IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立製作所の特許一覧

<>
  • 特許-巻上機及びエレベーター 図1
  • 特許-巻上機及びエレベーター 図2
  • 特許-巻上機及びエレベーター 図3
  • 特許-巻上機及びエレベーター 図4
  • 特許-巻上機及びエレベーター 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】巻上機及びエレベーター
(51)【国際特許分類】
   B66B 11/04 20060101AFI20241120BHJP
   B66B 11/08 20060101ALI20241120BHJP
   H02K 9/02 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
B66B11/04 Z
B66B11/08 M
H02K9/02 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022579289
(86)(22)【出願日】2021-02-08
(86)【国際出願番号】 JP2021004543
(87)【国際公開番号】W WO2022168298
(87)【国際公開日】2022-08-11
【審査請求日】2023-06-16
【審判番号】
【審判請求日】2024-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 真人
(72)【発明者】
【氏名】樋野 悠人
(72)【発明者】
【氏名】丸山 治
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】中屋 裕一郎
【審判官】内田 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-81305(JP,A)
【文献】特開2016-105668(JP,A)
【文献】特開2007-330076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 11/04
B66B 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子が設けられた筐体と、
前記筐体に支持された主軸と、
前記主軸に支持され、前記固定子に対向する位置に配置された回転子を有し、前記固定子と前記回転子によって前記筐体に対して回転する回転体と、
前記回転体の、前記主軸の軸方向における前記筐体側の面である内面とは反対側の外面に設けられた綱車と、
前記回転体の前記内面において、前記筐体側に突出して設けられた凸状のリブであって、前記主軸の中心軸に対して放射状に延在して設けられたリブと、を備え、
前記筐体には、前記固定子が設けられる側から反対側に空気を排気する排気孔が設けられ、
前記回転体には、前記主軸の中心軸からの距離が、前記主軸の中心軸から前記排気孔までの距離よりも小さい位置に、前記回転体の前記外面側から前記内面側に空気を吸入する吸気孔が設けられており、
前記排気孔の一部は、前記固定子と前記回転子との間の空間部に対向している
巻上機。
【請求項2】
前記排気孔は、前記主軸の中心軸に対する円周方向に所定の間隔を空けて複数個設けられている
請求項1に記載の巻上機。
【請求項3】
前記吸気孔は、前記主軸の中心軸に対する円周方向に所定の間隔を空けて複数個設けられている
請求項1に記載の巻上機。
【請求項4】
前記リブは、前記主軸の中心軸に対して軸対称となるように複数本設けられており、
前記吸気孔は、隣り合って配置される前記リブの間に設けられている
請求項3に記載の巻上機。
【請求項5】
前記固定子は、前記主軸の中心軸に対して円周方向に所定の間隔を空けて複数個設けられており、
前記排気孔は、隣り合って配置される前記固定子間の隙間に対向する位置に設けられている
請求項2に記載の巻上機。
【請求項6】
前記リブは、前記主軸の中心軸に対して軸対称となるように複数本設けられており、
前記吸気孔は、隣り合って配置される前記リブの間に設けられると共に、前記主軸の中心軸に対する円周方向に沿って複数個設けられており、
前記固定子は、前記主軸の中心軸に対して円周方向に所定の間隔を空けて複数個設けられており、
