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特許7591224ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物、その調製方法及び用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物、その調製方法及び用途
(51)【国際特許分類】
   C07D 307/93 20060101AFI20241121BHJP
   A61K 31/365 20060101ALI20241121BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20241121BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20241121BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20241121BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20241121BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20241121BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20241121BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20241121BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20241121BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20241121BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20241121BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20241121BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20241121BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20241121BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241121BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
C07D307/93 CSP
A61K31/365
A61K9/14
A61K9/20
A61K9/48
A61K47/02
A61K47/04
A61K47/06
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/26
A61K47/36
A61K47/38
A61K47/44
A61P35/00
A61P35/02
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023500114
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-31
(86)【国際出願番号】 CN2020081349
(87)【国際公開番号】W WO2021189343
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-09-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522373644
【氏名又は名称】天津尚徳薬縁科技股▲フン▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】509159274
【氏名又は名称】南▲開▼大学
【氏名又は名称原語表記】NANKAI UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】94 Weijin Road, Nankai District, Tianjin 300071 CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】李中華
(72)【発明者】
【氏名】▲ゴン▼儁波
(72)【発明者】
【氏名】侯寶紅
(72)【発明者】
【氏名】呉送姑
(72)【発明者】
【氏名】陳悦
(72)【発明者】
【氏名】邱伝將
(72)【発明者】
【氏名】朱興華
(72)【発明者】
【氏名】斉傑
(72)【発明者】
【氏名】王桂燕
【審査官】平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/056410(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/006893(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/128163(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/131103(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第111303097(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111303098(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111303099(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111303100(CN,A)
【文献】芦澤 一英、他,医薬品の多形現象と晶析の科学,丸善プラネット株式会社,2002年09月20日,第305-317頁
【文献】長瀬 博,最新 創薬化学 下巻,株式会社テクノミック,1999年,第347-354頁
【文献】平山 令明,有機化合物結晶作製ハンドブック -原理とノウハウ-,2008年,pp.36-43
【文献】芦澤 一英,塩・結晶形の最適化と結晶化技術,PHARM TECH JAPAN,株式会社じほう,2002年,Vol. 18, No.10,pp. 81-96
【文献】Zhonghua Li et al.,Exploring Solid Form Landscape of Anticancer Drug Dimethylaminomicheliolide Fumarate:Crystal Structures Analysis, Phase Transformation Behavior, and Physicochemical Properties Characterization,crystal growth & design,2021年,21巻,2643-2652頁
【文献】Xuxing Wan et al.,uncover the effect of solvent on dissolution behavior of dimethylaminomicheliolide fumarate salt,Journal of Molecular Liquids,2019年,293巻,1-9頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CA/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物であって、前記水和物は、結晶形Dであり、ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩と水のモル比は1:1であり、分子式は、C17H27NO3・C4H4O4・H2Oであり、熱重量分析において、分解前に3.97%~4.22%の重量損失があり、示差走査熱量分析スペクトルにおいて、75±5℃に脱水吸熱ピークがあり、148±5℃に特徴的な融解ピークがある、
