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特許7591147ルテニウム複合体が含まれるNOx貯蔵及び還元触媒物品の製造方法、及びそれを含む排気処理システム
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  • 特許-ルテニウム複合体が含まれるNOx貯蔵及び還元触媒物品の製造方法、及びそれを含む排気処理システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】ルテニウム複合体が含まれるNOx貯蔵及び還元触媒物品の製造方法、及びそれを含む排気処理システム
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/02 20060101AFI20241120BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20241120BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20241120BHJP
   B01J 37/16 20060101ALI20241120BHJP
   B01J 23/63 20060101ALI20241120BHJP
   B01J 23/89 20060101ALI20241120BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20241120BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
B01J37/02 301C
B01J37/04 102
B01J37/08
B01J37/16
B01J23/63 A
B01J23/89 A
B01D53/94 222
B01D53/94 ZAB
F01N3/10 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023534069
(86)(22)【出願日】2021-11-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-14
(86)【国際出願番号】 KR2021017188
(87)【国際公開番号】W WO2022124634
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-06-02
(31)【優先権主張番号】10-2020-0171008
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514079170
【氏名又は名称】ヒソン カタリスツ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】コマティーディ、ナラヤナ ラオ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ウン ソク
(72)【発明者】
【氏名】イム、スン ス
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-176944(JP,A)
【文献】特表2019-529069(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0153921(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102133546(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 37/02
B01J 23/56、23/63、23/89
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
NOx貯蔵及び還元触媒物品の製造方法であって、
平均粒径5nm~50μmのRu金属粒子粉末をCeO、ZrO、Al、TiO、SiOの中から選択される支持体に分散させ、Ba、Sr、La、Ce、Zr、Mg、Rb、Ca、Mn、Fe、Co前駆体の中から選択される促進剤を添加してRuスラリーを準備する段階と、
平均粒径が10μm以下となるように前記スラリーをミリングする段階と、
