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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】毛髪用処理剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/898 20060101AFI20241121BHJP
   A61K 8/362 20060101ALI20241121BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20241121BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
A61K8/898
A61K8/362
A61K8/365
A61Q5/00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020037484
(22)【出願日】2020-03-05
(65)【公開番号】P2021138651
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-02-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年8月17日に、毛髪用処理剤が記載されたパンフレットを発送することにより配布 〔刊行物等〕 令和1年8月19日に、毛髪用処理剤が記載されたパンフレットを発送することにより配布
(73)【特許権者】
【識別番号】000108672
【氏名又は名称】タカラベルモント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】武鹿 直樹
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】Philip Kingsley, UK,Bond Builder Split End Remedy,Mintel GNPD [online],2020年02月,Internet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#7298675, [検索日:2024.1.12], 表題部分,成分,製品のバリエーション
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMET(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸、乳酸、マレイン酸、シュウ酸、及びマロン酸からなる群より選択される少なくとも1種のカルボン酸またはその塩類と、ビスPCAジメチコンとを含有する毛髪用処理剤であって、
前記毛髪用処理剤の全体に対する前記カルボン酸またはその塩類の含有量をX[質量%]、前記毛髪用処理剤の全体に対する前記ビスPCAジメチコンの含有量をY[質量%]とした場合に、0.05≦X/Y≦30の関係が成立し、
前記カルボン酸またはその塩類の含有量Xが、0.4~30質量%であり、
前記ビスPCAジメチコンの含有量Yが、0.5~25質量%である
ことを特徴とする毛髪用処理剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪の処理において使用する毛髪用処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
染毛処理、脱色処理、パーマネントウェーブ処理や縮毛矯正処理等の毛髪変形処理は、毛髪のツヤやまとまり感を低下させ、毛髪に様々なダメージを与える。
【0003】
そこで、これらの毛髪のダメージを軽減するための毛髪用処理剤が提案されている。より具体的には、例えば、(アミノエチルアミノプロピルメチコン/ジメチコン)コポリマーおよびアミノエチルアミノプロピルジメチコンから選ばれる一種または二種からなるカチオン性シリコンポリマーと、アニオン性シリコンポリマーであるPCAジメチコンと、4級アンモニウム塩を有する水溶性のカチオンポリマーとを含有する毛髪用処理剤が提案されている。そして、このような毛髪用処理剤を使用することにより、毛髪のパサつきを抑え、まとまりを与えることにより、良好なツヤを付与することができると記載されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第63256403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献に記載の毛髪用処理剤においては、毛髪にまとまりを与えるためにPCAジメチコンが含有されているが、当該PCAジメチコンでは、毛髪の質感(ツヤ)が十分に向上しないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、染毛処理等による毛髪の強度(ハリ・コシ、切れにくさ、櫛通り)の低下を抑制しつつ、同時に質感を向上させることができる毛髪用処理剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の毛髪用処理剤は、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸、乳酸、マレイン酸、シュウ酸、及びマロン酸からなる群より選択される少なくとも1種のカルボン酸またはその塩類と、ビスPCAジメチコンとを含有する毛髪用処理剤であって、毛髪用処理剤の全体に対するカルボン酸及びその塩類の含有量をX[質量%]、毛髪用処理剤の全体に対するビスPCAジメチコンの含有量をY[質量%]とした場合に、0.05≦X/Y≦30の関係が成立することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、染毛処理等による毛髪の強度の低下を抑制しつつ、同時に質感を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において、適宜、変更して適用することができる。
【0010】
本発明の毛髪用処理剤は、例えば、染毛処理、脱色処理、パーマネントウェーブ処理や縮毛矯正処理等の毛髪変形処理の前後、またはこれらの処理と同時に使用される処理剤である。
【0011】
本発明の毛髪用処理剤は、カルボン酸又はその塩類と、アニオン性シリコンポリマーとを含有する。
【0012】
カルボン酸又はその塩としては、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸、乳酸、マレイン酸、シュウ酸、及びマロン酸またはその塩類が使用される。
【0013】
これらのカルボン酸またはその塩は、毛髪内部へ浸透して、毛髪内部に弾力のある芯を形成し、染毛処理等による強度(ハリ・コシ、切れにくさ、櫛通り)の低下を抑制するものである。
【0014】
なお、櫛通りの低下を確実に抑制するとの観点から、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸等の2価のカルボン酸(ジカルボン酸)を使用することが好ましい。これは、2価のカルボン酸は、ケラチン繊維のアミノ基との反応性が高いためである。
【0015】
また、本発明においては、毛髪用処理剤の全体に対するカルボン酸又はその塩類の配合量が0.4~30質量%が好ましく、4~16質量%がより好ましい。
【0016】
これは、カルボン酸又はその塩類が0.4質量%未満では強度の低下を十分に抑制できない場合があり、30質量%より多いと毛髪への過剰吸着と収斂作用によって手触りが硬くなり、さらにはツヤの低下が生じる場合があるためである。
【0017】
アニオン性シリコンポリマーは、シリコンを重合させたポリマーにアニオン性基を少なくとも1つ有しているものをいい、本発明においては、ビスPCAジメチコンが使用される。
【0018】
このビスPCAジメチコンは、側鎖にピロリドンカルボン酸の変性置換基を有するジメチコンポリマーのPCAジメチコンとは異なり、両末端にピロリドンカルボン酸の変性置換基を有するジメチコンポリマーであり、毛髪の表面に浸透して、毛髪に潤いと滑らかさを付与し、質感(ツヤ)を向上させるものである。
【0019】
より具体的には、ビスPCAジメチコンは、毛髪との親和性の高いアミノカルボン酸の変性置換基を両末端に1つずつ有するため、このビスPCAジメチコンを使用することにより、毛髪表面の疎水性が向上し、他の補修成分と疎水性の相互作用を示すことになるため、質感(ツヤ)を向上させることができる。
【0020】
また、本発明においては、毛髪用処理剤の全体に対するビスPCAジメチコンの配合量が0.5~25質量%が好ましく、3~10質量%がより好ましい。
【0021】
これは、ビスPCAジメチコンが0.5質量%未満では質感を十分に向上させることができない場合があり、25質量%より多いと毛髪表面に過剰に吸着し、髪のハリ・コシと毛髪強度の低下が生じる場合があるためである。
【0022】
なお、ビスPCAジメチコンは市販品を用いることができる。例えば、Grant Industry, Inc.製、商品名:GRANREPAIR POWERBOND(PEG-12ジメチコンスルホコハク酸2Naを14.7質量%含有したもの)等が挙げられる。
【0023】
ここで、本発明者らは、カルボン酸又はその塩類と、ビスPCAジメチコンを含有する毛髪用処理剤において、これらの成分の相互作用により、染毛処理等による強度の低下を抑制しつつ、同時に質感を向上させるための条件を見出した。
【0024】
より具体的には、本発明の毛髪用処理剤においては、毛髪用処理剤の全体に対するカルボン酸又はその塩の含有量をX[質量%]、毛髪用処理剤の全体に対するビスPCAジメチコンの含有量をY[質量%]とした場合に、0.05≦X/Y≦30の関係が成立する点に特徴がある。
【0025】
