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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】投影システム及び観察補助装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/00 20060101AFI20241121BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20241121BHJP
   F21V 5/04 20060101ALI20241121BHJP
   F21V 9/00 20180101ALI20241121BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20241121BHJP
【FI】
G03B21/00 D
F21S2/00 300
F21V5/04 350
F21V9/00
F21Y115:30
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2024518054
(86)(22)【出願日】2023-04-27
(86)【国際出願番号】 JP2023016755
(87)【国際公開番号】W WO2023210779
(87)【国際公開日】2023-11-02
【審査請求日】2024-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2022073865
(32)【優先日】2022-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 知枝
(72)【発明者】
【氏名】倉重 牧夫
(72)【発明者】
【氏名】西尾 俊平
(72)【発明者】
【氏名】石田 一敏
(72)【発明者】
【氏名】中津川 夏織
(72)【発明者】
【氏名】清野 創
【審査官】石本 努
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第112449164(CN,A)
【文献】特表2018-508825(JP,A)
【文献】米国特許第06428169(US,B1)
【文献】特開2008-268878(JP,A)
【文献】特開2021-118413(JP,A)
【文献】特開2021-101204(JP,A)
【文献】特開2005-151310(JP,A)
【文献】特開2018-081149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K9/00-9/90
F21S2/00-45/70
F21V23/00-99/00
G02B5/18-5/28
5/32
27/00-30/60
G03B21/00-21/10
21/12-21/30
21/56-21/64
33/00-33/16
G09G3/00-3/08
3/12
3/16
3/19-3/26
3/30
3/34
3/38-5/42
H04N5/66-5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光を放出して投影パターンを投影面に投影する照明装置と、
前記照明光のピーク波長より5nm低い波長以上前記ピーク波長より5nm高い波長以下の波長域における平均透過率が前記波長域以外の可視光波長域における平均透過率よりも高い光学フィルタを含む撮像装置と、
前記撮像装置と通信する制御装置と、を備え、
前記照明光の前記ピーク波長は、前記照明光の最大放射束が得られる波長であり、
前記制御装置は、前記撮像装置によって撮像された像データを用いて前記投影パターンを検出し、検出された前記投影パターンに関連する表示パターンを生成する、投影システム。
【請求項2】
前記撮像装置と電気的に接続した表示装置を備え、
前記表示装置は、前記撮像装置によって撮像された像を表示する、請求項1に記載の投影システム。
【請求項3】
前記表示装置は、観察者が装着可能な装着具と、前記装着具に保持されて前記像を表示する表示素子と、を含み、
前記観察者が前記装着具を装着した状態において、前記表示素子は前記観察者の目に対面する、請求項2に記載の投影システム。
【請求項4】
照明光を放出して投影パターンを投影面に投影する照明装置と、
前記照明光のピーク波長より5nm低い波長以上前記ピーク波長より5nm高い波長以下の波長域における平均透過率が前記波長域以外の可視光波長域における平均透過率よりも高い光学フィルタを含む撮像装置と、
前記撮像装置と電気的に接続した表示装置と、を備え、
前記照明光の前記ピーク波長は、前記照明光の最大放射束が得られる波長であり、
前記表示装置は、前記撮像装置によって撮像された像を表示し、
前記表示装置は、観察者が装着可能な装着具と、前記装着具に保持されて前記像を表示する表示素子と、を含み、
前記観察者が前記装着具を装着した状態において、前記表示素子は前記観察者の目に対面する、投影システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記撮像装置及び前記表示装置と電気的に接続し、
前記表示装置は、前記像に重ねて前記表示パターンを表示する、請求項2に記載の投影システム。
【請求項6】
照明光を放出して投影パターンを投影面に投影する照明装置と、
前記照明光のピーク波長より5nm低い波長以上前記ピーク波長より5nm高い波長以下の波長域における平均透過率が前記波長域以外の可視光波長域における平均透過率よりも高い光学フィルタを含む撮像装置と、
前記撮像装置と電気的に接続した表示装置と、
前記撮像装置及び前記表示装置と電気的に接続した制御装置と、を備え、
前記照明光の前記ピーク波長は、前記照明光の最大放射束が得られる波長であり、
前記表示装置は、前記撮像装置によって撮像された像を表示し、
前記制御装置は、前記表示装置に表示された前記像内の前記投影パターンを検出し、検出された前記投影パターンに関連する表示パターンを生成し、
前記表示装置は、前記像に重ねて前記表示パターンを表示する、投影システム。
【請求項7】
前記表示パターンは、線状パターンを含む前記投影パターンの延長線上に延びる線状の補助パターン、前記投影パターンと同心円上に位置する円周に沿って延び前記投影パターンを周状に取り囲む補助パターン、又は検出された前記投影パターンと重なる検出パターンを含む、請求項5又は6に記載の投影システム。
【請求項8】
前記投影パターンは線状パターンを含み、
前記表示パターンは、前記投影パターンの延長線上に延びる線状の補助パターンを含む、請求項5又は6に記載の投影システム。
【請求項9】
前記表示パターンは、前記投影パターンを周状に取り囲む補助パターンを含む、請求項5又は6に記載の投影システム。
【請求項10】
前記表示パターンは、検出された前記投影パターンと重なる検出パターンを含む、請求項5又は6に記載の投影システム。
【請求項11】
前記撮像装置は、前記投影面に対して相対移動可能であり、
前記表示装置は、前記撮像装置によって撮像される範囲内の所定の位置、所定の方向、又は所定の範囲を示す基準パターンを、前記像に重ねて表示する、請求項2に記載の投影システム。
【請求項12】
照明光を放出して投影パターンを投影面に投影する照明装置と、
前記照明光のピーク波長より5nm低い波長以上前記ピーク波長より5nm高い波長以下の波長域における平均透過率が前記波長域以外の可視光波長域における平均透過率よりも高い光学フィルタを含む撮像装置と、
前記撮像装置と電気的に接続した表示装置と、を備え、
前記照明光の前記ピーク波長は、前記照明光の最大放射束が得られる波長であり、
前記表示装置は、前記撮像装置によって撮像された像を表示し、
前記撮像装置は、前記投影面に対して相対移動可能であり、
前記表示装置は、前記撮像装置によって撮像される範囲内の所定の位置、所定の方向、又は所定の範囲を示す基準パターンを、前記像に重ねて表示する、投影システム。
【請求項13】
前記投影面に対して相対移動可能な移動体を備え、
前記撮像装置は、前記移動体に保持されている、請求項11又は12に記載の投影システム。
【請求項14】
前記基準パターンは、前記移動体の移動予定経路、及び前記移動体によって実施される作業予定位置の少なくとも一方を示す、請求項13に示す記載の投影システム。
【請求項15】
前記表示装置は、前記撮像装置によって撮像される範囲内の所定の位置、所定の方向、又は所定の範囲を示す基準パターンを、前記像に重ねて表示し、
前記制御装置は、検出された前記投影パターン及び生成された前記表示パターンの少なくとも一方の、前記基準パターンに対する位置関係を評価し、
前記制御装置が前記位置関係に異常があると判断した場合、前記異常が報知される、請求項5又は6に記載の投影システム。
【請求項16】
前記照明装置は、前記照明光としてコヒーレント光を放出する光源と、前記コヒーレント光を回折する回折光学素子と、を含む、請求項1~6、11、及び12のいずれか一項に記載の投影システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投影システム及び観察補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
路面等の投影面に投影パターンを投影する照明装置が知られている(例えば、JP2021-52008A)。照明装置が使用される環境の環境光に依存して、投影パターンのコントラストが低下し、投影パターンを観察しにくくなる。
【発明の開示】
【0003】
本開示は、投影パターンを明瞭に観察可能とすることを目的とする。
【0004】
本開示の一実施の形態による投影システムは、
照明光を放出して投影パターンを投影面に投影する照明装置と、
前記照明光の波長域における平均透過率が前記照明光の波長域以外の可視光波長域における平均透過率よりも高い光学フィルタと、を備え、
前記照明光の前記波長域は、前記照明光のピーク波長より5nm低い波長以上前記ピーク波長より5nm高い波長以下の波長域であり、
前記照明光の前記ピーク波長は、前記照明光の最大放射束が得られる波長である。
【0005】
本開示の一実施の形態による第1の観察補助装置は、
照明装置から放出された照明光を用いて投影面に投影される投影パターンの観察を補助する観察補助装置であって、
前記照明光の波長域における平均透過率が前記照明光の波長域以外の可視光波長域における平均透過率よりも高い光学フィルタを備え、
前記照明光の前記波長域は、前記照明光のピーク波長より5nm低い波長以上前記ピーク波長より5nm高い波長以下の波長域であり、
前記照明光の前記ピーク波長は、前記照明光の最大放射束が得られる波長である。
【0006】
本開示の一実施の形態による第2の観察補助装置は、
面に表示されたパターンの観察を補助する観察補助装置であって、
前記面を撮像した像を表示する表示装置と、
前記表示装置と電気的に接続した制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記表示装置に表示された前記像内の前記パターンを検出し、検出された前記パターンに関連する表示パターンを生成し、
前記表示装置は、前記像に重ねて前記表示パターンを表示する。
【0007】
本開示の一実施の形態によれば、投影パターンを明瞭に観察できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施の形態を説明する図であって、投影システム及び観察補助装置の一例を示す斜視図である。
図2A図2Aは、観察補助装置の一例を示す斜視図である。
図2B図2Bは、図2Aに示された観察補助装置を装着した観察者を示す斜視図である。
図2C図2Cは、図2Aに示された観察補助装置の一変形例を示す斜視図である。
図3A図3Aは、観察補助装置の他の例を示す斜視図である。
図3B図3Bは、図3Aに示された観察補助装置を装着した観察者を示す斜視図である。
図4図4は、観察補助装置の更に他の例を、観察者とともに、示す側面図である。
図5図5は、観察補助装置の更に他の例を示す側断面図である。
図6図6は、投影システム及び観察補助装置の他の例を示す側面図である。
図7A図7Aは、投影システム及び観察補助装置に含まれ得る光学フィルタの透過スペクトルの一例を示すグラフである。
図7B図7Bは、投影システム及び観察補助装置に含まれ得る光学フィルタの層構成の一例を示す断面図である。
図8図8は、照明装置の一例を示す斜視図である。
図9図9は、照明装置の他の例を示す斜視図である。
図10図10は、照明装置の更に他の例を示す断面図である。
図11図11は、照明装置の更に他の例を示す側面図である。
図12図12は、照明装置の更に他の例を説明する図である。
図13図13は、観察補助装置の更に他の例を示す側面図である。
図14図14は、図13の観察補助装置に含まれ得る表示装置を示す平面図である。
図15図15は、移動体の一例を示す縦断面図である。
図16図16は、装着型の表示装置を示す斜視図である。
図17図17は、投影システム及び観察補助装置の更に他の例を示す側面図である。
図18A図18Aは、図14に対応する図であって、表示装置の表示面を示す図である。
図18B図18Bは、図14に対応する図であって、表示装置の表示面を示す図である。
図18C図18Cは、図14に対応する図であって、表示装置の表示面を示す図である。
図18D図18Dは、図14に対応する図であって、表示装置の表示面を示す図である。
図18E図18Eは、図14に対応する図であって、表示装置の表示面を示す図である。
図19図19は、制御装置によって表示パターンを生成する方法の一例を示すフローチャートである。
図20図20は、投影システム及び観察補助装置の更に他の例を示す側面図である。
