(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】プログラム、情報管理システム及び情報管理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20241121BHJP
【FI】
G06Q50/10
(21)【出願番号】P 2021095456
(22)【出願日】2021-06-07
【審査請求日】2024-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】302066869
【氏名又は名称】株式会社ネクストシステム
(73)【特許権者】
【識別番号】520362398
【氏名又は名称】長澤 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】230110397
【氏名又は名称】田中 雅敏
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】長澤 幹夫
【審査官】三吉 翔子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-217255(JP,A)
【文献】特開2011-008774(JP,A)
【文献】特開2018-073204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想空間内で、アバターが空間を使用する権利を管理、または、取引するためのプログラムであって、
コンピュータを、
所定の動画データを文字符号化し、かつ、時系列に並べた情報である運動符号化データへと処理する符号化処理手段と、
前記運動符号化データに基づき、前記アバターに対応する認証トークンを生成する認証トークン生成手段
と、
ハッシュ関数を用いて、前記運動符号化データから、所定のハッシュ値を生成するハッシュ値生成手段として機能させるためのプログラムで
あり、
前記認証トークン生成手段は、重複しない記号情報である所定の記号情報と、前記所定のハッシュ値を組み合わせて、前記認証トークンを生成する
プログラム。
【請求項2】
コンピュータを、
前記認証トークンを記録する情報記録手段と、
アバターのユーザから提示された情報と、前記情報記録手段に記録された前記認証トークンを比較して、アバターの認証処理を行う認証処理手段として機能させる
請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記アバターは、前記仮想空間内で行われるイベントにおける観客アバターを含み、
前記認証トークンは、前記イベントが行われる前記仮想空間内における観客用の席の種類を規定する
請求項1または請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記認証トークンに紐づいた前記運動符号化データには、前記仮想空間内において、イベント中に前記アバターが実行する動き、または、イベントの報酬に関する動きであるイベント関連動作に関する動画データを文字符号化した情報が含まれる
請求項1、請求項2または請求項3に記載のプログラム。
【請求項5】
コンピュータを、
前記イベント関連動作を再生するためのボクセルアバターを生成するボクセルアバター生成手段と、
前記仮想空間内において、一定時間内、かつ、一定の範囲内で、前記ボクセルアバターを用いて、前記イベント関連動作を再生し、ボクセル空間での前記ボクセルアバターの干渉計算を行う干渉計算手段として機能させる
請求項4に記載のプログラム。
【請求項6】
コンピュータを、
前記仮想空間内で行われるイベント中に、
前記イベントに参加しているアバターの動きに基づく、一定時間でのボクセル空間の大きさと位置の空間情報である実測時空間ボクセルと、前記ボクセルアバターによる前記イベント関連動作に基づく、一定時間でのボクセル空間の大きさと位置の空間情報である予測時空間ボクセルを比較し、前記実測時空間ボクセルが前記予測時空間ボクセルの範囲を超えているか否かを判定して、
または、隣のアバターとの間で、前記実測時空間ボクセルに干渉が発生しているか否かを判定して、
前記イベントに参加しているアバターの動きを監視する動作監視手段として機能させる
請求項5に記載のプログラム。
【請求項7】
前記アバターは、前記仮想空間内で行われるイベントにおける出演者アバターを含み、
前記動作監視手段は、前記出演者アバターにおける、前記実測時空間ボクセルと、前記イベントの報酬に関する異なる動きでランク付けされた複数の動きに基づく前記予測時空間ボクセルを比較し、前記出演者アバターの動きが、前記ランク付けされた複数の動きのいずれかに該当するかを判定する
請求項6に記載のプログラム。
【請求項8】
前記符号化処理手段は、
前記所定の動画データから動体領域データを検知する第1の処理と、
前記動体領域データにノイズ除去処理を行うと共に、二分木アルゴリズムに基づき、少なくとも5つの矩形領域データに分割し、分類する第2の処理と、
前記矩形領域データから、各矩形領域の所定の境界点の座標データを抽出すると共に、一定のフレームレートにおける前記所定の境界点の座標データを時系列に並べて、文字符号化し、前記運動符号化データにする第3の処理を行う
請求項1、請求項2、請求項3または請求項4に記載のプログラム。
【請求項9】
仮想空間内で、アバターが空間を使用する権利を管理、または、取引するための情報管理システムであって、
所定の動画データを文字符号化し、かつ、時系列に並べた情報である運動符号化データへと処理する符号化処理部と、
前記運動符号化データに基づき、前記アバターに対応する認証トークンを生成する認証トークン生成部と、
ハッシュ関数を用いて、前記運動符号化データから、所定のハッシュ値を生成するハッシュ値生成部とを備え、
前記認証トークン生成部は、重複しない記号情報である所定の記号情報と、前記所定のハッシュ値を組み合わせて、前記認証トークンを生成する
情報管理システム。
【請求項10】
仮想空間内で、アバターが空間を使用する権利を管理、または、取引するための情報管理方法であって、
所定の動画データを文字符号化し、かつ、時系列に並べた情報である運動符号化データへと処理する符号化処理工程と、
前記運動符号化データに基づき、前記アバターに対応する認証トークンを生成する認証トークン生成工程と、
ハッシュ関数を用いて、前記運動符号化データから、所定のハッシュ値を生成するハッシュ値生成工程とを備え、
前記認証トークン生成工程は、重複しない記号情報である所定の記号情報と、前記所定のハッシュ値を組み合わせて、前記認証トークンを生成する
情報管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム、情報管理システム及び情報管理方法に関する。詳しくは、仮想空間内で、アバターの真正性を保証できると共に、仮想空間の利用権を効率よく管理、または、取引することに寄与するプログラム、情報管理システム及び情報管理方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネット等のネットワーク上に仮想空間を構築し、この仮想空間内で、アバターと呼ばれるキャラクタをユーザの分身として表示させ、他のユーザとのコミュニケーションを図る仮想社会システムが普及している。
【0003】
この仮想空間でのアバターを介したコミュニケーションは、通常、3~4人程度のユーザが、アバター用のモーションデータを再生し、アバターで様々な動きを表示したり、仮想空間上で会話をしたりすることが行われている。
【0004】
また、ネットワークを介してライブコンテンツを配信するサービスがインターネット生放送として普及している。このようなインターネット生放送において、配信者が仮想空間内で配信者アバターとして登場し、その映像をライブコンテンツとして配信する技術が利用されている。
【0005】
このようなライブコンテンツでは、モーションキャプチャ技術によって、配信者の動作が、配信者アバターの動作として合成された映像が配信される。
【0006】
また、HMD(Head Mount Display)を装着した演技者や観客が、ゲームや映画等にアバターとして参加し、それを複数の視点で撮影した映像を多チャンネルで配信するシステムも存在する。このシステムでは、配信を視聴する視聴者が、配信に関連するゲーム装置で育成したキャラクタを、視聴者アバターとして、配信に参加させることも可能である(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、アバターを用いて他のユーザとのコミュニケーションを効率良く行うために、ユーザの外見的特徴を表す外見情報、または、ユーザの人格的特徴を表す人格情報の少なくとも一方を含むユーザ情報を、アバターと対応付けて記録するシステムが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
