(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】映像を用いた遠隔測量システム
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
G01C15/00 103Z
(21)【出願番号】P 2021049299
(22)【出願日】2021-03-23
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(73)【特許権者】
【識別番号】520104374
【氏名又は名称】システム建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520336481
【氏名又は名称】株式会社シーサイト
(74)【代理人】
【識別番号】100103805
【氏名又は名称】白崎 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100126516
【氏名又は名称】阿部 綽勝
(74)【代理人】
【識別番号】100132104
【氏名又は名称】勝木 俊晴
(74)【代理人】
【識別番号】100211753
【氏名又は名称】岡崎 紳吾
(72)【発明者】
【氏名】木付 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 諒
(72)【発明者】
【氏名】松本 江基
(72)【発明者】
【氏名】高田 守康
(72)【発明者】
【氏名】花坂 弘之
(72)【発明者】
【氏名】永井 利幸
(72)【発明者】
【氏名】土屋 潤一
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-271255(JP,A)
【文献】特開2003-240549(JP,A)
【文献】特開2007-170978(JP,A)
【文献】特開2019-007913(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103837143(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00-1/14
5/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測量現場において目標点を測量するための映像を用いた遠隔測量システムであって、
前記測量現場に設置され、前記目標点を撮影するカメラ及び前記目標点を測量する測量機と、これらとネットワークを介して接続された端末と、
を備え、
前記端末が
前記カメラにより撮影された2次元の映像を、前記測量現場の前記カメラから予め設定された任意の距離離れた位置にあるものとして設定する設定手段と、
前記測量機に前記2次元の映像上の前記目標点に向けて測量指令を出すことで仮測量点を測量させる測量指令手段と、
前記2次元の映像を、前記測量現場の前記カメラから前記2次元の映像が前記仮測量点を含む距離離れた位置にあるものとして再設定する再設定手段と、
を有し、
前記測量指令手段による測量と、前記再設定手段による再設定とを、交互にそれぞれ1回以上行うことにより前記目標点を測量する映像を用いた遠隔測量システム。
【請求項2】
前記測量指令手段による測量と、前記再設定手段による再設定とを2~10回繰り返すものである請求項1記載の映像を用いた遠隔測量システム。
【請求項3】
前記2次元の映像における前
記仮測量点と前記目標点と
の前記2次元の映像上の距離が、予め設定された任意の長さ以下となるまで前記測量指令手段による測量及び前記再設定手段による再設定を繰り返すものである請求項1記載の測量システム。
【請求項4】
前記測量機が、前記測量機の測量方向を変更するサーボモータを有する請求項1~3いずれか1項に記載の映像を用いた遠隔測量システム。
【請求項5】
前記端末が、前記2次元の映像を表示する表示部を有し、
前記端末に対する操作により、前記表示部上で前記目標点を指定するものである請求項1~4いずれか1項に記載の映像を用いた遠隔測量システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は映像を用いた遠隔測量システムに関し、更に詳しくは測量現場の映像を用いることにより、作業者が目標点へ赴くことなく目標点の測量を行うことが可能な遠隔システムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種の土木及び建設工事においては、測量が行われる。これは、3次元空間における点の座標を特定し、位置関係を把握するための作業である。