前記排気孔は、隣り合って配置される前記固定子間の隙間に対向する位置に設けられると共に、前記主軸の中心軸に対する円周方向に沿って複数個設けられている
請求項1に記載の巻上機。
【請求項7】
昇降路内を昇降する乗りかごと、
前記乗りかごと主ロープを介して連結される釣合錘と、
前記主ロープを巻き掛けることにより、前記乗りかごを昇降させる巻上機とを備え、
前記巻上機は、
固定子が設けられた筐体と、
前記筐体に支持された主軸と、
前記主軸に支持され、前記固定子に対向する位置に配置された回転子を有し、前記固定子と前記回転子によって前記筐体に対して回転する回転体と、
前記回転体の、前記主軸の軸方向における前記筐体側の面である内面とは反対側の外面に設けられた綱車と、
前記回転体の前記内面において、前記筐体側に突出して設けられた凸状のリブであって、前記主軸の中心軸に対して放射状に延在して設けられたリブと、を備え、
前記筐体には、前記固定子が設けられる側から反対側に空気を排気する排気孔が設けられ、
前記回転体には、前記主軸の中心軸からの距離が、前記主軸の中心軸から前記排気孔までの距離よりも小さい位置に、前記回転体の前記外面側から前記内面側に空気を吸入する吸気孔が設けられており、
前記排気孔の一部は、前記固定子と前記回転子との間の空間部に対向している
エレベーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻上機、及び、エレベーターに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレベーター用の巻上機は、小型化が求められている。巻上機を小型化するとモータの放熱面積が減る一方、出力が向上すれば発熱量が増加するため、モータ性能の安定化に問題が生じることになる。これに対し、従来、例えば特許文献1のように、ロータの端面に送風翼を設け、ロータの回転に伴ってロータの回転軸方向の風をロータとステータとの間に流すことによって冷却機能を発揮させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-220370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、巻上機は、エレベーターの昇降方向によって正逆回転するため、特許文献1に記載されたモータでは、ロータの回転方向によって冷却風の向きが変わる。このため、冷却効率がエレベーターの昇降方向によって異なってしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、昇降方向が異なる場合にも同じ向きの冷却風を巻上機内に送り込み、冷却効果の安定した巻上機、及びその巻上機を用いたエレベーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の巻上機は、排気孔が設けられた筐体と、主軸と、吸気孔が設けられた回転体と、綱車と、リブと、を備える。筐体は、固定子が設けられる。主軸は、筐体に支持されている。回転体は、主軸に支持され、固定子に対向する位置に配置された回転子を有し、固定子と回転子とによって筐体に対して回転する。綱車は、回転体の、主軸の軸方向における筐体側の面である内面とは反対側の外面に設けられている。排気孔は、筐体に設けられ、筐体の固定子が設けられる側から反対側に空気を排気する。リブは、回転体の内面において、筐体側に突出して設けられた凸状のリブであって、主軸の中心軸に対して放射状に延在して設けられている。吸気孔は、回転体に設けられ、回転体の外面側から内面側に空気を吸入する吸気孔であって、主軸の中心軸からの距離が、主軸の中心軸から排気孔までの距離よりも小さい位置に設けられている。そして、排気孔の一部は、固定子と回転子との間の空間部に対向している。
【0007】
本発明のエレベーターは、昇降路内を昇降する乗りかごと、乗りかごと主ロープを介して連結される釣合錘と、主ロープを巻き掛けることにより、乗りかごを昇降させる巻上機とを備える。そして、巻上機は、上述の構成を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、巻上機の回転方向によらず、同じ向きの冷却風を巻上機内部の固定子と回転子との間に流すことができるため、冷却効率の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施形態に係るエレベーターの全体構成図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る巻上機100の回転面に直交する方向に沿う断面構成図である。
