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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 41/10 20060101AFI20241120BHJP
【FI】
F16D41/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024003311
(22)【出願日】2024-01-12
【審査請求日】2024-03-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102784
【氏名又は名称】NSKワーナー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 成章
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-266359(JP,A)
【文献】特開2018-112277(JP,A)
【文献】特開2002-130335(JP,A)
【文献】特開2014-077510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向内側又は径方向外側を向く円筒面を有する固定部材と、
前記円筒面と対向する対向面を有する出力軸と、
前記円筒面と前記対向面との間に配置された少なくとも1つ以上の押圧部を有する入力軸と、
前記円筒面と前記対向面との間であり、かつ前記押圧部に対し周方向の両側に配置された一対の転動体と、
を備え、
前記対向面には、径方向に窪み、内部に前記押圧部と一対の前記転動体が収容される凹面が形成され、
前記凹面は、
底面と、
前記底面の前記周方向の端部から径方向に延在し、前記周方向を向く一対の被押圧面と、
を有し、
前記押圧部の前記周方向の面は、前記転動体を介して前記被押圧面を押圧する押圧面であり、
前記底面は、
前記凹面の前記周方向の中央部に位置し、前記円筒面との間に前記押圧部が配置される中央面と、
前記凹面の前記周方向の両端部に位置し、前記円筒面との間に前記転動体が配置される一対のカム面と、
を有し、
前記カム面は、前記中央面から前記被押圧面に近づくにつれて次第に前記円筒面との間の距離が大きくなり、
前記カム面のうち前記中央面寄りの部分は、前記円筒面との間の距離が前記転動体の径径よりも小さく、
前記カム面のうち前記被押圧面寄りの部分は、前記円筒面との間の距離が前記転動体の径よりも大きく、
前記被押圧面は、
前記径方向の一方の端部であり、前記底面と合流する基端部と、
前記径方向の他方の端部であり、前記基端部の反対側に位置する先端部と、
を有し、
前記被押圧面は、前記基端部側から前記先端部側に向かうにつれて周方向外側に配置され、方向外側に倒れている
動力伝達装置。
【請求項2】
前記転動体を付勢する弾性体を備え、
前記弾性体は、前記被押圧面と前記転動体との間に配置され、前記転動体を前記押圧面の方に付勢する圧縮ばね、又は前記押圧面と前記転動体との間に配置され、前記転動体を前記押圧面の方に付勢する引っ張りばねである
請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項3】
前記出力軸は、前記円筒面の中心線と平行な軸方向を向く側面を有し、
前記側面を当接して摩擦力を発揮する摩擦部を備えている
請求項2に記載の動力伝達装置。
【請求項4】
前記円筒面の中心線を中心とし、かつ前記円筒面と前記カム面との間に挟まった状態の前記転動体の中心を通る仮想の円を第1仮想円とし、
前記押圧面は、
前記第1仮想円よりも径方向の内側に配置された内側面と、
前記第1仮想円よりも径方向の外側に配置された外側面と、
を有し、
前記外側面は、前記内側面よりも突出している
請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項5】
前記固定部材は、内周面が前記円筒面となっている環状の外輪部を有し、
前記出力軸は、前記外輪部の内側に配置され、外周面が前記対向面となっている内輪部を有している
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の動力伝達装置。
【請求項6】
前記固定部材は、外周面が前記円筒面となっている内輪部を有し、
前記出力軸は、内部に前記内輪部が配置され、内周面が前記対向面となっている環状の外輪部を有している
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
動力伝達装置は、モータなどで生成されたトルクを伝達する装置である。このような動力伝達装置は、例えば、産業ロボットのアーム等を駆動するために利用される。動力伝達装置は、トルクが入力される入力軸と、トルクを出力する出力軸と、を備えている。出力軸には、駆動させようとする対象物が連結され、対象物の自重等(以下、外力を称する)が入力される。仮に出力軸が回転すると、対象物の位置が保持されない。よって、出力軸の角度が保持されるようにするには、モータに指令を出し続け、対象物の位置を保持することが必要となる。一方で、特許文献1の動力伝達装置では、入力軸から出力軸にトルクを伝達することを可能にするとともに、外力が出力軸に入力した場合、出力軸の回転が規制される。
【0003】
