(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】炭化水素原料の水素化処理のための層状触媒反応器システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
C10G 65/12 20060101AFI20241120BHJP
C10G 45/04 20060101ALI20241120BHJP
C10G 47/10 20060101ALI20241120BHJP
B01J 23/42 20060101ALI20241120BHJP
B01J 23/44 20060101ALI20241120BHJP
B01J 23/888 20060101ALI20241120BHJP
B01J 23/883 20060101ALI20241120BHJP
B01J 23/882 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
C10G65/12
C10G45/04 Z
C10G47/10
B01J23/42 M
B01J23/44 M
B01J23/888 M
B01J23/883 M
B01J23/882 M
(21)【出願番号】P 2024508715
(86)(22)【出願日】2022-06-28
(86)【国際出願番号】 US2022035360
(87)【国際公開番号】W WO2023018487
(87)【国際公開日】2023-02-16
【審査請求日】2024-04-08
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523259215
【氏名又は名称】シェブロン・ユー.エス.エイ. インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】ブライト,アクセル
(72)【発明者】
【氏名】オウヤン,シャオイン
(72)【発明者】
【氏名】クパーマン,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】マエセン,テオドルス・ルドビクス・マイケル
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0136646(US,A1)
【文献】国際公開第2022/046623(WO,A1)
【文献】特表2020-502290(JP,A)
【文献】特表2013-528489(JP,A)
【文献】国際公開第2020/033483(WO,A1)
【文献】特表2019-522076(JP,A)
【文献】特表2002-503750(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂部から底部に向かって、
(i)1種または複数種の脱金属触媒を含む層、
(ii)1種または複数種の担持水素化処理触媒の層、
(iii)1種または複数種の担持水素化分解触媒の層、
(iv)1種または複数種の自立水素化処理触媒の層、
(v)1種または複数種の担持水素化分解触媒の層、
(vi)1種または複数種の自立水素化処理触媒の層、
(vii)1種または複数種の担持水素化処理触媒の層
の順番で配置された触媒層の垂直床またはスタックを備える層状触媒反応器システムであって、前記1種または複数種の自立水素化処理触媒を含む2つの層の全体積は、前記垂直床における触媒の全体積
の10
~50%であり、
前記1種または複数種の担持水素化分解触媒を含む2つの層の全体積は、前記垂直床における触媒の全体積
の10
~30%である、層状触媒反応器システム。
【請求項2】
前記1種または複数種の自立水素化処理触媒が
、5~9wt%のモリブデン
、21~31wt%のニッケル、およ
び33
~42wt%のタングステンを含む、請求項1に記載の層状触媒反応器システム。
【請求項3】
前記1種または複数種の脱金属触媒が、モリブデン、コバルトおよびニッケルの酸化物が濃縮された合成酸化アルミニウムまたは天然ケイ酸アルミニウムからなる群から選択される、請求項1に記載の層状触媒反応器システム。
【請求項4】
前記1種または複数種の
担持水素化処理触媒が、アルミナ、ゼオライト、非晶質シリカ-アルミナ、およびチタニア-アルミナからなる群から選択される担体材料上の少なくとも1種のVIII族金属および少なくとも1種のVIB族金属を含む触媒からなる群から選択される、請求項1に記載の層状触媒反応器システム。
【請求項5】
前記1種または複数種の担持水素化処理触媒が、PdまたはPtを含む触媒からなる群から選択される、請求項1に記載の層状触媒反応器システム。
【請求項6】
前記1種または複数種の水素化分解触媒が、ニッケル、ニッケル-コバルト-モリブデン、コバルト-モリブデンならびにニッケル-タングステンおよび/またはニッケル-モリブデンを含む触媒からなる群から選択される、請求項1に記載の層状触媒反応器システム。
【請求項7】
前記1種または複数種の水素化分解触媒が、耐火性酸化物材料を含む多孔質担体材料を含む、請求項1に記載の層状触媒反応器システム。
【請求項8】
前記1種または複数種の水素化分解触媒が、ニッケル、コバルト、モリブデンおよび/またはタングステンを含む、請求項1に記載の層状触媒反応器システム。
【請求項9】
頂部から底部に向かって、
(i)1種または複数種の脱金属触媒を含む層、
(ii)1種または複数種の担持水素化処理触媒の層、
(iii)1種または複数種の担持水素化分解触媒の層、
(iv)1種または複数種の自立水素化処理触媒の層、
(v)1種または複数種の担持水素化分解触媒の層、
(vi)1種または複数種の自立水素化処理触媒の層、
(vii)1種または複数種の担持水素化分解触媒の層、
(viii)1種または複数種の自立水素化処理触媒の層、
(ix)1種または複数種の担持水素化処理触媒の層
の順番で配置された触媒層の垂直床またはスタックを備える層状触媒反応器システムであって、前記1種または複数種の自立水素化処理触媒を含む3つの層の全体積は、前記垂直床における触媒の全体積
の9~45%であり、
前記1種または複数種の担持水素化分解触媒を含む3つの層の全体積は、前記垂直床における触媒の全体積
の15
~30%である、層状触媒反応器システム。
【請求項10】
前記1種または複数種の自立水素化処理触媒が
、5~9wt%のモリブデン
、21~31wt%のニッケル、およ
び33
~42wt%のタングステンを含む、請求項9に記載の層状触媒反応器システム。
【請求項11】
前記1種または複数種の脱金属触媒が、モリブデン、コバルトおよびニッケルの酸化物が濃縮された合成酸化アルミニウムまたは天然ケイ酸アルミニウムからなる群から選択される、請求項9に記載の層状触媒反応器システム。
【請求項12】
前記1種または複数種の
担持水素化処理触媒が、アルミナ、ゼオライト、非晶質シリカ-アルミナ、およびチタニア-アルミナからなる群から選択される担体材料上の少なくとも1種のVIII族金属および少なくとも1種のVIB族金属を含む触媒からなる群から選択される、請求項9に記載の層状触媒反応器システム。
【請求項13】
前記1種または複数種の担持水素化処理触媒が、PdまたはPtを含む触媒からなる群から選択される、請求項9に記載の層状触媒反応器システム。
【請求項14】
前記1種または複数種の水素化分解触媒が、ニッケル、ニッケル-コバルト-モリブデン、コバルト-モリブデンならびにニッケル-タングステンおよび/またはニッケル-モリブデンを含む触媒からなる群から選択される、請求項9に記載の層状触媒反応器システム。
【請求項15】
前記1種または複数種の水素化分解触媒が、耐火性酸化物材料を含む多孔質担体材料を含む、請求項9に記載の層状触媒反応器システム。
【請求項16】
前記1種または複数種の水素化分解触媒が、ニッケル、コバルト、モリブデンおよび/またはタングステンを含む、請求項9に記載の層状触媒反応器システム。
【請求項17】
炭化水素原料の水素化処理のための方法であって、(i)金属、硫黄、窒素およびオレフィンを含む汚染物質を含有する炭化水素原料を、水素の存在下で層状触媒反応器システムと接触させて、前記炭化水素原料よりもより低い含量の金属、硫黄、窒素およびオレフィンを有する炭化水素生成物を生成するステップと;(ii)前記炭化水素原料を、前記層状触媒反応器システムの層に順次頂部から底部に向けて垂直に通過させるステップと;(iii)前記層状触媒反応器システムの前記底部から前記炭化水素生成物を回収するステップとを含み、
前記層状触媒システムは、頂部から底部に向かって、
(i)1種または複数種の脱金属触媒を含む層、
(ii)1種または複数種の担持水素化処理触媒の層、
(iii)1種または複数種の担持水素化分解触媒の層、
(iv)1種または複数種の自立水素化処理触媒の層、
(v)1種または複数種の担持水素化分解触媒の層、
(vi)1種または複数種の自立水素化処理触媒の層、
(vii)1種または複数種の担持水素化処理触媒の層
の順番で配置された触媒層の垂直床またはスタックを備え、前記1種または複数種の自立水素化処理触媒を含む2つの層の全体積は、前記垂直床における触媒の全体積
の10
~50%であり、
前記1種または複数種の担持水素化分解触媒を含む2つの層の全体積は、前記垂直床における触媒の全体積
の10
~30%である;
あるいは
前記層状触媒反応器システムは、頂部から底部に向かって、
(i)1種または複数種の脱金属触媒を含む層、
(ii)1種または複数種の担持水素化処理触媒の層、
(iii)1種または複数種の担持水素化分解触媒の層、
(iv)1種または複数種の自立水素化処理触媒の層、
(v)1種または複数種の担持水素化分解触媒の層、
(vi)1種または複数種の自立水素化処理触媒の層、
(vii)1種または複数種の担持水素化分解触媒の層、
(viii)1種または複数種の自立水素化処理触媒の層、
(ix)1種または複数種の担持水素化処理触媒の層
の順番で配置された触媒層の垂直床またはスタックを備え、前記1種または複数種の自立水素化処理触媒を含む3つの層の全体積は、前記垂直床における触媒の全体積
の9~45%であり、
前記1種または複数種の担持水素化分解触媒を含む3つの層の全体積は、前記垂直床における触媒の全体積
の15
~30%である、方法。
【請求項18】
層状触媒反応器システムの動作温度が
、371~413℃
(700
~775°F)の範囲内である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記方法の重量空間速度(WHSV)が
、0.4
~1.1/hrの範囲内である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記方法の液空間速度(LHSV)が
、0.3
~0.9/hrの範囲内である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記層状触媒反応器システムの正規化温度が、前記方法の間
、410℃(770°F)未満を維持する、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[0001]本出願は、2021年08月13日に出願された米国特許出願第17/401,757号の優先権を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002]本開示は、炭化水素改質における使用のための層状触媒反応器システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]触媒水素処理は、望ましくない不純物を除去し、および/または原料を改善された生成物に変換するために、炭素質原料をより高い温度および圧力で水素および触媒と接触させる石油精製プロセスを指す。水素処理プロセスの例は、水素化処理、水素化脱金属、水素化分解および水素化異性化プロセスを含む。
【0004】
[0004]水素化処理プロセスは、最終生成物の仕様の制御またはさらなる処理のための供給物の調製のために、硫黄、窒素および酸素等の不純物を除去するのに使用される。炭素質原料の水素化処理に使用される担持混合金属触媒は、ニッケル、モリブデン、タングステンおよび/またはコバルトの組合せが含浸された多孔質アルミナマトリックスを含む。担体で希釈されていない自立混合金属硫化物触媒は、担持混合金属硫化物触媒と比較してより多くの金属硫化物を、ひいてはより多くの水素化粉末をより小さい反応器容積内に充填する。
【0005】
[0005]しかしながら、自立触媒は、担持触媒よりも、局所的「暴走」温度上昇の影響を受けやすい。そのような暴走温度上昇は、水素化触媒がその周囲により吸収され得る熱よりも多くの熱を発生して、床または反応器温度より熱くなった場合に生じる。生じた温度上昇は、水素消費を加速させ、これがさらに、水素化(水素消費)速度が水素供給速度を超えるまで触媒温度を上昇させる。その段階で、触媒は供給物を脱水素化し始め、コークスおよび水素を発生させる。このプロセスは、不可逆的なコークス不活性化をもたらす。
【0006】
[0006]担持水素処理触媒は、典型的には、非晶質酸化物および/または結晶性微細孔材料(例えばゼオライト)からなる担体またはキャリア上に堆積された1種または複数種の金属を含む。担持水素化処理触媒の好適なサイズの頂部層は、過度の水素化活性から自立触媒の底部層を保護するために使用され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[0007]上記を鑑みて、水素化処理プロセスの活性および効率を増加させながら暴走温度上昇のリスクを最小限にする、改善された水素化処理触媒システムを提供することが、依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0008]この概要は、以下の詳細な説明でさらに説明される簡略化された形態の様々な概念を導入するために提供される。この概要は、請求される主題の必要なまたは必須の特徴を特定することを意図せず、また概要は、請求される主題の範囲を限定することを意図しない。
【0009】
[0009]本開示の態様は、炭化水素原料の水素化処理のための層状触媒反応器システムおよび方法に関する。
[0010]一態様において、層状触媒反応器システムは、頂部から底部に向かって、
[0011](i)垂直床における触媒の全体積の約5~約25%である1種または複数種の脱金属触媒(demetallization catalysts)を含む層;
[0012](ii)垂直床における触媒の全体積の約17~約27%である1種または複数種の担持水素化処理触媒(supported hydrotreating catalysts)の層;
