(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】高純度アルミニウム材料を生成するための方法
(51)【国際特許分類】
C01F 7/021 20220101AFI20241120BHJP
【FI】
C01F7/021
(21)【出願番号】P 2023575514
(86)(22)【出願日】2022-07-05
(86)【国際出願番号】 AU2022050698
(87)【国際公開番号】W WO2023279151
(87)【国際公開日】2023-01-12
【審査請求日】2024-06-19
(32)【優先日】2021-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523457545
【氏名又は名称】ハイピュラ・プロプリエータリ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HiPurA Pty Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【氏名又は名称】水島 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】ウェルハム,ニコラス・ジェームス
【審査官】安積 高靖
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-529289(JP,A)
【文献】国際公開第2012/065253(WO,A1)
【文献】特開平01-264926(JP,A)
【文献】特開昭53-027268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 7/021
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム含有材料から高純度アルミナ(HPA)を生成するための方法であって、
前記アルミニウム含有材料のアルミニウム含有溶液を準備するステップと、
前記アルミニウム含有溶液から、液-液抽出または液-固抽出によってアルミニウムを選択的に抽出して、アルミニウム富化有機液体またはアルミニウム富化イオン交換樹脂を得るステップと、
前記アルミニウム富化有機液体またはアルミニウム富化イオン交換樹脂を水性溶液でスクラビングして、そこから金属不純物を除去することによって、金属不純物低減アルミニウム富化有機液体または金属不純物低減アルミニウム富化イオン交換樹脂を生成するステップと、
前記金属不純物低減アルミニウム富化有機液体または金属不純物低減アルミニウム富化イオン交換樹脂から、前記液体または前記樹脂を酸性水性溶液と接触させることによって、アルミニウムをストリッピングし、アルミニウム富化水性溶液を生成するステップと、
アルミニウム沈殿物を前記アルミニウム富化水性溶液から析出させ、分離するステップと、
分離された前記アルミニウム沈殿物をか焼して、HPAを生成するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
アルミニウム含有材料から高純度アルミニウム塩を生成するための方法であって、
前記アルミニウム含有材料のアルミニウム含有溶液を準備するステップと、
前記アルミニウム含有溶液から、液-液抽出または液-固抽出によってアルミニウムを選択的に抽出して、アルミニウム富化有機液体またはアルミニウム富化イオン交換樹脂を得るステップと、
前記アルミニウム富化有機液体またはアルミニウム担持イオン交換樹脂を水性溶液でスクラビングして、そこから金属不純物を除去することによって、金属不純物低減アルミニウム富化有機液体または金属不純物低減アルミニウム富化イオン交換樹脂を生成するステップと、
金属不純物低減アルミニウム富化有機液体または金属不純物低減アルミニウム富化イオン交換樹脂を酸性水性溶液と接触させることによって、前記液体または樹脂からアルミニウムをストリッピングし、アルミニウム富化水性溶液を生成するステップと、
前記アルミニウム富化水性溶液から高純度アルミニウム塩を結晶化して、分離するステップと
を含む、方法。
【請求項3】
前記アルミニウム含有材料のアルミニウム含有溶液を準備するステップが、前記アルミニウム含有材料を酸で溶出すること、および得られた前記アルミニウム含有溶液を、一切の残りの不溶性材料から分離することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記アルミニウム含有材料のアルミニウム含有溶液を準備するステップが、前記アルミニウム含有材料を水に溶解すること、および得られた前記アルミニウム含有溶液を、一切の残りの不溶性材料から分離することを含んでもよい、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記アルミニウム含有溶液から液-液抽出によってアルミニウムを選択的に抽出するステップが、前記アルミニウム含有溶液を、アルミニウムについての選択性を有する抽出剤(「アルミニウム抽出剤」)と反応させることを含む、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項6】
前記アルミニウム抽出剤が、リン酸の有機誘導体、ホスホン酸の有機誘導体、ホスフィン酸の有機誘導体またはジチオホスフィン酸の有機誘導体を含む群から選択される1種または複数の有機リン化合物を、任意選択で、カルボン酸、ケトキシムまたはアルドキシム化合物と組み合わせて含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記抽出剤が、前記アルミニウム含有溶液に不混和性である有機液相中に存在し、これによって、前記抽出剤が前記アルミニウム含有溶液と反応することで、アルミニウムが、前記アルミニウム含有溶液から前記有機液相に移動して、前記アルミニウム富化有機液体を生成する、請求項
5に記載の方法。
【請求項8】
前記アルミニウム含有溶液から液-固抽出によってアルミニウムを選択的に抽出するステップが、前記アルミニウム含有溶液を、一価または二価カチオンと比較してアルミニウムについての選択性を有するイオン交換樹脂と接触させることを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
前記イオン交換樹脂が、強酸カチオン交換樹脂または弱酸カチオン交換樹脂を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記アルミニウム富化有機液体をスクラビングするステップが、前記アルミニウム富化有機液体を水性スクラブ溶液と接触させて、微量金属不純物を前記水性スクラブ溶液に移動させることによって、不純物低減アルミニウム富化有機液相と、不純物富化水性相とを生成することを含む、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項11】
前記水性スクラブ溶液が、希酸、または実質的に金属不純物不含であるアルミニウムの水性溶液を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記水性スクラブ溶液が、アルミニウム担持有機液をストリッピングすることによって得られる、前記アルミニウム富化水性溶液の放出流を含む、請求項1
0に記載の方法。
【請求項13】
前記金属不純物低減アルミニウム富化有機液体または金属不純物低減アルミニウム富化イオン交換樹脂をストリッピングするステップが、前記液体または前記樹脂を、3以下のpHを有する酸性水性溶液と接触させることを含む、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項14】
前記アルミニウム富化溶液から高純度アルミニウム塩を結晶化させるステップが、前記高純度アルミニウム塩の溶解度積を超えるのに十分な溶媒を前記アルミニウム富化溶液から蒸発させることを含む、請求項
2に記載の方法。
【請求項15】
前記アルミニウム富化溶液からアルミニウム沈殿物を沈殿させるステップが、前記溶液のpHを4~11の範囲に上昇させることを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項16】
前記溶液のpHを上昇させることが、水性アンモニア、NH
4OHを前記溶液に加えることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記アルミニウム沈殿物が、テトラヒドロアルミン酸塩[Al(OH)
4]
-化合物、オキシ水酸化アルミニウム、AlOOH化合物または水酸化アルミニウムAl(OH)
3化合物を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項18】
前記沈殿させるステップを、高温で、且つ任意選択で高圧で、実行する、請求項
1に記載の方法。
【請求項19】
前記沈殿させるステップを、前記高温で、且つ任意選択で高圧で、15分から48時間の間にわたって維持する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記アルミニウム沈殿物をか焼するステップを、300℃から1400℃の間の温度で実行する、請求項
1に記載の方法。
【請求項21】
前記か焼するステップを、第1の段階が、第1の温度で、結晶水を前記アルミニウム沈殿物から排除するのに十分な期間にわたり、第2の段階が、前記第1の温度よりも高い温度で、前記アルミニウム沈殿物をコランダム(α-Al
2O
3)、β-アルミナまたは他のアルミナ多形に変換するのに十分な期間にわたる、2段階で実行する、請求項
1に記載の方法。
【請求項22】
前記アルミニウム含有溶液からアルミニウムを選択的に抽出する前に、1種または複数の金属不純物、特に鉄を、前記アルミニウム含有溶液から分離することをさらに含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項23】