図21図21は、投影システム及び観察補助装置の更に他の例を示す側面図である。
図22図22は、投影パターン及び表示パターンの一変形例を示す平面図である。
図23図23は、投影パターン及び表示パターンの他の変形例を示す平面図である。
図24図24は、図14に対応する図であって、表示装置の表示面を示す図である。
図25図25は、図1に対応する図であって、従来の不具合を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の一実施の形態は、以下の[1]~[40]に関する。
【0010】
[1]
照明光を放出して投影パターンを投影面に投影する照明装置と、
前記照明光の波長域における平均透過率が前記照明光の波長域以外の可視光波長域における平均透過率よりも高い光学フィルタと、を備え、
前記照明光の前記波長域は、前記照明光のピーク波長より5nm低い波長以上前記ピーク波長より5nm高い波長以下の波長域であり、
前記照明光の前記ピーク波長は、前記照明光の最大放射束が得られる波長である、投影システム。
【0011】
[2]
前記光学フィルタを介して前記投影パターンが観察される、[1]に記載の投影システム。
【0012】
[3]
前記投影パターンの観察者が装着可能な装着具を備え、
前記装着具は前記光学フィルタを含み、
前記観察者が前記装着具を装着した状態において、前記光学フィルタは前記観察者の目に対面する、[1]又は[2]に記載の投影システム。
【0013】
[4]
前記装着具は、前記光学フィルタの周囲に位置する遮光壁部を含み、
前記観察者が前記装着具を装着した状態において、前記遮光壁部は前記光学フィルタと前記観察者との間に位置する、[3]に記載の投影システム。
【0014】
[5]
前記装着具は、頭部に装着される装着具本体を含み、
前記光学フィルタは、前記装着具本体に着脱可能である、[3]又は[4]のいずれかの投影システム。
【0015】
[6]
前記装着具は、前記光学フィルタを含むコンタクトレンズを含む、[3]の投影システム。
【0016】
[7]
前記光学フィルタは移動体の風防を構成する、[1]又は[2]に記載の投影システム。
【0017】
[8]
前記光学フィルタを含む撮像装置を備える、[1]に記載の投影システム。
【0018】
[9]
前記撮像装置と電気的に接続した表示装置を備え、
前記表示装置は、前記撮像装置によって撮像された像を表示する、[8]に記載の投影システム。
【0019】
[10]
前記表示装置は、観察者が装着可能な装着具と、前記装着具に保持されて前記像を表示する表示素子と、を含み、
前記観察者が前記装着具を装着した状態において、前記表示素子は前記観察者の目に対面する、[9]に記載の投影システム。
【0020】
[11]
前記表示素子の全光線透過率は1%以上である、[10]に記載の投影システム。
【0021】
[12]
前記撮像装置及び前記表示装置と電気的に接続した制御装置を備え、
前記制御装置は、前記表示装置に表示された前記像内の前記投影パターンを検出し、検出された前記投影パターンに関連する表示パターンを生成し、
前記表示装置は、前記像に重ねて前記表示パターンを表示する、[9]~[11]のいずれか一項に記載の投影システム。
【0022】
[13]
前記投影パターンは線状パターンを含み、
前記表示パターンは、前記投影パターンの延長線上に延びる線状の補助パターンを含む、[12]に記載の投影システム。
【0023】
[14]
前記投影パターンは直線状パターンを含み、
前記表示パターンは、前記投影パターンの延長線上に位置する直線状の補助パターンを含む、[12]又は[13]に記載の投影システム。
【0024】
[15]
前記投影パターンは、互いに交差する第1線状パターン及び第2線状パターンを含み、
前記表示パターンは、前記第1線状パターンの延長線上に位置する線状の第1補助パターンと、前記第2線状パターンの延長線上に位置する線状の第2補助パターンと、を含む、[12]又は[13]に記載の投影システム。
【0025】
[16]
前記表示パターンは、前記投影パターンを周状に取り囲む補助パターンを含む、[12]又は[13]に記載の投影システム。
【0026】
[17]
前記補助パターンの外輪郭によって囲まれる領域の重心は、前記投影パターンの重心及び前記投影パターンの外輪郭によって囲まれる領域の重心の少なくとも一方と、同一位置にある、[16]に記載の投影システム。
【0027】
[18]
前記表示パターンは、検出された前記投影パターンと重なる検出パターンを含む、[12]~[17]のいずれか一項に記載の投影システム。
【0028】
[19]
前記表示パターンは、前記検出パターンに接続し、前記検出パターンの延長線上に位置する補助パターンを含む、[12]~[18]のいずれか一項に記載の投影システム。
【0029】
[20]
前記撮像装置は、前記投影面に対して相対移動可能であり、
前記表示装置は、前記撮像装置によって撮像される範囲内の所定の位置、所定の方向、又は所定の範囲を示す基準パターンを、前記像に重ねて表示する、[9]~[19]のいずれか一項に記載の投影システム。
【0030】
[21]
前記投影面に対して相対移動可能な移動体を備え、
前記撮像装置は、前記移動体に保持されている、[20]に記載の投影システム。
【0031】
[22]
前記基準パターンは、前記移動体の移動予定経路、及び前記移動体によって実施される作業予定位置の少なくとも一方を示す、[21]に示す記載の投影システム。
【0032】
[23]
前記表示装置は、前記撮像装置によって撮像される範囲内の所定の位置、所定の方向、又は所定の範囲を示す基準パターンを、前記像に重ねて表示し、
前記制御装置は、検出された前記投影パターン及び生成された前記表示パターンの少なくとも一方の、前記基準パターンに対する位置関係を評価し、
前記制御装置が前記位置関係に異常があると判断した場合、前記異常が報知される、[12]~[22]のいずれか一項に記載の投影システム。
【0033】
[24]
前記表示装置は、前記像及び前記表示パターンの少なくとも一方の表示方法を変化させることによって、前記異常を報知する、[23]に記載の投影システム。
【0034】
[25]
前記異常を報知する報知装置を備え、
前記制御装置が前記位置関係に異常があると判断した場合、前記報知装置は、光及び音の少なくとも一方を用いて前記異常を報知する、[23]又は[24]に記載の投影システム。
【0035】
[26]
前記照明装置は、前記投影パターンの前記投影面への投影方法を変化させることによって、前記異常を報知する、[23]~[25]のいずれか一項に記載の投影システム。
【0036】
[27]
前記光学フィルタは誘電体多層膜を含む、[1]~[26]のいずれか一項に記載の投影システム。
【0037】
[28]
前記光学フィルタの分光透過率の半値全幅は15nm以下である、[1]~[27]のいずれか一項に記載の投影システム。
【0038】
[29]
前記光学フィルタの可視光域における最大の分光透過率は50%以上である、[1]~[28]のいずれか一項に記載の投影システム。
【0039】
[30]
前記照明光の前記ピーク波長を中心とした30nmの波長域以外の可視光波長域における前記光学フィルタの平均透過率は1%以下である、[1]~[29]のいずれか一項に記載の投影システム。
【0040】
[31]
前記照明光のピーク波長を中心とした30nmの波長域以外の可視光波長域における前記光学フィルタの平均透過率は0.001%以上である、[1]~[30]のいずれか一項に記載の投影システム。
【0041】
[32]
前記投影面に投影された前記投影パターンの照度の最大値は1lx以上である、[1]~[31]のいずれか一項に記載の投影システム。
【0042】
[33]
前記投影面に投影された前記投影パターンの照度の最大値である照度LX(lx)と、
前記照度LXが得られる前記投影面上の位置における環境光に起因した照度LY(lx)と、
前記照明光の前記波長域における前記光学フィルタの平均透過率TX(%)と、
前記照明光の前記ピーク波長を中心とした30nmの波長域以外の可視光波長域における前記光学フィルタの平均透過率TY(%)と、が次の関係を満たす、
0.001≦ (LX・TX)/(LY・TY)
[1]~[32]のいずれか一項に記載の投影システム。
【0043】
[34]
前記照度LX、前記照度LY、前記透過率TX、及び前記透過率TYが次の関係を満たす、
(LX・TX)/(LY・TY) ≦ 10
[33]に記載の投影システム。
【0044】
[35]
前記照明装置は、前記照明光としてコヒーレント光を放出する光源と、前記コヒーレント光を回折する回折光学素子と、を含む、[1]~[34]のいずれか一項に記載の投影システム。
【0045】
[36]
照明装置から放出された照明光を用いて投影面に投影される投影パターンの観察を補助する観察補助装置であって、
前記照明光の波長域における平均透過率が前記照明光の波長域以外の可視光波長域における平均透過率よりも高い光学フィルタを備え、
前記照明光の前記波長域は、前記照明光のピーク波長より5nm低い波長以上前記ピーク波長より5nm高い波長以下の波長域であり、
前記照明光の前記ピーク波長は、前記照明光の最大放射束が得られる波長である、観察補助装置。
【0046】
[37]
前記投影パターンの観察者が装着可能な装着具を備え、
前記装着具は前記光学フィルタを含み、
前記観察者が前記装着具を装着した状態において、前記光学フィルタは前記観察者の目に対面する、[36]に記載の観察補助装置。
【0047】
[38]
前記光学フィルタを含む撮像装置を備える、[36]又は[37]に記載の観察補助装置。
【0048】
[39]
面に表示されたパターンの観察を補助する観察補助装置であって、
前記面を撮像した像を表示する表示装置と、
前記表示装置と電気的に接続した制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記表示装置に表示された前記像内の前記パターンを検出し、検出された前記パターンに関連する表示パターンを生成し、
前記表示装置は、前記像に重ねて前記表示パターンを表示する、観察補助装置。
【0049】
[40]
前記パターンを面に投影する照明装置を備える、[39]に記載の観察補助装置。
【0050】
以下、図面を参照して本開示の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0051】
本明細書において、数値範囲に関する複数の上限値の候補と、複数の下限値の候補とが、別の文に記載されることがある。この記載において、当該数値範囲は、任意の1つの上限値の候補と任意の1つの下限値の候補とを組み合わせることによって構成されてもよい。一例として、「パラメータBは、A1以上でもよく、A2以上でもよく、A3以上でもよい。パラメータBは、A4以下でもよく、A5以下でもよく、A6以下でもよい。」との記載について検討する。この例において、パラメータBの数値範囲は、A1以上A4以下でもよく、A1以上A5以下でもよく、A1以上A6以下でもよく、A2以上A4以下でもよく、A2以上A5以下でもよく、A2以上A6以下でもよく、A3以上A4以下でもよく、A3以上A5以下でもよく、A3以上A6以下でもよい。
【0052】
方向関係を図面間で明確化するため、いくつかの図面には、第1方向D1、第2方向D2及び第3方向D3を図面間で共通する方向として矢印で示している。矢印の先端側が、各方向D1,D2,D3の第1側となる。図面の紙面に垂直な方向に沿って紙面の奥に向かう矢印を、例えば図6に示すように、円の中に×を設けた記号により示した。図面の紙面に垂直な方向に沿って紙面から手前に向かう矢印を、図10に示すように、円の中に点を設けた記号により示した。
【0053】
本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に限定されることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈する。
【0054】
本実施の形態における投影システム10は、照明装置30及び観察補助装置100を含む。照明装置30は投影パターン90を投影面95に投影する。観察者5は、投影面95上に投影パターン90を観察できる。以下に説明する本実施の形態では、観察者5が投影パターン90を明瞭に観察可能にするための工夫がなされている。具体的には、投影システム10は観察補助装置100を含んでいる。観察補助装置100は光学フィルタ120を含む。照明装置30から放出された照明光の波長域における光学フィルタ120の平均透過率は、照明光の波長域以外の可視光波長域における光学フィルタ120の平均透過率よりも高い。光学フィルタ120を用いることによって、観察者5は投影パターン90を明瞭に観察できる。
【0055】
以下において、図面に示された具体例を参照しつつ、一実施の形態について説明する。
【0056】
照明装置30は、投影面95の被照明領域96に照明光を投射する。観察者5は、被照明領域96を投影パターン90として認識する。投影パターン90は被照明領域96の形状と同一の形状を有する。
【0057】
照明装置30から照明光を照射される投影面95は、特に限定されない。とりわけ本実施の形態によれば、観察補助装置100によって投影パターン90の視認性が改善される。したがって、投影面95は、図1に示す太陽光が照射される面でもよい。投影パターン90が投影される投影面95として、路面、歩道、運動場、公園等の地面、海面等の水面、学校、会社、ビル、工場、集会場、講堂、体育館、競技場、会場等の建物の外壁面、内壁面、通路、床、天井等が例示される。
【0058】
