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特許7591213電力入札支援装置、電力入札支援方法及び電力入札支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】電力入札支援装置、電力入札支援方法及び電力入札支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20240101AFI20241121BHJP
【FI】
G06Q50/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024073683
(22)【出願日】2024-04-30
【審査請求日】2024-05-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518155155
【氏名又は名称】デジタルグリッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大川 雅史
【審査官】塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2024-33365(JP,A)
【文献】特許第7377392(JP,B1)
【文献】国際公開第2021/079956(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
系統用蓄電池の状態に基づいた電力入札を支援する電力入札支援装置であって、
電力需給調整力取引所の需給調整市場における第1の三次調整力の取引における売り入札条件情報を生成する第1の入札条件生成手段と、
前記需給調整市場における約定結果に基づいて日本卸電力取引所のスポット市場における買い入札条件情報を生成する第2の入札条件生成手段とを備え、
前記売り入札条件情報が、前記需給調整市場において区切られた時間帯であるブロックのうちから入札対象として選択された入札対象ブロックと、該入札対象ブロックにおける前記系統用蓄電池による入札可能調整力と、前記入札対象ブロックにおける売り単価とを含み、
前記買い入札条件情報が、前記スポット市場において区切られた時間帯であるコマのうちから入札対象として選択された入札対象コマと、該入札対象コマにおける前記系統用蓄電池への充電量と、前記入札対象コマにおける買電単価とを含んでいることを特徴とする電力入札支援装置。
【請求項2】
前記第1の入札条件生成手段が、前記需給調整市場において区切られたブロックのうちから入札対象ブロックを選択するブロック選択部を備え、
該ブロック選択部が、前記入札対象ブロックと前記系統用蓄電池による入札可能調整力を提供しない入札非対象ブロックとを交互に設けるように前記入札対象ブロックを選択することを特徴とする請求項1に記載の電力入札支援装置。
【請求項3】
前記系統用蓄電池の状態を入手する蓄電池状態入手手段をさらに備え、
前記第1の入札条件生成手段が、前記系統用蓄電池による入札可能調整力を算出する調整力算出部を備え、
該調整力算出部が、前記入札対象ブロックにおける前記系統用蓄電池の最大出力、又は前記蓄電池状態入手手段の入手した前記系統用蓄電池の残充放電可能量を前記ブロックの長さで割った値のいずれか小さい方を前記系統用蓄電池による入札可能調整力とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電力入札支援装置。
【請求項4】
前記第1の入札条件生成手段が、前記第1の三次調整力の過去の約定結果を入手する約定結果入手部と、該約定結果入手部の入手した前記過去の約定結果に基づいて前記売り単価を算出する売り単価算出部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の電力入札支援装置。
【請求項5】
前記系統用蓄電池の状態を入手する蓄電池状態入手手段をさらに備え、
前記第2の入札条件生成手段が、約定したブロックにおける前記系統用蓄電池による入札可能調整力と前記ブロックの長さと前記蓄電池状態入手手段の入手した前記系統用蓄電池の残充電量とから前記約定したブロックの直前のブロックにおける前記系統用蓄電池への総充電量を算出する総充電量算出部と、前記約定したブロックの直前のブロックにおいて前記系統用蓄電池が前記総充電量を充電するために必要な充電コマ数を算出して前記入札対象コマを選択するコマ選択部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の電力入札支援装置。
【請求項6】
系統用蓄電池の状態に基づいた電力入札を支援する電力入札支援方法であって、
コンピュータに電力需給調整力取引所の需給調整市場における第1の三次調整力の取引における売り入札条件情報を生成させる第1の入札条件生成ステップと、
前記コンピュータに前記需給調整市場における約定結果に基づいて日本卸電力取引所のスポット市場における買い入札条件情報を生成させる第2の入札条件生成ステップとを有し、
前記売り入札条件情報が、前記需給調整市場において区切られた時間帯であるブロックのうちから入札対象として選択された入札対象ブロックと、該入札対象ブロックにおける前記系統用蓄電池による入札可能調整力と、前記入札対象ブロックにおける売り単価とを含み、
前記買い入札条件情報が、前記スポット市場において区切られた時間帯であるコマのうちから入札対象として選択された入札対象コマと、該入札対象コマにおける前記系統用蓄電池への充電量と、前記入札対象コマにおける買電単価とを含んでいることを特徴とする電力入札支援方法。
【請求項7】
系統用蓄電池の状態に基づいた電力入札を支援するコンピュータに、
電力需給調整力取引所の需給調整市場における第1の三次調整力の取引における売り入札条件情報を生成させる第1の入札条件生成ステップと、
前記需給調整市場における約定結果に基づいて日本卸電力取引所のスポット市場における買い入札条件情報を生成させる第2の入札条件生成ステップとを実行させるためのコンピュータ読み取り可能な電力入札支援プログラムであって、
