(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】航空機の圧縮空気供給システム
(51)【国際特許分類】
F02C 6/08 20060101AFI20241120BHJP
F02C 7/141 20060101ALI20241120BHJP
F02C 7/32 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
F02C6/08
F02C7/141
F02C7/32
(21)【出願番号】P 2022558692
(86)(22)【出願日】2020-10-28
(86)【国際出願番号】 JP2020040540
(87)【国際公開番号】W WO2022091273
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼見 祐朗
(72)【発明者】
【氏名】世古口 直也
(72)【発明者】
【氏名】石田 克彦
(72)【発明者】
【氏名】梅▲崎▼ 健太
(72)【発明者】
【氏名】坂本 洋
(72)【発明者】
【氏名】五井 龍彦
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0275769(US,A1)
【文献】特開2020-023305(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0180772(US,A1)
【文献】特表2019-528213(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0309683(US,A1)
【文献】特開2006-273183(JP,A)
【文献】特開2009-096324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 6/08
F02C 7/141
F02C 7/32
B64D 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンエンジンからの抽気が流れる抽気路と、
前記抽気路に流体的に接続される圧縮機入口と、圧縮機出口と、を有する補助圧縮機と、
前記圧縮機出口に流体的に接続され、前記補助圧縮機からの圧縮エアを航空機の空気系統に供給する供給路と、
前記ガスタービンエンジンの回転軸の駆動力を変速して前記補助圧縮機に出力することで前記補助圧縮機を回転駆動する無段変速機と、
前記抽気路の圧力を検出する第1圧力センサと、
前記供給路の圧力を検出する第2圧力センサと、
前記第1
圧力センサ及び前記第2圧力センサの検出信号に応じて前記無段変速機の変速比を制御することで前記無段変速機の出力回転数を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記第1圧力センサで検出される前記抽気路の圧力と前記第2圧力センサで検出される前記供給路の圧力との間の差圧に基づいて、前記無段変速機の変速比を制御して前記供給路の圧力を所望の圧力に調整する、航空機の圧縮空気供給システム。
【請求項2】
ガスタービンエンジンからの抽気が流れる抽気路と、
前記抽気路に流体的に接続される圧縮機入口と、圧縮機出口と、を有する補助圧縮機と、
前記圧縮機出口に流体的に接続され、前記補助圧縮機からの圧縮エアを航空機の空気系統に供給する供給路と、
前記供給路から分岐し、前記補助圧縮機からの圧縮エアを前記抽気路に供給する戻り路と、
前記戻り路を開閉可能な圧力調整弁と、
前記補助圧縮機を回転駆動する駆動装置と、
前記抽気路又は前記供給路の圧力を検出するセンサと、
前記センサの検出信号に応じて前記駆動装置の出力回転数を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記センサで検出される圧力の時間変化率の絶対値が閾値を超えると、前記供給路における圧力変動を抑制するように前記圧力調整弁の開度を制御する、航空機の圧縮空気供給システム。
【請求項3】
ガスタービンエンジンからの抽気が流れる抽気路と、
前記抽気路に流体的に接続される圧縮機入口と、圧縮機出口と、を有する第1補助圧縮機と、
前記圧縮機出口に流体的に接続され、前記第1補助圧縮機からの圧縮エアを航空機の空気系統に供給する供給路と、
前記第1補助圧縮機を回転駆動する駆動装置と、
前記抽気路に流体的に接続された圧縮機入口と、前記供給路に流体的に接続された圧縮機出口と、を有し、前記第1補助圧縮機に対して並列接続され、前記駆動装置によって回転駆動可能な第2補助圧縮機と、
前記第2補助圧縮機を圧縮状態と非圧縮状態との間で切り替え可能な切替構造と、
