(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】二重基準の燃料キャニスタシステム
(51)【国際特許分類】
G21F 9/36 20060101AFI20241120BHJP
G21F 5/008 20060101ALI20241120BHJP
G21F 5/10 20060101ALI20241120BHJP
G21C 19/32 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
G21F9/36 501G
G21F9/36 501F
G21F9/36 501H
G21F5/008
G21F5/10 P
G21C19/32 040
G21C19/32 110
(21)【出願番号】P 2023101475
(22)【出願日】2023-06-21
(62)【分割の表示】P 2020540713の分割
【原出願日】2019-01-25
【審査請求日】2023-06-21
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】ロイド、ティモシー、エム
(72)【発明者】
【氏名】クィン、ロバート、ディー
(72)【発明者】
【氏名】ゴンザレス、ヘルナンデス、エミリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】メルシエ、エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】カバレイロ、ダビド、カストリジョン
【審査官】坂上 大貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-022881(JP,A)
【文献】特開2002-048893(JP,A)
【文献】特開平09-197083(JP,A)
【文献】特開昭48-58299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/00-9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済原子燃料のモジュール型キャニスタシステムであって、
外側キャスク(112、212、412、512)であって、当該外側キャスク(112、212、412、512)の各々が内部エンベロープ(116、216)を画定することを特徴とする外側キャスク(112、212、412、512)と、
内側キャニスタ(142、242、342)であって、当該内側キャニスタ(142、242、342)の各々が複数の使用済原子燃料集合体を貯蔵するキャニスタハウジング(144、244)を具備するとともに、外部エンベロープ(146、246)を画定し、当該内側キャニスタ(142、242、342)の各々の外部エンベロープ(146、246)は、当該内側キャニスタ(142、242、342)のいずれもが当該外側キャスク(112、212、412、512)のいずれの内部エンベロープ(116、226)にも
入れ替え可能であって、且つ挿入可能
な大きさである、内側キャニスタ(142、242、342)と
を具備し、
当該内側キャニスタ(142、242、342)は、
第1のキャニスタ(142、342)と、
第2のキャニスタ(242)と
を具備しており、
当該第1のキャニスタ(142、342)は、+
外壁(348)と、
当該外壁(348)の内側に同心円状に離隔したキャニスタ内壁(368)と、
当該外壁(348)から半径方向外向きに延びる第1の放熱フィン(150、350)と、
当該キャニスタ内壁(368)から半径方向内向きに延びる第2の放熱フィン(370)を含むものであり、
当該第1のキャニスタ(142、342)は貯蔵された使用済原子燃料集合体を当該第2のキャニスタ(242)よりも急速に冷却することが可能であり、当該第2のキャニスタ(242)は当該第1のキャニスタ(142、342)よりも多くの使用済原子燃料集合体を貯蔵することが可能である
使用済原子燃料のモジュール型キャニスタシステム。
【請求項2】
前
記放熱フィン(150、350)は前記第1のキャニスタ(142、342)の前記外部エンベロープ(146)を画定することを特徴とする、請求項1の使用済原子燃料のモジュール型キャニスタシステム。
【請求項3】
前記外壁(148、348)は、互いに反対側で頂部(152)および底部(154)を有し、前記放熱フィン(150、350)は当該頂部(152)付近から当該底部(154)付近へ長手方向に延びていることを特徴とする、請求項2の使用済原子燃料のモジュール型キャニスタシステム。
