IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ナベルの特許一覧

<>
  • 特許-ラックの管理システム 図1
  • 特許-ラックの管理システム 図2
  • 特許-ラックの管理システム 図3
  • 特許-ラックの管理システム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】ラックの管理システム
(51)【国際特許分類】
   B65G 47/91 20060101AFI20241121BHJP
   B65B 5/06 20060101ALI20241121BHJP
   B65B 35/30 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B65G47/91 B
B65B5/06
B65B35/30
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020187718
(22)【出願日】2020-11-11
(65)【公開番号】P2022077078
(43)【公開日】2022-05-23
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】597017812
【氏名又は名称】株式会社ナベル
(72)【発明者】
【氏名】南部 隆彦
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-040120(JP,A)
【文献】特開2006-124048(JP,A)
【文献】特許第7294638(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/91
B65B 5/06
B65B 35/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のラックが同一の経路を搬送されるラック用の通路に沿って設置された物品積み込み用の複数のロボットと、
同一種類の物品を前記複数のロボットに供給する供給部と、
各ロボットにより同一種類の物品が積み込まれた複数のラックをまとめて排出する排出部と、
前記供給部が各ロボットに供給する物品の量を変化させて、各ラックへの積み込みがほぼ同時に完了できるようにタイミングを調整する調整部とを備える、ラックの管理システム。
【請求項2】
前記調整部は、一のロボットが一のラックへの積み込みを完了させるまでの残りの物品の数と、一のロボットに隣り合って配置される他のロボットが他のラックへの積み込みを完了させるまでの残りの物品の数とを比較する演算部を含み、
前記供給部は、前記演算部による比較結果に基づいて、前記一のロボット及び前記他のロボットに物品を供給する、請求項1記載のラックの管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラックの管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の段ボール箱に卵パックを積み込む装置が知られている(例えば、下記特許文献1を参照)。この卵パックの積み込み装置は、複数の段ボール箱が搬送される段ボール用の通路に沿って、複数台のロボットが並べて設置される。この卵パックの積み込み装置で積み込みが完了した段ボール箱は、2箱ずつまとめて排出される。
【0003】
卵パックの流通形態として、段ボール箱の他に、棚が付いたラックに積み込まれるものも知られている(例えば、下記特許文献2を参照)。ラックは、段ボール箱よりも多くの卵パックを積み込むことができ、また、段ボール箱よりも複雑な積み方をする点が、大きな違いとして挙げられる。
【0004】
なお、物品の一例として卵パックを挙げたが、ラックに載せた状態で流通する他の物品についても同じようなことがいえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-177326号公報
【文献】実用新案登録第3209255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
段ボール箱の場合には、積み込まれる物品の数が少なく、積み方も複雑ではないため、2箱の段ボール箱をほとんど同じタイミングで完成させることが比較的容易である。
【0007】
一方、ラックの場合には、段ボール箱に比べて、積み込まれる物品の数が多く、積み方も複雑であり、複数台のロボットの積み込み状況に差が生じてしまうことがある。そのため、一のラックは積み込みが完了したにもかかわらず、その一のラックを排出するために他のラックの積み込みが完了するまで待ち時間が発生してしまう場合があった。
