(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】ウレタン樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 18/08 20060101AFI20241120BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20241120BHJP
C08G 18/16 20060101ALI20241120BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20241120BHJP
C08K 3/016 20180101ALI20241120BHJP
C08K 3/32 20060101ALI20241120BHJP
C08K 5/521 20060101ALI20241120BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20241120BHJP
【FI】
C08G18/08 038
C08G18/00 J
C08G18/16
C08L75/04
C08K3/016
C08K3/32
C08K5/521
C08G101:00
(21)【出願番号】P 2023574895
(86)(22)【出願日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 JP2022001566
(87)【国際公開番号】W WO2023139635
(87)【国際公開日】2023-07-27
【審査請求日】2024-06-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505015587
【氏名又は名称】株式会社日本アクア
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】江川 慎一
(72)【発明者】
【氏名】永田 和久
(72)【発明者】
【氏名】中村 文隆
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-107515(JP,A)
【文献】特開2013-014669(JP,A)
【文献】特開2014-196476(JP,A)
【文献】特表2003-518540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
C08L 75/00-75/16
C08K 3/016-3/32
C08K 5/521
C08G 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の断熱材を構成する発泡体を形成するウレタン樹脂組成物であって、
ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、三量化触媒、発泡剤、
焼成カオリンおよび難燃剤を少なくとも含み、かつ整泡剤および表面調整剤を含ま
ず、
前記ポリオ-ル化合物100重量部に対して、前記焼成カオリンを15重量部以上85重量部以下とし、
前記難燃剤として、赤リン、ポリリン酸アンモニウムおよびリン酸エステルを少なくとも含み、
イソシアネートインデックスが400~600、かつ前記発泡体の密度が30kg/m
3
以上であり、
ISO-5660に準拠した発熱性試験時において、前記発泡体からなる試験体の高さ方向の最大膨張長が2mm以下であり、かつ前記試験体が不燃材料相当であることを特徴とする、
ウレタン樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の断熱材として用いるウレタン樹脂組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
RC造やS造住宅では、結露防止や断熱、省エネルギーを目的として吹付硬質ウレタンフォーム断熱材が多く用いられている。
近年、稀に工事管理の不備等によって断熱材への引火を原因とした火災が発生している。また、一般の火災が発生した際にも、火が断熱材に燃え移って延焼を引き起こしている場合がある。
このようなウレタンフォームの燃焼を防止する目的で、耐火コート(セメント系等無機物吹付材等)が施工される場合があるが、施工に時間がかかる、施工後にウレタンフォームとの接着が十分でなく脱落する等の問題が残されている。
【0003】
そこで、難燃性を付与したウレタン樹脂組成物として、以下の特許文献1,2で示したウレタン樹脂組成物が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6200435号公報
【文献】特許第6725606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ウレタン樹脂組成物の難燃性を評価するためのISO-5660に準拠した発熱性試験では、コーンカロリーメータと呼ばれる試験装置を用いる。
コーンカロリーメータは、所定の大きさに切り出した試験体の上方に配置するコーンヒータと、試験体とコーンヒータとの間に設けたスパークロッドとを具備している。
ISO-5660に準拠した発熱性試験では、コーンヒータでの加熱によって試験体から可燃ガスを発生させ、当該可燃ガスがスパークロッドの火花で引火することで燃焼を発生させ、当該燃焼によって得られる総発熱量等を所定の計測方法で計測し、以下の表1に示す性能要求に照らして難燃性を評価する。