【請求項4】
前記第1のキャニスタ(142)のキャニスタハウジング(144)は前記使用済原子燃料を受容する第1の区画(164)を備えるとともに、前記第2のキャニスタ(242)のキャニスタハウジング(244)は前記使用済原子燃料を受容する第2の区画(274)を備えており、当該第2の区画(274)の数は当該第1の区画(164)の数よりも多いことを特徴とする、請求項2の使用済原子燃料のモジュール型キャニスタシステム。
【請求項5】
前記第1のキャニスタ(
342)のキャニスタハウジン
グは前記第1の区画を
8個備えており、前記第2のキャニスタ(242)のキャニスタハウジング(244)は前記第2の区画を37個備えていることを特徴とする、請求項4の使用済原子燃料のモジュール型キャニスタシステム。
【請求項6】
前記第1のキャニスタ(142)のキャニスタハウジング(144)が母材金属構造材で構成された構造壁を備える、請求項4の使用済原子燃料のモジュール型キャニスタシステム。
【請求項7】
前記第1のキャニスタ(142)のキャニスタハウジング(144)が中性子毒物を含む構造壁を備える、請求項4の使用済原子燃料のモジュール型キャニスタシステム。
【請求項8】
前記中性子毒物はホウ素である、請求項7の使用済原子燃料のモジュール型キャニスタシステム。
【請求項9】
前記第2のキャニスタ(242)の前記第2の区画(274)は、中性子毒物が存在しない材料で構成された燃料セル壁部によって画定される、請求項7の使用済原子燃料のモジュール型キャニスタシステム。
【請求項10】
前記外側キャスク(112、212、412、512)は貯蔵オーバーパック(112、212)、移送キャスク(512)および輸送キャスク(412)を含む、請求項1の使用済原子燃料のモジュール型キャニスタシステム。
【請求項11】
前記貯蔵オーバーパック(112、212)は換気ダクト系(130、230)を含む、請求項10の使用済原子燃料のモジュール型キャニスタシステム。
【請求項12】
前記換気ダクト系(130、230)は、
前記貯蔵オーバーパック(112、212)の下部に設けられた吸気口(132、232)と、
前記貯蔵オーバーパック(112、212)の上部に設けられた排気口(134、234)と、
前記貯蔵オーバーパック(112、212)の内側と前記貯蔵オーバーパック(112、212)の外側との間に画定され、当該吸気口(132、232)から当該排気口(134、234)へ延びるダクト(136、236)と
を具備する、請求項11の使用済原子燃料のモジュール型キャニスタシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2018年1月26日出願の「DUAL-CRITERION FUEL CANISTER SYSTEM」と題する米国仮特許出願第62/622,351号に基づく優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は概して使用済原子燃料貯蔵システムに関し、具体的には、使用済原子燃料の乾式貯蔵システムに関する。
【背景技術】
【0003】
図1は、加圧水型原子炉に原子燃料を供給するための典型的な燃料集合体20を示す。燃料集合体20は、下部ノズル22と上部ノズル24との間を細長い燃料棒26が延びる。各燃料棒26は、市販の「ジルカロイ-4」のようなジルコニウム合金製の円筒状ハウジングの中にU-235を濃縮した核分裂性燃料ペレットが充填してある。燃料棒26の集合体を構成するノズル22と24の間には、制御棒(図示せず)および計測器(図示せず)を移動可能に収容する案内管(図示せず)が配置されている。これらの案内管の端部はノズル22、24に固着されて燃料棒26を支持する骨組み構造を形成するが、燃料棒はノズル22、24に恒久的に固着されない。格子部材28は、その開口を貫通する燃料棒26および案内管のような要素を一体的に束ねる。市販の燃料集合体は、具体的な設計によるが、179~264本の燃料棒を含む。例えば、典型的なPWR燃料集合体の長さは約4.1メートル、幅は約19.7センチメートル、質量は約585キログラムである。
【0004】
燃料集合体20は、加圧水型原子炉(PWR)では通常4~5年の耐用年数を経過すると、U-235濃縮度が低下した減損燃料となる。また、燃料棒26の中には様々な半減期を有する多種多様な核分裂生成物が存在する。これらの核分裂生成物は、集合体20が原子炉から取り出されると強い放射能および熱を発するため、ホウ素塩を水に溶解させたプール内へ集合体20を移送して、短期的に貯蔵保管する。そのようなプールを、