[0013](iii)垂直床における触媒の全体積の約5~約15%である1種または複数種の担持水素化分解触媒(supported hydrocracking catalysts)の層;
[0014](iv)垂直床における触媒の全体積の約5~約25%である1種または複数種の自立水素化処理触媒(self-supported hydrotreating catalysts)の層;
[0015](v)垂直床における触媒の全体積の約5~約15%である1種または複数種の担持水素化分解触媒の層;
[0016](vi)垂直床における触媒の全体積の約5~約25%である1種または複数種の自立水素化処理触媒の層;
[0017](vii)垂直床における触媒の全体積の約2~約9%である1種または複数種の担持水素化処理触媒の層の順番で配置された触媒層の垂直床またはスタックを備える。
【0010】
[0018]別の態様において、層状触媒反応器システムは、頂部から底部に向かって、
[0019](i)垂直床における触媒の全体積の約5~約25%である1種または複数種の脱金属触媒を含む層;
[0020](ii)垂直床における触媒の全体積の約17~約27%である1種または複数種の担持水素化処理触媒の層;
[0021](iii)垂直床における触媒の全体積の約5~約10%である1種または複数種の担持水素化分解触媒の層;
[0022](iv)垂直床における触媒の全体積の約3~約15%である1種または複数種の自立水素化処理触媒の層;
[0023](v)垂直床における触媒の全体積の約5~約10%である1種または複数種の担持水素化分解触媒の層;
[0024](vi)垂直床における触媒の全体積の約3~約15%である1種または複数種の自立水素化処理触媒の層;
[0025](vii)垂直床における触媒の全体積の約5~約10%である1種または複数種の担持水素化分解触媒の層;
[0026](vii)垂直床における触媒の全体積の約3~約15%である1種または複数種の自立水素化処理触媒の層;
[0027](viii)垂直床における触媒の全体積の約2~約9%である1種または複数種の担持水素化処理触媒の層の順番で配置された触媒層の垂直床またはスタックを備える。
【0011】
[0028]別の態様において、層状触媒反応器システムは、頂部から底部に向かって、
[0029](i)1種または複数種の脱金属触媒を含む層;
[0030](ii)1種または複数種の担持水素化処理触媒の層;
[0031](iii)1種または複数種の担持水素化分解触媒の層;
[0032](iv)1種または複数種の自立水素化処理触媒の層;
[0033](v)1種または複数種の担持水素化分解触媒の層;
[0034](vi)1種または複数種の自立水素化処理触媒の層;
[0035](vii)1種または複数種の担持水素化処理触媒の層
[0036]の順番で配置された触媒層の垂直床またはスタックを備え、1種または複数種の自立水素化処理触媒を含む2つの層の全体積は、垂直床における触媒の全体積の約10~約50%であり、
[0037]1種または複数種の担持水素化分解触媒を含む2つの層の全体積は、垂直床における触媒の全体積の約10~約30%である。
【0012】
[0038]別の態様において、層状触媒反応器システムは、頂部から底部に向かって、
[0039](i)1種または複数種の脱金属触媒を含む層;
[0040](ii)1種または複数種の担持水素化処理触媒の層;
[0041](iii)1種または複数種の担持水素化分解触媒の層;
[0042](iv)1種または複数種の自立水素化処理触媒の層;
[0043](v)1種または複数種の担持水素化分解触媒の層;
[0044](vi)1種または複数種の自立水素化処理触媒の層;
[0045](vii)1種または複数種の担持水素化分解触媒の層;
[0046](viii)1種または複数種の自立水素化処理触媒の層;
[0047](ix)1種または複数種の担持水素化処理触媒の層
[0048]の順番で配置された触媒層の垂直床またはスタックを備え、1種または複数種の自立水素化処理触媒を含む3つの層の全体積は、垂直床における触媒の全体積の約9~約45%であり、
[0049]1種または複数種の担持水素化分解触媒を含む3つの層の全体積は、垂直床における触媒の全体積の約15~約30%である。
【0013】
[0050]別の態様において、本発明は、炭化水素原料の水素化処理のためのプロセスであって、(i)金属、硫黄、窒素およびオレフィンを含む汚染物質を含有する炭化水素原料を、水素の存在下で本明細書に記載の層状触媒反応器システムと接触させて、炭化水素原料よりも低い含量の金属、硫黄、窒素およびオレフィンを有する炭化水素生成物を生成するステップと;(ii)炭化水素原料を、層状触媒反応器システムの層に順次頂部から底部に向けて垂直に通過させるステップと;(iii)層状触媒反応器システムの底部から炭化水素生成物を回収するステップとを含む方法に関する。
【0014】
[0051]この概要および以下の詳細な説明は、例を提供するものであり、また本開示の単なる例示である。したがって、上記概要および以下の詳細な説明は、限定的であるとみなされるべきではない。本明細書に記載のものに加えて、追加の特徴またはその変形例、例えば、詳細な説明に記載のものの様々な特徴の組合せおよび部分的組合せ等が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】[0052]比較層状触媒反応器システム(水素化分解または自立水素化処理触媒層なし;BSU607-56)による水素化処理プロセスの正規化温度を示すグラフである。
【
図2】[0053]比較層状触媒反応器システム(1つの水素化分解触媒層および1つの自立水素化処理触媒層;BSU607-57)による水素化処理プロセスの正規化温度を示すグラフである。
【
図3】[0054]比較層状触媒反応器システム(1つの水素化分解触媒層および1つの自立水素化処理触媒層;BSU911-160)による水素化処理プロセスの正規化温度を示すグラフである。
【
図4】[0055]比較層状触媒反応器システム(1つの水素化分解触媒層および1つの自立水素化処理触媒層;BSU607-59)による水素化処理プロセスの正規化温度を示すグラフである。
【
図5】[0056]比較層状触媒反応器システム(水素化分解または自立水素化処理触媒層なし;BSU612-37)による水素化処理プロセスの正規化温度を示すグラフである。
【
図6】[0057]比較層状触媒反応器システム(水素化分解または自立水素化処理触媒層なし;BSU 612-38)による水素化処理プロセスの正規化温度を示すグラフである。
【
図7】[0058]比較層状触媒反応器システム(1つの水素化分解触媒層および1つの自立水素化処理触媒層;BSU607-60)による水素化処理プロセスの正規化温度を示すグラフである。
【
図8】[0059]例示的層状触媒反応器システム(2つの水素化分解触媒層および2つの自立水素化処理触媒層;BSU612-40)による水素化処理プロセスの正規化温度を示すグラフである。
【
図9】[0060]比較層状触媒反応器システム(水素化分解または自立水素化処理触媒層なし;BSU612-39)による水素化処理プロセスの正規化温度を示すグラフである。
【
図10】[0061]比較層状触媒反応器システム(1つの水素化分解触媒層および1つの自立水素化処理触媒層;BSU607-61)による水素化処理プロセスの正規化温度を示すグラフである。
【
図11】[0062]例示的層状触媒反応器システム(2つの水素化分解触媒層および2つの自立水素化処理触媒層;BSU612-41)による水素化処理プロセスの正規化温度を示すグラフである。
【
図12】[0063]例示的層状触媒反応器システム(2つの水素化分解触媒層および2つの自立水素化処理触媒層;BSU911-61)による水素化処理プロセスの正規化温度を示すグラフである。
【
図13】[0064]様々な供給物に対するディーゼル収率対水素化分解変換率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
定義
[0065]本明細書において使用される用語をより明確に定義するために、以下の定義が提供される。別段に指定されない限り、以下の定義は本開示に適用され得る。本開示において用語が使用されているが本明細書に具体的に定義されていない場合、その定義が任意の他の開示もしくは本明細書において適用される定義と矛盾しない限り、またはその定義が適用される任意の請求項を不明確化もしくは無効化しない限り、IUPAC Compendium of Chemical Terminologyからの定義が適用され得る。参照により本明細書に組み込まれるいずれかの文献によって提供されるいずれかの定義または用法が本明細書に記載の定義または用法と矛盾する場合、本明細書に記載の定義または用法が優先される。
【0017】
[0066]組成物および方法は、様々な構成要素またはステップを「含む(comprising)」という用語で説明されるが、組成物および方法はまた、別段に指定されない限り、様々な構成要素またはステップ「から本質的になる」またはそれら「からなる」ことが可能である。
【0018】
[0067]「a」、「an」および「the」という用語は、複数の可能性、例えば少なくとも1つを含むように意図される。「含む(including)」、「有する(with)」、および「有する(having)」は、別段に指定されない限り、本明細書において使用される場合、含む(comprising)(すなわち非制限的言語)として定義される。
【0019】
[0068]様々な数値範囲が本明細書において開示される。出願人が任意の種類の範囲を開示または請求する場合、出願人の意図は、別段に指定されない限り、範囲の端点、ならびにそれに包含される任意の部分範囲および部分範囲の組合せを含む、そのような範囲が合理的に包含し得るそれぞれの可能な数字を個々に開示または請求することである。例えば、本明細書において開示される範囲の全ての数値端点は、条件により除外されない限り概数である。
【0020】
[0069]値または範囲は、本明細書において、「約」、「約」1つの具体的な値から、および/または「約」別の具体的な値までとして表現され得る。そのような値または範囲が表現される場合、開示される他の実施形態は、列挙された特定の値、1つの具体的な値から、および/または他の具体的な値までを含む。同様に、前に置かれる語「約」を使用することにより、値を近似値として表現する場合、具体的な値が別の実施形態を形成するものと理解されよう。さらに、いくつかの値が開示されていること、ならびに、各値はまた、本明細書において、値そのものに加えて「約」その具体的値としても開示されることが理解されよう。別の態様において、「約」という用語の使用は、示された値の±20%、示された値の±15%、示された値の±10%、示された値の±5%、示された値の±3%、または示された値の±1%を意味する。
【0021】
[0070]「周期表」は、2007年6月22日付けのIUPAC元素周期表のバージョンを指し、周期表の族の番号付けスキームは、Chemical and Engineering News、63(5)、27(1985)に記載されている通りである。
【0022】
[0071]「炭化水素質」および「炭化水素」は、炭素および水素原子のみを含有する化合物を指す。存在する場合には、炭化水素中の具体的な基の存在を示すために、他の識別子が使用され得る(例えば、ハロゲン化炭化水素は、炭化水素中の等しい数の水素原子を置き換える1種または複数種のハロゲン原子の存在を示す)。
【0023】
[0072]「水素処理」または「水素化変換」は、望ましくない不純物を除去し、および/または原料を所望の生成物に変換するために、炭素質原料をより高い温度および圧力で水素および触媒と接触させるプロセスを指す。そのようなプロセスは、これらに限定されないが、メタン化、水性ガスシフト反応、水素化、水素化処理、水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化脱金属、水素化脱芳香化、水素化異性化、水素化脱ろう、および選択的水素化分解を含む水素化分解を含む。水素処理の種類および反応条件に応じて、水素処理の生成物は、改善された粘度、粘度指数、飽和物含量、低温特性、揮発性および脱分極等の改善された物理的特性を示し得る。
【0024】
[0073]「水素化処理」は、液体石油留分から窒素、硫黄、酸素、および金属等の汚染物質を除去するために使用される水素化プロセスを指す。ある特定の実施形態において、水素化処理プロセスは、窒素、硫黄、酸素、および/または金属含有汚染物質の少なくとも約90%を除去する。ある特定の実施形態において、水素化処理プロセスは、オレフィンおよび芳香族を飽和化合物に変換する。
【0025】
[0074]「水素化分解」は、水素化および脱水素化が炭化水素の熱分解/断片化、例えばより重質の炭化水素のより軽質の炭化水素への変換を伴うプロセスを指す。
[0075]触媒(例えば活性相材料)に関する「担持」という用語は、典型的には高表面積を有する固体である従来の材料に付着した触媒を指す。担体材料は、不活性であってもよく、または触媒反応に関与してもよい。担体材料は、多孔質または非多孔質であってもよい。典型的な触媒担体は、様々な種類の炭素、アルミナ、シリカ、およびシリカ-アルミナ、例えば非晶質シリカアルミネート、ゼオライト、アルミナ-ボリア、シリカ-アルミナ-マグネシア、シリカ-アルミナ-チタニア、ならびにそれらに他のゼオライトおよび他の複合酸化物を添加することにより得られる材料を含む。
【0026】
[0076]触媒に関する「自立」という用語は、非担持触媒または他の材料に付着していない触媒を指す。
[0077]「触媒粒子」、「触媒組成物」、「触媒混合物」、「触媒系」等の用語は、組成物の初期出発成分を包含し、またこれらの初期出発成分の接触からどのような生成物(複数種可)も生じ得、これは、不均一および均一触媒系または組成物の両方を含む。
【0027】
[0078]いかなる理由でも出願人が本開示の全範囲未満を請求すること、例えば出願人が出願日時点で気付いていない可能性がある参考文献を説明することを選択する場合、出願人は、範囲に従って、または任意の同様の様式で請求され得る、群内の任意の部分範囲または部分範囲の組合せを含む値または範囲の任意のそのような群の任意の個々のメンバーを条件付けるまたは除外する権利を留保する。さらに、出願人は、請求された群の任意のメンバーを条件付けるまたは除外する権利を留保する。
【0028】
[0079]本明細書に記載のものと同様または等価のいかなるプロセスおよび材料も、発明の実践または試験に使用することができるが、典型的なプロセスおよび材料が本明細書において説明される。
【0029】