前記アルミニウム含有溶液から鉄不純物を分離するさらなるステップが、液-液抽出または液-固抽出によって、前記鉄不純物を選択的に抽出して、鉄低減アルミニウム含有溶液を得ることを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記アルミニウム含有溶液から液-液抽出によって鉄不純物を選択的に抽出するステップが、前記アルミニウム含有溶液を、鉄についての選択性を有する鉄抽出剤と反応させることを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記鉄抽出剤が、リン酸水素ジ(2-エチルヘキシル)およびリン酸トリブチルの相乗混合物、または遊離塩基形態における第一級アミンを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記アルミニウム含有溶液から液-固抽出によって鉄不純物を選択的に抽出するステップが、前記アルミニウム含有溶液を、鉄不純物についての選択性を有するイオン交換樹脂と接触させることを含む、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高純度アルミニウム化合物、特に高純度アルミナ(HPA)および高純度アルミニウム塩を生成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に対する以下の背景技術の議論は、本発明の理解を促進することを意図している。しかしながら、議論は、言及される材料のいずれも、出願の優先日時点で発表されているもの、公知のもの、または通常の一般知識の一部であることを、確認または承認するものではないことを理解されるべきである。
【0003】
アルミナ粘土から高純度アルミナを生成するためのUS Bureau of Mines(USBM)法は、1940年代から公知である。この方法は、多数の段階からなり、選鉱、メタカオリンを生成するためのか焼(calcination)、HCl中への溶出、HClスパージングを伴う、2つ以上の逐次的な沈殿および再溶解の段階、ならびに最後にアルミナへのか焼としてまとめることができる。
【0004】
USBM法のいくつかのバリエーションが発表されている。例えば、米国特許第9382600号には、アルミニウム含有材料を塩酸で溶出して溶出液を得、次いで、溶出液をHClガスと反応させて、塩化アルミニウムを沈殿させることを記載している。塩化アルミニウム沈殿物は、分離され、次いで、か焼によってアルミナに変換される。か焼中に発生したガス状塩化水素は、溶出するステップにおける浸出剤としての使用に再利用される。
【0005】
この方法は多数の単位操作を有し、かなりの資本および運用コストの原因となる。特に、乾燥塩化水素ガスを再利用する必要性によって、電力、構築物の材料、および最終的なか焼中のガス捕捉器の設置として、方法のコストがかなり増加する。
【0006】
多くのアルミニウム含有材料、例えばアルミナ鉱石は、大幅な金属不純物、例えば、Fe、K、Mg、Na、Ca、Mn、Ba、Zn、Li、Sr、V、Ni、Cr、Pb、Cu、Co、Sb、As、B、Sn、Be、Moまたはこれらの混合物を含有する。このような材料からの高純度アルミニウム化合物の生成は、アルミニウム含有溶出液から金属不純物を逐次除去するための複数の精製ステップによって、必然的に複雑である。このような精製ステップとしては、塩基の添加による、金属水酸化物としての金属不純物の段階的沈殿、続いて金属不純物低減アルミニウム含有液の分離、ならびに/またはアルミニウム含有化合物から金属不純物をさらに低減させる、逐次的な結晶化、再溶解および再結晶化を挙げることができる。
【0007】
国際公開第2008/141423号は、粘土質岩、鉄を含有するアルミナ鉱石からアルミニウムを抽出するための方法を記載している。粘土質岩を、まず、550℃超の温度で約1~2時間の期間にわたって焙焼する。次いで、予備処理した粘土質岩を、スラリーの沸点に近い温度で、濃縮塩酸を用いて溶出する。続いて、NaOHまたはKOHを加えることによってpHを少なくとも10に上昇させて、溶液に残存する鉄と、アルカリ金属、例えばNaまたはKを除いた他の金属とを沈殿させることによって、得られた溶出液から鉄を除去する。アルミニウムは、Cyanex 272を用いた溶媒抽出によって、NaOH添加を制御する調節ループによってpH調整を実行することにより、鉄低減溶液から抽出してもよい。次いで、錯化アルミニウムを、塩酸を用いた逆抽出によって回収する。回収したアルミニウム富化ラフィネートは鉄不含であるが、Ca、Mg、NaおよびKの組成は7%超である。92.81%超へのさらなる精製は、Al(OH)3水酸化アルミニウムの沈殿、およびそれに続く再結晶化ステップの後に達成されるが、この方法が、99.99%純度を求めて現在の市場が要求するものを生成することは明らかではない。
【0008】
ここで記載する方法は、前述の問題のいくつかを軽減することを求めている。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、可溶性アルミニウム含有材料から、高純度アルミナ(HPA)および/または高純度アルミニウム塩を生成するための方法を提供する。
【0010】
本開示の一態様は、アルミニウム含有材料から高純度アルミナ(HPA)を生成するための方法であって、
アルミニウム含有材料のアルミニウム含有溶液を準備するステップと、
アルミニウムをアルミニウム含有溶液から、液-液抽出または液-固抽出によって選択的に抽出して、アルミニウム富化液体またはアルミニウム担持イオン交換樹脂を得るステップと、
アルミニウム富化液体またはアルミニウム担持イオン交換樹脂を水性溶液でスクラビングして、そこから金属不純物を除去することによって、金属不純物低減アルミニウム富化液体または金属不純物低減アルミニウム富化固体相を生成するステップと、
金属不純物低減アルミニウム富化液体または金属不純物低減アルミニウム富化固体相から、前記液体または前記固体相を酸性水性溶液と接触させることによって、アルミニウムをストリッピングして、アルミニウム富化水性溶液を生成するステップと、
アルミニウム富化水性溶液からアルミニウム沈殿物を析出させ、分離するステップと、
分離されたアルミニウム沈殿物をか焼して、HPAを生成するステップと
を含む、方法を提供する。
【0011】
本開示の別の態様は、アルミニウム含有材料から高純度アルミニウム塩を生成するための方法であって、
アルミニウム含有材料のアルミニウム含有溶液を準備するステップと、
アルミニウムをアルミニウム含有溶液から、液-液抽出または液-固抽出によって選択的に抽出して、アルミニウム富化液体またはアルミニウム富化固体相を得るステップと、
アルミニウム富化液体またはアルミニウム担持イオン交換樹脂を水性溶液でスクラビングして、そこから金属不純物を除去することによって、金属不純物低減アルミニウム富化液体または金属不純物低減アルミニウム富化固体相を生成するステップと、
金属不純物低減アルミニウム富化液体または金属不純物低減アルミニウム富化固体相から、前記液体または前記相を酸性水性溶液と接触させることによって、アルミニウムをストリッピングし、アルミニウム富化水性溶液を生成するステップと、
アルミニウム富化水性溶液から高純度アルミニウム塩を結晶化して、分離するステップと
を含む、方法を提供する。
【0012】
一実施形態では、アルミニウム含有材料のアルミニウム含有溶液を準備するステップは、アルミニウム含有材料を酸中に溶出すること、および得られたアルミニウム含有溶液を、残りの不溶性材料から分離することを含んでもよい。
【0013】
別の実施形態では、アルミニウム含有材料のアルミニウム含有溶液を準備するステップは、アルミニウム含有材料を水に溶解すること、および得られたアルミニウム含有溶液を、残りの不溶性材料から分離することを含んでもよい。
【0014】
一実施形態では、アルミニウムをアルミニウム含有溶液から液-液抽出によって選択的に抽出するステップは、アルミニウム含有溶液を、アルミニウムについての選択性を有する抽出剤(「アルミニウム抽出剤」)と反応させることを含む。
【0015】
アルミニウム抽出剤は、1種または複数の有機リン化合物、特にリン酸の有機誘導体、ホスホン酸の有機誘導体、ホスフィン酸の有機誘導体またはジチオホスフィン酸の有機誘導体を、任意選択で、カルボン酸、ケトキシムまたはアルドキシム化合物と組み合わせて含んでもよい。アルミニウム抽出剤は、アルミニウム含有溶液に不混和性である有機液相中に存在してもよく、これによって、アルミニウム抽出剤がアルミニウム含有溶液と反応することで、アルミニウムが、アルミニウム含有溶液から有機液相に移動して、アルミニウム富化液体を生成する。
【0016】
一実施形態では、アルミニウムをアルミニウム含有溶液から、液-固抽出によって選択的に抽出するステップは、アルミニウム含有溶液を、一価または二価カチオンと比較してアルミニウムについての選択性を有するイオン交換樹脂と接触させることを含む。イオン交換樹脂は、強酸カチオン樹脂または弱酸カチオン樹脂を含んでもよい。
【0017】
一実施形態では、アルミニウム富化有機液体をスクラビングすることは、アルミニウム富化有機液体を水性スクラブ溶液と接触させて、微量金属不純物を水性スクラブ溶液に移動させることによって、不純物低減アルミニウム富化有機液相と、不純物濃厚水性相とを生成することを含む。
【0018】
水性スクラブ溶液は、希酸、または実質的に不純物不含であるアルミニウムの水性溶液であってもよい。この点において、水性スクラブ溶液は、アルミニウム担持有機液相をストリッピングすることによって得られる、アルミニウム富化水性溶液の放出流を含んでもよい。
【0019】
一実施形態では、金属不純物低減アルミニウム富化液体または金属不純物低減アルミニウム富化固体相をストリッピングするステップは、前記液体または固体相を、3以下のpHを有する酸性水性溶液と接触させることを含む。
【0020】
一実施形態では、高純度アルミニウム塩を、アルミニウム富化溶液から結晶化させるステップは、高純度アルミニウム塩の溶解度積を超えるのに十分な溶媒をアルミニウム富化溶液から蒸発させることを含む。
