(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】ドーパミンD1受容体ポジティブアロステリック調節因子としてのフェニル-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル-エタン-1-オン誘導体
(51)【国際特許分類】
C07D 217/16 20060101AFI20241120BHJP
A61K 31/472 20060101ALI20241120BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241120BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20241120BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20241120BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
C07D217/16 CSP
A61K31/472
A61K45/00
A61P25/16
A61P25/28
A61P25/18
(21)【出願番号】P 2023521348
(86)(22)【出願日】2021-10-05
(86)【国際出願番号】 US2021053578
(87)【国際公開番号】W WO2022076418
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-04-20
(32)【優先日】2020-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】ハオ,ジュンリアン
(72)【発明者】
【氏名】ジョンストン,リチャード ディ
(72)【発明者】
【氏名】ラックナー,グレゴリー ローレンス
(72)【発明者】
【氏名】ヘンブル,エリック ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】スヴェンソン,シェル エイ
【審査官】三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-520127(JP,A)
【文献】国際公開第2019/204418(WO,A1)
【文献】特表2017-530185(JP,A)
【文献】MEDCHEM NEWS,2009年,No.2,p.7-12
【文献】根岸章,フッ素の化学-新しい機能性を求めて,1988年,p.89-90
【文献】日本学術振興会,フッ素化学入門-先端テクノロジーに果たすフッ素化学の役割,2005年,p.398-403
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 217/
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式の化合物であって、
【化1】
式中、
R
1が、
【化2】
であり、
R
2が、-F又は-Clであり、
R
3が、-F又は-Clであり、
R
4が、-H又は-Fであり、
ただし、R
1が
【化3】
であるとき、R4が、-Fである、化合物。
【請求項2】
以下の式の化合物であって、
【化4】
式中、
R
1が、
【化5】
であり、
R
2が、-F又は-Clであり、
R
3が、-F又は-Clであり、
R
4が、-H又は-Fであり、
ただし、R
1が
【化6】
であるとき、R4が、-Fである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
【化7】
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物と、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と、を含む、薬学的組成物。
【請求項5】
【化8】
薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と、を含む、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
パーキンソン病の治療のための、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物を含む、医薬品。
【請求項7】
アルツハイマー病の治療のための、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物を含む、医薬品。
【請求項8】
パーキンソン病又はアルツハイマー病を治療するための医薬品の製造のための、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項9】
パーキンソン病を治療するための医薬品であって、2-(2-クロロ-6-フルオロ-フェニル)-1-[(1S,3R)-6-フルオロ-3-(ヒドロキシメチル)-5-(3-ヒドロキシ-3-メチル-ブチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]エタノンである化合物を含む、医薬品。
【請求項10】
アルツハイマー病を治療するための医薬品であって、2-(2-クロロ-6-フルオロ-フェニル)-1-[(1S,3R)-6-フルオロ-3-(ヒドロキシメチル)-5-(3-ヒドロキシ-3-メチル-ブチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]エタノンである化合物を含む、医薬品。
【請求項11】
ドーパミン作動性CNS障害を治療するための医薬品であって、2-(2-クロロ-6-フルオロ-フェニル)-1-[(1S,3R)-6-フルオロ-3-(ヒドロキシメチル)-5-(3-ヒドロキシ-3-メチル-ブチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]エタノンである化合物を含む、医薬品。
【請求項12】
患者におけるドーパミン作動性CNS障害の治療において、ドーパミン前駆体と同時に、別々に、又は連続して組み合わせて使用するための、請求項1~3のいずれかに記載の化合物を含む、医薬品。
【請求項13】
患者におけるドーパミン作動性CNS障害の治療において、ドーパミンアゴニストと同時に、別々に、又は連続して組み合わせて使用するための、請求項1~3のいずれかに記載の化合物を含む、医薬品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のフェニル-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)エタン-1-オン関連化合物、その薬学的組成物、並びにパーキンソン病、アルツハイマー病、統合失調症、及び注意欠陥多動性障害(ADHD)を含むドーパミン作動性CNS障害の治療におけるそれらの使用のための方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
現在使用されている薬物の多くは、ドーパミン受容体を介して直接的又は間接的に作用する。これらには、パーキンソン病のドーパミンアゴニスト及びドーパミン前駆体L-DOPA、注意欠陥障害及びナルコレプシーに関するドーパミン放出薬剤、並びにうつ病に関するドーパミン再取り込み阻害薬が含まれる。D1受容体は、運動活動及び報酬系に重要な役割を有し、作業記憶、注意、及び実行機能のためのより高い認知機能を維持する上で特別な役割を有する(Arnsten AF,Cereb.Cortex(2013)123,2269-2281)。臨床使用のためのD1アゴニストを開発する試みはこれまでのところ成功しておらず、D1受容体活性を増大するための代替手法の探索に弾みがついている。
【0003】
そのような手法の1つは、ドーパミンD1受容体のアロステリック増強因子(ポジティブアロステリック調節因子又はPAMとしても既知である)を同定することである。(Svensson K,et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.(2017)360:117-128を参照されたい)。アロステリック調節因子は、受容体のオルソステリック結合部位とは異なる部位(アロステリック結合部位)に結合することにより、天然リガンドの効果を増強するか(ポジティブアロステリック調節因子、又はPAM)、又は阻害する(ネガティブアロステリック調節因子、又はNAM)薬剤である。D1受容体に対するドーパミンの親和性を増加させることにより、D1増強因子は内因性ドーパミンへの応答を増幅し、ドーパミンが放出されるタイミング及び場所でD1トーンを増加させる可能性がある。この活動モードは、存在する限りアクセス可能な全てのD1受容体を活性化するD1アゴニストとは対照的である。認知及び自発運動活動の動物モデルでは、D1アゴニストはベル型の用量応答関係を示すが、これはおそらく高用量での過剰刺激によるものである。一部のD1アゴニストは、D1受容体が常に活性化しているため、耐性の急速な発達も示す。対照的に、D1増強因子は内因性のトーンに依存し、通常のフィードバック制御の対象となるため、過剰刺激の傾向がはるかに低くなる可能性がある。これらの中枢神経系機能におけるドーパミン及びD1受容体シグナル伝達の関与を考えると、D1受容体活性を増大し得るD1増強因子は、ある特定のドーパミン関連疾患の治療のための代替及び/又は改善された薬剤を提供し得る。
【0004】
パーキンソン病は、脳内のドーパミン作動性ニューロンの喪失を特徴とする慢性の進行性の神経変性障害である。パーキンソン病は、他の運動症状(例えば、運動緩慢及び姿勢の不安定性)及び非運動症状(例えば、認知障害、睡眠障害、及びうつ病)とともに安静時振戦で現れる。パーキンソン病の治療のための現在の療法には、レボドパなどの非選択的ドーパミン前駆体、及びドーパミン受容体アゴニストの投与が含まれる。直接作用型ドーパミン受容体アゴニスト療法は、D2受容体に対する親和性が比較的高いため、衝動調節障害、精神病、及び認知機能の悪化と関連している場合もある。統合失調症は、複雑な病理学的メカニズムを有する衰弱性疾患である。統合失調症の構成要素は認知障害であり、これはD1受容体の活性化又はD1受容体の下方制御の不足と関連している可能性がある。D1の活性化は、D2の調節よりも選択的に、統合失調症に関連する認知障害の治療に有効であり得ると仮定されている。アルツハイマー病は、大脳皮質及びある特定の皮質下領域のニューロン及びシナプスの喪失を特徴とする慢性の進行性の神経変性障害である。疾患の進行には、少なくとも一部はD1受容体の活性化の低下が原因であると仮定されている認知障害が含まれ、そのため、D1の活性化は、アルツハイマー病に関連する認知障害の治療に療法上の利益を提供する可能性がある。ADHDは、集中力の問題、過度の活動、又は年齢に応じた適切な言動制御の困難を特徴とする神経発達障害である。D1の活性化がADHDの治療に療法上の利益を提供する可能性があると仮定されている。よって、代替及び/又は改善されたドーパミンD1受容体ポジティブアロステリック調節因子(D1 PAM)などの、統合失調症、パーキンソン病、アルツハイマー病、及び/又はADHDに関連する認知障害又は他の神経障害の安全かつ効果的な治療の重要な満たされていない必要性が残っている。
【0005】
WO2014/193781は、パーキンソン病、アルツハイマー病、統合失調症、うつ病、又はADHDに関連する認知障害の治療のためのD1 PAMとして、特定の3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル化合物を挙げている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、ドーパミン1受容体(D1)の選択的PAMである、ある特定の新規化合物を提供し、ドーパミンに応答するヒトD1受容体シグナル伝達の増強、高い経口インビボアベイラビリティ、及び環境に慣れている動物の自発運動活性化におけるインビボでの効力などの薬理学的特性の有利な組み合わせを実証する。そのようなものとして、本発明の化合物は、パーキンソン病、アルツハイマー病、統合失調症、及び/又はADHDの治療に有用であると考えられる。本発明の化合物は、そのような障害の代替治療を提供し得る。
【0007】
本発明は、式Iの化合物であって、
【化1】
式中、
R
1が、
【化2】
であり、
R
2が、-F又は-Clであり、
R
3が、-F又は-Clであり、
R
4が、-H又は-Fであり、
ただし、R
1が
【化3】
であるとき、R4が、-Fである、化合物を提供する。
【0008】
式Iの化合物は、本発明の治療方法において特に有用であるが、特定の構成が好ましい。以下の段落は、そのような好ましい構成について説明する。式Iで表される本発明は全ての個々の鏡像異性体及びジアステレオマー、並びにラセミ化合物を含む当該化合物の鏡像異性体及び/又はジアステレオマーの混合物を企図するが、以下に記載される絶対構成を有する化合物が好ましい。これらの選好が、本発明の治療方法及び新規化合物に適用可能であることが理解される。
【0009】
式Iの特定の実施形態は、式Iaの化合物であって、
【化4】
式中、
R
1が、
【化5】
であり、
R
2が、-F又は-Clであり、
R
3が、-F又は-Clであり、
R
4が、-H又は-Fであり、
ただし、R
1が
【化6】
であるとき、R4が、-Fである、化合物である。
【0010】
式Iの特定の実施形態は、式Ibの化合物であり、
【化7】
これは、遊離塩基形態では、2-(2-クロロ-6-フルオロ-フェニル)-1-[(1S,3R)-6-フルオロ-3-(ヒドロキシメチル)-5-(3-ヒドロキシ-3-メチル-ブチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]エタノンと称することもできる。
【0011】
更に、本発明は、式I、Ia、及び/又はIbの化合物と、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と、を含む、薬学的組成物を提供する。
【0012】
以下の特定の実施形態は、式I又はIaの化合物である。
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
更に、本発明は、直前の先行リストの特定の実施形態のうちの1つの化合物、及び薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤を提供する。例えば、共結晶は、本明細書に記載される化合物実施形態について企図される。
【0024】
本発明の化合物は、ドーパミン2(D2)受容体での活性が最小のドーパミン1(D1)受容体の選択的PAMである。本発明の化合物は、薬物間相互作用のリスクを回避しながら、それらの療法上の利益を更に提供し得る。そのようなものとして、本発明の化合物は、パーキンソン病に関連する運動症状及び認知障害並びに統合失調症に関連する認知障害及び陰性症状などの、特定の関連症状、例えば、軽度の認知障害又は認知症の緩和を含む、パーキンソン病及び統合失調症などの、低減したD1の活動が役割を果たし、D2活性化が望ましくない状態の治療に有用であると考えられる。本発明の化合物はまた、単独療法として、又は他の療法と組み合わせて、パーキンソン病の運動症状を改善するのに有用であると考えられる。本発明の化合物は、認知障害、例えば、軽度の認知障害などのアルツハイマー病のある特定の症状を治療するのにも有用であると考えられる。更に、本発明の化合物は、ADHDのある特定の症状を治療するのに有用であると考えられる。本発明の化合物はまた、パーキンソン病、アルツハイマー病、レビー小体型認知症(LBD)、血管性認知症、統合失調症、ADHD、うつ病、自閉症、慢性筋骨格痛、線維筋痛症、認知機能障害、睡眠障害、過度の日中の眠気、ナルコレプシー、交代勤務障害、外傷性脳損傷、慢性外傷性脳症、肥満及び食欲調節、気分障害、嗜眠、アパシー、並びに嗜癖障害を含むドーパミン作動性CNS障害を治療するのに有用であると考えられる。
【0025】
更に、本発明は、療法における使用のための、式Iの化合物を提供する。更に、本発明は、療法における使用のための、式Iaの化合物を提供する。更に、本発明は、療法における使用のための、式Ibの化合物を提供する。
【0026】
別の態様では、本発明は、式I、Ia、又はIbの化合物と、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と、を含む薬学的組成物を提供する。更に、本発明のこの態様は、例えば、パーキンソン病に関連する認知障害などのパーキンソン病を治療するための薬学的組成物であって、式I、Ia、又はIbの化合物と、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤と、を含む、薬学的組成物を提供する。本発明のこの態様の別の実施形態では、パーキンソン病に関連する運動障害を緩和するための薬学的組成物であって、式I、Ia、又はIbの化合物と、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤と、を含む、薬学的組成物が提供される。
【0027】
本発明のこの態様の別の実施形態では、例えば、アルツハイマー病に関連する認知障害を緩和するなどの、アルツハイマー病を治療するための薬学的組成物であって、式I、Ia、又はIbの化合物と、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤と、を含む、薬学的組成物が提供される。