この性能要求は、建築基準法第2条第9号、建築基準法施行令第1条第5号及び第6号並びに建築基準法施行令第108条の2に規定される技術的基準に適合するための基準として一般財団法人日本建築総合試験所や一般財団法人建材試験センターが規定しているものである。
【0006】
【0007】
発熱性試験を実施していくにあたり、試験体の中にはコーンヒータによる加熱によって膨れが発生するものが存在し、試験体の膨れ箇所がスパークプラグと接触したり、膨張した試験体とプラグが接触せずとも放電していることが確認されたりする場合(これらの現象を以下「スパーク接触」ともいう。)があった。
スパーク接触が発生した試験体は、ISO-5660に準拠した場合に有効な結果とならないため、都度スパーク接触の有無を確認する必要がある。
【0008】
また、ウレタン樹脂組成物を断熱材として使用する場合、加熱による膨れによって断熱材の周辺に設けた内装材(石膏ボード等)に圧力が加わり、破損を生じさせる問題もあった。
内装材が破損してしまうと、断熱材に火災時の熱が伝わりやすくなるため、外装材にまで熱影響を与える可能性が大きくなる。
【0009】
よって、本発明では、加熱時に膨れが生じにくいウレタン樹脂組成物の提供を目的の一つとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく、本願発明は、建築物の断熱材を構成する発泡体を形成するウレタン樹脂組成物であって、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、三量化触媒、発泡剤および難燃剤を少なくとも含み、かつ整泡剤および表面調整剤を含まない構成とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、加熱時に膨れが生じにくいウレタン樹脂組成物を得ることができる。
また、本発明の好適な態様においては、ISO-5660に準拠した発熱性試験においてもスパーク接触が生じないウレタン樹脂組成物を得ることができる。
さらに、本発明の好適な態様においては、建築物の断熱材として使用する際に、断熱材から内装材までのクリアランスを超えて断熱材が膨れることがなく、内装材を押し上げて破損することがないウレタン樹脂組成物を得ることができる。
さらに、本発明の好適な態様においては、ウレタン樹脂組成物の形成に必要な原料数を減らすことで、コスト削減に寄与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<1>全体構成
本発明に係るウレタン樹脂組成物は、建築物の断熱材を構成する発泡体を形成するためのものであり、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、三量化触媒、発泡剤、および難燃剤を少なくとも含み、かつ整泡剤および表面調整剤を含まないものとする。
また、本発明に係るウレタン樹脂組成物は、さらに粘土鉱物などの鉱物由来の材料を含めて構成することもできる。
上記の組成物を、ポリイソシアネート化合物(第1液)とそれ以外との成分(第2液)とに分けておき、両者を噴霧しながら混合して吹き付ける方法や、両者を混合しながら吹き付ける方法等によって、建築物に断熱層を形成することができる。
【0013】
<2>各種性能について
本発明に係るウレタン樹脂組成物は、各材料の配合等を調整することによって、以下の性能を備えたものとすることができる。
【0014】
<2.1>不燃性能について
本発明に係るウレタン樹脂組成物は、ISO-5660の試験に準拠した発熱性試験で特定される不燃性能を備えたものとすることができる。
【0015】
<2.1.1>ISO-5660試験について
ISO-5660に準拠した発熱性試験では、コーンカロリーメータと呼ばれる試験装置を用いる。
コーンカロリーメータは、所定の大きさに切り出した試験体の上方に配置するコーンヒータと、試験体とコーンヒータとの間に設けたスパークロッドとを具備しており、コーンヒータでの加熱によって試験体から可燃ガスを発生させ、当該可燃ガスがスパークロッドの火花で引火することで燃焼を発生させ、当該燃焼によって得られる総発熱量等を所定の計測方法で計測し、下記の表2に示す性能要求に照らして難燃性を評価する。
【0016】
【0017】
<2.2>加熱時の膨れ(最大膨張長)について
本発明に係るウレタン樹脂組成物は、ISO-5660試験の実施時において、スパーク接触が発生しない膨れ量とすることができる。
スパーク接触が発生しない目安は、試験体の高さ方向における最大膨張長を8mm未満、より好ましくは2mm以下とする。
上記構成により、スパーク接触を回避することで、ISO-5660試験として有効な結果を得ることができる。
【0018】
<2.2.1>膨れ量の測定方法
前記した試験体の高さ方向の膨れ量の測定方法を以下に示す。
(1)発熱性試験前に、予め試験体の上面の高さ位置を、コーンカロリーメータの前面に備えた風防ガラス枠にマーキングしておく。
(2)発熱性試験後、風防ガラス枠上において、当該枠上のマーキング位置から、膨張した試験体の上面位置のうち最も高い位置までの高さを視認によって測定する。
【0019】
<2.3>密度について
本発明に係るウレタン樹脂組成物は、発泡体の密度を30kg/m3以上とすることができる。
発泡体の密度を30kg/m3以上とすることで、建築物用断熱材として使用する際に、他からの衝撃に対する十分な変形抑制効果を得ることができる。
