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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】保管システム
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/04 20060101AFI20241121BHJP
   B65G 1/137 20060101ALI20241121BHJP
   B65G 1/00 20060101ALN20241121BHJP
【FI】
B65G1/04 551Z
B65G1/137 Z
B65G1/00 501C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023545404
(86)(22)【出願日】2022-08-10
(86)【国際出願番号】 JP2022030530
(87)【国際公開番号】W WO2023032622
(87)【国際公開日】2023-03-09
【審査請求日】2024-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2021142787
(32)【優先日】2021-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】北村 亘
【審査官】内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-036128(JP,A)
【文献】特開平11-085280(JP,A)
【文献】特開平09-255114(JP,A)
【文献】特開2008-019017(JP,A)
【文献】特開2004-207335(JP,A)
【文献】特開2005-053661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/04
B65G 1/137
B65G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から搬入される物品を保管するとともに、保管した前記物品を外部に搬出する保管システムにおいて、
外部から前記物品が搬入される場所である搬入ポートと、
前記物品を保管する保管棚と、
前記物品を外部に搬出する場所である搬出ポートと、
軌道に沿って移動することにより、前記搬入ポート、前記保管棚、又は前記搬出ポートにアクセスする複数の搬送装置と、
前記搬入ポートから前記搬出ポートに至る経路が使用可能な軌道で構成されるという第1条件を満たし、かつ、前記第1条件を満たす軌道に沿って前記物品を搬送可能な前記搬送装置があるという第2条件を満たしたときに、保管システムが使用可能であると判定する判定部と、
を備え
前記軌道は、複数のループ軌道と、複数の前記ループ軌道同士を接続する接続軌道と、を含み、
前記搬入ポート及び前記搬出ポートは、前記ループ軌道に隣接して設けられ、
前記保管棚は、前記ループ軌道で囲まれる領域と、前記ループ軌道同士の間と、に配置されることを特徴とする保管システム。
【請求項2】
請求項1に記載の保管システムであって、
前記判定部は、前記第1条件及び前記第2条件に加え、更に、前記第1条件を満たす軌道に隣接して設けられた前記保管棚が前記物品を保管可能であるという第3条件を満たしたときに、外部から搬入される前記物品を保管可能であると判定することを特徴とする保管システム。
【請求項3】
請求項1に記載の保管システムであって、
前記搬入ポート及び前記搬出ポートが複数設けられており、
前記判定部は、前記搬入ポート及び前記搬出ポートの全ての組合せについて、前記第1条件を満たすか否かを判定することを特徴とする保管システム。
【請求項4】
請求項1に記載の保管システムであって、
前記判定部は、前記搬入ポートに前記物品を搬入する指令を行う管理装置と通信可能であり、
前記判定部は、保管システムが使用可能か否かを前記管理装置に送信することを特徴とする保管システム。
【請求項5】
請求項4に記載の保管システムであって、
前記搬入ポート及び前記搬出ポートが複数設けられており、
前記判定部は、前記第1条件及び前記2条件を満たす前記搬入ポート及び前記搬出ポートを特定する識別情報を前記管理装置に送信することを特徴とする保管システム。
【請求項6】
請求項1に記載の保管システムであって、
前記保管棚は、鉛直方向に並べて複数の前記物品を保管可能であり、