投影パターン90及び被照明領域96は、特に限定されない。投影パターン90及び被照明領域96は、単一の領域を含んでもよい。投影パターン90及び被照明領域96は、互いから離れた複数の領域を含んでもよい。投影パターン90は、文字、絵柄、幾何学模様、記号、マーク、イラスト、キャラクター、ピクトグラムのいずれか一以上を含んでもよい。投影パターン90は情報を表示してもよい。
【0059】
図1に示された例において、投影パターン90及び被照明領域96は、線状の形状を有している。この投影パターン90及び被照明領域96は、照明装置30の設置位置から遠ざかる線状となっている。この投影パターン90及び被照明領域96は、直線状である。この投影パターン90及び被照明領域96は、第1方向D1に長手方向を有する。この投影パターン90及び被照明領域96は、第2方向D2に短手方向を有する。
【0060】
照明装置30は、特定波長域の照明光を投影面95に投射する。照明光は、コヒーレント光でもよい。コヒーレント光は、波長及び位相が揃った光である。照明光は、単一波長のコヒーレント光を含んでもよい。照明光は、波長520nmの緑色光でもよい。照明光は、波長530nmの緑色光でもよい。照明光は、波長635nmの赤色光でもよい。照明光は、波長638nmの赤色光でもよい。照明光は、複数の波長のコヒーレント光を含んでもよい。照明光は可視光でもよい。
【0061】
観察補助装置100は、光学フィルタ120を含んでいる。光学フィルタ120の透過率は波長依存性を有している。光学フィルタ120は、可視光のうち照明装置30から放出される照明光を選択的に透過させる。可視光は、380nm以上780nm以下の波長を有する光である。より具体的には、照明装置30から放出される照明光の波長域における光学フィルタ120の平均透過率は、照明光の波長域以外の可視光波長における光学フィルタ120の平均透過率よりも高い。
【0062】
平均透過率(%)は、対象となる波長域内における1nm毎の分光透過率の算術平均値として特定される。分光透過率(%)は、対象となる波長域内における波長k(nm)についての透過率とし、kは自然数である。照明光の波長域は、照明光のピーク波長より5nm低い波長以上であり、ピーク波長より5nm高い波長以下として特定される波長域である。
【0063】
一例として、ピーク波長が、500nmであると、照明光の波長域は、495nm以上505nm以下の波長域となる。この例において、「照明光の波長域における平均透過率」は、495nm、496nm、497nm、498nm、499nm、500nm、501nm、502nm、503nm、504nm、及び505nmの各波長についての分光透過率(%)の算術平均値となる。この例において、「照明光の波長域以外の可視光波長域における光学フィルタ120の平均透過率」は、380nm以上494nm以下及び506nm以上780nm以下の波長域において1nm毎に測定された分光透過率(%)の算術平均値となる。
【0064】
分光透過率は、JIS Z 8722:2009に準拠して測定される。分光透過率の測定において、JIS Z8722:2009に規定された幾何条件eを採用する。分光透過率を測定する際の測定環境は、温度23℃±2℃、相対湿度50%±5%とする。サンプルは、測定開始前に、測定環境に16時間配置する。光源はD65光源とする。測定開始前に光源を15分間点灯し、光源の出力を安定させる。
【0065】
照明光のピーク波長は、照明光の最大の放射束(W)が得られる可視光域内の波長(nm)とする。照明光のピーク波長は、自然数(nm)として特定される。ピーク波長は、光スペクトラムアナライザを用いて測定される。ピーク波長は、JIS C 5941:1997に記載のピーク発振波長の測定方法に準拠して測定される。ただし測定対象の照明光は、規格内の半導体レーザーからの発光とみなす。ピーク波長を測定する際の測定環境は、温度23℃±2℃、相対湿度50%±5%、気圧860hPa以上1060hPa以下とする。測定開始前に照明装置を15分間点灯し、照明装置の出力を安定させる。
【0066】
図2A図5に示すように、投影システム10及び観察補助装置100は、観察者5が装着可能な装着具104を含んでもよい。装着具104は光学フィルタ120を含む。観察者5が装着具104を装着した状態において、光学フィルタ120は観察者5の目に対面する。観察者5が光学フィルタ120を介して投影パターン90を観察することにより、観察者5は、例えば明るい環境においても、投影パターン90を明瞭に観察できる。
【0067】
図2Aに示すように、装着具104は眼鏡でもよい。装着具104はサングラスでもよい。図2Bは、図2Aのサングラスを装着した観察者5を示す。図2A及び図2Bに示すように、装着具104は、光学フィルタ120、フレーム106及び遮光壁部105を含んでもよい。図2A及び図2Bに示された具体例において、フレーム106は光学フィルタ120を保持する。フレーム106は、光学フィルタ120を保持するフレーム本体106Aと、フレーム本体106Aを観察者5に保持させるための保持部106Bと、を含む。フレーム本体106Aは、通常の眼鏡と同様に、右目に対面して一つの光学フィルタ120を保持し、左目に対面して一つの光学フィルタ120を保持する。保持部106Bは、耳掛け部である。遮光壁部105は、光学フィルタ120の周囲に位置する。図2Bに示すように、観察者5が装着具104を装着した状態において、遮光壁部105は光学フィルタ120と観察者5との間に位置する。遮光壁部105は可視光遮光性を有する。遮光壁部105は可視光を吸収する機能を有してもよい。遮光壁部105は可視光を反射する機能を有してもよい。遮光壁部105を設けることによって、観察者5の目と光学フィルタ120との間に側方から環境光が入ることを抑制できる。
【0068】
図2Cは、装着具の他の具体例を示している。図2Cに示すように、装着具104はゴーグルでもよい。ゴーグルは、一対の光学フィルタ120を含んでもよい。ゴーグルは、図2Cに示すように、単一の光学フィルタ120を含んでもよい。図2Cに示された例において、観察者5が装着具104を装着した状態において、観察者5の両目が単一の光学フィルタ120に対面する。図2Cに示された装着具104は、光学フィルタ120及びフレーム106を含む。フレーム106は、光学フィルタ120を保持するフレーム本体106Aと、フレーム本体106Aを観察者5に固定するための保持部106Bと、を含む。保持部106Bは、観察者5の頭部上に保持されるゴムでもよい。保持部106Bの一対の端部が、フレーム本体106Aの各端部に接続している。フレーム本体106Aは遮光壁部105も兼ねている。遮光壁部105であるフレーム本体106Aは、光学フィルタ120に周囲から接続する。観察者が装着具104を装着した状態において、遮光壁部105であるフレーム本体106Aは、光学フィルタ120と観察者5との間に位置する。遮光壁部105であるフレーム本体106Aは光学フィルタ120と観察者5との間に側方から環境光が入ることを抑制できる。
【0069】
図3A及び図3Bに示すように、装着具104はゴーグルでもよい。図3A及び図3Bに示された具体例では、観察者5の顔に沿って湾曲した光学フィルタ120が、直接、観察者5の顔に接触する。光学フィルタ120の両端に、保持部106Bが接続している。一対の保持部106Bは、ゴムや紐でもよい。図3Bに示すように、各保持部106Bは対応する側の耳に掛けられてもよい。図3Bに示された例において、装着具104が装着された状態において、光学フィルタ120の周縁が観察者5の顔に接触する。これにより、光学フィルタ120と観察者5との間に側方から環境光が入ることを抑制できる。
【0070】
図4に示すように、装着具104は、光学フィルタ120と、頭部に装着される装着具本体107と、を含んでいる。装着具本体107はヘルメットでもよい。装着具本体107は帽子でもよい。光学フィルタ120はゴーグルでもよい。光学フィルタ120は装着具本体107に取り付けられている。観察者5が装着具本体107を頭部に被ると、光学フィルタ120が観察者5の目に対面する。図示された例において、図3Bの例と同様に、光学フィルタ120の周縁が観察者5の顔に接触する。これにより、光学フィルタ120と観察者5との間に側方から環境光が入ることを抑制できる。光学フィルタ120は、装着具本体107に着脱可能でもよい。
【0071】
図5に示すように、装着具104は、コンタクトレンズでもよい。コンタクトレンズとしての装着具104は、コンタクトレンズ本体108と、コンタクトレンズ本体108に積層された光学フィルタ120と、を含んでもよい。観察者5がコンタクトレンズを目に装着した状態において、光学フィルタ120は、コンタクトレンズ本体108を介して目に対面する。このとき、コンタクトレンズ本体108が目に接触しているので、光学フィルタ120と観察者5との間に側方から環境光が入ることを抑制できる。
【0072】
図15に示すように、光学フィルタ120は、移動体80の風防81に含まれてもよい。移動体80は、移動可能な装置である。移動体80は、自動車でもよく、列車でもよく、船でもよく、飛行機でもよく、ドローンでもよい。移動体80に、人が搭乗可能でもよいし、人が搭乗不可能でもよい。風防81は、移動体80の窓等の開口部に設置されてもよい。風防81は、風除けとして機能してもよい。風防81は、移動体80の内部を外部から区画する窓部材等の区画部材82でもよい。
【0073】
観察者5は、風防81越しに、移動体80の外部を観察可能でもよい。この例において、観察者5は、例えば明るい環境においても、投影パターン90を明瞭に観察できる。移動体80の他の開口部等から当該移動体80内への環境光の入射が抑制されている場合、観察者5は、投影パターン90をより明瞭に観察できる。図15に示すように、観察者5は、移動体80を操縦してもよい。
【0074】
図6に示すように、投影システム10及び観察補助装置100は、撮像装置101を含んでもよい。撮像装置101は、光学フィルタ120及び撮像素子101aを含んでいる。光学フィルタ120を透過した光が撮像素子101aに入射する。撮像装置101は、被照明領域96を含む投影面95を撮像する。観察者5は、撮像装置101によって撮像された投影面95を観察する。これにより、観察者5は、例えば明るい環境においても、投影パターン90を明瞭に観察できる
【0075】
図6に示すように、投影システム10及び観察補助装置100は、撮像装置101と電気的に接続した表示装置102を含んでもよい。表示装置102は、撮像装置101によって撮像された像を表示する。観察者5は、表示装置102に表示される投影パターン90を明瞭に観察できる。表示装置102は、表示装置102は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、投射型表示装置等の表示装置でもよい。表示装置102は、入力部として機能するタッチパネルセンサを含んでもよい。
【0076】
撮像された投影面95を表示装置102から観察することのみにより作業を行う場合、照明光は可視光域に限定される必要はなく、例えば撮像装置101が赤外線カメラであり、照明光が赤外光であり、かつ光学フィルタの中心波長が赤外領域にあってもよい。
【0077】
図16に示すように、表示装置102は、装着具102B及び表示素子102Aを含んでもよい。観察者5は、装着具102Bを装着可能である。装着具102Bは表示素子102Aを保持している。観察者5が装着具102Bを装着した状態において、表示素子102Aは観察者5の目に対面する。観察者5は、装着具102Bを装着した状態において、表示素子102Aに表示される像を観察できる。このような表示装置102は、装着型の表示装置である。
【0078】
表示装置102は、VR(Virtual Reality)グラス、AR(Argumented Reality)グラス、ヘッドマウントディスプレイでもよい。装着型の表示装置102において、観察者5は、装着具102Bを透過観察可能でもよい。この例において、装着具102Bの全光線透過率は、1%以上でもよく、10%以上でもよく、30%以上でもよく、50%以上でもよく、60%以上でもよく、70%以上でもよく、80%以上でもよい。
【0079】
表示装置102に内蔵された撮像装置やセンサーからの像を観察することのみにより作業を行う場合、照明光は可視光域に限定される必要はなく、例えば表示装置102に内蔵された撮像装置が赤外線カメラや赤外線センサーであった場合、照明光が赤外光であり、かつ光学フィルタの中心波長が赤外領域にあってもよい。
【0080】
装着具102Bの全光線透過率の上限は特に設定されない。装着具102Bの全光線透過率は、例えば、100%以下でもよく、100%未満でもよい。
【0081】
全光線透過率(%)の測定にはD65光源を用いる。全光線透過率(%)の測定に用いられる光の波長域は380nm以上780nm以下とする。表示素子102Aの全光線透過率を測定する前、光源を15分間点灯し、光源の出力を安定させる。全光線透過率を測定する際のサンプルへの入射角は0°とする。全光線透過率を測定する際の測定環境は、温度23℃±2℃、相対湿度50%±5%とする。サンプルは、測定開始前に、測定環境に16時間配置する。全光線透過率を測定する際のその他の測定条件は、JIS K7361-1:1997に従う。
【0082】
図7Aは、光学フィルタ120の可視光域での透過スペクトルの一例を示している。光学フィルタ120は、照明装置30から放出される照明光のみを選択的に透過させてもよい。本実施の形態において、照明光の波長域における光学フィルタ120の平均透過率は、照明光の波長域以外の可視光波長域における光学フィルタ120の平均透過率よりも高くなっている。これにより、投影面95に照射される太陽光等の環境光の光量が多くても、観察者5は、光学フィルタ120を介して投影面95上に投影パターン90を明瞭に観察できる。この光学フィルタ120の機能を期待する上で、照明装置30から放出される照明光の波長域は十分に狭くしてもよい。この点から、照明光はコヒーレント光でもよい。照明光は、特定波長のレーザー光でもよい。
