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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】樹脂成形品
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/00 20060101AFI20241121BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20241121BHJP
   B65D 1/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B29C45/00
B29C45/26
B65D1/00 110
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020128722
(22)【出願日】2020-07-29
(65)【公開番号】P2022025714
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000010054
【氏名又は名称】岐阜プラスチック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市野 勝久
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-112624(JP,U)
【文献】実開昭53-060568(JP,U)
【文献】実開昭49-139248(JP,U)
【文献】特開2014-091549(JP,A)
【文献】特開平04-141407(JP,A)
【文献】特開昭62-018232(JP,A)
【文献】特開2006-106190(JP,A)
【文献】特開2020-082438(JP,A)
【文献】特開昭58-176204(JP,A)
【文献】特開平10-156840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00
B29C 45/26
B65D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形により形成される、容器又は容器に取り付けられる蓋からなる樹脂成形品であって、
前記樹脂成形品の70重量%以上を占めて所定のベース色を有するベース樹脂と、前記ベース色とは異なりかつ互いに異なる一つの模様構成色をそれぞれ有する複数の模様構成樹脂と、を含み、
射出成形時の溶融状態における前記模様構成樹脂の流動性が射出成形時の溶融状態における前記ベース樹脂の流動性よりも低く、
前記ベース樹脂と前記模様構成樹脂とは境界を介して接しており、前記樹脂成形品の表面に表れる前記境界のうちの70%以上の前記境界の内部側には前記模様構成樹脂が位置しており、
少なくとも一の前記模様構成色は前記ベース色よりも彩度が低い
樹脂成形品。
【請求項2】
複数のゲート跡を備え、
最も近接する二つの前記ゲート跡間の距離をゲート距離としたとき、前記樹脂成形品上の任意の点において、少なくとも一つの前記ゲート跡までの距離が前記ゲート距離以下となるように構成されている
請求項1記載の樹脂成形品。
【請求項3】
前記樹脂成形品は、平板部と、前記平板部の周縁に位置して前記平板部の厚みよりも長い高さを有し、前記容器の開口縁に嵌め込まれる嵌込部と、を有する前記蓋であり、
前記嵌込部は、前記容器の前記開口縁に対向する面にのみリブ部を有し、
前記平板部は、5個の前記ゲート跡を備え、
前記ゲート跡の直径は、前記平板部の前記厚みの3倍以上である
請求項2記載の樹脂成形品。
【請求項4】
射出成形により形成され、平面部及びリブ部を有する、容器又は容器に取り付けられる蓋からなる樹脂成形品であって、
前記樹脂成形品の70重量%以上を占めて所定のベース色を有するベース樹脂と、前記ベース色とは異なりかつ互いに異なる一つの模様構成色をそれぞれ有する複数の模様構成樹脂と、を含み、
前記ベース樹脂と前記模様構成樹脂とは境界を介して接しており、前記樹脂成形品の表面に表れる前記模様構成樹脂は模様を構成するものであり、
前記リブ部の表面に表れる前記模様の面積より、前記容器の側面又は前記蓋の全体における前記リブ部以外の前記平面部に表れる前記模様の面積の方が大きく、