図3図2の巻上機100のA-A線上に沿う断面を矢印方向から見たときの断面構成図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る巻上機200の回転面に直交する方向に沿う断面構成図である。
図5図4の巻上機200のB-B線上に沿う断面を矢印方向から見たときの断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係るエレベーター及び巻上機の一例を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではない。以下で説明する各図において、共通の部材には同一の符号を付している。
【0011】
1.第1の実施形態
1-1.エレベーターの構成
まず、本発明の第1の実施形態(以下、「本実施形態」という。)に係るエレベーター1の構成について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態のエレベーター1の構成例を示す概略構成図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態のエレベーター1は、建物構造物内に形成された昇降路110内を昇降動作する。エレベーター1は、人や荷物を載せる乗りかご120と、主ロープ130と、釣合錘140と、巻上機100とを備える。昇降路110は、建築構造物内に形成され、その頂部には機械室160が設けられている。
【0013】
巻上機100は、機械室160に配置され、主ロープ130を巻き掛けることにより乗りかご120を昇降させる。また、巻上機100の近傍には、主ロープ130が装架される反らせ車150が設けられている。
【0014】
釣合錘140は、乗りかご120における無積載時の質量とほぼ同じ質量に設定されている。そのため、乗りかご120内に物や人が積載されていない無積載時では、乗りかご120側と釣合錘140側の主ロープ130の張力比は、1となる。これにより、無積載時における巻上機100の出力を低く抑えることが可能である。
【0015】
乗りかご120は、中空の略直方体状に形成されている。乗りかご120は、主ロープ130を介して、釣合錘140と連結され、昇降路110内を昇降する。
【0016】
1-2.巻上機の構成
次に、図2及び図3を参照して本実施形態の巻上機100について説明する。図2は、本実施形態の巻上機100の回転面に直交する方向に沿う断面構成図である。また、図3は、図2の巻上機100のA-A線上に沿う断面を矢印方向から見たときの断面構成図である。
【0017】
図2に示すように、巻上機100は、筐体2と、主軸3と、回転体4と、綱車5と、モータ固定子6(本発明の固定子)と、モータ回転子7(本発明の回転子)と、軸受け8とを有する。さらに、本実施形態では、巻上機100は、内部に冷却風を流すための吸気孔9及び排気孔10が設けられている。本実施形態では、モータ固定子6の半径方向の外側にモータ回転子7が配置されるアウターロータ式の巻上機100を例に説明する。
【0018】
下記の説明において、主軸3の軸方向をX方向とする。また、主軸3の軸方向に対して鉛直方向であって、乗りかご120の昇降方向をY方向とする。また、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向とする。また、下記の説明においては、X方向において、筐体2が設けられる側を他側とし、綱車5が設けられる側を一側とする。さらに、Y方向においては、昇降路110上方側を上側、下方側を下側とする。
【0019】
[筐体]
筐体2は、主軸3が取り付けられるハウジング11と、モータ固定子6が固定される固定子取付部13と、ハウジング11と固定子取付部13とを連結する第1連結部12とを有している。また、筐体2は後述する回転体4に取り付けられるモータ回転子7の外周面を覆う外壁部15と、固定子取付部13と外壁部15とを連結する第2連結部14とを有している。
【0020】