【0020】
<3>ポリイソシアネート化合物
ポリイソシアネート化合物は、本発明に係るウレタン樹脂組成物において主剤として用いる材料である。
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、変性ポリイソシアネート等が挙げられる。
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等が挙げられる。
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
前記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
前記変性ポリイソシアネートとは、ポリイソシアネート化合物に対してポリオール成分を反応させたイソシアネート基末端プレポリマー等であり、ウレタン変性物、カルボジイミド変性物、ウレア変性物、ビュレット変性物、アロファネート変性物等が挙げられる。
前記ポリイソシアネート化合物は一種もしくは二種以上を使用することができる。
特に、常温で液状であり、入手し易いこと等の理由から、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI、クルードMDI)が好ましい。
前記ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの例として、東ソー製ミリオネートMR-200、MR-100、MR-400、コベストロ製スミジュール44V20L、ディスモジュール44V20L、万華化学製PM-200、PM-400、DOW製PAPI27、PAPI135などが挙げられる。
【0021】
ウレタン樹脂組成物に含まれるポリイソシアネートの配合量としては、イソシアネートインデックスが150~1000になるようにするのが好ましい。150以上であると難燃性がさらに良好となり、1000以下であると躯体等との接着が良好である。
特に、本発明においては、イソシアネートインデックスは400~600の範囲が最も好ましい。
イソシアネートインデックスとは、イソシアネート成分に含まれるイソシアネート基と、ポリオール成分及び発泡剤の水等に含まれる活性水素の当量比で算出される。
[イソシアネート基]/[OH基](モル比)×100
【0022】
<4>ポリオール化合物
ポリオール化合物は、本発明に係るウレタン樹脂組成物において硬化剤として用いる材料である。
ポリオール化合物は、エステル系ポリオール化合物またはエーテル系ポリオール化合物およびこれらの組合せからなる。
【0023】
<4.1>エステル系ポリオール化合物
エステル系ポリオール化合物としては、例えば、多塩基酸と多価アルコールとを脱水縮合して得られる重合体、ε-カプロラクトン、α-メチル-ε-カプロラクトン等のラクトンを開環重合して得られる重合体、ヒドロキシカルボン酸と上記多価アルコール等との縮合物が挙げられる。
ここで前記多塩基酸としては、具体的には、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸等が挙げられる。難燃性の面ではテレフタル酸変性が好ましい。
【0024】
<4.2>その他のポリオール化合物
その他のポリオール化合物としては、例えば、ポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、ポリマーポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。
前記ポリラクトンポリオールとしては、例えば、ポリプロピオラクトングリコール、ポリカプロラクトングリコール、ポリバレロラクトングリコールなどが挙げられる。
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオールなどの水酸基含有化合物と、ジエチレンカーボネート、ジプロピレンカーボネートなどとの脱アルコール反応により得られるポリオール等が挙げられる。
前記芳香族ポリオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等が挙げられる。
前記脂環族ポリオールとしては、例えば、シクロヘキサンジオール、メチルシクロヘキサンジオール、イソホロンジオール、ジシクロヘキシルメタンジオール、ジメチルジシクロヘキシルメタンジオール等が挙げられる。
前記脂肪族ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等が挙げられる。
前記多価ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオ-ル、3-メチル-1,5-ペンタンジオ-ル、3,3-ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ダイマ-酸ジオール、ビスフェノールA、ビス(β-ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ショ糖等の低分子ポリオール類、またはエチレンジアミン、プロピレンジアミン、トルエンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、キシリレンジアミン、トリエタノールアミン等の芳香族および脂肪族ポリアミン類等の活性水素基を2個以上、好ましくは3~ 8個有する化合物を開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイド類を付加重合させることによって得られるポリエーテルポリオール、或いはメチルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル類、フェニルグリシジルエーテル等のアリールグリシジルエーテル類、テトラヒドロフラン等の環状エーテルモノマーを開環重合することで得られるポリエーテルポリオールを挙げることができる。
