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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】バリアフィルム、積層体、及び包装容器
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20241121BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20241121BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B32B27/32 Z
B32B27/28
B65D65/40 D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020206077
(22)【出願日】2020-12-11
(65)【公開番号】P2022093021
(43)【公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100158964
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】古谷 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】高杉 祐也
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 駿行
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀明
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-308286(JP,A)
【文献】特開2020-037186(JP,A)
【文献】特開2004-042937(JP,A)
【文献】特開2006-193196(JP,A)
【文献】特開昭55-091665(JP,A)
【文献】実開平01-115539(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を含むシーラントフィルムと、
前記第2面上に位置する蒸着層と、を備え、
前記シーラントフィルムは、前記第1面を構成するポリオレフィン樹脂層と、前記第2面を構成し、極性基を有する樹脂材料を含む表面樹脂層と、前記ポリオレフィン樹脂層と前記表面樹脂層の間に位置する接着性樹脂層と、を備え、
前記表面樹脂層は、エチレンビニルアルコール共重合体を含み、且つ3μm以上の厚さを有し、
前記接着性樹脂層は、3μm以上の厚さを有し、
前記シーラントフィルムの破断エネルギーを前記シーラントフィルムの厚さで割った値が0.0025J/μm以上である、バリアフィルム。
【請求項2】
第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を含むシーラントフィルムと、
前記第2面上に位置する蒸着層と、を備え、
前記シーラントフィルムは、前記第1面を構成するポリオレフィン樹脂層と、前記第2面を構成し、極性基を有する樹脂材料を含む表面樹脂層と、前記ポリオレフィン樹脂層と前記表面樹脂層の間に位置する接着性樹脂層と、を備え、
前記表面樹脂層は、ナイロン6、ナイロン6,6又はMXDナイロンを含み、且つ2μm以上5μm以下の厚さを有し、
前記接着性樹脂層は、2μm以上の厚さを有する、バリアフィルム。
【請求項3】
前記シーラントフィルムの厚さに対する、前記表面樹脂層の厚さの割合が、1%以上20%以下である、請求項1乃至のいずれか一項に記載のバリアフィルム。
【請求項4】
前記ポリオレフィン樹脂層は、ポリプロピレン樹脂層である、請求項1乃至のいずれか一項に記載のバリアフィルム。
【請求項5】
前記ポリプロピレン樹脂層は、第1コポリマー層及び第2コポリマー層と、前記第1コポリマー層と前記第2コポリマー層の間に位置するホモポリマー層と、を含む、請求項に記載のバリアフィルム。
【請求項6】
前記蒸着層は、金属層又は無機酸化物層を含む、請求項1乃至のいずれか一項に記載のバリアフィルム。
【請求項7】
前記シーラントフィルムの破断エネルギーを前記シーラントフィルムの厚さで割った値が0.0025J/μm以上である、請求項に記載のバリアフィルム。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれか一項に記載のバリアフィルムと、
基材と、を備える、積層体。
【請求項9】
前記基材は、延伸プラスチックフィルムを含み、
前記基材と前記バリアフィルムとの間に位置する印刷層を備える、請求項に記載の積層体。
【請求項10】
前記基材は、延伸プラスチックフィルムを含み、
前記基材と前記バリアフィルムとの間に位置する接着剤層を備える、請求項又はに記載の積層体。
【請求項11】
前記基材は、紙を含む、請求項に記載の積層体。
【請求項12】
請求項乃至11のいずれか一項に記載の積層体を備える包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリアフィルム、積層体、及び包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
パウチなどの包装容器を構成する部材として、複数のフィルムが積層された積層体が用いられている。積層体は、基材及びシーラントフィルムを備える。
【0003】
酸素、水蒸気などに対するバリア性が包装容器に求められることがある。例えば特許文献1は、シーラントフィルムの表面にアルミニウムの蒸着層を形成することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-179878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シーラントフィルムと蒸着層の間の密着性が低い場合、バリア性も低くなる。
【0006】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、シーラントフィルム及び蒸着層を備えるバリアフィルムのバリア性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を含むシーラントフィルムと、
前記第2面上に位置する蒸着層と、を備え、
前記シーラントフィルムは、前記第1面を構成するポリオレフィン樹脂層と、前記第2面を構成し、極性基を有する樹脂材料を含む表面樹脂層と、前記ポリオレフィン樹脂層と前記表面樹脂層の間に位置する接着性樹脂層と、を備える、バリアフィルムである。
【0008】
本発明のバリアフィルムにおいて、前記樹脂材料は、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ナイロン6、ナイロン6,6、MXDナイロンおよびアモルファスナイロンから選択される1以上の樹脂材料であってもよい。
【0009】
本発明のバリアフィルムにおいて、前記表面樹脂層は、エチレンビニルアルコール共重合体を含み、且つ3μm以上の厚さを有していてもよく、前記接着性樹脂層は、3μm以上の厚さを有していてもよい。
【0010】
本発明のバリアフィルムにおいて、前記表面樹脂層は、ナイロン6、ナイロン6,6又はMXDナイロンを含み、且つ2μm以上の厚さを有していてもよく、
前記接着性樹脂層は、2μm以上の厚さを有していてもよい。
【0011】
本発明のバリアフィルムにおいて、前記シーラントフィルムの厚さに対する、前記表面樹脂層の厚さの割合が、1%以上20%以下であってもよい。
【0012】
本発明のバリアフィルムにおいて、前記ポリオレフィン樹脂層は、ポリプロピレン樹脂層であってもよい。
【0013】
本発明のバリアフィルムにおいて、前記ポリプロピレン樹脂層は、第1コポリマー層及び第2コポリマー層と、前記第1コポリマー層と前記第2コポリマー層の間に位置するホモポリマー層と、を含んでいてもよい。
