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特許7591192検査システム、検査方法及び検査システムの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】検査システム、検査方法及び検査システムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3563 20140101AFI20241121BHJP
   G01N 21/359 20140101ALI20241121BHJP
【FI】
G01N21/3563
G01N21/359
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020184000
(22)【出願日】2020-11-02
(65)【公開番号】P2022073798
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100158964
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】北村 明子
(72)【発明者】
【氏名】山本 学
(72)【発明者】
【氏名】北村 満
(72)【発明者】
【氏名】上羽 陽介
(72)【発明者】
【氏名】小池 秀明
(72)【発明者】
【氏名】北島 一輝
(72)【発明者】
【氏名】川崎 啓史
(72)【発明者】
【氏名】山本 星子
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-086412(JP,A)
【文献】特開2019-045240(JP,A)
【文献】特表2015-520398(JP,A)
【文献】特開2015-141067(JP,A)
【文献】特開2020-067275(JP,A)
【文献】特開2005-331386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/958
G01J 3/00-3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シートの樹脂層の組成を判定する検査システムであって、
雰囲気温度をモニタする温度モニタと、
前記樹脂シートに照射光として近赤外線を照射する照射部を含む照射装置と、
前記樹脂シートによって反射された光又は前記樹脂シートを透過した光の強度を検出する検出装置と、
複数の波長点における前記強度に関する情報を含むスペクトルを生成する生成装置と、
複数の波長点における前記光の強度の値、又は、前記スペクトルに、平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって得られる値を、各波長点に対応する複数のパラメータ値として算出する処理装置と、
複数のパラメータ値と第1の候補組成及び第2の候補組成との間の関係を表す標準回帰式が記憶された記憶部と、前記標準回帰式を前記複数のパラメータ値に適用して類似度を算出する解析部と、前記類似度と前記雰囲気温度に対応する閾値との比較に基づいて、前記樹脂層の組成が前記第1の候補組成又は前記第2の候補組成のいずれであるかを判定する判定部と、を含む判定装置と、を備え、
前記第2の候補組成は、第21の候補組成及び第22の候補組成に対応しており、
前記記憶部は、標準温度におけるパラメータ値と前記第21の候補組成及び前記第22の候補組成との間の関係を表すサブ標準回帰式を記憶しており、
前記樹脂層の組成が前記第2の候補組成であると判定された場合、前記解析部は、前記サブ標準回帰式を前記複数のパラメータ値に適用してサブ類似度を算出し、
前記判定部は、前記サブ類似度と前記雰囲気温度に対応するサブ閾値との比較に基づいて、前記樹脂層の組成が前記第21の候補組成又は前記第22の候補組成のいずれであるかを判定する、検査システム。
【請求項2】
樹脂シートの樹脂層の組成を判定する検査システムであって、
雰囲気温度をモニタする温度モニタと、
前記樹脂シートに照射光として近赤外線を照射する照射部を含む照射装置と、
前記樹脂シートによって反射された光又は前記樹脂シートを透過した光の強度を検出する検出装置と、
複数の波長点における前記強度に関する情報を含むスペクトルを生成する生成装置と、
複数の波長点における前記光の強度の値、又は、前記スペクトルに、平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって得られる値を、各波長点に対応する複数のパラメータ値として算出する処理装置と、
パラメータ値と第1の候補組成及び第2の候補組成との間の、複数の温度における関係を表す複数の回帰式が記憶された記憶部と、前記複数の回帰式の中から前記雰囲気温度に対応する回帰式を選択し、選択した前記回帰式を前記複数のパラメータ値に適用して類似度を算出する解析部と、前記類似度に基づいて、前記樹脂層の組成が前記第1の候補組成又は前記第2の候補組成のいずれであるかを判定する判定部と、を含む判定装置と、を備え、
前記第2の候補組成は、第21の候補組成及び第22の候補組成に対応しており、
前記記憶部は、パラメータ値と前記第21の候補組成及び前記第22の候補組成との間の、複数の温度における関係を表す複数のサブ回帰式を記憶しており、
前記樹脂層の組成が前記第2の候補組成と判定された場合、前記解析部は、前記複数のサブ回帰式の中から前記雰囲気温度に対応するサブ回帰式を選択し、選択した前記サブ回帰式を前記複数のパラメータ値に適用してサブ類似度を算出し、
前記判定部は、前記サブ類似度に基づいて、前記樹脂層の組成が前記第21の候補組成又は前記第22の候補組成のいずれであるかを判定する、検査システム。
【請求項3】
前記照射装置及び/又は前記検出装置を冷却する冷却部を備える、請求項1又は2に記載の検査システム。
【請求項4】
前記処理装置は、800nm以上2500nm以下の波長範囲内において、前記樹脂層のパラメータ値を69個以上含む、請求項1乃至のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項5】
前記照射装置は、前記照射光を拡散させる拡散部をさらに含む、請求項1乃至のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項6】
前記検出装置は、近赤外分光器を含む、請求項1乃至のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項7】
前記検出装置は、近赤外ハイパースペクトルカメラを含む、請求項1乃至のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項8】
樹脂シートの樹脂層の組成を判定する検査方法であって、
前記樹脂シートに照射光として近赤外線を照射する第1照射工程と、
前記樹脂シートによって反射された光又は前記樹脂シートを透過した光の強度を検出する第1検出工程と、
複数の波長点における前記強度に関する情報を含むスペクトルを生成する第1生成工程と、
複数の波長点における前記光の強度の値、又は、前記スペクトルに、平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数のパラメータ値として算出する第1処理工程と、
標準温度におけるパラメータ値と第1の候補組成及び第2の候補組成との間の関係を表す標準回帰式を前記複数のパラメータ値に適用して類似度を算出する解析工程と、
前記類似度と雰囲気温度に対応する閾値との比較に基づいて、前記樹脂層の組成が前記第1の候補組成又は前記第2の候補組成のいずれであるかを判定する判定工程と、を備え、
前記第2の候補組成は、第21の候補組成及び第22の候補組成に対応しており、
前記樹脂層の組成が前記第2の候補組成であると判定された場合、前記解析工程は、標準温度におけるパラメータ値と前記第21の候補組成及び前記第22の候補組成との間の関係を表すサブ標準回帰式を前記複数のパラメータ値に適用してサブ類似度を算出する工程を含み、
前記判定工程は、前記サブ類似度と前記雰囲気温度に対応するサブ閾値との比較に基づいて、前記樹脂層の組成が前記第21の候補組成又は前記第22の候補組成のいずれであるかを判定する工程を含む、検査方法。
【請求項9】
樹脂シートの樹脂層の組成を判定する検査方法であって、
前記樹脂シートに照射光として近赤外線を照射する第1照射工程と、
前記樹脂シートによって反射された光又は前記樹脂シートを透過した光の強度を検出する第1検出工程と、
複数の波長点における前記強度に関する情報を含むスペクトルを生成する第1生成工程と、
複数の波長点における前記光の強度の値、又は、前記スペクトルに、平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数のパラメータ値として算出する第1処理工程と、
パラメータ値と第1の候補組成及び第2の候補組成との間の、複数の温度における関係を表す複数の回帰式の中から、雰囲気温度に対応する回帰式を選択し、選択した前記回帰式を前記複数のパラメータ値に適用して類似度を算出する解析工程と、
前記類似度に基づいて、前記樹脂層の組成が前記第1の候補組成又は前記第2の候補組成のいずれであるかを判定する判定工程と、を備え、
前記第2の候補組成は、第21の候補組成及び第22の候補組成に対応しており、
前記樹脂層の組成が前記第2の候補組成と判定された場合、前記解析工程は、パラメータ値と前記第21の候補組成及び前記第22の候補組成との間の、複数の温度における関係を表す複数のサブ回帰式の中から、前記雰囲気温度に対応するサブ回帰式を選択し、選択した前記サブ回帰式を前記複数のパラメータ値に適用してサブ類似度を算出する工程を含み、
前記判定工程は、前記サブ類似度に基づいて、前記樹脂層の組成が前記第21の候補組成又は前記第22の候補組成のいずれであるかを判定する工程を含む、検査方法。
【請求項10】
前記第1処理工程は、800nm以上2500nm以下の波長範囲内において、前記樹脂層のパラメータ値を69個以上算出する、請求項8又は9に記載の検査方法。
【請求項11】
前記第1照射工程は、前記照射光を拡散させることを含む、請求項乃至10のいずれか一項に記載の検査方法。
【請求項12】
前記第1検出工程は、近赤外分光器を用いて前記スペクトルを取得する、請求項乃至11のいずれか一項に記載の検査方法。
【請求項13】
前記第1検出工程は、近赤外ハイパースペクトルカメラを用いて前記スペクトルを取得する、請求項乃至11のいずれか一項に記載の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、検査システム、検査方法及び検査システムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物を非破壊で検査するシステム及び方法が提案されている。例えば特許文献1は、光を樹脂に照射することによって得られた反射スペクトルに基づいて、樹脂の組成を検査する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-86412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
雰囲気温度に応じてスペクトルが変化することがある。
【0005】
本開示の実施形態は、雰囲気温度の影響を考慮して対象物の組成を判定することができる検査システム、検査方法及び検査システムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態は、樹脂シートの樹脂層の組成を判定する検査システムであって、
雰囲気温度をモニタする温度モニタと、
前記樹脂シートに照射光として近赤外線を照射する照射部を含む照射装置と、
前記樹脂シートによって反射された光又は前記樹脂シートを透過した光の強度を検出する検出装置と、
複数の波長点における前記強度に関する情報を含むスペクトルを生成する生成装置と、
複数の波長点における前記光の強度の値、又は、前記スペクトルに、平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって得られる値を、各波長点に対応する複数のパラメータ値として算出する処理装置と、
複数のパラメータ値と第1の候補組成及び第2の候補組成との間の関係を表す標準回帰式が記憶された記憶部と、前記標準回帰式を前記複数のパラメータ値に適用して類似度を算出する解析部と、前記類似度と前記雰囲気温度に対応する閾値との比較に基づいて、前記樹脂層の組成が前記第1の候補組成又は前記第2の候補組成のいずれであるかを判定する判定部と、を含む判定装置と、を備える、検査システムである。
【0007】
本開示の一実施形態による検査システムにおいて、前記第2の候補組成は、第21の候補組成及び第22の候補組成に対応しており、前記記憶部は、標準温度におけるパラメータ値と前記第21の候補組成及び前記第22の候補組成との間の関係を表すサブ標準回帰式を記憶しており、前記樹脂層の組成が前記第2の候補組成であると判定された場合、前記解析部は、前記サブ標準回帰式を前記複数のパラメータ値に適用してサブ類似度を算出し、前記判定部は、前記サブ類似度と前記雰囲気温度に対応するサブ閾値との比較に基づいて、前記樹脂層の組成が前記第21の候補組成又は前記第22の候補組成のいずれであるかを判定してもよい。
【0008】
本開示の一実施形態は、樹脂シートの樹脂層の組成を判定する検査システムであって、
雰囲気温度をモニタする温度モニタと、
前記樹脂シートに照射光として近赤外線を照射する照射部を含む照射装置と、
前記樹脂シートによって反射された光又は前記樹脂シートを透過した光の強度を検出する検出装置と、
複数の波長点における前記強度に関する情報を含むスペクトルを生成する生成装置と、
複数の波長点における前記光の強度の値、又は、前記スペクトルに、平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって得られる値を、各波長点に対応する複数のパラメータ値として算出する処理装置と、
パラメータ値と第1の候補組成及び第2の候補組成との間の、複数の温度における関係を表す複数の回帰式が記憶された記憶部と、前記複数の回帰式の中から前記雰囲気温度に対応する回帰式を選択し、選択した前記回帰式を前記複数のパラメータ値に適用して類似度を算出する解析部と、前記類似度に基づいて、前記樹脂層の組成が前記第1の候補組成又は前記第2の候補組成のいずれであるかを判定する判定部と、を含む判定装置と、を備える、検査システムである。
【0009】
