(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】鉄道車両用電源システム及び鉄道車両用補助電源供給方法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/12 20060101AFI20241120BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20241120BHJP
H02P 5/46 20060101ALI20241120BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20241120BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
H02M7/12 H
H02M7/12 W
H02M7/48 M
H02P5/46 K
B60L1/00 A
B60L9/18 A
(21)【出願番号】P 2023527841
(86)(22)【出願日】2022-06-06
(86)【国際出願番号】 JP2022022697
(87)【国際公開番号】W WO2022259988
(87)【国際公開日】2022-12-15
【審査請求日】2023-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2021094957
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥田 一真
(72)【発明者】
【氏名】関澤 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】川本 健泰
(72)【発明者】
【氏名】大河原 洋
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-215014(JP,A)
【文献】特開2008-172857(JP,A)
【文献】特開2018-033212(JP,A)
【文献】国際公開第2019/187402(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/12
H02M 7/48
H02P 5/46
B60L 1/00
B60L 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力を鉄道車両の補機で利用可能に変換する鉄道車両用電源システムであって、
前記交流電力を直流電力に変換する複数のコンバータと、
前記コンバータが出力する直流電力を交流電力に変換して補機に出力する補助電源装置と、
前記複数のコンバータから前記補助電源装置への電流経路それぞれに設けられて直流電力の逆流を防止する複数のダイオードと、
該ダイオードそれぞれに流れる電流を計測する
複数の電流検出器と、
を備え、
前記複数の電流検出器が計測した電流値に基づいて前記複数のコンバータのうち少なくとも何れかの出力電圧を制御する、
鉄道車両用電源システム。
【請求項2】
前記鉄道車両を駆動する主電動機と、
該主電動機を駆動するインバータと、
をさらに備え、
前記コンバータは、前記補助電源装置及び前記インバータの両方に電力を供給し、
前記補助電源装置は、前記複数のダイオードの片側端子が前記複数のコンバータの何れかより供給された電力を受電する、
請求項1に記載の鉄道車両用電源システム。
【請求項3】
補助電源装置に電力を供給するコンバータが1台以上停止する場合、前記補助電源装置に電力を供給する他の健全なコンバータと接続されたインバータの出力電力を制限する、
請求項2に記載の鉄道車両用電源システム。
【請求項4】
前記インバータの出力電力の制限量を、前記補助電源装置に電力を供給しないコンバータと接続された1台以上のインバータが負担する、
請求項3に記載の鉄道車両用電源システム。
【請求項5】
交流電力を鉄道車両の補機で利用可能に変換する鉄道車両用補助電源供給方法であって、
複数のコンバータにより前記交流電力を直流電力に変換し、
前記コンバータが出力する直流電力を補助電源装置により交流電力に変換して補機に出力し、
前記複数のコンバータから前記補助電源装置への電流経路それぞれに設けられた複数のダイオードにより直流電力の逆流を防止し、
前記ダイオードそれぞれに流れる電流を計測し、
前記計測した電流値に基づいて前記複数のコンバータのうち少なくとも何れかの出力電圧を制御する、
鉄道車両用補助電源供給方法。
【請求項6】
前記鉄道車両は主電動機により駆動され、