【0021】
一実施形態では、アルミニウム沈殿物をアルミニウム富化溶液から沈殿させるステップは、前記溶液のpHを4~11の範囲に上昇させることを含む。前記溶液のpHを上昇させることは、塩基を前記溶液に加えることによって、特に水性アンモニア、NH4OHを加えることによって、達成されうる。
【0022】
一実施形態では、アルミニウム沈殿物は、オキシ水酸化アルミニウム、AlOOH化合物を含む。
【0023】
一実施形態では、アルミニウム沈殿物は、水酸化アルミニウム、Al(OH)3化合物を含む。
【0024】
一実施形態では、沈殿させるステップを、高温で、且つ任意選択で高圧で、実行してもよい。別の実施形態では、沈殿させるステップを、高温で、且つ任意選択で高圧で、15分から48時間の間にわたって維持してもよい。
【0025】
アルミニウム沈殿物をか焼するステップを、300℃から1400℃の間の温度で実行してもよい。特に、か焼するステップを、第1の段階が、第1の温度で、結晶水をアルミニウム沈殿物から排除するのに十分な期間にわたり、第2の段階が、第1の温度よりも高い温度で、アルミニウム沈殿物をコランダム(α-Al2O3)、β-アルミナまたは他のアルミナ多形に変換するのに十分な期間にわたる、2段階で実行してもよい。
【0026】
本開示のいくつかの実施形態では、アルミニウム含有溶液は、1種または複数の金属不純物、特に鉄を含んでもよい。これらの特定の実施形態では、方法は、アルミニウムをアルミニウム含有溶液から選択的に抽出する前に、1種または複数の金属不純物を、アルミニウム含有溶液から分離することをさらに含んでもよい。
【0027】
一実施例では、1種または複数の金属不純物を、アルミニウム含有溶液から分離する前記さらなるステップは、液-液抽出または液-固抽出によって1種または複数の金属不純物を選択的に抽出して、1種または複数の金属不純物が低減したアルミニウム含有溶液を得ることを含む。
【0028】
一実施形態では、1種または複数の金属不純物をアルミニウム含有溶液から、液-液抽出によって選択的に抽出するステップは、アルミニウム含有溶液を、1種または複数の金属不純物についての選択性を有する抽出剤、特に鉄についての選択性を有する抽出剤(「鉄抽出剤」)と反応させることを含む。鉄抽出剤は、ジ(2-エチルヘキシル)リン酸とリン酸トリブチルとの混合物、またはリン酸トリブチル、またはトリオクチルホスフィンオキシド、または遊離塩基形態におけるアルキルアミンを含んでもよい。
【0029】
鉄抽出剤は、アルミニウム含有溶液に不混和性である有機液相中に存在してもよく、これによって、鉄抽出剤がアルミニウム含有溶液と反応することで、1種または複数の金属不純物が、アルミニウム含有溶液から有機液相に移動する。
【0030】
代替実施形態では、1種または複数の金属不純物をアルミニウム含有溶液から、液-固抽出によって選択的に抽出するステップは、アルミニウム含有溶液を、1種または複数の金属不純物について、特に鉄についての選択性を有するイオン交換樹脂と接触させることを含む。
【0031】
添付の図を参照しながら、単なる例として、好ましい実施形態をここでさらに記載し、説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本明細書で開示する、可溶性アルミニウム含有材料から高純度アルミナ(HPA)を生成するための方法の一実施形態の模式図である。
【
図2】本明細書に記載する、可溶性アルミニウム含有材料から高純度アルミニウム塩、例えば硝酸アルミニウムを生成するための方法の一実施形態の模式図である。
【
図3】本明細書に記載する実施例の1つに従った、アルミニウム含有溶液を生成するための酸溶出ステップにおける、アルミニウム含有材料からの元素の抽出の程度のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本開示は、可溶性アルミニウム含有材料から、高純度アルミナ(HPA)および/または高純度アルミニウム塩を生成するための方法に関する。
【0034】
[一般的な用語]
この明細書全体を通じて、別段具体的に述べていない限り、または文脈による別段の要請がない限り、単一のステップ、物質の組成、ステップの群または物質の組成の群への言及は、これらのステップ、物質の組成、ステップの群または物質の組成の群の1つおよび複数(すなわち1つ以上)を包含するものと受け取るものとする。したがって、ここで使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が別段の指示をしない限り、複数の態様を含む。例えば、「a」への言及は、単一と2つ以上とを含み、「an」への言及は、単一と2つ以上とを含み、「the」への言及は、単一と2つ以上とを含み、他も同様である。
【0035】
ここで記載する本開示の例の各々は、別段具体的に述べていない限り、必要な変更を加えて、ひとつひとつの他の例に適用されうる。本開示は、単なる例示目的であることが意図される、ここで記載する特定の例による範囲に限定されるべきではない。機能上等価な生成物、組成物および方法は、明らかに、ここで記載する開示の範囲内である。
【0036】
ここで記載する方法のステップ、方法および操作は、必ずしも、ある順序の実行として具体的に特定されない限り、論じられたまたは図示された特定の順序において実行することを要するものとして解釈されるべきではない。追加のまたは代替ステップが用いられてもよいことも、理解されるべきである。
【0037】
ある要素または層が、別の要素または層「に接触して(on)」、「に係合して」、「に連結して」または「に結合して」と言及される場合、直接的に他方の要素または層に接触して、係合して、連結して、または結合していてもよく、介在する要素または層が存在してもよい。対照的に、ある要素が別の要素または層に、「直接接触して(on)」、「直接係合して」、「直接連結して」または「直接結合して」いると言及される場合、介在する要素または層が存在してはならない。要素間の関係を記載するために使用される他の語は、同様に受け取られるべきである(例えば、「~の間に」に対する「直接~の間に」、「隣接する」に対する「直接隣接する」等)。
【0038】
第1の、第2の、第3の等の用語は、ここでは、様々な要素、構成成分、領域、層および/またはセクションを記載するために使用されうるが、これらの要素、構成成分、領域、層および/またはセクションは、これらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、ある要素、構成成分、領域、層またはセクションを、別の領域、層またはセクションと区別するために使用されることがあるに過ぎない。「第1の」、「第2の」および他の数的用語等の用語は、ここで使用される場合、文脈による明確な指示がない限り、順番または順序を示唆するものではない。したがって、下で論じる第1の要素、構成成分、領域、層またはセクションは、例となる実施形態の教示から逸脱することなく、第2の要素、構成成分、領域、層またはセクションと称することができる。
【0039】
下のおよび上の等の位置の記載への言及は、図に描いた実施形態の文脈において受け取られるべきであり、本発明を、用語の逐語的解釈に限定するものとして受け取られるべきではなく、当業者によって理解されるように受け取られるべきである。
【0040】
空間的に相対的な用語、例えば「中の」、「外の」、「~の下(beneath)」、「~の下(below)」、「下の」、「~の上」および「上の」等は、ここでは、図に図示されたある要素または特徴部の、別の要素または特徴部に対する関係を記載するための記載を容易にするために使用されうる。空間的に相対的な用語は、図に描かれた向きに加えて、使用または操作において異なる向きの装置を包含することが意図されうる。例えば、図中の装置が上下反対である場合、他の要素または特徴部「の下(below)」または「の下(beneath)」として記載された要素は、このとき、他の要素または特徴部「の上」向きである。したがって、例となる用語「~の下(below)」は、上と下との両方の向きを包含することができる。装置は、それ以外の向き(90度回転した、または他の向き)であってもよく、ここで使用される空間的に相対的な記述子はしかるべく解釈されうる。
【0041】
「および/または」という用語、例えば「Xおよび/またはY」は、「XおよびY」または「XもしくはY」のいずれかを意味するものと理解されるものとし、両方の意味の場合またはいずれかの意味の場合には、明示的な裏付けを提供していると受け取られるものとする。
【0042】
この明細書全体を通じて、「~を含む(comprise)」の語および変化形、例えば「~を含む(comprises)」または「~を含む(comprising)」は、述べられている要素、整数もしくはステップ、または要素、整数もしくはステップの群を含むが、任意の他の要素、整数もしくはステップ、または要素、整数もしくはステップの群を除外しないことを示唆するものと理解される。
【0043】
別段定義されない限り、ここで使用されるすべての技術用語および科学用語は、この発明が属する分野における当業者に通例理解されるものと同じ意味を有する。ここで記載するものと同様の、または等価な方法および材料は、本発明の実施または試験に使用することができるが、下には好適な方法および材料を記載する。競合する場合、定義を含む本明細書が優先される。加えて、材料、方法および例は説明のためのものに過ぎず、限定するものであることを意図しない。
【0044】
ここで使用される「約」という用語は、所与の値または範囲から5%以内、より好ましくは1%以内であることを意味する。例えば、「約3.7%」は、3.5~3.9%、好ましくは3.66~3.74%を意味する。「約」という用語が値の範囲と関係する場合、例えば「約X%~Y%」では、「約」という用語は、列挙された範囲の下限値(X)と上限値(Y)との両方を修飾することを意図している。例えば、「約20%~40%」は、「約20%~約40%」と等価である。
【0045】
[特有の用語]