前記売り入札条件情報が、前記需給調整市場において区切られた時間帯であるブロックのうちから入札対象として選択された入札対象ブロックと、該入札対象ブロックにおける前記系統用蓄電池による入札可能調整力と、前記入札対象ブロックにおける売り単価とを含み、
前記買い入札条件情報が、前記スポット市場において区切られた時間帯であるコマのうちから入札対象として選択された入札対象コマと、該入札対象コマにおける前記系統用蓄電池への充電量と、前記入札対象コマにおける買電単価とを含んでいることを特徴とする電力入札支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、系統用蓄電池の状態に基づいた電力入札を支援する電力入札支援装置、電力入札支援方法及び電力入札支援プログラムに関し、特に、日本卸電力取引所のスポット市場への電力入札および2022年4月より取引が開始された電力需給調整力取引所の需給調整市場における第1の三次調整力への電力入札を支援する電力入札支援装置、電力入札支援方法及び電力入札支援プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力小売の全面自由化に伴い、2016年4月より計画値同時同量制度が導入された。
この計画値同時同量制度とは、発電量調整供給契約の契約者となる発電契約者(例えば、発電事業者)の事前に策定した発電計画と発電契約者の実際の発電実績とを管理時間(例えば、30分)単位で一致させると共に、託送供給契約の契約者となる需要契約者(例えば、小売電気事業者)の事前に策定した需要計画(電力需要計画)と需要契約者の実際の需要実績とを30分単位で一致させるという制度である。
さらに計画値同時同量制度では、発電計画と需要計画とを受け取った一般送配電業者は需要と供給とを最終的に一致させる調整力を確保するという、極めて重要な役割を担っている。
調整力(ΔkW)とは、「実需給時点で各時間帯毎に必要な能力をもった電源等を、出力を調整できる状態で予め確保すること」に用いられる電力のことであり、取り扱われる電力の単位として、例えばkW(キロワット)が用いられる。
【0003】
一般送配電事業者は、日本の電気事業法に定められた電気事業者の類型の一つであり、経済産業大臣から一般送配電事業を営む許可を受けた者である。
この経済産業大臣による一般送配電事業の許可は日本全土を10に分割した供給区域ごとに行われており、現在では、供給区域ごとに1つの一般送配電事業者が存在している。
【0004】
そして、供給区域を越えた広域的な調整力の調達・運用と、市場原理による競争活性化や透明化による調整力の調達コスト低減とを図るために、2021年4月に需給調整市場が電力需給調整力取引所に開設されて調整力の取引が開始した(例えば、非特許文献1を参照)。
【0005】
また、近年、系統用蓄電池は、その特性(瞬動性、出力の双方向性等)を活かすことで、再生可能エネルギーのインバランスを回避すること、調整力を提供すること、系統混雑緩和対策への活用などが期待されている。
そして、系統用蓄電池は、需給調整市場、卸電力取引市場等における収入を組み合わせて投資回収していくビジネスモデル、すなわち、電力価格が安いタイミングで電力を購入して系統用蓄電池に蓄電を行い、電力価格が高いタイミングで電力を売却して系統用蓄電池から放電を行うことが想定されている(例えば、非特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】「需給調整市場について」(2023年7月31日、資源エネルギー庁)https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/seido_kento/pdf/083_03_00.pdf
【文献】「アグリゲーションビジネス及び系統用蓄電池に関する取組について」(令和4年1月19日、資源エネルギー庁)https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/energy_resource/pdf/017_03_00.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、系統用蓄電池には満充電容量が存在することから、満充電容量を超える充放電ができず、系統用蓄電池を活用した利益の最大化を図るためには、系統用蓄電池の能力を考慮して各種電力市場へ入札する必要がある。
【0008】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、需給調整市場の調整力取引において好適な価格での調整力の提供が約定した際に、系統用蓄電池の運用者がその約定条件に適合する電力を確保する買い入札を実現することができる電力入札支援装置、電力入札支援方法及び電力入札支援プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、系統用蓄電池の状態に基づいた電力入札を支援する電力入札支援装置であって、電力需給調整力取引所の需給調整市場における第1の三次調整力の取引における売り入札条件情報を生成する第1の入札条件生成手段と、前記需給調整市場における約定結果に基づいて日本卸電力取引所のスポット市場における買い入札条件情報を生成する第2の入札条件生成手段とを備え、前記売り入札条件情報が、前記需給調整市場において区切られた時間帯であるブロックのうちから入札対象として選択された入札対象ブロックと、該入札対象ブロックにおける前記系統用蓄電池による入札可能調整力と、前記入札対象ブロックにおける売り単価とを含み、前記買い入札条件情報が、前記スポット市場において区切られた時間帯であるコマのうちから入札対象として選択された入札対象コマと、該入札対象コマにおける前記系統用蓄電池への充電量と、前記入札対象コマにおける買電単価とを含んでいることにより、前述した課題を解決するものである。