【0028】
本発明のこの態様の別の実施形態は、例えば、統合失調症に関連する認知障害を緩和するなどの、統合失調症を治療するための薬学的組成物であって、式I、Ia、又はIbの化合物と、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤と、を含む、薬学的組成物を提供する。
【0029】
本発明の別の実施形態は、ADHDを治療するための薬学的組成物であって、式I、Ia、又はIbの化合物と、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤と、を含む、薬学的組成物を提供する。
【0030】
更に、本発明は、例えば、パーキンソン病に関連する認知障害などのパーキンソン病を治療する方法、又は例えば、パーキンソン病に関連する運動障害を緩和する方法であって、その治療又は緩和を必要とする患者に有効量の式I、Ia、又はIbの化合物を投与することを含む、方法を提供する。
【0031】
更に、本発明は、例えば、アルツハイマー病に関連する認知障害などのアルツハイマー病を治療する方法であって、その治療を必要とする患者に有効量の式I、Ia、又はIbの化合物を投与することを含む、方法を提供する。
【0032】
更に、本発明は、例えば、統合失調症に関連する認知障害などの統合失調症を治療する方法であって、その治療を必要とする患者に有効量の式I、Ia、又はIbの化合物を投与することを含む、方法を提供する。
【0033】
更に、本発明は、ADHDを治療する方法であって、その治療を必要とする患者に有効量の式I、Ia、又はIbの化合物を投与することを含む、方法を提供する。
【0034】
この態様の一実施形態では、本発明は、パーキンソン病の治療に使用するための式I、Ia、又はIbの化合物を提供する。特定の一実施形態では、本発明は、パーキンソン病に関連する認知障害の治療に使用するための式I、Ia、又はIbの化合物を提供する。別の特定の実施形態では、本発明は、パーキンソン病に関連する運動障害を緩和するのに使用するための式I、Ia、又はIbの化合物を提供する。
【0035】
更に、本発明は、例えば、統合失調症に関連する認知障害の治療などの、統合失調症の治療に使用するための式I、Ia、又はIbの化合物を提供する。
【0036】
更に、本発明は、ADHDの治療に使用するための式I、Ia、又はIbの化合物を提供する。
【0037】
更に、本発明は、例えば,アルツハイマー病に関連する認知障害の治療などのアルツハイマー病の治療に使用するための式I、Ia、又はIbの化合物を提供する。
【0038】
更に別の態様では、本発明は、例えば、パーキンソン病に関連する認知障害の治療などのパーキンソン病の治療、又はパーキンソン病に関連する運動障害の緩和のための医薬品の製造における式I、Ia、又はIbの化合物の使用を提供する。
【0039】
更に、本発明は、例えば、統合失調症に関連する認知障害の治療などの統合失調症の治療のための医薬品の製造における式I、Ia、又はIbの化合物の使用を提供する。
【0040】
更に、本発明は、例えば、アルツハイマー病に関連する認知障害の治療などのアルツハイマー病の治療のための医薬品の製造における式I、Ia、又はIbの化合物の使用を提供する。
【0041】
更に、本発明は、ADHDの治療のための医薬品の製造における式I、Ia、又はIbの化合物の使用を提供する。
【0042】
本発明の方法で用いられる化合物を製剤化せずに直接投与することは可能であるが、本化合物は、通常、活性成分として式I、Ia、又はIbの化合物と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤、及び/又は賦形剤と、を含む薬学的組成物の形態で投与される。これらの組成物は、経口、舌下、鼻、皮下、静脈内、及び筋肉内を含む様々な経路で投与することができる。そのような薬学的組成物及びそれらを調製するためのプロセスは、当該技術分野において周知である。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(University of the Sciences in Philadelphia,ed.,21st ed.,Lippincott Williams & Wilkins Co.,2005)を参照されたい。
【0043】
本組成物は、好ましくは、単位剤形で製剤化され、各投薬量は、約0.5~約800mgの活性成分を含有する。「単位剤形」という用語は、ヒト対象及び他の哺乳動物のための単位投薬量として好適な物理的に別個の単位を指し、各単位は、少なくとも1つの好適な薬学的に許容される担体、希釈剤、及び/又は賦形剤と関連して、所望の療法効果を生じるように計算された、予め決定された量の活性材料を含有する。実際に投与される化合物の量は、治療される状態、選択される投与経路、投与される実際の化合物、個々の患者の年齢、体重、及び応答、並びに患者の症状の重症度を含む、関連する状況に照らして、医師により決定されることが理解されるであろう。本発明の化合物は、例えば、本発明の薬学的組成物において、アルツハイマー病、パーキンソン病、及び/又は統合失調症を治療するために、例えば、これらの疾患に関連する軽度の認知障害を治療するために慢性投与により使用されることが企図される。
【0044】
本発明の用量レジメンは、ドーパミン作動性CNS障害の治療/予防/抑制または改善に使用される他の薬物と組み合わせて使用され得る。そのような他の薬物(複数可)は、経路によって、および一般的に使用される量で、したがってLY3154207と同時にまたは連続して投与され得る。例えば、本発明の化合物と組み合わされ得るパーキンソン病の治療に有効な他の活性成分には、これらに限定されないが、(a)レボドパ、メレボドパ、及びエチレボドパなどのドーパミン前駆体、並びに(b)プラミペキソール、ロピニロール、アポモルヒネ、ロチゴチン、ブロモクリプチン、カベルゴリン、及びペルゴリドを含む、ドーパミンアゴニスト、(c)セレギリン及びラサギリンを含む、モノアミンオキシダーゼ阻害剤、(d)トルカポン及びエンタカポンを含む、COMT阻害剤、(e)リバスチグミン及びドネペジルを含む、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、(f)セルトラリン、シタロプラム、ミルタザピン、及びトラゾドンを含む、抗うつ薬が含まれる。更に、例えば、本発明の化合物と組み合わされ得るアルツハイマー病の治療に有効な他の活性成分には、これらに限定されないが、リバスチグミン及びドネペジルを含むアセチルコリンエステラーゼ阻害剤、メマンチンを含むNMDAアンタゴニスト、リスペリドン、クエチアピン、アリピプラゾール、オランザピン、及びピマバンセリンを含む特定の抗精神病薬、並びにセルトラリン、シタロプラム、ミルタザピン、及びトラゾドンを含む抗うつ薬が含まれる。
【0045】
本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、障害又は疾患の治療を必要とする哺乳動物、例えば、ヒトを指す。ヒトは、好ましい患者である。本明細書で使用される場合、本発明の化合物によって治療される患者は、ドーパミン作動性CNS障害に罹患しており、そのようなものとしてドーパミンシグナル伝達の障害がこれらの疾患に寄与することが知られているという点で病因学的態様を共有する。本明細書で使用される場合、ドーパミン作動性CNS障害は、パーキンソン病、アルツハイマー病、レビー小体型認知症(LBD)、血管性認知症、統合失調症、ADHD、うつ病、自閉症、慢性筋骨格痛、線維筋痛症、認知機能障害、睡眠障害、過度の日中の眠気、ナルコレプシー、交代勤務障害、外傷性脳損傷、慢性外傷性脳症、肥満及び食欲調節、気分障害、嗜眠、アパシー、並びに嗜癖障害を含む。これらのドーパミン作動性CNS障害を有する患者の同定は、当業者に既知の確立された方法によって達成され得る。
【0046】
本発明は、患者におけるドーパミン作動性障害の治療における、ドーパミン前駆体と同時に、別々に、又は連続して組み合わせた、式I、Ia、又はIbの化合物の使用のための方法を提供する。本発明は、患者におけるパーキンソン病の治療における、ドーパミン前駆体と同時に、別々に、又は連続して組み合わせた、式I、Ia、又はIbの化合物の使用のための方法を提供する。
【0047】
本発明は、患者におけるアルツハイマー病の治療における、ドーパミン前駆体と同時に、別々に、又は連続して組み合わせた、式I、Ia、又はIbの化合物の使用のための方法を提供する。
【0048】
本発明は、患者におけるドーパミン作動性障害の治療における、ドーパミンアゴニストと同時に、別々に、又は連続して組み合わせた、式I、Ia、又はIbの化合物の使用のための方法を提供する。本発明は、患者におけるパーキンソン病の治療における、ドーパミンアゴニストと同時に、別々に、又は連続して組み合わせた、式I、Ia、又はIbの化合物の使用のための方法を提供する。
【0049】
本発明は、患者におけるアルツハイマー病の治療における、ドーパミンアゴニストと同時に、別々に、又は連続して組み合わせた、式I、Ia、又はIbの化合物の使用のための方法を提供する。
【0050】
本発明の実施形態では、患者は、本明細書に記載される投薬レジメンによる治療を必要とする、医学的リスク、状態、又は障害、例えば、ドーパミン作動性CNS障害を有すると診断されているヒトである。本発明の方法によって治療され得る障害が、AD、PD、LBDなどの、確立されて受け入れられた分類によって既知である場合、それらの分類は、様々な周知の医学書に見出され得る。例えば、現在、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disordersの第5版(DSM-5)は、本明細書に記載の障害の多くを同定するための診断ツールを提供する。また、International Classification of Diseases第10版(ICD-10)は、本明細書に記載の障害の多くについての分類を提供する。当業者は、DSM-5及びICD-10に記載のものを含む、本明細書に記載の障害についての代替の命名法、疾病分類学、及び分類システムがあり、用語及び分類システムが医科学の進歩とともに進化することを認識するであろう。パーキンソン病を有する対象における認知機能障害は、一般に神経認知障害と称される。DSM-5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disordersの第5版)の診断基準は、以前のレベルのパフォーマンスからの顕著な認知力低下の証拠(神経心理学的試験によって文書化された個人又は情報提供者の懸念)、及び認知障害が日常生活における自立を妨げる可能性があるか、又はないかを説明している。これは、主要又は軽度の神経認知障害として認定されている。本明細書で使用される「体重減少(weight loss)」は、体重の減少(reduction in body weight)、及び/又は慢性的な体重管理を指し、治療は所望の範囲内の体重の維持を促進する。
【0051】
本明細書で使用される場合、「治療」、「治療すること」、又は「緩和すること(mitigating)」という用語は、全てのプロセスを指すことを意図しており、ここで、既存の障害の遅延、中断、阻止、制御、若しくは停止、及び/又はその症状の低減があり得るが、必ずしも全ての症状の完全な排除を示すとは限らない。
【0052】
本明細書で使用される場合、式I、Ia、又はIbの化合物の「有効量」という用語は、患者におけるドーパミン媒介性応答を増強するのに有効である量、すなわち投薬量を指す。好ましい「有効量」は、未治療の患者と比較して、患者の覚醒状態又は警戒状態を促進することができる量として決定され得る。式I、Ia、又はIbの化合物の有効量又は用量を決定する際に、投与される化合物及びその特定の配合;患者のサイズ、年齢、及び一般的な健康状態;障害の関与の程度又は重症度;個々の患者の応答;投与方法;並びに他の関連する状況を含むがそれらに限定されない、いくつかの要因が考慮される。
【0053】
本明細書で使用される略語は、次のように定義される。
「Bn」は、ベンジルを指す。
「CAS#」は、Chemical Abstracts Registry番号を指す。
「クロチル」は、ブト-2-エン-1-イルを指す。
「CNS」は、中枢神経系を指す。
「1D-NOESY」は、一次元核オーバーハウザー効果NMR分光法を指す。
「DCM」は、ジクロロメタン又は塩化メチレンを指す。
「DIPEA」は、N,N-ジイソプロピルエチルアミンを指す。
「dmso-d6」は、完全に重水素化されたジメチルスルホキシドを指す。
「ee」は、鏡像体過剰率を指す。
「ESMS」は、エレクトロスプレー質量分析法を指す。
「EtOAc」は、酢酸エチルを指す。
「h」は、時間を指す。
「HATU」は、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロリン酸塩又はN-[(ジメチルアミノ)-1H-1,2,3-トリアゾロ-[4,5-b]ピリジン-1-イルメチレン]-N-メチルメタナミニウムヘキサフルオロリン酸塩N-オキシドを指す。
「HPLC」は、高速液体クロマトグラフィーを指す。
「LAH」は、水素化アルミニウムリチウムを指す。
「MeOH」は、メタノール又はメチルアルコールを指す。
「min」は、分を指す。
「NMR」は、核磁気共鳴分光法を指す。
「PG」は、保護基を指す。
「Ph」は、フェニルを指す。
「OAc」は、アセテートを指す。
「rac-」は、ラセミ又はラセミ体を指す。
「RT」は、室温又は周囲温度を指す。
「SFC」は、超臨界流体クロマトグラフィーを指す。
「TBDMS」は、tert-ブチルジメチルシリルを指す。
「TBDPS」は、tert-ブチルジフェニルシリルを指す。
「THF」は、テトラヒドロフランを指す。
「tR」は、保持時間を指す。
「w/w」は、質量の単位としての重量についての重量又は重量による重量を指す。
「wt%」は、重量によるパーセンテージを指す。
「Z」は、保護基としてのベンジルオキシカルボニル、-C(O)OCH2Phを指す。
【0054】
一般化学
本発明の化合物は、当技術分野で既知であり、かつ認識されている一般的な方法により、又は本明細書に記載されるプロセスにより調製され得る。これらのスキームのステップに好適な反応条件は、当技術分野で周知されており、溶媒及び共試薬の適切な置換は、当技術分野の技術内である。同様に、合成中間体は、必要又は所望に応じて様々な周知の技術により単離及び/又は精製されることができることは当業者により認識されるであろうし、頻繁に、後続の合成ステップにおいて様々な中間体を、ほとんど又はまったく精製せずに直接使用することができることになる。更に、当業者であれば、いくつかの状況下で、部分(moieties)が導入される順序が重要ではないことを認識するであろう。
スキーム1
【化18】
【0055】
スキーム1は、化合物8の調製を図示する。当業者は、エステル化塩2を得るために、極性プロトン性溶媒に溶解された、適切に二置換されたフェニルアラニン1(例えば、X=Br、Cl、I、R
4=H、F)が好適な強酸でエステル化され得ることを認識するであろう。塩を水性塩基で洗浄して遊離塩基を得、非プロトン性溶媒に溶解し、適切な酸塩化物を添加することによる後続のアシル化が達成されて、3を得ることができる。適切な強酸中のパラホルムアルデヒドでの処理及びテトラヒドロイソキノリン4を得るための撹拌による2-置換N-アシル化フェニルアラニンメチルエステル3の環化は、当技術分野で周知されている。脱メチル化及び脱炭酸は、酸水溶液で処理し、還流下で撹拌することにより達成されて、対応するアミン塩として5を得ることができる。当業者は、N-保護テトラヒドロイソキノリン6が、アミン塩5を適切な極性非プロトン性溶媒に溶解し、塩基及び好適な無水物又はクロロギ酸アルキルを添加して、tertブチルカルバメート6を得ることにより形成され得ることを認識するであろう。後続のメタノール誘導体7への還元は、極性非プロトン性溶媒中の金属水素化物、水素化ホウ素塩、又はジボランなどの一連の還元剤を使用してもたらされ得る。O保護テトラヒドロイソキノリン8は、最初にN保護テトラヒドロイソキノリン7を適切な強酸で処理し、真空下で濃縮することにより達成され得る。その後、アミン塩は、8を提供するために、適切な非プロトン性溶媒に溶解され、塩基及び好適な保護基(PG)(例えば、PG=OSi、OBn、OMOMなど)で処理され得る。例えば、TBDMS又はTBDPSなどの酸安定性シリル基で一級アルコールを保護することは、当技術分野で周知されている。
スキーム2
【化19】
【0056】
スキーム2は、必要な置換された中間体3(例えば、X=Br、Cl、I、R
4=F)の別の調製物を示す。当業者であれば、エン-カルバメミン酸塩15(例えば、PG=Z)を調製するために、適切に二置換されたベンズアルデヒド13(R
4=F)とN保護されたアミノ-2-ジメトキシホスホリル酢酸塩14との間のホーナー-ワズワース-エモンズ縮合が使用され得る。適切なキラル助剤を用いた、例えば、Rh(I)遷移金属触媒を用いたH
2下での後続のキラル還元は、当該技術分野で十分に記載されているように、N保護された16を得る。N保護基の交換は、3を得るために当業者に認識される様々な条件下で達成され得る。化合物3に対する後続の変換は、化合物8(例えば、X=Br、Cl、I、R
4=F)を得るためにスキーム1のように実施され得る。
