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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】三次元トコジラミ捕獲器
(51)【国際特許分類】
   A01M 1/14 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
A01M1/14 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024531538
(86)(22)【出願日】2024-02-27
(86)【国際出願番号】 JP2024007163
【審査請求日】2024-05-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514084934
【氏名又は名称】株式会社オーラルファッション
(74)【代理人】
【識別番号】100134669
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 道彰
(72)【発明者】
【氏名】高木 滋樹
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-074973(JP,A)
【文献】特開2023-115766(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0239503(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0098886(US,A1)
【文献】特開2018-033449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質体の三次元構造体であって、トコジラミが通過可能な孔径を備えた多孔質体の三次元構造通過層と、
前記三次元構造通過層の内部にトコジラミ捕獲用の粘着剤が含浸されて形成された多孔質である三次元構造粘着層と、
前記三次元構造体の本体の外表面から延設され、立体的空間を囲繞する三次元立体網体と、
前記三次元構造通過層の一部に、保護対象とするオブジェクトや周囲の壁面に貼付して前記三次元トコジラミ捕獲器の本体を固定する主貼付部を備え、
前記三次元立体網体の先端付近を前記オブジェクトや周囲の前記壁面に貼付して固定する副貼付部を備え、
前記三次元立体網体は、前記トコジラミが通過不能な孔径である第1の三次元立体網体部と、前記トコジラミが通過可能な孔径である第2の三次元立体網体部を備えており、
前記第2の三次元立体網体部の先端付近に、保護対象とする前記オブジェクトや周囲の前記壁面に貼付して固定する副貼付部が設けられており
前記第2の三次元立体網体部から前記第1の三次元立体網体部を介して前記三次元構造通過層の外表面から内部に入り込んだ前記トコジラミを前記三次元構造粘着層で捕獲することを特徴とする三次元トコジラミ捕獲器。
【請求項2】
前記三次元構造通過層の外表面には前記三次元構造粘着層が露出しておらず、前記トコジラミの体の一部が前記三次元構造粘着層の前記粘着剤に捕獲されて動けなくなるまで前記三次元構造粘着層の内部に侵入させることを特徴とした請求項1に記載の三次元トコジラミ捕獲器。
【請求項3】
前記主貼付部が、前記三次元トコジラミ捕獲器の本体の一面または複数の面に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の三次元トコジラミ捕獲器。
【請求項4】
前記三次元立体網体の形状が全体として漏斗の形をしており、前記漏斗の紡錘部分が前記第1の三次元立体網体部であり、前記漏斗の先端部分が前記第2の三次元立体網体部であり、
前記漏斗の先端部分の前記第2の三次元立体網体部において外表面側から前記トコジラミが内表面側へ誘導され、前記トコジラミがさらに移動すると前記第1三次元立体網体と前記三次元構造体の本体により囲まれた空間に囲繞されることを特徴とする請求項1に記載の三次元トコジラミ捕獲器。
【請求項5】
前記三次元立体網体の形状が全体として投網の形をしており、前記投網の中心部分に前記三次元構造体の本体が位置し、前記三次元構造体の本体から前記第1の三次元立体網体部が拡がり、前記第1の三次元立体網体部の先端側に前記第2の三次元立体網体部が設けられており、
前記オブジェクトや周囲の前記壁面に直線状または曲線状に前記第2の三次元立体網体部を沿わせて貼付でき、前記投網の先端部分の前記第2の三次元立体網体部において外表面側から前記トコジラミが内表面側へ誘導され、前記トコジラミがさらに移動すると前記第1三次元立体網体と前記三次元トコジラミ捕獲器の本体により囲まれた空間に囲繞されることを特徴とする請求項1に記載の三次元トコジラミ捕獲器。
【請求項6】
前記第1三次元立体網体の内表面に、前記トコジラミが後進しないように複数の返し部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の三次元トコジラミ捕獲器。
【請求項7】
前記三次元構造体の前記三次元構造通過層および前記三次元構造粘着層が、ウレタンフォーム、ダブルラッセル、不織布、コットン、ガーゼから選択された1または複数の立体繊維質の多孔質体である請求項1から6のいずれかに記載の三次元トコジラミ捕獲器。
【請求項8】
前記三次元構造体の前記三次元構造粘着層内に誘引剤が含有されている請求項7に記載の三次元トコジラミ捕獲器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベッド、ソファー、家具、旅行鞄、キャリーケース、敷布、敷物、マットレス、畳、絨毯、自動車の座席シート等に繁殖するトコジラミ類を捕獲するトコジラミ捕獲器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から人や温血動物を吸血する有害動物としてトコジラミは忌避されてきた。トコジラミは、通常、日中を暗い閉鎖された場所で過ごし、ベッド、ソファー、家具、旅行鞄、キャリーケース、紙の隙間を好み、人間の住環境に入り込む害虫であった。トコジラミは、人間の住環境内に自分達が生活する微小環境を作り出して長期に潜伏する。このトコジラミが世界的に蔓延して勢いを増している。
