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特許7591157導電性粒体検出装置、異常判定方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】導電性粒体検出装置、異常判定方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/06 20060101AFI20241120BHJP
   G01N 27/00 20060101ALI20241120BHJP
   G01N 15/00 20240101ALI20241120BHJP
【FI】
G01N27/06 A
G01N27/00 L
G01N15/00 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023550405
(86)(22)【出願日】2022-07-20
(86)【国際出願番号】 JP2022028197
(87)【国際公開番号】W WO2023053683
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2024-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2021157903
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100145481
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 昌邦
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 和彦
(72)【発明者】
【氏名】原田 昌樹
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-003435(JP,A)
【文献】実開平03-123926(JP,U)
【文献】特開2020-183932(JP,A)
【文献】米国特許第04070660(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0143351(US,A1)
【文献】特開2021-096168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-27/24
G01N 15/00-15/1492
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械動作装置の潤滑に用いられる非導電性の潤滑液中に離間して配置される電極と、
磁力によって集められた前記潤滑液中の導電性粒体に応じて変化する前記電極間の電気抵抗値を検出する抵抗検出部を備える検出回路と、
前記抵抗検出部によって検出された電気抵抗値を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記電気抵抗値が閾値を下回った回数に基づいて、前記機械動作装置の異常を判定する異常判定部と、
前記異常判定部によって判定された結果を出力する出力部と、を備え
前記電極は、
検出部カバーの内側に配置されると共に、金属磁性体性製の中継片に固定された導電性の永久磁石と、
前記永久磁石に取り付けられると共に、一部が前記検出部カバーから外部に突出するように配置された導電性且つ非磁性体の突起部材と、を備え、
前記検出回路は、前記中継片に電気的接続された検出基板に設けられ、
前記永久磁石は、前記検出部カバーの外周面上における前記電極間のギャップに前記導電性粒体を吸着させる、導電性粒体検出装置。
【請求項2】
前記取得部は、組み合わせの異なる複数組の電極間の複数の前記電気抵抗値を取得し、
前記異常判定部は、複数の前記電気抵抗値が前記閾値を下回った回数に基づいて、前記異常を判定する、請求項1に記載の導電性粒体検出装置
【請求項3】
前記異常判定部は、複数の前記電気抵抗値がそれぞれ前記閾値を下回った回数の合計に基づいて、前記異常を判定する、請求項2に記載の導電性粒体検出装置
【請求項4】
前記異常判定部は、前記機械動作装置の故障を示す故障状態と、前記故障状態となる前の予兆状態とを含む前記異常を判定し、
前記出力部は、前記故障状態と前記予兆状態とのうちいずれかを示す情報を出力する、請求項1に記載の導電性粒体検出装置
【請求項5】
前記異常判定部は、外部から入力された前記機械動作装置の大きさの受付結果に基づいて、前記機械動作装置の大きさに対応した前記閾値に設定する、請求項1又は4に記載の導電性粒体検出装置
【請求項6】
前記異常判定部は、外部から入力された前記潤滑液の粘度および絶縁性能の受付結果に基づいて、前記潤滑液の粘度および絶縁性能のうちの少なくとも一方に対応した前記閾値に設定する、請求項1又は4に記載の導電性粒体検出装置
【請求項7】
前記異常判定部は、外部から入力された前記機械動作装置の大きさの受付結果に基づいて、前記機械動作装置の大きさに対応した前記回数に設定する、請求項1又は4に記載の導電性粒体検出装置
【請求項8】
請求項1に記載の導電性粒体検出装置に用いられるコンピュータが、
前記機械動作装置の潤滑に用いられる非導電性の前記潤滑液中に離間して配置される前記電極間の電気抵抗値を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにおいて取得された前記電気抵抗値が閾値を下回った回数に基づいて、前記機械動作装置の異常を判定する状態判定ステップと、
前記状態判定ステップにおいて判定された結果を出力する出力ステップと、を実行し、
前記取得ステップは、磁力によって集められた前記潤滑液中の前記導電性粒体に応じて変化する前記電極間の前記電気抵抗値を取得する、異常判定方法。
【請求項9】