【0014】
本発明のバリアフィルムにおいて、前記蒸着層は、金属層又は無機酸化物層を含んでいてもよい。
【0015】
本発明のバリアフィルムにおいて、前記シーラントフィルムの破断エネルギーを前記シーラントフィルムの厚さで割った値が0.0025J/μm以上であってもよい。
【0016】
本発明は、上記記載のバリアフィルムと、基材と、を備える、積層体である。
【0017】
本発明の積層体において、前記基材は、延伸プラスチックフィルムを含んでいてもよい。この場合、積層体は、前記基材と前記バリアフィルムとの間に位置する印刷層を備えていてもよい。
【0018】
本発明の積層体において、前記基材は、延伸プラスチックフィルムを含んでいてもよい。この場合、積層体は、前記基材と前記バリアフィルムとの間に位置する接着剤層を備えていてもよい。
【0019】
本発明の積層体において、前記基材は、紙を含んでいてもよい。
【0020】
本発明は、上記記載の積層体を備える包装容器である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、シーラントフィルム及び蒸着層を備えるバリアフィルムのバリア性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施の形態におけるバリアフィルムの一例を示す断面図である。
図2】本実施の形態におけるバリアフィルムの一例を示す断面図である。
図3】蒸着装置の一例を示す図である。
図4】蒸着装置の一例を示す図である。
図5】本実施の形態における積層体の一例を示す断面図である。
図6】本実施の形態における積層体の一例を示す断面図である。
図7】ラミネート強度の測定方法の一例を示す図である。
図8】ラミネート強度の測定方法の一例を示す図である。
図9】ラミネート強度の測定結果の一例を示す図である。
図10】包装容器の一例を示す図である。
図11】包装容器の一例を示す図である。
図12】包装容器の一例を示す図である。
図13】実施例及び比較例の評価結果を示す図である。
図14】実施例及び比較例の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから適宜変更し誇張してある。
【0024】
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈する。
【0025】
(バリアフィルム)
図1は、本実施の形態によるバリアフィルム10の一例を示す断面図である。バリアフィルム10は、シーラントフィルム20及び蒸着層30を備える。シーラントフィルム20は、第1面20x及び第2面20yを含む。第2面20yは、第1面20xの反対側に位置する面である。蒸着層30は、第2面20y上に位置している。
【0026】
図1に示すように、シーラントフィルム20は、ポリオレフィン樹脂層21、接着性樹脂層22及び表面樹脂層23を備える。ポリオレフィン樹脂層21は、第1面20xを構成している。表面樹脂層23は、第2面20yを構成している。接着性樹脂層22は、ポリオレフィン樹脂層21と表面樹脂層23の間に位置している。
【0027】
図2は、バリアフィルム10のその他の例を示す断面図である。図2に示す例において、ポリオレフィン樹脂層21は、ポリプロピレン樹脂層である。この場合、ポリオレフィン樹脂層21は、第1コポリマー層21a、ホモポリマー層21b及び第2コポリマー層21cを含んでいてもよい。第1コポリマー層21aは、シーラントフィルム20の第1面20xを構成していてもよい。ホモポリマー層21bは、第1コポリマー層21aと第2コポリマー層21cとの間に位置している。第2コポリマー層21cは、接着性樹脂層22に接していてもよい。
【0028】
バリアフィルム10の各構成要素について詳細に説明する。
【0029】
〔シーラントフィルム〕
シーラントフィルム20は、共押し出しによって作製されたフィルムである。シーラントフィルム20は、好ましくは未延伸フィルムである。「未延伸」とは、全く延伸されていないフィルムだけでなく、製膜の際に加えられる張力に起因してわずかに延伸されているフィルムも含む概念である。
【0030】
少なくとも1つの方向におけるシーラントフィルム20の破断強度は、例えば100MPa以下であり、50MPa以下であってもよい。例えば、流れ方向及び垂直方向におけるシーラントフィルム20の破断強度が、100MPa以下であってもよく、50MPa以下であってもよい。
少なくとも1つの方向におけるシーラントフィルム20の破断伸度は、例えば300%以上であり、350%以上であってもよい。例えば、流れ方向及び垂直方向におけるシーラントフィルム20の引張伸度が、300%以上であってもよく、350%以上であってもよい。
【0031】
破断強度は、シーラントフィルム20が破断した時にシーラントフィルム20に加えられている応力である。破断伸度は、シーラントフィルム20が破断した時にシーラントフィルム20に生じている伸びである。シーラントフィルム20の破断強度及び引張伸度は、JIS K7127に準拠して測定される。測定器としては、A&D製のテンシロン万能材料試験機RTC-1310を用いることができる。測定においては、シーラントフィルム20を幅10mm、長さ150mmの矩形状のフィルムに切り出したものを試験片として用いる。試験片を保持する一対のチャックの間の、測定開始時の間隔は50mmである。試験片の引張速度は300mm/分である。測定時の環境は、温度23℃、相対湿度50%RHである。
【0032】
次に、シーラントフィルム20の各層について説明する。
【0033】
〔ポリオレフィン樹脂層〕
ポリオレフィン樹脂層21は、エチレン、プロピレンなどのオレフィンをモノマーとして合成されたポリマーを含む。例えば、ポリオレフィン樹脂層21は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを含む。ポリオレフィン樹脂層21は、ポリプロピレン樹脂層であってもよい。
【0034】
ポリオレフィン樹脂層21に含まれるポリプロピレンは、ホモポリマー又はコポリマーのいずれであってもよい。コポリマーは、ブロックコポリマー又はランダムコポリマーのいずれであってもよい。
【0035】
ブロックコポリマーは、プロピレンからなる重合体ブロックと、プロピレン以外の他のα-オレフィンからなる重合体ブロックと、を有する共重合体である。例えば、ブロックコポリマーは、プロピレンからなる重合体ブロックに加えて、エチレン、ブテン-1、4-メチル-1-ペンテンなどからなる重合体ブロックを含む。例えば、ブロックコポリマーは、プロピレン・エチレンブロック共重合体を含む。プロピレン・エチレンブロック共重合体の構造式を式(I)に示す。
【0036】
【化1】
【0037】
ランダムコポリマーは、プロピレンと、プロピレン以外の他のα-オレフィンとを含むランダム共重合体である。例えば、ランダムコポリマーは、プロピレンに加えて、エチレン、ブテン-1、4-メチル-1-ペンテンなどを含む。例えば、ランダムコポリマーは、プロピレン・エチレンランダム共重合体を含む。プロピレン・エチレンランダム共重合体の構造式を式(II)に示す。ランダムコポリマーは、3元共重合体を含んでいてもよい。
【0038】
【化2】
【0039】
ホモポリマーは、プロピレンのみの重合体である。プロピレンのホモポリマーの構造式を式(III)に示す。
【0040】
【化3】
【0041】
ホモポリマーは、ランダムポリマーに比べて高い結晶性を有する。剛性、耐熱性などを重視する場合には、ホモポリマーを使用することが好ましい。耐衝撃性、シール性などを重視する場合にはランダムコポリマー又はブロックコポリマーを使用することが好ましい。
【0042】
ポリオレフィン樹脂層21は、バイオマス由来のポリプロピレンを含んでいてもよい。ポリオレフィン樹脂層21は、メカニカルリサイクル又はケミカルリサイクルされたポリプロピレンを含んでいてもよい。