トコジラミは、成虫で可視程度の大きさ(5mm~8mm程度)であるが、やはり視認は困難である上、移動性が高く、主に夜行性であり、そのため発見と駆除が困難であることで知られている。このように駆除すべき有害動物であるトコジラミであるが、体長が小さい上に、ベッド、家具、鞄、キャリーケース、毛布、カーペットなど繊維類の中に潜んでいるため肉眼では存在を確認することは困難である上、自力移動または人々の間での接触移動などの手段によりトコジラミが固定の巣に留まるよりも居場所を転々とするため、駆除が困難であった。
【0003】
トコジラミを捕獲する目的でトコジラミを粘着シートなどにより保持する捕獲シートタイプのトコジラミ対策技術が知られている。
【0004】
図10は、特許文献1にかかる特開2014-064499号に開示されたトコジラミ捕獲装置を簡単に示す図である。
特開2014-064499号(特許文献4)は、波状に加工された波状板状体12と、粘着面を有するとともに粘着面を波状板状体12側に向けて波状板状体12の波状凸部Aに貼着する粘着体13を有する構造であり、粘着体13の粘着面と波状板状体の波状凸部間に害虫侵入部Bを設ける害虫捕獲器11が開示されている。
【0005】
図11は、特許文献2にかかる特開2015-119681号に開示されたトコジラミ防御装置を簡単に示す図である。
特開2015-119681号(特許文献5)は、表面の静摩擦係数が0.65以下であるシートからなることを特徴とするトコジラミ用防除シートであり、シートの周囲部が設置水平面に対して立ち上がり部を有するように構成されているものが開示されている。これは内部にトコジラミが進入しないようにある領域を囲んでしまい、言わばセーフティゾーンを設け、そのセーフティゾーンに旅行鞄や旅行者の荷物を載置するものである。
【0006】
図12は、特許文献3にかかる特表2020-009032号に開示されたトコジラミ捕獲装置を簡単に示す図である。
特表2020-009032号(特許文献6)は、歩行性害虫捕獲装置(1)は、粘着シート(3)の一端部(3a)が歩行用シート(4)の一端部(4a)に接続された接続部(5)を有し、粘着シート(3)と歩行用シート(4)の間に歩行性害虫Bを収容する空間部(10)が形成され、粘着シート(3)の他端部(3b)と歩行用シート(4)の他端部(4b)との間に、侵入口(11)が形成されている。粘着シート(3)と歩行用シート(4)との離間距離(H)が、侵入口(11)から接続部(5)に向けて漸減するテーパー形状を有する構造となっている。
隙間を好むトコジラミがテーパーのある隙間に入り込んで行けば、やがてその隙間に設けられた粘着性物体によって捕獲されるという仕組みである。
【0007】
図13は、特許文献4にかかる特開2012-514995号に開示されたトコジラミ検出装置を簡単に示す図である。
特開2012-514995号(特許文献1)は、トコジラミから走性反応を引き出す潜伏場(16)と、トコジラミに糞便又は抜け殻の様なトコジラミの存在の標示となるものを残させることのできる非捕捉式標示面(18)を備えているトコジラミ検出装置(10)を開示している。このトコジラミ検出装置はトコジラミを捕獲駆除することを目的としたものではなく、トコジラミが存在していることを標示するマーカーとして提供されている。トコジラミが潜伏場に出入りする途中に標示面を横切って進んでいく際にトコジラミの存在の標示となるものを残してゆけるようにしている。つまり、トコジラミそのものを捕獲するのではなくむしろ標示となるものの存在を検出するものである。例えば、標示面にマーカーを付着させておき、そのマーカー被覆部分におけるトコジラミの走行跡の有無を判別するものである。
【0008】
図14は、特許文献5にかかる特開2012-518433号に開示されたトコジラミ検出装置を簡単に示す図である。
特開2012-518433号(特許文献2)は、トコジラミなどの昆虫の蔓延を監視するための検出装置が開示されている。所定間隔によって隔てられた1対のプレートを備えており、その間隔はトコジラミ1匹が入り込むサイズになっている。このプレートが透明素材であれば、トコジラミの血糞を視認することができ、トコジラミが設置環境に存在しているか否かを判別するものである。
【0009】
図15は、特許文献6にかかる特表2013-544514号に開示されたトコジラミ検出/捕獲装置を簡単に示す図である。
特表2013-544514号(特許文献3)は、実質的に取り囲まれた内部空間及び落とし罠トラップを画定する筐体と、トコジラミがそこを通って移動することのできる少なくとも1つの通路を画定する落とし罠トラップに隣接して取りつけられた退避エレメントと、筐体の内部空間内に設けられた少なくとも1つのトコジラミ誘引エレメントと、並びに落とし罠トラップ及び/若しくは退避エ
レメント上の、又は隣接した場所で筐体の少なくとも1つの壁に画定された少なくとも1つの開口部を備えた構成を開示している。落とし罠トラップは、トコジラミが前記落とし罠トラップに入った場合に落とし罠トラップからの脱出を制限又は防止するように、少なくとも1 つの壁により取り囲まれる平らな窪んだ領域を備えてトコジラミを捕獲する仕組みとなっている。
【0010】
【文献】特開2014-064499号公報
【文献】特開2015-119681号公報
【文献】特表2020-009032号公報
【文献】特開2012-514995号公報
【文献】特開2012-518433号公報