特許文献1の動力伝達装置を詳細に説明すると、動力伝達装置は、同軸上に配置されたキヤリア(入力軸)、フランジ板、ロック解除板及び出力軸を備えている。さらに動力伝達装置は、内部に出力軸が挿入される外輪と、外輪と出力軸との間に配置された複数の円筒ころ及び弾性体と、を備えている。円筒ころは、弾性体に付勢されている。また、円筒ころは、付勢された方向に移動すると、外輪の内周面と出力軸の外周面との間に挟まる。これにより、出力軸の回転が規制される。フランジ板は、出力軸と連結している。ロック解除板が回転すると、ロック解除板が弾性体の付勢力に抗って円筒ころを押し出す。これにより、外輪と出力軸との間に円筒ころが挟まっている状態が解除され、出力軸のロックが解除する。また、キャリアが回転すると、キャリアは、凸部を介して先にロック解除板にトルクを伝達し、遅れてフランジ板にトルクを伝達する。つまり、ロック解除板が回転して出力軸のロックが解除された後、フランジ板が回転し、出力軸にトルクが伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-206455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の動力伝達装置では、入力軸から出力軸に伝達されるトルクの損失(以下、トルク損失を称する)が大きい。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、トルク損失の低減を図る動力伝達装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様に係る動力伝達装置は、径方向内側又は径方向外側を向く円筒面を有する固定部材と、前記円筒面と対向する対向面を有する出力軸と、前記円筒面と前記対向面との間に配置された少なくとも1つ以上の押圧部を有する入力軸と、前記円筒面と前記対向面との間であり、かつ前記押圧部に対し周方向の両側に配置された一対の転動体と、を備えている。前記対向面には、径方向に窪み、内部に前記押圧部と一対の前記転動体が収容される凹面が形成されている。前記凹面は、底面と、前記底面の前記周方向の端部から径方向に延在し、前記周方向を向く一対の被押圧面と、を有している。前記押圧部の前記周方向の面は、前記転動体を介して前記被押圧面を押圧する押圧面である。前記底面は、前記凹面の前記周方向の中央部に位置し、前記円筒面との間に前記押圧部が配置される中央面と、前記凹面の前記周方向の両端部に位置し、前記円筒面との間に前記転動体が配置される一対のカム面と、を有している。前記カム面は、前記中央面から前記被押圧面に近づくにつれて次第に前記円筒面との間の距離が大きくなる。前記カム面のうち前記中央面寄りの部分は、前記円筒面との間の距離が前記転動体の直径よりも小さい。前記カム面のうち前記被押圧面寄りの部分は、前記円筒面との間の距離が前記転動体の直径よりも大きい。
【発明の効果】
【0008】
本開示の動力伝達装置によれば、剛体である転動体を介して入力軸から出力軸にトルクが伝達されるため、トルク損失が低減する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態1の動力伝達装置を軸方向と直交する方向に切った断面図であり、詳細には図2のI-I線矢視断面図である。
図2図2は、実施形態1の動力伝達装置を軸方向に切った断面図であり、詳細には図1のII-II線矢視断面図である。
図3図3は、図1の凹面を拡大した拡大図である。
図4図4は、実施形態1の出力軸に第1回転方向の外力が入力した場合の凹面の拡大図である。
図5図5は、実施形態1の出力軸に第2回転方向の外力が入力した場合の凹面の拡大図である。
図6図6は、実施形態1の入力軸に第1回転方向のトルクが入力した場合の凹面の拡大図である。
図7図7は、実施形態1の入力軸に第2回転方向のトルクが入力した場合の凹面の拡大図である。
図8図8は、変形例1の動力伝達装置を軸方向と直交する方向に切った断面図であり、詳細には、図9のVIII-VIII線矢視断面図である。
図9図9は、変形例1の動力伝達装置を軸方向に切った断面図であり、詳細には、図8のIX-IX線矢視断面図である。
図10図10は、変形例2の動力伝達装置を軸方向と直交する方向に切った断面図であり、詳細には、図11のX-X線矢視断面図である。
図11図11は、変形例2の動力伝達装置を軸方向に切った断面図であり、詳細には、図10のXI-XI線矢視断面図である。
図12図12は、変形例2の動力伝達装置において入力軸に第1回転方向へのトルクが入力された場合の図である。
図13図13は、変形例3の動力伝達装置を軸方向と直交する方向に切った断面図である。
図14図14は、変形例4の動力伝達装置を軸方向に切った断面図である。
図15図15は、図14の矢印XVの方向から視た側面図である。
図16図16は、変形例5の動力伝達装置を軸方向に切った断面図である。
図17図17は、変形例5の動力伝達装置の一部を拡大した拡大図である。
図18図18は、変形例6の動力伝達装置を軸方向と直交する方向に切った断面図であり、詳細には図19のXVIII-XVIII線矢視断面図である。
図19図19は、変形例6の動力伝達装置を軸方向に切った断面図であり、詳細には図18のXIX-XIX線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示を実施するための形態につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の説明で記載した内容により本開示が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0011】
(実施形態1)
図1は、実施形態1の動力伝達装置を軸方向と直交する方向に切った断面図であり、詳細には図2のI-I線矢視断面図である。図2は、実施形態1の動力伝達装置を軸方向に切った断面図であり、詳細には図1のII-II線矢視断面図である。図3は、図1の凹面を拡大した拡大図である。