前記搬送装置は、天井に設けられた前記軌道に沿って走行可能であるとともに、昇降することにより前記保管棚の前記物品にアクセスすることを特徴とする保管システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部から搬入される物品を保管するとともに物品を外部に搬出する保管システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、保管棚と、スタッカクレーンと、を備えるパージストッカを開示する。保管棚は、パージ装置によりパージされた容器を保管する。スタッカクレーンは、天井搬送車から受け取った容器を搬送して保管棚に保管する。また、スタッカクレーンは、保管棚に保管されている容器を取り出して、天井搬送車に受け渡す。
【0003】
特許文献2は、走行経路に沿って走行車を走行させる走行車システムを開示する。走行経路には、荷物の受け渡しを行うステーションが複数設けられている。走行車システムでは、走行車が走行できない走行不可区間が設定されている。走行車システムは、あるステーションを出発して走行不可区間を経由せずに同じステーションに戻ってくることができる場合、このステーションを使用可能と設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6562078号公報
【文献】特許第5035424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のパージストッカは、スタッカクレーンを1つのみ備えるため、例えばスタッカクレーンが使用不能になった場合、パージストッカが使用不能となる。特許文献2の走行車システムは、ステーションの使用可否を判定するが、使用可能と判定したステーションにアクセスできる走行車があるか否かまでは判定しない。従って、使用可能か否か判定する精度について改善の余地があった。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、複数の搬送装置を備える保管システムにおいて、一部の装置が使用できない場合であっても保管システムが使用可能か否かを精度良く判定可能な構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の観点によれば、以下の構成の保管システムが提供される。即ち、保管システムは、外部から搬入される物品を保管するとともに、保管した前記物品を外部に搬出する。保管システムは、搬入ポートと、保管棚と、搬出ポートと、複数の搬送装置と、判定部と、を備える。前記搬入ポートは、外部から前記物品が搬入される場所である。前記保管棚は、前記物品を保管する。前記搬出ポートは、前記物品を外部に搬出する場所である。前記搬送装置は、軌道に沿って移動することにより、前記搬入ポート、前記保管棚、又は前記搬出ポートにアクセスする。前記判定部は、前記搬入ポートから前記搬出ポートに至る経路が使用可能な軌道で構成されるという第1条件を満たし、かつ、前記第1条件を満たす軌道に沿って前記物品を搬送可能な前記搬送装置があるという第2条件を満たしたときに、保管システムが使用可能であると判定する。前記軌道は、複数のループ軌道と、複数の前記ループ軌道同士を接続する接続軌道と、を含む。前記搬入ポート及び前記搬出ポートは、前記ループ軌道に隣接して設けられる。前記保管棚は、前記ループ軌道で囲まれる領域と、前記ループ軌道同士の間と、に配置される。
【0009】
これにより、保管システムの一部が使用不能であったとしても、保管システムの他の部分が使用可能である場合は、保管システムを使用可能と判定できる。従って、保管システムを効率的に運用できる。特に、軌道だけでなく搬送装置も含めて判定を行うことにより、保管システムが使用可能か否かについて精度良く判定できる。また、複数のループ軌道を含むような複雑な軌道に対しても、保管システムが使用可能か否かを判定できる。
【0010】
前記の保管システムにおいては、前記判定部は、前記第1条件及び前記第2条件に加え、更に、前記第1条件を満たす軌道に隣接して設けられた前記保管棚が前記物品を保管可能であるという第3条件を満たしたときに、外部から搬入される前記物品を保管可能であると判定することが好ましい。
【0011】
これにより、保管システムが使用可能か否かだけでなく、保管システムに実際に物品を保管可能か否かを判定できる。
【0012】
前記の保管システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記搬入ポート及び前記搬出ポートが複数設けられている。前記判定部は、前記搬入ポート及び前記搬出ポートの全ての組合せについて、前記第1条件を満たすか否かを判定する。
【0013】
これにより、保管システムが使用可能にもかかわらず使用不能と判定されることをより確実に防止できる。
【0014】
前記の保管システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記判定部は、前記搬入ポートに前記物品を搬入する指令を行う管理装置と通信可能である。前記判定部は、保管システムが使用可能か否かを前記管理装置に送信する。