前記容器又は前記蓋における表裏両面のうちの一方の面に表れる前記模様と他方の面に表れる前記模様とが異なる
樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品に関し、更に詳しくは、射出成形により形成される、容器又は容器に取り付けられる蓋からなる樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器として、外装シートを備えた収納ボックスが知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に開示される収納ボックスは、ボックス本体の外形寸法と同等もしくは若干小さめの袋状に形成した合成樹脂製の外装シートに、ボックス本体を挿入して構成されている。外装シートは迷彩柄といった模様を有しており、ボックス本体に模様を形成しなくても、所望の模様を有する外装シートを用意してボックス本体に取り付けるだけで、模様を有する収納ボックスを構成することができる。
【0003】
また、模様や文字を有する合成樹脂成形品が知られている(例えば特許文献2参照)。特許文献2に開示される合成樹脂成形品は、成形品の素材表面にインクを吹き付けることにより、合成樹脂成形品の表面に、模様と文字のうちの一方を形成することができる。これにより、合成樹脂成形品の表面に所望の模様を容易に形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-046185号公報
【文献】特開平11-170361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される収納ボックスや特許文献2に開示される合成樹脂成形品にあっては、製品の表面に鋭利な角部が接触すると、外装シートが破れて一部が剥がれたり、表面のインクが剥がれたりして、模様の一部が欠けてしまうおそれがある。
【0006】
そこで、多色成形等により、樹脂成形品に一体的に模様を形成することが考えられるが、この場合、所望の模様を形成するのが困難であった。
【0007】
本発明は上記従来の問題点に鑑みて発明したものであって、模様を一体的に形成して模様が欠けにくく、かつ、模様の形状を所望の形状としやすい樹脂成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る一形態は、射出成形により形成される、容器又は容器に取り付けられる蓋からなる樹脂成形品である。前記樹脂成形品は、前記樹脂成形品の70%以上を占めて所定のベース色を有するベース樹脂と、前記ベース色とは異なる二以上の模様構成色をそれぞれ有する複数の模様構成樹脂と、を含む。前記ベース樹脂と前記模様構成樹脂とは境界を介して接しており、前記樹脂成形品の表面に表れる前記境界のうちの70%以上の前記境界の内部側には前記模様構成樹脂が位置している。少なくとも一の前記模様構成色は前記ベース色よりも彩度が低い。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る他の形態は、射出成形により形成され、平面部及び前記平面部から突出するリブ部を有する、容器又は容器に取り付けられる蓋からなる樹脂成形品である。前記樹脂成形品は、前記樹脂成形品の70%以上を占めて所定のベース色を有するベース樹脂と、前記ベース色とは異なる二以上の模様構成色をそれぞれ有する複数の模様構成樹脂と、を含む。前記ベース樹脂と前記模様構成樹脂とは境界を介して接しており、前記樹脂成形品の表面に表れる前記模様構成樹脂は、前記模様構成樹脂の一番長い部分同士を結んだ線に対して横方向に5mm以上の幅を有する模様を構成するものである。前記リブ部の表面に表れる前記模様の面積より、前記容器の側面又は前記蓋の全体における前記リブ部以外の前記平面部に表れる前記模様の面積の方が大きい。前記容器又は前記蓋における表裏両面のうちの一方の面に表れる前記模様と他方の面に表れる前記模様とが異なる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る樹脂成形品にあっては、模様を一体的に形成して模様が欠けにくく、かつ、模様の形状を所望の形状としやすい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1Aは、第一実施形態に係る樹脂成形品としての容器の斜め上方より見た斜視図である。図1Bは、同上の容器の斜め下方より見た斜視図である。