【0003】
一般的に測量は、測量現場において既知の座標に設置された測量機から目標点へ向けてレーザー光を発し、その反射により測量機から測量目標である目標点の角度と距離を計測して座標を算出することで行われる。
この場合、異なる目標点を順次測量するため、測量機を操作する作業者と、目標点を示す作業者の2人1組によって作業を行うのが通常である。すなわち、測量を行うタイミングにおいて両者が測量現場にいる必要がある。
【0004】
また、プリズムを検出するためのセンサーを備える測量機が、当該プリズムを検知することで測量を行うシステムがある。
この場合、予め作業者がプリズムを測量現場の目標点へ設置し、プリズムの検知及び測量を行うため、測量を行うタイミングにおいて、目標点を示す作業者を要さず、測量機を操作する作業者のみが測量現場にいれば測量が可能となる。
【0005】
さらに、ネットワークを介して指令を受けた測量機が測量現場に設置されたプリズムに目標を設定し、測量を行うシステムが開発されている。この場合、予めプリズムを測量現場の目標点に設置する必要があるものの、作業者が遠隔地で測量を行うことができるため、測量を行うタイミングにおいていずれの作業者も測量現場にいる必要はない。
このようなシステムとしては例えば、ネットワークを介して通信する親測量機及び子測量機を用いた測量機の映像を用いた遠隔測量システム(特許文献1)や、測量対象に予め設置された二次元マークを用いて当該二次元マークを目標に測量を行う測量システムが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-174227号公報
【文献】特許第6693616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2を含む従来のシステムにおいては、予めプリズム等を設置する必要があるため、作業者が測量現場で設定される目標点へ行く必要がある。そのため、移動及び設置の手間が掛かり、さらに測量現場の状況によっては目標点へ行くことに危険が伴う場合がある。
また、目標点にプリズム等を設置することができない場合、上記システムを用いることができない。
また、土木工事や建設工事等、地形や建物の形状を変更する現場で測量を行う場合、目標点も変更されるため、事前にプリズム等を設置することはできず、上記のシステムを用いることはできない。
【0008】
本発明は、上述の課題を受けて開発されたものである。
すなわち、本発明は目標点へ赴くことなく、映像上で目標点を指定して所定の演算により測量することを可能としたシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は鋭意検討の結果、測量現場を撮影した2次元の映像を、測量現場におけるカメラから特定の距離離れた位置に存在するものとして設定し、当該2次元の映像上の目標点の測量と、当該2次元の映像の位置の再設定とを交互に行うことで、上記課題を解決可能であることを見出した。本発明はこの知見に基づく。
【0010】
本発明は(1)、測量現場において目標点を測量するための映像を用いた遠隔測量システムであって、測量現場に設置され、目標点を撮影するカメラ及び目標点を測量する測量機と、これらとネットワークを介して接続された端末と、を備え、端末がカメラにより撮影された2次元の映像を、測量現場のカメラから予め設定された任意の距離離れた位置にあるものとして設定する設定手段と、測量機に2次元の映像上の目標点に向けて測量指令を出すことで仮測量点を測量させる測量指令手段と、2次元の映像を、測量現場のカメラから2次元の映像が仮測量点を含む距離離れた位置にあるものとして再設定する再設定手段と、を有し、測量指令手段による測量と、再設定手段による再設定とを、交互にそれぞれ1回以上行うことにより目標点を測量する映像を用いた遠隔測量システムに存する。
【0011】