前記水和物は、Cu-Kα放射を使用し、2θ角で示されるX線粉末回折は、7.8±0.2°、11.1±0.2°、11.4±0.2°、12.6±0.2°、12.9±0.2°、14.4±0.2°、15.3±0.2°、17.0±0.2°、18.7±0.2°、19.7±0.2°、20.6±0.2°、21.0±0.2°、22.5±0.2°、23.7±0.2°、24.3±0.2°、25.5±0.2°、26.2±0.2°に特徴的なピークがあり、そのうち、7.8±0.2°は、初期ピークであり、20.6±0.2°の特徴的なピークの相対強度は100%であり、前記結晶形Dは、斜方晶系であり、空間群はP212121であり、単位胞パラメーターは、a=8.8346(18)Å、b=14.796(3)Å、c=16.385(3)Å、α=90°、β=90°、γ=90°であり、単位胞体積は、2141.8(8)Å3である、ことを特徴とするジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物。
【請求項2】
前記水和物は、Cu-Kα放射を使用し、2θ角で示されるX線粉末回折は、更に10.5±0.2°、11.7±0.2°、12.0±0.2°、15.6±0.2°、15.9±0.2°、16.2±0.2°、21.3±0.2°、22.1±0.2°、23.0±0.2°、26.4±0.2°、27.2±0.2°、28.2±0.2°、28.6±0.2°、29.3±0.2°、30.4±0.2°、31.1±0.2°に特徴的なピークがある、ことを特徴とする請求項1に記載のジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物。
【請求項3】
反応結晶化によって調製する:
撹拌しながら、温度が30℃~70℃に維持された溶媒S1と溶媒S2の混合溶媒系にジメチルアミノミケリオリド及びフマル酸を加え、溶媒S2と溶媒S1の質量比は、(1~3):1であり、ジメチルアミノミケリオリドとフマル酸のモル比は、(1~1.6):1であり、5~10 h反応させ、濾過し、25~45℃の常圧条件下で6~10 h乾燥してジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩の結晶形Dを得て、
前記溶媒S1は、アセトン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アセトニトリル、メチルイソブチルケトンの何れか1種と水の混合溶媒であり、
前記溶媒S2は、エステル系とエーテル系の混合溶媒であり、
前記エステル系溶媒は、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ヘキシル、酢酸イソプロピルの何れか1種又は2種から選択されてよく、
前記エーテル系溶媒は、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフランの何れか1種又は2種から選択されてよい、
ことを特徴とする請求項1~2の何れか1項に記載のジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物の調製方法。
【請求項4】
前記溶媒S1において、アセトン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アセトニトリル、メチルイソブチルケトンの何れか1種の溶媒と水の質量比は、(5~10):1であり、
前記溶媒S2において、エステル系溶媒とエーテル系溶媒の質量比は、(1~3):1であり、
前記ジメチルアミノミケリオリドの固体原料とS1の質量比は、1:(6~10)である、
ことを特徴とする請求項3に記載のジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物の調製方法。
【請求項5】
ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩の無溶媒化合物の結晶形Bを調製する方法としては、ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物を80℃~120℃で10 min~30 min恒温加熱し、ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩の無溶媒化合物の結晶形Bを得る、ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩の無溶媒化合物の結晶形Bを調製するために使用する請求項1に記載のジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物の使用
【請求項6】
薬学的に許容可能な補助剤を含み、ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物以外の他の1種、2種又はより多くの薬理活性成分を更に含み得る、請求項1に記載のジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物の薬物組成物。
【請求項7】
前記薬学的に許容可能な補助剤は、結晶形態のジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩のような活性成分以外の他の非薬理活性成分を含む、
請求項6に記載の薬物組成物。
【請求項8】
前記他の非薬理活性成分は、充填剤、流動促進剤、潤滑剤、粘着剤、安定化剤及び/又は他の補助剤の担体又は賦形剤がある、
請求項7に記載の薬物組成物。
【請求項9】
前記充填剤は、トウモロコシデンプン、グルコース、マンニトール、ソルビトール、シリカ、微結晶セルロース、カルボキシルメチルデンプンナトリウム、複合デンプン、アルファ化デンプンのうちの少なくとも1種を含む、
前記流動促進剤は、シリカ、水和シリカ、軽質無水ケイ酸、乾燥水酸化アルミニウムゲル、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムのうちの少なくとも1種を含む、
前記潤滑剤は、小麦デンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、水和シリカ、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、タルク、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、パラフィン系、水素化植物油、ポリエチレングリコールのうちの少なくとも1種を含むが、請求項8に記載の薬物組成物。
【請求項10】
薬物組成物の錠剤、カプセル又は顆粒剤の剤型を含む、ことを特徴とする請求項6に記載の薬物組成物により調製される薬物製剤。
【請求項11】
疾患又は病状は、白血病、乳癌、前立腺癌、鼻咽頭癌、大腸癌、肺癌、肝臓癌、食道癌、胃癌、腸癌、腎臓癌、口腔癌、ホジキンリンパ腫、膵臓癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、非ホジキンリンパ腫、神経膠腫、黒色腫、膀胱癌、卵巣癌、甲状腺癌又はカポジ肉腫から選択される癌である、前記疾患又は前記病状を治療又は予防するための薬物の調製における請求項1に記載のジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物、又は請求項6に記載の薬物組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、薬物結晶化の技術分野に属し、具体的にはジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物、その調製方法及び用途に関する。
