(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】配管用断熱モジュール、断熱配管及び断熱配管の製造方法
(51)【国際特許分類】
F16L 59/147 20060101AFI20241121BHJP
F16L 59/065 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
F16L59/147
F16L59/065
(21)【出願番号】P 2020169193
(22)【出願日】2020-10-06
【審査請求日】2023-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【氏名又は名称】村田 卓久
(72)【発明者】
【氏名】吉野 修弘
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-102580(JP,A)
【文献】特開2000-346283(JP,A)
【文献】特開2010-018968(JP,A)
【文献】特開2008-039282(JP,A)
【文献】特開2011-102622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/147
F16L 59/065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の周囲に配置される断熱材と、
前記断熱材の中に、長手方向に間隔を空けて埋め込まれた複数の真空断熱材と、を備え
、
前記断熱材の周囲であって前記真空断熱材に対応する位置に、ガイド部材が配置されており、
前記ガイド部材は、前記長手方向に延びる長手方向部分と、径方向に延びる径方向部分とを有し、前記径方向部分は、前記断熱材に埋め込まれている、配管用断熱モジュール。
【請求項2】
前記断熱材のうち、前記真空断熱材が存在する第1領域と前記真空断熱材が存在しない第2領域とが、外観から識別可能となっている、請求項
1に記載の配管用断熱モジュール。
【請求項3】
前記断熱材のうち、前記真空断熱材が存在する第1領域と前記真空断熱材が存在しない第2領域とで色又は材質が異なる、請求項1
又は2に記載の配管用断熱モジュール。
【請求項4】
前記真空断熱材は、前記断熱材の径方向の最も内側に位置している、請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の配管用断熱モジュール。
【請求項5】
前記真空断熱材は、前記断熱材の径方向の最も外側に位置している、請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の配管用断熱モジュール。
【請求項6】
配管と、
前記配管の周囲に配置された、請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の配管用断熱モジュールと、を備えた、断熱配管。
【請求項7】
配管を準備する工程と、
前記配管の周囲に、請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の配管用断熱モジュールを配置する工程と、を備えた、断熱配管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施の形態は、配管用断熱モジュール、断熱配管及び断熱配管の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷水等を流すために用いられる配管の周囲に断熱材を設置する場合、現場施工が容易なグラスウールや発泡ウレタンなどが多く用いられている。しかしながら、グラスウールや発泡ウレタンは、断熱性能が不十分であるため、より高い断熱性を得るために真空断熱材(VIP)を有する断熱モジュールを用いることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
真空断熱材を有する断熱モジュールを配管の周囲に設置する場合、通常、事前に図面から配管の長さを把握して断熱モジュールの長さを決定する。しかしながら、現場で配管の長さを実測した場合、図面上の配管の長さから誤差が生じることがある。通常の発泡断熱材又は繊維系断熱材を用いる場合、現場で実寸法に合わせて断熱材を切断することが容易である。しかしながら、真空断熱材を用いる場合、現場で切断することによって真空断熱材の真空が破壊され、断熱性能が大きく低下してしまうおそれがある。