請求項1に記載の導電性粒体検出装置に用いられるコンピュータを、
前記機械動作装置の潤滑に用いられる非導電性の前記潤滑液中に離間して配置される前記電極間の電気抵抗値を取得する取得部、
前記取得部によって取得された前記電気抵抗値が閾値を下回った回数に基づいて、前記機械動作装置の異常を判定する異常判定部、
前記異常判定部によって判定された結果を出力する出力部、として機能させ、
さらに前記取得部を、磁力によって集められた前記潤滑液中の前記導電性粒体に応じて変化する前記電極間の前記電気抵抗値を取得するように機能させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、異常判定装置、導電性粒体検出装置、異常判定方法、およびプログラムに関する。
本願は、2021年9月28日に日本に出願された特願2021-157903号について優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
機械動作装置には、減速機等の機械的な動作機構が内蔵されている。機械動作装置では、ケーシングの内部に潤滑液を充填することによって動作機構の摩耗の低減が図られている。機械動作装置では、経時使用に伴って機械部品に摩耗や破損が発生する。摩耗や破損で発生した金属粉は潤滑液中に混入する。潤滑液中に金属粉が多量に混入すると、潤滑液の機能(動作機構の摩耗を抑制する機能)が低下する。潤滑液中に金属粉が多量に混入することは、動作機構に摩耗や破損等が生じたことを意味する。
【0003】
このため、機械動作装置では、潤滑液中に混入している金属粉の量が規定量以上になったことを外部から検知できることが望まれる。この対策として、潤滑液中の金属粉を永久磁石によって吸引し、吸引した金属粉の量を電気的に検知できるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国特開2005-331324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、機械動作装置を使用するユーザからすると、機械動作装置の故障が突然報知されることになるため、機械動作装置を計画的に使用することができないことがあった。このため、機械動作装置が使用するユーザにとって利便性が低いという課題があった。
【0006】
本開示は、機械動作装置を使用するユーザの利便性を向上させることができる導電性粒体検出装置、異常判定方法、およびプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示の一態様に係る異常判定装置は、機械動作装置の潤滑に用いられる潤滑液中に離間して配置される電極間の電気抵抗値を取得する取得部と、前記取得部によって取得された前記電気抵抗値が閾値を下回った回数に基づいて、前記機械動作装置の異常を判定する異常判定部と、前記異常判定部によって判定された結果を出力する出力部と、を備える。前記取得部は、磁力によって集められた前記潤滑液中の導電性粒体に応じて変化する前記電極間の前記電気抵抗値を取得する。
【0008】
(2)上記構成において、前記取得部は、組み合わせの異なる複数組の電極間の複数の前記電気抵抗値を取得してもよい。前記異常判定部は、複数の前記電気抵抗値が前記閾値を下回った回数に基づいて、前記異常を判定するようにしてもよい。
【0009】
(3)上記構成において、前記異常判定部は、複数の前記電気抵抗値がそれぞれ前記閾値を下回った回数の合計に基づいて、前記異常を判定するようにしてもよい。
【0010】
(4)上記構成において、前記異常判定部は、前記機械動作装置の故障を示す故障状態と、前記故障状態となる前の予兆状態とを含む前記異常を判定してもよい。前記出力部は、前記故障状態と前記予兆状態とのうちいずれかを示す情報を出力するようにしてもよい。
【0011】
(5)上記構成において、前記閾値は、前記機械動作装置の大きさに応じて変更可能な値としてもよい。
【0012】
(6)上記構成において、前記閾値は、前記潤滑液の粘度および絶縁性能のうち少なくとも一方に応じて変更可能な値としてもよい。
【0013】
(7)上記構成において、前記回数は、前記機械動作装置の大きさに応じて変更可能な値としてもよい。
【0014】
(8)本開示の他の態様に係る異常判定装置は、機械動作装置の潤滑に用いられる非導電性の潤滑液中に離間して配置される電極間の電気抵抗値を取得する取得部と、前記取得部によって取得された前記電気抵抗値が閾値を下回った回数に基づいて、前記機械動作装置の異常を判定する異常判定部と、前記異常判定部によって判定された結果を出力する出力部と、を備える。前記取得部は、磁力によって集められた前記潤滑液中の導電性粒体に応じて変化する前記電極間の前記電気抵抗値を取得する。さらに前記取得部は、組み合わせの異なる複数組の電極間の複数の前記電気抵抗値を取得する。前記異常判定部は、複数の前記電気抵抗値がそれぞれ前記閾値を下回った回数の合計に基づいて、前記機械動作装置の故障を示す故障状態と、前記故障状態となる前の予兆状態とを含む前記異常を判定する。前記出力部は、前記故障状態と前記予兆状態とのうちいずれかを示す情報を出力する。
【0015】
(9)本開示の他の態様に係る導電性粒体検出装置は、機械動作装置の潤滑に用いられる非導電性の潤滑液中に離間して配置される電極と、磁力によって集められた前記潤滑液中の導電性粒体に応じて変化する前記電極間の電気抵抗値を取得する取得部と、前記取得部によって取得された前記電気抵抗値が閾値を下回った回数に基づいて、前記機械動作装置の異常を判定する異常判定部と、前記異常判定部によって判定された結果を出力する出力部と、を備える。
【0016】