[0080]本明細書において言及される全ての刊行物および特許は、例えば、現在記載されている発明に関連して使用され得る刊行物に記載されている構成および方法論を説明および開示する目的で、参照により本明細書に組み込まれる。文書全体で議論される刊行物は、本出願の出願日前のその開示についてのみ提供される。本明細書において、本発明者らが以前の発明によるそのような開示に先行する権利がないことを認めていると解釈されるものはない。
【0030】
詳細な説明
[0081]本開示は、以下の説明において記載される、または図面において例示される構成要素の構造および配置の詳細に用途が限定されないことを理解されたい。
【0031】
[0082]本開示は、概して、炭化水素原料の水素化変換のための層状触媒反応器システムおよび方法に関する。本明細書において開示される層状触媒反応器システムは、担持触媒および自立触媒の交互する別個の層の構成を備え、これは、触媒の体積を増加させることなく水素化処理の活性および有効性を増加させる。特に、層状触媒反応器システムおよび方法は、極めて活性な自立水素化処理触媒層の層間に担持水素化処理および水素化分解触媒を層状化することで、非単調な水素化活性を達成する。ある特定の実施形態において、自立水素化処理触媒は、混合金属硫化物触媒である。本明細書において開示される反応器内の触媒層の構成は、リスクを軽減するために使用され得る。
【0032】
[0083]2つ以上の自立(または非担持)水素化処理触媒層が担持触媒層の間に挟まれた例示的層状触媒反応器システムは、担持触媒層が単一の自立触媒層の上にある、担持および自立触媒の総体積が同じ同等のシステムよりも優れている。
【0033】
[0084]層状触媒反応器システムは、炭化水素原料の水素化変換に、または石油原料の品質向上のためのプロセスに有用である。本明細書において開示される方法は、水素および層状触媒反応器システムの存在下、高温および高圧条件で炭化水素原料を反応させて、原料を汚染物質レベルが低減されたより低分子量の生成物に変換するために使用され得る。水素化変換プロセスは、炭化水素原料の水素化処理または水素化分解に使用されるものであり、例えば、水素化、脱硫、脱窒素、および金属の除去を含み得る。一実施形態において、水素化変換プロセスは、炭化水素原料の水素化分解および/または水素化処理を含む。
【0034】
[0085]層状触媒反応器システム
[0086]一態様において、本発明は、金属、硫黄、窒素およびオレフィンを含む汚染物質を含有する炭化水素原料を水素化処理するための層状触媒反応器システムに関する。層状触媒反応器システムは、金属、硫黄および窒素等の不純物を除去するために、ならびにオレフィンおよび芳香族化合物を飽和させるために使用され得る。
【0035】
[0087]実施形態によれば、層状触媒反応器システムは、頂部から底部に向かって、
[0088](i)垂直床における触媒の全体積の約5~約25%である1種または複数種の脱金属触媒を含む層;
[0089](ii)垂直床における触媒の全体積の約17~約27%である1種または複数種の担持水素化処理触媒の層;
[0090](iii)垂直床における触媒の全体積の約5~約15%である1種または複数種の担持水素化分解触媒の層;
[0091](iv)垂直床における触媒の全体積の約5~約25%である1種または複数種の自立水素化処理触媒の層;
[0092](v)垂直床における触媒の全体積の約5~約15%である1種または複数種の担持水素化分解触媒の層;
[0093](vi)垂直床における触媒の全体積の約5~約25%である1種または複数種の自立水素化処理触媒の層;
[0094](vii)垂直床における触媒の全体積の約2~約9%である1種または複数種の担持水素化処理触媒の層の順番で配置された触媒層の垂直床またはスタックを備える。
【0036】
[0095]本明細書において言及される場合、「垂直床における触媒の全体積」は、垂直床における自立および担持触媒の層を形成する材料の全体積を意味する。
[0096]ある特定の実施形態において、1種または複数種の自立水素化処理触媒の層の1つまたは複数は、垂直床における触媒の全体積の約9~約19%、または約15~約25%である。ある特定の実施形態において、層(iv)は、垂直床における触媒の全体積の約9~約19%である。ある特定の実施形態において、層(vi)は、垂直床における触媒の全体積の約15~約25%である。
【0037】
[0097]ある特定の態様において、層状触媒反応器システムは、頂部から底部に向かって、
[0098](i)垂直床における触媒の全体積の約5~約25%である1種または複数種の脱金属触媒を含む層;
[0099](ii)垂直床における触媒の全体積の約17~約27%である1種または複数種の担持水素化処理触媒の層;
[00100](iii)垂直床における触媒の全体積の約5~約10%である1種または複数種の担持水素化分解触媒の層;
[00101](iv)垂直床における触媒の全体積の約3~約15%である1種または複数種の自立水素化処理触媒の層;
[00102](v)垂直床における触媒の全体積の約5~約10%である1種または複数種の担持水素化分解触媒の層;
[00103](vi)垂直床における触媒の全体積の約3~約15%である1種または複数種の自立水素化処理触媒の層;
[00104](vii)垂直床における触媒の全体積の約5~約10%である1種または複数種の担持水素化分解触媒の層;
[00105](vii)垂直床における触媒の全体積の約3~約15%である1種または複数種の自立水素化処理触媒の層;
[00106](viii)垂直床における触媒の全体積の約2~約9%である1種または複数種の担持水素化処理触媒の層の順番で配置された触媒層の垂直床またはスタックを備える。
【0038】
[00107]ある特定の実施形態において、1種または複数種の自立水素化処理触媒の1つまたは複数の層は、垂直床における触媒の全体積の約4~約10%、または約10~約15%である。ある特定の実施形態において、層(iv)は、垂直床における触媒の全体積の約4~約10%である。ある特定の実施形態において、層(vi)は、垂直床における触媒の全体積の約10~約15%である。ある特定の実施形態において、層(viii)は、垂直床における触媒の全体積の約10~約15%である。
【0039】
[00108]ある特定の実施形態において、層状触媒反応器システムは、頂部から底部に向かって、
[00109](i)1種または複数種の脱金属触媒を含む層;
[00110](ii)1種または複数種の担持水素化処理触媒の層;
[00111](iii)1種または複数種の担持水素化分解触媒の層;
[00112](iv)1種または複数種の自立水素化処理触媒の層;
[00113](v)1種または複数種の担持水素化分解触媒の層;
[00114](vi)1種または複数種の自立水素化処理触媒の層;
[00115](vii)1種または複数種の担持水素化処理触媒の層
[00116]の順番で配置された触媒層の垂直床またはスタックを備え、1種または複数種の自立水素化処理触媒を含む2つの層の全体積は、垂直床における触媒の全体積の約10~約50%であり、
[00117]1種または複数種の担持水素化分解触媒を含む2つの層の全体積は、垂直床における触媒の全体積の約10~約30%である。
【0040】
[00118]ある特定の実施形態において、層状触媒反応器システムは、頂部から底部に向かって、
[00119](i)1種または複数種の脱金属触媒を含む層;
[00120](ii)1種または複数種の担持水素化処理触媒の層;
[00121](iii)1種または複数種の担持水素化分解触媒の層;
[00122](iv)1種または複数種の自立水素化処理触媒の層;
[00123](v)1種または複数種の担持水素化分解触媒の層;
[00124](vi)1種または複数種の自立水素化処理触媒の層;
[00125](vii)1種または複数種の担持水素化分解触媒の層;
[00126](viii)1種または複数種の自立水素化処理触媒の層;
[00127](ix)1種または複数種の担持水素化処理触媒の層
[00128]の順番で配置された触媒層の垂直床またはスタックを備え、1種または複数種の自立水素化処理触媒を含む3つの層の全体積は、垂直床における触媒の全体積の約9~約45%であり、
[00129]1種または複数種の担持水素化分解触媒を含む3つの層の全体積は、垂直床における触媒の全体積の約15~約30%である。
【0041】
[00130]ある特定の実施形態において、1種または複数種の脱金属触媒を含む層の全体積は、垂直床における触媒の全体積の約5~約25%である。ある特定の実施形態において、頂部層は、1種または複数種の脱金属触媒を含む、またはそれらからなる。
【0042】
[00131]ある特定の実施形態において、1種または複数種の担持水素化処理触媒を含む層の全体積は、垂直床における触媒の全体積の約19~約36%である。ある特定の実施形態において、底部層は、1種または複数種の担持水素化処理触媒を含む、またはそれらからなる。ある特定の実施形態において、頂部層の下にありそれに接触する層は、1種または複数種の担持水素化処理触媒を含む、またはそれらからなる。
【0043】
[00132]ある特定の実施形態において、垂直床における触媒の全体積は、約1,416m3(50,000ft3)~約8,495m3(300,000ft3)の範囲内である。ある特定の実施形態において、垂直床は、約1,416m3(50,000ft3)~約8,495m3(300,000ft3)の体積を有する。
【0044】
[00133]例示的な層状触媒反応器システムは、複数のゾーンを備える。垂直床の頂部にある第1のゾーンは脱金属ゾーンであり、脱金属は、1種または複数種の脱金属触媒を含む層内で生じる。脱金属ゾーンは、一般に、炭化水素原料から汚染金属を除去することに関与する。
【0045】
[00134]第1のゾーンの下の第2のゾーンは水素化処理ゾーンであり、水素化処理は、1種または複数種の担持水素化処理触媒を含む層内で生じる。この水素化処理ゾーンは、水素化または飽和により、有機N、有機Sおよび芳香族等の阻害物質を選択的に最小限化するように設計される。このゾーンは、阻害物質に敏感となり得るその後の水素化分解および水素化処理(例えば自立触媒による水素化処理)ゾーンを保護するのに役立つ。
【0046】
[00135]第3、第4、第5および第6のゾーンは、水素化分解ゾーンに続く水素化処理ゾーンの交互層であり、水素化処理は、1種または複数種の自立水素化処理触媒を含む層内で生じる。ある特定の実施形態において、1種または複数種の自立水素化処理触媒は、混合金属硫化物(MMS)触媒である。MMS触媒は、自立または非担持触媒である任意の混合金属硫化物触媒であり得る。これらの触媒は、高レベルの活性を有する。一実施形態において、MMS触媒は、酸化物または水酸化物形態の前駆体から調製された自立多金属触媒である。好ましい実施形態において、前駆体は、水酸化物形態である。
【0047】
[00136]第2および第4のゾーンの下のそれぞれ第3および第5のゾーンは、水素化分解ゾーンである。各水素化分解ゾーンは、供給物を水素化分解して供給物の沸点を低減することに関与する。
【0048】
[00137]第3および第5のゾーンの下のそれぞれ第4および第6のゾーンは、水素化処理ゾーンであり、水素化処理は、1種または複数種の自立水素化処理触媒により行われる。
【0049】
[00138]ある特定の実施形態において、層状触媒反応器システムは、追加の水素化分解ゾーンに続く追加の自立触媒水素化処理ゾーン(第6および第7のゾーン)を備える。
[00139]最終ゾーン(第7または第9のいずれか)は、後処理ゾーンまたは追加の水素化処理ゾーンであり、水素化処理は、1種または複数種の自立水素化処理触媒を含む層内で生じる。
【0050】
[00140]一般に、炭化水素原料は、層状触媒反応器システムの第1のゾーン(すなわち頂部層)に導入されて、処理後の流出物を生成する。水素化反応を促進するために、水素もまた層状触媒反応器システムに導入される。各層からの処理後の流出物は、下方向の経路で層状触媒反応器システムの次の層に移動する。このようにして、初期炭化水素原料、および各層からの得られた処理後の流出物は、層状触媒反応器システムを通過する。
【0051】
[00141]ある特定の実施形態において、層状触媒反応器システムの動作温度は、約379~約404℃(約715~約760°F)、または約371~約412℃(約700~約775°F)の範囲内である。
【0052】
[00142]重量空間速度(weight hourly space velocity)(WHSV)は、反応器の動作条件の1時間当たりの触媒の単位重量当たり流動する供給物の重量として定義される。ある特定の実施形態において、WHSVは、約0.41~約1.1、または約0.4~約1.1/hの範囲内である。
【0053】
[00143]液空間速度(liquid hourly space velocity)(LHSV)は、触媒体積に対する1時間当たりの液体体積流量の比率である。ある特定の実施形態において、LHSVは、約0.39~約0.81、または約0.3~約0.9/hの範囲内である。
【0054】
[00144]ある特定の実施形態において、動作中の層状触媒反応器システム内の全圧力は、約1598×104~約1620×104Pa(約2318~約2350psig)、または約1593×104~約1627×104Pa(約2310~約2360psig)である。
【0055】
[00145]ある特定の実施形態において、動作中の層状触媒反応器システム内の入口水素圧は、約1547×104~約1593×104Pa(約2244~約2310psia)、または約1544×104~約1600×104Pa(約2240~約2320psia)である。
【0056】
[00146]ある特定の実施形態において、動作中の層状触媒反応器システム内のガス速度は、約1337~約1431 S m3/m3(約7512~約8040scfb)、または約1335~約1442 S m3/m3(約7500~約8100scfb)である。
【0057】
[00147]ある特定の実施形態において、層状触媒反応器システムの正規化温度は、水素化処理反応中約410℃(770°F)未満、または約407℃(765°F)未満に維持される。
【0058】
[00148]脱金属触媒