【0005】
本開示は、真空断熱材を破壊することなく、断熱モジュールの長さを調整することが可能な、配管用断熱モジュール、断熱配管及び断熱配管の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施の形態による配管用断熱モジュールは、配管の周囲に配置される断熱材と、前記断熱材の中に、長手方向に間隔を空けて埋め込まれた複数の真空断熱材と、を備えている。
【0007】
本実施の形態による配管用断熱モジュールにおいて、前記断熱材の周囲であって前記真空断熱材に対応する位置に、ガイド部材が配置されていてもよい。
【0008】
本実施の形態による配管用断熱モジュールにおいて、前記ガイド部材は、前記長手方向に延びる長手方向部分と、径方向に延びる径方向部分とを有し、前記径方向部分は、前記断熱材に埋め込まれていてもよい。
【0009】
本実施の形態による配管用断熱モジュールにおいて、前記断熱材のうち、前記真空断熱材が存在する第1領域と前記真空断熱材が存在しない第2領域とが、外観から識別可能となっていてもよい。
【0010】
本実施の形態による配管用断熱モジュールにおいて、前記断熱材のうち、前記真空断熱材が存在する第1領域と前記真空断熱材が存在しない第2領域とで色又は材質が異なってもよい。
【0011】
本実施の形態による配管用断熱モジュールにおいて、前記真空断熱材は、前記断熱材の径方向の最も内側に位置していてもよい。
【0012】
本実施の形態による配管用断熱モジュールにおいて、前記真空断熱材は、前記断熱材の径方向の最も外側に位置していてもよい。
【0013】
本実施の形態による断熱配管は、配管と、前記配管の周囲に配置された、本実施の形態による配管用断熱モジュールと、を備えている。
【0014】
本実施の形態による断熱配管の製造方法は、配管を準備する工程と、前記配管の周囲に、本実施の形態による配管用断熱モジュールを配置する工程と、を備えている。
【発明の効果】
【0015】
本実施の形態によれば、真空断熱材を破壊することなく、断熱モジュールの長さを調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施の形態による配管用断熱モジュールを備えた断熱配管を示す部分断面斜視図である。
【
図2】一実施の形態による配管用断熱モジュールを備えた断熱配管の径方向に沿う断面図(
図1のII-II線断面図)である。
【
図3】一実施の形態による配管用断熱モジュールを備えた断熱配管の長手方向に沿う断面図(
図1のIII-III線断面図)である。
【
図4】一実施の形態による配管用断熱モジュールの製造方法を示す断面図である。
【
図5】一実施の形態による断熱配管の製造方法を示す断面図である。
【
図6】第1変形例による配管用断熱モジュールを備えた断熱配管を示す断面図である。
【
図7】第2変形例による配管用断熱モジュールを備えた断熱配管を示す断面図である。
【
図8】第3変形例による配管用断熱モジュールを備えた断熱配管を示す断面図である。
【
図9】第4変形例による配管用断熱モジュールを備えた断熱配管を示す断面図である。
【
図10】第5変形例による配管用断熱モジュールを備えた断熱配管を示す断面図である。
【
図11】第6変形例による配管用断熱モジュールを備えた断熱配管を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら一実施の形態について説明する。以下に示す各図は、模式的に示したものである。そのため、各部の大きさ、形状は理解を容易にするために、適宜誇張している。また、技術思想を逸脱しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。なお、以下に示す各図において、同一部分には同一の符号を付しており、一部詳細な説明を省略する場合がある。また、本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値及び材料名は、実施の形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。本明細書において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば平行や直交、垂直等の用語については、厳密に意味するところに加え、実質的に同じ状態も含むものとする。
【0018】
(断熱配管の構成)
