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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】電力システム及びその循環電流抑制方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/08 20060101AFI20241120BHJP
【FI】
H02M7/08
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023193988
(22)【出願日】2023-11-14
【審査請求日】2023-11-14
(31)【優先権主張番号】202310790730.5
(32)【優先日】2023-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】505326623
【氏名又は名称】台達電子工業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】DELTA ELECTRONICS, INC.
【住所又は居所原語表記】31-1 Xingbang Road, Guishan Industrial Zone, Taoyuan City 33370, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】陳信智
(72)【発明者】
【氏名】王立宏
(72)【発明者】
【氏名】高肇利
(72)【発明者】
【氏名】謝奕平
(72)【発明者】
【氏名】林鴻杰
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/105427(WO,A1)
【文献】特開2020-14318(JP,A)
【文献】特開2021-52468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電源モジュールを備えた電力システムに適用される循環電流抑制方法であって、
各前記電源モジュールは、高電圧バスバーと、低電圧バスバーと、中性電圧を持つバランス回路とを含み、
前記循環電流抑制方法は、
各前記バランス回路において、前記高電圧バスバーと前記中性電圧との間に電気的に結合される第1のコンデンサを設置し、前記中性電圧と前記低電圧バスバーとの間に電気的に結合される第2のコンデンサを設置するステップと、
各前記電源モジュールの入力の電流実効値を取得するステップと、
前記複数の電源モジュールのうちの少なくとも1つの電源モジュールの前記電流実効値が電流基準値に維持されていないことを検出した場合、前記複数の電源モジュールのうちの前記少なくとも1つの電源モジュールに循環電流が発生したと判断するステップと、
前記複数の電源モジュールのうちの前記少なくとも1つの電源モジュールの前記バランス回路を動作させて、前記第1のコンデンサまたは前記第2のコンデンサを充電することで、前記中性電圧を調整して前記循環電流を抑制するステップと、
を含む循環電流抑制方法。
【請求項2】
前記複数の電源モジュールのうちの前記少なくとも1つの電源モジュールを選択し、異常電源モジュールとしてマークするステップと、
前記異常電源モジュールの前記電流実効値と前記電流基準値との間の差を取得し、前記差に応じて補償電圧を取得するステップと、
前記異常電源モジュールにおいて、前記第2のコンデンサと前記第1のコンデンサとの間のコンデンサ電圧差を取得するステップと、
前記補償電圧と前記コンデンサ電圧差を比較することにより、前記循環電流が前記異常電源モジュールの前記入力から前記異常電源モジュールに流れる、または前記循環電流が前記異常電源モジュールの出力から前記異常電源モジュールに流れると判断するステップと、
をさらに含む請求項1に記載の循環電流抑制方法。
【請求項3】
前記補償電圧が前記コンデンサ電圧差よりも大きい場合、前記循環電流が前記異常電源モジュールの前記入力から前記異常電源モジュールに流れると判断するステップと、
前記補償電圧が前記コンデンサ電圧差よりも小さい場合、前記循環電流が前記異常電源モジュールの前記出力から前記異常電源モジュールに流れると判断するステップと、
をさらに含む請求項2に記載の循環電流抑制方法。
【請求項4】