【0015】
これにより、保管システムが使用可能であることを管理装置に送信できるので、保管システムを有効に活用できる。
【0016】
前記の保管システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記搬入ポート及び前記搬出ポートが複数設けられている。前記判定部は、前記第1条件及び前記2条件を満たす前記搬入ポート及び前記搬出ポートを特定する識別情報を前記管理装置に送信する。
【0017】
これにより、使用可能な搬入ポートと搬出ポートを管理装置に知らせることができるので、管理システムを更に有効に活用できる。
【0020】
前記の保管システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記保管棚は、鉛直方向に並べて複数の前記物品を保管可能である。前記搬送装置は、天井に設けられた前記軌道に沿って走行可能であるとともに、昇降することにより前記保管棚の前記物品にアクセスする。
【0021】
多数の物品を保管可能な保管棚を備える保管システムに本発明を適用することにより、本発明の効果をより有効に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る保管システムの構成を概略的に示す図。
図2】クレーンの構成を概略的に示す側面図。
図3】保管システムの使用可否を判定する処理を示すフローチャート。
図4】第1例における使用不能な軌道、保管棚、及びクレーンを概略的に示す図。
図5】第2例における使用不能な軌道、保管棚、及びクレーンを概略的に示す図。
図6】第3例における使用不能な軌道、保管棚、及びクレーンを概略的に示す図。
図7】別の実施形態に係る軌道を概略的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1を参照して保管システム1の構成について説明する。図1は、保管システム1の構成を概略的に示す図である。
【0024】
本実施形態の保管システム1は、半導体製品を製造する工場に複数設置されており、図2に示す物品50を保管するためのシステムである。保管システム1が保管する物品50は、ウエハ(半導体ウエハ)を収容するFOUP(Front-Opening Unified Pod)である。工場には、ウエハを処理する処理装置が設けられており、例えば処理装置に供給される前のウエハを一時的に保管するため等に保管システム1が用いられる。なお、物品50は、レチクルを収容するレチクルポッドであってもよい。
【0025】
図1に示すように、保管システム1は、軌道10と、搬入ポート21と、搬出ポート22と、保管棚30と、クレーン(搬送装置)40と、を備える。
【0026】
軌道10は、工場の天井に設けられている。軌道10は、クレーン40を走行させるための部材である。図2に示すように、軌道10は、走行レール10aと、給電レール10bと、を備える。走行レール10aには、クレーン40を支持するととともに、クレーン40を走行させるための走行支持面が形成されている。給電レール10bは、走行レール10aの下側に配置されている。給電レール10bには、図略の給電線が配置されており、クレーン40に電力を供給する。また、給電レール10bの近傍には、図略の信号線が配置されており、クレーン40と後述の管理装置103とで通信を行うことができる。
【0027】
軌道10は、ループ軌道11,12,13と、接続軌道14,15,16,17と、を備える。ループ軌道11,12,13は、ループ状の軌道である。ループ軌道11,12,13は、一方通行であり、図に示す矢印の方向(右回り)にのみクレーン40が走行可能である。ループ軌道11,12,13は、それぞれ並べて配置されており、接続軌道14,15,16,17によって接続されている。具体的には、ループ軌道11とループ軌道12が接続軌道14,17で接続されており、ループ軌道12とループ軌道13が接続軌道15,16で接続されている。接続軌道14,15,16,17は、一方通行であり、図に示す矢印の方向にのみクレーン40が走行可能である。
【0028】
搬入ポート21及び搬出ポート22は、保管システム1の外部に接続されている。保管システム1の外部には、上述した処理装置と、処理装置と保管システム1とを接続する接続経路と、接続経路に沿って走行する台車と、が設けられている。搬入ポート21では、クレーン40が台車から物品50を受け取る(物品50が搬入される)。搬入ポート21から搬入された物品50は、クレーン40によって保管棚30に一時的に置かれる。その後、クレーン40によって保管棚30から物品50が取り出された後に、搬出ポート22において、クレーン40が台車に物品50を受け渡す(物品50が搬出される)。