本開示の一実施形態による検査システムにおいて、前記第2の候補組成は、第21の候補組成及び第22の候補組成に対応しており、前記記憶部は、パラメータ値と前記第21の候補組成及び前記第22の候補組成との間の、複数の温度における関係を表す複数のサブ回帰式を記憶しており、前記樹脂層の組成が前記第2の候補組成と判定された場合、前記解析部は、前記複数のサブ回帰式の中から前記雰囲気温度に対応するサブ回帰式を選択し、選択した前記サブ回帰式を前記複数のパラメータ値に適用してサブ類似度を算出し、前記判定部は、前記サブ類似度に基づいて、前記樹脂層の組成が前記第21の候補組成又は前記第22の候補組成のいずれであるかを判定してもよい。
【0010】
本開示の一実施形態による検査システムは、前記照射装置及び/又は前記検出装置を冷却する冷却部を備えていてもよい。
【0011】
本開示の一実施形態は、樹脂シートの樹脂層の組成を判定する検査システムであって、
前記樹脂シートに照射光として近赤外線を照射する照射部を含む照射装置と、
前記樹脂シートによって反射された光又は前記樹脂シートを透過した光の強度を検出する検出装置と、
前記照射装置及び/又は前記検出装置を冷却する冷却部と、
複数の波長点における前記強度に関する情報を含むスペクトルを生成する生成装置と、
複数の波長点における前記光の強度の値、又は、前記スペクトルに、平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって得られる値を、各波長点に対応する複数のパラメータ値として算出する処理装置と、
パラメータ値と第1の候補組成及び第2の候補組成との間の関係を表す回帰式が記憶された記憶部と、前記回帰式を前記複数のパラメータ値に適用して類似度を算出する解析部と、前記類似度に基づいて、前記樹脂層の組成が前記第1の候補組成又は前記第2の候補組成のいずれであるかを判定する判定部と、を含む判定装置と、を備える、検査システムである。
【0012】
本開示の一実施形態による検査システムにおいて、前記処理装置は、800nm以上2500nm以下の波長範囲内において、前記樹脂層のパラメータ値を69個以上含んでいてもよい。
【0013】
本開示の一実施形態による検査システムにおいて、前記照射装置は、前記照射光を拡散させる拡散部をさらに含んでいてもよい。
【0014】
本開示の一実施形態による検査システムにおいて、前記検出装置は、近赤外分光器を含んでいてもよい。
【0015】
本開示の一実施形態による検査システムにおいて、前記検出装置は、近赤外ハイパースペクトルカメラを含んでいてもよい。
【0016】
本開示の一実施形態は、樹脂シートの樹脂層の組成を判定する検査方法であって、
前記樹脂シートに照射光として近赤外線を照射する第1照射工程と、
前記樹脂シートによって反射された光又は前記樹脂シートを透過した光の強度を検出する第1検出工程と、
複数の波長点における前記強度に関する情報を含むスペクトルを生成する第1生成工程と、
複数の波長点における前記光の強度の値、又は、前記スペクトルに、平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数のパラメータ値として算出する第1処理工程と、
標準温度におけるパラメータ値と第1の候補組成及び第2の候補組成との間の関係を表す標準回帰式を前記複数のパラメータ値に適用して類似度を算出する解析工程と、
前記類似度と雰囲気温度に対応する閾値との比較に基づいて、前記樹脂層の組成が前記第1の候補組成又は前記第2の候補組成のいずれであるかを判定する判定工程と、を備える、検査方法である。
【0017】
本開示の一実施形態による検査方法において、前記第2の候補組成は、第21の候補組成及び第22の候補組成に対応しており、前記樹脂層の組成が前記第2の候補組成であると判定された場合、前記解析工程は、標準温度におけるパラメータ値と前記第21の候補組成及び前記第22の候補組成との間の関係を表すサブ標準回帰式を前記複数のパラメータ値に適用してサブ類似度を算出する工程を含み、前記判定工程は、前記サブ類似度と前記雰囲気温度に対応するサブ閾値との比較に基づいて、前記樹脂層の組成が前記第21の候補組成又は前記第22の候補組成のいずれであるかを判定する工程を含んでいてもよい。
【0018】
本開示の一実施形態は、樹脂シートの樹脂層の組成を判定する検査方法であって、
前記樹脂シートに照射光として近赤外線を照射する第1照射工程と、
前記樹脂シートによって反射された光又は前記対象物を透過した光の強度を検出する第1検出工程と、
複数の波長点における前記強度に関する情報を含むスペクトルを生成する第1生成工程と、
複数の波長点における前記光の強度の値、又は、前記スペクトルに、平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数のパラメータ値として算出する第1処理工程と、
パラメータ値と第1の候補組成及び第2の候補組成との間の、複数の温度における関係を表す複数の回帰式の中から、雰囲気温度に対応する回帰式を選択し、選択した前記回帰式を前記複数のパラメータ値に適用して類似度を算出する解析工程と、
前記類似度に基づいて、前記樹脂層の組成が前記第1の候補組成又は前記第2の候補組成のいずれであるかを判定する判定工程と、を備える、検査方法である。
【0019】
本開示の一実施形態による検査方法において、前記第2の候補組成は、第21の候補組成及び第22の候補組成に対応しており、前記樹脂層の組成が前記第2の候補組成と判定された場合、前記解析工程は、パラメータ値と前記第21の候補組成及び前記第22の候補組成との間の、複数の温度における関係を表す複数のサブ回帰式の中から、前記雰囲気温度に対応するサブ回帰式を選択し、選択した前記サブ回帰式を前記複数のパラメータ値に適用してサブ類似度を算出する工程を含み、前記判定工程は、前記サブ類似度に基づいて、前記樹脂層の組成が前記第21の候補組成又は前記第22の候補組成のいずれであるかを判定する工程を含んでいてもよい。
【0020】
本開示の一実施形態による検査方法において、前記第1処理工程は、800nm以上2500nm以下の波長範囲内において、前記樹脂層のパラメータ値を69個以上算出してもよい。
【0021】
本開示の一実施形態による検査方法において、前記第1照射工程は、前記照射光を拡散させることを含んでいてもよい。
【0022】
本開示の一実施形態による検査方法において、前記第1検出工程は、近赤外分光器を用いて前記スペクトルを取得してもよい。
【0023】
本開示の一実施形態による検査方法において、前記第1検出工程は、近赤外ハイパースペクトルカメラを用いて前記スペクトルを取得してもよい。
【0024】
本開示の一実施形態は、検査システムの製造方法であって、
標準温度を含む複数の温度において、第1の候補組成を含む第1の標準試料及び第2の候補組成を含む第2の標準試料のそれぞれに照射光として近赤外線を照射する標準試料照射工程と、
複数の温度において前記第1の標準試料及び前記第2の標準試料によって反射された光又は前記第1の標準試料及び前記第2の標準試料を透過した光をそれぞれ受光し、各々が複数の波長点における前記光の強度に関する情報を含む、第1の標準スペクトル及び第2の標準スペクトルを取得する標準試料検出工程と、
前記標準スペクトルの複数の波長点における前記光の強度の値、又は、前記標準スペクトルの各々に、平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数の第1の標準パラメータ値及び複数の第2の標準パラメータ値として温度ごとにそれぞれ算出する標準試料処理工程と、
前記標準温度における前記複数の第1の標準パラメータ値及び前記複数の第2の標準パラメータ値を、多変量解析手法を用いて解析することにより、複数の波長点におけるパラメータ値と第1の候補組成及び第2の候補組成との間の、標準温度において成立する関係を表す標準回帰式を作成する回帰式作成工程と、
前記標準温度以外の温度における前記複数の第1の標準パラメータ値及び前記複数の第2の標準パラメータ値に前記標準回帰式を適用することによって算出される類似度に基づいて、前記第1の候補組成と前記第2の候補組成とを区別する閾値を温度ごとに算出する閾値作成工程と、を備える、検査システムの製造方法である。
【0025】
本開示の一実施形態は、検査システムの製造方法であって、
標準温度を含む複数の温度において、第1の候補組成を含む第1の標準試料及び第2の候補組成を含む第2の標準試料のそれぞれに照射光として近赤外線を照射する標準試料照射工程と、
複数の温度において前記第1の標準試料及び前記第2の標準試料によって反射された光又は前記第1の標準試料及び前記第2の標準試料を透過した光をそれぞれ受光し、各々が複数の波長点における前記光の強度に関する情報を含む、第1の標準スペクトル及び第2の標準スペクトルを取得する標準試料検出工程と、
前記標準スペクトルの複数の波長点における前記光の強度の値、又は、前記標準スペクトルの各々に、平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数の第1の標準パラメータ値及び複数の第2の標準パラメータ値として温度ごとにそれぞれ算出する標準試料処理工程と、
前記複数の第1の標準パラメータ値及び前記複数の第2の標準パラメータ値を、多変量解析手法を用いて温度ごとに解析することにより、複数の波長点におけるパラメータ値と第1の候補組成及び第2の候補組成との間の関係を表す回帰式を温度ごとに作成する回帰式作成工程と、を備える、検査システムの製造方法である。
【0026】
本開示の一実施形態は、検査システムの製造方法であって、
複数の温度において、第1の候補組成を含む第1の標準試料及び第2の候補組成を含む第2の標準試料のそれぞれに照射光として近赤外線を照射する標準試料照射工程と、
複数の温度において前記第1の標準試料及び前記第2の標準試料によって反射された光又は前記第1の標準試料及び前記第2の標準試料を透過した光をそれぞれ受光し、各々が複数の波長点における前記光の強度に関する情報を含む、第1の標準スペクトル及び第2の標準スペクトルを取得する標準試料検出工程と、
前記標準スペクトルの複数の波長点における前記光の強度の値、又は、前記標準スペクトルの各々に、平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数の第1の標準パラメータ値及び複数の第2の標準パラメータ値として温度ごとにそれぞれ算出する標準試料処理工程と、
温度ごとの前記複数の第1の標準パラメータ値及び前記複数の第2の標準パラメータ値を、多変量解析手法を用いて解析することにより、複数の波長点におけるパラメータ値と第1の候補組成及び第2の候補組成との間の、複数の温度のいずれにおいても成立する関係を表す汎用回帰式を作成する回帰式作成工程と、を備える、検査システムの製造方法である。
【発明の効果】
【0027】
本開示の一実施形態によれば、雰囲気温度の影響を考慮して対象物の組成を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】一実施形態に係る樹脂シートを示す断面図である。
図2】一実施形態に係る検査システムを示すブロック図である。
図3】一実施形態に係る検査システムの照射装置及び検出装置を模式的に示す図である。
図4】照射装置及び検出装置を収容するケースの一例を示す斜視図である。
図5】検査システムの一使用例を示す図である。
図6】標準反射スペクトルの一例を示す図である。
図7】多変量解析手法を用いた解析の結果を示す図である。
図8】第1温度において第1の標準試料及び第2の標準試料のパラメータに標準回帰式を適用した結果を示す図である。
図9】第2温度において第1の標準試料及び第2の標準試料のパラメータに標準回帰式を適用した結果を示す図である。
図10】第3温度において第1の標準試料及び第2の標準試料のパラメータに標準回帰式を適用した結果を示す図である。
図11】第4温度において第1の標準試料及び第2の標準試料のパラメータに標準回帰式を適用した結果を示す図である。
図12】第1温度~第4温度における閾値の算出結果を示す図である。
図13】標準回帰式及び第1閾値~第4閾値を用いてサンプルの組成を判定した結果を示す図である。
図14】校正スペクトルの一例を示す図である。
図15】校正試料に光を照射する工程の一例を示す図である。
図16】一実施形態に係る検査システムを示すブロック図である。
図17】一実施形態に係る検査システムを示すブロック図である。
図18】汎用回帰式の算出結果を示す図である。
図19】汎用回帰式及び汎用閾値を用いてサンプルの組成を判定した結果を示す図である。
図20】検査工程の一例を示すフローチャートである。
図21】対象反射スペクトルの一例を示す図である。
図22】平均化スペクトルの一例を示す図である。
図23】対象反射スペクトルと平均化スペクトルの差の一例を示す図である。
図24】第1の対象物の測定結果を示す図である。
図25】第2の対象物の測定結果を示す図である。
図26】第3の対象物の測定結果を示す図である。
図27】第4の対象物の測定結果を示す図である。
図28】第5の対象物の測定結果を示す図である。
図29】第6の対象物の測定結果を示す図である。
図30】サンプルの組成を判定した結果の一例を示す図である。
図31】一実施形態に係る検査システムを示すブロック図である。
図32】校正工程の一例を示すフローチャートである。
図33】第1の校正試料の測定結果を示す図である。
図34】第1の校正試料の測定結果を示す図である。
図35】第2の校正試料の測定結果を示す図である。
図36】第2の校正試料の測定結果を示す図である。
図37】サンプルの組成を判定した結果の一例を示す図である。
図38】サンプルの組成を判定した結果の一例を示す図である。
図39】サンプルの組成を判定した結果の一例を示す図である。
図40】ケースの一例を示す斜視図である。
図41】ケースの一例を示す斜視図である。
図42】ケースの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示の実施形態に係る対象物及び検査システムの構成について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は本開示の実施形態の一例であって、本開示はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。本明細書において、「基材」や「シート」など用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「基材」は、シートやフィルムと呼ばれ得るような部材も含む概念である。
【0030】
