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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】ガラス球
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/087 20060101AFI20241121BHJP
   B24C 11/00 20060101ALI20241121BHJP
   C03C 21/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
C03C3/087
B24C11/00 D
C03C21/00 101
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020214135
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022100016
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】598140412
【氏名又は名称】ユニチカガラスビーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100122448
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 賢一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓介
(72)【発明者】
【氏名】森田 好輝
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-508250(JP,A)
【文献】特表平10-512227(JP,A)
【文献】国際公開第2018/088488(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/009069(WO,A1)
【文献】特開昭60-122734(JP,A)
【文献】特開昭61-295241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 3/087
B24C 11/00
C03C 21/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2Oを2質量%以上、SiO2を6~75質量%、Na2Oを5~17質量%、CaOを5~15質量%、A2 3 を0~質量%、及びB 2 3 を0~0.5質量%含むガラス組成を有する、ガラス球であって、
平均粒子径が50~300μmである、ガラス球
【請求項2】
2Oを2~15質量%含む、請求項1に記載のガラス球。
【請求項3】
2O/Na2Oの重量比が0.~2.5である、請求項1又は2に記載のガラス球。
【請求項4】
圧縮強度が100kgf/mm2以上である、請求項1~のいずれかに記載のガラス球。
【請求項5】
請求項1~のいずれかに記載のガラス球を含む、ブラスト材。
【請求項6】
請求項1~のいずれかに記載のガラス球の製造方法であって、
2Oを0~1.5質量%、SiO2を6~75質量%、Na2Oを10~20質量%、CaOを5~15質量%、Al2 3 を0~質量%、及びB 2 3 を0~0.5質量%含むガラス組成を有するガラス球を、硝酸カリウムを含む溶融塩と接触させることにより、K2O含量を2質量%以上にする工程を含む、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた機械的強度を有するガラス球、及び当該ガラス球を使用したブラスト材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス球を用いたブラスト材が使用されている。例えば、特許文献1には、サンドブラストによるフラットパネルディスプレイの隔壁形成及び電極形成に使用する研磨材であって、平均粒子径が5μm以上50μm以下のジルコニアを60%以上含有するセラミック粉末及び/又はセラミックビーズ及び/又はガラスビーズであるサンドブラスト用研磨材が開示されている。当該研磨剤によれば、フラットパネルディスプレイの隔壁形成や電極形成を行う場合に、従来使用されている研磨材と比較し、同じ条件でサンドブラスト加工を行ったところ加工スピードを上げることができ、研磨材の消耗も少なく安定した加工が行えたとされている。
【0003】
しかしながら、特許文献1のサンドブラスト用研磨材は、ジルコニアを多量に含有するものであり、高価であるという問題がある。
【0004】
一方、市場に出ているガラス材料を用いたブラスト材は、商業的に多く生産されているソーダライム系組成のガラスである。ソーダライム系組成のガラスを使用してガラス球を製造することにより、大量且つ安価にブラスト材を提供することが可能になる。しかしながら、ソーダライム系組成のガラス球は、機械的強度に劣り、ブラスト材として使用すると消耗し易いという欠点がある。また、ホウケイ酸ガラス球は、優れた機械的強度を有しており、ブラスト材の要求特性を満たし得るが、コストが高いという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-50327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、優れた機械的強度を有するガラス球、及び当該ガラス球を使用したブラスト材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、K2Oを2質量%以上、SiO2を60~75質量%、Na2Oを5~17質量%、CaOを5~15質量%、及びAl2 3 を0~5質量%含むガラス組成を有し、K2O含量がリッチなガラス球は、優れた機械的強度を具備でき、ブラスト材として好適に使用できることを見出した。また、前記ガラス球は、ソーダライム系組成のガラス球をKNO3溶融塩と接触させてK2O含量を2質量%以上にすることにより得られることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. K2Oを2質量%以上、SiO2を60~75質量%、Na2Oを5~17質量%、CaOを5~15質量%、及びAl2 3 を0~5質量%含むガラス組成を有する、ガラス球。