前記バランス回路において、エネルギー蓄積インダクタ、第1のスイッチ、及び第2のスイッチを設置するステップであって、前記エネルギー蓄積インダクタの第1の端子は前記中性電圧に電気的に結合され、前記第1のスイッチは前記高電圧バスバーと前記エネルギー蓄積インダクタの第2の端子との間に電気的に結合され、前記第2のスイッチは前記エネルギー蓄積インダクタの前記第2の端子と前記低電圧バスバーとの間に電気的に結合されるステップと、
各前記バランス回路において、前記第1のスイッチ及び/または前記第2のスイッチを動作させることにより、前記第1のコンデンサまたは前記第2のコンデンサを充電するステップと、
をさらに含む請求項2に記載の循環電流抑制方法。
【請求項5】
前記補償電圧が前記コンデンサ電圧差よりも大きい場合、前記第1のスイッチ及び/または前記第2のスイッチを動作させることにより、前記第2のコンデンサを充電するステップをさらに含み、
前記第2のコンデンサが充電されると、前記エネルギー蓄積インダクタのインダクタ電流は、前記エネルギー蓄積インダクタの前記第2の端子から前記エネルギー蓄積インダクタの前記第1の端子に流れる、
請求項4に記載の循環電流抑制方法。
【請求項6】
前記補償電圧が前記コンデンサ電圧差よりも小さい場合、前記第1のスイッチ及び/または前記第2のスイッチを動作させることにより、前記第1のコンデンサを充電するステップをさらに含み、
前記第1のコンデンサが充電されると、前記エネルギー蓄積インダクタのインダクタ電流は、前記エネルギー蓄積インダクタの前記第1の端子から前記エネルギー蓄積インダクタの前記第2の端子に流れる、
請求項4に記載の循環電流抑制方法。
【請求項7】
前記第1のコンデンサまたは前記第2のコンデンサが充電された後、前記複数の電源モジュールのうちの前記少なくとも1つの電源モジュールの前記電流実効値が前記電流基準値に維持されているかどうかを検出するステップをさらに含み、
前記複数の電源モジュールのうちの前記少なくとも1つの電源モジュールの前記電流実効値が前記電流基準値に維持されている場合、前記バランス回路の動作を停止する、
請求項1に記載の循環電流抑制方法。
【請求項8】
各前記電源モジュールに循環電流が発生していないと判断した場合、各前記電源モジュールの前記低電圧バスバーは同一の基準電圧に維持される、請求項1~7のいずれか1項に記載の循環電流抑制方法。
【請求項9】
前記第1のコンデンサまたは前記第2のコンデンサを充電することにより、前記中性電圧を調整して前記低電圧バスバーの電圧を上昇させる、請求項1~7のいずれか1項に記載の循環電流抑制方法。
【請求項10】
各前記電源モジュールの前記入力を交流入力ソースに電気的に結合するように設置し、前記電源モジュールの出力を負荷に電気的に結合するように設置するステップをさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の循環電流抑制方法。
【請求項11】
前記電流実効値は、電流平均値または電流二乗平均値である、請求項1~7のいずれか1項に記載の循環電流抑制方法。
【請求項12】
複数の電源モジュールを備えた電力システムであって、
各前記電源モジュールの入力は同一の交流入力ソースを受信し、
各前記電源モジュールは、直流電力バスバーと、バランス回路と、コントローラとを含み、
前記直流電力バスバーは、高電圧バスバーと低電圧バスバーを含み、
前記バランス回路は、第1のコンデンサ及び第2のコンデンサ、第1のスイッチ及び第2のスイッチ、エネルギー蓄積インダクタを含み、
前記第1のコンデンサの負端子は前記第2のコンデンサの正端子に接続され、前記第1のコンデンサの正端子は前記高電圧バスバーに電気的に接続され、前記第2のコンデンサの負端子は前記低電圧バスバーに電気的に接続され、
前記第1のスイッチの第1の端子は前記高電圧バスバーに電気的に接続され、前記第1のスイッチの第2の端子は前記第2のスイッチの第1の端子に接続され、前記第2のスイッチの第2の端子は前記低電圧バスバーに電気的に接続され、
前記エネルギー蓄積インダクタの第1の端子は、前記第1のコンデンサの前記負端子及び前記第2のコンデンサの前記正端子に接続され、前記エネルギー蓄積インダクタの第2の端子は、前記第1のスイッチの前記第2の端子及び前記第2のスイッチの前記第1の端子に接続され、
前記コントローラは、各前記電源モジュールの前記入力の電流実効値を取得し、
