(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】ヒータ、及びウエハ加熱装置
(51)【国際特許分類】
H05B 3/10 20060101AFI20241121BHJP
H05B 3/68 20060101ALI20241121BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H05B3/10 A
H05B3/68
H01L21/02 Z
(21)【出願番号】P 2021074751
(22)【出願日】2021-04-27
【審査請求日】2023-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】北林 桂児
(72)【発明者】
【氏名】先田 成伸
(72)【発明者】
【氏名】木村 功一
【審査官】広瀬 雅治
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-228270(JP,A)
【文献】国際公開第2019/012959(WO,A1)
【文献】特開2004-200667(JP,A)
【文献】特開2011-129577(JP,A)
【文献】特開2018-139221(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0088111(US,A1)
【文献】特開2002-319474(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0060925(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/10
H05B 3/68
H01L 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハを加熱するためのヒータであって、
絶縁体によって構成される円板状の基材と、
金属の抵抗発熱体によって構成される回路パターンとを備え、
前記抵抗発熱体は、前記基材と接するように配置されており、
前記回路パターンは、複数の第一パターン部を備え、
各第一パターン部は、前記基材と同心の特定の円周に沿った複数の第一円弧部と、前記特定の円周に沿った方向に隣り合う第一円弧部同士をつなぐ第一屈曲部とによって構成されており、
各第一パターン部の前記特定の円周に沿った長さは基準長さLs以上であり、
各第一円弧部の長さは前記基準長さLs未満であり、
前記基準長さLsは、Ls=|ΔL/{ΔT×(α1-α2)}|を満たし、
ΔLは、前記絶縁体の熱膨張量と前記金属の熱膨張量との差の許容値であ
る0.2mmであり、
ΔTは、前記回路パターンの最高使用温度と常温
としての20℃との温度差であり、
α1は、前記絶縁体の線膨張係数であり、
α2は、前記金属の線膨張係数であ
り、
前記回路パターンは更に、複数の第二パターン部を備え、
各第二パターン部は、前記基材の周方向に沿った第二円弧部によって構成されており、
各第二円弧部の長さは前記基準長さLs以上であり、
前記第一パターン部の数S1と前記第二パターン部の数S2とは、0.7≦S1/(S1+S2)を満たす、
ヒータ。
【請求項2】
ウエハを加熱するためのヒータであって、
絶縁体によって構成される円板状の基材と、
金属の抵抗発熱体によって構成される回路パターンとを備え、
前記抵抗発熱体は、前記基材と接するように配置されており、
前記回路パターンは、複数の第一パターン部を備え、
各第一パターン部は、前記基材と同心の特定の円周に沿った複数の第一円弧部と、前記特定の円周に沿った方向に隣り合う第一円弧部同士をつなぐ第一屈曲部とによって構成されており、
各第一パターン部の前記特定の円周に沿った長さは基準長さLs以上であり、
各第一円弧部の長さは前記基準長さLs未満であり、
前記基準長さLsは、Ls=|ΔL/{ΔT×(α1-α2)}|を満たし、
ΔLは、前記絶縁体の熱膨張量と前記金属の熱膨張量との差の許容値であ
る0.2mmであり、
ΔTは、前記回路パターンの最高使用温度と常温
としての20℃との温度差であり、
α1は、前記絶縁体の線膨張係数であり、
α2は、前記金属の線膨張係数であ
り、
前記回路パターンに備わる全ての円弧部のそれぞれの長さは、前記基準長さLs未満である、
ヒータ。
【請求項3】
ウエハを加熱するためのヒータであって、
絶縁体によって構成される円板状の基材と、
金属の抵抗発熱体によって構成される回路パターンとを備え、
前記抵抗発熱体は、前記基材と接するように配置されており、
前記回路パターンは、複数の第三パターン部を備え、
各第三パターン部は、特定の直線に沿った複数の第一直線部と、前記特定の直線に沿った方向に隣り合う第一直線部同士をつなぐ第二屈曲部とによって構成されており、
各第三パターン部の前記特定の直線に沿った長さは基準長さLs以上であり、
各第一直線部の長さは前記基準長さLs未満であり、
前記基準長さLsは、Ls=|ΔL/{ΔT×(α1-α2)}|を満たし、
ΔLは、前記絶縁体の熱膨張量と前記金属の熱膨張量との差の許容値であ
る0.2mmであり、
ΔTは、前記回路パターンの最高使用温度と常温
としての20℃との温度差であり、