【0002】
〔背景技術〕
パルテノライド(Parthenolide)は、キク科薬用植物としてのナツシロギク及びヨモギギクから抽出される主な活性成分であり、天然のセスキテルペンラクトン系化合物であり、従来のコシロギクは、主に発熱、関節リウマチ及び片頭痛、歯痛などの疾患の治療に用いられ、近年、中国国内外の研究により、パルテノライドは、抗腫瘍効果も有するが、このような化合物は、酸性又は塩基性条件下で性質が不安定であることを見出した。
【0003】
その安定性を向上させるために、化合物のパルテノライドを修飾してミケリオリドを得て、英語名称はMicheliolide(MCL)であり、グアイアン系セスキテルペンラクトン系化合物に属し、関連する文献及び特許は、ミケリオリドが癌疾患を治療する作用を有するが、水溶性が比較的悪いことを報告している。水溶性及び生物学的活性を向上させるために、トリエチルアミンを触媒とする条件でメタノール溶媒において、加熱によって反応させてミケリオリド誘導体、即ちジメチルアミノミケリオリドを得て、分子式は、C17H27NO3であり、構造式は、以下の通りであり、英語名称は、Dimethylaminomicheliolide(DMAMCL)であり、DMAMCLは、MCLと比べて水溶性の点である程度向上するが、長時間放置されると分解し、不安定である。その水溶性及び安定性を更に向上させるために、通常、それを塩の形態に調製し、発明者は、パルテノライドから誘導してジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩を調製することを既に見出した。同時に、特許WO2011/131103A1は、ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩を含むミケリオリド誘導体又はその塩、その薬物組成物の調製方法及び癌を治療する薬物の調製における用途を開示する。
【0004】
ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩は、分子式がC21H31NO7であり、相対分子質量が409であり、白色結晶性粉末であり、無味無臭であり、水、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アセトン、アセトニトリル、酢酸イソプロピルに溶解し、シクロヘキサン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、ジクロロメタン、イソプロピルエーテル、トルエンにほとんど溶解しない。化学構造式は、以下の通りである。
【0005】
【化1】
【0006】
結晶多形とは、同一物質がその格子において異なる分子配列又は立体構造を有するため、形成された結晶構造が異なることを意味し、統計によれば、市販の薬物の80%に結晶多形現象が存在する。同一薬物の異なる結晶形は、色、溶解度、融点、密度、硬度、結晶形態などの物理化学的特性の点で顕著な差異があり、更に薬物の安定性、溶出度、生物学的利用能などの品質のばらつきを引き起こし、製品の後加工及び処理に影響を与え、且つ薬物の治療効果及び安全性にある程度影響を与える。薬品の品質管理及び新薬剤型の設計のプロセスにおいて、薬物結晶多形の研究は、不可欠で重要な構成部分になっている。
【0007】
中国特許CN103724307Bは、ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩の結晶形A及びその調製方法を開示し、当該特許は、XRPDを使用することで結晶形Aを特徴付け、2θで示される場合に7.10°、7.58°、11.72°、12.26°、13.30°、14.24°、15.70°、16.38°、17.04°、19.02°、19.86°、20.14°、20.66°、21.20°、21.78°、22.64°、23.58°、23.8°、24.48°、25.08°、26.24°、27.08°、27.60°、28.40°、28.94°、34.48°、34.82°、36.12°、38.72°、45°に特徴的なピークがあり、酢酸エチル溶媒において再結晶化によって結晶形Aを調製し、当該方法は、自然冷却によって製品を調製するが、結晶化プロセスは、熱力学及び動力学によって同時に制御され、自然冷却による結晶化条件は、環境の影響を受けて大きく変動し、降温速度を制御しにくく、製品粒度が比較的小さく、主粒度が35.8 μmであり、嵩密度が比較的小さく、0.270 g/mLのみに達し、安息角が62°であり、流動性が悪く、結晶製品の品質が異なるバッチ間で大きく異なる。同時に、結晶形Aの安定性が比較的悪く、結晶形転移を発生しやすく、かつ固体粉末に強い静電作用を更に有するため、製造プロセスで発塵現象が存在し、後の加工及び処理に多くの問題をもたらす。
【0008】
〔発明の概要〕
上記問題を解決するために、本発明は、ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物、その調製方法及び用途を提供し、反応結晶化方法により、結晶化度が高く、嵩密度が高く、流動性が良好であり、粒子の粒度が大きく、結晶表面が滑らかで凝集せず、安定性が高いジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物の結晶製品を調製し、前記調製方法は、簡単であり、製品収率が比較的高く、再現性に優れ、量産に寄与する。
【0009】
本発明により提供されるジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物であって、前記水和物は、結晶形Dであり、ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩と水のモル比は1:1であり、分子式は、C17H27NO3・C4H4O4・H2Oであり、熱重量分析/示差走査熱量分析スペクトルに示すように、熱重量分析において、分解前に3.97%~4.22%の重量損失があり、示差走査熱量分析スペクトルにおいて、75±5℃に脱水吸熱ピークがあり、148±5℃に特徴的な融解ピークがあることを特徴とする。
【0010】
本発明により提供されるジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物であって、前記水和物は、Cu-Kα放射を使用し、図2に示すように、2θ角で示されるX線粉末回折は、7.8±0.2°、11.1±0.2°、11.4±0.2°、12.6±0.2°、12.9±0.2°、14.4±0.2°、15.3±0.2°、17.0±0.2°、18.7±0.2°、19.7±0.2°、20.6±0.2°、21.0±0.2°、22.5±0.2°、23.7±0.2°、24.3±0.2°、25.5±0.2°、26.2±0.2°に特徴的なピークがあり、そのうち、7.8±0.2°は、初期ピークであり、20.6±0.2°の特徴的なピークの相対強度は100%であり、前記結晶形Dは、斜方晶系であり、空間群はP212121であり、単位胞パラメータは、a=8.8346(18)Å、b=14.796(3)Å、c=16.385(3)Å、α=90°、β=90°、γ=90°であり、単位胞体積は、2141.8(8)Å3であることを特徴とする。
【0011】
