IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TDK株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-積層コイル部品 図1
  • 特許-積層コイル部品 図2
  • 特許-積層コイル部品 図3
  • 特許-積層コイル部品 図4
  • 特許-積層コイル部品 図5
  • 特許-積層コイル部品 図6
  • 特許-積層コイル部品 図7
  • 特許-積層コイル部品 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】積層コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/29 20060101AFI20241120BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
H01F27/29 123
H01F17/00 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023005777
(22)【出願日】2023-01-18
(62)【分割の表示】P 2021186412の分割
【原出願日】2016-05-30
(65)【公開番号】P2023033548
(43)【公開日】2023-03-10
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】下保 真志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真一
(72)【発明者】
【氏名】中川 誠一
(72)【発明者】
【氏名】川内 守
(72)【発明者】
【氏名】木内 重俊
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 満
【審査官】木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-053495(JP,A)
【文献】特開2013-191832(JP,A)
【文献】特開2009-200421(JP,A)
【文献】特開2001-076957(JP,A)
【文献】特開2013-161872(JP,A)
【文献】特開2012-151397(JP,A)
【文献】特開2015-084435(JP,A)
【文献】特開平10-284343(JP,A)
【文献】特開2009-239094(JP,A)
【文献】特開平10-022164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/29
H01F 17/00 -17/08
H01G 4/228- 4/252
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素体と、
前記素体内に配置されているコイルと、
前記素体の表面に配置されており、前記コイルと電気的に接続されている外部電極と、を備え、
前記外部電極は、前記素体に形成されている焼結金属層と、前記焼結金属層を覆うように形成されている導電性樹脂層と、前記導電性樹脂層に形成されているめっき層とを有し、
前記素体は、実装面である主面と、前記主面と隣り合うように位置すると共に、前記主面と交差する方向に延在している端面と、を有し、
前記焼結金属層の前記主面上に位置する端部は、前記主面に直交する方向から見て、前記導電性樹脂層の前記主面上に位置する部分における最大厚みの位置よりも前記端面側に位置し、
前記導電性樹脂層の前記主面上に位置する前記部分の平均厚みは、前記めっき層の前記主面上に位置する部分の平均厚みの5倍以下である、積層コイル部品。
【請求項2】
前記導電性樹脂層とめっき層とは、前記端面上位置する部分をそれぞれ含む、請求項に記載の積層コイル部品。
【請求項3】
前記導電性樹脂層の前記主面上に位置する前記部分の前記平均厚みは、10~30μmであり、
前記めっき層の前記主面上に位置する前記部分の前記平均厚みは、3~10μmである、請求項1又は2に記載の積層コイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
素体と、素体の表面に配置されている外部電極と、を備えている電子部品が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された電子部品では、外部電極は、素体の表面上に形成されている下地金属層と、下地金属層を覆うように形成されている導電性樹脂層と、を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5172818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子部品が積層コイル部品である場合、以下の問題点が生じるおそれがある。導電性樹脂層は、一般に、金属粉末と樹脂(たとえば、熱硬化性樹脂など)とを含むため、金属からなる下地金属層よりも抵抗が高い。このため、外部電極が導電性樹脂層を有している場合、積層コイル部品の直流抵抗が増加するおそれがある。
【0005】
本発明の一つの態様は、外部電極が導電性樹脂層を有している場合でも、直流抵抗を低くすることが可能な積層コイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様に係る積層コイル部品は、素体と、素体内に配置されているコイルと、素体の表面に配置されている外部電極と、コイルに接続される一端と、外部電極に接続される他端と、を有していると共に、素体内に配置されている接続導体と、を備え、素体は、実装面である主面と、主面と隣り合うように位置すると共に、主面と交差する方向に延在している端面と、を有し、外部電極は、主面と端面とに形成されている下地金属層と、下地金属層を覆うように形成されている導電性樹脂層と、を有し、接続導体の他端は、端面に露出していると共に下地金属層に接続されており、端面に直交する方向から見て、端面における接続導体の他端が露出している位置と、導電性樹脂層の端面上に位置する部分における最大厚みの位置と、が異なっている。
【0007】