本発明は(2)、測量指令手段による測量と、再設定手段による再設定とを2~10回繰り返すものである上記(1)記載の映像を用いた遠隔測量システムに存する。
【0012】
本発明は(3)、2次元の映像における仮測量点と目標点との2次元の映像上の距離が、予め設定された任意の長さ以下となるまで測量指令手段による測量及び再設定手段による再設定を繰り返すものである上記(1)記載の測量システムに存する。
【0013】
本発明は(4)、測量機が、測量機の測量方向を変更するサーボモータを有する上記(1)~(3)いずれか1つに記載の映像を用いた遠隔測量システムに存する。
【0014】
本発明は(5)、端末が、2次元の映像を表示する表示部を有し、端末に対する操作により、表示部上で目標点を指定するものである上記(1)~(4)いずれか1つに記載の映像を用いた遠隔測量システムに存する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の映像を用いた遠隔測量システムにおいては、設定手段により、測量現場に実在するものとして2次元の映像が設定される。そして、これを用いて測量指令手段による測量と、再設定手段による再設定とを、交互にそれぞれ1回以上行うことにより、2次元の映像上における目標点の座標を3次元空間に存在する目標点の座標に近似させ、3次元空間の目標点を測量することが可能となる。このため、プリズム等を設置できない目標点でも測量することが可能となる。
また、測量のために目標点へ赴く必要がなく手間が掛からない。さらに、目標点へ行くことに危険が伴う場合であっても安全に測量を行うことが可能となる。
また、新たな目標点を設定する場合においても、2次元の映像上で目標点の位置を変更して設定すればよく、測量現場の地形等に変更がある場合にも利用可能である。
【0016】
本発明の映像を用いた遠隔測量システムにおいては、測量指令手段による測量と、再設定手段による再設定とを2~10回繰り返すものであることにより、端末の処理負担を軽減しながら、目標点の測量精度を向上させることが可能となる。
【0017】
本発明の映像を用いた遠隔測量システムにおいては、2次元の映像における仮測量点と目標点とを結ぶ直線との距離が、予め設定された任意の長さ以下となるまで測量指令手段による測量及び再設定手段による再設定を繰り返すものであることにより、端末の処理負担を軽減しながら、目標点の測量精度を向上させることが可能となる。
なお、測量指令手段による測量指令と、再設定手段による再設定の繰り返しによる測量精度の向上と、仮測量点と併用することにより、より目標点の測量精度を向上させることが可能となる。
【0018】
本発明の測量システムにおいては、測量機が、測量機の測量方向を変更するサーボモータを有することにより、高精度で測量機の測量方向を変更することが可能となる。
すなわち、再設定手段により、2次元の映像の位置を変更した場合であっても測量機が目標点を向くように、高精度で測量機の向きを変更することが可能となる。
【0019】
本発明の映像を用いた遠隔測量システムにおいては、端末が、2次元の映像を表示する表示部を有し、端末に対する操作により、表示部上で目標点を指定するものであることにより、使用者が目標点を視覚的に確認しながら、目標点の測量を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、映像を用いた遠隔測量システムを示す概念図である。
【
図2】
図2は、映像を用いた遠隔測量システムを示す模式図である。
【
図3】
図3は、映像を用いた遠隔測量システムを用いた測量手順を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、仮測量点の測量を示す模式図である。
【
図5】
図5は、複数回の仮想フレームの再設定を示す模式図である。
【
図6】
図6は、映像を用いた遠隔測量システムによる測量の別の例を示す模式図である。
【
図7】
図7は、映像を用いた遠隔測量システムによる測量の別の例を示す模式図である。
【
図8】
図8は、映像を用いた遠隔測量システムによる測量の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。
また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0022】