図2図2Aは、同上の樹脂成形品としての蓋の斜め上方より見た斜視図である。図2Bは、同上の蓋の斜め下方より見た斜視図である。
図3図3Aは、同上の樹脂成形品の表面の一部を示す正面図である。図3Bは、図3AのA-A線断面図である。
図4図4は、同上の実施形態における樹脂成形品の製造に用いられる射出成形装置の金型および溶融樹脂を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、樹脂成形品とその製造方法に関する。以下、本発明の第一実施形態に係る樹脂成形品とその製造方法について、図1A図4に基づいて説明する。
【0013】
図1Aに示すように、樹脂成形品1は、射出成形により形成される樹脂成形品である。樹脂成形品1は、ゲート跡10(図2B参照)を備える。樹脂成形品1は、紙で形成される同形状の物品と比べて、一般的に強度が高い。
【0014】
本実施形態に係る樹脂成形品1は、容器2又は容器2に取り付けられる蓋3(図2A参照)であり、また、容器2及び蓋3を組み合わせたものであってもよい。容器2は、道具箱といった収納用容器として好適に利用される。本実施形態では、容器2は、上端に開口を有する矩形箱状をしたものであり、上面はなく上方に開放されている。本実施形態では、容器2の開口が形成されている方を上方とすると共にその反対を下方とする。また、上下方向と直交する方向は、水平方向となる。容器2は、例えば、平面視における縦辺の長さが30cm、横辺の長さが50cm、高さが30cm、厚みが3mmの矩形状の箱である。容器2は、平面視において矩形状をした底壁21と、底壁21の周囲から上方に連設される側壁22と、側壁22の上端に形成されて開口縁20を構成するフランジと、を備えている。
【0015】
図1Bに示すように、容器2は、平面部11及び平面部11から突出するリブ部12を有する。具体的には、容器2は、リブ部12として、上横リブ221と、下横リブ222と、縦リブ223とが形成される。上横リブ221は、側壁22の外面(側面とする)の上端部近傍に横方向全周にわたって外方に突出する。下横リブ222は、側面の下端部近傍に横方向全周にわたって外方に突出する。縦リブ223は、側面のコーナー部近傍に縦方向にわたって外方に突出する。側面のうち、リブ部12(上横リブ221~縦リブ223)以外の部分は平面部11となる。容器2は、ゲート跡(不図示)を備える。本実施形態では、容器2に形成されるゲート跡は、底壁21の外面(下面)に形成されているが、形成される場所は特に限定されない。容器2の上端に、開口を塞ぐ蓋3が着脱可能に取り付けられる。
【0016】
図2Aに示すように、蓋3は、平板部31と、平板部31の周縁に位置して、容器2の開口縁20に嵌め込まれる嵌込部32と、を有する。蓋3は、容器2の平面視形状と略同じで、平面視における縦辺の長さが30cm、横辺の長さが50cmの矩形状の板状をしたものである。平板部31は、平面視における縦辺の長さが27cm、横辺の長さが47cmの矩形状の板状をしたものである。平板部31は、所定の厚みを有しており、例えば、所定の厚みは3mmである。平板部31には、リブ部12は形成されず、僅かな段差311が形成されるだけであり、段差311以外の部分は平面部11となる。段差311により厚くなっている部分は、平板部31の厚くなっている部分を除く部分の厚みの3mm以上でかつ厚みの2倍(すなわち6mm)以下であるが、特に限定されない。
【0017】
図2Bに示すように、平板部31には、複数のゲート跡10が形成される。本実施形態では、平板部31に、5個のゲート跡10が形成される。ゲート跡10の直径は、平板部31の厚みの2倍以上、好ましくは3倍以上であることが好ましい。すなわち、平板部31の厚みは3mmであるため、ゲート跡10の直径は6mm以上、好ましくは9mm以上であることが好ましく、本実施形態では、ゲート跡10の直径は10mmである。
【0018】