本発明者らの調査研究の結果、以下の事項が判明した。下地金属層は、一般に、焼結金属層で構成される。焼結金属層は、導電性ペーストに含まれる金属成分(金属粉末)が焼結して形成された層であるため、焼結金属層は、均一な金属層となり難く、焼結金属層の形状は制御され難い。焼結金属層は、たとえば、複数の開口(貫通孔)が形成されている形状(網目形状など)を呈することがある。
【0008】
導電性樹脂層は、硬化された樹脂内に金属粉末が分散されている層であり、導電性樹脂層では、金属粉末同士が接することによって電流経路が形成される。樹脂内での金属粉末の分散状況を制御することは困難であり、導電性樹脂層内での電流経路の位置は制御され難い。
【0009】
これらのことから、導電性樹脂層及び下地金属層での電流経路は、製品毎で異なる。製品によっては、たとえば、導電性樹脂層の端面上に位置する部分における最大厚みの位置に金属粉末の列が形成されていると共に、当該金属粉末と網目形状の下地金属層とが接する。この製品では、端面に直交する方向から見て、端面における接続導体の他端が露出している位置と、導電性樹脂層の主面上に位置する部分における最大厚みの位置とが一致している場合、導電性樹脂層の主面上に位置する部分における最大厚みの位置に形成されている電流経路を通して、接続導体の他端に電流が流れ込むので、直流抵抗が高い。直流抵抗が低い製品を得るためには、導電性樹脂層の主面上に位置する部分における最大厚みの位置に電流経路が形成されている場合でも、当該電流経路を電流が流れる確率が低い構成を採用する必要がある。
【0010】
本発明の上記一つの態様に係る積層コイル部品では、端面に直交する方向から見て、端面における接続導体の他端が露出している位置と、導電性樹脂層の主面上に位置する部分における最大厚みの位置と、が異なっているので、電流経路が、導電性樹脂層の主面上に位置する部分における最大厚みの位置以外に形成されている電流経路を通して、接続導体の端部に電気が流れる可能性が高い。したがって、本発明の上記一つの態様に係る積層コイル部品によれば、直流抵抗が高い積層コイル部品が得られ難い。すなわち、積層コイル部品の直流抵抗を低くすることが可能である。
【0011】
下地金属層の主面上に位置する端部における導電性樹脂層の厚みは、導電性樹脂層の主面上に位置する部分における最大厚みの50%以上であってもよい。
【0012】
本発明者らの調査研究の結果、以下の事項が判明した。導電性樹脂層は、一般に、金属粉末と樹脂(たとえば、熱硬化性樹脂など)とを含むため、金属からなる下地金属層よりも抵抗が高い。このため、外部電極が導電性樹脂層を有している場合、積層コイル部品の直流抵抗が増加するおそれがある。積層コイル部品の直流抵抗が増加するのを抑制するために、導電性樹脂層の厚みを小さくし、導電性樹脂層の抵抗を低くすることが考えられる。しかしながら、この場合には、導電性樹脂層による応力緩和効果が低下するおそれがある。
【0013】
本発明者らの調査研究の結果、更に、以下の事項が判明した。たとえば、積層コイル部品が電子機器(たとえば、回路基板又は電子部品など)に実装されている場合、電子機器から積層コイル部品に作用する外力は、外部電極を通して素体に応力として作用することがある。このとき、応力は、実装面である主面上に位置する下地金属層の端部に集中する傾向があるため、下地金属層の上記端部が起点となって、素体にクラックが発生するおそれがある。
【0014】
本形態では、下地金属層の上記端部における導電性樹脂層の厚みが、導電性樹脂層の主面上に位置する部分における最大厚みの50%以上とされる。このため、積層コイル部品に外力が作用する場合でも、下地金属層の上記端部に応力が集中し難く、当該端部がクラックの起点となり難い。したがって、導電性樹脂層の厚みを小さくする場合でも、導電性樹脂層による応力緩和効果が低下するのが抑制される。
【0015】
端面を含む面を基準面として、端面に直交する方向での基準面から導電性樹脂層の主面上に位置する部分における最大厚みの位置までの長さに対する、端面に直交する方向での基準面から下地金属層の上記端部までの長さの比率が0.6~1.0であってもよい。この場合、導電性樹脂層による応力緩和効果が低下するのがより一層抑制される。
【0016】
下地金属層の主面上に位置する端部は、主面に直交する方向から見て、コイルの外側に位置していてもよい。本形態では、下地金属層の上記端部に応力が集中し、当該端部が起点となって素体にクラックが発生する場合でも、下地金属層の端部は、主面に直交する方向から見て、コイルの外側に位置しているので、発生したクラックがコイルに到達し難い。したがって、素体にクラックが生じる場合でも、当該クラックがコイルに影響を与え難く、積層コイル部品の電気的特性の劣化が抑制される。
【0017】
下地金属層の上記端部は、主面に直交する方向から見て、導電性樹脂層の主面上に位置する部分における最大厚みの位置よりも端面側に位置していてもよい。本形態では、たとえば、下地金属層の主面上に位置する端部が、導電性樹脂層の主面上に位置する部分における最大厚みの位置よりも端面から離れて位置している構成に比して、下地金属層の上記端部がコイルから離れる。したがって、下地金属層の上記端部が起点となって素体にクラックが発生する場合でも、発生したクラックがコイルに到達し難い。したがって、素体にクラックが生じる場合でも、当該クラックがコイルに影響を与え難く、積層コイル部品の電気的特性の劣化が抑制される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の上記一つの態様によれば、外部電極が導電性樹脂層を有している場合でも、直流抵抗を低くすることが可能な積層コイル部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施形態に係る積層コイル部品を示す斜視図である。
図2】本実施形態に係る積層コイル部品の断面構成を説明するための図である。
図3】コイル導体の構成を示す斜視図である。
図4】外部電極の断面構成を説明するための図である。
図5】外部電極の断面構成を説明するための図である。
図6】第一電極層が形成された素体の平面図である。
図7】端面に位置する電極部分が含む第二電極層の平面図である。
図8】端面に位置する電極部分が含む第二電極層の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0021】