【0012】
図1に示すように、実施形態1の動力伝達装置100は、固定部材1と、出力軸2と、入力軸3と、複数の円筒ころ(転動体)4と、を備えている。
【0013】
固定部材1は、動力伝達装置100を他の部品に固定するための部品である。図2に示すように、固定部材1は、外輪部10と、外輪部10から外周側に突出する外フランジ部11と、外輪部10から内周側に突出する内フランジ部12と、を有している。図1に示すように、外輪部10は、環状に形成されている。外輪部10の内周面13及び外周面14は、中心線O1を中心に円形状に形成されている。つまり、外輪部10は円筒形状に形成されている。以下、内周面13を円筒面と称する場合がある。また、内周面13の中心線O1と平行な方向を軸方向と称する。また、中心線O1と直交する方向を径方向と称する。また、中心線O1を中心に回る方向を周方向と称する。
【0014】
外フランジ部11及び内フランジ部12は、それぞれ、外輪部10に沿って周方向に延在し、環状となっている。外フランジ部11には、軸方向に貫通する貫通孔11aが形成されている。貫通孔11aには、図示しないボルトの軸部が挿入される。そして、外フランジ部11は図示しないボルトの頭部で締め付けられる。これにより、固定部材1が他の装置に固定される。
【0015】
図2に示すように、外フランジ部11は、外輪部10の軸方向の一端部に設けられている。内フランジ部12は、外輪部10の軸方向の他端部に設けられている。以下、軸方向のうち、内フランジ部12から視て外フランジ部11が配置される方向を第1方向X1と称し、反対方向を第2方向X2と称する。また、図1に示すように、周方向の向きに関し、第2方向X2から視た場合を基準に説明する。そして、第2方向X2から視て左回り(逆時計回り)方向を第1回転方向L1と称する。第2方向X2から視て右回り(時計回り)方向を第2回転方向L2と称する。
【0016】
図2に示すように、出力軸2は、外輪部10の内周側に配置された環状の内輪部20と、内輪部20の内周側に設けられた環状の第1連結部21と、を備えている。
【0017】
図1に示すように、内輪部20の外周面22は、外輪部10の内周面13に対向する対向面である。なお、外周面22を対向面と称する場合がある。外周面22の外径は、外輪部10の内周面13の径と略同一である。そして、内輪部20の外周面は、外輪部10の内周面13に対し、周方向に摺動可能に当接している。これにより、出力軸2は、固定部材1の中心線O1と同軸上に配置され、回転自在に固定部材1に支持されている。
【0018】
内輪部20の外周面22には、径方向内側に窪む凹面23が形成されている。凹面23は、本実施形態では6つ形成されている。6つの凹面23は、周方向に等間隔に配置されている。1つの凹面23の内部には、入力軸3の後述する押圧部32と、2つの円筒ころ4と、が配置されている。なお、凹面23の詳細は後述する。
【0019】
図2に示すように、内輪部20の第2方向X2には、内フランジ部12が配置されている。よって、出力軸2は、固定部材1から第2方向X2に脱落しない。また、凹面23の内部は、第2方向X2から内フランジ部12に覆われている。よって、円筒ころ4が凹面23の内部から第2方向X2に脱落しない。
【0020】
第1連結部21の外径は、内フランジ部12の内径よりも小さい。つまり、第1連結部21は、内フランジ部12の内周側に配置されている。第1連結部21の内周面は、動力伝達装置100(出力軸2)からトルクを伝達する他の部品101が嵌合する嵌合面となっている。
【0021】
入力軸3は、第1連結部21の第1方向X1に配置された第2連結部30と、第2連結部30から径方向外側に延在する本体部31と、本体部31から第2方向X2に突出する複数の押圧部32と、を有している。
【0022】
図1に示すように、第2連結部30は、環状に形成されている。第2連結部30の内径及び外径は、第1連結部21と同径となっている。第2連結部30の内周面は、動力伝達装置(入力軸)にトルクを伝達する他の部品102が嵌合する嵌合面となっている。
【0023】
本体部31は、第2連結部30の外周面に沿って周方向に延在し、環状となっている。図2に示すように、本体部31の外径は、外輪部10の内周面13の径と略同一である。本体部31の外周面は、外輪部10の内周面13に対して周方向に摺動可能に当接している。これにより、入力軸3は、外輪部10の中心線O1と同軸上に配置され、回転自在に固定部材1に支持されている。
【0024】
本体部31の第2方向X2には、出力軸2の内輪部20が配置されている。本体部31は、凹面23の内部を第1方向X1から覆っている。このため、円筒ころ4は、凹面23の内部から第1方向X1に脱落しない。外輪部10の内周面13であって第1方向X1の端部には、止め輪5が設けられている。止め輪5は、第1方向X1から本体部31に当接している。よって、入力軸3及び出力軸2は、固定部材1から第1方向X1に脱落しない。
【0025】
図1に示すように押圧部32は、軸方向から視て円弧状に形成されている。押圧部32は、凹面23の内部に配置されている。押圧部32の周方向の面は、押圧面33となっている。押圧面33は、中心線O1から径方向に延在する仮想線K1(図3参照)に沿って延在している。また、押圧面33に関し、押圧部32は、第1回転方向L1を向く第1押圧面133と、第2回転方向L2を向く第2押圧面233と、の2つを有している。
【0026】