図2において参照符号30で示す。
【0005】
プール30の典型的な深さは12.2メートルである。プール30の底部に配置された多数の使用済燃料ラック32は、燃料集合体20を垂直に収容するための貯蔵スロット34を備えている。キャスクパッド36は、プール30の底部に位置する。
【0006】
燃料棒26内の使用済燃料の組成は、燃料集合体20がプール30に貯蔵されている間に変化する。半減期の短い同位体が崩壊すると、その結果として、比較的半減期の長い核分裂生成物の割合が増加する。したがって、燃料集合体20における放射能や熱の発生レベルは、ある期間は比較的急速に減少し、最終的には、熱や放射能が非常にゆっくり減少する状態に到達する。しかし、熱や放射能の発生レベルがこのように低くなっても、燃料棒26を無期限に環境から確実に隔離する必要がある。
【0007】
乾式貯蔵キャスクは、使用済燃料を長期貯蔵する一形態である。プール30内に例えば10年間貯蔵した後、燃料集合体20が発生する熱が例えば1体当たり0.5~1.0キロワットのような所定量まで低下したら、開かれたキャスクが使用済燃料プール内に下ろされる。遠隔制御により、使用済燃料をキャスク内へ移送した後、キャスクをプール30から取り出して、封止し、使用済燃料プールの水を排出する。次いで、長期貯蔵のために、キャスクを適切に処理し、地上の貯蔵場所へ輸送する。
【0008】
そのようなキャスクにはかなり厳しい要件が課される。キャスクは、長期貯蔵中に化学腐食に耐えなければならない。さらに、キャスクは、長期貯蔵中や輸送中に手荒い取り扱いを受けたり落下などの事故に遭遇したとしても如何なる軽微な破裂や破損も生じることがないように、十分な機械的堅牢性を備える必要がある。キャスクはさらに、使用済燃料からの放射線を環境に対して遮蔽する一方で、使用済燃料が発生する熱を環境へ伝達しなければならない。燃料棒26の温度は、ジルコニウム合金製ハウジングの劣化を防ぐために、例えば400℃のような最高温度以下に保つ必要がある。また、キャスク内で連鎖反応が持続しないように、すなわち、自己持続型反応が起きないように、実効臨界係数Keffを1未満に確実に保つ措置を講じる必要がある。このような要件は、完全に信頼できる態様で貯蔵機能を果たさなければならないキャスクに対して厳しい要求を課す。
【0009】
モジュール型乾式使用済燃料キャニスタシステムは、内側の、タイプの異なる幾つかのキャニスタ(典型的には溶接ステンレスまたは炭素鋼製の直円筒容器)のうちの1つを、内側キャニスタの貯蔵段階に応じて、外側のキャスクの系統のうちの1つのキャスク内に装填することが可能なシステムである。この外側キャスクの系統は、典型的には、長期の乾式貯蔵向けの貯蔵オーバーパック、燃料集合体を使用済燃料プールから移送するための移送キャスク、および燃料集合体を別の貯蔵場所へ輸送するための輸送キャスクを含む。モジュール型システムでは、様々なキャニスタを、様々なタイプの外側キャスクに入れ替え可能に装填することができる。
【0010】
現在入手可能なモジュール型使用済燃料キャニスタシステムは、いずれかのタイプの使用済燃料(例えばBWR、PWR、PWRXLもしくはVVER燃料)またはクラスCを超える廃棄物(GTCC)向けに設計された内側キャニスタを提供する。本願の発明者は、様々なキャニスタを、ただ単に、貯蔵される使用済放射性廃棄物のタイプでなくて、貯蔵されるその高レベル廃棄物にピンポイントに適用される工学的目標または基準に合わせて設計すれば、当業界にとってより有益であると認識している。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、原子力機器の乾式貯蔵システムを提供することにより、前述の目的を達成する。原子力機器の当該乾式貯蔵システムは、貯蔵オーバーパック、移送キャスクおよび輸送キャスクを含む複数の外側のキャスクより成る外側キャスクシステムであって、いずれの外側キャスクも内面が類似の輪郭形状を有する外側キャスクシステムを含む。原子力機器の当該乾式貯蔵システムはまた、複数の内側のキャニスタより成る内側キャニスタシステムであって、当該内側キャニスタはそれぞれ照射済み原子力発電所構成機器または高レベル廃棄物を共通の工学的目標または基準で貯蔵するように構成されており、外部エンベロープが当該外側キャスクの内面の当該輪郭形状に適合する内側キャニスタシステムを含む。一実施態様において、当該工学的目標または基準は、多数の照射済み原子力発電所構成機器または多量の高レベル廃棄物を貯蔵するように構成された大容量キャニスタである。この目標だけに焦点を絞ると、キャニスタを簡素化することが可能になり、実質的なコスト削減につながる可能性がある。これは、例えば、燃焼度クレジットを活用することによって実現できるが、その理由は最小燃焼度のような基準は様々な場所について設定できるからである。後続の輸送作業時に減速材を排除したり、使用済燃料プールへの装填時に可能ならホウ酸に対してクレジットを適用したりすると、この簡素化は、不要な中性子吸収材を無くせる可能性を含む。