【0008】
本発明は、複数の物品積み込み用ロボットの稼働率の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のラックの管理システムは、複数のロボットと、供給部と、排出部と、調整部とを備える。ロボットは、物品積み込み用のもので、複数のラックが同一の経路を搬送されるラック用の通路に沿って設置される。供給部は、同一種類の物品を前記複数のロボットに供給する。排出部は、各ロボットにより同一種類の物品が積み込まれた複数のラックをまとめて排出する。調整部は、前記供給部が各ロボットに供給する物品の量を変化させて、各ラックへの積み込みがほぼ同時に完了できるようにタイミングを調整する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の物品積み込み用ロボットの稼働率の低下を抑制することができる。
【0011】
この発明の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解されるこの発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態にかかるラックの管理システムを示す平面図。
図2】同実施形態にかかる物品積み込み用のロボットを示す側面図。
図3】同実施形態にかかる物品積み込み用のロボットの動作状態を示す側面図。
図4】同実施形態にかかるラックの管理システムを示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態にかかるラックの管理システムSについて、図1図4を用いて説明する。
【0014】
本実施形態のラックの管理システムSは、複数の卵パックPを積み込む卵パック専用の移動可能なラック11,12に関する管理システムSである。ラック11,12は、卵パックPの生産ラインの下流側に設けられる。卵パックPの生産ラインには、卵をパックに収容する機器や、パックにラベルを設ける機器、卵やラベルを検査するための機器など、様々な機器が並んでいる。生産ラインでは、卵がパックに収容され、ラベルが設けられ、種々の検査を受けた卵パックPが次々と生産される。ラック11,12に積み込まれる段階では、各卵パックPは、蓋が閉められ、ラベルが設けられた状態となっている。
【0015】
ラック11,12は、複数の棚板13を備え、各棚板13に卵パックPが載せられる。この状態で、ラック11,12は動かされ、そのまま売り場に陳列が可能である。ラック11,12は、側面の3方向がフレーム14で囲まれている。ラック11,12は、出し入れ側にもこぼれ止めが付いている。ラック11,12は、棚板13を複数枚備え、棚一段あたり4~6個(4~6段)の卵パックPを積み上げる。そして、卵パックPが横方向にずり落ちないように、卵パックP自体が、上下に積まれた卵パックPの横ずれを抑制できる形状になっている。各棚板13は、折り畳み式のもので、手前側に引き出された使用状態と折り畳まれて奥側に位置する収納状態との間で状態変更可能である。使用状態の各棚板13の上方には、卵パックPが収納される収納空間が形成される。収納空間には、卵パックPが上下に積み重ねられる。ラック11,12は、さらに、フレーム14の内側に設けられる棚板受け(図示しない)と、キャスター16とを備える。
【0016】
複数のラック11,12は、ラック用の通路70上で搬送される。ラック用の通路70は、例えば、直線状のものであり、空のラック11,12を後述するロボット1,2に供給するラック用の供給部71と、積み込みが完了したラック11,12をロボット1,2側から排出する排出部7とを備える。複数のラック11,12は、ラック用の通路70上で横向きに、すなわち、側フレーム14が前後になるようにして運ばれる。本実施形態では、ラック11,12が2台ずつ供給され、2台ずつ排出されるようになっている。すなわち、ラック用の供給部71は、各ロボット1,2により積み込まれる複数のラック11,12をまとめて供給し、排出部7は、各ロボット1,2により積み込まれる複数のラック11,12をまとめて排出する。
【0017】
卵パックPは、種々の大きさ、形状のものがある。図では、10個入りのもので、「フラットパック」と呼ばれる蓋の天面が平坦な卵パックPを示している。
【0018】
本実施形態のラックの管理システムSは、卵パックPをラック11,12に積み込む複数のロボット1,2と、排出部7と、調整部8とを主体に構成される。
【0019】