円筒ころ4は、円柱状に形成され、直径がH1(図1参照)となっている。円筒ころ4は、鋼材で形成され、変形難い剛体である。1つの凹面23の内部に、2つの円筒ころ4が配置されている。また、2つの円筒ころ4は、押圧部32の周方向の両側に分かれて配置されている。以下、押圧部32から視て第1回転方向L1に配置された円筒ころ4を第1円筒ころ41と称し、第2回転方向L2に配置された円筒ころ4を第2円筒ころ42と称する。
【0027】
次に図3を参照しながら凹面23の詳細について説明する。図3に示すように、凹面23は、中心線O1から底面24の周方向の中央部を通過する仮想線K2を基準に左右対称に形成されている。凹面23は、底面24と、2つの被押圧面25と、を有している。
【0028】
底面24は、底面24のうち周方向の中央部に位置する中央面26と、底面24のうち周方向の端部に位置する一対のカム面27と、を有している。なお、中央面26から視て被押圧面25が配置される方向を周方向外側と称する。また、被押圧面25から視て中央面26が配置される方向を周方向内側と称する。
【0029】
中央面26は、円弧状に形成されている。中央面26と外輪部10との間には、入力軸3の押圧部32が配置されている。
【0030】
一対のカム面27は、中央面26を基準として第1回転方向L1に配置された第1カム面127と、第2回転方向L2に配置された第2カム面227と、である。なお、第1カム面127と第2カム面227は、仮想線K2を基準に左右対称となっている。よって、カム面27の説明では、第1カム面127を代表例として説明し、第2カム面227の説明を省略する。
【0031】
第1カム面127と外輪部10の内周面13との間には、第1円筒ころ41が配置される。中心線O1からカム面27までの径は、中央面26から被押圧面25に近づくにつれて次第に小さくなるように形成されている。つまり、外輪部10の内周面13とカム面27との間の距離H2は、被押圧面25に近づくにつれて次第に大きくなっている。
【0032】
また、内周面13とカム面27との間の距離H2は、カム面27の周方向の中央部で、第1円筒ころ41の直径H1(図1参照)と同じとなっている。よって、第1円筒ころ41が中央面26寄りに移動すると、カム面27と内周面13との間に第1円筒ころ41が挟まる。一方で、第1円筒ころ41が被押圧面25寄りに移動すると、カム面27と内周面13との間に第1円筒ころ41が挟まらずに遊嵌した状態となる。
【0033】
被押圧面25は、底面24の周方向の端部から径方向外側に延在している。2つの被押圧面25は、中央面26を基準として第1回転方向L1に配置された第1被押圧面125と、第2回転方向L2に配置された第2被押圧面225と、である。第1被押圧面125は、中心線O1から被押圧面25の基端部25a(底面24の周方向の端部と合流する個所)に引いた仮想線K3を基準として、周方向外側に倒れている。なお、第2被押圧面225は、仮想線K2を基準に第1被押圧面125と左右対称であるため、第2被押圧面225の説明を省略する。
【0034】
図4は、実施形態1の出力軸に第1回転方向の外力が入力した場合の凹面の拡大図である。図5は、実施形態1の出力軸に第2回転方向の外力が入力した場合の凹面の拡大図である。図6は、実施形態1の入力軸に第1回転方向のトルクが入力した場合の凹面の拡大図である。図7は、実施形態1の入力軸に第2回転方向のトルクが入力した場合の凹面の拡大図である。
【0035】
次に図3から図7を参照しながら実施形態1の動力伝達装置の動作について説明する。以下の説明において、他の部品101(図2参照)から出力軸2に入力したトルクを外力と称し、他の部品102(図2参照)から入力軸3に入力したトルクと区別する。
【0036】
最初に図3に示す動力伝達装置100の状態を説明する。図3に示すように、2つの円筒ころ4は、カム面27のうち被押圧面25寄りに配置されている。よって、2つの円筒ころ4は、カム面27と内周面13との間に挟まっておらず、遊嵌した状態となっている。よって、出力軸2は回転可能となっており、以下、この状態をニュートラル状態と称する。
【0037】
ニュートラル状態から、出力軸2に第1回転方向L1の外力が入力されると、図4に示すように、出力軸2が第1回転方向L1に回転する(図4の矢印A1参照)。この結果、第1円筒ころ41が内周面13と第1カム面127の間に挟まれる。これにより、出力軸2は、第1回転方向L1への回転が規制される。
【0038】
一方で、ニュートラル状態から、出力軸2に第2回転方向L2の外力が入力されると、図5に示すように、出力軸2は第2回転方向L2に回転する(図5の矢印A2参照)。この結果、第2円筒ころ42は、内周面13と第2カム面227とに挟まれる。これにより、出力軸2は、第2回転方向L2への回転が規制される。
【0039】
また、図4に示すように、出力軸2が第1回転方向L1への回転が規制された状態から、入力軸3に第1回転方向L1のトルクが入力した場合、図6に示すように、押圧部32が第1回転方向L1に移動する(図6の矢印A3を参照)。押圧部32の第1押圧面133は、第1円筒ころ41を第1回転方向L1に押圧する。そして、第1円筒ころ41が第1回転方向L1に移動すると、内周面13と第1カム面127の間に第1円筒ころ41が挟まれた状態、つまり出力軸2が第1回転方向L1への回転が規制された状態が解除される。
【0040】
さらに押圧部32が第1回転方向L1に移動すると、第1円筒ころ41が第1被押圧面125に当接する。そして、押圧部32は、第1円筒ころ41を介して第1被押圧面125を押圧する(図6の矢印A4を参照)。これにより、出力軸2に第1回転方向L1のトルクが伝達され、出力軸2が第1回転方向L1に回転する。