【0012】
別の実施態様では、当該共通の工学的目標または基準は最小冷却時間キャニスタであって、当該最小冷却時間キャニスタを新たな場所へ移動する前に経過する必要のある当該冷却時間または当該放射能減衰時間を、当該新たな場所の崩壊熱の要件および能力を満たすべく大幅に短縮するように構成された最小冷却時間キャニスタである。そのような実施態様において、原子力機器の当該乾式キャニスタシステムは、当該内側キャニスタと当該外側キャスクとの間に、当該内側キャニスタから熱を除去するように構成された換気ダクト系を含んでよい。そのような一実施態様において、換気ダクト系は、外側キャスクの下部に設けられた吸気口と、外側キャスクの上部に設けられた排気口と、当該吸気口から当該排気口へ、当該外側キャスクの内側と当該内側キャニスタの外側との間を延びるダクトとを含む。そのような実施態様は、当該内側キャニスタの外壁から当該ダクト内へ外向きに延びるフィンを備えてもよい。当該フィンは、当該内側キャニスタに支持されるのが好ましい。
【0013】
使用済燃料の冷却時間を最短にするという工学的目標に焦点を絞ると、燃料の貯蔵期間を1.5年という短期間にすることができる。これだけ短期間であれば、崩壊熱に如何に対処するかという問題を、実質的に時間と共に変化する問題、すなわち過渡的な問題として考えることに魅力がある。非限定的な一研究例は、1.5年の減衰時間において、使用済燃料集合体の崩壊熱が1カ月に約10%減衰することを示している。このような環境において、崩壊熱の問題に対処できる新しいツールがある。例えば、キャニスタに装填する燃料の量を変化させて、装填の過程で集合体の数を増やすことができる。キャニスタの構成が16~21体の集合体を収容する21スロットである一実施例では、比較的短い装填期間中に順次装填するキャニスタが受け容れる集合体の数を増加させる。したがって、後期のキャニスタは初期のキャニスタよりも多くの使用済燃料集合体を収容することになる。冷却時間をさらに短縮することも可能であるが、現在の業界や規制当局の考え方は、1.5年が現行では最小の減衰時間である。
【0014】
当該内側キャニスタは、外壁の内側に同心円状に離隔した内壁があって、当該貯蔵キャニスタ空間を囲い込むように各端部に平板が配置された形状(以下、「表面積増強型キャニスタ形状」と称する)であり、フィンが当該内壁から、当該内壁に囲まれ外部環境に開口した概して開放的な空間内へ概して半径方向内向きに延びるように構成されている。そのような一実施態様において、当該ダクトは、当該外側キャスクと当該内側キャニスタとの間の環状通路である。
【0015】
原子力機器の乾式キャニスタシステムは、照射済み原子力発電所構成機器または高レベル廃棄物の装填時に内側キャニスタを冷却するように構成された能動的冷却系をさらに含んでよい。そのような一実施態様において、当該能動的冷却系は、当該内側キャニスタを介してヘリウムを吸引する。また、当該内側キャニスタは、ヘリウムによって加圧してもよい。その場合、ヘリウムの圧力を大気圧より若干高くする。
【0016】
さらに別の実施態様において、当該内側キャニスタの壁は、複合母材金属構造材から構成される。当該複合母材金属構造材は、金属母材複合材を含むのが好ましい。当該内側キャニスタは、2つの同心円状の壁が垂直方向に延びる表面積増強型キャニスタ形状でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の詳細を、好ましい実施態様を例にとり、添付の図面を参照して以下に説明する。
【0018】
【
図1】加圧水型原子炉の典型的な燃料集合体の立面図である。
【0019】
【
図2】使用済燃料集合体の短期貯蔵用プールの上面図である。
【0020】
【
図3A】本発明の非限定的な一実施態様に基づく原子力機器の乾式処理設備の外側キャスクおよび内側キャニスタの詳細を、外側キャスクの一部を破断して示す等角図である。
【0021】