(10)本開示の他の態様に係る異常判定方法は、異常判定装置に用いられるコンピュータが、機械動作装置の潤滑に用いられる非導電性の潤滑液中に離間して配置される電極間の電気抵抗値を取得する取得ステップと、前記取得ステップにおいて取得された前記電気抵抗値が閾値を下回った回数に基づいて、前記機械動作装置の異常を判定する状態判定ステップと、前記状態判定ステップにおいて判定された結果を出力する出力ステップと、を実行する。前記取得ステップは、磁力によって集められた前記潤滑液中の導電性粒体に応じて変化する前記電極間の前記電気抵抗値を取得する。
【0017】
(11)本開示の他の態様に係るプログラムは、異常判定装置に用いられるコンピュータを、機械動作装置の潤滑に用いられる非導電性の潤滑液中に離間して配置される電極間の電気抵抗値を取得する取得部、前記取得部によって取得された前記電気抵抗値が閾値を下回った回数に基づいて、前記機械動作装置の異常を判定する異常判定部、前記異常判定部によって判定された結果を出力する出力部、として機能させる。さらに前記取得部を、磁力によって集められた前記潤滑液中の導電性粒体に応じて変化する前記電気抵抗値を取得するように機能させる。
【発明の効果】
【0018】
導電性粒体検出装置、異常判定方法、およびプログラムによれば、機械動作装置を使用するユーザの利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態に係る減速機10の一例を示す説明図。
図2】導電性粒体検出装置100の一例を示す斜視図。
図3図2に示す導電性粒体検出装置100をX-X線に沿って断面にした部分断面斜視図。
図4図2に示す導電性粒体検出装置100をXI-XI線に沿う断面を用いた検出回路を示す説明図。
図5A】抵抗検出部210によって検出された抵抗値の一例を示すグラフ。
図5B】抵抗検出部210によって検出された抵抗値の一例を示すグラフ。
図6】本実施形態に係る制御装置140の機能的構成の一例を示す機能ブロック図。
図7】制御装置140が行う閾値および基準回数の設定処理の一例を示すフローチャート。
図8】制御装置140が行う異常判定処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態>
本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
(本実施形態に係る減速機の一例)
図1は、本実施形態に係る減速機10の一例を示す説明図である。図1において、減速機10は、機械動作装置の一例である。減速機10は、例えば、工場の生産ラインに用いられる産業用ロボットの関節部分に使用される。
【0022】
減速機10は、減速機構部11と、ケーシング12とを備える。減速機構部11は、入力回転を所定の減速比に減速する。ケーシング12は、減速機構部11を内部に収容する。ケーシング12の内部には、オイルバス22が設けられる。オイルバス22には、減速機構部11やその他の機械接触部を潤滑するための潤滑液13が充填されている。潤滑液13には、非導電性のものが用いられる。
【0023】
ケーシング12の壁12aには、導電性粒体検出装置100が取り付けられている。導電性粒体検出装置100が取り付けられる位置は、潤滑液13の流動性の良好な位置である。導電性粒体検出装置100は、潤滑液13内に混入した金属粉等の導電性粒体を検出する。
【0024】
(導電性粒体検出装置の構成)
図2は、導電性粒体検出装置100の一例を示す斜視図である。図3は、図2に示す導電性粒体検出装置100をX-X線に沿って断面にした部分断面斜視図である。
図2および図3に示すように、導電性粒体検出装置100は、取付部110と、支持部材120(図3参照)と、4個の電極130と、制御装置140(図3参照)とを備える。
【0025】
取付部110は、ネジ部111と、フランジ部112とを含む。ネジ部111は、壁12aを貫通するねじ孔に嵌め込まれる。フランジ部112は、ネジ部111を壁12aに締め付けるためのフランジナットである。フランジ部112は、ネジ部111の端部にネジ部111と一体的に形成される。
【0026】
支持部材120は、樹脂材料で形成されている。支持部材120は、ネジ部111を軸方向に貫通して配置されている。支持部材120は、長手方向の一端部が装置ボディ121の内側に固定されている。支持部材120の長手方向の他端部は、ネジ部111よりも外側に突出している。
【0027】
4つの電極130は、それぞれ、永久磁石131と、突起部材132とを備える。永久磁石131は、導電性の磁石である。永久磁石131は、外部から磁場や電流の供給を受けることなく、磁石としての性質を有する。永久磁石131は、磁力によって、金属磁性体製の中継片135を吸着して固定する。
【0028】
突起部材132は、検出部カバー122から外部に突出するように配置される。突起部材132は、永久磁石131に取り付けられている。突起部材132は、真鍮、アルミニウム、銅等の導電性の非磁性体によって形成されている。突起部材132は、永久磁石131に接して設けられている。ただし、突起部材132は、金属粉を直接吸着しない。
【0029】
制御装置140は、異常判定装置の一例である。制御装置140は、装置カバー101(図4参照)の内部に配置される。
制御装置140は、検出基板141を備える。検出基板141は、フレキシブル配線板142に接続される。フレキシブル配線板142は、導通部を備える。フレキシブル配線板142は、一端部が検出基板141に接続され、他端部が四方向に分岐している。
四方向に分岐した各端部は、対応する各中継片135に端子部(導通部)を介して接続される。具体的に、各端部の端子部(導通部)は、支持部材120と中継片135との間に挟まれた位置に配置されている。端子部は、導電性の接着剤や半田付け等によって中継片135に接続されている。
【0030】
(金属粉を検出する検出回路について)
図4は、図2に示す導電性粒体検出装置100をXI-XI線に沿う断面を用いた検出回路を示す説明図である。図4に示す検出回路200は、検出基板141に具備される。