図1は、映像を用いた遠隔測量システムAを示す概念図である。
映像を用いた遠隔測量システムA(以下、単に「遠隔測量システムA」という。)は、土木工事又は建設工事等の測量現場に設置される測量機1及びカメラ2と、端末3とを備える。測量機1、カメラ2及び端末3はインターネット等のネットワークNを介して接続されている。
本発明の遠隔測量システムAは、測量現場における任意の目標点を測量することが可能なシステムである。
そのため、カメラ2は目標点が撮影範囲に収まるように、測量現場に設置される。
【0023】
以下においては、測量現場におけるカメラ2の撮影方向を含む鉛直面における水平方向をy軸(カメラ2の撮影方向における前後方向)、当該y軸に垂直な水平方向をx軸(カメラ2の撮影方向における左右方向)、鉛直方向をz軸(カメラ2の撮影方向における上下方向)として示す。
測量現場における空間の1点は、xyz座標で表され、測量は測量機1を原点とした場合の、目標点のxyz座標を得る作業と換言できる。
以下、図におけるxyz座標をそれぞれ(X,Y,Z)と記載する。
【0024】
図2は、遠隔測量システムAを示す模式図である。
測量機1は、測量現場において、予め測量済みの任意の座標(
図2においては、(0,0,0))に設置されている。測量機1は、当該座標と目標点との角度及び距離を計測することにより測量を行う。測量機1は、測量のためのレーザー光の発信及び受信を行う測量手段12と、測量方向を変更するための駆動手段11とを有する。駆動手段11として、モータが好適に用いられる。
測量機1がモータを有することにより、測量現場に作業者がいない場合であっても、測量機1の測量方向を変更して、カメラ2の撮影範囲内にある任意の目標点を測量することが可能となる。
また、モータの中でもサーボモータ11を採用することにより、高精度で測量機1の測量方向を変更することが可能となり、測量の精度を向上させることが可能となる。
【0025】
カメラ2は、目標点を含む測量現場を撮影可能なビデオカメラ2である。ここで、カメラ2が撮影するのは3次元の地形L等である。
一方で、カメラ2が撮影する映像は2次元の映像4となる。当該2次元の映像4は、ネットワークNを介して端末3に送信され、端末3の表示部31に表示される。
カメラ2は、測量現場において地面が映るよう、高所に斜め下方向を撮影するように設置される。
すなわち、2次元の映像4は、目標点Tを含む斜め下方向を撮影した映像となる。
【0026】
端末3には、公知のパソコン、スマートフォン又はタブレットを好適に用いることができる。端末3は、後述する設定手段3aと測量指令手段3bと再設定手段3cと、カメラ2が撮影した2次元の映像4を表示する表示部31と、入力手段と、を有する。
例えば、端末3がパソコンである場合、設定手段3a、測量指令手段3b、及び再設定手段3cには、CPUが相当する。表示部31にはモニターが相当する。
また、入力手段にはキーボード及びマウスが相当する。これらの詳細について、以下に
図3を参照しながら述べる。
【0027】
次に、本発明の遠隔測量システムAを用いた測量について述べる。
図3は、遠隔測量システムAを用いた測量手順を示すフローチャートである。
図3に示すように、まずカメラ2が2次元の映像4を撮影する。このとき、上述の通り、端末3の表示部31にはネットワークNを介してカメラ2が撮影する2次元の映像4が表示されている。撮影と表示は同時に行われるため、2次元の映像4は測量現場の最新の状態を撮影したものである。
ここで、目標点Tとは測量現場における測量目標である一点である。測量とは、当該一点の座標を得ることといえる。目標点Tは、表示部31に表示された測量現場の映像を用いて設定される。これにより、遠隔測量システムAにおいて測量現場の目標点T(以下「現場目標点」という。)に対応する映像上の目標点(以下「映像目標点」という。)が設定される。
【0028】
次に、2次元の画像4において、目標点Tを設定する。具体的には使用者が端末3の入力手段を操作することにより映像目標点が設定される。例えば端末3がパソコンである場合、モニターに表示された2次元の映像4上で、任意の1点をクリック(指定)することで、当該点が映像目標点として設定される。2次元の映像は矩形状であり、当該設定により2次元の映像4全体に対する映像目標点の相対的なxy(横及び縦)座標が特定される。このため、遠隔測量システムAにおいては、使用者が現場目標点Tに対応する映像目標点を視覚的に確認しながら、現場目標点Tの測量を行うことが可能となる。