【0041】
一方で、図4に示すように、出力軸2が第1回転方向L1への回転が規制された状態から、入力軸3に第2回転方向L2のトルクが入力した場合、図7に示すように、押圧部32が第2回転方向L2に移動する(図7の矢印A5を参照)。そして、押圧部32の第2押圧面233が第2円筒ころ42に当接すると、押圧部32は第2円筒ころ42を介して第2被押圧面225を押圧する(図7の矢印A6を参照)。これにより、出力軸2に第2回転方向L2のトルクが伝達され、出力軸2が第2回転方向L2に回転する。
【0042】
また、出力軸2が第2回転方向L2に回転し始めると、第1円筒ころ41に対し第1カム面127が第2回転方向L2に移動するため、内周面13と第1カム面127の間に第1円筒ころ41が挟まった状態が解除される。
【0043】
なお、出力軸2が第1回転方向L1への回転が規制された状態から、出力軸2を第2回転方向L2に回転させる場合、上記では、図7に示すように入力軸3に第2回転方向L2のトルクを入力する例を挙げて説明しているが、本開示はこの動作例に限定されない。上記の動作方法では、押圧部32が第2円筒ころ42を介して第2被押圧面225を押圧し始めるとき、第1円筒ころ41が内周面13と第1カム面127に挟まった状態となっている。つまり、出力軸2がスムーズに回転しない可能性がある。よって、入力軸3が一旦第1回転方向L1に回転し、第1円筒ころ41が内周面13と第1カム面127に挟まった状態が解除された後、入力軸3が第2回転方向L2に回転して出力軸2にトルクを伝達するようにしてもよい。
【0044】
以上、実施形態1の動力伝達装置100は、径方向内側を向く円筒面(内周面13)を有する固定部材1と、円筒面と対向する対向面(外周面22)を有する出力軸2と、円筒面と対向面との間に配置された少なくとも1つ以上の押圧部32を有する入力軸3と、円筒面と対向面との間であり、かつ押圧部に対し周方向の両側に配置された一対の転動体(円筒ころ4)と、を備えている。対向面には、径方向に窪み、内部に押圧部32と一対の転動体が収容される凹面23が形成されている。凹面23は、底面24と、底面24の周方向の端部から径方向に延在し、周方向を向く一対の被押圧面25と、を有している。押圧部32の周方向の面は、転動体を介して被押圧面25を押圧する押圧面33である。底面24は、凹面23の周方向の中央部に位置し、円筒面との間に押圧部が配置される中央面26と、凹面23の周方向の両側に位置し、円筒面との間に転動体が配置される一対のカム面27と、を有している。カム面27は、中央面26から被押圧面25に近づくにつれて次第に円筒面との間の距離H2が大きくなる。カム面27のうち中央面26寄りの部分は、距離H2が転動体の直径H1よりも小さい。カム面27のうち被押圧面25寄りの部分は、距離H2が転動体の直径H1よりも大きい。
【0045】
上記した実施形態1によれば、入力軸3のトルクは、剛体である円筒ころ4を介して出力軸2に伝達される。円筒ころ4は、剛体であり、トルクが作用した場合の変形量が小さい。これにより、トルク損失の低減が図れる。また、出力軸2の回転が規制されるため、出力軸2に連結された他の部品101(例えば産業ロボットのアーム等)の位置を保持することができる。また、出力軸の回転の規制には、モータ等の制御を必要としないため、動力伝達装置100が備え付けられる設備の消費電力の削減を図れる。さらに、上述した特許文献1の技術によれば、出力軸と入力軸以外に、フランジ板とロック解除板を必要としているが、動力伝達装置100では、フランジ板とロック解除板が不要である。よって、動力伝達装置100の部品点数を削減することができる。
【0046】
以上、実施形態1について説明した。なお、実施形態1では、転動体として円筒ころを用いた例を挙げているが、本開示はボールであってもよく、特に限定されない。次に実施形態1を変形した変形例について説明する。また、以下の説明では先に説明した動力伝達装置との相違点に絞って説明する。
【0047】
(変形例1)
図8は、変形例1の動力伝達装置を軸方向と直交する方向に切った断面図であり、詳細には、図9のVIII-VIII線矢視断面図である。図9は、変形例1の動力伝達装置を軸方向に切った断面図であり、詳細には、図8のIX-IX線矢視断面図である。
【0048】
図8に示すように、変形例1の動力伝達装置100Aは、凹面23の数が2つとなっている点で実施形態1と相違する。このような動力伝達装置100Aであっても、実施形態1と同じ作用効果を生じ、トルク損失の低減を図れる。このように本開示の凹面23の数は、実施形態1で示した6つに限定されない。つまり、本開示の動力伝達装置において、凹面23は少なくとも1つ以上あればよく、凹面23の数に特に制限はない。
【0049】
図9に示すように、固定部材1Aは、軸方向に二分割された部品により構成されている点で実施形態1と相違する。詳細には、固定部材1Aは、第1固定部材201と、第1固定部材201の第2方向X2に配置された第2固定部材202と、を備えている。そして、第1固定部材201と第2固定部材202は、図示しないボルトにより軸方向に締め付けられて一体化している。このように、本開示の固定部材は2つ以上の部品から構成されてもよく、実施形態1で示した形状に限定されない。
【0050】
変形例1の出力軸2Aは、第1連結部21(図2参照)に代えて、軸状の第1連結軸21Aを有している点で、実施形態1と相違している。同様に、変形例1の入力軸3Aは、第2連結部30(図2参照)に代えて、軸状の第2連結軸30Aを有している点で、実施形態1と相違している。また、第1連結軸21Aと第2連結軸30Aには、それぞれ軸方向に延在する貫通孔203、204が形成されている。貫通孔203、204には、電気配線等が配置される。このように、本開示の出力軸と入力軸は実施形態1で示した形状に限定されない。
