基準磁気抵抗センサ・ユニットの自由層の向きは、引張応力σが0よりも大きい場合、それらの自由層の初期磁気モーメント角αは0°および180°に等しくなく、圧縮応力σが0よりも小さい場合、それらの自由層の初期磁気モーメント角αは90°および270°に等しくない、ことになり得る。
【0080】
上記の実施形態に記載されたプッシュ・プル磁気抵抗ブリッジ応力センサの構造は、
図20A~
図20Bに示される。
図20Aは、半ブリッジ構造を有するプッシュ・プル磁気抵抗ブリッジ応力センサを示し、
図20Bは、フル・ブリッジ構造を有するプッシュ・プル磁気抵抗ブリッジ応力センサを示す。プッシュ磁気抵抗センサ・ユニット20およびプル磁気抵抗センサ・ユニット21は、それぞれ、磁気抵抗ブリッジ応力センサのプッシュ・アームおよびプル・アームを形成する。
【0081】
上記の実施形態に記載された基準磁気抵抗ブリッジ応力センサの構造が、
図20C~
図20Dに示される。
図20Cは、半ブリッジ構造を有する基準磁気抵抗ブリッジ応力センサを示し、
図20Dは、フル・ブリッジ構造を有する基準磁気抵抗ブリッジ応力センサを示す。感知用磁気抵抗センサ・ユニット30(14)および基準磁気抵抗センサ・ユニット30(15)は、それぞれ、磁気抵抗ブリッジ応力センサのセンディング・アームおよび基準アームを形成する。
【0082】
磁気抵抗ブリッジ応力センサについて、適宜、磁気シールド層は、軟磁気シールド層であり、Co、Fe、およびNiを含有する軟磁性合金材料で作製される。適宜、電気的隔絶層は、フォトレジスト、A12O3、SiN、SiO2、またはSiCで作製される。適宜、水素感知層は、AB5、AB3、AB2、AB、およびA2B型金属間化合物から作製され、ただし、Aは、希土類金属、Ca、Mg、Zr、またはTiなどの強金属水素化物形成元素を表し、Bは、Ni、Co、Fe、Mn、およびCrを含む遷移金属を表す。
【0083】
AB5合金は、LaNi5およびRNi5であって、ただし、Rは希土類金属であり、MmNi5およびMmは、48~50%のCe、32~34%のLa、13~14%のNd、4~5%のPr、および1.5%の他の希土類元素を含有する希土類混合物であり、LaリッチMmは、LmまたはMlと呼ばれ、典型的なLmは、48%のLa、25%のCe、6%のPr、21%のNd、および0.3%の他の希土類元素を含有する、LaNi5およびRNi5と、CaNi5と、代替のAB5多元素合金と、を含み、ただし、AB5におけるAおよびBは、他の金属によって局所的に置き換えられ、Aにおける希土類金属は、互いに置き換えられ、例えば、CeNi5、PrNi5、およびNdNi5は、LaNi5によって置き換えられ、希土類金属およびCaは、互いに置き換えられ、例えば、Mm1-xCaxNi5およびMmは、Ti、Zr、B、およびCuによって一部置き換えられてもよく、ANi5内のNi原子は、Co、Mn、Al、Cr、Fe、Cu、Tin、Si、およびBなどの他の元素によって一部置き換えられる。
【0084】
AB2型金属間化合物合金は、二元AB2合金、例えば、Zr系AB2ラーベス合金ZrM2(M=V、Cr、Mn、Fe、Co、Mo)、三元および多組成AB2合金、例えば、Zr(FexCr1-x)2、Zr(Fe0.75Cr0.25)2、Zr(FexMn1-x)2(x=0~0.8)、Ti0.98Zr0.02V0.43Fe0.09Cr0.05Mn1.5、Ti0.9Zr0.1Mn1.4V0.2Cr0.4、Ti1+xCr2-yMny(x=0.1~0.3、y=0~1.0)、およびTixCr2-yVy(x=1.1~1.3、y=0.5~1.0)を含み、Cr、V、またはMnは、Fe、Co、Ni、Al、またはCuなどの他の元素と一部置き換えられる。
【0085】
AB合金は、TiFe、TiCo、およびZrNi、ならびにTiFeが、Mn、Cr、V、Co、Ni、Mo、およびCuなどの遷移元素によって一部置き換えられる代替のAB合金、TiFe1-xMnx(x=0.1~0.3)、TiFe0.8MnyAz(A=Zr、Al)、TiFe1-xNiyAz(A=Al、Co、Cr、La、Mn、Mo、Nb、V、Zr)を含む。
【0086】
水素感知層は、Mg系合金、例えば、Mg2Ni、Mg2Cu、およびLa2Mg17も含み、Mg-希土類合金は、LnMg12(Ln=La、Ce、Mm)、Ln2Mg17(Ln=La、Ce)、およびLn5Mg41(Ln=Ce)を含み、他の二元Mg合金は、Mg17Ba、Mg3Cd、Mg3Sb2、MgSn、MgZn、Mg2Pb、Mg2Ca、Mg2Sn、Mg2Si、およびMgLiを含み、代替のMg系合金は、Mg2Ni、Mg2Cu、Mg2Ni0.75M0.25(M=V、Cr、Fe、Co、Zn)を含む。
【0087】
水素感知層は、V-Ti-M(M=Fe、Cr、Mn、Ge)、例えば、(V0.9Ti0.1)1-xFex(x=0~0.075)、Ti-V-Mn、Ti-V-Cr、V-Ti-NiといったVおよびV系合金をさらに含む。
【0088】
上述したTMR応力感知素子の自由層は、0よりも大きい正の磁歪係数λsを有し、CoFeB、CoFe、およびNiFeの高磁歪材料を有することが指摘されるべきである。実際には、自由層は、0よりも小さい負の磁歪係数λsを有することもできる。違いは、0よりも小さいλsおよび0よりも大きいσが、0よりも大きいλs、および0よりも小さいσに均等であり、0よりも小さいλsおよび0よりも小さいσが、0よりも大きいλs、および0よりも大きいσに均等であることだけである。それは、プッシュ・プル磁気抵抗ブリッジ応力センサの同位相のCCW/CCWおよびCW/CW、または位相が異なるCCW/CWおよびCW/CCW、ならびに基準磁気抵抗ブリッジ応力センサの同位相のCCW/CCWおよびCW/CWが、磁気抵抗センサ・ユニット間の初期位相関係であることに影響を及ぼさない。違いは、λsが0よりも大きいときに、0よりも大きい引張応力σの下の磁気抵抗センサ・ユニットの初期角度が、0°または180°ではなく、0よりも小さい圧縮応力σの下の磁気抵抗センサ・ユニットの初期角度が、90°または270°でないことである。
【0089】
上記のものは、本開示およびそれによって適用される技術的原理の例示的実施形態に過ぎないことに留意されたい。本開示は、本明細書に記載された特定の実施形態に限定されず、本開示の保護範囲から逸脱することなく、様々な明らかな変更、再調整、組合せ、および置換が、当業者によってなされてもよいことを、当業者は理解するであろう。したがって、本開示は、上記の実施形態によって詳細に説明されてきたが、本開示は、上記の実施形態に限定されず、本開示の概念から逸脱することなく他の均等な実施形態を含むこともできる。本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によって決定される。