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  • 特許-乳幼児用エアマット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】乳幼児用エアマット
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/08 20060101AFI20241121BHJP
   A61B 6/04 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
A47C27/08 Z
A61B6/04 507
A61B6/04 503
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020183691
(22)【出願日】2020-11-02
(65)【公開番号】P2022073599
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】598095167
【氏名又は名称】有限会社永野義肢
(74)【代理人】
【識別番号】100074273
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173222
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100151149
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 幸城
(72)【発明者】
【氏名】中村 直行
(72)【発明者】
【氏名】藤原 憲太
(72)【発明者】
【氏名】永野 徹
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3024351(JP,U)
【文献】実開昭61-154910(JP,U)
【文献】国際公開第2016/117074(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0010606(US,A1)
【文献】韓国登録実用新案第20-0430378(KR,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/08
A47C 27/10
A47D 7/00
A47D 7/01
A61B 6/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を入れた状態で乳幼児をその上に横たわらせて用いることができる乳幼児用エアマットであって、
乳幼児の頭を載置するための枕部を前側に、体を載置するための本体部を後側に具備し、
前記本体部は、前後方向に延びる谷部と、谷部を左右両側から挟む二つの山部とを有し、二つの山部の間には山部よりも左右幅の小さい一つの谷部のみが存在し、
前記谷部と前記山部とは内部が連通せず、
空気を入れると、前記谷部及び前記山部はそれぞれ、各々の左右両側から中央に向かって厚みが大きく、上面が盛り上がるように構成され、かつ、谷部よりも山部の上下厚みを大きくできるようにしてあり、
前記二つの山部は、前記枕部を介して内部が相互に連通している乳幼児用エアマット。
【請求項2】
前記枕部は、その全体が横長のドーナツ状を呈するドーナツ状部分と、ドーナツ状部分の中央の穴を閉塞する上下2枚の膜状部分とを有し、上下2枚の膜状部分は上下に離間し、下側の膜状部分には開口が設けられ、ドーナツ状部分と上下の膜状部分とで囲まれたドーナツ穴空間には前記開口を介して外部空間の空気が自然に充填された状態となるように構成してあり、
前記谷部の下面の後端部付近に設けた空気注入口から注入する空気の量を調整することにより、前記谷部の空気圧を調整することができ、前記ドーナツ状部分の下面の長手方向の一端部付近に設けた空気注入口から注入する空気の量を調整することにより、前記枕部及び二つの山部の空気圧を調整することができるようにしてある請求項1に記載の乳幼児用エアマット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、乳幼児に対するレントゲンや超音波による検査の際などにベッドや検査台、椅子などに載置して用いる乳幼児用エアマットに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、この出願に先立ち、乳幼児に対するレントゲンや超音波による検査の便に供する乳幼児受け具を提案している(特許文献1)。この乳幼児受け具は、図6に示すように、支持マット51と受枠52とを組み合わせたものであり、支持マット51を発泡ビーズの詰物が充填された布袋で構成することにより、その上に寝かせた乳幼児をソフトな抱擁作用で包み込みつつ、可撓性のある合成樹脂素材で成形した受枠52によってこの支持マット51を下面及び左右両側から適宜に支持することにより、乳幼児をしっかりと、しかも安定良く寝姿に維持できる、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6207772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記乳幼児受け具は、特に支持マット51の嵩が大きく、収納や持ち運びの面で改善の余地があるといえる。
【0005】
