(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】バッテリ冷却機構
(51)【国際特許分類】
B60K 11/06 20060101AFI20241120BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20241120BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20241120BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20241120BHJP
H01M 10/6563 20140101ALI20241120BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20241120BHJP
【FI】
B60K11/06 ZHV
B60K1/04 Z
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6563
H01M10/6556
(21)【出願番号】P 2023049954
(22)【出願日】2023-03-27
【審査請求日】2023-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松 大悟
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直司
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特許第6690507(JP,B2)
【文献】特開2016-117450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/06
B60K 1/04
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/6563
H01M 10/6556
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるバッテリを冷却するバッテリ冷却機構であって、
吸込口が下方を向いた状態で配置され、前記バッテリに冷却空気を送風するファンと、
前記ファンの前記吸込口に接続され、前記冷却空気が流れる吸気流路と、を備え、
前記吸気流路は、
前記ファンの前記吸込口に対向し、保水性を有する吸音材が設けられた液体貯留部と、
前記液体貯留部よりも上流側に設けられ、前記ファンの前記吸込口に向かって傾斜する傾斜面と、
前記傾斜面の下流端と前記液体貯留部との間に設けられた段差部と、を有する、
バッテリ冷却機構。
【請求項2】
請求項1に記載のバッテリ冷却機構であって、
前記吸音材は、前記液体貯留部の底部に設けられ、保水性を有する第1吸音材を含む、
バッテリ冷却機構。
【請求項3】
請求項2に記載のバッテリ冷却機構であって、
前記液体貯留部は、前記底部の周縁部から立設された側壁部に囲まれており、
前記吸音材は、前記側壁部に沿って設けられ、保水性を有する第2吸音材を含む、
バッテリ冷却機構。
【請求項4】
請求項3に記載のバッテリ冷却機構であって、
前記第1吸音材の表面積は、前記第2吸音材の表面積よりも大きく、
前記液体貯留部には、前記第2吸音材で保水された液体が前記第1吸音材へ流れる連通部が設けられる、
バッテリ冷却機構。
【請求項5】
請求項4に記載のバッテリ冷却機構であって、
前記第2吸音材は、前記液体貯留部の前記底部から立設された複数の突出部と前記側壁部とにより挟まれて支持され、
前記複数の突出部は、互いに離間して配置され、
前記連通部は、隣り合う突出部の隙間により構成される、
バッテリ冷却機構。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のバッテリ冷却機構であって、
前記吸気流路は、前記傾斜面の上流側に前記冷却空気の流れ方向を変化させる屈曲部をさらに有する、
バッテリ冷却機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるバッテリを冷却するバッテリ冷却機構に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する二次電池(バッテリとも称する)に関する研究開発が行われている。
【0003】