前記主電動機はインバータにより駆動され、
前記コンバータは、前記補助電源装置及び前記インバータの両方に電力を供給し、
前記補助電源装置は、前記複数のダイオードの片側端子が前記複数のコンバータの何れかより供給された電力を受電する、
請求項5に記載の鉄道車両用補助電源供給方法。
【請求項7】
補助電源装置に電力を供給するコンバータが1台以上停止する場合、前記補助電源装置に電力を供給する他の健全なコンバータと接続されたインバータの出力電力を制限する、
請求項6に記載の鉄道車両用補助電源供給方法。
【請求項8】
前記インバータの出力電力の制限量を、前記補助電源装置に電力を供給しないコンバータと接続された1台以上のインバータが負担する、
請求項7に記載の鉄道車両用補助電源供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用電源システム及び鉄道車両用補助電源供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
直流電源から補助電源装置へ電力を供給する構成を持つ鉄道車両駆動システムとして、例えば、主変圧器の2次巻線に接続されて交流電力を直流電力に変換するコンバータと、直流電力から主電動機に駆動電力を供給するインバータと、直流電力から補機に電力を供給する補助電源装置を備え、複数のコンバータから補助電源装置に電力を供給するシステムが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術は、主要なハードウエアを並列化することができ、システムの冗長性を確保できるというものである。しかしながら、複数のコンバータ間に偏った過負荷が生じる等により過熱傾向のものがあれば、その負荷を軽減して発熱を緩和させるように電力需給する制御手法について、特許文献1には記載されていない。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数のコンバータ相互間で偏った過負荷による過熱を避けて、合理的に並列冗長運転することができる鉄道車両用電源システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明は、交流電力を鉄道車両の補機で利用可能に変換する鉄道車両用電源システムであって、交流電力を直流電力に変換する複数のコンバータと、コンバータが出力する直流電力を交流電力に変換して補機に出力する補助電源装置と、複数のコンバータから補助電源装置への電流経路それぞれに設けられて直流電力の逆流を防止する複数のダイオードと、ダイオードそれぞれに流れる電流を計測する複数の電流検出器と、を備え、複数の電流検出器が計測した電流値に基づいて複数のコンバータのうち少なくとも何れかの出力電圧を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数のコンバータ相互間で偏った過負荷による過熱を避けて、合理的に並列冗長運転することができる鉄道車両用電源システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る鉄道車両用電源システム(以下、「本システム」)の要部を示す概略回路図である。
【
図2】
図1の本システムにおける複数のコンバータ相互間で直流電圧を制御する機能を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本システム10について、図面を用いて説明する。
図1は、本システムの要部を示す概略回路図である。
図1において、本システム10は、交流電源1a,1b(まとめて1)と、コンバータ2a,2b(まとめて2)と、補機(負荷)3と、補助電源装置4と、ダイオード5a,5b(まとめて5)と、電流検出器6a,6b(まとめて6)と、主電動機7a,7b(まとめて7)と、インバータ8a,8b(まとめて8)と、コントローラと、を備える。
【0010】
交流電源1は、交流電化区間に張架されて給電された架線及び、そこからパンタグラフ等を介して受電する設備構成の一式である。コンバータ2は、交流電源1に接続され交流電力を直流電力に変換する。補助電源装置4は、コンバータ2が出力する直流電力を補機3に適した電力に変換する。
【0011】
ダイオード5a,5bは、コンバータ2a,2bと補助電源装置4を逆流防止するとともに、OR論理回路を構成する接続形態である。OR論理回路は、複数のコンバータ2a,2bそれぞれの出力のうち、高い方から順に補助電源装置4へ入力する。電流検出器6a,6bは、ダイオード5a,5bそれぞれを流れる電流を検出する。