すなわち、カルボン酸又はその塩の含有量XとビスPCAジメチコンの含有量Yを、0.05≦X/Y≦30の範囲に設定することにより、毛髪の内部と外部をバランスよく整えることが可能になり、結果として、強度と質感を同時に向上させることが可能になる。
【0026】
なお、X/Y<0.05の場合は、ビスPCAジメチコンの含有量Yに対するカルボン酸又はその塩の含有量Xが少な過ぎるため、強度の低下を十分に抑制することができない。また、30<X/Yの場合は、カルボン酸又はその塩の含有量Xに対するビスPCAジメチコンの含有量Yが少な過ぎるため、質感を十分に向上させることができない。
【0027】
また、強度と質感をより一層向上させるとの観点から、1.33≦X/Y≦1.60の関係が成立することが好ましい。
【0028】
(pH調整剤)
また、本発明の毛髪用処理剤は、pH調整剤を含有してもよい。このpH調整剤は、特に限定されず、通常、毛髪化粧料に用いられるものであればよい。例えば、水酸化ナトリウム、炭酸グアニジン、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、セスキ炭酸塩、アルギニン、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、モノエタノールアミン、アンモニア、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、クエン酸三カリウム、クエン酸三ナトリウム、及び、リン酸水素二アンモニウムなどが挙げられる。
【0029】
このうち、中和性能を向上させるとの観点から、水酸化ナトリウムを使用することが好ましい。
【0030】
また、毛髪用処理剤全体に対するpH調整剤の配合量は、0.01~30質量%であることが好ましい。
【0031】
これは、0.01質量%未満では、pH調整機能が十分に得られず、染毛処理やパーマネントウェーブ処理が不十分になる場合があり、30質量%より大きい場合は、毛髪に損傷を与えてしまう場合があるためである。
【0032】
(pH)
本発明の毛髪用処理剤は、上記pH調整剤により、pHが6~10に設定されている。これは、pHが6未満の場合は、毛髪の柔らかさを得ることができない場合があり、pHが10より大きい場合は、すべり感を得ることができない場合があるためである。
【0033】
即ち、pHを6~10に設定することにより、良好な仕上がり感が得ることができる。なお、これらの効果を向上させるとの観点から、pHを7~9に設定することが好ましい。
【0034】
(溶媒)
また、本発明の毛髪用処理剤において使用される溶媒(分散媒)は特に限定されず、水が使用されるが、必要に応じて、エタノール、イソプロパノール等の有機溶媒を、人体に接触しても無害な濃度で、水に含有させてもよい。
【0035】
なお、本発明の毛髪用処理剤の態様は、溶液に限定されず、必要に応じて添加する成分が懸濁ないし乳化されているものであってもよい。
【0036】
(その他の成分)
本発明の毛髪用処理剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、他のpH調整成分(例えば、リン酸等)、油性成分(例えば、スフィンゴ脂質、セラミド類、コレステロール誘導体、フィトステロール誘導体、リン脂質、ラノリン、ラノリン脂肪酸誘導体、パーフルオロポリエーテル等)、植物油(例えば、オリーブ油、シア脂、マカデミアナッツ油等)、ロウ類(例えば、ホホバ種子油、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ等)、炭化水素(例えば、流動パラフィン、軽質流動イソパラフィン、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン、ワセリン、イソドデカン、イソヘキサデカン等)、高級脂肪酸(例えば、ミリスチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、分岐脂肪酸(C(炭素数)14-28)、ヒドロキシステアリン酸等)、アルコール類(例えば、セタノール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、水添ナタネ油アルコール、コレステロール、シトステロール、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、1,2-ヘキサンジオール等)、糖及びその誘導体類(例えば、ブドウ糖、ショ糖、D-ソルビトール、マルトース、トレハロース、ポリオキシプロピレンメチルグルコシド、グリセリルグルコシド等)、エステル類(例えば、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、オレイン酸オクチルドデシル、トリイソステアリン酸グリセリル、コハク酸ジエトキシエチル、乳酸セチル、ラノリン脂肪酸オクチルドデシル等)、シリコン類(例