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載された電力入札支援装置の構成に加えて、前記第1の入札条件生成手段が、前記需給調整市場において区切られたブロックのうちから入札対象ブロックを選択するブロック選択部を備え、該ブロック選択部が、前記入札対象ブロックと前記系統用蓄電池による入札可能調整力を提供しない入札非対象ブロックとを交互に設けるように前記入札対象ブロックを選択することにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載された電力入札支援装置の構成に加えて、前記系統用蓄電池の状態を入手する蓄電池状態入手手段をさらに備え、前記第1の入札条件生成手段が、前記系統用蓄電池による入札可能調整力を算出する調整力算出部を備え、該調整力算出部が、前記入札対象ブロックにおける前記系統用蓄電池の最大出力、又は前記蓄電池状態入手手段の入手した前記系統用蓄電池の残充放電可能量を前記ブロックの長さで割った値のいずれか小さい方を前記系統用蓄電池による入札可能調整力とすることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載された電力入札支援装置の構成に加えて、前記第1の入札条件生成手段が、前記第1の三次調整力の過去の約定結果を入手する約定結果入手部と、該約定結果入手部の入手した前記過去の約定結果に基づいて前記売り単価を算出する売り単価算出部とを備えていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項1に記載された電力入札支援装置の構成に加えて、前記系統用蓄電池の状態を入手する蓄電池状態入手手段をさらに備え、前記第2の入札条件生成手段が、約定したブロックにおける前記系統用蓄電池による入札可能調整力と前記ブロックの長さと前記蓄電池状態入手手段の入手した前記系統用蓄電池の残充電量とから前記約定したブロックの直前のブロックにおける前記系統用蓄電池への総充電量を算出する総充電量算出部と、前記約定したブロックの直前のブロックにおいて前記系統用蓄電池が前記総充電量を充電するために必要な充電コマ数を算出して前記入札対象コマを選択するコマ選択部とを備えていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0014】
また、請求項6に係る発明は、系統用蓄電池の状態に基づいた電力入札を支援する電力入札支援方法であって、コンピュータに電力需給調整力取引所の需給調整市場における第1の三次調整力の取引における売り入札条件情報を生成させる第1の入札条件生成ステップと、前記コンピュータに前記需給調整市場における約定結果に基づいて日本卸電力取引所のスポット市場における買い入札条件情報を生成させる第2の入札条件生成ステップとを有し、前記売り入札条件情報が、前記需給調整市場において区切られた時間帯であるブロックのうちから入札対象として選択された入札対象ブロックと、該入札対象ブロックにおける前記系統用蓄電池による入札可能調整力と、前記入札対象ブロックにおける売り単価とを含み、前記買い入札条件情報が、前記スポット市場において区切られた時間帯であるコマのうちから入札対象として選択された入札対象コマと、該入札対象コマにおける前記系統用蓄電池への充電量と、前記入札対象コマにおける買電単価とを含んでいることにより、前述した課題を解決するものである。
【0015】
また、請求項7に係る発明は、系統用蓄電池の状態に基づいた電力入札を支援するコンピュータに、電力需給調整力取引所の需給調整市場における第1の三次調整力の取引における売り入札条件情報を生成させる第1の入札条件生成ステップと、前記需給調整市場における約定結果に基づいて日本卸電力取引所のスポット市場における買い入札条件情報を生成させる第2の入札条件生成ステップとを実行させるためのコンピュータ読み取り可能な電力入札支援プログラムであって、前記売り入札条件情報が、前記需給調整市場において区切られた時間帯であるブロックのうちから入札対象として選択された入札対象ブロックと、該入札対象ブロックにおける前記系統用蓄電池による入札可能調整力と、前記入札対象ブロックにおける売り単価とを含み、前記買い入札条件情報が、前記スポット市場において区切られた時間帯であるコマのうちから入札対象として選択された入札対象コマと、該入札対象コマにおける前記系統用蓄電池への充電量と、前記入札対象コマにおける買電単価とを含んでいることにより、前述した課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明の電力入札支援装置によれば、電力需給調整力取引所の需給調整市場における第1の三次調整力の取引における売り入札条件情報を生成する第1の入札条件生成手段と、需給調整市場における約定結果に基づいて日本卸電力取引所のスポット市場における買い入札条件情報を生成する第2の入札条件生成手段とを備えていることにより、系統用蓄電池の能力の範囲で好適に需給調整市場で落札ができた場合に入札可能調整力を約定相手に確実に提供できるようなスポット市場における買い入札条件情報を生成可能となるため、需給調整市場における第1の三次調整力の取引において好適な価格での入札可能調整力の提供が約定した際に、系統用蓄電池の運用者がその約定条件に適合する電力を確保する買い入札をスポット市場で行うことができる。
【0017】
請求項2に係る発明の電力入札支援装置によれば、請求項1に係る発明の電力入札支援装置が奏する効果に加えて、ブロック選択部が、入札対象ブロックと系統用蓄電池から入札可能調整力を提供しない入札非対象ブロックとを交互に設けるように入札対象ブロックを選択することにより、系統用蓄電池による入札可能調整力の提供を行う約定したブロックの次のブロックでは系統用蓄電池による入札可能調整力の提供を行わずに、約定したブロックの次のブロックを系統用蓄電池への充電に割り当てることが可能となるため、約定したブロックにおいて入札可能調整力が不足する事態を回避することができる。
【0018】