車両の駆動源の電動化に伴って、車両にはモータ等に電力を供給するバッテリが搭載される。バッテリは電力供給時や充電時に発熱するので、適切にバッテリを冷却する必要がある。バッテリを冷却する方法の一種である空冷式では、例えば車室内の冷却空気をファンにより吸気し、冷却空気をバッテリに送風してバッテリを冷却する。しかしながら、空冷式では、吸気口から雨水等の液体が吸気ダクトに流入することがあり、ファン及びバッテリに比較的多量の液体が浸入すると、ファン及びバッテリの故障に繋がる。
【0004】
これに対し、特許文献1には、吸気ダクトの上流側端部に設けられた吸気口部材の底面に水抜き孔を設け、吸気ダクト内への雨水の浸入を抑制する構成が記載されている。また、特許文献2には、吸気ダクトに水を吸収する吸水性を有する吸音材を設ける構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6690507号公報
【文献】特開2016-117450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、吸気口からの液体の浸入は抑制できるものの、吸気ダクト内で結露水が発生すると、結露水がファン及びバッテリに浸入する虞がある。また、特許文献2では、塵埃が吸音材表面に堆積したとき、吸音材の吸水性能が低下し、吸音材で吸水できなかった液体がファン及びバッテリに浸入する虞がある。前述のとおり、比較的多量の液体がファン及びバッテリに浸入するとファン及びバッテリの故障に繋がるので、吸気流路内で液体を適切に保水できる構成が要望される。
【0007】
本発明は、ファン及びバッテリの上流側に設けられた吸気流路内で液体を適切に保水できるバッテリ冷却機構を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
車両に搭載されるバッテリを冷却するバッテリ冷却機構であって、
吸込口が下方を向いた状態で配置され、前記バッテリに冷却空気を送風するファンと、
前記ファンの前記吸込口に接続され、前記冷却空気が流れる吸気流路と、を備え、
前記吸気流路は、
前記ファンの前記吸込口に対向し、保水性を有する吸音材が設けられた液体貯留部と、
前記液体貯留部よりも上流側に設けられ、前記ファンの前記吸込口に向かって傾斜する傾斜面と、
前記傾斜面の下流端と前記液体貯留部との間に設けられた段差部と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ファン及びバッテリの上流側に設けられた吸気流路内で液体を適切に保水できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】車両1の後部座席2の下方に配置されたバッテリパック10を示す図である。
【
図2】サイドフレーム5に固定されたバッテリパック10の上面図である。
【
図4】本発明の一実施形態のバッテリ冷却機構40のファン41及び吸気流路60の断面図である。
【
図6】吸気流路60を流れる冷却空気、液体、及び塵埃の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のバッテリ冷却機構の一実施形態について、添付図面に基づいて説明する。なお、図面は、符号の向きに見るものとする。また、本明細書等では説明を簡単且つ明確にするために、前後、左右、上下の各方向は、車両の運転者から見た方向に従って記載し、図面には、車両の前方をFr、後方をRr、左方をL、右方をR、上方をU、下方をD、として示す。
【0012】
図1及び
図2に示すように、本発明の一実施形態であるバッテリ冷却機構40が設けられるバッテリパック10は、例えば車両1の後部座席2及び荷室4の下方に配置される。具体的には、後部座席2及び荷室4の下方には、凹部が設けられており、バッテリパック10は、左右方向の両端部に設けられた車体固定部91、92が車体の一対のサイドフレーム5に固定された状態で、凹部内に配置される。車両1は、例えばハイブリッド車、バッテリ式電気自動車、燃料電池車等の電動車両である。
【0013】
バッテリパック10には吸気ダクト16及び排気ダクト18が接続されている。車室内の冷却空気は、吸気ダクト16からバッテリパック10内に導入されて後述するバッテリモジュール20を冷却した後、排気ダクト18から車室へ排出される。吸気ダクト16は、一端がバッテリパック10の前面右側に設けられた吸気ダクト接続部15に接続される。また、吸気ダクト16の他端には、右方に開口した吸気入口16aが設けられる。排気ダクト18は、一端がバッテリパック10の前面左側に設けられた排気ダクト接続部17に接続され、後部座席2の下方に配置される。