α1は、前記絶縁体の線膨張係数であり、
α2は、前記金属の線膨張係数であ
り、
前記回路パターンは更に、複数の第四パターン部を備え、
各第四パターン部は、第二直線部によって構成されており、
各第二直線部の長さは前記基準長さLs以上であり、
前記第三パターン部の数S3と、前記第四パターン部の数S4とは、0.7≦S3/(S3+S4)を満たす、
ヒータ。
【請求項4】
ウエハを加熱するためのヒータであって、
絶縁体によって構成される円板状の基材と、
金属の抵抗発熱体によって構成される回路パターンとを備え、
前記抵抗発熱体は、前記基材と接するように配置されており、
前記回路パターンは、複数の第三パターン部を備え、
各第三パターン部は、特定の直線に沿った複数の第一直線部と、前記特定の直線に沿った方向に隣り合う第一直線部同士をつなぐ第二屈曲部とによって構成されており、
各第三パターン部の前記特定の直線に沿った長さは基準長さLs以上であり、
各第一直線部の長さは前記基準長さLs未満であり、
前記基準長さLsは、Ls=|ΔL/{ΔT×(α1-α2)}|を満たし、
ΔLは、前記絶縁体の熱膨張量と前記金属の熱膨張量との差の許容値であ
る0.2mmであり、
ΔTは、前記回路パターンの最高使用温度と常温
としての20℃との温度差であり、
α1は、前記絶縁体の線膨張係数であり、
α2は、前記金属の線膨張係数であ
り、
前記回路パターンに備わる全ての直線部のそれぞれの長さは、前記基準長さLs未満である、
ヒータ。
【請求項5】
前記温度差ΔTは280℃である、請求項1から
請求項4のいずれか1項に記載のヒータ。
【請求項6】
前記金属はステンレス鋼である、請求項1から
請求項5のいずれか1項に記載のヒータ。
【請求項7】
前記絶縁体はポリイミドである、請求項1から
請求項6のいずれか1項に記載のヒータ。
【請求項8】
ウエハが載置される上面を有する円板状のウエハ保持板と、
前記ウエハ保持板を加熱するヒータとを備えるウエハ加熱装置であって、
前記ヒータが請求項1から
請求項7のいずれか1項に記載のヒータである、
ウエハ加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヒータ、及びウエハ加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、例えばフォトリソグラフィー工程においてウエハを加熱するウエハ加熱装置が開示されている。特許文献1のウエハ加熱装置は、ウエハを加熱するヒータユニットと、ヒータユニットを冷却する可動式冷却モジュールとを備える。ウエハはヒータユニットの上面に載置される。ヒータユニットは抵抗発熱体を含むヒータを備える。可動式冷却モジュールは上下動可能に構成されている。可動式冷却モジュールがヒータユニットの下面に接触することでヒータユニットが冷却される。
【0003】
ヒータは、絶縁体によって構成される円板状の基材と、基材に一体化された抵抗発熱体の回路パターンとを備える。回路パターンは例えば、複数の円弧部と複数の直線部とを組み合わせて構成される。もちろん、回路パターンは、円弧部と直線部以外の部分、例えば蛇行部などを含んでいても良い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の発明者らは、以下の課題を見出すことにより解決手段にたどり着いた。回路パターンに含まれる円弧部と直線部が長すぎると、回路パターンが発熱したとき、円弧部及び直線部の熱膨張量と、基材の熱膨張量との差が大きくなる。この熱膨張量の差によって、回路パターンと基材との密着性が低下すると、回路パターンの熱がウエハ保持板に伝わり難くなる恐れがある。その結果、ヒータの温度の均一性が損なわれる恐れがある。また、回路パターンが異常に過熱され、場合によっては回路パターンや基材が損傷する可能性がある。
【0006】
円弧部及び直線部の熱膨張量と、基材の熱膨張量との差が大きくなると、ヒータが変形するおそれがある。その結果、ウエハが載せられるウエハ保持板とヒータとの間に隙間ができ、ヒータの温度の均一性が低下する可能性がある。
【0007】
本開示は、温度の均一性を確保しつつ故障し難いヒータを得ることを目的の一つとする。本開示は、加熱時にウエハ保持板とヒータとの間に隙間ができ難いことで、温度の均一性を確保しつつ故障し難いウエハ加熱装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第一のヒータは、
ウエハを加熱するためのヒータであって、
絶縁体によって構成される円板状の基材と、
金属の抵抗発熱体によって構成される回路パターンとを備え、
前記抵抗発熱体は、前記基材と接するように配置されており、
前記回路パターンは、複数の第一パターン部を備え、
各第一パターン部は、前記基材と同心の特定の円周に沿った複数の第一円弧部と、前記特定の円周に沿った方向に隣り合う第一円弧部同士をつなぐ第一屈曲部とによって構成されており、
各第一パターン部の前記特定の円周に沿った長さは基準長さLs以上であり、
各第一円弧部の長さは前記基準長さLs未満であり、
前記基準長さLsは、Ls=|ΔL/{ΔT×(α1-α2)}|を満たし、
