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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】医療用スライドシャフト器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/128 20060101AFI20241120BHJP
   A61B 17/122 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
A61B17/128
A61B17/122
【請求項の数】 31
(21)【出願番号】P 2022526290
(86)(22)【出願日】2020-11-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-10
(86)【国際出願番号】 EP2020081251
(87)【国際公開番号】W WO2021089763
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2023-11-02
(31)【優先権主張番号】102019130223.4
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521389815
【氏名又は名称】エースクラップ・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Aesculap AG
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】マッテス,リヒャルト
(72)【発明者】
【氏名】プライル,トーマス
【審査官】段 吉享
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0000423(US,A1)
【文献】特開2004-290675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/128
A61B 17/122
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用スライドシャフト器具(10)であって、
工具要素キャリア(12)と、
前記工具要素キャリア(12)を囲み、スライド方向(16)を規定する管状のスライドシャフト(14)と、
前記スライドシャフト(14)を前記工具要素キャリア(12)に対して遠位方向に移動させるための作動装置(18)と、
を備え、
少なくとも1つの工具要素(20、22)は、前記工具要素キャリア(12)の遠位端に配置され、または移動可能に取り付けられ、
前記スライドシャフト(14)の遠位方向への移動の結果として前記少なくとも1つの工具要素(20、22)が移動するよう、前記少なくとも1つの工具要素(20、22)は、前記スライドシャフト(14)の遠位端領域(32)と協働するよう配置または形成され、
前記医療用スライドシャフト器具(10)はさらに、少なくとも1つの前進位置で前記スライドシャフト(14)の前記工具要素キャリア(12)に対する移動を阻止するためのロック装置(168)を備え、
前記少なくとも1つの前進位置における前記スライドシャフト(14)は、基本位置に対して、前記スライドシャフト(14)が前記工具要素キャリア(12)に対して近位方向に最大限に変位する遠位方向に変位し、
前記ロック装置(168)は、前記スライドシャフト(14)が、前記工具要素キャリア(12)に対して近位方向に変位可能な解放位置と、近位方向および/または遠位方向への前記工具要素キャリア(12)に対する前記スライドシャフト(14)の移動が阻止されるロック位置と、を規定し、
前記ロック装置(168)は、ラッチノーズ(198)を含む少なくとも1つの第1ロック要素(170)およびアンダーカット(182)を含む少なくとも1つの第2ロック要素(172)を備え、前記ラッチノーズ(198)と前記アンダーカット(182)とは、前記ロック位置において係合し、前記解放位置において係合が外れ、
前記少なくとも1つの第2ロック要素(172)は、前記スライドシャフト(14)に配置または形成され、および、前記少なくとも1つの第1ロック要素(170)は、前記解放位置から前記ロック位置に前記スライドシャフト(14)に向かう移動により移動可能である、
医療用スライドシャフト器具。
【請求項2】
(a)前記少なくとも1つの第2ロック要素(172)および前記スライドシャフト(14)は、一体的に形成されていること、
または、
(b)以下の少なくともいずれか1つであること、
前記少なくとも1つの第1ロック要素(170)は、前記解放位置から前記ロック位置まで、前記スライド方向(16)に対して横方向である、
または、
前記少なくとも1つの第1ロック要素(170)は、前記スライド方向(16)において、前記工具要素キャリア(12)に対して不動であるよう、前記医療用スライドシャフト器具(10)に配置または形成される、
のうち少なくともいずれか1つである、
請求項1に記載の医療用スライドシャフト器具。
【請求項3】
前記作動装置(18)は、互いに対して移動可能である2つの作動要素(50、52)を備える、
請求項1または2に記載の医療用スライドシャフト器具。
【請求項4】
前記2つの作動要素(50、52)は、以下のうち少なくともいずれか1つである、
(a)前記スライドシャフト(14)が前記近位方向に最大限変位したときに、互いに最大距離にあり、前記スライドシャフト(14)を前記遠位方向に移動させるために互いに向かって移動可能である、
または、
(b)前記スライド方向(16)に対して横方向に延びる回転軸(80、82)の周りを回転可能である、
請求項3に記載の医療用スライドシャフト器具。
【請求項5】
前記医療用スライドシャフト器具(10)は、前記スライドシャフト(14)に前記近位方向に作用するバイアス力を発揮するためのバイアス装置(62)を備える、
請求項1から3のいずれか1項に記載の医療用スライドシャフト器具。
【請求項6】
前記バイアス装置(62)は、少なくとも1つのバイアス要素(54、56)を備え、
2つの作動要素(50、52)は、前記少なくとも1つのバイアス要素(54、56)の作用に反して互いに向かって移動可能である、
請求項5に記載の医療用スライドシャフト器具。
【請求項7】
前記少なくとも1つの第2ロック要素(172)は、前記近位方向に面する停止面(176)を備える、
請求項1からのいずれか1項に記載の医療用スライドシャフト器具。
【請求項8】
前記少なくとも1つの第2ロック要素(172)は、アンダーカット(182)を有し、
前記アンダーカット(182)は、前記停止面(176)により少なくとも部分的に区切られる、
請求項に記載の医療用スライドシャフト器具。
【請求項9】
前記停止面(176)は、前記スライドシャフト(14)に向かう方向に向かって傾斜する、
請求項またはに記載の医療用スライドシャフト器具。
【請求項10】
前記停止面(176)と前記スライド方向(16)との間の傾斜角(178)は、88度から60度の範囲である、
請求項9に記載の医療用スライドシャフト器具。
【請求項11】
(a)前記少なくとも1つの第2ロック要素(172)は、前記スライドシャフト(14)から半径方向に向いた保持突起(204)の形態で、または前記スライドシャフト(14)から離れる方向に向かって開く保持溝(174)の形態で、構成されていること、
または、
(b)前記少なくとも1つの第2ロック要素(172)は、前記スライドシャフト(14)を環状に取り囲こと、
のうち少なくともいずれか1つである、
請求項1から10のいずれか1項に記載の医療用スライドシャフト器具。
【請求項12】
記ロック装置(168)は、復元装置(188)を備え、前記少なくとも1つの第1ロック要素(170)が前記解放位置から前記ロック位置まで復元装置(188)の作用に反して移動可能である、
請求項1から11のいずれか1項に記載の医療用スライドシャフト器具。
【請求項13】
前記復元装置(188)は、前記少なくとも1つの第1ロック要素(170)と協働するよう配置または形成された少なくとも1つの復元要素(190)を備える、
請求項12に記載の医療用スライドシャフト器具。
【請求項14】
前記少なくとも1つの復元要素(190)は、コイルばね(214)または板ばね(194)の形態の、ばね要素(192)を備える、
請求項13に記載の医療用スライドシャフト器具。
【請求項15】
前記少なくとも1つの第1ロック要素(170)は、前記スライドシャフト(14)に向かう方向を向き、前記ロック位置において前記少なくとも1つの第2ロック要素(172)と係合する、ロック突起(186)を備える、