前記コントローラにより前記複数の電源モジュールのうちの少なくとも1つの電源モジュールの前記電流実効値が電流基準値よりも大きいまたは小さいことを検出した場合、前記複数の電源モジュールのうちの前記少なくとも1つの電源モジュールに循環電流が発生したと判断し、
前記コントローラにより、前記複数の電源モジュールのうちの前記少なくとも1つの電源モジュールの前記バランス回路の前記第1のスイッチ及び/または前記第2のスイッチを動作させて、前記エネルギー蓄積インダクタにインダクタ電流を発生させ、前記インダクタ電流の電流方向は前記循環電流と逆になる、
電力システム。
【請求項13】
前記コントローラは、
前記複数の電源モジュールのうちの前記少なくとも1つの電源モジュールを選択し、異常電源モジュールとしてマークし、
前記異常電源モジュールの前記電流実効値と前記電流基準値との間の差を取得し、前記差に応じて補償電圧を取得し、
前記異常電源モジュールにおいて、前記第2のコンデンサと前記第1のコンデンサとの間のコンデンサ電圧差を取得し、
前記補償電圧と前記コンデンサ電圧差を比較することにより、前記循環電流が前記異常電源モジュールの前記入力から前記異常電源モジュールに流れる、または前記循環電流が前記異常電源モジュールの出力から前記異常電源モジュールに流れると判断するために使用される、
請求項12に記載の電力システム。
【請求項14】
前記コントローラはさらに、
前記補償電圧が前記コンデンサ電圧差よりも大きい場合、前記循環電流が前記異常電源モジュールの前記入力から前記異常電源モジュールに流れると判断し、
前記補償電圧が前記コンデンサ電圧差よりも小さい場合、前記循環電流が前記異常電源モジュールの前記出力から前記異常電源モジュールに流れると判断するために使用される、
請求項13に記載の電力システム。
【請求項15】
前記コントローラはさらに、
前記補償電圧が前記コンデンサ電圧差よりも大きい場合、前記第1のスイッチ及び/または前記第2のスイッチを動作させることにより、前記エネルギー蓄積インダクタのインダクタ電流を、前記エネルギー蓄積インダクタの前記第2の端子から前記エネルギー蓄積インダクタの前記第1の端子に流し、
前記補償電圧が前記コンデンサ電圧差よりも小さい場合、前記第1のスイッチ及び/または前記第2のスイッチを動作させることにより、前記エネルギー蓄積インダクタのインダクタ電流を、前記エネルギー蓄積インダクタの前記第1の端子から前記エネルギー蓄積インダクタの前記第2の端子に流すために使用される、
請求項13に記載の電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力システム及びその循環電流抑制方法に関し、特に、正負の直流バスコンデンサの電圧差を制御して循環電流を抑制する電力システム及びその循環電流抑制方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マルチモジュール並列接続の応用においては、並列接続されるモジュールの数が多いため、モジュールの体積サイズが非常に重要となる。モジュールの体積を縮小するために、前段AC/DCトポロジでは単方向マルチレベルコンバータが使用されることが多く、後段DC/DCの出力端の負極は直流バスバーの負端子に直接接続される。上記回路構成により、各モジュールの直流バスバーの電圧が異なると、直流循環電流(circulating current)が発生する。循環電流により電力変換効率が低下し、前段AC/DCは単方向トポロジであるため、循環電流により入力電流に多くの高調波を発生させ、入力電流の全高調波歪みに影響を与える。また、過剰な循環電流により、マルチレベルコンバータの中性点電位シフトを引き起こし、システム全体の正常な動作に影響を与える。
【0003】