検出回路200は、電源201を介して、第1電極130aと、第2電極130b、130cとを接続した回路を示す。第1電極130aには、第2電極130b、130cよりも高い電圧が印加される。第1電極130aは、例えば、N極の磁性を帯びている。第2電極130b、130cは、例えば、S極の磁性を帯びている。
【0031】
検出回路200は、抵抗検出部210を備える。抵抗検出部210は、隣り合う2つの電極130間(第1電極130aと第2電極130bとの間、および、第1電極130aと第2電極130cとの間)の電気抵抗値(以下「抵抗値」という。)を検出する。
【0032】
(初期金属粉と経時使用金属粉について)
減速機10を初めて使用する際に発生する初期金属粉は、例えば粒径が10μm未満(通常2μm未満)の微細な金属粉である。
初期金属粉は、使用初期段階に発生する。このため、使用初期段階では、初期金属粉は、検出部カバー122の表面等に下層として付着する。検出部カバー122に付着した初期金属粉の周囲には、潤滑液30が非導電層として残存する。使用初期状態では、潤滑液13が非導電性であることから、抵抗検出部210によって検出される抵抗値は無限大となる。初期金属粉の吸着力は比較的弱いため、第1電極130aと第2電極130b(または第2電極120c)の間に集まる初期金属粉の量も少なく抑えられる。
【0033】
一方、減速機10の通常の使用を行った場合、金属(摩耗粉)や破損片等の金属粉(経時使用金属粉)が発生する。経時使用金属粉は、例えば粒径が10μm以上と大きい。このため、経時使用金属粉は、永久磁石131から大きな吸着力を受ける。経時使用金属粉は、大きな吸着力を受けることから、非導電性の潤滑液を押しのけて経時使用鉄粉同士が接する。潤滑液13内に混入する経時使用金属粉の量が増大すると、潤滑液13に混入している経時使用金属粉が導電性粒体検出装置100の複数の永久磁石131によって吸引される。
そして、経時使用金属粉は、検出部カバー122の外周面上における電極130間のギャップに付着する。経時使用金属粉は永久磁石131から大きな吸着力を受けることから、初期金属粉の上側からでも確実に吸着される。このため、経時使用金属粉は、必然的に初期金属粉の上に上層となって堆積する。
【0034】
検出部カバー122の外周面に付着した経時使用金属粉の付着量が、ある量よりも増大すると、隣り合う永久磁石131の間の抵抗値(抵抗検出部210によって検出される抵抗値)が規定値以下に低下する。これにより、制御装置140は、外部のユーザ端末等に、減速機10内の経時使用金属粉が増大したことを報知することが可能である。
【0035】
(減速機の故障について)
図5A及び図5Bは、抵抗検出部210によって検出された抵抗値の一例を示すグラフである。図5A及び図5Bにおいて、横軸は、減速機10の運転時間(定格換算時間)を示し、縦軸は、抵抗検出部210によって検出された抵抗値を示す。
チャンネル1(ch1)は、例えば、第1電極130aと、第2電極130bとの間の抵抗値を示す。チャンネル2(ch2)は、例えば、第1電極130aと、第2電極130cとの間の抵抗値を示す。図5A及び図5Bに示す各チャンネルの波形は、同じ波形を示す。
【0036】
例えば図5Aに示すように、チャンネル1と、チャンネル2との両方の抵抗値が同時に閾値を下回った場合、減速機10が故障したと仮定する。この際、例えば抵抗値の閾値が第1閾値であると仮定した場合、両チャンネル1、2の抵抗値が同時に第1閾値を下回るのは、X時間である。
この場合とは異なり、例えば抵抗値の閾値が第1閾値よりも高い第2閾値であると仮定した場合、両チャンネル1、2の抵抗値が同時に第2閾値を下回るのは、同様にX時間である。
つまり、閾値を変えたとしても、故障を検知する時間は変わらない。このため、抵抗値の閾値を変えただけでは、減速機10の故障を精度よく検出することができない。
【0037】
これに対して、導電性粒体検出装置100に経時使用金属粉が付着しても、直ちに減速機10が故障するものではない。具体的には、図5A及び図5Bのチャンネル2の波形に示すように、抵抗値は、経時使用金属粉が付着しても、直ちに0Ωまで低下するのではない。抵抗値は、低下と上昇を幾度か繰り返しながら、最終的に数十kΩへ収束する傾向がある。
これは、例えば、経時使用金属粉が検出部カバー122の外周面の表面に一旦付着したものの、潤滑液13の流れによって、付着した金属粉が剥がれたことを意味する。ただし、導電性粒体検出装置100によって経時使用金属粉の付着が検出されたということは、オイルバス22の中に、経時使用金属粉が存在することが判明したことになる。
【0038】
そこで、本実施形態では、図5Bに示すように、抵抗値が第2閾値を下回った回数を計測し、その回数が基準回数(例えば、3回)となった場合に、減速機10の異常を検出するように構成している。これにより、閾値を高く(第2閾値)設定したとしても、早期に(図示ではY時間:Y<X)、異常を検出することができる。
【0039】
(制御装置の機能的構成)
図6は、本実施形態に係る制御装置140の機能的構成の一例を示す機能ブロック図である。図6に示すように、制御装置140は、抵抗検出部210と、取得部601と、異常判定部602と、出力部603と、記憶部610を備える。抵抗検出部210は、制御装置140とは異なる部位(他の基板等)に具備されていてもよい。
【0040】
抵抗検出部210、取得部601、異常判定部602及び出力部603は、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサが異常判定プログラムを実行することにより実現されてもよい。
抵抗検出部210、取得部601、異常判定部602及び出力部603は、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。