また、最も近接する二つのゲート跡10間の距離をゲート距離100としたとき、いずれかのゲート跡10から最も遠い部分までの距離がゲート距離100の半分の3倍以下、好ましくは2倍以下である。すなわち、蓋3上の任意の点において、少なくとも一つのゲート跡10に対しては、ゲート跡10までの距離がゲート距離100以下となる。
【0019】
図2Aに示すように、嵌込部32は、平板部31の外周縁より外方に連設された部分であり、本実施形態では、横辺の全長と、横辺に連続する縦辺の一部に沿う平面視コ字状をした二つの部分である。平面視において、嵌込部32の外郭が蓋3の外郭の大部分を構成するものであり、嵌込部32の外郭は、縦辺の長さが30cm、横辺の長さが50cmの矩形状をしている。嵌込部32の、幅は、3cmである。また、嵌込部32の高さは1cmであり、平板部31の厚みである3mmよりも長い。嵌込部32の厚み、すなわち嵌込部32を構成する樹脂の厚みは3mmである。
【0020】
具体的には、嵌込部32は、平板部31の周縁部から上方に連設される内縦片321と内縦片321の上端部から外方に連設される上横片322と、上横片322の外端部から下方に連設される外縦片323と、を有する。図2Bに示すように、嵌込部32は、リブ部12として、容器2の開口縁20に対向する面にのみ載置リブ33を有する。蓋3が容器2の開口縁20に嵌められた際、開口縁20が内縦片321と外縦片323との間に挿入されて、開口縁20に載置リブ33が載置される。
【0021】
次に、樹脂成形品1を構成する樹脂について説明する。図3Aに示すように、樹脂成形品1は、ベース樹脂4と、複数の模様構成樹脂5と、を含む。ベース樹脂4は、所定のベース色を有する樹脂であり、樹脂成形品1の70%以上、好ましくは80%以上を占める。すなわち、ベース樹脂4の重量は、樹脂成形品1の重量の70%以上(好ましくは80%)以上を占める。本実施形態では、ベース樹脂4は、ポリプロピレンに適宜の顔料が混合されて構成される。
【0022】
複数の模様構成樹脂5は、ベース色とは異なる二以上の模様構成色をそれぞれ有する樹脂である。本実施形態では、複数の模様構成樹脂5として、ベース色とは異なる第1模様構成色を有する第1模様構成樹脂51と、ベース色及び第1模様構成色とは異なる第2模様構成色を有する第2模様構成樹脂52と、ベース色、第1模様構成色及び第2模様構成色とは異なる第3模様構成色を有する第3模様構成樹脂53が樹脂成形品1に含まれる。模様構成樹脂5は、ポリプロピレンを主体として他の種類の樹脂を含む樹脂であって、射出成形時の溶融状態においてベース樹脂4よりも流動性が低くなるように適宜の顔料が混合されて構成される。本実施形態では、流動性の指標としてMFR(Melt flow rate)を用いた場合、模様構成樹脂5のMFRは、ベース樹脂4のMFRの1/100以下であることが好ましい。模様構成樹脂5の比重は、ベース樹脂4の比重よりも大きい。
【0023】
複数の模様構成樹脂5のうち、少なくとも一の模様構成色は、ベース色よりも彩度が低い。本実施形態では、第1模様構成樹脂51の第1模様構成色が最も彩度が低く、次に、第2模様構成樹脂52の第2模様構成色が彩度が低く、第3模様構成樹脂53の第3模様構成色が最も彩度が高い。ベース樹脂4のベース色の彩度は、第1模様構成樹脂51の第1模様構成色の彩度よりも高く、第2模様構成樹脂52の第2模様構成色が彩度よりも低い。
【0024】
ベース樹脂4と模様構成樹脂5とは、互いに混合されることなく境界13を介して接しており、ベース樹脂4のベース色と模様構成樹脂5の模様構成色とはそれぞれ識別可能である。樹脂成形品1の表面に表れる模様構成樹脂5は、8mm以上の長さと4mm以上の幅、好ましくは10mm以上の長さと5mm以上の幅を有する模様6を構成するものである。すなわち、模様6の外郭が境界13となる。
【0025】
図3Bに示すように、樹脂成形品1の表面に表れる境界13のうち、70%以上、好ましくは80%以上の境界13の内部側には、模様構成樹脂5が位置している。ここで、樹脂成形品1の製造方法および射出成形装置について説明する。
【0026】
図4に示すように、射出成形装置は、金型7と、型締装置と、射出装置と、制御装置と、を備える。
【0027】