本実施の形態による断熱配管及び配管用断熱モジュールの構成について、
図1乃至
図3を用いて説明する。
【0019】
図1乃至
図3に示すように、本実施の形態による断熱配管10は、配管11と、配管11の周囲に配置された配管用断熱モジュール20と、を備えている。このうち配管用断熱モジュール20は、配管11の周囲に配置される断熱材30と、断熱材30の中に、長手方向DLに間隔を空けて埋め込まれた複数の真空断熱材40と、を備えている。
【0020】
配管11は、内部を冷水等の液体が流れるものであり、液体を流す内部空間を有している。この配管11は、全体として円筒形を有している。配管11は、断熱配管10の径方向DRの中心に位置しており、中心軸CLに沿って延びている。配管11は、外面11aと内面11bとを有し、外面11aと内面11bとは、それぞれ径方向DRにおける断面が円形となっている。なお、本明細書中、中心軸CLとは、配管11を構成する円筒の中心軸をいう。また長手方向DLとは、中心軸CLに沿う方向であり、径方向DRとは、中心軸CLに対して垂直な方向をいう。配管11は、ステンレス鋼、アルミニウム、炭素鋼、合金鋼、銅等の金属材料、又はポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリブテン等の樹脂材料から構成されていても良い。
【0021】
図1乃至
図3に示すように、配管用断熱モジュール20は、断熱材30と、複数の真空断熱材40と、を備えている。配管用断熱モジュール20は、図示しない粘着剤又はバンドによって配管11の周囲に取り付けられていても良い。
【0022】
断熱材30は、配管11の周囲に配置されており、配管11を流れる冷水等の液体の温度変化を抑えるものである。断熱材30は、配管11側に位置する内周面30aと、配管11の反対側に位置する外周面30bと、それぞれ内周面30aと外周面30bとを繋ぐ第1側面30c及び第2側面30dと、を有している。内周面30aは、直接、あるいは粘着剤を介して配管11の外面11aに接触していても良い。外周面30bは、配管用断熱モジュール20の最外面に位置していても良い。第1側面30c及び第2側面30dは、配管11の周囲で、他の配管用断熱モジュール20の第1側面30c及び第2側面30dに接触しても良い。
【0023】
図2に示すように、断熱材30は、径方向DRに沿う断面において、大きい半円(外周面30b)と、小さい半円(内周面30a)と、大きい半円の端点と小さい半円の端点とをそれぞれ結ぶ一対の線分(第1側面30c及び第2側面30d)とによって構成される。断熱材30の径方向DRに沿う厚みT1は、10mm以上200mm以下としても良く、30mm以上100mm以下とすることが好ましい。
【0024】
図3に示すように、断熱材30は、配管11の長手方向DLの全域にわたって設けられていても良く、長手方向DLの一部に設けられていても良い。また、長手方向DLにおいて、断熱材30は、真空断熱材40が存在する第1領域31と、真空断熱材40が存在しない第2領域32とを有している。第1領域31と第2領域32とは、長手方向DLに沿って交互に配置されている。第1領域31と第2領域32とは、一つの断熱材料(例えばポリウレタン発泡体)から一体に構成されても良い。あるいは、第1領域31と第2領域32とは、互いに別体に作製された後、接着等により接着されて一体化されても良い。
【0025】
第1領域31は、真空断熱材40が埋め込まれた領域であり、外周面30bと内周面30aとの間に真空断熱材40が配置されている。第2領域32は、真空断熱材40が埋め込まれていない領域であり、外周面30bと内周面30aとの間の全体に断熱材30が存在している。また第2領域32は、後述するように、配管11への配管用断熱モジュール20の施工時に切断可能な領域となっている。このため、誤って第1領域31を切断しないように、第1領域31と第2領域32とが外観から識別可能となっていることが好ましい。例えば、第1領域31と第2領域32とを区別する目盛り線又は凹凸が形成されていても良い。あるいは、後述するように第1領域31と第2領域32との色又は材質が互いに異なっていても良い。
【0026】
長手方向DLに沿う第1領域31の長さL1は、50mm以上500mm以下としても良く、100mm以上300mm以下とすることが好ましい。複数の第1領域31の長さL1は、互いに同一であっても良い。長手方向DLに沿う第2領域32の長さL2は、10mm以上100mm以下としても良く、20mm以上50mm以下とすることが好ましい。複数の第2領域32の長さL2は、互いに同一であっても良い。真空断熱材40による断熱性を高めるために、第1領域31の長さL1は、第2領域32の長さL2より長いことが好ましい(L1>L2)。なお、