【0041】
異常判定プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよい。或いは異常判定プログラムは、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。プロセッサが記憶部610に記憶されている異常判定プログラムを実行することによって、抵抗検出部210、取得部601、異常判定部602及び出力部603が実現される。
記憶部610は、例えば、RAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリや、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)などの不揮発性のメモリ(非一時的な記録媒体)を含む。
【0042】
取得部601は、抵抗検出部210によって検出された抵抗値(電気抵抗値)を取得する。抵抗検出部210は、例えば、所定時間おき(例えば、1分おき)に抵抗値を検出する。取得部601は、抵抗検出部210から所定時間おきに抵抗値を取得する。
【0043】
異常判定部602は、取得部601によって取得された抵抗値が閾値を下回った回数に基づいて、減速機10の異常を判定する。
具体的には、異常判定部602は、取得部601によって取得された抵抗値が閾値(第2閾値)を下回った回数が基準回数(例えば3回)になると、減速機10の異常を判定する。以下において、取得部601によって取得された抵抗値が閾値を下回った回数を「カウント数」という。異常判定部602は、カウント数が基準回数に達していない場合には、減速機10が正常であると判定する。記憶部610は、カウント数を記憶する。
【0044】
出力部603は、異常判定部602によって判定された結果を出力する。出力部603は、当該情報(異常判定部602によって判定された結果)を外部の装置へ送信する。
外部の装置は、例えば、ユーザ端末300である。ユーザ端末300は、減速機10が用いられる工場等の施設内に配置されるコンピュータ装置である。コンピュータ装置は、例えば、デスクトップ型のパソコンや、ノートパソコンであるが、これに限らず、タブレット端末やスマートフォンであってもよい。ユーザ端末300は、異常判定部602によって判定された結果をディスプレイに表示する。具体的には、ユーザ端末300は、減速機10が正常であるか否かを表示する。ユーザ端末300の出力態様は、表示による出力態様に限らず、音声による出力態様や、記憶媒体に記憶させる出力態様を含む。
【0045】
導電性粒体検出装置100は、LED等の発光部を備えていてもよい。この場合、出力部603は、異常判定部602の判定結果に応じた点灯態様で、発光部を発光させればよい。出力部603は、記憶部610に、異常判定部602の判定結果を記憶させてもよい。
【0046】
(複数の抵抗値の取得について)
本実施形態において、取得部601は、組み合わせの異なる複数組の電極間の複数の抵抗値を取得する。
具体的には、取得部601は、チャンネル1の抵抗値(第1電極130aと第2電極130bとの間の抵抗値)と、チャンネル2の抵抗値(第1電極130aと第2電極130cとの間の抵抗値)とを取得する。
ただし、取得部601は、チャンネル1及びチャンネル2の抵抗値のうち、いずれか一方の抵抗値のみを取得してもよい。言い換えれば、導電性粒体検出装置100は、チャンネルは少なくとも一つあればよい。より具体的には、制御装置140は、検出回路200(図4参照)に示した、第1電極130aと第2電極130bとを結ぶ回路と、第1電極130aと第2電極130cとを結ぶ回路とのうち、少なくとも一方を備えていればよい。
【0047】
本実施形態において、チャンネル数は2であるが、3以上としてもよい。例えば、チャンネル数を4とする場合、検出回路200(図4参照)と同様の回路を第1電極130d側に設けるようにすればよい。具体的には、電源201を介して第1電極130dと第2電極130bとを結ぶ回路と、電源201を介して第1電極130dと第2電極130cとを結ぶ回路とを追加するようにしてもよい。このように、チャンネル数を多く備えることによって、より精度よく経時使用金属粉を検出することができる。
【0048】
異常判定部02は、複数のチャンネルのカウント数に基づいて、異常を判定する。
具体的には、異常判定部02は、チャンネル1におけるカウント数と、チャンネル2におけるカウント数との合計値が基準回数となった場合に、異常である判定する。ただし、チャンネル1とチャンネル2とにおけるカウント数をそれぞれ別々に計測し、各カウント数のうち一方が基準回数となった場合に、異常と判定してもよいし、各カウント数のそれぞれが基準回数となった場合に、異常と判定してもよい。
【0049】
(予兆状態と故障状態の報知について)
本実施形態において、「異常」とは、故障の手前であることを示す予兆状態と、故障したことを示す故障状態とを含む。
異常判定部602は、予兆状態と、故障状態とを含む異常を判定する。例えば、異常判定部602は、取得部601によって取得された抵抗値が閾値(第2閾値)を3回下回ると、予兆状態であると判定する。すなわち、異常判定部602は、カウント数が基準回数(3回)となると、予兆状態であると判定する。
一方、異常判定部602は、取得部601によって取得された両チャンネル1、2の抵抗値が同時に閾値(第2閾値)を下回った場合に、故障状態であると判定する。
【0050】
異常判定部602は、カウント数が基準回数(3回)となると、予兆状態であると判定するのではなく、故障状態であると判定してもよい。
ただし、この場合でも、しばらくの期間は減速機10を使用できる。このため、ユーザの判断で、減速機10の使用継続または使用停止を行うようにすればよい。
【0051】