請求項1から14のいずれか1項に記載の医療用スライドシャフト器具。
【請求項16】
記ラッチノーズ(198)は、ロック突起(186)に、前記遠位方向に向いて配置または形成され
請求項15に記載の医療用スライドシャフト器具。
【請求項17】
前記少なくとも1つの第1ロック要素(170)は、レバーアーム(184)を備え、前記ロック突起(186)は、前記レバーアーム(184)の自由端に配置または形成される、
請求項16に記載の医療用スライドシャフト器具。
【請求項18】
前記レバーアーム(184)は、
(a)前記医療用スライドシャフト器具(10)に前記遠位方向を向いて配置または形成される、
または、
(b)近位側で前記医療用スライドシャフト器具(10)に固定され、レバーアーム回転軸(220)の周りを回転可能に取り付けられ、前記レバーアーム回転軸(220)は、前記スライド方向(16)に対して横方向に延びる、
または、
(c)少なくとも1つの復元要素(190)を備えるまたは形成する、
のうち少なくともいずれか1つである、
請求項17に記載の医療用スライドシャフト器具。
【請求項19】
前記少なくとも1つの第1ロック要素(170)は、前記スライド方向(16)に対して横方向に延びるロック要素部分(206)を備え
請求項1から18のいずれか1項に記載の医療用スライドシャフト器具。
【請求項20】
(a)前記少なくとも1つの復元要素(190)は、前記ロック要素部分(206)を囲んで配置または形成されること、
または、
(b)ロック突起(186)は、前記ロック要素部分(206)の端部に前記スライドシャフト(14)に向かって配置または形成されること、
のうち少なくともいずれか1つである、
請求項19に記載の医療用スライドシャフト器具。
【請求項21】
前記医療用スライドシャフト器具(10)は、前記ロック装置(168)を前記ロック位置に固定するための固定装置(200)を備える、
請求項1から20のいずれか1項に記載の医療用スライドシャフト器具。
【請求項22】
(a)前記固定装置(200)は、前記ロック装置(168)が前記遠位方向への前記スライドシャフト(14)の移動によってのみ解放可能であるよう配置または形成された前記少なくとも1つの第1ロック要素(170)および前記少なくとも1つの第2ロック要素(172)を備えること、
または、
(a)前記固定装置(200)は、アンダーカット(182)およびラッチノーズ(198)を備えること、
のうち少なくともいずれか1つである、
請求項21に記載の医療用スライドシャフト器具。
【請求項23】
記医療用スライドシャフト器具(10)は、前記近位方向および前記遠位方向に前記スライドシャフト(14)の移動を区切るための停止装置(108)を備える、
請求項1から22のいずれか1項に記載の医療用スライドシャフト器具。
【請求項24】
前記停止装置(108)は近位停止(110)および遠位停止(112)を備え、前記工具要素キャリア(12)に対する前記スライドシャフト(14)の最大変位経路(130)は、前記近位停止(110)および前記遠位停止(112)の活性表面(134、136)の互いからの距離により規定される、
請求項23に記載の医療用スライドシャフト器具。
【請求項25】
前記近位停止(110)は、前記スライドシャフト(14)の前記基本位置を規定し、前記遠位停止(112)は、前記遠位方向における前記スライドシャフト(14)の最大偏向位置を規定する、
請求項24に記載の医療用スライドシャフト器具。
【請求項26】
前記ロック装置(168)は、前記基本位置と前記遠位方向における前記最大偏向位置との間の少なくとも1つの前進位置において、前記工具要素キャリア(12)に対する前記スライドシャフト(14)の移動を阻止する、
請求項25に記載の医療用スライドシャフト器具。
【請求項27】
前記工具要素キャリア(12)は、作動位置で前記作動装置(18)に結合し、洗浄位置で前記作動装置(18)から分離する、
請求項1から26のいずれか1項に記載の医療用スライドシャフト器具。
【請求項28】
前記スライドシャフト(14)は、前記作動位置で前記作動装置(18)に結合し、前記洗浄位置で前記作動装置(18)から分離する、
請求項27に記載の医療用スライドシャフト器具。
【請求項29】
前記作動装置(18)は、結合部品(64)を備え、
2つの作動要素(50、52)は、前記結合部品(64)に移動可能に配置され、
前記工具要素キャリア(12)は前記作動位置で前記結合部品(64)に不動に保持される、
請求項27または28に記載の医療用スライドシャフト器具。
【請求項30】
(a)前記結合部品(64)は、前記スライド方向(16)に変位可能であるように取り付けられた駆動部材(84)を備え、前記駆動部材(84)は、前記2つの作動要素(50、52)に互いに向かうまたは互いから離れる移動の結果として前記スライド方向(16)において前記駆動部材(84)を移動させるための接続ロッド配置(98)により、前記2つの作動要素(50、52)に結合すること、
または、
(b)前記スライドシャフト(14)の近位端(150)は、前記作動位置で前記駆動部材(84)に結合すること、
または、
(c)前記少なくとも1つの復元要素(190)は、一方では前記結合部品(64)に係合し、他方では前記少なくとも1つの第1ロック要素(170)に係合していること、
のうち少なくともいずれか1つである、
請求項29に記載の医療用スライドシャフト器具。
【請求項31】
(a)前記少なくとも1つの第1ロック要素(170)は、前記ロック位置で前記スライドシャフト(14)に係合するつめ(202)の形態で構成されること、
または、
(b)前記スライド方向(16)は、直線的に、または曲線状に延びること、
または、
(c)前記少なくとも1つの工具要素(20、22)および前記工具要素キャリア(12)は、一体的に形成されること、
または、
(d)前記医療用スライドシャフト器具(10)は、クリップアプライヤの形態で構成されること、
のうち少なくともいずれか1つである、
請求項1から30のいずれか1項に記載の医療用スライドシャフト器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具要素キャリアと、工具要素キャリアを取り囲み、スライド方向を規定する管状スライドシャフトと、工具要素キャリアに対して遠位方向にスライドシャフトを移動させる作動装置と、を備える、医療用スライドシャフト器具に関する。少なくとも1つの工具要素は、工具要素キャリアの遠位端に配置される、または移動可能に取り付けられる。少なくとも1つの工具要素は、遠位方向へのスライドシャフトの移動の結果として少なくとも1つの工具要素が移動するよう、スライドシャフトの遠位端領域と協働するよう配置される、または形成される。器具はさらに、少なくとも1つの前進位置での工具要素キャリアに対するスライドシャフトの移動を阻止するロック装置を備える。少なくとも1つの前進位置にあるスライドシャフトは、スライドシャフトが工具要素キャリアに対して近位方向に最大限に変位した基本位置に対して、遠位方向に変位している。ロック装置は、スライドシャフトが工具要素キャリアに対して、特に近位方向に変位可能な解放位置と、近位方向および/または遠位方向への工具要素キャリアに対するスライドシャフトの動きが阻止されるロック位置と、を規定する。ロック装置は、少なくとも1つの第1ロック要素と少なくとも1つの第2ロック要素とを備え、これらは、ロック位置において強制ロック(force-locking)係合および/またはポジティブロック(positive-locking)係合であり、解放位置において係合から外れている。
【背景技術】
【0002】
医療用スライドシャフト装置は、例えば、独国特許発明10155734号明細書または独国特許発明第10321854B3号明細書に開示されている。これらの刊行物に記載されているスライドシャフト器具は、例えば一時的に前進位置にある工具要素キャリアに対してスライドシャフトを保持するために、冒頭に記載されたロック装置の形態のロックを任意に装備することができる。これは、ロック装置が作動しているとき、すなわち、ロック位置が採用されたときに、工具要素キャリアに対する遠位方向および/または近位方向におけるスライドシャフトの動きが阻止されることを意味する。
【0003】
従来のロック装置は、例えば、作動装置のブランチ(branches)に突出した2つのロック要素を備える。これらは、通常薄いシートメタルで形成され、ブランチに溶接されている。この種類のロック装置は、その構造に起因して頻繁なリペアを必要とする傾向にあり、不適切な使用または扱いにより変形することがあり、ロック装置の誤作動につながる可能性がある。