また、ライブコンテンツに限らず、仮想空間内で、大規模なイベント、例えば、オリンピックのようなスポーツイベントを催し、イベント内で、競技者等の出演者アバターと、大量の観客アバターを表示して、イベントを実施することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平2002-271693号公報
【文献】特開平2008-217255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、仮想空間内で、観客アバターを入れてイベントを実施する場合、参加している観客アバターが、チケットを購入して参加している正規の観客アバターなのか、ハッキング等で観客アバターになりすまして参加しているアバターなのかを区別したいという要望が存在する。
【0011】
従前の技術では、ログイン時にユーザの生体情報(例えば、生年月日等)を活用して利用者を特定する等、個人ID単位でアバターによる仮想空間の利用権利の管理と認証が行われているが、この方法では、ログイン後に、なりすましのアバターを検知することができなかった。また、個人ID単位での認証では、例えば、一般席向けのチケットでありながら、VIP席を利用する等、契約違反の不正利用が容易であるという問題もあった。
【0012】
また、そもそも、仮想空間において分身のキャラクタを表示させるという前提のもと、ユーザに対して本人認証を行うこと自体にあまり意味がなく、ユーザの生体情報を用いた認証では、対象となるアバターが、仮想空間中で提供される時間及び空間を使用する権利を有しているか否か、即ち、アバターの真正性を証明することが困難であった。
【0013】
さらに、アバターの仮想空間の利用権利を効率よく管理、または、取引することや、イベント実施時の安全性の担保、また、大規模な人数のアバターへの対応を可能にすること等、アバターを介した仮想社会システムには、少なからず改善の余地があった。
【0014】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、仮想空間内で、アバターの真正性を保証できると共に、仮想空間の利用権を効率よく管理、または、取引することに寄与するプログラム、情報管理システム及び情報管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するために、本発明のプログラムは、仮想空間内で、アバターが空間を使用する権利を管理、または、取引するためのプログラムであって、コンピュータを、所定の動画データを文字符号化し、かつ、時系列に並べた情報である運動符号化データへと処理する符号化処理手段と、前記運動符号化データに基づき、前記アバターに対応する認証トークンを生成する認証トークン生成手段として機能させるためのプログラムとして構成されている。
【0016】
ここで、コンピュータを、所定の動画データを文字符号化し、かつ、時系列に並べた情報である運動符号化データへと処理する符号化処理手段として機能させることによって、アバターの認証トークンに紐づけたい動きのデータを、データサイズが小さな文字符号化データに変換して、動きのデータに基づくデータ量の小さな情報として利用可能となる。
【0017】
また、コンピュータを、運動符号化データに基づき、アバターに対応する認証トークンを生成する認証トークン生成手段として機能させることによって、動きのデータに由来するユニークなデータを、個々のアバターの認証トークンとして利用することができる。この運動符号化データの元となる対象物の動きのデータは、その動きが完全に一致する、即ち、同一のデータを取得することが難しく、唯一性を確保しやすい情報である。そこで、このような動きのデータを元に、アバターの認証トークンを生成して、アバターのID管理を行うことで、アバターの真正性を担保することができる。
【0018】
また、コンピュータを、ハッシュ関数を用いて、運動符号化データから、所定のハッシュ値を生成するハッシュ値生成手段として機能させる場合には、動きのデータを文字符号化したもののデータ量を、さらに圧縮して利用可能となる。これにより、アバターの数が大量となっても、それぞれのアバターに対応する認証トークンの生成に必要なデータ量が抑えやすく、大量のアバターにも利用しやすくなる。また、ハッシュ関数を用いることで、ハッシュ値の元となる運動符号化データや動きの動画データを特定することが困難となり、より一層、唯一性を確保しやすくなる。
【0019】
また、コンピュータを、ハッシュ関数を用いて、運動符号化データから、所定のハッシュ値を生成するハッシュ値生成手段として機能させ、認証トークン生成手段が、重複しない記号情報である所定の記号情報と、所定のハッシュ値を組み合わせて、認証トークンを生成する場合には、動きのデータに基づき生成したハッシュ値のデータを、所定の記号情報で管理しやすくなる。即ち、例えば、アバターを番号で分類したり、イベントを行う仮想空間内に設けた観客席の位置や種類を示す情報として、所定の記号情報を利用したりすることができる。なお、ここでいう所定の記号情報とは、例えば、数字の通し番号や、数字と文字組み合わせた記号情報等が含まれる。
【0020】
また、コンピュータを、認証トークンを記録する情報記録手段と、アバターのユーザから提示された情報と、前記情報記録手段に記録された前記認証トークンを比較して、アバターの認証処理を行う認証処理手段として機能させる場合には、動きのデータに基づく認証トークンを記録し、記録された認証トークンと、アバターのユーザから提示される認証トークンを比較して、正規に認証トークンを付与されたアバターか否かを認証することが可能となる。
【0021】
また、アバターは、仮想空間内で行われるイベントにおける観客アバターを含み、認証トークンは、イベントが行われる仮想空間内における観客用の席の種類を規定する場合には、観客アバターのID管理だけでなく、イベント時に位置する観客用の席のチケットとして、認証トークンを利用することができる。
【0022】
また、認証トークンに紐づいた運動符号化データには、仮想空間内において、イベント中にアバターが実行する動き、または、イベントの報酬に関する動きであるイベント関連動作に関する所定の動画データを文字符号化した情報が含まれる場合には、認証トークンを用いて、仮想空間におけるイベントに参加したアバターについて、イベント中にアバターが実行する動きも想定して、アバターを管理することができる。また、イベントに出演する出演者アバターに対する報酬伝票となる情報を認証トークンに含めて、アバターを管理することができる。ここで、アバターが実行する動きとは、観客アバターであれば、例えば、応援する動きやイベントを盛り上げるための動きである。また、アバターが実行する動きとは、出演者アバターであれば、例えば、イベント時の演技の動きや、スポーツの試合中の動作等の動きである。また、イベントの報酬に関する動きとは、例えば、アバター同士の相撲イベントにおける決まり手の動作等、内容に応じて出演者アバターに支払う報酬の額を規定する動きである。
【0023】
また、コンピュータを、イベント関連動作を再生するためのボクセルアバターを生成するボクセルアバター生成手段と、仮想空間内において、一定時間内、かつ、一定の範囲内で、ボクセルアバターを用いて、イベント関連動作を再生し、ボクセル空間でのボクセルアバターの干渉計算を行う干渉計算手段として機能させる場合には、イベント中のアバターの位置及び動きの内容に応じて必要となる時空間領域の範囲を把握して、アバター同士のボクセル衝突が生じない時空間の設計が可能となる。即ち、仮想空間の中で、ボクセルアバターを用いてイベント関連動作を再生して、アバター同士の間で、同一時刻に、ボクセル空間の同じ格子範囲を占めること(ボクセル衝突の発生)になるかどうかの干渉計算が可能となる。この干渉計算の結果に基づき、各アバターがイベント中に使用できる時空間範囲を考慮して、仮想空間におけるイベントの会場設計を行うことができる。例えば、観客アバターの数や動きを想定して、席の数や広さ、種類が異なる席の範囲等を設計することができる。また、イベントの内容や、出演者アバターの動きに応じて、舞台、リング、試合コート等の広さを設計することもできる。また、席の利用条件の策定(観客アバターに禁止する動き等の条件)や、座席表作成・採番の参考情報とすることができる。
【0024】
また、コンピュータを、仮想空間内で行われるイベント中に、イベントに参加しているアバターの動きに基づく、一定時間でのボクセル空間の大きさと位置の空間情報である実測時空間ボクセルと、ボクセルアバターによるイベント関連動作に基づく、一定時間でのボクセル空間の大きさと位置の空間情報である予測時空間ボクセルを比較し、実測時空間ボクセルが前記予測時空間ボクセルの範囲を超えているか否かを判定して、または、隣のアバターとの間で、実測時空間ボクセルに干渉が発生しているか否かを判定して、イベントに参加しているアバターの動きを監視する動作監視手段として機能させる場合には、イベント中のアバターが違反となる動きをしているか否かを検知可能となる。また、試合や競技等に関して、出演者アバターの勝敗の判定が可能となる。
【0025】