ΔLは、前記絶縁体の熱膨張量と前記金属の熱膨張量との差の許容値であり、
ΔTは、前記回路パターンの最高使用温度と常温との温度差であり、
α1は、前記絶縁体の線膨張係数であり、
α2は、前記金属の線膨張係数である。
【0009】
本開示の第二のヒータは、
ウエハを加熱するためのヒータであって、
絶縁体によって構成される円板状の基材と、
金属の抵抗発熱体によって構成される回路パターンとを備え、
前記抵抗発熱体は、前記基材と接するように配置されており、
前記回路パターンは、複数の第三パターン部を備え、
各第三パターン部は、特定の直線に沿った複数の第一直線部と、前記特定の直線に沿った方向に隣り合う第一直線部同士をつなぐ第二屈曲部とによって構成されており、
各第三パターン部の前記特定の直線に沿った長さは基準長さLs以上であり、
各第一直線部の長さは前記基準長さLs未満であり、
前記基準長さLsは、Ls=|ΔL/{ΔT×(α1-α2)}|を満たし、
ΔLは、前記絶縁体の熱膨張量と前記金属の熱膨張量との差の許容値であり、
ΔTは、前記回路パターンの最高使用温度と常温との温度差であり、
α1は、前記絶縁体の線膨張係数であり、
α2は、前記金属の線膨張係数である。
【0010】
本開示のウエハ加熱装置は、
ウエハが載置される上面を有する円板状のウエハ保持板と、
前記ウエハ保持板を加熱するヒータとを備えるウエハ加熱装置であって、
前記ヒータが本開示のヒータである。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、温度の均一性を確保しつつ故障しにくいヒータおよびウエハ加熱装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るウエハ加熱装置の概略構成図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係るヒータの概略平面図である。
【
図3】
図3は、
図2の一点鎖線で囲まれる部分の拡大図である。
【
図4】
図4は、実施形態1に係るヒータに備わる第一パターン部の概略図である。
【
図5】
図5は、実施形態2に係るヒータに備わる第二パターン部の概略図である。
【
図6】
図6は、実施形態3に係るヒータに備わる第三パターン部の概略図である。
【
図7】
図7は、実施形態3に係るヒータに備わる第四パターン部の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本開示の実施形態の説明]
以下、本開示の実施態様を列記して説明する。
【0014】
<1>実施形態に係るヒータは、
ウエハを加熱するためのヒータであって、
絶縁体によって構成される円板状の基材と、
金属の抵抗発熱体によって構成される回路パターンとを備え、
前記抵抗発熱体は、前記基材と接するように配置されており、
前記回路パターンは、複数の第一パターン部を備え、
各第一パターン部は、前記基材と同心の特定の円周に沿った複数の第一円弧部と、前記特定の円周に沿った方向に隣り合う第一円弧部同士をつなぐ第一屈曲部とによって構成されており、
各第一パターン部の前記特定の円周に沿った長さは基準長さLs以上であり、
各第一円弧部の長さは前記基準長さLs未満であり、
前記基準長さLsは、Ls=|ΔL/{ΔT×(α1-α2)}|を満たし、
ΔLは、前記絶縁体の熱膨張量と前記金属の熱膨張量との差の許容値であり、
ΔTは、前記回路パターンの最高使用温度と常温との温度差であり、
α1は、前記絶縁体の線膨張係数であり、
α2は、前記金属の線膨張係数である。
【0015】
上記形態<1>に係るヒータは変形し難い。また、上記形態<1>に係るヒータでは、回路パターンと基材との密着性が低下し難い。
上記形態<1>に係るヒータでは、基材と同心の特定の円周に沿った長さが基準長さLs以上である第一パターン部が、基準長さLs未満の複数の第一円弧部に分割されている。基準長さLsは、絶縁体の熱膨張量と金属の熱膨張量との差の許容値ΔLに基づいて決定された長さである。従って、第一円弧部が基準長さLs未満であれば、第一円弧部の熱膨張量と、第一円弧部に接する基材の熱膨張量との差が許容値ΔLを超えることはない。その結果、第一パターン部の周囲におけるヒータの変形が抑制される。基準長さLsの求め方及び意義については、後述する実施形態で詳しく述べる。
【0016】
<2>実施形態に係るヒータの一形態として、
前記回路パターンは更に、複数の第二パターン部を備え、
各第二パターン部は、前記基材の周方向に沿った第二円弧部によって構成されており、
各第二円弧部の長さは前記基準長さLs以上であり、
前記第一パターン部の数S1と前記第二パターン部の数S2とは、0.7≦S1/(S1+S2)を満たす形態が挙げられる。
【0017】
基準長さLs以上の第二円弧部によって構成される第二パターン部は、ヒータの変形を抑制することに寄与しない。実施形態のヒータは、ヒータの変形を抑制する複数の第一パターン部を主に備えるため、回路パターンが第二パターン部を含むことは許容される。しかし、回路パターンに含まれる第二パターン部の数は少ない方が好ましい。上記形態<2>に規定されるように、第一パターン部の数と第二パターン部の数の合計に占める第一パターン部の数が70%以上であれば、ヒータの変形が効果的に抑制される。