えば、ジメチルシリコン、メチルフェニルシリコン、環状ジメチルシリコン、ポリエーテル変性シリコン、アルキル変性シリコン、アミノ変性シリコン、ジメチコノール等)、アミノ酸及びその誘導体類(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、セリン、メチオニン、トリメチルグリシン、ポリアスパラギン酸ナトリウム、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、N-ラウロイル-L-リジン等)、PPT及びタンパク類(例えば、加水分解シルク、加水分解コムギ、加水分解ダイズ、加水分解コラーゲン、加水分解ケラチン、シリル化加水分解シルク、シリル化加水分解コムギ、カチオン化加水分解シルク、カチオン化加水分解コラーゲン、ケラチン等)、天然高分子類(例えば、アルギン酸塩、マンナン、アラビアゴム、タマリンドガム、キトサン、カラギーナン、ムチン、セラック、ヒアルロン酸塩、カチオン化ヒアルロン酸、キサンタンガム、デキストリン、ヒドロキシエチルセルロース、カチオン化セルロース、グァーガム、カチオン化グァーガム、ハチミツ等)、合成高分子(例えば、アニオン性高分子、カチオン性高分子、非イオン性高分子、両性高分子、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル等)、アニオン性界面活性剤(例えば、アルキルエーテルカルボン酸塩、N-アシルグルタミン酸、N-アシルメチルタウリン塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、リン酸ジセチル等)、他のカチオン性界面活性剤(例えば、アルキルアミン塩、脂肪酸アミドアミン塩等)、両性界面活性剤(例えば、グリシン型両性界面活性剤、アミノプロピオン酸型両性界面活性剤、アミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤等)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルグルコシド、新油型モノステアリン酸グリセリル等)、染料(例えば、タール色素、天然色素等)、植物エキス類(例えば、カミツレエキス、コンフリーエキス、セージエキス、ローズマリーエキス、カキタンニン、チャ乾留液、銅クロロフィリンナトリウム等)、ビタミン類(例えば、L-アスコルビン酸、DL-α-トコフェロール、D-パンテノール、天然ビタミンE等)、紫外線吸収剤(例えば、パラアミノ安息香酸、サリチル酸オクチル、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、フェルラ酸等)、上記以外の防腐剤(例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、サリチル酸、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラベン、フェノキシエタノール等)、酸化防止剤(例えば、亜硫酸水素ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン等)、上記以外の金属封鎖剤(例えば、エデト酸塩、ポリリン酸ナトリウム、フィチン酸等)、その他無機化合物(例えば、酸化チタン、銀、白金、塩化鉄、酸化鉄、臭素酸ナトリウム、過酸化水素等)、その他有機化合物(例えば、尿素、ヒドロキシエチル尿素、dl-ピロリドンカルボン酸ナトリウム、グルコン酸銅等)、溶剤(例えば、ベンジルアルコール等)、噴射剤(例えば、LPG(液化石油ガス)、DME(ジメチルエーテル)、窒素ガス、炭酸ガス等)、香料等の公知の化粧品各成分を配合することができる。
【0037】
本発明の毛髪変形用処理剤は、公知の方法により、液状、ミルク状、クリーム状、泡状(使用時形状)、霧状(使用時形状)等の剤形とすることができ、エアゾール形態とすることもできる。
【実施例
【0038】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、これらの実施例を本発明の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを発明の範囲から除外するものではない。
【0039】
(実施例1~18及び比較例1~11)
<毛髪用処理剤の製造>
水(精製水)と各原料を配合して、表1~表4に示す組成(質量%)を有する実施例1~18及び比較例1~11の毛髪用処理剤を製造した。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
【表4】
【0044】
<サンプル用の毛髪の準備>
長さ30cmの直毛の毛髪からなる毛束(5g)を用い、化学的処理として市販のヘアカラーを用いて、2回の染色処理を行い、さらに市販のパーマ液で、パーマネントウェーブ処理を行った。その後、処理を行った毛髪を、50℃に保ったポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム水溶液(5質量%)に一晩浸漬させ、十分に水洗したものをサンプル毛髪とした。