その他、臭素やリンなどを含有したポリエーテルポリオールを使用してもよい。
【0025】
<5>鉱物由来の材料
鉱物由来の材料は、難燃性の向上と密度の向上を目的とする材料である。
鉱物由来の材料としては、珪酸塩化合物が好ましい。鉱物由来の材料としては、例えば、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バーミキュライト、カオリナイト、マイカ、タルク等を使用することができる。
前記カオリナイトを主成分とするものとしてはカオリンが挙げられる。
また、前記カオリンの中には、カオリンを高温処理してなる焼成カオリンも含まれる。焼成カオリンは、水分率や粒径分布が小さい点で好適である。
【0026】
前記鉱物由来の材料の含有量は特に限定しないが、ポリオール化合物100重量部に対して15~85重量部が望ましい。
【0027】
<6>三量化触媒
三量化触媒は、ポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基を反応させて三量化させ、イソシアヌレート環の生成を促進するための材料である。
三量化触媒としては、例えば、触媒として、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4-ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン等の窒素含有芳香族化合物、酢酸カリウム、2-エチルヘキサン酸カリウム、オクチル酸カリウム等のカルボン酸アルカリ金属塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム、テトラフェニルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩等を使用することができる。
低温時の接着性や難燃性の面からカルボン酸アルキル金属塩と4級アンモニウム塩の組み合わせが望ましい。
例えば、東ソー製Toyocat-TRX、Toyocat-TRV、Toyocat-TR20、Evonik製DABCO TMR、DABCO TMR-2、DABCO TMR-7、DABCO K-15、UCAT 18X、Polycat46、花王製KAOLIZER NO.410、KAOLIZER NO.420などが三量化触媒として例示できる。
【0028】
前記三量化触媒の含有量は特に限定しないが、ポリオール化合物100重量部に対して1~20重量部が好ましい。1重量部以上の場合は難燃性がさらに良好となり、20重量部以下の場合は反応が早すぎることによるスプレーガンの混合部の詰まり等の問題が発生することを抑制できる。
【0029】
<7>発泡剤
発泡剤は、ポリイソシアネート化合物(第1液)とそれ以外との成分(第2液)とを混合したときに、樹脂内部でガスが発生することにより、成形物の密度低下を促進するための材料である。
発泡剤の例としては、水が挙げられる。イソシアネートと水が反応することにより二酸化炭素が発生し、二酸化炭素が発泡体内部に補足され、成形物の密度低下を促進する。
【0030】
発泡剤のその他の例としては、下記に挙げられるような物理発泡剤といわれるものが挙げられる。常温では液体であるが、イソシアネートとポリオールの発熱反応により、樹脂内部でガス化し、成形物の密度低下を促進する。
【0031】
[1]炭化水素化合物
プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、ギ酸メチル等。
【0032】
[2]塩素化脂肪族炭化水素化合物
ジクロロエタン、プロピルクロリド、イソプロピルクロリド、ブチルクロリド、イソブチルクロリド、ペンチルクロリド、イソペンチルクロリド等。
【0033】
[3]フッ素化合物
CHF3、CH2F2、CH3F等。
【0034】
[4]ハイドロクロロフルオロカーボン化合物
トリクロルモノフルオロメタン、トリクロルトリフルオロエタン、ジクロロモノフルオロエタン、(例えば、HCFC141b(1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン)、HCFC22(クロロジフルオロメタン)、HCFC142b(1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン))等。
【0035】
[5]ハイドロフルオロカ-ボン
セントラル硝子製HFC-245fa(1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン)、ハネウエル製HFC-365mfc(1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン)等。
【0036】
[6]ハイドロフルオロオレフィン
