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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】保持装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/291 20210101AFI20241121BHJP
   H01M 50/289 20210101ALI20241121BHJP
   H01M 50/293 20210101ALI20241121BHJP
【FI】
H01M50/291
H01M50/289 101
H01M50/293
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020133133
(22)【出願日】2020-08-05
(65)【公開番号】P2022029699
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000225359
【氏名又は名称】内山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松木 克則
(72)【発明者】
【氏名】森田 遥香
(72)【発明者】
【氏名】森 大
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】実開平07-043637(JP,U)
【文献】特開2011-060624(JP,A)
【文献】特開2016-031902(JP,A)
【文献】特開2011-049181(JP,A)
【文献】特開2006-036290(JP,A)
【文献】中国実用新案第210853371(CN,U)
【文献】中国実用新案第206341271(CN,U)
【文献】中国実用新案第206773642(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被保持物を保持する保持部材と、この保持部材の縁部に取り付けられ、該保持部材と該保持部材の設置対象の被当接面との間に介在される弾性部材と、を備えた保持装置であって、
前記弾性部材は、前記縁部に沿って延びるように設けられ前記被当接面に弾性的に接触される本体部と、前記本体部の周面から第1方向に沿って突出するように設けられた係合突起と、を備え、前記保持部材の縁部には、前記係合突起を受け入れて本体部長手方向及び前記第1方向に沿う方向への移動を抑止する係合凹所が設けられ、前記係合突起には、突出方向先端部から前記本体部長手方向両側に延出する延出片部が設けられており、
前記係合凹所を区画する前記本体部長手方向に向く両側壁部には、前記係合突起の両側の延出片部をそれぞれに受け入れる凹段部が設けられていることを特徴とする保持装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記係合突起は、前記本体部長手方向に間隔を空けて複数箇所に設けられており、前記保持部材の縁部には、これら複数の係合突起をそれぞれに受け入れる複数の前記係合凹所が設けられていることを特徴とする保持装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記係合凹所は、前記本体部長手方向及び前記第1方向に直交する第2方向に沿う方向への前記係合突起の移動を抑制する構成とされていることを特徴とする保持装置。
【請求項4】
請求項において、
前記係合突起は、前記第1方向としての上下方向に見て第2方向一方前記本体部長手方向に沿う寸法が第2方向他方側の前記本体部長手方向に沿う寸法よりも大とされており、
前記係合凹所は、前記係合突起に対応させて前記第1方向としての上下方向に見て第2方向一方前記本体部長手方向に沿う寸法が第2方向他方側の前記本体部長手方向に沿う寸法よりも大となるように該係合凹所を区画する前記本体部長手方向に向く両側壁部が形成されていることを特徴とする保持装置。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか1項において、