【0022】
【
図3C】
図3Aの原子力機器の乾式処理設備の断面立面図である。
【0023】
【0024】
【
図4A】本発明の別の非限定的な一実施態様に基づく原子力機器の別の乾式処理設備の外側キャスクおよび内側キャニスタの詳細を、外側キャスクの一部を破断して示す等角図である。
【0025】
【0026】
【
図4C】
図4Aの原子力機器の乾式処理設備の断面立面図である。
【0027】
【0028】
【
図5A】
図3A~3Dの原子力機器の乾式処理設備の内側キャニスタの内部の詳細を、外部の一部を破断して示す等角断面図である。
【0029】
【0030】
【
図5C】
図5Bの内側キャニスタを蓋を取り外した状態で示す上面図である。
【0031】
【
図5D】
図5Cの内側キャニスタの好ましい実施態様を示す断面図である。
【0032】
【0033】
【
図6A】
図4A~4Dの原子力機器の乾式処理設備の内側キャニスタを、蓋を取り外した状態で示す概略上面図である。
【0034】
【
図6B】
図6Aの内側キャニスタの好ましい実施態様を示す別の上面図である。
【0035】
【
図7】本発明の別の非限定的な実施態様に基づく原子力機器の乾式処理設備で使用される外側キャスクの概略等角図である。
【0036】
【
図8】本発明の別の非限定的な実施態様に基づく原子力機器の乾式処理設備で使用される外側キャスクの内部の詳細を、一部を破断して示す概略等角図である。
【0037】
【
図9】本発明の別の非限定的な実施態様に基づく別の内側キャニスタを、内部に複数の原子燃料機器が配置された状態で示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図面についてさらに具体的に述べると、
図3A~3Dはそれぞれ、本発明の非限定的な一実施態様に基づく原子炉機器の乾式処理設備110の等角断面図、上面図、立面図および上面断面図である。
図3Aに明示されるように、設備110は、外側のキャスク(非限定的な例として貯蔵オーバーパック112)と、当該外側のキャスク内に選択的に配置された内側のキャニスタ142とを含む。貯蔵オーバーパック112は、内部エンベロープ116(図示の実施例ではほぼ円筒形)を画定するキャスクハウジング114を有する。キャスクハウジング114は概して、円筒形の本体(非限定的な例としてコンクリート製の本体118)と、本体118内におおむね同心円状に配置された管状の補助遮蔽シェル120と、例えばボルトや他の適切な結合機構によりコンクリート製本体118に選択的に結合された貯蔵蓋体122とを含むと言える。遮蔽シェル120は遮蔽機能を支援するが、これは高めの崩壊熱に関連する有意に高めの遮蔽線源を有するMCTC142にとって特に重要である。以下においてさらに詳しく述べるが、内側キャニスタ142は、或る量の照射済み原子力発電所構成機器または高レベル廃棄物(例えば複数のPWR燃料集合体および/または複数の沸騰水型原子炉(BWR)燃料集合体)を収容し貯蔵するように構成されたキャニスタハウジング144を有する。キャニスタハウジング144はさらに、貯蔵オーバーパック112の内部エンベロープ116内に収まるように構成された外部エンベロープ146(図示の実施例ではほぼ円筒形)を有する。以下に詳述するように、内側キャニスタ142は、最小冷却時間キャニスタ(MCTC)142として機能するように構成されている。
【0039】
引き続き
図3Aを参照すると、設備110は、内側キャニスタ142と貯蔵オーバーパック112との間に、内側キャニスタ142から熱を除去するように構成された換気ダクト系130をさらに含む。換気ダクト系130は、貯蔵オーバーパック112の下部に画定された吸気口132と、貯蔵オーバーパック112の上部に画定された排気口134と、吸気口132から排気口134へ、貯蔵オーバーパック112の内側(付番なし)と内側キャニスタ142の外側(付番なし)との間を延びるダクト136とを含む。一実施例において、ダクト136は、貯蔵オーバーパック112と内側キャニスタ142との間の環状流路である。この技術は、システムが自然対流を利用して内側キャニスタ142の表面から熱を除去する能力があることを表す。一実施態様では、貯蔵オーバーパック112の内壁とMCTC142の外壁との間に環状の間隙が設けられ、換気ダクト系130が内側キャニスタの表面および貯蔵オーバーパック112から熱を除去する。
【0040】