【0083】
照明光の波長域における光学フィルタ120の平均透過率に下限を設定してもよい。この平均透過率に下限を設定することにより、照明光が光学フィルタ120を高い透過率で透過できる。観察者5は、光学フィルタ120を介して投影パターン90を明瞭に観察できる。照明光の波長域における光学フィルタ120の平均透過率は、50%以上でもよく、70%以上でもよく、80%以上でもよい。
【0084】
照明光の波長域における光学フィルタ120の平均透過率の上限は特に設定されない。照明光の波長域における光学フィルタ120の平均透過率は100%以下でもよく、100%未満でもよい。照明光の波長域における光学フィルタ120の平均透過率は、50%以上100%以下でもよい。
【0085】
同様に、光学フィルタ120の可視光域における最大の分光透過率に下限を設定してもよい。最大分光透過率に下限を設定することにより、照明光が光学フィルタ120を高い透過率で透過できる。観察者5は、光学フィルタ120を介して投影パターン90を明瞭に観察できる。光学フィルタ120の可視光域における最大分光透過率は、50%以上でもよく、70%以上でもよく、80%以上でもよい。なお、照明光が単一波長の場合、照明光の波長域における光学フィルタ120の平均透過率(%)と、光学フィルタ120の可視光域における最大分光透過率(%)は、同一でもよい。
【0086】
光学フィルタ120の可視光域における最大分光透過率の上限は特に設定されない。光学フィルタ120の可視光域における最大分光透過率は100%以下でもよく、100%未満でもよい。光学フィルタ120の可視光域における最大分光透過率は、50%以上100%以下でもよい。
【0087】
光学フィルタの分光透過率の半値全幅FWHMは、分光透過率の波長分布において、最大透過率の半分以上の透過率が得られる波長域の幅(nm)を意味する。光学フィルタの分光透過率の半値全幅FWHMに上限を設定してもよい。半値全幅FWHMに上限を設定することにより、特定波長域の照明光が光学フィルタ120を集中的に透過可能となる。照明光の波長域が狭い場合、例えば照明光がコヒーレント光である場合や、照明光がレーザー光である場合、照明光が光学フィルタ120を集中的に透過できる。同時に、太陽光等の環境光が光学フィルタ120を透過することを抑制できる。したがって、光学フィルタ120を介して投影パターン90を観察した際、環境光を弱めて投影パターン90を強調できる。すなわち、投影パターン90のコントラストを改善できる。これにより、投影パターン90を明瞭に観察できる。この観点から、光学フィルタの分光透過率の半値全幅FWHMは、15nm以下でもよく、3nm以下でもよく、1nm以下でもよい。
【0088】
光学フィルタの分光透過率の半値全幅FWHMの下限は特に設定されない。光学フィルタの分光透過率の半値全幅FWHMは、0nmより大きくてもよい。光学フィルタの分光透過率の半値全幅FWHMは、0nm以上15nm以下でもよい。
【0089】
照明光の波長域以外の可視光波長域における光学フィルタ120の平均透過率に上限を設定してもよい。この平均透過率に上限を設定することにより、太陽光等の環境光が光学フィルタ120を透過することを抑制できる。これにより、投影パターン90のコントラストが改善されて、投影パターン90を明瞭に観察できる。照明光の波長域以外の可視光波長域における光学フィルタ120の平均透過率は、1%以下でもよく、0.1%以下でもよく、0.01%以下でもよい。
【0090】
照明光の波長域以外の可視光波長域における光学フィルタ120の平均透過率に下限を設定してもよい。この平均透過率に下限を設定することにより、夜間等の環境光の光量が少ない場合でも、光学フィルタ120を介して投影パターン90の周囲環境に対する相対位置を把握できる。これにより、投影面95が明るい場合及び投影面95が暗い場合の間で光学フィルタ120の取り扱いを同一としながら、両方の場合に光学フィルタ120を介して投影パターン90を明瞭に観察できる。照明光の波長域以外の可視光波長域における光学フィルタ120の平均透過率は、0.001%以上でもよく、0.005%以上でもよく、0.01%以上でもよい。
【0091】
照明光の波長域以外の可視光波長域における光学フィルタ120の平均透過率は、0.001%以上1%以下でもよい。
【0092】
照明光のピーク波長を中心とした30nmの波長域以外の可視光波長域における光学フィルタ120の平均透過率に上限を設けてもよい。この平均透過率に上限を設定することにより、照明光の波長域が狭い場合、例えば照明光がコヒーレント光である場合や照明光がレーザー光である場合に、太陽光等の環境光が光学フィルタ120を透過することを抑制しながら、照明光が光学フィルタ120を集中的に透過できる。これにより、特定波長域の照明光が光学フィルタ120を集中的に透過可能となる。照明光のピーク波長を中心とした30nmの波長域以外の可視光波長域における光学フィルタ120の平均透過率は、1%以下でもよく、0.1%以下でもよく、0.01%以下でもよい。
【0093】
照明光のピーク波長を中心とした30nmの波長域以外の可視光波長域における光学フィルタ120の平均透過率に下限を設けてもよい。この平均透過率に下限を設定することにより、夜間等の環境光の光量が少ない場合でも、光学フィルタ120を介して投影パターン90の周囲環境に対する相対位置を把握できる。これにより、投影面95が明るい場合及び投影面95が暗い場合の間で光学フィルタ120の取り扱いを同一としながら、両方の場合に光学フィルタ120を介して投影パターン90を明瞭に観察できる。照明光のピーク波長を中心とした30nmの波長域以外の可視光波長域における光学フィルタ120の平均透過率は、0.001%以上でもよく、0.005%以上でもよく、0.01%以上でもよい。
【0094】
照明光のピーク波長を中心とした30nmの波長域以外の可視光波長域における光学フィルタ120の平均透過率は、0.001%以上1%以下でもよい。
【0095】
上述したように、透過率、半値全幅、照度等の数値範囲に関して複数の上限値の候補及び複数の下限値の候補が挙げられている場合、その数値範囲は、任意の1つの上限値の候補と任意の1つの下限値の候補とを組み合わせることによって構成されてもよい。
【0096】
光学フィルタ120は、波長選択透過性を有していれば、特に限定されない。光学フィルタ120は誘電体多層膜122を含んでもよい。透過特性の設計自由度が高い点において、誘電体多層膜122は優れる。
【0097】
図7Bは、光学フィルタ120の層構成の一例を示す断面図である。図7Bに示された光学フィルタ120は、第1保護層及び第2保護層と、第1保護層121A及び第2保護層121Bの間に位置する誘電体多層膜122を含む。
【0098】
誘電体多層膜122は、交互に積層された低屈折率層122a及び高屈折率層122bを含んでもよい。低屈折率層122a及び高屈折率層122bは、無機化合物を含んだ無機層でもよい。低屈折率層122a及び高屈折率層122bは、樹脂層でもよい。
【0099】
無機層を含む誘電体多層膜は、例えば、CVD法、スパッタリング法、真空蒸着法、または湿式塗工法等により、高屈折率無機層と低屈折率無機層とを交互に積層することによって得られる。無機化合物の多層膜の厚みは0.5μm以上10μm以下でもよい。高屈折率無機層に含まれる無機化合物の屈折率は1.7以上2.5以下でもよい。高屈折率無機層に含まれる無機化合物として、酸化チタン、酸化ジルコニウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化インジウムを主成分とし、酸化チタン、酸化スズ、酸化セリウム等を少量含有させたもの等が例示される。低屈折率無機層に含まれる無機化合物の屈折率は1.2以上1.6以下でもよい。低屈折率無機層に含まれる無機化合物として、シリカ、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、六フッ化アルミニウムナトリウム等が例示される。
【0100】
樹脂層を含む誘電体多層膜122は、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂の層を多数含んでもよい。樹脂層には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、熱安定剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、屈折率調整のためのドープ剤等が添加されてもよい。屈折率が高い高屈折率樹脂層と屈折率が低い低屈折率樹脂層との面内平均屈折率差は、0.03以上でもよく、0.05以上でもよく、0.1以上でもよい。
【0101】
高屈折率樹脂層および低屈折率樹脂層の積層数は、光学フィルタ120に要求される反射特性や透過特性に応じて調整される。例えば、高屈折率樹脂層と低屈折率樹脂層とは交互にそれぞれ30層以上積層することができ、それぞれ200層以上積層してもよい。また、高屈折率樹脂層および低屈折率樹脂層の総積層数は、例えば600層以上でもよい。
【0102】
誘電体多層膜を構成する樹脂の多層膜の製造方法として、共押出法等が例示される。具体的には、特開2008-200861号公報に記載の積層フィルムの製造方法を参照できる。
【0103】
第1保護層121A及び第2保護層121Bは、ポリエチレンテレフタレート又はポリエチレンナフタレートを含んでもよい。第1保護層及び第2保護層の厚みは、3μm以上でもよいし、5μm以上でもよい。
【0104】
誘電体多層膜122は、特定波長域の光を透過し、特定波長域以外の波長域の光を反射する。光学フィルタ120を透過して観察者5の目と光学フィルタ120との間の空間へ入射した環境光は、観察者の目に向かって進む。一方、観察者5の目と光学フィルタ120との間の空間へ側方から入射した環境光は、光学フィルタ120の観察者5に対面する面に入射して高反射率で反射され得る。この反射によって、光学フィルタ120の観察者5に対面する面が鏡状となり、投影パターン90の視認性が低下する。上述したように、光学フィルタ120が観察者5の顔に接触することによって、観察者5の目と光学フィルタ120との間の空間への、太陽光等の環境光の入射を抑制してもよい。遮光壁部105を用いることによって、観察者5の目と光学フィルタ120との間の空間へ側方から太陽光等の環境光が入射することを抑制してもよい。可視光波長域における遮光壁部105の平均透過率は、0%でもよい。
【0105】
次に、投影システム10及び観察補助装置100を用いる際の作用について説明する。
【0106】
図1に示すように、照明装置30は照明光を放出する。照明光は、投影面95の被照明領域96に照射される。観察者5は、投影面95上に投影パターン90を観察できる。投影パターン90は、被照明領域96と同一の形状を有する。投影パターン90は、種々の情報を表示してもよい。
【0107】
例えば、投影パターン90は、作業を実施する観察者5に作業対象領域を示してもよい。観察者5である作業者は、例えば道路、歩道、駐車場における白色の線や橙色の線を引く際に、投影パターン90を利用できる。この例に限られず、投影パターン90は、矢印等の方向を表示してもよい。この例によれば、投影パターン90は、移動経路や避難経路を表示してしてもよい。また、投影パターン90は、文字や数字等であってもよい。この例によれば、観察者5に必要な情報を直接的に示すことができる。さらに、投影パターン90は、広告であってもよい。
【0108】
ところで、照明装置30Xが使用される環境の環境光によっては、投影パターン90Xのコントラストが低下する。このとき、観察者5Xは、投影面95X上の投影パターン90Xを明瞭に観察できない。図25に示すように、太陽光等の環境光の光量が多い場合、投影面95X上の照度(lx)が高くなる。この投影面95X上に投影された投影パターン90Xのコントラストは著しく低下する。観察者5Xは、投影パターン90Xの形状を正確に観察できない。さらには、観察者5Xは、投影面95X上における投影パターン90Xの存在にすら気付けない。
【0109】
本実施の形態において、投影システム10は、照明装置30に加えて、観察補助装置100を含んでいる。観察補助装置100は、光学フィルタ120を含んでいる。照明装置30から放出される照明光の波長域における光学フィルタ120の平均透過率は、照明光の波長域以外の可視光波長域における光学フィルタ120の平均透過率よりも高い。この光学フィルタ120を介して投影パターン90を観察することにより、投影パターン90の明るさを維持しながら、環境光の明るさを抑制できる。これにより、投影パターン90のコントラストを改善して、投影パターン90を明瞭に観察できる。
【0110】
図2図5に示された例において、観察補助装置100が装着具104を含む。観察者5が装着具104を装着した状態において、光学フィルタ120が観察者5の目に対面する。すなわち、観察者5は、装着具104を装着することにより、光学フィルタ120を介して投影パターン90及び投影面95を観察できる。光学フィルタ120を手で保持しなくてよいので、観察者5は、投影パターン90を明瞭に観察しながら、両手を自由に使用できる。例えば、観察者5は、投影パターン90を明瞭に観察しながら、安定して作業等を行える。
【0111】
図2A図2Cに示された装着具104は、眼鏡、サングラス又はゴーグルでもよい。図示された装着具104は、光学フィルタ120の周囲に位置する遮光壁部105を含む。観察者5が装着具104を装着した状態において、遮光壁部105は光学フィルタ120と観察者5との間に位置する。遮光壁部105が環境光を遮光することにより、光学フィルタ120と観察者5との間の空間に側方から環境光が入ることを抑制できる。したがって、反射型の光学フィルタ120を用いた際に、光学フィルタ120での環境光の反射に起因して投影パターン90の視認性が低下することを抑制できる。