前記保持部材は、前記被保持物の載置面を有した略方形プレート状であり、該保持部材には、前記本体部長手方向及び前記第1方向としての上下方向に直交する第2方向両側の縁部のそれぞれに前記弾性部材が取り付けられていることを特徴とする保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、種々の被保持物を保持する保持部材と、この保持部材が設置される設置対象の被当接面と、の間に制振や絶縁、通気等の種々の目的のために弾性部材を介在させた構造が知られている。
例えば、下記特許文献1には、複数の電池モジュールを収容する本体ケースの下ケースと電池モジュールの底面との間に電池モジュールの配列方向に沿って細長い2本の下側ゴムシートを平行に配置した電気デバイス集合体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-146681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたものでは、複数の電池モジュールを本体ケース内に収容させる際に、下ケース上に配される下側ゴムシートが位置ずれする懸念があった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、保持部材とこの保持部材の設置対象の被当接面との間に介在される弾性部材の位置ずれを抑制し得る保持装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る保持装置は、被保持物を保持する保持部材と、この保持部材の縁部に取り付けられ、該保持部材と該保持部材の設置対象の被当接面との間に介在される弾性部材と、を備えた保持装置であって、前記弾性部材は、前記縁部に沿って延びるように設けられ前記被当接面に弾性的に接触される本体部と、前記本体部の周面から第1方向に沿って突出するように設けられた係合突起と、を備え、前記保持部材の縁部には、前記係合突起を受け入れて本体部長手方向及び前記第1方向に沿う方向への移動を抑止する係合凹所が設けられ、前記係合突起には、突出方向先端部から前記本体部長手方向両側に延出する延出片部が設けられており、前記係合凹所を区画する前記本体部長手方向に向く両側壁部には、前記係合突起の両側の延出片部をそれぞれに受け入れる凹段部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る保持装置は、上述のような構成としたことで、保持部材とこの保持部材の設置対象の被当接面との間に介在される弾性部材の位置ずれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る保持装置の一例を模式的に示す一部破断概略平面図である。
図2図1におけるA1-A1線矢視に対応させた一部破断概略縦断面図である。
図3】(a)は、図1におけるB部に対応させた一部破断概略平面図、(b)は、図1におけるB部に対応させた一部破断概略分解平面図である。
図4】(a)は、図1におけるB部に対応させた一部破断概略斜視図、(b)は、図1におけるB部に対応させた一部破断概略分解斜視図である。
図5】(a)は、図3(a)におけるA2-A2線矢視に対応させた一部破断概略縦断面図、(b)は、図3(b)におけるA3-A3線矢視に対応させた一部破断概略分解縦断面図、(c)は、図3(b)におけるA4-A4線矢視に対応させた一部破断概略分解縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
なお、一部の図では、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。
また、以下の実施形態では、本実施形態に係る保持装置を設置対象に設置した状態を基準として上下方向等の方向を説明する。
【0010】
図1図5は、本実施形態に係る保持装置の一例を模式的に示す図である。
本実施形態に係る保持装置1は、図1及び図2に示すように、被保持物を保持する保持部材20と、この保持部材20の縁部22に取り付けられ、この保持部材20と保持部材20の設置対象の被当接面との間に介在される弾性部材10と、を備えている。このような構成とすれば、弾性部材10によって振動を吸収することができる。この弾性部材10は、縁部22に沿って延びるように設けられ被当接面に弾性的に接触される本体部11と、この本体部11の周面から第1方向に沿って突出するように設けられた係合突起12と、を備えている。本実施形態では、「第1方向」は、上下方向であり、係合突起12は、図5(b)に示すように、第1方向一方側としての上方側に向けて突出するように設けられている。