本発明により提供されるジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物であって、前記水和物は、Cu-Kα放射を使用し、2θ角で示されるX線粉末回折は、更に10.5±0.2°、11.7±0.2°、12.0±0.2°、15.6±0.2°、15.9±0.2°、16.2±0.2°、21.3±0.2°、22.1±0.2°、23.0±0.2°、26.4±0.2°、27.2±0.2°、28.2±0.2°、28.6±0.2°、29.3±0.2°、30.4±0.2°、31.1±0.2°に特徴的なピークがあることを特徴とする。
【0012】
本発明は、反応結晶化方法により実現可能なジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物の調製方法を更に提供し、撹拌しながら、温度が30℃~70℃に維持された溶媒S1と溶媒S2の混合溶媒系にジメチルアミノミケリオリドとフマル酸を加え、溶媒S2と溶媒S1の質量比は、(0~3):1であり、ジメチルアミノミケリオリドとフマル酸のモル比は、(1~1.6):1であり、5~10 h反応させ、濾過し、25~45℃の常圧条件下で6~10 h乾燥してジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩の結晶形Dを得る。
【0013】
前記溶媒S1は、アセトン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アセトニトリル、メチルイソブチルケトンの何れか1種と水の混合溶媒である。
【0014】
前記溶媒S2は、エステル系とエーテル系の混合溶媒である。
【0015】
前記エステル系溶媒は、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ヘキシル、酢酸イソプロピルの何れか1種又は2種から選択される。
【0016】
前記エーテル系溶媒は、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフランの何れか1種又は2種から選択される。
【0017】
前記溶媒S1は、アセトン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アセトニトリル、メチルイソブチルケトンの何れか1種と水の混合溶媒である。
【0018】
前記溶媒S2において、エステル系溶媒とエーテル系溶媒の質量比は、(1~3):1である。
【0019】
前記ジメチルアミノミケリオリドの固体原料とS1の質量比は、1:(6~10)である。
【0020】
本発明は、ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物の晶癖を研究し、その走査型電子顕微鏡図を図3に示し、結晶体が規則的なバルク晶癖であり、粒子表面が滑らかで凝集せず、結晶体の平均粒度が大きく、300 μmに達することができ、嵩密度が0.65 g/mLであり、安息角が32°であり、製品の嵩密度が高く、流動性が良好である。特許CN103724307Bに開示された自然冷却による再結晶化方法により調製される結晶形Aは、製品の主粒度が35.8 umであり、嵩密度が0.270 g/mLのみに達し、安息角が62°であり、その走査型電子顕微鏡図を図4に示し、これに対して、本発明により提供されるジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物の結晶形D製品は、粒子の粒度を顕著に向上させ、結晶形A製品の嵩密度が小さく、流動性が低いという問題を解決する。
【0021】
本発明は、ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物の安定性を考察し、前記無水結晶形の化合物製品を開口ペトリ皿に均一に分散させ、温度を45℃に、湿度を75%に、サンプルの厚さを5 mm未満に制御し、密封して乾燥器に入れて30日間放置し、その後、7日間、14日間、30日間放置したサンプルに対してそれぞれXRD検出を行い、0日目の検出結果と比較する。具体的なスペクトルを図5に示し、結果により、XRDスペクトルは、明らかに変化しないことを示し、同時に、7日間、14日間、30日間放置したサンプルに対してそれぞれ純度分析を行い、0日目の純度検出結果と比較し、7日目のサンプル純度が0.015%のみ変化し、14日目のサンプル純度が0.027%のみ変化し、30日目のサンプル純度が0.046%のみ変化したことを見出し、サンプルの純度が明らかに変化しなかったことを示す。XRDスペクトルと純度分析結果とを組み合わせ、ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物の安定性により優れることを実証した。
【0022】
本発明により提供されるジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物は、ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩の無溶媒化合物の結晶形Bを調製するために使用することができ、結晶形Bの調製方法は、以下の通りである:ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物を80℃~120℃で10 min~30 min恒温加熱し、ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩の無溶媒化合物の結晶形Bを得て、そのX線粉末回折スペクトルを図6に示し、2θ角で示される場合に8.1±0.2°、10.7±0.2°、11.5±0.2°、11.9±0.2°、13.0±0.2°、13.3±0.2°、14.7±0.2°、15.9±0.2°、16.1±0.2°、16.7±0.2°、17.1±0.2°、19.0±0.2°、19.9±0.2°、20.3±0.2°、21.2±0.2°、21.5±0.2°、22.1±0.2°、23.0±0.2°、23.5±0.2°、24.4±0.2°、26.0±0.2°、26.6±0.2°、26.9±0.2°、27.4±0.2°、27.9±0.2°、28.6±0.2°、29.4±0.2°、30.2±0.2°、31.0±0.2°に特徴的なピークがある。その走査型電子顕微鏡写真は、図5と類似し、晶癖が水和物に一致し、バルクであり、且つ粒子の粒度が大きいことを示す。
【0023】
本発明に記載のジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物は、薬学的に許容可能な補助剤を含み、ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物以外の他の1種、2種又はより多くの薬理活性成分を更に含み得る薬物組成物を更に提供する。
【0024】
前記薬学的補助剤は、結晶形態のジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩のような活性成分以外の他の非薬理活性成分、例えば、充填剤、流動促進剤、潤滑剤、粘着剤、安定化剤及び/又は他の補助剤などの担体又は補助剤を含む本発明に記載の薬物組成物に使用可能な非薬理活性成分を含むが、これらに限定されない。
【0025】
前記充填剤は、トウモロコシデンプン、グルコース、マンニトール、ソルビトール、シリカ、微結晶セルロース、カルボキシルメチルデンプンナトリウム、複合デンプン、アルファ化デンプンのうちの少なくとも1種を含むが、これらに限定されない。
【0026】
前記流動促進剤は、シリカ、水和シリカ、軽質無水ケイ酸、乾燥水酸化アルミニウムゲル、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムのうちの少なくとも1種を含むが、これらに限定されない。