ロボット1,2は、ラック用の通路70に沿って設置される。本実施形態では、2台のロボット1,2が隣り合って並ぶ。2台のロボット1,2は、ラック11,12の最下段から最上段まで卵パックPを積み込んで完成させるという点で同じ作業内容を行うものであるが、ロボット1,2は、ラック11,12への卵パックPの積み込み方が互いに異なるものであってもよい。一のラック11には、一のロボット1が卵パックPを積み込む。一のロボット1は、一のラック11の最下段から最上段まで卵パックPを積み込む。一のロボット1は、他のラック12に対しては積み込み動作を行わない。他のラック12には、一のロボット1とは異なる他のロボット2が卵パックPを積み込む。他のロボット2は、他のラック12の最下段から最上段まで卵パックPを積み込む。他のロボット2は、一のラック11に対しては積み込み動作を行わない。他のラック12は、一のラック11よりも上流側に位置する。他のラック12は、一のラック11と同じ排出部7から排出される。
【0020】
各ロボット1,2は、ロボットヘッド3と、ロボットアーム4とを備える。
【0021】
ロボットヘッド3は、保持部5を備える。保持部5は、複数の卵パックPを保持する。保持部5は、複数の吸着部材6によって構成される。各吸着部材6は、蓋が閉じられた卵パックPの天面側を吸着する。各吸着部材6は、真空機構に接続されている。1つの卵パックPにつき、複数個の吸着部材6で保持する。
【0022】
ロボットアーム4は、ロボットヘッド3の位置姿勢を変更可能なものである。ロボットアーム4は、一時待機領域17とラック11,12との間でロボットヘッド3を移動させる。ロボットアーム4は、例えば、6軸垂直多関節ロボット等の、任意に作動する慣用の多関節ロボットが適用される。この他に、ロボットアーム4は、ロボットヘッド3をX軸、Y軸およびZ軸に対して、任意に移動させることができるロボットまたは装置など種々のものを採用できる。
【0023】
一時待機領域17は、物品搬送装置18の下流側に設けられている。物品搬送装置18は、複数の卵パックPを搬送する。本実施形態では、ロボット1,2ごとにそれぞれ物品搬送装置18が設けられている。
【0024】
調整部8は、同じ排出部7から排出される複数のラック11,12への積み込みが完了するタイミングを調整する。調整部8は、演算部9と、供給部10とを備える。
【0025】
演算部9は、一のロボット1が一のラック11への積み込みを完了させるまでの残りの卵パック数と、一のロボット1に隣り合って配置される他のロボット2が他のラック12への積み込みを完了させるまでの残りの卵パック数とを比較する。演算部9は、CPU、内部メモリ、入出力インターフェース、AD変換部などの専用のコンピュータまたは汎用のコンピュータによって構成される。内部メモリに格納されたプログラムにしたがって、CPUおよびその周辺機器が協働することによって、演算部9としての機能が発揮される。
【0026】
供給部10は、演算部9による結果に基づいて、1本の生産ラインから順次搬送される卵パックPを、一のロボット1と他のロボット2とに卵パックPを供給する。本実施形態では、上述したロボット1,2に準じたロボットを用いて、一のロボット1用の物品搬送装置18と、他のロボット2用の物品搬送装置18とに、生産ラインから送られてくる複数の卵パックPを分配する。言い換えれば、供給部10は、演算部9による結果に基づいて、一の物品搬送装置18と他の物品搬送装置18とに供給する卵パックPの数量を調整する。
【0027】
次に、ラックの管理システムSを用いたラック11,12の管理方法の一例について説明する。
【0028】
まず、空の2台のラック11,12を積み込み用のロボット1,2の前に移動させる。各ラック11,12は、一時的に固定される。そのうち一のラック11には卵パックPを200個積み込み、他のラック12には卵パックPを250個積み込むという状況を例にして説明する。
【0029】
一のロボット1は、まず、一の物品搬送装置18から複数個の卵パックPを吸着して持ち上げ、一のラック11に置く。この動作を繰り返し、棚板13の一段分が完成したら、上段の棚板13を引き出す。次の段の棚板13に卵パックPを置く際には、一のロボット1と、一の物品搬送装置18の待機位置を上方に移動させる。他のロボット2も、一のロボット1と同様の動きを行う。
【0030】