ハウジング11は、筐体2のYZ平面上におけるほぼ中央部に設けられ、X方向を軸方向とする円筒形状の部材で構成されている。ハウジング11の内周面側には、X方向を軸方向とする軸受け8が設けられている。軸受け8の内周面側には、X方向を軸方向とする主軸3の端部が嵌合され、主軸3を回転可能に支持する。
【0021】
固定子取付部13は、ハウジング11の外径よりも大きい内径を有し、X方向を軸方向とする円筒形状の部材で構成されており、ハウジング11の半径方向の外側に配置されている。そして、固定子取付部13の半径方向に外側における外周面には、モータ固定子6が固定されている。第1連結部12は、ハウジング11及び固定子取付部13の、X方向における一側の端部に設けられており、ハウジング11と固定子取付部13とを連結する板状部材で構成されている。
【0022】
外壁部15は、固定子取付部13の外径よりも大きい内径を有すると共に、内周面がYZ平面において、円状に形成されたX方向を軸方向とする筒状部材で構成されており、固定子取付部13の半径方向の外側に配置されている。また、外壁部15は、固定子取付部13の半径方向の外側に設けられている。外壁部15と固定子取付部13との間の空間には、モータ固定子6と、後述する回転体4に取り付けられたモータ回転子7とが配置される。さらに、外壁部15のX方向における一側には、後述する回転体4が配置される。
【0023】
第2連結部14は、固定子取付部13及び外壁部15の、X方向における他側の端部に、設けられており、固定子取付部13及び外壁部15を連結する板状部材で構成されている。また、第2連結部14には、筐体2のモータ固定子6が設けられる一側から他側に空気を排気する排気孔10が設けられている。排気孔10は、例えば、隣り合って配置されるモータ固定子6間の隙間に対向する位置に設けられている。排気孔10については後で詳述する。
【0024】
[主軸]
主軸3は、X方向を軸方向とする円柱状部材で構成されている。主軸3のX方向における他側の端部は、筐体2に設けられた軸受け8の内周側に支持されることによりハウジング11に片持ち支持されている。また、主軸3の一側は回転体4に嵌合されている。
【0025】
[回転体]
回転体4は、主軸3の一側に嵌合されるボス部16と、モータ回転子7が取り付けられる回転子取付部18と、ボス部16と回転子取付部18とを連結する第3連結部17と、回転子取付部18の半径方向の外側に連続して設けられる鍔部19とを有している。
【0026】
ボス部16は、回転体4のYZ平面上におけるほぼ中央部に設けられ、X方向を軸方向とする円筒形状の部材で構成されている。ボス部16の内周面側には、主軸3の一側が嵌合されている。主軸3により、回転体4は、筐体2に対して回転可能に支持される。ボス部16の一側には、ボス部16の半径方向の外側における外周面に、後述する綱車5が固定されている。
【0027】
回転子取付部18は、ボス部16の外径よりも大きい内径を有し、X方向を軸方向とする円筒形状の部材で構成されており、ボス部16の半径方向の外側に配置されている。回転子取付部18の他側の端部には、モータ回転子7が固定されている。回転子取付部18に固定されたモータ回転子7は、モータ固定子6と筐体2の外壁部15との間に配置されている。
【0028】
第3連結部17は、ボス部16の外周面において、綱車5が取り付けられる位置よりも他側の位置から回転子取付部18の一側の端部に架けて設けられ、YZ平面に平行な板状部材で構成されている。また、第3連結部17の他側の面(以下、内面)は、ボス部16の他側の端面よりも一側に来るように構成されている。すなわち、ボス部16の他側が、第3連結部17の内面よりも筐体2側に突出するように構成されている。第3連結部17には、後述する吸気孔9が設けられると共に、後述するリブ20が形成されている。
【0029】
鍔部19は、回転子取付部18の他側の端面から半径方向において、筐体2の外壁部15の外周面よりも外側に延在する板状部材で構成されている。鍔部19により、モータ回転子7と筐体2の外壁部15との隙間が覆われている。
【0030】
[綱車]
綱車5は、外周面に主ロープ130を巻き掛けることができるX方向を軸方向とする円筒形状の部材で構成されている。そして、綱車5は、ボス部16の半径方向の外側であって、ボス部16のX方向における一側において、その内周面がボス部16の外周面に固定されている。綱車5は、回転体4のボス部16の外周面に固定されていることにより、回転体4の回転に伴い筐体2に対して回転する。