[00149]金属汚染物質、例えばバナジウムおよびニッケル汚染物質は、1つまたは複数の脱金属触媒との接触により炭化水素原料から除去される。一般に、実施形態による脱金属触媒は、当技術分野において知られている従来の脱金属触媒であってもよい。脱金属触媒(すなわち水素化脱金属触媒)の例は、これらに限定されないが、モリブデン、コバルトおよびニッケルの酸化物が濃縮された合成酸化アルミニウムまたは天然ケイ酸アルミニウム、例えば、全てアルミナに担持された酸化ニッケル-酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化モリブデン、酸化ニッケル-酸化タングステン;ならびに、鉄、コバルト、モリブデン、ニッケル、亜鉛およびマンガンで促進されたボーキサイトから調製されたものを含む。
【0059】
[00150]ある特定の実施形態において、脱金属触媒は、例えばICR132(Advanced Refining Technologies LLCから入手可能)を含む触媒である。
【0060】
[00151]ある特定の実施形態において、担持水素化処理触媒層は、1種類の担持水素化処理触媒を含む、またはそれからなる。ある特定の実施形態において、担持水素化処理触媒層は、2種類の担持水素化処理触媒を含む、またはそれらからなる。
【0061】
[00152]担持水素化処理触媒
[00153]一般に、実施形態による担持水素化処理触媒は、当技術分野において知られている従来の水素化処理(例えば水素化脱硫)触媒であってもよい。担持水素化処理触媒の例は、これらに限定されないが、アルミナ等の比較的高い表面積の担体材料上の、鉄、コバルトまたはニッケル等の少なくとも1種のVIII族金属、およびモリブデンまたはタングステン等の少なくとも1種のVIB族金属を含む触媒を含む。他の好適な触媒担体は、ゼオライト、非晶質シリカ-アルミナ、およびチタニア-アルミナを含む。ある特定の実施形態において、担持水素化処理触媒は、PdおよびPt等の貴金属を含む。2種類以上の水素化処理触媒が、層状触媒反応器システムの同じまたは異なる床で使用されてもよい。ある特定の実施形態において、VIII族金属は、典型的には、約2~約20wt.%、または約4~約12wt.%の範囲の量で存在する。VIB族金属は、典型的には、約5~約50wt.%、約10~約40wt.%、または約20~約30wt.%の範囲の量で存在する。全ての金属重量パーセンテージは、担体上でのものである(パーセンテージは担体の重量に基づく)。
【0062】
[00154]ある特定の実施形態において、担持水素化処理触媒は、鉄、コバルトまたはニッケルから選択される1種または複数種のVIII族金属を含む。ある特定の実施形態において、担持水素化処理触媒は、コバルトおよびニッケルから選択される1種または複数種のVIII族金属を含む。ある特定の実施形態において、担持水素化処理触媒は、コバルトを含む。
【0063】
[00155]ある特定の実施形態において、担持水素化処理触媒は、アルミナ、ゼオライト、非晶質シリカ-アルミナ、およびチタニア-アルミナから選択される担体材料を含む。
[00156]ある特定の実施形態において、担持水素化処理触媒は、ニッケルおよびモリブデンを含む触媒である。ある特定の実施形態において、担持水素化処理触媒は、酸化ニッケルおよび三酸化モリブデンを含む触媒、例えばICR513(Advanced Refining Technologies LLCから入手可能)である。
【0064】
[00157]ある特定の実施形態において、担持水素化処理触媒層は、1種類の担持水素化処理触媒を含む、またはそれからなる。ある特定の実施形態において、担持水素化処理触媒層は、2種類の担持水素化処理触媒を含む、またはそれらからなる。
【0065】
[00158]水素化分解触媒
[00159]本明細書に記載のシステムおよび方法における使用に好適な水素化分解触媒は、これらに限定されないが、熱分解活性を含む触媒、例えば結晶性アルミノシリケートを含有する触媒を含む。一般に、実施形態による水素化分解触媒は、当技術分野において知られている従来の水素化分解触媒であってもよい。水素化分解触媒の例は、これらに限定されないが、ニッケル、ニッケル-コバルト-モリブデン、コバルト-モリブデンならびにニッケル-タングステンおよび/またはニッケル-モリブデンを含む触媒を含み、そのうち後者2つが好ましい。貴金属触媒の限定されない例は、白金および/またはパラジウムをベースとしたものを含む。貴金属触媒および非貴金属触媒の両方に使用され得る多孔質担体材料は、アルミナ、シリカ、アルミナ-シリカ、キースラガー、珪藻土、マグネシア、またはジルコニア等の耐火性酸化物材料を含み、アルミナ、シリカ、アルミナ-シリカが好ましく、最も一般的である。ゼオライト担体、特に大孔径フォージャサイト、例えば超安定Y(USY)もまた使用され得る。
【0066】
[00160]多数の水素化分解触媒が異なる商業的供給業者から入手可能であり、原料および生成物の要件に従って使用され得、それらの機能性は実験的に決定され得る。選択された動作条件下で所望の水素化変換の機能性を有する、従来の水素化分解触媒を含む任意の触媒が使用され得る。
【0067】
[00161]ある特定の実施形態において、水素化分解触媒は、脱金属、担持水素化処理または非担持水素化処理触媒層に使用された触媒と同じではない。
[00162]ある特定の実施形態において、水素化分解触媒は、ニッケル、コバルト、モリブデンおよび/またはタングステンを含む。ある特定の実施形態において、水素化分解触媒は、ニッケルを含む。ある特定の実施形態において、水素化分解触媒は、ニッケル-コバルト-モリブデンを含む。ある特定の実施形態において、水素化分解触媒は、コバルト-モリブデンを含む。ある特定の実施形態において、水素化分解触媒は、ニッケル-タングステンを含む。ある特定の実施形態において、水素化分解触媒は、ニッケル-モリブデンを含む。
【0068】
[00163]ある特定の実施形態において、水素化分解触媒は、アルミナ、シリカ、アルミナ-シリカ、キースラガー、珪藻土、マグネシア、またはジルコニア、およびアルミナ、シリカ、またはアルミナ-シリカ等の耐火性酸化物材料、ならびにゼオライト担体、例えばUSY等の大孔径フォージャサイトから選択される担体材料を含む。
【0069】
[00164]ある特定の実施形態において、水素化分解触媒は、ニッケルおよびモリブデンまたはニッケルおよびタングステンを含む触媒、例えばICR250(Advanced Refining Technologies LLCから入手可能)である。
【0070】
[00165]ある特定の実施形態において、水素化分解触媒は、担持水素化分解触媒である。ある特定の実施形態において、水素化分解触媒層は、1種類の水素化分解触媒を含む、またはそれからなる。ある特定の実施形態において、水素化分解触媒層は、2種類の水素化分解触媒を含む、またはそれからなる。
【0071】
[00166]自立水素化処理触媒
[00167]ある特定の実施形態において、自立水素化処理触媒は、非担持水素化処理触媒、すなわち他の材料に担持されていない、または付着していない。一般に、自立水素化処理触媒は、体積によって担持水素化処理触媒よりも高いレベルの活性を有する。
【0072】
[00168]自立(または非担持)水素化処理触媒の例は、これに限定されないが、下記式の前駆体の触媒を硫化することによって調製される非担持多金属触媒を含む。
[00169]Av[(MP)OH)x(L)n
y]z(MVIBO4)
式中、Aは、1つの一価カチオン種であり、
MPは、IIA族、IIB族、IVA族、およびVIII族金属(特にVIII族、例えばNi)の1つまたは複数から選択される、+2または+4の酸化状態を有するプロモーター金属であり、
Lは、有機酸素含有リガンド(例えばマレエート)であり、
MVIBは、VIB族金属(例えば、Mo、Wの1つまたは複数)である。
【0073】
[00170]触媒前駆体(硫化前)の重要な態様は、水酸化物形態であるということである。
[00171]一実施形態において、Lは、カルボキシレート、カルボン酸、アルデヒド、ケトン、アルデヒドのエノレート形態、ケトンのエノレート形態、およびヘミアセタール、ならびにそれらの組合せから選択される。
【0074】
[00172]一実施形態において、Aは、一価カチオン、例えばNH4
+、他の四級アンモニウムイオン、有機ホスホニウムカチオン、アルカリ金属カチオン、およびそれらの組合せから選択される。
【0075】
[00173]VIB族金属としてモリブデンおよびタングステンの両方が使用される一実施形態において、モリブデン対タングステンの原子比(Mo:W)は、約10:1~1:10の範囲内である。別の実施形態において、Mo:Wの比は、約1:1~1:5の間である。VIB族金属としてモリブデンおよびタングステンが使用される実施形態において、電荷中性触媒前駆体は、式Av[(MP)(OH)x(L)n
y]z(MotWt’O4)の前駆体である。VIB族金属としてモリブデンおよびタングステンが使用されるさらに別の実施形態において、タングステンの一部または全てがクロムで置換されてもよく、(Cr+W):Moの比は、約10:1~1:10の範囲内である。別の実施形態において、(Cr+W):Moの比は、1:1~1:5である。モリブデン、タングステンおよびクロムがVIB族金属である一実施形態において、電荷中性触媒前駆体は、式Av[(MP)(OH)x(L)n
y]z(MotWt’Crt”O4)の前駆体である。
【0076】
[00174]一実施形態において、プロモーター金属MPは、少なくともVIII族金属であり、MPは+2の酸化状態を有し、触媒前駆体は式Av[(MP)(OH)x(L)n
y]z(MVIBO4)の前駆体であり、式中、(v-2+2z-x*z+n*y*z)=0である。
【0077】
[00175]一実施形態において、プロモーター金属MPは、2種のVIII族金属、例えばNiおよびCoの混合物である。さらに別の実施形態において、MPは、3種の金属、例えばNi、CoおよびFeの組合せである。
【0078】
[00176]MPが2種のIIB族金属、例えばZnおよびCdの混合物である一実施形態において、電荷中性触媒前駆体は、式Av[(ZnaCda’)(OH)x(L)y]z(MVIBO4)の前駆体である。MPが3種の金属、例えばZn、CdおよびHgの組合せであるさらに別の実施形態において、電荷中性触媒前駆体は、式Av[(ZnaCda’Hga”)(OH)x(L)n
y]z(MVIBO4)の前駆体である。
【0079】
[00177]MPが2種のIVA族金属、例えばGeおよびSnの混合物である一実施形態において、電荷中性触媒前駆体は、式Av[(Geb,Snb’)(OH)x(L)n
y]z(MVIBO4)の前駆体である。MPが3種のIVA族金属、例えばGe、SnおよびPbの組合せである別の実施形態において、電荷中性触媒前駆体は、式Av[(GebSnb’Pbab”)(OH)x(L)n
y]z(MVIBO4)の前駆体である。
【0080】
[00178]プロモーター金属成分MP:一実施形態において、プロモーター金属(MP)化合物の源は、溶液状態にあり、プロモーター金属化合物の全量が液体中に溶解して均質溶液を形成する。別の実施形態において、プロモーター金属の源は、一部は固体として存在し、一部は液体中に溶解している。第3の実施形態において、プロモーター金属の源は、完全に固体状態にある。
【0081】
[00179]プロモーター金属化合物MPは、硝酸塩、水和硝酸塩、塩化物、水和塩化物、硫酸塩、水和硫酸塩、炭酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、リン酸塩、次亜リン酸塩、およびそれらの混合物から選択される金属塩または金属塩の混合物であってもよい。
【0082】
[00180]一実施形態において、プロモーター金属MPは、少なくとも一部が固体状態にあるニッケル化合物、例えば、非水溶性ニッケル化合物、例えば炭酸ニッケル、水酸化ニッケル、リン酸ニッケル、亜リン酸ニッケル、ギ酸ニッケル、フマル酸ニッケル、硫化ニッケル、モリブデン酸ニッケル、タングステン酸ニッケル、酸化ニッケル、ニッケル合金、例えばニッケル-モリブデン合金、ラネーニッケル、またはそれらの混合物である。
【0083】
[00181]一実施形態において、プロモーター金属MPは、その元素、化合物、またはイオン形態でのIIBおよびVIA金属、例えば亜鉛、カドミウム、水銀、ゲルマニウム、スズまたは鉛、およびそれらの組合せの群から選択される。さらに別の実施形態において、プロモーター金属MPは、その元素、化合物、またはイオン形態のNi、Co、Feおよびそれらの組合せのうちの少なくとも1つをさらに含む。
【0084】
[00182]一実施形態において、プロモーター金属化合物は、少なくとも一部が固体状態にある亜鉛化合物、例えば、水に難溶性の亜鉛化合物、例えば炭酸亜鉛、水酸化亜鉛、リン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛、ギ酸亜鉛、フマル酸亜鉛、硫化亜鉛、モリブデン酸亜鉛、タングステン酸亜鉛、酸化亜鉛、亜鉛合金、例えば亜鉛-モリブデン合金である。
【0085】
[00183]一実施形態において、プロモーター金属は、少なくとも一部が固体状態にあるマグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウム化合物の群から選択されるIIA族金属化合物、例えば、非水溶性化合物、例えば炭酸塩、水酸化物、フマル酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、硫化物、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、酸化物、またはそれらの混合物である。
【0086】
[00184]一実施形態において、プロモーター金属化合物は、少なくとも一部が固体状態にあるスズ化合物、例えば、水に難溶性のスズ化合物、例えばタンニン酸、リン酸スズ、ギ酸スズ、酢酸スズ、モリブデン酸スズ、タングステン酸スズ、酸化スズ、スズ合金、例えばスズ-モリブデン合金である。
【0087】
[00185]VIB族金属成分:VIB族金属(MVIB)化合物は、固体状態、一部が溶解した状態、または溶液状態で添加され得る。一実施形態において、VIB族金属化合物は、モリブデン、クロム、タングステン化合物、およびそれらの組合せから選択される。そのような化合物の例は、これらに限定されないが、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはモリブデン、タングステン、もしくはクロムの金属酸アンモニウム(例えば、タングステン酸アンモニウム、メタ-、パラ-、ヘキサ-もしくはポリタングステン酸アンモニウム、クロム酸アンモニウム、モリブデン酸アンモニウム、イソ-、ペルオキソ-、ジ-、トリ-、テトラ-、ヘプタ-、オクタ-、もしくはテトラデカモリブデン酸アンモニウム、ヘプタモリブデン酸アルカリ金属、オルトモリブデン酸アルカリ金属、またはイソモリブデン酸アルカリ金属)、ホスホモリブデン酸のアンモニウム塩、ホスホタングステン酸のアンモニウム塩、ホスホクロム酸のアンモニウム塩、(二および三)酸化モリブデン、(二および三)酸化タングステン、クロムまたは酸化クロム、炭化モリブデン、窒化モリブデン、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸、クロム酸、タングステン酸、Mo-Pヘテロポリアニオン化合物、Wo-Siヘテロポリアニオン化合物、W-Pヘテロポリアニオン化合物を含む。固体状態、一部が溶解した状態、または溶質状態で添加される、W-Siヘテロポリアニオン化合物、Ni-Mo-Wヘテロポリアニオン化合物、Co-Mo-Wヘテロポリアニオン化合物、またはそれらの混合物。