設備110は、照射済み原子力発電所構成機器または高レベル廃棄物を装填する際に内側キャニスタ142を冷却するための能動的冷却系(図示せず)をさらに含むことができる。この能動的冷却系は、内側キャニスタ142を介してヘリウムを吸引する構成のものでよい。高圧のヘリウムは、排熱と乾燥プロセスを促進する上で有利であり(例えば厳密な真空乾燥を用いる場合と比べて)、そのことは、乾燥作業において大きな熱的な利点をもたらす。
【0041】
図4A~4Dはそれぞれ、本発明の非限定的な一実施態様に基づく原子炉機器の乾式処理設備210の等角断面図、上面図、立面図および上面断面図である。
図4Aに明示されるように、設備210は、外側キャスク(非限定的な例として貯蔵オーバーパック212)と、当該貯蔵オーバーパック212内に選択的に配置された内側のキャニスタ242とを含む。貯蔵オーバーパック212は、内部エンベロープ216(図示の実施例ではほぼ円筒形)を画定するキャスクハウジング214を有する。キャスクハウジング214は概して、円筒形の本体(非限定的な例としてコンクリート製の本体218)と、例えばボルトや他の適切な結合機構によりコンクリート製本体218に結合される貯蔵蓋体222とを含むと言える。内側のキャニスタ242は、或る量の照射済み原子力発電所構成機器または高レベル廃棄物(例えば複数のPWR燃料集合体および/または複数の沸騰水型原子炉(BWR)燃料集合体)を収容し貯蔵するように構成されたキャニスタハウジング244を有する。キャニスタハウジング244はさらに、貯蔵オーバーパック212の内部エンベロープ216内に収まるように構成された外部エンベロープ246(図示の実施例では概して円筒形)を有する。以下に詳述するように、内側キャニスタ242は、大容量キャニスタ(HCC)242として機能するように構成されている。
【0042】
引き続き
図4Aを参照すると、設備210は、HCC242と貯蔵オーバーパック212との間に、HCC242から熱を除去するように構成された換気ダクト系230をさらに含む。換気ダクト系230は、貯蔵オーバーパック212の下部に画定された吸気口232と、貯蔵オーバーパック212の上部に画定された排気口234と、吸気口232から排気口234へ、貯蔵オーバーパック212の内側(付番なし)とHCC242の外側(付番なし)との間を延びるダクト236とを含む。一実施例において、ダクト236は、貯蔵オーバーパック212とHCC242との間の環状通路である。
【0043】
図5A~5Eはそれぞれ、
図3A~3DのMCTC142の等角断面図、等角拡大図、上面図、断面図および拡大図である。図示のようにキャニスタハウジング144は、外壁148から複数の放熱フィン150が半径方向外向きに延びる。外壁148は、頂部152と、頂部152の反対側で遠位の底部154とを有し、好ましくは、放熱フィン150の大部分、より好ましくは実質的にその全てが、頂部152付近から底部154付近まで長手方向に延びている。さらに、
図5Dに明示されるように、外壁148は好ましくは円筒状で、この実施例の放熱フィン150は、外壁148に沿って実質的に等間隔である。さらに、この実施例では、MCTC142のエンベロープ146は、MCTC142内のヘリウムによって加圧された状態にある。ヘリウムの圧力は大気圧に近いが、大気圧よりわずかに大きいのが好ましい。
【0044】
再び
図5A、5Bを参照すると、MCTC142は、外壁148の内側に配置された複数の位置決め構造体160と、複数の区画164(複数の潜在的に空の位置165を含む)を画定する複数のプレート部材162とをさらに含む。区画164は、使用時には、或る量の照射済み原子力発電所構成機器または高レベル廃棄物(非限定的な例としてPWRおよびBWR燃料集合体)を貯蔵する構成であることがわかる。同様に、好ましい実施態様として、そのような燃料集合体を貯蔵しない潜在的に空の区画165を取って置くと、それ以外の区画164に貯蔵中の燃料集合体の冷却時間を短縮できる利点がある。
【0045】
本発明の目的の1つは、運転停止中か運転停止が間近に迫っており、廃炉のオプションが想定されている原子力発電所から、保管中の使用済原子燃料(SNF)を迅速に搬出できるようにすることである。発電所の既存の貯蔵施設(一般的には1つまたは複数の使用済燃料プール(SFPまたは「湿式貯蔵施設」とも呼ばれる))からの燃料の搬出は、コストを大幅に削減できる可能性があり、原子力発電所の廃炉に関する種々の決定、計画策定、関連作業を容易にすることにもなる。
【0046】