【0043】
ポリオレフィン樹脂層21の厚さは、例えば20μm以上であり、40μm以上であってもよい。ポリオレフィン樹脂層21の厚さは、例えば100μm以下であり、80μm以下であってもよい。
【0044】
図2に示すように、ポリオレフィン樹脂層21は、第1コポリマー層21a、ホモポリマー層21b及び第2コポリマー層21cを含んでいてもよい。第1コポリマー層21a及び第2コポリマー層21cは、上述のポリプロピレンのコポリマーを含む。ホモポリマー層21bは、上述のポリプロピレンのホモポリマーを含む。ポリオレフィン樹脂層21が第1コポリマー層21aを含むことにより、シーラントフィルム20のシール性を高めることができる。ポリオレフィン樹脂層21がホモポリマー層21bを含むことにより、加熱時のポリプロピレンの流動に起因してバリアフィルム10にピンホール、切れなどの欠陥が生じることを抑制できる。ポリオレフィン樹脂層21が第2コポリマー層21cを含むことにより、ポリオレフィン樹脂層21と接着性樹脂層22の間の密着性を高めることができる。
【0045】
第1コポリマー層21aの厚さは、例えば5μm以上であり、10μm以上であってもよい。第1コポリマー層21aの厚さは、例えば20μm以下であり、17μm以下であってもよい。
【0046】
ホモポリマー層21bの厚さは、例えば10μm以上であり、15μm以上であってもよい。ホモポリマー層21bの厚さは、例えば50μm以下であり、30μm以下であってもよい。ホモポリマー層21bの厚さは、第1コポリマー層21aの厚さよりも大きくてもよい。
【0047】
第2コポリマー層21cの厚さは、例えば2μm以上であり、3μm以上であってもよい。第2コポリマー層21cの厚さは、例えば20μm以下であり、15μm以下であってもよく、10μm以下であってもよい。第2コポリマー層21cの厚さは、第1コポリマー層21aの厚さ及びホモポリマー層21bの厚さよりも小さくてもよい。
【0048】
ポリオレフィン樹脂層21がポリプロピレン樹脂層である場合、ポリオレフィン樹脂層21におけるポリプロピレンの含有量は、例えば70質量%以上であり、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよい。
【0049】
ポリプロピレン樹脂層は、ポリプロピレン以外の樹脂材料を含んでいてもよい。例えば、ポリプロピレン樹脂層は、ポリエチレンなどのポリオレフィン、(メタ)アクリル樹脂、ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステルおよびアイオノマー樹脂などを含んでいてもよい。
【0050】
(表面樹脂層)
表面樹脂層23は、極性基を有する樹脂材料を含む。このため、表面樹脂層23の表面に蒸着層30が密着しやすい。これにより、バリアフィルム10のバリア性を高めることができる。
【0051】
極性基は、ヘテロ原子を1個以上含む基を意味する。極性基は、例えば、エステル基、エポキシ基、水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、カルボニル基、カルボン酸無水物基、スルフォン基、チオール基およびハロゲン基などである。好ましくは、極性基は、水酸基、エステル基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基又はカルボニル基であり、特に好ましくは水酸基である。
【0052】
表面樹脂層23の樹脂材料は、例えば、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ポリアミド樹脂などである。ポリアミド樹脂は、ナイロン6、ナイロン6,6、MXDナイロン、アモルファスナイロンなどである。表面樹脂層23の樹脂材料は、好ましくは、エチレンビニルアルコール共重合体又はポリビニルアルコールである。
【0053】
表面樹脂層23に対する蒸着層30の密着性が損なわれない範囲内において、表面樹脂層23は、添加剤を含んでいてもよい。添加剤は、例えば、架橋剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤(スリップ剤)、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料および改質用樹脂などである。
【0054】
シーラントフィルム20の厚さに対する、表面樹脂層23の厚さの割合は、例えば1%以上であり、3%以上であってもよく、5%以上であってもよい。これにより、表面樹脂層23に対する蒸着層30の密着性を高めることができる。このため、バリアフィルム10のバリア性を高めることができる。また、バリアフィルム10を備える積層体のラミネート強度を高めることができる。
【0055】
シーラントフィルム20の厚さに対する、表面樹脂層23の厚さの割合は、例えば20%以下であり、15%以下であってもよく、10%以下であってもよい。これにより、シーラントフィルム20の製膜性および加工適性を高めることができる。また、バリアフィルム10のリサイクル適性、並びに、バリアフィルム10を備える積層体のリサイクル適性を高めることができる。
【0056】
表面樹脂層23の厚さは、例えば1μm以上であり、2μm以上であってもよく、3μm以上であってもよい。表面樹脂層23の厚さは、例えば5μm以下であり、4μm以下であってもよい。
【0057】
〔接着性樹脂層〕
接着性樹脂層22は、ポリオレフィン樹脂層21と表面樹脂層23とを接着する樹脂を含む。接着性樹脂層22を設けることにより、ポリオレフィン樹脂層21と表面樹脂層23の間の密着性を高めることができる。
【0058】
接着性樹脂層22は、ポリエーテル、ポリエステル、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ビニル樹脂、フェノール樹脂およびポリオレフィンなどの接着性樹脂を含んでいてもよい。好ましくは、接着性樹脂層22は、ポリオレフィンおよびこの酸変性物を含む。ポリオレフィン樹脂層21がポリプロピレン樹脂層である場合、好ましくは、接着性樹脂層22は、ポリプロピレンおよびこの酸変性物を含む。これにより、バリアフィルム10におけるポリプロピレンの構成比率を高めることできる。このため、バリアフィルム10並びに後述する積層体及び包装容器のリサイクル適性を高めることができる。
接着性樹脂層22は、市販されているポリプロピレンおよびこの酸変性物を含んでいてもよい。例えば、接着性樹脂層22は、三井化学(株)製、アドマーシリーズを含んでいてもよい。
【0059】
接着性樹脂層22の厚さは、例えば1μm以上であり、2μm以上であってもよく、3μm以上であってもよい。これにより、ポリオレフィン樹脂層21と表面樹脂層23の間の密着性をより高くすることができる。接着性樹脂層22の厚さは、例えば15μm以下であり、10μm以下であってもよく、5μm以下であってもよい。これにより、シーラントフィルム20の加工適性をより高くすることができる。
【0060】
〔蒸着層〕
蒸着層30は、金属層又は無機酸化物層を含む。蒸着層30は、酸素、水蒸気などのガスを通しにくい。このため、バリアフィルム10及び後述する積層体は、酸素バリア性、水蒸気バリア性などのバリア性を有することができる。これにより、積層体から構成された包装容器において、内容物の質量が減少することを抑制できる。また、光が積層体を透過して内容物に到達することを抑制できる。これにより、油分などの内容物の成分が酸化することを抑制できる。
【0061】
金属層は、例えば、アルミニウムなどの金属を含んでいてもよい。例えば、金属層は、表面樹脂層23上に蒸着したアルミニウムの層を含んでいてもよい。
【0062】