【0011】
保持部材20の縁部22には、係合突起12を受け入れて本体部11の長手方向(本体部長手方向)及び第1方向に沿う方向への移動を抑止する係合凹所23が設けられている。このような構成とすれば、弾性部材10の係合突起12を保持部材20の係合凹所23に受け入れさせるようにして係合させることで、弾性部材10の本体部長手方向及び第1方向に沿う方向への移動を抑止することができ、弾性部材10の位置ずれを抑制することができる。これにより、弾性部材10の本体部11を被当接面に対して安定的に接触させることができる。また、弾性部材10の本体部11を収容するように保持する保持溝や本体部11を挟持する大きな一対の保持突起等を保持部材20に設け難いような場合にも、弾性部材10の位置ずれを抑制することができる。
【0012】
本実施形態では、保持部材20は、被保持物の載置面21aを有した略方形プレート状の板状部21を備えている。また、保持部材20の幅方向(短手方向)である第2方向両側の縁部22,22には、それぞれ弾性部材10,10が取り付けられている。このような構成とすれば、保持部材20は、設置対象であるケース2の被当接面との間に介在される弾性部材10,10によって安定的に支持される。
本実施形態では、第1方向は、本体部長手方向に直交し、第2方向は、本体部長手方向及び第1方向に直交する。なお、第1方向は、概ね上下方向であってもよく、上下方向に対して本体部長手方向や第2方向に傾斜した方向であってもよい。
【0013】
本実施形態では、この保持装置1の設置対象は、図1及び図2に示すように、被保持物の一例としての電池セル7を収容するケース2とされている。
ケース2は、図例では、本体部長手方向に沿って長尺状とされ、平面視して略方形状とされている。このケース2に収容される保持部材20も同様、本体部長手方向に沿って長尺状とされ、平面視して略方形状とされている。つまり、本実施形態では、上記第2方向を、ケース2及び保持部材20の幅方向(短手方向)としている。なお、このような態様に代えて、弾性部材10が保持部材20の長手方向両側に取り付けられている態様であってもよく、ケース2及び保持部材20の幅方向が本体部長手方向に沿う方向で、ケース2及び保持部材20の長手方向が第2方向であってもよい。保持装置1の弾性部材10及び保持部材20の具体的構成については、後述する。
【0014】
ケース2は、保持装置1及びこれに保持された電池セル7を収容する収容空間の底側を区画する底板部3と、収容空間の長手方向両側を区画する端板部4,4と、収容空間の幅方向(第2方向)両側を区画する側板部5,5と、を備えている。このケース2は、収容空間の天側を区画する天板部を備えていてもよい。また、このケース2は、底板部3、端板部4,4及び側板部5,5によって上方側に向けて開口する収容空間を区画する構成とされていてもよい。この場合は、天板部が上方側の開口を開閉する蓋部材であってもよい。または、ケース2は、天板部、底板部3及び側板部5,5によって長手方向両側または一方側に開口する筒状の収容空間を区画する構成とされていてもよい。この場合は、端板部4,4が長手方向両側または一方側の開口を開閉する蓋部材であってもよい。
【0015】
このケース2の側板部5,5と底板部3との入隅部の隅部内側面6,6が後記する弾性部材10の本体部11が当接される被当接面を構成する。図例では、隅部内側面6,6を、ケース2の収容空間の幅方向外側(第2方向外側)から幅方向中心側(幅方向内側、第2方向内側)に向かうに従い下るように傾斜する傾斜面とした例を示している。つまり、隅部内側面6,6は、両側の側板部5,5の互いに向き合う内側面から底板部3上面に向かうに従い下るように傾斜している。
ケース2は、強度上の観点や、収容する物品(本実施形態では、電池セル7)に応じて求められる性能等に応じて適宜の素材から形成されたものであってもよく、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金等の金属製であってもよい。
【0016】