ここで使用される「高純度アルミナ」という用語は、99.99%以上の純度を有する、アルミナ(α-Al2O3、β-Al2O3または他のその結晶多形を指す。
【0046】
「液-液抽出」という用語は、溶媒抽出としても知られ、2つの異なる不混和性液相、通常は水(極性)と有機液体(非極性)における相対的な溶解性に基づいて、化学化合物または金属錯体を分離する方法を指すために使用される。典型的には、化学化合物または金属錯体が、極性相から非極性相に移動するのを支援するために、2つの相を撹拌して、これらの間の界面の表面積を増加させる。物質が極性相から非極性相に移動しうる程度は、分配比(Kd)と称され、非極性相中の物質の濃度を、極性相中の物質の濃度で除したものと等しい。分配比は、限定するものではないが、温度、pH、極性相および非極性相の性質、相中の化学種の総濃度、ならびに相中の他の化学種の存在等を含む、いくつかの要素のいずれか1つまたは複数によって変動しうる。
【0047】
いくつかの特定の液-液抽出系では、抽出剤を使用して、有機相における物質の分配比を上昇させてもよい。ここで使用される「抽出剤」という用語は、物質の分配比が上昇するように、物質と反応または結合することができる化学化合物を指す。金属イオン、特に二価および三価金属カチオンについて、抽出剤は、前記金属カチオンと反応して、金属イオンよりも高い分配比を有する金属錯体を形成し、これによって、金属イオンの非極性相への抽出を支援する有機化合物でありうる。抽出剤は、金属イオンと反応または結合することができる2種以上の化学化合物の混合物をさらに含んでもよいことが、当業者に理解されよう。特に、抽出剤は、標的金属イオンの分配比に相乗的な改善がある、または非標的不純物金属イオンと比較した標的金属イオンの相対分配比に改善がある、2種以上の化学化合物の混合物であってもよい。
【0048】
ここで使用される「選択的に抽出する」という用語は、抽出系(例えば液-液抽出)であって、前記抽出系における第1の物質についての分配比が、前記抽出系における第2の物質についてのそれぞれの分配比よりも十分に高く、第1の物質がその中で優先的に抽出される、抽出系を指す。一般に、分離係数(すなわち、第1の物質の分配係数を、第2の物質の分離係数で除したもの)は、2よりも大きいことがあり、5よりも大きいことがあり、10よりも大きい、20よりも大きい、50よりも大きい、100よりも大きい、200よりも大きい、500よりも大きいまたは1000よりも大きいことがある。
【0049】
「富化(enriched)」という用語は、形成された当初の流れよりも高い、指示された構成成分のモル%濃度を有することを意味する。
【0050】
「低減(depleted)」という用語は、形成された当初の流れよりも低い、指示された構成成分のモル%濃度を有することを意味する。
【0051】
「希薄(lean)」という用語は、5モル%未満、2モル%未満または1モル%未満の、指示された構成成分のモル%濃度を有することを意味する。
【0052】
ここで使用される「溶解度積」という用語は、既知温度において、非溶解相との平衡が継続することができる、イオン濃度同士またはイオン性化合物の活量同士の最大積を指す。
【0053】
[高純度アルミナまたはアルミニウム塩を生成するための方法]
いくつかの高純度アルミニウム塩、またはHPAが、ここに開示する方法によって、様々なアルミニウム含有材料から調製されうる。
【0054】
例えば、アルミニウム含有材料は、限定するものではないが、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウムまたは硫酸アルミニウムを含む、水溶性アルミニウム塩であってもよい。
【0055】
代替的には、アルミニウム含有材料は、限定するものではないが、アルミニウムの酸化物、水酸化物およびオキシ水酸化物、アルミノシリケート鉱物またはアルミニウム含有スラグを含む、酸溶解性アルミニウム含有材料であってもよい。酸溶解性アルミニウム含有材料は、異なる方法によって生成した副生成物または残留物であってもよいことが理解されよう。
【0056】
アルミニウムの酸化物、水酸化物およびオキシ水酸化物の好適な例は、コランダム、ベーマイト、ダイアスポア、バイエル石、ドイル石、ノルドストランド石およびギブス石でありうる。
【0057】
アルミノシリケート鉱物の好適な例は、粘土鉱物、特に、ジッカイト、ハロイサイトおよびカオリンでありうる。
【0058】
アルミニウム含有溶液は、水溶性アルミニウム塩を水に溶解することによって調製してもよい。
【0059】
代替的には、アルミニウム含有溶液は、酸溶解性アルミニウム材料を酸中で溶出することによって調製してもよい。酸は、強鉱酸、例えば、塩酸、硝酸または硫酸でありうる。溶出条件は、酸溶解性アルミニウム材料の性質によって変動するが、酸溶解性アルミニウム材料と酸との比、酸濃度、温度、撹拌、圧力および時間を体系的に変動させることによって、容易に決定されうることが、当業者に理解されよう。
【0060】
一切の残存する不溶性材料は、濾過または他の十分に理解された分離技法によって、アルミニウム含有溶液から分離されうる。
【0061】
いくつかの実施形態では、アルミニウム含有溶液は、少なくとも1g/L、もしくは少なくとも5g/L、もしくは少なくとも10g/L、もしくは少なくとも20g/L、もしくは少なくとも40g/L、もしくは少なくとも60g/Lのアルミニウム濃度を有してもよく、またはアルミニウム濃度が飽和していてもよい。飽和の状態は、限定するものではないが、アルミニウム含有溶液の温度およびpHを含む、1つまたは複数の因子に依存しうることが理解されよう。
【0062】
いくつかの実施形態では、アルミニウム含有溶液のアルミニウム濃度は、1g/Lから飽和の間、または2g/Lから飽和の間、または5g/Lから飽和の間、または10g/Lから飽和の間、または20g/Lから飽和の間、または40g/Lから飽和の間、または60g/Lから飽和の間であってもよい。
【0063】
[1種または複数の金属不純物、特に鉄の除去]
いくつかの実施形態では、アルミニウム含有溶液は、1種または複数の金属不純物、例えば、Fe、K、Mg、Na、Ca、Mn、Ba、Zn、Li、Sr、V、Ni、Cr、Pb、Cu、Co、Sb、As、B、Sn、Be、Moを含みうる。アルミニウム含有溶液中の全金属(Alを除く)とAlとの比は、1:1、1:2、1:5、1:10、1:20、1:50、1:100、1:200、1:500、1:1000、1:2000、1:5000または1:5000超でありうる。アルミニウムをアルミニウム含有溶液から選択的に抽出する前に、1種または複数の金属不純物、特に鉄を分離することは、有利でありうる。
【0064】
アルミニウム含有溶液から鉄を分離するステップは、液-液抽出または液-固抽出によって、アルミニウム含有溶液から鉄を選択的に抽出して、鉄低減アルミニウム含有溶液を得ることを含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、アルミニウム含有溶液を、不混和性有機液相中に存在する鉄抽出剤と反応させてもよく、ここで、鉄抽出剤は鉄についての選択性を有する。鉄抽出剤をアルミニウム含有溶液と反応させることで、鉄がアルミニウム含有溶液から有機液相に移動して、鉄濃厚有機液体と鉄低減アルミニウム含有溶液とが生成する。
【0066】
鉄抽出剤は、ジ(2-エチルヘキシル)リン酸とリン酸トリブチルとの混合物、またはリン酸トリブチル、またはトリオクチルホスフィンオキシド、または遊離塩基形態におけるアルキルアミンを含んでもよい。好適なアルキルアミンとしては、限定するものではないが、第一級アルキルアミン、第二級アルキルアミンおよび第三級アルキルアミン、例えば、トリC8~C10アミンの混合物であるAlamine 336が挙げられる。
【0067】
鉄抽出剤は有機液相中に、0.1体積%超、0.5体積%超、1体積%超、2体積%超、3体積%超、4体積%超、5体積%超、7体積%超、10体積%超、15体積%超、20体積%超、30体積%超、40体積%超、50体積%超、60体積%超 70体積%超、80体積%超、90体積%超、さらには95体積%超の濃度で存在してもよい。
【0068】
鉄抽出剤は有機液相中に、0.5体積%から1体積%の間、または0.5体積%から2体積%の間、または0.5体積%から3体積%の間、または0.5体積%から4体積%の間、または0.5体積%から5体積%の間、または0.5体積%から7体積%の間、または0.5体積%から10体積%の間、または0.5体積%から15体積%の間、または0.5体積%から20体積%の間、または0.5体積%から30体積%の間、または0.5体積%から40体積%の間、または0.5体積%から50体積%の間、または0.5体積%から60体積%の間、または0.5体積%から70体積%の間、または0.5体積%から80体積%の間、または0.5体積%から90体積%の間、または0.5から95体積%の間の濃度で存在してもよい。
【0069】
有機液相は、水性相と不混和性である1種または複数の有機溶媒を含んでもよい。特に、有機液相は、1種または複数の脂肪族炭化水素を含んでもよい。脂肪族炭化水素とは、飽和した、長い直鎖、分枝状鎖または環状炭化水素を有する有機化合物である。例示的な脂肪族炭化水素は、ケロシン、ヘキサンおよびヘプタンである。
【0070】
いくつかの実施形態では、本方法は、液-液抽出方法中に3つの相が形成されることを防止するために、相改質剤を溶媒に加えることをさらに含む。相改質剤は、界面活性剤または共溶媒を含んでもよい。これらの改質剤の好適な例としては、限定するものではないが、イソデカノール(1-デカノール、CAS 112-30-1、C10H22O)が挙げられる。鉄抽出剤がジ(2-エチルヘキシル)リン酸とリン酸トリブチルとを含む実施形態では、リン酸トリブチルは、相改質剤としても振る舞いうることが理解されよう。
【0071】
一実施形態では、相改質剤は有機液相中に、1体積%超、2.5体積%超、5体積%超、7.5体積%超、10体積%超、15体積%超または20体積%超の濃度で存在してもよい。