【0088】
[00186]キレート剤(リガンド)L:一実施形態において、触媒前駆体組成物は、500mg/kg超のLD50(ラットへの単回経口用量として)を有する少なくとも1つの非毒性有機酸素含有リガンドを含む。第2の実施形態において、有機酸素含有リガンドLは、700mg/kg超のLD50を有する。第3の実施形態において、有機酸素含有キレート剤は、1000mg/kg超のLD50を有する。本明細書において使用される場合、「非毒性」という用語は、リガンドが500mg/kg超のLD50(ラットへの単回経口用量として)を有することを意味する。本明細書において使用される場合、「少なくとも1つの有機酸素含有リガンド」という用語は、組成物が、いくつかの実施形態では2つ以上の有機酸素含有リガンドを有し得ることを意味し、有機酸素含有リガンドのいくつかは500mg/kg未満のLD50を有し得るが、有機酸素含有リガンドの少なくとも1つは500mg/kg超のLD50を有する。
【0089】
[00187]一実施形態において、酸素含有キレート剤Lは、非毒性有機酸付加塩、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、グリオキシル酸、アスパラギン酸、アルカンスルホン酸、例えばメタンスルホン酸およびエタンスルホン酸、アリールスルホン酸、例えばベンゼンスルホン酸およびp-トルエンスルホン酸、ならびにアリールカルボン酸、例えば安息香酸の群から選択される。一実施形態において、酸素含有キレート剤Lは、マレイン酸(708mg/kgのLD50)である。
【0090】
[00188]別の実施形態において、非毒性キレート剤Lは、グリコール酸(1950mg/kgのLD50を有する)、乳酸(3543mg/kgのLD50)、酒石酸(7500mg/kgのLD50)、リンゴ酸(1600mg/kgのLD50)、クエン酸(5040mg/kgのLD50)、グルコン酸(10380mg/kgのLD50)、メトキシ-酢酸(3200mg/kgのLD50)、エトキシ-酢酸(1292mg/kgのLD50)、マロン酸(1310mg/kgのLD50)、コハク酸(500mg/kgのLD50)、フマル酸(10700mg/kgのLD50)、およびグリオキシル酸(3000mg/kgのLD50)の群から選択される。さらに別の実施形態において、非毒性キレート剤は、これらに限定されないが、メルカプト-コハク酸(800mg/kgのLD50)およびチオ-ジグリコール酸(500mg/kgのLD50)を含む有機硫黄化合物の群から選択される。
【0091】
[00189]さらに別の実施形態において、酸素含有リガンドLは、カルボキシレート含有化合物である。一実施形態において、カルボキシレート化合物は、1つまたは複数のカルボキシレート官能基を含有する。さらに別の実施形態において、カルボキシレート化合物は、これらに限定されないがホルメート、アセテート、プロピオネート、ブチレート、ペンタノエート、およびヘキサノエートを含むモノカルボキシレート、ならびにこれらに限定されないがオキサレート、マロネート、スクシネート、グルタレート、アジペート、マレート、マレエート、フマレート、およびそれらの組合せを含むジカルボキシレートを含む。第4の実施形態において、カルボキシレート化合物は、マレエートを含む。
【0092】
[00190]有機酸素含有リガンドは、プロモーター金属含有溶液もしくは混合物、VIB族金属含有溶液もしくは混合物、またはプロモーター金属およびVIB族金属含有沈殿物、溶液もしくは混合物の組合せと混合され得る。有機酸素含有リガンドは、有機酸素含有リガンドの全量が水等の液体に溶解した溶液状態であってもよい。有機酸素含有リガンドは、プロモーター金属(複数種可)、VIB族金属(複数種可)、およびそれらの組合せとの混合中に、一部が溶解し、一部が固体状態であってもよい。
【0093】
[00191]希釈剤成分:希釈剤という用語は、結合剤と交換可能に使用され得る。希釈剤の使用は、触媒前駆体の作製において任意選択的である。
[00192]一実施形態において、希釈剤は、触媒前駆体組成物を作製するためのプロセスに含まれる。一般に、添加される希釈剤材料は、(希釈剤なしで)触媒前駆体組成物から調製された触媒よりも低い触媒活性を有するか、または触媒活性を全く有さない。一実施形態において、希釈剤を添加することにより、触媒の活性は低減され得る。したがって、プロセスにおいて添加される希釈剤の量は、一般に、最終的な触媒組成物の所望の活性に依存する。想定される触媒用途に応じて、全組成物の0~95wt%の希釈剤量が好適となり得る。
【0094】
[00193]希釈剤は、プロモーター金属成分(複数可)、プロモーター金属含有混合物、VIB族金属(複数種可)、または金属含有混合物に、同時に、または順次添加され得る。代替として、プロモーター金属およびVIB族金属混合物が一緒に合わせられてもよく、その後、合わせられた金属混合物に希釈剤が添加されてもよい。また、金属混合物の一部を同時に、または順次合わせて、その後希釈剤を添加し、最後に金属混合物の残りを同時に、または順次添加することも可能である。さらに、希釈剤を金属混合物と溶質状態で合わせて、その後少なくとも一部が固体状態である金属化合物を添加することも可能である。有機酸素含有リガンドは、金属含有混合物の少なくとも1つに存在する。
【0095】
[00194]一実施形態において、希釈剤は、バルク触媒前駆体組成物と複合化される前に、および/またはその調製中に添加される前に、VIB族金属および/またはプロモーター金属と複合化される。一実施形態において、希釈剤をこれらの金属のいずれかと複合化することは、固体希釈剤にこれらの金属を含浸させることによって行われる。
【0096】
[00195]希釈剤材料は、水素処理触媒前駆体において希釈剤または結合剤として都合よく適用される任意の材料を含む。その例は、シリカ、シリカ-アルミナ、例えば従来のシリカ-アルミナ、シリカコーティングアルミナおよびアルミナコーティングシリカ、(擬)ベーマイトもしくはギブサイト等のアルミナ、チタニア、ジルコニア、サポナイト、ベントナイト、カオリン、セピオライトもしくはハイドロタルサイト等のカチオン性クレイもしくはアニオン性クレイ、またはそれらの混合物を含む。一実施形態において、結合剤材料は、シリカ、アルミニウムがドープされたコロイド状シリカ、シリカ-アルミナ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、またはそれらの混合物から選択される。
【0097】
[00196]これらの希釈剤は、そのままで、または解膠後に適用され得る。また、プロセス中に上述の希釈剤のいずれかに変換されるそれらの希釈剤の前駆体を適用することも可能である。好適な前駆体は、例えば、アルカリ金属またはアルミン酸アンモニウム(アルミナ希釈剤を得るため)、水ガラスまたはアンモニウム安定化もしくは酸安定化シリカゾル(シリカ希釈剤を得るため)、アルミネートおよびシリケートの混合物(シリカアルミナ希釈剤を得るため)、二価、三価および/または四価金属の源の混合物、例えばマグネシウム、アルミニウムおよび/またはケイ素の水溶性塩の混合物(カチオン性クレイおよび/またはアニオン性クレイを調製するため)、クロロヒドロール(chlorohydrol)、硫酸アルミニウム、あるいはそれらの混合物である。
【0098】
[00197]他の任意選択の成分:所望により、上述の成分に加えて、他の金属を含む他の材料が添加されてもよい。これらの材料は、従来の水素処理触媒前駆体調製中に添加される任意の金属を含む。好適な例は、リン化合物、ホウ素化合物、追加の遷移金属、希土類金属、充填剤、またはそれらの混合物である。好適なリン化合物は、リン酸アンモニウム、リン酸、または有機リン化合物を含む。リン化合物は、プロセスステップの任意の段階で添加され得る。プロセスステップに添加され得る好適な追加の遷移金属は、例えば、レニウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、クロム、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、白金、パラジウム、コバルト等を含む。一実施形態において、追加の金属は、非水溶性化合物の形態で適用される。別の実施形態において、追加の金属は、水溶性化合物の形態で添加される。プロセス中にこれらの金属を添加することとは別に、最終的な触媒前駆体組成物を任意選択の材料と複合化することも可能である。例えば、最終的な触媒前駆体組成物に、これらの追加の材料のいずれかを含む含浸溶液を含浸させることが可能である。
【0099】
[00198]水素処理触媒前駆体を作製するための方法: 調製方法は、元素の相対量、試薬の種類、ならびに様々な反応および反応ステップの長さおよび度合いを制御することによって、触媒前駆体の組成および構造の体系的な変化を可能にする。
【0100】
[00199]触媒前駆体の形成に使用される試薬の添加の順番は重要ではない。例えば、有機酸素含有リガンドは、沈殿または共ゲル化(cogelation)の前に、プロモーター金属(複数種可)およびVIB族金属(複数種可)の混合物と合わされてもよい。有機酸素含有リガンドは、プロモーター金属の溶液と混合され、次いで1種または複数種のVIB族金属の溶液に添加されてもよい。有機酸素含有リガンドは、1種または複数種のVIB族金属の溶液と混合され、1種または複数種のプロモーター金属の溶液に添加されてもよい。
【0101】
[00200]VIB族/プロモーター金属との沈殿物または共ゲル(cogel)の形成:プロセスの一実施形態において、第1のステップは、沈殿または共ゲル化(cogelation)ステップであり、これは、混合物中で、溶液中のプロモーター金属成分(複数可)および溶液中のVIB族金属成分を反応させて、沈殿物または共ゲル(cogel)を得ることを含む。沈殿または共ゲル化(cogelation)は、プロモーター金属化合物およびVIB族金属化合物が沈殿または共ゲル(cogel)を形成する温度およびpHで行われる。次いで、溶液中の、または少なくとも一部が溶液中にある有機酸素含有リガンドが沈殿物または共ゲル(cogel)と合わされて、触媒前駆体の一実施形態を形成する。
【0102】
[00201]一実施形態において、触媒前駆体が形成される温度は、50~150℃である。温度がプロトン性液体の沸点未満である、例えば水の場合100℃未満である場合、プロセスは一般に大気圧下で行われる。この温度より上では、反応は一般に増加した圧力下で、例えばオートクレーブ内で行われる。一実施形態において、触媒前駆体は、0~2068×104Pa(0~3000psig)の圧力で形成される。第2の実施形態において、圧力は、69×104~689×104Pa(100~1000psig)である。
【0103】
[00202]混合物のpHは、生成物の所望の特性に応じて沈殿または共ゲル化(cogelation)の速度を増加または減少させるために変更され得る。一実施形態において、混合物は、反応ステップ(複数可)中にその自然のpHに維持される。別の実施形態において、pHは、0~12の範囲内に維持される。別の実施形態において、pHは、4~10である。さらなる実施形態において、pHは、7~10の範囲である。pHの変更は、反応混合物に塩基もしくは酸を添加することにより、または、温度が上昇するとそれぞれpHを増加または減少させる水酸化物イオンもしくはH+イオンに分解する化合物を添加することにより行うことができる。その例は、尿素、ニトライト、水酸化アンモニウム、無機酸、有機酸、無機塩基および有機塩基を含む。
【0104】
[00203]一実施形態において、プロモーター金属化合物(複数種可)の反応は、水溶性金属塩、例えば亜鉛、モリブデンおよびタングステン金属塩を用いて行われる。溶液は、他のプロモーター金属成分(複数可)、例えばCd(NO3)2または(CH3CO2)2Cd等のカドミウムまたは水銀化合物、Co(NO3)2または(CH3CO2)2Co等のコバルトまたは鉄化合物を含むVIII族金属化合物、およびクロム等のVIB族金属成分(複数可)をさらに含んでもよい。
【0105】
[00204]一実施形態において、プロモーター金属化合物(複数種可)の反応は、水溶性のスズ、モリブデンおよびタングステン金属塩を用いて行われる。溶液は、他のIVA族金属成分(複数可)、例えばPb(NO3)4または(CH3CO2)2Pb等の鉛化合物、およびクロム化合物等の他のVIB族金属化合物をさらに含んでもよい。
【0106】
[00205]反応は、亜鉛/モリブデン/タングステン、スズ/モリブデン/タングステン、亜鉛/モリブデン、亜鉛/タングステン、スズ/モリブデン、スズ/タングステン、または亜鉛/スズ/モリブデン/タングステン、またはニッケル/モリブデン/タングステン、コバルト/モリブデン/タングステン、ニッケル/モリブデン、ニッケル/タングステン、コバルト/モリブデン、コバルト/タングステン、またはニッケル/コバルト/モリブデン/タングステンの沈殿物または共ゲル(cogel)の組合せをもたらす適切な金属塩を用いて行われる。有機酸素含有リガンドは、プロモーター金属化合物および/またはVIB族金属化合物の沈殿または共ゲル化(cogelation)の前または後に添加され得る。
【0107】
[00206]金属前駆体は、溶液、懸濁液またはそれらの組合せとして、反応混合物に添加され得る。可溶性塩がそのように添加される場合、可溶性塩は、反応混合物に溶解し、その後沈殿または共ゲル化される。溶液は、沈殿および水の蒸発を達成するために、任意選択的に真空下で加熱されてもよい。
【0108】
[00207]沈殿または共ゲル化(cogelation)の後に、触媒前駆体は、水を除去するために乾燥され得る。乾燥は、大気条件下で、または窒素、アルゴンもしくは真空等の不活性雰囲気下で行うことができる。乾燥は、有機化合物を除去せずに水を除去するのに十分な温度で達成され得る。好ましくは、乾燥は、触媒前駆体の重量が一定に達するまで、約120℃で行われる。