【0051】
(変形例2)
図10は、変形例2の動力伝達装置を軸方向と直交する方向に切った断面図であり、詳細には、図11のX-X線矢視断面図である。図11は、変形例2の動力伝達装置を軸方向に切った断面図であり、詳細には、図10のXI-XI線矢視断面図である。図12は、変形例2の動力伝達装置において入力軸に第1回転方向へのトルクが入力された場合の図である。
【0052】
図10に示すように、変形例2の動力伝達装置100Bは、複数のコイルばね(弾性体)50を有している点で、変形例1と相違する。コイルばね50は、被押圧面25と円筒ころ4との間に配置されている。また、コイルばね50は、自然長よりも縮められた状態で配置されている。つまり、コイルばね50は圧縮ばねであり、円筒ころ4はコイルばね50により周方向の内側に向かって常時付勢されている。これによれば、出力軸2Bに外力が入力しなくても円筒ころ4が外輪部10の内周面13とカム面27との挟まった状態となり、出力軸2Bの回転が規制される。なお、実施形態1では、外力により出力軸2が少し回転した後に出力軸2の回転が規制される。つまり、実施形態1では出力軸2Bの周方向のガタつきがある。一方で、変形例2によれば、出力軸2Bの周方向のガタつきが抑制される。このため、出力軸2Bに連結される他の部品の位置及び姿勢が保持される。
【0053】
また、図10に示すように、変形例2の出力軸2Bは、穴51が被押圧面25に形成されている点で、変形例1の出力軸2Aと相違する。この穴51は、コイルばね50の一部が収容されている。図11に示すように、穴51は、コイルばね50に対応して円形状に形成されている。図12に示すように、入力軸3Aにトルクが入力されて押圧部32が周方向に移動した場合、コイルばね50は、被押圧面25と円筒ころ4との間で圧縮荷重を受けて縮む。そして、コイルばね50は、縮んだ状態で穴51の中に全てが収容される。この結果、円筒ころ4が被押圧面25に当接する。そして、円筒ころ4が被押圧面25に当接した状態で内輪部20が押圧され、出力軸2Bが回転する。以上から、トルクの伝達時、円筒ころ4と被押圧面25の間にコイルばね50が介在しないようになっている。
【0054】
以上、変形例2について説明したが、本開示は、コイルばね50以外の弾性体を用いて円筒ころ4を付勢してもよい。また、変形例2では、弾性体(圧縮ばね)を被押圧面25と円筒ころ4との間に配置した例を挙げたが、本開示は、弾性体を押圧面33と円筒ころ4との間に配置してもよい。なお、弾性体を押圧面33と円筒ころ4との間に配置する場合には、弾性体は、圧縮ばねでなく、円筒ころ4を押圧面33の方に付勢する引っ張りばねを用いる必要がある。
【0055】
(変形例3)
図13は、変形例3の動力伝達装置を軸方向と直交する方向に切った断面図である。図13に示すように、変形例3の動力伝達装置100Cの出力軸2Cは、穴51の代わりに貫通孔51Cが形成されている点で、変形例2と相違する。貫通孔51Cは、被押圧面25の背面側にある他の凹面23の被押圧面25を貫通している。つまり、貫通孔51Cは、周方向に隣り合う凹面23の内部同士を連通している。
【0056】
変形例3の動力伝達装置100Cは、コイルばね50に代えて長尺状のコイルばね50Cを用いている点で変形例2と相違する。コイルばね50Cの長さ方向の中央部が貫通孔51Cに配置されている。そして、コイルばね50Cの両端部は、異なる凹面23に配置された2つの円筒ころ4を付勢している。この変形例3であっても、変形例2と同様に出力軸2Cの周方向のガタつきが抑制される。
【0057】
(変形例4)
図14は、変形例4の動力伝達装置を軸方向に切った断面図である。図15は、図14の矢印XVの方向から視た側面図である。図14に示すように、変形例4の動力伝達装置100Dは、摩擦部160を備えている点で、変形例2と相違する。摩擦部160は、出力軸2Bに対し当接して摩擦力を発揮する。変形例4の摩擦部160は、摩擦板60と皿ばね61とを備えている。
【0058】
摩擦板60は、基材となるプレート62と、プレート62の第1方向X1の面に貼られた摩擦係数が高い摩擦材63と、を備えている。摩擦板60は、図15に示すように、環状に形成されている。そして、摩擦材63は、出力軸2Bの内輪部20の第2方向X2の側面220に当接している。
【0059】
皿ばね61は、第2固定部材202の内フランジ206と摩擦板60との間に配置されている。皿ばね61は、軸方向に付勢力を発揮する状態で組み付けられている。よって、摩擦材63は、皿ばね61に第1方向X1に押圧され、内輪部20の側面220に対し高い摩擦力を発揮している。
【0060】
次に変形例4の動力伝達装置100Dの動作について説明する。例えば入力軸3Aに第1回転方向L1のトルクが入力された場合、押圧部32が第1回転方向L1に移動する。そして、第1押圧面133が第1円筒ころ41を押圧する。これにより、第1円筒ころ41と第1被押圧面125との間にあるコイルばね50が圧縮し、コイルばね50の付勢力が大きくなる。
【0061】
仮に摩擦板60が内輪部20に押し付けられていないと、コイルばね50の大きくなった付勢力により内輪部20が第1回転方向L1に回転する可能性がある。つまり、第1円筒ころ41が第1被押圧面125に当接しない可能性がある。一方で、変形例4によれば、摩擦板60が内輪部20に押し付けられているため、内輪部20が回転し難い。つまり、コイルばね50の付勢力が大きくなっても内輪部20が第1回転方向L1に回転し難い。よって、第1回転方向L1に移動する第1円筒ころ41は第1被押圧面125に確実に当接し、出力軸2Aの内輪部20にトルクが伝達される。