【0018】
<3>実施形態に係るヒータの一形態として、
前記回路パターンに備わる全ての円弧部のそれぞれの長さは、前記基準長さLs未満である形態が挙げられる。
【0019】
上記形態<3>に規定されるように、回路パターンに含まれる全ての円弧部が基準長さLs未満であれば、ヒータの全面においてヒータの変形が抑制される。
【0020】
<4>実施形態に係るヒータは、
ウエハを加熱するためのヒータであって、
絶縁体によって構成される円板状の基材と、
金属の抵抗発熱体によって構成される回路パターンとを備え、
前記抵抗発熱体は、前記基材と接するように配置されており、
前記回路パターンは、複数の第三パターン部を備え、
各第三パターン部は、特定の直線に沿った複数の第一直線部と、前記特定の直線に沿った方向に隣り合う第一直線部同士をつなぐ第二屈曲部とによって構成されており、
各第三パターン部の前記特定の直線に沿った長さは基準長さLs以上であり、
各第一直線部の長さは前記基準長さLs未満であり、
前記基準長さLsは、Ls=|ΔL/{ΔT×(α1-α2)}|を満たし、
ΔLは、前記絶縁体の熱膨張量と前記金属の熱膨張量との差の許容値であり、
ΔTは、前記回路パターンの最高使用温度と常温との温度差であり、
α1は、前記絶縁体の線膨張係数であり、
α2は、前記金属の線膨張係数である。
【0021】
上記形態<4>に係るヒータは変形し難い。また、上記形態<4>に係るヒータでは、回路パターンと基材との密着性が低下し難い。
上記形態<4>に係るヒータでは、特定の直線に沿った長さが基準長さLs以上である第三パターン部が、基準長さLs未満の複数の第一直線部に分割されている。基準長さLsは、絶縁体の熱膨張量と金属の熱膨張量との差の許容値ΔLに基づいて決定された長さである。従って、第一直線部が基準長さLs未満であれば、第一直線部の熱膨張量と第一直線部に接する基材の熱膨張量との差が許容値ΔLを超えることはない。その結果、第三パターン部の周囲におけるヒータの変形が抑制される。
【0022】
<5>上記形態<4>に係るヒータの一形態として、
前記回路パターンは更に、複数の第四パターン部を備え、
各第四パターン部は、第二直線部によって構成されており、
各第二直線部の長さは前記基準長さLs以上であり、
前記第三パターン部の数S3と、前記第四パターン部の数S4とは、0.7≦S3/(S3+S4)を満たす形態が挙げられる。
【0023】
基準長さLs以上の第二直線部によって構成される第四パターン部は、ヒータの変形を抑制することに寄与しない。実施形態に係るヒータは、ヒータの変形を抑制する複数の第三パターン部を主に備えるため、回路パターンが第四パターン部を含むことは許容される。しかし、回路パターンに含まれる第四パターン部の数は少ない方が好ましい。上記形態<5>に規定されるように、第三パターン部の数と第四パターン部の数の合計に占める第三パターン部の数が70%以上であれば、ヒータの変形が効果的に抑制される。
【0024】
<6>上記形態<4>に係るヒータの一形態として、
前記回路パターンに備わる全ての直線部のそれぞれの長さは、前記基準長さLs未満である形態が挙げられる。
【0025】
上記形態<6>に規定されるように、回路パターンに含まれる全ての直線部が基準長さLs未満であれば、ヒータの全面においてヒータの変形が抑制される。
【0026】
<7>実施形態に係るヒータの一形態として、
前記許容値ΔLは0.2mm、前記温度差ΔTは280℃である形態が挙げられる。
【0027】
温度差ΔTが280℃のときの許容値ΔLが0.2mmであれば、ヒータの変形を効果的に抑制できる。温度差280℃は、回路パターンの最高使用温度を300℃、常温を20℃としたときの値である。
【0028】
<8>実施形態に係るヒータの一形態として、
前記金属はステンレス鋼である形態が挙げられる。
【0029】
ステンレス鋼は耐熱性に優れる。ステンレス鋼は入手がし易く、箔形状への加工、エッチングによるパターン形成が容易である。
【0030】
<9>実施形態に係るヒータの一形態として、
前記絶縁体はポリイミドである形態が挙げられる。
【0031】
ポリイミドは耐熱性に優れる。従って、ヒータの使用に伴う基材の損傷が抑制される。
【0032】
<10>実施形態に係るウエハ加熱装置は、
ウエハが載置される上面を有する円板状のウエハ保持板と、
前記ウエハ保持板を加熱するヒータとを備えるウエハ加熱装置であって、
前記ヒータが上記形態<1>から形態<9>のいずれかのヒータである。
【0033】
実施形態に係るウエハ加熱装置は、実施形態に係るヒータを備える。実施形態に係るヒータは加熱時に変形し難いので、ヒータとウエハ保持板との間に隙間ができ難い。従って、ヒータとウエハ保持板との接触がヒータの全面にわたって維持され易い。その結果、ウエハ保持板の均熱性が向上するので、上記形態<10>のウエハ加熱装置は、ウエハ全面を均一的に加熱できる。