図3において、長手方向DLに沿う第1領域31の長さL1は、長手方向DLに沿う真空断熱材40の長さL3と同一となっているが、これに限られるものではない。第1領域31の長さL1は、真空断熱材40の長さL3よりも長くても良い(L3>L1)。
【0027】
断熱材30は、所望の断熱性を発揮するものであればよく、例えば、押出法発泡ポリスチレン、ビーズ法ポリスチレン等のポリスチレン発泡体、軟質ウレタンフォーム、硬質ウレタンフォーム等のポリウレタン発泡体、高発泡ポリエチレン等のポリエチレン発泡体、フェノールフォーム等の発泡断熱材等を挙げることができる。
【0028】
真空断熱材40は、配管11を流れる冷水等の液体の温度変化をより効果的に抑えるものである。真空断熱材40は、断熱材30の中に、長手方向DLに沿って間隔を空けて埋め込まれている。この場合、真空断熱材40は、断熱材30の第1領域31の中にのみ埋め込まれている。長手方向DLに互いに隣接する真空断熱材40同士の間には、真空断熱材40が埋め込まれていない第2領域32が存在する。
【0029】
真空断熱材40は、径方向DRの内側に位置する内周面40aと、径方向DRの外側に位置する外周面40bと、それぞれ内周面40aと外周面40bとを繋ぐ第1側面40c及び第2側面40dとを有している。内周面40a、外周面40b、第1側面40c及び第2側面40dは、いずれも断熱材30によって覆われている。すなわち、通常の使用状態で真空断熱材40が外方に露出することはない。
【0030】
図2に示すように、真空断熱材40は、略円弧状の帯状に延びている。真空断熱材40は、径方向DRに沿う断面において、大きい円弧(外周面40b)と、小さい円弧(内周面40a)と、大きい円弧の端点と小さい円弧の端点とをそれぞれ結ぶ一対の線分(第1側面40c及び第2側面40d)とによって構成される。真空断熱材40の径方向DRに沿う厚みT2は、5mm以上30mm以下としても良く、8mm以上15mm以下とすることが好ましい。
【0031】
図2に示すように、真空断熱材40は、芯材41と外装材42とを有するものを用いても良い。このうち芯材41としては、例えば、シリカ等の粉体、ウレタンポリマー等の発泡体、グラスウール等の繊維体等の多孔質体を使用してもよい。また外装材42は、芯材41の外周を覆う部材であり、芯材41から熱溶着層、ガスバリア層が順に積層された可撓性を有するシートを使用してもよい。ガスバリア層は、金属箔、樹脂シートの片面に蒸着層が形成された蒸着シート等を使用してもよい。金属箔は、例えばアルミニウムを使用することができる。蒸着層は、例えば、アルミニウム、アルミニウム酸化物、ケイ素酸化物を使用することができる。
【0032】
本実施の形態において、配管11は、互いに同一の構成をもつ2つの配管用断熱モジュール20によって覆われている。各配管用断熱モジュール20は、配管11の周方向の半分ずつを覆うようになっている。すなわち、
図2に示す径方向DRに沿う断面において、各配管用断熱モジュール20の断熱材30は、半円状の外周面30b及び内周面30aを有し、第1側面30cと第2側面30dとがなす角θは180°となっている。このため、一方の配管用断熱モジュール20の第1側面30c及び第2側面30dを、他方の配管用断熱モジュール20の第1側面30c及び第2側面30dと接触させることにより、配管11が全周にわたって覆われる。
【0033】
なお、配管11は、1つ又は3つ以上の配管用断熱モジュール20によって覆われていても良い。例えば、上記角θを120°とした互いに同一の構成をもつ3つの配管用断熱モジュール20、又は上記角θを90°とした互いに同一の構成をもつ4つの配管用断熱モジュール20によって配管11を覆っても良い。あるいは、互いに異なる構成をもつ2つ以上の配管用断熱モジュール20によって配管11を覆っても良い。
【0034】
(配管用断熱モジュールの製造方法)
次に、
図4(a)-(d)を参照して、本実施の形態による配管用断熱モジュール20の製造方法について説明する。
図4(a)-(d)は、本実施の形態による配管用断熱モジュール20の製造方法を示す断面図である。
【0035】
まず