ハネウエル製ソルスティスLBA(HFO-1233zd、(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン)、ケマーズ製Opteon1100(HFO-1336mzz(Z)、(Z)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン)、ケマ-ズ製Opteon1150(HFO-1336mzz(E)、(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン)、AGC製Amorea1224yd((Z)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン)等。
【0037】
[7]有機化合物
ギ酸メチル、ジイソプロピルエーテル等。
【0038】
その他にも、発泡剤として、ポリオール成分中またはイソシアネート成分中に分散、溶解することができる窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガス等を用いることができる。
【0039】
発泡剤の含有量は特に限定しないが、ポリオール100重量部に対して、1重量部~100重量部であることが好ましい。発泡剤の重量部が多いほど、フォーム密度は低下するが、同時に寸法安定性や圧縮強度が低下するため、密度設計に合致した発泡剤の重量部数を設定すればよい。
【0040】
また、本発明では、前記の発泡剤を一種もしくは二種以上使用してもよい。
【0041】
<8>難燃剤
難燃剤は、本発明に係るウレタン樹脂組成物に難燃性を付与するための材料である。
本発明において、難燃剤は、特に限定されないが、赤リン、ポリリン酸アンモニウムおよびリン酸エステルからなる群から選ばれる一種以上を少なくとも含めた構成とするのが、高い難燃性を得られる点で好ましい。
特に、赤リンの他に、ポリリン酸アンモニウムやリン酸エステルを組合せた二種以上の構成とすると、さらに高い難燃性を得られる点で好ましい。
【0042】
<8.1>赤リン
赤リンは、燃焼時の総発熱量を抑制するための材料である。
本発明で使用する赤リンに限定はなく、市販品を適宜選択して使用することができる。
【0043】
前記赤リンの含有量は特に限定しないが、ポリオール化合物100重量部に対して、前記赤リンは15重量部~35重量部が望ましい。
【0044】
<8.2>リン酸塩含有難燃剤
リン酸塩含有難燃剤は、赤リンと同様、燃焼時の総発熱量を抑制するための材料である。
本発明に使用するリン酸塩含有難燃剤は、リン酸を含むものである。
【0045】
前記リン酸塩含有難燃剤としては、例えば、前記各種リン酸と周期律表IA族~IVB族の金属、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミンから選ばれる少なくとも一種の金属または化合物との塩からなるリン酸塩を挙げることができる。
前記周期律表IA族~IVB族の金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、鉄(II)、鉄(III)、アルミニウム等が挙げられる。
また前記脂肪族アミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ピペラジン等が挙げられる。
また前記芳香族アミンとしては、例えば、ピリジン、トリアジン、メラミン、アンモニウム等が挙げられる。
なお、上記のリン酸塩含有難燃剤は、シランカップリング剤処理、メラミン樹脂で被覆する等の公知の耐水性向上処理を加えてもよく、メラミン、ペンタエリスリトール等の公知の発泡助剤を加えても良い。
【0046】
また、前記リン酸塩含有難燃剤の具体例としては、例えば、モノリン酸塩、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩等が挙げられる。
前記モノリン酸塩としては、例えば、リン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素ニアンモニウム等のアンモニウム塩、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、亜リン酸一ナトリウム、亜リン酸二ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム等のナトリウム塩、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム、亜リン酸一カリウム、亜リン酸二カリウム、次亜リン酸カリウム等のカリウム塩、リン酸一リチウム、リン酸二リチウム、リン酸三リチウム、亜リン酸一リチウム、亜リン酸二リチウム、次亜リン酸リチウム等のリチウム塩、リン酸二水素バリウム、リン酸水素バリウム、リン酸三バリウム、次亜リン酸バリウム等のバリウム塩、リン酸一水素マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸三マグネシウム、次亜リン酸マグネシウム等のマグネシウム塩、リン酸二水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸三カルシウム、次亜リン酸カルシウム等のカルシウム塩、リン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛、次亜リン酸亜鉛等の亜鉛塩等が挙げられる。