【0062】
以上、変形例4について説明した。なお、変形例4では、摩擦部160が摩擦板60と皿ばね61とから構成される例を挙げたが、本開示は、摩擦部160が摩擦板60のみから構成されたり、皿ばね61のみから構成されたりしてもよし、摩擦板60と皿ばね61以外の構成であってもよい。また、摩擦板60を押圧する部材として、皿ばね61を用いているが、本開示は他の弾性体であってもよい。
【0063】
(変形例5)
図16は、変形例5の動力伝達装置を軸方向に切った断面図である。図17は、変形例5の動力伝達装置の一部を拡大した拡大図である。変形例5の動力伝達装置100Eは、押圧面33Eの形状を変更している点で、変形例2と相違する。詳細には、押圧面33Eは、仮想線K4の外側に配置される外側面331と、仮想線K4の内側に配置される内側面332と、を有している。なお、仮想線K4は、中心線O1を中心とする円である。また、仮想線K4は、内周面13とカム面27との間に挟まった状態の円筒ころ4の中心O2を通っている。
【0064】
内側面332は、仮想線K1(図3参照)に沿って延在している。外側面331は、仮想線K1(図3参照)よりも周方向内側に突出している。よって、押圧面33Eのうち円筒ころ4と当接する部分は、内側面332ではなく、外側面331となっている。また、外側面331は、仮想線K1に対して径方向内側に傾倒している。よって、図17に示すように、入力軸3Aにトルクが入力され、押圧面33Eが円筒ころ4を挟んで内輪部20を押圧する場合、外側面331と被押圧面25とが略平行となっている。
【0065】
ここで、図12に示すように、実施形態1や変形例1等の押圧面33は、仮想線K1(図3参照)に沿っている。そして、押圧面33の押圧力F1は、被押圧面25の法線ベクトルF2以外に、径方向外側を向く成分F3を含んでいる。よって、押圧部32から内輪部20に伝達されるトルクの損失量が大きい。一方で、変形例5によれば、押圧面33Eが押圧する方向のベクトルFは、被押圧面25の法線ベクトルとなっている。よって、押圧部32から内輪に伝達されるトルク損失量が極めて小さく、効率良くトルクが伝達される。
【0066】
以上、変形例5まで説明したが、上記した動力伝達装置は、外輪部10が固定部材1により構成され、内輪部20が出力軸2により構成されたいわゆる内カム構造を適用したものを挙げているが、本開示は、内輪部が固定部材1により構成され、外輪部が出力軸2により構成されたいわゆる外カム構造であってもよい。以下、外カム構造に適用した動力伝達装置を簡単に説明する。
【0067】
(変形例6)
図18は、変形例6の動力伝達装置を軸方向と直交する方向に切った断面図であり、詳細には図19のXVIII-XVIII線矢視断面図である。図19は、変形例6の動力伝達装置を軸方向に切った断面図であり、詳細には図18のXIX-XIX線矢視断面図である。図18に示すように、変形例6の動力伝達装置100Fは、固定部材1Fと、出力軸2Fと、入力軸3Fと、複数の円筒ころ4と、を備えている。なお、円筒ころ4は、実施形態1と同じため、同じ符号を付している。
【0068】
図19に示すように、固定部材1Fは、内輪部10Fと、外フランジ部11Fと、内フランジ部12Fと、を有している。図18に示すように、内輪部10Fの外周面(円筒面)14Fは、中心線O1を中心に円形状に形成されている。外フランジ部11F及び内フランジ部12Fは、それぞれ内輪部10Fの第2方向X2の端部に配置されている。内フランジ部12Fには、貫通孔11aが形成されている。よって、内フランジ部12Fを図示しないボルトで締め付けることで、動力伝達装置100Fを他の部品に固定することができる。
【0069】
出力軸2Fは、外輪部20Fと、フランジ121と、を有している。外輪部20Fの外周面124は、動力伝達装置100(出力軸2F)からトルクを伝達する他の部品101が嵌合する嵌合面となっている。フランジ121は、部品101の第1方向X1の端面が当接している。外輪部20Fの内周側であって、第1方向X1と第2方向X2の端部には、止め輪7、8が設けられている。この止め輪7、8により、固定部材1Fと出力軸2Fが軸方向に挟まれている。これにより、固定部材1Fと出力軸2Fと入力軸3Fが分離しないように組み立てられている。
【0070】
図18に示すように、外輪部20Fの内周面(対向面)122は、内輪部10Fの外周面14Fに対向する対向面である。外輪部20Fの内周面122は、内輪部10Fの外周面14Fに対し、周方向に摺動可能に当接している。
【0071】
外輪部20Fの内周面122には、径方向外側に窪む凹面23Fが6つ形成されている。凹面23Fは、底面24Fと、被押圧面25Fと、が形成されている。底面24Fは、中央面26Fと、カム面27Fと、が形成されている。
【0072】
カム面27Fと、内輪部10Fの外周面14Fとの間には、円筒ころ4が配置される。中心線O1からカム面27Fまでの径は、中央面26Fから被押圧面25Fに近づくにつれて次第に大きくなるように形成されている。つまり、内輪部10Fの外周面14Fとカム面27Fとの間の距離は、被押圧面25に近づくにつれて次第に大きくなっている。よって、円筒ころ4が中央面26F寄りに移動すると、カム面27Fと外周面13Fとの間に円筒ころ4が挟まる。一方で、円筒ころ4が被押圧面25F寄りに移動すると、カム面27Fと外周面13Fとの間に円筒ころ4が挟まらずに遊嵌した状態となる。
【0073】