無機酸化物層は、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化珪素(シリカ)、酸化マグシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム、酸化バリウム、酸化炭化珪素(炭素含有酸化珪素)などの無機酸化物を含んでいてもよい。好ましくは、無機酸化物層は、シリカ、酸化炭化珪素又はアルミナを含む。シリカは、蒸着層を形成した後のエージング処理が必要ないという点で好ましい。
【0063】
蒸着層30の厚さは、例えば1nm以上であり、5nm以上であってもよく、10nm以上であってもよい。これにより、バリアフィルム10のバリア性をより高くすることができる。蒸着層30の厚さは、150nm以下であってもよく、100nm以下であってもよく、50nm以下であってもよい。これにより、蒸着層30にクラックなどの不良が生じることを抑制できる。また、積層体及び包装容器のリサイクル特性を高めることができる。
【0064】
蒸着層30は、単層からなっていてもよく、複数の層を含んでいてもよい。単層は、1回の蒸着工程によって形成される層である。複数の層は、複数回の蒸着工程によって形成される。複数の層を構成する材料は、同一であってもよく、異なっていてもよい。複数の層を構成する方法は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0065】
(バリアフィルムの製造方法)
次に、バリアフィルム10の製造方法について説明する。
【0066】
まず、共押出し法によってシーラントフィルム20を作製する。具体的には、ポリオレフィン樹脂層21を構成するポリオレフィンと、接着性樹脂層22を構成する接着性樹脂と、表面樹脂層23を構成する樹脂材料とを、Tダイ法、インフレーション法などを利用して共に押し出す。これにより、シーラントフィルム20を作製できる。図2に示すようにポリオレフィン樹脂層21が第1コポリマー層21a、ホモポリマー層21b及び第2コポリマー層21cを含む場合、各ポリマー層の材料を、接着性樹脂層22を構成する接着性樹脂及び表面樹脂層23を構成する樹脂材料と共に押し出す。
【0067】
続いて、蒸着法によってシーラントフィルム20の表面樹脂層23上に蒸着層30を形成する。これによって、シーラントフィルム20及び蒸着層30を備えるバリアフィルム10を得ることができる。
【0068】
蒸着層30の形成方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、真空蒸着法、スパッタリング法およびイオンプレーティング法などの物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、並びにプラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法および光化学気相成長法などの化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)などを用いることができる。
【0069】
表面樹脂層23には、表面処理が施されていてもよい。これにより、蒸着層30との密着性を高めることができる。表面処理の方法は特に限定されず、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガスおよび/または窒素ガスなどを用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理などの物理的処理、並びに化学薬品を用いた酸化処理などの化学的処理が挙げられる。
【0070】
PVD法によって蒸着層30を形成する場合、以下に説明するように、プラズマアシスト機能を備えた真空成膜装置を使用してもよい。例えば真空成膜装置は、図3及び図4に示すように、真空容器101、巻出し部102、成膜用ドラム103、巻取り部104、搬送ロール105、蒸発源106、防着箱108、蒸着材料109及びプラズマガン110備えていてもよい。蒸着層30が無機酸化物を含む場合、真空成膜装置は、反応ガス供給部107を備えていてもよい。図3は、真空成膜装置のXZ平面方向の概略断面図である。図4は、真空成膜装置のXY平面方向の概略断面図である。
【0071】
図3に示すように、成膜用ドラム103に巻き取られているシーラントフィルム20が、表面樹脂層23が下を向くように配置される。成膜用ドラム103より下に、電気的に接地された防着箱108が配置される。防着箱108の底面に、蒸発源106が配置される。蒸発源106の上面と一定の間隔を空けて上下方向において対向する位置に、成膜用ドラム103が配置される。巻出し部102と成膜用ドラム103との間、及び成膜用ドラム103と巻取り部104との間に、搬送ロール105が配置される。図示はしないが、真空容器101は、真空ポンプに連結されている。
【0072】
蒸発源106は、蒸着材料109を保持する。図示はしないが、蒸発源106は加熱装置を備える。反応ガス供給部107は、蒸発した蒸着材料109と反応する反応ガスを供給する。反応ガスは、酸素、窒素、ヘリウム、アルゴンおよびこれらの混合ガスなどである。蒸着層30が無機酸化物を含む場合、反応ガス供給部107は酸素を供給する。
【0073】
蒸発源106から蒸発した蒸着材料109が、シーラントフィルム20の表面樹脂層23に向かう。プラズマガン110から表面樹脂層23に向けてプラズマが照射される。これにより、蒸着層30が形成される。このような形成方法の詳細は、例えば特開2011-214089号公報に開示されている。
【0074】
次に、プラズマ化学気相成長法によって無機酸化物の蒸着層30を形成する例を説明する。プラズマ発生装置としては、高周波プラズマ、パルス波プラズマ、マイクロ波プラズマなどの発生装置を使用できる。また2室以上の成膜室を有する装置を使用してもよい。装置は、真空ポンプを備えることが好ましい。これにより、各成膜室を真空に保持できる。各成膜室における真空度は、1×10Pa~1×10-6Paであることが好ましい。プラズマ発生装置を使用した蒸着層30の成膜方法の一例を以下に記載する。
【0075】
まず、シーラントフィルム20を成膜室へ送り出す。続いて、所定の速度で、シーラントフィルム20をドラム上に搬送する。続いて、ガス供給装置から、成膜室内へ、無機酸化物を含む成膜用モノマーガス、酸素ガスおよび不活性ガスなどを含む混合ガス組成物を供給する。表面樹脂層23上に、グロー放電により発生したプラズマを照射し、表面樹脂層23上に蒸着層30を形成する。このような形成方法の詳細は、例えば特開2012-076292号公報に開示されている。
【0076】
蒸着膜の形成方法に使用される装置として、以下に説明するように、プラズマ前処理室及び成膜室を備える連続蒸着膜成膜装置を使用してもよい。
まず、プラズマ前処理室において、プラズマ供給ノズルから、シーラントフィルム20の表面樹脂層23にプラズマが照射される。続いて、成膜室において表面樹脂層23上に蒸着層30が形成される。このような形成方法の詳細は、例えば国際公開WO2019/087960号パンフレットに開示されている。
【0077】
蒸着層30の表面には、上記の表面処理が施されてもよい。
【0078】
(シーラントフィルムの効果)
本実施の形態においては、シーラントフィルム20が、極性基を有する樹脂材料を含む表面樹脂層23を備えている。このため、表面樹脂層23上に蒸着層30を形成することにより、シーラントフィルム20と蒸着層30の間の密着性を高めることができる。これにより、バリアフィルム10のバリア性を高めることができる。また、蒸着層30がアルミニウムなどからなる金属層を含む場合に、バリアフィルム10の遮光性を高めることができる。
【0079】