前記ポリリン酸塩としては、例えば、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸ピペラジン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウムアミド、ポリリン酸アルミニウム等が挙げられる。
【0047】
これらの中でも、前記リン酸塩含有難燃剤の自己消火性が向上するため、ポリリン酸塩を使用することが好ましく、ポリリン酸アンモニウムや加熱時に発泡層を形成する亜リン酸アルミニウムを使用することがより好ましい。
【0048】
前記リン酸塩含有難燃剤は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0049】
前記リン酸塩含有難燃剤の含有量は特に限定しないが、ポリオール化合物100重量部に対して、20重量部~50重量部が望ましい。
【0050】
<8.3>塩素含有難燃剤
塩素含有難燃剤は、燃焼初期の最大発熱速度を抑制するための要素である。
塩素含有難燃剤として多く使用されているものは、以下の5種の難燃剤である。
(a)トリス(クロロエチル)ホスフェート (TCEP)
(b)トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート (TCPP)
(c)トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート (TDCP)
(d)テトラキス(2-クロロエチル)ジクロロイソペンチルジホスフェート (V6)
(e)ポリオキシアルキレンビス(ジクロロアルキル)ホスフェート (CR-504L)
【0051】
前記塩素含有難燃剤の含有量は特に限定しないが、ポリオール化合物100重量部に対して、60重量部~120重量部が望ましい。
【0052】
<9>整泡剤および表面調整剤について
本発明において配合に含まない整泡剤および表面調整剤について以下説明する。
【0053】
<9.1>整泡剤
整泡剤は、ポリウレタンフォームの製造に用いられる有機シロキサン-ポリオキシアルキレン共重合体等である。
整泡剤の例としては、MOMENTIVE製L-6900、東レ・ダウコーニング製SH-193等が挙げられる。
【0054】
<9.2>表面調整剤
表面調整剤とは、表面張力をコントロールすることで消泡剤、レベリング剤、ワキ防止剤として働き、良好な塗膜を形成する添加剤である。
表面調整剤の例としては、楠本化成製SEI-W01、SEI-1501等のアクリル系重合物が挙げられる。
【0055】
<10>その他
その他、本発明に係るウレタン樹脂組成物には、以下の材料を適宜含めても良い。
【0056】
<10.1>触媒
ウレタンフォーム形成に使用する触媒は、イソシアネートとポリオール中にある活性水素との反応およびイソシアネートと水との反応を促進するための材料である。
【0057】
アミン基を有する触媒としては、トリエチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン等のN-アルキルポリアルキレンポリアミン類、N’-(2-ヒドロキシエチル)-N,N,N’-トリメチルエチレンジアミン、1-(2-ジメチルアミノエチル)-4-メチルピペラジン、1,2-ジメチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、N-メチルモルフォリン、N-エチルモルフォリン、N,N-ジメチルアミノエチルモルフォリン、ジメチルシクロシクロヘキシルアミンジメチルエタノールアミン、ジメチルアミノヘキサノール、ジメチルアミノエトキシエタノール、ジアザビシクロウンデセン等が挙げられる。
また、有機金属を含有する触媒として、オクチル酸ビスマス、オクチル酸鉛、2-エチルヘキサン酸スズ(II)やジブチルビス[(1-オキソオクチル)オキシ]スタンナン、ジブチルスズジアセタート、ジブチルスズジラウレート等が挙げられる。
【0058】
アミン触媒の製品例としては、東ソー製 TEDA-L33、TOYOCAT-ET、TOYOCAT-MR、TOYOCAT-TE、TOYOCAT-DT、TOYOCAT-NP、RX-5、RX-10、TOYOCAT-DM70、Evonik製 DABCO 33LV、DABCO BL-19、DABCO BL-11、DABCO DMEA、DABCO T、DABCO N-MM、DABCO N-EM、DABCO XDM、DABCO NC-IM、Polycat201、Polycat204、花王製 KAOLIZER NO.1、KAOLIZER NO.3、KAOLIZER NO.10、KAOLIZER NO.31、KAOLIZER NO.21、KAOLIZER NO.22、KAOLIZER NO.25、KAOLIZER NO.26、KAOLIZER NO.120、KAOLIZER NO.300、KAOLIZER NO.350、KAOLIZER NO.390などが挙げられる。
これらの触媒は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【実施例】
【0059】
<1>試験条件
本発明に係るウレタン樹脂組成物からなる発泡体について以下の試験を行った。各材料の詳細は次の通りである。
【0060】
(1)ポリオール化合物
A:テレフタル酸ポリエステルポリオール(エア・ウォ-ター・マテリアル製、製品名:マキシモールRFK-505、水酸基価=250mgKOH/g)
【0061】
(2)整泡剤
B:シリコーン整泡剤(Momentive製、製品名:L-6900)