図1図3を参照して、本実施形態に係る積層コイル部品1の構成を説明する。図1は、本実施形態に係る積層コイル部品を示す斜視図である。図2は、図1におけるII-II線に沿った断面構成を説明するための図である。図3は、コイル導体の構成を示す斜視図である。
【0022】
図1に示されるように、積層コイル部品1は、直方体形状を呈している素体2と、一対の外部電極4,5と、を備えている。一対の外部電極4,5は、素体2の両端部にそれぞれ配置されており、離間している。直方体形状には、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状が含まれる。積層コイル部品1は、たとえば、ビーズインダクタ又はパワーインダクタに適用できる。
【0023】
素体2は、直方体形状を呈している。素体2は、その表面として、互いに対向する一対の端面2a,2bと、互いに対向している一対の主面2c,2dと、互いに対向している一対の側面2e,2fと、を有している。端面2a,2bは、一対の主面2c,2dと隣り合うように位置している。端面2a,2bは、一対の側面2e,2fとも隣り合うように位置している。主面2c又は主面2dは、たとえば積層コイル部品1を図示しない他の電子機器(たとえば、回路基板、又は、電子部品など)に実装する際に、他の電子機器と対向する面(実装面)として規定される。
【0024】
本実施形態では、一対の端面2a,2bが対向している方向(第一方向D1)が素体2の長さ方向である。一対の主面2c,2dが対向している方向(第二方向D2)が素体2の高さ方向である。一対の側面2e,2fが対向している方向(第三方向D3)が素体2の幅方向である。第一方向D1と第二方向D2と第三方向D3とは、互いに直交している。
【0025】
素体2の第一方向D1の長さは、素体2の第二方向D2の長さ及び素体2の第三方向D3の長さよりも大きい。素体2の第二方向D2の長さと素体2の第三方向D3の長さとは、同等である。すなわち、本実施形態では、一対の端面2a,2bは正方形状を呈し、一対の主面2c,2dと一対の側面2e,2fとは、長方形状を呈している。素体2の第一方向D1の長さは、素体2の第二方向D2の長さ及び素体2の第三方向D3の長さと同等であってもよい。素体2の第二方向D2の長さと素体2の第三方向D3の長さとは、異なっていてもよい。
【0026】
同等とは、等しいことに加えて、予め設定した範囲での微差又は製造誤差などを含んだ値を同等としてもよい。たとえば、複数の値が、当該複数の値の平均値の±5%の範囲内に含まれているのであれば、当該複数の値は同等であると規定する。
【0027】
各端面2a,2bは、一対の主面2c,2dを連結するように第二方向D2に延在している。すなわち、各端面2a,2bは、主面2c,2dと交差する方向に延在している。各端面2a,2bは、第三方向D3にも延在している。一対の主面2c,2dは、一対の端面2a,2bを連結するように第一方向D1に延在している。一対の主面2c,2dは、第三方向D3にも延在している。一対の側面2e,2fは、一対の主面2c,2dの間を連結するように第二方向D2に延在している。一対の側面2e,2fは、第一方向D1にも延在している。
【0028】
素体2は、複数の絶縁体層6(図3参照)が積層されることによって構成されている。各絶縁体層は6、主面2cと主面2dとが対向している方向に積層されている。すなわち、各絶縁体層6の積層方向は、主面2cと主面2dとが対向している方向と一致している。以下、主面2cと主面2dとが対向している方向を「積層方向」ともいう。各絶縁体層6は、略矩形形状を呈している。実際の素体2では、各絶縁体層6は、その層間の境界が視認できない程度に一体化されている。
【0029】
各絶縁体層6は、フェライト材料(たとえば、Ni-Cu-Zn系フェライト材料、Ni-Cu-Zn-Mg系フェライト材料、又はNi-Cu系フェライト材料など)を含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成される。すなわち、素体2は、フェライト焼結体からなる。
【0030】
積層コイル部品1は、素体2内に配置されているコイル15を備えている。図3に示されるように、コイル15は、複数のコイル導体(複数の内部導体)16a,16b,16c,16d,16e,16fを含んでいる。複数のコイル導体16a~16fは、導電材(たとえば、Ag又はPdなど)を含んでいる。複数のコイル導体16a~16fは、導電性材料(たとえば、Ag粉末又はPd粉末など)を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。
【0031】
コイル導体16aは、接続導体17を含んでいる。接続導体17は、素体2の端面2b側に配置されていると共に、端面2bに露出している端部を有している。接続導体17の端部は、端面2bに直交する方向から見て、端面2bの中央領域よりも主面2c寄りの位置に露出している。コイル導体16aは、端面2bに露出している接続導体17の端部で、外部電極5に接続されている。すなわち、コイル導体16aは、接続導体17を通して、外部電極5と電気的に接続されている。本実施形態においては、コイル導体16aの導体パターンと接続導体17の導体パターンとは、一体に連続して形成されている。
【0032】
コイル導体16fは、接続導体18を含んでいる。接続導体18は、素体2の端面2a側に配置されていると共に、端面2aに露出している端部を有している。接続導体18の端部は、端面2aに直交する方向から見て、端面2aの中央領域よりも主面2d寄りの位置に露出している。コイル導体16fは、端面2aに露出している接続導体18の端部で、外部電極4に接続されている。すなわち、コイル導体16fは、接続導体18を通して、外部電極4と電気的に接続されている。本実施形態においては、コイル導体16fの導体パターンと接続導体18の導体パターンとは、一体に連続して形成される。
【0033】
複数のコイル導体16a~16fは、素体2内において絶縁体層6の積層方向に併置されている。複数のコイル導体16a~16fは、最外層に近い側からコイル導体16a、コイル導体16b、コイル導体16c、コイル導体16d、コイル導体16e、コイル導体16fの順に並んでいる。本実施形態では、コイル15は、コイル導体16aにおける接続導体17以外の部分、複数のコイル導体16b~16d、及びコイル導体16fにおける接続導体18以外の部分からなる。