【0027】
前記潤滑剤は、小麦デンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、水和シリカ、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、タルク、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、パラフィン系、水素化植物油、ポリエチレングリコールのうちの少なくとも1種を含むが、これらに限定されない。
【0028】
本発明に記載の薬物組成物により調製された薬物製剤であって、前記薬物製剤は、薬物組成物の錠剤、カプセル又は顆粒剤の剤型を含むことを特徴とする。より好ましくはカプセル剤である。
【0029】
本発明は、前記ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物、又は、疾患又は病状を治療又は予防するための薬物の調製における前記薬物組成物の用途を更に提供し、前記疾患又は病状は、好ましく、白血病、乳癌、前立腺癌、鼻咽頭癌、大腸癌、肺癌、肝臓癌、食道癌、胃癌、腸癌、腎臓癌、口腔癌、ホジキンリンパ腫、膵臓癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、非ホジキンリンパ腫、神経膠腫、黒色腫、膀胱癌、卵巣癌、甲状腺癌又はカポジ肉腫から選択される癌である。
【0030】
〔有益な効果〕
本発明に記載の水和物は、良好な流動性を有し、後の薬物の調製により適している。よく知られるように、通常、活性成分は、それ自体の流動性がカプセル剤又はマイクロカプセルの充填条件を満たしがたく、流動性に対する充填条件の要求を満たすために、アルファ化デンプン、シリカ及びステアリン酸マグネシウムなどの補助剤を加える必要があり、所望の剤型品質及び生産効率を実現する。100 mgのカプセル仕様を例にし、例えば、結晶形Aのような他の形態を活性成分とし、補助剤を添加した後、カプセル内容物の重量を310 mg程度にし、最大の0#カプセルシェルを使用しなければならず、且つより大きな仕様、例えば活性成分200 mgを含有するカプセルを調製することができない。そのため、患者は、服薬時にカプセル投与量又は投与回数を増加することで高用量の投与を実現せざるを得なくなり、これは、患者のコンプライアンスを顕著に低下させる。しかし、発明者は、ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物の結晶形Dの優れる流動性により、補助剤を加えない場合でも、32°の安息角に達することができ、そのため、補助剤の用量を顕著に低減させる場合、更には如何なる補助剤を加えない場合でも、カプセル又はマイクロカプセルの充填条件に必要な流動性を達成することができることを見出した。また、補助剤の用量を低減することで用量の高いカプセルの生産を可能にし、患者のコンプライアンスを顕著に改善する。
【0031】
更に、ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物の結晶形Dは、補助剤の添加量を低減することができ、更には補助剤を添加しなくてもよいが、結晶形Aは、水和物の結晶形Dと同じ流動性を有するために大量の補助剤を添加する必要があり、安定性が比較的悪いため、水和物の結晶形Dによって、製剤の安定性も改善される。
【0032】
なお、ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物の結晶形Dの調製方法は、操作ステップが簡単であり、生成物収率が比較的高く、再現性が良好であり、結晶化度が高く、粒子表面が滑らかで凝集せず、粒子間に静電気がなく、嵩密度が高く、量産により寄与する。
【0033】
〔図面の簡単な説明〕
図1〕本発明のジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物の熱重量分析/示差走査熱量分析スペクトルである。
【0034】
図2〕本発明のジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物のX線回折スペクトルである。
【0035】
図3〕本発明のジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物の走査型電子顕微鏡図(40倍の倍率)である。
【0036】
図4〕特許CN103724307Bに開示された方法により調製された結晶形A製品の走査型電子顕微鏡図(200倍の倍率)である。
【0037】
図5〕下から上まで順に0日間、7日間、14日間、30日間放置したサンプルのXRDスペクトルである、本発明のジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物の安定性試験のスペクトル比較である。
【0038】
図6〕本発明のジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩の無溶媒化合物の結晶形BのX線回折スペクトルである。
【0039】
〔発明を実施するための形態〕
以下、実施例形態の具体的な実施形態により、本発明の上記内容を更に詳細に説明するが、本発明の上記主旨の範囲を下記実施例に限定するものと理解すべきではない。本発明の上記内容に基づいて実現される技術は、全て本発明の範囲に属する。
【0040】
実施例1
ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物の調製
撹拌しながら、温度が30℃に維持された溶媒S1と溶媒S2の混合溶媒系にジメチルアミノミケリオリド0.293 g及びフマル酸0.116 gを加え、溶媒S1の質量は、溶媒S2の質量と同じであり、そのうち、溶媒S1は、アセトン溶媒1.598 g及び水0.16 gで構成され、溶媒S2は、酢酸エチル0.879 g及びジエチルエーテル0.879 gで構成され、5 h反応させた後、濾過し、25℃で6 h常圧乾燥し、ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩の結晶形D製品を得る。製品の熱重量分析/示差走査熱量分析は、図1に一致し、熱重量分析によると、分解前に4.22%の重量損失があることを示し、示差走査熱量分析によると、75℃に脱水吸熱ピークがあることを示し、148℃に特徴的な融解ピークがあることを示す。製品のX線粉末回折スペクトルは、図2に一致し、回折角2θで示される場合に7.8°、11.1°、11.4°、12.6°、12.9°、14.4°、15.3°、17.0°、18.7°、19.7°、20.6°、21.0°、22.5°、23.7°、24.3°、25.5°、26.2°に特徴的なピークがあり、そのうち、7.8°は初期ピークであり、20.6°の特徴的なピークの相対強度は100%である。製品のX線粉末回折スペクトルは、2θ角で示される場合に更に10.5±0.2°、11.7±0.2°、12.0±0.2°、15.6±0.2°、15.9±0.2°、16.2±0.2°、21.3±0.2°、22.1±0.2°、23.0±0.2°、26.4±0.2°、27.2±0.2°、28.2±0.2°、28.6±0.2°、29.3±0.2°、30.4±0.2°、31.1±0.2°に特徴的なピークがある。結晶形態のSEM写真は、図4に一致し、バルク結晶であり、粒子の平均粒度が大きく、300 μmに達することができ、測定により、その嵩密度が0.646 g/mLであり、安息角が32.5°である。
【0041】
実施例2
ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物の調製