各ロボット1,2の積み込み動作の途中、例えば、各ロボット1,2が棚板13の2段目まで卵パックPの積み込みを完成させた際に、演算部9は、各ラック11,12への積み込みが完了するまでの残りの卵パック数を算出する。例えば、一のロボット1が、120個積み込みが完了しており、同様に、他のロボット2が、120個積み込みが完了しているとする。この場合、一のロボット1が一のラック11への積み込みを完了させるまでの残りの卵パック数は、80個であり、他のロボット2が他のラック12への積み込みを完了させるまでの残りの卵パック数は、130個である。供給部10は、演算部9による結果に基づいて、一のロボット1よりも、他のロボット2の方により多くの卵パックPを供給して、他のロボット2が一のロボット1よりも卵パックPを多く積み込めるように調整する。これによって、各ラック11,12の積み込みがほぼ同時に完了できるようにする。
【0031】
なお、各ロボット1,2の積み込み動作の最初から、例えば、一のロボット1と他のロボット2に対して、一定の比率で卵パックPを供給してもよい。すなわち、演算部9が、一のロボット1が一のラック11への積み込みを完了させるまでの残りの卵パック数が200個と、他のロボット2が他のラック12への積み込みを完了させるまでの残りの卵パック数が250個と算出した結果に基づいて、供給部10は、一のロボット1と他のロボット2とに4:5の割合で卵パックPを供給するようにしてもよい。
【0032】
このようにして、ほぼ同じタイミングで一のラック11と他のラック12への積み込みが完了した卵パックPは、排出部7から2台まとめて排出される。
【0033】
以上説明したように、本実施形態にかかるラックの管理システムSは、複数のロボット1,2と、排出部7と、調整部8とを備える。ロボット1,2は、物品積み込み用のもので、複数のラック11,12が搬送されるラック用の通路70に沿って設置される。排出部7は、各ロボット1,2により積み込まれる複数のラック11,12をまとめて排出する。調整部8は、各ラック11,12への積み込みが完了するタイミングを調整する。
【0034】
調整部8は、さらに、演算部9と、供給部10とを備えることが好ましい。演算部9は、一のロボット1が一のラック11への積み込みを完了させるまでの残りの物品の数と、一のロボット1に隣り合って配置される他のロボット2が他のラック12への積み込みを完了させるまでの残りの物品の数とを比較する。供給部10は、演算部9による結果に基づいて、一のロボット1と他のロボット2とに物品を供給する。
【0035】
また、本実施形態のラックの管理システムSは、一のロボット1によって卵パックPが積み込まれる一のラック11と、一のラック11よりも上流側に位置し、一のロボット1と異なる他のロボット2によって卵パックPが積み込まれて一のラック11と同じ排出口から排出される他のラック12とを管理する。ラックの管理システムSは、演算部9と、調整部8とを備える。演算部9は、一のラック11の積み込みを完了させるまでの残りの卵パック数と、他のラック12の積み込みを完了させるまでの残りのパック数とを比較する。調整部8は、演算部9による結果に基づいて、一のロボット1と他のロボット2とに供給する卵パックPの数量を調整する。
【0036】
なお、本発明は上述した実施形態に限られない。
【0037】
演算部9は、ロボット1,2に何らかのトラブルが発生した際に演算を行うものであってもよい。例えば、2台のロボット1,2のうち、一のロボット1の積み込み動作に不具合が生じた場合、その復旧作業中、他のロボット2の積み込み動作は続けておくことができる。すると、例えば、不具合発生前までは、各ラック11,12の積み込みを完了させるまでの残りの卵パック数が同数またはほぼ同じだったとしても、復旧作業後には、各ラック11,12の積み込みを完了させるまでの残りの卵パック数に差が生じてしまう。このような場合にも、本発明を適用することが好ましい。
【0038】
物品は、卵パックPには限られない。また、ラックも、卵パック用のラック11,12には限られない。
【0039】
ロボット1,2は、1本のラック用の通路70に対して3台以上配置されていてもよい。また、1本のラック用の通路70は、直線状のものには限らないし、複数のロボット1,2は互いに隣接して配置されていなくてもよい。
【0040】
今回開示された実施の形態は例示であってこれに制限されるものではない。本発明は上記で説明した範囲ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、ラックの管理システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1、2…ロボット
7…排出部
8…調整部
9…演算部
10…供給部
11、12…ラック
70…ラック用の通路
S…ラックの管理システム
図1
図2
図3
図4