前記供給路の圧力又は温度を検出するセンサと、
前記センサの検出信号に応じて前記駆動装置の出力回転数を制御するコントローラと、を備え、
前記切替構造は、前記第2補助圧縮機を迂回して前記第2補助圧縮機の前記圧縮機出口を前記第2補助圧縮機の前記圧縮機入口に接続する第2戻り路と、前記第2戻り路を開閉可能な第2圧力調整弁と、を有する、航空機の圧縮空気供給システム。
【請求項4】
前記切替構造は、前記第2補助圧縮機と前記
駆動装置との間の動力伝達経路を切断可能なクラッチを有する、請求項3に記載の航空機の圧縮空気供給システム。
【請求項5】
前記ガスタービンエンジンは、低圧圧縮機及び高圧圧縮機を有し、
前記抽気路は、前記ガスタービンエンジンの前記低圧圧縮機の抽気ポート又は前記高圧圧縮機の抽気ポートの少なくとも一方に流体的に接続されている、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の航空機の圧縮空気供給システム。
【請求項6】
前記供給路に流体的に接続された対象流路と、前記対象流路を流れる前記圧縮エアを冷却する冷媒流路と、を有する熱交換器と、
客室の排気ポートを前記冷媒流路の入口に接続する排気路と、を更に備え、
前記冷媒流路の出口は、大気に開放されている、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の航空機の圧縮空気供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、航空機の圧縮空気供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、航空機の環境制御システムのための抽気システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。この抽気システムでは、ガスタービンエンジンから径方向に延びる駆動軸がギヤボックスに接続され、そのギヤボックスが補助圧縮機に接続されている。エンジンに連動して駆動される補助圧縮機は、エンジンの抽気を圧縮してエアサイクルマシン(ACM)に供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このシステムでは、エンジン回転数に比例して補助圧縮機の回転数が決まるため、状況によってはエンジンの抽気を大きく減圧する必要があり、エネルギー損失が生じる。また、補助圧縮機からACMに至る流路の圧力変動要因がガスタービンエンジン外にある場合には、高精度に圧力を供給できない。
【0005】
そこで本開示の一態様は、エネルギー損失を抑制すると共に、航空機の空気系統に対して精度良く適切な圧力を供給することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る航空機の圧縮空気供給システムは、ガスタービンエンジンからの抽気が流れる抽気路と、前記抽気路に流体的に接続される圧縮機入口と、圧縮機出口と、を有する補助圧縮機と、前記圧縮機出口に流体的に接続され、前記補助圧縮機からの圧縮エアを航空機の空気系統に供給する供給路と、前記補助圧縮機を回転駆動する駆動装置と、前記供給路の圧力又は温度を検出するセンサと、前記センサの検出信号に応じて前記駆動装置の出力回転数を制御するコントローラと、を備える。
【0007】
前記構成によれば、供給路の圧力又は温度に応じた駆動装置の制御によって補助圧縮機の回転数が制御されるため、補助圧縮機からの圧縮エアに無駄が生じることを防止できる。更に、供給路に圧力又は温度の変動が生じても、補助圧縮機の回転数を制御して変動を吸収できる。よって、エネルギー損失を防止できると共に、航空機の空気系統に対して精度良く適切な圧縮エアを供給できる。なお、駆動装置は、エンジンの回転軸の駆動力を変速して出力するエンジン動力伝達装置(例、無段変速機、無限変速機)であってもよいし、電力によって駆動力を発生する電動機であってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、エネルギー損失を抑制できると共に、航空機の空気系統に対して精度良く適切な圧力を供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る航空機の圧縮空気供給システムの概略図である。
【
図2】
図2は、第2実施形態に係る航空機の圧縮空気供給システムの要部の概略図である。
【
図4】