【0045】
<毛髪処理>
次に、準備した毛髪に対して、下記A)~(E)の処理を行った。
(A)まず、サンプル毛髪5gに対して、ブリーチ剤20g(1剤:6.7g+2剤:13.3g)を用意した。
(B)次に、本発明の毛髪変用処理剤を、ブリーチ剤の2%相当量(0.4g)を用意し、その10倍量の精製水で希釈して処理溶液を調製した。
(C)次に、調製した処理溶液を毛髪全体に均一に塗布し、その後、コーミングした。
(D)次に、その上からブリーチ剤を塗布し、20分放置した。
(E)そして、20分のブリーチ処理後、処理溶液とブリーチ剤を洗い流し、シャンプーとトリートメントをした後、ドライヤーを用いて毛髪を乾燥させた。
【0046】
<評価基準>
次に、上記(A)~(E)の処理を行った毛髪に対して、上記ブリーチの前処理で使用した毛髪変用処理剤が、ブリーチ処理後のドライ後の仕上がり感に及ぼす効果について、官能評価を行った。具体的には、(1)ハリ・コシ、(2)切れにくさ、(3)ツヤ、及び(4)櫛通りの4項目について、専門パネラー10名による評価を行った。各評価項目における評価基準を以下に示す。
【0047】
(1)ハリ・コシ
ブリーチ処理後のドライ状態におけるハリ・コシを、下記評価基準に従って評価した。
ハリ・コシが非常にある:◎
ハリ・コシがある:○
ハリ・コシがややない:△
ハリ・コシがない:×
【0048】
(2)切れにくさ
ブリーチ処理後のドライ状態における切れにくさを、下記評価基準に従って評価した。
毛髪を一定量引っ張った際、伸びにくく、切れなかった:◎
毛髪を一定量引っ張った際、伸びきったが、切れなかった:○
毛髪を一定量引っ張った際、伸びきって、その後切れた:△
毛髪を一定量引っ張った際、すぐに切れた:×
【0049】
(3)ツヤ
ブリーチ処理後の最終水洗後に乾燥させた毛束をほぐした後、ツヤの有無を下記評価基準に従って評価した。
ツヤが非常にある:◎
ツヤがある:○
ツヤがややない:△
ツヤがない:×
【0050】
(4)櫛通り
ブリーチ処理後の最終水洗後に乾燥させた毛束をほぐした時の櫛通り(すべり感)を、下記評価基準に従って評価した。
櫛通りが非常によい:◎
櫛通りがよい:○
櫛通りがやや悪い:△
櫛通りが悪い:×
【0051】
なお、上記(1)~(4)の各評価において、「◎」は特に優れていると評価し、「○」は優れていると評価した。また、「△」と「×」は不十分であると評価した。以上の結果を表1~表4に示す。
【0052】
表1~表4に示すように、0.05≦X/Y≦30の関係が成立する毛髪用処理剤を使用した実施例1~18においては、ブリーチ処理による強度(ハリ・コシ、切れにくさ、櫛通り)の低下の抑制と、質感(ツヤ)の向上を同時に達成することができることが分かる。
【0053】
一方、比較例1の毛髪用処理剤においては、ビスPCAジメチコンを含有するものの、カルボン酸を含有しておらず、また、カルボン酸の代わりに収斂作用を発揮するリン酸を含有しているため、質感(ツヤ)が大幅に低下していることが分かる。
【0054】
また、比較例2~5の毛髪用処理剤においては、酒石酸を含有するものの、ビスPCAジメチコンを含有していないため、強度(ハリ・コシ、切れにくさ、櫛通り)が低下するとともに、質感(ツヤ)が低下していることが分かる。特に、アモジメチコン、ジメチコン、またはシクロペンタシロキサンを含有する比較例3~5の毛髪用処理剤においては、アルカリ条件(pH:9.0)で処理すると、過剰に髪に吸着するため、髪のハリ・コシを奪い、更に、その他の補修成分の浸透も阻害するため、強度(ハリ・コシ、切れにくさ)が大幅に低下していることが分かる。
【0055】
また、比較例6~7の毛髪用処理剤においては、A成分の含有量/B成分の含有量が0.05未満であり、ビスPCAジメチコンの含有量に対する酒石酸の含有量が少な過ぎるため、強度(ハリ・コシ、切れにくさ、櫛通り)が大幅に低下するとともに、適度な毛髪内部の補修ができず、質感(ツヤ)も低下していることが分かる。
【0056】
また、比較例8~11においては、A成分の含有量/B成分の含有量が30よりも大きく、酒石酸の含有量に対するビスPCAジメチコンの含有量が少な過ぎるため、質感(ツヤ)が大幅に低下するとともに、髪に、変質したような硬さとごわつきが生じ、櫛通りが悪くなってコーミングで髪がちぎれてしまい、その結果、強度(切れにくさ、櫛通り)が大幅に低下していることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上説明したように、本発明は、例えば、染毛処理、脱色処理、パーマネントウェーブ処理や縮毛矯正処理等の毛髪変形処理の前後、またはこれらの処理と同時に使用される毛髪用処理剤として、特に有用である。