ちなみに、土木や建設等の工事現場においては、目標点Tとすべき位置が予め指定されていることが通常であるが、上記の映像目標点の設定により、任意の現場目標点を目標点Tとして測量することが可能となる。
【0029】
図4は、仮測量点の測量を示す模式図である。
また、
図5は複数回の仮想フレームの再設定を示す模式図である。
【0030】
なお、
図4~
図8においては、説明の便宜のため、撮影方向が水平となるようにカメラ2が設置されている場合を示す。
この場合、撮影方向における奥行きはy座標と一致する。
また、2次元の映像4における縦横方向はそれぞれz軸方向及びx軸方向と一致する。
この場合、上記の設定手段3aによる設定は、2次元の映像4のy座標を一定の値に定めることとなる。
【0031】
図4及び
図5に示すように、カメラ2の撮影は放射状であるため、その撮影範囲(画角)は遠方ほど広い範囲を撮影可能となっている。上述の通り、カメラ2が3次元の地形L等を撮影した映像は2次元の映像4となる。
なお、2次元の映像4は矩形となっている。この2次元の映像4は、もとの3次元の地形L等(撮影対象)における奥行きを捨象して、カメラ2の撮影範囲において撮影方向に対して直交して存在するものとして処理されている。
【0032】
ここで、上記の通りカメラ2は撮影方向が斜め下方向となるように設置されている。したがって、カメラ2が撮影する撮影方向はyz軸で表現される。撮影された2次元の映像4は、撮影方向に直交する面であるため、その縦軸の座標がyz座標、横軸の座標はx座標で表現されることになる。
設定手段3aにより2次元の映像4のカメラ2からの距離が特定されることで、2次元の映像4における縦軸が、yzの1次関数fz(y)で表現可能となる。
なお、2次元の映像4における横軸はx軸と一致している。
これにより、2次元の映像4における縦横の座標が(fz(y),X)として表現可能となる。
このため、2次元の映像4における映像目標点を、測量現場における座標として特定することが可能となる。
【0033】
ここから、2次元の映像4における特定の点の座標(fz(y),X)を、測量現場における当該点に相当する点の座標(X,Y,Z)として変換することが可能となる。
端末3において映像目標点が設定されると、端末3の設定手段3aが2次元の映像4がカメラ2より測量現場の前記カメラ2から予め任意に設定された距離離れた位置にあるものとして設定する。
すなわち、設定手段3aによる設定は、上記座標における関数fz(y)を設定することである。
【0034】
図3に戻り、設定手段3aが、2次元の映像4のカメラ2からの距離(本実施形態においてはy座標)を任意の値に設定することにより、撮影現場において2次元の映像4における各画素の座標が特定される。
すなわち、y座標をY1と設定した場合、2次元の映像4の上端は、カメラ2からY1(m)だけ離れた位置の撮影範囲の上端と一致しz座標を特定することができる。2次元の映像4が矩形であることから、同様に2次元の映像4の下端のz座標及び2次元の映像4の左右の端部のx座標が特定可能となり、これらとの相対位置によって2次元の映像4における端部以外の点についてもxz座標を特定することができる。
【0035】
ここで、xyz座標が特定された2次元の映像4を仮想フレーム5という。
上述したようにカメラ2の撮影範囲(画角)は一定であり、
図4に示すように、設定手段3aにより仮想フレーム5が設定されることで、仮想フレーム上の映像目標点Taが、測量現場の空間における座標(
図4ではX
Ta,Y
Ta=Y1,Z
Ta)として特定される。
【0036】
次に、端末3の測量指令手段3bが、設定された仮想フレーム5上の映像目標点Taをターゲットとして測量を行うように、測量機1に対して測量指令を出す。
測量機1が測量指令を受信すると、駆動手段11が測量手段12の向きを仮想フレーム上の映像目標点Taに向くように変更する。向きが変更された後に、測量手段12がレーザー光を発信することで測量を行う。
ここで
図4及び