即ち、例えば、イベント中の観客アバターの動きを観察して、イベント中に、実際に観客アバターが行っている動きから生じる実測時空間ボクセルと、イベント中に観客アバターが実行することが予定されていた動きから生じる遅く時空間ボクセルを比較して、予定にない動きを検知し、違反に該当すると思われるアバターに対して、警告や退場等の対応を取ることが可能となる。また、例えば、観客アバターに対して付与された席の時空間範囲を超える、観客アバターの動きや移動を検知して、警告や退場等の対応を取ることが可能となる。さらに、出演者アバターであれば、例えば、相撲の試合中の出演者アバターが、土俵の範囲外に出たこと等を検知して、勝敗の判定を行うこともできる。このように、動作監視手段を介して、イベント中のアバターの安全管理や、イベントの催行管理を行うことができる。
【0026】
また、アバターが、仮想空間内で行われるイベントにおける出演者アバターを含み、動作監視手段が、出演者アバターにおける、実測時空間ボクセルと、イベントの報酬に関する異なる動きでランク付けされた複数の動きに基づく予測時空間ボクセルを比較し、出演者アバターの動きが、ランク付けされた複数の動きのいずれかに該当するかを判定する場合には、動作監視手段の判定により、イベント中の出演者アバターの動きを判定して、ランク付けされた複数の動きの中の、どの動きが実行されたかを認証することができる。即ち例えば、出演者アバターに対する報酬の査定に利用することができる。また、例えば、フィギアスケートや体操競技に関するイベントにおいて、ランク付けされた複数の動きと、各動きの難易度を設定して、認証トークンを出演者アバターに対する演技採点のためのルールブックとして利用することも可能となる。
【0027】
また、符号化処理手段が、第1の処理で、所定の動画データから動体領域データの検知を行う場合には、動画データに対して、撮像画像中の動きがある領域を検知することができる。なお、ここでいう所定の動画データは、高解像度の動画データ、または、水平方向に視点移動する監視カメラ等の動画データから、一部の範囲を切り出したデータであってもよい。また、ここでいう動体領域データの検知とは、動画データを構成するフレームにおいて、前のフレームから、次のフレームにかけて、値の変化する差分ピクセルを検知することを意味する。
【0028】
また、符号化処理手段が、第2の処理で、動体領域データにノイズ除去処理を行う場合には、撮像画像の中から、ノイズによる差分ピクセルを除去した動体領域データを抽出することが可能となる。また、ノイズ除去処理を行うことで、ノイズによる動体領域の細分化を避け、二分木アルゴリズムの反復適用を少ない回数に抑えた矩形領域分割が可能となる。
【0029】
また、符号化処理手段が、第2の処理で、二分木アルゴリズムに基づき、少なくとも5つの矩形領域データに分割し、分類する場合には、動画データの撮像範囲の中から、大きな動きのある範囲を、少なくとも5つの矩形領域データとして抽出することができる。これにより、所定の動画データから、データ容量の小さな矩形領域データを生成して、動きの特徴を反映した情報として利用可能となる。また、少なくとも5つの矩形領域データとして生成することで、個々の矩形領域を特定して、各々を区別することができる。これにより、区別した各矩形領域を関連づけて、対象物の全体の動きの特徴を反映した情報として利用可能となる。
【0030】
また、符号化処理手段が、第3の処理で、矩形領域データから、各矩形領域の所定の境界点の座標データを抽出すると共に、一定のフレームレートにおける所定の境界点の座標データを時系列に並べる場合には、各矩形領域データの動きを、境界点の座標データという二次元情報の時系列変化のみで表すことが可能となる。即ち、各矩形領域データの動きを、X座標とY座標の二次元座標値からなる配列として表すことができる。このことによれば、矩形領域データより更にデータ容量の小さな数値情報として、動き情報を取り扱い可能となる。なお、ここでいう所定の境界点とは、所定の動画データの撮像範囲において、矩形領域の4つの角のうち、例えば、各矩形領域の面積重みから算出した重心からの距離が最も遠い角に該当する部分である。
【0031】
また、符号化処理手段が、第3の処理で、一定のフレームレートにおける所定の境界点の座標データを時系列に並べて、文字符号化し、運動符号化データにする場合には、動画データの中に表れた一連の動きを、文字符号化して容量を小さくし、かつ、1つのデータとして取り扱いが可能となる。即ち、動き情報を1区切りにまとめて、1つのデータとして記録、保存、または、これに基づく再生を行うことができる。
【0032】
また、上記の目的を達成するために、本発明の情報管理システムは、仮想空間内で、アバターが空間を使用する権利を管理、または、取引するための情報管理システムであって、所定の動画データを文字符号化し、かつ、時系列に並べた情報である運動符号化データへと処理する符号化処理部と、前記運動符号化データに基づき、前記アバターに対応する認証トークンを生成する認証トークン生成部とを備える。
【0033】
ここで、所定の動画データを文字符号化し、かつ、時系列に並べた情報である運動符号化データへと処理する符号化処理部によって、アバターの認証トークンに紐づけたい動きのデータを、データサイズが小さな文字符号化データに変換して、この動きのデータに基づく、データ量の小さな情報として利用可能となる。
【0034】
また、運動符号化データに基づき、アバターに対応する認証トークンを生成する認証トークン生成部によって、動きのデータに由来するユニークなデータを、個々のアバターの認証トークンとして利用することができる。この運動符号化データの元となる対象物の動きのデータは、その動きが完全に一致する、即ち、同一のデータを取得することが難しく、唯一性を確保しやすい。そこで、このような動きのデータを元に、アバターの認証トークンを生成して、アバターのID管理を行うことで、アバターの真正性を担保することができる。
【0035】
また、上記の目的を達成するために、本発明の情報管理方法は、仮想空間内で、アバターが空間を使用する権利を管理、または、取引するための情報管理方法であって、所定の動画データを文字符号化し、かつ、時系列に並べた情報である運動符号化データへと処理する符号化処理工程と、前記運動符号化データに基づき、前記アバターに対応する認証トークンを生成する認証トークン生成工程とを備える。
【0036】
ここで、所定の動画データを文字符号化し、かつ、時系列に並べた情報である運動符号化データへと処理する符号化処理工程によって、アバターの認証トークンに紐づけたい動きのデータを、データサイズが小さな文字符号化データに変換して、この動きのデータに基づく、データ量の小さな情報として利用可能となる。
【0037】
また、運動符号化データに基づき、アバターに対応する認証トークンを生成する認証トークン生成工程によって、動きのデータに由来するユニークなデータを、個々のアバターの認証トークンとして利用することができる。この運動符号化データの元となる対象物の動きのデータは、その動きが完全に一致する、即ち、同一のデータを取得することが難しく、唯一性を確保しやすい。そこで、このような動きのデータを元に、アバターの認証トークンを生成して、アバターのID管理を行うことで、アバターの真正性を担保することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明に係るプログラム、情報管理システム及び情報管理方法は、仮想空間内で、アバターの真正性を保証できると共に、仮想空間の利用権を効率よく管理、または、取引することに寄与するものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明を適用した情報処理システムAの構成を示す概略図である。
【
図2】情報処理システムAを用いてイベントを運営する際の主催者、参加者、及び、認証ビジネス事業者の各々の作業手順を示す概略図である。
【
図3】胡坐をかいて座る雛形の動きを擬人化モデルのアバターで表示したイメージ図及び仮想空間の相撲会場の時空間のイメージ図である。
【
図4】イベントで設定される観客席の種類の具体例を示す概略図である。
【
図5】ボクセルアバターBを用いた干渉計算のイメージ図である。
【
図6】相撲のイベントで観客アバターが違反の動きを行っている様子を示す概略図である。
【
図7】5つの矩形領域データの抽出、及び、境界点の二次元時系列データから生成した擬人化モデルの一例を示す概略イメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
図1は、本発明を適用したプログラム、及び、情報管理方法の一例を用いて、仮想空間におけるイベントにおいて、アバターのID管理を行う情報管理システムの構成を示す概略図である。
【0041】
[1.全体のシステム構成について]
本発明を適用したプログラム及び情報管理方法の一例を用いて、仮想空間におけるイベントにおいて、アバターのID管理を行う情報管理システムAは、管理サーバ1を有している(
図1参照)。
【0042】