そこで、上記の従来技術を改善できる電力システム及びその循環電流抑制方法をいかに開発するかが現在急務となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、電力システム及びその循環電流抑制方法を提供することである。電力システムは複数の電源モジュールを備え、いずれかの電源モジュールに循環電流が発生した場合に、本発明では、電源モジュール内のバランス回路を動作させて、バランス回路の中性電圧を調整して循環電流を抑制する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、複数の電源モジュールを備えた電力システムに適用される循環電流抑制方法を提供する。各電源モジュールは、高電圧バスバーと、低電圧バスバーと、中性電圧を持つバランス回路とを含む。循環電流抑制方法は、各バランス回路において、高電圧バスバーと中性電圧との間に電気的に結合される第1のコンデンサを設置し、中性電圧と低電圧バスバーとの間に電気的に結合される第2のコンデンサを設置するステップと、各電源モジュールの入力の電流実効値を取得するステップと、少なくとも1つの電源モジュールの電流実効値が電流基準値に維持されていないことを検出した場合、前記少なくとも1つの電源モジュールに循環電流が発生したと判断するステップと、循環電流が発生した電源モジュールのバランス回路を動作させて、第1のコンデンサまたは第2のコンデンサを充電することで、中性電圧を調整して循環電流を抑制するステップとを含む。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明はさらに、複数の電源モジュールを備えた電力システムを提供する。各電源モジュールの入力は同一の交流入力を受信し、各電源モジュールは、直流電力バスバー、バランス回路、及びコントローラを含む。直流電力バスバーは、高電圧バスバーと低電圧バスバーを含む。バランス回路は、第1のコンデンサ、第2のコンデンサ、第1のスイッチ、第2のスイッチ、及びエネルギー蓄積インダクタを含む。第1のコンデンサの負端子は、第2のコンデンサの正端子に接続され、第1のコンデンサの正端子は高電圧バスバーに電気的に接続され、第2のコンデンサの負端子は低電圧バスバーに電気的に接続される。第1のスイッチの第1の端子は高電圧バスバーに電気的に接続され、第1のスイッチの第2の端子は、第2のスイッチの第1の端子に接続され、第2のスイッチの第2の端子は低電圧バスバーに電気的に接続される。エネルギー蓄積インダクタの第1の端子は、第1のコンデンサの負端子及び第2のコンデンサの正端子に接続され、エネルギー蓄積インダクタの第2の端子は、第1のスイッチの第2の端子及び第2のスイッチの前記第1の端子に接続される。コントローラは、各電源モジュールの入力の電流実効値を取得する。コントローラにより少なくとも1つの電源モジュールの電流実効値が電流基準値よりも大きいまたは小さいことを検出した場合、前記少なくとも1つの電源モジュールに循環電流が発生したと判断する。コントローラにより、循環電流が発生した電源モジュールのバランス回路の第1のスイッチ及び/または第2のスイッチを動作させて、エネルギー蓄積インダクタにインダクタ電流を発生させ、インダクタ電流の電流方向は循環電流と逆になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係る電力システムの概略回路構成図である。
図2図1の電力システムの具体的な実施態様の概略回路構成図である。
図3】本発明の一実施形態に係る電力システムの循環電流抑制方法の概略フローチャートである。
図4】本発明の電力システムの循環電流抑制方法の制御策を示す。
図5】電源モジュールに循環電流が発生した場合の、循環電流抑制を行わない場合の電流波形のシミュレーション図である。
図6】電源モジュールに循環電流が発生した場合の、本発明の循環電流抑制方法を採用した電流波形のシミュレーション図である。
図7】電源モジュールに循環電流が発生した場合の、本発明の循環電流抑制方法を採用したコンデンサ電圧波形のシミュレーション図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の特徴と利点を示すいくつかの典型的な実施形態について、後述の説明において詳細に記述する。本発明は異なる態様において様々な変更を加えることができ、いずれも本発明の範囲から逸脱することなく、かつその説明及び図面は本質的に説明するために用いられものであり、本発明を限定する意図はないことを理解されたい。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態に係る電力システムの概略回路構成図である。図1に示すように、電力システム1は、複数の電源モジュール10を含み、電源モジュール10の数は2以上の整数であり、各電源モジュール10の入力は同一の交流入力ソース2を受信し、各電源モジュール10の出力は同一の負荷に電気的に結合される。一般に、循環電流は、複数の電源モジュール10が並列接続された場合に発生するが、本発明はこれに限定されない。