スキーム3
【化20】
【0057】
スキーム3は、タイプI’の化合物の合成を図示する。テトラヒドロイソキノリン8からのイミン形成は、当業者に認識可能な様々な酸化条件下、具体的には、二級アミンのハロゲン化及び後続の好適な強塩基での脱離により、ジヒドロイソキノリン9を提供して達成され得る。立体選択的なグリニャール反応は、イミン9を好適なハロゲン化アルキルマグネシウムで処理して、トランステトラヒドロイソキノリン10を得ることにより使用され得る。テトラヒドロイソキノリン10の相対的構成は、適切なNMR分光実験、具体的には1D-NOESYを用いて決定され得る。後続のN-アシル化は、当該技術分野で周知されているアミドカップリング技法、例えば、化合物11を調製するための穏やかな非求核性塩基の存在下でのベンゾトリアゾール-1-イル-オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェートを用いて達成され得る。適切に置換された化合物11(例えば、X=Br、Cl、Iなど)を使用した炭素-炭素結合形成は、当該技術分野で周知されているように、Pd、Pt、Ni、又はCuを使用するなどの遷移金属触媒作用の下で、適切なボロン酸エステル又はトリフルオロボラヌイド塩でもたらされ得る。あるいは、適切に置換されたアルケン又はアルキンとのヘック型又は薗頭型条件下でのカップリングは、それぞれ、当該技術分野で周知のように達成され得る。例えば、タイプ12の置換シクロプロピル化合物を得るために、適切に置換されたシクロプロピルトリフルオロボラヌイドとのパラジウム媒介クロスカップリング11が達成され得る。加えて、タイプ12のアルキル置換化合物を得るために、適切に置換されたアルケンとのパラジウム媒介クロスカップリング11が達成され得る。当業者は、PG=OSi、OBn、OMOMなどの保護されたアルコール12の脱保護が、様々な条件下で実行され得ることを認識するであろう。例えば、シリル保護基は、タイプI’のキラル化合物を得るためにフッ化テトラブチルアンモニウムを用いて除去され得る。
【0058】
以下の例示的な調製及び実施例では、溶媒は一般に減圧下で除去(蒸発)される。一部の手順では、示されている収率は、蒸発又は濾過により単離され、更に精製することなく直接使用される生成物の代表的な粗収率である。記載されるテトラヒドロイソキノリンフレームワーク周辺の相対的な立体化学は、適切なNMR分光法、特に1D-NOESYによって特定されている。側鎖置換における置換シクロプロピル基の周りの立体配置の例では、絶対立体化学の決定なしに相対的な立体配置が記載される。側鎖置換における他のキラル中心の例では、絶対配置は、決定されていない。これらの例の両方では、ジアステレオマーのペアは、キラルクロマトグラフィー技法によって分離されるとき、「異性体1」又は「異性体2」と命名される。
【0059】
調製物1
メチル2-ブロモ-D-フェニルアラニネート塩酸塩
【化21】
2-ブロモ-D-フェニルアラニン(22.4g、91.8mmol)をMeOH(459mL)に溶解する。塩化アセチル(65.3mL、917.7mmol)を室温で添加し、得られた反応混合物を36時間撹拌する。反応混合物を減圧下で濃縮して、表題化合物(27.2g、>99%収率)を得る。ESMS(m/z)258/260[M-Cl、
79Br/
81Br]。
【0060】
調製物2
メチル2-ブロモ-N-(メトキシカルボニル)-D-フェニルアラニネート
【化22】
メチル2-ブロモ-D-フェニルアラニネート塩酸塩(27.2g、92.3mmol)をDCM(923mL)及び水(185mL)の二相混合物に溶解する。NaHCO
3(31g、369.4mmol)及びクロロギ酸メチル(7.9mL、101.6mmol)を室温で添加し、得られた混合物を2.5時間撹拌する。混合物を水で希釈し、DCMで抽出する。有機抽出物をNa
2SO
4で乾燥させ、濾過し、濾液を減圧下で濃縮する。得られた残留物を、ヘキサン中の10-75%EtOAcの勾配で溶出する、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、所望のクロマトグラフィー画分の溶媒蒸発後、表題化合物(29.1g、>99%収率)を得る。ESMS(m/z):316/318[M+H、
79Br/
81Br]。
【0061】
調製物3
(3R)-5-ブロモ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2,3-ジカルボン酸ジメチル
【化23】
メチル2-ブロモ-N-(メトキシカルボニル)-D-フェニルアラニネート(29.1g、92.1mmol)及びパラホルムアルデヒド(9.13g、101.3mmol)の混合物を、濃縮H
2SO
4(38.4mL、719.9mmol)を含有する氷酢酸(115mL、2mol)中で室温で7時間撹拌する。反応混合物を水とEtOAcとに分配し、層を分離し、水層をEtOAcで抽出する。合わせた有機抽出物をNa
2SO
4で乾燥させ、濾過し、濾液を減圧下で濃縮する。得られた残留物を、ヘキサン中の5-40%EtOAcの勾配で溶出する、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、所望のクロマトグラフィー画分の溶媒蒸発後、表題化合物(27.6g、91%収率)を得る。ESMS(m/z):328/330[M+H、
79Br/
81Br]。
【0062】
調製物4
(3R)-5-ブロモ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸メチル塩酸塩
【化24】
(3R)-5-ブロモ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2,3-ジカルボン酸ジメチル(27.6g、84mmol)を、5N HCl(330.6mL、1.7mol)に溶解し、得られた混合物を3日間加熱還流する。混合物を減圧下で濃縮して、白色の固体をもたらす。固体を濾過によって収集し、ジエチルエーテルで洗浄し、40℃で一晩真空下で乾燥させて、(3R)-5-ブロモ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸塩酸塩(1:1)(20.8g、71.1mmol)をもたらす。塩化アセチル(50.6mL、711.0mmol)をMeOH(474mL)中の(3R)-5-ブロモ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸塩酸塩(1:1)(20.8g、71.1mmol)の0℃の混合物に添加する。混合物を室温まで加温し、36時間撹拌する。混合物を減圧下で濃縮し、乾燥させて、表題化合物(21.9g、85%収率)をもたらす。ESMS(m/z):270/272[M-Cl、
79Br/
81Br]。
【0063】
調製物5
2-tert-ブチル-3-メチル-(3R)-5-ブロモ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2,3-ジカルボン酸塩
【化25】
(3R)-5-ブロモ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸メチル塩酸塩(21.0g、68.5mmol)を1,4-ジオキサン(685mL)に溶解する。飽和水性NaHCO
3(685mL、17.5mol)及び二炭酸ジ-tert-ブチル(29.9g、137.0mmol)を室温で加え、二相混合物を室温で90分間撹拌する。混合物をEtOAcで抽出し、有機抽出物をNa
2SO
4で乾燥させ、濾過し、濾液を減圧下で濃縮する。得られた残留物を、ヘキサン中の5-50%EtOAcの勾配で溶出する、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、所望のクロマトグラフィー画分の溶媒蒸発後、表題化合物(19.5g、77%収率)をもたらす。MS(m/z):270/272[M-
tBoc+H、
79Br/
81Br]。
【0064】
調製物6
(3R)-5-ブロモ-3-(ヒドロキシメチル)-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸tert-ブチル
【化26】
THF中の水素化ホウ素リチウム(99.4mL、198.8mmol)及びMeOH(10.1mL、248.5mmol)の2M溶液を、THF(497mL)中の2-tert-ブチル-3-メチル-(3R)-5-ブロモ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2,3-ジカルボン酸塩(18.4g、49.7mmol)の溶液に加え、得られた混合物を室温で40分間撹拌する。反応を水でクエンチし、EtOAcで抽出する。有機抽出物を分離し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、濾液を減圧下で濃縮する。得られた残留物を、ヘキサン中の5-80%EtOAcの勾配で溶出する、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製する。溶媒を所望のクロマトグラフィー画分から蒸発させ、得られた残留物を高真空下で一晩乾燥させて、表題化合物を白色の固体(19.1g、>99%収率)としてもたらす。ESMS(m/z):286/288[M-
tBu+H、
79Br/
81Br]。
【0065】
調製物7
[(3R)-5-ブロモ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-イル]メトキシ-tert-ブチル-ジメチル-シラン
【化27】
トリフルオロ酢酸(75.5mL、998.3mmol)をDCM(226mL)中の(3R)-5-ブロモ-3-(ヒドロキシメチル)-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸tert-ブチル(15.5g、45.3mmol)の溶液に室温で添加する。反応混合物を、室温で30分間撹拌し、減圧下で濃縮する。得られた残留物を、真空下で乾燥させて、[(3R)-5-ブロモ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-イル]メタノール2,2,2-トリフルオロ酢酸を湿った固体としてもたらす。[(3R)-5-ブロモ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-イル]メタノール2,2,2-トリフルオロ酢酸をDCM(753mL)に溶解する。1H-イミダゾール(51.3g、753mmol)、N,N-ジメチル-4-ピリジンアミン(460mg、3.77mmol)、及びt-ブチルジメチルクロロシラン(13.6g、90.4mmol)を添加し、得られた混合物を一晩室温で撹拌する。飽和NH
4Cl溶液を添加し、混合物をDCMで抽出する。DCM層を分離し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、濾液を減圧下で濃縮する。(3R)-5-ブロモ-3-(ヒドロキシメチル)-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸tert-ブチル(6.6g、19.4mmol)と実質的に同じ反応実行からの粗生成物を組み合わせる。合わせた粗生成物を、5-40%勾配のヘキサン中EtOAcで溶出する、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、所望のクロマトグラフィー画分の溶媒蒸発後、表題化合物(14.3g、89%収率)をもたらす。ESMS(m/z):356/358[M+H、
79Br/
81Br]。
【0066】
調製物8
[(3R)-5-ブロモ-3,4-ジヒドロイソキノリン-3-イル]メトキシ-tert-ブチル-ジメチル-シラン
【化28】
[(3R)-5-ブロモ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-イル]メトキシ-tert-ブチル-ジメチル-シラン(4.2g、11.8mmol)をジエチルエーテル(118mL)に溶解し、N-クロロスクシンイミド(2.36g、17.7mmol)を加える。得られた混合物を、室温で30分間撹拌し、減圧下で濃縮する。得られた残留物をMeOH中KOHの5%溶液(42.0mL、30.3mmol)に溶解し、室温で30分間撹拌する。混合物を水中に注ぎ、DCMで抽出する。DCM抽出物をNa
2SO
4で乾燥させ、濾過し、濾液を減圧下で濃縮する。得られた残留物を、ヘキサン中の5-100%EtOAcの勾配で溶出する、シリカでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物(3.40g、82%収率)を得る。ESMS(m/z):354/356[M+H、
79Br/
81Br]。
【0067】
あるいは、N-クロロスクシンイミド(106.7g、790mmol)を、THF(3.85L)中の[(3R)-5-ブロモ-3,4-ジヒドロイソキノリン-3-イル]メトキシ-tert-ブチル-ジメチル-シラン(220g、520mmol)の溶液に、室温で、適切な容器において、30分間撹拌しながら添加する。混合物を減圧下で濃縮し、残留物を室温で30分間撹拌しながら、メタノール中5%w/wのKOH(2.2L、1.7モル)に溶解する。混合物を水(3L)に加え、DCM(3×1L)で3回抽出する。合わせた有機抽出物を無水MgSO4で乾燥させ、濾過し、濾液を減圧下で濃縮して、表題化合物(210g、>99%収率)をもたらす。ESMS(m/z):354/356[M+H、79Br/81Br]。
【0068】
調製物9
[(1S,3R)-5-ブロモ-1-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-イル]メトキシ-tert-ブチル-ジメチル-シラン
【化29】
[(3R)-5-ブロモ-3,4-ジヒドロイソキノリン-3-イル]メトキシ-tert-ブチル-ジメチル-シラン(3.4g、9.6mmol)をジエチルエーテル(160mL)に溶解し、ドライアイス-アセトン浴において-78℃に冷却する。THF中の塩化メチルマグネシウムの3M溶液(26.9mL、80.6mmol)を滴下する。混合物を室温までゆっくり加温し、一晩撹拌する。反応混合物を飽和NH
4Cl溶液の添加によってゆっくりクエンチする。得られた混合物をDCMで抽出し、NaSO
4で乾燥させ、濾過し、濾液を減圧下で濃縮する。粗生成物を、1.7mmolの[(3R)-5-ブロモ-3,4-ジヒドロイソキノリン-3-イル]メトキシ-tert-ブチル-ジメチル-シランと実質的に同じ反応実行からの材料と組み合わせる。合わせた残留物を、ヘキサン中の5-65%EtOAcの勾配で溶出する、シリカでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、所望のクロマトグラフィー画分の溶媒蒸発後、表題化合物(3.78g、>99%収率)を得る。ESMS(m/z):370/372[M+H、
79Br/
81Br]。
【0069】
化合物[(1S,3R)-5-ブロモ-1-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-イル]メトキシ-tert-ブチル-ジメチル-シランの相対構成は、1D-NOESYを使用するNMR分光法によって決定される。1.30ppmでメチル基を選択的に励起すると、3.11ppmでHaのNOEが発生する。このNOEの強化は、メチル及びHaがリング(トランス異性体)の同じ側にある構成とのみ一致するが、これは、シス異性体ではメチルプロトンがHaから離れすぎてNOEを示すことができないためである。3位の絶対化学はRであることがわかっているため、1位の絶対化学はSであると推定される。
【化30】
【0070】
調製物10
1-[(1S,3R)-5-ブロモ-3-[[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシメチル]-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]-2-(2,6-ジクロロフェニル)エタノン
【化31】
2,6-ジクロロフェニル酢酸(3.7g、18mmol)を、[(1S,3R)-5-ブロモ-1-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-イル]メトキシ-tert-ブチル-ジメチル-シラン(5g、13.5mmol)、HATU(7.7g、20mmol)、及びDIPEA(7.1mL、41mmol)とDCM(70mL)中で組み合わせる。混合物を窒素のブランケット下、室温で2時間撹拌する。反応溶液を、減圧下で濃縮し、得られた残留物を、ヘキサン中の0-25%EtOAcの勾配で溶出する、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、所望のクロマトグラフィー画分の溶媒蒸発後、表題化合物(6.2g、81%収率)をもたらす。ESMS(m/z):558(M+1)。
【0071】
調製物11
トランス-エチル-2-[(1S,3R)-3-[[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシメチル]-2-[2-(2,6-ジクロロフェニル)アセチル]-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-5-イル]シクロプロパンカルボン酸塩