【0004】
したがって、本発明の目的は、簡単かつ安全な方法で扱うことのできるよう、冒頭に記載された種類の医療用スライドシャフト器具を改良することである。
【0005】
この目的は、少なくとも1つの第2ロック要素がスライドシャフトに配置または形成され、少なくとも1つの第1ロック要素がスライドシャフトへの移動により解放位置からロック位置に移動可能である点において、冒頭に記載された種類の医療用スライドシャフト器具において、本発明に従って達成される。
【0006】
提案されたさらなる開発により、特に、スライドシャフト器具を少なくとも1つの前進位置にロックすること、すなわち、例えば、近位方向の工具要素キャリアに対するスライドシャフトの動きを阻止することが可能になる。少なくとも1つの第2ロック要素をスライドシャフトに配置すること、またはスライドシャフトにそれを直接形成することにより、器具の構造を簡素化することができる。したがって、少なくとも1つの第2ロック要素は、例えば、スライドシャフトとモノリシック(monolithically)という意味で一体的に形成することができる。これは、従来使用されているロック装置では不可能である。スライドシャフト器具の安定性、ひいてはその取り扱いの容易性(handleability)を向上することができる。ロック装置の解放位置からロック位置へのスライドシャフト器具のこの移動は、少なくとも1つのロック要素のスライドシャフトに向かう動きにより達成される。これにより、特に、スライドシャフトで少なくとも1つの第1ロック要素を直接係合してスライドシャフト器具をロックするため、ユーザにとって特に簡単で安全な取り扱いが可能になる。特に、そのようなスライドシャフト器具は、作動装置に配置または形成されなければならないロック要素なしで形成することができる。特に、ロック装置の意図しない作動の可能性を、それにより最小限に抑えることができる。そのようなロック装置により、特に、少なくとも1つの工具要素、例えば2つの工具要素を、規定された部分的に閉じた位置に保持することができる。したがって、スライドシャフト器具がクリップアプライヤ(clip applier)の形態で構成されている場合、特に、わずかな開口により規定された小さな動脈瘤クリップをしっかり保持することができ、それによりクリップを保持したスライドシャフト器具を、アシストする人物が外科医に確実に渡すことができる。提案されたロック要素の配置は、特に、スライド方向を含む平面に対して鏡面対称(mirror-symmetrical)であるロック装置の配置または形成を可能にする。これにより、特に、スライドシャフト器具ひいてはロック装置を左利きおよび右利きの両方のユーザが安全に利用することができるようになる。
【0007】
少なくとも1つの第2ロック要素とスライドシャフトとが一体的に形成されていると、有利である。特に、それらはモノリシックに形成されていてもよい。したがって、スライドシャフト器具は著しくより簡単に製造することができ、それにより、生産性およびスライドシャフト器具の生産におけるプロセスの安全性を向上させることができる。第2ロック要素とスライドシャフトとの一体構成に起因して、ロック装置は、従来のロック装置と比較してリペアの必要性が著しく低い構成にすることができ、これにより、より長い耐用年数をもたらし、ひいては、スライドシャフト器具のより長い寿命をもたらす。
【0008】
少なくとも1つの第1ロック要素が解放位置からロック位置へのスライド方向に対して横方向、特に垂直な方向に移動可能であることが好ましい。このような構成により、特に、少なくとも1つの第1ロック要素をスライドシャフトに直接係合し、近位方向および/または遠位方向への工具要素キャリアに対するスライドシャフトの変位を阻止することが可能になる。
【0009】
少なくとも1つの第1ロック要素がスライドシャフト器具に配置または形成され、スライド方向において工具要素キャリアに対して不動である、または実質的に不動であると、有利である。これは、特に、少なくとも1つのロック要素が、例えば、工具要素キャリアまたはスライドシャフトにより規定される軸方向に移動可能ではなく、むしろここに横方向にのみ移動可能であることを意味すると理解されるべきである。実質的に不動であるとは、例えば、ロック装置を解放位置からロック位置、およびその逆に移動させるために、レバーがスライドシャフトに向かう方向における自由端で回転または変形できる場合に、スライド方向に平行に延びて、第1ロック要素により構成されるまたは少なくとも1つの第1ロック要素に配置または形成されるレバーまたはレバーアームが、スライド方向に実質的に動くことができないことを意味する。
【0010】
作動装置が互いに対して移動可能な2つの作動要素を備える場合、スライドシャフト器具の取り扱いは、ユーザにとって通常の方法で達成することができる。特に、2つの作動要素は、互いに対して回転可能であるよう配置または形成されてもよい。
【0011】
スライドシャフト器具の特に敏感な取り扱いのために、スライドシャフトが近位方向に最大に変位したときに、2つの作動要素が、互いに最大距離にあり、遠位方向にスライドシャフトを動かすために互いに向かって移動可能であると、有利である。したがって、作動要素は、互いに向かって移動する、すなわち、遠位方向にスライドシャフトを動かすために、互いに対して押し付けられる。少なくとも1つの工具要素の基本位置は、すでに説明したように、工具要素キャリアに対して近位方向に最大限に変位したスライドシャフトにより規定される。
【0012】
スライド方向に対して横方向に延びる回転軸に対して2つの作動要素がそれぞれ回転可能であれば、スライドシャフト器具を特に簡単な方法で構成することができる。特に、回転軸は、スライド方向に対して垂直に延びていてもよい。例えば、2つの作動要素は、それぞれが回転軸を規定するよう、互いに独立して回転可能なように取り付けられてもよい。軸は、平衡に延びてもよいし、一般的な関節(articulation)の場合、一致していてもよい。
【0013】
本発明のさらに好ましい実施の形態によると、スライドシャフト器具は、スライドシャフトに近位方向に作用するバイアス力を発揮するためのバイアス装置を備えることができる。このようなバイアス装置は、特に、器具が作動していないとき、すなわち、作動装置にユーザによって力が加えられておらず、ロック装置が解放位置を採用しているときに、スライドシャフトを工具要素キャリアに対して近位方向に最大限にスライドさせることを可能にする。この位置では、例えば、少なくとも1つの工具要素はその1つの最遠位置(extreme position)を採用することができる。例えば、2つの工具要素が提供される場合、スライドシャフト器具がどのような用途に使用されるかに応じて、最大限の開度または最大限の閉度にすることができる。
【0014】
バイアス装置が少なくとも1つのバイアス要素を備え、2つの作動要素が少なくとも1つのバイアス要素の作用に対して互いに向かって移動可能であると、有利である。そのような設計により、特に、遠位方向にスライドシャフトをスライドさせるために必要な作動力(actuating force)が規定されるよう、スライドシャフト器具を構成することが可能になる。さらに、そのようなバイアス装置により、ロック装置が作動していないとき、すなわち、ロック装置が解放位置を採用しているときに、スライドシャフト器具を自動的に基本位置に戻すことが可能になる。
【0015】
少なくとも1つの第2ロック要素は、好ましくは、近位方向に面する停止面を含む。これにより、特に、少なくとも1つの第1ロック要素が停止面に係合しているときに、近位方向における工具要素キャリアに対するスライドシャフトの動きを阻止することが可能になる。スライドシャフト器具がバイアス装置を備える場合、後者は、例えば、スライドシャフトに向かってスライドして停止面に対して隣接する少なくとも1つの第1ロック要素と、強制ロック係合状態でそれと協働する第2ロック要素と、を保持することができる。
【0016】
スライドシャフト器具の意図しない解放、すなわち、ロック位置から解放位置へのロック装置の移動を防止するために、少なくとも1つの第2ロック要素がアンダーカット(undercut)を有し、アンダーカットは、少なくとも部分的に停止面により区切られることが好ましい。したがって、少なくとも1つのロック要素の構成は、簡単な方法で実現することができる。第2ロック要素が少なくとも部分的にアンダーカットに係合すると、ロック装置を解放するために、まず、スライドシャフトを遠位方向に移動させる必要がある。したがって、特に、スライドシャフト器具がアシストする人物から外科医に渡されるまたは手渡されるときに、工具要素キャリアの遠位端における2つの協働する工具要素の意図しない開閉を防止することができる。