既存のモジュール型乾式使用済燃料キャニスタシステムの供給業者は、発電所貯蔵施設からの使用済燃料の搬出時間を短縮すると有利であることを認識しているようであるが、この搬出時間の短縮化は、これまでは使用済燃料の装填戦略の問題であって、本願に記載されるように冷却時間の短縮化に特化したキャニスタを開発する方向で取り組まれていたわけではない。MCTC142は、高熱で冷却時間の短い使用済原子燃料(SNF)を取り扱う原子力機器の乾式処理設備110(
図3A~3D)の能力を高めるために、例えば前述のようなフィン設計、小容量、換気ダクト系130(
図3A)、能動的冷却を含む多数の技術や、複合基質金属構造材などの別の技術と共に、潜在的に空の位置を設けたり、装填を時間と共に変化させたりする解決法や表面積増強型キャニスタ形状のキャニスタ設計を採用している。
【0047】
複合母材金属構造材に関して、MCTC142の構造壁を比較的少ない材料で構成して、材料の変遷が「サンドイッチ構造」に比べて少なくなるようにすると、熱伝達が改善される。さらに、MCTC142では、熱伝導性を高めるために簡素化された構造(すなわち、不均質な複合材やサンドイッチ構造などを低減または排除した構造)が望ましい。一実施例では、MCTC142の構造壁にホウ素含有材料を使用することが望ましい。これは例えば、発電所の最終的な運転停止が早期に行われたため、使用済燃料の燃焼度がHCC242について想定されるよりも低い状況に当てはまる可能性がある。HCC242にはホウ素を含む材料が要求されないから、これは、様々な工学的目標を達成するために様々なタイプのキャニスタを使用すると利点が大きいことを表す。
【0048】
フィンの設計に関しては、
図5A~5Eに示す放熱フィン150に、MCTC142の除熱を改善するうえで大きな利点があることがわかる。放熱フィン150は、除熱を促進するために、MCTC142の外壁148、すなわち内側の環状面上に支持させるのが好ましい。コストは増えるが、熱を除去し、冷却時間を短縮するうえで利点が大きい。
【0049】
容量減少に関しては、MCTC142はHCC242に比べて収容する燃料集合体の数が少ない。このことは、総熱負荷を低減し、熱冷却経路の改善を可能にするという二重の利点がある。キャニスタ外面から燃料集合体までの平均距離および/または最大距離が小さくなっているのが好ましい。
【0050】
潜在的に空の位置の利用については、
図5Dを参照されたい。MCTC142の中央部にある潜在的に空の位置165(例えば図示の網掛けされた区画)は、MCTC142の使用時に空にすることができる区画である。これにより、集合体の数や燃料の所望の減衰時間に関する発電所の要件に最も適合するような様々な装填方式を導き出すことができる。
【0051】
装填を時間と共に変化させる解決法に関しては、本発明で考えられるような使用済燃料の短い減衰時間(非限定的な例として1.5年という短期間)では、崩壊熱に対処する問題は本質的に時間と共に変化する問題、換言すれば過渡的な問題と考えることができる。減衰時間が1.5年ほどの使用済燃料の場合、非限定的な一実施例において、使用済燃料集合体の崩壊熱は1カ月につき約10%減衰する。これにより、熱量を時間の関数として対処する新しい方法が可能となる。例えば、MCTC142に装填する燃料の量を、装填の過程で集合体の数を増やすように変化させることができる。キャニスタの一実施例は、16~21体の集合体を収容する21スロット構成であり、比較的短い装填期間中に、受け容れる集合体の数を増加させる。例えば、
図5Dを参照のこと。したがって、キャニスタは初期のものよりも後期のものが多くの使用済燃料集合体を収容することになる。
【0052】
表面積増強型キャニスタ形状のキャニスタ設計とは、減数された燃料集合体をそれぞれ1つまたは2つのキャスク外壁の近くに収容する環状キャニスタ構成のことである。そのようにMCTCの容量を減少し熱経路を短縮すると、除熱が促進される。
【0053】
図6A、6Bはそれぞれ、
図4A~4Dの内側のキャニスタ242の一部を示す概略図および上面図である。上述したように、内側キャニスタ242は、大容量キャニスタ(HCC)242として機能する。したがって、
図6Aを参照すると、HCC242のキャニスタハウジング244の一実施例は、外面270と内部領域272とを有する。内部領域272には、好ましくは複数の区画274が存在する。HCC242は、多めの区画274を有するのが好ましい。非限定的な例として、HCC242は37個の区画274を有し、各区画は、或る量の照射済み原子力発電所構成機器または高レベル廃棄物(非限定的な例としてPWRおよびBWR燃料集合体)を収容し貯蔵するように構成されている。さらに、一実施例では、内部領域272に、いずれも中性子毒物を含む材料が存在しない複数の構成部材が収容される。一実施例において、当該複数の構成部材は、いずれも中性子毒物が存在しない材料で構成された複数の燃料セル壁部であってよい。