【0029】
なお、クレーン40と台車による物品50の受渡しは、直接ではなく間接的に行われてもよい。即ち、搬入ポート21又は搬出ポート22に受渡し台が設けられて、受渡し台を介して物品50を受け渡してもよい。本実施形態の保管システム1は、複数の搬入ポート21と複数の搬出ポート22とを備える。これに代えて、搬入ポート21の設置数が1つであってもよいし、搬出ポート22の設置数が1つであってもよい。
【0030】
保管棚30は、物品50を保管する。図2に示すように、保管棚30は、鉛直方向に並べられた棚板31を有する。それぞれの棚板31には、クレーン40を用いて物品50を置くことができる。これにより、保管棚30は、複数の物品を保管可能である。保管棚30は、軌道10に沿って並べて配置されている。具体的には、保管棚30は、ループ軌道11,12,13で囲まれる領域と、ループ軌道11,12,13同士の間と、に配置される。言い換えれば、保管棚30は、軌道10に沿って移動するクレーン40の進行方向に対して側方(左側又は右側)に配置されている。
【0031】
クレーン40は、走行部41と、受電部42と、移載部43と、ガイド柱44と、を備える。複数のクレーン40はそれぞれ同じ構成である。
【0032】
走行部41は、走行レール10a内に配置されている。走行部41は、クレーン40を走行させるための動力を発生させる走行モータと、走行レール10aの走行支持面に接するように配置される車輪と、を備える。車輪は、走行モータによって回転駆動される。受電部42は、給電レール10b内に配置されている。受電部42は、給電レール10bの給電線から電力を取得するピックアップコイル等であり、給電線から取得した電力を走行モータ等の電気機器に供給する。
【0033】
移載部43は、ガイド柱44に沿って鉛直方向に移動可能である。移載部43は、棚板31に対してフォーク等の部材を伸縮可能である。この構成により、移載部43は、保管棚30の棚板31に物品50を置いたり、保管棚30の棚板31に置かれている物品50を取り出したりする。また、保管システム1は、工場の床面に設けられたガイドレール18を備える。ガイドレール18には、図略のレールが形成されている。ガイド柱44は、このレールに沿って移動可能である。
【0034】
保管システム1は、保管制御装置(判定部)101によって制御されている。保管制御装置101は、サーバ又はPC等であり、演算装置と、記憶装置と、通信装置と、を備える。保管制御装置101は、例えば、クレーン40が搬入ポート21で物品50を受け取る作業、クレーン40が保管棚30に物品50を置く作業、クレーン40が搬出ポート22で物品50を受け渡す作業に関する制御を行う。保管制御装置101は、保管システム1毎に設けられている。
【0035】
保管制御装置101には、通信制御装置102が接続されている。通信制御装置102は、クレーン40等と通信するための通信装置を備える。通信制御装置102は、定期的にクレーン40(詳細にはクレーン40に設けられたクレーン制御装置)と通信することにより、クレーン40が使用可能であることを確認するとともに、クレーン40の位置を取得する。また、通信制御装置102は、クレーン40からの応答を受信できない場合、又は、クレーン40から自機が使用不能であることを示す信号を受信した場合、クレーン40が使用不能であることを取得する。通信制御装置102は、クレーン40の使用可否に関する情報を保管制御装置101へ送信する。なお、通信制御装置102が行う処理の少なくとも一部を保管制御装置101が行ってもよい。
【0036】
保管制御装置101には、管理装置103が接続されている。管理装置103は、サーバ又はPC等であり、演算装置と、記憶装置と、通信装置と、を備える。管理装置103は、工場に設けられる各システムを総括的に制御する。例えば、管理装置103は、保管制御装置101に供給する物品50を決定したり、処理装置に供給する物品50を決定したりする。
【0037】
次に、図3から図6を参照して、保管システム1の状態に基づいて保管システム1が使用可能か否かを判定する処理を説明する。保管システム1が使用可能とは、搬入ポート21から物品50を搬入可能であり、搬入された物品50を保管棚30に保管可能であり、かつ、搬出ポート22から物品50を搬出可能であることを示す。
【0038】
図3には、保管システム1の状態に基づいて保管システム1が使用可能か否かを判定する処理を示すフローチャートが記載されている。以下、図4の具体例を参照しながら図3のフローチャートを説明する。
【0039】