本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」や「直交」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈する。
【0031】
本明細書において、あるパラメータに関して複数の上限値の候補及び複数の下限値の候補が挙げられている場合、そのパラメータの数値範囲は、任意の1つの上限値の候補と任意の1つの下限値の候補とを組み合わせることによって構成されてもよい。例えば、「パラメータBは、例えばA1以上であり、A2以上であってもよく、A3以上であってもよい。パラメータBは、例えばA4以下であり、A5以下であってもよく、A6以下であってもよい。」と記載されている場合を考える。この場合、パラメータBの数値範囲は、A1以上A4以下であってもよく、A1以上A5以下であってもよく、A1以上A6以下であってもよく、A2以上A4以下であってもよく、A2以上A5以下であってもよく、A2以上A6以下であってもよく、A3以上A4以下であってもよく、A3以上A5以下であってもよく、A3以上A6以下であってもよい。
【0032】
本実施形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号又は類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
【0033】
(第1の実施の形態)
図1は、対象物10の一例を示す図である。対象物10は、例えば樹脂シートである。樹脂シートは、床材などの建材の化粧シート、農業用シート、半導体素子の封止シート、包装用シートなど、様々な用途で用いられる。
【0034】
対象物10は、基材シート11と、基材シート11に積層された樹脂層12と、を備える。樹脂層12は、基材シート11の面の全域に設けられていてもよく、若しくは、模様を呈するように基材シート11の面に部分的に設けられていてもよい。以下の説明において、樹脂層12側に位置する対象物10の面を第1面10xと称し、基材シート11側に位置する対象物10の面を第2面10yと称する。
【0035】
基材シート11は、例えば紙、合成樹脂などを含む。より具体的には、基材シート11は、セルロース樹脂を含んでいてもよく、ポリプロピレンなどのオレフィン系合成樹脂を含んでいてもよい。基材シート11の坪量は、例えば50g/m以上である。基材シート11の坪量は、例えば300g/m以下であり、120g/m以下であってもよい。
【0036】
樹脂層12は、樹脂材料を含む。樹脂層12に含まれる樹脂材料は、特に限定されないが、例えば高分子樹脂である。高分子樹脂の例としては、ポリエチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミドなどを挙げることができる。
ポリエチレン系樹脂の例としては、ポリエチレンの他、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、エチレン-αオレフィン共重合体などの、エチレンとエチレン以外の成分とをモノマーとするエチレン共重合体などを挙げることができる。また、樹脂層12は、ゴムを含んでいてもよい。ゴムの例としては、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム、スチレン-ブタジエン共重合ゴムなどを挙げることができる。樹脂層12の厚みは、例えば40μm以上である。樹脂層12の厚みは、700μm以下であってもよい。
後述するように、樹脂層12は、樹脂材料に加えて、発泡剤又は発泡助剤を含んでいてもよい。この場合、発泡前の樹脂層12の厚みは、例えば40μm以上100μm以下である。発泡後の樹脂層12の厚みは、例えば300μm以上700μm以下である。
【0037】
樹脂層12は、顔料などの着色材を更に含んでいてもよい。顔料は、無機顔料であってもよく、有機顔料であってもよい。無機顔料の例としては、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、黄鉛、モリブデートオレンジ、カドミウムイエロー、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、酸化鉄(弁柄)、カドミウムレッド、群青、紺青、コバルトブルー、酸化クロム、コバルトグリーン、アルミニウム粉、ブロンズ粉、雲母チタン、硫化亜鉛等が挙げられる。また、有機顔料の例としては、アニリンブラック、ペリレンブラック、アゾ系(アゾレーキ、不溶性アゾ、縮合アゾ)、多環式(イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ペリノン、フラバントロン、アントラピリミジン、アントラキノン、キナクリドン、ペリレン、ジケトピロロピロール、ジブロムアンザントロン、ジオキサジン、チオインジゴ、フタロシアニン、インダントロン、ハロゲン化フタロシアニン)等が挙げられる。樹脂層12における顔料の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、例えば5質量部以上であってもよく、15質量部以上であってもよい。樹脂層12における顔料の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、例えば50質量部以下であってもよく、30質量部以下であってもよい。
【0038】
樹脂層12は、フィラーを含んでいてもよい。これにより、樹脂層12の強度、硬度などを高めることができる。フィラーは、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、モリブデン化合物、タルクなどの無機材料を含む。樹脂層12におけるフィラーの含有量は、樹脂材料100質量部に対して、例えば0.1質量部以上であってもよく、20質量部以上であってもよい。樹脂層12におけるフィラーの含有量は、樹脂材料100質量部に対して、例えば100質量部以下であってもよく、70質量部以下であってもよい。
【0039】
樹脂層12は、防カビ剤、防虫剤、防腐剤、抗菌剤、消臭剤、重合開始剤、重合禁止剤、増感剤、架橋剤、可塑剤、難燃剤、帯電制御剤、熱安定剤、光安定剤、導電剤、消泡剤、防錆剤、酸化防止剤、発泡剤、発泡助剤、近赤外吸収剤、紫外吸収剤、乳化剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【0040】
対象物10は、樹脂シート以外の物品であってもよい。例えば、対象物10は、紙、金属、セラミックス、薬剤などを含んでいてもよい。すなわち、後述する検査システム15及び検査方法の検査対象が、紙、金属、セラミックス、薬剤などであってもよい。
【0041】
本明細書において、対象物10は、標準試料又はサンプルである。標準試料は、既知の候補組成を含む。サンプルは、未知の候補組成を含む。後述する検査システム15は、標準試料を検査することによって取得した情報に基づいて、サンプルに含まれる候補組成を判定する。以下、検査システム15について説明する。
【0042】
〔検査システム〕
図2は、対象物10を検査するための検査システム15を示すブロック図である。検査システム15は、樹脂層12の特徴を表すスペクトルを測定する。検査システム15は、樹脂層12を構成する材料の組成が、複数の候補組成のうちのいずれであるかを、スペクトルに基づいて判定できる。例えば、検査システム15は、樹脂層12を構成する材料の組成が、第1の候補組成又は第2の候補組成のいずれであるかを判定できる。複数の候補組成に関する情報は、予め検査システム15に記憶されている。
【0043】
候補組成は、樹脂層12に主成分として含まれている樹脂材料を表していてもよく、樹脂層12に副成分として含まれている樹脂材料を表していてもよい。主成分とは、最も高い含有率を有する樹脂層12中の樹脂材料である。副成分とは、主成分に比べて低い含有率を有する樹脂層12中の樹脂材料である。候補組成は、樹脂層12に添加されている添加剤の種類を表していてもよく、樹脂層12に添加剤が含まれているか否かを表していてもよい。
【0044】
検査システム15は、照射装置21、温度モニタ23、検出装置24、生成装置25、処理装置27及び判定装置28を備える。照射装置21及び検出装置24は、後述する分光モジュール20を構成する。分光モジュール20は、後述するケース40に収容される。生成装置25、処理装置27及び判定装置28の一部又は全部は、分光モジュール20に含まれていてもよく、分光モジュール20以外の構成要素に含まれていてもよい。例えば、生成装置25、処理装置27及び判定装置28の一部又は全部は、分光モジュール20と通信可能なコンピュータによって実現されてもよい。
【0045】
〔照射装置〕
照射装置21は、対象物10に近赤外線などの光を照射する。対象物10に照射される光を、照射光とも称する。照射装置21は、照射部211を含む。照射部211は、対象物10の第1面10xに光を照射する。光の波長は、例えば800nm以上であり、900nm以上であってもよい。光の波長は、例えば2500nm以下であり、2000nm以下であってもよく、1700nm以下であってもよい。
【0046】
図3は、照射装置21及び検出装置24を模式的に示す図である。照射装置21は、拡散部212を含んでいてもよい。拡散部212は、照射部211から放射された光を拡散させる。これにより、様々な方向から光L1を対象物10に照射できる。このため、検査システム15は、拡散反射スペクトルを得ることができる。拡散部212は、例えば、照射部211と対象物10との間に配置される拡散板である。
【0047】
〔検出装置〕
検出装置24は、対象物10によって反射された光L2を受光する。検出装置24は、光L2の強度を検出できる。以下の説明において、対象物10によって反射された光のことを、反射光L2とも称する。
【0048】
検出装置24は、複数の波長点において反射光L2を検出する検出部241を含む。波長点の数は、検出部241の分解能に応じて定まる。例えば、検出部241が900nm以上1800nm以下の範囲内において、3nmの分解能で反射光L2の強度を検出する場合、波長点の数は301である。検出部241としては、近赤外分光器、近赤外ハイパースペクトルカメラなどを用いることができる。
【0049】
検出部241は、対象物10によって正反射された反射光L2を検出する。検出部241は、対象物10によって正反射された反射光L2に加えて、対象物10によって拡散反射された反射光L2を検出してもよい。これにより、樹脂材料に関する情報をより多く得ることができる。このため、樹脂層12の組成の判定の精度を向上させることができる。図3において、符号H1は、検出部241と対象物10との距離を表し、符号W1は、検出部241の幅を表す。距離H1及び幅W1は、対象物10によって拡散反射された反射光L2が検出部241に入射するよう適切に定められている。
【0050】
〔温度モニタ〕
温度モニタ23は、検査システム15の雰囲気温度をモニタする。温度モニタ23は、分光モジュール20に含まれていてもよい。例えば、分光モジュール20が、基板と、基板に搭載された温度モニタ23と、を含んでいてもよい。この場合、温度モニタ23は、例えば温度センサICである。温度センサICは、分光モジュール20の内部の温度をモニタする。温度モニタ23は、後述するケース40に収容されていてもよい。温度モニタ23は、分光モジュール20及びケース40から分離された構造を有していてもよい。例えば、ケース40が配置される部屋に設置されている温度計が温度モニタ23として用いられてもよい。温度モニタ23は、雰囲気温度に関する情報を判定装置28に伝える。
【0051】
判定装置28は、2つ以上の温度モニタ23からの情報を取得してもよい。例えば、判定装置28は、分光モジュール20の内部に位置する温度モニタ23からの情報、及び、ケース40の外部に位置する温度モニタ23からの情報を取得してもよい。
判定装置28は、2つ以上の情報のうちの1つを雰囲気温度として用いてもよい。例えば、スペクトルの変化の原因が、主に分光モジュール20の温度変化に起因する場合、判定装置28は、分光モジュール20の内部に位置する温度モニタ23からの情報を雰囲気温度として用いてもよい。例えば、スペクトルの変化の原因が、主に対象物10の温度変化に起因する場合、判定装置28は、ケース40の外部に位置する温度モニタ23からの情報を雰囲気温度として用いてもよい。
判定装置28は、2つ以上の情報を処理した結果を雰囲気温度として用いてもよい。例えば、判定装置28は、分光モジュール20の内部に位置する温度モニタ23による測定結果と、ケース40の外部に位置する温度モニタ23による測定結果の平均値を、雰囲気温度として用いてもよい。
【0052】
〔生成装置〕
生成装置25は、第1生成部251及び第2生成部252を含む。第1生成部251は、複数の波長点における反射光L2の強度に関する情報を含むスペクトルを生成する。以下の説明において、対象物10によって反射された反射光L2の強度に関する情報を含むスペクトルのことを、対象反射スペクトルとも称する。対象物10が標準試料である場合の対象反射スペクトルを、標準反射スペクトルとも称する。対象物がサンプルである場合の対象反射スペクトルを、サンプル反射スペクトルとも称する。
【0053】
本明細書において、「スペクトル」は、波長点に対応するデータのグループを意味する。データのグループを図示すると、後述する図6に示すようなグラフが生成される。データは、波長点における反射光L2の強度に関する情報を含む。データは、反射光L2の強度そのものであってもよい。データは、波長点における反射光L2の強度に何らかの処理を施すことによって算出されたものであってもよい。例えば、データは、吸光度であってもよい。吸光度とは、対象物10が光を吸収する程度を表す無次元量である。吸光度Absは、例えば以下の式により算出される。
Abs=-log10(Itar/Iref)
Itarは、対象物10によって反射された光の強度である。Irefは、校正試料によって反射された光の強度である。校正試料は、例えば標準反射板である。標準反射板は、標準白色板、白色板などとも称される。
【0054】
第2生成部252は、複数の波長点における、校正試料によって反射された光の強度に関する情報を含むスペクトルを生成する。以下の説明において、校正試料によって反射された光の強度に関する情報を含むスペクトルのことを、校正スペクトルとも称する。第1生成部251は、上述の式で表されているように、校正スペクトルを基準として用いることにより対象反射スペクトルを生成してもよい。
【0055】
〔処理装置〕