図4(a)に示すように、断熱材30の内側部分30eを作製する。この内側部分30eは、断熱材30のうち、真空断熱材40よりも内側(配管11側)に位置する部分に相当する。内側部分30eは、半円筒形状を有していても良い。内側部分30eは、図示しない金型内でポリウレタン発泡体等の断熱材料を発泡成形することにより作製されても良い。あるいは、内側部分30eは、ブロック状の断熱材料をカットすることにより作製されても良い。
【0036】
次に
図4(b)に示すように、断熱材30を成形するための成形金型80を準備する。成形金型80は、内金型81と外金型82とを有する。このうち内金型81は、配管11の形状に対応する半円状部分83を有する。この内金型81の半円状部分83上に、断熱材30の内側部分30eを配置する。
【0037】
次いで、
図4(c)に示すように、内金型81の半円状部分83上に配置された、断熱材30の内側部分30e上に、複数の真空断熱材40を配置する。複数の真空断熱材40は、長手方向(
図4(c)の紙面前後方向)に互いに間隔を空けて配置する。
【0038】
続いて、
図4(d)に示すように、内金型81と外金型82とによって形成される空間内に、例えばポリウレタン発泡体等の断熱材料を注入し、発泡成形させる。これにより、断熱材30の外側部分30fを作製する。この外側部分30fは、主に真空断熱材40よりも外側(配管11の反対側)に位置する部分に対応する。外側部分30fは、内側部分30eと一体化されて断熱材30を構成する。このようにして、断熱材30と、断熱材30の中に、長手方向に間隔を空けて埋め込まれた複数の真空断熱材40とを備えた、配管用断熱モジュール20が得られる。
【0039】
その後、内金型81と外金型82とを開くことにより、配管用断熱モジュール20を取り出す。
【0040】
(断熱配管の製造方法)
次に、
図5(a)-(c)を参照して、本実施の形態による断熱配管10の製造方法について説明する。
図5(a)-(c)は、本実施の形態による断熱配管10の製造方法を示す断面図である。
【0041】
まず、
図5(a)に示すように、配管11を準備する。この配管11は、既設の配管11であっても良い。この場合、既設の配管11に対して現場で配管用断熱モジュール20を取り付けることにより、断熱配管10が作製される。あるいは、配管11は、断熱配管10を作製するために新規に用意されたものであっても良い。
【0042】
次に、
図5(b)に示すように、配管11の周囲に配管用断熱モジュール20を配置する。具体的には、一対の配管用断熱モジュール20を、配管11の径方向DRの両側から配置し、筒状に形成する。このとき配管用断熱モジュール20は、図示しない粘着剤によって配管11に固定されても良い。あるいは、一対の配管用断熱モジュール20を配管11の周囲に配置した後、図示しないバンドを用いて、配管用断熱モジュール20が配管11からずれないように固定しても良い。
【0043】
ところで、配管用断熱モジュール20を配管11の周囲に固定した際、配管用断熱モジュール20の一部が配管11の終端部11cからはみ出ることが考えられる。すなわち、事前に図面に基づいて配管11の長さを把握して、配管用断熱モジュール20の長さを決めた場合でも、現場で配管11の長さを実測した場合、図面上の配管11の長さから誤差が生じることもある。これに対して本実施の形態においては、断熱材30に、長手方向に間隔を空けて複数の真空断熱材40が埋め込まれている。断熱材30の第2領域32は、真空断熱材40が存在しない領域となっている。
【0044】
このため、
図5(c)に示すように、配管用断熱モジュール20の一部が配管11の終端部11cからはみ出た場合であっても、刃物BL等を用いて断熱材30の第2領域32を切断することができる。この場合、真空断熱材40を破壊することなく、配管用断熱モジュール20の端部を配管11の終端部11cに近づけ、配管用断熱モジュール20の長さを調整することができる。
【0045】
以上説明したように、本実施の形態によれば、断熱材30の中に、長手方向DLに間隔を空けて複数の真空断熱材40が埋め込まれている。これにより、配管11の周囲に配管用断熱モジュール20を取り付ける際、配管11の長さと配管用断熱モジュール20の長さとの間に誤差が生じた場合でも、断熱材30のうち真空断熱材40が存在しない部分を切断して断熱材30の長さを調節することができる。この結果、真空断熱材40を切断することにより真空が破壊され、真空断熱材40の断熱性能が大きく低下してしまうことを抑制することができる。また、断熱材30の第2領域32が所定の幅を有するので、断熱材30を切断する刃物BLがある程度斜めに進入した場合でも、刃物BLが真空断熱材40を傷付けないようにすることができる。