この管理サーバ1は、動き認証トークンTの発行、及び、検札によるアバターのID管理、アバターのID管理に関する情報の記録、仮想空間におけるイベント会場設営時の干渉計算、イベント中の安全管理等を行う、認証ビジネスを行うための各種管理機能を備えるサーバである。なお、動き認証トークンTの詳細については後述する。
【0043】
また、管理サーバ1は、認証ビジネスを行う認証ビジネス事業者(管理者)が主に使用するサーバである。
【0044】
また、情報管理システムAは、主催サーバ2を有している(
図1参照)。
【0045】
この主催サーバ2は、イベントの仮想空間の提供、イベント参加ユーザに対するイベント関連情報の提供(チケットの販売、出演契約の締結等)、参加ユーザからの情報の受信、仮想空間における時空間の設定、イベントの実施・管理、イベント中の安全管理等を行う、仮想空間でのイベントを主催・実行するための各種機能を備えるサーバである。
【0046】
また、主催サーバ2は、仮想空間でのイベントの主催する主催者または広告主等が主に使用するサーバである。なお、主催サーバ2は、インターネット4を介して、管理サーバ2と接続され、管理サーバ2と協同して各種機能を実行する。
【0047】
また、情報管理システムAは、参加者端末3を有している(
図1参照)。また、参加者端末3は、複数の観客端末30と、複数の出演者端末31から構成されている。
【0048】
この観客端末30は、仮想空間で行われるイベントのチケット(動き認証トークンT)の購入、イベントへの観客アバターとしての参加、イベント中のアバターによる応援動作等を行う、観客アバターを利用するユーザ側の端末である。
【0049】
また、出演者端末31は、仮想空間で行われるイベントへの出演契約書(動き認証トークンT)の締結、イベントへの出演者(競技者)アバターとしての参加、イベント中の演技動作または競技動作等を行う、出演者アバターを利用するユーザ側の端末である。
【0050】
なお、観客端末30または出演者端末31は、インターネット4を介して、管理サーバ1または主催サーバ2と接続され、各種サーバとの情報の送受信を行う。
【0051】
また、この管理情報システムAにおける、管理サーバ1及び主催サーバ2が行う各種機能は、汎用の情報処理機器にも導入可能であり、組み込まれた情報処理機器は、本発明を実施するために必要な各情報処理機能を発揮する。なお、情報処理機器とは、CPU等の演算部と、RAMやROM等の記憶部と、液晶画面等の表示画面や、キーボードとカメラ等の入力部、スピーカー等の音源再生部、インターネット等との通信を制御する通信部等を備えたものである。例えば、三次元処理性能の高いパーソナルコンピュータ等である。
【0052】
また、以下に示す構造は、本発明を適用したプログラム、情報管理システム及び情報管理方法の一例を実施するためのシステム構成であり、本発明の内容はこれに限定されるものではなく、適宜設計変更することが可能である。
【0053】
以下の説明に関する情報管理システムAを用いた本発明の実施の形態では、仮想空間において、出演者アバターによる相撲大会のイベントを実施するケースを一例にして説明を行う。
【0054】
図1に示すように、管理サーバ1は、映像情報処理部10と、情報記録部11と、情報送受信部12を有している(
図1参照)。なお、ここでいう映像情報処理部10が、本願請求項における符号化処理手段に相当する部分である。
【0055】
また、
図1に示すように、管理サーバ1は、ハッシュ値生成部13と、認証トークン生成部14と、認証処理部15を有している。
【0056】
なお、ここでいうハッシュ値生成部13が、本願請求項におけるハッシュ値生成手段に相当する部分である。また、ここでいう認証トークン生成部14が、本願請求項における認証トークン生成手段に相当する部分である。さらに、ここでいう認証処理部15が、本願請求項における認証処理手段に相当する部分である。
【0057】
また、
図1に示すように、管理サーバ1は、ボクセルアバター生成部16と、干渉計算部17と、動作監視部18と、動作判定部19を有している。
【0058】
なお、ここでいうボクセルアバター生成部16が、本願請求項におけるボクセルアバター生成手段に相当する部分である。また、ここでいう干渉計算部17が、本願請求項における干渉計算手段に相当する部分である。さらに、ここでいう動作監視部18及び動作判定部19が、本願請求項における動作監視手段に相当する部分である。
【0059】
ここで、映像情報処理部10は、撮像手段で、対象物の動きを撮像する等して取得された、符号化の対象となる動きの動画データから、動きデータの特徴を反映した、5つの二次元時系列データを抽出して、その文字符号化データ(以下、「骨格運動符号化データ」と称する。)を生成する処理を行う部分である。なお、動画データからの文字符号化データの生成の詳細については後述する。
【0060】
ここで、「符号化の対象となる動きの動画データ」とは、仮想空間でのイベントで表示する、複数の観客アバターや、複数の出演者アバターについて、各々をID管理するための動き認証トークンTに、ユニークさ(唯一性)を付与する情報源となる動画データである。
【0061】
動きの動画データは、例えば、胡坐をかいて座るという動作であっても、その動きが完全に一致する、即ち、同一のデータを取得することが難しく、唯一性を確保しやすい情報である。そこで、このような動きのデータを元に、アバターに対する、動き認証トークンTを生成して、アバターのID管理を行うことで、アバターの真正性を担保することができる。
【0062】
また、「符号化の対象となる動きの動画データ」の動きは、主催者等が準備した雛形の動きを採用するケースと、観客アバターや出演者アバターが準備した動きを採用するケースがある。また、主催者側が準備した雛形の動きに、観客アバター等が所望する別の動きを追加した動きを採用することもできる。このように、何等かの動きの動画データに対して、映像情報処理部10で処理して、文字符号化するものとなる。
【0063】
また、「符号化の対象となる動きの動画データ」の動きは、1つの動画データとして、映像情報処理部1で処理されるように構成されている。そのため、単一の動きの動画データであればそのまま利用可能であり、動きの動画データが複数ある場合でも、編集して、1つの動画データにまとめられ、映像情報処理部10を介して、骨格運動符号化データへと処理されるものとなる。
【0064】
また、情報記録部11は、映像情報処理部10が文字符号化した骨格運動符号化データを記録する部分である。また、情報記録部11は、後述する、ハッシュ値や動き認証トークンTを記録する部分である。
【0065】
また、情報送受信部12は、インターネット4を介して、管理サーバ1と主催サーバ2の間での情報の送受信を行う部分である。また、情報送受信部12は、必要に応じて、観客端末30や、出演者案松31との間での情報の送受信を行う部分となる。
【0066】
また、ハッシュ値生成部13は、映像情報処理部10が文字符号化した骨格運動符号化データの入力に対して、ハッシュ関数を介して、動きハッシュ値を出力する部分である。
【0067】
この動きハッシュ値は、骨格運動符号化データ(デジタルデータ)を、ハッシュ関数により求められた固定長の値であり、元の骨格運動符号化データよりもデータ量が小さく、元の文字符号とは、全く異なる文字符号へと変換されたデータである。
【0068】
また、ハッシュ値生成部13で出力された動きハッシュ値は、入力される骨格運動符号化データにおける文字符号が少しでも異なる場合には、出力される動きハッシュ値の文字符号は、全く異なる文字符号で出力されるものとなる。
【0069】
これにより、骨格運動符号データを、短い固定長のデジタルデータにすると共に、元々の動きの異なる動画データから変換された、ユニークな情報として出力することができる。
【0070】
さらに、動きハッシュ値から、元の骨格運動符号化データを生成することが難しいため、動きハッシュ値に基づき、骨格運動符号化データや、動きの動画データを復元することができず、動き認証トークンTの改ざん等を抑止できる。
【0071】
また、認証トークン生成部14は、仮想空間でのイベントに参加する複数の観客アバター、及び、複数の出演者アバターをID管理するための動き認証トークンTを生成する部分である。
【0072】
また、認証トークン生成部14は、「動きハッシュ値」と、イベント内容等に基づき設定する「通し番号」を組み合わせて、結合した記号情報からなるトークンを生成する。
【0073】
ここで、動き認証トークンTを構成する通し番号は、例えば、動き認証トークンTを、観客アバターに対するチケットとして利用する場合には、仮想空間に設計されるイベント会場の観客席の順番や、席の種類(ランク)等に対応して設定することができる。また、通し番号は、数字のみや、数字及びアルファベット等の文字列で構成される。
【0074】
また、動き認証トークンTを構成する通し番号は、例えば、動き認証トークンTを、出演者アバターに対するデジタルの出場契約書として利用する場合には、イベントにおける出演の順番、イベント内での出演者の格付け(横綱、大関等)、アバターのサイズ順等に対応して設定することができる。また、通し番号は、数字のみや、数字及びアルファベット等の文字列で構成される。