処理装置27は、第1処理部271を含む。第1処理部271は、生成装置25によって生成された対象反射スペクトルに所定の処理を施す。以下の説明において、反射スペクトルに所定の処理を施すことにより複数の波長点において得られた値のことを、パラメータ値と称する。なお、「対象反射スペクトルに処理を施す」とは、対象反射スペクトルそのものに処理を施す場合だけでなく、上述の吸光度のスペクトルなど、対象反射スペクトルと同等の情報を含むスペクトルに対して処理を施す場合も含む概念である。
【0056】
処理装置27は、例えば、対象反射スペクトルに、平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施す。これにより、複数の波長点に対応する複数のパラメータ値が算出される。
【0057】
平均化処理を説明する。まず、状態を判定しようとする対象物10の第1面10x側の複数の領域に対して、それぞれ照射装置21により照射光を照射する。これにより、それぞれの領域において対象反射スペクトルを取得する。続いて、処理装置27において、複数の対象反射スペクトルの値を、波長点ごとに足し合わせる。続いて、足し合わせられた値を、対象反射スペクトルの数で割る。これにより、平均化処理が施されたパラメータ値が算出される。照射光を照射する領域の数は、特に限定されないが、例えば3箇所以上である。平均化処理を行うことにより、対象物10の表面に凹凸があったり、表面の状態が均一でなかったりする場合であっても、より精度よく樹脂層12の組成を判定できる。
【0058】
平滑化とは、ある波長点における対象反射スペクトルの値が他の波長点における対象反射スペクトルの値と乖離している場合に、乖離している値を除去したり、他の値に近づけたりする処理である。これにより、全体的に突出の少ない対象反射スペクトルを得ることができる。
【0059】
散乱補正とは、散乱体の対象反射スペクトル測定をする際に、散乱因子を最小二乗法により推定して最適な対象反射スペクトルを得る処理である。
【0060】
ベースライン補正とは、取得した対象反射スペクトルからベースラインを差し引く処理である。
【0061】
ピークシフト補正とは、取得した対象反射スペクトルにおけるピークの位置のずれを補正する処理である。
【0062】
処理装置27による処理は、以下の目的を有していてもよい。検出装置によって取得した対象反射スペクトルは、反射光の強度の絶対値に関する情報を含むため、照射部211の出力、照射部211と対象物10との間の距離、対象物10と検出部241との間の距離などによって変化する。この結果、樹脂層12の組成の判定がばらついてしまう可能性がある。処理装置27による処理は、このようなばらつきを低減することを目的としてもよい。ばらつきを低減する処理は、反射光の強度の絶対値に関する情報を除く、又は低減することができる処理であれば特に限定されないが、例えば微分又は正規化である。ばらつきを低減する処理として微分を行う場合における微分の回数は特に限定されないが、例えば二次微分を行うことができる。
【0063】
処理装置27が有するパラメータ値の個数、及びパラメータ値の求められる波長範囲は、パラメータ値に基づいて精度よく樹脂層12の組成を判定できる限りにおいて、特に限定されない。例えば、処理装置は、800nm以上2500nm以下の波長範囲内において、69個以上のパラメータ値を含むことが好ましい。同様に、隣り合う2つの波長点の間の間隔は、パラメータ値に基づいて精度よく樹脂層12の組成を判定できる限りにおいて、特に限定されない。隣り合う2つの波長点の間の間隔は、例えば20nm以下であり、10nm以下であってもよく、5nm以下であってもよい。
【0064】
(判定装置)
判定装置28は、処理装置27が算出したパラメータ値に基づいて樹脂層12の組成を判定する。具体的には、判定装置28は、処理装置27が算出したパラメータ値に基づいて、対象物10の樹脂層12を構成する材料の組成が、複数の候補組成のうちのいずれであるかを判定する。本実施の形態において、判定装置28は、樹脂層12を構成する材料の組成が、第1の候補組成又は第2の候補組成のいずれであるかを判定する。図2に示すように、判定装置28は、記憶部281と、解析部282と、判定部283と、を含む。
【0065】
記憶部281は、複数のパラメータ値と樹脂層12の複数の候補組成との関係をそれぞれ表す回帰式が予め記憶された構成要素である。記憶部281は、例えばROMやRAMなどのメモリーである。
【0066】
図2の例において、記憶部281は、標準回帰式を含む。標準回帰式は、複数のパラメータ値と第1の候補組成及び第2の候補組成との間の、標準温度における関係を表す。
【0067】
標準回帰式について説明する。標準温度において第1の候補組成又は第2の候補組成を含む樹脂層12に近赤外線を照射した場合に算出される複数のパラメータ値に、標準回帰式を適用すると、第1の類似度及び第2の類似度が算出される。第1の類似度は、樹脂層12が第1の候補組成に類似するか否かを表す指標である。第2の類似度は、樹脂層12が第2の候補組成に類似するか否かを表す指標である。樹脂層12が第1の候補組成を含む場合、第1の類似度は0よりも1に近い値になり、第2の類似度は1よりも0に近い値になる。例えば、樹脂層12が第1の候補組成を含む場合、第1の類似度は0.5よりも大きい値になり、第2の類似度は0.5よりも小さい値になる。このように、標準温度において樹脂層12に近赤外線を照射した場合は、類似度が0.5よりも大きいか否かに基づいて、樹脂層12に含まれる組成を判定できる。標準温度における解析に用いられる閾値のことを、標準閾値とも称する。
【0068】
ところで、雰囲気温度が変化すると、対象反射スペクトルが変化することがある。例えば、雰囲気温度が変化すると、第1の候補組成又は第2の候補組成に起因して生じる対象反射スペクトルのピークの位置が変化することがある。この結果、対象反射スペクトルの複数のパラメータ値に標準回帰式を適用することによって算出される類似度も変化する。このため、標準温度とは異なる温度において樹脂層12に近赤外線を照射した場合、標準閾値を用いて樹脂層12の組成を判定すると、誤った判定がなされる可能性がある。
【0069】
このような課題を考慮し、本実施の形態においては、類似度に基づく判定を行う際に、雰囲気温度に対応する閾値を用いることを提案する。例えば図2に示すように、記憶部281に、第1閾値、第2閾値、第3閾値及び第4閾値を記憶させることを提案する。第1閾値は、第1温度において樹脂層12の組成が第1の候補組成であるか第2の候補組成であるかを判定するための閾値である。第2閾値~第4閾値も同様に、第2温度~第4温度において樹脂層12の組成が第1の候補組成であるか第2の候補組成であるかを判定するための閾値である。このように、雰囲気温度に応じて閾値を使い分けることにより、温度に依らず適切な判定を行うことができる。第1温度、第2温度、第3温度及び第4温度は、例えば5℃、15℃、25℃及び35℃である。
【0070】
解析部282は、上述の複数のパラメータ値に標準回帰式を適用して類似度を算出する。解析部282は、例えばCPUである。
【0071】
判定部283は、解析部282が算出した類似度と、雰囲気温度に対応する閾値との比較に基づいて、樹脂層12の組成が第1の候補組成又は第2の候補組成のいずれであるかを判定する。例えば、判定部283は、温度モニタ23からの情報に基づいて、複数の閾値の中から、雰囲気温度に対応する閾値を選択する。例えば、雰囲気温度が第2温度である場合、第2閾値を選択する。雰囲気温度が、第2温度と第3温度の間の数値であり、且つ、雰囲気温度が第2温度よりも第3温度に近い場合、判定部283は、第3閾値を選択する。例えば、雰囲気温度が22℃である場合、判定部283は第3閾値を選択する。続いて、判定部283は、類似度が閾値よりも大きいか否かに基づいて、樹脂層12の組成を判定する。例えば、判定部283は、選択した閾値よりも第2の類似度が大きい場合、樹脂層12が第2の候補組成を含むという判定を行う。判定部283は、例えばCPUである。
【0072】
図示はしないが、判定装置28は、判定結果を表示する表示部を有していてもよい。表示部における判定結果の表示の仕方は、表示から判定結果が理解できる限り、特に限定されない。例えば、解析部282において算出された類似度が表示されてもよい。判定部283において用いた閾値が表示されてもよい。判定部283において樹脂層12の組成として判定された候補組成の名称が表示されてもよい。
【0073】
次に、検査システム15の具体的な構造を説明する。図4に示すように、検査システム15は、分光モジュール20を収容するケース40を備えていてもよい。分光モジュール20は、照射装置21及び検出装置24を含む。ケース40は、持ち運び可能な形態を有することが好ましい。照射装置21及び検出装置24が収容されているケース40の重量は、例えば5kg以下であり、2kg以下であってもよく、好ましくは1kg以下である。ケース40を持ち運ぶことにより、様々な場所に配置されている対象物10を検査できる。
【0074】
ケース40は、第1面41、第2面42及び側面を含んでいてもよい。第1面41は、検査システム15を用いる検査方法を実施するとき、対象物10に対向する。第1面41は、光が通過するウインドウ48を含む。光は、照射装置21から放射された光、又は、検出装置24によって受光される反射光である。ウインドウ48は、第1面41に形成されている開口を含んでいてもよい。第2面42は、第1面41に対向している。側面は、第1面41と第2面42の間に位置している。側面は、例えば、第1側面43、第2側面44、第3側面45及び第4側面46を含んでいてもよい。第2面42は第1面41に対向している。第2側面44は第1側面43に対向している。第1側面43及び第2側面44は第1面41と第2面42の間に位置している。
【0075】
ケース40は、例えば、第1外縁411、第2外縁412、第3外縁413及び第4外縁414を含んでいてもよい。第1外縁411、第2外縁412、第3外縁413及び第4外縁414は、対象物10に対向するケース40の部分の外縁を構成する。
【0076】
第1外縁411、第2外縁412、第3外縁413及び第4外縁414の一部又は全部は、第1面41の外縁であってもよい。第1外縁411、第2外縁412、第3外縁413及び第4外縁414の一部又は全部は、第1側面43、第2側面44、第3側面45及び第4側面46などの側面の外縁であってもよい。
【0077】
第1外縁411の寸法K1は、例えば500mm以下であり、400mm以下であってもよく、300mm以下であってもよい。第1外縁411の寸法K1は、例えば50mm以上であり、100mm以上であってもよく、150mm以上であってもよい。
第3外縁413の寸法K2は、例えば500mm以下であり、400mm以下であってもよく、300mm以下であってもよい。第3外縁413の寸法K2は、例えば50mm以上であり、100mm以上であってもよく、150mm以上であってもよい。
第1面41と第2面42の間の距離K3は、例えば500mm以下であり、400mm以下であってもよく、300mm以下であってもよい。距離K3は、例えば50mm以上であり、100mm以上であってもよく、150mm以上であってもよい。
【0078】
図5は、検査システム15の一使用例を示す図である。図5に示す例においては、人の右手61及び左手62によってケース40が保持されている。ケース40の第1面41は、対象物10に対向している。検査システム15を用いる検査方法を実施するとき、第1外縁411、第2外縁412、第3外縁413及び第4外縁414の一部又は全部が対象物10に接していてもよい。
【0079】
〔検査システムの製造方法〕
次に、上述の検査システム15を製造する方法を説明する。具体的には、上述の標準回帰式及び閾値を作製する方法を説明する。
【0080】
まず、図2に示す照射装置21、温度モニタ23、検出装置24及び処理装置27を備えるシステムを準備する。また、第1の標準試料及び第2の標準試料を準備する。第1の標準試料は、第1の候補組成を含む。第1の候補組成は、例えばポリエチレン(以下、PEとも称する)である。第2の標準試料は、第2の候補組成を含む。第2の候補組成は、例えばエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(以下、EVAとも称する)である。
【0081】
続いて、照射装置21を用いて、標準温度を含む複数の温度において、第1の標準試料及び第2の標準試料のそれぞれに光L1を照射する標準試料照射工程を行う。例えば、標準温度、第1温度、第2温度、第3温度及び第4温度のそれぞれにおいて、第1の標準試料及び第2の標準試料のそれぞれに近赤外線を照射する。続いて、標準温度を含む複数の温度において、検出装置24及び生成装置25を用いて、第1の標準試料及び第2の標準試料からの標準反射スペクトルを取得する標準試料検出工程を行う。第1の標準試料からの標準反射スペクトルを第1の標準反射スペクトルとも称する。第2の標準試料からの標準反射スペクトルを第2の標準反射スペクトルとも称する。図6は、第2の標準反射スペクトルの一例を示す図である。図6に示す例において、標準反射スペクトルは、吸光度のスペクトルである。
【0082】
続いて、処理装置27を用いて、第1の標準反射スペクトル及び第2の標準反射スペクトルに所定の処理を施す標準試料処理工程を、標準温度を含む複数の温度において行う。これにより、各波長点においてパラメータ値を算出する。処理は、上述のとおり、例えば、平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む。処理は、第1の標準反射スペクトル及び第2の標準反射スペクトルの複数の波長点における反射光の強度の値に対して施されてもよい。若しくは、吸光度のスペクトルなど、第1の標準反射スペクトル及び第2の標準反射スペクトルと同等の情報を含むスペクトルに対して施されてもよい。
【0083】
第1の標準反射スペクトルから算出される、各波長点のパラメータ値を、第1の標準パラメータ値とも称する。第2の標準反射スペクトルから算出される、各波長点のパラメータ値を、第2の標準パラメータ値とも称する。第1の標準パラメータ値及び第2の標準パラメータ値は、温度ごとにそれぞれ算出される。
【0084】
続いて、処理装置27を用いて、回帰式作成工程を行う。回帰式作成工程は、標準温度において得られた複数の第1の標準パラメータ値及び複数の第2の標準パラメータ値を、多変量解析手法を用いて解析する。多変量解析は、例えば、記憶部281に多変量解析用のプログラムを記録しておき、このプログラムを解析部282において実行することによって行われる。これにより、標準回帰式が作成される。標準回帰式は、複数の波長点におけるパラメータ値と第1の候補組成及び第2の候補組成との間の、標準温度において成立する関係を表す。