【0112】
図5に示された装着具104は、コンタクトレンズである。この例においても、観察者5は、光学フィルタ120を手で保持しなくてもよい。したがって、観察者5は、投影パターン90を観察しながら、両手を自由に使用できる。また、光学フィルタ120と観察者5の目の間にコンタクトレンズ本体108が位置している。したがって、光学フィルタ120の観察者5の目に対面する面に環境光が入射して反射することを抑制できる。
【0113】
図15に示された例において、光学フィルタ120は、移動体80の風防81を構成している。この例においても、観察者5は、光学フィルタ120を手で保持しなくてもよい。図15に示された例において、観察者5は、移動体80に搭乗して、移動体80を操縦している。
【0114】
図6に示された例において、観察補助装置100は撮像装置101を含む。撮像装置101は、光学フィルタ120を介して投影パターン90を撮像する。撮像装置101は、光学フィルタ120によって環境光を大幅に削減して、投影パターン90及びその周囲を撮像する。したがって、撮像装置101を用いることによって、投影パターン90を明瞭に観察できる。図6に示された例において、観察補助装置100は、撮像装置101と電気的に接続した表示装置102を含む。表示装置102は、撮像装置101によって撮像された像、すなわち、投影パターン90を表示する。表示装置102にはコントラストを改善された投影パターン90が表示される。観察者5は、表示装置102によって表示される投影パターン90を明瞭に観察できる。
【0115】
上述したように、照明装置30から放出される照明光の波長域における光学フィルタ120の平均透過率は、50%以上でもよく、70%以上でもよく、80%以上でもよい。光学フィルタ120の可視光域における最大透過率は、50%以上でもよく、70%以上でもよく、80%以上でもよい。照明装置30から放出される照明光の波長域は、光学フィルタ120での透過率が最大となる波長を含んでもよい。これらの例によれば、光学フィルタ120を介して投影パターン90を観察した際に、投影パターン90の明るさを維持できる。これにより、投影パターン90を明瞭に観察できる。
【0116】
照明装置30から放出される照明光の波長域以外の可視光波長域における光学フィルタ120の平均透過率は、1%以下でもよく、0.1%以下でもよく、0.01%以下でもよい。照明装置30から放出される照明光のピーク波長を中心とした30nmの波長域以外の可視光波長域における光学フィルタ120の平均透過率は、1%以下でもよく、0.1%以下でもよく、0.01%以下でもよい。これらの例によれば、太陽光等の環境光が光学フィルタ120を透過することを抑制できる。これにより、投影パターン90のコントラストが改善されて、投影パターン90を明瞭に観察できる。
【0117】
光学フィルタの分光透過率の半値全幅FWHMは、15nm以下でもよく、3nm以下でもよく、1nm以下でもよい。この例によれば、光学フィルタ120を介して観察した際、投影パターン90の明るさを維持しながら、環境光を削減できる。これにより、投影パターン90のコントラストが改善され、投影パターン90を明瞭に観察できる。光学フィルタの分光透過率の半値全幅FWHMは、照明装置30から放出される照明光の波長域の全域を含んでもよい。
【0118】
照明装置30から放出される照明光の波長域以外の可視光波長域における光学フィルタ120の平均透過率は、0.001%以上でもよく、0.005%以上でもよく、0.01%以上でもよい。照明装置30から放出される照明光のピーク波長を中心とした30nmの波長域以外の可視光波長域における光学フィルタ120の平均透過率は、0.001%以上でもよく、0.005%以上でもよく、0.01%以上でもよい。これらの例によれば、夜間等の環境光の光量が少ない場合でも、光学フィルタ120を介して投影パターン90の周囲環境に対する相対位置を把握できる。例えば、投影面95が明るい場合及び投影面95が暗い場合の間で光学フィルタ120の取り扱いを同一としながら、両方の場合に投影パターン90を明瞭に観察できる。
【0119】
投影面95に投影された投影パターン90の照度の最大値に下限を設定してもよい。ここで、「投影面95に投影された投影パターン90の照度」とは、照明装置30から放出された照明光のみに起因する投影面95上での照度のことである。したがって、投影パターン90が投影された状態で投影面95の或る位置で測定される照度と、投影パターン90を投影していない状態で投影面95の同一位置で測定される照度との差が、「投影面95に投影された投影パターン90の照度」である。投影パターン90の照度の最大値に下限を設定することにより、投影パターン90を明るく明瞭に観察できる。投影面95に投影された投影パターン90の照度の最大値は、1lx以上でもよく、0.1lx以上よく、0.01lx以上でもよい。
【0120】
投影面95に投影された投影パターン90の照度の最大値に上限を設定してもよい。投影パターン90の照度を高くし過ぎると、投影パターン90の視認性は効果的に改善されなくなり、エネルギー効率が悪化する。この点から、投影面95に投影された投影パターン90の照度の最大値は、10000lx以下でもよく、1000lx以下でもよく、100lx以下でもよく、10lx以下でもよい。
【0121】
投影面95に投影された投影パターン90の照度の最大値を、照度LX(lx)とする。照度LXが得られる投影面95上の位置における環境光に起因した照度を、照度LY(lx)とする。照度LYは、投影パターン90を投影していない状態において、投影面95上で測定される。照明装置30から放出される照明光の波長域における光学フィルタ120の平均透過率を、透過率TX(%)とする。照明装置30から放出される照明光のピーク波長を中心とした30nmの波長域以外の可視光波長域における光学フィルタ120の平均透過率を、透過率TY(%)とする。このとき、照度LX、照度LY、透過率TX、及び透過率TYが、次の関係を満たしてもよい。
0.001≦ (LX・TX)/(LY・TY)
この例によれば、投影パターン90のコントラストが改善され、投影パターン90を明瞭に観察できる。投影パターン90の視認性を改善する観点から、「(LX・TX)/(LY・TY)」は、0.01以上でもよく、0.1以上でもよい。
【0122】
照度LX、照度LY、透過率TX、及び透過率TYが、次の関係を満たしてもよい。
(LX・TX)/(LY・TY) ≦ 10
この例によれば、投影パターン90の周囲が暗くなり過ぎることを抑制できる。すなわち、環境光の光量が少ない場合でも、光学フィルタ120を介して投影パターン90の周囲環境に対する相対位置を把握できる。例えば、投影面95が明るい場合及び投影面95が暗い場合の間で光学フィルタ120の取り扱いを同一としながら、両方の場合に投影パターン90を明瞭に観察できる。
【0123】
照度は、JIS(JIS C 1609-1:2006)に準拠して、コニカミノルタ製の分光放射照度計CL-500Aを用いて測定された値とする。測定波長は、380nm以上780nm以下とする。測定波長間隔は、1nmとする。投影面95に照度計を載置して測定を行う。
【0124】
次に、照明装置30の具体的な構成について説明する。
【0125】
図8に示すように、照明装置30は、光源40、整形光学系45及び回折光学素子50を含んでもよい。光源40は、照明光を放出する。光源40は、特に限定されない。光源40は、波長及び位相が一定であるコヒーレント光を放出してもよい。光源40から放出されるコヒーレント光は直進性に優れる。したがって、光源40は、遠方を照明する照明装置30に好適である。光源40として、種々の型式の光源を用いることができる。光源40として、レーザー光を発振するレーザー光源を用いてもよい。レーザー光源として、半導体レーザー光源を例示できる。図8に示された例において、光源40は、単一のコヒーレント光源を含んでいる。したがって、図8に示された例では、光源40から発振されるコヒーレント光の波長域に対応した色のコヒーレント光で被照明領域96を照明する。以下では、光源40がコヒーレント光を放出する例について説明する。
【0126】
整形光学系45は、光源40から放出した光を整形する。例えば、整形光学系45は、照明光の光軸に直交する断面での形状や、照明光コヒーレント光の立体的な形状を整形する。整形光学系45は、コヒーレント光の光軸に直交する断面でのコヒーレント光の断面積を拡大させてもよい。
【0127】
図8に示された例において、整形光学系45は、光源40から放出した光を拡幅した平行光束に整形する。すなわち、整形光学系45は、コリメート光学系として機能する。図8に示された例において、整形光学系45は、光路に沿って配置された第1レンズ46及び第2レンズ47を有している。第1レンズ46は、光源40から放出した光を発散光束に整形する。第2レンズ47は、第1レンズ46で生成された発散光束を、平行光束に整形する。この例において、第2レンズ47は、コリメートレンズとして機能する。
【0128】
回折光学素子50は、光源40からのコヒーレント光の進行方向を変化させる。回折光学素子50で回折されたコヒーレント光が、投影面95上の被照明領域96に照射される。回折光学素子50は、光源40からのコヒーレント光を回折して、投影面95上の被照明領域96に向ける。この結果、投影面95には、回折光学素子50での回折光が照射される。投影面95は、回折光学素子50での回折パターンに応じた投影パターン90を投影される。
【0129】
回折光学素子50は、ホログラム素子であってもよい。回折光学素子50としてホログラム素子を用いることにより、回折光学素子50の回折特性を設計しやすくなる。投影面95上における予め定めた位置、輪郭形状、大きさ、及び、向きとなっている所望領域の全域のみに光を照射し得るホログラム素子を比較的容易に設計できる。投影面95上におけるコヒーレント光を照射される領域が、被照明領域96となる。
【0130】
回折光学素子50を設計する際、被照明領域96は、回折光学素子50に対して予め定めた位置に、予め定めた輪郭形状、大きさ及び向きで、実空間に設定される。投影面95上における被照明領域96の位置、輪郭形状、大きさ及び向きは、回折光学素子50の回折特性に依存する。回折光学素子50の回折特性を調整することで、投影面95上における被照明領域96の位置、輪郭形状、大きさ及び向きを任意に調整できる。したがって、回折光学素子50を設計する際には、まず投影面95上の被照明領域96の位置、輪郭形状、大きさ及び向きを決定する。次に、決定した被照明領域96の全域に光を照射できるように、回折光学素子50の回折特性を調整すればよい。
【0131】
回折光学素子50は、計算機合成ホログラム(CGH:Computer Generated Hologram)として作製され得る。計算機合成ホログラムは、任意の回折特性を持つ構造をコンピュータ上で計算することによって作製される。したがって、計算機合成ホログラムを回折光学素子50として採用することで、光源や光学系を用いた物体光及び参照光の生成や、露光によるホログラム記録材料への干渉縞の記録を不要にできる。照明装置30は、当該照明装置30に対して予め定めた位置に、予め定めた輪郭形状、大きさ及び向きの被照明領域96に照明光を照射することを想定されている。被照明領域96に関する情報をパラメータとしてコンピュータに入力することで、被照明領域96に回折光を投影可能な回折特性を持つ構造、例えば凹凸面を、コンピュータでの演算によって特定できる。特定された構造を、例えば樹脂賦型により形成することによって、計算機合成ホログラムとしての回折光学素子50を、簡易な手順にて低コストで作製できる。
【0132】
回折光学素子50の設計には、例えば反復フーリエ変換法を用いてもよい。反復フーリエ変換法を用いた場合、被照明領域96が回折光学素子50から遠方にあることを前提として処理し、投影面95上に投影される投影パターン90をフラウンホーファ回折像としてもよい。したがって、投影面95は、回折光学素子50の回折面と非平行であってもよい。
【0133】
図9に示すように、回折光学素子50は、複数の要素回折光学素子55を含んでもよい。個々の要素回折光学素子55は、例えばホログラム素子であり、上述した回折光学素子50と同様に構成され得る。図9に示された例において、複数の要素回折光学素子55で回折されたコヒーレント光は、互いに同一の被照明領域96に照射されるようになっている。つまり、各要素回折光学素子55で回折された光は、投影面95上における被照明領域96の全域に照射される。このような、回折光学素子50によれば、被照明領域96内の各位置に向かう光を、回折光学素子50に含まれる複数の要素回折光学素子55から分散して射出できる。これにより、回折光学素子50上の各位置が明るくなり過ぎることが抑制され、レーザー安全性を向上できる。
【0134】
各要素回折光学素子55は、互いに同一の回折特性を有するように構成されてもよい。ただし、より高精度な照射を実現する上で、各要素回折光学素子55が、当該要素回折光学素子55の回折光学素子50内における配置位置に応じて、別個に設計された回折特性を付与されてもよい。この例によれば、各要素回折光学素子55は、他の要素回折光学素子55との配置の相違に応じて回折特性を調整されることにより、投影面95上における被照明領域96の全域のみに高精度に光の回折光を向けることができる。
【0135】