【0017】
停止面がスライドシャフトに向かう方向に傾斜している場合、スライドシャフト器具を簡単な方法で構成することができる。このような停止面は、簡単な方法でスライドシャフトに一体的に形成することができる。
【0018】
ロック装置の安全な機能を実現するために、停止面とスライド方向との間の傾斜角度が、約88度から約60度の範囲であることが好ましい。このように形成されたアンダーカットは、簡単に製造することができ、また、簡単で安全な方法で洗浄することができる。
【0019】
少なくとも1つの第2ロック要素がスライドシャフトからの保持突起の形態で構成され、保持突起が半径方向を向いているか、またはスライドシャフトから離れる方向に向かって開いている保持溝の形態で構成されていると、有利である。保持突起および保持溝の両方は、特に、近位方向に面する停止面を有するよう構成されてもよい。したがって、どちらも、簡単な方法でスライドシャフトに配置または形成することができる。
【0020】
少なくとも1つの第2ロック要素は、好ましくは、スライドシャフトを環状に取り囲む。特に、少なくとも1つの第2ロック要素は、自己閉鎖的(self-enclosed)構成である。したがって、例えば、環状溝の形態の保持溝または環状突起の形態の保持突起は、スライドシャフトに形成することができる。これにより、特に、少なくとも1つの第1ロック要素と少なくとも1つの第2ロック要素との確実な係合により、スライド方向またはスライドシャフトおよび工具キャリアにより規定される長手方向の周りの工具要素キャリアに対するスライドシャフトの回転位置とは無関係に、解放位置からロック位置にロック装置を移動させることが可能になる。
【0021】
本発明のさらに好ましい実施の形態によると、少なくとも1つの第1ロック要素が解放位置からロック位置へ復元装置の作用に逆らって移動可能であるよう、ロック装置は復元装置を備えることができる。この設計では、復元装置の作用に対してロック装置を能動的に作動させる必要がある。したがって、ロック装置の誤った作動を回避することができる。さらに、特に、少なくとも1つの第1ロック要素および少なくとも1つの第2ロック要素が係合から外れたときに、ロック位置から解放位置へ自動的に移動するよう、ロック装置を構成することができる。例えば、少なくとも1つの第2ロック要素が近位方向に面して開いているアンダーカットを有するよう構成されている場合、スライドシャフトを工具要素キャリアに対して遠位方向にいくらかスライドさせることにより、ロック装置を自動的に解放することができる。その後、ロック装置は、係合から外れ、復元装置は、少なくとも1つの第1ロック要素を基本位置、例えば、ロック要素が係合から外れる解放位置に戻すよう移動させる。
【0022】
復元装置は、少なくとも1つの第1ロック要素と協働して配置または形成される少なくとも1つの復元要素を備える場合、簡単な方法で構成することができる。例えば、少なくとも1つの復元要素は、ロック要素に係合してもよいし、それにより構成されていてもよい。
【0023】
少なくとも1つの復元要素がばね要素を備える場合、スライドシャフト器具を簡単な方法で構成することができる。特に、ばね要素は、コイルばねまたは板ばねの形態で構成されていてもよい。
【0024】
少なくとも1つの第1ロック要素がスライドシャフトに向かう方向に向くロック突起を備え、ロック突起は、ロック位置において少なくとも1つの第2ロック要素と係合していることが好ましい。したがって、少なくとも1つの第1ロック要素は、スライドシャフトまたはそれに配置または形成された第2ロック要素に最適に適合させることができる。
【0025】
少なくとも1つの第1ロック要素は、好ましくは、ラッチノーズ(latching nose)を備える。ラッチノーズは、ロック位置において、少なくとも1つの第2ロック要素のアンダーカットに、ポジティブロック方式または実質的にポジティブロック方式で係合する。したがって、ロック位置におけるロック装置のロックは、簡単な方法で、すなわち、特に、スライドシャフト器具がスライドシャフトで近位方向に作用するバイアス力を発揮させるためのバイアス装置を備える場合に、実現することができる。これにより、特に、アンダーカットに係合するラッチノーズを、この係合位置においてプリテンション(pretension)下に保持し、ひいてはロック装置をロック位置に保持することが可能になる。
【0026】
特に、簡単で安全な方法で、スライドシャフトが工具要素キャリアに対して近位方向に移動するのを防ぐために、ラッチノーズが遠位方向に向けて配置または形成されると、有利である。特に、ラッチノーズは、ロック突起に配置または形成されてもよい。
【0027】
少なくとも1つの第1ロック要素がレバーアームを備え、ロック突起がレバーアームの自由端に配置または形成されることが好ましい。したがって、スライドシャフトに向かう方向における自由端でレバーアームを回転または変形させる場合に、例えば、スライドシャフトに向かう方向にロック突起を移動させることができる。
【0028】
スライドシャフト器具の簡単で安全な取り扱いのために、レバーアームは、遠位方向に向けて器具に配置または形成されることが好ましい。これにより、特に、簡単な方法で、レバーアームの自由端に、例えば、レバーアームの自由端に配置されたロック突起に、遠位方向に向けてラッチノーズを配置することができる。
【0029】
レバーアームが近位側で器具に固定されていると、有利である。特にレバーアーム回転軸の周りを回転可能にレバーアームが取り付けられるとよい。回転軸は、スライド方向に対して、特に横方向、例えば垂直に延びる。この設計により、特に、つめ(pawl)の形態で簡単な方法で、少なくとも1つの第1ロック要素を構成することが可能になる。レバーアームは、近位側に、スライドシャフト器具と一体的に、すなわちそれとモノリシックに形成されてもよい。したがって、レバーアームにさらに取り付けることを回避することができる。これにより、器具の構造を簡素化し、ひいては安定性が向上する。
【0030】
レバーアームは、好ましくは、少なくとも1つの復元要素を備える、または形成する。例えば、レバーアームは、弾力性を有する板ばね要素を形成してもよく、その自由端にロック突起が配置される。
【0031】
少なくとも1つの第1ロック要素は、好ましくは、スライド方向に対して横方向に延びるロック要素部分を備える。例えば、ロック要素部分は、ロック位置において、少なくとも1つの第2ロック要素と協働するよう構成または配置されてもよい。
【0032】
少なくとも1つの復元要素がロック要素部分を取り囲んで配置または形成されることが好ましい。これにより、特に、バルブプッシャー(valve pusher)の形態で簡単な方法で、少なくとも1つのロック要素を構成することが可能になる。
【0033】
スライドシャフトに向かうロック要素部分の端部にロック突起を配置または形成することが好ましい。したがって、特に、少なくとも1つの第2ロック要素と協働するまたは係合するロック要素部分の一部のみがロック突起を規定する。
【0034】
スライドシャフト器具が、ロック位置にロック装置を固定するための固定装置を備えると、有利である。そのような工程装置により、特に、スライドシャフト器具がロック位置から解放位置に自動的に移動することができることを回避することができる。したがって、ロック装置を解放するために、第1固定装置を解放する必要がある。
【0035】
固定装置が少なくとも1つの第1ロック要素と少なくとも1つの第2ロック要素とを備える場合、スライドシャフト器具を簡単な方法で構成することができる。少なくとも1つの第1ロック要素および少なくとも1つの第2ロック要素は、ロック装置が遠位方向にスライドシャフトを移動させることのみにより解放されるよう、配置または形成される。したがって、特に、例えばロック要素の特別な設計により、固定装置をロック装置に統合することができる。それらは、特に、説明された方法で、最初に工具要素キャリアに対して遠位方向にスライドシャフトをいくらか移動させたときに、ロック位置が解放位置に移動可能なように構成されてもよい。これは、半径方向の相互の動きだけでは簡単に解放されないようなロック要素の特別な設計により実現することができる。
【0036】
固定装置がアンダーカットとラッチノーズを備える場合に、固定装置を簡単な方法で構成することができる。これらが、遠位方向と近位方向のそれぞれに向けて作用するよう構成されている場合、これらは、2つの協働する固定要素を形成する。2つの固定要素は、固定装置により構成され、ロック位置から解放位置にロック要素を移動させるために、スライドシャフトと工具要素キャリアとの遠位方向への相対移動によってのみ係合から外れることができる。