【化32】
1-[(1S,3R)-5-ブロモ-3-[[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシメチル]-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]-2-(2,6-ジクロロフェニル)エタノン(500mg、0.9mmol)を、1,4-ジオキサン(8mL、93.2mmol)及び水(2mL)中のカリウム[トランス-2-エトキシカルボニルシクロプロピル]-トリフルオロ-ボラヌイド(300mg、1.3mmol、PCT/FR2013/053057を参照されたい)、KH
2PO
4(370mg、2.7mmol)、及び1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン-パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン複合体(115mg、0.1mmol)と、マイクロ波バイアルにおいて組み合わせる。バイアルにキャップをし、窒素でパージし、2時間マイクロ波で120℃で照射する。反応溶液を、減圧下で濃縮し、得られた残留物を、ヘキサン中の0-25%EtOAcの勾配で溶出する、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、所望のクロマトグラフィー画分の溶媒蒸発後、表題化合物をトランス異性体の混合物(245mg、46%収率)としてもたらす。ESMS(m/z):590(M+1)。
【0072】
調製物12
1-[(1S,3R)-3-[[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシメチル]-5-[トランス-2-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)シクロプロピル]-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]-2-(2,6-ジクロロフェニル)エタノン
【化33】
トランス-2-[(1S,3R)-3-[[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシメチル]-2-[2-(2,6-ジクロロフェニル)アセチル]-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-5-イル]シクロプロパンカルボン酸エチル(240mg、0.4mmol)をTHF(4ml)中で撹拌し、0℃に冷却する。THF中の塩化メチルマグネシウムの3M溶液(1.75mL、5.25mmol)を、シリンジを介して0℃で5分かけて滴下する。得られた混合物を窒素下で1時間撹拌し、飽和水性NH
4Clでクエンチし、EtOAcで抽出する。有機層を分離し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、得られた濾液を減圧下で濃縮して、追加の精製なしでの使用に適した、シクロプロピル置換基の周りのトランス異性体の混合物として表題化合物を得る。ESMS(m/z):576(M+1)。
【0073】
調製物13
シス-2-[(1S,3R)-3-[[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシメチル]-2-[2-(2,6-ジクロロフェニル)アセチル]-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-5-イル]シクロプロパンカルボン酸エチル
【化34】
本質的には調製物2に記載される方法を使用して、1-[(1S,3R)-5-ブロモ-3-[[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシメチル]-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]-2-(2,6-ジクロロフェニル)エタノン(500mg、0.9mmol)をカリウム[シス-2-エトキシカルボニルシクロプロピル]-トリフルオロ-ボラヌイド(WZ5-E16784-076-B、300mg、1.3mmol、PCT/FR2013/053057を参照されたい)と組み合わせて、表題化合物をシス異性体の混合物(280mg、53%収率)としてもたらす。ESMS(m/z):590(M+1)。
【0074】
調製物14
1-[(1S,3R)-3-[[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシメチル]-5-[シス-2-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)シクロプロピル]-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]-2-(2,6-ジクロロフェニル)エタノン異性体1
及び
1-[(1S,3R)-3-[[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシメチル]-5-[シス-2-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)シクロプロピル]-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]-2-(2,6-ジクロロフェニル)エタノン異性体2
【化35】
本質的には調製物3に記載される方法、シス-2-[(1S,3R)-3-[[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシメチル]-2-[2-(2,6-ジクロロフェニル)アセチル]-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-5-イル]シクロプロパンカルボン酸エチル(280mg、0.5mmol)及びTHF中の臭化メチルマグネシウムの3M溶液(2mL、6mmol)の混合物を使用して、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによるその後の精製で、ヘキサン中の0-25%EtOAcの勾配を使用して、表題化合物を分離したシス異性体、1-[(1S,3R)-3-[[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシメチル]-5-[シス-2-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)シクロプロピル]-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]-2-(2,6-ジクロロフェニル)エタノン異性体1(110mg、38%収率)及び1-[(1S,3R)-3-[[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシメチル]-5-[シス-2-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)シクロプロピル]-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]-2-(2,6-ジクロロフェニル)エタノン異性体2(65mg、23%収率)として、所望のクロマトグラフィー画分の溶媒蒸発後にもたらす。各々のESMS(m/z):576(M+1)。
【0075】
調製物15
4-[(1S,3R)-3-[[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシメチル]-2-[2-(2-クロロ-6-フルオロ-フェニル)アセチル]-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-5-イル]ブタン-2-オン
【化36】
1-[(1S,3R)-5-ブロモ-3-[[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシメチル]-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]-2-(2-クロロ-6-フルオロ-フェニル)エタノン(2g、3.7mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(169mg、0.2mmol)、及びジ-tert-ブチル-(1-フェニルインドール-2-イル)ホスファン(187mg、0.55mmol)をDMF(12.3mL)に懸濁する。N,N-ジシクロヘキシルメチルアミン(0.9mL、4mmol)及びブタ-3-エン-2-オール(0.45mL、5.2mmol)を加え、混合物を窒素で10分間バブリングすることによって脱気する。反応容器を封止し、撹拌しながら1.5時間100℃に加熱する。反応混合物を室温に冷却し、EtOAcで希釈する。有機層を分離し、飽和水性NaClで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。得られた残留物を、ヘキサン中の5-30%EtOAcの勾配を使用する、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、所望のクロマトグラフィー画分の溶媒蒸発後、表題化合物を白色の泡(1.5g、75%収率)としてもたらす。ESMS(m/z):532(M+1)。
【0076】
調製物16
1-((1S,3R)-3-(((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)-5-((R)-4,4-ジフルオロ-3-メチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)ブチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)-2-(2-クロロ-6-フルオロフェニル)エタン-1-オン
及び
1-((1S,3R)-3-(((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)-5-((S)-4,4-ジフルオロ-3-メチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)ブチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)-2-(2-クロロ-6-フルオロフェニル)エタン-1-オン
【化37】
4-[(1S,3R)-3-[[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシメチル]-2-[2-(2-クロロ-6-フルオロ-フェニル)アセチル]-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-5-イル]ブタン-2-オン(580mg、1.1mmol)及び18-クラウン-6(29mg、0.1mmol)を1,2-ジメトキシエタン(5.5mL)に溶解する。(ジフルオロメチル)トリメチルシラン(0.30mL、2mmol)、続いてCsF(17mg、0.1mmol)を添加する。混合物を60℃に加熱し、一晩撹拌する。追加の(ジフルオロメチル)トリメチルシラン(0.30mL、2mmol)、18-クラウン-6(29mg、0.1mmol)、及びCsF(17mg、0.1mmol)を加え、反応混合物を60℃で4時間撹拌する。混合物を室温に冷却し、EtOAcで希釈し、分離した有機抽出物を飽和水性NaClで洗浄する。有機層をNa
2SO
4で乾燥させ、濾過し、濾液を減圧下で濃縮する。得られた残留物を、ヘキサン中の0-10%EtOAcの勾配を使用する、シリカでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、所望のクロマトグラフィー画分の溶媒蒸発後、表題化合物の混合物を白色の泡(493mg、68%収率)としてもたらす。ESMS(m/z):656(M+1)。
【0077】
調製物17
(Z)-2-(((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ)-3-(2-ブロモ-3-フルオロフェニル)アクリル酸メチル
【化38】
2-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-2-ジメトキシホスホリル-酢酸メチル(25.5g、76.9mmol)をDCM(250mL)に溶解し、溶液を0℃に冷却する。1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(12mL、79.9mmol)を添加し、混合物を0℃で30分間撹拌する。DCM(250mL)中の2-ブロモ-3-フルオロ-ベンズアルデヒド(13.0g、64mmol)の溶液を0℃で20分かけてゆっくりと添加する。混合物を0℃で2時間撹拌する。混合物を分液漏斗に移し、飽和水性NH
4Cl溶液(200mL)及び飽和水性NaCl(200mL)で連続して洗浄する。有機層をNa
2SO
4で乾燥させ、濾過し、濾液を減圧下で濃縮して、白色の固体を得る。固体を高温のEtOAcから再結晶化し、濾過によって収集して、表題化合物を白色の固体(25g、80%収率)としてもたらす。ESMS(m/z):407(M+1)。
【0078】
調製物18
(R)-2-(((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ)-3-(2-ブロモ-3-フルオロフェニル)プロパン酸メチル
BMD-E17046-003
【化39】
グローブボックス内で、(Z)-2-(((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ)-3-(2-ブロモ-3-フルオロフェニル)アクリル酸メチル(26g、63.8mmol)を、MeOH(300mL)を含有するオートクレーブ容器に加える。[((R)-tert-ブチルメチルホスフィノ)(ジ-tert-ブチルホスフィノ)アミン](1,5-シクロオクタジエン)ロジウム(I)テトラフルオロホウ酸塩(430mg、0.8mmol)を加え、オートクレーブ容器を封止し、グローブボックスから取り出す。混合物をH
2ガスで15秒間フラッシュし、100psiのH
2に加圧する。得られた混合物を室温で15時間撹拌する。オートクレーブ容器を排気し、混合物を減圧下で濃縮して、更なる精製なしでの使用に適した、白色の固体として表題化合物を得る(26.3g、98%収率)。ESMS(m/z):410(M+1)。
【0079】
分析的に純粋な試料を得るため、粗生成物の一部分(66mg)を、ヘキサン中の15%EtOAcで溶出する、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、所望のクロマトグラフィー画分の溶媒蒸発後、白色の固体として生成物を得る。キラルHPLC分析(CHIRALCEL(登録商標)OJ-Hカラム、0.2%イソプロパノール/MeOH、1mL/分):メジャーエナンチオマーtR:2.981分、マイナーエナンチオマーtR:3.557分。測定値>99%ee。
【0080】
調製物19
(R)-3-(2-ブロモ-3-フルオロフェニル)-2-((メトキシカルボニル)アミノ)プロパン酸メチル
【化40】
(R)-2-(((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ)-3-(2-ブロモ-3-フルオロフェニル)プロパン酸メチル(21.25g、51.8mmol)をDCM(110mL)に溶解し、酢酸中のHBrの33%溶液(28.1mL、155mmol)を加える。得られた混合物を室温で1時間撹拌する。水(100mL)及びDCM(100mL)を添加し、得られた混合物を15分間激しく撹拌する。有機層を分離し、廃棄する。DCM(200mL)及びNa
2CO
3(35.1g、331.5mmol)を水層に添加する。クロロギ酸メチル(5.2mL)を混合物に添加し、得られた混合物を一晩室温で撹拌する。混合物をDCMで抽出する。合わせた有機抽出物を飽和水性NaClで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、濾液を減圧下で濃縮して、表題を白色の固体(13.6g、78%収率)としてもたらす。ESMS(m/z):333(M+1)。
【0081】
調製物20
(R)-5-ブロモ-6-フルオロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸塩酸塩
【化41】
(R)-3-(2-ブロモ-3-フルオロフェニル)-2-((メトキシカルボニル)アミノ)プロパン酸メチル(17g、50.9mmol)及びパラホルムアルデヒド(6.9g、76.4mmol)を酢酸(128mL)に懸濁する。溶液を0℃に冷却し、濃縮H
2SO
4(43mL)を添加する。得られた混合物を35℃に加熱し、一晩撹拌する。反応混合物を室温に冷却し、水(200mL)に注ぐ。得られた懸濁液をEtOAcで抽出し、合わせた有機抽出物を飽和水性NaClで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、濾液を減圧下で濃縮する。得られた残留物を濃縮HCl(231mL)に溶解し、得られた混合物を一晩、還流冷却器を備えた丸底フラスコにおいて120℃に加熱する。反応混合物を室温に冷却し、減圧下で50℃で濃縮する。得られた残留物を真空下40℃で18時間乾燥させて、表題化合物を無色固体として得る(15g、94%収率)。ESMS(m/z):273(M+1)。