【0109】
[00208]任意選択の結合剤成分(複数可)を有する沈殿物の形成:結合剤を使用する一実施形態において、結合剤成分は、溶液、懸濁液またはそれらの組合せに金属前駆体を含有する反応混合物に添加され、沈殿または共ゲル化(cogelation)を形成し得る。沈殿物は、その後水を除去するために乾燥される。
【0110】
[00209]結合剤としてアルミノケイ酸マグネシウムクレイを使用する一実施形態において、ケイ素成分、アルミニウム成分、マグネシウム成分、プロモーター金属化合物および/またはVIB族金属化合物を含む第1の反応混合物が形成される。一実施形態において、第1の反応混合物は、周囲圧力および温度条件下で形成される。一実施形態において、反応は、0.9バール~1.2バールの範囲の圧力、および約0℃~100℃の温度で行われる。
【0111】
[00210]ケイ素成分の例は、これらに限定されないが、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、シリカゲル、シリカゾル、ヒドロニウム安定化またはアンモニウム安定化シリカゾル、およびそれらの組合せを含む。本発明のプロセスにおいて有用なアルミニウム成分のアルミニウムの例は、これらに限定されないが、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、およびそれらの組合せを含む。本発明のプロセスにおいて有用なマグネシウム成分の例は、これらに限定されないが、マグネシウム金属、水酸化マグネシウム、ハロゲン化マグネシウム、硫酸マグネシウム、および硝酸マグネシウムを含む。一実施形態において、金属前駆体および結合剤成分を含有する混合物に、混合物のpHを約1~約6に調節するのに十分な量の酸が添加され、第1の反応混合物が形成される。
【0112】
[00211]第1の反応混合物の形成後、アルカリ塩基が添加されて、第2の反応混合物が形成される。アルカリ塩基の例は、これらに限定されないが、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムを含む。得られる第2の反応混合物のpHが約7~約12となるように、十分なアルカリ塩基が第1の反応混合物に添加される。次いで、第2の反応混合物は、結合剤として少なくともクレイを組み込んだ触媒前駆体を形成するのに十分な時間および十分な温度で反応される。実施形態において、時間は、少なくとも1秒である。第2の実施形態において、時間は、15分である。第3の実施形態において、時間は、少なくとも30分である。第2の反応混合物の温度は、約0℃~約100℃の範囲であってもよい。反応は、周囲圧力で行われ得るが、より高い、またはより低い圧力も除外されない。
【0113】
[00212]結合剤としてアルミノケイ酸マグネシウムクレイを用いる一実施形態において、ケイ素対アルミニウム対マグネシウムの比は、aSi:bAl:cMgの元素モル比の点で表現することができ、「a」は3~8の値を有し、「b」は0.6~1.6の値を有し、「c」は3~6の値を有する。
【0114】
[00213]触媒前駆体の特性評価:電荷中性触媒前駆体の特性評価は、これらに限定されないが、粉末X線回折(PXRD)、元素分析、表面積測定、平均細孔サイズ分布、平均細孔容積を含む、当技術分野において知られている技術を使用して行うことができる。多孔度および表面積測定は、B.E.T.窒素吸着条件下でBJH分析を使用して行うことができる。
【0115】
[00214]触媒前駆体の特性:一実施形態において、触媒前駆体は、窒素吸着により決定されるように、0.05~5mL/gの平均細孔容積を有する。別の実施形態において、平均細孔容積は、0.1~4mL/gである。第3の実施形態において、平均細孔容積は、0.1~3mL/gである。
【0116】
[00215]一実施形態において、触媒前駆体は、少なくとも10m2/gの表面積を有する。第2の実施形態において、触媒前駆体は、少なくとも50m2/gの表面積を有する。第3の実施形態において、触媒前駆体は、少なくとも150m2/gの表面積を有する。
【0117】
[00216]一実施形態において、触媒前駆体は、窒素吸着により定義されるように、2~50ナノメートルの平均細孔サイズを有する。第2の実施形態において、触媒前駆体は、3~30ナノメートルの平均細孔サイズを有する。第3の実施形態において、触媒前駆体は、4~15ナノメートルの平均細孔サイズを有する。
【0118】
[00217]結合剤としてアルミノケイ酸マグネシウムクレイを含む一実施形態において、触媒前駆体は、基本クレイ小板のスタックで構成される層状材料である。
[00218]成形プロセス:一実施形態において、触媒前駆体組成物は一般に、意図される商業的用途に応じて様々な形状に直接形成され得る。これらの形状は、任意の好適な技術、例えば押出し、ペレット化、ビーディング、または噴霧乾燥によって作製され得る。バルク触媒前駆体組成物の液体の量が非常に大きく成形ステップに直接供することができない場合、成形前に固液分離を行うことができる。
【0119】
[00219]細孔形成剤の添加:触媒前駆体は、これらに限定されないが、ステアリン酸、ポリエチレングリコールポリマー、炭水化物ポリマー、メタクリレート、およびセルロースポリマーを含む細孔形成剤と混合され得る。例えば、乾燥させた触媒前駆体は、セルロース含有材料、例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、または他のセルロースエーテルと100:1~10:1(wt.%触媒前駆体対wt.%セルロース)の比で混合されてもよく、押出し可能な稠度の混合物が得られるまで水が添加されてもよい。市販のセルロースベース細孔形成剤の例は、これらに限定されないが、METHOCEL(商標)(DuPontから入手可能)、Avicel(登録商標)(DuPontから入手可能)、およびPorocel(Evonikから入手可能)を含む。押出し可能な混合物が押し出され、次いで任意選択で乾燥され得る。一実施形態において、乾燥は、窒素、アルゴンまたは真空等の不活性雰囲気下で行うことができる。別の実施形態において、乾燥は、70~200℃の高温で行うことができる。さらに別の実施形態において、乾燥は、120℃で行われる。
【0120】
[00220]硫化剤成分:電荷中性触媒前駆体は、硫化されて活性触媒を形成し得る。一実施形態において、硫化剤は、元素硫黄そのものである。別の実施形態において、硫化剤は、一般的条件下で硫化水素に分解可能な硫黄含有化合物である。さらに第3の実施形態において、硫化剤は、H2SそのものまたはH2中のH2Sである。
【0121】
[00221]一実施形態において、硫化剤は、硫化アンモニウム、ポリ硫化アンモニウム((NH4)2Sx)、チオ硫酸アンモニウム((NH4)2S2O3)、チオ硫酸ナトリウム(Na2S2O3)、チオ尿素(NH2CSNH2)、二硫化炭素、二硫化ジメチル(DMDS)、硫化ジメチル(DMS)、メルカプタン、ポリ硫化ジ-tert-ブチル(TBPS)、ポリ硫化tert-ノニル(TNPS)等の群から選択される。別の実施形態において、硫化剤は、硫化アルカリおよび/またはアルカリ土類金属、硫化水素アルカリおよび/またはアルカリ土類金属、ならびにそれらの混合物から選択される。アルカリおよび/またはアルカリ土類金属を含有する硫化剤の使用は、使用済み触媒からアルカリおよび/またはアルカリ土類金属を除去するための追加の分離プロセスステップを必要とし得る。
【0122】
[00222]一実施形態において、硫化剤は、水溶液中の硫化アンモニウムであり、この硫化アンモニウム水溶液は、硫化水素およびアンモニア精製所オフガスから合成され得る。この合成硫化アンモニウムは、水に易溶性であり、使用前にタンク内に水溶液として容易に保存され得る。一実施形態において、硫化は硫化アンモニウム水溶液によるものであり、またチアジアゾール、チオ酸、チオアミド、チオシアネート、チオエステル、チオフェノール、チオセミカルバジド、チオ尿素、メルカプトアルコール、およびそれらの混合物の群から選択される少なくとも1種の硫黄添加剤の存在下で行われる。
【0123】
[00223]一実施形態において、触媒前駆体の硫化を行うための硫黄源として、炭化水素原料が使用される。炭化水素原料による触媒前駆体の硫化は、水素化処理中に1つまたは複数の水素化処理反応器内で行うことができる。
【0124】
[00224]一実施形態において、硫化剤は、触媒前駆体から硫化触媒を形成するのに必要な化学量論的量を超える量で存在する。別の実施形態において、硫化剤の量は、触媒前駆体から硫化触媒を生成するために、少なくとも3対1の硫黄対VIB族金属のモル比に相当する。第3の実施形態において、硫黄含有化合物の総量は、一般に、金属を例えばCo9S8、MoS2、WS2、Ni3S2等に変換するために必要な化学量論的硫黄量の約50~300%、70~200%、および80~150%のいずれかに対応するように選択される。
【0125】
[00225]硫化ステップ:触媒を形成するための触媒前駆体の硫化(「予備硫化」と呼ばれる場合がある)は、触媒を水素化処理反応器に導入する前に行われてもよい(したがってex-situ硫化)。別の実施形態において、硫化はin-situである。硫化プロセスがex-situで行われる一実施形態において、水素化処理ユニット内での望ましくない化合物の形成が防止される。一実施形態において、触媒前駆体は、70℃~500℃の範囲の温度、10分~15日の期間、およびH2含有ガス圧力下での硫化剤との接触の際に、活性触媒に変換される。硫化温度が硫化剤の沸点未満である、例えば硫化アンモニウム溶液の場合60~70℃未満である場合、プロセスは一般に大気圧下で行われる。硫化剤/任意選択の成分の沸点超では、反応は一般に、増加した圧力下で行われる。
【0126】
[00226]一実施形態において、硫化は、水素と、H2Sに分解可能な硫黄含有化合物とを含む気相中で行うことができる。その例は、メルカプタン、CS2、チオフェン、DMS、DMDSおよび好適なS含有製油所排出ガスを含む。H2S単独の使用で十分である。気相中の触媒前駆体と水素および硫黄含有化合物との接触は、一実施形態では125℃~450℃(257°F~842°F)の温度で、別の実施形態では225℃~400℃(437°F~752°F)の温度で1ステップで行うことができる。一実施形態において、硫化は、ある期間にわたり温度を例えば毎分0.5~4℃(0.9~7.2°F)で漸増させながら行われ、完了するまである期間、例えば1~12時間にわたり保持される。
【0127】
[00227]本明細書において使用される場合、硫化プロセスの完了は、金属を例えばCo9S8、MoS2、WS2、Ni3S2等に変換するために必要な化学量論的硫黄量の少なくとも95%が消費されたことを意味する。
【0128】
[00228]気相での硫化の別の実施形態において、硫化は、2つ以上のステップで行われ、第1のステップは、後続のステップ(複数可)よりも低い温度で行われる。例えば、第1のステップは、約100~250℃(212°F~482°F)、好ましくは約125~225℃(257°F~437°F)で行われる。短い期間の後、例えば30分~2時間後(温度は一定に維持される)。第2のステップは、約225~450℃(437°F~842°F)、好ましくは約250~400℃(482°F~752°F)で行うことができる。硫化ステップ中の全圧は、大気圧~約10バール(1MPa)であってもよい。H2および硫黄含有化合物のガス混合物は、ステップにおいて同じであっても、または異なってもよい。気相中での硫化は、固定床プロセスおよび移動床プロセス(触媒が反応器に対して移動する、例えば沸騰床プロセスおよび回転炉)を含む任意の好適な様式で行うことができる。
【0129】
[00229]一実施形態において、硫化は、液相中で行われる。まず、触媒前駆体が、触媒前駆体細孔容積の20~500%の範囲内の量で有機液体と接触される。有機液体との接触は、周囲温度~250℃(482°F)の範囲の温度で行われてもよい。有機液体の導入後、触媒前駆体は、水素および硫黄含有化合物と接触される。
【0130】
[00230]一実施形態において、有機液体は、約100~550℃(212~1022°F)の沸点範囲を有する。別の実施形態において、有機液体は、石油留分、例えば重質油、潤滑油留分、例えば鉱油潤滑油、常圧軽油、減圧軽油、直留軽油、揮発油、中間留出物、例えばディーゼル、ジェット燃料および灯油、ナフサ、およびガソリンである。一実施形態において、有機液体は、10wt.%未満の硫黄、好ましくは5wt.%未満の硫黄を含有する。
【0131】
[00231]一実施形態において、液相中での硫化(または「スタートアップ」)は、「迅速」プロセスとして行われ、硫化は72時間未満の期間にわたり行われ、温度上昇は毎分0.5~4℃(0.9~7.2°F)の範囲である。第2の実施形態において、迅速スタートアップは、48時間未満を要する。第3の実施形態において、迅速スタートアップは、24時間未満を要する。
【0132】
[00232]迅速硫化において、有機液体中の触媒前駆体と水素および硫黄含有化合物との接触は、一実施形態では150~450℃の温度で、別の実施形態では225℃~400℃の温度で1ステップで行うことができる。迅速硫化のさらに別の実施形態において、硫化は、2つ以上のステップで行われ、第1のステップは、後続のステップ(複数可)よりも低い温度で行われる。例えば、第1のステップは、約100~250℃(212°F~482°F)、または125~225℃(257°F~437°F)で行われる。短い期間の後、例えば0.5~2時間後(温度は一定に維持される)、温度は第2のステップで例えば250~450℃(482°F~842°F)に、好ましくは225℃~400℃(437°F~752°F)に上昇される。温度は1~36時間維持され、その期間後に硫化が完了する。
【0133】
[00233]さらに別の実施形態において、液相中での硫化は、「緩慢」プロセスとして行われ、硫化は、4日から3週間までの期間、すなわち少なくとも96時間にわたり行われる。この緩慢プロセスにおいて、有機液体中の触媒前駆体と水素および硫黄含有化合物との接触は、2つ以上のステップで行われ、第1のステップは、後続のステップ(複数可)よりも低い温度で行われ、温度は、迅速スタートアップの場合のように毎分の代わりに例えば毎時でゆっくりと漸増される。H2および硫黄含有化合物のガス混合物は、ステップにおいて同じであっても、または異なってもよい。一実施形態において、第1のステップは、約100~375℃(212°F~707°F)、好ましくは約125~350℃(257°F~662°F)で、毎時0.25~4℃(0.45~7.2°F)の温度上昇速度で行われる。第1のステップの後、温度は2~24時間の期間一定に維持され、次いで第2のステップで毎時5~20℃(9~36°F)の速度で上昇される。一実施形態において、第2のステップは、約200~450℃(392°F~842°F)、好ましくは約225~400℃(437°F~752°F)で行われる。