撹拌しながら、温度が50℃に維持された溶媒S1と溶媒S2の混合溶媒系にジメチルアミノミケリオリド1.758 g及びフマル酸0.58 gを加え、溶媒S2の質量は、溶媒S1の質量の2倍であり、そのうち、溶媒S1は、テトラヒドロフラン溶媒12.306 g及び水1.758 gで構成され、溶媒S2は、酢酸イソプロピル21.096 g及びメチルtert-ブチルエーテル7.032 gで構成され、8 h反応させた後、濾過し、30℃で10 h常圧乾燥し、ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩の結晶形D製品を得る。製品の熱重量分析/示差走査熱量分析は、図1に一致し、熱重量分析によると、分解前に4.20%の重量損失があることを示し、示差走査熱量分析によると、78℃に脱水吸熱ピークがあることを示し、150℃に特徴的な融解ピークがあることを示す。製品のX線粉末回折スペクトルは、図2に一致し、回折角2θで示される場合に8.0°、11.2°、11.5°、12.7°、12.9°、14.5°、15.4°、17.1°、18.8°、19.8°、20.6°、21.1°、22.5°、23.7°、24.5°、25.6°、26.3°に特徴的なピークがあり、そのうち、7.8°は初期ピークであり、20.6°の特徴的なピークの相対強度は100%である。製品のX線粉末回折スペクトルは、2θ角で示される場合に更に10.6°、11.8°、12.2°、15.1°、15.7°、16.0°、21.4°、22.0°、22.3°、23.1°、27.3°、28.2°、28.7°、29.4°、30.5°、30.6°、31.3°に特徴的なピークがある。結晶形態のSEM写真は、図4に一致し、バルク結晶であり、粒子の平均粒度が大きく、300 μmに達することができ、測定により、その嵩密度が0.655 g/mLであり、安息角が32°である。
【0042】
実施例3
ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物の調製
撹拌しながら、温度が70℃に維持された溶媒S1と溶媒S2の混合溶媒系にジメチルアミノミケリオリド4.688 g及びフマル酸1.16 gを加え、溶媒S2の質量は、溶媒S1の質量の3倍であり、そのうち、溶媒S1は、1,4-ジオキサン溶媒39 g及び水7.88 gで構成され、溶媒S2は、酢酸メチル93.76 g及びメチルエチルエーテル46.88 gで構成され、10 h反応させた後、濾過し、45℃で8 h常圧乾燥し、ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩の結晶形D製品を得る。製品の熱重量分析/示差走査熱量分析は、図1に一致し、熱重量分析によると、分解前に3.97%の重量損失があることを示し、示差走査熱量分析によると、75℃に脱水吸熱ピークがあることを示し、145℃に特徴的な融解ピークがあることを示す。製品のX線粉末回折スペクトルは、図2に一致し、回折角2θで示される場合に7.8°、11.0°、11.4°、12.5°、12.8°、14.4°、15.3°、17.0°、18.7°、19.7°、20.6°、21.0°、22.4°、23.7°、24.3°、25.4°、26.2°に特徴的なピークがあり、そのうち、7.8°は初期ピークであり、20.6°の特徴的なピークの相対強度は100%である。製品のX線粉末回折スペクトルは、2θ角で示される場合に更に10.5°、11.7°、12.0°、15.6°、15.9°、16.2°、21.3°、22.2°、22.9°、26.4°、27.3°、28.2°、28.6°、29.3°、30.4°、31.1°に特徴的なピークがある。結晶形態のSEM写真は、図4に一致し、バルク結晶であり、粒子の平均粒度が大きく、300 μmに達することができ、測定により、その嵩密度が0.65 g/mLであり、安息角が32°である。
【0043】
実施例4
ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物の調製
撹拌しながら、温度が60℃に維持された溶媒S1と溶媒S2の混合溶媒系にジメチルアミノミケリオリド4.102 g及びフマル酸1.16 gを加え、溶媒S2の質量は、溶媒S1の質量の3倍であり、そのうち、溶媒S1は、アセトニトリル溶媒35.8925 g及び水5.1275 gで構成され、溶媒S2は、酢酸ヘキシル87.9 g及びエチレングリコールジメチルエーテル35.16 gで構成され、10 h反応させた後、濾過し、45℃で9 h常圧乾燥し、ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩の結晶形D製品を得る。製品の熱重量分析/示差走査熱量分析は、図1に一致し、熱重量分析によると、分解前に4.10%の重量損失があることを示し、示差走査熱量分析によると、80℃に脱水吸熱ピークがあることを示し、150℃に特徴的な融解ピークがあることを示す。製品のX線粉末回折スペクトルは、図2に一致し、回折角2θで示される場合に7.8°、11.1°、11.4°、12.6°、12.9°、14.4°、15.4°、17.0°、18.8°、19.8°、20.6°、21.0°、22.5°、23.7°、24.4°、25.5°、26.2°に特徴的なピークがあり、そのうち、7.8°は初期ピークであり、20.6°の特徴的なピークの相対強度は100%である。製品のX線粉末回折スペクトルは、2θ角で示される場合に更に10.6°、11.8°、12.1°、15.9°、16.3°、21.4°、22.2°、23.0°、26.5°、27.3°、28.7°、29.3°、30.4°、31.1°に特徴的なピークがある。結晶形態のSEM写真は、図4に一致し、バルク結晶であり、粒子の平均粒度が大きく、300 μmに達することができ、測定により、その嵩密度が0.659 g/mLであり、安息角が32.2°である。
【0044】
実施例5
ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物の調製
撹拌しながら、温度が30℃に維持された溶媒S1と溶媒S2の混合溶媒系にジメチルアミノミケリオリド0.293 g及びフマル酸0.116 gを加え、溶媒S1の質量は、溶媒S2の質量と同じであり、そのうち、溶媒S1は、アセトニトリル溶媒1.598 g及び水0.16 gで構成され、溶媒S2は、酢酸イソプロピル0.879 g及びエチレングリコールモノメチルエーテル0.879 gで構成され、5 h反応させた後、濾過し、25℃で6 h常圧乾燥し、ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩の結晶形D製品を得る。製品の熱重量分析/示差走査熱量分析は、図1に一致し、熱重量分析によると、分解前に4.22%の重量損失があることを示し、示差走査熱量分析によると、75℃に脱水吸熱ピークがあることを示し、148℃に特徴的な融解ピークがあることを示す。製品のX線粉末回折スペクトルは、図2に一致し、回折角2θで示される場合に7.8°、11.1°、11.4°、12.6°、12.9°、14.4°、15.3°、17.0°、18.7°、19.7°、20.6°、21.0°、22.5°、23.7°、24.3°、25.5°、26.2°に特徴的なピークがあり、そのうち、7.8°は初期ピークであり、20.6°の特徴的なピークの相対強度は100%である。製品のX線粉末回折スペクトルは、2θ角で示される場合に更に10.5±0.2°、11.7±0.2°、12.0±0.2°、15.6±0.2°、15.9±0.2°、16.2±0.2°、21.3±0.2°、22.1±0.2°、23.0±0.2°、26.4±0.2°、27.2±0.2°、28.2±0.2°、28.6±0.2°、29.3±0.2°、30.4±0.2°、31.1±0.2°に特徴的なピークがある。結晶形態のSEM写真は、図4に一致し、バルク結晶であり、粒子の平均粒度が大きく、300 μmに達することができ、測定により、その嵩密度が0.645 g/mLであり、安息角が32°である。