【0085】
図7は、多変量解析手法を用いて複数の第1の標準パラメータ値及び複数の第2の標準パラメータ値を解析した結果を示す図である。図7に示す例においては、多変量解析としてPLS判別分析(PLS-DA)を採用した。PLS判別分析(PLS-DA)を実施するためのソフトウエアとしては、カモソフトウェア製の多変量解析ソフト The Unscrambler Xを用いた。図7の縦軸に示されている「Y予想値」は、2つの候補組成X、Yが存在する状況における、候補組成Yに対する類似度に相当する。候補組成Xが第1の候補組成に対応し、候補組成Yが第2の候補組成に対応する場合、Y予想値は第2の類似度に相当する。図7の横軸に示されている「Y基準値」は、標準試料の組成が候補組成Yであるか否かを表す。第1の標準試料(=候補組成X)においては、Y基準値=0である。第2の標準試料(=候補組成Y)においては、Y基準値=1である。図7において符号M1が付された点線で囲まれている複数の点は、複数の第1の標準試料の、標準温度における検査結果から算出された第2の類似度を表す。図7において符号M2が付された点線で囲まれている複数の点は、複数の第2の標準試料の、標準温度における検査結果から算出された第2の類似度を表す。M1の範囲に位置する複数の点のY予想値が0に近づき、M2の範囲に位置する複数の点のY予想値が1に近づくよう、標準回帰式が作成される。作成された標準回帰式は、記憶部281に記録される。
【0086】
回帰式作成工程においては、PLS判別分析(PLS-DA)以外の多変量解析が採用されてもよい。例えば、クラスター分析、サポートベクターマシーン、KNN(K-Nearest Neighbor)、SIMCA(Soft Independent Modeling of Class Analogy)などの多変量解析手法が採用されてもよい。
【0087】
続いて、閾値作成工程を行う。閾値作成工程は、標準温度以外の温度における複数の第1の標準パラメータ値及び複数の第2の標準パラメータ値に標準回帰式を適用する。これによって、標準温度以外の各温度において、第1の標準試料の第1の類似度及び第2の類似度、並びに第2の標準試料の第1の類似度及び第2の類似度が算出される。図8図11は、第1温度~第4温度における第1の標準パラメータ値及び第2の標準パラメータ値に標準回帰式を適用した結果を示す図である。図8図11にから分かるように、第1の標準試料の第1の類似度及び第2の類似度の平均値、並びに第2の標準試料の第1の類似度及び第2の類似度の平均値は、温度により異なる。
【0088】
閾値作成工程においては、各温度における、第1の標準試料の第1の類似度及び第2の類似度、並びに第2の標準試料の第1の類似度及び第2の類似度に基づいて、第1の候補組成と第2の候補組成とを区別する閾値を温度ごとに算出する。図12は、第1温度~第4温度における閾値の算出結果を示す図である。図12は、図8図11に示すような、各温度における類似度の算出結果を、縦軸「第2の類似度」に投影することによって得られる。図12において、符号TH1~TH4はそれぞれ、第1温度~第4温度における第1閾値~第4閾値を表す。作成された第1閾値~第4閾値は、記憶部281に記録される。
【0089】
第1温度~第4温度における閾値の具体的な算出方法は任意である。例えば、各温度において、複数の第1の標準試料における第2の類似度の平均値又は中央値、及び、複数の第2の標準試料における第2の類似度の平均値又は中央値を算出する。2つの平均値の平均値、又は、2つの中央値の平均値を、第2の類似度の閾値として用いることができる。
【0090】
〔検査方法〕
次に、検査システム15を用いて対象物10を検査する方法を説明する。まず、図2に示す照射装置21、温度モニタ23、検出装置24、処理装置27及び判定装置28を備える検査システム15を準備する。また、サンプルとなる対象物10を準備する。本実施の形態において、サンプルは、第1の候補組成又は第2の候補組成のいずれかを含む。
【0091】
検査方法は、雰囲気温度をモニタする温度モニタ工程、及び、対象物10の検査を実施する検査工程を含む。検査方法は、校正試料51を用いて検査システム15を校正する校正工程を含んでいてもよい。
【0092】
〔検査工程〕
検査工程について説明する。検査工程は、第1照射工程、第1検出工程及び第1生成工程及び第1処理工程を含む。第1照射工程においては、照射装置21が対象物10に光L1を照射する。第1検出工程においては、検出装置24が、対象物10によって反射された光L2の強度を検出する。第1生成工程においては、生成装置25の第1生成部251が、サンプル反射スペクトルを生成する。サンプル反射スペクトルは、複数の波長点における光L2の強度に関する情報を含む。情報は、光L2の強度そのものであってもよい。情報は、吸光度など、光L2の強度に何らかの処理を施すことによって算出されたものであってもよい。
【0093】
続いて、処理装置27の第1処理部271が、サンプル反射スペクトルを処理する第1処理工程を実施する。これにより、各波長点においてパラメータ値が算出される。サンプル反射スペクトルに施される処理は、標準反射スペクトルに施される処理と同一である。
【0094】
続いて、判定装置28の解析部282が、サンプル反射スペクトルの複数のパラメータ値に標準回帰式を適用する解析工程を行う。これにより、類似度が算出される。例えば、第2の候補組成に対する第2の類似度が算出される。
【0095】
続いて、判定装置28の判定部283が判定工程を行う。判定部283は、まず、複数の閾値の中から、雰囲気温度に対応する閾値を選択する。例えば、第1温度~第4温度の中で第2温度が雰囲気温度に最も近い場合、判定部283は第2閾値を選択する。続いて、判定部283は、解析部282によって算出された類似度と、第2閾値との比較に基づいて、樹脂層12の組成が第1の候補組成又は第2の候補組成のいずれであるかを判定する。例えば、解析部282によって算出された第2の類似度が、第2閾値よりも大きい場合、判定部283は、樹脂層12の組成が第2の候補組成であると判定する。
【0096】
図13は、複数のサンプルの組成を複数の温度で判定した結果を示す図である。図13において、丸のマーカーは、第1の候補組成を含むサンプルの第2の類似度を示し、三角のマーカーは、第2の候補組成を含むサンプルの第2の類似度を示す。マーカーが閾値TH1~TH4よりも下に位置することは、サンプルの組成が第1の候補組成に判定されたことを意味する。マーカーが閾値TH1~TH4よりも上に位置することは、サンプルの組成が第2の候補組成に判定されたことを意味する。
【0097】
〔校正方法〕
次に、校正工程を説明する。校正工程は、第2照射工程、第2検出工程及び第2生成工程を含む。第2照射工程においては、照射装置21が校正試料51に光L1を照射する。第2検出工程においては、検出装置24が、校正試料51によって反射された光L2の強度を検出する。第2生成工程においては、生成装置25の第2生成部252が、校正スペクトルを生成する。校正スペクトルは、複数の波長点における光L2の強度に関する情報を含む。情報は、光L2の強度そのものであってもよい。図14は、校正スペクトルの一例を示す図である。
【0098】
校正工程は、図15に示すように、ウインドウ48を覆うように校正試料51を第1面41に接触させた状態で実施されてもよい。この場合、ケース40に対して校正試料51が固定されていてもよい。例えば、ケース40に巻き付けたゴムバンド52によって校正試料51がウインドウ48に押し付けられていてもよい。図示はしないが、校正試料51が第1面41から離れていてもよい。なお、校正試料51が第1面41から離れている場合、周囲を暗室にすることが好ましい。これにより、検査システム15が外光を検出することを抑制できる。また、対象物10の検査を行う工程において、対象物10と第1面41との間の距離が標準試料51と第1面41との間の距離と同一であることが好ましい。
【0099】
校正工程を実施するタイミングは任意である。例えば、検査工程を始める前に校正工程が実施されてもよい。若しくは、複数回の検査工程の間に校正工程が実施されてもよい。
【0100】
〔本実施の形態の効果〕
本実施の形態によれば、雰囲気温度に応じて適切な閾値を用いることにより、組成の判定の精度を高めることができる。
【0101】
本実施の形態による検査システム15及び検査方法を、スペクトルのピーク波長に基づいて組成を判定する従来の検査システム及び検査方法と組み合わせて用いてもよい。例えば、対象物10が、第1の候補組成、第2の候補組成又は第3の候補組成のいずれかであるかを判定する場合を考える。第3の候補組成のピーク波長は、第1の候補組成のピーク波長、及び第2の候補組成のピーク波長とは大きく異なると仮定する。この場合、対象物からの反射スペクトルのピーク波長の位置に基づいて、対象物10が第1の候補組成及び第2の候補組成を含むグループであるか、又は第3の候補組成であるかを判定できる。対象物10が第1の候補組成及び第2の候補組成を含むグループであると判定された場合、続いて、対象物10が第1の候補組成又は第2の候補組成のいずれであるかを、本実施の形態による検査システム15及び検査方法を用いて判定する。
【0102】
(第1の実施の形態の変形例)
上述の検査システム15及び検査方法を用いることにより、対象物10の組成をより詳細に判定することも可能である。例えば、検査システム15及び検査方法は、第2の候補組成として判定された対象物10を更に詳細に検査できる。例えば、検査システム15及び検査方法は、対象物10が第21の候補組成又は第22の候補組成のいずれであるかを判定できる。第21の候補組成及び第22の候補組成は、第2の候補組成の下位概念の組成又は第2の候補組成に類似する組成である。
第1の候補組成、第2の候補組成、第21の候補組成及び第22の候補組成の組み合わせは任意である。例えば、第1の候補組成がポリ塩化ビニル(以下、PVCとも称する)であり、第21の候補組成がPEであり、第22の候補組成がEVAであってもよい。この場合、第2の候補組成は、PE及びEVAを含むグループである。検査方法においては、まず、対象物10がPVCであるか、又はPE及びEVAを含むグループであるかが判定される。対象物10がPE及びEVAを含むグループであると判定された場合、続いて、対象物10がPE又はEVAのいずれであるかが判定される。
【0103】
本変形例において、記憶部281は、標準温度におけるパラメータ値と第21の候補組成及び第22の候補組成との間の関係を表すサブ標準回帰式を記憶している。樹脂層12の組成が第2の候補組成であると判定された場合、解析部282は、サブ標準回帰式をサンプルの複数のパラメータ値に適用する。これにより、サブ類似度が算出される。判定部283は、サブ類似度とサブ閾値との比較に基づいて、樹脂層の組成が第21の候補組成又は第22の候補組成のいずれであるかを判定する。
【0104】
上述の実施の形態の場合と同様に、サブ閾値は温度ごとに記憶部281に記憶されている。例えば、記憶部281は、第1サブ閾値、第2サブ閾値、第3サブ閾値及び第4サブ閾値を記憶している。第1サブ閾値は、第1温度において樹脂層12の組成が第21の候補組成であるか第22の候補組成であるかを判定するための閾値である。第2サブ閾値~第4サブ閾値も同様に、第2温度~第4温度において樹脂層12の組成が第21の候補組成であるか第22の候補組成であるかを判定するための閾値である。
【0105】
サブ標準回帰式及び第1サブ閾値~第4サブ閾値の作成方法は、標準回帰式及び第1閾値~第4閾値の作成方法と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0106】
上述した一実施形態を様々に変更できる。以下、必要に応じて図面を参照しながら、その他の実施形態について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した一実施形態と同様に構成され得る部分について、上述の一実施形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いる。重複する説明は省略する。また、上述した一実施形態において得られる作用効果がその他の実施形態においても得られることが明らかである場合、その説明を省略する場合もある。
【0107】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態においては、雰囲気温度に応じて閾値を使い分ける例を説明した。第2の実施の形態においては、雰囲気温度に応じて回帰式を使い分ける例を説明する。
【0108】
図16は、対象物10を検査するための検査システム15を示すブロック図である。記憶部281は、第1回帰式、第2回帰式、第3回帰式、第4回帰式及び標準閾値を記憶している。第1回帰式は、各波長点におけるパラメータ値と第1の候補組成及び第2の候補組成との間の、第1温度における関係を表す。第2回帰式~第4回帰式も同様に、各波長点におけるパラメータ値と第1の候補組成及び第2の候補組成との間の、第2温度~第4温度における関係を表す。標準閾値は、複数の温度において樹脂層12の組成が第1の候補組成であるか第2の候補組成であるかを判定するための閾値である。例えば、標準閾値は、第1温度~第4温度のいずれにおいても使用可能である。
【0109】
〔検査システムの製造方法〕
検査システム15を製造する方法を説明する。まず、第1の実施の形態の場合と同様に、標準試料照射工程、標準試料検出工程及び標準試料処理工程を行う。これにより、第1の標準反射スペクトル及び第2の標準反射スペクトルが、温度ごとにそれぞれ算出される。
【0110】
続いて、処理装置27を用いて、回帰式作成工程を行う。回帰式作成工程は、複数の第1の標準パラメータ値及び複数の第2の標準パラメータ値を、多変量解析手法を用いて温度ごとに解析する。例えば、第1温度において算出された複数の第1の標準パラメータ値及び複数の第2の標準パラメータ値が、多変量解析手法によって解析される。これにより、第1回帰式が作成される。同様に、第2温度~第4温度において算出された複数の第1の標準パラメータ値及び複数の第2の標準パラメータ値がそれぞれ、多変量解析手法によって解析される。これにより、第2回帰式~第4回帰式が作成される。第1回帰式~第4回帰式はそれぞれ、標準閾値を境界として第1の標準試料と第2の標準試料が区別されるよう構成されている。標準閾値は、例えば0.5である。作成された第1回帰式~第4回帰式は、記憶部281に記録される。