【0075】
この動き認証トークンTは、アバターをID管理するために用いられ、観客アバターがイベントに参加するために購入するイベント用のチケットとして発行できる。また、出演者アバターが、イベントに参加する際に、主催者等と交わすデジタルの出場契約書として発行できる。
【0076】
このように、主催者が開催するイベントにおいて、仮想空間の時空間を使用する権利を有するアバターであることを、動き認証トークンTを介して管理することができる。
【0077】
さらに、動き認証トークンは、出演者アバターに対する、イベント内での演技等に応じた報酬伝票や、イベントで行う競技のルールブックとしても使用できる。この点の詳細は後述する。
【0078】
また、認証処理部15は、イベントの開催時に、各アバターのユーザから提示された、動き認証トークンTを利用したチケットや、デジタル出場契約書の情報と、管理サーバ1から発行され、その情報記録部11に記録された動き認証トークンTを比較して、認証処理を行う部分である。
【0079】
この認証処理部15で、認証された動き認証トークンTを有するアバターが、仮想空間でのイベントへの参加が可能となる。
【0080】
また、ボクセルアバター生成部16は、動きの動画データから生成された骨格運動符号データに基づき、標準体型の擬人化モデルであるボクセルアバターBを生成する部分である。
【0081】
このボクセルアバターBは、様々な動きの動画データから生成された骨格運動符号データについて、動画データの由来となった動きを、擬人化モデルのアバターの動きとして再生するためのアバターである。
【0082】
また、干渉計算部17は、動きが異なる骨格運動符号データの動きを、仮想空間内で、ボクセルアバターBにより再生し、その再生時の動きから、時空間の干渉計算を行う部分である。
【0083】
より詳細には、仮想空間の中に格子状のボクセル空間を構築して、そのボクセル空間の一定範囲の中に、複数のボクセルアバターBを配置し、動きを再生して、干渉計算部17は、一定時間内に、ボクセルアバターB同士における、ボクセル衝突の発生の有無を検証する。
【0084】
そして、干渉計算部17は、ボクセルアバターBの動きを再生して、ボクセル衝突が生じない、即ち、非干渉時空間ボクセル数が確保できる時空間を算出する。この干渉計算部17の検証結果に基づき、主催者等は、主催サーバ2で、イベントに必要な仮想空間の時空間を設計することができる。
【0085】
また、動作監視部18は、仮想空間でのイベント中に、観客アバターまたは出演者アバターの動きを関して、違反となる動きを行っていないかを監視する部分である。
【0086】
なお、ここでいう違反となる動きとは、例えば、観客アバターであれば、動き認証トークンTに紐づけられた、それぞれの観客アバターに対して登録された動きである。即ち、仮想空間の中の決められた時空間の範囲で取りうるアバターの動き以外の動きである。
【0087】
例えば、ある観客アバターに対して、相撲の升席の範囲内で、胡坐をかいて座った動きが登録されている(チケットに紐づけされている)際に、動作監視部18が仮想空間内を監視する。そして、観客アバターが、升席の自分の範囲をはみ出して移動する、力士名の入った手拭を掲げて応援する、土俵に座布団を投げる、立って万歳する等、登録された以外の動きを行っていることを、動作監視部18が検知し、違反の動きをしていると判定する。
【0088】
また、動作監視部18が監視する違反の動きは、動き認証トークンTに紐づけられた、登録された動きだけでなく、その他、主催者側がイベントの安全な運営に支障をきたすと考える動きを、監視対象の動きとして、別途、設定しておくことも可能である。
【0089】
この動作監視部18が、違反の動きを検知すると、判定に基づき、観客アバターに警告や退場を通知したり、主催サーバ2に判定結果を通知したりする構成となっている。
【0090】
また、動作監視部18による違反の動きの検知・判定は、イベント中の監視対象となる観客アバターの使用する時空間ボクセル(実測時空間ボクセル)と、当該観客アバターに対応する動き認証トークンTの由来である骨格運動符号データに基づくボクセルアバターBの動きを再生した際に使用する時空間ボクセル(予測時空間ボクセル)を比較して、2つの時空間ボクセルの差を検知して、違反の動きを判定可能となっている。
【0091】
また、動作監視部18による違反の動きの検知・判定は、イベント中の観客アバター同士の動きにより、ボクセル衝突が発生しているかどうかを検知して、違反の動きとして判定することもできる。
【0092】
また、動作監視部18による監視では、出演者アバター同士(力士アバター同士)の相撲の取り組みについて、出演者アバターの動きを監視して、相撲の勝敗を判定するように構成されている。この監視では、出演者アバターが、一方が土俵の外に出る、地面に手や体がつく等の干渉する動きを監視して、勝敗を決することができる。
【0093】
さらに、動作監視部18では、相撲のイベントに関して、見合いの制限時間や、水入りの制限時間をデジタル管理して、遅延行為の判定や、イベントの催行の時間管理を行う部分でもある。
【0094】
ここで、動作監視部18は、仮想空間で測定している出演者アバターの動きと、動き認証トークンTで規定されている、決まり手を含む、相撲の取り組み中の動きとを比較する。これにより、仕切り前の動きとして測定識別されている見合い状態の時間累計や、立ち合い後に組み合ったまま静止中の動きの時間累計を計測できる。このように動作監視部18は、イベントの催行の時間管理を行う部分としても機能しうる。
【0095】
また、動作判定部19は、イベントの出演者アバターの演技や競技中の動きに対して、動き認証トークンTを動きの識別データとして利用し、どの動きがなされたかを判定する部分である。
【0096】
ここでは、イベントで実施される競技等に関して、難易度が異なる複数の動きをランク付けされている。そして、難易度が異なり、ランク付けされた各動きを、その動きの動画データを骨格運動符号化して、ハッシュ値を生成し、デジタル出場契約書に識別明記しておく。このデジタル出場契約書も動き認証トークンTの一種となる。
【0097】
また、動作判定部19が、動作監視部18と連動して、イベントの出演者アバターの演技や競技中の動きが、デジタル出場契約書に識別明記されたどの動きにあたるかを判定し、認証する。これにより、出演者アバターが演じた動きに応じて、出演者アバターに支払う、ランクに応じた報酬額の査定に利用することができる。
【0098】
より具体的に、仮想空間での相撲のイベントであれば、アバター同士の相撲において、標準的な決まり手の動きを、骨格運動符号化及びハッシュ値化して、それに対する対価を記載するデジタル出場契約書を作成することができる。
【0099】
さらには、動作判定部19及び動作監視部18を介して、デジタル出場契約書において識別明記された動きから外れる動きで、相撲の勝敗が決したことが検知された場合に、出演者アバターに対して、報奨金を払う、あるいは、反則金を徴収するとした付帯契約の成立を仲介認証することも可能となる。
【0100】
また、デジタル出場契約書を、例えば、フィギュアスケートや体操の演技採点ルールブックとして利用すると、客観的なデジタルデータにもとづく、審判採点システムとして活用することも可能である。
【0101】
図1に示すように、主催サーバ2は、時空配置部20と、決済処理部21と、空間監視部22と、イベント告知部23と、情報記録部24と、情報送受信部25を有している(
図1参照)。
【0102】
ここで、時空配置部20は、仮想空間において、イベントの会場となる時空間を設計する部分である。時空配置部20は、管理サーバ1の干渉計算部17による干渉計算の結果に基づき、イベントの競技内容、規模、参加するアバターの数等に応じて、リソースを、必要な時空間の設計に割り当てる部分である。
【0103】
また、決済処理部21は、主催者側と、観客アバターまたは出演者アバターのユーザとの間での、イベントのチケットの販売、出場契約の締結、出演に対する報酬の支払い等の各種決済処理を行う部分である。また、チケット、デジタル出場契約書、報酬伝票として、動き認証トークンTが用いられる。
【0104】
また、時空間監視部22は、主催者側が、イベント中の仮想空間の監視を行う部分であり、管理サーバ1の動作監視部18と連動して、イベント中の安全管理を担う部分となる。
【0105】
また、イベント告知部23は、主催者等による仮想空間で行うイベント情報を、アバターのユーザに開示する部分である。イベント告知部23は、イベントの開催日時、競技内容、会場規模等の情報の他、観客アバターのユーザに対して、主催者等が準備した雛形の動きを、ボクセルアバターBの動きで再生して開示する部分となる。
【0106】
また、イベント告知部23は、出演者アバターのユーザに対して、イベントの競技等の動きを、ボクセルアバターBの動きで再生して開示する部分となる。また、イベント告知部23は、イベントの競技等のルール、報酬等の情報を開示する部分となる。