【0034】
コイル導体16a~16fの端部同士は、スルーホール導体19a~19eにより接続されている。スルーホール導体19a~19eにより、コイル導体16a~16fは、相互に電気的に接続されている。コイル15は、複数のコイル導体16a~16fが電気的に接続されて構成されている。各スルーホール導体19a~19eは、導電材(たとえば、Ag又はPdなど)含んでいる。各スルーホール導体19a~19eは、複数のコイル導体16a~16fと同様に、導電性材料(たとえば、Ag粉末又はPd粉末など)を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。
【0035】
外部電極4は、第一方向D1に見て、素体2における端面2a側の端部に位置している。外部電極4は、端面2aに位置している電極部分4a、一対の主面2c,2dに位置している電極部分4b、及び一対の側面2e,2fに位置している電極部分4cを有している。すなわち、外部電極4は、五つの面2a,2c,2d,2e,2fに形成されている。
【0036】
互いに隣り合う電極部分4a,4b,4c同士は、素体2の稜線部において接続されており、電気的に接続されている。電極部分4aと電極部分4bとは、端面2aと各主面2c,2dとの間の稜線部において、接続されている。電極部分4aと電極部分4cとは、端面2aと各側面2e,2fとの間の稜線部において、接続されている。
【0037】
電極部分4aは、接続導体18の端面2aに露出した端部をすべて覆うように配置されており、接続導体18は、外部電極4に直接的に接続される。すなわち、接続導体18は、コイル導体16a(コイル15の一端)と電極部分4aとを接続している。これにより、コイル15は、外部電極4に電気的に接続される。
【0038】
外部電極5は、第一方向D1に見て、素体2における端面2b側の端部に位置している。外部電極5は、端面2bに位置している電極部分5a、一対の主面2c,2dに位置している電極部分5b、及び一対の側面2e,2fに位置している電極部分5cを有している。すなわち、外部電極5は、五つの面2b,2c,2d,2e,2fに形成されている。
【0039】
互いに隣り合う電極部分5a,5b,5c同士は、素体2の稜線部において接続されており、電気的に接続されている。電極部分5aと電極部分5bとは、端面2bと各主面2c,2dとの間の稜線部において、接続されている。電極部分5aと電極部分5cとは、端面2bと各側面2e,2fとの間の稜線部において、接続されている。
【0040】
電極部分5aは、接続導体17の端面2bに露出した端部をすべて覆うように配置されており、接続導体17は、外部電極5に直接的に接続される。すなわち、接続導体17は、コイル導体16f(コイル15の他端)と電極部分5aとを接続している。これにより、コイル15は、外部電極5に電気的に接続される。
【0041】
外部電極4,5は、図4及び図5に示されるように、第一電極層21、第二電極層23、第三電極層25、及び第四電極層27をそれぞれ有している。すなわち、電極部分4a,4b,4cと電極部分5a,5b,5cとが、第一電極層21、第二電極層23、第三電極層25、及び第四電極層27をそれぞれ含んでいる。第四電極層27は、外部電極4,5の最外層を構成している。図4及び図5は、外部電極の断面構成を説明するための図である。
【0042】
第一電極層21は、導電性ペーストを素体2の表面に付与して焼き付けることにより形成されている。第一電極層21は、導電性ペーストに含まれる金属成分(金属粉末)が焼結して形成された焼結金属層である。すなわち、第一電極層21は、素体2に形成された焼結金属層である。本実施形態では、第一電極層21は、Agからなる焼結金属層である。第一電極層21は、Pdからなる焼結金属層であってもよい。このように、第一電極層21は、Ag又はPdを含んでいる。導電性ペーストには、Ag又はPdからなる粉末に、ガラス成分、有機バインダ、及び有機溶剤を混合したものが用いられている。
【0043】
第二電極層23は、第一電極層21上に付与された導電性樹脂を硬化させることにより形成されている。第二電極層23は、第一電極層21全体を覆うように形成されている。第一電極層21は、第二電極層23を形成するための下地金属層である。第二電極層23は、第一電極層21上に形成された導電性樹脂層である。導電性樹脂には、熱硬化性樹脂に金属粉末及び有機溶媒などを混合したものが用いられる。金属粉末としては、たとえば、Ag粉末などが用いられる。熱硬化性樹脂としては、たとえば、フェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、又はポリイミド樹脂などが用いられる。
【0044】
第三電極層25は、第二電極層23上にめっき法により形成されている。本実施形態では、第三電極層25は、第二電極層23上にNiめっきにより形成されたNiめっき層である。第三電極層25は、Snめっき層、Cuめっき層、又はAuめっき層であってもよい。このように、第三電極層25は、Ni、Sn、Cu、又はAuを含んでいる。
【0045】
第四電極層27は、第三電極層25上にめっき法により形成されている。本実施形態では、第四電極層27は、第三電極層25上にSnめっきにより形成されたSnめっき層である。第四電極層27は、Cuめっき層又はAuめっき層であってもよい。このように、第四電極層27は、Sn、Cu、又はAuを含んでいる。第三電極層25と第四電極層27とは、第二電極層23に形成されるめっき層を構成している。すなわち、本実施形態では、第二電極層23に形成されるめっき層は、二層構造を有している。
【0046】