図4は、第3実施形態に係る航空機の圧縮空気供給システムの要部の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。なお、以下の説明では、「前方」はエンジン内で空気が流れる方向における上流側を意味し、「後方」は、エンジン内で空気が流れる方向における下流側を意味する。即ち、「前方」は、エンジンの回転軸の軸線方向において、ファンが設けられている側を意味し、「後方」は、エンジンの回転軸の軸線方向において、ファンが設けられている側と反対側を意味する。「径方向」は、エンジンの回転軸の回転軸線に直交する方向を意味する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る航空機の圧縮空気供給システム10の概略図である。
図1に示すように、航空機は、ガスタービンエンジン1及び圧縮空気供給システム10を備える。ガスタービンエンジン1は、回転軸2、ファン3、圧縮機4、燃焼器5、タービン6及びケーシング7を備える。回転軸2は、ガスタービンエンジン1の前後方向に延びる。ファン3は、回転軸2の前部に接続され、回転軸2と共に回転する。圧縮機4、燃焼器5及びタービン6は、この順に前方から後方に向けて回転軸2に沿って並んでいる。ケーシング7は、回転軸2の回転軸線と一致する軸線を有する筒状物であり、回転軸2、圧縮機4、燃焼器5及びタービン6を収容している。
【0012】
ガスタービンエンジン1は、二軸ガスタービンエンジンである。圧縮機4は、低圧圧縮機4aと、低圧圧縮機4aの後方に配置された高圧圧縮機4bとを有する。タービン6は、低圧タービン6aと、低圧タービン6aの前方に配置された高圧タービン6bとを有する。回転軸2は、低圧圧縮機4aを低圧タービン6aに連結する低圧軸2aと、高圧圧縮機4bを高圧タービン6bに連結する高圧軸2bとを有する。高圧軸2bは、内部に中空空間を有する筒状軸である。低圧軸2aは、高圧軸2bの中空空間に挿通されている。低圧タービン6aは、圧縮機4の前方に配置されたファン3に低圧軸2aを介して連結されている。
【0013】
ファン3の径方向外側は、筒状のファンケース8により覆われている。ケーシング7とファンケース8との間には、円筒状のバイパス路が形成されている。ファン3により吸い込まれた空気は、このバイパス路を流れて後方に噴出されて推進力を発生する。
【0014】
圧縮空気供給システム10は、ガスタービンエンジン1の抽気ポート11に流体的に接続された抽気路12を備える。抽気ポート11は、ガスタービンエンジン1の圧縮機4からの圧縮エアの一部を抽気路12に供給する。抽気ポート11は、ガスタービンエンジン1における高圧圧縮機4bよりも上流側(即ち、低圧圧縮機4a側)に配置されている。抽気ポート11は、例えば、低圧圧縮機4aと高圧圧縮機4bとの間の領域に配置されるが、低圧圧縮機4aの途中の領域や、高圧圧縮機4bの途中の領域に配置されてもよい。これにより、抽気路12には、低圧圧縮機4aで圧縮された圧縮エアが流れる。
【0015】
抽気ポート11は、補助圧縮機14の圧縮機入口14aに流体的に接続されている。抽気路12には、抽気ポート11から補助圧縮機14に向けた流れを許容し、その逆の流れを阻止する逆止弁13が設けられている。補助圧縮機14の圧縮機出口14bには、供給路15が流体的に接続されている。供給路15は、補助圧縮機14の圧縮機出口14bから吐出された圧縮エアを航空機の空気系統に供給する。その空気系統は、例えば、エアサイクルマシン16(以下、ACMと称する)であり、蒸気圧縮冷凍装置(VCS)等であってもよい。なお、
図1では両舷のうち片舷の圧縮空気供給システム10のみが示されている。
【0016】
供給路15には、抽気路12に接続される戻り路17が接続されている。戻り路17は、補助圧縮機14を迂回して圧縮機出口14bを圧縮機入口14aに接続している。戻り路17には、戻り路17を開閉可能な圧力調整弁18が設けられている。圧力調整弁18を開いて開度を調整することで、補助圧縮機14のサージングを防止できる。また、補助圧縮機14の圧縮機入口14aと圧縮機出口14bと間の差圧を小さくすることができ、補助圧縮機14の動作をより安定的にできる。
【0017】
供給路15には、熱交換器19(プリクーラ)が設けられている。熱交換器19には、大気を冷媒とする冷媒流路36が設けられている。冷媒流路36には流量調整弁35が設けられている。熱交換器19は、大気を冷媒として供給路15を流れる圧縮エアを冷却する。供給路15におけるACM16の入口付近には、圧力調整弁21が設けられている。ACM16の出口は、供給路22を介して客室23に流体的に接続されている。供給路22には、圧力調整弁24が設けられている。なお、熱交換器19は、バイバス路を流れるバイパスエアを冷媒として用いてもよいし、冷却液を循環して用いてもよい。