【0072】
一実施形態では、相改質剤は有機液相中に、1~50体積%、2.5~50体積%、5~50体積%、7.5~50体積%、10~50体積%または15~50体積%の濃度で存在してもよい。
【0073】
水性相と有機相とを接触させるステップは、第1の液体を第2の不混和性液体と混合するための、当技術分野で公知である任意の方法によって実現してよい。したがって、ミキサーセトラーを使用してもよく、所望の量の鉄が水性相から有機相に移動するまで、接触させるステップを行っても、または繰り返してもよい。抽出段階の数、例えば、アルミニウム含有溶液と有機液相との間で実際になされる連続溶媒抽出の数は、アルミニウム含有溶液中に存在する過剰の遊離酸、存在する鉄の量、および2つの液相の間でなされる接触における、移動の効率に依存する。使用されうる他の好適な抽出機器としては、限定するものではないが、ミキサーセトラーおよび遠心分離抽出器が挙げられる。有機相と水性相との分離は、デカンテーションによって、または遠心分離器の使用によって実現されうるが、後者の方法が、一般により効率的である。
【0074】
有利には、鉄抽出剤は鉄についての選択性を有するが、いくつかの他の遷移金属イオン、例えば、Mn、Zn、V、Ni、Cr、Pb、Cu、Co、Sb、As、SnおよびMoも、鉄と共抽出されうる。
【0075】
代替実施形態では、アルミニウム含有溶液を、アルミニウムならびに他の二価および一価カチオンに対して、鉄についての選択性を有するイオン交換樹脂と接触させて、アルミニウム含有溶液から鉄を低減させてもよい。
【0076】
イオン交換樹脂は、強酸カチオン樹脂、弱酸カチオン樹脂を含む群から選択されうる。
【0077】
イオン交換樹脂は、静的または動的方法のいずれかを使用して、アルミニウム含有溶液に接触させることができる。例えば、静的方法では、イオン交換樹脂は、1つまたは複数の縦型カラムを用いて収容されてもよく、このカラムを通じて、溶液から鉄を抽出するためにアルミニウム含有溶液が溶離されうる。
【0078】
本発明の一形態では、鉄含有アルミニウム溶液と接触させる前に、イオン交換樹脂をアルカリ溶液で溶離することによって、イオン交換樹脂を中和してもよい。アルカリ溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水性アンモニア、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムまたはこれらの混合物の薄い溶液であってもよい。
【0079】
アルミニウム含有溶液からのアルミニウムの選択的抽出(液-液抽出)
鉄をアルミニウム含有溶液から任意選択で除去した後、方法は、アルミニウムをアルミニウム含有溶液から、液-液抽出によって、特に溶媒抽出によって選択的に抽出するステップを含んでもよい。アルミニウム含有溶液を、不混和性有機液相中に存在するアルミニウム抽出剤と反応させてもよく、ここで、アルミニウム抽出剤はアルミニウムについての選択性を有する。アルミニウム抽出剤をアルミニウム含有溶液と反応させることで、アルミニウムがアルミニウム含有溶液から有機液相に移動して、アルミニウム富化有機液体が生成する。
【0080】
アルミニウム含有溶液からアルミニウムの大部分を回収するために、数段階の抽出が要求されうることが理解されよう。
【0081】
アルミニウム抽出剤は、1種または複数の有機リン化合物、特にリン酸の有機誘導体、ホスホン酸の有機誘導体、ホスフィン酸の有機誘導体またはジチオホスフィン酸の有機誘導体を含んでもよい。1種または複数の有機リン化合物は、好都合には、周囲条件下で液相であることもあり、有機液相と容易に組み合わせられうる。
【0082】
有機リン抽出剤の好適な例は、限定するものではないが、Cyanex 272(CAS番号83411-71-6)としても知られる、ビス(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスホン酸、Ionquest 801(CAS番号14802-03-0)としても知られる、2-エチルヘキシルホスホン酸モノ-2-エチルヘキシルエステル、Cyanex 301(CAS番号107667-02-7)としても知られる、ビス(2,4,4-トリメチルペンチル)ジチオホスフィン酸、Cyanex 302(CAS番号132767-86-3)としても知られる、ビス(2,4,4-トリメチルペンチル)モノチオホスフィン酸、リン酸水素ビス(2-エチルヘキシル)(BEHHP)、ビス(2-エチルヘキシル)リン酸(BEHPA)、リン酸ビス(2-エチルヘキシル)(BEHP)、ビス(2-エチルヘキシル)ヒドロリン酸(BEHHPA)、ジ-(2-エチルヘキシル)リン酸(DEHPA)(C8H17O)2PO2H(CAS番号298-07-7)が挙げられる。
【0083】
いくつかの実施形態では、抽出剤は、カルボン酸、ケトキシムまたはアルドキシム化合物をさらに含んでもよい。
【0084】
抽出剤は有機液相中に、0.1体積%超、0.5体積%超、1体積%超、2体積%超、3体積%超、4体積%超、5体積%超、7体積%超、10体積%超、15体積%超、20体積%超、30体積%超、40体積%超、50体積%超、60体積%超 70体積%超、80体積%超、90体積%超、さらには95体積%超の濃度で存在してもよい。
【0085】
抽出剤は有機液相中に、0.5体積%から1体積%の間、または0.5体積%から2体積%の間、または0.5体積%から3体積%の間、または0.5体積%から4体積%の間、または0.5体積%から5体積%の間、または0.5体積%から7体積%の間、または0.5体積%から10体積%の間、または0.5体積%から15体積%の間、または0.5体積%から20体積%の間、または0.5体積%から30体積%の間、または0.5体積%から40体積%の間、または0.5体積%から50体積%の間、または0.5体積%から60体積%の間、または0.5体積%から70体積%の間、または0.5体積%から80体積%の間、または0.5体積%から90体積%の間、または0.5から95体積%の間の濃度で存在してもよい。
【0086】
上に示したように、アルミニウム抽出剤は、Cyanex 272、Cyanex 301、Cyanex 302、Ionquest 801、D2EHPA、カルボン酸、ケトキシム、アルドキシムを含む群から選択される2種の化合物の二元混合物を含んでもよい。好適なカルボン酸の例としては、限定するものではないが、高度に分枝状の第三級カルボン酸、例えばネオデカン酸(Versatic Acid 10としても知られる)が挙げられる。好適なケトキシムおよびアルドキシムとしては、限定するものではないが、ヒドロキシルアリールケトキシムおよびヒドロキシルアリールアルドキシムが挙げられる。
【0087】
二元混合物中に存在する2種の化合物の比は、0.1:99.9%、0.5:99.5%、1.0:99.0%、2.0:98.0%、5.0:95.0%、10.0:90.0%、20.0:80.0%、30.0:70.0%、40.0:60.0%、50.0:50.0%、60.0:40.0%、70.0:30.0%、80.0:20.0%、90.0:10.0%、95.0:5.0%、98.0:2.0%、99.0:1.0%、99.5:0.5%または99.9:0.1%であってもよい。
【0088】
二元混合物は、Cyanex 272およびCyanex 301、Cyanex 272およびCyanex 302、Cyanex 272およびIonquest 801、Cyanex 272およびD2EHPA、Cyanex 272およびカルボン酸、Cyanex 272およびケトキシム、Cyanex 272およびアルドキシム、Cyanex 301およびCyanex 302、Cyanex 301およびIonquest 801、Cyanex 301およびD2EHPA、Cyanex 301およびカルボン酸、Cyanex 301およびケトキシム、Cyanex 301およびアルドキシム、Cyanex 302およびIonquest 801、Cyanex 302およびD2EHPA、Cyanex 302およびカルボン酸、Cyanex 302およびケトキシム、Cyanex 302およびアルドキシム、IonQuest 801およびD2EHPA、IonQuest 801およびカルボン酸、IonQuest 801およびケトキシム、IonQuest 801およびアルドキシム、D2EHPAおよびカルボン酸、D2EHPAおよびケトキシム、D2EHPAおよびアルドキシム、カルボン酸およびケトキシム、カルボン酸およびアルドキシム、ケトキシムおよびアルドキシムを含む群から選択されうる。
【0089】
上に示したように、アルミニウム抽出物は、Cyanex 272、Cyanex 301、Cyanex 302、Ionquest 801、D2EHPA、カルボン酸、ケトキシム、アルドキシムを含む化合物の群から選択される3種の化合物の三元混合物を含んでもよい。
【0090】