前記スラリーを担体にコーティングする段階と、
前記スラリーがコーティングされた担体を乾燥及び焼成させる段階と、を含む
ことを特徴とするNOx貯蔵及び還元触媒物品の製造方法。
【請求項2】
前記前駆体が当該金属の水酸化物、炭酸塩、硝酸塩又は酸化物の中から選択される
請求項1に記載のNOx貯蔵及び還元触媒物品の製造方法。
【請求項3】
前記支持体には、Pt、Pd、Rhの中から選択される白金族成分が担持される
請求項1に記載のNOx貯蔵及び還元触媒物品の製造方法。
【請求項4】
NOx貯蔵及び還元触媒物品の製造方法であって、
担体に平均粒径5nm~50μmのRu金属粒子粉末を乾式又は湿式でコーティングして第1層を形成する段階と、
Pt、Pd、Rhの中から選択される白金族成分が担持されるCeO、ZrO、Al、TiO、SiOの中から選択される支持体に、Ba、Sr、La、Ce、Zr、Mg、Rb、Ca、Mn、Fe、Co前駆体の中から選択される促進剤を添加して第2層スラリーを製造する段階と、
第2層スラリーを第1層上にコーティングして多層を形成する段階と、
前記多層形成担体の乾燥及び焼成段階と、を含む
ことを特徴とするNOx貯蔵及び還元触媒物品の製造方法。
【請求項5】
NOx貯蔵及び還元触媒物品の製造方法であって、
耐熱性ルテニウム複合体合成段階と、
前記複合体をde-NOxウォッシュコートに混合してRuスラリーを準備する段階と、
平均粒径が10μm以下となるように前記スラリーをミリングする段階と、
前記スラリーを担体にコーティングする段階と、
前記スラリーがコーティングされた担体を乾燥及び焼成させる段階と、を含む
ことを特徴とするNOx貯蔵及び還元触媒物品の製造方法。
【請求項6】
耐熱性ルテニウム複合体合成段階は、Ru金属粉末又はナノ粒子粉末(Ru/RuOx)と、Ba、La、Sr、Zr及びCaよりなるAタイプ前駆体の群の中から選択されるいずれかの前駆体と、Mg、Fe、Mn、Ni及びCoよりなるBタイプ前駆体の群の中から選択されるいずれかの前駆体とを混合し、空気中で熱処理する段階を含む
請求項5に記載のNOx貯蔵及び還元触媒物品の製造方法。
【請求項7】
熱処理段階の前に、エチレングリコール、クエン酸、又はスクロースの中から選択される有機物質、又はNaBH又はCaHの中から選択される還元剤をさらに含む
請求項6に記載のNOx貯蔵及び還元触媒物品の製造方法。
【請求項8】
耐熱性ルテニウム複合体合成段階は、Ru金属粉末がポリ(N-ビニル-2-ピロリドン)に分散しているRuコロイド溶液を、Mg及びNiでドープされたLa及びSr酸化物に混合し、熱処理する段階を含む
請求項5に記載のNOx貯蔵及び還元触媒物品の製造方法。
【請求項9】
前記de-NOxウォッシュコートは、Pt、Pd、Rhの中から選択される白金族成分が担持されるCeO、ZrO、Al、TiO、SiOの中から選択される支持体に、Ba、Sr、La、Ce、Zr、Mg、Rb、Ca前駆体の中から選択される促進剤を添加して形成される
請求項5に記載のNOx貯蔵及び還元触媒物品の製造方法。
【請求項10】
請求項1ないし8のいずれかに記載のNOx貯蔵及び還元触媒物品が選択的触媒還元(SCR)触媒物品の前段に配置される
ことを特徴とする内燃機関排気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性成分としてルテニウム複合体が含まれるNOx貯蔵及び還元(NSR)触媒物品の製造方法、及びそれを含む排気処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ルテニウム(Ru)は、白金族元素であって、様々な触媒反応において高い活性を有し、特にDe-NOx反応において触媒活性を有することが知られているが、700℃以上の高温酸化雰囲気中でRuOを形成して揮発するので、高温安定性がないため触媒として適用するには問題があった。具体的には、Ru金属の融点は2,300℃であり、沸点は4,100℃であって、金属状態では極めて安定であるが、RuO沸点は1,400℃であり、特にRuO沸点は100℃以下であるので、Ruの触媒特性を活用するためにRuを金属状態に維持して高温耐久性を有することが必要である。このようなRu揮発性問題を解決する構造として、多数のコアが内包される基質(matrix)からなる耐熱性ルテニウム複合体(composite)が提案されており、コアにはルテニウムが金属状態で存在し、基質にはRu PV(perovskite)を含むRu複合酸化物が含まれる耐熱性ルテニウム複合体及びそれを含むNSRが研究されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