【0014】
図3に示すように、バッテリパック10は、2つのバッテリモジュール20と、バッテリECU(Electronic Control Unit)21と、ジャンクションボックス23と、バッテリ冷却機構40と、これらを収容するケース11と、を備える。
【0015】
(ケース)
ケース11は、バッテリパック10の外観を構成し、バッテリモジュール20等を収容する。ケース11は、トレイ形状を有するケース本体12と、ケース本体12を上方から覆うカバー13と、を有する。カバー13は、外縁部が不図示のシール部材(例えばゴム発泡体)を介してケース本体12の外縁部に対向して配置され、各種部品が搭載されたケース本体12を上方から覆う。
【0016】
(バッテリモジュール)
2つのバッテリモジュール20は、ケース本体12の左側に配置される。各バッテリモジュール20は、バッテリセル(不図示)が左右方向に複数積層されて構成される。2つのバッテリモジュール20は、不図示の電気接続部材を介して互いに電気的に接続される。バッテリモジュール20に蓄えた電力は、車両1の駆動源となるモータ等に供給される。
【0017】
2つのバッテリモジュール20は、前後方向に離間して配置され、これらの間には後述する下流側送風ダクト51が設けられる。
【0018】
2つのバッテリモジュール20の左右両端部には左右一対のバッテリブラケット25、27が設けられている。左側バッテリブラケット25は、バッテリモジュール20の左側端部に取り付けられる。左側バッテリブラケット25は、車体のサイドフレーム5に固定される車体固定部91を有する。右側バッテリブラケット27は、バッテリモジュール20の右側端部に取り付けられる。右側バッテリブラケット27は、車体のサイドフレーム5に固定される車体固定部92を有する。車体固定部91、92は、ボルト挿通穴を有し、バッテリパック10をサイドフレーム5に対して固定する固定点である(
図2参照)。
【0019】
このようにして、2つのバッテリモジュール20は、左側バッテリブラケット25及び右側バッテリブラケット27により、一体的に車体のサイドフレーム5に支持される。また、左側バッテリブラケット25及び右側バッテリブラケット27はケース11に固定され、ケース11はサイドフレーム5に支持されたバッテリモジュール20を下方から収容する。
【0020】
(バッテリECU)
バッテリECU21は、バッテリモジュール20の充電及び放電を制御する制御装置であり、プロセッサ、メモリ、インターフェース等を備える。バッテリECU21は、ファン41及び右側バッテリブラケット27の上方に設けられたECU固定ブラケット22に載置される。
【0021】
(ジャンクションボックス)
ジャンクションボックス23は、バッテリモジュール20と外部機器(不図示)とを電気的に接続し、バッテリモジュール20の充電電力及び放電電力が流れる配線部品を含む。ジャンクションボックス23は、バッテリモジュール20の上面に取り付けられたジャンクションボックスブラケット24に載置される。
【0022】
(バッテリ冷却機構)
バッテリ冷却機構40は、ファン41と、送風流路50と、吸気流路60と、を備える。
【0023】
ファン41は、バッテリモジュール20よりも上流側に配置されており、バッテリパック10の外部から冷却空気を吸気し、バッテリモジュール20に冷却空気を送風する。ファン41は、例えばシロッコファンである。ファン41は、下方に開口した吸込口42と、遠心方向に設けられた吹出口43と、を有する。吸込口42は、吸気流路60に接続され、吹出口43は、送風流路50に接続される。
【0024】
ファン41の下方には、右側バッテリブラケット27が設けられている。
図4に示すように、右側バッテリブラケット27は、ファン41の吸込口42に連通する開口27aを有し、吸込口42が下方を向いた状態でファン41を下方から支持する。ファン41は、吸込口42が後述する吸気流路60の傾斜面65に向くように水平面に対して傾斜して設けられる。また、右側バッテリブラケット27と後述する吸気ダクト61との間には、シール部材45が設けられており、右側バッテリブラケット27の開口27aと吸気ダクト61とが気密に連通する。シール部材45は、気体が不透過な材料で形成されており、例えばゴム発泡体である。
【0025】