本発明は上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、背丈や体格に応じた乳幼児の寝姿の適正な維持を可能としながら、収納や持ち運び等の面で向上を図ることのできる乳幼児用エアマットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る乳幼児用エアマットは、空気を入れた状態で乳幼児をその上に横たわらせて用いることができる乳幼児用エアマットであって、乳幼児の頭を載置するための枕部を前側に、体を載置するための本体部を後側に具備し、前記本体部は、前後方向に延びる谷部と、谷部を左右両側から挟む二つの山部とを有し、二つの山部の間には山部よりも左右幅の小さい一つの谷部のみが存在し、前記谷部と前記山部とは内部が連通せず、空気を入れると、前記谷部及び前記山部はそれぞれ、各々の左右両側から中央に向かって厚みが大きく、上面が盛り上がるように構成され、かつ、谷部よりも山部の上下厚みを大きくできるようにしてあり、前記二つの山部は、前記枕部を介して内部が相互に連通している(請求項1)。
【0007】
上記乳幼児用エアマットにおいて、前記枕部は、その全体が横長のドーナツ状を呈するドーナツ状部分と、ドーナツ状部分の中央の穴を閉塞する上下2枚の膜状部分とを有し、上下2枚の膜状部分は上下に離間し、下側の膜状部分には開口が設けられ、ドーナツ状部分と上下の膜状部分とで囲まれたドーナツ穴空間には前記開口を介して外部空間の空気が自然に充填された状態となるように構成してあり、前記谷部の下面の後端部付近に設けた空気注入口から注入する空気の量を調整することにより、前記谷部の空気圧を調整することができ、前記ドーナツ状部分の下面の長手方向の一端部付近に設けた空気注入口から注入する空気の量を調整することにより、前記枕部及び二つの山部の空気圧を調整することができるようにしてあってもよい(請求項2)。
【発明の効果】
【0008】
本願発明では、背丈や体格に応じた乳幼児の寝姿の適正な維持を可能としながら、収納や持ち運び等の面で向上を図ることのできる乳幼児用エアマットが得られる。
【0009】
すなわち、本願の各請求項に係る発明の乳幼児用エアマットでは、その上に寝かせた乳幼児からの圧力を受けて、エアマット内の空気が適度に流動し、谷部と山部内の空気の働きによるソフトな抱擁作用によって乳幼児は両手、胸部左右から脇腹、大腿部に至るまでがしっかりと包み込まれ、超音波検査を受け易い姿勢になる。
【0010】
このとき、乳幼児の体重負荷によって谷部は二つの山部よりも下方に強く押圧され、その反動で左右の山部は相互に近づき、こうしたエアマットの変形によって、乳幼児はしっかりと、しかも安定の良い寝姿に維持されることになる。
【0011】
しかも、エアマット内の空気を抜けば、エアマットはコンパクトになるので、収納や持ち運び等の面で向上を図ることもできる。
【0012】
請求項1に係る発明の乳幼児用エアマットでは、谷部と山部の空気圧(膨らみ具合)を異ならせることができ、例えば乳幼児の体が比較的小さい場合には谷部の空気圧を高めに、山部の空気圧を低めにし、乳幼児の体が比較的大きい場合には谷部の空気圧を低めに、山部の空気圧を高めにする、といった調整を行い、背丈や体格に応じた乳幼児の寝姿の適正な維持を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施の形態に係る乳幼児用エアマットの構成を示す正面図(写真)である。
図2】前記乳幼児用エアマットの構成を示す背面図(写真)である。
図3】前記乳幼児用エアマットの構成を示す側面図(写真)である。
図4】前記乳幼児用エアマットの構成を示す上面図(写真)である。
図5】前記乳幼児用エアマットの構成を示す底面図(写真)である。
図6】従来の乳幼児受け具の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態について以下に説明する。
【0015】
空気を入れた状態で図1図5に示す形状を呈する乳幼児用エアマット(以下、エアマットという)1は、先天性股関節脱臼の超音波検査の際、乳幼児をその上に横たわらせて(側臥位、仰臥位等にして寝かせて)用いるものであって、乳幼児の頭を載置するための枕部2を前側に、体を載置するための本体部3を後側に具備する。
【0016】
枕部2は、図1及び図2に示すように、その全体が横長のドーナツ状を呈するドーナツ状部分4と、ドーナツ状部分4の中央の穴(ドーナツ穴)を閉塞する上下2枚の膜状部分5,6とを有する。なお、上下2枚の膜状部分5,6は上下に離間し、図2に示すように、下側の膜状部分6(図示例では中央)には開口7が設けられている。
【0017】
このように構成された枕部2では、ドーナツ状部分4は密封されている(外部空間に連通していない)一方、ドーナツ状部分4と上下の膜状部分5,6とで囲まれたドーナツ穴空間は、開口7を介して外部空間に連通しており、密封されていない。そのため、乳幼児の頭を枕部2に載せると、密封されているドーナツ状部分4よりも、密封されていないドーナツ穴空間を囲む上側の膜状部分5の方が、乳幼児の頭の重みによって変形し易くなっている。しかし、ドーナツ穴空間には開口7を介して外部空間の空気が自然に充填された状態となっているので、乳幼児の頭の重みによって上側の膜状部分5が急激には変形せず、ドーナツ穴空間内の空気が開口7から外部空間に排出されるのに伴って徐々に変形することなる。