請求項3に係る発明の電力入札支援装置によれば、請求項1または請求項2に係る発明の電力入札支援装置が奏する効果に加えて、第1の入札条件生成手段の調整力算出部が、入札対象ブロックにおける系統用蓄電池の最大出力、又は蓄電池状態入手手段の入手した系統用蓄電池の残充放電可能量をブロックの長さで割った値のいずれか小さい方を系統用蓄電池の入札可能調整力とするにより、系統用蓄電池の現実的な能力に適合した好適な入札可能調整力が売り入札条件情報において設定されるため、系統用蓄電池の保有者が入札可能調整力の提供による利益を増やすことができる。
【0019】
請求項4に係る発明の電力入札支援装置によれば、請求項1に係る発明の電力入札支援装置が奏する効果に加えて、第1の入札条件生成手段が、第1の三次調整力の過去の約定結果を入手する約定結果入手部と、約定結果入手部の入手した過去の約定結果に基づいて売り単価を算出する売り単価算出部とを備えていることにより、過去の約定結果を考慮して売り単価が算出されるため、より売買の実情に即した入札可能調整力の提供が可能になる。
【0020】
請求項5に係る発明の電力入札支援装置によれば、請求項1に係る発明の電力入札支援装置が奏する効果に加えて、約定したブロックの直前のブロックにおいて系統用蓄電池が総充電量を充電するために必要な充電コマ数を算出して入札対象コマを選択するコマ選択部とを備えていることにより、系統用蓄電池の現実的な能力に適合した入札対象コマが買い入札条件情報において設定されるため、需給調整市場における第1の三次調整力の取引において好適な価格での入札可能調整力の提供が約定した際に、その約定条件に適合する電力を系統用蓄電池に対して確実に供給することができる。
【0021】
請求項6に係る発明の電力入札支援方法によれば、電力需給調整力取引所の需給調整市場における第1の三次調整力の取引における売り入札条件情報を生成する第1の入札条件生成ステップと、需給調整市場における約定結果に基づいて日本卸電力取引所のスポット市場における買い入札条件情報を生成する第2の入札条件生成ステップとを備えていることにより、系統用蓄電池の能力の範囲で好適に需給調整市場で落札ができた場合に入札可能調整力を約定相手に確実に提供できるようなスポット市場における買い入札条件情報を生成可能となるため、需給調整市場における第1の三次調整力の取引において好適な価格での入札可能調整力の提供が約定した際に、系統用蓄電池の運用者がその約定条件に適合する電力を確保する買い入札をスポット市場で行うことができる。
【0022】
請求項7に係る発明の電力入札支援プログラムによれば、コンピュータに、電力需給調整力取引所の需給調整市場における第1の三次調整力の取引における売り入札条件情報を生成する第1の入札条件生成ステップと、需給調整市場における約定結果に基づいて日本卸電力取引所のスポット市場における買い入札条件情報を生成する第2の入札条件生成ステップとを実行させることにより、系統用蓄電池の能力の範囲で好適に電需給調整市場で落札ができた場合に入札可能調整力を約定相手に確実に提供できるようなスポット市場における買い入札条件情報を生成可能となるため、需給調整市場における第1の三次調整力の取引において好適な価格での入札可能調整力の提供が約定した際に、系統用蓄電池の運用者がその約定条件に適合する電力を確保する買い入札をスポット市場で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る電力入札支援装置等が接続されるネットワーク構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る電力入札支援装置のハードウェア構成図である。
図3】本発明の一実施形態に係る電力入札支援装置の動作を説明するためのフローチャートである。
図4】本発明に基づく電力取引の具体的な一例を示すための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る電力入札支援装置100、電力入札支援方法、及び電力入札支援プログラムについて説明する。
【0025】
<1.電力需給調整力取引所および日本卸電力取引所について>
はじめに、本発明に関係する電力市場を運営する電力需給調整力取引所および日本卸電力取引所について説明する。
【0026】
<1.1.電力需給調整力取引所について>
電力需給調整力取引所は、一般送配電事業者9社により共同で設立され、上述した需給調整市場を運営している。
【0027】
この需給調整市場においては、1日(24時間)を所定の時間幅(3時間)に分割した商品ブロックにおける調整力が個々の商品として取引されている。
すなわち、需給調整市場においては、1日(24時間)を3時間ずつ8個の時間帯(ブロック)に区切って管理している。
そこで、本実施形態では、午前0時から午前3時までの1日の最初のブロックを「ブロック1」と呼び、午後3時から午後6時までの1日の6番目のブロックを「ブロック6」と呼ぶ。
なお、本発明の出願時点では、1ブロックを3時間と定義して1日を8個のブロックに区切っているが、市場の管理方針等の変更によってブロックの時間も変更可能なものであり、1ブロックの長さは3時間に限定されるものではない。
【0028】
また、需給調整市場で取り扱われる商品には、2021年4月から導入された三次調整力〔2〕(〔2〕は丸付き数字2を表しているものとする)や、2022年4月から導入された三次調整力〔1〕(〔1〕は丸付き数字1を表しているものとする)がある。
【0029】
三次調整力〔1〕は、ゲートクローズ(実需給の1時間前)以降に生じる需要予測誤差および再生可能エネルギーの出力予測誤差や、電源が予期せぬトラブル等で停止する電源脱落により生じた需給と供給との差について対応する調整力である。
三次調整力〔2〕は、再生可能エネルギーの予測誤差に対応するための調整力である。
【0030】
<1.2.日本卸電力取引所(JEPX)について>
日本卸電力取引所は、2003年に設立された、日本で卸電力の現物取引および先物取引などを仲介する取引所である。
この日本卸電力取引所は、現物電気の売却先を探している事業者と電気の需要を満たすために電気を調達したい事業者の間で電気の売買を行う一日前市場(スポット市場)などを開設している。
【0031】