【0062】
(3)表面調整剤
C:アクリル系重合物(楠本化成製、製品名:SEI-W01)
【0063】
(4)触媒
D1:アミン系触媒(Evonik製、製品名:DABCO 2040)
D2:アミン系触媒(Evonik製、製品名:Polycat201)
D3:有機金属触媒(シェファード製、製品名:Bicat8210)
【0064】
(5)三量化触媒
E1:四級アンモニウム塩(Evonik製、製品名:TMR-7)
E2:酢酸カリウム触媒(Evonik製、製品名:Polycat46)
【0065】
(6)鉱物由来の材料
F:焼成カオリン(イメリス ミネラルズ製、製品名:Glomax LL)
【0066】
(7)難燃剤
G1:赤リン(燐化学工業社製製、製品名:ノーバエクセル140)
G2:ポリリン酸アンモニウム(太平化学産業(株)製、製品名:タイエンCII)
G3:リン酸エステル(Wansheng製、製品名:TCPP)
【0067】
(8)発泡剤
H1:HFO-1233zd(ハネウエル製、製品名:ソルスティスLBA)
H2:HFO-1336mzz(ケマーズ製、製品名:Opteon1100)
H3:水(水酸基価=6234mgKOH/g)
【0068】
(9)ポリイソシアネート
I:ポリメリックMDI(東ソー(株)製、製品名:ミリオネートMR-200 NCO含量=31%)
【0069】
<2>試験体作製方法
各図の表の配合に従い、ポリオール、触媒、三量化触媒、難燃剤、発泡剤、表面調整剤、整泡剤成分を1000mLポリプロピレンビーカーに量り取り撹拌した。
以下この攪拌物をポリオールプレミックスとする。
ポリオールプレミックスおよびイソシアネートは5℃に調温した。
調温したポリオールプレミックス成分に対して、各図の表の配合に従い、イソシアネート成分を加えた。ハンドミキサーで約3秒間攪拌した後、素早く200×200×200mmの20℃に調温した木箱に注入し、発泡体を得た。(ポリオールプレミックス成分に粉体があるため、イソシアネート成分を混合直前に、予め攪拌、分散させておく。)
発泡後24時間養生した発泡体を99mm×99mm×50mmの大きさにカットし、質量を測定した後(得られた質量と大きさからフォーム密度を算出した。)、コーンカロリー試験体を作成した。(本試験体は、発泡方向に対して50mm高さにカットする。)
【0070】
<3>試験内容
各試験体に対し、ISO-5660の試験方法に準拠した発熱性試験において、放射熱強度50kW/m2にて加熱時間は20分とし、総発熱量(10分加熱時および20分加熱時)、最大発熱速度、200kW/m2超過時間(最高発熱速度が連続して200kW/m2を超えた時間)、試験体の最大膨張長(高さ方向)、スパーク接触の有無等について評価を行った。
本試験で使用した試験装置の詳細は以下の通りである。
・東洋精機製作所製、製品名:コーンカロリーメータ 型式:C4
・試験体とスパークプラグとの離隔長:12.5mm
【0071】
<4>試験結果
全ての試験結果から対比に係る実験例を抽出した各図を参照しながら説明する。
【0072】
(1)実験例1,2について(表3)
[整泡剤または表面調整剤の何れかを含んだ場合]
実験例1,2(表3)では、整泡剤または表面調整剤の何れかを含んだ配合である。
【0073】
【0074】
何れの試験体もスパーク接触が発生する結果となった。
【0075】
(2)実験例3~21について(表4~表7)
[カオリナイトの配合量を変更した場合]
実験例3~21(表4~表7)では、整泡剤および表面調整剤を含まず、カオリナイトの配合量を0重量部~100重量部まで変更したものである。
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
何れの試験体も最大膨張長は2mm以下であり、スパーク接触は発生しなかった。
また、実験例3,4,20,21では、準不燃材料相当となり、実験例5~19(カオリナイトの配合量が15重量部~85重量部)に係る試験体では、不燃材料相当となった。
また、実験例4~21(カオリナイトの配合量が10重量部~100重量部)に係る試験体では、フォーム密度が30kg/m3以上となった。
【0081】
(3)実験例22~32について(表8~表10)
[難燃剤の配合量を変更した場合]
実験例22~32(表8~表10)では、整泡剤および表面調整剤を含まず、カオリナイトの配合量を25重量部に固定して、難燃剤の配合量を変更したものである。
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
何れの試験体も最大膨張長は2mm以下であり、スパーク接触は発生しなかった。
また、実験例23~26,実験例29~32に係る試験体では不燃材料相当となり、フォーム密度が30kg/m3以上となった。
【0086】
(4)実験例33~40について(表11,表12)
[発泡剤の配合量を変更した場合]
実験例33~40(表11,表12)では、整泡剤および表面調整剤を含まず、カオリナイトの配合量を0重量部、25重量部、50重量部、75重量部としつつ、各発泡剤の配合量を変更したものである。
【0087】
【0088】
【0089】
何れの試験体も最大膨張長は2mm以下であり、スパーク接触は発生しなかった。
また、実験例33,40については、準不燃材料相当となり、実験例34~39では不燃材料相当となった。
また、何れの試験体もフォーム密度は30kg/m3以上となった。