【0034】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施形態に係るウエハ加熱装置、及びヒータの具体例を図面に基づいて説明する。図中の同一符号は同一又は相当部分を示す。各図面が示す部材の大きさは、説明を明確にする目的で表現されており、必ずしも実際の寸法を表すものではない。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0035】
<実施形態1>
≪全体構成≫
図1に示される実施形態のウエハ加熱装置1は、フォトリソグラフィー工程におけるプリベークなどに使用される。プリベークは、ウエハ100の表面に塗布されたフォトレジスト溶液の溶媒を揮発させる熱処理である。ウエハ加熱装置1は、ウエハ100を加熱するヒータユニット10と、ヒータユニット10を冷却する冷却ユニット11とを備える。冷却ユニット11に備わる冷却板5は上下動可能に構成されており、必要に応じてヒータユニット10を冷却する。以下、実施形態に係るウエハ加熱装置1の各構成を詳細に説明する。
【0036】
≪ヒータユニット≫
本例のヒータユニット10は、上方から順に、ウエハ保持板2とヒータ3と支持板4とを備える。支持板4は必須では無い。
【0037】
[ウエハ保持板]
ウエハ保持板2は、ウエハ100が載置される平坦な上面2Uを有する。上面2Uはヒータユニット10の上面10Uを構成する。ウエハ保持板2は円板である。円板の直径は、上面10Uに載せられるウエハ100よりも大きければ良く、例えば200mm以上400mm以下である。
【0038】
ウエハ保持板2の材料は、熱伝導性に優れ、かつ熱によって変形し難い材料であることが好ましい。好ましい材料として、銅、アルミニウム、またはこれらを含む合金が挙げられる。ウエハ保持板2の表面にニッケルめっきやアルマイト処理を施すことが好ましい。また、ウエハ保持板2の材料としてセラミックスを用いることもできる。セラミックスとしては、例えば、窒化アルミニウム、炭化珪素(SiC)、酸化アルミニウム、又は窒化珪素などのセラミックス、あるいはこれらセラミックスとシリコン(Si)との複合体などが挙げられる。特に、SiCの多孔質体に金属シリコンを含侵させたSi-SiCがウエハ保持板2の材料として好ましい。
【0039】
ウエハ保持板2は、図示しない突起、真空ポート、及びリフトピン孔などを備えていても良い。突起は上面2Uに設けられる。突起は、上面2Uとウエハ100との間に微小な隙間を形成する。真空ポート及びリフトピン孔はウエハ保持板2を厚さ方向に貫通する孔である。真空ポートを介して上面2Uとウエハ100との間の隙間から空気が吸引されると、ウエハ100が平坦に近い状態に矯正される。リフトピン孔は、ウエハ100を上面2Uから持ち上げるリフトピンが挿通される孔である。真空ポート及びリフトピン孔は、後述するヒータ3及び支持板4にも設けられる。
【0040】
本例のウエハ保持板2の下面2Dには測温素子25が設けられている。測温素子25によって測定されたウエハ保持板2の温度は、後述するヒータ3の制御に利用される。測温素子25は、例えば下面2Dに設けられたザグリ穴20に配置される。測温素子25としては、例えばセラミックスに白金抵抗体を蒸着で設けた測温素子などが挙げられる。測温素子25は、例えばシリコーン接着剤などで固定される。測温素子25には図示しない配線がつながっている。
【0041】
[ヒータ]
ヒータ3は、ウエハ保持板2を加熱する部材である。ヒータ3によって加熱されたウエハ保持板2によってウエハ100が熱処理される。ヒータ3は、絶縁体によって構成される円板状の基材30と、金属の抵抗発熱体によって構成される回路パターン7とを備える。基材30はヒータ3の外形を構成する。本例の基材30は、ウエハ保持板2と同等の外径を有する円板状である。本例のヒータ3では、基材30の内部に回路パターン7が配置されている。回路パターン7は、例えば通電によって発熱する金属製の薄膜によって構成されている。
【0042】
基材30を構成する絶縁体としては、例えばポリイミドなどの耐熱性に優れる絶縁性樹脂などが挙げられる。その他、絶縁体としては、例えば樹脂を含浸したマイカシートや、セラミックスなどが挙げられる。回路パターン7を構成する金属としては、例えばステンレス鋼やニッケルクロム鋼などが挙げられる。本例では2枚のポリイミドシートの間に回路パターン7が挟み込まれることでヒータ3が作製されている。回路パターン7は、例えばステンレス鋼の箔を部分的にエッチングすることによって形成されている。
【0043】
回路パターン7は、ウエハ保持板2の下面2Dにメタライズによって形成されていても良い。その場合、回路パターン7を含む下面2Dを絶縁性樹脂などでコーティングすることで、下面2Dに一体化されたヒータ3が形成される。
【0044】
絶縁体の線膨張係数α1と金属の線膨張係数α2とが大きく異なる場合がある。例えば、ポリイミドの線膨張係数α1は20ppm/℃から24ppm/℃程度である。ステンレス鋼の線膨張係数α2は約17.3ppm/℃、ニッケルクロム鋼の線膨張係数α2は約14.0ppm/℃である。ここで、回路パターン7が長さLの円弧部を有する場合、線膨張係数α1と線膨張係数α2との差がヒータ3に及ぼす影響を考える。長さLは円弧部の円弧方向に沿った長さである。回路パターン7が最高使用温度に達した場合、円弧部の円弧方向の熱膨張量と、円弧部に密着する基材30の円弧方向の熱膨張量との間に膨張差ΔXが生じる。膨張差ΔXは以下の式(1)で表される。