ところで、コヒーレント光を放出する光源40及びコヒーレント光を回折する回折光学素子50を有した照明装置30によれば、投影面95上において大面積の被照明領域96や照明装置30から遠く離れた位置まで延びる被照明領域96を照明できる。すなわち、細長い投影パターン90を投影面95に投影できる。このとき、被照明領域96内の各位置へのコヒーレント光の入射角度αは大きくばらつく。照明装置30から遠く離間した被照明領域96への入射角度αは、非常に大きくなり、例えば90°近くとなる。回折光学素子50の回折面は、投影面95及び被照明領域96に対して大きな角度をなすようになる。ここで、被照明領域96への入射角度αとは、照明光の進行方向が被照明領域96の法線方向NDに対してなす角度のことである。図示された例において、法線方向NDは、第1方向D1及び第2方向D2の両方に直交する第3方向D3と平行である。
【0136】
この照明装置30において、回折光学素子50がコヒーレント光の光路を調整する。回折光学素子50の光路調整機能は高精度である。したがって、所望の形状の被照明領域96に向けて、コヒーレント光の光路を回折光学素子50で調節できる。このため、照明装置30との相対位置に強い拘束を受けることなく、例えば照明装置30から遠方に離間した位置や、コヒーレント光の入射角度αが大きくなってしまう位置等にも、被照明領域96を設定できる。すなわち、投影パターン90及び投影面95の設定の自由度を大幅に向上できる。結果として、被照明領域96に高精度にコヒーレント光を照射できる。投影パターン90を精確に投影面95へ投影できる。
【0137】
一例として計算機合成ホログラムからなる回折光学素子50によれば、一定の方向から入射するコヒーレント光の進行方向を、角度空間において、±0.01°の精度で調整できる。このような回折光学素子50を用いることにより、回折光学素子50から1m以上120m以下の距離にある被照明領域96や、コヒーレント光の被照明領域96への入射角度αが最小でも30°以上となり最大で89.99°以下となる被照明領域96を高精度に照明できる。したがって、照明装置30は、投影面95上に位置する被照明領域96に対して、高精度にコヒーレント光を照射できる。これにより、投影パターン90のエッジを明確にでき、操作者は遠くに位置する投影パターン90を観察できる。
【0138】
図10は、照明装置30の具体的な構成例を示している。図10に示された照明装置30は、可搬性を有している。すなわち、図10に示された照明装置30は、特別な手段を用いることなく操作者が持ち運び可能となっている。照明装置30はケーシング70を有している。図10に示された照明装置30では、光源40、整形光学系45及び回折光学素子50は、ケーシング70に固定されている。通常の使用において、光源40、整形光学系45及び回折光学素子50は、ケーシング70から取り外されることを意図されていない。光源40、整形光学系45及び回折光学素子50は、ケーシング70から取り外し不可能となっている。これにより、光源40、整形光学系45及び回折光学素子50の相対位置が維持される。これにより、照明装置30に対して所定の相対位置関係にある投影面95上の位置に投影パターン90を高精度に安定して投影できる。また、光源40、整形光学系45及び回折光学素子50が所定の位置からずれてしまうことを抑制し、レーザー安全性を向上できる。
【0139】
なお、図10に示された例において、整形光学系45は、第1レンズ46、第2レンズ47及び第3レンズ48を含んでいる。ケーシング70は、光源40及び整形光学系45を保持する筒状部71と、筒状部71に固定された蓋部72と、を含んでいる。筒状部71は、一方を閉鎖された筒状である。筒状部71の閉鎖された一方の端部に光源40が固定されている。筒状部71の内寸法は、段差部71aを介して変化している。光源40から射出されたコヒーレント光の光路に沿った上流側から下流側に向けて、内径は大きくなっている。二つの段差部71aの各々に、第1レンズ46及び第2レンズ47が取り付けられている。筒状部71内にレンズ間距離を高精度に制御できる間隔環73が設けられている。第1レンズ46及び第2レンズ47の間に間隔環73が配置されている。第2レンズ47及び第3レンズ48の間に間隔環73が配置されている。また、蓋部72及び第3レンズ48の間に間隔環73が配置されている。間隔環73は、照明装置30に加え等得る振動や衝撃による各レンズの相対位置ずれを抑制する。間隔環73は、一例として、環状または筒状の部材としてもよい。間隔環73として、アルミニウム等の金属を用いてもよいし、樹脂を用いてもよい。樹脂は熱膨張率を低減するためにグラスファイバー等の無機材料を混入してもよい。間隔環73によれば、照明装置30に加えられる振動や衝撃に起因してコリメート光の平行度がずれることを抑制できる。すなわち、投影パターン90が投影面95上でボケることを抑制できる。これにより、投影パターン90の視認性を高く保つことが可能となる。
【0140】
光源40、整形光学系45および回折光学素子50等の相対位置を一定に維持するため、接着材を用いた固定により、はめ込みでの固定と併用して接着材による固定により、光源40、整形光学系45および回折光学素子50をケーシング70に固定してもよい。
【0141】
光源40、整形光学系45および回折光学素子50等の相対位置を微修正するため、例えば、スペーサを用いてもよい。スペーサとして、金属製の薄い板状材を用いてもよい。スペーサは、間隔環73や接着材と併用してもよい。
【0142】
また、光源40、整形光学系45および回折光学素子50等の構成要素を、配置の微調節が可能な位置調節ホルダによって保持してもよい。位置調節ホルダは、ネジ等の調節部を操作することによって構成要素の位置を微調節可能であってもよい。位置調節ホルダを介して、構成要素がケーシング70に固定されてもよい。位置調節ホルダを用いる場合、構成要素の位置の調節終了後に、ネジ等の調節部を接着材等によって固定してもよい。また、位置調節ホルダを、上述した間隔環73や、微調節された構成要素の相対位置を維持するためのその他部材と併用してもよい。
【0143】
ケーシング70は分解不可能として、光源40、整形光学系45および回折光学素子50等の構成要素の相対位置が維持されてもよい。例えば、照明装置30の製造者によって位置決めされた構成要素の相対位置が維持されてもよい。例えば、ケーシング70の螺子止め部やはめ込み部に接着材を付与して、ケーシング70を分解不可能にしてもよい。
【0144】
図10に示された例において、照明装置30は、電池74、回路75及びスイッチ76を有している。電池74は、一次電池でもよいし、充放電可能な二次電池でもよい。回路75は、電池74及びスイッチ76と電気的に接続している。スイッチ76が操作される、回路75は、電池74から光源40への給電と給電停止とを切り換える。
【0145】
照明装置30は、外部電源から電力を供給されるようにしてもよい。例えば、ケーシングに外部電源と電気的に接続するためのコネクタが設けられてもよい。この例において、照明装置30は、一次電池や二次電池を含んでもよいし、一次電池や二次電池を含まなくてもよい。一次電池や二次電池を含まない照明装置30は、軽量化されることによって、振動や衝撃に対する耐性に優れる。
【0146】
照明装置30及びケーシング70は防水性を有してもよい。照明装置30に防水性を付与するため、ケーシング70の継ぎ目部分やはめ込み部分に、ゴムやパッキン等の防水部材が設けられてもよい。
【0147】
照明装置30は、温度調節機構を有してもよい。温度調節機構は、光源40や回路75を所定範囲内の温度に維持してもよい。温度調節機構は、光源40や回路75を加熱または冷却してもよい。温度調節機構は、ケーシング70内に設置してもよい。温度調節機構として、ファン、ヒーター、クーラーが例示される。温度調節機構として、電熱線やペルチエ素子等を利用してもよい。
【0148】
図11に示すように、照明装置30が走査装置60を含んでもよい。図11に示された照明装置30は複数の回折光学素子50A~50Cを含んでいる。走査装置60は、光源40から放出されたコヒーレント光の光路を調節して、回折光学素子50へのコヒーレント光の供給の有無や、複数の回折光学素子50A~50Cへのコヒーレント光の振り分けを制御する。走査装置60は、屈折、反射、回折等を利用して光路を変化させ得る種々の部品等を用いて構成され得る。光路を変化させ得る種々の部品として、レンズ、プリズム、ミラー、回折光学素子等が例示される。
【0149】
走査装置60は、光源40からのコヒーレント光の光路を経時的に変化させる。この結果、複数の回折光学素子50A~50C上でコヒーレント光の入射位置が移動する。すなわち、光源40からのコヒーレント光が入射する回折光学素子50が、複数の回折光学素子50A~50Cの間で変化する。図示された走査装置60は、一つの軸線RAを中心として回動可能な反射面を有している。このような走査装置60として、ガルバノミラーを用いてもよい。
【0150】
被照明領域96を、第1方向D1における位置に応じて、複数の部分領域93A,93B,93Cに区分けしてもよい。複数の回折光学素子50A~50Cが、互いに異なる部分領域93A,93B,93Cを照明してもよい。この例によれば、一つの回折光学素子50で回折される光の回折角度範囲を狭くできる。これにより、各回折光学素子50での回折効率が向上する。なお、走査装置60が人間の視覚の分解能を超える速さで動作することによって、人間には、被照明領域96に含まれる全ての部分領域93A,93B,93Cが同時に照明され続けているように観察される。
【0151】
図12に示された例において、回折光学素子50は、第1~第12回折光学素子50A~50Lを含んでいる。例えば、投影面95上の被照明領域96が第1~第12部分領域93A~93Lに区分けされている。第1~第12回折光学素子50A~50Lで回折されたコヒーレント光は、それぞれ、別個の第1~第12部分領域93A~93Lに照射されるようになる。走査装置60は、各回折光学素子50A~50Lへ光源40からの光を向ける。照明装置30は、走査装置60の動作に応じて、各回折光学素子50A~50Lへの光の照射の有無を制御できる。例えば、光源40が、走査装置60の動作に応じて光の放出および放出停止を切り替える。他の例として、走査装置60の動作に応じて、光を遮光する遮光部材が、光源40からの光の光路に進入および光路から後退する。各回折光学素子50A~50Lへの光の照射の有無を制御することにより、任意の回折光学素子50A~50Lのみにコヒーレント光を投射することができる。これにより、任意の第1~第12部分領域93A~93Lのみを照明することができ、被照明領域96内を所望の形状で照明することが可能となる。
【0152】
なお、図11及び図12に示した照明装置30に含まれる回折光学素子50が、複数の要素回折光学素子55に分割されていてもよい。
【0153】
以上に説明してきた一実施の形態において、投影システム10は、照明装置30及び光学フィルタ120を含む。照明装置30は、照明光を放出する。照明装置30は、投影パターン90を投影面95上に投影する。照明装置30から放出された照明光の波長域における光学フィルタ120の平均透過率は、照明光の波長域以外の可視光波長域における光学フィルタ120の平均透過率よりも高い。本実施の形態によれば、光学フィルタ120を介して投影パターン90を観察することにより、投影面95上における投影パターン90のコトンラストが改善される。これにより、投影パターン90を明瞭に観察できる。
【0154】
以上に説明してきた一実施の形態において、観察補助装置100は、照明装置30から放出された照明光を用いて投影面95に投影される投影パターン90の観察を補助する。観察補助装置100は光学フィルタ120を含む。照明装置30から放出された照明光の波長域における光学フィルタ120の平均透過率は、照明光の波長域以外の可視光波長域における光学フィルタ120の平均透過率よりも高い。照明光の波長域は、照明光のピーク波長より5nm低い波長以上であって、ピーク波長より5nm高い波長以下の波長域である。照明光のピーク波長は、照明光の最大放射束が得られる波長である。本実施の形態によれば、光学フィルタ120を介して投影パターン90を観察することにより、投影面95上における投影パターン90のコトンラストが改善される。したがって、観察補助装置100のよって投影パターン90の観察が支援され、投影パターン90を明瞭に観察できる。
【0155】
具体例を参照しながら一実施の形態を説明してきたが、上述の具体例が一実施の形態を限定しない。上述した一実施の形態は、その他の様々な具体例で実施でき、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、追加等を行うことができる。
【0156】
以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した具体例と同様に構成され得る部分について、上述の具体例における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用い、重複する説明を省略する。
【0157】
上述した一具体例において、観察補助装置100が撮像装置101及び表示装置102を含む例を示した。図13に示すように、観察補助装置100の撮像装置101が、移動体80に搭載されてもよい。照明装置30によって投影面95に投影される投影パターン90が移動体80の移動経路を示す場合、観察者5は、表示装置102に表示される画像を観察しながら、移動体80を操縦できる。
【0158】
図14は、表示装置102の表示面103を示す平面図である。撮像装置101は、路面である投影面95を撮像している。線状の投影パターン90が投影面95に投影されている。観察者5は、表示面103に表示された像を観察しながら移動体80を操縦できる。これにより、移動体80が投影パターン90によって示される所定の移動経路に沿って移動できる。