本実施形態において、故障状態の判定に用いる閾値(第2閾値)は、予兆状態の判定に用いる閾値(第2閾値)と同じである。
ただし、故障状態の判定に用いる閾値は、予兆状態の判定に用いる閾値と異なる値であってもよい。例えば、故障状態の判定に用いる閾値は、第2閾値よりも低い閾値としてもよい。
【0052】
検出回路200(図4参照)において、複数のチャンネルを備えない場合、すなわち、一のチャンネルを備える場合の故障状態の判定について補足する。
例えば、異常判定部602は、カウント数が基準回数よりも多い回数(例えば4回以上)となった場合、故障状態であると判定してもよい。故障状態の判定に用いる閾値を、予兆状態の判定に用いる閾値(第2閾値)を低くし(例えば、第1閾値とし)、取得部601によって取得された抵抗値が第1閾値を下回った場合に、異常判定部602が故障状態であると判定してもよい。
【0053】
出力部603は、予兆状態と故障状態とのうちいずれかを示す情報を出力する。異常判定部602によって予兆状態であると判定された場合、出力部603は、予兆状態を示す情報(以下「予兆情報」という。)を出力する。ユーザ端末300は、予兆情報を受信すると、予兆状態を示す注意画像(例えば黄色)をディスプレイに表示することにより、ユーザに予兆状態であることを報知する。
導電性粒体検出装置100が発光部を備える場合、出力部603は、予兆状態(注意)を示す点灯態様(例えば黄色)で発光部を発光させる。
【0054】
異常判定部602によって故障状態であると判定された場合、出力部603は、故障状態を示す情報(以下「故障情報」という。)を出力する。ユーザ端末300は、故障情報を受信すると、故障状態を示す警告画像(例えば赤色)をディスプレイに表示することにより、ユーザに故障状態であることを報知する。
導電性粒体検出装置100が発光部を備える場合、出力部603は、故障状態(警告)を示す点灯態様(例えば赤色)で発光部を発光させる。
【0055】
(減速機の大きさに応じた閾値の変更について)
導電性粒体検出装置100が故障を検出できるタイミングは、減速機10の大きさに依存する。これは、減速機10の大きさによって、例えばオイルバス22の大きさ、潤滑液13の量、減速機10の経時使用金属粉の量、経時使用金属粉の発生個所から導電性粒体検出装置100までの距離など、様々な要素が異なるためである。これらの要素に対応させて、導電性粒体検出装置100をそれぞれ製造することは、製造コスト等の観点から効率的ではない。
【0056】
そこで、本実施形態では、抵抗値の閾値を、減速機10の大きさに応じて変更可能にし、上記要素に対応させることを可能にしている。例えば、減速機10のサイズが小さい場合は、初期金属粉の発生量が少なく、経時使用金属粉の発生個所と導電性粒体検出装置100の位置とが近いことから、早期に抵抗値が低下する傾向にある。このため、減速機10のサイズが小さい場合には、経時使用金属粉の検出に係る感度を下げるべく、抵抗値の閾値を低めに設定する。
【0057】
一方、減速機10のサイズが大きい場合、初期金属粉の発生量が多く、経時使用金属粉の発生個所と導電性粒体検出装置100の位置とが遠いことから、抵抗値が低下しにくい傾向にある。このため、減速機10のサイズが大きい場合には、経時使用金属粉の検出に係る感度を上げるべく、抵抗値の閾値を高めに設定する。
【0058】
(潤滑液の粘度に応じた閾値の変更について)
導電性粒体検出装置100が故障を検出できるタイミングは、潤滑液13の粘度に依存する。これは、潤滑液13の粘度に応じて、経時使用金属粉の導電性粒体検出装置100への付着の際に、上述したように、非導電層の潤滑液の押しのけやすさが異なるためである。
そこで、本実施形態では、抵抗値の閾値を、潤滑液13の粘度に応じて変更可能にしている。
【0059】
例えば、潤滑液13の粘度が高い場合には、経時使用金属粉が導電性粒体検出装置100への付着時に潤滑液を押しのけにくいことから、抵抗値が下がりにくい傾向にある。このため、潤滑液13の粘度が高い場合には、経時使用金属粉の検出に係る感度を上げるべく、抵抗値の閾値を高めに設定する。
【0060】
一方、潤滑液13の粘度が低い場合、経時使用金属粉が導電性粒体検出装置100への付着時に潤滑液を押しのけやすいことから、抵抗値が下がりやすい傾向にある。このため、潤滑液13の粘度が低い場合には、経時使用金属粉の検出に係る感度を下げるべく、抵抗値の閾値を低めに設定する。
【0061】
(潤滑液の絶縁性能に応じた閾値の変更について)
導電性粒体検出装置100が故障を検出できるタイミングは、潤滑液13の絶縁性能に依存する。これは、潤滑液13の絶縁性能に応じて、抵抗値の検出精度が異なるためである。
そこで、本実施形態では、抵抗値の閾値を、潤滑液13の絶縁性能に応じて変更可能にしている。
【0062】
例えば、絶縁性能が低い場合(すなわち導電性が高い場合)には、抵抗値が低下しやすいことから、早期に抵抗値が低下する傾向にある。このため、潤滑液13の絶縁性能が低い場合には、経時使用金属粉の検出に係る感度を下げるべく、抵抗値の閾値を低めに設定する。
【0063】
一方、潤滑液13の絶縁性能が高い場合(すなわち導電性が低い場合)には、抵抗値が低下しにくい傾向にある。このため、潤滑液13の絶縁性能が高い場合には、経時使用金属粉の検出に係る感度を上げるべく、抵抗値の閾値を高めに設定する。
【0064】
(基準回数の変更について)
本実施形態では、基準回数は、減速機10の大きさに応じて変更可能にし、上記要素に対応させることを可能にしている。例えば、減速機10のサイズが小さい場合、早期に抵抗値が低下する傾向にある。このため、経時使用金属粉の検出に係る感度を下げるべく、基準回数を多めに設定する。
一方、減速機10のサイズが大きい場合、抵抗値が低下しにくい傾向にある。このため、経時使用金属粉の検出に係る感度を上げるべく、基準回数を少なめに設定する。