【0107】
また、情報記録部24は、チケット、デジタル出場契約書、報酬伝票となる動き認証トークンTを記録する部分である。
【0108】
また、情報送受信部25は、インターネット4を介して、管理サーバ1と主催サーバ2の間での情報の送受信を行う部分である。また、情報送受信部25は、観客端末30や、出演者案松31との間での情報の送受信を行う部分となる。
【0109】
また、観客端末30は、主催サーバ2に対して、チケット購入の申し入れ、購入したチケットの提示、チケット認証の通知の受領、参加する観客アバターの情報提供、イベント中に、ユーザ側が希望する所望のアバターの動きの登録申請等を行う端末となる。
【0110】
また、出演者端末31は、主催サーバ2に対して、イベント参加の申し入れ、出場契約の締結、締結したデジタル出場契約書の提示、参加する出演者アバターの情報提供、イベント中に、ユーザ側が希望する所望のアバターの動きの登録申請等を行う端末となる。
【0111】
本発明の実施の形態の一例である情報管理システムAは、以上で説明した構成を有している。
【0112】
[動画データからの文字符号化データ生成]
【0113】
続いて、本発明を適用した情報管理システムAにおける、動きの動画データを文字符号化して、骨格運動符号化データを生成する流れの一例について説明する。なお、本発明における映像からの文字符号化処理は、以下の内容に限定されるものでなく、動きの動画データを文字符号化できる手段であれば、適宜採用しうる。
【0114】
まず、映像情報処理部10が、「対象となる動き」の動画データから、撮像範囲の中で、被写体の動きのある動体領域を検知して、低解像度の動画データ(128×128ピクセル)を抽出する。また、検知した動体領域データに対してノイズ除去処理を行う。
【0115】
また、映像情報処理部10が、ノイズ除去処理した動体領域データについて、5つの矩形領域データに分割し、これらを、被写体の頭、右手、左手、右足及び左足の5つの部位に分類して、擬人化モデルの5つの矩形領域データ120としてトリミング抽出する(
図7上図参照)。
【0116】
次に、映像情報処理部10が、分類された5つの矩形領域データ120につき、各矩形領域の境界点の座標を抽出する。被写体の一連の動きの動画データにつき、これを構成するフレームごとに、5つの矩形領域データ120の境界点の座標を抽出する。また、抽出した5つの矩形領域データ120の境界点の座標を時系列順に並べる(二次元時系列データの生成)。
【0117】
また、撮像手段が移動カメラである場合には、撮像手段の映像信号から、撮像手段のカメラ視点の座標データ及びカメラ視点移動データを抽出することもできる。
【0118】
そして、映像情報処理部10が、被写体の一連の動きの動画データを構成する各フレームにおける、5つの矩形領域データ120の境界点の座標の情報を、文字コードに変換して、圧縮符号化(文字符号化)する。
【0119】
なお、撮像手段のカメラ視点の座標データ及びカメラ視点移動データを抽出した場合には、これらの座標の情報についても、文字コードに変換して、圧縮符号化することができる。
【0120】
ここまでの流れで、一連の動きの動画データから、その動きの特徴を反映した5つの矩形領域データ120の境界点の二次元時系列データ、及び、文字符号化したデータを生成することができる。
【0121】
このように、5つの矩形領域データ120の境界点の座標を、1フレームごと、文字コード変換して、一連の動きのフレーム数だけ連結して記録することで、被写体の一連の動きを撮像した動画データを、文字符号化した情報として、圧縮することができる。この文字符号化した情報として、情報を取り扱うことで、より少ないデータ容量と、少ない演算処理量で、動き情報の記録、保存、通信または再生を行うことが可能となる。
【0122】
また、この境界点の二次元時系列データ等を受信して、これらのデータに基づき、擬人化モデル30の動きとして、検知した一連の動きを再生表示することができる(
図7下図参照)。この擬人化モデル30を元に、ボクセルアバターBを生成することができる。
【0123】
この擬人化モデル30は、頭部、両手及び両足の各矩形領域データ120の境界点の座標と、座標を中心とした円形と、境界点の座標を線で繋いだ、人型を模したシミュレーターである。また、擬人化モデル30は、肘、胸、腰、膝等の中間関節領域を補って表示した態様としてもよい。検知した一連の動きを、擬人化モデル30またはボクセルアバターBの動きで再生表示することができる。
【0124】
続いて、この情報管理システムAを用いて、イベントを運営する際の一連の流れを以下説明する。ここで、情報管理システムAを用いたイベント運営には、会場設営のタイミングにより、2つのパターンが想定される。以下、それぞれのパターンにつき説明する。
【0125】
[1.会場設営後に利用権を取引する流れ]
まず、最初に、参加するアバターの雛形の動きを登録し、仮想空間にイベント会場を設営して、その後に、イベントの時空間の利用権の取引を行うパターンがある。本パターンにおける主催者、参加者、及び、認証ビジネス事業者の各々の作業手順を
図2に示す。
【0126】
[A.会場設営時]
まず、手順段階のうち、会場設営時には、「1.設計段階」において、アバター(選手・出演者または応援団・観客)のユーザに対して、主催者側があらかじめ準備したアバターの「雛形の動き」を、イベント告知部23を介して公開する(
図2の符号P1参照)。
【0127】
例えば、選手・出演者アバターについては、競技ステージ等での演技または試合動作に関する複数の雛形の動きを公開する。また、応援団・観客アバターについては、指定席、自由席、団体席等の席の種類と、各席での応援動作に関する複数の雛形の動きを公開する。
【0128】
また、雛形の動きは、管理サーバ1のボクセルアバター生成部16が生成したボクセルアバターB(または擬人化モデル)の動きとして再生、表示される。
【0129】
また、会場設営時には、「1.設計段階」において、認証ビジネス事業者が、アバターのユーザに対して提示したアバターの「雛形の動き」のそれぞれから、骨格運動符号化データを生成する(
図2の符号B1参照)。同作業は、管理サーバ1の映像情報処理部10を介して行う。
【0130】
ここで、仮想空間での相撲の試合のイベントにおいては、相撲の「VR場所」の開催告知と利用条件が開示される。例えば、観客アバターに対して、升席の位置と、升席での雛形の動きとして、擬人化モデルのアバターが胡坐をかいて座る動きが公開される(
図3参照)。また、1つの升席の範囲に、アバター4体までが座れる条件等も公開される。これにより、観客アバターのユーザは、イベント時の席や動きが閲覧できる。
【0131】
また、ここでは、席の種類として、相撲の升席を一例に挙げたが、イベントの会場では、例えば、
図4に示すように、選手用のステージに加えて、席の種類を貴賓席、広告席、外野席、一般席、内野席、放送席のように、席の種類を細かく分けることができる。また、席の種類ごとに、席数・広さ、利用可能なアバターの数、許容されるアバターの動き等も設定することができる。
【0132】
また、会場設営時には、「2.施工段階」において、認証ビジネス事業者が、雛形の動きに関する骨格運動符号化データについて、ボクセルアバターBで動きを再生して、干渉計算部17により、アバターの動きに必要な、仮想空間における時空間の領域計算を行う(
図2の符号B2参照)。
【0133】
また、干渉計算部17は、ボクセルアバターBで動きを再生して、一定範囲、かつ、一定時間内での、ボクセルアバターB同士における、ボクセル衝突の発生の有無を検証し、非干渉時空間ボクセル数を確保するための干渉計算を行う(
図2の符号B2参照)。なお、干渉計算のイメージ図として
図5を提示する。
【0134】
さらに、会場設営時には、「3.完了検査」において、干渉計算部17は、干渉計算の結果から、雛形の動きに関する骨格運動符号化データについて、仮想空間中の競技ステージや、指定席等の観客席に対する安全適合計算を行う(
図2の符号B3参照)。
【0135】
これら干渉計算及び安全適合計算の結果の情報が、主催者等による時空間の設計に利用される。
【0136】
また、会場設営時には、「1.設計段階」において、主催者が、仮想空間におけるイベントに使用する競技ステージ等や、指定席等の観客席の時空間の規模を指定する(
図2の符号O1参照)。
【0137】
また、「2.施工段階」において、主催者が、指定した内容に基づき、仮想空間におけるイベントに使用する競技ステージ等や、指定席等の観客席の時空間を配置する(
図2の符号O2参照)。同作業は、主催サーバ2の時空配置部20を介して行う。
【0138】
また、時空配置部20により時空間の配置では、認証ビジネス事業者が、干渉計算部17を介して行った干渉計算の結果が利用される。
【0139】
さらに、「3.完了検査」において、主催者が、仮想空間に配置した競技ステージや、指定席等の観客席の時空間の安全確認を行う(