【0012】
インバータ8a,8bは、コンバータ2a,2bそれぞれの出力する直流電力を交流電力に変換し、主電動機7a,7bの駆動用にそれぞれ専用で供給する。コントローラは、本システム10の制御機能全体を意味し、
図2を用いて後述する。
【0013】
コンバータ2aは、主電動機7a,7bと補機3に電力を供給するための直流電力を、インバータ8aと補助電源装置4に供給する。このとき、コンバータ2aの制御装置(不図示のコントローラの一部)は、主電動機7a,7bと補機3に供給する電力の変動に依らず、インバータ8aと補助電源装置4に提供する直流電圧が一定となるように、コンバータ2aを制御する。
【0014】
コンバータ2bは、コンバータ2aと同様の制御を行う。すなわち、コンバータ2bは、主電動機7a,7bと補機3に電力を供給するための直流電力を、インバータ8bと補助電源装置4に供給する。このとき、コンバータ2bの制御装置(図示せず)は、主電動機7a,7bと補機3に供給する電力の変動に依らず、インバータ8bと補助電源装置4に提供する直流電圧が一定となるように、コンバータ2bを制御する。
【0015】
本システム10は、コンバータ2、補助電源装置4、ダイオード5、電流検出器6、インバータ8の台数を制限するものではない。すなわち、本システム10は、1台のインバータ8に対して2台以上のコンバータ2が電力を供給する実施形態、1台のコンバータ2が2台以上のインバータ8に対して電力を供給する実施形態、2台以上のコンバータ2が補助電源装置4に電力を供給する実施形態を包含する。
【0016】
補助電源装置4は、コンバータ2a,2bの両方から直流電力の供給を受ける。このとき、補助電源装置4とコンバータ2a,2bの間にダイオード5a,5bが各々配置されているため、補助電源装置4に対して直流電圧が高いコンバータ2から電力が供給される。
【0017】
ダイオード5a,5bは、補助電源装置4からコンバータ2a,2bへの電力の逆流を阻止する特性を持つ。この特性により、任意のコンバータ2において直流部が短絡する故障が発生し直流電力の供給が停止する状況でも、電力の供給を継続させて可用性を維持する。すなわち、ダイオード5a,5bは、故障コンバータとは異なる健全コンバータから故障コンバータの短絡部への通電を防止すると共に、健全コンバータが補助電源装置4への電力の供給を継続する。
【0018】
本システム10は、補助電源装置4とコンバータ2a,2bの間にダイオード5a,5bを配置するが、補助電源装置4からコンバータへの電力の逆流を防止する機構として、ダイオード以外の電気部品を使用することは可能である。
【0019】
また、好ましくは、後述する制御におけるダイオード5a,5bに流れる電流の急峻な変化による影響を抑制する手法として、ダイオード5a,5bに対して、効果的なインダクタンス成分を持つインダクタなどの電気部品(図示せず)を直列に配置した構成も考えられる。
【0020】
コンバータ2bに対してコンバータ2aの直流電圧が高い場合、ダイオード5a,5bの効果によって、補助電源装置4への直流電力の供給はコンバータ2aから行われる。このとき、補助電源装置4の直流電圧に対して、コンバータ2bの直流電圧が高い場合、コンバータ2bからも補助電源装置4への直流電力の供給が行われるが、コンバータ2bからの電力供給量はコンバータ2aからの電力供給量よりも少なくなる。また、補助電源装置4の直流電圧に対して、コンバータ2bの直流電圧が低い場合、コンバータ2bから電力の供給は行われない。
【0021】
コンバータ2a,2bが制御対象とする直流電圧は、電圧検出器(図示せず)の公差や制御装置での検出誤差などの影響を受けるため、真値に対して制御装置で扱う直流電圧の認識値に誤差が生じる。例えば、コンバータ2a,2bの直流電圧の制御装置の認識値が同値であっても、コンバータ2a,2bの真の直流電圧は同値でないことが考えられる。
【0022】
また、コンバータ2a,2bは、交流電源1a,1bを整流して直流電力に変換するため、変換後の直流電力には、交流電源1a,1bの電源周波数の2倍の成分を持った電圧振動が発生することが広く知られている。
【0023】
例えば、コンバータ2aの直流電圧がコンバータ2bに対して高い状態が継続すると、コンバータ2aから補助電源装置4へ常に直流電力が供給されることになる。このとき、コンバータ2bは、補助電源装置4への電力供給能力を有しているにも関わらず、補助電源装置4への電力供給を行わない状態となる。