第一電極層21の端面2a,2b上に位置する部分の平均厚み(電極部分4a,5aが含む第一電極層21の平均厚み)は、たとえば、10~30μmである。第二電極層23の端面2a,2b上に位置する部分の平均厚み(電極部分4a,5aが含む第二電極層23の平均厚み)は、たとえば、30~50μmである。第三電極層25の端面2a,2b上に位置する部分の平均厚み(電極部分4a,5aが含む第三電極層25の平均厚み)は、たとえば、1~3μmである。第四電極層27の端面2a,2b上に位置する部分の平均厚み(電極部分4a,5aが含む第四電極層27の平均厚み)は、たとえば、2~7μmである。めっき層(第三及び第四電極層25,27)の端面2a,2b上に位置する部分の平均厚み(電極部分4a,5aが含むめっき層の平均厚み)は、たとえば、3~10μmである。
【0047】
第一電極層21の主面2c,2d上に位置する部分の平均厚み(電極部分4b,5bが含む第一電極層21の平均厚み)は、たとえば、1~2μmである。第二電極層23の主面2c,2d上に位置する部分の平均厚み(電極部分4b,5bが含む第二電極層23の平均厚み)は、たとえば、10~30μmである。第三電極層25の主面2c,2d上に位置する部分の平均厚み(電極部分4b,5bが含む第三電極層25の平均厚み)は、たとえば、1~3μmである。第四電極層27の主面2c,2d上に位置する部分の平均厚み(電極部分4b,5bが含む第四電極層27の平均厚み)は、たとえば、2~7μmである。めっき層(第三及び第四電極層25,27)の主面2c,2d上に位置する部分の平均厚み(電極部分4b,5bが含むめっき層の平均厚み)は、たとえば、3~10μmである。電極部分4b,5bが含む第二電極層23の平均厚みは、電極部分4b,5bが含む第一電極層21の平均厚みの15倍以下である。電極部分4b,5bが含む第二電極層23の平均厚みは、電極部分4b,5bが含むめっき層の平均厚みの5倍以下である。
【0048】
平均厚みは、たとえば、以下のようにして求めることができる。
【0049】
第一電極層21、第二電極層23、第三電極層25、及び第四電極層27の端面2a,2b上に位置する各部分を含む断面図を取得する。断面図は、たとえば、互いに対向している一対の面(たとえば、一対の側面2e,2f)に平行であり、かつ、当該一対の面から等距離に位置している平面で切断したときの第一電極層21、第二電極層23、第三電極層25、及び第四電極層27の断面図である。取得した断面図上での、第一電極層21、第二電極層23、第三電極層25、及び第四電極層27の端面2a,2b上に位置する部分の各面積を算出する。
【0050】
第一電極層21の端面2a,2b上に位置する部分の面積を、取得した断面図上での端面2a,2b上に位置する部分の長さで除し、得られた商を第一電極層21の端面2a,2b上に位置する部分の平均厚みとする。第二電極層23の端面2a,2b上に位置する部分の面積を、取得した断面図上での端面2a,2b上に位置する部分の長さで除し、得られた商を第二電極層23の端面2a,2b上に位置する部分の平均厚みとする。第三電極層25の端面2a,2b上に位置する部分の面積を、取得した断面図上での端面2a,2b上に位置する部分の長さで除し、得られた商を第三電極層25の端面2a,2b上に位置する部分の平均厚みとする。第四電極層27の端面2a,2b上に位置する部分の面積を、取得した断面図上での端面2a,2b上に位置する部分の長さで除し、得られた商を第四電極層27の端面2a,2b上に位置する部分の平均厚みとする。
【0051】
第一電極層21、第二電極層23、第三電極層25、及び第四電極層27の主面2c,2d上に位置する各部分を含む断面図を取得する。断面図は、たとえば、互いに対向している一対の面(たとえば、一対の側面2e,2f)に平行であり、かつ、当該一対の面から等距離に位置している平面で切断したときの第一電極層21、第二電極層23、第三電極層25、及び第四電極層27の断面図である。取得した断面図上での、第一電極層21、第二電極層23、第三電極層25、及び第四電極層27の主面2c,2d上に位置する部分の各面積を算出する。
【0052】
第一電極層21の主面2c,2d上に位置する部分の面積を、取得した断面図上での主面2c,2d上に位置する部分の長さで除し、得られた商を第一電極層21の主面2c,2d上に位置する部分の平均厚みとする。第二電極層23の主面2c,2d上に位置する部分の面積を、取得した断面図上での主面2c,2d上に位置する部分の長さで除し、得られた商を第二電極層23の主面2c,2d上に位置する部分の平均厚みとする。第三電極層25の主面2c,2d上に位置する部分の面積を、取得した断面図上での主面2c,2d上に位置する部分の長さで除し、得られた商を第三電極層25の主面2c,2d上に位置する部分の平均厚みとする。第四電極層27の主面2c,2d上に位置する部分の面積を、取得した断面図上での主面2c,2d上に位置する部分の長さで除し、得られた商を第四電極層27の主面2c,2d上に位置する部分の平均厚みとする。
【0053】
いずれの場合でも、複数の断面図を取得し、断面図毎に上記各商を取得してもよい。この場合、取得した複数の商の平均値を平均厚みとしてもよい。
【0054】
次に、図4及び図5を参照して、主面2c,2d上における、外部電極4,5の第一電極層21と第二電極層23との関係について説明する。
【0055】
第一電極層21の主面2c,2d上に位置する端部における第二電極層23の厚みTRS1は、第二電極層23の主面2c,2d上に位置する部分における最大厚みTRSmaxの50%以上である。すなわち、電極部分4b,5bが含む第一電極層21の端部上に位置する第二電極層23の厚みTRS1は、電極部分4b,5bが含む第二電極層23の最大厚みTRSmaxの50%以上である。最大厚みTRSmaxは、たとえば、11~40μmである。厚みTRS1は、たとえば、6~40μmである。本実施形態では、最大厚みTRSmaxは、30μmであり、厚みTRS1は、20μmである。すなわち、厚みTRS1は、最大厚みTRSmaxの約67%である。
【0056】
電極部分4bにおいて、第一電極層21の主面2c,2d上に位置する端部は、主面2c,2dに直交する方向(第二方向D2)から見て、第二電極層23の主面2c,2d上に位置する部分における最大厚みTRSmaxの位置よりも端面2a側に位置している。すなわち、電極部分4bが含む第一電極層21の端部は、第二方向D2から見て、電極部分4bが含む第二電極層23の最大厚みTRSmaxの位置よりも端面2a側に位置している。端面2aを含む平面を基準面DPとして、第一方向D1での基準面DPから電極部分4bが含む第一電極層21の端部までの長さLSE1は、第一方向D1での基準面DPから電極部分4bが含む第二電極層23の最大厚みTRSmaxの位置までの長さLRS1よりも小さい。