図4には、保管システム1の使用可能な部分が使用不可能な部分と区別して表示されている。図4は、ループ軌道12に位置するクレーン40で異常が発生してクレーン40が停止した例である。この場合、クレーン40は、通信制御装置102との定期的な通信に応答できない。また、保管制御装置101はクレーン40の位置に基づいてクレーン40を制御するため、クレーン40の応答が受信できなくなる直前のクレーン40の位置を特定できる。これにより、クレーン40に異常が発生したこと及びその位置を特定できる。なお、クレーン40の通信機能が生存している場合、自機に異常があること及び自機の位置をクレーン40から通信制御装置102に送信してもよい。保管制御装置101は、通信制御装置102と通信を行うことにより、クレーン40が使用可能か否かに関する情報を取得する。
【0040】
図4に示す例では、異常が発生したクレーン40が位置するループ軌道12及び接続軌道16が使用不能となる。更に、これらの軌道10に隣接する保管棚30が使用不能となる。
【0041】
本実施形態では、クレーン40の異常に基づいて、使用可能な軌道10を特定する。これに代えて、又は加えて、別の部分の異常に基づいて、使用可能な軌道10を特定してもよい。例えば、軌道10の給電レール10bに異常がある場合、異常がある領域については軌道10が使用不能と特定してもよい。あるいは、軌道10に設けられた信号線に異常がある場合、異常がある領域については軌道10が使用不能と特定してもよい。
【0042】
初めに、保管制御装置101は、1つの搬入ポート21と1つの搬出ポート22の組合せを選択する(S101)。後述するように、搬入ポート21又は搬出ポート22が複数ある場合、保管制御装置101は、搬入ポート21と搬出ポート22の全ての組合せについて以下の判定を行う。
【0043】
次に、保管制御装置101は、選択した搬入ポート21から搬出ポート22までが使用可能な軌道10で接続されているか否かを判定する(S102、第1条件)。具体的には、保管制御装置101は、選択した搬入ポート21及び搬出ポート22を基準点として経路探索を行う。そして、軌道10は、使用可能な軌道10のみを通る経路(使用不能な軌道10を通らない経路)が存在するかを判定する。
【0044】
特に、本実施形態のように一方通行の経路を含む場合は、搬入ポート21を起点として搬出ポート22を終点とする経路と、搬出ポート22を起点として搬入ポート21を終点とする経路と、の両方を探索することが好ましい。なぜなら、保管システム1が機能するためには、クレーン40が搬入ポート21から搬出ポート22に一度到達するだけでは不十分であり、クレーン40が搬入ポート21及び搬出ポート22に自在にアクセスできる必要があるためである。
【0045】
図4に示す例では、搬入ポート21と搬出ポート22について何れの組合せを選択した場合でもループ軌道11が第1条件を満たすことになる。
【0046】
次に、保管制御装置101は、第1条件を満たす軌道10上で動作可能なクレーン40が存在するか否かを判定する(S103、第2条件)。保管制御装置101は、通信制御装置102から取得した情報と、第1条件の判定結果と、に基づいて、この判定を行う。保管制御装置101は、第1条件を満たす軌道10上に、使用可能なクレーン40が存在する場合、第2条件を満たすと判定する。あるいは、保管制御装置101は、判定時点では第1条件を満たす軌道10上に存在しないクレーン40であっても、第1条件を満たす軌道10まで移動可能なクレーン40が存在する場合も、第2条件を満たすと判定する。
【0047】
次に、保管制御装置101は、第1条件を満たす軌道10に隣接して設けられた保管棚30が物品50を保管可能か否かを判定する(S104、第3条件)。保管棚30が物品50を保管可能とは、保管棚30が使用可能であり、かつ、保管棚30に物品50を置くための空棚があることである。保管棚30が使用可能とは、例えば、保管棚30にエラーが発生していないことである。保管制御装置101は、第1条件を満たす軌道10に隣接して設けられた保管棚30の空棚の数(即ち、有効な棚の数)を算出し、空棚の数が1以上であるか否かを判定する。軌道10に隣接して設けられるとは、軌道10に沿って移動するクレーン40がアクセス可能である位置に設けられるとの意味である。
【0048】
なお、本実施形態の構成に代えて、第1条件を満たす軌道10に隣接して設けられた保管棚30の空棚の数が閾値以上である場合に第3条件を満たすと判断してもよい。
【0049】
図4に示す例では、ループ軌道11の内側に配置された保管棚30は、第1条件を満たす軌道10(ループ軌道11)に隣接して設けられている。更に、接続軌道14と17の間に配置された保管棚30のうちループ軌道11に近い側の保管棚30についても、第1条件を満たす軌道10(ループ軌道11)に隣接して設けられている。そのため、保管制御装置101は、これらの保管棚30に空棚がある場合、保管棚30が物品50を保管可能と判定する。
【0050】