図5に示されるように、仮想フレーム5は設定手段3aにより設定された概念上の存在である。したがって、測量手段12により映像目標点に向けて発せられたレーザー光は、仮想フレーム5上の映像目標点を通過し、測量現場の物体(地形L等)に衝突して反射するまで直進する。
そしてレーザー光が反射した点が、測量結果として得られる。当該得られた点を、仮測量点T1という。測量機1は、測量結果としてこの仮測量点T1のXYZ座標(
図4ではX
T1,Y
T1,Z
T1)を得る。
【0037】
図3に戻り、仮測量点が得られた後、再設定手段3cが仮想フレームを含む面上に仮測量点T1が含まれるように、カメラと仮想フレームとの距離を再設定する。
すなわち、カメラ2の撮影方向が水平である本実施形態においては、仮測量点のy座標が仮想フレームのy座標となるように、端末3の再設定手段3cが仮想フレームを再設定する。
これにより、再設定された仮想フレーム上5aの目標点Tbが、測量現場におけるxyz座標上で特定される(
図4及び
図5参照)。
ちなみに、カメラ2の撮影方向が水平ではない場合も、再設定手段3cが仮想フレームを含む面上に仮測量点T1が含まれるように、カメラと仮想フレームとの距離を再設定する点は同様である。この場合、新たな仮想フレーム5aの縦軸を表す1次関数f’z(y)が算出される。
【0038】
仮想フレームが再設定されると、再度、測量指令手段3bが測量機1に対して測量指令を出し、測量機1が仮想フレーム5a上の映像目標点Tbを目標として測量を行う。
この場合においても、測量結果として得られるのは、仮想フレーム5aを通過した先でレーザー光が反射した点(仮測量点T2)の座標である。
【0039】
上記の測量指令手段3bによる測量と、再設定手段3cによる再設定とを交互に1回以上繰り返すことにより、目標点Tの測量精度が向上する。
測量指令手段3bによる測量及び再設定手段3cによる再設定とは、1回当たり約5~7秒程で行われる。
【0040】
図5を参照しながら、測量指令手段3bによる測量と、再設定手段3cによる再設定の繰り返しについて詳しく述べる。
図5においては、仮想フレーム5が、設定手段3aによりカメラ2からY1(m)離れた位置に設定されている。
すなわち、仮想フレーム5及び仮想フレーム上の映像目標点Taのy座標はY1である。仮想フレーム5が設定されることにより、仮想フレーム上の目標点Taのxz座標も特定されており、Taは(X
Ta,Y
Ta=Y1,Z
Ta)と表される。
上述の通り、測量機1が仮想フレーム上の映像目標点Taに向けて測量を行うことにより、仮測量点T1の座標(X
T1,Y
T1,Z
T1)が得られる。これに基づき、再設定手段3cは得られた仮測量点T1のy座標であるY
T1をy座標として、新たな仮想フレーム5aを再設定する。これにより、新たな仮想フレーム5a上の目標点Tbが特定される。
図5においては、新たな仮想フレーム上の映像目標点Tbの座標は(X
Tb,Y
Tb=Y
T1,Z
Tb)となる。
ちなみに、カメラ2の撮影範囲は放射状に広がっているため、仮想フレームが再設定され、仮想フレームとカメラ2からの距離が変化した場合、仮想フレームの大きさが変化する。このため映像目標点が同一であっても、直前に設定された仮想フレーム上の映像目標点Taと新たな仮想フレーム上の映像目標点Tbのxz座標は異なるものとなる。
【0041】
測量指令手段3bは、新たな仮想フレーム5aが設定され、新たな仮想フレーム5a上の映像目標点Tbが特定されると、当該特定された仮想フレーム上の映像目標点Tbに向けて測量するように、測量機1に対して測量指令を出す。これにより、測量機1は2つめの仮測量点T2の座標(XT2,YT2,ZT2)を得る。
【0042】
以下、これを順次繰り返すことにより、新たな仮想フレーム5b、5cが設定され、これらの仮想フレーム上の映像目標点Tb、Tc、及び仮測量点T3、T4の座標が得られる。この繰り返しによって、後述するように誤差、すなわち測量現場における現場目標点Tと測量結果との距離、を減じて測量精度を向上させることが可能となる。
【0043】
測量指令手段3bによる測量と、再設定手段3cにより仮想フレームの再設定とを交互に1回以上繰り返し、誤差が十分に小さくなったときの仮測量点(
図5においてはT4)の座標を現場目標点Tの座標とする。
【0044】