【0018】
供給路15における熱交換器19の下流側には、第1副路25を介してエンジンスタータ26が流体的に接続されている。第1副路25には、開閉弁27が設けられている。供給路15における熱交換器19の下流側には、第2副路28を介して補助動力装置29(APU)が流体的に接続されている。第2副路28には、APU29から供給路15に向けた流れを許容する逆止弁30が設けられている。なお、供給路15には、防氷系統、除氷系統、不活性ガス生成系統等も分岐している。
【0019】
抽気路12には、圧力センサP1が設けられている。供給路15における補助圧縮機14と熱交換器19との間の部分には、圧力センサP2が設けられている。圧力センサP2は、実質的に補助圧縮機14の圧縮機出口14bの圧力を検出する。供給路15における熱交換器19の下流側の部分には、圧力センサP3が設けられている。圧力センサP3は、例えば、供給路15におけるAPU29とエンジンスタータ26との間の流路に設けられている。
【0020】
抽気路12には、温度センサT1が設けられている。供給路15における補助圧縮機14と熱交換器19との間の部分には、温度センサT2が設けられている。供給路15における熱交換器19の下流側の部分には、温度センサT3が設けられている。温度センサT3は、例えば、供給路15における熱交換器19と第1副路25との間の流路に設けられている。
【0021】
補助圧縮機14を駆動する駆動装置が設けられている。本実施形態では、駆動装置は、ガスタービンエンジン1からの駆動力を補助圧縮機へ伝達するエンジン動力伝達装置(無段変速機33)が設けられている。ガスタービンエンジン1の低圧軸2aには、径方向に延びた動力抽出軸31がベベルギヤ32を介して機械的に接続されている。即ち、動力抽出軸31は、低圧軸2aに連動して回転する。なお、動力抽出軸31は、高圧軸2bに機械的に接続され、高圧軸2bに連動して回転してもよい。動力抽出軸31は、無段変速機33(エンジン動力伝達装置)の入力軸に機械的に接続されている。無段変速機33(エンジン動力伝達装置)の出力軸は、補助圧縮機14の被駆動軸に機械的に接続されている。即ち、無段変速機33(エンジン動力伝達装置)は、ガスタービンエンジン1の低圧軸2aからの駆動力を適切な回転数に変速したうえで、その変速された駆動力を補助圧縮機14に伝達して補助圧縮機14を回転駆動する。無段変速機33には、例えば、トロイダル無段変速機が好適に用いられる。
【0022】
圧力センサP1~P3及び温度センサT1~T3は、コントローラ40に電気的に接続されている。コントローラ40は、圧力センサP1~P3及び温度センサT1~T3の検出信号に応じて、無段変速機33の変速比を制御すると共に圧力調整弁18の開度を制御する。即ち、コントローラ40は、無段変速機33の変速比を制御することで、無段変速機33の出力回転数を制御する。コントローラ40は、弁21,24,27,35等も制御し得る。
【0023】
コントローラ40は、圧力センサP2で検出される供給路15の圧力(即ち、圧縮機出口14bの圧力)が要求圧力に近づくように無段変速機33の変速比を制御してもよい。なお、圧力センサP2又はP3が検出する供給路15の圧力に求められる要求圧力は、ACM16の要求圧力と供給路15から分岐する他の空圧系統(例えば、エンジン始動系統(エンジンスタータ26)、防氷系統、除氷系統、不活性ガス生成系統等)の要求圧力とのうち最大の要求圧力を下回らない所定の許容範囲に設定される。コントローラ40は、圧力センサP1で検出される抽気路12の圧力と圧力センサP2で検出される供給路15の圧力との間の差圧に基づいて、無段変速機33の変速比を制御して、供給路15の圧力を所望の圧力に調整してもよい。
【0024】
コントローラ40は、圧力センサP1で検出される抽気路12の圧力又は圧力センサP2で検出される供給路15の圧力の時間変化率の絶対値が閾値を超えると、圧力調整弁18の開度を変更して供給路15における圧力変動を抑制してもよい。コントローラ40は、例えば、抽気路12の圧力の時間変化率が正の閾値を超えて増加した場合には、供給路15の急な圧力増加を速やかに抑制するために圧力調整弁18の開度を増加させてもよい。その場合、コントローラ40は、抽気路12の圧力の時間変化率の絶対値が閾値であるときに、圧力調整弁18を全閉にしていてもよい。
【0025】
コントローラ40は、例えば、抽気路12の圧力の時間変化率が負の閾値を下回って減少した場合には、供給路15の急な圧力減少を速やかに抑制するために圧力調整弁18の開度を減少させてもよい。その場合、コントローラ40は、抽気路12の圧力の時間変化率の絶対値が閾値であるときに、圧力調整弁18を中間開度(例えば、ゼロより大きくて中央開度より小さい開度)にしていてもよい。