【0045】
実施例6
ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物の調製
撹拌しながら、温度が70℃に維持された溶媒S1と溶媒S2の混合溶媒系にジメチルアミノミケリオリド4.688 g及びフマル酸1.16 gを加え、溶媒S2の質量は、溶媒S1の質量の3倍であり、そのうち、溶媒S1は、メチルイソブチルケトン溶媒39 g及び水7.88 gで構成され、溶媒S2は、酢酸メチル46.88 g、酢酸イソプロピル46.88 g、テトラヒドロフラン23.44 g及びジブチルエーテル23.44 gで構成され、10 h反応させた後、濾過し、45℃で8 h常圧乾燥し、ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩の結晶形D製品を得る。製品の熱重量分析/示差走査熱量分析は、図1に一致し、熱重量分析によると、分解前に3.97%の重量損失があることを示し、示差走査熱量分析によると、75℃に脱水吸熱ピークがあることを示し、145℃に特徴的な融解ピークがあることを示す。製品のX線粉末回折スペクトルは、図2に一致し、回折角2θで示される場合に7.8°、11.0°、11.4°、12.5°、12.8°、14.4°、15.3°、17.0°、18.7°、19.7°、20.6°、21.0°、22.4°、23.7°、24.3°、25.4°、26.2°に特徴的なピークがあり、そのうち、7.8°は初期ピークであり、20.6°の特徴的なピークの相対強度は100%である。製品のX線粉末回折スペクトルは、2θ角で示される場合に更に10.5°、11.7°、12.0°、15.6°、15.9°、16.2°、21.3°、22.2°、22.9°、26.4°、27.3°、28.2°、28.6°、29.3°、30.4°、31.1°に特徴的なピークがある。結晶形態のSEM写真は、図4に一致し、バルク結晶であり、粒子の平均粒度が大きく、300 μmに達することができ、測定により、その嵩密度が0.65 g/mLであり、安息角が32.3°である。
【0046】
実施例7
ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物の調製
撹拌しながら、温度が50℃に維持された溶媒S1と溶媒S2の混合溶媒系にジメチルアミノミケリオリド1.758 g及びフマル酸0.58 gを加え、溶媒S2の質量は、溶媒S1の質量の2倍であり、そのうち、溶媒S1は、メチルイソブチルケトン溶媒12.306 g及び水1.758 gで構成され、溶媒S2は、酢酸メチル21.096 g及び2-メチルテトラヒドロフラン7.032 gで構成され、9 h反応させた後、濾過し、30℃で10 h常圧乾燥し、ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩の結晶形D製品を得る。製品の熱重量分析/示差走査熱量分析は、図1に一致し、熱重量分析によると、分解前に4.20%の重量損失があることを示し、示差走査熱量分析によると、78℃に脱水吸熱ピークがあることを示し、150℃に特徴的な融解ピークがあることを示す。製品のX線粉末回折スペクトルは、図2に一致し、回折角2θで示される場合に8.0°、11.2°、11.5°、12.7°、12.9°、14.5°、15.4°、17.1°、18.8°、19.8°、20.6°、21.1°、22.5°、23.7°、24.5°、25.6°、26.3°に特徴的なピークがあり、そのうち、7.8°は初期ピークであり、20.6°の特徴的なピークの相対強度は100%である。製品のX線粉末回折スペクトルは、2θ角で示される場合に更に10.6°、11.8°、12.2°、15.1°、15.7°、16.0°、21.4°、22.0°、22.3°、23.1°、27.3°、28.2°、28.7°、29.4°、30.5°、30.6°、31.3°に特徴的なピークがある。結晶形態のSEM写真は、図4に一致し、バルク結晶であり、粒子の平均粒度が大きく、300 μmに達することができ、測定により、その嵩密度が0.65 g/mLであり、安息角が32°である。
【0047】
実施例8
ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物の調製
撹拌しながら、温度が60℃に維持された溶媒S1と溶媒S2の混合溶媒系にジメチルアミノミケリオリド4.102 g及びフマル酸1.16 gを加え、溶媒S2の質量は、溶媒S1の質量の3倍であり、そのうち、溶媒S1は、テトラヒドロフラン溶媒35.8925 g及び水5.1275 gで構成され、溶媒S2は、酢酸メチル87.9 g及び1,4-ジオキサン35.16 gで構成され、10 h反応させた後、濾過し、45℃で9 h常圧乾燥し、ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩の結晶形D製品を得る。製品の熱重量分析/示差走査熱量分析は、図1に一致し、熱重量分析によると、分解前に4.10%の重量損失があることを示し、示差走査熱量分析によると、80℃に脱水吸熱ピークがあることを示し、150℃に特徴的な融解ピークがあることを示す。製品のX線粉末回折スペクトルは、図2に一致し、回折角2θで示される場合に7.8°、11.1°、11.4°、12.6°、12.9°、14.4°、15.3°、17.0°、18.7°、19.7°、20.6°、21.0°、22.5°、23.7°、24.3°、25.5°、26.2°に特徴的なピークがあり、そのうち、7.8°は初期ピークであり、20.6°の特徴的なピークの相対強度は100%である。製品のX線粉末回折スペクトルは、2θ角で示される場合に更に10.5±0.2°、11.7±0.2°、12.0±0.2°、15.6±0.2°、15.9±0.2°、16.2±0.2°、21.3±0.2°、22.1±0.2°、23.0±0.2°、26.4±0.2°、27.2±0.2°、28.2±0.2°、28.6±0.2°、29.3±0.2°、30.4±0.2°、31.1±0.2°に特徴的なピークがある。結晶形態のSEM写真は、図4に一致し、バルク結晶であり、粒子の平均粒度が大きく、300 μmに達することができ、測定により、その嵩密度が0.654 g/mLであり、安息角が32.1°である。
【0048】
実施例9
ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物の調製
撹拌しながら、温度が30℃に維持された溶媒S1と溶媒S2の混合溶媒系にジメチルアミノミケリオリド0.293 g及びフマル酸0.116 gを加え、溶媒S1の質量は、溶媒S2の質量と同じであり、そのうち、溶媒S1は、アセトン溶媒1.598 g及び水0.16 gで構成され、溶媒S2は、酢酸イソプロピル0.879 g及びジプロピルエーテル0.879 gで構成され、7 h反応させた後、濾過し、25℃で6 h常圧乾燥し、ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩の結晶形D製品を得る。製品の熱重量分析/示差走査熱量分析は、図1に一致し、熱重量分析によると、分解前に4.22%の重量損失があることを示し、示差走査熱量分析によると、75℃に脱水吸熱ピークがあることを示し、148℃に特徴的な融解ピークがあることを示す。製品のX線粉末回折スペクトルは、図2に一致し、回折角2θで示される場合に7.8°、11.0°、11.4°、12.5°、12.8°、14.4°、15.3°、17.0°、18.7°、19.7°、20.6°、21.0°、22.4°、23.7°、24.3°、25.4°、26.2°に特徴的なピークがあり、そのうち、7.8°は初期ピークであり、20.6°の特徴的なピークの相対強度は100%である。製品のX線粉末回折スペクトルは、2θ角で示される場合に更に10.5°、11.7°、12.0°、15.6°、15.9°、16.2°、21.3°、22.2°、22.9°、26.4°、27.3°、28.2°、28.6°、29.3°、30.4°、31.1°に特徴的なピークがある。結晶形態のSEM写真は、図4に一致し、バルク結晶であり、粒子の平均粒度が大きく、300 μmに達することができ、測定により、その嵩密度が0.645 g/mLであり、安息角が32.3°である。