【0082】
調製物21
(R)-(5-ブロモ-6-フルオロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-イル)メタノール
【化42】
(R)-5-ブロモ-6-フルオロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸塩酸塩(9.95g、32.0mmol)をTHF(80mL)に懸濁し、混合物を0℃に冷却する。ボラン-テトラヒドロフラン複合体の1M溶液(96mL、96mmol)をゆっくりと加える。混合物を60℃に加熱し、一晩撹拌する。反応混合物を0℃に冷却し、MeOH(20mL)及び飽和水性NH
4Cl溶液(40mL)を加え、混合物を室温で10分間撹拌する。水性5N HCl(60mL)を加え、得られた混合物を45℃に4時間加熱する。混合物を0℃に冷却し、21wt%の濃縮水性NH
4OHを添加する。混合物を室温まで加温する。得られた混合物を3:1のCHCl
3:イソプロパノールで抽出する。合わせた有機抽出物を飽和水性NaClで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、濾液を減圧下で濃縮して、表題化合物をベージュ色の固体(9.5g、86%収率)としてもたらす。ESMS(m/z):259(M+1)。
【0083】
調製物22
(R)-5-ブロモ-3-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)-6-フルオロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン
【化43】
(R)-(5-ブロモ-6-フルオロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-イル)メタノール(12.6g、48.3mmol)をDCM(185mL)及びDMF(146mL)の混合物に溶解する。イミダゾール(16.4g、241.5mmol)及び4,4-ジメチルアミノピリジン(118mg、1mmol)を加え、続いてtert-ブチルクロロジフェニルシラン(13.8mL、53.1mmol)を加える。得られた混合物を室温で1時間撹拌する。MeOH(100mL)を添加し、混合物を更に1時間撹拌する。飽和水性NH
4Cl溶液(200mL)を添加し、混合物をDCMで抽出する。合わせた有機抽出物を飽和水性NaClで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、濾液を減圧下で濃縮する。得られた残留物を、ヘキサン中の2-50%EtOAcの勾配で溶出する、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、所望のクロマトグラフィー画分の溶媒蒸発後、表題化合物を油(10.5g、45%収率)として得る。ESMS(m/z):498 M+1)。
【0084】
調製物23
(R)-5-ブロモ-3-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)-6-フルオロ-3,4-ジヒドロイソキノリン
【化44】
(R)-5-ブロモ-3-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)-6-フルオロ-1,2,3,4-テトラ-ヒジソキノリン(10.9g、21.9mmol)をTHF(200mL)に溶解し、N-クロロスクシンイミド(4.4g、32.9mmol)を加える。得られた混合物を、室温で40分間撹拌し、減圧下で濃縮する。得られた残留物をMeOH(100mL)中の0.75MのKOHに溶解し、室温で30分間撹拌する。反応混合物を水(50mL)で希釈し、DCMで抽出する。合わせた有機抽出物を飽和水性NaClで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、濾液を濃縮する。得られた残留物を、ヘキサン中の5-50%EtOAcの勾配で溶出する、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、所望のクロマトグラフィー画分の溶媒蒸発後、表題化合物を無色の油(9.63g、88%収率)として得る。ESMS(m/z):496(M+1)。
【0085】
調製物24
(1S,3R)-5-ブロモ-3-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)-6-フルオロ-1-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン
【化45】
(R)-5-ブロモ-3-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)-6-フルオロ-3,4-ジヒドロイソキノリン(7.5g、15mmol)を窒素下でtert-ブチルメチルエーテル(190mL)に溶解し、溶液を-15℃に冷却する。THF(20mL、60mmol)中の塩化メチルマグネシウムの3M溶液を撹拌しながら滴下し、反応混合物を室温まで加温し、更に2時間撹拌する。混合物を0℃に冷却し、MeOH(4mL)及び飽和水性NH
4Cl(4mL)を連続して添加する。得られた混合物をDCMで抽出する。合わせた有機抽出物を飽和水性NaClで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、濾液を減圧下で濃縮する。得られた残留物を、DCM中の2-5%tert-ブチルメチルエーテルの勾配で溶出する、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、所望のクロマトグラフィー画分の溶媒蒸発後、表題化合物を黄色の油(1.7g、23%収率)としてもたらす。ESMS(m/z):512(M+1)。
【0086】
調製物25
1-[(1S,3R)-5-ブロモ-3-[[tert-ブチル(ジフェニル)シリル]オキシメチル]-6-フルオロ-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]-2-(2-クロロ-6-フルオロ-フェニル)エタノン
【化46】
(1S,3R)-5-ブロモ-3-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)-6-フルオロ-1-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン(5.2g、10.1mmol)をDMF(101mL)に溶解する。2-(2-クロロ-6-フルオロ-フェニル)酢酸(2.5g、13.2mmol)、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロリン酸塩(5g、13.2mmol)、及びDIPEA(8.8mL、50.6mmol)を連続して添加し、得られた混合物を室温で一晩撹拌する。水(200mL)を添加し、混合物をEtOAcで抽出する。合わせた有機抽出物を飽和水性NaClで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、濾液を減圧下で濃縮する。得られた残留物を、ヘキサン中の0-25%EtOAcの勾配で溶出する、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、所望のクロマトグラフィー画分の溶媒蒸発後、表題化合物を白色の泡(6.3g、91%収率)として得る。ESMS(m/z):682(M+1)。
【0087】
調製物26
1-[(1S,3R)-3-[[tert-ブチル(ジフェニル)シリル]オキシメチル]-6-フルオロ-5-(3-ヒドロキシ-3-メチル-ブタ-1-イニル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]-2-(2-クロロ-6-フルオロ-フェニル)エタノン
【化47】
1-[(1S,3R)-5-ブロモ-3-[[tert-ブチル(ジフェニル)シリル]オキシメチル]-6-フルオロ-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]-2-(2-クロロ-6-フルオロ-フェニル)エタノン(5.8g、8.5mmol)、トリ-tert-ブチルホスフィン(クロロ)(クロチル)パラジウム(II)(675mg、1.7mmol)、及び2-チオフェンカルボン酸第一銅(258mg、1.35mmol)を500mLの丸底フラスコに加える。フラスコを排気し、窒素で再充填する。DMF(60mL)、DIPEA(6mL、42.5mmol)、及び2-メチルブタ-3-イン-2-オール(4.1mL、42.2mmol)を加える。反応混合物を40℃に加熱し、一晩撹拌した。混合物を室温に冷却し、EtOAcで希釈し、相を分離する。有機層を水及び飽和水性NaClで連続して洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、濾液を減圧下で濃縮する。得られた残留物を、ヘキサン中の20-40%EtOAcの勾配で溶出する、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、所望のクロマトグラフィー画分の溶媒蒸発後、表題化合物を白色の泡(5.4g、93%収率)として得る。ESMS(m/z):686(M+1)。
【0088】
調製物27
1-[(1S,3R)-3-[[tert-ブチル(ジフェニル)シリル]オキシメチル]-6-フルオロ-5-(3-ヒドロキシ-3-メチル-ブチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]-2-(2-クロロ-6-フルオロ-フェニル)エタノン
【化48】
Parrシェーカーを窒素でパージし、5wt%の炭素上硫化白金(2.5g)を添加する。容器を再び窒素でパージする。EtOAc(50mL)を加える。EtOAc(50mL)に溶解した1-[(1S,3R)-3-[[tert-ブチル(ジフェニル)シリル]オキシメチル]-6-フルオロ-5-(3-ヒドロキシ-3-メチル-ブタ-1-イニル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]-2-(2-クロロ-6-フルオロ-フェニル)エタノン(5.4g、7.9mmol)の溶液を添加する。反応容器をH
2ガスでパージし、60psiのH
2に加圧する。反応混合物を室温で3時間振盪する。EtOAc(30mL)に懸濁した追加の5wt%の炭素上硫化白金(1.21g)を添加し、容器を60psiのH
2に再加圧する。反応容器を更に8時間振盪する。容器を減圧し、窒素でパージする。得られた懸濁液を濾過し、濾液を減圧下で濃縮する。得られた残留物を、ヘキサン中の0-100%EtOAcの勾配(勾配0-100%)で溶出する、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、所望のクロマトグラフィー画分の溶媒蒸発後、表題化合物を白色の泡(5.33g、7.72mmol)として得る。MS(m/z):690.4(M+1)。
【0089】
調製物28
トランス-2-((1S,3R)-3-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)-2-(2-(2-クロロ-6-フルオロフェニル)アセチル)-6-フルオロ-1-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)シクロプロパン-1-カルボン酸エチル
【化49】
1-[(1S,3R)-5-ブロモ-3-[[tert-ブチル(ジフェニル)シリル]オキシメチル]-6-フルオロ-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]-2-(2-クロロ-6-フルオロ-フェニル)エタノン(665mg、1mmol)、rac-[(トランス-2-エトキシカルボニルシクロプロピル]-トリフルオロホウ酸カリウム(CAS#1612792-88-7、PCT/FR2013/053057、2013年12月12日を参照されたい)(257mg、1.2mmol)、ヨウ化ジ(1-アダマンタニル)-n-ブチル-ホスホニウム(50mg、0.1mmol)、[(ジ(1-アダマンチル)-ブチルホスフィン)-2-(2’-アミノ-1,1’-ビフェニル)]パラジウム(II)メタンスルホン酸塩(75mg、0.1mmol)、及びCs
2CO
3(631mg、1.9mmol)を、トルエン(10mL)及び水(1mL)の混合物に懸濁する。混合物を窒素で5分間脱気し、バイアルを封止し、一晩撹拌しながら100℃に加熱する。反応混合物を室温に冷却し、EtOAcで希釈する。得られた混合物を水、飽和水性NaHCO
3、水、及び飽和水性NaClで連続して洗浄し、層を分離する。有機相をMgSO
4で乾燥させ、濾過し、濾液を減圧下で濃縮する。得られた残留物を、ヘキサン中の0-100%エチルtert-ブチルエーテルの勾配で溶出する、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、所望のクロマトグラフィー画分の溶媒蒸発後、表題化合物の混合物を黄色の固体(448mg、61%収率)として得る。ESMS(m/z):716(M+1)。
【0090】
調製物29
1-[(1R,3R)-3-[[tert-ブチル(ジフェニル)シリル]オキシメチル]-6-フルオロ-5-[(トランス-2-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)シクロプロピル]-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]-2-(2-クロロ-6-フルオロ-フェニル)エタノン
【化50】
トランス-2-((1S,3R)-3-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)-2-(2-(2-クロロ-6-フルオロフェニル)アセチル)-6-フルオロ-1-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)シクロプロパン-1-カルボン酸エチル異性体1及びトランス-2-((1S,3R)-3-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)-2-(2-(2-クロロ-6-フルオロフェニル)アセチル)-6-フルオロ-1-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル)シクロプロパン-1-カルボン酸エチル異性体2(440mg、0.6mmol)の混合物をTHF(4mL)に溶解し、0℃に冷却する。THF中の臭化メチルマグネシウムの1M溶液(1.4mL、1.4mmol)を10分かけてゆっくりと添加し、得られた反応混合物を室温まで加温し、一晩撹拌する。反応混合物を0℃に冷却し、THF中の臭化メチルマグネシウムの追加の1M溶液(1.4mL、1.4mmol)を添加する。反応混合物を室温まで加温し、8時間撹拌する。混合物をMeOH(130μL)でクエンチし、室温で一晩撹拌する。反応混合物をEtOAcで希釈し、得られた溶液を飽和水性NaHCO
3、水、及び飽和水性NaClで連続して洗浄する。層を分離し、有機相をMgSO
4で乾燥させ、濾過する。濾液を減圧下で濃縮する。得られた残留物を、ヘキサン中の0-100%メチルtert-ブチルエーテルの勾配で溶出する、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、所望のクロマトグラフィー画分の溶媒蒸発後、表題化合物の混合物を黄色の固体(245mg、42%収率)として得る。ESMS(m/z):702(M+1)。
【0091】
調製物30
1-[(1S,3R)-5-ブロモ-3-[[tert-ブチル(ジフェニル)シリル]オキシメチル]-6-フルオロ-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]-2-(2,6-ジクロロフェニル)エタノン
【化51】
(1S,3R)-5-ブロモ-3-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)-6-フルオロ-1-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン(500mg、1mmol)、2-(2,6-ジクロロフェニル)酢酸(260mg、1.3mmol)及び1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロリン酸塩(482mg、1.3mmol)をDMF(10mL)に懸濁する。DIPEA(0.85mL、4.9mL)を加え、混合物を室温で72時間撹拌する。反応混合物をEtOAcで希釈し、水及び飽和水性NaClで連続して洗浄する。層を分離し、有機層をNa
2SO
4で乾燥させ、濾過し、濾液を減圧下で濃縮する。得られた残留物を、ヘキサン中の5-15%EtOAcの勾配で溶出する、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、所望のクロマトグラフィー画分の溶媒蒸発後、表題化合物を白色の泡(680mg、0.97mmol)として得る。ESMS(m/z):698(M+1)。