送風流路50は、ファン41よりも下流側に設けられ、ファン41から送風された冷却空気をバッテリモジュール20へ送風する。送風流路50は、2つのバッテリモジュール20の間に配置され、バッテリモジュール20に冷却空気を供給する下流側送風ダクト51と、ファン41の吹出口43と下流側送風ダクト51とに接続され、ファン41から送風された冷却空気を下流側送風ダクト51へ案内する上流側送風ダクト52と、を有する。下流側送風ダクト51は、隣り合うバッテリセル間の隙間(セル間流路とも称する)に連通し、冷却空気がセル間流路に流れることで、バッテリモジュール20が冷却される。
【0026】
吸気流路60は、ファン41よりも上流側に設けられ、車室から吸気された冷却空気が流れる流路である。吸気流路60は、吸気ダクト接続部15とファン41の吸込口42とに接続される。本実施形態では、吸気流路60は、ケース11の内側に配置される吸気ダクト61により構成される。
【0027】
以下、吸気流路60の詳細について、
図4及び
図5を参照して説明する。なお、
図5では、吸気ダクト61の内側構造(すなわち吸気流路60)を見えるようにするために、吸気ダクト61の上面は図示を省略している。
【0028】
吸気流路60は、入口部62と、中間部63と、液体貯留部64と、傾斜面65と、段差部66と、を有する。
【0029】
入口部62は、吸気ダクト接続部15において、ケース11の外側に設けられる吸気ダクト16に接続される。吸気ダクト16の吸気入口16aから流れた冷却空気は、入口部62から吸気流路60に導入される。入口部62は、水平方向に延在する。
【0030】
中間部63は、入口部62と液体貯留部64とに接続される。中間部63は、上下方向に延在し、上端部が入口部62に接続され、下端部が水平方向に延在する液体貯留部64に接続される。中間部63は、入口部62から導入された冷却空気の流れ方向を変化させる上流側屈曲部63a及び下流側屈曲部63bを有する。上流側屈曲部63aは、中間部63の上端部に設けられ、入口部62から水平方向に流れる冷却空気の流れを下方向へ変化させる。また、下流側屈曲部63bは、中間部63の下端部に設けられ、中間部63を下方向に流れる冷却空気の流れを水平方向へ変化させ、冷却空気を液体貯留部64へ案内する。
【0031】
液体貯留部64は、中間部63とファン41の吸込口42とに接続され、吸込口42に対向する。液体貯留部64は、吸気流路60に存在する液体がファン41に吸い込まれないように、液体を貯留する。液体は、例えば、冷却空気と共に吸気流路60に浸入する雨水や、吸気流路60内で発生する結露水である。
【0032】
液体貯留部64は、ファン41の吸込口42に対向する底部641と、底部641の周縁部から立設された側壁部642と、を有する。液体貯留部64は、底部641及び側壁部642により囲まれて形成される。底部641と吸込口42とは、底部641に貯留された液体がファン41の駆動時に吸い込まれない程度に離間している。
【0033】
液体貯留部64には、吸音材70が設けられる。吸音材70は、例えば、ウレタンフォームや不織布である。吸音材70は、ファン41の駆動時に発生する駆動音や冷却空気が流れる時に発生する流体音の音響エネルギーを吸収する。よって、吸気流路60及び吸気ダクト16を通って車室に漏れるファン41の駆動音や流体音が低減される。また、吸音材70は、保水性を有し、液体貯留部64に流れた液体を保水する。
【0034】
吸音材70は、底部641に設けられた底面吸音材71と、側壁部642に沿って設けられた側面吸音材72と、を有する。底面吸音材71及び側面吸音材72は、それぞれ底部641及び側壁部642を覆うように設けられる。底面吸音材71の表面積は、側面吸音材72の表面積よりも大きく構成される。なお、
図5では、底面吸音材71の図示を省略している。
【0035】
液体貯留部64には、底部641から立設された複数の突出部643が設けられている。複数の突出部643は、側壁部642から所定の距離を空けて、側壁部642に沿って設けられている。
図5に示す一例では、各突出部643は、側壁部642に沿って設けられた板形状を有する。各突出部643の高さは、底面吸音材71の厚さと略同一であり、また、側面吸音材72の高さよりも小さい。側面吸音材72は、複数の突出部643及び側壁部642により挟まれて支持される。なお、各突出部643は、板形状に限られず、ピン形状を有してもよい。
【0036】
複数の突出部643は、互いに離間して配置されており、隣り合う突出部643には隙間が形成されている。詳細は後述するが、当該隙間は連通部644を構成し、側面吸音材72で保水された液体が連通部644を通って、底面吸音材71へ流れる。