保管制御装置101は、上述した第1条件、第2条件、及び第3条件を全て満たす場合、ステップS101で選択した搬入ポート21と搬出ポート22を使用可能と判定して登録する(S105)。また、保管制御装置101は、搬入ポート21と搬出ポート22の少なくとも1つの組合せが使用可能であった場合、保管システム1が使用可能と判定する。なぜなら、少なくとも1つの組合せを用いて、保管システム1を運用することが可能であるからである。本実施形態では、第1条件及び第2条件だけでなく第3条件についても判定しているため、保管システム1が使用可能であることに加えて、外部から搬入される物品50が保管可能であることも判定できる。
【0051】
次に、保管制御装置101は、未判定の搬入ポート21と搬出ポート22の組合せがあるか否かを判定する(S106)。未判定の搬入ポート21と搬出ポート22の組合せがある場合、保管制御装置101は、再びステップS101からS105の処理を行う。なお、保管制御装置101は、第1条件、第2条件、第3条件の何れか1つを満たさないと判定した場合も、未判定の搬入ポート21と搬出ポート22の組合せがあるか否かを判定する(S106)。
【0052】
保管制御装置101は、未判定の搬入ポート21と搬出ポート22の組合せが無い場合、言い換えれば、全ての搬入ポート21と搬出ポート22の組合せについて判定を行った場合、判定結果を管理装置103に送信する(S107)。
【0053】
保管制御装置101が管理装置103に送信する判定結果は、例えば、保管システム1が使用可能か否か、使用可能と判定された搬入ポート21と搬出ポート22の識別情報、有効な棚の数がある。
【0054】
次に、図5及び図6に示す例についての判定結果を説明する。
【0055】
図5は、ループ軌道11に位置するクレーン40で異常が発生してクレーン40が停止した例である。この場合、ループ軌道11の一部及び接続軌道17が使用不能となる。更に、これらの軌道10に隣接する保管棚30が使用不能となる。
【0056】
図5では、搬入ポート21及び搬出ポート22は、ループ軌道11に隣接して設けられている。本実施形態のループ軌道11は一方通行であるため、搬入ポート21から搬出ポート22に到達する経路は存在しない。従って、第1条件(図3のS102)を満たさないため、保管システム1が使用不能と判定される。
【0057】
図6は、ループ軌道11のうち搬入ポート21及び搬出ポート22の近傍に位置するクレーン40で異常が発生してクレーン40が停止した例である。この場合、ループ軌道11の一部(特に搬入ポート21及び搬出ポート22が設けられる位置)が使用不能となる。しかし、図6に示す例では、更に、ループ軌道13に隣接して搬入ポート21及び搬出ポート22が設けられている。
【0058】
ループ軌道11に隣接する搬入ポート21及び搬出ポート22を基準点とする経路は存在しない。従って、これらの搬入ポート21及び搬出ポート22については使用可能とは判定されない。一方、ループ軌道13に隣接する搬入ポート21及び搬出ポート22を基準点とする経路は存在する。具体的には、搬入ポート21からループ軌道13を通って搬出ポート22に戻る経路と、搬入ポート21からループ軌道13、接続軌道16、ループ軌道12、接続軌道15を通って搬出ポート22に戻る経路と、が存在する。従って、図6に示すように、第1条件を満たす軌道10が存在することとなる。また、第1条件を満たす軌道10に使用可能なクレーン40が存在しているため、物品50を保管可能な空棚が存在する場合、保管システム1が使用可能と判定される。
【0059】
上記実施形態では、軌道10は一方通行であるが、軌道10は往復移動可能であってもよい。例えば、図7には、往復移動可能に設定された軌道10を備える保管システム1が記載されている。
【0060】
図7の軌道10は、U字軌道91,92,93を備える。U字軌道91,92,93は、それぞれ独立しており、接続されていない。U字軌道91,92,93には、それぞれ搬入ポート21及び搬出ポート22が設けられている。U字軌道91,92,93に隣接して、保管棚30が設けられている。U字軌道91,92,93には、それぞれ1台のクレーン40が設けられている。この種の軌道10においても、基本的には、上記実施形態と同じ処理を行うことにより、保管システム1が使用可能か否かを判定できる。ただし、以下の状況において、例えば、図7において搬入ポート21と搬出ポート22に隣接する軌道10が使用可能であり、それ以外の軌道10(即ち、保管棚30に隣接する軌道10)が使用不能である状況を考える。この場合、搬入ポート21と搬出ポート22が使用可能な軌道10で接続されているので、保管制御装置101は、ステップS102でYesと判定する。また、搬入ポート21と搬出ポート22に隣接する軌道10にクレーン40が存在した場合、保管制御装置101は、ステップS103でYesと判定する。また、ステップS104では、保管制御装置101は、この軌道10に隣接する保管棚30が物品を保管可能か否かを判定する。しかし、搬入ポート21及び搬出ポート22に隣接する軌道10には、そもそも保管棚30が存在しない。この場合であっても、保管制御装置101は、ステップS104でNoと判定する。なぜなら、保管棚30が存在しない場合、物品50を保管可能でないからである。