【0092】
調製物31
トランス2-[(1S,3R)-3-[[tert-ブチル(ジフェニル)シリル]オキシメチル]-2-[2-(2,6-ジクロロフェニル)アセチル]-6-フルオロ-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-5-イル]シクロプロパンカルボン酸エチル
【化52】
1-[(1S,3R)-5-ブロモ-3-[[tert-ブチル(ジフェニル)シリル]オキシメチル]-6-フルオロ-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]-2-(2,6-ジクロロフェニル)エタノン(604mg、0.9mmol)、rac-[(トランス-2-エトキシカルボニルシクロプロピル]-トリフルオロホウ酸カリウム(CAS#1612792-88-7、PCT/FR2013/053057、2013年12月12日を参照されたい)(228mg、1mmol)、ヨウ化ジ(1-アダマンタニル)-n-ブチル-ホスホニウム(44mg、0.1mmol)、[(ジ(1-アダマンチル)-ブチルホスフィン)-2-(2’-アミノ-1,1’-ビフェニル)]パラジウム(II)メタンスルホン酸塩(66mg、0.1mmol)、及びCs
2CO
3(565mg、1.7mmol)を、トルエン(10mL)及び水(1mL)の混合物に懸濁する。得られた混合物に窒素を5分間散布し、反応物を封止し、混合物を一晩撹拌しながら100℃に加熱する。反応混合物を室温に冷却し、EtOAcで希釈し、水、飽和水性NaHCO
3、水、及び飽和水性NaClで連続して洗浄する。層を分離し、有機相をMgSO
4で乾燥させ、濾過し、濾液を減圧下で濃縮する。得られた残留物を、ヘキサン中の0-100%メチルtert-ブチルエーテルの勾配で溶出する、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、所望のクロマトグラフィー画分の溶媒蒸発後、表題化合物をトランスジアステレオマーの混合物として黄色の固体(417mg、64%収率)として得る。ESMS(m/z):732(M+1)。
【0093】
調製物32
1-[(1S,3R)-3-[[tert-ブチル(ジフェニル)シリル]オキシメチル]-6-フルオロ-5-[トランス-2-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)シクロプロピル]-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]-2-(2,6-ジクロロフェニル)エタノン
【化53】
トランス2-[(1S,3R)-3-[[tert-ブチル(ジフェニル)シリル]オキシメチル]-2-[2-(2,6-ジクロロフェニル)アセチル]-6-フルオロ-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-5-イル]シクロプロパンカルボン酸エチル異性体1及びトランス2-[(1S,3R)-3-[[tert-ブチル(ジフェニル)シリル]オキシメチル]-2-[2-(2,6-ジクロロフェニル)アセチル]-6-フルオロ-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-5-イル]シクロプロパンカルボン酸エチル異性体2(405mg、0.6mmol)の混合物をTHF(3mL)に溶解し、混合物を0℃に冷却する。THF中の臭化メチルマグネシウムの1M溶液(2.8mL、2.8mmol)を10分かけてゆっくりと添加し、反応混合物を室温まで加温し、一晩撹拌する。反応混合物を0℃に冷却し、MeOH(220μL)でクエンチする。反応混合物をEtOAcで希釈し、水及び飽和水性NaClで連続して洗浄する。層を分離し、有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、濾液を減圧下で濃縮する。得られた残留物を、ヘキサン中の0-100%メチルtert-ブチルエーテルの勾配で溶出する、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、所望のクロマトグラフィー画分の溶媒蒸発後、表題化合物をトランスジアステレオマーの混合物として黄色の固体(336mg、55%収率)として得る。ESMS(m/z):718(M+1)。
【0094】
実施例1及び2
2-(2,6-ジクロロフェニル)-1-[(1S,3R)-3-(ヒドロキシメチル)-5-[トランス-2-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)シクロプロピル]-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]エテノン、異性体1
及び
2-(2,6-ジクロロフェニル)-1-[(1S,3R)-3-(ヒドロキシメチル)-5-[トランス-2-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)シクロプロピル]-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]エテノン、異性体2
【化54】
THF(0.8mL)中のギ酸テトラブチルアンモニウムの1M溶液を、THF(2.5mL)中の1-[(1S,3R)-3-[[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシメチル]-5-[(トランス-2-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)シクロプロピル]-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]-2-(2,6-ジクロロフェニル)エタノン(170mg、0.3mmol)の溶液に添加し、得られた混合物を30分間撹拌する。反応混合物を減圧下で濃縮する。得られた残留物を、ヘキサン中0~65%EtOAcの勾配で溶出する、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、DCM中0~50%EtOAcの勾配で溶出する、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって更に精製して、表題化合物、2-(2,6-ジクロロフェニル)-1-[(1S,3R)-3-(ヒドロキシメチル)-5-[トランス-2-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)シクロプロピル]-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]エテノン、異性体2(20mg、14%収率)を、所望のクロマトグラフィー画分の溶媒蒸発後にもたらす。追加のフラッシュクロマトグラフィーからの混合画分を、アセトニトリル中の重炭酸アンモニウムを含有する5-95%の水の勾配を使用する、18Cシリカゲルでの逆相クロマトグラフィーによって更に精製して、表題化合物、2-(2,6-ジクロロフェニル)-1-[(1S,3R)-3-(ヒドロキシメチル)-5-[トランス-2-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)シクロプロピル]-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]エテノン、異性体1(26mg、18%収率)を、所望のクロマトグラフィー画分の溶媒蒸発後にもたらす。各々のESMS(m/z):462(M+1)。
1H nmr(400MHz、dmso-d
6)異性体1:δ 0.66-1.01(m、4H)、1.08-1.27(m、6H)、1.40-1.89(m、1H)、2.00-2.08(m、1H)、2.66-3.04(m、2H)、3.20-3.32(m、2H)、3.63-3.75(m、1H)、4.09-4.31(m、3H)、4.38-4.50(m、1H)、4.98-5.25(m、2H)、6.88-7.16(m、3H)、7.33(t、1H)、7.48(d、2H)。
1H nmr(400MHz、dmso-d
6)異性体2:δ 0.66-1.01(m、4H)、1.06-1.31(m、5H)、1.40-1.89(m、2H)、1.99-2.05(m、1H)、2.67-3.00(m、2H)、3.24-3.32(m、2H)、3.66-3.77(m、1H)、4.09-4.01(m、3H)、4.40-4.49(m、1H)、4.98-5.25(m、2H)、6.92-7.15(m、3H)、7.34(t、1H)、7.48(d、2H)。
【0095】
実施例3及び4
2-(2,6-ジクロロフェニル)-1-[(1S,3R)-3-(ヒドロキシメチル)-5-[シス-2-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)シクロプロピル]-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]エテノン、異性体1
及び
2-(2,6-ジクロロフェニル)-1-[(1S,3R)-3-(ヒドロキシメチル)-5-[シス-2-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)シクロプロピル]-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]エテノン、異性体2
【化55】
本質的には実施例1及び2に記載される方法を使用して、1-[(1S,3R)-3-[[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシメチル]-5-[シス-2-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)シクロプロピル]-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]-2-(2,6-ジクロロフェニル)エテノン異性体1(100mg、173mmol)を使用して、表題化合物2-(2,6-ジクロロフェニル)-1-[(1S,3R)-3-(ヒドロキシメチル)-5-[シス-2-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)シクロプロピル]-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]エテノン、異性体1(61mg、76%収率)をもたらす。ESMS(m/z):462(M+1)。
1H nmr(400MHz、dmso-d
6)異性体1:δ 0.55(s、1H)、0.65(s、2H)、0.94-1.00(m、2H)、1.07-1.22(m、7H)、1.40-1.49(m、2H)、1.98-2.07(m、1H)、2.60-3.15(m、2H)、3.20-3.29(m、1H)、3.53-3.65(m、1H)、4.09-4.34(m、2H)、4.37-4.48(m、1H)、4.98-5.34(m、2H)、7.00-7.22(m、3H)、7.30-7.37(m、1H)、7.45-7.51(m、2H)。
【0096】
本質的には実施例1及び2に記載される方法を使用して、1-[(1S,3R)-3-[[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシメチル]-5-[シス-2-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)シクロプロピル]-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]-2-(2,6-ジクロロフェニル)エテノン異性体2(60mg、104mmol)を使用して、表題化合物2-(2,6-ジクロロフェニル)-1-[(1S,3R)-3-(ヒドロキシメチル)-5-[シス-2-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)シクロプロピル]-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]エテノン、異性体2(42mg、87%収率)をもたらす。各々のESMS(m/z):462(M+1)。1H nmr(400MHz、dmso-d6)異性体1:δ 0.81(s、3H)、0.83-0.94(m、4H)、1.14-1.26(m、5H)、1.28-1.37(m、1H)、1.50(d、1H)、2.09-2.18(m、1H)、2.66-3.05(m、2H)、3.27-3.32(m、1H)、3.56-3.67(m、1H)、4.08-4.32(m、2H)、4.39-4.48(m、1H)、4.96-5.26(m、2H)、7.00-7.16(m、3H)、7.33(t、1H)、7.48(d、2H)。
【0097】
実施例5及び6
2-(2,6-ジクロロフェニル)-1-[(1S,3R)-5-[4,4-ジフルオロ-3-ヒドロキシ-3-メチル-ブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]エテノン、異性体1
及び
2-(2,6-ジクロロフェニル)-1-[(1S,3R)-5-[4,4-ジフルオロ-3-ヒドロキシ-3-メチル-ブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]エテノン、異性体2
【化56】
2-(2,6-ジクロロフェニル)-1-[(1S,3R)-5-[(3R)-4,4-ジフルオロ-3-ヒドロキシ-3-メチル-ブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]エタノン及び2-(2,6-ジクロロフェニル)-1-[(1S,3R)-5-[(3S)-4,4-ジフルオロ-3-ヒドロキシ-3-メチル-ブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]エタノン(493mg、0.75mmol)をTHF(12mL)に溶解する。THF(3mL、3mmol)中のフッ化テトラブチルアンモニウムの1M溶液を添加し、得られた混合物を室温で1時間撹拌する。混合物をEtOAcで希釈し、飽和水性NaClで洗浄する。有機層を分離し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、濾液を減圧下で濃縮する。得られた残留物を、ヘキサン中の0-75%EtOAcの勾配を使用する、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、所望のクロマトグラフィー画分の蒸発後、表題の混合物を白色の泡(342mg、97%収率)としてもたらす。ESMS(m/z):470(M+1)。
【0098】
2つのジアステレオマーを更に精製し、80mL/分の流量及び40℃の温度のメタノール:CO2(15:85)で溶出する、キラルSFC(CHIRALCEL(登録商標)OD-Hカラム、21×250mm)によって分離して、異性体1(156mg、46%収率)及び異性体2(141mg、41%収率)を所望のクロマトグラフィー画分の溶媒蒸発後にもたらす。
異性体1:ESMS(m/z):470(M+H)。分析SFC tR:1.618分(CHIRALCEL(登録商標)OD-Hカラム、4x150mm、15%メタノール/CO2、5mL/分、225nm)。
異性体2:ESMS(m/z):470(M+H)。分析SFC tR:2.213分(CHIRALCEL(登録商標)OD-Hカラム、4x150mm、15%メタノール/CO2、5mL/分、225nm)。
【0099】
実施例7
2-(2-クロロ-6-フルオロ-フェニル)-1-[(1S,3R)-6-フルオロ-3-(ヒドロキシメチル)-5-(3-ヒドロキシ-3-メチル-ブチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]エタノン
【化57】
1-((1S,3R)-3-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)-6-フルオロ-5-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)-2-(2-クロロ-6-フルオロフェニル)エタン-1-オン(5.3g、7.7mmol)をTHF(129mL)に溶解し、THF中のフッ化テトラブチルアンモニウムの1M溶液(23mL、23mmol)を添加する。混合物を室温で1時間撹拌する。混合物を、EtOAcで希釈し、飽和水性NaClで洗浄し、層を分離する。有機抽出物をNa
2SO
4で乾燥させ、濾過し、濾液を減圧下で濃縮する。得られた残留物を、ヘキサン中の50-100%EtOAcの勾配で溶出する、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、所望のクロマトグラフィー画分の溶媒蒸発後、表題化合物を白色の固体(2.75g、79%収率)として得る。ESMS(m/z):452(M+1)。
【0100】
実施例8及び9
2-(2-クロロ-6-フルオロ-フェニル)-1-[(1R,3R)-6-フルオロ-3-(ヒドロキシメチル)-5-[トランス-2-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)シクロプロピル]-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]エテノン、異性体1