【0159】
図14に示すように、表示装置102は、撮像装置101によって撮像された像とともに、基準パターン97を表示してもよい。基準パターン97は、撮像装置101によって撮像される範囲内の所定の位置、所定の方向、又は所定の範囲を示してもよい。所定の位置、所定の方向、又は所定の範囲は、投影面95上の位置、方向、又は範囲でもよい。
【0160】
図14に示された例において、基準パターン97は、移動体80が現在の走行を維持した場合における移動体80の移動予定経路99Aを示している。すなわち、基準パターン97は、撮像装置101による撮像範囲内における移動体80の通過予定位置を示している。基準パターン97は、撮像装置101による撮像範囲内における移動体80が移動する方向を示している。
【0161】
図14に示された例によれば、表示装置102の表示面103上において、移動予定経路99Aを示す基準パターン97及び投影パターン90が重なるようにすることで、移動体80を予定した移動経路に沿って高精度に移動させることができる。また、表示装置102の表示面103上において、移動予定経路99Aを示す基準パターン97及び投影パターン90が重なっていることを観察することにより、移動体80が予定した移動経路に沿って移動していることを確認できる。
【0162】
なお、撮像装置101は移動体80に取り付けられてもよい。この例において、撮像装置101は、移動体80に対して一定の相対関係にある領域の像を表示できる。移動体80は、例えば直進等の一定の移動を行う場合、撮像装置101の表示装置102に表示された範囲内の一定の位置を通過する。このような移動体80の移動予定経路99Aを示す基準パターン97は、像データとして表示装置102に入力されて表示装置102に表示される像でもよいし、表示面103上に筆記具やテープで付されたマークでもよい。
【0163】
移動体80は、何らかの作業を実施する作業車でもよい。移動体80は、移動しながら何らかの作業を実施してもよい。図17に示された例において、移動体80は、作業装置84を含む。作業装置84は、移動体80の走行面である投影面95に対して所定の作業を実施できる。上述したように、作業装置84は、線引き作業に使用されてもよい。線引き作業において、例えば道路、歩道、駐車場等の作業対象面に対して白色の線や橙色の線を引くことができる。
【0164】
移動体80が作業車である例において、投影パターン90は、投影面95上における作業を実施されるべき位置、投影面95上における作業を実施されるべき方向、投影面95上における作業を実施されるべき領域を示してもよい。図14に示された例において、投影パターン90は、作業が実施されるべき所定の経路でもよい。
【0165】
図14に示された例において、基準パターン97は、作業車としての移動体80が現在の走行を維持した場合における移動体80を用いた作業が実施される作業予定経路99Bを示してもよい。すなわち、基準パターン97は、撮像装置101による撮像範囲内における移動体80の作業予定位置を示してもよい。基準パターン97は、撮像装置101による撮像範囲内における移動体80が作業を進める方向を示してもよい。
【0166】
図14に示された例によれば、表示装置102の表示面103上において、作業予定経路99Bを示す基準パターン97及び投影パターン90が重なるようにすることで、移動体80を用いた作業を計画した作業経路に沿って高精度に実施できる。また、表示装置102の表示面103上において、作業予定経路99Bを示す基準パターン97及び投影パターン90が重なっていることを観察することにより、移動体80を用いた作業が計画した作業経路に沿って実施されていることを確認できる。
【0167】
ところで、天候等の環境条件に依存して、投影面上の投影パターンが観察しにくくなることもある。また、大面積の投影パターンを明るく表示するには、照明装置の出力を増大させる必要が生じる。この場合、照明装置の出射端が眩しくなる。さらに、図18Aに示された例において、投影パターン90は、線状である。線状の投影パターン90は、照明装置30に近い投影面95上の位置において、明るく表示され易い。線状の投影パターン90は、照明装置30から遠い投影面95上の位置において、暗く表示され得る。線状の投影パターン90は、照明装置30から遠い投影面95上の位置において、観察されにくくなり得る。
【0168】
このような不具合に対処するため、投影システム10及び観察補助装置100は以下の構成を有してもよい。
【0169】
図17に示すように、投影システム10及び観察補助装置100は、撮像装置101及び表示装置102と電気的に接続した制御装置130を含んでもよい。制御装置130は、表示装置102に表示された像から投影パターン90を検出する。
【0170】
制御装置130は、検出された前記投影パターンに関連する表示パターン92を生成する。表示装置102は、撮像装置101によって撮像された像に重ねて表示パターン92を表示する。
【0171】
図18Aは、図17に示された投影システム10及び観察補助装置100の表示装置102の表示面103を示している。図17に示された例において、照明装置30は、線状パターンとしての投影パターン90を投影面95に投影する。線状パターンは、照明装置30及び撮像装置101の間を第1方向D1に直線状に延びる。
【0172】
図18A、及び後に参照する図18B図18Eに示された例において、投影面95は道路である。この道路は、他の道路に接続し、T字交差点を形成する。投影パターン90は、T字交差点から道路に沿って直線状に延びる。図18Aに示された例において、撮像装置101から離れたT字交差点近辺に、線状の投影パターン90が観察される。
【0173】
図18Bに示された例において、表示装置102は、撮像装置101によって撮像された像に重ねて表示パターン92を表示している。表示パターン92は、投影パターン80の延長線上に延びる線状の補助パターン93を含んでいる。図18Bに示された例において、表示パターン92は、補助パターン93のみによって構成されている。補助パターン93は、投影パターン90と同様に直線状のパターンである。
【0174】
図18Bに示された例において、表示装置102は、表示面103上に観察される投影パターン90と接続した補助パターン93とを表示している。表示装置102の表示面103上において、投影パターン90及び補助パターン93は連続した線として表示されている。
【0175】
表示装置102が制御装置130によって生成された補助パターン93を表示することにより、環境条件等に依存して部分的に観察しにくくなった投影パターン90の全体を明瞭に観察できる。これにより、投影パターン90に示された情報にしたがって、予定された移動や作業を安定して実施できる。
【0176】
また、表示パターン92の補助パターン93を用いることを前提として、投影パターン90は、本来表示したいパターンの一部分となっていてもよい。被照明領域96は、本来表示したいパターンの一部分となっていてもよい。この例では、表示面103において、表示パターン92は、被照明領域96以外の領域に表示される。この例によれば、照明装置30の出力を低減でき、照明装置30の出射端31が眩しくなることを抑制できる。
【0177】
制御装置130は、所定のプログラムに基づいて動作するCPU(Central Processing Unit)を含んでもよい。制御装置130は、キーボードやマウス等の入力部を含んでもよい。制御装置130は、ROMやRAM等の記憶部を含んでもよい。制御装置130は、SSDなどの半導体ドライブ等の記憶部を含んでもよい。制御装置130は、クラウドサーバ等の記憶部を含んでもよい。
【0178】
制御装置130は、撮像装置101との間で、無線または有線による通信を行ってもよい。制御装置130は、撮像装置101で撮像された像データを、撮像装置101から取得してもよい。制御装置130は、撮像装置101から取得した像データを用いて投影パターン90を検出してもよい。

制御装置130は、表示装置102との間で、無線または有線による通信を行ってもよい。制御装置130は、表示装置102の表示内容を制御してもよい。表示装置102は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示装置でもよい。表示装置102は、入力部として機能するタッチパネルセンサを含んでもよい。
【0179】
図19は、制御装置130による処理に関するフローチャートである。図19に示されたフローチャートは、撮像装置101によって取得された像から、投影パターン90を検出しかつ表示パターン92の補助パターン93を生成する方法の一例を示している。この例では、線状の投影パターン90を検出して、投影パターン90の延長線上に位置する補助パターン93の像データを生成する。
【0180】
図19に示された例では、ステップS1~S6を経て、表示パターン92の補助パターン93が生成される。
【0181】
まず、第1のステップS1として、トリミングにより処理領域R130を特定する。計算量や計算時間を短縮するため、表示面103の一部の領域に表示される像データのみを制御装置130による処理対象とする。この一部の領域が処理領域R130(図18A参照)となる。処理領域R130は、予め設定されてもよい。処理領域R130は、表示装置102を観察する観察者5によって都度設定されてもよい。
【0182】
第2ステップS2として、撮像装置101によって撮像された像データから、特定の波長成分のみを抽出する。抽出される特定波長は、照明装置30から放出された照明光の波長域としてもよい。抽出される特定波長は、照明光のピーク波長を中心とした30nmの波長域としてもよい。撮像装置101によって撮像された像データがモノクロ像である場合、第2ステップS2は不要となる。
【0183】
第3ステップS3として、第2ステップで得られた像を平滑化する。ガウシアンフィルタ等を用いて、像データから高周波成分を取り除く。
【0184】
第4ステップS4として、投影パターン90を構成する点群を探索する。各点は、表示装置102の一つの画素としてもよい。直線状の投影パターン90を検出する例においては、次のようにして、投影パターン90を構成する点群を探索してもよい。
【0185】
まず、表示装置102の画素配列に応じて、縦方向であるY方向及び横方向であるX方向を定義する。Y方向における最も上の行に属するX方向に配列された複数の画素から、最大輝度の画素を選択する。選択された画素を、投影パターン90を構成する点群の候補とする。画素の輝度は、画素の階調によって評価される。
【0186】
次に、最初に点群候補が選択された行のY方向における一つ下の行に属しX方向に配列された複数の画素から、最大輝度の画素を選択する。当該選択された画素と、最初に点群候補に選択された画素とのX方向へのずれ量を、予め設定した列閾値と比較する。ずれ量が列閾値以下である場合、選択された画素は、投影パターン90を構成する点群の候補と判断される。その後、最後に点群候補が選択された行のY方向における一つ下の行に属しX方向に配列された複数の画素から、最大輝度の画素を探索する。
【0187】
最大輝度の画素として選択された画素と、直前に点群候補に選択された画素とのX方向へのずれ量が、列閾値より大きい場合、最後に選択された画素は点群候補に入れない。次に、点群候補に選択された画素の数、言い換えると、点群候補が得られたY方向に連続する行の数を、予め設定した行閾値と比較する。行数が行閾値より大きい場合、点群候補に選択された画素は、投影パターン90を構成する点群と判断される。
【0188】
行数が行閾値以下となる場合、それまでに選択された画素を点群候補から削除する。そして、最大輝度の画素が最後に選択された行のY方向における一つ下の行から、新たな点群候補の探索を上述した方法にて開始する。
【0189】
以上のようにして、投影パターン90を構成する点群を探索する。以上の処理は、撮像装置101によって撮像される像データ毎、例えば10フレーム/秒で取得される像データ毎に、実施される。行閾値の条件が満たされない像データについては、投影パターン90を構成する点群が存在しない、すなわち投影パターン90が存在しないと判断される。
【0190】
第5ステップS5として、投影パターン90を構成する点群から、投影パターン90を特定する。直線状の投影パターン90の特定は、最小二乗法を用いてもよい。直線状の投影パターン90の特定は、画像処理ソフト「OpenCV」の「FitLine」を用いてもよい。投影パターン90は、投影パターン90を構成する点群が含まれるY方向の行の範囲内で、特定されてもよい。
【0191】
第6ステップS6として、補助パターン93を生成する。第5ステップにおいて、投影パターン90の位置は、X方向及びY方向を軸とする直交座標系における関数として特定される。補助パターン93は、投影パターン90と同一の傾きを有する関数として、特定される。補助パターン93は、投影パターン90の一端に接続する関数として、特定される。補助パターン93は、X方向における端に位置する列又はY方向における端に位置する行まで延びてもよい。
【0192】
以上により、撮像装置101によって撮像された像上における補助パターン93の位置が特定される。
【0193】
図18Cに示すように、表示パターン92は検出パターン94を含んでもよい。検出パターン94は、投影パターン90と重ねて表示される。すなわち、検出パターン94は、検出された投影パターン90上に位置している。検出パターン94は、表示装置102において、被照明領域96上に表示される。このような例によれば、環境条件に依存することなく、表示装置102の表示面103上において、投影パターン90を明るく観察できる。これにより、投影パターン90に示された情報にしたがって、予定された移動や作業を安定して実施できる。