【文献】特表2013-544514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1の特開2014-064499号公報に開示されたトコジラミ捕獲器は、波状に加工された波状板状体(つまり、段ボール材)と、粘着面を有するとともに粘着面を波状板状体側に向けて波状板状体の波状凸部に貼着する粘着体である。段ボールの開口にトコジラミが侵入してくれば、一定の捕獲性能はあると考えられる。やはり段ボールを主構造物とするため、トコジラミの活動領域に組み込まれる形で設置することが難しいものである。段ボールは折り曲げたりすることが容易な素材ではあるが、トコジラミの活動領域に間隙なく取り付けるように段ボールを変形することは難しい。トコジラミの活動領域の近くに設置したとしても、都合よくそのような開口に侵入する可能性は高くはない。そのため、実際にはトコジラミを効率的に捕獲するものとは言えない物であった。
【0012】
次に、特許文献2の特開2015-119681号公報に開示されたトコジラミ防除シートは、防除対象となる旅行鞄などの周囲に紙状のシートを立設してトコジラミを内部に侵入しないようにセーフティーゾーンを作成するが、トコジラミを駆除したり捕獲したりするものではない。これでは人間の住環境における人間の諸活動を確保できるものではなく、ホテルに短期滞在する旅行客の持ち物にトコジラミが侵入しないという対策にしかならないものであった。
【0013】
次に、特許文献3の特表2020-009032号公報に開示されたトコジラミ捕獲装置は、2枚の板材の両者間にテーパーを付けておいて、そのテーパー内部のトコジラミが侵入してくれば、高さがテーパーのために徐々に低くなり、トコジラミの背中などを粘着して捕獲する捕獲装置であり、狙い通りにテーパーの隙間にトコジラミが侵入してくれば、一定の捕獲性能はあると考えられる。板状材はテーパー角で蝶番状に配設されており、折り曲げたりすることが容易ではなく、トコジラミの活動領域に間隙なく取り付けるように変形することは難しい。また床にそのまま載置することが前提であるので、部屋の一部を占拠してしまい、人間の生活環境を劣化させてしまう。さらに、トコジラミの活動領域の近くに設置したとしても、都合よくそのようなテーパー内に侵入する可能性は高くはない。そのため、実際にはトコジラミを効率的に捕獲するものとは言えない物であった。
【0014】
特許文献4の特開2012-514995号公報に開示されたトコジラミ検出装置、および、特許文献5の特開2012-518433号公報に開示されたトコジラミ検出装置は、トコジラミがその環境に存在するか否かを認識することは可能であるが、如何に駆除するか捕獲するかについては開示がなく、おそらく殺虫剤のような強力な毒性の化学物質を散布することが想定されている。そのような殺虫剤の散布は人間にとっても有害であり、好ましい解決手段とは言えない。また、近年、殺虫剤に耐性をもったトコジラミが発生しており、殺虫剤の散布では十分に駆除できないことも想定されている。
【0015】
次に、特許文献6の特表2013-544514号公報に開示されたトコジラミ検出/捕獲装置は、狙い通りの落とし罠のトラップ口にトコジラミが侵入してくれば、一定の捕獲性能はあると考えられる。特に、落とし罠のトラップが段ボール主体で構成されている。しかし、トコジラミの活動領域に組み込まれる形で設置することが難しく、トコジラミの活動領域の近くに設置したとしても、都合よくそのような落とし罠のトラップに侵入する可能性は高くはない。そのため、実際にはトコジラミを効率的に捕獲するものとは言えない物であった。
【0016】
上記問題を解決するために、本発明は、トコジラミの本来の性質に基づく活動環境となる場所(たとえば、ベッドの脚の根元、ベッドのヘッドボードの上端や下端、ベッドのフットボードの上端や下端、ベッドのサイドフレームの上端や下端、ベッドのサイドフレームの隙間、ベッドサイドフレームとマットレスの間、家具の端、ソファーの脚の根元、ソファーの座面と背もたれとの間、絵画のフレーム、ゴミ箱の上端や下端、コンセント周辺など)の適切な位置に取り付けやすく、トコジラミの本来の性質に基づいて活動を続ける中で、自然と侵入せざるを得ない位置に配置することにより、三次元構造体の本体と三次元立体網体で形成された逃走不能な空間に導いて最終的には粘着力を発揮する構成部材により一度捕捉したトコジラミの離脱を許さず逃走できない三次元トコジラミ捕獲器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の三次元トコジラミ捕獲器は、トコジラミが通過可能な孔径を備えた多孔質体の三次元通過層と、前記三次元構造通過層の内部にトコジラミ捕獲用の粘着剤が含浸されて形成された三次元構造粘着層を備え、前記三次元構造通過層の外表面から内部に入り込んだ前記トコジラミを前記三次元構造粘着層で捕獲することを特徴とする三次元トコジラミ捕獲器である。
【0018】
ここで、上記の三次元構造粘着層は、三次元構造通過層の素材に粘着剤を含浸させて形成したものである。
三次元構造通過層の外表面には前記三次元構造粘着層が露出しておらず、トコジラミの体の一部が三次元構造粘着層の粘着剤に捕獲されて動けなくなるまで三次元構造粘着層の内部に侵入させることが好ましい。そうすれば、三次元的構造体の中で背中や胴が網目を形成する糸状の壁面や柱に捉えられ、もはや足で移動することができず、逃走が不可能になる。
【0019】
なお、本発明の三次元トコジラミ捕獲器の設置は、単に載置するだけでも良いが、設置個所に貼付するタイプが好ましい。トコジラミの活動は平面的ではなく、上記したように、ベッドや家具を自在に歩行して立体的な活動を行うからである。
【0020】
その工夫として、本発明の三次元トコジラミ捕獲器は、三次元構造体の本体の一部を家具やベッドなどの保護対象となるオブジェクトや周囲の壁面に貼付して固定する主貼付部と、前記三次元構造体の本体の外表面から延設されている三次元立体網体と、前記三次元立体網体の先端付近を家具やベッドなどのオブジェクトや周囲の壁面に貼付して固定する副貼付部を備えた構造となっている。
ここで三次元立体網体は、トコジラミが通過不能な孔径である第1の三次元立体網体部と、トコジラミが通過可能な孔径である第2の三次元立体網体部を備えた構造であり、第2の三次元立体網体部の先端付近に家具やベッドなどに貼付して固定する副貼付部が設けられた構造となっている。