金型7は、固定型及び可動型を有し、型締装置により固定型と可動型とを型締めした状態で、内部にキャビティ空間70を有する。金型7のキャビティ空間70に面する部分は、溶融樹脂を成形するキャビティ壁面71となる。金型7には、キャビティ壁面71に至る孔からなる流路が形成されており、キャビティ壁面71に形成される孔がゲート(不図示)となる。
【0028】
射出装置は、キャビティ空間70内に溶融樹脂8を射出する。射出装置は、シリンダに注入された樹脂材料を溶融し、射出機構によってシリンダの先端のノズルから、金型7に形成された流路を介してキャビティ空間70内に溶融樹脂8を射出する。
【0029】
型締装置および射出装置は、制御装置により制御される。制御装置は、例えばマイクロコンピュータを備え、プログラムを実行することで各要素の動作を制御する。
【0030】
このような射出成形装置としては、様々な公知のものが適宜利用可能であり、特に限定されない。
【0031】
このような射出成形装置を用いて樹脂成形品1を製造するにあたり、まず、シリンダに溶融樹脂8を挿入する。溶融樹脂8として、溶融状態のベース樹脂4、第1模様構成樹脂51、第2模様構成樹脂52及び第3模様構成樹脂53がシリンダに挿入される。この時、シリンダ内において、溶融状態のベース樹脂4、第1模様構成樹脂51、第2模様構成樹脂52及び第3模様構成樹脂53が互いに溶融して混ざり合わないように挿入する。
【0032】
次に、溶融樹脂8、すなわち溶融状態のベース樹脂4、第1模様構成樹脂51、第2模様構成樹脂52及び第3模様構成樹脂53を金型7内に射出する。
【0033】
金型7においては、溶融樹脂8が、キャビティ壁面71に接していない部分の中央部が進行方向に突出するように進んでいく。この時、溶融状態の模様構成樹脂5の方が、溶融状態のベース樹脂4よりも流動性が低いため、溶融状態の模様構成樹脂5の方が形状を維持しやすい。このため、溶融状態の模様構成樹脂5の一部がキャビティ壁面71に接触しても、残りの部分が変形してキャビティ壁面71に接触するということは起こりにくく、残りの部分とキャビティ壁面71との間に、流動性の高い溶融状態のベース樹脂4が流入する。この結果、樹脂成形品1において、図3Bに示すように、模様構成樹脂5の外縁部は、大部分がベース樹脂4の下側に位置する。言い換えると、境界13の大部分において、境界13の樹脂成形品1の内部側には模様構成樹脂5が位置する。
【0034】
この状態で、ベース樹脂4の下側に位置する模様構成樹脂5の模様構成色の彩度が、ベース色の彩度よりも低い場合、ベース樹脂4の下側に位置する模様構成樹脂5はベース色に隠れて、樹脂成形品1の表面側より殆ど見えない。これに対して、ベース樹脂4の下側に位置する模様構成樹脂5の模様構成色の彩度が、ベース色の彩度よりも高い場合、ベース樹脂4の下側に位置する模様構成樹脂5の大部分は、ベース色を通して、樹脂成形品1の表面側より見える。なお、この場合、全ての模様構成樹脂5がベース色を通して見える必要はない。
【0035】
このため、樹脂成形品1の表面に表れる模様構成樹脂5の模様6の外郭が、正面視において滑らかな線ではなく細かい凹凸等のある乱雑な形状であっても、乱雑な外郭がベース樹脂4の下側に隠れて見えず、乱雑な外郭よりも滑らかな曲線(又は直線)からなる境界13が見えて、意匠性に優れるものとなる。
【0036】
樹脂成形品1は、樹脂の積層構造を有するものではなく、樹脂成形品1を構成する樹脂は、全体で単層である。また、樹脂成形品1は各ゲートからは同様の溶融樹脂8が射出されるもので、ゲートによって射出される溶融樹脂の色が異なる二色成形や多色成形により成形されるものではない。
【0037】
樹脂成形品1は、屋外での使用に耐え得る強度を備えるように、厚み等を含む寸法が設定されている。樹脂成形品1は、トラックの荷台に載置される際や載置された後に、他の物品に衝突しても、模様6が欠け難く、破損し難い容器2又は蓋3となる。
【0038】
また、ゲート跡10から蓋3の最も遠い樹脂が充填されるまでの距離が、ゲート距離100の半分の3倍以下、好ましくは2倍以下であることにより、溶融樹脂8を金型7に充填する際に圧力が少なくて済み、模様構成樹脂5が細長くなり難く、また、各ゲートから溶融樹脂8が波紋状に流れて、キャビティ空間70の蓋3の外周に対応する部分に最後に充填された時に、隣り合うゲートからの溶融樹脂8同士がすべて充填された状態になる。また、ゲート跡10を、例えば蓋3の平板部31の板面と嵌込部32の二つの端面にそれぞれ形成することにより、溶融樹脂8を充填する際に、3方向以上から溶融樹脂8が交わって圧力が掛かるため、幅を有する模様6が形成されやすい。