【0057】
電極部分5bにおいて、第一電極層21の主面2c,2d上に位置する端部は、第二方向D2から見て、第二電極層23の主面2c,2d上に位置する部分における最大厚みTRSmaxの位置よりも端面2b側に位置している。すなわち、電極部分5bが含む第一電極層21の端部は、第二方向D2から見て、電極部分5bが含む第二電極層23の最大厚みTRSmaxの位置よりも端面2b側に位置している。端面2bを含む平面を基準面DPとして、第一方向D1での基準面DPから電極部分5bが含む第一電極層21の端部までの長さLSE2は、第一方向D1での基準面DPから電極部分5bが含む第二電極層23の最大厚みTRSmaxの位置までの長さLRS2よりも小さい。
【0058】
長さLSE1は、たとえば、80μmである。長さLRS1は、たとえば、120μmである。長さLSE2は、たとえば、80μmである。長さLRS2は、たとえば、120μmである。本実施形態では、長さLSE1と長さLSE2とは同等であるが、長さLSE1と長さLSE2とは異なっていてもよい。本実施形態では、長さLRS1と長さLRS2とは同等であるが、長さLRS1と長さLRS2とは異なっていてもよい。
【0059】
次に、図示は省略するが、側面2e,2f上における、外部電極4,5の第一電極層21と第二電極層23との関係について説明する。
【0060】
第一電極層21の側面2e,2f上に位置する端部における第二電極層23の厚みは、第二電極層23の側面2e,2f上に位置する部分における最大厚みの50%以上である。すなわち、電極部分4c,5cが含む第一電極層21の端部上に位置する第二電極層23の厚みは、電極部分4c,5cが含む第二電極層23の最大厚みの50%以上である。電極部分4c,5cが含む第一電極層21の端部上に位置する第二電極層23の厚みは、厚みTRS1と同等である。電極部分4c,5cが含む第二電極層23の最大厚みは、最大厚みTRSmaxと同等である。
【0061】
電極部分4cにおいて、第一電極層21の側面2e,2f上に位置する端部は、側面2e,2fに直交する方向(第三方向D3)から見て、第二電極層23の側面2e,2f上に位置する部分における最大厚みの位置よりも端面2a側に位置している。すなわち、電極部分4cが含む第一電極層21の端部は、第三方向D3から見て、電極部分4cが含む第二電極層23の最大厚みの位置よりも端面2a側に位置している。
【0062】
第一方向D1での基準面DPから電極部分4cが含む第一電極層21の端部までの長さは、長さLSE1と同等である。第一方向D1での基準面DPから電極部分4cが含む第二電極層23の最大厚みの位置までの長さは、長さLRS1と同等である。したがって、第一方向D1での基準面DPから電極部分4cが含む第一電極層21の端部までの長さは、第一方向D1での基準面DPから電極部分4cが含む第二電極層23の最大厚みの位置までの長さよりも小さい。
【0063】
電極部分5cにおいて、第一電極層21の側面2e,2f上に位置する端部は、第三方向D3から見て、第二電極層23の側面2e,2f上に位置する部分における最大厚みの位置よりも端面2b側に位置している。すなわち、電極部分5cが含む第一電極層21の端部は、第三方向D3から見て、電極部分5cが含む第二電極層23の最大厚みの位置よりも端面2b側に位置している。
【0064】
第一方向D1での基準面DPから電極部分5cが含む第一電極層21の端部までの長さは、長さLSE2と同等である。第一方向D1での基準面DPから電極部分5cが含む第二電極層23の最大厚みの位置までの長さは、長さLRS2と同等である。したがって、第一方向D1での基準面DPから電極部分5cが含む第一電極層21の端部までの長さは、第一方向D1での基準面DPから電極部分5cが含む第二電極層23の最大厚みの位置までの長さよりも小さい。
【0065】
次に、図6を参照して、コイル15と第一電極層21との関係について説明する。図6は、第一電極層が形成された素体の平面図である。
【0066】
図6に示されるように、第一電極層21の主面2c,2d上に位置する端部(電極部分4b,5bが含む第一電極層21の端部)は、主面2c,2dに直交する方向(第二方向D2)から見て、コイル15の外側に位置している。すなわち、電極部分4b,5bが含む第一電極層21は、主面2c,2dに直交する方向から見て、コイル15と重なっていない。長さLSE1は、第一方向D1での基準面DPからコイル15までの長さよりも小さい。長さLSE2は、第一方向D1での基準面DPからコイル15までの長さよりも小さい。電極部分4b,5bが含む第一電極層21の一部は、第二方向D2から見て、接続導体17,18と重なっている。
【0067】
図示は省略するが、第一電極層21の側面2e,2f上に位置する端部(電極部分4c,5cが含む第一電極層21の端部)も、第三方向D3(側面2e,2fに直交する方向)から見て、コイル15の外側に位置している。すなわち、電極部分4c,5cが含む第一電極層21は、第三方向D3から見て、コイル15と重なっていない。電極部分4c,5cが含む第一電極層21の一部は、第三方向D3から見て、接続導体17,18と重なっている。
【0068】
次に、図7及び図8を参照して、コイル15と第一電極層21との関係について説明する。図7及び図8は、端面に位置する電極部分が含む第二電極層の平面図である。
【0069】
図4及び図5にも示されるように、接続導体17は、コイル15に接続される一端と、端面2bに露出していると共に第一電極層21に接続される他端と、を有している。接続導体18は、コイル15に接続される一端と、端面2aに露出していると共に第一電極層21に接続される他端と、を有している。
【0070】
第二電極層23を形成する際に、導電性樹脂の付与は、一般に、浸漬法により実現される。この場合、電極部分4a,5aが含む第二電極層23の厚みは、端面2a,2bに直交する方向から見て、端面2a,2bの中央領域に対応する位置が最も大きく、当該位置から離れるにしたがって小さくなる。
【0071】