図19に示すように、入力軸3Fは、第2連結部30Fと、第2連結部30Fから径方向外側に延在する本体部31Fと、本体部31Fから第2方向X2に突出する複数の押圧部32Fと、を有している。第2連結部30Fの内周面は、動力伝達装置(入力軸)100Fにトルクを伝達する他の部品102が嵌合する嵌合面となっている。
【0074】
図19に示すように、本体部31Fの外周面は、外輪部20Fの内周面122に対して周方向に摺動可能に当接している。また、本体部31Fは、凹面23Fの内部を第1方向X1から覆っている。このため、円筒ころ4は、凹面23Fの内部から第1方向X1に脱落しない。
【0075】
図18に示すように押圧部32Fは、凹面23Fの内部であり、かつ、中央面26Fの内周側に配置されている。よって、入力軸3Fにトルクが伝達されて回転すると、押圧部32Fの押圧面33Fが円筒ころ4を介して被押圧面25Fを押圧する。これにより外輪部20Fにトルクが伝達され、出力軸2Fが回転する。以上、変形例6の動力伝達装置100Fであっても、実施形態1と同じ作用効果を生じる。
【0076】
なお、本開示は、以下のような構成の組み合わせであってもよい。
(1)
径方向内側又は径方向外側を向く円筒面を有する固定部材と、
前記円筒面と対向する対向面を有する出力軸と、
前記円筒面と前記対向面との間に配置された少なくとも1つ以上の押圧部を有する入力軸と、
前記円筒面と前記対向面との間であり、かつ前記押圧部に対し周方向の両側に配置された一対の転動体と、
を備え、
前記対向面には、径方向に窪み、内部に前記押圧部と一対の前記転動体が収容される凹面が形成され、
前記凹面は、
底面と、
前記底面の前記周方向の端部から径方向に延在し、前記周方向を向く一対の被押圧面と、
を有し、
前記押圧部の前記周方向の面は、前記転動体を介して前記被押圧面を押圧する押圧面であり、
前記底面は、
前記凹面の前記周方向の中央部に位置し、前記円筒面との間に前記押圧部が配置される中央面と、
前記凹面の前記周方向の両端部に位置し、前記円筒面との間に前記転動体が配置される一対のカム面と、
を有し、
前記カム面は、前記中央面から前記被押圧面に近づくにつれて次第に前記円筒面との間の距離が大きくなり、
前記カム面のうち前記中央面寄りの部分は、前記円筒面との間の距離が前記転動体の直径よりも小さく、
前記カム面のうち前記被押圧面寄りの部分は、前記円筒面との間の距離が前記転動体の直径よりも大きい
動力伝達装置。
(2)
前記転動体を付勢する弾性体を備え、
前記弾性体は、前記被押圧面と前記転動体との間に配置され、前記転動体を前記押圧面の方に付勢する圧縮ばね、又は前記押圧面と前記転動体との間に配置され、前記転動体を前記押圧面の方に引っ張る引っ張りばねである
(1)に記載の動力伝達装置。
(3)
前記出力軸は、前記円筒面の中心線と平行な軸方向を向く側面を有し、
前記側面を当接して摩擦力を発揮する摩擦部を備えている
を備えている
(2)に記載の動力伝達装置。
(4)
前記円筒面の中心線を中心とし、かつ前記円筒面と前記カム面との間に挟まった状態の前記転動体の中心を通る仮想の円を第1仮想円とし、
前記押圧面は、
前記第1仮想円よりも径方向の内側に配置された内側面と、
前記第1仮想円よりも径方向の外側に配置された外側面と、
を有し、
前記外側面は、前記内側面よりも突出している
(1)から(3)のいずれか1つに記載の動力伝達装置。
(5)
前記固定部材は、内周面が前記円筒面となっている環状の外輪部を有し、
前記出力軸は、前記外輪部の内側に配置され、外周面が前記対向面となっている内輪部を有している
(1)から(4)のいずれか1つに記載の動力伝達装置。
(6)
前記固定部材は、外周面が前記円筒面となっている内輪部を有し、
前記出力軸は、内部に前記内輪部が配置され、内周面が前記対向面となっている環状の外輪部を有している
(1)から(4)のいずれか1つに記載の動力伝達装置。
【符号の説明】
【0077】
1、1F 固定部材
2、2F 出力軸
3 入力軸
4 円筒ころ
10 外輪部
10F 内輪部
13 内周面(円筒面)
20 内輪部
20F 外輪部
22 外周面(対向面)
23、23F 凹面
24、24F 底面
25、25F 被押圧面
26、26F 中央面
27、27F カム面
31 本体部
32 押圧部
33 押圧面
41 第1円筒ころ
42 第2円筒ころ
100、100A、100B、100C、100D、100E、100F 動力伝達装置
122 内周面(対向面)
125 第1被押圧面
127 第1カム面
133 第1押圧面
160 摩擦部
227 第2カム面
225 第2被押圧面
233 第2押圧面
【要約】
【課題】トルク損失の低減を図れる動力伝達装置を提供する。
【解決手段】動力伝達装置は、円筒面を有する固定部材と、円筒面と対向する対向面を有する出力軸と、円筒面と対向面との間に配置された押圧部を有する入力軸と、押圧部に対し周方向の両側に配置された一対の転動体を備える。対向面には、内部に押圧部と一対の転動体が収容される凹面が形成される。凹面は、底面と一対の被押圧面とを有している。押圧部の周方向の面は、転動体を介して被押圧面を押圧する押圧面である。底面は、周方向の中央部に位置する中央面と、周方向の両端部に位置する一対のカム面を有する。カム面は、中央面から被押圧面に近づくにつれて次第に円筒面との間の距離が大きい。カム面のうち中央面寄りの部分は、円筒面との間の距離が転動体の直径よりも小さく、被押圧面寄りの部分は、円筒面との間の距離が転動体の直径よりも大きい。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19