【0039】
また、ゲート跡10の直径は、平板部31の厚みの2倍以上、好ましくは3倍以上であるため、溶融状態のベース樹脂4と模様構成樹脂5とが混合されにくい。
【0040】
また、本実施形態では、リブ部12の表面に表れる模様6の面積より、容器2の側面又は蓋3の全体におけるリブ部12以外の平面部11に表れる模様6の面積の方が大きい。更に、容器2又は蓋3における表裏両面のうちの一方の面に表れる模様6と他方の面に表れる模様6とが異なる。これにより、変化に富む模様を樹脂成形品1の表面に形成することができる。
【0041】
次に、変形例について説明する。
【0042】
樹脂成形品1としては、容器2又は容器2に取り付けられる蓋3であると、得られる効果が大きいため好ましいが、容器2及び蓋3以外の樹脂成形品1であっても本発明は適用可能であり、樹脂成形品1の形態及び用途は限定されない。
【0043】
開口縁20は、フランジにより構成されなくてもよく、単に側壁22の上端のエッジにより構成されてもよい。
【0044】
容器2の縦辺の長さ、横辺の長さ、高さ、厚みは、特に限定されない。
【0045】
容器2の形態及び用途は、特に限定されないものであり、例えば、容器2が運搬用容器であってもよい。
【0046】
容器2の側壁22の下横リブ222は、形成されなくてもよい。この場合、模様構成樹脂5による模様6を所望の形状に形成しやすい。また、容器2の側壁22の底壁21にリブが形成されない方がよく、底壁21にリブが形成される場合と比べて、模様構成樹脂5による模様6を所望の形状に形成しやすい。
【0047】
蓋3の縦辺の長さ、横辺の長さ、高さは、特に限定されない。
【0048】
平板部31の縦辺の長さ、横辺の長さ、厚みは、特に限定されない。
【0049】
ゲート跡10の個数は、2個でもよいし、3個、4個、6個以上の複数個であってもよく、特に限定されない。
【0050】
嵌込部32の外郭の縦辺の長さ、横辺の長さ、嵌込部32の幅、高さ、嵌込部32を構成する樹脂の厚みは、特に限定されない。
【0051】
嵌込部32は、内縦片321、上横片322及び外縦片323により構成される形態に限定されない。
【0052】
ベース樹脂4は、重量において樹脂成形品1全体の70%以上(好ましくは80%)以上を占めていたが、重量ではなく面積又は体積において、樹脂成形品1全体の70%以上(好ましくは80%)以上を占めるものであってもよい。
【0053】
ベース樹脂4は、ポリプロピレンに別の樹脂が添加されたものであってもよい。また、ベース樹脂4は、ポリプロピレンに限定されない。
【0054】
模様構成樹脂5は、ポリプロピレンを含まなくてもよい。要するに、ベース樹脂4と模様構成樹脂5とは、ベース樹脂4の流動性よりも模様構成樹脂5の流動性の方が低ければ、樹脂の種類は限定されない。
【0055】
模様構成樹脂5の比重は、ベース樹脂4の比重と同じであってもよいし、ベース樹脂4の比重より小さくてもよく、限定されない。
【0056】
模様構成樹脂5に混合される顔料の粒子径は、ベース樹脂4に混合される顔料の粒子径よりも大きくてもよいし、ベース樹脂4に混合される顔料の粒子径と同じであってもよいし、ベース樹脂4に混合される顔料の粒子径より小さくてもよい。
【0057】
ベース樹脂4の一部と模様構成樹脂5の一部が互いに混合されてもよい。
【0058】
溶融樹脂8を金型7内に射出する際に、溶融状態のベース樹脂4、第1模様構成樹脂51、第2模様構成樹脂52及び第3模様構成樹脂53が互いに混合されないように、高い圧力をかけることなく樹脂を金型7内に射出してもよい。
【0059】
模様6は、8mm以上の長さと4mm以上の幅を有するものに限定されず、例えば、6mm以上の長さと3mm以上の幅を有する等、8mm以下の長さと4mm以下の幅を有してもよいし、特定の長さ及び幅を有するものでなくてもよい。すなわち、ベース色と異なる色からなる領域は模様6となり得る。この模様6は、それぞれが異なった外周形状をしており、更に濃淡や透けているように形成されている。模様6は、全て異なる形状・色彩で形成されているが、模様6の一部が他の部分と同じ形状・色彩となることは構わない。