【0031】
[モータ固定子]
モータ固定子6は、鉄芯及び鉄芯に巻き回されたコイルで構成されている。複数のモータ固定子6が、固定子取付部13の外周面において取り付けられている。複数のモータ固定子6は、所定の間隔を空けて例えば等間隔に配置されている。
【0032】
[モータ回転子]
モータ回転子7は、磁性体からなる部材で構成されており、回転子取付部18のX方向における他側の端面に固定されている。また、モータ回転子7は、固定子取付部13の外周面に取り付けられたモータ固定子6とエアギャップを挟んで径方向に対向するように、回転子取付部18に固定されている。
【0033】
[リブ]
リブ20は、回転体4の第3連結部17の内面において、筐体2側に凸状に突出して設けられている。また、図3に示すように、リブ20は、第3連結部17の内面において、ボス部16の外周面から回転子取付部18の内周面に架けて、主軸3の中心軸に対して放射状に延在して設けられている。すなわち、リブ20は、ボス部16側から半径外方向に向けて延在するように設けられている。また、本実施形態では、リブ20は、主軸3の中心軸に対して軸対称に複数本設けられている。
【0034】
本実施形態では、ボス部16の他側が、第3連結部17の内面よりも筐体2側に突出するように構成されていると共に、上述したリブ20が設けられることによって、リブ20とボス部16とで囲まれる領域が複数形成される。図3に示すように、このリブ20とボス部16と回転子取付部18とで区切られた各領域は、後述する吸気孔9から吸い込まれた空気が通る通気路21となる。
【0035】
リブ20において、回転体4の円周方向に沿う方向の幅は、種々の変更が可能であるが、通気路21が十分に確保できる程度の幅に形成される。また、本実施形態では、リブ20は、回転体4の円周方向において一定の幅で形成されているがこれに限られるものではなく、種々の変更が可能である。この場合においても、通気路21を通る空気の流れを阻害しない形状とする。
【0036】
[吸気孔]
吸気孔9は、回転体4の外面側から内面側に空気を吸入するための孔であり、第3連結部17を貫通するように複数個設けられている。また、図2に示すように、本実施形態では、複数の吸気孔9が、主軸3の回転軸を中心とした所定の半径R1を有する円の円周上に配置されている。また、本実施形態では、吸気孔9は、隣り合うリブ20とリブ20との間に一つずつ配置され、リブ20とボス部16で囲まれる通気路21において、ボス部16側に形成される。さらに、本実施形態では、主軸3の中心から吸気孔9までの距離R1が、主軸3の中心から後述する排気孔10までの距離R2よりも小さくなるように設定されている。また、吸気孔9は、主軸3の中心軸に平行な方向において排気孔10と重ならないように設けられている。
【0037】
本実施形態では、吸気孔9は、図2に示すように円形状としたが、これに限定されるものではなく、矩形状や、その他種々の形状で構成することができる。また、吸気孔9の大きさは、回転体4の回転による遠心力に起因した、回転体4の内面側と外面側とにおける差圧の発生を阻害しない大きさであればよく、排気孔10の大きさ等によって適切に設定される。
【0038】
[排気孔]
排気孔10は、筐体2のモータ固定子6が設けられる側から反対側に空気を排気するための孔である。排気孔10は、第2連結部14を貫通するように複数個設けられている。本実施形態では、図示を省略するが、複数の排気孔10が、主軸3の回転軸を中心とした所定の半径R2を有する円の円周上に設けられており、かつ、固定子取付部13の外周面に取り付けられたモータ固定子6間の隙間に対向する位置に設けられている。また、本実施形態では、主軸3の中心から排気孔10までの距離R2が、主軸3の中心から吸気孔9までの距離R1よりも大きくなるように設定されている。
【0039】
排気孔10の形状は特に限定されないが、例えば矩形のスリット状や、図3に示した吸気孔9と同様、円状に形成されていてもよく、種々の形状で構成することができる。
【0040】