【0024】
上述のように、複数のコンバータ2a,2bの総合出力を生かせない状態では、コンバータ2aは補助電源装置4の電力需要を満足するだけの電力供給能力を有することが求められる。すなわち、コンバータ1台で補助電源装置4への電力供給を可能とする電力供給性能と、電力供給性能に耐えうる冷却性能がコンバータ2aに求められる。
【0025】
しかし、電力供給性能と冷却性能を備えたコンバータを適用すると、コンバータ2aとコンバータ2bの両方から直流電力を供給する場合においては、コンバータ1台の電力供給性能と冷却性能を最大限利用できない。本システム10では、電流検出器6a,6bで検出したダイオード5a,5bに流れる電流に基づいて、コンバータ2a,2bの直流電圧を制御する。
【0026】
図2は、
図1の本システム10における複数のコンバータ2a,2b相互間で直流電圧を制御する機能を示すブロック図である。
図2の制御ブロック図は、本システム10がコンバータをN台備える場合における、N台目のコンバータ2n(不図示)の直流電圧の制御について示している。
【0027】
図2に示す、本システム10のコントローラは、1台目のコンバータから補助電源装置4に流れる電流101から、
n台目の
コンバータから補助電源装置4に流れる電流102を含み、N台目のコンバータ2nから補助電源装置4に流れる電流103までの平均値105を計算する。
【0028】
このとき、電流101~103は、各コンバータの整流リプルなどの影響により制御応答性を超える高い周波数の成分が含まれることが想定できるため、ローパスフィルタ104などの手段により、高周波成分を除去することが好ましい。
【0029】
コントローラは、各コンバータ2a,2bから補助電源装置4に流れる電流の平均値105に対する、n台目のコンバータから補助電源装置4に流れる電流102の偏差106を計算する。
【0030】
このとき、
図1に例示したように、本システム10がN台のコンバータ2a,2b・・・2nを備える場合、コントローラは、偏差106の計算で用いる平均値105について、N台目でないコンバータの何れか1台から補助電源装置4に流れる電流で代用してもよい。
【0031】
コントローラは、偏差106に対して、比例項と積分項からなるフィードバック制御を適用しN台目のコンバータ2nの直流電圧の補正量107を計算する。
【0032】
コントローラは、N台目のコンバータ2nの直流電圧の指令量108に対して、補正量107を加減算したものを、最終的なN台目のコンバータ2nの直流電圧の指令量109とし、指令量109を入力とした定電圧制御(図示せず)によりコンバータを制御する。
【0033】
例えば、コントローラは、ダイオード5a,5bに流れる電流の平均値に対するダイオード5aに流れる電流の偏差を演算し、偏差がゼロとなるように、コンバータ2aの直流電圧の指令値に対して補正量を加減算するように、コンバータ2aを制御する。
【0034】
本システム10によれば、複数のコンバータ2a,2bの何れかに、電力負荷や熱負荷の集中が継続することを防止できる。コンバータ2aとコンバータ2bの補助電源装置4への直流電力の供給量を均等にすることができる。なお、本システム10のコントローラは、複数のコンバータ2a,2b・・・2nの電力負荷を必ずしも均等にする必要は無く、過熱するコンバータの発熱を抑制する制御であれば良い。
【0035】
また、本システム10では、例えば、コンバータ2bが停止した場合において、コンバータ2aが供給可能な電力から、補助電源装置4が要求する電力を差し引いた余力分だけインバータ8aが電力を主電動機7a,7bに供給するように、インバータ8aが主電動機7a,7bに供給する電力を制限する。
【0036】
また、インバータ8aが主電動機7a,7bに供給する電力を制限したことによる、鉄道車両の引張力あるいは制動力の低下を、補助電源装置4に電力を供給しない他のコンバータから電力の供給を受けるインバータが、主電動機7a,7bに供給する電力を増加させることにより、引張力あるいは制動力の低下を抑制する。
【0037】
本システム10によれば、補助電源装置4に電力を供給する複数台のコンバータ2a,2b・・・2nが1台以上停止しても、可用性を維持して鉄道車両の運転を継続できる。すなわち、本システム10は、複数台のコンバータ2a,2b・・・2nの冗長性を生かし、補助電源装置4の電力供給能力を低下させることなく、同時に、鉄道車両の加減速性能を低下させることなく、運転を継続できる。
【0038】
本発明の実施形態に係る鉄道車両用電源システム(本システム)は、つぎのように総括できる。