【0010】
電力システム1において、各電源モジュール10は、直流電力バスバー、バランス回路11、及びコントローラ12を含む。本実施形態では、交流入力ソース2は三相交流電力を供給するが、これに限定されない。他の実施形態では、交流入力ソース2は単相交流電力を供給することもできる。
【0011】
各電源モジュール10において、直流電力バスバーは、高電圧バスバー13と低電圧バスバー14を含み、バランス回路11は、第1のコンデンサC1、第2のコンデンサC2、第1のスイッチS1、第2のスイッチS2、及びエネルギー蓄積インダクタLを含む。第1のコンデンサC1の正端子は、高電圧バスバー13に電気的に接続され、第1のコンデンサC1の負端子は、第2のコンデンサC2の正端子に接続され、第2のコンデンサC2の負端子は、低電圧バスバー14に電気的に接続される。第1のコンデンサC1及び第2のコンデンサC2は、それぞれ正の直流バスコンデンサ及び負の直流バスコンデンサとみなすことができる。第1のスイッチS1の第1の端子は、高電圧バスバー13に電気的に接続され、第1のスイッチS1の第2の端子は、第2のスイッチS2の第1の端子に接続され、第2のスイッチS2の第2の端子は、低電圧バスバー14に電気的に接続される。エネルギー蓄積インダクタLの第1の端子は、第1のコンデンサC1の負端子及び第2のコンデンサC2の正端子に接続され、エネルギー蓄積インダクタLの第2の端子は、第1のスイッチS1の第2の端子及び第2のスイッチS2の第1の端子に接続される。また、バランス回路11は中性電圧Vnを持ち、中性電圧Vnは、第1のコンデンサC1の負端子、第2のコンデンサC2の正端子、及びエネルギー蓄積インダクタLの第1の端子に結合される。
【0012】
図1において、電力システム1が理想的な条件で動作する場合、各電源モジュール10の低電圧バスバー14は同一の基準電圧に維持され、循環電流は発生しない。複数の電源モジュール10のいずれかに異常が発生した場合、低電圧バスバー14は基準電圧に維持されていないため、電力システム1に、異常な電源モジュール10に流れる循環電流が発生する。一般に、異常な電源モジュール10の低電圧バスバー14の電圧は基準電圧よりも低い。
【0013】
コントローラ12は、各電源モジュール10の入力の電流実効値izを取得し、電流実効値izは、例えば、電源モジュール10の入力の電流iの平均値または二乗平均値とすることができるが、これに限定されない。コントローラ12により少なくとも1つの電源モジュール10の電流実効値izが電流基準値irefよりも大きいまたは小さいことを検出した場合、コントローラ12は前記少なくとも1つの電源モジュール10に循環電流(circulating current)が発生したと判断する。それに応じて、コントローラ12により、循環電流が発生した電源モジュール10のバランス回路11の第1のスイッチS1及び第2のスイッチS2を動作させて、エネルギー蓄積インダクタLにインダクタ電流を生成させることで、第1のコンデンサC1または第2のコンデンサC2を充電し、中性電圧Vnを調整して循環電流による影響を打ち消し、それによって、循環電流を抑制する。インダクタ電流の電流方向は循環電流と逆になる。
【0014】
いくつかの実施形態では、各電源モジュール10は、変換回路15をさらに含み、変換回路15は交流入力ソース2を受信し、直流電力をバランス回路11の高電圧バスバー13及び低電圧バスバー14に出力する。変換回路15は、例えば、ウィーンコンバータ(Vienna converter)(図2に示す)とすることができるが、これに限定されず、交流入力ソース2の力率補正に使用される。いくつかの実施形態では、各電源モジュール10は、DC-DCコンバータ16をさらに含み、DC-DCコンバータ16は、高電圧バスバー13及び低電圧バスバー14を介して直流電力を受信する。DC-DCコンバータ16は、例えば、図2に示すように、フライングキャパシタコンバータ(flying capacitor converter、FCC))とすることができるが、これに限定されない。バランス回路11は、高電圧バスバー13及び低電圧バスバー14を介して、変換回路15の出力及びDC-DCコンバータ16の入力に電気的に結合される。また、各電源モジュール10の出力は同一の負荷3に接続される。