【0037】
また、複数の突出部643の一部には、底面吸音材71を上方から押さえる押さえ部645が設けられている。押さえ部645は、突出部643の上端から側壁部642とは反対側に延出している。底面吸音材71が底部641に設けられたとき、底面吸音材71の上面は押さえ部645に当接する。
【0038】
傾斜面65は、液体貯留部64よりも上流側に設けられ、ファン41の吸込口42に向かって傾斜する。より詳細には、傾斜面65は、液体貯留部64と中間部63の下流側屈曲部63bとの間に設けられており、傾斜面65の仮想延長線が吸込口42を通過するように傾斜する。
【0039】
段差部66は、傾斜面65の下流端(すなわち上端)と液体貯留部64との間に設けられている。液体貯留部64の底部641は、傾斜面65の上端よりも下方に位置し、段差部66は、傾斜面65の上端と液体貯留部64の底部641とに接続される。段差部66の高さは、複数の突出部643の高さ及び底面吸音材71の厚さと略同一であり、底面吸音材71は、段差部66及び複数の突出部643で囲まれた空間に嵌め込まれる。本実施形態では、傾斜面65及び段差部66は、吸気ダクト61の下面の一部を吸気流路60側に突出させることにより形成される。
【0040】
続いて、吸気流路60を流れる冷却空気、液体、及び塵埃の流れについて、
図6を参照して説明する。なお、
図6では、説明の便宜上、塵埃及び液体を実際よりも大きく図示している。
【0041】
冷却空気は、破線矢印で示すように、車室から吸気流路60に流入し、中間部63の上流側屈曲部63a及び下流側屈曲部63bにおいて流れ方向が変化した後、傾斜面65に沿ってファン41の吸込口42に向かって流れる。
【0042】
冷却空気と共に車室から吸気流路60に流入した液体や、吸気流路60内で結露により発生した液体は、冷却空気の流れに沿って吸気流路60を流れる。ファン41の吸込口42は下方を向いており、液体貯留部64の底部641と吸込口42とは所定の距離を空けて設けられているので、吸気流路60を流れる比較的多量の液体は、実線矢印で示すように、ファン41に吸い込まれず、液体貯留部64に設けられた吸音材70に保水される。
【0043】
冷却空気と共に車室から吸気流路60に流入した塵埃は、冷却空気の流れに沿って吸気流路60を流れる。比較的微量の塵埃は、比較的微量の液体と共に、傾斜面65により吸込口42に向かって飛ばされ、ファン41に吸い込まれる。よって、塵埃と液体との混合物が液体貯留部64に堆積して吸音材70が目詰まりし、吸音材70の保水性能や吸音性能が低下することを抑制できる。
【0044】
このように、吸気流路60が液体貯留部64、傾斜面65、段差部66、及び吸音材70を有する構成により、ファン41及びバッテリモジュール20の上流側に設けられた液体貯留部64において液体を適切に保水することができ、比較的多量の液体がファン41及びバッテリモジュール20に浸入することを抑制できる。これにより、多量の液体の浸入が原因でファン41が故障したり、バッテリモジュール20が短絡したりすることを防止できる。
【0045】
液体貯留部64における液体の流れについて詳しく説明する。ファン41には吸い込まれずに傾斜面65に沿って液体貯留部64に飛ばされた液体は、吸音材70に保水され、貯留される。前述のとおり、吸音材70の目詰まりの原因となる塵埃と液体との混合物は、液体貯留部64に堆積せずにファン41に吸い込まれるので、吸音材70の保水性能が十分確保される。よって、吸音材70に保水されずに液体貯留部64に留まる液体がファン41に吸い込まれることを抑制できる。
【0046】
また、吸音材70に保水された液体は、時間経過とともに蒸発し、これにより、吸音材70の保水性能が維持される。
【0047】
また、傾斜面65に沿って飛ばされた液体の多くは、側面吸音材72に当たって保水されるが、側面吸音材72に保水された液体は、連通部644を通って底面吸音材71へと流れる。底面吸音材71は側面吸音材72よりも表面積が大きいので、底面吸音材71では液体の蒸発量が多い。よって、側面吸音材72に保水された液体を底面吸音材71へと流すことで、蒸発量が比較的少ない側面吸音材72の保水性能を低下させずに維持することができる。
【0048】
以上、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0049】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。括弧内には上記した実施形態において対応する構成要素等を一例として示しているが、これに限定されるものではない。