NSR触媒を製造する安定的な方法として、予備的に耐熱性ルテニウム複合体を準備し、これをNOx除去機能(De-NOx)成分と混合してこれを担体又はキャリアに適用することによりNSR物品を製造する方法が考えられるが、複数の段階の複雑な工程を経なければならないという欠点がある。よって、ルテニウムの損失を考慮しても、製造工程が単純で同等レベルの活性を示すNSR製品を製造する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は、NOx貯蔵及び還元触媒(NSR)物品の製造に必須的なRuスラリーをその場で同時に一つの段階で製造する単純な工程、又は安定的な複合体ベースの多段階方式による製法を提案することにある。
【0005】
本発明の第1特徴は、その場同時方式のNSR物品製造方法であって、平均粒径5nm~50μmのRu金属粒子粉末をCeO、ZrO、Al、TiO、SiOの中から選択される支持体に分散させ、Ba、Sr、La、Ce、Zr、Mg、Rb、Ca、Mn、Fe、Co前駆体の中から選択される促進剤及び白金族成分前駆体を添加してRuスラリーを準備する段階と、スラリーのpHを調整する段階と、平均粒径が10μm以下となるように前記スラリーをミリングする段階と、前記スラリーを担体にコーティングする段階と、前記スラリーがコーティングされた担体を乾燥及び焼成させる段階と、を含む、NOx貯蔵及び還元触媒物品の製造方法によって達成される。
【0006】
本発明の第2特徴は、予備的に耐熱性ルテニウム複合体を合成した後、これを通常のde-NOxウォッシュコートに混合してRuスラリーを準備する段階と、平均粒径が10μm以下となるように前記スラリーをミリングし、これを担体にコーティングする段階と、前記スラリーがコーティングされた担体を乾燥及び焼成させる段階と、を含む、NOx貯蔵及び還元触媒物品の製造方法を提供する。非制限的に、ルテニウム複合体合成段階は、Ru金属粉末又はナノ粒子粉末(Ru/RuOx)を、Ba、La、Sr、Zr及びCaからなるアルカリ金属の前駆体、及びMg、Fe、Mn、Ni及びCoからなる補助金属前駆体と混合し、空気中で熱処理する段階で構成される。耐熱性ルテニウム複合体合成方法は、Ru粉末自体を用いるか、或いはRuコロイド溶液を用いるか、或いは耐熱性ルテニウム複合体合成温度を下げるためにRu粉末を有機物又は還元剤で処理した後に用いることができる。また、通常のde-NOxウォッシュコートは、白金族成分が担持されるCeO、ZrO、Al、TiO、SiOの中から選択される支持体に、Ba、Sr、La、Ce、Zr、Mg、Rb、Ca前駆体の中から選択される促進剤を添加することにより形成できる。
【0007】
また、NSR物品は、二重コーティング構造を持つことができ、本発明の第3特徴は、NSR物品の製造方法であって、担体にRu金属粒子粉末を乾式又は湿式でコーティングして第1層を形成する段階と、白金族成分が担持されるCeO、ZrO、Al、TiO、SiOの中から選択される支持体に、Ba、Sr、La、Ce、Zr、Mg、Rb、Ca、Mn、Fe、Co前駆体の中から選択される促進剤を添加して第2層スラリーを製造し、これを第1層上にコーティングして多層コーティング構造を形成する段階と、前記多層形成担体の乾燥及び焼成段階と、を含む、NOx貯蔵及び還元触媒物品の製造方法によって達成される。
【0008】
本発明の第4特徴は、Ru複合体を含むNSR物品が選択的触媒還元(SCR)触媒物品の前段に配置される内燃機関排気システムを提案する。
【発明の効果】
【0009】
様々なNSR触媒を製造する方法が提案される。予備的に耐熱性ルテニウム複合体を準備し、これをNOx除去機能(De-NOx)成分と混合してこれを担体に塗布することにより、NSR物品を製造する安定的な製法、又は工程が単純で同等レベルの活性を示すNSR物品を製造することが可能なその場同時製法が提案される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ルテニウム複合体を概略的に示す図である。