【0060】
更に、この模様6以外に、同様の形状・色彩で形成された小さな模様6があってもよい。
【0061】
また、10mm以上の長さと5mm以上の幅を有する模様6は、ゲート跡10を有する平面にはできやすいが、この平面の端縁から屈曲する側壁やリブには模様6が形成され難い。屈曲する側壁やリブに形成される模様6は、平面に形成される模様6の半分以下または2/3以下である。
【0062】
樹脂成形品1の表面に表れる境界13のうち、50%を超える境界13の内部側には、模様構成樹脂5が位置していればよい。
【0063】
以上、述べた実施形態及び変形例から明らかなように、第1の態様は、射出成形により形成される、容器2又は容器2に取り付けられる蓋3からなる樹脂成形品1である。樹脂成形品1は、樹脂成形品1の70%以上を占めて所定のベース色を有するベース樹脂4と、ベース色とは異なる二以上の模様構成色をそれぞれ有する複数の模様構成樹脂5と、を含む。ベース樹脂4と模様構成樹脂5とは境界13を介して接しており、樹脂成形品1の表面に表れる境界13のうちの70%以上の境界13の内部側には模様構成樹脂5が位置している。少なくとも一の模様構成色はベース色よりも彩度が低い。
【0064】
第1の態様によれば、樹脂成形品1の表面に表れる模様構成樹脂55の模様6の外郭が乱雑な形状であっても、乱雑な外郭の大部分がベース樹脂4の下側に隠れて見えず、意匠性に優れるものとなる。
【0065】
第2の態様は、第1の態様との組み合わせにより実現され得る。第2の態様では、樹脂成形品1は、複数のゲート跡10を備える。最も近接する二つのゲート跡10間の距離をゲート距離100としたとき、いずれかのゲート跡10から最も遠い部分までの距離がゲート距離100以下である。
【0066】
第2の態様によれば、溶融状態のベース樹脂4と模様構成樹脂5とが混合されにくい。
【0067】
第3の態様は、第2の態様との組み合わせにより実現され得る。第3の態様では、樹脂成形品1は、平板部31と、平板部31の周縁に位置して平板部31の厚みよりも長い高さを有し、容器2の開口縁20に嵌め込まれる嵌込部32と、を有する蓋3である。嵌込部32は、容器2の開口縁20に対向する面にのみリブ部12を有する。平板部31は、5個のゲート跡10を備える。ゲート跡10の直径は、平板部31の厚みの3倍以上である。
【0068】
第3の態様によれば、溶融状態のベース樹脂4と模様構成樹脂5とが混合されにくい。更に、模様構成樹脂5は、平板部31では溶融して引き伸ばされており、リブ部12や屈曲部を流れることで分断されて細かくなる。
【0069】
第4の態様は、射出成形により形成され、平面部11及び平面部11から突出するリブ部12を有する、容器2又は蓋3からなる樹脂成形品1である。樹脂成形品1は、樹脂成形品1の70%以上を占めて所定のベース色を有するベース樹脂4と、ベース色とは異なる二以上の模様構成色をそれぞれ有する複数の模様構成樹脂5と、を含む。ベース樹脂4と模様構成樹脂5とは境界13を介して接しており、樹脂成形品1の表面に表れる模様構成樹脂5は、模様構成樹脂5の一番長い部分同士を結んだ線に対して横方向に5mm以上の幅を有する模様を構成するものである。リブ部12の表面に表れる模様の面積より、容器2の側面又は蓋3の全体におけるリブ部12以外の平面部11に表れる模様の面積の方が大きい。容器2又は蓋3における表裏両面のうちの一方の面に表れる模様と他方の面に表れる模様とが異なる。
【0070】
第4の態様によれば、変化に富む模様を樹脂成形品1の表面に形成することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 樹脂成形品
10 ゲート跡
100 ゲート距離
11 平面部
12 リブ部
13 境界
2 容器
20 開口縁
21 底壁
22 側壁
221 上横リブ
222 下横リブ
223 縦リブ
3 蓋
31 平板部
311 段差
32 嵌込部
321 内縦片
322 上横片
323 外縦片
33 載置リブ
4 ベース樹脂
5 模様構成樹脂
51 第1模様構成樹脂
52 第2模様構成樹脂
53 第3模様構成樹脂
6 模様
7 金型
70 キャビティ空間
71 キャビティ壁面
8 溶融樹脂
図1
図2
図3
図4