電池セル7は、ケース2内に複数個が収容されて蓄電池を構成する。この電池セル7は、直方体形状とされ、例えば、リチウムイオン二次電池等から構成されていてもよい。図例では、各電池セル7は、ケース2の長手方向に厚さ方向を沿わせて配される薄型とされ、ケース2の長手方向に互いに隣接されて配列されている。各電池セル7の上面側等の適所には、図示省略のバスバー等の導電体に電気的に接続される正負の端子が設けられていてもよい。なお、電池セル7とケース2等の接触部とを絶縁する適宜のキャップやシート状部材等が電池セル7の表面上に設けられていてもよい。
【0017】
また、保持部材20の板状部21には、保持部材20の幅方向に長尺な略方形孔状とされた複数の貫通孔21bが設けられている。この保持部材20は、絶縁性を有した樹脂成形品であってもよい。例えば、保持部材20は、ポリエチレンやポリプロピレン、ABS、アクリル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン等の熱可塑性樹脂を主材とする樹脂成形品であってもよく、例えば、フェノール樹脂やエポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂を主材とする樹脂成形品であってもよい。
【0018】
この保持部材20は、長手方向に見た断面形状が幅方向中心線を対称軸とする線対称状とされており、保持部材20の両側の縁部22,22は互いに同様の構成とされている。また、この保持部材20の縁部22,22に設けられた弾性部材10,10についても、互いに同様の構成とされている。従って、以下では、保持部材20の一方の縁部22及びこれに装着される一方の弾性部材10を例にとって説明する。
弾性部材10は、NBR、H-NBR、EPDM、ACM、AEM、FKM、シリコーンゴム等のゴム材(弾性材料)から形成されている。この弾性部材10の本体部11と係合突起12とは、同一材料から一体的に形成されたものであってもよく、または異なる材料から一体的に形成されたものであってもよい。例えば、本体部11と係合突起12とが異なるゴム硬度となるように異なる材料から形成されたものであってもよい。
【0019】
弾性部材10の本体部11は、ケース2(保持部材20)の長手方向に沿って長尺状とされている。図1に示すように、本体部11の長さ寸法は、保持部材20の長さ寸法以下とされている。図例では、本体部11の長さ寸法を、保持部材20の長さ寸法よりも僅かに小とした例を示している。
本体部11は、保持装置1がケース2内に設置された状態で、図2の実線にて示すように、保持部材20の縁部22とケース2の隅部内側面6との間において押し潰されるように弾性変形した状態で保持部材20をケース2に対して非接触状態または接触状態で保持する。
また、本体部11は、押し潰されていない自然状態(図2の二点鎖線及び図5(a)参照)で長手方向に見て、一側面11a(図5(b)参照)が隅部内側面6に略平行な略正方形状とされている。この本体部11のゴム硬度や長手方向に見た断面積は、振動を吸収する観点等から、また、ケース2や保持部材20が過度に変形しないように適宜、設定されていてもよい。
【0020】
係合突起12は、本実施形態では、本体部長手方向に間隔を空けて複数箇所に設けられている。保持部材20の縁部22には、これら複数の係合突起12をそれぞれに受け入れる複数の係合凹所23が設けられている。このような構成とすれば、保持部材20の複数の係合凹所23のそれぞれに弾性部材10の各係合突起12を係合させることで弾性部材10の位置ずれをより効果的に抑制することができる。
各係合突起12は、図3(a)、(b)に示すように、互いに同様の構成とされ、本体部長手方向に等間隔を空けて設けられている。係合突起12は、図5(b)、(c)に示すように、本体部11の隅部内側面6に略平行な一側面11aとは反対側の他側面11b側部位に設けられている。図例では、本体部11の他側面11bと第2方向外側に向かうに従い下り坂状とされた本体部11の上面との角部に係合突起12を設けた例を示している。
【0021】
各係合凹所23は、図3(a)、(b)に示すように、互いに同様の構成とされ、縁部22に沿って等間隔を空けて設けられている。