このように三次元立体網体の孔径を調整しておくことにより、第2の三次元立体網体部の先端付近を副貼付部により家具やベッドなどに貼付して固定することができる。
つまり、このように第2の三次元立体網体部の端部をトコジラミの活動範囲での通り道に貼付しておけば、自然と第2の三次元立体網体部を通過して内部空間に入り込む。ここで、三次元立体網体であるので、貼付形状は自由自在に変形したり、家具などのオブジェクトの形状に沿わせて貼付したりすることが可能となる。自然と本来の活動範囲で歩行するトコジラミは内部に入り込んだ後、歩行を続ければ、自然と第1三次元立体網体に導かれるが、第1三次元立体網体の孔径はトコジラミが通過不能な孔径になっており、もはや外部への逃走ができなくなる。前方には主貼付部で貼付された三次元構造体の本体が待ち構えている。本来の活動場所であるので、多くのトコジラミはそのまま三次元構造体の本体へと侵入し、内部にある三次元構造粘着層の粘着物により捕獲される。
【0021】
ここで、三次元構造体の素材としては、多様な素材の採択が可能であるが、例えば、ウレタンフォーム(スポンジ体)、ダブルラッセル、不織布、コットン、ガーゼなどから選択された1または複数の立体繊維質の多孔質体がある。
例えば、ウレタンフォーム(スポンジ体)は連続気泡構造体の多孔質体である。連続気泡構造体の孔径としてはトコジラミが通過可能なものとして例えば3mm~10mmが好ましい。
また、例えば、他の三次元構造体であるダブルラッセル、不織布、コットン、ガーゼも、トコジラミが通過可能な孔径がある多孔質体が好ましい。
【0022】
三次元構造通過層の外部には粘着剤が付与されておらず内部に三次元構造粘着層がある。
この三次元構造粘着層は、従来の防トコジラミシートに比べて粘着面積が飛躍的に増加している。従来の防トコジラミシートは単層の粘着面だけであるため粘着面の面積分しか粘着面積がなかった。一方、本発明の三次元トコジラミ捕獲器では、三次元構造粘着層が三次元構造体に粘着剤が含浸したものであり、その骨格となる構造体自体が粘着性を持つため、その面積は三次元的に飛躍的に増大している。
なお、この三次元構造粘着層内に誘引剤が含有されていることが好ましい。やはりトコジラミの内部への侵入を促すためである。
【0023】
次に、本発明の三次元トコジラミ捕獲器の設置(貼付)の状態、特に三次元構造体の本体から延設されている三次元立体網体の立体的形状の工夫について述べる。
第1の三次元立体網体の設置の全体形状は、三次元立体網体の形状が全体として漏斗の形となるように配設されており、漏斗の紡錘部分が第1の三次元立体網体部であり、漏斗の先端部分が第2の三次元立体網体部である。
上記構成により、漏斗の先端部分の第2の三次元立体網体部において外表面側からトコジラミが内表面側へ誘導され、内表面側にあるベッドや家具などに達したトコジラミがさらに移動すると、第1三次元立体網体と三次元構造体の本体により囲繞された空間に捕捉される。
【0024】
第2の三次元立体網体の設置の全体形状は、三次元立体網体の形状が全体として投網の形をしており、投網の中心部分に三次元構造体の本体が位置し、三次元構造体の本体から放射状に第1の三次元立体網体部が拡がり、その第1の三次元立体網体部の先端側に第2の三次元立体網体部が設けられた形状であり、副貼付部によって第2の三次元立体網体部の先端付近が配置された構造である。
上記構成により、直線状または曲線状に自在に変形して家具やベッドなどに第2の三次元立体網体部を沿わせて貼付できる。この配置により、投網の先端部分にあたる第2の三次元立体網体部において外表面側からトコジラミが内表面側へ誘導され、内表面側にある家具やベッドなどに達したトコジラミがさらに移動すると第1三次元立体網体と三次元構造体の本体により囲繞された空間に捕捉される
【0025】
なお、一度、第2三次元立体網体を通過して内部空間に入り込んだトコジラミが後進して逃走しないように、第1三次元立体網体の内表面にトコジラミが後進できないように複数の返し部材が設けられていることが好ましい。
つまり、魚の魚籠(びく)のように前方には侵入できるが、後方へ移動するのが困難になり、トコジラミの後進逃走を許さない構成とすることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施例1にかかる本発明の三次元トコジラミ捕獲器の構造をごく簡単に示した図である。
図2】試作した本発明の三次元トコジラミ捕獲器に補足されているトコジラミの様子を示す図である。
図3】本発明の三次元トコジラミ捕獲器100を用いた場合のトコジラミ捕獲の流れを簡単に説明する図である。
図4】本発明の三次元トコジラミ捕獲器100を設置する様子を簡単に示す図である。
図5】本発明の三次元トコジラミ捕獲器100の設置状態の例を簡単に示す図である。
図6】本発明の三次元トコジラミ捕獲器100をオブジェクト200に対して多様な姿勢で設置できる例を簡単に示した図である。
図7】実施例2にかかる本発明の三次元トコジラミ捕獲器100Aの設置状態の例を簡単に示す図である。
図8】実施例2にかかる本発明の三次元トコジラミ捕獲器100Aの設置状態の例が投網のような形状になっている例を簡単に示す図である。
図9】第1網体141の内表面側に設けられた、いわゆる「返し構造」を簡単に示す図である。
図10】特許文献1にかかる特開2014-064499号に開示されたトコジラミ捕獲装置を簡単に示す図である。
図11】特許文献2にかかる特開2015-119681号に開示されたトコジラミ防御装置を簡単に示す図である。
図12】特許文献3にかかる特表2020-009032号に開示されたトコジラミ捕獲装置を簡単に示す図である。
図13】特許文献4にかかる特開2012-514995号に開示されたトコジラミ検出装置を簡単に示す図である。
図14】特許文献5にかかる特開2012-518433号に開示されたトコジラミ検出装置を簡単に示す図である。