【0037】
スライドシャフト器具が、近位方向および遠位方向へのスライドシャフトの移動を区切るための停止装置を備えることが好ましい。したがって、例えば、スライドシャフト器具で取り扱うべき、インプラント、例えば動脈瘤クリップの損傷を簡単で安全な方法で防止することができる。次に、停止装置により互いに対して規定されるスライドシャフトおよび工具要素キャリアの最大スライド位置もまた、工具キャリア要素の遠位端で少なくとも1つの工具要素の最遠位置を規定する。
【0038】
停止装置が、近位停止および遠位停止を含み、工具要素キャリアに対するスライドシャフトの最大変位経路が近位停止および遠位停止の有効表面(active surfaces)の互いからの距離により規定されると、有利である。例えば、停止の有効表面は互いに向かい合っていてもよい。変位経路は、これらの有効表面の間隔により規定される。任意に、停止はまた、調整可能な構成であってもよい。これにより、特に、器具を工場で調整することが可能になり、任意に、ユーザが装置を再調整して、スライドシャフトの最遠位置、ひいては、工具要素キャリアの遠位端で少なくとも1つの工具要素の最遠位置を、所望の方法で特定することが可能になる。
【0039】
好ましくは、近位停止は基本位置を規定し、好ましくは、遠位停止は遠位方向に最大限に偏向されたスライドシャフトの位置を規定する。したがって、停止の配置および位置により、所望の方法でスライドシャフト器具の使用を予め設定することができる。
【0040】
基本位置と遠位方向の最大偏向位置との間の少なくとも1つの前進位置において、ロック装置が工具要素キャリアに対するスライドシャフトの動きを阻止することが好ましい。したがって、特に、少なくとも1つの工具要素の規定された偏向位置に、ロック装置でスライドシャフト器具をロックすることができる。例えば、スライドシャフト器具の相互に協働するジョー(jaw)部品の部分的に開いた位置または部分的に閉じた位置であってもよく、ジョー部品は、2つ以上の工具要素を規定する。
【0041】
スライドシャフト器具の洗浄性を向上させるために、工具要素キャリアが作動位置で作動装置に結合され、洗浄位置で作動装置から分離されると、有利である。
【0042】
また、スライドシャフトを作動位置で作動装置に結合させ、洗浄位置で作動装置から分離することにより、スライドシャフト器具の洗浄性をさらに向上させることができる。
【0043】
作動装置が結合部品を備え、2つの作動要素が結合部品に移動可能に配置され、工具要素キャリアが作動位置で結合部品に不動に保持されることが好ましい。特に、このような設計により、工具要素キャリアの遠位端が、結合部品、ひいては作動装置に対してスライド方向に移動しないことを保証にすることができる。したがって、外科医は、通常の方法でスライドシャフト器具をガイドおよび保持することができる。特に、少なくとも1つの第1ロック要素を、結合部品に一体的に、例えばモノリシックに配置または形成してもよい。したがって、スライドシャフト器具の解放可能に接続される部品の数を最小限にすることができる。
【0044】
結合部品が、スライド方向に移動可能に取り付けられた駆動部材を備え、互いに向かうまたは互いから離れる2つの作動要素の動きの結果としてスライド方向に駆動要素を移動させるために、駆動部材が接続ロッドの配置により2つの作動要素に結合されると、有利である。例えば、取り外し可能なスライドシャフト器具の場合、スライドシャフトが駆動部材の移動に対応して移動するよう、スライドシャフトは、駆動要素と強制ロック係合および/またはポジティブロック係合させることができる。
【0045】
作動位置でスライドシャフトの遠位端が駆動部材に結合されると、有利である。したがって、特に、スライドシャフトが作動装置から分離される洗浄位置を採用するよう、その遠位端が駆動部材から切り離されることにより、スライドシャフトを駆動装置から解放することができる。
【0046】
少なくとも1つの復元要素が、一方では結合部品に係合し、他方では少なくとも1つの第1ロック要素に係合すると、有利である。特に、少なくとも1つのロック要素のレバーアームに係合してもよい。復元装置の少なくとも1つの復元要素のこの配置の結果として、特に、固定装置が解放されると、ロック装置が自動的に解放位置に移動することを保証することができる。
【0047】
少なくとも1つの第1ロック要素がロック位置でスライドシャフトに係合する爪の形態で構成されている場合、特に簡単な方法でスライドシャフト器具を前進位置に固定することができる。特に、解放位置に自動的に移動するよう、つめが弾力的に付勢されてもよい。特に、つめは、スライドシャフト、特に少なくとも1つの第2ロック要素にあるアンダーカットと協働するラッチノーズを備えてもよい。
【0048】
任意のシャフト形状を形成することができるようにするために、スライド方向が直線的にまたは曲線状に延びると、有利である。特に、スライド方向が工具要素キャリアの長手方向軸またはスライドシャフトの長手方向軸により規定される、直線的なスライドシャフト器具を形成することができる。あるいは、曲線状の工具要素キャリアおよび対応する曲線状のスライドシャフトにより、曲線状のスライド方向を規定することができる。
【0049】
特にコンパクトなスライドシャフト器具を形成することができるようにするために、少なくとも1つの工具要素および工具要素キャリアが一体的に形成されていると、有利である。したがって、特に、生産コストの高い、少なくとも1つの工具要素の工具要素への移動可能な取り付けを見送ることができる。
【0050】
スライドシャフト器具がクリップアプライヤの形態で構成される場合、外科用クリップ、特に動脈瘤クリップは、簡単で安全な方法でスライドシャフト器具を用いて取り扱うことができる。
【0051】
本発明の好ましい実施の形態の後続の説明は、さらなる説明のために図面と併せて役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】スライドシャフト器具の一実施の形態を概略的に示す全体斜視図
図2】スライドシャフト器具に保持された外科用クリップを有する、図1の領域Aの部分拡大図
図3図1のスライドシャフト器具の側面図
図4図3のスライドシャフト器具の矢印Bの方向から見た図
図5図3のスライドシャフト器具の矢印Cの方向から見た部分図
図6】工具要素キャリアに対して遠位方向にスライドシャフトをいくらか移動させた図5と同様の図
図7】ロック位置に到達する前の基本位置からスライドシャフトが偏向した状態のスライドシャフト器具の長手方向断面図
図8】スライドシャフト器具を図6の8-8線に沿って切断した図
図9】ロック要素が相互係合する図9の配置の部分拡大図
図10図8の配置の一部を拡大した図
図11】スライドシャフト器具のさらなる実施の形態を示す図10と同様の図
図12】スライドシャフト器具のさらなる実施の形態を示す図10と同様の図
図13】スライドシャフト器具のさらなる実施の形態を示す図10と同様の図
図14】スライドシャフト器具のさらなる実施の形態を示す図10と同様の図
【発明を実施するための形態】
【0053】
医療用スライドシャフト器具の第1の実施の形態は、図1に概略的に図示されており、全体として符号10で示されている。
【0054】
それは、管状のスライドシャフト14を取り囲む工具要素キャリア12を備える。
【0055】
スライドシャフト14は、長手方向軸148によってスライド方向16を規定する。したがって、スライド方向16は、図1に示す実施の形態では、直線的に延びる。あるいは、図示されていない実施の形態では、スライド方向は、曲線状に延びてもよい。
【0056】
スライドシャフト器具10は、さらに、スライドシャフト14を工具要素キャリア12に対して遠位方向および近位方向の両方に移動させるための作動装置18を備える。
【0057】
図示された実施の形態において、2つの工具要素20および22が、工具要素キャリア12の遠位端に配置されている。工具要素は工具要素キャリア12に一体的に、すなわちモノリシックに形成されている。工具要素は、工具要素キャリア12の遠位端23から始まり、スリット24により互いに分離される細長いアームの形態で構成されている。
【0058】
工具要素に外力が作用していない基本位置において、図1および図2に概略的に示すように、2つの工具要素20、22は離れて広がっている。
【0059】
例えば、図2に概略的に示す外科用クリップ30収容するために、工具要素20および22は、互いに向かい合っていくらか凹んだ構成の保持面26および28を有する。