【0111】
〔検査方法〕
検査システム15を用いて対象物10を検査する方法を説明する。まず、第1の実施の形態の場合と同様に、第1照射工程、第1検出工程、第1生成工程及び第1処理工程を行う。これにより、各波長点におけるサンプルのパラメータ値が算出される。
【0112】
続いて、判定装置28の解析部282が解析工程を行う。解析部282は、まず、複数の回帰式の中から、雰囲気温度に対応する回帰式を選択する。例えば、第1温度~第4温度の中で第2温度が雰囲気温度に最も近い場合、解析部282は第2回帰式を選択する。続いて、解析部282は、第2回帰式を、サンプルの複数のパラメータ値に適用する。これにより、サンプルの類似度が算出される。例えば、第2の候補組成に対する第2の類似度が算出される。
【0113】
続いて、判定装置28の判定部283が判定工程を行う。判定部283は、解析部282が算出した類似度と、標準閾値との比較に基づいて、樹脂層12の組成が第1の候補組成又は第2の候補組成のいずれであるかを判定する。例えば、解析部282によって算出された第2の類似度が、標準閾値よりも大きい場合、判定部283は、樹脂層12の組成が第2の候補組成であると判定する。
【0114】
〔本実施の形態の効果〕
本実施の形態によれば、雰囲気温度に応じて適切な回帰式を用いることにより、組成の判定の精度を高めることができる。
【0115】
(第2の実施の形態の変形例)
上述の検査システム15及び検査方法を用いることにより、対象物10の組成をより詳細に判定することも可能である。例えば、検査システム15及び検査方法は、第2の候補組成として判定された対象物10を更に詳細に検査できる。例えば、検査システム15及び検査方法は、対象物10が第21の候補組成又は第22の候補組成のいずれであるかを判定できる。第21の候補組成及び第22の候補組成は、第2の候補組成の下位概念の組成又は第2の候補組成に類似する組成である。
【0116】
本変形例において、記憶部281は、パラメータ値と第21の候補組成及び第22の候補組成との間の関係を表すサブ回帰式を記憶している。樹脂層12の組成が第2の候補組成であると判定された場合、解析部282は、サブ回帰式をサンプルの複数のパラメータ値に適用する。これにより、サブ類似度が算出される。判定部283は、サブ類似度とサブ標準閾値との比較に基づいて、樹脂層の組成が第21の候補組成又は第22の候補組成のいずれであるかを判定する。
【0117】
上述の実施の形態の場合と同様に、サブ回帰式は温度ごとに記憶部281に記憶されている。例えば、記憶部281は、第1サブ回帰式、第2サブ回帰式、第3サブ回帰式及び第4サブ回帰式を記憶している。第1サブ回帰式は、各波長点におけるパラメータ値と第21の候補組成及び第22の候補組成との間の、第1温度における関係を表す。第2サブ回帰式~第4サブ回帰式も同様に、各波長点におけるパラメータ値と第21の候補組成及び第22の候補組成との間の、第2温度~第4温度における関係を表す。サブ標準閾値は、複数の温度において樹脂層12の組成が第21の候補組成であるか第22の候補組成であるかを判定するための閾値である。例えば、サブ標準閾値は、第1温度~第4温度のいずれにおいても使用可能である。サブ標準閾値は、例えば0.5である。
【0118】
第1サブ回帰式~第4サブ回帰式の作成方法は、第1回帰式~第4回帰式の作成方法と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0119】
(第3の実施の形態)
第1の実施の形態及び第2の実施の形態においては、雰囲気温度に応じて閾値又は回帰式を使い分ける例を説明した。第3の実施の形態においては、1つの汎用回帰式及び1つの汎用閾値を用いる例を説明する。
【0120】
図17は、対象物10を検査するための検査システム15を示すブロック図である。記憶部281は、汎用回帰式及び汎用閾値を記憶している。汎用回帰式は、各波長点におけるパラメータ値と第1の候補組成及び第2の候補組成との間の、複数の温度のいずれにおいても成立する関係を表す。例えば、汎用回帰式は、第1温度~第4温度のいずれにおいても使用可能である。汎用閾値は、汎用回帰式と組み合わせて用いられる。汎用閾値は、複数の温度において樹脂層12の組成が第1の候補組成であるか第2の候補組成であるかを判定するための閾値である。例えば、汎用閾値は、第1温度~第4温度のいずれにおいても使用可能である。汎用閾値は、例えば0.5である。
【0121】
〔検査システムの製造方法〕
検査システム15を製造する方法を説明する。まず、第1の実施の形態の場合と同様に、標準試料照射工程、標準試料検出工程及び標準試料処理工程を行う。これにより、第1の標準反射スペクトル及び第2の標準反射スペクトルが、温度ごとにそれぞれ算出される。例えば、第1温度、第2温度、第3温度及び第4温度における第1の標準反射スペクトル及び第2の標準反射スペクトルがそれぞれ算出される。
【0122】
続いて、処理装置27を用いて、回帰式作成工程を行う。回帰式作成工程は、複数の温度において算出された、各波長点における第1の標準パラメータ値及び第2の標準パラメータ値を、多変量解析手法を用いてまとめて解析する。図18は、汎用回帰式の算出結果を示す図である。図18において符号M3が付された点線で囲まれている複数の点は、複数の第1の標準試料の、複数の温度における検査結果から算出された第2の類似度を表す。M3が複数の温度における検査結果を含んでいるので、縦軸方向におけるM3の範囲は、図7のM1の範囲よりも広い。図18において符号M4が付された点線で囲まれている複数の点は、複数の第2の標準試料の、複数の温度における検査結果から算出された第2の類似度を表す。M4が複数の温度における検査結果を含んでいるので、縦軸方向におけるM4の範囲は、図7のM2の範囲よりも広い。M3の範囲に位置する複数の点のY予想値が0に近づき、M4の範囲に位置する複数の点のY予想値が1に近づくよう、汎用回帰式が作成される。汎用閾値は、第1の標準試料と第2の標準試料を区別できるよう設定される。汎用閾値は、例えば0.5である。作成された汎用回帰式及び汎用閾値は、記憶部281に記録される。
【0123】
〔検査方法〕
検査システム15を用いて対象物10を検査する方法を説明する。まず、第1の実施の形態の場合と同様に、第1照射工程、第1検出工程、第1生成工程及び第1処理工程を行う。これにより、各波長点におけるサンプルのパラメータ値が算出される。
【0124】
続いて、判定装置28の解析部282が解析工程を行う。解析部282は、汎用回帰式を、サンプルの複数のパラメータ値に適用する。これにより、サンプルの類似度が算出される。例えば、第2の候補組成に対する第2の類似度が算出される。
【0125】
続いて、判定装置28の判定部283が判定工程を行う。判定部283は、解析部282が算出した類似度と、汎用閾値との比較に基づいて、樹脂層12の組成が第1の候補組成又は第2の候補組成のいずれであるかを判定する。例えば、解析部282によって算出された第2の類似度が、汎用閾値よりも大きい場合、判定部283は、樹脂層12の組成が第2の候補組成であると判定する。
【0126】
図19は、複数のサンプルの組成を複数の温度で判定した結果を示す図である。図19において、丸のマーカーは、第1の候補組成を含むサンプルの第2の類似度を示し、三角のマーカーは、第2の候補組成を含むサンプルの第2の類似度を示す。マーカーが汎用閾値TH10よりも下に位置することは、サンプルの組成が第1の候補組成に判定されたことを意味する。マーカーが汎用閾値TH10よりも上に位置することは、サンプルの組成が第2の候補組成に判定されたことを意味する。
【0127】
〔本実施の形態の効果〕
本実施の形態によれば、複数の温度における標準試料の検査結果を反映する汎用回帰式及び汎用閾値を用いることにより、組成の判定の精度を高めることができる。
【0128】
(第3の実施の形態の変形例)
上述の検査システム15及び検査方法を用いることにより、対象物10の組成をより詳細に判定することも可能である。例えば、検査システム15及び検査方法は、第2の候補組成として判定された対象物10を更に詳細に検査できる。例えば、検査システム15及び検査方法は、対象物10が第21の候補組成又は第22の候補組成のいずれであるかを判定できる。第21の候補組成及び第22の候補組成は、第2の候補組成の下位概念の組成又は第2の候補組成に類似する組成である。
【0129】
本変形例において、記憶部281は、パラメータ値と第21の候補組成及び第22の候補組成との間の関係を表すサブ汎用回帰式を記憶している。樹脂層12の組成が第2の候補組成であると判定された場合、解析部282は、サブ汎用回帰式をサンプルの複数のパラメータ値に適用する。これにより、サブ類似度が算出される。判定部283は、サブ類似度とサブ汎用閾値との比較に基づいて、樹脂層の組成が第21の候補組成又は第22の候補組成のいずれであるかを判定する。
【0130】
上述の実施の形態の場合と同様に、サブ汎用回帰式は、各波長点におけるパラメータ値と第21の候補組成及び第22の候補組成との間の、複数の温度のいずれにおいても成立する関係を表す。サブ汎用閾値は、サブ汎用回帰式と組み合わせて用いられる。サブ汎用閾値は、複数の温度において樹脂層12の組成が第21の候補組成であるか第22の候補組成であるかを判定するための閾値である。例えば、サブ汎用閾値は、第1温度~第4温度のいずれにおいても使用可能である。サブ汎用閾値は、例えば0.5である。
【0131】
サブ汎用回帰式の作成方法は、汎用回帰式の作成方法と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0132】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態においては、ノイズを多く含むサンプル反射スペクトルを排除する例を説明する。第4の実施の形態の検査システム15の構成は、図2に示す第1の実施の形態の検査システム15の構成と同一である。
【0133】
〔検査方法〕
検査システム15を用いて対象物10を検査する方法を説明する。図20は、検査工程の一例を示すフローチャートである。まず、第1の実施の形態の場合と同様に、第1照射工程、第1検出工程及び第1生成工程を行う。これにより、図20において符号S11で示すように、サンプルの反射スペクトルが生成される。
【0134】
サンプル反射スペクトルは、複数の波長点における光L2の強度に関する情報を含む。情報は、光L2の強度そのものであってもよい。情報は、吸光度など、光L2の強度に何らかの処理を施すことによって算出されたものであってもよい。図21は、複数の波長点における吸光度を含むサンプル反射スペクトルS1の一例を示す図である。
【0135】
続いて、処理装置27の第1処理部271が、サンプル反射スペクトルを処理する第1処理工程を実施する。第1処理工程は、局所平均化工程、第1ノイズ評価工程及び第1記録工程を含む。
【0136】
局所平均化工程においては、図20において符号S12で示すように、対象反射スペクトルを局所的に平均化する。例えば、サンプル反射スペクトルの各波長点において局所平均値を算出する工程を実施する。局所平均値は、対象となる波長点におけるサンプル反射スペクトルの値、及び対象となる波長点の近傍に位置する複数の波長点におけるサンプル反射スペクトルの値を平均することによって算出される。
【0137】
サンプル反射スペクトルの値が吸光度である例を説明する。例えば1200nmの波長点における局所平均値は、以下のように算出される。
まず、1200nmにおける吸光度Abs(1200)を取得する。続いて、1200nmの近傍に位置する複数の波長点におけるサンプル反射スペクトルの値を取得する。検出装置24の分解能が3nmである場合、例えば、1188nmにおける吸光度Abs(1188)、1191nmにおける吸光度Abs(1191)、1194nmにおける吸光度Abs(1194)、1197nmにおける吸光度Abs(1197)、1203nmにおける吸光度Abs(1203)、1206nmにおける吸光度Abs(1206)、1209nmにおける吸光度Abs(1209)及び1212nmにおける吸光度Abs(1212)を取得する。続いて、これらの9個の波長点における吸光度の平均値を算出する。この平均値が、1200nmの波長点における局所平均値である。
【0138】
各波長点において局所平均値を算出する。これによって、図22に示すように、局所平均化スペクトルS2を生成できる。図22においては、サンプル反射スペクトルS1が一点鎖線で表され、平均化スペクトルS2が実線で表されている。
【0139】
局所平均値を算出する時の波長点の数は、上述の9個には限られない。波長点の数は、例えば5個以上であり、7個以上であってもよい。波長点の数は、例えば15個以下であり、13個以下であってもよい。
【0140】
第1ノイズ評価工程においては、図20において符号S13で示すように、サンプル反射スペクトルS1と局所平均化スペクトルS2の差を算出する。例えば、各波長点において、サンプル反射スペクトルS1の吸光度から平均化スペクトルS2の局所平均値を減算する。これによって生成されるスペクトルを、差分スペクトルとも称する。図23は、差分スペクトルS3の一例を示す図である。図23においては、サンプル反射スペクトルS1が一点鎖線で表され、平均化スペクトルS2が二点鎖線で表され、差分スペクトルS3が実線で表されている。
【0141】
続いて、第1ノイズ評価工程においては、サンプル反射スペクトルS1と局所平均化スペクトルS2の差の標準偏差を算出する。標準偏差は、サンプル反射スペクトルS1と局所平均化スペクトルS2の差のばらつきの程度を表す。仮に、対象反射スペクトルS1にノイズが含まれていない場合、サンプル反射スペクトルS1と局所平均化スペクトルS2の差がほぼゼロになると予想される。従って、標準偏差が小さいことは、サンプル反射スペクトルS1に含まれるノイズが少ないことを意味する。標準偏差が大きいことは、サンプル反射スペクトルS1に含まれるノイズが多いことを意味する。
【0142】
なお、ノイズとは関係なく、サンプル反射スペクトルS1のピークの位置では対象反射スペクトルS1と局所平均化スペクトルS2の差が大きい。サンプル反射スペクトルS1に含まれるノイズを適切に評価するためには、サンプル反射スペクトルS1のピークから離れた位置において差の標準偏差を算出することが好ましい。例えば図23に示すように、ピークから離れている安定領域R1において差の標準偏差を算出してもよい。具体的には、まず、安定領域R1に含まれる複数の波長点における差の値を取得する。続いて、複数の差の値の標準偏差を算出する。
【0143】