接続導体17の他端は、図7に示されるように、端面2bに直交する方向から見て、端面2bの中央領域よりも主面2c寄りの位置に露出している。すなわち、端面2bに直交する方向から見て、端面2bにおける接続導体17の他端が露出している位置と、電極部分5aが含む第二電極層23の最大厚みの位置と、が異なっている。
【0072】
接続導体18の他端は、図8に示されるように、端面2aに直交する方向から見て、端面2aの中央領域よりも主面2d寄りの位置に露出している。すなわち、端面2aに直交する方向から見て、端面2aにおける接続導体17の他端が露出している位置と、電極部分4aが含む第二電極層23の最大厚みの位置と、が異なっている。
【0073】
積層コイル部品1が電子機器に実装されている場合、電子機器から積層コイル部品1に作用する外力は、外部電極4,5を通して素体2に応力として作用することがある。このとき、応力は、電極部分4b,5bが含む第一電極層21の端部に集中する傾向がある。
【0074】
積層コイル部品1では、電極部分4b,5bが含む第一電極層21の端部上に位置する第二電極層23の厚みTRS1が、電極部分4b,5bが含む第二電極層23の最大厚みTRSmaxの50%以上とされる。このため、積層コイル部品1に外力が作用する場合でも、電極部分4b,5bが含む第一電極層21の端部に応力が集中し難く、電極部分4b,5bが含む第一電極層21の端部がクラックの起点となり難い。したがって、第二電極層23の厚みを小さくする場合でも、第二電極層23による応力緩和効果が低下するのが抑制される。
【0075】
ここで、応力緩和効果の低下を抑制し得る、最大厚みTRSmaxに対する厚みTRS1の比率と、長さLRS1,LRS2に対する長さLSE1,LSE2の比率とについて詳細に説明する。
【0076】
本発明者らは、応力緩和効果の低下を抑制し得る、最大厚みTRSmaxに対する厚みTRS1の比率を明らかにするため、以下のような試験を行った。まず、最大厚みTRSmaxに対する厚みTRS1の比率が異なる複数の積層コイル部品(試料S1~S5)を用意し、試料S1~S5毎に撓み強度試験を行う。撓み強度試験後に、積層コイル部品を後述する基板と共に切断し、積層コイル部品の素体にクラックが発生しているか否かを目視で確認する。
【0077】
撓み強度試験では、まず、積層コイル部品を基板(ガラスエポキシ基板)の中央部にはんだ実装する。基板の大きさは、100mm×40mmであり、基板の厚さは、1.6mmである。次に、90mmの間隔を有して平行に配置された2本の棒の上に、基板を載置する。基板は、積層コイル部品が実装された面が下向きとなるように載置される。その後、積層コイル部品が実装された面の裏面から、基板の撓み量が所望の値となるように、基板の中央部に撓み応力を加える。
【0078】
最大厚みTRSmaxに対する厚みTRS1の比率は、長さLSE1,LSE2を異ならせることにより、変えることが可能である。たとえば、長さLSE1,LSE2が長さLRS1,LRS2と一致するように、第一電極層21が形成されている場合、厚みTRS1が最大厚みTRSmaxと一致する。この場合、最大厚みTRSmaxに対する厚みTRS1の比率が100%である。
【0079】
試料S1~S5は、最大厚みTRSmaxに対する厚みTRS1の比率(長さLRS1,LRS2に対する長さLSE1,LSE2の比率)が異なる点を除いて同じ構成である。各試料S1~S5では、素体2の第一方向D1の長さが1.46mmに設定され、素体2の第二方向D2の長さが0.75mmに設定され、素体2の第三方向D3の長さが0.75mmに設定されている。
【0080】
試料S1では、最大厚みTRSmaxに対する厚みTRS1の比率が「40%」に設定されている。このとき、長さLRS1,LRS2に対する長さLSE1,LSE2の比率は「0.2」である。最大厚みTRSmaxは、30μmであり、厚みTRS1は、12μmである。長さLRS1,LRS2は、120μmであり、長さLSE1,LSE2は、24μmである。
【0081】
試料S2では、最大厚みTRSmaxに対する厚みTRS1の比率が「50%」に設定されている。このとき、長さLRS1,LRS2に対する長さLSE1,LSE2の比率は「0.6」である。最大厚みTRSmaxは、30μmであり、厚みTRS1は、15μmである。長さLRS1,LRS2は、120μmであり、長さLSE1,LSE2は、72μmである。
【0082】
試料S3では、最大厚みTRSmaxに対する厚みTRS1の比率が「100%」に設定されている。このとき、長さLRS1,LRS2に対する長さLSE1,LSE2の比率は「1.0」である。最大厚みTRSmaxは、30μmであり、厚みTRS1は、30μmである。長さLRS1,LRS2は、120μmであり、長さLSE1,LSE2は、120μmである。
【0083】
試料S4では、最大厚みTRSmaxに対する厚みTRS1の比率が「50%」に設定されている。このとき、長さLRS1,LRS2に対する長さLSE1,LSE2の比率は「1.6」である。最大厚みTRSmaxは、30μmであり、厚みTRS1は、15μmである。長さLRS1,LRS2は、120μmであり、長さLSE1,LSE2は、192μmである。
【0084】
試料S5では、最大厚みTRSmaxに対する厚みTRS1の比率が「40%」に設定されている。このとき、長さLRS1,LRS2に対する長さLSE1,LSE2の比率は「1.8」である。最大厚みTRSmaxは、30μmであり、厚みTRS1は、12μmである。長さLRS1,LRS2は、120μmであり、長さLSE1,LSE2は、216μmである。
【0085】
基板の撓み量が「5.0mm」となるように、基板に撓み応力を加えたところ、試料S1及び試料S5では、素体にクラックの発生が確認された。これに対し、試料S2、試料S3、及び試料S4では、素体にクラックの発生が確認されなかった。
【0086】
基板の撓み量が「7.0mm」となるように、基板に撓み応力を加えたところ、試料S1、試料S4、及び試料S5では、素体にクラックの発生が確認された。これに対し、試料S2及び試料S3では、素体にクラックの発生が確認されなかった。
【0087】
以上のことから、最大厚みTRSmaxに対する厚みTRS1の比率が50%以上である場合に、応力緩和効果の低下が抑制される。更に、長さLRS1,LRS2に対する長さLSE1,LSE2の比率が0.6~1.0の範囲にある場合、応力緩和効果が低下するのがより一層抑制される。