【0054】
HCC242は、比較的多くの照射済み原子力発電所構成機器または高レベル廃棄物を収容し貯蔵するために、多数の技術を用いるのが好ましい。HCC242は例えば、離間距離および/または複雑さを減らし、核分裂生成毒物のクレジットを適用するための解析法を使用し、例えば輸送時に水などの中性子減速材を確実に排除する比較的乾いたキャニスタ構造を採用し、臨界制御(例えば金属母材複合材などの使用)に重点を置くことが好ましい。臨界制御に関してより具体的に述べると、解析や減速材排除の方法を用いたり、使用済燃料プール内のホウ酸を考慮したりするだけでは不十分と判断される場合に、これらの技術が必要に応じて使用される。
【0055】
図7は、本発明の別の非限定的な実施態様に基づく原子力機器の別の乾式処理設備に使用される別の外側のキャスク(非限定的な例として輸送キャスク412)を示す概略等角図である。内側のキャニスタ(例えば上述の内側キャニスタ142、242のいずれか一方)は、輸送キャスク412の内部に配置されるように構成されている。好ましい実施態様では、輸送キャスク412それ自体に減速材を排除する機能がある。
【0056】
図8は、本発明の別の非限定的な実施態様に基づく原子力機器の別の乾式処理設備に使用される別の外側のキャスク(非限定的な例として移送キャスク512)の一部を示す概略等角断面図である。内側のキャニスタ(例えば上述の内側のキャニスタ142、242のいずれか1つ)は、例えば電力会社の使用済燃料プールへの使用済燃料の装填時に、移送キャスク512の内部に配置されるように構成されている。
【0057】
このように本発明は、先行技術の方法とは対照的に、燃料や他の高レベル廃棄物の物理的な種類や寸法によってではなく、対象となる使用済燃料や他の高レベル廃棄物に適用される工学的な目標や基準の種類によって異なる内側キャニスタモジュールを具備する二重基準の燃料キャニスタシステムを提供することを理解されたい。一例として、工学的目標または基準は、多数の集合体を経済的かつ安全に貯蔵するための1体のキャニスタ(例えばHCC242)を含んでよい。そのようなキャニスタ(例えばHCC242)は、少なくとも37体のPWR燃料集合体、または少なくとも89体のBWR燃料集合体を貯蔵することが可能であろう。別の例では、崩壊熱に関する支配的な要件および能力を満たすように使用済原子燃料を装填して貯蔵または輸送するために経過する必要のある冷却時間(または放射能減衰時間)を、従来型の使用済燃料貯蔵キャニスタに比べて大幅に短縮するようにキャニスタを設計することができる。この2番目の例は、最小冷却時間キャニスタ(MCTC)と呼ばれている。冷却時間は、好ましくは約10年から約2年未満まで、より好ましくは約1.5年未満まで短縮される。
【0058】
図9は、本発明の別の非限定的な実施態様に基づく原子力機器の乾式処理設備(非限定的な例として原子力機器の乾式処理設備110)において、内側キャニスタ142の代わりに使用可能な、複数の燃料集合体320を収容する別の内側のキャニスタ(非限定的な例としてMCTC342)を示す上面図である。一実施例において、MCTC342は表面積増強型キャニスタ形状であり、外壁348と、外壁348の内側に同心円状に離隔したキャニスタ内壁368と、外壁348から半径方向外向きに延びる複数の放熱フィン350と、概して開放的な空間内で概して半径方向内向きに延びる別の複数の放熱フィン370とを含み、当該空間は側面が当該同心円状のキャニスタ内壁368によって囲まれ、外部環境に対して開放されていることを特徴とする。この実施態様はまた、MCTC342が従来型キャスクに比べて、燃料集合体の貯蔵容量が小さいこと(例えば
図9には8体の燃料集合体のみが示されている)、および集合体と壁との間の平均離隔距離が小さいことを示している。
【0059】
本発明の特定の実施態様について詳しく説明してきたが、当業者は、本開示書全体の教示するところに照らして、これら詳述した実施態様に対する種々の変更および代替への展開が可能である。したがって、ここに開示した特定の実施態様は説明目的だけのものであり、本発明の範囲を何ら制約せず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲に記載の全範囲およびその全ての均等物を包含する。