【0015】
図1及び図3を参照する。図3は、本発明の一実施形態に係る電力システムの循環電流抑制方法の概略フローチャートである。この循環電流抑制方法は、図1に示す電力システム1に適用され、電力システム1のコントローラ12によって実行される。図3に示すように、まず、ステップST1において、各バランス回路11において、第1のコンデンサC1及び第2のコンデンサC2を設置する。次に、ステップST2において、各電源モジュール10の入力の電流実効値izを取得する。その後、ステップST3において、各電源モジュール10の電流実効値izが電流基準値irefに維持されているか否かを検出する。ステップST3の判定結果がNOの場合、すなわち、少なくとも1つの電源モジュール10の電流実効値izが電流基準値irefに維持されていない場合、前記少なくとも1つの電源モジュール10に循環電流が発生したと判断する。このとき、ステップST4を実行して、循環電流が発生した電源モジュール10のバランス回路11を動作させて、第1のコンデンサC1または第2のコンデンサC2を充電することで、中性電圧Vnを調整して循環電流を抑制する。逆に、ステップST3の判定結果がYESの場合、すなわち、すべての電源モジュール10の電流実効値izが電流基準値irefに維持されている場合、ステップST2を再度実行する。
【0016】
いくつかの実施形態では、各電源モジュール10に循環電流が発生していない場合、すなわち、各電源モジュール10の電流実効値izが電流基準値irefに維持されている場合、各電源モジュール10の低電圧バスバー14は同一の基準電圧に維持される。いくつかの実施形態では、電源モジュール10に循環電流が発生した場合、電源モジュール10内の第1のコンデンサC1または第2のコンデンサC2を充電することにより、中性電圧Vnを調整して低電圧バスバー14の電圧を上昇させる。
【0017】
図1及び図4を参照する。図4は、本発明の電力システムの循環電流抑制方法の制御策を示す。なお、本発明の電力システム1に対する制御は全てコントローラ12によって実行されており、以下では繰り返さない。図4に示すように、少なくとも1つの電源モジュール10に循環電流が発生した場合、循環電流が発生した電源モジュール10を異常電源モジュールとしてマークし、異常電源モジュールの電流実効値izと電流基準値irefとの差を取得し、その差に応じて、補償電圧Vcを取得する。同時に、異常電源モジュール内の第2のコンデンサC2と第1のコンデンサC1との間のコンデンサ電圧差Vdを取得する。コンデンサ電圧差Vdは、第2のコンデンサC2の電圧から第1のコンデンサC1の電圧を引いたものに等しい。
【0018】
補償電圧Vcとコンデンサ電圧差Vdとを比較することにより、循環電流の流れる方向を判断することができ、インダクタ電流の流れる方向及び充電されるコンデンサを決定する。具体的には、補償電圧Vcがコンデンサ電圧差Vdよりも大きい場合、循環電流が異常電源モジュールの入力から異常電源モジュールに流れると判断し、第1のスイッチS1及び/または第2のスイッチS2を動作させて、第2のコンデンサC2を充電し、このとき、エネルギー蓄積インダクタLのインダクタ電流は、エネルギー蓄積インダクタLの第2の端子からエネルギー蓄積インダクタLの第1の端子に流れる。逆に、補償電圧Vcがコンデンサ電圧差Vdよりも小さい場合、循環電流が異常電源モジュールの出力から異常電源モジュールに流れると判断し、第1のスイッチS1及び/または第2のスイッチS2を動作させて、第1のコンデンサC1を充電し、このとき、エネルギー蓄積インダクタLのインダクタ電流は、エネルギー蓄積インダクタLの第1の端子からエネルギー蓄積インダクタLの第2の端子に流れる。いくつかの実施形態では、補償電圧Vcとコンデンサ電圧差Vdとの間の差に基づいて、インダクタ電流の基準値iLrefを取得し、インダクタ電流の基準値iLrefと実値iLを比較して、比較結果に応じて、第1のスイッチS1及び第2のスイッチS2の制御信号を生成する。これにより、補償電圧Vcとコンデンサ電圧差Vdとの間の差に基づいて、第1のコンデンサC1または第2のコンデンサC2の充電時間を決定し、それに応じて第1のスイッチS1及び/または第2のスイッチS2を動作させることができる。
【0019】