スポット市場では、翌日に発電または販売する電力を前日までに入札して売買を成立させる。
このスポット市場においては、1日を電力の計量単位(コマ単位。毎時0分~30分、30分~60分)で分割した48コマにおける電力が個々の商品として取引されている。
すなわち、スポット市場では、1日(24時間)を0.5時間(30分)ずつ48個の時間帯(コマ)に区切って管理している。
そこで、本実施形態では、午前0時から午前0時30分までの1日の最初のコマを「コマ1」と呼び、午後11時30分から翌日午前0時までの1日の最後のコマを「コマ48」と呼ぶ。
【0032】
<2.本発明に基づく取引の概要>
本発明は、系統用蓄電池の保有者から自身が保有する系統用蓄電池の運用(売電・買電等)に係る業務委託を受けている特定卸供給事業者(アグリゲーター)が主に実施するものである。
【0033】
一般に、アグリゲーターには、系統用蓄電池の保有者の経済的利益を最大化させることが求められている。
そこで、アグリゲーターでもある本発明の出願人は、本発明を実施して、電力需給調整力取引所の需給調整市場における三次調整力〔1〕の取引を約定させた上で、その約定条件に適合する電力を日本卸電力取引所で確保することで系統用蓄電池の保有者の経済的利益を最大化させることを見いだした。
すなわち、本発明は、アグリゲーターの電力需給調整力取引所の需給調整市場に対する入札を支援すると共にアグリゲーターの日本卸電力取引所のスポット市場に対する入札を支援するものである。
【0034】
<3.電力入札支援装置等が接続されるネットワークおよび系統用蓄電池の概要>
次に、図1に基づいて、本発明の一実施形態に係る電力入札支援装置100が接続されるネットワーク全体の概要等について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電力入札支援装置100等が接続されるネットワーク構成図である。
【0035】
図1に示すように、電力入札支援装置100は、系統用蓄電池A10、電力需給調整力取引所B10の需給調整市場システムB11、および日本卸電力取引所C10のスポット市場システムC11と通信ネットワークD10を介して接続されている。
したがって、本実施形態において、電力入札支援装置100は、電力需給調整力取引所B10の需給調整市場における電力入札の約定結果などの各種情報を電力需給調整力取引所B10内の需給調整市場システムB11から得ているが、需給調整市場における各種情報の入手先はこれ以外であってもよい。
同様に、電力入札支援装置100は、日本卸電力取引所C10のスポット市場における各種情報を日本卸電力取引所C10内のスポット市場システムC11から得ているが、スポット市場における各種情報の入手先はこれ以外であってもよい。
【0036】
なお、本実施形態において、電力入札支援装置100で取り扱う系統用蓄電池A10は1つだけになっているが、実際には系統用蓄電池が他にも多数存在し、アグリゲーターは多数の系統用蓄電池の電力売買を個別に、又は束ねて管理・調整する。
【0037】
<4.電力入札支援装置100>
電力入札支援装置100は、系統用蓄電池A10の状態に基づいた電力入札を支援する装置であり、系統用蓄電池A10の保有者から系統用蓄電池A10の運用に係る業務委託を受けたアグリゲーターなどが利用する。
【0038】
<4.1.電力入札支援装置100のハードウェア構成>
まず、本発明の一実施形態に係る電力入札支援装置100のハードウェア構成図である図2に基づいて電力入札支援装置100のハードウェア構成を説明する。
なお、図1および図2において、電力入札支援装置100は単一の装置(デバイス)として実現されているが、これに限定されるものではなく、一または複数のコンピュータで実現するようにしてもよいし、一または複数のサーバで実現するように構成してもよい。
【0039】
電力入札支援装置100は、プロセッサ101、主記憶装置102、補助記憶装置103、及び入出力インタフェース104が備わっており、それらが各装置間のデータ伝送路であるバス105を介して接続されている。
また、入出力インタフェース104には、ネットワークインタフェース106、入力部107、及び出力部108が接続されている。
【0040】
プロセッサ101は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などで実現され、主記憶装置102や補助記憶装置103に記憶されているプログラムに従って各種処理を実行する。
主記憶装置102は、SRAМ(スタティックRAМ(Random Access Memory))、DRAМ(ダイナミックRAМ)、又はフラッシュメモリ等で構成され、電力入札支援装置100で演算処理をするために必要なデータを一時的に記憶する。
補助記憶装置103は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、メモリカードなどのリムーバブルメディア、又はROM(Read Only Memory)などで実現され、記録媒体を有している。
【0041】
ネットワークインタフェース106は、インターネットを含む通信ネットワークD10を介して他の端末・システム等との間で通信を行う。
入力部107は、キーボードやマウス等で構成され、各種情報の入力を受け付ける。
出力部108は、ディスプレイやスピーカ等で構成され、各種情報をテキスト、画像、音声等として出力する。
【0042】
<4.2.電力入札支援装置100の機能手段>
本実施形態において、電力入札支援装置100は、蓄電池状態入手手段110、第1の入札条件生成手段120、第2の入札条件生成手段130を備えている。
【0043】
<4.2.1.蓄電池状態入手手段110>
蓄電池状態入手手段110は、系統用蓄電池A10の状態を所定のタイミングで入手する。
「系統用蓄電池A10の状態」とは、少なくとも、系統用蓄電池A10の最大出力[MW]、最大入力[MW]、初期の満充電容量(「定格電力容量」ともいう。)[MWh]、充電率(State of Charge;SoC)[%]、健全度(State of Health;SoH)[%]を含む情報である。