及び
2-(2-クロロ-6-フルオロ-フェニル)-1-[(1R,3R)-6-フルオロ-3-(ヒドロキシメチル)-5-[トランス-2-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)シクロプロピル]-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]エテノン、異性体2
【化58】
1-[(1R,3R)-3-[[tert-ブチル(ジフェニル)シリル]オキシメチル]-6-フルオロ-5-[トランス-2-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)シクロプロピル]-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]-2-(2-クロロ-6-フルオロ-フェニル)エタノン異性体1及び1-[(1R,3R)-3-[[tert-ブチル(ジフェニル)シリル]オキシメチル]-6-フルオロ-5-[トランス-2-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)シクロプロピル]-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]-2-(2-クロロ-6-フルオロ-フェニル)エタノン異性体2(1.1g、1.5mmol)の混合物をTHF(10mL)に溶解し、混合物を0℃に冷却する。THF中のフッ化テトラブチルアンモニウムの1M溶液(3mL、3mmol)を滴下し、反応混合物を一晩室温まで加温しながら撹拌する。反応混合物をEtOAcで希釈し、水及び飽和水性NaClで連続して洗浄する。得られた層を分離し、有機層をMgSO
4で乾燥させ、濾過し、濾液を減圧下で濃縮する。得られた残留物を、ヘキサン中の0-100%メチルtert-ブチルエーテルの勾配で溶出する、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、所望のクロマトグラフィー画分の溶媒蒸発後、表題化合物の混合物を琥珀色の油(490mg、69%収率)として得る。ESMS(m/z):464(M+1)。
【0101】
2つのジアステレオマーを更に精製し、キラルSFC(PHENOMENEX(登録商標)LUX(登録商標)Cellulose-2カラム、21×250mm、20%イソプロパノール/CO2、80mL/分、40℃)によって分離して、2-(2-クロロ-6-フルオロ-フェニル)-1-[(1R,3R)-6-フルオロ-3-(ヒドロキシメチル)-5-[トランス-2-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)シクロプロピル]-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]エテノン、異性体1(136mg、28%収率、分析HPLC tR:2.769分)及び2-(2-クロロ-6-フルオロ-フェニル)-1-[(1R,3R)-6-フルオロ-3-(ヒドロキシメチル)-5-[トランス-2-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)シクロプロピル]-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]エテノン、異性体2(121mg、25%収率、分析HPLC tR:3.368分)を、所望のクロマトグラフィー画分の溶媒蒸発後、白色の固体として得る。
【0102】
異性体1:ESMS(m/z):464(M+H)。1H NMR(400MHz、CDCl3):δ 0.94-1.17(m、2H)、1.17-1.25(m、3H)、1.25-1.44(m、4H)、1.60(s、3H)、1.80-1.90(m、1H)、2.07-2.37(m、1H)、2.91-3.23(m、3H)、3.47-3.57(m、1H)、3.92(t、J=16.1Hz、1H)、4.05(s、2H)、4.42-4.66(m、1H)、5.04(q、J=7.0Hz、0.5H)、5.21(q、J=7.0Hz、0.5H)。6.83-7.09(m、3H)、7.19-7.26(m、2H)。分析SCF tR 2.769分(PHENOMENEX(登録商標)LUX(登録商標)セルロース-2カラム、4x150mm、20%イソプロパノール/CO2、5mL/分、225nm)。
【0103】
異性体2:ESMS(m/z):464(M+H)。1H NMR(400MHz、CDCl3):δ 0.71-0.81(m、1H)、1.22(s、3H)、1.24(s、3H)、1.33-1.44(m、4H)、1.48-1.59(m、1H)、1.59-1.69(m、2H)、1.69-1.81(m、1H)、2.87-3.08(m、1H)、3.08-3.31(m、1H)、3.47-3.57(m、1H)、3.70-3.95(m、1H)、3.97-4.11(m、2H)、4.43-4.60(m、1H)、5.01-5.26(m、1H)、6.84-7.08(m、3H)、7.20-7.26(m、2H)。分析SFC tR 3.368分(PHENOMENEX(登録商標)LUX(登録商標)セルロース-2カラム、4x150mm、20%イソプロパノール/CO2、5mL/分、225nm)。
【0104】
実施例10及び11
2-(2,6-ジクロロフェニル)-1-[(1S,3R)-6-フルオロ-3-(ヒドロキシメチル)-5-[トランス-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)シクロプロピル]-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]エテノン、異性体1
及び
2-(2,6-ジクロロフェニル)-1-[(1S,3R)-6-フルオロ-3-(ヒドロキシメチル)-5-[トランス-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)シクロプロピル]-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]エテノン、異性体2
【化59】
1-[(1S,3R)-3-[[tert-ブチル(ジフェニル)シリル]オキシメチル]-6-フルオロ-5-[トランス-2-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)シクロプロピル]-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]-2-(2,6-ジクロロフェニル)エタノン異性体1及び1-[(1S,3R)-3-[[tert-ブチル(ジフェニル)シリル]オキシメチル]-6-フルオロ-5-[トランス-2-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)シクロプロピル]-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]-2-(2,6-ジクロロフェニル)エタノン異性体2(333mg、0.5mmol)の混合物をTHF(4.6mL)に溶解し、混合物を0℃に冷却する。THF中のフッ化テトラブチルアンモニウム溶液の1M溶液(0.50mL、0.50mmol)を滴下し、得られた反応混合物を一晩撹拌しながら室温まで加温する。反応混合物をEtOAcで希釈し、水及び飽和水性NaClで連続して洗浄する。層を分離し、有機相をMgSO
4で乾燥させ、濾過し、濾液を減圧下で濃縮する。得られた残留物を、ヘキサン中の0-100%メチルtert-ブチルエーテルの勾配で溶出する、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、所望のクロマトグラフィー画分の溶媒蒸発後、表題化合物の混合物を琥珀色の油(211mg、72%収率)として得る。ESMS(m/z):480(M+1)。
【0105】
2つのジアステレオマーを更に精製し、キラルSFC(PHENOMENEX(登録商標)LUX(登録商標)Cellulose-2カラム、21×250mm、20%IPA/CO2、80mL/分、40℃)によって分離して、表題化合物2-(2,6-ジクロロフェニル)-1-[(1S,3R)-6-フルオロ-3-(ヒドロキシメチル)-5-[トランス-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)シクロプロピル]-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]エテノン、異性体1(41mg、21%収率、分析HPLC tR:3.095分)及び2-(2,6-ジクロロフェニル)-1-[(1S,3R)-6-フルオロ-3-(ヒドロキシメチル)-5-[トランス-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)シクロプロピル]-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]エテノン、異性体2(47mg、24%収率、分析HPLC tR:3.793分)を、所望のクロマトグラフィー画分の溶媒蒸発後、白色の固体として得る。
【0106】
異性体1:ESMS(m/z):480(M+H)。1H NMR(400MHz、CDCl3):δ 0.92-1.07(m、2H)、1.20-1.27(m、5H)、1.60-1.66(d、J=6.6Hz、1H)、1.80-1.90(m、1H)。2.93-3.23(m、2H)、3.47-3.60(m、1H)、3.81-4.00(m、1H)、4.23(s、2H)、4.44-4.70(m、1H)、5.06(q、J=6.7Hz、0.5H)、5.23(q、J=6.7Hz、0.5H)、6.84-7.04(m、2H)、7.16-7.23(m、1H)、7.36(d、J=8.1Hz、2H)。分析SFC tR 3.095分(PHENOMENEX(登録商標)LUX(登録商標)セルロース-2カラム、4.6x150mm、20%IPA/CO2、5mL/分、225nm)。
【0107】
異性体2:ESMS(m/z):480(M+H)。1H NMR(400MHz、CDCl3):δ 0.70-0.83(m、1H)、1.09-1.18(m、1H)、1.23(d、J=6.1Hz、1H)、1.32(s、3H)、1.35-1.46(m、4H)、1.64(d、J=6.7Hz、2H)、1.69-1.82(m、1H)、2.90-3.10(m、1H)、3.16-3.37(m、1H)、3.50-3.61(m、1H)、3.70-4.00(m、1H)、4.23(s、2H)、4.48-4.63(m、1H)、5.09(q、J=6.7Hz、0.6H)、5.24(q、J=6.7Hz、0.4H)。6.85-7.05(m、2H)、7.15-7.23(m、1H)、7.36(d、J=8.0Hz、2H)。分析SFC tR 3.793分(PHENOMENEX(登録商標)LUX(登録商標)セルロース-2カラム、4.6x150mm、20%IPA/CO2、5mL/分、225nm)。
【0108】
ヒトD1受容体PAMアッセイ
本発明の化合物のPAM活性は、本質的にSvensson et al.,An Allosteric Potentiator of the Dopamine D1 Receptor Increases Locomotor Activity in Human D1 Knock-in Mices without Casusing Stereotypy or Tachyphylaxis.J.Pharmacol.Exp.Ther.(2017)360:117-128に記載されているように測定され得る。
【0109】
より具体的には、ヒトD1受容体(アクセッション番号NM_000794)を安定して発現するHEK293細胞は、pBABE-bleoレトロウイルスベクターを使用した遺伝子導入により生成され、Zeocin(商標)(InvivoGen)で選択される。約80%の集密度で、細胞は、TrypLE(商標)Express(Gibco)を使用して回収され、FBSプラス8%DMSOに懸濁され、液体窒素に保存される。アッセイの日に、細胞は解凍され、STIMバッファ(0.1%のBSA、20mMのHEPES、500μMのIBMX、及び100μMのアスコルビン酸を補充したハンクス平衡塩類溶液)に再懸濁される。
【0110】
音響分注(Labcyte)を使用して、試験化合物をDMSOでアッセイプレート(ProxiPlate-384Plus、PerkinElmer)に段階希釈(1:2)して、完全な応答曲線の20の濃度を提供する。2000個の細胞を含有する5μLのSTIMバッファ、及びEC20レベルの応答(ストック溶液で24nM、又は最終的には12nM)を生成するSTIMバッファの5μLの2X濃度のドーパミン溶液に試験化合物(80nL)を添加し、ウェル中のDMSOの最終濃度は0.8%である。プレートを室温で60分間の合計反応時間インキュベートする。
【0111】
製造業者の説明書に従ってHTRF(登録商標)検出(Cisbio)を使用して、cAMP生成を定量する。一般に、抗cAMPクリプテート(5μL)及びD2コンジュゲート(HTRF(登録商標)キットから)(5μL)を含有する溶解バッファをウェルに添加し、プレートを更に60~90分間インキュベートし、時間分解蛍光を、EnVision(商標)プレートリーダー(PerkinElmer)を使用して検出する。蛍光データを、cAMP標準曲線を使用してcAMP濃度に変換し、4パラメータの非線形ロジスティック方程式(Genedata Screener、バージョン13.0.5標準)を使用して分析する。増強因子モードの濃度応答曲線の場合、結果は、ドーパミン単独のEC
20濃度での応答(0%に正規化)と、ドーパミンに対する最大応答(5μMのドーパミン、最終濃度、100%の正規化への応答により定義される)との間のウィンドウのパーセントとして表される。
絶対EC
50値を対照アゴニスト(ドーパミン)の最大及び最小応答に基づいて計算する。増強%(上位%)を濃度応答曲線の適合された上位から決定する。特定の実施例化合物についての絶対EC
50及び上位%を以下の表1に示す。
【表1-1】
【表1-2】
【0112】
表1において上記実施例化合物について提供される絶対EC50値は、ドーパミンに応答するヒトD1受容体シグナル伝達の増強を例示し、ヒトドーパミンD1受容体のポジティブアロステリック調節因子としての請求項1の化合物の活性を例示する。本発明の実施例化合物1~6、及び8~11は、キラル化合物を表し、本明細書において実施例に記載されるように、個々の立体異性体として作製及び試験された。上記の実施例1~6、8~11、及び表1を参照されたい。個々の立体異性体(実施例1~6、8~11について5.6nM~86.7nMの範囲のAbs EC50)についての組み合わされたデータは、各個々の立体異性体が本発明のD1ポジティブアロステリック調節因子実施形態を表すことを実証する。本明細書に提供される実施例の個々の立体異性体の絶対立体化学の特徴分析及び決定は、当業者の技術の範囲内であり、そのような決定のための方法は、医薬品化学の文献において周知である(例えば、Chiral Analysis(Second Edition)Advances in Spectroscopy,Chromatography and Emerging Methods,2018を参照されたい)。例えば、絶対立体配置は、一般的には、CDAの使用に基づくNMRによって決定される:不斉補助剤とエナンチオマー基質との間の共有結合を含むジアステレオマー誘導体は、キラル識別試薬に組み込まれた芳香族環によって引き起こされる差次的な遮蔽に基づいて予測することができる好ましい立体配座を採用する。
【0113】
ヒトD1受容体ノックインマウスの作製
マウスのドーパミン1(D1)受容体がヒトの対応物で置き換えられたトランスジェニックマウスは、標準的な手法で作製され得る(一般に、Svensson et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.(2017)360:117-128を参照されたい)。例えば、マウスゲノムフラグメントは、RP23バクテリア人工染色体ライブラリーからサブクローニングされ、PGKネオ標的ベクターに再クローニングされる。マウスオープンリーディングフレームは、エクソン2のヒトD1受容体オープンリーディングフレームに置き換えられる。エクソン2の上流のネオ選択マーカーは、後で除去するためにfrtサイトに隣接している。loxP選択部位によるエクソン2の隣接により、creヌクレアーゼ遺伝子を発現するマウスと交配することにより、D1ノックアウトマウスを作製するオプションが可能になる。
【0114】
C57BL/6N胚性幹細胞株B6-3は、20%FBS及び2x106単位/lの白血病阻害因子を有する高グルコースDMEMで、マウス胚性線維芽細胞の有糸分裂不活性化フィーダー層上で成長する。1000万の胚性幹細胞及び30マイクログラムの線形化されたベクターDNAを電気穿孔し、G418選択(200μg/ml)に供する。クローンを単離し、サザンブロッティングにより分析する。
【0115】