【0134】
[00234]一実施形態において、硫化は、元素硫黄を用いて行われ、硫黄は、触媒前駆体の細孔内に組み込まれる。このプロセスでは、元素硫黄は、触媒前駆体重量の2~15wt.%の量で、硫黄の融点未満の温度で触媒前駆体と混合される。一実施形態において、混合は、180~210°F(82~99℃)で行われる。前駆体および元素硫黄の混合と連続して、または同時に、混合物は、高沸点有機液体と接触される。次いで、混合物は、窒素の存在下、250~390°F(121~199℃)の範囲内の温度に加熱され、H2Sおよび金属硫化物を生成する。一実施形態において、有機液体は、オレフィン、ガソリン、揮発油、ディーゼル、軽油、鉱油潤滑油、およびホワイトオイルからなる群から選択される。
【0135】
[00235]一実施形態において、触媒前駆体の実施形態から硫化された触媒は、驚くべきことに、気相を介して硫化されたか、または「迅速」プロセスとして液相中で硫化されたかに関わらず、ほぼ同じ700°F(371℃)+変換率をもたらすことが分かる。一実施形態において、液相中で「緩慢」プロセスを介して硫化された触媒を使用することで、700°F(371℃)+変換率が少なくとも25%増加することが分かる。さらに別の実施形態において、700°F+(371℃)変換率は、緩慢プロセスを介して硫化された触媒により倍増する。
【0136】
[00236]ある特定の実施形態において、自立水素化処理触媒は、ニッケル、モリブデンおよびタングステンを含む。ある特定の実施形態において、自立水素化処理触媒は、ニッケル、モリブデン、タングステンおよびチタンを含む。ある特定の実施形態において、自立水素化処理触媒は、ニッケル、モリブデン、タングステンおよびニオブを含む。ある特定の実施形態において、自立水素化処理触媒は、ニッケル、モリブデン、タングステン、ニオブおよびチタンを含む。ある特定の実施形態において、自立水素化処理触媒は、ニッケル、モリブデン、タングステン、ニオブおよび銅を含む。ある特定の実施形態において、自立水素化処理触媒は、ニッケル、モリブデン、タングステンおよび銅を含む。
【0137】
[00237]ある特定の実施形態において、自立水素化処理触媒は、約5~約9wt%のモリブデン、約21~31wt%のニッケル、および約33~約42wt%のタングステンを含む。ある特定の実施形態において、自立水素化処理触媒は、約5.9~約8.1wt%のモリブデン、約21.8~30.7wt%のニッケル、および約34.4~約41.3wt%のタングステンを含む。
【0138】
[00238]好ましい触媒前駆体は、マレイン酸Ni-Mo-W触媒前駆体である。触媒は、好ましくは硫化ジメチル(DMDS)で硫化される。
[00239]ある特定の実施形態において、自立水素化処理触媒は、ニッケル、モリブデンおよびタングステンを含む触媒、例えばICR1000、ICR1001、ICR1003およびICR4000(全てAdvanced Refining Technologies LLCから入手可能)である。
【0139】
[00240]ある特定の実施形態において、自立水素化処理触媒層は、1種類の自立水素化処理触媒を含む、またはそれからなる。ある特定の実施形態において、自立水素化処理触媒層は、2種類の水素化分解触媒を含む、またはそれからなる。
【0140】
[00241]炭化水素原料
[00242]層状触媒反応器システムおよび方法によって、広範な石油および化学原料が水素処理(または水素化処理)され得る。好適な原料は、全原油および常圧残油、常圧および減圧残留物、プロパン脱れき残留物、例えばブライトストック、サイクル油、FCC塔底物、常圧軽油および減圧軽油およびコーカー軽油を含む軽油、未加工蒸留物を含む軽質から重質の蒸留物、水素化分解物、水素化処理油、脱ロウ油、スラックワックス、フィッシャートロプシュワックス、ラフィネート、ナフサ、ならびにこれらの材料の混合物を含む。典型的なより軽質の供給物は、概して約175℃(約350°F)~約375℃(約750°F)で沸騰する蒸留留分を含む。この種の供給物により、著しい量の水素化分解ナフサが生成され、これは、低硫黄ガソリンブレンドストックとして使用され得る。典型的なより重質の供給物は、例えば、最大で約593℃(約1100°F)、通常は約350℃~約500℃(約660°F~約935°F)の範囲で沸騰する減圧軽油を含み、この場合、生成されるディーゼル燃料の割合はそれに応じてより高くなる。
【0141】
[00243]炭化水素原料の水素化処理のプロセス
[00244]一態様において、本発明は、炭化水素原料の水素化処理のためのプロセスであって、(i)金属、硫黄、窒素およびオレフィンを含む汚染物質を含有する炭化水素原料を、水素の存在下で本明細書に記載の層状触媒反応器システムと接触させて、炭化水素原料よりも低い含量の金属、硫黄、窒素およびオレフィンを有する炭化水素生成物を生成するステップと;(ii)炭化水素原料を、層状触媒反応器システムの層に順次頂部から底部に向けて垂直に通過させるステップと;(iii)層状触媒反応器システムの底部から炭化水素生成物を回収するステップとを含むプロセスに関する。プロセスは、不純物または汚染物質、例えば金属、硫黄および窒素を除去するために、ならびに炭化水素原料からのオレフィンおよび芳香族化合物を飽和させるために使用され得る。方法は、水素化脱金属、水素化脱硫、および水素化脱窒素を促進する条件下で行われる。
【0142】
[00245]一実施形態において、プロセスは、高レベルの硫黄および窒素を含有する原料を最初の処理反応段階に導入し、供給物中の実質的な量の硫黄および窒素を無機形態に変換することにより運用され、このステップの主な目的は、供給物窒素含量の低減である。水素化処理ステップは、水素の存在下で例示的な層状触媒反応器システム内で行われる。使用される条件は、供給物の特徴に応じて、水素化脱硫および/または脱窒素に適切である。生成物ストリームは、次いで(分離することなく)直接、または分離および水洗を伴って水素化分解ゾーンに通され、そこで沸点範囲での変換が達成される。例示的システムにおける第1および第2の層からの生成物ストリームは、水素処理ガス、ならびに硫化水素およびアンモニアを含む他の水素化処理/水素化分解反応生成物と共に分離器に通されてもよく、そこで水素、軽質留分ならびに無機窒素および硫化水素が水素化分解液体生成物ストリームから除去される。リサイクルガスは、リサイクル水素の純度を改善し、したがって生成物硫黄レベルを低減することを目的として、アンモニア除去のために洗浄されてもよく、また硫化水素除去のためにアミンスクラブに供されてもよい。
【0143】
[00246]次いで、生成物ストリームは、処理のために水素化分解および自立触媒層へと進む。ある特定の実施形態において、「強力硫黄(hard sulfur)」種、すなわち約93℃~約593℃(200°F~約1100°F)の範囲内、特に約350℃~約500℃(約660°F~約935°F)の範囲内の大気圧沸点を有する硫黄種の除去。
【実施例】
【0144】
[00247]開示される実施形態は、以下の実施例によってさらに例示されるが、実施例は、決して本開示の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。本開示の範囲から逸脱することのない、様々な他の態様、実施形態、修正、およびその均等物は、本明細書における説明を読めば当業者に明らかとなり得る。
【0145】
[00248]実施例1
[00243]本研究は、LC Finingプロセスから得られた生成物の水素化処理を探究する。試験は、アラブ中質油をベースとしたLC Finate材料およびウラルベース供給物を用いて行った。
【0146】
[00244]ベンチスケールユニット(BSU)、触媒系、および供給物
[00245]本研究では、いくつかのベンチスケールユニットを使用した(BSU607、612、および911)。いくつかの触媒系をBSU607(運転56~62)、BSU612(運転37~41)、およびBSU911(運転160~161)において別個の運転で試験した。
【0147】
[00246]使用した層状触媒反応器システムを、表1に記載する。1~2のL/Dまで短くし、約100メッシュアランダムが充填された全押出物を使用して、バイパスおよびチャネリングを防止した。本試験の主な目標の1つは、命題である負荷供給物のアップグレードにおけるICR1000/1001性能の評価である。約10%~約20%のICR1000および/または約14%~約44%のICR1001を含む触媒系を探究した。比較例は、水素化分解触媒としてICR183およびICR191を有する触媒系を含んでいた。ICR250はICR1000と併せて使用され、典型的には、ICR1000またはICR1001の前(それらの上)に位置付けられた。1つの比較例は、ICR250のみ(ICR1000またはICR1001なし)を含有する触媒系を含んでいた。
【0148】
[00247]
【0149】
【0150】
【0151】
[00248]
[00249]ほとんどのユニットで使用された供給物は、LC Finingユニットからの重質減圧軽油(HVGO)(ABQ1560)およびこの供給物から得られた900~°F(482~℃)のVGO(ABQ1967)であった。ABQ1560は、75%のLC finate HVGOおよび25%の直留(SR)HVGOからなる。LC finer生成物とHVGOとの50%ブレンドブレンドを達成するためのABQ1560とSRC HVGOとのブレンドを使用して、活性/安定性に対する希釈効果を評価した(TGQ9588)。使用した追加の供給物は、SRC HVGOで50/50ブレンド(CGQ0003)に希釈されたRAM(Milazzo製油所LC Finer HVGO、TGQ9989)およびSRC HVGOで50/50ブレンド(CGQ0107)に希釈されたNeste(Neste LC Finer Heavier VGO、ABQ1956)からのウラル由来供給物に基づいていた。使用した供給物の特性を、表2に示す。供給物試料の説明を、以下の表2に記載する。
【0152】
[00250]
【0153】
【0154】
【0155】
[00251]
[00252]
[00253]
[00254]
[00255]
[00256]
[00257]
[00258]
[00259]
【0156】
[00260]触媒硫化
[00261]DMDSを注入したVGOと使用する前に、触媒系を硫化した。
【0157】
[00262]- 反応器を250°F(121℃)に加熱し、窒素流下(供給物流なし、200mL/分の窒素流)、周囲圧力で1時間保持した。
[00263]- 321mL/分の流速の水素に変更し、圧力を552×104Pa(800psig)に増加させた。
【0158】
[00264]- 13.45/h(LHSV=1.3/h)の硫化供給物(ディーゼル中2.5wt%のDMDS)に変更し、水素速度を255mL/分(5500SCF/bbl水素)に変更し、10時間保持した。
【0159】
[00265]- 反応器温度を17℃(30°F)/hで250℃(482°F)に上昇させ、5時間保持した。
[00266]- 反応器温度を17℃(30°F)/hで300℃(572°F)に上昇させ、5時間保持した。
【0160】
[00267]- 反応器温度17℃(30°F)/hで343℃(650°F)に上昇させ、6時間保持した。
[00268]- 5.17g/h(LHSV=0.5/h)の速度でディーゼルABQ0920に変更し、圧力を1620×104Pa(2350psig)に増加させ、水素流速を89.07ml/分(5000scf/bbl)に低減し、3日間継続して触媒を脱エッジング(de-edge)した。
【0161】
[00269]試験条件
[00270]運転のプロセス条件は以下の通りであった:
[00271]0.40/h LHSV(脱金属触媒ICR132なしで0.50/h LHSV)および0.8/h LHSV(脱金属触媒ICR132なしで1.0/h LHSV)
[00272]1620×104Pa(2350psig)の全圧(1551×104Pa(2250psi)の入口H2分圧)
[00273]1.424×m3/l(8000SCFB) H2により1回
[00274]- 異なる供給物で目標を達成するために反応器温度は377℃(710°F)~407℃(765°F)であった。
【0162】
[00275]- 149℃(300°F)および371℃(700°F)の目標カットポイントを有するユニット607/612に2つのストリッパを使用した。
[00276]- 一方のストリッパは、371℃(700°F)の目標カットポイントを有するユニット911に使用した。
【0163】
[00277]- Sは、全液体生成物(WLP)には100ppm未満、2つのストリッパユニットにはディーゼル留分中30ppm未満(V3O試料)を目標とした。
[00278]- Nは、WLPでは40ppm未満を目標とした。
【0164】
[00279]全生成物(ガス、STO、STBまたはV3O/V3B)を、収率構造計算のためにSimDistによって分析した。
[00280]硫黄および窒素について、STBまたはV3O/V3B生成物をさらに分析した。選択された収率期間に関して、追加の分析を行った。
【0165】
[00281]これらの上記の条件は、非常に困難な供給物とみなされるABQ1560を用いた最初の試験法として選択された。最近のLC Max水素化処理器/水素化分解器の設計情報(EDP CLG Hydrocracking/Hydrotreating Technology Shandong Sincier Petrochemical Co Ltd、第1巻、2014年9月を参照されたい)は、異なる条件を示しており、すなわち以下を示している:
[00282]- 1517×104Pa(2200psi)の反応器入口圧力、および1379×104Pa(2000psi)の平均水素分圧。
【0166】
[00283]- 入口ガス対油の比率は、我々の最初の試験ケースにおける142.51ml/分(8000SCF/bbl)と比較して、89.07ml/分(5000SCF/bbl)未満である。
【0167】
[00284]- LHSVは、0.4/0.8/hと比較して0.7/hである。
[00285]- 供給物は、45vol%のLC finer生成物および55vol%のSR HVGOの比率のブレンドである。