蓄電池状態入手手段110による系統用蓄電池A10の状態に関する情報の入手は、系統用蓄電池A10に付属等しているメーターから直接取得してもよいし、系統用蓄電池A10の保有者から直接、または系統用蓄電池A10の保有者から委託等された系統用蓄電池A10の管理者のサーバ等(不図示)に系統用蓄電池A10の蓄電状態に関する情報を記憶させておき、蓄電池状態入手手段110がそのサーバ等から情報を入手するようにしてもよい。
【0044】
<4.2.2.第1の入札条件生成手段120>
第1の入札条件生成手段120は、電力需給調整力取引所B10の需給調整市場における第1の三次調整力(上記、「三次調整力〔1〕」)の取引における売り入札条件情報を生成する。
【0045】
第1の入札条件生成手段120は、より詳細には、図1に示すように、ブロック選択部121、調整力算出部122、約定結果入手部123、売り単価算出部124、及び売り入札条件情報生成部125を備えている。
【0046】
ブロック選択部121は、需給調整市場において区切られたブロック(本出願時点では、ブロック1からブロック8)のうちから入札対象ブロックを選択する。
具体的には、ブロック選択部121は、入札対象ブロックと、系統用蓄電池A10から入札可能調整力を提供しない入札非対象ブロックとを交互に設けるように入札対象ブロックを選択する。
【0047】
このような構成にすることにより、電力入札支援装置100は、系統用蓄電池A10による入札可能調整力の提供約定したブロックの次のブロックでは系統用蓄電池A10による入札可能調整力の提供を行わずに、約定したブロックの次のブロックを系統用蓄電池21への充電に割り当てることが可能となる。
したがって、約定したブロックにおいて入札可能調整力が不足する事態を回避することができる。
【0048】
調整力算出部122は、系統用蓄電池A10による入札可能調整力を算出する。
具体的には、調整力算出部122は、(1)入札対象ブロックにおける系統用蓄電池21の最大出力[MW]、又は(2)蓄電池状態入手手段11が入手した系統用蓄電池21の残充放電可能量(初期の満充電容量に健全度を乗じたもの、すなわち、定格電力容量に経年劣化による容量低下を考慮したもの)[MWh]をブロックの長さ(3時間)で割った値[MW]のいずれか小さい方を、売り入札条件情報を構成する系統用蓄電池A10による入札可能調整力とする。
このような構成にすることにより、系統用蓄電池A10の現実的な能力に適合した好適な入札可能調整力が売り入札条件情報において設定できるようになるため、系統用蓄電池A10の保有者にとって入札可能調整力の提供による利益を増やすことができる。
【0049】
約定結果入手部123は、第1の三次調整力の過去の約定結果(例えば、需給調整市場における入札予定日の前日や前週の約定率)を需給調整市場システムB11から入手する。
【0050】
売り単価算出部124は、約定結果入手部123が入手した過去の約定結果に基づいて売り単価を算出する。
具体的には、売り単価算出部124は、前日や前週の約定率に基づいて売り単価を決定する。
約定結果入手部123および売り単価算出部124をこのような構成にすることにより、過去の約定結果を考慮して売り単価が算出されるため、より売買の実情に即した入札可能調整力の提供が可能になる。
【0051】
売り入札条件情報生成部125は、上述した第1の入札条件生成手段120の各部の処理の結果から売り入札条件情報を生成する。
すなわち、売り入札条件情報生成部125が生成する売り入札条件情報には、少なくとも次の3つの情報が含まれる。
(1)需給調整市場における1日の8個のブロックのうちから入札対象として選択された入札対象ブロックの情報
(2)それぞれの入札対象ブロックにおける系統用蓄電池A10による入札可能調整力(ΔkW)の情報
(3)それぞれの入札対象ブロックにおける売り単価[円/kW]の情報
【0052】
<4.2.3.第2の入札条件生成手段130>

第2の入札条件生成手段130は、電力需給調整力取引所B10の需給調整市場における約定結果に基づいて、日本卸電力取引所C10のスポット市場における買い入札条件情報を生成する。
【0053】
第2の入札条件生成手段130は、より詳細には、図1に示すように、総充電量算出部131、コマ選択部132、買電単価設定部133、及び買い入札条件情報生成部134を備えている。
【0054】
総充電量算出部131は、(1)約定したブロックにおける系統用蓄電池A10による入札可能調整力A[kW]と、(2)ブロックの長さL[h]と、(3)蓄電池状態入手手段110が入手した系統用蓄電池A10の現時点の残充電量(初期の満充電容量に健全度および充電率を乗じたもの)P[kWh]とから、約定したブロックの直前のブロックにおける系統用蓄電池A10への総充電量T(=A×L-P)[kWh]を算出する。
【0055】
コマ選択部132は、約定したブロックの直前のブロックにおいて系統用蓄電池A10が総充電量T[kWh]を充電するために必要な充電コマ数を算出して入札対象コマを選択する。
具体的には、コマ選択部132は、総充電量T[kWh]を系統用蓄電池A10の1コマ(0.5時間)あたりの最大入力[kW×0.5]で割ったコマ数だけ約定したブロックの直前における最後のコマから遡って入札対象コマを選択する。
【0056】
買電単価設定部133は、買電単価[円/kWh]を設定する。
具体的には、買電単価設定部133は、売り単価の決定と同様に過去の約定率に基づいて決めてもよいし、買電が強く要求される場合には過去の約定結果よりも高く設定してもよい。
【0057】
買い入札条件情報生成部134は、蓄電池状態入手手段110が入手した系統用蓄電池A10の状態および上述した第2の入札条件生成手段130の各部の処理の結果から売り入札条件情報を生成する。
すなわち、買い入札条件情報生成部134の生成する買い入札条件情報には、少なくとも次の3つの情報が含まれる。
(1)スポット市場における1日の48個のコマのうちから入札対象として選択された入札対象コマの情報