図2の符号O3参照)。また、ここでは、認証ビジネス事業者が、干渉計算部17を介して行った安全適合計算の結果が利用される。
【0140】
また、この主催者による「2.施工段階」または「3.完了検査」に伴い、席の種類ごとの利用条件の策定、例えば、席の種類に応じて認められるアバターの動きの設定等が行われる。また、ここでは、座席表の作成と採番も行われる。この番号付けは、動き認証トークンTに含められる通し番号の設定に利用される。
【0141】
以上の内容で、仮想空間におけるイベントの会場設営が実行される。本パターンでは、主催者等があらかじめ準備したアバターの雛形の動きが、アバターのユーザに開示される。また、雛形の動きを元に、ボクセルアバターBで動きを再生して、仮想空間中の領域計算、干渉計算、または、安全適合計算が行われ、時空間の設計を行う。このように、本発明の情報管理システムAは、仮想空間のイベントにおける会場設営システムとして機能する。
【0142】
[B.利用権取引時]
続いて、会場設営の次に、仮想空間で行うイベントの時空間の利用権の取引が行われる。
ここで、利用権取引時には、「4.供給管理」において、認証ビジネス事業者が、出演者アバターに対するデジタル出場契約書の作成を行う(
図2の符号B4参照)。
【0143】
このデジタル出場契約書は、選手・出演者アバターがイベントで演じる複数の雛形の動きにつき、その動画データから骨格運動符号化データを生成し、動きハッシュ値として出力した文字符号が含まれている。また、このデジタル出場契約書には、選手の出場順番等の情報から設定された通し番号も含まれている。
【0144】
また、デジタル出場契約書の作成は、管理サーバ1の映像情報処理部10、ハッシュ値生成部13、認証トークン生成部14を介して行われる。
【0145】
この、動きハッシュ値と通し番号を組み合わせた情報が、選手・出演者アバターのID管理のための情報となる。つまり、雛形の動きに由来して出力された動きハッシュ値が含まれた動き認証トークンTが、イベントの選手・出演者アバターであり、登録された動きをイベントで行えることを証明する情報となる。
【0146】
言い換えれば、このデジタル出場契約書が作成され、この契約を締結するアバターには、競技ステージ等で、登録された動きを行う義務が発生する(
図2の符号P2参照)。
【0147】
また、このデジタル出場契約書には、上述したように、イベントで実施される競技で、難易度が異なるランク付けされた複数の動きの動画データを骨格運動符号化して、動きハッシュ値を生成し、識別明記しておくことができる。
【0148】
これにより、イベント中に、管理サーバ1の動作判定部19が、動作監視部18と連動して、選手・出演者アバターの演技や競技中の動きが、デジタル出場契約書に識別明記されたどの動きにあたるかを判定し、認証することができる。この結果、出演者アバターが演じた動きに応じて、出演者アバターに支払う、ランクに応じた報酬額の査定に利用することができる。
【0149】
また、利用権取引時には、「5.販売管理」において、認証ビジネス事業者が、応援団・観客アバターに対するチケットの作成を行う(
図2の符号B5参照)。
【0150】
このチケットは、応援団・観客アバターがイベントで行う応援等の複数の雛形の動きにつき、その動画データから骨格運動符号化データを生成し、動きハッシュ値として出力した文字符号が含まれている。また、このチケットには、応援席の種類や座席番号等の情報から設定された通し番号も含まれている。
【0151】
また、応援団等のグループ単位の観客アバターに対しては、同じグループであることを示す文字符号も使用することができる。
【0152】
また、チケットの作成は、管理サーバ1の映像情報処理部10、ハッシュ値生成部13、認証トークン生成部14を介して行われる。
【0153】
この、動きハッシュ値と通し番号を組み合わせた情報が、応援団・観客アバターのID管理のための情報となる。つまり、雛形の動きに由来して出力された動きハッシュ値が含まれた動き認証トークンTが、イベントの応援団・観客アバターであり、登録された応援の動きをイベントで行えることを証明する情報となる。
【0154】
言い換えれば、このチケットが作成され、このチケットを購入して、所有するアバターには、イベントの客席等で、登録された動きを行う権利が発生する(
図2の符号P3参照)。また、応援席の時空間を使用する権利が発生する。
【0155】
また、利用権取引時には、「4.供給管理」及び「5.販売管理」において、主催者等が、アバターのユーザに対して、デジタル出場契約書やチケットの提示を行う(
図2の符号O4参照)。
【0156】
また、利用権取引時には、「6.発券管理」において、主催サーバ2に、出演者端末31からイベント出場の申し込みがなされ、または、観客端末30からチケットの購入の申し込みがなされた場合には、主催者と、アバターのユーザとの間で、売買契約が締結される(
図2の符号O5参照)。
【0157】
ここで、売買契約が締結されると、選手・出場者アバターのユーザは、デジタル出場契約書を受領し、応援団・観客アバターのユーザは、チケットを受領する(
図2の符号P4参照)。
【0158】
また、売買契約が締結されると、「7.経理処理」において、主催者は、主催サーバ2の決済処理部21を介して、決済処理を行う(
図2の符O6参照)。
【0159】
ここでは、デジタル出場契約書に基づき、主催者側から選手・出演者アバターへの報酬が支払われることで、選手・出演者アバターには収入が発生する。また、チケットに基づき、応援団・観客アバターはチケットの費用を主催者側に支払い、応援団・観客アバターには支出が発生する(
図2の符号P5参照)。
【0160】
なお、イベントの終了後に、選手・出演者アバターがイベントで演じた動きが、デジタル出場契約書に識別明記された特別な動き等であった場合には、別途、経理処理を行うことも可能である。
【0161】
また、利用権取引時には、「7.経理処理」において、認証ビジネス事業者が、締結された出場契約や、チケットが情報記録部11に記録される(
図2の符号B7参照)。
【0162】
以上の内容で、仮想空間におけるイベントの時空間の利用権の取引が、動き認証トークンTの一種であるデジタル出場契約書やチケットを介して実行される。このように、本発明の情報管理システムAは、仮想空間のイベントにおける契約書またはチケットの発行システムとして機能する。
【0163】
[C.イベント開催時]
続いて、利用権取引の次に、仮想空間で行うイベントの開催が行われる。
ここで、イベントの開催時には、「8.利用管理」において、イベントへのアバターの参加時に、主催者に対して、選手・出演者アバターから、発行したデジタル出場契約書の提示が行われる(
図2の符号P6参照)。
【0164】
また、主催者に対して、応援団・観客アバターから、購入したチケットの提示が行われる(
図2の符号P6参照)。
【0165】
このデジタル出場契約書またはチケットの提示された情報について、認証ビジネス事業者が、管理サーバ1の認証処理部15を介して認証処理を行う(
図2の符号B8参照)。
【0166】
即ち、情報記録部11に記録された、デジタル出場契約書またはチケットの情報と、アバターのユーザから提示されたデジタル出場契約書またはチケットの情報を比較して、正規の動き認証トークンTであるか否かの検札を行う。
【0167】
この認証処理において、認証処理部15が、提示されたデジタル出場契約書またはチケットが、情報記録部11に記録されたものと確認された場合、正規のトークンとして受理し、確認できなかった場合、正規のトークンでないものとして棄却する。認証処理部15の受理または棄却の結果は、主催者に通知され、受理されたデジタル出場契約書またはチケットを所有するアバターが、イベントへの参加が可能となる。
【0168】
また、主催者は、「8.利用管理」において、認証処理部15の認証結果に基づき、アバターのユーザから提示された情報について、正規のトークンでないものを確認して、不正利用を把握することが可能となる(
図2の符号O7参照)。
【0169】
また、イベントの開催時には、「9.品質管理」において、選手・出演者アバターは、デジタル出場契約書に紐づけられた、登録した動きを、イベント中の演技として開示する(
図2の符号P7参照)。
【0170】
また、ここでは、デジタル出場契約書に紐づけられた、登録した動きだけでなく、選手・出演者アバターのユーザが、WEBカメラやモーションキャプチャのソフト等を用いて、任意の動きをアバターで再生、表示することも可能である。また、各アバターの動きは、動作監視部18による監視の対象となる。
【0171】
イベントの開催時に、仮想空間の競技ステージ、相撲であれば、土俵の上で、選手・出演者アバターが、デジタル出場契約書に紐づけられた、登録した動きと、任意の動きの両方を開示して、相撲の取り組みが行われる。
【0172】
また、イベントの開催時には、「9.品質管理」において、応援団・観客アバターは、チケットに紐づけられた、登録した動きを、イベント中の応援の動きとして開示する(
図2の符号P7参照)。
【0173】