図15】特許文献6にかかる特表2013-544514号に開示されたトコジラミ検出/捕獲装置を簡単に示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の三次元トコジラミ捕獲器の実施形態を説明する。なお、以下の実施形態は一例に過ぎず本発明の技術的範囲を制限するものではない。
【実施例1】
【0028】
以下、本発明の三次元トコジラミ捕獲器の実施例1にかかる構成例について述べる。
図1は実施例1にかかる本発明の三次元トコジラミ捕獲器の構造をごく簡単に図示したものである。
図1(a)は三次元トコジラミ捕獲器100斜視図、図1(b)は三次元通過層110および三次元構造粘着層120の模式的な拡大図である。分かりやすいようにごく簡単に示されている。
図1に見るように、本発明の三次元トコジラミ捕獲器100は、三次元通過層110aおよび110bと、三次元通過層110aと110bの間に挟み込まれている三次元構造粘着層120を備えた構成となっている。
【0029】
三次元通過層110aおよび110bは、トコジラミが通過可能な孔径を備えた構造物であり、三次元構造粘着層120の表裏に位置し、トコジラミを内部に通過させることができ、かつ、三次元構造粘着層120が剥き出しになるのを防止する役割を持っている。
【0030】
三次元通過層110aおよび110bの素材としては多孔質体であればよく、特に限定されない。例えば、三次元連続気泡体、三次元繊維質体などで良い。
三次元連続気泡体の具体例としては、ウレタンフォーム、ゴム発泡剤フォーム、メラミンフォーム、EVAスポンジフォームなど多様なものがある。多孔質体の素材としては、適度な連続気泡構造体の多孔質体を作れる発泡性能がある素材であれば他の素材でも良い。
三次元繊維質体の具体例としては、ダブルラッセル、不織布、フェルト、織布、コットン、ガーゼ、紙などがある。繊維質のものが立体的に組み合わされていれば他の素材でも良い。
それらのうちの単体の素材でも良いし、複数の素材の組み合わせとすることもあり得る。単層の厚手のもの、複数層のものも含まれ得る。なお、図1の例はスポンジ状の連続気泡構造体の多孔質体を簡単に示した図となっている。
【0031】
多孔質である三次元構造体の孔径としては3~10mmが好ましい。一部にそれよりも大きな孔径やそれよりも小さな孔径が含まれていても良い。
トコジラミには、トコジラミ、タイワントコジラミなどの種類があるが、これらのトコジラミは成虫で概ね同じ大きさで5~8mm程度である。これらの成虫が無理なく侵入できる孔径の大きさとしては5~10mmが適当である。幼虫の対策も考慮すれば一部は3~5mm程度の孔径のものが散在していても良い。
【0032】
三次元構造粘着層120は、三次元構造通過層110の内部に設けられたトコジラミ捕獲用の三次元構造の粘着層であり、三次元通過層110aおよび110bに挟み込まれている。つまり、図1に示すように、トコジラミ捕獲用の三次元構造粘着層120が三次元構造体の外表面には露出せず内部に形成されている。
例えば、三次元構造粘着層120は、三次元通過層110aおよび110bの素材に粘着剤を含浸させて形成したものである。三次元通過層110aおよび110bは多孔質体であるので、そこに粘着剤を含浸させれば、三次元構造の粘着層が形成できる。つまり、三次元構造粘着層120は、3~10mm程度の多孔質体の三次元構造体であり、その骨格となる三次元構造体自体が粘着性を持ったものとなる。
【0033】
粘着剤の種類は、アクリル系、スチレン系、ゴム系、シリコン系、ロジン系、ウレタン系等、特に限定されないが、例えば、アクリル酸エステル共重合体を含有するアクリル系粘着剤を用いることができる。
【0034】
アクリル酸エステル共重合体には、アクリル系トリブロック共重合体、アクリル系ジブロック共重合体がある。
アクリル系粘着剤は、上述したトリブロック共重合体のみからなっていてもよいが、適宜他の成分が配合されていてもよい。アクリル系粘着剤に配合されてもよい成分としては、トリブロック共重合体との相容性がよく、均一性を向上させ、耐熱性及び耐候性により優れた粘着剤を得るという観点から、アクリル系ジブロック共重合体、粘着付与剤等が考えられる。
ジブロック共重合体は、必要に応じ、分子側鎖中または分子主鎖末端に水酸基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、トリメトキシシリル基等の官能基を有していてもよい。
【0035】
さらに、タック、粘着力、保持力の向上及び調整を容易なものとするためには、アクリル系粘着剤に粘着付与剤を配合することが好ましい。配合可能な粘着付与剤としては、例えばロジンエステル、ガムロジン、トール油ロジン、水添ロジンエステル、マレイン化ロジン、不均化ロジンエステル等のロジン誘導体、テルペンフェノール樹脂、α-ピネン、β-ピネン、リモネン等を主体とするテルペン系樹脂、(水添)石油樹脂、クマロン-インデン系樹脂、水素化芳香族コポリマー、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂等が挙げられる。これらは、一種または二種以上で使用することができる。
【0036】
なお、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体、粘着付与剤の配合の有無及び配合比は、粘着製品の用途、被着体の種類等に応じて適宜選択することができ、特に制限されない。
粘着剤は、エマルション型粘着剤であってもよく、ホットメルト型粘着剤であってもよい。
【0037】
このような粘着剤を、三次元通過層110aおよび110bの素材に含浸させる。その含浸量は、少な過ぎると効果が小さく、多過ぎると粘着剤によって三次元通過層110aおよび110bの目が潰れて三次元網目状の構造が維持できない。そこで、ウレタン等の三次元網目状の構造体の壁面や柱自体には行き渡るが升目の隙間は埋まらない程度の含浸量とする。例えば、含浸量を10~200g/m2の範囲とする。
【0038】