本実施の形態においては、シーラントフィルム20が第1コポリマー層21aを含むことにより、シーラントフィルム20の耐衝撃性を高めることができる。シーラントフィルム20の破断エネルギーは、例えば0.1J以上であり、0.2J以上であってもよく、0.3J以上であってもよい。シーラントフィルム20の破断エネルギーをシーラントフィルム20の厚みで割った値は、例えば0.0025J/μm以上であり、0.0050J/μm以上であってもよく、0.0075J/μm以上であってもよい。これらの値は、シーラントフィルム20及び蒸着層30を備えるバリアフィルム10においても成立する。
【0080】
シーラントフィルム20の破断エネルギーを測定する測定器としては、株式会社東洋精機製作所製のフィルムインパクトテスタを用いる。具体的には、張力が加えられた状態のシーラントフィルム20の試験片に対して、フィルムインパクトテスタのハンマーが衝撃を加える。試験片が破れる際の強度を測定する。ハンマーとしては、3Jのものを用いる。ハンマーの先端の衝撃球の直径は12.7mmである。ハンマーの持ち上げ角は90°である。試験片は、直径35mmの円形からなる有効寸法領域を含む。例えば、試験片の形状は、一片が100mmの正方形である。測定においては、試験片をチャックで保持した状態で、試験片の有効寸法領域にハンマーで衝撃が加えられる。
【0081】
5個の試験片について、シーラントフィルム20の破断エネルギーを測定する。5個の試験片の破断エネルギーの平均を、シーラントフィルム20の破断エネルギーとして採用する。測定時の環境は、温度23℃、相対湿度50%RHである。
【0082】
バリアフィルム10の酸素透過度は、例えば0.50cc/m・day・atm以下であり、0.40cc/m・day・atm以下であってもよく、0.30cc/m・day・atm以下であってもよい。酸素透過度は、JIS K 7126に準拠して、温度23℃、相対湿度90%RHの環境下で測定される。酸素透過度の測定器としては、MOCON社製の酸素透過度測定装置 OX-TRAN2/20が用いられる。
【0083】
バリアフィルム10の水蒸気透過度は、例えば2.0g/m・day以下であり、1.0g/m・day以下であってもよく、0.50g/m・dayであってもよい。水蒸気透過度は、JIS K 7129に準拠して、温度40℃、相対湿度90%RHの環境下で測定される。水蒸気透過度の測定器としては、MOCON社製の水蒸気透過度測定装置 PERMATRAN-w 3/33が用いられる。
【0084】
バリアフィルム10の全光線透過率は、例えば1.0%以下であり、0.50%以下であってもよく、0.20%以下であってもよい。全光線透過率は、JIS K 7361に準拠して、温度23℃、相対湿度90%RHの環境下で測定される。全光線透過率の測定器としては、日本電色工業株式会社製のヘーズメーター MDH4000が用いられる。
【0085】
また、本実施の形態においては、ポリオレフィン樹脂層21が第1コポリマー層21a、ホモポリマー層21b及び第2コポリマー層21cを含む。ポリオレフィン樹脂層21が第1コポリマー層21aを含むことにより、シーラントフィルム20のシール性及び耐衝撃性を高めることができる。ポリオレフィン樹脂層21がホモポリマー層21bを含むことにより、加熱時のポリプロピレンの流動に起因してバリアフィルム10にピンホール、切れなどの欠陥が生じることを抑制できる。また、ホモポリマー層21bの耐熱温度が高いのでホモポリマー層21bは高い剛性を有する。このため、折り曲げ疲労に対するバリアフィルム10の耐性を高めることができる。ポリオレフィン樹脂層21が第2コポリマー層21cを含むことにより、ポリオレフィン樹脂層21と接着性樹脂層22の間の密着性を高めることができる。
【0086】
バリアフィルム10の厚さは、例えば20μm以上であり、40μm以上であってもよい。バリアフィルム10の厚さは、例えば80μm以下であり、60μm以下であってもよい。
【0087】
(積層体)
次に、バリアフィルム10を備える積層体について説明する。積層体は、包装容器を構成する包装材料として用いられてもよい。
【0088】
図5は、本実施の形態による積層体50の一例を示す断面図である。積層体50は、基材40及びシーラントフィルム20を備える。積層体50は、内面50x及び外面50yを含む。内面50xは、シーラントフィルム20のポリオレフィン樹脂層21によって構成されている。外面50yは、基材40によって構成されていてもよい。
【0089】
〔基材〕
基材40は、シーラントフィルム20の第2面20yに対向している。シーラントフィルム20と基材40は、例えばドライラミネート法によって積層されていてもよい。この場合、接着剤層45が基材40とシーラントフィルム20の間に位置している。
【0090】
基材40は、プラスチックフィルムを含んでいてもよい。例えば、基材40は、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリブチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ナイロンフィルムやナイロン6/メタキシリレンジアミンナイロン6共押共延伸フィルム等のポリアミドフィルムを含んでいてもよい。基材40は、プラスチックフィルムを1つのみ含んでいてもよく、2つ以上のプラスチックフィルムを含んでいてもよい。
【0091】
好ましくは、基材40は、ポリオレフィンフィルムを含む。シーラントフィルム20のポリオレフィン樹脂層21がポリプロピレン樹脂層である場合、基材40は、ポリプロピレンフィルムを含むことが好ましい。これにより、積層体50におけるポリプロピレンの構成比率を高めることできる。このため、積層体50及び包装容器のリサイクル適性を高めることができる。
【0092】
プラスチックフィルムは、所定の方向において延伸されていてもよい。以下の説明において、延伸されたプラスチックフィルムのことを、延伸プラスチックフィルムとも称する。プラスチックフィルムは、所定の一方向において延伸された一軸延伸フィルムであってもよく、所定の二方向において延伸された二軸延伸フィルムであってもよい。延伸倍率は、2倍以上であってもよく、5倍以上であってもよい。延伸倍率は、15倍以下であってもよく、13倍以下であってもよい。
【0093】
延伸プラスチックフィルムの厚さは、例えば10μm以上であり、15μm以上であってもよい。これにより、積層体50の強度及び耐熱性を高めることができる。延伸プラスチックフィルムの厚さは、例えば50μm以下であり、40μm以下であってもよい。これにより、基材40の成膜性及び加工適性を高めることができる。
【0094】
基材40がプラスチックフィルムを含む場合、図6に示すように、積層体50は、基材40と接着剤層45との間に位置する印刷層41を備えていてもよい。印刷層41は、包装容器に製品情報を示したり美感を付与したりするための層である。印刷層41は、文字、数字、記号、図形、絵柄などを表現する。印刷層41を構成する材料としては、グラビア印刷用のインキやフレキソ印刷用のインキを用いることができる。グラビア印刷用のインキの具体例としては、DICグラフィックス株式会社製のフィナートを挙げることができる。
【0095】
蒸着層30がアルミニウムなどからなる金属層を含む場合、蒸着層30を基材40上に形成すると、印刷層41が視認されなくなる。本実施の形態においては、蒸着層30がシーラントフィルム20上に形成されているので、印刷層41を積層体50の外面50y側から視認できる。
【0096】
基材40は、紙を含んでいてもよい。紙の坪量は、例えば20g/m以上であり、40g/m以上であってもよく、50g/m以上であってもよい。紙の坪量は、例えば150g/m以下であり、100g/m以下であってもよく、80g/m以下であってもよい。紙としては、クラフト紙、アート紙、コート紙、グラシン紙、純白ロール紙、晒クラフト紙、上質紙などを用いることができる。
【0097】