三元混合物は、Cyanex 272およびCyanex 301およびCyanex 302、Cyanex 272およびCyanex 301およびIonQuest 801、Cyanex 272およびCyanex 301およびD2EHPA、Cyanex 272およびCyanex 301およびカルボン酸、Cyanex 272およびCyanex 301およびアルドキシム、Cyanex 272およびCyanex 301およびケトキシム、Cyanex 272およびCyanex 302およびIonQuest 801、Cyanex 272およびCyanex 302およびD2EHPA、Cyanex 272およびCyanex 302およびカルボン酸、Cyanex 272およびCyanex 302およびアルドキシム、Cyanex 272およびCyanex 302およびケトキシム、Cyanex 272およびIonQuest 801およびD2EHPA、Cyanex 272およびIonQuest 801およびカルボン酸、Cyanex 272およびIonQuest 801およびアルドキシム、Cyanex 272およびIonQuest 801およびケトキシム、Cyanex 272およびD2EHPAおよびカルボン酸、Cyanex 272およびD2EHPAおよびアルドキシム、Cyanex 272およびD2EHPAおよびケトキシム、Cyanex 272およびカルボン酸およびアルドキシム、Cyanex 272およびカルボン酸およびケトキシム、Cyanex 272およびアルドキシムおよびケトキシム、Cyanex 301およびCyanex 302およびIonQuest 801、Cyanex 301およびCyanex 302およびD2EHPA、Cyanex 301およびCyanex 302およびカルボン酸、Cyanex 301およびCyanex 302およびアルドキシム、Cyanex 301およびCyanex 302およびケトキシム、Cyanex 301およびIonQuest 801およびD2EHPA、Cyanex 301およびIonQuest 801およびカルボン酸、Cyanex 301およびIonQuest 801およびアルドキシム、Cyanex 301およびIonQuest 801およびケトキシム、Cyanex 301およびD2EHPAおよびカルボン酸、Cyanex 301およびD2EHPAおよびアルドキシム、Cyanex 301およびD2EHPAおよびケトキシム、Cyanex 301およびカルボン酸およびアルドキシム、Cyanex 301およびカルボン酸およびケトキシム、Cyanex 301およびアルドキシムおよびケトキシム、Cyanex 302およびIonQuest 801およびD2EHPA、Cyanex 302およびIonQuest 801およびカルボン酸、Cyanex 302およびIonQuest 801およびアルドキシム、Cyanex 302およびIonQuest 801およびケトキシム、Cyanex 302およびD2EHPAおよびカルボン酸、Cyanex 302およびD2EHPAおよびアルドキシム、Cyanex 302およびD2EHPAおよびケトキシム、Cyanex 302およびカルボン酸およびアルドキシム、Cyanex 302およびカルボン酸およびケトキシム、Cyanex 302およびアルドキシムおよびケトキシム、IonQuest 801およびD2EHPAおよびカルボン酸、IonQuest 801およびD2EHPAおよびアルドキシム、IonQuest 801およびD2EHPAおよびケトキシム、IonQuest 801およびカルボン酸およびアルドキシム、IonQuest 801およびカルボン酸およびケトキシム、IonQuest 801およびアルドキシムおよびケトキシム、D2EHPAおよびカルボン酸およびアルドキシム、D2EHPAおよびカルボン酸およびケトキシム、D2EHPAおよびアルドキシムおよびケトキシム、カルボン酸およびアルドキシムおよびケトキシムを含む群から選択されうる。
【0091】
さらなる実施形態では、アルミニウム抽出剤は、Cyanex 272、Cyanex 301、Cyanex 302、IonQuest 801、D2EHPA、カルボン酸、ケトキシムまたはアルドキシムを含む群における、四元の高次の化合物の混合物を含んでもよい。
【0092】
有機液相は、水性相と不混和性である1種または複数の有機溶媒を含んでもよい。特に、有機液相は、1種または複数の脂肪族炭化水素を含んでもよい。脂肪族炭化水素とは、飽和した、長い直鎖、分枝状鎖または環状炭化水素を有する有機化合物である。例示的な脂肪族炭化水素は、ケロシン、ヘキサンおよびヘプタンである。
【0093】
いくつかの実施形態では、方法は、液-液抽出法中に3つの相が形成されることを防止するために、相改質剤を溶媒に加えることをさらに含む。相改質剤は、界面活性剤または共溶媒を含んでもよい。相改質剤の好適な例としては、限定するものではないが、イソデカノール(1-デカノール、CAS 112-30-1、C10H22O)、特にリン酸トリブチル(TBP、CAS 126-73-8、C12H27O4P)が挙げられる。
【0094】
一実施形態では、相改質剤は有機液相中に、1体積%超、2.5体積%超、5体積%超、7.5体積%超、10体積%超、15体積%超または20体積%超の濃度で存在してもよい。
【0095】
一実施形態では、相改質剤は有機液相中に、1~50体積%、2.5~50体積%、5~50体積%、7.5~50体積%、10~50体積%または15~50体積%の濃度で存在してもよい。
【0096】
溶媒抽出ステップは、有機液相の沸点未満の温度で実行してもよい。様々な実施形態では、溶媒抽出ステップは、周囲温度から30℃の間、周囲温度から35℃の間、周囲温度から40℃の間、周囲温度から45℃の間、周囲温度から50℃の間、周囲温度から55℃の間または周囲温度から60℃の間の温度で実行してもよい。
【0097】
アルミニウム抽出剤をアルミニウム含有溶液と反応させる前に、アルミニウム抽出剤を含有する有機液相を中和してもよい。アルミニウム抽出剤を含有する有機液相を、アルカリ溶液、特に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムまたは水性アンモニアと混合してもよい。代替的には、抽出剤を含有する有機液相を、アルカリ懸濁液、特に水酸化カルシウム、石灰、消石灰、水酸化マグネシウムまたは酸化マグネシウムと混合してもよい。
【0098】
代替的には、有機液相が事前に中和されていない場合、アルカリ溶液を加えて、望ましいpH、特にpH<4を維持する必要がありうる。アルカリ溶液の濃度は、水性相中のAlの沈殿を誘導するのに十分であるべきではない。当業者は認識しているであろうが、これは試行錯誤の問題であり、水性液相と有機液相との混合の強度による影響を受けることになる。
【0099】
アルミニウムの抽出中、抽出剤から交換されたプロトンの中和は、各段階における所望のpHを達成するために、担持段階の間にアンモニア溶液を加えることによって達成されうる。当業者は認識しているであろうが、金属を低減させ、ストリッピングをした有機物を、アンモニア溶液と直接接触させることによって、プロトンを部分的にまたは完全に予備中和することもでき、これによって、プロトンがアンモニアによって中和され、効果的にD2EHPAのアンモニウム塩が形成される。次いで、D2EHPAのアンモニウム塩を、担持アルミニウム溶液と反応させ、アルミニウムイオンがアンモニウムイオンと交換され、水性相のpH変化は最小限となる。限定するものではないが、NaOH、KOH、MgO、Mg(OH)2、Ca(OH)2を含む他の塩基を使用して、関連するD2EHPA塩を形成することによる、予備中和を実行してもよい。最も好ましい形態では、系内のアルカリ金属またはアルカリ土類金属不純物の導入を限定するために、中和剤としてアンモニアが使用される。
【0100】
[微量金属不純物の除去]
微量金属不純物、特にアルカリ金属、例えば、Li、NaおよびK、ならびにアルカリ土類金属、例えば、Be、MgおよびCaは、アルミニウム富化有機液相に依然として残存しうる。目的が99.99%純度のアルミナまたはアルミニウム塩を得ることである場合、このような不純物の除去は重要である。微量金属不純物は、アルミニウム富化有機液体を水性スクラブ溶液と接触させて、微量金属不純物を水性スクラブ溶液に移動させることにより、不純物低減アルミニウム富化有機液相と、不純物濃厚水性相とを生成することによって除去されうる。
【0101】
水性スクラブ溶液は、希酸であってもよい。特に、酸は、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸を含む群から選択されうる。当業者は認識しているであろうが、不純物除去に最適なpHは、使用する抽出剤によって変動することになる。
【0102】
いくつかの実施形態では、不純物濃厚水性相は、4未満のpHを有しうる。不純物濃厚水性相のpHは、0.5から4の間、0.5から3の間、0.5から2の間または0.5から1の間でありうる。
【0103】
代替的には、水性スクラブ溶液は、実質的に不純物不含であるアルミニウムの水性溶液を含んでもよい。この点において、水性スクラブ溶液は、アルミニウム担持有機液相をストリッピングすることによって得られる、アルミニウム富化水性溶液の放出流を含んでもよい(後述する)。
【0104】
水性スクラブ溶液中のアルミニウム濃度は、0.1g/Lからアルミニウム沈殿物またはアルミニウム塩の飽和濃度(「飽和」)の間、1.0g/Lから飽和の間、5.0g/Lから飽和の間、10g/Lから飽和の間、25g/Lから飽和の間、50g/Lから飽和の間、75g/Lから飽和の間、100g/Lから飽和の間、150g/Lから関連する塩の飽和の間でありうる。
【0105】
[アルミニウム含有溶液からのアルミニウムの選択的抽出(液-固抽出)]
代替的には、アルミニウム含有溶液を、一価または二価カチオンと比較してアルミニウムについての選択性を有するイオン交換樹脂と接触させることによって、アルミニウムをアルミニウム含有溶液から抽出してもよい。イオン交換樹脂は、強酸カチオン樹脂または弱酸カチオン樹脂を含んでもよい。
【0106】
イオン交換樹脂は、静的または動的方法のいずれかを使用して、アルミニウム含有溶液に接触させることができる。例えば、静的方法では、イオン交換樹脂は、1つまたは複数の縦型カラムを用いて収容され、このカラムを通じてアルミニウム含有溶液が溶離されうるが、このとき、アルミニウムイオンが、イオン交換樹脂上のカチオンと交換されてそこに結合して、アルミニウム担持樹脂を生じる。
【0107】
アルミニウム含有溶液を用いた溶離の前に、アルカリ溶液を用いてイオン交換樹脂を溶離することによって、イオン交換樹脂を中和してもよい。アルカリ溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水性アンモニア、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムまたはこれらの混合物の薄い溶液であってもよい。
【0108】
[微量金属不純物の除去]