粘着剤の粘性については、ウレタン等の三次元網目状の構造体の中で留まる必要があるため、あまりに低いと流れ出てしまうおそれがあり、あまりに大きすぎると塗布がしにくくなり三次元構造粘着層120の全体に粘着層が均等に行き渡りにくくなる。そこで、粘性は三次元網目状の構造体から容易に流れ出さない程度で、塗布に適した粘度とする。
【0039】
粘着剤の塗布はどのような塗布方法でも良いが、例えば、シルクスクリーン印刷の要領で印刷技術を用いて粘着剤を塗布することができる。つまり、粘着剤をシルクスクリーンのインクと見立てて、三次元通過層110aおよび110bの表面に対して印刷する要領で表面に均一に塗布する。
この場合、三次元構造粘着層120の製造方法は、表面に粘着剤を印刷した三次元通過層110aと三次元通過層110b同士を押圧して両者を貼り合わせて三次元構造粘着層120を製作する。
また、塗布方法としては、シルクスクリーン印刷ではなく、ロール状の三次元通過層110aと三次元通過層110bに対して、ローラーを用いて連続塗布する方法もあり得る。
【0040】
三次元構造粘着層120は、従来の防トコジラミシートに比べて粘着面積が飛躍的に増加している。この例では三次元構造粘着層120がスポンジ状の連続気泡構造体で、いわば三次元網目構造でありその骨格となる構造体が粘着性を持つため、その面積は三次元的に飛躍的に増大している。
また、三次元構造粘着層120は、上記のように、三次元構造粘着層120には300~3000μm程度の隙間が多数形成されているので、トコジラミの体の一部が粘着剤に捕獲されて動けなくなるまで三次元構造粘着層の内部に侵入させることが可能な構造となっている。
【0041】
三次元構造粘着層120は、トコジラミの誘引餌を含んでいることが好ましい。
トコジラミの誘引餌はトコジラミが好むものであれば良く限定されない。例えば、誘引剤としては、ノナナール、1-オクタン-3-オール、スペアミント油、コリアンダー油等があり、さらに、アルデヒド系化合物、ケトン系化合物、ヒスタミン系化合物などもあり得る。
三次元構造粘着層120が誘引餌を含んでいるのでトコジラミは三次元構造粘着層120に向けて誘引されてくる。
以上が、本発明の三次元トコジラミ捕獲器100の各部の構成の説明である。
【0042】
図2は、試作した本発明の三次元トコジラミ捕獲器に補足されているトコジラミの様子を示す図である。拡大して簡単に示した図となっている。倍率は50倍となっている。
図2の例では、素材はウレタンフォームを用いている。粘着剤はアクリル系エステル重合体のものから選定して用いた。
このように、図2に示した本発明の三次元トコジラミ捕獲器100のトコジラミの捕捉効果が得られることが理解されよう。
【0043】
次に、本発明の三次元トコジラミ捕獲器100を用いた場合のトコジラミ捕獲の流れについて述べる。
図3は、本発明の三次元トコジラミ捕獲器100を用いた場合のトコジラミ捕獲の流れを簡単に説明する図である。
本発明の三次元トコジラミ捕獲器100は、トコジラミが生息していることが想定される箇所、例えば、ベッド、ソファー、家具、旅行鞄、キャリーケース、敷布、敷物、マットレス、畳、絨毯、自動車の座席シート等などどこでも設置することができる。
本発明の三次元トコジラミ捕獲器100の表面または裏面の三次元通過層110aおよび110bには貼付できる接着剤が設けられている場合、載せ置くだけで貼付することができる。
【0044】
トコジラミは設置場所に多数生息しており動き回っている。
三次元構造粘着層120が誘引餌を含んでいるのでトコジラミは三次元構造粘着層120に向けて誘引されてくる。
トコジラミはまず、三次元トコジラミ捕獲器100の表面または裏面の三次元通過層110aおよび110bの表面に取り付いて、さらに、三次元通過層110aおよび110bの表面から内部に侵入してくる。
三次元通過層110aおよび110bには、上記したように、3~8mm程度の孔径が連続した多孔質体の三次元構造体となっているので、間隙を通って三次元通過層110aおよび110bの内部に侵入可能である。
【0045】
やがて、トコジラミは三次元通過層110aおよび110bを通過して三次元構造粘着層120に到達する。
トコジラミは三次元構造粘着層120に到達するが、三次元構造粘着層120も、三次元通過層110aおよび110bと同様の多孔質体の三次元構造粘着体となっているので、粘着剤に捕捉されて動けなくなるまで、引き続き三次元構造粘着層120の内部に侵入を続ける。
【0046】
そして、三次元構造粘着層120の内部に侵入したトコジラミが歩き回わっているうちにまた後戻りしようとしたりするうちに、トコジラミの足以外の背中や体側や頭部などの部位が、粘着性を持った三次元構造粘着層の骨格となる構造体に触れ、足以外の当該部位が捕捉されて動けなくなってしまう。
従来のトコジラミ捕獲シートは平面的でトコジラミの足を捕捉するのみであり、足の捕捉は体全体のごく一部であり、結局トコジラミが離脱して逃走することもあるが、本発明の三次元トコジラミ捕獲器100は、三次元構造粘着層120の内部に侵入したトコジラミに対して、三次元的にあらゆる方向に接着剤が含浸された構造体が存在しているため、あらゆる方向から粘着剤による捕捉が可能である。特にトコジラミの背面が粘着剤に捕捉されると粘着面積が大きく、かつ足は空中にあり、突っ張りなどが効かない状態であり、粘着剤で捕捉されるとトコジラミは逃げる術はなく、確実にトコジラミが死滅するまで捕捉されたままとなる。
【0047】
図3(b)は、三次元構造粘着層120の一部を拡大し、トコジラミの背中や胴が多孔質体である三次元構造粘着層120の一部に引っ付いて動けなくなって捕捉された様子を簡単に示す図である。トコジラミの背中や胴が三次元構造粘着層120の連続気泡体の一部に引っ付くと足は気泡体の空中にあり、いわゆる足をジタバタしても逃げられない状況に陥っている。
以上が、本発明の三次元トコジラミ捕獲器100を用いた場合のトコジラミ捕獲の流れについての説明である。
【0048】
次に、本発明の三次元トコジラミ捕獲器100の取り付けの例を簡単に示す。