【0194】
図18Cに示すように、表示パターン92は、補助パターン93及び検出パターン94の両方を含んでもよい。この例において、補助パターン93は、検出パターン94に接続してもよい。補助パターン93は、検出パターン94の延長線上に位置してもよい。補助パターン93及び検出パターン94を含む表示パターン92によれば、環境条件に依存することなく、表示装置102の表示面103上において、投影パターン90を明瞭に観察できる。これにより、投影パターン90に示された情報にしたがって、予定された移動や作業を安定して実施できる。
【0195】
図18Cに示すように、補助パターン93及び検出パターン94は、異なるパターンにて表示されてもよい。図18Dに示すように、補助パターン93及び検出パターン94は、同一のパターンにて表示されてもよい。図18Dに示すように、表示パターン92は、補助パターン93及び検出パターン94を連続した一つのパターンとして含んでもよい。
【0196】
図18A図18Dに示された例において、表示装置102は基準パターン97を表示している。上述したように、基準パターン97は、撮像装置101によって撮像される範囲内の所定の位置、所定の方向、又は所定の範囲を示してもよい。基準パターン97は、移動体80の移動予定経路99Aを示してもよい。基準パターン97は、移動体80の作業装置84による作業予定位置や作業予定経路99Bを示してもよい。
【0197】
制御装置130は、検出された投影パターン90の基準パターン97に対する位置関係を、評価してもよい。制御装置130は、生成された表示パターン92の基準パターン97に対する位置関係を評価してもよい。制御装置130は、生成された補助パターン93の基準パターン97に対する位置関係を評価してもよい。制御装置130は、生成された検出パターン94の基準パターン97に対する位置関係を評価してもよい。
【0198】
上述した例において、表示装置102の表示面103上における、各パターン90,92,93,94と、基準パターン97との位置ずれは、移動体80による実際の移動の経路、通過位置、作業経路、及び作業位置等が、予定された移動や作業の経路や位置からずれていることを意味する。
【0199】
例えば、上述したX方向及びY方向を軸とする直交座標系における、各パターン90,92,93,94と、基準パターン97と、の位置関係の相違が一定以上となった場合、制御装置130は「異常」ありと判断してもよい。
【0200】
より具体的には、対比される二つのパターンの傾きの相違や比が、所定範囲内であるかによって、異常の有無が評価されてもよい。対比される二つのパターンの或るY座標におけるX座標の相違が、所定範囲内であるかによって、異常の有無が評価されてもよい。対比される二つのパターンの或るX座標におけるY座標の相違が、所定範囲内であるかによって、異常の有無が評価されてもよい。対比される二つのパターンの或るY座標におけるX座標の相違と、対比される二つのパターンの或るX座標におけるY座標の相違と、の合計が所定範囲内であるかによって、異常の有無が評価されてもよい。対比される二つのパターンの距離によって、異常の有無が評価されてもよい。
【0201】
制御装置130は、検出又は生成されたパターン90,92,93,94と基準パターン97との位置関係に異常があると判断した場合、異常を報知してもよい。異常を報知することによって、移動体80の位置や向きの修正が促される。例えば図18Eに示すように、検出又は生成されたパターン90,92,93,94と基準パターン97とが重なるように、移動体80の位置や向きが修正される。これにより、投影パターン90によって表示された情報にしたがって、移動体80が移動することや、移動体80を用いた作業が実施されることが可能となる。
【0202】
制御装置130は、表示装置102から出力される表示や音等により、観察者5に異常を知らせてもよい。例えば、異常時に、撮像装置101に撮像された像の表示方法を変更してもよい。異常時に、撮像装置101に表示パターン92の表示方法を変更してもよい。異常時に、撮像装置101に基準パターン97の表示方法を変更してもよい。制御装置130は、表示装置102に警告を表示してもよい。
【0203】
図17に示すように、投影システム10及び観察補助装置100は、異常を報知する報知装置86を含んでもよい。報知装置86は、ランプでもよく、ブザーでもよい。制御装置130が位置関係に異常があると判断した場合、報知装置86は、光及び音の少なくとも一方を用いて異常を報知してもよい。
【0204】
制御装置130は、投影パターン90の投影面95への投影方法を変化させることによって、異常を報知してもよい。この例において、制御装置130は、照明装置30と電気的に接続している。制御装置130は、異常を検出した際に、有線又は無線にて照明装置30に対して制御信号を送信し、投影パターン90の投影方法を変更してもよい。投影方法の変更として、投影パターンの変更、照明光の波長域変更、並びに点灯及び点滅の切り替えの一以上でもよい。
【0205】
図17に示された例において、観察者5が移動体80を押すことによって、移動体80が移動している。移動体80が移動しながら、作業装置84が投影面95に作業を行っている。移動体80は、上述した投影面95に線を引く作業車に限られない。また、観察者5が搭乗した状態で、移動体80が移動してもよい。
【0206】
移動体80は、道路や歩道を作製する作業車でもよく、道路や歩道を整備する作業車でもよく、農作業を行う作業車でもよく、田畑を整備する作業車でもよい。道路等を作製又は整備する移動体80として、グレーダ、アスファルトフィニッシャー、ロード・ローラ、タイヤ・ローラ、ホイール・ローダ、ミキサー車、線引き車、除雪車、清掃車等が例示される。農作業を行う移動体80及び田畑を整備する移動体80として、田植機、刈取機、草刈り機、トラクタ、薬剤散布車、耕うん機等が例示される。移動体80は、特殊車両やISO5053-1に規定された産業車両でもよい。
【0207】
図20に示すように、観察者5は、表示装置102を観察しながら遠隔操作装置87を用いて移動体80を操縦してもよい。移動体80は、上述したように、列車、飛行機、船、又は図21に示すようにドローンでもよい。図21に示された例において、ドローンとしての移動体80は、作業装置84を含んでもよい。ドローンとしての移動体80に搭載される作業装置84は、散布装置でもよい。
【0208】
投影パターン90は、一直線状のパターンに限られない。上述したように、投影パターン90は、変更可能である。図22及び図23は、投影パターン90及び表示パターン92の変形例を示している。
【0209】
図22に示すように、投影パターン90は、互いに交差する第1線状パターン91A及び第2線状パターンを含んでもよい。第1線状パターン91A及び第2線状パターン91Bは直交してもよい。投影パターン90は十字マークでもよい。投影パターン90は、第1線状パターン91A及び第2線状パターン91Bの交点により、最終的に到達すべき移動目標地点を示してもよいし、作業を実施すべき位置の中心を示してもよい。
【0210】
図22に示された例において、表示パターン92は、第1補助パターン93A及び第2補助パターン93Bを含んでいる。第1補助パターン93Aは、第1線状パターン91Aの延長線上に位置する。一対の第1補助パターン93Aが、第1線状パターン91Aの両端から延び出している。第2補助パターン93Bは、第2線状パターン91Bの延長線上に位置する。一対の第2補助パターン93Bが、第2線状パターン91Bの両端から延び出している。投影パターン90及び表示パターン92の組合せにより、大きな十字マークが示されている。表示パターン92の表示パターン92は、投影パターン90との組合せにより、作業が実施されるべき領域を示してもよい。
【0211】
図23に示された例において、投影パターン90は、円周上を延びる線状パターンである。投影パターン90は、作業を実施すべき領域の中心を示してもよい。図23に示された例と異なり、投影パターン90は、楕円周上を延びる線状でもよいし、三角形の輪郭に沿って延びる線状でもよいし、四角形の輪郭に沿って延びる線状でもよいし、五角形や六角形等の角形状の輪郭に沿って延びる線状でもよい。投影パターン90は、円形状でもよいし、三角形形状でもよいし、四角形形状でもよいし、五角形や六角形等の角形状でもよい。
【0212】
図23に示された例において、表示パターン92は、投影パターン90を周状に取り囲む補助パターン93を含む。補助パターン93は、投影パターン90に隣接してもよい。補助パターン93は、図示された例のように投影パターン90から間隔をあけてもよい。投影パターン90から間隔をあけた補助パターン93は、線状でもよい。表示パターン92の補助パターン93は、投影パターン90との組合せにより、作業が実施されるべき領域を示してもよい。
【0213】
補助パターン93の外輪郭93Xによって囲まれる領域の重心93Yは、投影パターン90の重心90Y及び投影パターン90の外輪郭90Xによって囲まれる領域の重心90Yの少なくとも一方と、同一位置にあってもよい。図23に示された例において、表示パターン92は、投影パターン90と同心上に配置された二つの円周に沿ってそれぞれ延びる補助パターン93を含んでいる。補助パターン93は、投影パターン90と同様に、楕円周上を延びる線状でもよいし、三角形の輪郭に沿って延びる線状でもよいし、四角形の輪郭に沿って延びる線状でもよいし、五角形や六角形等の角形状の輪郭に沿って延びる線状でもよい。
【0214】
図24は、表示装置102の表示面103を示している。表示装置102は、撮像装置101によって撮像された像を表示している。撮像装置101の撮像範囲内には、図23に示された投影パターン90が投影されている。表示装置102は、投影パターン90を含む像に重ねて、表示パターン92の補助パターン93を表示している。表示装置102は、投影パターン90を含む像に重ねて、基準パターン97を占めている。基準パターン97は、十字マークである。
【0215】
図24に示された具体例において、投影パターン90を投影される投影面95は、農作物を栽培する畑である。この畑の所定の散布領域に農薬や肥料等の散布物が散布されることを想定する。この想定において、投影パターン90は、散布領域の中心を示してもよい。表示パターン92の補助パターン93は、散布領域の範囲を示してもよい。
【0216】
基準パターン97は、散布物を放出するノズルの向きに応じて、散布物が散布される位置を示してもよい。すなわち、基準パターン97は、ノズルの向きに応じて散布物が散布される予定位置を示してもよい。この例において、撮像装置101はノズルにとりつけられてもよい。この例において、基準パターン97は、制御装置130が作業装置84の状態に基づいて生成してもよい。
【0217】
基準パターン97は、第1基準パターン97A及び第2基準パターン97Bを含んでもよい。図25に示された例において、第1基準パターン97Aは、散布予定位置を示す十字マークである。第2基準パターン97Bは、散布予定位置が移動する方向を示す矢印となっている。第2基準パターン97Bによって示される散布予定位置の移動方向は、散布物を放出するノズルの動作情報に基づいた制御装置130での処理によって特定されてもよい。
【0218】
上述したように、制御装置130は、表示装置102に表示された像内のパターン90を検出し、検出されたパターンに関連する表示パターン92を生成する。表示装置102は、像に重ねて表示パターン92を表示する。このような制御装置130及び表示装置102を含む観察補助装置100は、照明装置30から投影される投影パターン以外のパターンにも適用可能である。例えば、面上にペンキ等で描かれたパターンの観察にも、表示装置102及び制御装置130を含む観察補助装置100を適用可能である。
【0219】
光学フィルタ120を含まない撮像装置101によって撮像された像を表示する表示装置102と、制御装置130と、を組合せてもよい。この例においても、制御装置130が像からパターンを検出することにより、表示パターン92を像に重ねて表示できる。
【符号の説明】
【0220】
D1:第1方向、D2:第2方向、D3:第3方向、5:観察者、10:投影システム、30:照明装置、31:出射端、40:光源、45:整形光学系、46:第1レンズ、47:第2レンズ、48:第3レンズ、50:回折光学素子、55:要素回折光学素子、60:走査装置、70:ケーシング、71:筒状部、71a:段差部、72:蓋部、73:間隔環、74:電池、75:回路、76:スイッチ、80:移動体、81:風防、82:区画部材、84:作業装置、86:報知装置、90:投影パターン、92:表示パターン、93:補助パターン、94検出パターン、95:投影面、96:被照明領域、97、基準パターン、100:観察補助装置、101:撮像装置、101a:撮像素子、102:表示装置、104:装着具、105:遮光壁部、106:フレーム、106A:フレーム本体、106B:保持部、107:装着具本体、108:コンタクトレンズ本体、120:光学フィルタ、121:基材、122:誘電体多層膜、122a:低屈折率層、122b:高屈折率層、130:制御装置
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図18A
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図18E
図19
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図22
図23
図24
図25