やはり樹脂に担持された微量の一価または二価金属不純物、特にアルカリ金属、例えば、Li、NaおよびK、ならびにアルカリ土類金属、例えば、MgおよびCaは、水性スクラブ溶液を用いてアルミニウム担持樹脂を溶離して、微量金属不純物を水性スクラブ溶液に移動させることにより、不純物低減アルミニウム富化有機液相と、不純物濃厚水性相とを生成することによって、樹脂から除去してもよい。
【0109】
水性スクラブ溶液は、希酸であってもよい。特に、酸は、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸を含む群から選択されうる。当業者は認識しているであろうが、不純物除去に最適なpHは、使用する抽出剤によって変動することになる。
【0110】
いくつかの実施形態では、不純物濃厚水性相は、4未満のpHを有しうる。不純物濃厚水性相のpHは、0.5から4の間、0.5から3の間、0.5から2の間または0.5から1の間でありうる。
【0111】
代替的には、水性スクラブ溶液は、実質的に不純物不含であるアルミニウムの水性溶液を含んでもよい。この点において、水性スクラブ溶液は、アルミニウム担持有機液相をストリッピングすることによって得られる、アルミニウム富化水性溶液の放出流を含んでもよい(後述する)。
【0112】
水性スクラブ溶液中のアルミニウム濃度は、0.1g/Lからアルミニウム沈殿物またはアルミニウム塩の飽和濃度(「飽和」)の間、1.0g/Lから飽和の間、5.0g/Lから飽和の間、10g/Lから飽和の間、25g/Lから飽和の間、50g/Lから飽和の間、75g/Lから飽和の間、100g/Lから飽和の間、150g/Lから関連する塩の飽和の間でありうる。
【0113】
アルミニウム富化液体またはアルミニウム担持樹脂からのアルミニウムのストリッピング
ここで記載する方法はまた、アルミニウム富化液体またはアルミニウム担持樹脂をそれぞれ、酸性水性溶液と接触させて、アルミニウム富化水性溶液を生成することによって、アルミニウムを、アルミニウム富化液体またはアルミニウム担持樹脂からストリッピングするステップを含む。
【0114】
酸は、限定するものではないが、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸またはこれらの混合物を含む、強鉱酸の群から選択されうる。酸は、アニオンがアルミニウムと溶解性錯イオンを形成する、弱酸の群から選択されてもよい。弱酸の群には、限定するものではないが、クエン酸、シュウ酸、酢酸、グルコン酸、サチェリック酸(saccheric acid)およびマロン酸を含む。
【0115】
好都合には、高純度アルミニウム塩を生成する実施形態では、酸性水性溶液を調製するために使用する酸は、所望の塩に対応しうる。例えば、高純度アルミニウム塩が硫酸アルミニウムである場合、酸は硫酸であってもよく、高純度アルミニウム塩が硝酸アルミニウムである場合、酸は硝酸であってもよく、高純度アルミニウム塩が塩化アルミニウムである場合、酸は塩酸であってもよい。
【0116】
代替的には、高純度アルミナを生成する実施形態では、酸は、硝酸、塩酸または弱酸であってもよい。
【0117】
希薄アルミニウム水性溶液は、0.1g/Lから10g/Lの間の遊離酸、0.1g/Lから20g/Lの間の遊離酸、0.1g/Lから30g/Lの間の遊離酸、0.1g/Lから40g/Lの間の遊離酸、0.1g/Lから50g/Lの間の遊離酸、0.1g/Lから75g/Lの間の遊離酸、0.1g/Lから100g/Lの間の遊離酸、0.1g/Lから150g/Lの間の遊離酸または0.1g/Lから200g/Lの間の遊離酸を含みうる。
【0118】
希薄アルミニウム水性溶液との接触後に得られるアルミニウム富化水性溶液のpHは、3未満、特に、0から3の間、0.5から3の間、1.0から3の間、1.5から3の間、2.0から3の間、2.5から3の間、0および2、0.5から2の間、1.0から2の間または1.5から2の間でありうる。
【0119】
[高純度アルミニウム塩の結晶化および分離]
いくつかの実施形態では、ここで記載する方法は、高純度アルミニウム塩を、アルミニウム富化水性溶液から結晶化および分離するステップを含む。
【0120】
一般に、アルミニウム富化水性溶液を加熱して、関連する塩の溶解度積を超え、塩が溶液から結晶化する程度まで、水の体積を減少させてもよい。加熱は、減圧下で行ってもよい。当業者は認識しているであろうが、蒸発についての条件は、溶液の塩含有量、塩の最大溶解度に依存し、直接的な試験作業によって決定することができる。
【0121】
得られた高純度アルミニウム塩結晶は、濾過、デカンテーション、遠心分離、および当業者に十分に理解されているであろう他の従来の分離技法によって、母液から分離されうる。分離された高純度アルミニウム塩は、1回または複数回洗浄し、乾燥させてもよいことが理解されよう。
【0122】
[アルミニウム沈殿物の析出および分離]
代替実施形態では、ここで記載する方法は、水酸化アルミニウムまたはオキシ水酸化アルミニウム化合物を、アルミニウム富化水性溶液から結晶化および分離するステップを含む。
【0123】
水酸化アルミニウムまたはオキシ水酸化アルミニウム化合物は、溶液のpHを4~11の範囲、5~10の範囲、6~9の範囲、特に7~8の範囲まで上昇させることによって、前記溶液から析出しうる。
【0124】
当業者は認識しているであろうが、アルミニウムは両性であり、酸溶液とアルカリ溶液との両方に溶解性である。したがって、最適なpHは、テトラヒドロアルミン酸塩、Al(OH)4
-の形成に起因して溶解度が上昇するpH未満である。
【0125】
溶液に塩基を加えることによって、前記溶液のpHを上昇させてもよい。塩基は、水酸化物ナトリウム、水酸化物カリウム、水酸化リチウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、アンモニア、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウムを含む群から選択されうる。特に、溶液に水性アンモニア、NH4OHを加えることによって、前記溶液のpHを上昇させてもよい。
【0126】
反応条件に応じて、沈殿させるステップは、結晶生成物、特に水酸化アルミニウム、またはオキシ水酸化物アルミニウム、例えばベーマイト、AlOOHを生成しうる。
【0127】
沈殿させるステップは、高温、特に30℃超、40℃超、50℃超、60℃超、70℃超、80℃超、90℃超、100℃超、またはアルミニウム富化水性溶液の沸点までの温度で実行してもよい。
【0128】
沈殿させるステップは、30℃から前記沸点の間、40℃から前記沸点の間、50℃から前記沸点の間、60℃から前記沸点の間、70℃から前記沸点の間、80℃から前記沸点の間、90℃から前記沸点の間、または100℃からアルミニウム富化水性溶液の沸点の間で実行してもよい。沈殿させるステップを水熱条件下で行うことによって、圧力を使用して溶液の沸点を上昇させてもよい。
【0129】
当業者は認識しているであろうが、沈殿は、より多くの結晶相を形成するように、または得られる沈殿の粒子サイズが増大するように、母液中でエージングを行ってもよく、これによって、固-液分離が支援される。母液は、沈殿させるステップと同じまたは同様の温度、且つ同じまたは同様の圧力に保持してもよいことが理解されよう。
【0130】
エージングするステップは、様々な操作条件に応じて、30分~48時間で変動しうる。例えば、エージングするステップは、15分超、30分超、60分超、2時間超、4時間超、8時間超、16時間または24時間超であってもよい。
【0131】
エージングするステップは、15分から48時間の間、30分から48時間の間、60分から48時間の間、2時間から48時間の間、4時間から48時間の間、8時間から48時間の間、12時間から48時間の間、または24時間から48時間の間の継続期間を有してもよい。
【0132】
当業者は認識しているであろうが、水酸化物アルミニウム化合物の沈殿は、大気圧における沸点を超えて加熱した場合のアルミニウム富化水性溶液の沸騰を防止するために、高圧を利用するオートクレーブにおいて行ってもよい。最適な条件は、標準的な試験作業プロトコルによって容易に決定される。
【0133】
得られたアルミニウム沈殿物は、濾過、デカンテーション、遠心分離、および当業者に十分に理解されているであろう他の従来の分離技法によって、分離されうる。分離された沈殿は、1回または複数回洗浄し、乾燥させてもよいことが理解されよう。
【0134】
ここで記載するように生成したアルミニウム沈殿物は、商品性のある生成物であってもよいことが理解されよう。
【0135】
[沈殿物のか焼]
ここで記載する方法は、分離されたアルミニウム沈殿物をか焼して、高純度アルミナ、Al2O3を生成するステップを含む。
【0136】
か焼するステップは、アルミニウム沈殿物をアルミナに変換するのに十分な温度に、アルミニウム沈殿物を加熱することによって実行されうる。例えば、アルミニウム沈殿物は、300℃超、400℃超、500℃超、600℃超、700℃超、800℃超、900℃超、1000℃超、1100℃超、1200℃超、1300℃超または1400℃超の温度に加熱されうる。
【0137】
いくつかの実施形態では、沈殿物は、300℃から1400℃の間、400から1400℃の間、500から1400℃の間、600から1400℃の間、700から1400℃の間、800から1400℃の間、900から1400℃の間、1000から1400℃の間、1100から1400℃の間、1200℃から1400℃、または1300℃から1400℃の間の温度に加熱されうる。
【0138】
か焼するステップは、好適な温度で、アルミニウム沈殿物をアルミナに変換するのに十分な期間にわたって、アルミニウム沈殿物を加熱することによって実行されうる。例えば、アルミニウム沈殿物は、15秒超、30秒超、1分超、5分超、10分超、15分超、30分超、45分超、1時間超、2時間超、3時間超、4時間超、5時間超または6時間超にわたってか焼されうる。
【0139】