安定領域R1は、対象物10に含まれると予想される材料の情報に基づいて予め定められていてもよい。例えば、対象物10にポリエチレンが含まれると予想される場合、対象反射スペクトルS1は、約1200nmに現れるピークを含む。この場合、970nm以上1100nm以下の波長域が安定領域R1として予め定められていてもよい。
【0144】
続いて、第1ノイズ評価工程においては、標準偏差に基づいて第1ノイズ指標を算出する。第1ノイズ指標は、サンプル反射スペクトルS1に含まれるノイズの程度の指標である。第1ノイズ指標は、例えば、標準偏差の逆数である。第1ノイズ指標が大きいことは、サンプル反射スペクトルS1に含まれるノイズが少ないことを意味する。第1ノイズ指標が小さいことは、サンプル反射スペクトルS1に含まれるノイズが多いことを意味する。算出された第1ノイズ指標は、処理装置27を構成するコンピュータのディスプレイに表示されてもよい。
【0145】
続いて、第1ノイズ評価工程においては、図20において符号S14で示すように、第1ノイズ指標と第1ノイズ閾値TH21とを比較する。第1ノイズ指標が第1ノイズ閾値TH21以上である場合、第1処理部271が第1記録工程を実施する。第1記録工程においては、図20において符号S15で示すように、第1ノイズ閾値TH21以上の第1ノイズ指標を有するサンプル反射スペクトルS1が記録される。記録されたサンプル反射スペクトルS1は、判定装置28において用いられてもよい。第1ノイズ指標と第1ノイズ閾値TH21の比較結果は、処理装置27を構成するコンピュータのディスプレイに表示されてもよい。
【0146】
第1ノイズ指標が第1ノイズ閾値TH21未満である場合、図20に示すように、工程S11、S12、S13及びS14を再び実施してもよい。すなわち、第1照射工程、第1検出工程、第1生成工程及び第1処理工程を対象物10に対して再び実施してもよい。図5に示すようにケース40を手で保持する場合、検査工程の間に手が動くことなどに起因してサンプル反射スペクトルS1にノイズが生じることが考えられる。図20に示す検査工程によれば、手の動きなどに起因して生じたノイズを多く含むサンプル反射スペクトルS1を排除できる。また、第1ノイズ閾値TH21以上の第1ノイズ指標を有するサンプル反射スペクトルS1が得られるまで検査工程を繰り返し実施できる。このため、適切なサンプル反射スペクトルS1を記録できる。
【0147】
続いて、記録されたサンプル反射スペクトルS1に対して、第1処理部271が所定の処理を施す。これにより、各波長点においてパラメータ値が算出される。処理の内容は、上述の第1の実施の形態の場合と同様である。
【0148】
続いて、上述の第1の実施の形態の場合と同様に、解析部282が解析工程を行い、判定部283が判定工程を行う。これにより、樹脂層12の組成を判定できる。
【0149】
〔本実施の形態の効果〕
本実施の形態によれば、サンプル反射スペクトルに含まれるノイズを評価できる。このため、手の動きなどに起因して生じたノイズを多く含むサンプル反射スペクトルを排除できる。また、第1ノイズ閾値TH21以上の第1ノイズ指標を有するサンプル反射スペクトルが得られるまで検査工程を繰り返し実施できる。このため、適切なサンプル反射スペクトルを記録できる。従って、樹脂層12を構成する材料の組成をより適切に判定できる。
【0150】
(第4の実施の形態の第1の変形例)
上述の第4の実施の形態における検査工程は、標準反射スペクトルに適用されてもよい。すなわち、上述の検査工程によって、標準反射スペクトル含まれるノイズを評価してもよい。また、ノイズを多く含む標準反射スペクトルを排除してもよい。また、第1ノイズ閾値TH21以上の第1ノイズ指標を有する標準反射スペクトルが得られるまで標準試料照射工程及び標準試料検出工程を繰り返し実施してもよい。これにより、適切な標準反射スペクトルを記録できる。従って、標準回帰式及び第1閾値~第4閾値をより適切に作成できる。
【0151】
(第4の実施の形態の第2の変形例)
上述の第4の実施の形態における検査工程は、第2の実施の形態に組み合わされてもよい。すなわち、上述の検査工程によって、第2の実施の形態におけるサンプル反射スペクトル又は標準反射スペクトル含まれるノイズを評価してもよい。これにより、適切なサンプル反射スペクトル又は標準反射スペクトルを記録できる。これにより、例えば、第1回帰式~第4回帰式をより適切に作成できる。
【0152】
(第4の実施の形態の第3の変形例)
上述の第4の実施の形態における検査工程は、第3の実施の形態に組み合わされてもよい。すなわち、上述の検査工程によって、第3の実施の形態におけるサンプル反射スペクトル又は標準反射スペクトル含まれるノイズを評価してもよい。これにより、適切なサンプル反射スペクトル又は標準反射スペクトルを記録できる。これにより、例えば、汎用回帰式をより適切に作成できる。
【0153】
(第4の実施の形態の実施例)
(実施例A1)
上述の検査システム15を用いて、第1の対象物10の対象スペクトルを測定した。第1の対象物10は、ポリエチレンを含む樹脂層12を備える。第1の対象物10は、壁に取り付けられている。人の手で検査システム15を保持しながら検査システム15を対象物10に接触させた状態で、測定を実施した。対象スペクトルの測定結果を図24に示す。検出工程の条件は下記のとおりである。
・波長域:900nm~1700nm
・分解能:3.5nm
・露光時間:1.27ms
・積算回数:19回
積算回数は、波長域の下限から上限まで各波長点を順に走査する工程の回数である。積算回数が19回である場合、検出装置24は、各波長点において19個の検出値を有する。検出装置24は、19個の検出値の平均値を、各波長点における光の強度として出力する。
【0154】
続いて、対象スペクトルを局所的に平均化することにより局所平均化スペクトルを生成した。局所平均化スペクトルを図24に示す。続いて、対象スペクトルと局所平均化スペクトルの差に基づいて差分スペクトルを生成した。差分スペクトルを図24に示す。図24においては、図23の場合と同様に、対象スペクトルが一点鎖線で表され、平均化スペクトルが実線で表され、差分スペクトルが実線で表されている。
【0155】
続いて、970nm以上1100nm以下の波長域における差分スペクトルの値に基づいて、標準偏差を算出した。続いて、標準偏差に基づいて第1ノイズ指標を算出した。第1ノイズ指標は4905であった。第1ノイズ閾値TH21は2500である。従って、図24に示す対象スペクトルに含まれるノイズは少ないと言える。
【0156】
(実施例A2~A6)
上述の検査システム15を用いて、第1の対象物10とは異なる第2の対象物10~第6の対象物10の対象スペクトルを測定した。第2の対象物10~第6の対象物10は、実施例A1の場合と同様に、ポリエチレンを含む樹脂層12を備える。測定条件は、実施例A1の場合と同一である。第2の対象物10~第6の対象物10の対象スペクトルの測定結果をそれぞれ図25図29に示す。
【0157】
続いて、対象スペクトルを局所的に平均化することにより局所平均化スペクトルを生成した。第2の対象物10~第6の対象物10の局所平均化スペクトルをそれぞれ図25図29に示す。続いて、対象スペクトルと局所平均化スペクトルの差に基づいて差分スペクトルを生成した。第2の対象物10~第6の対象物10の差分スペクトルをそれぞれ図25図29に示す。
【0158】
続いて、970nm以上1100nm以下の波長域における差分スペクトルの値に基づいて、標準偏差を算出した。続いて、標準偏差に基づいて第1ノイズ指標を算出した。第2の対象物10~第6の対象物10における第1ノイズ指標はそれぞれ、11188、7405、2375、1641、1136であった。
【0159】
(実施例A7)
上述の検査システム15を用いて、複数の第1のサンプル及び複数の第2のサンプルの組成を判定した。第1のサンプルは、第1の候補組成を含む。第2のサンプルは、第2の候補組成を含む。
【0160】
複数の第1のサンプル及び複数の第2のサンプルの対象スペクトルをそれぞれ、標準温度において測定した。対象スペクトルに対して、第1処理部271が所定の処理を施した。これにより、各波長点においてパラメータ値が算出された。続いて、解析部282が標準回帰式をパラメータ値に適用した。これにより、図30に示すように、複数の第1のサンプル及び複数の第2のサンプルの第2の類似度がそれぞれ算出された。
【0161】
図30において符号M5を付した点線で囲んでいるように、2つの第1のサンプルの第2の類似度が、標準閾値TH0よりも大きかった。すなわち、2つの第1のサンプルが誤って第2の候補組成に判定された。
【0162】
誤って判定された2つの第1のサンプルの第1ノイズ指標を評価した。2つの第1のサンプルの第1ノイズ指標はそれぞれ、2400及び1700であった。
【0163】
(第5の実施の形態)
校正スペクトルにノイズが含まれている場合、ノイズの影響が対象スペクトルにも現れる。従って、校正スペクトルのノイズを可能な限り小さくすることが好ましい。本実施の形態においては、校正スペクトルのノイズを小さくするための方法を説明する。
【0164】
図31は、対象物10を検査するための検査システム15を示すブロック図である。図31に示すように、処理装置27は、第2処理部272を含んでいてもよい。図31の検査システム15の構成は、処理装置27が第2処理部272を含む点を除いて、図2の第1の実施の形態による検査システム15の構成と同一である。
【0165】
第2処理部272は、校正スペクトルに何らかの処理を施す。例えば、第2処理部272は、校正スペクトルを二次微分することにより二次微分スペクトルを生成する二次微分を実施する。また、第2処理部272は、二次微分スペクトルに基づいて第2ノイズ指標を算出する第2ノイズ評価を実施する。第2処理部272は、第2ノイズ指標が第2閾値以上である場合に、校正スペクトルを記録する第2記録を実施してもよい。
【0166】
校正工程について説明する。校正工程は、第2照射工程、第2検出工程、第2生成工程及び第2処理工程を備える。第2処理工程は、第2生成工程において生成された校正スペクトルを処理する。
【0167】
図32は、校正工程の一例を示すフローチャートである。第2照射工程においては、照射装置21が校正試料51に光L1を照射する。第2検出工程においては、検出装置24が、校正試料51によって反射された光L2の強度を検出する。第2生成工程においては、生成装置25の第2生成部252が、校正スペクトルを生成する。校正スペクトルは、複数の波長点における光L2の強度に関する情報を含む。このようにして、図32において符号S21で示すように、校正スペクトルを測定できる。
【0168】
続いて、処理装置27の第2処理部272が、校正スペクトルを処理する第2処理工程を実施する。第2処理工程は、二次微分工程、第2ノイズ評価工程及び第2記録工程を含む。
【0169】
二次微分工程においては、図32において符号S22で示すように、校正スペクトルを二次微分する。これにより、二次微分スペクトルを生成する。二次微分スペクトルの値が小さいことは、校正スペクトルに含まれているノイズが少ないことを意味する。
【0170】
第2ノイズ評価工程においては、二次微分スペクトルに基づいて第2ノイズ指標を算出する。例えば、まず、図32において符号S23で示すように、複数の波長点における二次微分スペクトルの値の標準偏差を算出する。二次微分スペクトルの全波長域に基づいて標準偏差が算出されてもよく、二次微分スペクトルの一部の波長域に基づいて標準偏差が算出されてもよい。例えば、図14に示すように1600nm以上の波長域においては校正スペクトルの値が低下することが予想される場合、1600nm以上の波長域における二次微分スペクトルの値を考慮せずに標準偏差を算出してもよい。
【0171】
続いて、第2ノイズ評価工程においては、標準偏差に基づいて第2ノイズ指標を算出する。第2ノイズ指標は、校正スペクトルに含まれるノイズの程度の指標である。第2ノイズ指標は、例えば、標準偏差の逆数である。第2ノイズ指標が大きいことは、校正スペクトルに含まれるノイズが少ないことを意味する。第2ノイズ指標が小さいことは、校正スペクトルに含まれるノイズが多いことを意味する。
【0172】
続いて、第2ノイズ評価工程においては、図32において符号S24で示すように、第2ノイズ指標と第2ノイズ閾値TH22とを比較する。第2ノイズ指標が第2ノイズ閾値TH22以上である場合、第2処理部272が第2記録工程を実施する。第2記録工程においては、図32において符号S25で示すように、第2ノイズ閾値TH22以上の第2ノイズ指標を有する校正スペクトルが記録される。
【0173】
上述の第1生成部251は、記録された校正スペクトルを基準として用いることにより対象スペクトルを生成してもよい。これにより、校正スペクトルのノイズの影響が対象スペクトルに現れることを抑制できる。
【0174】
第2ノイズ指標が第2ノイズ閾値TH22未満である場合、校正試料51の表面の全体又は一部が汚れていることが考えられる。この場合、図32において符号S26で示すように、校正試料51を別のものに変更するか、若しくは、校正試料51における測定位置を変更してもよい。その後、工程S21、S22、S23及びS24を再び実施してもよい。すなわち、新たな校正試料51に対して、若しくは校正試料51の新たな測定位置に対して、第2照射工程、第2検出工程、第2生成工程及び第2処理工程を再び実施してもよい。図32に示す校正工程によれば、校正試料51の表面の汚れなどに起因して生じたノイズを多く含む校正スペクトルを排除できる。また、第2ノイズ閾値TH22以上の第2ノイズ指標を有する校正スペクトルが得られるまで校正工程を繰り返し実施できる。このため、適切な校正スペクトルを記録できる。
【0175】
校正工程は、図32において符号S27で示すように、第2ノイズ閾値TH22以上の第2ノイズ指標を有するN個の校正スペクトルが得られるまで継続されてもよい。例えば、図32において符号S28で示すように、記録されている校正スペクトルの数がN個未満である場合、校正試料51における測定位置を変更してもよい。その後、工程S21、S22、S23及びS24を再び実施してもよい。すなわち、校正試料51の新たな測定位置に対して、第2照射工程、第2検出工程、第2生成工程及び第2処理工程を再び実施してもよい。図32に示す校正工程によれば、第2ノイズ閾値TH22以上の第2ノイズ指標を有するN個の校正スペクトルを得ることができる。Nは、例えば2以上であり、3以上であってもよく、4以上であってもよい。Nは、例えば10以下であってもよい。
【0176】