【0026】
コントローラ40は、温度センサT3の温度が要求温度に近づくように流量調整弁35の開度を制御して熱交換器19の冷却度合を調整する。コントローラ40は、温度センサT1,T2,T3で検出される供給路15の温度に基づいて、無段変速機33の変速比を制御して、供給路15の温度を所望の温度に調整してもよい。
【0027】
なお、コントローラ40は、プロセッサ、メモリ及びI/Oインターフェース等を有する。前記メモリは、ストレージ(例えば、ハードディスク、フラッシュメモリ等)及びメインメモリ(RAM)を含む。前記メモリには、前述した制御を実行する指示を有するプログラムが保存されている。コントローラ40が有するプログラムは、複数のコントローラに分散されてもよい。コントローラ40は、圧縮空気供給システム10の専用ではなく他のシステムのコントローラを兼ねていてもよい。圧縮空気供給システム10用のプログラムは、他のシステムのプログラムと統合されていてもよい。
【0028】
以上に説明した構成によれば、供給路15の圧力に応じた無段変速機33の制御によって補助圧縮機14の回転数が制御されるため、補助圧縮機14からの圧縮エアの圧力に無駄が生じることを防止できる。更に、供給路15に圧力変動が生じても、補助圧縮機14の回転数を制御して圧力変動を吸収できる。よって、エネルギー損失を防止できると共に、ACM16に対して精度良く適切な圧力を供給できる。なお、ガスタービンエンジン1に駆動される無段変速機33などのエンジン動力伝達装置が駆動装置として用いられる代わりに、電力によって駆動力を発生する電動機が駆動装置として用いられてもよい。
【0029】
また、供給路15において急な圧力変動が生じたときには、戻り路17の圧力調整弁18を制御することによって、応答性良く圧力調整できる。他方、供給路15において緩やかな圧力変動が生じたときには、無段変速機33によって圧縮機出口14bの圧力を調整することで、圧力調整弁18の減圧によるエネルギー損失を抑制できる。また、抽気路12は、ガスタービンエンジン1の低圧圧縮機4aの抽気ポート11に流体的に接続されているので、抽気が要求圧力よりも高くなりにくい。そのため、離陸から着陸までの全飛行工程において減圧によるエネルギー損失を低減できる。
【0030】
(第2実施形態)
図2は、第2実施形態に係る航空機の圧縮空気供給システムの要部の概略図である。なお、第1実施形態と共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。
図2に示すように、第2実施形態では、第1実施形態の補助圧縮機14を第1補助圧縮機とし、第1補助圧縮機14に対して第2補助圧縮機150が並列接続されている。第2補助圧縮機150は、その圧縮能力を第1補助圧縮機14の圧縮能力よりも小さいものとしてもよい。即ち、第2補助圧縮機150は、第1補助圧縮機14よりも小型としてもよい。
【0031】
第2補助圧縮機150の圧縮機入口150aは、分岐抽気路151を介して抽気路12に流体的に接続されている。第2補助圧縮機150の圧縮機出口150bは、分岐供給路152を介して供給路15に流体的に接続されている。分岐抽気路151には開閉弁153が設けられ、分岐供給路152には開閉弁154が設けられている。
【0032】
第2補助圧縮機150は、ガスタービンエンジン1の駆動力を変速して出力する無段変速機33に駆動される。即ち、第1補助圧縮機14及び第2補助圧縮機150は、無段変速機33の出力軸によって駆動可能に構成されている。なお、第1補助圧縮機14及び第2補助圧縮機150は、それぞれ別個の無段変速機の出力軸によって駆動可能に構成されてもよい。第1補助圧縮機14は、無段変速機33の出力軸の回転に常時連動する。第2補助圧縮機150は、切替構造155によって、圧縮状態と非圧縮状態との間で切り替え可能になっている。切替構造155は、第2戻り路117及び第2圧力調整弁118を備える。
【0033】
第2戻り路117は、第2補助圧縮機150を迂回して分岐供給路152を分岐抽気路151に流体的に接続している。即ち、第2戻り路117は、第2補助圧縮機150を迂回して圧縮機出口150bを圧縮機入口150aに接続している。第2戻り路117には、第2戻り路117を開閉可能な第2圧力調整弁118が設けられている。第2補助圧縮機150が駆動されているときに、第2圧力調整弁118が閉じられていると第2補助圧縮機150が圧縮状態となり、第2圧力調整弁118が開かれると第2補助圧縮機150が非圧縮状態になる。なお、第2圧力調整弁118の開度を調節することで、第2補助圧縮機150の圧縮機出口150bの圧力が応答性良く調整することもできる。