【0060】
遠位方向に漏斗状に広がるスライドシャフト14の端部32は、工具要素20および22を閉じるために役立つ。図2の矢印34に示すように、スライドシャフト14が遠位方向に移動する場合、端部32は、工具要素20および22の互いに背を向けた外面36および38をスライドするので、後者は互いに向かって移動する。工具要素20および22のこの移動の結果として、工具要素の間に収容されたクリップ30は、締め付けて(clampingly)保持されるだけでなく、工具要素20および22の互いに対する近接度の増加とともに連続的に開放される。この機能は、クリップ30の場合、らせん状のばね要素に近位側で接続されるそのクランプアーム40および42が交差するという事実から生じる。言い換えると、クリップ30は、外力が作用していない状態で閉じた位置を採用するよう構成され、その閉じた位置において、クランプアーム40および42は、その自由端46および46を可能な限り近接させた位置を採用する。
【0061】
記載された方法で、スライドシャフトの遠位方向への移動の結果として、工具要素20および22が移動するよう、すなわち図示された実施の形態で互いに向かって移動するよう、工具要素20および22は、遠位端領域を形成するスライドシャフト14の端部32と協働して配置または形成される。
【0062】
スライドシャフト器具10の場合、作動装置18は、互いに対して移動可能な、すなわち回転可能な2つの作動要素50および52を備える。枝の形態で構成された作動要素50および52の近位端領域は、板バネ状のバイアス要素54および56の形態で構成される。その自由端58および60は、互いに移動可能に係合している。バイアス要素54および56は、スライドシャフト14に近位方向に作用するバイアス力を発揮するためのバイアス装置62を形成する。
【0063】
バイアス要素54および56は、互いに向き合って湾曲しており、基本位置において、互いからの距離が最大となる位置で作動要素50および52を保持する。図1の矢印で概略的に示すように、作動要素50および52が互いに向かって移動すると、バイアス装置62の作用に反して、すなわち、バイアス要素54および56の作用に反して、これが生じる。
【0064】
作動装置18は、スリーブ66を有する、結合部品とも称する結合部64を備える。スリーブ66からは、スライド方向16に対して横方向に互いに離れる向きに軸受ジョー(bearing jaws)68および70が突出する。スリーブ66には、遠位方向を向いた作動要素50および52の端部72および74が軸受ピン76および78により回転可能に取り付けられている。2つの軸受ピン76および78はそれぞれ、スライド方向16に対して横方向に、図に示された実施の形態の場合には垂直に延びる回転軸80および82を規定する。
【0065】
スライド方向16にスライド可能に取り付けられた駆動部材84は、スリーブ66に配置されている。駆動要素84は、スリーブ16に移動可能に取り付けられたスリーブ部86を備える。スリーブ部86からは、スライド方向16に延びる穿孔(perfomation)の形態に構成された窓90から結合ピンが突出する。
【0066】
回転軸80および82に平行に延びる共通の回転軸92の周りを回転可能なように、接続ロッドの配置98の2つの接続ロッド94および96が、結合ピン88に取り付けられる。接続ロッド94および96のそれぞれの他端は、それぞれ、軸受ジョー100および102の軸受ジョー68および70の近位端で、軸受ピン104および106のそれぞれにより回転可能に取り付けられる。軸受ジョー100および102は、互いに向き合って、作動要素50および52から突出して配置されている。軸受ピン104および106は、長手方向軸で、回転軸92に平行に延びる回転軸を規定する。
【0067】
記載された方法で、接続ロッドの配置98により駆動部材84の結合ピン88に、作動要素50および52を結合することにより、駆動要素50および52が互いに向かって移動すると、駆動部材84は遠位方向に移動し、駆動要素50および52が互いから離れて移動すると、駆動部材84は近位方向に移動する。
【0068】
スライドシャフト器具10はさらに、近位方向および遠位方向のスライドシャフト14の移動を区切るための停止装置108を備える。この目的のために、停止装置108は、近位停止110および遠位停止112を備える。停止110および112は、それぞれ内ねじ122および124が設けられた穴126および128にねじ込まれ、それぞれ外ねじが設けられたグラブねじ114および116により形成され、スリーブ66から突出する結合ピン88に平行な停止突起118および120に、スライド方向16に平行に延びる。
【0069】
スリーブ66に対する駆動部材84の最大経路130は、近位停止110および遠位停止112の有効表面134および136の互いからの距離132により規定される。図示される実施の形態において、有効表面134および136は、互いに向き合い、それぞれ近位方向および遠位方向に結合ピン88の移動を区切るのに役立つ。
【0070】
スライドシャフト器具10の基本位置にあるスライドシャフト14は、バイアス装置62により、近位方向に最大限に変位する。近位停止110は、基本位置を規定する。遠位停止112は、遠位方向におけるスライドシャフト14の最大偏向位置を規定する。
【0071】
作動位置にあるスライドシャフト14は、作動装置18に結合する。これを可能にするために、スライドシャフト14の近位端部分138は、互いに垂直な1つのスリットを備え、それにより、スライド方向16に平行に延びる4つのばねアーム140を形成する。
【0072】
半径方向に離れて外側に面するばねアームに形成されているのは環状凹部142であり、この中にスリーブ部86が作動位置で係合する。環状溝の形態で構成された凹部142に隣接する環状突起144の外面は、近位方向に傾斜したスライド面146を有する。
【0073】
作動装置18から完全に分離した洗浄位置から、スライドシャフト14が、ばねアーム140を用いて近位方向に駆動部材84のスリーブ部86に挿入されると、近位方向を向くばねアーム140の自由端がスライドシャフト14の長手方向軸148に向かう方向に回転するよう、スライド面146はスリーブ部86をスライドする。
【0074】
スリーブ部86が環状凹部142に完全に収容されると、ばねアーム140は、長手方向軸148から離れて外側に回転して戻る。したがって、スライドシャフト14は、作動位置で作動装置18の駆動部材84に結合する。
【0075】
工具要素キャリア12は、近位端150から始まるスリット152を備える。したがって、スライドシャフト14のように、工具要素キャリア12には、近位方向に面して長手方向軸148に平行に延びる2つのばねアーム154が形成されている。端部150からいくらかの距離を空けて、ばねアーム154に環状溝156が形成されている。工具要素キャリア12が結合部64に結合しているときに、環状溝には、長手方向軸148に向かう方向に突出する環状突起158が係合している。
【0076】
上述した方法でスライドシャフト14を駆動部材84に結合した後、工具要素キャリア12が、遠位方向から初めて、スライドシャフト14を介して近位方向に端部150でスライドできるよう、工具要素キャリア12の外径はスライドシャフト14の内径に適合する。環状突起158が環状溝156に沈むことができるまで、ばねアーム154が互いに向かって回転するよう、端部150は環状突起150でスライドする。
【0077】
工具要素キャリア12とスライドシャフト14とを説明した作動位置で固定するために、ロックピン160が結合部64に変位可能に取り付けられる。ロックピン160は、遠位方向を向いた押し部材162から突出している。押し部材162は、コイルばねの形態のバイアス要素164により遠位方向に付勢されている。
【0078】
ロックピン160は、作動位置において、工具要素キャリア12のばねアーム154の間でスリット152に沈み、それにより、互いに向かってばねアーム154の移動を防止するような寸法になっている。作動位置でばねアーム154をこのように配置した結果、長手方向軸148に向かう方向におけるスライドシャフト14のばねアーム140の回転は、ばねアーム154により同時に阻止される。したがって、ロックピン160は、作動装置18の結合部64の作動位置で工具要素キャリア12を直接ロックし、作動装置18の駆動部材84のスライドシャフトを間接的にロックする。
【0079】