また、係合凹所23は、係合突起12を受け入れ可能なように、幅方向(第2方向)外側及び上方側に向けて開口するように設けられている。本実施形態では、係合凹所23を、幅方向に貫通させるように設けた構成としている。弾性部材10の係合突起12は、係合凹所23を区画する本体部長手方向に向く両側壁部24,24間に挟み込まれるように保持され、弾性部材10の本体部長手方向両側への移動が抑制される。
【0022】
この係合凹所23の両側壁部24,24は、縁部22に上方側に向けて突出するように設けられた保持突起25の本体部長手方向に向く両側壁部24,24によって構成されている。つまり、本実施形態では、各係合凹所23を区画するように、複数の保持突起25を縁部22に沿って等間隔を空けて設けた構成としている。弾性部材10は、係合突起12が係合凹所23に嵌め込まれ、係合突起12間に設けられた受入凹所15に保持突起25を受け入れて複数の係合突起12と複数の保持突起25とが噛み合うように係合し、保持部材20に保持される。
【0023】
各保持突起25は、保持部材20の長手方向両端側の保持突起25A,25Aを除いて互いに同様の構成とされ、縁部22に沿って等間隔を空けて設けられている。なお、長手方向両端側の保持突起25A,25Aの他の保持突起25との相違点については後述する。
【0024】
この保持突起25の幅方向(第2方向)外側に位置するように本体部11が配される。この保持突起25の幅方向外側に向く面は、本体部11の他側面11bと平行状となるように斜め下方側に向く傾斜面25aとされている。この保持突起25の幅方向外側に向く傾斜面25aに本体部11の他側面11bが当接され、本体部11の第2方向一方側となる幅方向(第2方向)内側への移動が抑止される。図例では、本体部11の他側面11bの下側部位に設けられた僅かな凹みに対応させた膨出部25bを保持突起25の幅方向外側に向く傾斜面25aの下側部位に設けた例を示している。また、この本体部11の他側面11bの下端部が縁部22の幅方向外側に向く面に当接され、本体部11の幅方向内側への移動が抑止される。
【0025】
また、保持突起25の突出方向先端部となる上端部26には、幅方向(第2方向)外側に向けて延出する延出部26aが設けられている。この延出部26aの下方側に位置するように本体部11が配される。
この延出部26aの下面に、本体部11の上面が当接され、本体部11の上方側(第1方向一方側)への移動が抑止される。この延出部26aの延出寸法は、保持装置1がケース2内に設置され、延出部26aよりも幅方向外側に突出した本体部11が押し潰された状態で延出部26aがケース2に接触状態または非接触状態となるように適宜の寸法とされていてもよい。
【0026】
また、保持突起25の上端部26の上面は、延出部26aを含み、本体部11の上面に平行状となるように幅方向(第2方向)外側に向かうに従い下り坂状の傾斜面とされており、図3(a)、(b)では、この保持突起25の上端部26の上面に対し垂直方向に見た状態(保持部材20の縁部22を斜め上方側から見た状態)を示している。
係合凹所23に対して弾性部材10の下方側(第1方向他方側)への移動を抑止する態様として、本実施形態では、以下のようにしている。係合突起12に、図3及び図4に示すように、突出方向先端部から本体部長手方向両側に延出する延出片部14,14を設け、係合凹所23の両側壁部24,24に、これら延出片部14,14をそれぞれに受け入れる凹段部27,27を設けた構成としている。このような構成とすれば、両側の延出片部14,14を、両側の凹段部27,27に受け入れさせることで、例えば、片側に延出片部14を設けたようなものと比べて、上下方向に沿う方向としての下方側への移動をより効果的に抑制することができる。
【0027】
また、本実施形態では、係合凹所23は、第2方向他方側となる幅方向(第2方向)外側への係合突起12の移動を抑制する構成とされている。このような構成とすれば、保持部材20の係合凹所23に弾性部材10の係合突起12を係合させることで、弾性部材10の本体部長手方向及び第1方向に沿う方向への移動に加えて、第2方向に沿う方向への移動も抑止することができる。これにより、弾性部材10の位置ずれをより効果的に抑制することができ、また、弾性部材10の保持部材20からの脱落を効果的に抑制することができる。
【0028】