[1]本システム10は、外部より得られる交流電力を鉄道車両の補機3で利用可能に変換する鉄道車両用電源システムである。本システム10は、複数のコンバータ2a,2bと、1台以上の補助電源装置4と、複数のダイオード5a,5bと、コントローラと、を備える。なお、コントローラは、
図2に示す制御機能全体を意味する。
【0039】
複数のコンバータ2a,2bは、外部より得られた交流電力を直流電力に変換する。1台以上の補助電源装置4は、コンバータ2a,2bが出力する直流電力を交流電力に変換して補機3に出力する。複数のダイオード5a,5bは、複数のコンバータ2a,2bから補助電源装置4への電流経路それぞれに介挿されて直流電力の逆流を防止する。
【0040】
複数の電流検出器6a,6bは、ダイオード5a,5bそれぞれに流れる電流を計測する。コントローラは、複数の電流検出器6a,6bが計測したそれぞれの電流値に基づいて複数のコンバータの出力電圧を制御する。具体的には、本システム10において、複数のコンバータ2a,2bに対する電力需給が不均等であるか、又は何れかに発熱基準を超える程の需要超過があれば、それを是正するため、複数のコンバータ2a,2bのうち少なくとも何れかの出力電圧を加減するように制御する。
【0041】
すなわち、コントローラは、複数のコンバータ2a,2b間で、偏った過負荷が生じる等の原因で過熱傾向のものがあれば、その負荷を軽減して発熱を抑制するように制御する。つまり、コントローラは、発熱程度に応じて、品質保証基準を超えるか、又はそれに近く余裕の少ない方のコンバータに対し、相対的に出力電流を低下させて発熱量を抑制する。その結果、複数のコンバータ2a,2bは、品質保証基準の範囲内で合理的に並列冗長運転する。
【0042】
[2]上記[1]において、本システム10は、鉄道車両を駆動する主電動機7a,7bと、それらを駆動するインバータ8a,8bと、をさらに備える。コンバータ2a,2bは、補助電源装置4及びインバータ8a,8bの両方に電力を供給する。コントローラは、出力容量に制約条件のあるコンバータ2a,2bに、偏った発熱があれば過熱を抑制するように制御し、合理的な並列冗長運転を継続させる。
【0043】
補助電源装置4は、複数のダイオード5a,5bの片側端子が複数のコンバータ2a,2bの何れかより電力を受給される。複数のダイオード5a,5bは、これらのアノードが複数のコンバータ2a,2bそれぞれ正の直流出力端子に接続されており、これらのカソードが突き合わされて、補助電源装置4の入力端子に接続されている。
【0044】
いわば、2本(複数)のダイオード5a,5bによるOR論理回路が構成されている。このOR論理回路は、電圧出力値の(一番)高い何れか1本のダイオード5から多くの出力を得て、それ以下のダイオード5で電圧出力値の高い順に、相応の出力が得られる。なお、複数のコンバータ2a,2bのうち、高い電圧で出力するものは、それぞれが電力供給する先のインバータ8a,8bでの電力需要が相対的に軽負荷である場合もある。
【0045】
その場合、軽負荷のコンバータには、余力があるため、追加で多めの負荷が設定されても、ある程度までなら無理なく許容できる。同様の場合で、重負荷のコンバータには、追加される負荷を軽めに設定しなければ、合計で過負荷となる。ダイオード5a,5bによるOR論理回路は、このような電力需給バランスが自動的に維持させる機能を果たす。その結果、コントローラは、複数のコンバータ2a,2bが、それら相互間の偏った過負荷で集中的に過熱することを抑制し、合理的に並列冗長運転する。
【0046】
[3]上記[2]において、本システム10は、補助電源装置4に電力を供給するコンバータ2のうち、1台以上のコンバータ2n(不図示)が停止する場合、コントローラが補助電源装置4に電力を供給する他の健全なコンバータ2a,2bと接続されたインバータ8a,8bの出力電力を制限する。つまり、本システム10は、1編成の鉄道車両における電力需給総量の観点から、健常稼働して電力供給するコンバータ2の台数が減少して供給総力も減少した場合、安全保証できる範囲内に総需要を抑制する。
【0047】
その結果、通常よりも減速すれば、列車の運行を継続できるので、具体的には、コンバータ2のうち、1台以上のコンバータ2n(不図示)が故障して停止した場合も、徐行しながらでも、本線上で列車を立ち往生させるような事態を回避できる。
【0048】