以上の構成を有する巻上機において、モータ固定子6に交流電流を流すと、回転体4の周方向に回転する磁界が発生するため、モータ回転子7に電磁力が作用する。これにより、回転体4及び綱車5は主軸3を回転軸として一体に回転する。そして、綱車5が回転することによって主ロープ130が綱車5に巻き取られる。また、本実施形態の巻上機100では、回転体4が回転することに伴い、吸気孔9から外側の空気が巻上機100内部に吸い込まれ、巻上機100の内部を通って排気孔10から排気される。これよって巻上機100が冷却される。以下に、巻上機100の冷却機構について詳述する。
【0041】
1-3.巻上機の冷却機構
本実施形態では、回転体4が回転することで発生する遠心力により、回転体4の内面側では、通気路21において、主軸3の回転軸側から回転体4の半径外方向に向けて空気の移動が起こる。この空気の移動は、リブ20の延在方向に沿って起こる。これにより、回転体4の内面側では、主軸3の中心軸側の圧力が下がり、主軸3の中心軸側において回転体4の外面側と内面側で圧力差が発生する。すなわち、回転体4の回転によって、回転体4の吸気孔9付近の内面側では、回転体4の外面における気圧に対して、負圧になる。
【0042】
一方、遠心力により、通気路21において回転体4の回転軸から離れる方向に流れる空気は、モータ回転子7とモータ固定子6の間や隣り合うモータ固定子6間を通って筐体2側に流れる。そうすると、筐体2の第2連結部14の排気孔10付近では、回転体4側から空気が流れ込んでくることによって圧力が上がり、第2連結部14付近で筐体2の外面側と内面側とで圧力差が発生する。すなわち、回転体4の回転によって、筐体2の排気孔10付近の内面側では、筐体2の外面における気圧に対して、正圧になる。
【0043】
そして、吸気孔9付近の内面側では外気に対して負圧になることで、吸気孔9からは外面側から空気が吸い込まれる。一方、排気孔10付近の内面側では外気に対して正圧になることで、筐体2の内面側の空気が外面側に排気される。このように、本実施形態では、回転体4の回転に伴って、吸気孔9付近の内面では外気が負圧に、排気孔10付近の内面では外気より正圧になるように圧力分布が形成されるため、回転体4が回転している間は、巻上機100内部に常に冷却風を流すことができる。
【0044】
回転体4の回転に伴って起こる吸気孔9付近及び排気孔10付近における圧力分布は、回転体4の回転方向に依存しない。すなわち、回転体4の回転方向が異なっていても同様に圧力分布が起こる。これにより、本実施形態の巻上機100では、回転体4の回転方向によらずに安定した冷却風を巻上機100内部に流すことができる。
【0045】
さらに、本実施形態では、回転体4の裏面側にはリブ20が形成されている。したがって、回転体4の内面側における空気は、リブ20の放射方向に沿って流れるため、回転体4の内面側において空気も放射状に流れる。そして、本実施形態では、複数のリブ20を軸対称に設けておくことにより、空気の軸対称に設けられた通気路21に沿って放射状に流れるため、空気の流れを安定させることができる。
【0046】
本実施形態では、吸気孔9の大きさや、配置される数、排気孔10の大きさや、配置される数等は、巻上機100の内外における圧力分布が、上述した圧力分布になるように設計されればよく、種々の形態を採ることができる。すなわち、回転体4の回転に伴って、吸気孔9付近の内面では外気が負圧に、排気孔10付近の内面では外気より正圧になるように圧力分布が形成されるような構成であればよい。
【0047】
また、本実施形態では、排気孔10は、隣り合うモータ固定子6間の隙間に対向する位置に設けられている。これにより、モータ固定子6間から流れてくる空気を外側に排気することができ、効率よく、モータ固定子6を冷却することができる。
【0048】
本実施形態では、リブ20を軸対称に設ける例としたが、これに限られるものではない。リブ20が軸対称に設けられていなくても、第3連結部17の内面側において、主軸3の中心軸側から半径外方向に向けて流れる空気を誘導できる形状であればよい。本実施形態のように、リブ20を軸対称に設けることにより、第3連結部17の内面側で空気が均等に放射方向に流れるため、空気を効率よく流すことができる。
【0049】
以上のように、本実施形態では、回転体4の内面側に放射状のリブ20を設けることで、回転体4の回転に伴い半径外方向に流れようとする空気の流れを放射状にすることができる。さらに、回転体4の回転軸に近い位置に吸気孔9を設け、筐体2のモータ固定子6間の隙間に対向する位置に排気孔10を設け、吸気孔9の孔列の径R1を、排気孔10の孔列の径R2よりも小さくすることで、差圧が生じた巻上機200内部に空気の流れを作ることができる。そして、回転体4の回転に伴って発生する巻上機200内の差圧を利用して冷却風を流すことができる。