【0046】
(変形例)
次に、
図6乃至
図11を参照して、本実施の形態の各種変形例について説明する。
図6乃至
図11は、それぞれ変形例による断熱配管を示す図である。
図6乃至
図11において、
図1乃至
図5に示す形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0047】
(第1変形例)
図6に示すように、断熱材30の周囲であって真空断熱材40に対応する位置に、ガイド部材50が配置されていても良い。この場合、複数のガイド部材50が長手方向DLに沿って互いに間隔を空けて配置されている。ガイド部材50は、断熱材30の周方向に沿って配置されている。長手方向DLから見た各ガイド部材50の形状は、それぞれ半円状であり、2つの配管用断熱モジュール20のガイド部材50が一体化されて円形状に形成されていても良い。またガイド部材50は、各第1領域31に配置されており、各第2領域32には配置されていない。
【0048】
なお、
図6においてガイド部材50の長手方向DLに沿う長さは、真空断熱材40の長手方向DLに沿う長さと同一となっているが、これに限られるものではない。ガイド部材50の長手方向DLに沿う長さは、真空断熱材40の長手方向DLに沿う長さよりも長くても良い。この場合、ガイド部材50の一部が第2領域32に位置していても良い。
【0049】
ガイド部材50は、例えばアルミニウム、ステンレス等の金属箔、又は硬質の樹脂部材から構成されても良い。ガイド部材50を金属箔から構成した場合、ガイド部材50が太陽光を反射するため、断熱性を向上することができる。ガイド部材50の径方向DRに沿う厚みT3は、0.01mm以上5mm以下としても良く、0.05mm以上2mm以下とすることが好ましい。
【0050】
このような配管用断熱モジュール20を作製する場合、成形金型80の外金型82の内面(天面)にガイド部材50を配置した状態で、成形金型80内の空間に断熱材料を注入し、断熱材30とガイド部材50とを一体化させても良い(
図4(d)参照)。
【0051】
このように断熱材30の周囲であって真空断熱材40に対応する位置に、ガイド部材50が配置されている。これにより、ガイド部材50の有無によって、真空断熱材40が存在する第1領域31と真空断熱材40が存在しない第2領域32とを、外観から識別することができる。この結果、断熱材30を切断する作業を行う際、真空断熱材40を誤って切断してしまうことを抑制することができる。さらに、ガイド部材50を断熱材30の周囲に配置することにより、断熱材30の耐久性を向上させることができる。
【0052】
(第2変形例)
図7に示すように、ガイド部材50は、それぞれ長手方向DLに延びる長手方向部分51と、径方向DRに延びる径方向部分52とを有していても良い。このうち長手方向部分51は、断熱材30の第1領域31の外周に配置されている。径方向部分52は、長手方向部分51から径方向DRの内側に向けて延びている。また径方向部分52は、断熱材30に埋め込まれている。径方向部分52は、長手方向部分51の長手方向DL両側に設けられていても良い。長手方向DLから見た各径方向部分52の形状は、それぞれ半円環形状であり、2つの配管用断熱モジュール20の径方向部分52が一体化されて円環形状に形成されていても良い。長手方向部分51及び径方向部分52は、金属箔又は樹脂部材であっても良く、互いに一体に構成されていても良い。
【0053】
なお、
図7において径方向部分52は、第1領域31と第2領域32との境界に位置しているが、これに限られるものではない。径方向部分52は上記境界よりも第2領域32側に位置していても良い。なお、熱を伝わりにくくするため、径方向部分52は真空断熱材40よりも径方向DRの外側に位置することが好ましい。
【0054】
このように、ガイド部材50は、径方向DRの外側から内側に延びる径方向部分52を有し、径方向部分52は、断熱材30に埋め込まれている。これにより、断熱材30を切断する作業を行う際、径方向部分52が刃物BL等を案内するので、刃物BLが斜めに進入して真空断熱材40を誤って切断してしまうことを抑制することができる。
【0055】
(第3変形例)