図4および図5は、本発明の三次元トコジラミ捕獲器100を設置する動作および設置状態の例を簡単に示す図である。
図4および図5の例は、テーブル200の脚210に三次元トコジラミ捕獲器100を取り付けた例となっており、テーブルの座面下の脚の根元付近に主貼付部131Aを介して三次元トコジラミ捕獲器100の本体130を貼付する。
【0049】
この例では、三次元トコジラミ捕獲器100の本体部130における主貼付部131Aは、図中テーブル200の座面の底面に対向している面に設けられている。また、主貼付部131は一面だけでなく、三次元トコジラミ捕獲器の本体部130が周回状態を維持しやすいように、図4(a)および図4(b)に示したように、周回により当接し合う面にも主貼付部131Bが設けられている。
つまり、図4(b)に示すように、下方から上方に向けて三次元トコジラミ捕獲器の本体部130を当接させて行けば、主貼付部131Aがテーブル200の座面の底面に当接して貼付されるものとなっている。
図4(a)に示すように、三次元トコジラミ捕獲器の本体部130をテーブル200の座面の底面に当接させて貼付させつつ、テーブル200の脚210の周囲に巻き付けて行く。
【0050】
図5は、三次元トコジラミ捕獲器100の設置状態を示している。
図5(a)および図5(b)に示すように、テーブル200の脚210の周囲に三次元トコジラミ捕獲器100の本体130が周回して設置されている。主貼付部131Aによりしっかりと接着固定されている。
なお、この例では、三次元トコジラミ捕獲器100の本体130が周回した状態を維持しやすいように、主貼付部131Bも設けられており、周回の状態を維持した状態で安定して設置される。
【0051】
なお、本発明の三次元トコジラミ捕獲器100は、テーブル200の脚210だけに限らず、多種多様なオブジェクトや周囲の壁面にも貼付可能である。
その状態は個々に挙げると際限がないところ、本発明の三次元トコジラミ捕獲器100は、オブジェクトの上面に貼付する状態、オブジェクトの側壁面に貼付する状態、オブジェクトの下面に貼付することも可能である。
図6は、本発明の三次元トコジラミ捕獲器100をオブジェクト200に対して多様な姿勢で設置できる例を簡単に示した図である。
図6(a)は、オブジェクト200の上面に貼付した状態を示す図、図6(b)は、オブジェクト200の側壁面に貼付した状態を示す図、図6(c)は、オブジェクト200の下面に貼付した状態を示す図である。
このように、本発明の三次元トコジラミ捕獲器100は、多種多様なオブジェクト200や周囲の壁面にも貼付可能である。
【実施例2】
【0052】
以下、実施例2にかかる本発明の三次元トコジラミ捕獲器の構成例について述べる。
実施例2にかかる本発明の三次元トコジラミ捕獲器100Aは、実施例1に示した三次元通過層110、三次元構造粘着層120を備えた本体130に加え、網体140を備えた構成となっている。トコジラミの活動環境に適した形に変形し、三次元トコジラミ捕獲器100Aをトコジラミの活動環境において自由自在に設置できる構成となっている。
【0053】
なお、網体140は、トコジラミが通過不能な孔径である第1網体部141と、トコジラミが通過可能な孔径である第2網体部142と、副貼付部143を備えたものとなっている。
【0054】
図7は、実施例2にかかる本発明の三次元トコジラミ捕獲器100Aの設置状態の例を簡単に示す図である。
図7の例は、実施例1で図4および図5を用いて示した設置例、つまり、テーブルに三次元トコジラミ捕獲器100Aを取り付けた例と同様であるが、網体140が用いられる様子を示している。
なお、図7(a)、図7(b)において、網体140の下方に隠れている三次元トコジラミ捕獲器100Aの本体130が透過して図示されている。
【0055】
上記した実施例1における図4(b)から図5(b)と同様に、三次元トコジラミ捕獲器100Aをテーブル200の脚210の周囲に巻き付けて行くと、図7(a)から図7(b)に示すように、網体140も周回してゆき、図7(b)に示すように、テーブル200の座面下の脚210の根元付近に主貼付部131を介して本体130を貼付し、脚210に沿って網体140が取り付けられ、第2網体部142の先端付近の副貼付部143を脚の先端に貼付して固定している例である。
【0056】
図7の例では、網体140の形状が全体として漏斗の形をしており、漏斗の紡錘部分が第1網体部141となっており、漏斗の先端部分付近が第2網体部142となっており、その最先端部分は副貼付部143によってテーブルの脚の先端に取り付けられている。
つまり、網体140の形状が全体として漏斗の形をしており、漏斗の最上部は実施例1で示した三次元構造体の本体130が存在しており、全体として第2網体部142、第1網体141、本体130により囲繞された漏斗状の空間が形成されている。
【0057】
ここで、漏斗の先端部分の第2網体部142はトコジラミが通過可能な孔径であり、活動する床面側、つまりトコジラミが外表面側から内表面側へ通過して入り込むことができ、テーブルの脚に達したトコジラミが上方へ登ってゆくと、または、第2網体部142の内表面側をトコジラミが上方に登っていくと、第1網体141と本体130により囲まれた空間に囲繞される仕組みとなっている。
トコジラミは本来の生息領域であるテーブルの根元に向けて移動する性質を有するので、実施例1で説明した本発明の三次元トコジラミ捕獲器100Aに向けて侵入してゆく。
【0058】
ここで、網体140の先端側にトコジラミが通過可能な孔径である第2網体142として外部からトコジラミがこのトラップに侵入可能としておき、第2網体142から内部に入ったトコジラミは上方へ行くと、トコジラミが通過不能な孔径である第1網体141で外部に逃走できなくなり、トコジラミは第1網体141と本体130により囲繞された漏斗状の空間に囲繞されて捕捉される。やがてトコジラミは本来の性質に基づき、本来の生息領域であるテーブルの脚に貼付されている本体130の三次元通過層110を通過し、やがて三次元構造粘着層120において捕捉される。