(2)入札対象コマにおける系統用蓄電池A10への充電量(蓄電池状態入手手段110が入手した系統用蓄電池A10の最大入力)の情報
(3)入札対象コマにおける買電単価[円/kW]の情報
【0058】
このように、第2の入札条件生成手段130では、約定したブロックの直前のブロックにおいて系統用蓄電池21が総充電量を充電するために必要な充電コマ数を算出して入札対象コマを選択することによって、系統用蓄電池A10の現実的な能力に適合した入札対象コマが買い入札条件情報において設定される。
したがって、需給調整市場における第1の三次調整力の取引において好適な価格での入札可能調整力の提供が約定した際に、その約定条件に適合する電力を系統用蓄電池A10に対して確実に供給することができる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態に係る電力入札支援装置100は、電力需給調整力取引所B10の需給調整市場における第1の三次調整力の取引における売り入札条件情報を生成する第1の入札条件生成手段120と、需給調整市場における約定結果に基づいて日本卸電力取引所C10のスポット市場における買い入札条件情報を生成する第2の入札条件生成手段130とを備える構成を有している。
【0060】
上記のような構成を有することにより、電力入札支援装置100は、系統用蓄電池A10の能力の範囲で好適に電力需給調整力取引所B10の需給調整市場で落札ができた場合に入札可能調整力を約定相手に確実に提供できるような日本卸電力取引所C10のスポット市場における買い入札条件情報を生成することが可能となる。
これにより、需給調整市場における第1の三次調整力の取引において好適な価格での入札可能調整力の提供が約定した際に、系統用蓄電池A10の運用者がその約定条件に適合する電力を確保する買い入札をスポット市場で行うことができる。
【0061】
換言すれば、本実施形態に係る電力入札支援装置100を用いる事で、系統用蓄電池A10の運用者は、過去の(例えば、前週)の約定結果に基づいて系統用蓄電池A10の運用者が納得できる価格(例えば、相場価格かそれ以上の高い価格など)での入札可能調整力の提供が可能になったにもかかわらず電力供給が不足するような状況に陥った場合に備えることが可能となる。
【0062】
<5.電力入札支援装置による入札条件生成処理の説明>
以下では、図3および図4に基づいて、電力入札支援装置100が読み取り可能なプログラムによる入札条件生成に係る処理について、具体的な例を挙げて説明する。
図3は本発明の一実施形態に係る電力入札支援装置100の動作を説明するためのフローチャートであり、図4は本発明に基づく電力取引の具体的な一例を示すための図である。
【0063】
図4に示す一例では、需給調整市場における入札対象期間を1月20日(土)から1月26日(金)までの1週間とする。
したがって、入札対象期間の前週の月曜日(1月15日)の12時から火曜日(1月16日)の14時が入札受付期間となり、火曜日の14時から15時の間に約定処理が行われる。
【0064】
<5.1.需給調整市場における第1の三次調整力の取引における売り入札条件情報の生成>
電力入札支援装置100の蓄電池状態入手手段110は、売り入札条件情報を生成する際に、運用対象とされた系統用蓄電池A10の状態に関する情報を入手する(ステップS110)。
【0065】
そして、電力入札支援装置100の第1の入札条件生成手段120は、電力需給調整力取引所B10の需給調整市場における第1の三次調整力の取引における売り入札条件情報を生成する(ステップS120)。
【0066】
ここで、第1の入札条件生成手段120における売り入札条件情報の生成ステップ(ステップS120)について詳細に説明する。
【0067】
まず、ブロック選択部121が、入札対象ブロックと、系統用蓄電池A10から入札可能調整力を提供しない入札非対象ブロックとを交互に設けるように入札対象ブロックを選択する(ステップS121)。
図4に示す一例では、1月20日から1月26日の各日のブロック2、ブロック4、ブロック6、ブロック8を入札対象ブロックとして選択し、それ以外のブロック1、ブロック3、ブロック5、ブロック7を入札対象外のブロック(入札非対象ブロック)として、入札対象ブロックと入札非対象ブロックとを交互に設けるようにする。
なお、ブロック1、ブロック3、ブロック5、ブロック7を入札対象ブロックとして選択し、ブロック2、ブロック4、ブロック6、ブロック8入札非対象ブロックとしてもよい。
【0068】
次に、調整力算出部122が、入札対象ブロックのそれぞれにおける系統用蓄電池A10による入札可能調整力を算出する(ステップS122)。
【0069】
次に、約定結果入手部123が、第1の三次調整力の過去の約定結果を需給調整市場システムB11から入手する(ステップS123)。
図4に示す一例の場合、約定結果入手部123は、需給調整市場における入札を実施しようとする日(1月16日(火))の前日である1月15日(月)の約定結果(例えば、約定率)に関する情報を入手する。
【0070】
次に、売り単価算出部124が、過去の約定結果に基づいて売り単価を算出し(ステップS124)、売り入札条件情報生成部125が需給調整市場における売り入札条件情報を生成する(ステップS125)。
【0071】
第1の入札条件生成手段120により生成された売り入札条件情報は、電力入札支援装置100の出力部108から出力され、本発明の一実施例である電力入札支援装置100を利用するアグリゲーターに提供される。
アグリゲーターは、電力入札支援装置100からこれらの情報を取得し、入札可能調整力の提供に関する入札(売り入札)を行う。
【0072】
<5.2.スポット市場における買い入札条件の生成>
続いて、電力入札支援装置100の第2の入札条件生成手段130が、日本卸電力取引所C10のスポット市場における買い入札条件情報を生成する(ステップS130)。
【0073】