紙に対する蒸着層30の密着性は低い。このため、蒸着層30を紙の上に形成する場合、積層体50のラミネート強度が低くなる。本実施の形態によれば、蒸着層30がシーラントフィルム20上に形成されている。このため、積層体50が紙及び蒸着層30を備える場合であっても、積層体50のラミネート強度を高めることができる。
【0098】
〔接着剤層〕
接着剤層45は、基材40とシーラントフィルム20をドライラミネート法により接着するための層である。接着剤層45は、基材40又は基材40の表面に、接着剤を塗布して乾燥させることにより形成される。接着剤層45を構成する接着剤としては、例えば、1液型あるいは2液型の硬化ないし非硬化タイプのビニル系、(メタ)アクリル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリウレタン系、エポキシ系、ゴム系、その他などの溶剤型、水性型、あるいは、エマルジョン型などの接着剤を用いることができる。2液硬化型の接着剤としては、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物を用いることができる。例えば、2液硬化型の接着剤は、ポリエステルポリオールとイソシアネート化合物との硬化物を含んでいてもよい。例えば、2液硬化型の接着剤は、DIC株式会社製の酸素バリア性接着剤パスリム(PASLIM)を含んでいてもよい。酸素バリア性接着剤パスリムは、ポリエステルポリオール、イソシアネート化合物、及びリン酸変性化合物を含む。酸素バリア性接着剤パスリムは、例えばPASLIM VM001/VM102CPである。PASLIM VM001/VM102CPは、ポリエステル系の主骨格と、イソシアネート基を2個以上有する硬化剤と、を含む。接着剤のコーティング方法としては、例えば、ダイレクトグラビアロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、リバースロールコート法、フォンテン法、トランスファーロールコート法、その他の方法で塗布することができる。
【0099】
接着剤層45の厚さは、例えば1μm以上であり、2μm以上であってもよい。接着剤層45の厚さは、例えば5μm以下であり、4μm以下であってもよい。
【0100】
(積層体の効果)
本実施の形態においては、シーラントフィルム20が、極性基を有する樹脂材料を含む表面樹脂層23を備えている。このため、表面樹脂層23上に蒸着層30を形成することにより、シーラントフィルム20と蒸着層30の間の密着性を高めることができる。これにより、積層体50のラミネート強度を高めることができる。
【0101】
積層体50のラミネート強度は、例えば0.5N/15mm以上であり、1.5N/15mm以上であってもよく、2.0N/15mm以上であってもよく、2.5N/15mm以上であってもよい。積層体50のラミネート強度は、例えば5.0N/15mm以下であり、4.0N/15mm以下であってもよい。ラミネート強度は、JIS K 6854-2に準拠して、温度23℃、相対湿度90%RHの環境下で測定される。ラミネート強度の測定器としては、A&D製のテンシロン万能材料試験機RTC-1310が用いられる。
【0102】
図7図9を参照して、ラミネート強度の測定方法を説明する。まず、積層体50を切り出して、長辺及び短辺を含む矩形の試験片を作製した。短辺の長さは15mmである。続いて、図7に示すように、シーラントフィルム20と基材40とを長辺の方向において15mmにわたって剥離させる。続いて、図8に示すように、剥離されている試験片の部分をそれぞれ、つかみ具56及びつかみ具57によって把持する。続いて、つかみ具56,57をそれぞれ、試験片の面方向に対して直交する方向において互いに逆向きに、50mm/分の速度で引っ張る。つかみ具56,57に加えられる引張応力を測定する。引っ張りを開始する際の、つかみ具56,57間の間隔Sは30mmである。引っ張りを終了する際の、つかみ具56,57間の間隔Sは60mmである。
【0103】
図9は、引張応力の測定結果の一例を示す図である。図9において、横軸は、つみ具56,57間の間隔Sを表し、縦軸は、つかみ具56,57に加えられる引張応力Fを表す。間隔Sに対する引張応力Fの変化は、第1領域R1を経て、第1領域R1に比べて引張応力の変化率の小さい第2領域R2に入る。第2領域R2は、安定領域とも称される。
【0104】
5個の試験片について、第2領域R2における引張応力Fを測定する。続いて、第2領域R2における引張応力Fの平均値を、5個の試験片についてそれぞれ算出する。5つの平均値の平均を、積層体50のラミネート強度として採用する。測定時の環境は、温度23℃、相対湿度50%RHである。
【0105】
本実施の形態においては、積層体50がバリアフィルム10を備えることにより、積層体50のバリア性を高めることができる。また、蒸着層30がアルミニウムなどからなる金属層を含む場合に、積層体50の遮光性を高めることができる。
【0106】
積層体50の酸素透過度は、例えば0.50cc/m・day・atm以下であり、0.40cc/m・day・atm以下であってもよく、0.30cc/m・day・atm以下であってもよい。酸素透過度は、シーラントフィルム20の場合と同様に、JIS K 7126に準拠して、温度23℃、相対湿度90%RHの環境下で測定される。
【0107】
積層体50の水蒸気透過度は、例えば2.0g/m・day以下であり、1.0g/m・day以下であってもよく、0.50g/m・day以下であってもよい。水蒸気透過度は、シーラントフィルム20の場合と同様に、JIS K 7129に準拠して、温度40℃、相対湿度90%RHの環境下で測定される。
【0108】
積層体50の全光線透過率は、例えば1.0%以下であり、0.50%以下であってもよく、0.20%以下であってもよい。全光線透過率は、シーラントフィルム20の場合と同様に、JIS K 7361に準拠して、温度23℃、相対湿度90%RHの環境下で測定される。
【0109】
積層体50の厚さは、例えば20μm以上であり、30μm以上であってもよく、50μm以上であってもよい。積層体50の厚さは、例えば100μm以下であり、90μm以下であってもよく、80μm以下であってもよい。
【0110】
(包装容器)
本発明の包装容器は、上述の積層体50を備える。基材40がプラスチックフィルムを含む場合、包装容器は、例えば、パウチ、蓋材、ラミネートチューブなどである。基材40が紙を含む場合、包装容器は、例えば、紙容器などである。
【0111】
包装袋としては、例えば、スタンディングパウチ型、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、ガゼット型などの種々の形態の包装袋が挙げられる。
【0112】
パウチの一例として、スタンディングパウチを説明する。図10は、スタンディングパウチの構成の一例を簡略に示す図である。包装容器60は、胴部(側面シート)61と、底部(底面シート)62とを備える。包装容器60の側面シート61と底面シート62とは、同一部材により構成されていてもよく、別部材により構成されていてもよい。例えば、側面シート61及び底面シート62の両方が、上述の積層体50であってもよい。若しくは、側面シート61及び底面シート62のいずれか一方が、上述の積層体50であってもよい。
【0113】
図11は、パウチのその他の例を示す図である。図11のパウチの製造工程においては、積層体50を2枚準備し、これらをポリオレフィン樹脂層21が向かい合うようにして重ね合わせる。続いて、V字状に折った他の2枚の積層体を、2枚の積層体50の一方の側端及び他方の側端において、2枚の積層体50の間に挿入する。この際、他の2枚の積層体のシーラント層は外側に向いている。続いて、2枚の積層体50の一方の側端及び他方の側端並びに下端に沿って0xシールを行う。これによって、図11に示すようなサイドがセットパウチを作製できる。
【0114】
図12は、パウチのその他の例を示す図である。図12に示すように、包装容器60は、ガセット部を有さないパウチであってもよい。