【0050】
(1) 車両(車両1)に搭載されるバッテリ(バッテリモジュール20)を冷却するバッテリ冷却機構(バッテリ冷却機構40)であって、
吸込口(吸込口42)が下方を向いた状態で配置され、前記バッテリに冷却空気を送風するファン(ファン41)と、
前記ファンの前記吸込口に接続され、前記冷却空気が流れる吸気流路(吸気流路60)と、を備え、
前記吸気流路は、
前記ファンの前記吸込口に対向し、保水性を有する吸音材(吸音材70)が設けられた液体貯留部(液体貯留部64)と、
前記液体貯留部よりも上流側に設けられ、前記ファンの前記吸込口に向かって傾斜する傾斜面(傾斜面65)と、
前記傾斜面の下流端と前記液体貯留部との間に設けられた段差部(段差部66)と、を有する、
バッテリ冷却機構。
【0051】
(1)によれば、ファンは吸込口が下方を向いた状態で配置されているので、冷却空気と共に吸気流路を流れる比較的多量の液体は、ファンには吸い込まれず、液体貯留部に設けられた吸音材に保水される。また、冷却空気と共に吸気流路を流れる塵埃及び比較的微量の液体は傾斜面によりファンに向かって飛ばされて吸い込まれるので、塵埃及び液体の混合物が吸音材に堆積することによる吸音材の保水性能及び吸音性能の低下が抑制される。よって、ファン及びバッテリの上流側に設けられた吸気流路内において液体を適切に保水でき、比較的多量の液体がファン及びバッテリに浸入することを抑制できる。
【0052】
(2) (1)に記載のバッテリ冷却機構であって、
前記吸音材は、前記液体貯留部の底部(底部641)に設けられ、保水性を有する第1吸音材(底面吸音材71)を含む、
バッテリ冷却機構。
【0053】
(2)によれば、ファンに吸い込まれずに液体貯留部に流れた比較的多量の液体を、液体貯留部の底部に設けられた第1吸音材により適切に保水できる。また、第1吸音材はファンと対向する液体貯留部の底部に設けられているので、ファンの駆動音を効果的に吸音できる。
【0054】
(3) (2)に記載のバッテリ冷却機構であって、
前記液体貯留部は、前記底部の周縁部から立設された側壁部(側壁部642)に囲まれており、
前記吸音材は、前記側壁部に沿って設けられ、保水性を有する第2吸音材(側面吸音材72)を含む、
バッテリ冷却機構。
【0055】
(3)によれば、ファンに吸い込まれずに傾斜面から側壁部に向かって飛ばされた比較的多量の液体を第2吸音材により保水できる。
【0056】
(4) (3)に記載のバッテリ冷却機構であって、
前記第1吸音材の表面積は、前記第2吸音材の表面積よりも大きく、
前記液体貯留部には、前記第2吸音材で保水された液体が前記第1吸音材へ流れる連通部(連通部644)が設けられる、
バッテリ冷却機構。
【0057】
(4)によれば、第2吸音材で保水された液体は連通部を通って第1吸音材へ流れるので、表面積が大きく蒸発しやすい第1吸音材で多くの液体を蒸発させることができる。よって、第2吸音材の保水性能を保つことができる。
【0058】
(5) (4)に記載のバッテリ冷却機構であって、
前記第2吸音材は、前記液体貯留部の前記底部から立設された複数の突出部(突出部643)と前記側壁部とにより挟まれて支持され、
前記複数の突出部は、互いに離間して配置され、
前記連通部は、隣り合う突出部の隙間により構成される、
バッテリ冷却機構。
【0059】
(5)によれば、第2吸音材を支持する複数の突出部により連通部を形成することができる。
【0060】
(6) (1)から(5)のいずれかに記載のバッテリ冷却機構であって、
前記吸気流路は、前記傾斜面の上流側に前記冷却空気の流れ方向を変化させる屈曲部(上流側屈曲部63a、下流側屈曲部63b)をさらに有する、
バッテリ冷却機構。
【0061】
(6)によれば、吸気流路に導入された冷却空気がファンの吸込口まで直進しないので、比較的多量の液体が冷却空気と共に勢いよく傾斜面からファンに向かって飛ばされることを抑制できる。
【符号の説明】
【0062】
1 車両
20 バッテリモジュール(バッテリ)
40 バッテリ冷却機構
41 ファン
42 吸込口
60 吸気流路
63a 上流側屈曲部(屈曲部)
63b 下流側屈曲部(屈曲部)
64 液体貯留部
641 底部
642 側壁部
643 突出部
644 連通部
65 傾斜面
66 段差部
70 吸音材
71 底面吸音材(第1吸音材)
72 側面吸音材(第2吸音材)