【0065】
閾値の設定や、基準回数の設定は、制御装置140の製造時に製造スタッフから受け付けることによって行われる。例えば、制御装置140は、減速機10のサイズが所定のサイズ以上であるか否かを製造スタッフから受け付けた受付結果を用いて、閾値および基準回数を設定する。
具体的には、記憶部610は、減速機10の大きさと閾値とを対応付けたテーブルや、減速機10の大きさと基準回数とを対応付けたテーブルを予め記憶する。制御装置140は、減速機10の大きさを受け付けると、記憶部610のテーブルを参照して、閾値および基準回数を設定するようにする。
【0066】
本実施形態では、減速機10の大きさは大小2種類とする。さらに閾値と基準回数についてもそれぞれ2種類のうち、いずれか一方を設定するようにする。
ただし、減速機10の大きさは大小2種類に限らず、大中小の3種類としてもよいし、それ以上の種類としてもよい。制御装置140は、製造スタッフから閾値そのものの値、および基準回数そのものの値を受け付けて、受け付けた値を設定するようにしてもよい。
【0067】
(閾値および基準回数の設定処理について)
図7は、制御装置140が行う閾値および基準回数の設定処理の一例を示すフローチャートである。図7に示すように、制御装置140は、製造スタッフから所定の操作を受け付けることにより、閾値および基準回数の設定開始となるまで待機する(ステップS701:NO)。閾値および基準回数の設定開始になると(ステップS701:YES)、制御装置140は、製造スタッフから受け付けた減速機10のサイズが「大」であるか否かを判断する(ステップS702)。
【0068】
減速機10のサイズが「大」ではない場合(ステップS702:NO)、すなわち、「小」である場合、制御装置140は、閾値を低めに設定する(ステップS703)。そして、制御装置140は、基準回数を多めに設定し(ステップS704)、一連の処理を終了する。
【0069】
減速機10のサイズが「大」である場合(ステップS702:YES)、制御装置140は、閾値を高めに設定する(ステップS705)。そして、制御装置140は、基準回数を少なめに設定し(ステップS706)、一連の処理を終了する。
【0070】
上述したフローチャートにおいて、潤滑液13の粘度および絶縁性能のうち、少なくとも一方を製造スタッフから受け付けるようにし、受け付けた粘度や絶縁性能に応じた閾値を設定することも可能である。
【0071】
(異常判定処理について)
図8は、制御装置140が行う異常判定処理の一例を示すフローチャートである。図8に示すように、制御装置140は、異常判定の開始となるまで待機する(ステップS801:NO)。異常判定の開始とは、例えば、導電性粒体検出装置100の電源がオンになることである。異常判定の開始になると(ステップS801:YES)、制御装置140は、所定時間(例えば、1分)経過したか否かを判断する(ステップS802)。
【0072】
制御装置140は、所定時間が経過するまで待機する(ステップS802:NO)。所定時間が経過すると(ステップS802:YES)、制御装置140は、チャンネル1、2の2つの抵抗値の検出および取得を行う(ステップS803)。そして、制御装置140は、取得した抵抗値の両方が閾値(第2閾値)を下回ったか否かを判断する(ステップS804)。取得した抵抗値の両方が閾値を下回っていない場合(ステップS804:NO)、取得した抵抗値のうち一方が閾値(第2閾値)を下回ったか否かを判断する(ステップS805)。
【0073】
一方が閾値を下回っていない場合(ステップS805:NO)、すなわち、取得した抵抗値の両方が閾値以上である場合、制御装置140は、ステップS813に移行する。取得した抵抗値のうち一方が閾値を下回った場合(ステップS805:YES)、制御装置140は、抵抗値が閾値を下回った回数(カウント数)を「+1」し、記憶部610に記憶する(ステップS806)。
【0074】
そして、制御装置140は、カウント数が基準回数(例えば「3」)以上であるか否かを判断する(ステップS807)。カウント数が基準回数以上ではない場合(ステップS807:NO)、制御装置140は、ステップS813に移行する。カウント数が基準回数以上である場合(ステップS807:YES)、制御装置140は、ユーザ端末300に予兆情報を出力済であるか否かを判断する(ステップS808)。
【0075】
ユーザ端末300に予兆情報を出力済である場合(ステップS808:YES)、すなわち、ユーザ端末300において予兆状態であることが既に報知されている場合、制御装置140は、ステップS813に移行する。
一方、ユーザ端末300に予兆情報を出力済ではない(ステップS808:NO)、制御装置140は、ユーザ端末300に故障情報を出力済であるか否かを判断する(ステップS809)。
【0076】
ユーザ端末300に故障情報を出力済である場合(ステップS809:YES)、すなわち、ユーザ端末300において故障状態であることが既に報知されている場合、制御装置140は、ステップS813に移行する。
一方、ユーザ端末300に故障情報を出力済ではない場合(ステップS809:NO)、制御装置140は、ユーザ端末300に予兆情報を出力し(ステップS810)、ステップS813に進む。ユーザ端末300は、予兆情報を受信することにより、予兆状態を報知する。
【0077】
本フローチャートでは、ユーザ端末300において予兆状態であることが既に報知されている場合、ユーザ端末300に予兆情報を出力しないようにしている(ステップS808:YES→ステップS813)。
ただし、予兆状態であることが既に報知されている場合でも、ユーザ端末300に予兆情報を再度出力してもよい。ユーザ端末300は、予兆情報を受信するたびに、予兆状態を報知してもよい。
【0078】