【0034】
コントローラ140は、通常時は、開閉弁153,154を閉状態にして且つ第2圧力調整弁118を開状態にしている。即ち、通常時には、第2補助圧縮機150には抽気路12の抽気を供給せず、第2補助圧縮機150を空回りさせる。コントローラ140は、ACM16に供給する圧縮エアの流量増が要求される非常信号(例えば、片舷側の圧縮空気供給システムの故障信号)を受信すると、開閉弁153,154を開状態にして且つ第2圧力調整弁118を閉状態にする。
【0035】
この構成によれば、ACM16に供給する圧縮エアの流量増が要求される非常時に、第2補助圧縮機150が第1補助圧縮機14をアシストするため、第1補助圧縮機14を効率の悪い回転数で動作させずに済む。よって、第1補助圧縮機14の効率悪化を避けながらACM16に向けた圧縮エアの流量増を達成できる。
【0036】
図3は、
図2のシステムの変形例の概略図である。なお、
図2と共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。
図3に示すように、本変形例では、切替構造としてクラッチ160が設けられている。クラッチ160は、第2補助圧縮機150と無段変速機33との間の動力伝達経路を切断可能としている。クラッチ160は、例えば、電磁クラッチである。なお、第2戻り路117及び第2圧力調整弁118は、廃止してもよいし、急な圧力変動を抑制するときのために残してもよい。
【0037】
コントローラ140は、通常時は、クラッチ160を切断状態にしている。即ち、通常時は、第2補助圧縮機150は、無段変速機33によって駆動されない。コントローラ140は、ACM16に供給する圧縮エアの流量増が要求される非常信号(例えば、片舷の圧縮空気供給システムの故障信号)を受信すると、クラッチ160を接続状態にする。この構成によっても、第2補助圧縮機150を圧縮状態と非圧縮状態との間で簡単に切替できる。
【0038】
(第3実施形態)
図4は、第3実施形態に係る航空機の圧縮空気供給システムの要部の概略図である。なお、第1実施形態と共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。
図4に示すように、供給路15における補助圧縮機14とACM16との間に設けられた熱交換器219は、客室23の排気を冷媒として用いる。
【0039】
熱交換器219は、供給路15に流体的に接続された対象流路219aと、対象流路219aを流れる圧縮エアを冷却する冷媒流路219bとを有する。客室23の排気ポート23aは、排気路270を介して熱交換器219の冷媒流路219bに流体的に接続されている。排気路270には、流量調整弁271が設けられている。熱交換器219の冷媒流路219bの出口は、大気に開放されている。
【0040】
航空機が高高度を飛行中には、大気の圧力が約0.2~0.3気圧である一方、客室23の圧力は約0.7~1.0気圧である。即ち、客室23の圧力は、大気の圧力の約3~5倍になる。また、客室23の温度は、補助圧縮機14の圧縮機出口14bの温度よりも約200℃ほど低い。よって、飛行中には圧縮機出口14bの温度よりも低温の客室排気が大気よりも高密度で且つ高速噴射されるので、熱交換器219において効率の良い熱交換が行われて供給路15の圧縮エアを冷却できる。
【0041】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、その構成を変更、追加、又は削除することができる。例えば、1つの実施形態又は変形例中の一部の構成は、その実施形態又は変形例中の他の構成から分離して任意に抽出可能であり、1つの実施形態又は変形例中の一部の構成を他の実施形態又は変形例に適用してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 ガスタービンエンジン
4a 低圧圧縮機
4b 高圧圧縮機
10 圧縮空気供給システム
11 抽気ポート
12 抽気路
14 補助圧縮機(第1補助圧縮機)
14a 圧縮機入口
14b 圧縮機出口
15 供給路
17 戻り路
18 圧力調整弁
19,219 熱交換器
23 客室
23a 排気ポート
33 無段変速機(駆動装置)
40,140 コントローラ
117 第2戻り路
118 第2圧力調整弁
150 第2補助圧縮機
150a 圧縮機入口
150b 圧縮機出口
155 切替構造
160 クラッチ
219 熱交換器
219a 対象流路
219b 冷媒流路
270 排気路
P1~P3 圧力センサ
T1~T3 温度センサ