【0115】
ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シールなどの公知の方法を採用できる。
【0116】
包装容器に充填される内容物は、特には限定されない。内容物は、液体、粉体およびゲル体であってもよい。内容物は、食品であってもよく、非食品であってもよい。
【実施例
【0117】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0118】
(実施例1)
表面樹脂層23、接2着性樹脂層22、第2コポリマー層21c、ホモポリマー層21b及び第1コポリマー層21aを備えるシーラントフィルム20を、共押出し法によって作製した。表面樹脂層23としては、BASF製のナイロン6 Ultramid(登録商標)B36LNを用いた。接着性樹脂層22としては、三井化学製の無水マレイン酸変性ポリプロピレン QF551を用いた。第2コポリマー層21cとしては、サンアロマー製のポリプロピレンのランダムコポリマー PC630Aを用いた。ホモポリマー層21bとしては、サンアロマー製のポリプロピレンのホモポリマー PC600Aを用いた。第1コポリマー層21aとしては、サンアロマー製のポリプロピレンのランダムコポリマー PC630Aを用いた。表面樹脂層23、接2着性樹脂層22、第2コポリマー層21c、ホモポリマー層21b及び第1コポリマー層21aの厚さはそれぞれ、3μm、4μm、3μm、17μm及び13μmであった。表面樹脂層23の粘度数は218ml/g(ISO307)であり、密度は1.15g/cmであり、融点は220℃であった。接着性樹脂層22のMFRは5.7g/10min(ASTM D1238)であり、密度は0.890g/cmであった。コポリマー層21a、21cのMFR及び密度は、7.5g/10分及び0.9g/cmであった。ホモポリマー層21bのMFR及び密度は、7.5g/10分及び0.9g/cmであった。シーラントフィルム20全体の厚さは、40μmであった。シーラントフィルム20の厚さに対する、表面樹脂層23の厚さの割合は、7.5%であった。
【0119】
シーラントフィルム20の表面樹脂層23上に、ワイヤー式蒸着法によってアルミニウムの蒸着層30を形成した。これによって、シーラントフィルム20及び蒸着層30を備えるバリアフィルム10が得られた。蒸着層30の厚さは45nmであった。
【0120】
続いて、プラスチックフィルムからなる基材40と、シーラントフィルム20を、ドライラミネート法によって接着した。これによって、第1の積層体50を得た。プラスチックフィルムとしては、三井化学東セロ製の二軸延伸ポリプロピレンフィルム U1を用いた。基材40の厚さは20μmであった。接着剤としては、DICG製のPASLIM VM001/VM108CPを用いた。接着剤の塗布量は、4g/mであった。
【0121】
また、紙からなる基材40と、シーラントフィルム20を、ドライラミネート法によって接着した。これによって、第2の積層体50を得た。紙としては、特種東海製紙製のクラフト紙 東海クラフトCを用いた。基材40の坪量は50g/mであった。接着剤としては、DICG製のPASLIM VM001/VM108CPを用いた。接着剤の塗布量は、4g/mであった。
【0122】
第1の積層体の層構成は、下記のように表現される。
OPP20/DL/AL/Ny3/接着4/ランダムPP3/ホモPP17/ランダムPP13
第2の積層体の層構成は、下記のように表現される。
紙/DL/AL/Ny3/接着4/ランダムPP3/ホモPP17/ランダムPP13
「/」は層と層の境界を表している。左端の層が、積層体50の外面50yを構成する層である。右端の層が、積層体50の内面50xを構成する層である。
「OPP」は、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを意味する。「DL」は、接着剤層を意味する。「AL」は、アルミニウムの蒸着層を意味する。「Ny」は、ナイロン6を意味する。「接着」は、接着性樹脂層を意味する。「ランダムPP」は、ポリプロピレンのランダムコポリマーを意味する。「ホモPP」は、ポリプロピレンのホモポリマーを意味する。数字は、層の厚さを意味する。厚さの単位はμmである。
【0123】
(実施例2)
表面樹脂層23として、クラレ製のエチレン-ビニルアルコール共重合体 E171Bを用いた。表面樹脂層23における、エチレン共重合の比率は、44mol%であった。表面樹脂層23のMFR及び密度は、1.7g/10分及び1.14g/cmであった。接着性樹脂層22として、三井化学製の無水マレイン酸変性ポリプロピレン AT3351を用いた。接着性樹脂層22のMFRは11g/10min(ASTM D1238)であり、密度は、0.890g/cmであった。表面樹脂層23及び接着性樹脂層22の厚さはそれぞれ、3μm及び4μmであった。これらの点以外は、実施例1の場合と同様にして、第1の積層体50及び第2の積層体50を作製した。シーラントフィルム20全体の厚さは、40μmであった。シーラントフィルム20の厚さに対する、表面樹脂層23の厚さの割合は、7.5%であった。
【0124】
第1の積層体の層構成は、下記のように表現される。
OPP20/DL/AL/EVOH3/接着4/ランダムPP3/ホモPP17/ランダムPP13
第2の積層体の層構成は、下記のように表現される。
紙/DL/AL/EVOH3/接着4/ランダムPP3/ホモPP17/ランダムPP13
「EVOH」は、エチレン-ビニルアルコール共重合体を意味する。
【0125】
(比較例1)
シーラントフィルム20として、東レフィルム加工製の未延伸ポリプロピレンフィルム 2703を用いた。未延伸ポリプロピレンフィルム 2703は、ポリプロピレン樹脂層の表面に形成されているアルミニウムの蒸着層を含む。シーラントフィルム20の厚さは40μmであった。蒸着層の厚さは45nmであった。これらの点以外は、実施例1の場合と同様にして、第1の積層体50及び第2の積層体50を作製した。
【0126】
第1の積層体の層構成は、下記のように表現される。
OPP20/DL/AL/CPP40
第2の積層体の層構成は、下記のように表現される。
紙/DL/AL/CPP40
「CPP」は、未延伸ポリプロピレンフィルムを意味する。
【0127】
(比較例2)
接着性樹脂層22の厚さが1μmであり、第2コポリマー層21cの厚さが6μmであること以外は、実施例1の場合と同様にして、第1の積層体50及び第2の積層体50を作製した。
【0128】
第1の積層体の層構成は、下記のように表現される。
OPP20/DL/AL/Ny3/接着1/ランダムPP6/ホモPP17/ランダムPP13
第2の積層体の層構成は、下記のように表現される。
紙/DL/AL/Ny3/接着1/ランダムPP6/ホモPP17/ランダムPP13
【0129】
上記の層構成の第1の積層体50及び第2の積層体50を安定に成膜することは困難であった。表面樹脂層23がナイロンなどのポリアミド樹脂を含む場合、安定にバリアフィルム10及び積層体50を作製するためには、接着性樹脂層22の厚さが2μm以上であることが好ましいと考えられる。
【0130】
(比較例3)
表面樹脂層23の厚さが2μmであり、接着性樹脂層22の厚さが2μmであり、第2コポリマー層21cの厚さが6μmであること以外は、実施例2の場合と同様にして、第1の積層体50及び第2の積層体50を作製した。
【0131】
第1の積層体の層構成は、下記のように表現される。
OPP20/DL/AL/EVOH2/接着2/ランダムPP6/ホモPP17/ランダムPP13
第2の積層体の層構成は、下記のように表現される。
紙/DL/AL/EVOH2/接着2/ランダムPP6/ホモPP17/ランダムPP13
【0132】