具体的には、図3(b)に示すように、係合突起12は、上下方向(第1方向)に見て幅方向(第2方向)外側の本体部長手方向に沿う外側幅寸法W1よりも幅方向(第2方向)内側の本体部長手方向に沿う内側幅寸法W2が大とされている。また、係合凹所23は、係合突起12に対応させて上下方向に見て幅方向外側の本体部長手方向に沿う外側幅寸法W3よりも幅方向内側の本体部長手方向に沿う内側幅寸法W4が大とされている。このような構成とすれば、係合凹所23を区画する両側壁部24,24によって係合突起12の幅方向外側への移動を効果的に抑制することができる。
【0029】
より具体的には、係合突起12の突出方向先端部の幅方向(第2方向)内側部位に、本体部長手方向両側に延出する延出片部14,14を設け、これら延出片部14,14が設けられた部位の本体部長手方向に沿う寸法を内側幅寸法W2としている。また、係合突起12の延出片部14,14が設けられていない突出方向先端部の幅方向(第2方向)外側端部(外側端部)13の本体部長手方向に沿う寸法を外側幅寸法W1としている。つまり、本実施形態では、係合突起12の突出方向先端部の幅方向内側部位の内側幅寸法W2を、外側端部13の外側幅寸法W1よりも大きくするように延出片部14,14を設けた構成としている。このような構成により、係合突起12の突出方向先端部は、上下方向に見て略T字状とされている。
【0030】
また、上記した両側壁部24,24の凹段部27,27を、両側の保持突起25,25の突出方向先端部となる上端部26,26の幅方向(第2方向)内側部位において上方側及び幅方向内側に向けて開口するように設け、これら凹段部27,27の本体部長手方向に対向する段壁面27a,27a間の本体部長手方向に沿う寸法を内側幅寸法W4としている。また、両側の保持突起25,25の延出部26aの外側端部間(係合凹所23の両側壁部24,24間)の本体部長手方向に沿う寸法を外側幅寸法W3としている。つまり、本実施形態では、保持突起25の上端部26の幅方向内側部位の幅寸法を、外側端部の幅寸法よりも小さくするように凹段部27,27を設けた構成としている。このような構成により、保持突起25の上端部26は、上下方向に見て、上記した係合突起12とは逆向きの略T字状とされている。
係合凹所23の外側幅寸法W3及び内側幅寸法W4は、係合突起12を嵌込可能なように、係合突起12の外側幅寸法W1及び内側幅寸法W2のそれぞれに応じた寸法とされている。
【0031】
図例では、各凹段部27,27の幅方向(第2方向)に沿う寸法は、これらに受け入れられた延出片部14,14が幅方向(第2方向)内側に突出しない寸法とされているが、幅方向内側に突出する寸法とされていてもよい。また、図例では、弾性部材10の本体部11が押し潰されていない自然状態(図2の二点鎖線及び図5(a)参照)で、係合突起12の上面と保持突起25の上面とが略同一平面状となるように、係合突起12及び保持突起25を設けた構成としている(図4(a)も参照)が、これらが略同一平面状でなくてもよい。
【0032】
上記のような構成とされた弾性部材10は、本体部長手方向に沿う軸回りに傾けて係合突起12の延出片部14,14の幅方向(第2方向)内側部位を各凹段部27,27に差し入れ、これら延出片部14,14や本体部11の弾性変形を伴いながら本体部11を縁部22に近接させるように回転させて縁部22に取り付けられる。また、弾性部材10が縁部22に取り付けられた状態では、各凹段部27,27の本体部長手方向に対向する段壁面27a,27aに、係合突起12の延出片部14,14の延出方向先端面14a,14aが当接または近接され、保持部材20に対する弾性部材10の長手方向両側への移動が抑止される。また、各凹段部27,27の上方側(本実施形態では、幅方向(第2方向)外側となる斜め上方側)に向く段底面27b,27bに、係合突起12の延出片部14,14の下面が当接され、保持部材20に対する弾性部材10の下方側への移動が抑止される。また、各凹段部27,27の幅方向(第2方向)内側に向く段壁面27c,27cに、係合突起12の延出片部14,14の幅方向(第2方向)外側に向く側面14b,14bが当接され、保持部材20に対する弾性部材10の幅方向外側への移動が抑止される。
【0033】