ΔX=|(L×ΔT×α1)―(L×ΔT×α2)| … 式(1)
ΔT…回路パターン7の最高使用温度と常温との温度差
【0045】
膨張差ΔXが所定値以上となると、回路パターン7と基材30との密着性が低下する恐れある。また、ヒータ3が厚さ方向に曲がるなどしてヒータ3が変形する恐れがある。従って、膨張差ΔXの許容値ΔLを設定し、ヒータ3が変形し難い円弧部の長さLを求める。式(1)のΔXにΔLを代入し、式(1)を変形すると以下の式(2)が得られる。
L=|ΔL/{ΔT×(α1-α2)}| … 式(2)
【0046】
上記式(2)から得られる長さL以下の円弧部では、膨張差ΔXは必ず許容値ΔL以下となる。従って、長さL以下の円弧部を備えるヒータ3は変形し難くなる。以下、式(2)によって求められる長さLを基準長さLsとする。
【0047】
式(2)に代入する許容値ΔLは例えば0.2mmである。より確実にヒータ3の変形を抑制するのであれば、許容値ΔLは0.1mmである。式(2)に代入する温度差ΔTは例えば280℃である。この値は、回路パターン7の最高使用温度を300℃、常温を20℃として得られた値である。式(2)から明らかなように、温度差ΔTが大きくなれば、基準長さLsは短くなる。
【0048】
本例のヒータ3は、上述した基準長さLsを考慮して設計されている。まずヒータ3の全体構造を
図2の平面図に基づいて説明する。次いで、ヒータ3に備わる回路パターン7の詳細について、
図3及び
図4に基づいて説明する。
【0049】
本例のヒータ3は、
図2の平面図に示されるように、複数の加熱ゾーン8を備える。複数の加熱ゾーン8は、内周側に配置される三つの加熱ゾーン8Aと、外周側に配置される三つの加熱ゾーン8Bとを含む。三つの加熱ゾーン8Aが接する点は、基材30の中心30cである。内周側の加熱ゾーン8Aは、内角120°の扇形状である。外周側の加熱ゾーン8Bは、内角120°の内周円弧と外周円弧とを有する帯形状である。
図2では図示を省略しているが、各加熱ゾーン8は独立した回路パターン7(
図3参照)を備える。ここで、加熱ゾーン8の数及び加熱ゾーン8の形状は特に限定されない。加熱ゾーン8は一つでも良い。
【0050】
図3は、
図2に示されるヒータ3のうち、一点鎖線で囲まれる部分を拡大した拡大図である。
図3に示されるヒータ3の回路パターン7は、図示しない配線が接続される二つの端子70,70を備える。端子70,70間に通電することで、回路パターン7が発熱する。ヒータ3の基材30には貫通孔30hが設けられている。この貫通孔30hは、
図1の測温素子25につながる配線が配置される。
【0051】
本例の回路パターン7は、複数の円弧部7bと複数の直線部7sとを含む。複数の円弧部7bは、基材30と同心の円周に沿った第一円弧部711,712、及び基材30の中心とは異なる中心を持った遷移部76A,76Bなどを含む。本例の直線部7sは、基材30の径方向に沿っている。直線部7sは径方向に対して交差する方向に沿っていても良い。
【0052】
回路パターン7は、所定の条件を満たす複数の円弧部7bを含む第一パターン部71を備える。第一パターン部71は、遷移部76Aと遷移部76Bとの間に配置される。各第一パターン部71は、
図4に示されるように、二つの第一円弧部711,712と、一つの第一屈曲部713とによって構成されている。第一円弧部711,712は円弧部7bの一種である。第一円弧部711と第一円弧部712とは、二点鎖線で示される特定の円周91に沿って配置されている。特定の円周91は、
図2に示される基材30の中心30cと同心の円周である。第一パターン部71の両端に配置される遷移部76A,76Bは、基材30の径方向に並ぶ二つの円弧部7b,7b同士をつなぐ半円弧状の円弧部7bである。遷移部76A,76Bは、基材30の中心とは異なる中心を持った円弧部7bである。従って、曲率が変化する箇所が、第一パターン部71と遷移部76A,76Bとの境界である。
【0053】
第一屈曲部713は、特定の円周91上に並ぶ二つの第一円弧部711,712をつなぐ。第一屈曲部713は、平面視で略U字状に形成されている。第一屈曲部713は、平面視で略V字状であっても良い。第一屈曲部713は、第一円弧部711,712の湾曲方向と逆方向に湾曲している。第一屈曲部713は、第一円弧部711,712の湾曲方向と同方向に湾曲していても良い。
【0054】
第一パターン部71は、k個の第一円弧部711,712を備えていても良い。その場合、第一屈曲部713の数は、k-1個である。kは3以上の自然数である。
【0055】
第一パターン部71の特定の円周91に沿った長さL1は基準長さLs以上である。この第一パターン部71に備わる第一円弧部711の長さL11、及び第一円弧部712の長さL12は基準長さLs未満である。また、第一屈曲部713のU字形状に沿った長さは極めて短い。つまり、第一パターン部71には、加熱時に許容値ΔL以上となる部分が存在しない。従って、第一パターン部71の近傍ではヒータ3の変形が抑制される。
【0056】
本例の回路パターン7は、