【0061】
以上に説明したように、本実施形態の保管システム1は、外部から搬入される物品50を保管するとともに、保管した物品50を外部に搬出する。保管システム1は、搬入ポート21と、保管棚30と、搬出ポート22と、複数のクレーン40と、保管制御装置101と、を備える。搬入ポート21は、外部から物品50が搬入される場所である。保管棚30は、物品50を保管する。搬出ポート22は、物品50を外部に搬出する場所である。クレーン40は、軌道10に沿って移動することにより、搬入ポート21、保管棚30、又は搬出ポート22にアクセスする。保管制御装置101は、搬入ポート21から搬出ポート22に至る経路が使用可能な軌道10で構成されるという第1条件を満たし、かつ、第1条件を満たす軌道10に沿って物品50を搬送可能なクレーン40があるという第2条件を満たしたときに、保管システム1が使用可能であると判定する。
【0062】
これにより、保管システム1の一部が使用不能であったとしても、保管システム1の他の部分が使用可能である場合は、保管システム1を使用可能と判定できる。従って、保管システム1を効率的に運用できる。特に、軌道10だけでなくクレーン40も含めて判定を行うことにより、保管システム1が使用可能か否かについて精度良く判定できる。
【0063】
本実施形態の保管システム1において、保管制御装置101は、第1条件及び第2条件に加え、更に、第1条件を満たす軌道10に隣接して設けられた保管棚30が物品50を保管可能であるという第3条件を満たしたときに、外部から搬入される物品50を保管可能であると判定する。
【0064】
これにより、保管システム1が使用可能か否かだけでなく、保管システム1に実際に物品を保管可能か否かを判定できる。
【0065】
本実施形態の保管システム1において、搬入ポート21及び搬出ポート22が複数設けられている。保管制御装置101は、搬入ポート21及び搬出ポート22の全ての組合せについて、第1条件を満たすか否かを判定する。
【0066】
これにより、保管システム1が使用可能にもかかわらず使用不能と判定されることをより確実に防止できる。
【0067】
本実施形態の保管システム1において、保管制御装置101は、搬入ポート21に物品50を搬入する指令を行う管理装置103と通信可能である。保管制御装置101は、保管システム1が使用可能か否かを管理装置103に送信する。
【0068】
これにより、保管システムが使用可能であることを管理装置103に送信できるので、保管システムを有効に活用できる。
【0069】
本実施形態の保管システム1において、搬入ポート21及び搬出ポート22が複数設けられている。保管制御装置101は、第1条件及び前記2条件を満たす搬入ポート21及び搬出ポート22を特定する識別情報を管理装置103に送信する。
【0070】
これにより、使用可能な搬入ポートと搬出ポートを管理装置103に知らせることができるので、管理システムを更に有効に活用できる。
【0071】
本実施形態の保管システム1において、軌道10は、複数のループ軌道11,12,13と、複数のループ軌道11,12,13同士を接続する接続軌道14,15,16,17と、を含む。搬入ポート21及び搬出ポート22は、ループ軌道11,12,13に隣接して設けられる。保管棚30は、ループ軌道11,12,13で囲まれる領域と、ループ軌道11,12,13同士の間と、に配置される。
【0072】
これにより、複数のループ軌道11,12,13を含むような複雑な軌道10に対しても、保管システム1が使用可能か否かを判定できる。
【0073】
本実施形態の保管システム1において、保管棚30は、鉛直方向に並べて複数の物品50を保管可能である。クレーン40は、天井に設けられた軌道10に沿って走行可能であるとともに、昇降することにより保管棚30の物品50にアクセスする。
【0074】
多数の物品を保管可能な保管棚を備える保管システムに本発明を適用することにより、本発明の効果をより有効に発揮させることができる。
【0075】
本実施形態には以下の特徴1から特徴7が含まれる。
[特徴1]
外部から搬入される物品を保管するとともに、保管した前記物品を外部に搬出する保管システムにおいて、
外部から前記物品が搬入される場所である搬入ポートと、
前記物品を保管する保管棚と、
前記物品を外部に搬出する場所である搬出ポートと、