【0059】
このように、実施例2の三次元トコジラミ捕獲器100Aを用いれば、図7に示すように、言わば、トコジラミのトラップを簡単に形成することができる。
実施例2の三次元トコジラミ捕獲器100Aの設置は、図7のように漏斗状に限らず、多様な形状が可能である。
つまり、実施例2にかかる三次元トコジラミ捕獲器100Aは、本体130自体は主貼付部131により上下左右自在に貼付することができ、さらに、三次元構造体の本体130の外表面から延設されている網体140をトコジラミの移動する動線に囲繞するように拡げて設置することができる。
【0060】
例えば、網体140の設置形状が投網のような形状となっている例である。
投網の中心部分に三次元トコジラミ捕獲器100Aの本体130が位置し、三次元トコジラミ捕獲器100Aは本体130から放射状に第1網体部141が拡げられており、第1網体部141の先端側に第2網体部142が設けられており、副貼付部143により第2網体部142が固定されている。
【0061】
図8は、実施例2にかかる本発明の三次元トコジラミ捕獲器100Aの設置状態の例が投網のような形状になっている例を簡単に示す図である。
図8の例は、保護対象となるベッドのサイドフレーム200の縁に沿って実施例2にかかる三次元トコジラミ捕獲器100Aを取り付けた例を示した図となっている。図8(a)は、ベッドサイドフレーム200の外側面側に主貼付部131を介して本体130を貼付し、ベッドのサイドフレーム200に沿って網体140を拡げている様子を示している。図8(b)は側面からその様子を簡単に示している。
第1網体部141がベッドのサイドフレーム200に沿って投網のように拡げられ、その先端には第2網体部142が設けられており、その先端付近の副貼付部143をベッドのサイドフレームの縁に貼付して固定している。
【0062】
図8(b)に示すように、本体130の外表面から投網のようにカーテン状に網体140が拡げられ、本体130から第1の網体141が吊下されて面状に拡がり、その下方には第2の網体142があり、網体140の下方先端は副貼付体143があり、壁面の下方に線状に貼付されている。このため、下方からアクセスしてきたトコジラミが第2の網体142から内表面側に入り込み、さらに上方へ登ることにより、第1の網体141と本体130に囲繞された空間に捕捉され、最後には本体130の三次元構造粘着層120により捕獲される。
【0063】
図8はベッドのサイドフレームを対象として取り付けた例であるが、保護対象となるオブジェクトは、家具、ベッド、ソファー、家具、旅行鞄、キャリーケース、敷布、敷物、マットレス、畳、絨毯、自動車の座席シート等、トコジラミが生息領域となる様々なオブジェクトを対象とすることができ、トラップを取り付ける範囲としてオブジェクト周辺の床面や天井面や壁面などに貼付することが可能である。
第2網体部142を沿わせて副貼付部143を介して直線状または曲線状に貼付でき、投網の先端部分の第2網体部142において外表面側からトコジラミが内表面側へ誘導され、内表面側にある保護対象である家具などのオブジェクトに達したトコジラミがさらに移動すると第1網体141と本体130により囲繞された空間に捕捉される。
【0064】
つまり、図8に示した例は、投網のように広がったトラップであり、トラップの内側に入り込んだトコジラミは、やがてトコジラミは本来の性質に基づき、本来の生息領域であるオブジェクトに貼付されている本体130へ行き着き、三次元通過層110を通過し、やがて三次元構造粘着層120において捕捉される。
【0065】
図9は、第1網体141の内表面側に設けられた、いわゆる「返し構造」を簡単に示す図である。図9は第1網体141を縦断面で示したもので、「返し構造」が分かりやすいように強調して大きく図示している。
「返し構造」は一方向に傾いた繊毛であり、この「返し構造」の存在により、トコジラミは上に昇る性質とともに、後進して下側に逃走することが難しくなり、本体130の方へ常に導かれて移動する。
【0066】
以上、本発明の三次元トコジラミ捕獲器の好ましい実施形態を図示して説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の三次元トコジラミ捕獲器は、トコジラミ類を捕獲するトコジラミ捕獲シートとして提供することができる。トコジラミの本来の性質に基づく活動環境となる場所にあるオブジェクト、たとえば、ベッドの脚の根元、ベッドのヘッドボードの上端や下端、ベッドのフットボードの上端や下端、ベッドのサイドフレームの上端や下端、ベッドのサイドフレームの隙間、ベッドサイドフレームとマットレスの間、家具の端、ソファーの脚の根元、ソファーの座面と背もたれとの間、絵画のフレーム、ゴミ箱の上端や下端、コンセント周辺などに設置できる。
また、トコジラミが本来の性質に基づく活動を行うと逃走できないように囲繞されるトラップを自在に形成して提供することができる。
【符号の説明】
【0068】
100 三次元トコジラミ捕獲器
110 三次元通過層
120 三次元粘着層
130 本体
131 主貼付部
140 網体
141 第1の網体
142 第2の網体
143 副貼付部
【要約】
【課題】 トコジラミに対する粘着力を向上させ、一度捕捉したトコジラミの離脱を許さず逃走できない三次元トコジラミ捕獲器を提供する。
【解決手段】 トコジラミが通過可能な孔径を備えた三次元通過層110と、三次元通過層110の奥側に設けられた粘着剤が含浸されて形成されたトコジラミ捕獲用の三次元構造粘着層120を備えている。トコジラミ捕獲用の三次元構造粘着層120は三次元通過層110の外表面には露出していない。三次元通過層110の表面から内部に入り込んだトコジラミを三次元構造粘着層120で捕獲する。また網体140を用いて逃走できないように囲繞されるトラップを自在に形成することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15