【0049】
実施例10
ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩の無溶媒化合物の結晶形Bの調製
実施例1の製品0.1 gを秤量して可変温度X線回折計に入れ、80℃で30 min恒温加熱し、サンプリング分析XRDスペクトルは、図6に一致し、ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩の無溶媒化合物の結晶形Bを得たことが証明され、固体の走査型電子顕微鏡写真は、図5の形態に一致し、バルク晶癖がそのまま維持された。
【0050】
実施例11
ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩の無溶媒化合物の結晶形Bの調製
実施例3の製品0.15 gを秤量して可変温度X線回折計に入れ、120℃で10 min恒温加熱し、サンプリング分析XRDスペクトルは、図6に一致し、ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩の無溶媒化合物の結晶形Bを得たことが証明され、固体の走査型電子顕微鏡写真は、図5の形態に一致し、バルク晶癖がそのまま維持された。
【0051】
実施例12
ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩の無溶媒化合物の結晶形Bの調製
実施例4の製品0.1 gを秤量して可変温度X線回折計に入れ、100℃で20 min恒温加熱し、サンプリング分析XRDスペクトルは、図6に一致し、ジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩の無溶媒化合物の結晶形Bを得たことが証明され、固体の走査型電子顕微鏡写真は、図5の形態に一致し、バルク晶癖がそのまま維持された。
【0052】
実施例13
結晶形Aのカプセル剤1の調製の調合法は、以下の通りである。
【0053】
【表1】
【0054】
プロセスは、以下の通りである。(1)結晶形Aを100メッシュの篩にかけ、篩い分けが困難であり、残留物が多く、篩い分け後に静電気が大きいことを見出した。(2)アルファ化デンプン及びシリカを80メッシュの篩にかけた後に結晶形Aとジップロックバッグで5分間混合する。(3)ステアリン酸マグネシウムを80メッシュの篩にかけた後に上記混合粉末とジップロックバッグで1分間混合する。(4)0#ゼラチンカプセルに手動で充填する。
【0055】
検出結果から明らかなように、本実施例のカプセル剤は、安息角が32.91°であり、実施例1で測定された水和物の結晶形Dの流動性データに近い。
【0056】
実施例14
結晶形Aのカプセル剤2の調製
実施例13の調合法を繰り返し採用し、以下のプロセスを使用する。(1)結晶形Aをアルファ化デンプンと共に80メッシュの篩にかけ、篩い分け効果が改善されるが、理想的ではなく、静電気が比較的大きい。(2)シリカを80メッシュの篩にかけた後に上記混合粉末とジップロックバッグで3分間混合する。(3)ステアリン酸マグネシウムを80メッシュの篩にかけた後に上記混合粉末とジップロックバッグで1分間混合する。(4)0#ゼラチンカプセルに手動で充填する。
【0057】
検出結果から明らかなように、本実施例のカプセル剤は、安息角が32.88°であり、実施例5の水和物の結晶形Dの流動性に近く、更に影響因子実験を行う。
【0058】
実施例15
水和物の結晶形Dのカプセル剤の調製の調合法は、以下の通りであり、他の補助剤がない。
【0059】
【表2】
【0060】
プロセスは、以下の通りである。(1)調合量の実施例1で調製された水和物の結晶形Dを80メッシュの篩にかける。(2)3#ゼラチンカプセルを充填し、原料を軽く敷き均し、カプセルキャップを覆い、影響因子実験を行う。
【0061】
実施例16
影響因子実験
A.高温試験
実施例14及び15のカプセル剤製品100粒を開口ペトリ皿に入れ、60℃のインキュベータに入れ、5日目、10日目にそれぞれサンプリングする。性状を観察し、関連物質を検査し、含有量を測定する。
【0062】
B.高湿試験
実施例14及び15のカプセル剤製品100粒を開口ペトリ皿に入れ、相対湿度が90±5%(硝酸カリウム飽和溶液)の密閉容器に入れ、5日目、10日目にそれぞれサンプリングする。性状を観察し、関連物質を検査し、含有量を測定する。
【0063】
C.強光照射試験
実施例14及び15のカプセル剤製品100粒を開口ペトリ皿に入れ、4500±500LXの蛍光灯下で照射し、5日目、10日目にそれぞれサンプリングする。性状を観察し、関連物質を検査し、含有量を測定する。
【0064】
実験結果を以下にまとめる。
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】
【0067】
上記結果から明らかなように、近接した流動性で、水和物の結晶形Dのカプセル剤の各影響因子実験において、5日以内のMCL(ミケリオリド)含有量は、明らかな変化が見られないが、結晶形Aのカプセル剤の実験において、5日以上のMCL含有量は、いずれも顕著に増加する。従って、水和物の結晶形Dの優れる流動性により、補助剤を添加することなくカプセル剤を調製し、臨床に適用することができる。逆に、補助剤を増加し、プロセスを最適化することで結晶形Aのカプセル剤の流動性を改善したとしても、その安定性は、水和物の結晶形Dより顕著に劣る。従って、水和物の結晶形Dは、調製プロセス、安定性及びコンプライアンスの点で、結晶形Aのカプセル剤よりも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1】本発明のジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物の熱重量分析/示差走査熱量分析スペクトルである。
図2】本発明のジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物のX線回折スペクトルである。
図3】本発明のジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物の走査型電子顕微鏡図(40倍の倍率)である。
図4】特許CN103724307Bに開示された方法により調製された結晶形A製品の走査型電子顕微鏡図(200倍の倍率)である。
図5】下から上まで順に0日間、7日間、14日間、30日間放置したサンプルのXRDスペクトルである、本発明のジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩水和物の安定性試験のスペクトル比較である。
図6】本発明のジメチルアミノミケリオリドフマル酸塩の無溶媒化合物の結晶形BのX線回折スペクトルである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6