図3に示されるように、第一円弧部711,712と遷移部76A,76Bの他に、基準長さLs未満の円弧部77を含む。本例では、回路パターン7に備わる全ての円弧部7bの長さが基準長さLs未満である。更に、本例の回路パターン7に備わる全ての直線部7sの長さも基準長さLs未満である。このような回路パターン7を備えるヒータ3は、加熱時に変形し難い。また、回路パターン7と基材30との密着性が低下し難い。
【0057】
[支持板]
支持板4は、
図1に示されるように、ヒータ3を下方から支持する。支持板4によってウエハ保持板2の平面度が良好に保たれるので、ウエハ保持板2の均熱性が高められる。支持板4が高剛性体であることで、ウエハ保持板2を含むヒータユニット10の厚さを薄くできる。その結果、ヒータユニット10の熱容量が小さくなり、ヒータユニット10の昇温速度と降温速度が向上する。本例では、支持板4の下面4Dはヒータユニット10の下面10Dを構成する。支持板4の下面4Dには、ヒータユニット10の冷却時に冷却ユニット11の冷却板5が接触する。支持板4によって冷却板5がヒータ3の下面3Dに直接接触しなくなるので、ヒータ3が損傷し難い。本例の支持板4はウエハ保持板2と同じ外径を有する円板状である。本例では、支持板4とウエハ保持板2とヒータ3とが図示しない締結ねじなどによって一体化されている。支持板4は、ウエハ保持板2と同様、セラミックスによって構成されることが好ましい。
【0058】
≪冷却ユニット≫
冷却ユニット11は、ヒータユニット10を必要に応じて冷却する構成である。冷却ユニット11は、冷却板5と冷却ステージ6とを備える。
【0059】
[冷却ステージ]
冷却ステージ6は、冷媒などによって低温に維持されている。例えば冷却ステージ6の内部に冷媒の流通路が形成されている。冷却ステージ6は冷却板5を冷却する役割を有する。冷却ステージ6は、冷却ステージ6の上方にヒータユニット10を保持する役割も有する。具体的には、冷却ステージ6とヒータユニット10とは固定軸60によって連結されている。固定軸60は冷却板5を貫通しており、冷却板5は固定軸60によって固定されていない。
【0060】
[冷却板]
冷却板5は上下動可能に構成されている。例えば図示しないエアシリンダーのロッドの先端に冷却板5が取り付けられている。ヒータユニット10が冷却される場合、冷却ステージ6を介して低温となっている冷却板5が上方に移動し、支持板4の下面4D、即ちヒータユニット10の下面10Dに接触する。冷却板5の上面5Uがヒータユニット10の下面10Dに接触することで、ヒータユニット10が速やかに冷却され、ヒータユニット10の温度が所望の温度に調整される。ヒータユニット10の冷却が完了した後、冷却板5は支持板4の下面4Dから離れ、下面5Dが冷却ステージ6に接触する位置まで下降する。
【0061】
本例の冷却板5は、円板状の本体50と、本体50の上面に配置される上層51とを備える。本例とは異なり、冷却板5は上層51を備えていなくても良い。本体50は、熱伝導性に優れる材料、例えば金属で構成されることが好ましい。本例の本体50はアルミニウム合金によって構成されている。
【0062】
上層51は、冷却板5とヒータユニット10との密着性を向上させる機能を有する。本例の上層51は樹脂製シートである。上層51の材料は、例えばシリコーン又はフッ素を主成分とする柔軟性に富む材料などが好ましい。柔軟性に優れる上層51は、冷却板5とヒータユニット10との密着性を向上させ、冷却板5によるヒータユニット10の冷却効率を向上させる。また、柔軟性に優れる上層51は、冷却板5がヒータユニット10に接触したときに、冷却板5の本体50とヒータユニット10の損傷を抑制する。
【0063】
実施形態に係るウエハ加熱装置1は、加熱時に変形し難いヒータ3を備える。ヒータ3が変形し難いと、ヒータ3とウエハ保持板2との間に隙間ができ難く、ヒータ3とウエハ保持板2との接触がヒータ3の全面にわたって維持され易い。従って、ヒータ3によってウエハ保持板2の均熱性が向上するので、ウエハ保持板2の上面10Uに配置されるウエハ100が均一的に加熱される。
【0064】
<実施形態2>
実施形態2では、回路パターン7が、基準長さLs以上となった第二パターン部72を含むヒータ3及びウエハ加熱装置1を説明する。実施形態2の説明においては、
図1から
図4に加えて、
図5を参照する。実施形態2の構成は、回路パターン7が第二パターン部72を含むことを除き、実施形態1の構成と同様である。
【0065】
本例の回路パターン7は、
図4に示される第一パターン部71に加えて、
図5に示される第二パターン部72を備える。第二パターン部72は、一つの第二円弧部720によって構成されている。第二円弧部720は、基材30と同心の特定の円周92に沿っている。第二円弧部720の長さL2は基準長さLs以上である。この第二パターン部72は、ヒータ3の変形を抑制することに寄与しない。ヒータ3の変形は第一パターン部71によって抑制されているので、回路パターン7に第二パターン部72が含まれることは許容される。しかし、回路パターン7に含まれる第二パターン部72の数は少ない方が好ましい。例えば、第一パターン部71の数S1と、第二パターン部72の数S2とは以下の式(3)を満たすことが好ましい。