[4]上記[3]において、本システム10は、出力電力を制限されたインバータ8a,8bの出力電力の制限量を、補助電源装置4に電力を供給しないコンバータ2b(一例)と接続された1台以上のインバータ8b(一例)に負担させるように、コントローラが制御する。換言するとつぎのとおりである。
【0049】
本システム10は、上記[3]の状況で、出力電力を制限されたインバータ8a(一例)が、電力供給する主電動機7aの出力低下分を、インバータ8b(一例)に補填させるように、コントローラが制御する。このとき、インバータ8bもある程度の出力電力を制限されている。
【0050】
一方、コンバータ2bは、健常であるにも関わらず、補助電源装置4に電力を供給しない状況であるため、いくらか余力が残っている。このような状況の下に、余力のあるコンバータ2bに無理のない範囲で増強させた出力電力が、インバータ8bを介して主電動機7bを駆動する。
【0051】
このとき、主電動機7aの出力低下分を主電動機7bが補填するように、コントローラが制御する。つまり、出力電力を制限されたインバータ8aが電力供給する主電動機7aの出力低下分をインバータ8bが負担して、主電動機7bを増強する結果となる。このように、コンバータ2のうち、1台以上のコンバータ2n(不図示)が故障して停止した場合も、電力不足分を他で負担して、列車の運行を継続できるので、可用性を維持できる。なお、
図1では2つのコンバータ2a,2bを例示したが、総数が多ければ、それに応じて可用性をより高めることができる。
【0052】
本発明の実施形態に係る鉄道車両用補助電源供給方法(本方法)は、つぎのように総括できる。
[5]本方法は、外部より得られる交流電力を鉄道車両の補機3で利用可能に変換する鉄道車両用補助電源供給方法である。外部より得られた交流電力は、複数のコンバータ2a,2bにより直流電力に変換される。
【0053】
コンバータ2a,2bが出力する直流電力を1台以上の補助電源装置4により交流電力に変換して補機3に出力する。複数のコンバータ2a,2bから補助電源装置4への電流経路それぞれに逆流防止用として、複数のダイオード5a,5bが介挿されている。これら複数のダイオード5a,5bそれぞれに流れる電流を複数の電流検出器6a,6bで計測する。コントローラは、これら複数の電流検出器6a,6bが計測した電流値に基づいて、複数のコンバータ2a,2bのうち少なくとも何れかの出力電圧を加減するように制御する。
【0054】
本方法で用いるコントローラは、車両の外部から得られた交流電力を直流に変換する複数のコンバータ2a,2b相互間で、電力供給性能と、冷却性能と、を有効に利用できるように制御する。複数のコンバータ2a,2bは、車両を駆動する主電動機7a,7bへの電力供給と、車両の補機3へ配電する補助電源装置4への電力供給と、を兼用している。このような構成であるため、例えば、何れかのコンバータ2を専用利用する主電動機7の負荷が、何らかの原因で重負荷となれば、それに電力を供給するコンバータ2を過熱状態にする。
【0055】
本方法で用いるコントローラによれば、各コンバータ2a,2b相互間において、それぞれの出力を電流検出器6a,6bが計測した電流値に基づいて、相対的に電流値の多いコンバータ2の出力を抑制することによって、それらの偏った過負荷による過熱を緩和できる。以上のように、本方法は、複数を編成して運行されることの多い鉄道車両において、それらの編成全体にわたり、複数のコンバータ2a,2b相互間で偏った過負荷による過熱を避けて、合理的に並列冗長運転することができる。その結果、本方法によれば、編成全体でコンバータの電力供給性能と冷却性能を有効利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
10…鉄道車両用電源システム(本システム)、1a,1b…交流電源、2a,2b…コンバータ、3…補機、4…補助電源装置4、5a,5b…ダイオード、6a,6b…電流検出器、7a,7b…主電動機、8a,8b…インバータ、101…1台目のコンバータから補助電源装置4に流れる電流、102…n台目のコンバータから補助電源装置4に流れる電流、103…N台目のコンバータ2nから補助電源装置4に流れる電流、104…ローパスフィルタ、105…1台目からN台目までのコンバータから補助電源装置4に流れる電流平均値、106…各コンバータから補助電源装置4に流れる電流の平均値に対するN台目のコンバータ2nから補助電源装置4に流れる電流の偏差、107…N台目のコンバータ2nの直流電圧の補正量、108…N台目のコンバータ2nの直流電圧の指令量、109…最終的なN台目のコンバータ2nの直流電圧の指令量