いくつかの実施形態では、沈殿物は、15秒から6時間の間、30秒から6時間の間、1分から6時間の間、5分から6時間の間、15分から6時間の間、15分から6時間の間、15分から6時間の間、30分から6時間の間、45分から6時間の間、1時間から6時間の間、2時間から6時間の間、3時間から6時間の間、4時間から6時間、または5時間から6時間の間にわたってか焼されうる。
【0140】
当業者は認識しているであろうが、か焼の温度は、形成されるAl2O3の特定の結晶相を決定することになる。したがって、か焼温度を穏やかにすることによって、異なる結晶構造を有する様々な高純度アルミナを生成することができる。
【0141】
1つの特定の実施形態では、乾燥させた沈殿物を2段階でか焼してもよく、第1が、水を沈殿物の結晶構造から排除し、第2が、Al2O3の所望の結晶形態を生成する。
【0142】
一実施形態に従った、高純度アルミナを生成するための方法を、ここで、
図1に示すフローシートを参照して記載する。
【0143】
固体硫酸アルミニウム(1)を、水(2)とともにタンク(3)に供給し、ここで硫酸アルミニウムが混合されて、硫酸アルミニウムの水性溶液/スラリーが提供される。再利用水(4)も使用されうる。スラリー(5)をフィルタ(6)にポンプ供給し、ここで、不溶性材料(7)が除去および廃棄される。アルミニウム含有溶液(8)を、pHを維持するための水性アンモニア(10)とともに、溶媒抽出の担持段階(9)に供給する。水性溶液を、D2EHPAを含有する液体有機相(11)と混合する。アルミニウムが有機相(13)に移動し、一方でアルミニウム低減水性溶液は、例えば硫酸アンモニウムの結晶化によって、再利用(4)または廃棄(12)することができる。
【0144】
担持有機相(13)はストリッピング(14)に進み、ここで、塩酸溶液(15)と混合される。酸がアルミニウムを有機相から追い出すことによって、D2EHPA(11)が再生し、これは担持段階(9)に戻る。アルミニウム溶液(16)を、pHを上昇させて水酸化アルミニウムを沈殿させるアンモニア(18)とともに、沈殿器(17)に供給する。得られたスラリー(19)を、溶液(21)と沈殿物(22)とを分離するフィルタ(20)に供給する。溶液(21)は、HClおよびNH3を分離および回収するための処理をしてもよく、結晶化させて塩化アンモニウムとしてもよい。
【0145】
沈殿物(22)をか焼器(23)に供給し、1250℃で4時間にわたって加熱して水を追い出すことにより、沈殿物をHPA(24)に変換する。
【0146】
別の実施形態に従った、高純度硝酸アルミニウムを生成するための方法を、ここで、
図2に示すフローシートを参照して記載する。
【0147】
固体硫酸アルミニウム(1)を、水(2)とともにタンク(3)に供給し、ここで硫酸アルミニウムが混合され、溶解して、アルミニウム塩の水性溶液/スラリーが生成される。再利用水(4)も使用されうる。スラリー(5)をフィルタ(6)にポンプ供給し、ここで、一切の不溶性材料(7)が除去および廃棄される。アルミニウム含有溶液(8)を、pHを維持するためのアンモニア(10)とともに、溶媒抽出の担持段階(9)に供給する。水性溶液を、D2EHPAを含有する液体有機相(11)と混合する。アルミニウムが有機相(13)に移動し、一方でアルミニウム低減水性溶液は、例えば硫酸アンモニウムの結晶化によって、再利用(4)または廃棄(12)することができる。
【0148】
担持有機相(13)はストリッピング(14)に進み、ここで、硝酸溶液(15)と混合される。酸がアルミニウムを有機相から追い出すことによって、D2EHPA(11)が再生し、これは担持段階(9)に戻る。アルミニウム溶液(16)を蒸発器(17)に供給し、水が除去され、硝酸アルミニウム結晶が生成する。得られたスラリー(19)を、溶液(18)と生成物結晶(21)とを分離するフィルタ(20)に供給する。溶液(18)は、蒸発段階(17)に戻して再利用してもよい。
【実施例】
【0149】
以下の実施例は、単なる説明のためのものとして理解されるべきである。そのため、本開示の実施形態を限定するものとして、決して解釈されるべきではない。
【0150】
X線回折を使用して粘土サンプルを分析し、30%の石英、27%の白雲母、35%のカオリナイトおよびその他の粘土を含有することが見出された。
【0151】
カオリナイトを溶出に適合させるため、650℃で4時間にわたってか焼して、カオリンをメタカオリンに変換する必要があった。4.5%の質量減少が観測された。ヘッドおよびか焼生成物に存在する主要な要素のアッセイを、表1に列挙する。
【0152】
【0153】
32%HClの溶液を80℃に加熱し、十分なか焼物を加えて、40%固体(w/w)のスラリー密度を得た。主要な元素の抽出率を
図3に示す。反応は、最初の60分以内に実質的に完了しているようであり、120分までに、さらなる濃度の変化はほぼない。
【0154】
表3は、120分後の溶液濃度を示す。
【0155】
【0156】
溶出試験からのスラリーを濾過し、この液を、一連の溶媒抽出(SX)分離段階に向けて前方へ移送した。
【0157】
HCl溶出からの液を、ケロシンに溶解させた10体積%のAlamine 336に接触させた。水性相と有機相とを混合し、次いで、分離させた。有機相を排出し、次いで、脱イオン水と1:1の比で接触させて、いくつかの金属不純物を有機相からストリッピングした。次いで、有機相を水性相と再混合し、続いて、以前に記載したように分離および脱イオン水を用いたストリッピングを行い、この方法を合計10回繰り返した。
【0158】
有機相による水性溶液からの金属不純物の抽出率を、表に示す。Fe不純物の大部分が除去される一方で、Alはほとんど失われない。いくつかの他の金属不純物、Ba、Mn、SおよびSiも抽出される。担持有機物の水ストリッピングは、すべての元素を非常に効率的に除去した。
【0159】
【0160】
当初の担持物(ラフィネート)から分離した水性溶液は、表に示すアッセイを有する。この溶液はAl-SXに進み、沈殿の前に、アルミニウム濃度が向上し、精製される。
【0161】
【0162】
ラフィネートを、20体積%のD2EHPA+10体積%のTBPの有機溶液と混合して、アルミニウムを抽出した。表6は、供給溶液、Al抽出後のラフィネート、および担持有機物を硫酸と接触させた後の溶液の溶液濃度を示す。
【0163】
Alの約54%が、単一段階の抽出において抽出された。理論によって束縛されることを望むものではないが、これは、DEHPAの最大可能担持量を表し、新たなDEHPAを使用したさらなる段階の抽出によって、これが90%超に上昇すると考えられる。Al-SXラフィネートについての分析データがなく、他の元素の抽出に関する一切のコメントは不可能である。ストリッピングに使用した硫酸は200g/Lであり、D2EHPAに担持された金属の大多数をストリッピングすることによって、予想通りに機能した。
【0164】
【0165】
Feについてのデータによって、鉄はAlよりも容易に濃縮されたことが示唆される。Feは、D2EHPAを使用するとAlよりも強く抽出されることが公知であり、したがって、Feは、Alよりも先にD2EHPAに担持され、そのため、大きな割合のFeが、水性供給から抽出されることになる。最も重要なことに、Ca、K、Mg、Na、P、TiおよびVのレベルは、ストリップ溶液では、すべて大幅に低減する。
【0166】
ストリップ溶液としての200g/LのH2SO4の使用は、D2EHPAの完全なストリッピングを確保するためのものであった。理論によって束縛されることを望むものではないが、ストリップ溶液のpHをより注意深く制御することによって、D2EHPAからAlを選択的にストリッピングしながら、Fe(およびおそらくは他の元素)が残る、十分な可能性がある。高Al濃度の溶液を用いた担持有機物のスクラビングも、不純物レベルがさらに低減することが期待される。
【0167】
Alを沈殿させるため、Al SXを行ったストリップ溶液を、NaOHを使用して最終pHを6超に中和した。供給および濾液の濃度を、沈殿した元素の百分率とともに表に示す。見て取ることができるように、Alは完全に沈殿した一方で、他の元素は部分的に沈殿するか、沈殿しなかった。重要な元素は、高い(すなわち1ppm超の)出発濃度を有するものである。濾液中のNaおよびKの増加は、NaOHおよびNaOH中の不純物Kに起因するものであった。見て取ることができるように、沈殿は、Al以外の多くの元素について極めて効果的であったが、これらの元素は低レベルで存在するため、少量であった。沈殿したNaの量は、pHを上昇させるためにNaOHを使用したため、明瞭ではない。溶液を中和するためにアンモニアを使用することで、NaまたはKの溶液への添加が排除される。
【0168】
【0169】
アルミニウム沈殿物を乾燥させ、1200℃で4時間にわたってか焼して、沈殿物をHPAに変換した。続いてHPAの一部を超純水中で洗浄して、一切の溶解性表面イオンを除去した。
【0170】
表は、未処理HPAおよび洗浄したHPAにおいて測定した主な不純物を示す。検出限界未満と分析された一切の元素は、検出限界であるものと受け取った。これは、10ppmという非常に高い検出限界を有するSについて特に重要であり、現に、実際のレベルはいくらか低い可能性がある。主な不純物元素は、SiおよびFeであった。
【0171】
超純水を使用してHPAを洗浄して、一切の残存する溶解性イオンを除去したが、データは、要求される99.99%超の純度を達成するために、この段階が肝要であることを示している。洗浄段階中に、Alの損失は発生しなかったことに留意するべきである。
【0172】
【0173】
HPAを洗浄するために使用した水は、酸溶液によって置き換えてもよく、HPAを一切損なうことなく、いっそう高い不純物の除去率をもたらすことが期待される。
【0174】
本開示の広い範囲全体から逸脱することなく、上記の実施形態に対する多数の変形および/または修正がなされうることを、当業者は理解するであろう。そのため、本実施形態は、すべての点において説明のためのものであり、制限的なものではないと考えられるべきである。