軌道に沿って移動することにより、前記搬入ポート、前記保管棚、又は前記搬出ポートにアクセスする複数の搬送装置と、
前記搬入ポートから前記搬出ポートに至る経路が使用可能な軌道で構成されるという第1条件を満たし、かつ、前記第1条件を満たす軌道に沿って前記物品を搬送可能な前記搬送装置があるという第2条件を満たしたときに、保管システムが使用可能であると判定する判定部と、
を備えることを特徴とする保管システム。
[特徴2]
特徴1に記載の保管システムであって、
前記判定部は、前記第1条件及び前記第2条件に加え、更に、前記第1条件を満たす軌道に隣接して設けられた前記保管棚が前記物品を保管可能であるという第3条件を満たしたときに、外部から搬入される前記物品を保管可能であると判定することを特徴とする保管システム。
[特徴3]
特徴1又は2に記載の保管システムであって、
前記搬入ポート及び前記搬出ポートが複数設けられており、
前記判定部は、前記搬入ポート及び前記搬出ポートの全ての組合せについて、前記第1条件を満たすか否かを判定することを特徴とする保管システム。
[特徴4]
特徴1から3までの何れか一項に記載の保管システムであって、
前記判定部は、前記搬入ポートに前記物品を搬入する指令を行う管理装置と通信可能であり、
前記判定部は、保管システムが使用可能か否かを前記管理装置に送信することを特徴とする保管システム。
[特徴5]
特徴4に記載の保管システムであって、
前記搬入ポート及び前記搬出ポートが複数設けられており、
前記判定部は、前記第1条件及び前記2条件を満たす前記搬入ポート及び前記搬出ポートを特定する識別情報を前記管理装置に送信することを特徴とする保管システム。
[特徴6]
特徴1から5までの何れか一項に記載の保管システムであって、
前記軌道は、複数のループ軌道と、複数の前記ループ軌道同士を接続する接続軌道と、を含み、
前記搬入ポート及び前記搬出ポートは、前記ループ軌道に隣接して設けられ、
前記保管棚は、前記ループ軌道で囲まれる領域と、前記ループ軌道同士の間と、に配置されることを特徴とする保管システム。
[特徴7]
特徴1から6までの何れか一項に記載の保管システムであって、
前記保管棚は、鉛直方向に並べて複数の前記物品を保管可能であり、
前記搬送装置は、天井に設けられた前記軌道に沿って走行可能であるとともに、昇降することにより前記保管棚の前記物品にアクセスすることを特徴とする保管システム。
【0076】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0077】
上記実施形態で示したフローチャートは一例であり、一部の処理を省略したり、一部の処理の内容を変更したり、新たな処理を追加したりしてもよい。例えば、ステップS104(第3条件)の処理を省略してもよい。
【0078】
上記実施形態において、保管制御装置101は、第1条件(軌道10の条件)を判定した後に第2条件(クレーン40の条件)を判定する。しかし、実質的に同じ内容を判定するのであれば、判定処理を第1条件と第2条件に区分しなくてもよい。例えば、保管制御装置101は、1つのクレーン40を選択し、このクレーン40が搬入ポート21から搬出ポート22まで移動可能であるか否かを判定し、この処理を全てのクレーン40に対して行ってもよい。
【0079】
上記実施形態において、保管制御装置101は、第1条件(軌道10の条件)を判定した後に第3条件(保管棚30の条件)を判定する。しかし、実質的に同じ内容を判定するのであれば、判定処理を第1条件と第3条件に区分しなくてもよい。例えば、保管制御装置101は、1つの保管棚30を選択し、この保管棚30が、搬入ポート21から搬出ポート22に至る使用可能な軌道10に隣接して設けられているか否かを判定し、この処理を全ての保管棚30に対して行ってもよい。なお、第2条件(クレーン40の条件)を判定する処理は、例えば、使用可能な軌道10に保管棚30が設けられているか否かの判定の後に行うことができる。
【0080】
上記実施形態では、搬送装置の例としてクレーン40を挙げて説明したが、物品50を搬送可能であれば、クレーン40に限られず、別の構成の搬送装置(天井搬送車等)にも本発明を適用できる。
【0081】
上記実施形態では、半導体製品を製造する工場に設置される保管システム1について説明したが、この保管システム1は、他の製品を製造する工場に設置することもできる。また、この保管システム1は、製造工場以外の建屋(例えば倉庫)に設置することもできる。
【符号の説明】
【0082】
1 保管システム
10 軌道
21 搬入ポート
22 搬出ポート
30 保管棚
40 クレーン(搬送装置)
50 物品
101 保管制御装置(判定部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7