上記の層構成の第1の積層体50及び第2の積層体50においては、白色の外観が確認された。表面樹脂層23がエチレン-ビニルアルコール共重合体を含む場合、外観が白色になることを抑制するためには、表面樹脂層23の厚みが3μm以上であることが好ましいと考えられる。表面樹脂層23がエチレン-ビニルアルコール共重合体を含む場合、積層体50のラミネート強度を確保するためには、接着性樹脂層22の厚さが3μm以上であることが好ましいと考えられる。
【0133】
〔ラミネート強度の測定〕
実施例1~2及び比較例1の第1の積層体50のラミネート強度を、JIS K 6854-2に準拠して、温度23℃、相対湿度90%RHの環境下で測定した。ラミネート強度の測定器としては、A&D製のテンシロン万能材料試験機RTC-1310を用いた。具体的には、上述の図7図9に示す方法によってラミネート強度を測定した。
実施例1、実施例2及び比較例1におけるラミネート強度はそれぞれ、3.0N/15mm、2.9N/15mm及び0.5N/15mmであった。
測定結果は、最も低い密着性を有する層の間におけるラミネート強度を表す。図7図9においては、接着剤層45と蒸着層30の間において試験片が剥離されているが、測定結果が接着剤層45と蒸着層30の間のラミネート強度を表すとは限らない。
【0134】
〔酸素透過度の測定〕
実施例1~2及び比較例1の第1の積層体50の酸素透過度を、JIS K 7126に準拠して、温度23℃、相対湿度90%RHの環境下で測定した。酸素透過度の測定器としては、MOCON社製の酸素透過度測定装置 OX-TRAN2/20を用いた。測定においては、基材40が酸素供給側に位置するように、第1の積層体50のサンプルを配置した。
実施例1、実施例2及び比較例1における酸素透過度はそれぞれ、0.20cc/m・day・atm、0.01cc/m・day・atm及び4.0cc/m・day・atmであった。
【0135】
〔水蒸気透過度の測定〕
実施例1~2及び比較例1の第1の積層体50の水蒸気透過度を、JIS K 7129に準拠して、温度40℃、相対湿度90%RHの環境下で測定した。水蒸気透過度の測定器としては、MOCON社製の水蒸気透過度測定装置 PERMATRAN-w 3/33を用いた。測定においては、基材40が水蒸気供給側に位置するように、第1の積層体50のサンプルを配置した。
実施例1、実施例2及び比較例1における水蒸気透過度はそれぞれ、0.10g/m・day、0.10g/m・day及び0.5g/m・dayであった。
【0136】
〔熱収縮性の評価〕
実施例1~2及び比較例1の第1の積層体50に、熱に起因する収縮が生じるか否かを評価した。具体的には、まず、2枚の第1の積層体50を準備した。続いて、ポリオレフィン樹脂層21が接するように2枚の第1の積層体50を重ねた。続いて、1kg、1秒の条件で2枚の第1の積層体50を、120℃~170℃の温度域でヒートシールした。熱収縮が第1の積層体50に生じているか否かを、目視で確認した。
120℃~150℃の温度域においては、実施例1~2及び比較例1のいずれにおいても、熱収縮は生じていなかった。
160℃においては、実施例1~2においては、若干の熱収縮が生じていた。比較例1においては、実施例1~2の場合に比べて大きな熱収縮が生じていた。
170℃においては、実施例1~2においては、実施例1~2の160℃の場合よりも大きな熱収縮が生じていた。比較例1においては、実施例1~2の170℃の場合に比べて大きな、顕著な熱収縮が生じていた。
【0137】
〔光学濃度及び全光線透過率の測定〕
実施例1~2及び比較例1の第1の積層体50の光学濃度及び全光線透過率を、JIS K 7361に準拠して、温度23℃、相対湿度90%RHの環境下で測定した。全光線透過率の測定器としては、日本電色工業株式会社製のヘーズメーター MDH4000を用いた。
実施例1、実施例2及び比較例1における光学濃度はそれぞれ、3.4、3.0及び2.0であった。
実施例1、実施例2及び比較例1における全光線透過率はそれぞれ、0.04%、0.1%及び1.0%であった。
【0138】
〔表面光沢の評価〕
実施例1~2及び比較例1の第1の積層体50の表面光沢を評価した。具体的には、第1の積層体50を基材40側から目視し、アルミニウムの蒸着層30の光沢が現れているか否かを確認した。
実施例1においては、光沢が現れていた。実施例2及び比較例1においては、実施例1の場合に比べて光沢の程度が小さかった。
【0139】
〔シールリークの評価〕
実施例1~2及び比較例1の第2の積層体50のシールリークを評価した。まず、第2の積層体50をヒートシールすることによって、ピローパウチを作製した。ヒートシールの装置としては、東京自働機械製作所製の縦ピロー充填機 TYTT型を用いた。ショット数は85rpmであり、縦シールのシール温度は150℃であり、横シールのシール温度は160℃である。続いて、ピローパウチの上部の開口を介して、ピローパウチの内部にチェック液を充填した。チェック液としては、三菱ガス化学社製のエッジレスシールチェック液を用いた。チェック液を充填した後、ピローパウチを、温度23℃、相対湿度50%RHの環境下に24時間置いた。その後、チェック液の漏れが生じているか否かを確認した。
実施例1及び実施例2においては、チェック液の漏れは生じていなかった。比較例1においては、チェック液の漏れが生じていた。
【0140】
測定結果及び評価結果を図13に示す。実施例1~2の積層体50は、比較例1~3の積層体50に比べて良好な結果を示している。
【0141】
〔破断強度及び破断伸度の評価〕
実施例1及び比較例1のシーラントフィルム20の破断強度及び破断伸度を、JIS K7127に準拠して、温度23℃、相対湿度50%RHの環境下で測定した。破断強度及び破断伸度の測定器としては、A&D製のテンシロン万能材料試験機RTC-1310を用いた。測定においては、シーラントフィルム20を幅10mm、長さ150mmの矩形状のフィルムに切り出したものを試験片として用いた。試験片を保持する一対のチャックの間の、測定開始時の間隔は50mmであった。試験片の引張速度は300mm/分であった。
流れ方向(MD)及び垂直方向(TD)における実施例1のシーラントフィルム20の破断強度は、46.1MPa及び26.5MPaであった。流れ方向(MD)及び垂直方向(TD)における実施例1のシーラントフィルム20の破断伸度は、372.8%及び403.8%であった。
流れ方向(MD)及び垂直方向(TD)における比較例1のシーラントフィルム20の破断強度は、32.3MPa及び28.3MPaであった。流れ方向(MD)及び垂直方向(TD)における比較例1のシーラントフィルム20の破断伸度は、340.9%及び458.3%であった。測定結果を図14に示す。
【0142】
〔破断エネルギーの測定〕
実施例1及び比較例1のシーラントフィルム20の破断エネルギーを、温度23℃、相対湿度90%RHの環境下で測定した。破断エネルギーの測定器としては、株式会社東洋精機製作所製のフィルムインパクトテスタを用いた。
実施例1及び比較例1におけるシーラントフィルム20の破断エネルギーはそれぞれ、0.389J及び0.054Jであった。シーラントフィルム20の破断エネルギーをシーラントフィルム20の厚みで割った値は、実施例1及び比較例1においてそれぞれ0.00972J/μm及び0.00135J/μmであった。測定結果を図14に示す。
【符号の説明】
【0143】
10 バリアフィルム
20 シーラントフィルム
20x 第1面
20y 第2面
21 ポリオレフィン樹脂層
21a 第1コポリマー層
21b ホモポリマー層
21c 第2コポリマー層
22 接着性樹脂層
23 表面樹脂層
30 蒸着層
40 基材
41 印刷層
45 接着剤層
50 積層体
50x 内面
50y 外面
60 包装容器
図1
図2
図3
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