また、循環電流が発生した電源モジュール10内の第1のコンデンサC1または第2のコンデンサC2が充電された後、電源モジュール10の電流実効値izが電流基準値irefに維持されているか否かを再度検出する。電流実効値izが電流基準値irefに維持されている場合には、電源モジュール10のバランス回路11の動作を停止し、電流実効値izが依然として電流基準値irefに維持されていない場合には、バランス回路11を再度動作させて、第1のコンデンサC1または第2のコンデンサC2を充電する。
【0020】
図5は、電源モジュールに循環電流が発生した場合の、循環電流抑制を行わない場合の電流波形のシミュレーション図であり、図6は、電源モジュールに循環電流が発生した場合の、本発明の循環電流抑制方法を採用した電流波形のシミュレーション図であり、図7は、電源モジュールに循環電流が発生した場合の、本発明の循環電流抑制方法を採用したコンデンサ電圧波形のシミュレーション図である。図5及び図6において、電源モジュール10の入力のいずれかの相の電流iを例にとる。図7において、第1のコンデンサC1の電圧VC1及び第2のコンデンサC2の電圧VC2は、それぞれ実線及び破線で表されている。循環電流が発生した場合、図5に示すように、電流iの波形は循環電流の影響によりシフトし、この例では、循環電流は電源モジュール10の出力から電源モジュール10に流れることで、電流iの波形は負の値にシフトする。この場合、本発明の循環電流抑制方法を採用することにより、図6及び図7に示すように、第1のスイッチS1及び/または第2のスイッチS2を動作させて、エネルギー蓄積インダクタLの第2の端子から第1の端子に流れるインダクタ電流を生成することで、第1のコンデンサC1を充電して第1のコンデンサC1の電圧VC1を上昇させ、それによって循環電流による電流シフトを抑制し、電流iの波形を循環電流のない状態に戻す。
【0021】
上記のように、本発明は、電力システム及びその循環電流抑制方法を提供する。電力システムは複数の電源モジュールを備え、いずれかの電源モジュールに循環電流が発生した場合に、本発明では、電源モジュール内のバランス回路を動作させて、バランス回路の中性電圧を調整して循環電流を抑制する。
【0022】
上記は、本発明を説明するために提案された好ましい実施形態に過ぎず、本発明は、上記の実施形態に限定されず、本発明の範囲は特許請求の範囲によって決定されることに留意されたい。本発明は、当業者なら様々な修正を加えることができるが、特許請求の範囲によって定義される範囲から逸脱することはない。
【符号の説明】
【0023】
1:電力システム
10:電源モジュール
2:交流入力ソース
11:バランス回路
12:コントローラ
13:高電圧バスバー
14:低電圧バスバー
C1:第1のコンデンサ
C2:第2のコンデンサ
S1:第1のスイッチ
S2:第2のスイッチ
L:エネルギー蓄積インダクタ
Vn:中性電圧
iz:電流実効値
i:電流
iref:電流基準値
ST1、ST2、ST3、ST4:ステップ
Vc:補償電圧
Vd:コンデンサ電圧差
15:変換回路
16:DC-DCコンバータ
3:負荷
iLref:インダクタ電流の基準値
iL:インダクタ電流の実値
VC1:第1のコンデンサC1の電圧
VC2:第2のコンデンサC2の電圧
【要約】      (修正有)
【課題】複数の電源モジュールを備えた電力システムに適用される循環電流抑制方法を提供する。
【解決手段】高電圧バスバーと、低電圧バスバーと、中性電圧を持つバランス回路とを含む各電源モジュールおける循環電流抑制方法は、各バランス回路において、高電圧バスバーと中性電圧との間に電気的に結合される第1のコンデンサを設置し、中性電圧と低電圧バスバーとの間に電気的に結合される第2のコンデンサを設置するステップと、各電源モジュールの入力の電流実効値を取得するステップと、少なくとも1つの電源モジュールの電流実効値が電流基準値に維持されていないことを検出した場合、前記少なくとも1つの電源モジュールに循環電流が発生したと判断するステップと、循環電流が発生した電源モジュールのバランス回路を動作させて、第1のコンデンサまたは第2のコンデンサを充電することで、中性電圧を調整して循環電流を抑制するステップと、を含む。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7