第2の入札条件生成ステップ(ステップS130)は第1の入札条件生成ステップ(ステップS120)を実行したことで約定となったすべてのブロック(図4に示す一例では、1月20日(土)から1月26日(金)の各日のブロック2、ブロック4、ブロック6、ブロック8の直前のブロック1、ブロック3、ブロック5、ブロック7)において行われる。
各ブロックに対する第2の入札条件生成ステップは同様であるため、以下、第1の入札条件生成ステップ(ステップS120)の対象ブロックの一つである1月20日(土)のブロック4についての第2の入札条件生成ステップを代表例として説明する。
【0074】
まず、総充電量算出部131が、需給調整市場で約定したブロック(図4に示す一例では、1月20日(土)のブロック4)の直前のブロック(図4に示す一例では、ブロック3)において、需給調整市場で約定したブロックでの約定した入札可能調整力の提供に備えて、この需給調整市場で約定したブロックの開始時点での残充放電可能量を考慮して、需給調整市場で約定した入札可能調整力を満たすのに必要な総充電量を算出する(ステップS131)。
【0075】
次に、コマ選択部132が、約定ブロックの直前のブロック(図4に示す一例では、ブロック3)において系統用蓄電池A10が総充電量を充電するために必要な充電コマ数を算出して入札対象コマを選択する(ステップS132)。
図4に示す一例では、1月20日(土)のブロック4(コマ19からコマ24)が需給調整市場で約定したブロックであるため、需給調整市場で約定したブロックの直前のブロックであるブロック3を構成するコマ13からコマ18のうち、ブロック4の直前の2コマであるコマ17とコマ18とがコマ選択部132で選択される。
【0076】
次に、買電単価設定部133が、買電単価[円/kWh]を設定する(ステップS133)。
【0077】
そして、買い入札条件情報生成部134が、総充電量算出部131の算出した総充電量、コマ選択部132の選択した入札対象コマの情報、及び買電単価設定部133の設定した買電単価に関する情報を含む買い入札条件情報を生成する(ステップS134)。
【0078】
第2の入札条件生成手段130により生成された買い入札条件情報は、電力入札支援装置100の出力部108からテキスト、画像、音声等として出力され、本電力入札支援装置100を管理・運営するアグリゲーターに提供される。
図4に示す一例では、アグリゲーターは、電力入札支援装置100からこれらの情報を取得し、約定ブロックの直前のブロック(すなわち、1月20日(土)のブロック3)のコマ17及びコマ18において電力の買い入札を前日の1月19日(金)の午前10時までに行う。
【0079】
このような電力入札支援装置100が読み取り可能なプログラムおよびこのプログラムによる入札条件生成に係る処理により、系統用蓄電池A10の能力の範囲で好適に電力需給調整力取引所B10の需給調整市場で落札ができた場合に入札可能調整力を約定相手に確実に提供できるような日本卸電力取引所C10のスポット市場における買い入札条件情報を生成することが可能となる。
これにより、需給調整市場における第1の三次調整力の取引において好適な価格での入札可能調整力の提供が約定した際に、系統用蓄電池A10の運用者がその約定条件に適合する電力を確保する買い入札をスポット市場で行うことができる。
【0080】
<変形例>
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。
本発明の範囲は、上記実施形態に記載した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0081】
例えば、第1の入札条件生成手段120の売り単価算出部124は、第1の三次調整力の過去の約定結果に基づいて売り単価を算出しなくてもよい。
【0082】
例えば、本実施形態に係るフローチャート(図3)は本発明の一実施形態であり、本発明の趣旨を変更しない範囲で、各処理の順序を入れ替えることは可能である。
また、フローチャートに示された処理以外の別の処理が含まれていてもよく、フローチャートに示された処理の一部を含まないようにすることも可能である。
【0083】
例えば、本実施形態における入札条件生成処理において、電力入札支援装置100の蓄電池状態入手手段110は、売り入札条件情報を生成する際に、系統用蓄電池A10の状態に関する情報を取得していたが、蓄電池状態入手手段110による系統用蓄電池A10の状態に関する情報の取得は、任意のタイミングで取得するようにしてもよいし、常時又は一定時間間隔で取得するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0084】
100 電力入札支援装置
110 蓄電池状態入手手段
120 第1の入札条件生成手段
130 第2の入札条件生成手段
121 ブロック選択部
122 調整力算出部
123 約定結果入手部
124 売り単価算出部
125 売り入札条件情報生成部
131 総充電量算出部
132 コマ選択部
133 買電単価設定部
134 買い入札条件情報生成部

A10 系統用蓄電池
B10 電力需給調整力取引所
B11 需給調整市場システム
C10 日本卸電力取引所(JEPX)
C11 スポット市場システム
D10 通信ネットワーク
【要約】
【課題】需給調整市場の調整力取引において好適な価格での入札可能調整力の提供が約定した際に、系統用蓄電池の運用者がその約定条件に適合する電力を確保する買い入札を実現することができる電力入札支援装置、電力入札支援方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】
系統用蓄電池の状態に基づいた電力入札を支援する電力入札支援装置100であって、電力需給調整力取引所B10の需給調整市場における第1の三次調整力の取引における売り入札条件情報を生成する第1の入札条件生成手段120と、需給調整市場における約定結果に基づいて日本卸電力取引所C10のスポット市場における買い入札条件情報を生成する第2の入札条件生成手段130とを備えている。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4