図2】2層コーティング構造のNSRを示す図である。
図3】様々な触媒を対象にエンジンエージング後にWLTCを行った結果を示す図である。
図4】出発物質であるRu金属粒子の平均粒径によるNSRのde-NOx効率を示す図である。
図5】NSR物品とSCR間の配置図及びこれによるde-NOx効率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、ルテニウム複合体が含まれるNOx貯蔵及び還元(NSR)触媒物品の製造方法に関する。本明細書において、触媒物品とは、触媒活性成分がいわゆる貫通型(flow-through)担体にコーティングされる構造体を意味し、担体は、多数のセルから構成され、セルをなす内壁に触媒活性成分がコーティングされる物品を意味する。しかし、触媒物品は触媒とも呼ばれ、担体はキャリアとも呼ばれる。触媒活性成分をなすコーティング物質はウォッシュコート又はスラリーとも呼ばれる。本発明による製造方法で、フィルター内壁コーティング物にはルテニウム複合体が形成されるが、具体的には、多数のコアが内包される基質(matrix)からなるルテニウム複合体(composite)において、コアにはルテニウムが金属状態で存在し、基質にはRu PV(perovskite)を含むRu複合酸化物が含まれる。図1は、ルテニウム複合体を概略的に示す。
【0012】
本発明の様々な製造方法において、ルテニウム複合体のコアとして、Ruを金属状態に維持するために、Ruナノ粉末を用いる。本明細書では、予備的にルテニウム複合体を製造した後、これをDe-NOx成分と混合してNSR物品を製造する多段階製法、及びRu金属粉末と必要な機能性成分を混合したRuスラリーが適用されるその場同時製法が適用される。本発明者らは、多段階製法又はその場同時製法においてRu金属粉末の粒径を調節することが、de-NOx効率を決定する重要な因子であることを見出した。
【0013】
実施例1:
Ru金属粉末とDe-NOx機能性成分を混合してRuスラリーを製造するその場同時(in-situ)製法でNSRを製造した。
【0014】
平均粒径3μmのRu金属粒子粉末をBaドープCeO及びAl支持体に分散させ、Ptアミン及びPd硝酸塩溶液を加えた後、La、Zr及びMg酢酸塩の促進剤を投入してRuスラリーを準備し、pHを8に調整した。平均粒径が10μm以下となるようにRuスラリーをミリングした。次いで、高度に分散したRuスラリーを担体にコーティングした後、乾燥及び焼成段階を経てNSRを完成した。焼成は、酸化雰囲気又は還元雰囲気中で行われることができる。分散溶媒は、脱イオン水を使用するが、必要に応じて酸が添加できる。
【0015】
実施例2
Pt及びPd成分が担持されるCeO、Al及びZrO支持体にLa及びMg成分の促進剤を添加してDe-NOxスラリーを予備した。平均粒径3μmのRu金属粒子粉末を乾式又は湿式で担体にコーティングしてRu層を形成した。予備されたDe-NOxスラリーをRu上にコーティングして多層を形成した後、多層形成担体を乾燥及び焼成させることにより、図2に概略的に示された2層コーティング構造のNSRを完成した。
【0016】
実施例3
Ru複合体を予め合成した後、これを通常のDe-NOxウォッシュコートに混合してRuスラリーを製造する多段階方式でNSRを製造した。Ru複合体合成方法では、Ru粉末自体を用いるか、Ruコロイド溶液を用いるか、或いは、耐熱性ルテニウム複合体の合成温度を下げるためにRu粉末を有機物又は還元剤で処理した後に用いることができる。
【0017】
実施例3-1:熱処理によるRu複合体の合成
まず、平均粒径3μmのRu金属粉末を、アルカリ金属の前駆体としてのLa酢酸塩及びMg酢酸塩、及び遷移金属の前駆体としてのNi硝酸塩と混合し、空気中で熱処理してルテニウム複合体を予備した。Pt及びPd成分が担持されるCeO、Al及びZrO支持体にLa及びMg成分の促進剤を添加してミリングすることにより、De-NOxウォッシュコートを準備した。次いで、予備されたRu複合体をde-NOxウォッシュコートに混合してRuスラリーを製造した後、前記スラリーの平均粒径が10μm以下となるようにミリングし、担体にコーティングした後、乾燥及び焼成させることにより、NSRを完成した。
【0018】
実施例3-2:有機物質処理によるRu複合体の合成