ここで、測量指令手段3bによる測量と、再設定手段3cによる再設定とは、所定の回数繰り返してもよい。所定の回数を2~10回とすることにより、現場目標点の測量精度が向上する。これを2回未満とした場合、上記範囲と比較して実際の現場目標点と測量された目標点との誤差が大きくなる。
また、10回を超える回数とした場合、上記範囲と比較して通信負荷が増加し、さらに現場目標点の測量までに長時間を要する。
【0045】
図6は、遠隔測量システムAによる測量の別の例を示す模式図である。
また、遠隔測量システムAによる測量精度は、2次元の映像における仮測量点と映像目標点とを結ぶ直線と2次元の映像4上の距離Sが一定以下となるまで再設定手段3cによる仮想フレームの再設定及び測量指令手段3bによる測量指令を繰り返すことによっても、向上させることが可能である。以下、距離Sを用いた遠隔測量システムAによる測量の実施形態を示す。
【0046】
図7は、遠隔測量システムAによる測量の別の例を示す模式図である。
距離Sを用いて測量を行う場合、測量現場において、原点(実施形態においては、測量機1の座標(0,0,0))及び2つの測量済みの第1の点P(Xp,Yp,Zp)、測量済みの第2の点Q(Xq,Yq,Zq)が必要となる。測量済みの点P及びQは、測量現場における座標が特定されていると同時に、2次元の映像4上の測量済みの点P’、Q’の座標も特定された状態となっている。
まず、2次元の映像4において、映像目標点を設定する。このとき、2つの測量済みの点P及びQのうち、2次元の映像4上において、映像目標点との距離が近い方(
図6においては測量済みの第2の点Q)を特定する。仮に、両者と映像目標点との2次元の映像上の距離が全く同一である場合、いずれを選んでもよい。
設定手段3aは、上記で特定された測量済みの第2の点Qを含むように仮想フレーム5を設定する。このとき、仮想フレーム5は、カメラ2と測量済みの第2の点Qとを結ぶ直線に対して垂直に設けられる。
【0047】
上述の実施形態と同様に、仮想フレーム5の設定により、仮想フレーム5上の映像目標点Taが特定される。測量指令手段3bが映像目標点Taに向けて測量を行い、仮測量点T1の座標を特定する。再設定手段3は、仮測量点T1を含むように新たな仮想フレーム5aを設定する。このとき、新たな仮想フレーム5aは、その直前に設定された仮想フレーム5に対して平行な面上に設けられる。すなわち、新たな仮想フレーム5aは、カメラ2と測量済みの点Qとを結ぶ直線に対して垂直に設けられる。
【0048】
新たな仮想フレーム5aが設定されると、当該仮想フレーム5a上における映像目標点Tb、測量済みの点P’及びQ’それぞれの、測量現場における座標(3次元)と仮想フレーム5aにおける座標(2次元)とが特定される。
このとき、仮測量点T1は現実の存在する点でありながら仮想フレーム5aに含まれており、仮想フレーム5a上の(すなわち2次元の)座標を特定することができる。
こうして得られた仮測量点T1の2次元座標と、仮想フレーム5aの映像目標点Tbとの距離Sを、仮想フレーム5a上で算出することが可能となる。
このとき、距離Sの算出は2次元の映像上4(仮想フレーム5a)において行われるため、距離Sはピクセル単位で算出される。
【0049】
こうして得られた距離Sが、一定以下(例えば3ピクセル)以下であった場合、得られた仮測量点の3次元座標を現場目標点の3次元座標とする。
距離Sが所定の値を超えていた場合、再度測量指令手段3bによる測量と、再設定手段3cにより仮想フレームの再設定を行い、距離Sを算出する。これを、距離Sが所定の値以下になるまで繰り返す。
【0050】
距離Sの算出は、測量現場に設定される仮想フレーム上において行われる。このため、距離Sを一定以下となるまで測量指令手段3bによる測量と再設定手段3cによる再設定とを繰り返すことで、確実に現場目標点Tの測量精度を向上させることが可能となる。
【0051】
測量指令手段3bによる測量と再設定手段3cによる再設定との繰り返し回数を規定することによる測量精度の向上と、仮測量点と測量機1から目標点を結ぶ直線との2次元の映像4上の距離Sの長さによる測量精度との向上は、いずれか一方を採用しても、併用してもよい。両者を併用することでより測量精度が向上する。
【0052】
本発明の遠隔測量システムAにおいては、これらの構成により、測量現場から離れて設置された端末3に対する操作により、カメラ2の撮影範囲内にある任意の目標点を測量することが可能となる。