【0088】
電極部分4b,5bが含む第一電極層21の端部は、第二方向D2から見て、コイル15の外側に位置している。これにより、電極部分4b,5bが含む第一電極層21の端部に応力が集中し、当該端部が起点となって素体にクラックが発生する場合でも、発生したクラックがコイル15に到達し難い。したがって、素体2にクラックが生じる場合でも、当該クラックがコイル15に影響を与え難く、積層コイル部品1の電気的特性の劣化が抑制される。
【0089】
電極部分4b,5bが含む第二電極層23の端部には、電極部分4b,5bが含む第一電極層21の端部よりも、応力が集中し難い。したがって、電極部分4b,5bが含む第二電極層23の端部は、第二方向D2から見て、コイル15と重なっていてもよい。
【0090】
第一電極層21は、焼結金属層で構成されている。焼結金属層は、導電性ペーストに含まれる金属成分(金属粉末)が焼結して形成された層であるため、焼結金属層は、均一な金属層となり難く、焼結金属層の形状は制御され難い。焼結金属層は、たとえば、複数の開口(貫通孔)が形成されている形状(網目形状など)を呈することがある。
【0091】
第二電極層23は、硬化された樹脂内に金属粉末が分散されている層であり、第二電極層23では、金属粉末同士が接することによって電流経路が形成される。樹脂内での金属粉末の分散状況を制御することは困難であり、第二電極層23内での電流経路の位置は制御され難い。
【0092】
これらのことから、第二電極層23及び第一電極層21での電流経路は、製品毎で異なる。製品によっては、たとえば、電極部分4a,5aが含む第二電極層23の最大厚みの位置に金属粉末の列が形成されていると共に、当該金属粉末と網目形状の第一電極層21とが接する。この製品では、第一方向D1から見て、端面2b,2aにおける接続導体17,18の他端が露出している位置と、電極部分5a,4aが含む第二電極層23の最大厚みの位置とが一致している場合、電極部分4a,5aが含む第二電極層23の最大厚みの位置に形成されている電流経路を通して、接続導体17,18の他端に電流が流れ込むので、直流抵抗が高い。直流抵抗が低い製品を得るためには、電極部分5a,4aが含む第二電極層23の最大厚みの位置に電流経路が形成されている場合でも、当該電流経路を電流が流れる確率が低い構成を採用する必要がある。
【0093】
本実施形態に係る積層コイル部品1では、第一方向D1から見て、端面2b,2aにおける接続導体17,18の他端が露出している位置と、電極部分4a,5aが含む第二電極層23の最大厚みの位置とが異なっているので、電流経路が、電極部分4a,5aが含む第二電極層23の最大厚みの位置以外に形成されている電流経路を通して、接続導体17,18の他端に電気が流れる可能性が高い。したがって、本実施形態によれば、直流抵抗が高い積層コイル部品1が得られ難い。すなわち、本実施形態によれば、積層コイル部品1の直流抵抗を低くすることが可能である。
【0094】
電極部分4bが含む第一電極層21の端部は、第二方向D2から見て、電極部分4bが含む第二電極層23の最大厚みTRSmaxの位置よりも端面2a側に位置している。この場合、電極部分4bが含む第一電極層21の端部が、電極部分4bが含む第二電極層23の最大厚みTRSmaxの位置よりも端面2aから離れて位置している構成に比して、電極部分4bが含む第一電極層21の端部がコイル15から離れる。
【0095】
電極部分5bが含む第一電極層21の端部は、第二方向D2から見て、電極部分5bが含む第二電極層23の最大厚みTRSmaxの位置よりも端面2b側に位置している。この場合、電極部分5bが含む第一電極層21の端部が、電極部分5bが含む第二電極層23の最大厚みTRSmaxの位置よりも端面2bから離れて位置している構成に比して、電極部分5bが含む第一電極層21の端部がコイル15から離れる。
【0096】
上述したように、電極部分4b,5bが含む第一電極層21の端部がコイル15から離れるので、電極部分4b,5bが含む第一電極層21の端部が起点となって素体2にクラックが発生する場合でも、発生したクラックがコイル15に到達し難い。したがって、素体2にクラックが生じる場合でも、当該クラックがコイル15に影響を与え難く、積層コイル部品1の電気的特性の劣化が抑制される。
【0097】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0098】
上記実施形態では、外部電極4,5が電極部分4a,5a、電極部分4b,5b、及び、電極部分4c,5cを有する形態を一例に説明した。しかし、外部電極の形状はこれに限定されない。たとえば、外部電極4は、端面2aと一方の主面2cとにのみ形成されていてもよく、外部電極5は、端面2bと一方の主面2cとにのみ形成されていてもよい。この場合、主面2cが実装面とされる。
【0099】
電極部分4b,5bが含む第一電極層21の端部上に位置する第二電極層23の厚みTRS1が、電極部分4b,5bが含む第二電極層23の最大厚みTRSmaxの50%以上であれば、長さLSE1,LSE2は、長さLRS1,LRS2以上であってもよい。上述した積層コイル部品1の電気的特性の劣化抑制の観点からは、長さLSE1,LSE2は、長さLRS1,LRS2よりも小さいことが好ましい。
【0100】
厚みTRS1が、最大厚みTRSmaxの50%未満であってもよい。上述した積層コイル部品1の応力緩和効果の低下抑制の観点からは、厚みTRS1が、最大厚みTRSmaxの50%以上であることが好ましい。
【0101】
電極部分4b,5bが含む第一電極層21の端部は、第二方向D2から見て、コイル15と重なっていてもよい。上述した積層コイル部品1の電気的特性の劣化抑制の観点からは、電極部分4b,5bが含む第一電極層21の端部は、第二方向D2から見て、コイル15の外側に位置していることが好ましい。
【符号の説明】
【0102】
1…積層コイル部品、2…素体、2a,2b…端面、2c,2d…主面、4,5…外部電極、15…コイル、16a~16f…コイル導体、17,18…接続導体、21…第一電極層、23…第二電極層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8