【0168】
[00286]- LC finer HVGOは、952°F(511℃)の蒸留EPを有し、約22%が482℃(900°F)超で沸騰する。
[00287]表2に記載の、また本研究中に後に使用される追加の供給物はこの問題に対処し、Sincier設計により近い供給物/反応条件をもたらした。
【0169】
[00288]供給物変換は、HCR/HDN/HDSの活性化エネルギーを推定し、正規化温度を計算するために、概して2つの異なる条件下で行われた。温度正規化は、概して、40ppmの窒素、100ppmの硫黄および371~℃(700~°F)留分への30%の水素化分解を目標とした。
【0170】
[00289]結果および考察
[00290]BSU607-56~61、BSU911-160および161ならびに612-37~40における運転条件、および終了した運転の試験結果を、表3、4、5および6に示す(示された値は、複数の24時間収率期間にわたる平均である)。
【0171】
[00291]
【0172】
【0173】
【0174】
【0175】
[00292]
【0176】
【0177】
【0178】
[00293]
【0179】
【0180】
【0181】
[00294]
【0182】
【0183】
【0184】
[00295]371℃(700°F)未満の留分への水素化分解(HCR<371℃(700°F)、30%)、水素化脱窒素(HDN、40ppm)および水素化脱硫(HDS、100ppm)のための正規化温度を、実際の反応器温度および計算された活性化エネルギーと共に
図1~
図10に示す。
【0185】
[00296]482℃(900°F)超で沸騰する大量の最も重質の供給物ABQ1560の場合、いずれの触媒系でも安定な動作は達成できなかった。基本ケース(ICR1000なし)および10%ICR250/10%ICR1000は6℃(10°F)/1000時間の範囲内で高い不活性化を示した(
図1および
図2)が、10%ICR250/20%ICR1000の触媒系は、増加した安定性(約2℃(4°F)/1000時間、
図3)を示し、これはICR1000含量が44%に増加すると失われた(
図4)。基本ケースと比較して、ICR1000を使用する活性上の利点は、11℃(20°F)まで高くなり得る。
図3において、約400hのストリームに対する時間での正規化温度の急上昇は、36時間超の以前の供給物損失に起因し、これは再始動後に活性ペナルティをもたらした。
【0186】
[00297]ABQ1560(全範囲のLC Finate VGOおよびSR HVGOの75/25ブレンド)をLC FinateおよびSR HVGOの50/50ブレンド(TGQ9588)に希釈すると、HDNおよびHDSの両方に対して、ICR191(これはICR183と同じ活性を有するとみなされる)を用いた基本ケースで安定な運転が得られた。0.4/hの低いLHSVでは、40ppmのNおよび100ppmのSに必要な温度は382℃~387℃(720~730°F)であったが、0.8のより高いLHSVでは17℃(30°F)超増加し(
図5)、これはこの供給物の変換に必要な空間速度により近い。
【0187】
[00298]0.8/hのLHSVでのRAM LC FinateとSR HVGOとの50/50ブレンド、すなわちCGQ0003の試験では、8℃(15°F)超の改善された活性を伴って安定な性能が示された(
図6)が、これはおそらくより少量の482+℃(900+°F)材料(RAM中約25wt.%対GSC供給物中約50wt.%)に起因する。LC Finate生成物の希釈は、必要な性能を達成するための手法の1つである。
【0188】
[00299]より低いカットポイントに蒸留することによりABQ1560からABQ1967を調製し、これは約499℃(930°F)の終点を有する約15wt.%の482℃(900°F)+材料を含有した。この供給物を、基本触媒系(ICR191を含有)で試験し、34%および44%のICR1000を含有する系と比較した。希釈ABQ1560(612-37、
図5)および非希釈ABQ1967(612-39、
図9)を用いた基本系の比較では、0.4/hおよび0.8/hのLHSVで同様の活性および安定な性能が示されたが、これは、供給物の482+℃(900+°F)含量の低減が、触媒系の安定性/活性に対する希釈と同様の効果を有することを示唆している。基本ケースと44%のICR1000のケース(
図10)との比較では、44%のICR1000のケースについて安定性の減少が示され、活性の利点は6℃(10°F)の範囲内であった。我々は、34%のICR1000を含有する触媒系に対してABQ1967を用いて運転を開始し、ABQ1560供給物で観察されたように(上記参照)、44%のICR1000について熱管理問題があるかどうかをチェックした。
【0189】
[00300]Sincier設計条件に最も近い供給物は、50/50ブレンドでNeste LC FinateおよびSRC HVGOから作製されたCGQ0107/CGQ0520であった。この供給物を、今までのところ34%ICR1000および44%ICR1000で試験し、現在ICR1000を含まない55%ICR250系で試験している。これらの2つのケース間の差はわずかであり、44%ICR1000系はHDNにおいて若干低い活性を有する。これはまた、44%ICR1000系がABQ1560変換に最初に使用され、高い不活性化率を示したことに起因し得る。両方のケースにおいて、全硫黄および窒素含量は、386~391℃(726~736°F)温度範囲内で40ppm S未満および30ppm N未満に維持され得、数値は7ppm Nおよび15ppm Sまで低くなり得る(表3を参照されたい)。
【0190】
[00301]全てのケースにおけるディーゼル収率は、変換率に応じて13%~32%の間で変動した。
図11は、ディーゼル収率が触媒系よりも供給物組成に依存したことを示し、RAMベース供給物が同じ変換率で最も高い収率を示している。
【0191】
[00302]観察結果
[00303]1.触媒系の安定性は、LC Finateのカットポイントおよび希釈に依存する。少なくとも50/50ブレンドへの希釈、ならびに減少する終点および全体で482+℃(900+°F)の材料が、系の活性/安定性を改善する。
【0192】
[00304]2.ICR1000の添加は、水素化脱窒素(HDN)および水素化脱硫(HDS)活性を大幅に向上させるが、より高いICR1000含量では、34%および44%のICR1000のケースが示すものと比較して改善を示さないようである。
【0193】
[00305]3.ICR1000がないと、低レベルの窒素/硫黄(<10ppm/30ppm)は約388℃(730°F)の必要な運転開始温度で達成され得ない。
[00306]4.同じ変換率でのディーゼル収率(177~371℃(350~700°F)範囲)は、試験した供給物および触媒系に関しては触媒系よりも供給物組成に依存する。
本発明の具体的態様は以下のとおりである。
[態様1]
頂部から底部に向かって、
(i)1種または複数種の脱金属触媒を含む層、
(ii)1種または複数種の担持水素化処理触媒の層、
(iii)1種または複数種の担持水素化分解触媒の層、
(iv)1種または複数種の自立水素化処理触媒の層、
(v)1種または複数種の担持水素化分解触媒の層、
(vi)1種または複数種の自立水素化処理触媒の層、
(vii)1種または複数種の担持水素化処理触媒の層
の順番で配置された触媒層の垂直床またはスタックを備える層状触媒反応器システムであって、前記1種または複数種の自立水素化処理触媒を含む2つの層の全体積は、前記垂直床における触媒の全体積の約10~約50%であり、
前記1種または複数種の担持水素化分解触媒を含む2つの層の全体積は、前記垂直床における触媒の全体積の約10~約30%である、層状触媒反応器システム。
[態様2]
前記1種または複数種の自立水素化処理触媒が、約5~約9wt%のモリブデン、約21~31wt%のニッケル、および約33~約42wt%のタングステンを含む、態様1に記載の層状触媒反応器システム。
[態様3]
前記1種または複数種の脱金属触媒が、モリブデン、コバルトおよびニッケルの酸化物が濃縮された合成酸化アルミニウムまたは天然ケイ酸アルミニウムからなる群から選択される、態様1に記載の層状触媒反応器システム。
[態様4]
前記1種または複数種の自立水素化処理触媒が、アルミナ、ゼオライト、非晶質シリカ-アルミナ、およびチタニア-アルミナからなる群から選択される担体材料上の少なくとも1種のVIII族金属および少なくとも1種のVIB族金属を含む触媒からなる群から選択される、態様1に記載の層状触媒反応器システム。
[態様5]
前記1種または複数種の担持水素化処理触媒が、PdまたはPtを含む触媒からなる群から選択される、態様1に記載の層状触媒反応器システム。
[態様6]
前記1種または複数種の水素化分解触媒が、ニッケル、ニッケル-コバルト-モリブデン、コバルト-モリブデンならびにニッケル-タングステンおよび/またはニッケル-モリブデンを含む触媒からなる群から選択される、態様1に記載の層状触媒反応器システム。
[態様7]
前記1種または複数種の水素化分解触媒が、耐火性酸化物材料を含む多孔質担体材料を含む、態様1に記載の層状触媒反応器システム。
[態様8]
前記1種または複数種の水素化分解触媒が、ニッケル、コバルト、モリブデンおよび/またはタングステンを含む、態様1に記載の層状触媒反応器システム。
[態様9]
頂部から底部に向かって、
(i)1種または複数種の脱金属触媒を含む層、
(ii)1種または複数種の担持水素化処理触媒の層、
(iii)1種または複数種の担持水素化分解触媒の層、
(iv)1種または複数種の自立水素化処理触媒の層、
(v)1種または複数種の担持水素化分解触媒の層、
(vi)1種または複数種の自立水素化処理触媒の層、
(vii)1種または複数種の担持水素化分解触媒の層、
(viii)1種または複数種の自立水素化処理触媒の層、
(ix)1種または複数種の担持水素化処理触媒の層
の順番で配置された触媒層の垂直床またはスタックを備える層状触媒反応器システムであって、前記1種または複数種の自立水素化処理触媒を含む3つの層の全体積は、前記垂直床における触媒の全体積の約9~約45%であり、
前記1種または複数種の担持水素化分解触媒を含む3つの層の全体積は、前記垂直床における触媒の全体積の約15~約30%である、層状触媒反応器システム。
[態様10]
前記1種または複数種の自立水素化処理触媒が、約5~約9wt%のモリブデン、約21~31wt%のニッケル、および約33~約42wt%のタングステンを含む、態様9に記載の層状触媒反応器システム。
[態様11]
前記1種または複数種の自立水素化処理触媒が、アルミナ、ゼオライト、非晶質シリカ-アルミナ、およびチタニア-アルミナからなる群から選択される担体材料上の少なくとも1種のVIII族金属および少なくとも1種のVIB族金属を含む触媒からなる群から選択される、態様9に記載の層状触媒反応器システム。
[態様12]
前記1種または複数種の担持水素化処理触媒が、PdまたはPtを含む触媒からなる群から選択される、態様9に記載の層状触媒反応器システム。
[態様13]
前記1種または複数種の水素化分解触媒が、ニッケル、ニッケル-コバルト-モリブデン、コバルト-モリブデンならびにニッケル-タングステンおよび/またはニッケル-モリブデンを含む触媒からなる群から選択される、態様9に記載の層状触媒反応器システム。
[態様14]
前記1種または複数種の水素化分解触媒が、耐火性酸化物材料を含む多孔質担体材料を含む、態様9に記載の層状触媒反応器システム。
[態様15]
前記1種または複数種の水素化分解触媒が、ニッケル、コバルト、モリブデンおよび/またはタングステンを含む、態様9に記載の層状触媒反応器システム。
[態様16]
炭化水素原料の水素化処理のための方法であって、(i)金属、硫黄、窒素およびオレフィンを含む汚染物質を含有する炭化水素原料を、水素の存在下で層状触媒反応器システムと接触させて、前記炭化水素原料よりもより低い含量の金属、硫黄、窒素およびオレフィンを有する炭化水素生成物を生成するステップと;(ii)前記炭化水素原料を、前記層状触媒反応器システムの層に順次頂部から底部に向けて垂直に通過させるステップと;(iii)前記層状触媒反応器システムの前記底部から前記炭化水素生成物を回収するステップとを含み、
前記層状触媒システムは、頂部から底部に向かって、
(i)1種または複数種の脱金属触媒を含む層、
(ii)1種または複数種の担持水素化処理触媒の層、
(iii)1種または複数種の担持水素化分解触媒の層、
(iv)1種または複数種の自立水素化処理触媒の層、
(v)1種または複数種の担持水素化分解触媒の層、
(vi)1種または複数種の自立水素化処理触媒の層、
(vii)1種または複数種の担持水素化処理触媒の層
の順番で配置された触媒層の垂直床またはスタックを備え、前記1種または複数種の自立水素化処理触媒を含む2つの層の全体積は、前記垂直床における触媒の全体積の約10~約50%であり、
前記1種または複数種の担持水素化分解触媒を含む2つの層の全体積は、前記垂直床における触媒の全体積の約10~約30%である;
あるいは
前記層状触媒反応器システムは、頂部から底部に向かって、
(i)1種または複数種の脱金属触媒を含む層、
(ii)1種または複数種の担持水素化処理触媒の層、
(iii)1種または複数種の担持水素化分解触媒の層、
(iv)1種または複数種の自立水素化処理触媒の層、
(v)1種または複数種の担持水素化分解触媒の層、
(vi)1種または複数種の自立水素化処理触媒の層、
(vii)1種または複数種の担持水素化分解触媒の層、
(viii)1種または複数種の自立水素化処理触媒の層、
(ix)1種または複数種の担持水素化処理触媒の層
の順番で配置された触媒層の垂直床またはスタックを備え、前記1種または複数種の自立水素化処理触媒を含む3つの層の全体積は、前記垂直床における触媒の全体積の約9~約45%であり、
前記1種または複数種の担持水素化分解触媒を含む3つの層の全体積は、前記垂直床における触媒の全体積の約15~約30%である、方法。
[態様17]
層状触媒反応器システムの動作温度が、約371~413℃(約700~約775°F)の範囲内である、態様16に記載の方法。
[態様18]
前記方法の重量空間速度(WHSV)が、約0.4~約1.1/hrの範囲内である、態様16に記載の方法。
[態様19]
前記方法の液空間速度(LHSV)が、約0.3~約0.9/hrの範囲内である、態様16に記載の方法。
[態様20]
前記層状触媒反応器システムの正規化温度が、前記方法の間、約410℃(770°F)未満を維持する、態様16に記載の方法。