すなわち、測量を行うタイミングにおいて、測量現場へ赴く必要がない。
また、予め測量現場にカメラ2及び測量機1を設置する場合であっても、現場目標点Tの位置まで作業者が赴く必要がない。
また、測量現場の地形L等に変更がある場合であっても、その都度測量を行うことが可能となる。
【0053】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0054】
図8は、遠隔測量システムAによる測量の例を示す模式図である。
本実施形態においては、仮想フレーム及び仮測量点がそれぞれ現場目標点Tよりもカメラ2に近い位置にある例を示したが、仮想フレーム又は仮測量点が現場目標点Tよりもカメラ2から遠い位置にある場合や、再設定手段3cによる再設定と測量指令手段3bによる測量の繰り返しのうちに現場目標点Tに対して前後する場合があり得る。
これらの場合であっても、
図8に示すように本発明の遠隔測量システムAを用いることにより目標点Tを測量することが可能である。
【0055】
図8に示すように、現実の現場目標点Tよりも仮想フレーム5又は仮測量点T1がカメラ2から遠方にある場合、すなわち、仮想フレーム5上の映像目標点Taが地形Lの内部に位置する場合であっても、仮想フレーム5は概念上の存在であるため支障はなく、測量機1は仮想フレーム5上の映像目標点Taに向けて測量を行うことが可能である。
この場合、測量機1が測量を行うと、仮想フレーム5よりもカメラ2側に近い仮測量点T1が測量結果として得られることとなる。
測量指令手段3bによる測量と、再設定手段3cによる仮想フレームの再設定を繰り返すことにより、測量精度が向上することは、仮測量点が目標点よりもカメラ2に近い位置にある場合と同様である。
【0056】
本実施形態において、カメラ2による測量現場の撮影、及び当該撮影した映像の端末3への表示は、常時、かつ同時的に行われているが、地形L等に変更がない場合、端末3に表示される映像及び仮想フレームとして設定される映像が、測量現場において過去に撮影されたものであっても差し支えない。
【0057】
本実施形態において、カメラ2が撮影する2次元の映像4は矩形であるが、矩形以外の円形、楕円形等の形状であっても、同様に本発明の遠隔測量システムAを適用することが可能である。
【0058】
本実施形態において、再設定手段3cによる仮想フレーム5の再設定が行われる場合、基準となった仮測量点T1,T2…は、それぞれ新たな仮想フレーム5a、5b…に含まれていたが、カメラ2の画角との関係により、基準となった仮測量点が新たに設定された仮想フレームに含まれない場合がありうる。
この場合であっても、仮想フレーム上の目標点の座標を算出することが可能であり、本発明の遠隔測量システムAを問題なく適用することが可能である。
ちなみに、この場合、仮想フレームを含む面(仮想フレームを延長した面)に、基準となる仮測量点が含まれることとなる。
【0059】
本実施形態において、カメラ2の撮影方向は斜め下向き又は水平であるが、現場目標点Tが撮影範囲に収まっている限り、これに限られない。
【0060】
本実施形態において、2次元の映像4はカメラ2が撮影した映像を即時的に利用しているが、地形L等に変更がない場合、過去に撮影された映像や、静止画であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の映像を用いた遠隔測量システムAは、予め目標点を示すためのプリズム等を設置する必要がなく、遠隔により任意の箇所を目標点として測量することが可能である。
【符号の説明】
【0062】
A・・・映像を用いた遠隔測量システム
N・・・ネットワーク
1・・・測量機
11・・・サーボモータ(駆動手段)
12・・・測量手段
2・・・カメラ
3・・・端末
31・・・表示手段
3a・・・設定手段
3b・・・測量指令手段
3c・・・再設定手段
4・・・2次元の映像
5、5a、5b、5c・・・仮想フレーム(2次元の映像)
T・・・目標点(現場目標点)
Ta、Tb、Tc、Td・・・仮想フレーム上の映像目標点
T1、T2、T3・・・仮測量点
P、Q・・・測量済みの点
P’、Q’・・・2次元の映像上の測量済みの点
S・・・距離
L・・・地形