0.7≦S1/(S1+S2) … 式(3)
【0066】
上記式(3)は、第一パターン部71の数S1が、相対的に第二パターン部72の数S2よりも多いことを示している。S1/(S1+S2)は1に近いほど、好ましい。従って、S1/(S1+S2)は0.8以上であることが好ましく、0.9以上であることがより好ましく、0.95以上であることが更に好ましい。実施形態1に示されるように、第二パターン部72が存在しないことが最も好ましい。
【0067】
ヒータ3全体の変形を抑制する観点から、第一パターン部71と第二パターン部72とを備えるヒータ3の場合、ヒータ3の変形を抑制する複数の第一パターン部71は、ヒータ3の全面に分散して配置されることが好ましい。複数の第二パターン部72はヒータ3の局所に配置されているよりも、ヒータ3の全面に分散して配置されていることが好ましい。第二パターン部72の近傍に第一パターン部71が配置されていると、ヒータ3が変形し難い。
【0068】
<実施形態3>
実施形態1及び実施形態2のヒータ3には、基準長さLs以上の長さを有する直線部7sは存在しない。しかし、回路パターン7のパターン形状によっては、基準長さLs以上の直線状に延びるパターン部が形成される場合がある。実施形態3では、基準長さLs以上の直線状に延びるパターン部を第三パターン部73に置換した構成を
図6に基づいて説明する。
【0069】
図6に示されるように、本例のヒータ3に備わる回路パターン7は、第三パターン部73を備える。第三パターン部73は、遷移部76Cと遷移部76Dとの間に配置される。本例の第三パターン部73は、二つの第一直線部731,732と、一つの第二屈曲部733とで構成されている。第一直線部731,732は直線部7sの一種である。第一直線部731と第一直線部732とは、二点鎖線で示される特定の直線93に沿って配置されている。特定の直線93は、基材30の径方向に沿っている。第三パターン部73の両端に配置される遷移部76C,76Dは、円弧部7b又は別の直線部7sにつながる湾曲部である。
【0070】
第三パターン部73は、k個の第一直線部731,732を備えていても良い。その場合、第二屈曲部733の数は、k-1個である。kは3以上の自然数である。
【0071】
第三パターン部73の特定の直線93に沿った長さL3は基準長さLs以上である。この第三パターン部73に備わる第一直線部731の長さL31、及び第一直線部732の長さL32は基準長さLs未満である。この第三パターン部73によってヒータ3の変形が抑制される。
【0072】
回路パターン7は、
図7に示される第四パターン部74を備えていても良い。第四パターン部74は、一つの第二直線部740によって構成されている。第二直線部740は、特定の直線94に沿っている。第二直線部740の長さL4は基準長さLs以上である。第四パターン部74は、ヒータ3の変形を抑制することに寄与しない。ヒータ3の変形は第三パターン部73によって抑制されるので、回路パターン7に第四パターン部74が含まれることは許容される。しかし、回路パターン7に含まれる第四パターン部74の数は少ない方が好ましい。例えば、第三パターン部73の数S3と、第四パターン部74の数S4とは以下の式(4)を満たすことが好ましい。
0.7≦S3/(S3+S4) … 式(4)
【0073】
上記式(4)は、第三パターン部73の数S3が、相対的に第四パターン部74の数S4よりも多いことを示している。S3/(S3+S4)は1に近いほど、好ましい。従って、S3/(S3+S4)は0.8以上であることが好ましく、0.9以上であることがより好ましく、0.95以上であることが更に好ましい。実施形態1に示されるように、第四パターン部74が存在しないことが最も好ましい。
【0074】
ヒータ3全体の変形を抑制する観点から、第三パターン部73と第四パターン部74とを備えるヒータ3の場合、複数の第三パターン部73は、ヒータ3の全面に分散して配置されることが好ましい。同様に、複数の第四パターン部74も、ヒータ3の全面に分散して配置されることが好ましい。第四パターン部74の近傍に第三パターン部73が配置されていると、ヒータ3が変形し難い。
【符号の説明】
【0075】
100 ウエハ
1 ウエハ加熱装置
10 ヒータユニット、10D 下面、10U 上面
11 冷却ユニット
2 ウエハ保持板
2D 下面、2U 上面
20 ザグリ穴、25 測温素子
3 ヒータ
3D 下面
30 基材、30c 中心、30h 貫通孔
4 支持板
4D 下面
5 冷却板
5D 下面、5U 上面
50 本体、51 上層
6 冷却ステージ、60 固定軸
7 回路パターン
7b 円弧部、7s 直線部
70 端子
71 第一パターン部、711,712 第一円弧部、713 第一屈曲部
72 第二パターン部、720 第二円弧部
73 第三パターン部、731,732 第一直線部、733 第二屈曲部
74 第四パターン部、740 第二直線部
76A,76B,76C,76D 遷移部
77 円弧部
8,8A,8B 加熱ゾーン
91,92 特定の円周
93,94 特定の直線
L1,L2,L3,L4,L11,L12,L31,L32 長さ
Ls 基準長さ