予想されるサイズのインサートを含むクローンを胚盤胞に挿入し、得られたマウスをPCRにより遺伝子型分類する。オスのキメラを、flpヌクレアーゼ遺伝子を含むメスと交配して、選択マーカーを排除する。選択マーカーなしでヒトD1受容体を含む子孫をPCRにより同定する。オスのヘテロ接合体をメスのC57BL/6マウスと交配させる。ヒトD1受容体を含むオス及びメスの子孫を交配させ、ホモ接合体をPCRにより同定する。ホモ接合体の挙動及び繁殖は正常であることがわかり、コロニーは次の世代の間、ホモ接合体の状態に維持される。
【0116】
基礎(習慣)自発運動活動
本化合物のインビボでの効力は、マウスの自発運動活動を使用して、D1受容体を通じて作用することが実証され得る。マウスの動きを追跡する自動システムを使用して、自発運動活動を測定する。マウスの自発運動活動挙動のモニタリングは、吸収性寝具用の木材チップの1cmの深さがあり、換気フィルター付きプラスチックケージの上部で覆われている45×25×20cmの寸法を有する透明なプラスチック製の靴箱ケージで行われる。体の動き(歩行運動)を検出するために、ケージの床から2.5センチメートルのところに配置され、コンピュータにより記録される8×4構成(Kinder Scientific,Poway,CA)の12個のフォトセルビームのグリッドを含む長方形のフレームにケージを入れた。
【0117】
オスのヒトD1受容体ノックインマウスをチャンバーに入れ、チャンバーに60分間慣れさせる。慣れ期間中、マウスは予想どおり、時間の経過とともに自発運動の減少を示す。本発明の化合物の投与後、動物の動きは用量依存的に増加することが見出される。
【0118】
マウスを無作為に処置群に割り当てる。用量応答研究では、各マウスを60分間の慣れ期間中、自発運動活動ボックスのうちの1つに個別に入れる。次に、マウスに、20%ヒドロキシプロピル-ベータシクロデキストリンビヒクル中の試験化合物を使用し、かつ10mL/kgの用量を使用して経口投薬する。投薬後、マウスをLMAボックスに戻し入れ、歩行運動の総数を60分の測定期間中、各マウスの10分の間隔ごとに記録する。一元配置分散分析を使用して統計分析を実行し、その後、ダンネットの比較試験を使用して事後分析を実行する。
【0119】
実施例7の化合物を本質的に上記のようにアッセイすると、用量依存的な様式で基礎運動を増加させることが見出される(以下の表2)。
【表2】
【0120】
表2に示される実施例7の基礎自発運動活動データは、本発明の化合物、特に実施例7が、環境に慣れている動物の自発運動活性化に有効であることを例示する。この活性は、アロステリック増強を介したD1受容体の中枢活性化の結果であると考えられる(例えば、Svensson et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.(2017)360:117-128を参照されたい)。実施例7について表2に提供されるデータは、内因性ドーパミン媒介応答の増強に対する本発明の化合物の薬理学的に有利なインビボ効力を例示する。実施例7について表2に提供されるデータは、実施例7及び式Iの化合物の薬理学的に有利な経口バイオアベイラビリティを更に例示する。
【0121】
血漿及び脳レベル:
実施例7、2-(2-クロロ-6-フルオロ-フェニル)-1-[(1S,3R)-6-フルオロ-3-(ヒドロキシメチル)-5-(3-ヒドロキシ-3-メチル-ブチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]エテノンを摂食状態で3mg/kg~60mg/kgのオスマウスに経口投薬し、血漿及び脳濃度を投薬の1時間後に決定した。化合物の非結合画分を前述のようにインビトロで決定した(Zamek-Gliszczynski MJ,et al.,Validation of 96-well equilibrium dialysis with non-radiolabeled drug for definitive measurement of protein binding and application to clinical development of highly-bound drugs.,J.Pharm.Sci.(2011)100:2498-2507)。非結合脳濃度(Cu、脳)対非結合血漿濃度(Cu、血漿)の比率(Kpuu)を前述のように決定した(Raub TJ,et al.,Brain Exposure of Two Selective Dual CDK4 and CDK6 Inhibitors and the Antitumor Activity of CDK4 and CDK6 Inhibition in Combination with Temozolomide in an Intracranial Glioblastoma Xenograft.Drug Metab.Dispos.(2015)43:1360-71)。実施例7について表3において以下に提示されるデータは、各用量での3匹の動物からの平均である。「濃度(Con.)」は、濃度を指す。
【表3】
【0122】
本発明の化合物、例えば、実施例7、2-(2-クロロ-6-フルオロ-フェニル)-1-[(1S,3R)-6-フルオロ-3-(ヒドロキシメチル)-5-(3-ヒドロキシ-3-メチル-ブチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]エテノンは、ドーパミンに応答するヒトD1受容体シグナル伝達の増強、高い経口インビボアベイラビリティ、中枢神経系アベイラビリティ及び環境に慣れている動物の自発運動活性化におけるインビボ効力などの薬理学的特性の有利な組み合わせを示す。例えば、実施例7は、ドーパミン(10.2±1.40nM(n=15))に応答するヒトD1受容体シグナル伝達の増強、並びに10、30、及び60mg/kgのPOで経口投与されるときの、環境に慣れているヒトD1受容体ノックインマウスの自発運動活性化における有意なインビボ効力を実証し、この化合物の好ましい経口バイオアベイラビリティを例示する。更に、実施例7は、一般に、正常なラットにインビボで幅広い用量範囲で投与されるときに耐容性良好であり、このインビボ実験において毒性の有利な欠如を示す。よって、実施例7は、ドーパミンD1受容体増強のための経口投与される療法剤としての可能な使用、並びにパーキンソン病、統合失調症、ADHD、及び/又はアルツハイマー病の治療を支持する好ましい薬理学的特性の有利な組み合わせを実証する。
【0123】
CYP3A4(fm
CYP3A4)代謝を通して除去された化合物の画分の決定
シトクロムP450(CYP)による酸化的代謝を介した薬物の全体的なクリアランスの画分は、潜在的な犠牲者薬物間相互作用を媒介した有害作用の重要な指標である。(一般的には、Ogu,Chris C.,and Maxa,Jan L.,Drug interactions due to cytochrome P450,BUMC Proceedings 2000;13:421-423を参照されたい)特に、例えば、CYP3A4などの単一のCYPのみを通る、CYP酸化経路を通る所与の薬物についての全体的なクリアランスの画分が大きいほど、薬物が。療法に使用される場合、望ましくない犠牲者薬物間相互作用の影響を受けやすいことが判明し得る可能性が大きくなる。fm
CYP3A4(CYP3A4を介した代謝の画分)を決定するために、P450媒介酸化の画分(fm
CYP)をまずヒト肝細胞で決定する。次いで、組換えCYPフェノタイピング分析(RCP)を使用して、他のP450に対するCYP3A4媒介酸化(fm
CYP3A4_RCP)の相対的寄与を決定する。fm
CYP3A4は、以下の式を使用して計算される。
【数1】
【0124】
ヒト肝細胞におけるシトクロムP450(CYP)媒介酸化的代謝の画分(fm
CYP)の決定
化合物の全体的な代謝におけるP450の相対的な寄与は、汎P450阻害剤1-アミノベンゾトリアゾール(ABT)の存在下及び非存在下でヒト肝細胞を使用したアッセイでの薬物のクリアランスから決定した。固有クリアランスは、凍結保存されたヒト肝細胞において、本質的にはMcGinnity DF,et al.(2004)Evaluation of fresh and cryopreserved hepatocytes as in vitro drug metabolism tools for the prediction of metabolic clearance.Drug Metab Dispos 32:1247-1253に記載されるように決定した。一般に、アッセイインキュベーションは、ABT(1mM)との0.5時間のプレインキュベーションの有無にかかわらず、0.3μMの試験化合物及び10
6細胞/mLの肝細胞を含有する。親化合物喪失は、15、30、60、及び90分のインキュベーション後にLC/MSによって測定される。固有クリアランス(μL/分/10
6細胞)は、±ABTの両方について以下の式を使用して計算する。CYPによる代謝の画分は、ABTによる阻害のパーセンテージである。
【数2】
式中、k
dep、基質枯渇定数(分
-1)は、x軸上の時間(分
-1)に対するy軸上に残った対数変換%からの線形回帰を使用して決定される勾配である。
【0125】
組換えCYPフェノタイピングアッセイを使用したCYP3A4媒介代謝の画分(fmCYP3A4_RCP)の決定
化合物の全P450代謝のうちの、例えば、CYP3A4などの、所定のCYPによって寄与される化合物の代謝の相対画分は、以下のように決定され得る。
【0126】
rCYP 1A2、2B6、2C8、2C9、2C19、2D6、2J2、3A4、及び3A5を含む、Supersomes(BD Gentest、Woburn、MA)として提供される9つのヒト組換えCYP(rCYP)のパネルは、化合物の代謝について評価される(一般的には、Cannady EA,et al.(2015)Evacetrapib:in vitro and clinical disposition,metabolism,excretion,and assessment of drug interaction potential with strong CYP3A and CYP2C8 inhibitors.Pharmacol Res Perspect 3:e00179を参照されたい)。インキュベーション及び計算は、本質的には、Wickremsinhe ER,et al.(2014),Disposition and metabolism of LY2603618,a Chk-1 inhibitor following intravenous administration in patients with advanced and/or metastatic solid tumors.Xenobiotica 44:827-841に記載されるように行われるが、試験化合物の代謝回転率が低いため、インキュベーションは、2時間にわたって実施される。rCYPにおける固有クリアランス(CL
int)は、以下の式に従ってヒト肝ミクロソームにスケーリングされる(HLMスケールCL
int)。
【数3】
式中、k
depは、基質枯渇速度定数(分
-1)であり、pmol rCYPは、インキュベーション中のrCYPのロット特異的量であり、相対活性係数(RAF)は、rCYP/HLMペアに適した相対活性係数(pmol/mg)である。速度定数は、実験によってインハウスで決定され、勾配は、対数変換されたx軸上の時間(分
-1)に対するy軸上の残りの%からの線形回帰を使用して決定され、pmol rCYP及びRAFは、supersomeのベンダー供給の定数である。
【0127】
CYP3A4媒介代謝の画分(fmCYP3A4_RCP)は、CYP3A4のHLMスケールCLintをアッセイした各P450サブタイプのHLMスケールCLintの合計で割ることによって決定される(Cannady et al.,2015)。
【0128】
肝細胞代謝プロファイル
肝細胞代謝プロファイルを測定して、P450媒介酸化的及びフェーズII酵素(例えば、UDP-グルクロノシルトランスフェラーゼ及びスルホトランスフェラーゼ)媒介非酸化的経路を介した代謝産物の形成を確認する。それは、Zhou X,et al.(2016),Difference in the Pharmacokinetics and Hepatic Metabolism of Antidiabetic Drugs in Zucker Diabetic Fatty and Sprague-Dawley Rats.Drug Metab Dispos 44:1184-1192)に本質的に記載されるヒト肝細胞で決定される。つまり、インキュベーションは、250,000細胞/ウェルを含有する24ウェルプレートを使用して、37℃のCO2インキュベーターで行う。試験化合物のストック溶液を培地に添加して、2μMの最終インキュベーション濃度をもたらす。培地及び細胞を含むインキュベーションは、4時間後に等体積のアセトニトリルでクエンチされる。Zhou et al.2016に本質的に示されるようにLC/MSを使用して、試料を処理及び分析する。
【0129】
CYP3A4代謝を通して除去される化合物の画分(fm
CYP3A4)の計算
試験化合物の腎排泄及び胆汁排泄は、Burkey JL,et al.(2002)Disposition of LY333531,a selective protein kinase C beta inhibitor,in the Fischer 344 rat and beagle dog.Xenobiotica 32:1045-1052に本質的に従って、胆管がカニューレ挿入されたイヌにおいて試験される。実施例7の化合物は、本質的には記載されるように試験され、その腎排泄及び胆汁排泄は、無視できることがわかっている。CYP3A4代謝を通して除去された化合物の画分は、以下の式を使用して計算される。
【数4】
式中、fm
CYPは、肝細胞CL
int ± ABTアッセイで測定されたCYPを介して代謝された化合物の画分である
fm
3A4_RCPは、組換えCYPフェノタイピングアッセイでCYP3A4を介して代謝された化合物の画分である
【0130】
初回通過腸代謝を回避する画分(F
G)の決定
腸で代謝される画分の推定は、Yang J,et al.(2007)Prediction of intestinal first-pass drug metabolism.Curr Drug Metab 8:676-684に見られる以下の式を使用して決定され得る。
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
式中、Q
gutは、化合物の絨毛血流及び透過性に依存するハイブリッドフロー用語である
fu
gutは、腸細胞における結合していない薬物の画分である
Q
villiは、絨毛血流である
Cl
permは、腸細胞を通した透過性を定義するクリアランス用語である
P
appは、インハウスのMDCKII細胞株で測定された受動透過性である
fu
micは、ヒト肝ミクロソームに結合していない薬物の画分である
【0131】
ヒト腸パラメータは、Yang et al.,2007,and Gertz M,et al.(2010)Prediction of human intestinal first-pass metabolism of 25 CYP3A substrates from in vitro clearance and permeability data.Drug Metab Dispos 38:1147-1158からのものである。
【0132】
CYP3A4阻害による犠牲者DDIの推定のための機構的静的モデル
イトラコナゾールの存在下での試験化合物の薬物AUC曝露量における潜在的な変化は、本質的にはHan B,et al.(2013)Prediction of CYP3A Mediated Drug-Drug Interactions:Estimation of Gut Wall and Hepatic Contributions.ASCPT Annual Meeting,Indianapolis,INに記載される機構的静的モデルを使用して決定され得る。
【数9】
【数10】
【数11】
式中、fmは、肝臓CYP3A4によって代謝される画分である
F
Gは、腸細胞における腸内代謝を逃れる画分である
Kiは、酵素からのイトラコナゾールの解離定数である
[I]
hは、肝臓におけるイトラコナゾールの濃度である
[I]
gutは、腸におけるイトラコナゾールの濃度である
【0133】
CYP3A4阻害剤としてのイトラコナゾールのパラメータ(A=0.10及びX=0.10)は、Olkkola KT,et al.(1994)によるものであり、ミダゾラムは、全身性抗真菌薬ケトコナゾール又はイトラコナゾールを受けている患者において回避されるべきである。Clin Pharmacol Ther 55:481-485。
【0134】
介入の化合物の代表である実施例7の化合物は、本質的には上記のように試験され、P450による酸化的代謝とは対照的に、肝細胞における非酸化的プロセスを通して主に代謝されることが見出された(CYPによって代謝される画分は32.3%である)。化合物は、RCPアッセイでは検査されなかったが、イントラコナゾールの存在下でのAUC比を予測するために、CYP3A4によって100%代謝されるという最悪の場合のシナリオが想定された。予測AUC比は、2未満であった。よって、本発明の化合物は、CYP3A4を含む、任意のCYPを介して最小の犠牲者薬物間相互作用リスクを示すと考えられる(表4を参照されたい)。
【表4】