【0050】
本実施形態では、吸気孔9を第3連結部17に設ける例としたが、吸気孔9が形成される位置は、主軸3の中心軸から吸気孔9までの距離R1が、主軸3の中心軸から排気孔10までの距離R2よりも小さい位置であれば、これに限られるものではない。以下では、第2の実施形態として、吸気孔9の位置を第1の実施形態とは異なる位置に配置した例について説明する。
【0051】
2.第2の実施形態
図4は、本発明の第2の実施形態に係る巻上機200の回転面に直交する方向に沿う断面構成図である。また、図5は、図4の巻上機200のB-B線上に沿う断面を矢印方向から見た断面構成図である。なお、図5では、吸気孔30の位置をわかりやすくするため、図3とは異なる位置における断面図を示している。本実施形態における巻上機200も、第1の実施形態と同様、図1に示すエレベーター1に適用可能なものである。また、図4及び図5において、図2及び図3に対応する部分には同一符号を付し、重複説明を省略する。
【0052】
吸気孔30は、図4に示すように、回転体4のボス部16に設けられ、主軸3の回転軸を中心とした所定の半径R3を有する円の円周上に複数個配置されている。吸気孔30は、長孔部30aと、横孔部30bとで構成されている。長孔部30aは、ボス部16において、回転体4の外面側から内面側にかけて、主軸3の回転軸に平行に形成されたている。横孔部30bは、ボス部16の側周面側から主軸3の回転軸に直交する方向に設けられ、長孔部30aと通気路21とを連通する。本実施形態では、吸気孔30から吸い込まれる空気は、長孔部30a及び横孔部30bを通って通気路21に流入する。
【0053】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様、回転体4の裏面側において、リブ20とボス部16とで囲まれる領域が通気路21となる。そして、吸気孔30から吸い込まれる空気は、ボス部16に設けられた横孔部30bから通気路21内に流入する。
【0054】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様、回転体4の回転によって生じた遠心力により、回転体4の内面側では、主軸3の回転軸に近い側の空気が半径外方向に流れる。これにより、通気路21のボス部16付近の空気が回転体4の半径外方向に流れるため、吸気孔30付近が外気に比較して負圧になる。このため、さらに吸気孔30から空気が吸い込まれ、通気路21を介して排気孔10側に流れる。これにより、本実施形態においても、回転体4の回転に伴って、巻上機200内部に冷却風を流すことができる。
【0055】
以上、本発明では、流体形状を有する送風翼を用いて冷却風を送り出す従来の構成と異なり、エレベーターの乗りかごの昇降方向によらずに同じ向きの冷却風を巻上機内部に送ることができるため、冷却効率の安定化を図ることができる。
【0056】
上述した実施形態では、機械室を設けたエレベーターに設けられる巻上機について説明したが、本発明の巻上機は、機械室レスのエレベーター等にも適用可能である。また、上述した実施形態では、アウターロータ型の巻上機を例に説明したが、インナーロータ型の巻上機にも本発明を適用可能である。
【0057】
また、上述した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成について他の構成を加えることも可能である。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0058】
1…エレベーター、2…筐体、3…主軸、4…回転体、5…綱車、6…モータ固定子、7…モータ回転子、8…支持台、9、30…吸気孔、10…排気孔、11…ハウジング、12…第1連結部、13…固定子取付部、14…第2連結部、15…外壁部、16…ボス部、17…第3連結部、18…回転子取付部、19…鍔部、20…リブ、21…通気路、30a…長孔部、30b…横孔部、100…巻上機、110…昇降路、130…主ロープ、140…釣合錘、150…そらせ車、160…機械室
図1
図2
図3
図4
図5