また、ここでは、チケットに紐づけられた、登録した動きだけでなく、応援団・観客アバターのユーザが、WEBカメラやモーションキャプチャのソフト等を用いて、任意の動きをアバターで再生、表示することも可能である。また、各アバターの動きは、動作監視部18による監視の対象となる。
【0174】
イベントの開催時に、相撲であれば、土俵の周りの客席、例えば、升席の中で、応援団・観客アバターが、チケットに紐づけられた、登録した動きと、任意の動きの両方を開示して、相撲の取り組みに対して応援が行われる。
【0175】
また、イベントの開催時には、「9.品質管理」において、主催者は、時空間監視部22を介して、イベントの進行状況や稼働率、即ち、時空間の利用率と動きの実施の割合の把握を行う(
図2の符号O8参照)。
【0176】
また、イベントの開催時には、「9.品質管理」において、認証ビジネス事業者が、イベント中の各アバターの動きの監視を行う(
図2の符号B9参照)。
【0177】
より詳細には、管理サーバ1の動作監視部18を介して、デジタル出場契約書またはチケットに紐づけられた、登録された動きと、仮想空間の中で、実際にアバターが開示している動きとの差異を監視する。即ち、動作監視部18により、イベント中のアバターが、違反となる動きを行っているか否かの監視を行う。
【0178】
この監視および判定では、例えば、観客アバターが使用している時空間ボクセル(実測時空間ボクセル)と、当該観客アバターに対応するチケットに紐づけられた動きの、骨格運動符号データに基づくボクセルアバターBの動きを再生した際に使用する時空間ボクセル(予測時空間ボクセル)を比較して、2つの時空間ボクセルの差を検知して、違反の動きを判定する。
【0179】
また、動作監視部18は、イベント中の観客アバター同士の動きで、ボクセル衝突が発生しているかどうかを検知して、違反の動きとして判定することもできる。
【0180】
また、「10.安全管理」においては、動作監視部18で違反の動きが検知されると、認証ビジネス事業者から、当該アバターに対して、警告、または、安全指導の指示等が通知される(
図2の符号B10参照)。
【0181】
この認証ビジネス事業者から、当該アバターに対する警告や安全指導に基づき、アバターのユーザは、指示に従う(
図2の符号P8参照)。また、管理サーバ1から、主催サーバ2に、警告等がなされたことが報告され、主催者は、安全状況の把握を行う(
図2の符号O9参照)。
【0182】
例えば、相撲のイベントで、チケットに胡坐をかいて着席した動きが登録された観客アバターが、升席の自分の範囲をはみ出して移動する、力士名の入った手拭を掲げて応援する、土俵に座布団を投げる、立って万歳する等、登録された以外の動きを行っているとする(
図6参照)。
【0183】
すると、動作監視部18が動きの差異を検知し、違反の動きと判定して、警告や座るように指示がなされる。また、違反の動きが著しい場合や、動きの改善が見られない場合には、動作監視部18が、当該観客アバターに対し、退場命令を指示し、アバターを退席させることも可能である。
【0184】
また、動作監視部18を介して、相撲の勝敗を判定することができる。出演者アバター同士(力士アバター同士)の相撲の取り組みについて、出演者アバターの動きを監視して、相撲の勝敗を判定するように構成されている。この監視では、出演者アバターが、一方が土俵の外に出る、地面に手や体がつく等の干渉する動きを監視して、勝敗を決することができる。
【0185】
以上の内容で、仮想空間におけるイベントの開催において、動き認証トークンTの一種であるデジタル出場契約書やチケットを介して、チケットの検札や、イベント中の安全管理が行われる。即ち。本発明の情報管理システムAは、仮想空間のイベントにおける契約書またはチケットの検札システムとして機能する。また、情報管理システムAは、仮想空間のイベントにおける安全管理システムとして機能する。
【0186】
以上で説明した、会場設営後に利用権を取引する流れでは、最初に、参加するアバターの雛形の動きを登録し、仮想空間にイベント会場を設営して、その後に、イベントの時空間の利用権の取引を行っている。
【0187】
[2.利用権の取引後に会場設営を行う流れ]
次に、2つ目のパターンとして、参加するアバターのユーザから提供される、所望の動きを登録して、イベントの時空間の利用権の取引を行い、その後に、アバターの動きに合わせて、仮想空間にイベント会場を設営するパターンがある。即ち、主催者側が、雛形の動きを提供するのではなく、アバターのユーザ側から、具体的な動きを提供され、これを動き認証トークンTに利用する。
【0188】
そのため、本パターンでは、イベントの開催にあたり、最初に主催者側が、ユーザに対して、登録したい動きを募集することになる。また、選手・出演者アバターまたは応援団・観客アバターのユーザは、登録したい動きを主催者側に提供する。
【0189】
また、認証ビジネス事業者は、アバターのユーザから提供された動きの動画データから、骨格運動符号化データを生成し、動きハッシュ値を出力する。また、デジタル出場契約書またはチケットには、アバターのユーザから提供された動きに基づく動きハッシュ値と通し番号の組み合わせが反映される。
【0190】
また、仮想空間の競技ステージや客席等の時空間の設計では、アバターのユーザから提供された動きの動画データに基づく、骨格運動符号化データを用いてボクセアバターBで動きを再生して、領域計算、干渉計算、及び、安全適合計算が行われる。
【0191】
また、イベント中の安全管理においても、アバターのユーザから提供された動きの動画データに基づく、骨格運動符号化データを用いて、イベントに参加したアバターの動きを監視して、違反の動きの検知・判定を行うものとなる。
【0192】
また、本発明においては、動き認証トークンTに紐づけられる動きは、主催者が準備した雛形の動きと、アバターのユーザが提供した動きを組み合わせて、動きハッシュ値を生成する態様としてもよい。例えば、主催者側が準備した雛形の動きに、ユーザが所望する特別な動きを付加して、特別なチケットを作成することもできる。
【0193】
[発明のメリット]
本発明を適用したプログラム、情報管理システム及び情報管理方法を用いることで、以下のような利点が生じる。
【0194】
まず、仮想空間でアバターを表示するイベントを開催するにあたり、動き認証トークンTとしてのデジタル出場契約書またはチケットを作成して、各アバターのID管理を行い、アバターの真正性を確保することができる。
【0195】
つまり、同一のデータを取得することが難しく、唯一性を確保しやすい動きのデータを元に、骨格運動符号化データを生成し、動きハッシュ値を出力して、これをトークンとして利用することで、データの改ざんがしにくい認証トークンを生成することができる。
【0196】
また、文字符号化した骨格運動符号化データをさらにハッシュ値化することで、データ量を小さくすることができ、大量のアバターにも認証トークンとして利用しやすくなる。
【0197】
また、認証トークンを用いて、仮想空間の中のイベントに必要な時空間の設計や、イベント中の安全管理を行うことができる。さらには、イベントの競技の勝敗判定や、ルール運用、出場者アバターへの報酬の管理等に利用することもできる。
【0198】
このように、仮想空間におけるイベント開催に関わる、複数のサービスシステムにおいて、統一的なアバターのID管理を、この認証トークンを用いて実現することができる。
【0199】
また、認証トークンを用いたID管理は、主催者によるイベント開催とは別に行われるビジネスとして成立しうる、新たなビジネスモデルとなる可能性を有している。
【0200】
例えば、動きハッシュ値と合わせて、動画データと骨格運動符号化データを、1つのデータセットとして、保存管理するサービスを提供するビジネスモデルも成立しうる。
【0201】
また、動画データを、骨格運動符号化データにし、さらにハッシュ値へと変換する「ハッシュ関数」を秘密鍵として、別途独立して保存管理するサービスも考えられる。
【0202】
さらには、人や動植物、機械などの運動情報を含む動画データの真正性の確保、改ざん検知のために、機械学習モデルにより画像認識した骨格運動符号化データのハッシュ値を公開鍵として、作成・保存・管理するサービスも考えられる。
【0203】
以上のように、本発明を適用したプログラム、情報管理システム及び情報管理方法は、仮想空間内で、アバターの真正性を保証できると共に、仮想空間の利用権を効率よく管理、または、取引することに寄与するものとなっている。
【符号の説明】
【0204】
A 情報管理システム
1 管理サーバ
10 映像情報処理部
11 情報記録部
12 情報送受信部
13 ハッシュ値生成部
14 認証トークン生成部
15 認証処理部
16 ボクセルアバター生成部
17 干渉計算部
18 動作監視部
19 動作判定部
2 主催サーバ
20 時空配置部
21 決済処理部
22 空間監視部
23 イベント告知部
24 情報記録部
25 情報送受信部
3 参加者端末
30 観客端末
31 出演者端末
4 インターネット