校正工程においては、図32において符号S28で示すように、記録されているN個の校正スペクトルの平均を算出してもよい。これによって、平均化校正スペクトルを生成できる。平均化校正スペクトルの各波長点におけるスペクトル値は、N個の校正スペクトルのスペクトル値の平均値である。例えば、1200nmの波長点における平均化校正スペクトルの値は、N個の校正スペクトルの、1200nmの波長点における値の平均値である。
【0177】
上述の第1生成部251は、平均化校正スペクトルを基準として用いることにより対象スペクトルを生成してもよい。これにより、校正スペクトルのノイズの影響が対象スペクトルに現れることを更に抑制できる。
【0178】
(第5の実施の形態の第1の変形例)
上述の第5の実施の形態における校正工程は、第2の実施の形態に組み合わされてもよい。すなわち、上述の校正工程によって、第2の実施の形態における校正スペクトル含まれるノイズを評価してもよい。
【0179】
(第5の実施の形態の第2の変形例)
上述の第5の実施の形態における校正工程は、第3の実施の形態に組み合わされてもよい。すなわち、上述の校正工程によって、第3の実施の形態における校正スペクトル含まれるノイズを評価してもよい。
【0180】
(第5の実施の形態の第3の変形例)
上述の第5の実施の形態における校正工程は、第4の実施の形態に組み合わされてもよい。すなわち、上述の校正工程によって、第4の実施の形態における校正スペクトル含まれるノイズを評価してもよい。
【0181】
(第5の実施の形態の実施例)
(実施例B1)
上述の検査システム15を用いて、第1の校正試料51の校正スペクトルを測定した。第1の校正試料51としては、Labsphere製のスペクトラロンを用いた。照射装置21及び検出装置24を備える分光モジュール20としては、innoSpectra製の近赤外分光組み込み型反射モジュールM-R2を用いた。校正工程は、図15に示すように、ゴムバンド52によって校正試料51をケース40に対して固定した状態で実施した。
【0182】
検出装置24は、光を各波長点に対応する成分に分解することによって、各波長点における光の強度を検出する。検出装置24は、各波長点を順に走査する。検出工程の条件は、実施例A1の場合と同一である。
【0183】
図33は、校正スペクトルの測定結果を示す図である。図33に示す校正スペクトルの第2ノイズ指標は38752であった。第2ノイズ閾値TH22は25000である。従って、図33に示す校正スペクトルに含まれるノイズは少ないと言える。以下の説明において、図33に示す校正スペクトルを、スペクトル11とも称する。
【0184】
続いて、第1の校正試料51の測定位置を変更した状態で、更に3つの校正スペクトルを測定した。3つの校正スペクトルをそれぞれ、スペクトル12、スペクトル13、スペクトル14とも称する。スペクトル12の測定の時の測定位置は、スペクトル11の測定の時の測定位置から2mm離れていた。スペクトル13の測定の時の測定位置は、スペクトル12の測定の時の測定位置から2mm離れていた。スペクトル14の測定の時の測定位置は、スペクトル13の測定の時の測定位置から2mm離れていた。スペクトル11~スペクトル14を図34に示す。スペクトル12、スペクトル13及びスペクトル14の第2ノイズ指標は、38793、35463及び36466であった。
【0185】
スペクトル11~スペクトル14に含まれるノイズは少ないと言える。スペクトル11~スペクトル14を平均することによって平均化校正スペクトルを生成してもよい。
【0186】
(実施例B2)
第1の校正試料51とは異なる第2の校正試料51の校正スペクトルを、上述の検査システム15を用いて測定した。測定の条件は、実施例B1の場合と同一である。
【0187】
図35は、校正スペクトルの測定結果を示す図である。図35に示す校正スペクトルの第2ノイズ指標は16724であった。従って、図35に示す校正スペクトルに含まれるノイズは多いと言える。以下の説明において、図35に示す校正スペクトルを、スペクトル21とも称する。
【0188】
続いて、第2の校正試料51の測定位置を変更した状態で、更に3つの校正スペクトルを測定した。3つの校正スペクトルをそれぞれ、スペクトル22、スペクトル23、スペクトル24とも称する。スペクトル22の測定の時の測定位置は、スペクトル21の測定の時の測定位置から2mm離れていた。スペクトル23の測定の時の測定位置は、スペクトル22の測定の時の測定位置から2mm離れていた。スペクトル24の測定の時の測定位置は、スペクトル23の測定の時の測定位置から2mm離れていた。スペクトル21~スペクトル24を図36に示す。スペクトル22、スペクトル23及びスペクトル24の第2ノイズ指標は、9198、13066及び17022であった。
【0189】
(実施例B3)
上述の検査システム15を用いて、複数の第1のサンプル及び複数の第2のサンプルの組成を判定した。第1のサンプルは、第1の候補組成を含む。第2のサンプルは、第2の候補組成を含む。
【0190】
複数の第1のサンプル及び複数の第2のサンプルの吸光度を含む対象スペクトルをそれぞれ、標準温度において生成した。吸光度を算出する工程においては、図32に示す校正工程によって生成された平均化校正スペクトルを用いた。平均化校正スペクトルは、第2ノイズ閾値TH22以上の第2ノイズ指標を有する5個の校正スペクトルを平均することによって生成された。
【0191】
続いて、対象スペクトルに対して、第1処理部271が所定の処理を施した。これにより、各波長点においてパラメータ値が算出された。続いて、解析部282が標準回帰式をパラメータ値に適用した。これにより、図37に示すように、複数の第1のサンプル及び複数の第2のサンプルの第2の類似度をそれぞれ算出した。
【0192】
図37に示すように、第1の候補組成を含む第1のサンプルの第2の類似度は、標準閾値TH0よりも小さかった。第2の候補組成を含む第2のサンプルの第2の類似度は、標準閾値TH0よりも大きかった。すなわち、第1のサンプル及び第2のサンプルのいずれも適切に判定された。
【0193】
(比較例B1)
第2ノイズ閾値TH22未満の第2ノイズ指標を有する校正スペクトルを排除しなかったこと以外は、実施例B3の場合と同様の工程を実施することによって、複数の第1のサンプル及び複数の第2のサンプルの第2の類似度をそれぞれ算出した。結果を図38に示す。
【0194】
図38に示す例の校正工程においては、平均化校正スペクトルを生成する際に用いられた5個の校正スペクトルのうちの1個の測定工程において、校正試料51ではなく空気の反射スペクトルが測定された。このため、平均化校正スペクトルの値が、実施例B3の場合とは大きく異なっている。その結果、図38に示すように、複数の第1のサンプル及び複数の第2のサンプルの第2の類似度のいずれも、1よりも著しく大きい値になった。この場合、複数の第1のサンプルが誤って第2の候補組成に判定された。
【0195】
(比較例B2)
第2ノイズ閾値TH22未満の第2ノイズ指標を有する校正スペクトルを排除しなかったこと以外は、実施例B3の場合と同様の工程を実施することによって、複数の第1のサンプル及び複数の第2のサンプルの第2の類似度をそれぞれ算出した。結果を図39に示す。
【0196】
図39に示す例の校正工程においては、反射スペクトルの測定時に検査システム15に振動が加わっていた。このため、平均化校正スペクトルの値が、実施例B3の場合とは大きく異なっている。その結果、図39に示すように、複数の第1のサンプル及び複数の第2のサンプルの第2の類似度のいずれも、1よりも大きい値になった。この場合、複数の第1のサンプルが誤って第2の候補組成に判定された。
【0197】
(第6の実施の形態)
図40は、ケース40の一例を示す斜視図である。図40に示すように、ケース40は、第1面41又は外縁に設けられている第1摩擦層53を備えていてもよい。図40に示す例において、第1摩擦層53は、第3外縁413及び第4外縁414に沿って第1面41に設けられている。
【0198】
第1摩擦層53と対象物10との間の静摩擦力は、第1面41と対象物10との間の静摩擦力よりも大きい。第1摩擦層53をケース40に設けることにより、検査工程の間にケース40が動くことを抑制できる。
【0199】
第1摩擦層53の構成は任意である。例えば、第1摩擦層53は、第1面41に貼り付けられているテープの表面の層によって構成されていてもよい。テープとしては、株式会社マイスト製の滑り止めテープ アイテムNo.5187などを用いることができる。
【0200】
(第7の実施の形態)
図41は、ケース40の一例を示す斜視図である。図41に示すように、ケース40は、側面に固定されている支持部材54を備えていてもよい。図41に示す例において、ケース40は、第1側面43に固定されている1本の支持部材54、及び、第2側面44に固定されている2本の支持部材54を備える。図示はしないが、ケース40は、1本又は2本の支持部材54を備えていてもよく、4本以上の支持部材54を備えていてもよい。支持部材54は、第3側面45又は第4側面46に固定されていてもよい。
【0201】
支持部材54は、側面に固定されている第1部分541と、第1部分541に接続されている第2部分542を含んでいてもよい。第1部分541は、側面から第1面41に向かって延びていてもよい。第2部分542は、第1面41に平行に広がる面を含んでいてもよい。第2部分542は、検査工程の時に対象物10に接してもよい。これにより、検査工程の間、ケース40の姿勢をより安定に維持できる。このため、手の動きなどに起因して生じたノイズが対象スペクトルに現れることを抑制できる。
【0202】
図41に示すように、ケース40は、第2部分542に設けられている第2摩擦層55を備えていてもよい。第2摩擦層55は、例えばゴムを含む。第2摩擦層55は、検査工程の時に対象物10に接してもよい。第2摩擦層55と対象物10との間の静摩擦力は、第1面41と対象物10との間の静摩擦力よりも大きい。第2摩擦層55を第2部分542に設けることにより、検査工程の間にケース40が動くことを更に抑制できる。
【0203】
(第8の実施の形態)
図42は、ケース40の一例を示す斜視図である。図42に示すように、ケース40は、照射装置21及び/又は検出装置24を冷却する冷却部56を備えていてもよい。冷却部56は、例えば、ファンなどの送風機である。冷却部29は、ベルチェ素子や放熱板により照射装置21及び/又は検出装置24を冷却するものであってもよい。冷却部56を設けることにより、ケース40の内部の温度が周囲雰囲気の温度に比べて高くなることを抑制できる。これにより、分光モジュール20などの特性が温度に起因して変化することを抑制できる。
【0204】
なお、検査システム15が置かれている雰囲気温度が低い場合は、分光モジュール20の温度が分光モジュール20で検出される反射光の強度に影響を与えるほど上昇する、という虞は低い。この場合、照射装置21及び/又は検出装置24を冷却部56により冷却しなくてもよい。
【0205】
また、検査システム15が置かれている雰囲気温度が低く、当該雰囲気温度が分光モジュール20により検出される反射光の強度に影響を与える場合は、照射装置21及び/又は検出装置24を断熱性の高い材料で覆って、照射装置21及び/又は検出装置24の温度低下を防止してもよい。言い換えると、検査システム15は、照射装置21及び/又は検出装置24を覆う断熱材を備えていてもよい。あるいは、この場合、照射装置21及び/又は検出装置24をヒーター等で加熱してもよい。言い換えると、検査システム15は、照射装置21及び/又は検出装置24を加熱する加熱部を備えていてもよい。
【0206】
さらに、分光モジュール20による反射光の強度の検出は、分光モジュール20の電源を入れてからある程度の時間が経過してから行うことが好ましい。言い換えると、反射光を検出する前に、分光モジュール20を暖機運転することが好ましい。この場合、暖機運転中に照射装置21及び/又は検出装置24の温度が安定して、反射光の強度を安定して検出することができる。
【0207】
(第9の実施の形態)
上述の実施の形態においては、検出装置24が、対象物10によって反射された光の強度を検出する例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図示はしないが、検出装置24は、対象物10を透過した光の強度を検出してもよい。この場合、検査システム15は、対象物10を透過した光の強度に関する情報を含むスペクトルを生成する。検査システム15は、透過した光のスペクトルに基づいて上述の検査方法を実施することにより、対象物10の組成を判定できる。また、透過した光のスペクトルに基づいて上述の製造方法を実施することにより、検査システム15を製造できる。
【0208】
スペクトルの各波長点におけるデータは、波長点における透過光の強度に関する情報を含む。データは、透過光の強度そのものであってもよい。データは、波長点における透過光の強度に何らかの処理を施すことによって算出されたものであってもよい。例えば、データは、透過率であってもよく、吸光度Absであってもよい。透過率とは、対象物10が光を透過させる程度を表す無次元量である。透過率Tは、例えば以下の式により算出される。
T=I/I
Iは、対象物10を透過して検出装置に入射する光の強度である。Iは、校正試料を透過して検出装置に入射する光の強度である。校正試料は、例えば、対象物10の基材シート11を含み、樹脂層12を含まない。この場合、Iは、空気の透過率及び基材シート11の透過率を反映している。
吸光度Absは、例えば以下の式により算出される。
Abs=-log10(I/I
【0209】
上記実施の形態および変形例に開示されている複数の構成要素を必要に応じて適宜組合せることも可能である。あるいは、上記実施の形態および変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0210】
10 対象物
10x 第1面
10y 第2面
11 基材シート
12 樹脂層
15 検査システム
20 分光モジュール
21 照射装置
211 照射部
23 温度モニタ
24 検出装置
241 検出部
25 生成装置
251 第1生成部
252 第2生成部
27 処理装置
271 第1処理部
272 第2処理部
28 判定装置
281 記憶部
282 解析部
283 判定部
40 ケース
41 第1面
42 第2面
48 ウインドウ
51 校正試料
53 第1摩擦層
54 支持部材
541 第1部分
542 第2部分
55 第2摩擦層
56 冷却部
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