図8に示すように、断熱材30のうち、真空断熱材40が存在する第1領域31と、真空断熱材40が存在しない第2領域32との色又は材質が互いに異なっていても良い。第1領域31と第2領域32との色が互いに異なる場合、例えば第1領域31と第2領域32とは、互いに異なる色の顔料を添加したポリウレタン発泡体等の断熱材料から作製されても良い。
【0056】
第1領域31と第2領域32との材質が互いに異なる場合、第1領域31と第2領域32とは、互いに異なる断熱材料から作製されても良い。例えば第1領域31がポリウレタン等の第1の断熱材料から構成され、第2領域32がポリスチレン等の第2の断熱材料から構成されても良い。あるいは、第1領域31と第2領域32とがともにポリウレタン等の同一の断熱材料から構成され、第1領域31と第2領域32とでその発泡倍率又は密度等の物性値を異ならせても良い。なお、刃物BLにより切断しやすくするため、第2領域32が第1領域31よりも軟らかい材質であることが好ましい。あるいは、第1領域31と第2領域32とで色と材質との両方を異ならせても良い。
【0057】
このような配管用断熱モジュール20を作製する場合、第1領域31と第2領域32とをそれぞれ別個に作製し、これらを接着剤又は粘着剤によって長手方向DLに取り付けても良い。
【0058】
本変形例によれば、断熱材30のうち、真空断熱材40が存在する第1領域31と、真空断熱材40が存在しない第2領域32との色又は材質が互いに異なっている。これにより、色又は材質の違いによって、真空断熱材40が存在する第1領域31と真空断熱材40が存在しない第2領域32とを、外観から識別することができる。この結果、断熱材30を切断する作業を行う際、真空断熱材40を誤って切断してしまうことを抑制することができる。さらに、第2領域32の材質を第1領域31の材質よりも柔らかいものとした場合、第2領域32を切断しやすくすることができる。
【0059】
(第4変形例)
図9に示すように、ガイド部材50は、それぞれ長手方向部分51と径方向部分52を有し、かつ第1領域31と第2領域32との色又は材質が互いに異なっていても良い。これにより、断熱材30を切断する作業を行う際、第1領域31と第2領域32とが外観から識別しやすくなっており、かつ径方向部分52が刃物BL等を案内するので、真空断熱材40を誤って切断してしまうことをより効果的に抑制できる。
【0060】
(第5変形例)
図10に示すように、真空断熱材40は、断熱材30の径方向DRの最も内側に位置していても良い。すなわち真空断熱材40は、配管11に接触する位置に設けられている。この場合、真空断熱材40よりも径方向DRの内側に断熱材30が存在しないので、配管用断熱モジュール20をより薄肉化することができる。また配管用断熱モジュール20の径方向DR内側から真空断熱材40の有無を識別することができる。さらに断熱材30の内側部分30eを作製する工程(
図4(a)参照)を設けなくても良いので、配管用断熱モジュール20の製造工程を簡略化することができる。
【0061】
(第6変形例)
図11に示すように、真空断熱材40は、断熱材30の径方向DRの最も外側に位置していても良い。すなわち真空断熱材40は、ガイド部材50に接触する位置に設けられていても良い。この場合、真空断熱材40よりも径方向DRの外側に断熱材30が存在しないので、配管用断熱モジュール20をより薄肉化することができる。このような配管用断熱モジュール20を作製する場合、成形金型80の外金型82の内面(天面)にガイド部材50及び真空断熱材40を配置した状態で、成形金型80内の空間に断熱材料を注入し、断熱材30と真空断熱材40とガイド部材50とを一体化させても良い(
図4(d)参照)。この場合、断熱材30の内側部分30eを作製する工程(
図4(a)参照)を設けなくても良いので、製造工程を簡略化することができる。さらに、成形金型80内に断熱材料を注入する際(
図4(d)参照)、断熱材料の圧力が加わった場合でも、ガイド部材50によって、真空断熱材40の成形金型80内でのずれを抑えることができる。
【0062】
上記実施の形態及び変形例に開示されている複数の構成要素を必要に応じて適宜組合せることも可能である。あるいは、上記実施の形態及び変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 断熱配管
11 配管
20 配管用断熱モジュール
30 断熱材
31 第1領域
32 第2領域
40 真空断熱材
50 ガイド部材
51 長手方向部分
52 径方向部分