スライドシャフト器具10を分解するために、その近位端をキャップ166により囲まれている押し部材162は、長手方向軸148に平行にバイアス要素164の作用に反する近位方向にスライドする。そして、工具要素キャリア12が遠位方向にスライドシャフト14から引き抜かれるように、ロックピン160はばねアーム154を解放する。
【0080】
工具要素キャリア12がスライドシャフト14から引き抜かれると、ばねアーム140は、スライドシャフト14を遠位方向に引き抜くことにより、長手方向軸140に向かう方向に回転することができる。
【0081】
説明した方法で、工具要素キャリア12を作動装置18に結合した結果、作動位置にある工具要素キャリア12は、結合部64に不動に保持される。
【0082】
スライドシャフト器具10はさらに、上述したようにスライドシャフト14が基本位置に対して遠位方向にスライドし、スライドシャフト14が工具要素キャリア12に対して近位方向に最大限にスライドする前進位置におけるスライドシャフト14と工具要素キャリア12の動きを阻止するためのロック装置168を備える。
【0083】
ロック装置168は、スライドシャフト14および工具要素キャリア12が長手方向軸148に平行に、またはスライド方向16に平行に変位することができる解放位置を規定する。さらに、ロック装置168は、工具要素キャリア12に対するスライドシャフト14の移動が少なくとも近位方向で阻止されるロック位置を規定する。
【0084】
ロック装置168は、第1ロック要素170および第2ロック要素172を備える。
【0085】
ロック位置にあるロック要素170および172は、強制ロック方式および/またはポジティブロック方式で互いに相互係合する。解放位置において、それらは係合から外れている。
【0086】
第2ロック要素172は、スライドシャフト14に配置または形成される。第1ロック要素170は、解放位置からロック位置まで、スライドシャフト14に向かう方向の移動により移動可能である。
【0087】
第2ロック要素172およびスライドシャフト14は、一体的に、すなわちモノリシックに形成される。図1から図10に示すスライドシャフト器具10の実施の形態において、第2ロック要素172は、スライドシャフト14から離れる方向に向かって開く保持溝174の形態で構成される。保持溝174は、スライドシャフト14を環状に取り囲み、自己閉鎖的である。したがって、保持溝174は、環状溝の形態で構成されている。
【0088】
第2ロック要素172は、近位方向に面する停止面176を備える。停止面176は、保持溝174の側壁を形成する。
【0089】
停止面176は、スライドシャフト14に向かう方向に向かっていくらか傾斜している。停止面176とスライド方向16との間の傾斜角度178は、約88度から約60度の範囲である。
【0090】
停止面176は、半径方向に長手方向軸148から離れる方向にむいた保持溝174の環状面180とともに、第2ロック要素172に形成されたアンダーカット182を規定する。
【0091】
第1ロック要素170は、工具要素キャリア12に対してスライド方向16に不動に、または実質的に不動に配置されるよう、スライドシャフト器具10に配置される。これは、軸方向において、すなわちスライド方向16と平行な方向において、作動位置にある工具要素キャリア12に対して不動であるよう保持された結合部84に第1ロック要素を配置または形成することにより、達成される。
【0092】
第1ロック要素170は、スライド方向16に平行な遠位方向を向いて延びるレバーアーム184を備える。レバーアーム184は、近位側で、すなわち、結合部64と一体的に形成されることにより、スライドシャフト器具10に固定される。
【0093】
第1ロック要素170はさらに、スライドシャフト14に向かう方向を向き、解放位置において第2ロック要素172との係合から外れるロック突起186を備える。解放位置は、図7に例として図示されている。図9に概略的に示すように、ロック位置において、ロック突起186は、第2ロック要素172と係合している。
【0094】
ロック装置168はさらに、復元装置188を備える。第1ロック要素170が復元装置188の作用に反して解放位置からロック位置まで移動可能であるよう、復元装置188が配置および構成される。
【0095】
復元装置188は、第1ロック要素170と協働するよう配置または形成された復元要素190を備える。
【0096】
図1から図10に示すスライドシャフト器具10の実施の形態において、復元要素190は、ばね要素192の形態で、すなわち板ばね194の形態で構成されている。レバーアーム184はまた、復元要素190を備えるまたは形成する。
【0097】
図9に概略的に示すように、矢印196により象徴される押圧力を発揮させることにより、レバーアーム184の自由端において、第1ロック要素170は、ロック突起186を有する復元要素190の作用に反して長手方向軸148に向かう方向に回転することができる。
【0098】
第1ロック要素170はさらに、ラッチノーズ198を備える。図9に概略的に示すように、ロック位置にあるラッチノーズ198は、第2ロック要素172のアンダーカット182に、ポジティブロック方式でまたは実質的にポジティブロック方式で係合する。ラッチノーズ198は、遠位方向を向いて、すなわち図に示す実施の形態においてはロック突起186に配置または形成される。ロック突起186は、上述のように、レバーアーム184の自由端に配置または形成される。
【0099】
スライドシャフト器具10はさらに、ロック装置168をロック位置に固定するための固定装置200を備える。
【0100】
固定装置200は、第1ロック要素170および第2ロック要素172を備える。それらは、ロック装置168が遠位方向へのスライドシャフト14の移動によってのみ解放されるよう、配置または形成される。図1から図10に示すスライドシャフト器具10の実施の形態において、これは、固定装置200がアンダーカット182およびラッチノーズ198を備えることにより達成される。
【0101】
アンダーカット182およびラッチノーズ198が係合していると、スライドシャフト器具10は、ロック位置に固定される。
【0102】
ロック位置を解放するために、スライドシャフト14を遠位方向にいくらかスライドする必要がある。これは、互いに向かっていくらか回転し、それにより、結合部64においてそこに結合されたスライドシャフト14とともに駆動部材84を遠位方向にいくらかスライドさせる作動要素50および52により達成される。それにより、ラッチノーズ198およびアンダーカット182は係合から外れ、復元要素190はロック突起186を保持溝174から移動させる。これで、スライドシャフト器具10は、解放位置を採用する。スライドシャフト14は、工具要素キャリア12に対して所定の変位経路130の範囲で、遠位方向および近位方向のスライド方向16において、スライドすることができる。
【0103】
スライドシャフト器具10を解放位置からロック位置に移動させるために、まず、ロック突起186がラッチノーズ198とともに保持溝174に沈むことができるよう、スライドシャフト14を遠位方向にある程度スライドさせる必要がある。ロック突起186の係合は、レバーアーム184の自由端で押圧力を発揮させることによりもたらされる。
【0104】
ロック突起186が前方に押圧された状態で、作動要素50および52がさらにともに押圧されない場合、作動要素50および52で近位方向に作用するバイアス力を発揮することにより、バイアス装置62は、作動装置18に移動可能に結合された結合部64を、近位方向にいくらか、すなわち、ラッチノーズ198がアンダーカット182に係合するまである程度移動させる。近位方向および遠位方向の最遠位置の間に規定されるスライドシャフト14の前進位置にあるスライドシャフト器具10は、工具要素キャリア12に対して近位方向へのスライドシャフトの移動に対して、阻止されて固定される。
【0105】
図1から図10に示すスライドシャフト器具10の実施の形態において、説明した第1ロック要素170は、ロック位置でスライドシャフト14に直接係合するつめ102の形態で構成される。
【0106】
図1から図10の文脈で説明したスライドシャフト器具10は、すでに説明したように、部分的に開いた位置でクリップ30を保持および扱うために、特に、アシストする人物により外科医に渡すために使用することができる。
【0107】
スライドシャフト器具10の基本構造は、さらなる実施の形態において維持することができる。スライドシャフト器具10のロック装置168の変形例を、図11から図14に関連して以下により詳細に説明する。
【0108】