【0018】
このように上側の膜状部分5の変形スピードを遅くすることにより、枕部2に乳幼児の頭を載せた際、その頭が激しい揺れを受けることを防止することができ、ひいては乳幼児揺さぶられ症候群の予防を図ることができる。そして、この効果を奏することを考慮して、開口7の大きさを適宜に定めればよい。
【0019】
ここで、開口7を上側の膜状部分5に設けてあると、枕部2に乳幼児の頭を載せた際、その頭で開口7が塞がれてしまう恐れがあるが、本例では下側の膜状部分6に開口7を設けてあるので、そうした恐れがない。
【0020】
一方、本体部3は、図1図4に示すように、前後方向に延びる谷部8と、谷部を左右両側から挟む二つの山部9とを有する。
【0021】
谷部8及び山部9はそれぞれ、図5に示すように、各々の左右両側から中央に向かって厚みが大きく、上面が盛り上がるように構成されている。そして、谷部8より山部9の方が左右幅及び上下高さのいずれもが大きくなっている。
【0022】
以上のように構成されたエアマット1では、その上に寝かせた乳幼児からの圧力を受けて、エアマット1内の空気が適度に流動し、谷部8と山部9内の空気の働きによるソフトな抱擁作用によって乳幼児は両手、胸部左右から脇腹、大腿部に至るまでがしっかりと包み込まれ、超音波検査を受け易い姿勢になる。
【0023】
このとき、乳幼児の体重負荷によって谷部8は二つの山部9よりも下方に強く押圧され、その反動で左右の山部9は相互に近づき、こうしたエアマット1の変形によって、乳幼児はしっかりと、しかも安定の良い寝姿に維持されることになる。
【0024】
また、本例のエアマット1では、枕部2(ドーナツ状部分4)と二つの山部9とは内部が連通しており、谷部8はこれらと内部が連通していない。そのため、図2に示すように、谷部8の下面の後端部付近に設けた空気注入口10から注入する空気の量を調整することにより、谷部8の空気圧(膨らみ具合)を調整することができ、枕部2のドーナツ状部分4の下面の一端部付近に設けた空気注入口11から注入する空気の量を調整することにより、枕部2(ドーナツ状部分4)及び二つの山部9の空気圧(膨らみ具合)を調整することができる。
【0025】
そして、谷部8と山部9とは内部が連通していないので、谷部8と山部9の空気圧(膨らみ具合)を異ならせることができ、例えば乳幼児の体が比較的小さい場合には谷部8の空気圧を高めに、山部9の空気圧を低めにし、乳幼児の体が比較的大きい場合には谷部8の空気圧を低めに、山部9の空気圧を高めにする、といった調整を行い、背丈や体格に応じた乳幼児の寝姿の適正な維持を可能とすることができる。
【0026】
しかも、エアマット1内の空気を空気注入口10,11から抜けば、エアマット1はコンパクトになるので、収納や持ち運び等の面で向上を図ることもできる。
【0027】
本例のエアマット1の各構成素材には、上記のように用いられることを考慮して適宜のものを選択して構成すればよく、検査に支障を来さなければ、例えば市販のビニール浮き輪等に用いられている素材や空気注入口(空気の出し入れをしない間はエアマット1内に埋没しているが、空気を注入する際は外側に引き出すことができ、注入した空気の漏れ出しを防止する逆止弁を備え、空気を抜く際はその根元を適宜に押圧することで逆止弁の作用を停止させることができる、といったもの)を利用することも可能である。
【0028】
なお、本発明は、上記の実施の形態に何ら限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々に変形して実施し得ることは勿論である。例えば、以下のような変形例を挙げることができる。
【0029】
上記実施の形態では、エアマット1を乳幼児の先天性股関節脱臼の超音波検査の際に用いられるものとして説明したが、必ずしもこの態様に限定されず、例えばエックス線検診、歯科検診、内科検診、外科検診など、乳幼児を安定姿勢にして検査をする必要がある場合の検査用補助具(受け具)として、更には家庭や保育園、幼稚園などの昼寝用などの簡易ベッドとして利用することも可能である。
【0030】
上記実施の形態では、エアマット1を二つの空間(谷部8とそれ以外)に区画し、それぞれの空気圧(膨らみ具合)を調整可能としてあるが、これに限らず、エアマット1を三つ以上の空間に区画してもよい(この場合、各区画に対応する空気注入口を設ければよい)。例えば、上記実施の形態では、枕部2と二つの山部9とを一繋ぎにしてあるが、別区画にしてもよい。また、谷部8を一つのみ設けてあるが、二つの山部9の間に複数の谷部8がその長手方向または短手方向に複数並ぶようにしてもよい。もちろん、二つの山部9を、それぞれ二以上の区画(空間)に仕切るようにしてもよい。逆に、エアマット1が一続きの空間のみを有するようにしてもよい。
【0031】
また、エアマット1内に、空気ではなく水等の液体や発泡ビーズ等の固体(例えば市販の枕等に充填されるようなもの)を充填して用いることができるようにしてもよい。
【0032】
本明細書で挙げた変形例どうしを適宜組み合わせてもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0033】
1 乳幼児用エアマット
2 枕部
3 本体部
4 ドーナツ状部分
5 膜状部分
6 膜状部分
7 開口
8 谷部
9 山部
10 空気注入口
11 空気注入口
51 支持マット
52 受枠
図1
図2
図3
図4
図5
図6