ステップS804において、取得した抵抗値の両方が閾値を下回っている場合(ステップS804:YES)、制御装置140は、ユーザ端末300に故障情報を出力済であるか否かを判断する(ステップS811)。ユーザ端末300に故障情報を出力済である場合(ステップS811:YES)、すなわち、ユーザ端末300において既に故障状態であることが既に報知されている場合、制御装置140は、ステップS813に移行する。
一方、ユーザ端末300に故障情報を出力済ではない(ステップS811:NO)、制御装置140は、ユーザ端末300に故障情報を出力する(ステップS812)。ユーザ端末300は、故障情報を受信することにより、故障状態を報知する。
【0079】
本フローチャートでは、ユーザ端末300において故障状態であることが既に報知されている場合には、ユーザ端末300に故障情報を出力しないようにしている(ステップS811:YES→ステップS813)。
ただし、故障状態であることが既に報知されている場合でも、ユーザ端末300に故障情報を再度出力してもよい。ユーザ端末300は、故障情報を受信するたびに、故障状態を報知してもよい。
【0080】
そして、制御装置140は、異常判定の終了か否かを判断する(ステップS813)。異常判定の終了とは、例えば、導電性粒体検出装置100の電源がオフになることである。異常判定を終了しない場合(ステップS813:NO)、制御装置140は、ステップS802に戻り、抵抗値の検出を継続して行う。
一方、異常判定を終了する場合(ステップS813:YES)、制御装置140は、一連の処理を終了する。
【0081】
以上説明したように、本実施形態に係る制御装置140は、電極130間の電気抵抗値が閾値を下回った回数に基づいて、減速機10の異常を判定して、判定結果を出力する。これにより、故障の前段階に生じる異常をユーザに知らせることができる。
したがって、ユーザは、減速機10を計画的に使用することができる。例えば、生産ラインを止めて行われる定期メンテナンスにおいて、計画的に減速機10のメンテナンスを行うことができる。また、生産ラインの運転中に減速機10が故障することを抑えることができる。したがって、本実施形態によれば、減速機10を使用するユーザの利便性を向上させることができる。
【0082】
本実施形態に係る制御装置140は、電極130間が異なる複数の抵抗値が閾値を下回った回数に基づいて、異常を判定する。これにより、複数のチャンネルから抵抗値を得ることができるため、異常判定に係る精度を向上させることができる。
【0083】
本実施形態に係る制御装置140は、複数の抵抗値がそれぞれ閾値を下回った回数の合計に基づいて、異常を判定する。したがって、より早期に故障の前段階に生じる異常をユーザに知らせることができる。
【0084】
本実施形態に係る制御装置140は、故障状態と予兆状態とを含む異常を判定し、故障状態と予兆状態とのうちいずれかを示す情報を出力する。これにより、減速機10が故障前の予兆状態であるのか、故障した故障状態であるのかを報知できる。したがって、ユーザは、減速機10の状態を適切に把握することができる。
【0085】
本実施形態に係る制御装置140において、閾値は、減速機10の大きさに応じて変更可能な値とした。これにより、閾値を変更するだけで、様々な大きさの減速機10に対応した汎用性のある導電性粒体検出装置100を提供することができる。
【0086】
本実施形態に係る制御装置140において、閾値は、潤滑液13の粘度および絶縁性能のうち少なくとも一方に応じて変更可能な値とした。これにより、閾値を変更するだけで、様々な種類の潤滑液13に対応した汎用性のある導電性粒体検出装置100を提供することができる。
【0087】
本実施形態に係る制御装置140において、基準回数は、減速機10の大きさに応じて変更可能な値とした。これにより、基準回数を変更するだけで、様々な大きさの減速機10に対応した汎用性のある導電性粒体検出装置100を提供することができる。
【0088】
以上に説明した導電性粒体検出装置100および制御装置140を実現するための異常判定プログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録し、そのプログラムをコンピュータシステムに読み込ませて実行するようにしてもよい。
ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含む。
上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0089】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0090】
本明細書で開示した実施形態において、複数の機能が分散して設けられているものは、当該複数の機能の一部又は全部を集約して設けても良く、逆に複数の機能が集約して設けられているものを、当該複数の機能の一部又は全部が分散するように設けることができる。機能が集約されているか分散されているかにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【産業上の利用可能性】
【0091】
上述の異常判定装置、導電性粒体検出装置、異常判定方法、およびプログラムによれば、機械動作装置を使用するユーザの利便性を向上させることができる。従って、本願は産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0092】
10…減速機(機械動作装置)、13…潤滑液、100…導電性粒体検出装置、130…電極、131…永久磁石、140…制御装置(異常判定装置)、210…抵抗検出部、601…取得部、602…異常判定部、603…出力部、610…記憶部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8