長手方向両端側の保持突起25A,25Aは、図1及び図3に示すように、長手方向外側に弾性部材10の係合突起12が配されないため、長手方向外側部位に係合突起12の延出片部14を受け入れる凹段部27を設けていない構成とされている。つまり、これら長手方向両端側の保持突起25A,25Aは、長手方向内側のみに凹段部27,27を設けた構成とされている。なお、長手方向両端側の保持突起25A,25Aは、このような態様に代えて、他の保持突起25と同様の構成とされていてもよい。
また、上記のように延出片部14や凹段部27を設けて外側幅寸法W1,W3よりも内側幅寸法W2,W4を大とした態様に代えて、係合突起12の両側面及び係合凹所23の両側壁部24,24を幅方向(第2方向)内側に向かうに従い拡開するテーパ状とし、外側幅寸法W1,W3よりも内側幅寸法W2,W4を大とした態様等としてもよい。また、係合凹所23に対して係合突起12の幅方向(第2方向)外側や下方側への移動を抑止する構成としては、上記したような構成に限られず、その他、種々の構成の採用が可能である。
【0034】
また、保持部材20には、係合凹所23に嵌め込まれた弾性部材10の係合突起12の幅方向(第2方向)内側への移動を抑制する当接壁22aが設けられている。この当接壁22aは、保持突起25,25間の縁部22を上方側に向けて延出させた部位とされている。この当接壁22aは、図2に示すように、保持装置1がケース2内に設置されて本体部11が押し潰された状態で、係合突起12が保持突起25の幅方向(第2方向)内側に向く面よりも幅方向内側に突出しないように設けられていてもよい。
【0035】
また、弾性部材10の係合突起12が嵌め込まれる係合凹所23としては、縁部22を幅方向(第2方向)に貫通するように設けられたものに限られず、第2方向外側に向く凹所に対して底面が設けられたものであってもよい。
また、複数の係合突起12と複数の保持突起25とが噛み合うように係合して弾性部材10が保持部材20に取り付けられる構成とされたものに限られない。例えば、縁部22に間隔を空けて複数箇所にまたは一箇所に設けられた係合凹所23に嵌め込まれる複数または一つの係合突起12を有した構成とされたものであってもよい。
また、保持部材20としては、上記のような載置面21aを構成する板状部21から立ち上がるように設けられた縁部22を有したものに限られず、板状部21に連続するように形成された平板部を縁部22としたものであってもよい。この場合は、第1方向を上下方向とした態様に代えて、第1方向を幅方向とし、第2方向を上下方向としてもよい。
【0036】
また、保持部材20の幅方向両側の縁部22,22に弾性部材10,10が取り付けられた態様に加えて、保持部材20の長手方向両側の縁部にも弾性部材10,10が取り付けられた態様としてもよい。また、弾性部材10が取り付けられる保持部材20としては、平面視して略方形状とされたものに限られず、他の多角形状や円形状等とされたものであってもよい。保持部材20が多角形状である場合には、上記と概ね同様、縁部となる各辺の全てまたはいくつかの辺に沿って直線状に弾性部材10が取り付けられるものでもよい。また、保持部材20が円形状である場合には、周縁部の全周または一部に沿って円弧状に弾性部材10が取り付けられるものでもよい。
【0037】
また、弾性部材10の本体部11が当接される被当接面としては、上記のような傾斜面状とされた隅部内側面6に限られず、略垂直面や略水平面であってもよい。この場合は、弾性部材10の本体部11等を適宜、必要に応じて変形するようにしてもよい。
また、保持装置1の被保持物としては、上記したような電池セル7に限られず、その他、種々の物品であってもよい。また、保持装置1の設置対象は、上記したようなケース2に限られず、その他、種々の設置対象であってもよい。また、本実施形態に係る保持装置1を構成する各部材及び各部の具体的構成は、上記した構成に限られず、その他、種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 保持装置
10 弾性部材
11 本体部
12 係合突起
14 延出片部
20 保持部材
21a 載置面
22 縁部
23 係合凹所
24 側壁部
27 凹段部
2 ケース(設置対象)
6 隅部内側面(被当接面)
7 電池セル(被保持物)
W1,W3 外側幅寸法(第2方向外側の本体部長手方向に沿う寸法)
W2,W4 内側幅寸法(第2方向内側の本体部長手方向に沿う寸法)
図1
図2
図3
図4
図5