平均粒径3μmのナノ粒子粉末(RuとRuOxの混合物)をLa酢酸塩及びSr酢酸塩、Ni硝酸塩と混合し、エチレングリコールで処理し、800℃で12時間熱処理することにより、結晶性が良好なルテニウム複合体を予備した。エチレングリコールの代わりに、クエン酸及び/又はスクロースが適用できる。Pt及びPd成分が担持されるCeO、Al及びZrO支持体にLa及びMg成分の促進剤を添加してミリングすることにより、De-NOxウォッシュコートを準備した。次いで、予備されたRu複合体をde-NOxウォッシュコートに混合してRuスラリーを製造した後、前記スラリーの平均粒径が10μm以下となるようにミリングし、担体にコーティングした後、乾燥及び焼成させることにより、NSRを完成した。
【0019】
実施例3-3:還元剤処理によるRu複合体の合成
平均粒径3μmのナノ粒子粉末をLa酢酸塩及びSr酢酸塩、Ni硝酸塩と混合し、NaBHで処理し、熱処理して迅速にルテニウム複合体を予備した。NaBHの代わりにCaHが適用されても、還元剤を適用していないものと比較してより迅速にRu複合体を合成することができる。Pt及びPd成分が担持されるCeO、Al及びZrO支持体にLa及びMg成分の促進剤を添加してミリングすることにより、De-NOxウォッシュコートを準備した。次いで、予備されたRu複合体をde-NOxウォッシュコートに混合してRuスラリーを製造した後、前記スラリーの平均粒径が10μm以下となるようにミリングし、担体にコーティングした後、乾燥及び焼成させることにより、NSRを完成した。
【0020】
実施例3-4:Ruコロイド溶液を用いたRu複合体の合成
平均粒径3μmのRu金属粉末がポリ(N-ビニル-2-ピロリドン)に分散しているRuコロイド溶液を、Mg及びNiでドープされたLa及びSr酸化物に混合し、熱処理及びミリングして平均直径10μmのルテニウム複合体を予備した。CeO及びLaドープAlにPt及びPd成分を担持した後、予備されたルテニウム複合体と脱イオン水に分散させ、Ba、Zr及びMg成分の促進剤を添加してミリングすることによりウォッシュコートを準備した。前記ウォッシュコートの平均粒径が10μm以下となるようにミリングし、担体にコーティングした後、乾燥及び焼成させてNSRを完成した。
【0021】
比較例
改質アルミナ、セリア及びジルコニア上に白金族(Pt/Pd/Rh)成分を含浸した後、熱的に(500℃)固定し、ミリングして粉末を製造した後、蒸留水にNOx貯蔵成分であるBa、Sr及びMgO成分と一緒に混入してスラリーを完成し、しかる後に、担体に塗布してNSR比較触媒(ref.NSRと称する)を完成した。
【0022】
図3は、比較例、実施例1、実施例3で製造された触媒を対象に、エンジンエージング後にWLTC(worldwide harmonized light vehicles test cycle)を行った結果を示す。その場同時製法(実施例1)又は多段階方式(実施例3)で製造され、ルテニウム複合体が含まれたNSR物品においてde-NOx能力がReferenceに比べて著しく改善されたことが確認することができる。よって、エンジンエージングの高温で耐久性が増加したことを示す。
【0023】
図4は、実施例1において出発物質であるRu金属粒子の平均粒径を異ならせて製造されたNSRのde-NOx効率を示す。本明細書において、Ru3μmとは、総粒子中の90%の粒子の粒径(D90)が3μm以下であり、総粒子中の50%の粒子の粒径(D50)が1μm以下であることを意味する。図4を参照すると、出発物質の粒子の粒径はDe-NOx効率に影響を及ぼし、特に5nm~50μmのRu金属粒子が好ましいことを確認した。
【0024】
これらの実施例において完成したNSR物品は、選択的触媒還元(SCR)触媒物品の前段に配置されることにより、内燃機関排気システムを完成することができる。図5は、本明細書によるNSR物品がSCRの前段に配置されるときのde-NOx効率をまとめたものであり、図面符号(1)は従来のNSR物品、(2)はSCR物品、及び(3)は本明細書によるRu複合体が含まれたNSR物品を示し、図表中の温度はエンジン排気ガス温度であり、本発明のRu複合体含有NSRをSCRの前段に付着させる場合、特にエンジン排気ガスの温度が低いときにNOx除去効率が大きく改善される。
図1
図2
図3
図4
図5