図11に概略的に示すように、ロック装置168の実施の形態は、2つのロック要素170を備える。それらは、結合部64で互いに反対側に配置されるため、近位方向における工具要素キャリア12に対するスライドシャフト14の移動を阻止するために、2つのロック突起168のうち1つだけが保持溝174に挿入される必要がある。ロック装置168を2つの第1ロック要素170で構成することにより、特に、スライドシャフト器具10のより柔軟な取り扱いが可能になる。
【0109】
図12に示す実施の形態において、保持溝に代わり、第2ロック要素172が、半径方向にスライドシャフト14から離れる方向を向いた保持突起204の形態で構成される。保持突起204はまた、スライドシャフト14を環状に取り囲んで自己閉鎖的である。したがって、保持突起204は、環状突起の形態で構成される。
【0110】
環状突起は、近位方向に面し、次にスライド方向16または長手方向軸148に対して傾斜し、傾斜角178を規定する停止面176を有する。したがって、次に、アンダーカット182が形成され、ラッチ突起184のラッチノーズ198がロック位置で係合することができる。
【0111】
図12に破線で概略的に示されているのは、第2ロック要素170である。図11に示すロック装置168のように、工具要素キャリア12に対して近位方向へのスライドシャフトの移動を防ぐために、2つの第1ロック要素170のうち1つを選択的に保持突起204と係合することができる。
【0112】
図12に示すロック装置168の実施の形態において、図1から図10および図11の実施の形態の保持溝174の場合に可能であるように、遠位方向へのスライドシャフト14の移動を阻止することのできる、停止面176と逆向きの対応面は関連付けられていない。
【0113】
ロック装置168のさらなる実施の形態が、図13に概略的に示されている。第1ロック要素170の設計を通じて、図1から図10の実施の形態とその構造が異なる。次に、第2ロック要素172は保持溝174の形態で構成される。保持溝は、近位方向に面する停止面176を備え、環状面180とともにアンダーカット182を規定する。
【0114】
第1ロック要素170は、スライド方向に対して横方向に延びるボルト形状のロック要素部分206を備える。その端部に、スライドシャフト14から離れる方向に向く、作動ボタン208が配置されている。作動ボタン208から離れ、スライドシャフト14に向かう方向に向いたロック要素部分206の端部に配置されているのは、アンダーカット182と強制ロック係合および/またはポジティブロック係合させるために遠位方向に向いたラッチノーズ198を有するロック突起186である。
【0115】
スリーブ66に配置されたフード210は、ロック要素部分206のための穿孔212を有する。
【0116】
作動ボタン208からいくらか離れてロック要素206に配置されているのは、停止プレート216である。コイルばね214の形態の復元要素190は、一方では停止プレート216のスライドシャフト14に向かう方向に面する側面で支持され、他方ではスリーブ66で支持され、解放位置で第1ロック要素170を保持している。
【0117】
作動力が、スライドシャフト14に向かう方向に作動ボタン208に発揮されると、保持要素190により部分的に囲まれているロック要素部分206は、スライドシャフト14に向かう保持要素190の作用に反して移動する。
【0118】
ロック突起186が保持溝174に沈むことができるよう、スライドシャフト14が遠位方向にある程度移動すると、記載された方法で、スライドシャフト14、およびひいてはスライドシャフト器具10を前進位置で阻止することができる。
【0119】
ロック装置168のさらなる実施の形態は、図14に概略的に示されている。この実施の形態においても、第2ロック要素172は、近位方向に作用するアンダーカット182を有する保持溝として構成される。
【0120】
第1ロック要素170は、図1から図10の文脈で説明した第1ロック要素170と、その構造およびその機能において同様である。
【0121】
結合部64のスリーブ66に配置されているのは、長手方向軸148から半径方向に突出する軸受ブロック218である。軸受ブロックには、剛性を有する、すなわち実質的に変形不可能な、遠位方向に延びるレバーアーム184が、回転軸220の周りを回転可能に取り付けられている。次に、レバーアームは、遠位方向を向くその端部に、レバーアーム184からスライドシャフト14に向かう方向に突出するよう構成されたロック突起186を支持する。次に、ラッチノーズ198は、ラッチ突起186から遠位方向に突出する。ラッチノーズ198はアンダーカット182とともに、詳細を上述した固定装置200を形成する。
【0122】
回転軸220は、スライド方向16に対して横方向に延びる。
【0123】
復元装置188は、コイルばね214の形態の復元要素190を備える。復元要素は、一方をスリーブ66に、他方をレバーアーム184に支持されている。これにより、スライドシャフト14に向かう方向に、すなわち、復元要素190の作用に反して押圧力を印加することにより、レバーアーム184を回転させることができる。
【0124】
すでに何回か説明したように、スライドシャフト14がその基本位置から遠位方向に十分遠くに移動すると、ロック突起186は、保持溝174に沈むことができる。
【0125】
固定装置200が遠位方向へのスライドシャフト14の移動により解放されると、復元要素190は、ロック突起186および保持溝174が係合から外れているその初期位置にレバーアーム184を戻すよう移動させる。このとき、スライドシャフト14は、所定の変位経路130の範囲で遠位方向および近位方向に移動することができる。
【0126】
説明したように、記載されたロック装置168は、必要に応じて、スライドシャフト器具10の記載された基本構造と組み合わせることができる。したがって、クリップアプライヤ222の形態のスライドシャフト器具10の異なる実施の形態を構成することができる。
【0127】
ロック装置168の記載された実施の形態は、著しく長い寿命を有し、より簡単に生成することができ、扱いやすく、薄いシートメタルにより形成された従来既知のロック装置と比較して安定性が向上している。これは、特に、患者の頭部にスライドシャフト器具10で保持されたクリップ30が意図せず解放されることを防止するために、特に、脳神経外科で医療用スライドシャフト器具10の使用する場合、重要である。
【符号の説明】
【0128】
10 スライドシャフト器具
12 工具要素キャリア
14 スライドシャフト
16 スライド方向
18 作動装置
20 工具要素
22 工具要素
23 端
24 スリット
26 保持面
28 保持面
30 クリップ
32 端部
34 矢印
36 外面
38 外面
40 クランプアーム
42 クランプアーム
44 ばね要素
46 端
48 端
50 作動要素
52 作動要素
54 バイアス要素
56 バイアス要素
58 端
60 端
62 バイアス装置
64 結合部
66 スリーブ
68 軸受ジョー
70 軸受ジョー
72 端部
74 端部
76 軸受ピン
78 軸受ピン
80 回転軸
82 回転軸
84 駆動部材
86 スリーブ部
88 結合ピン
90 窓
92 回転軸
94 接続ロッド
96 接続ロッド
98 接続ロッドの配置
100 軸受ジョー
102 軸受ジョー
104 軸受ピン
106 軸受ピン
108 停止装置
110 停止
112 停止
114 グラブねじ
116 グラブねじ
118 停止突起
120 停止突起
122 内ねじ
124 内ねじ
126 穴
128 穴
130 変位経路
132 距離
134 有効表面
136 有効表面
138 端部分
140 ばねアーム
142 凹部
144 環状突起
146 スライド面
148 長手方向軸
150 端
152 スリット
154 ばねアーム
156 環状溝
158 環状突起
160 ロックピン
162 押し部材
164 要素
166 キャップ
168 ロック装置
170 第1ロック要素
172 第2ロック要素
174 保持溝
176 停止面
178 傾斜角
180 環状面
182 アンダーカット
184 レバーアーム
186 ロック突起
188 復元装置
190 復元要素
192 ばね要素
194 板ばね
196 矢印
198 ラッチノーズ
200 固定装置
202 つめ
204 保持突起
206 ロック要素部分
208 作動ボタン
210 フック
212 穿孔
214 コイルばね
216 停止プレート
218 軸受ブロック
220 回転軸
222 クリップアプライヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14