項2. K2Oを2~15質量%含む、項1に記載のガラス球。
項3. K2O/Na2Oの重量比が0.2~2.5である、項1又は2に記載のガラス球。
項4. 平均粒子径が50~500μmである、項1~3のいずれかに記載のガラス球。
項5. 圧縮強度が100kgf/mm2以上である、項1~4のいずれかに記載のガラス球。
項6. 項1~5のいずれかに記載のガラス球を含む、ブラスト材。
項7. 項1~5のいずれかに記載のガラス球の製造方法であって、
2Oを0~1.5質量%、SiO2を60~75質量%、Na2Oを10~20質量%、CaOを5~15質量%、Al2 3 を0~5質量%含むガラス組成を有するガラス球を、硝酸カリウムを含む溶融塩と接触させることにより、K2O含量を2質量%以上にする工程を含む、製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のガラス球は、圧縮強度が高く、優れた機械的強度を有しており、ブラスト材として好適に使用できる。また、本発明のガラス球は、ソーダライム系組成のリサイクルガラスを原料として製造できるので、安価且つ大量に供給することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のガラス球は、K2Oを2質量%以上、SiO2を60~75質量%、Na2Oを5~17質量%、CaOを5~15質量%、及びAl2 3 を0~5質量%含むガラス組成を有していることを特徴とする。以下、本発明のガラス球について詳述する。
【0011】
[ガラス組成]
本発明のガラス球のガラス組成は、K2Oを2質量%以上である特定のソーダライム系組成である。通常のソーダライム系組成のガラスは、K2O含量が1.5質量%以下であるが、本発明のガラス球では、K2Oの含量が2質量%以上と高いソーダライム系組成を有することにより、優れた機械的強度を備えさせることが可能になる。
【0012】
本明細書における用語「ソーダライム系組成」には、JIS Z 8901「試験用粉体2説明書」に規定されているソーダ石灰ガラス(SiO2を70~73質量%、Na2Oを12~15質量%、CaOを7~12質量%、MgOを1~5質量%含有)に該当するガラス組成だけでなく、SiO2、Na2O及びCaOを主成分として含むガラス組成も包含される。
【0013】
具体的には、本発明のガラス球のガラス組成は、K2Oが2質量%以上、SiO2が60~75質量%、Na2Oが5~17質量%、CaOが5~15質量%、及びAl2 3 が0~5質量%含まれる。
【0014】
本発明のガラス球において、K2Oは、機械的強度を向上させる役割を担う成分である。本発明のガラス球におけるK2Oの含量は、2質量%以上であればよいが、より一層優れた機械的強度を備えさせるという観点から、好ましくは2~15質量%、好ましくは2~12質量%、より好ましくは2~10質量%、更に好ましくは2~8.5質量%、より好ましくは2~5質量%、更に好ましくは2.5~3.5質量%が挙げられる。本発明のガラス球のガラス組成は、従来の通常のソーダライム系組成に比べてK2Oの含量が多くなっており、かかる点が一因となって、優れた機械的強度を備えることが可能になっている。
【0015】
本発明のガラス球において、SiO2は、ガラスの網目構造を形成する役割を担う成分である。本発明のガラス球におけるSiO2の含量は、60~75質量%であればよいが、好ましくは65~73質量%、より好ましくは68~73質量%が挙げられる。SiO2の含量が前記範囲を満たすことによって、優れた機械的強度を備えさせつつ、ガラス球の成形性及びガラス組成の均一性を良好にすることができる。
【0016】
本発明のガラス球において、Na2Oは、溶融性を高める役割等を担う成分である。本発明のガラス球におけるNa2Oの含量は、5~17質量%であればよいが、好ましくは7~15質量%、より好ましくは10~13質量%が挙げられる。Na2Oの含量が前記範囲を満たすことによって、優れた機械的強度を備えさせつつ、優れた耐水性を具備させることができ、例えば、湿式ブラストでの連続使用可能なブラスト材として好適に使用することが可能になる。
【0017】
本発明のガラス球において、K2O/Na2Oの重量比については、前述するK2O及びNa2Oの各含量に応じた範囲であればよいが、より一層優れた機械的強度を備えさせるという観点から、0.1~2.5、好ましくは0.1~0.5、より好ましくは0.15~0.3が挙げられる。
【0018】
本発明のガラス球において、CaOは、溶融性を高めたり、溶融時の粘性を低下させたりする役割を担う成分である。本発明のガラス球におけるCaOの含量は、5~15質量%であればよいが、好ましくは6~12質量%、より好ましくは7~10質量%が挙げられる。CaOの含量が前記範囲を満たすことによって、優れた機械的強度を備えさせつつ、ガラス球の形状均一性を良好にすることができる。
【0019】
本発明のガラス球におけるAl2 3 の含量は0~5質量%である。即ち、本発明のガラス球において、Al2 3 が含まれていなくてもよく、またAl2 3 が含まれているとしても含量は5質量%以下である。本発明のガラス球におけるAl2 3 の含量としては、好ましくは0.5~3質量%、より好ましくは1~2質量%が挙げられる。
【0020】
本発明のガラス球には、MgOが含まれていてもよい。本発明のガラス球におけるMgOの含量としては、例えば、0~7質量%、好ましくは1~7質量%、より好ましくは2~5質量%が挙げられる。
【0021】
更に、本発明のガラス球には、前記成分の他に、SO3、Fe23、F、Cl、B23、Li2O、ZnO、ZrO2、La23、WO3、Nb25、Y23、MoO3、TiO2、As23等の成分が含まれていてもよい。これらの成分は不可避的不純物として、例えばガラス原料、ガラス組成物の製造装置、及びガラス組成物の成形装置等に由来することがある。本発明のガラス球において、これらの成分のそれぞれの含量としては、例えば、0~1質量%、好ましくは0~0.5質量%が挙げられる。
【0022】
[粒子径]
本発明のガラス球の平均粒子径については、特に制限されないが、前述するガラス組成を好適に具備させるという観点から、50~500μm、好ましくは50~300μm、より好ましくは50~200μm、更に好ましくは50~150μmが挙げられる。
【0023】
本発明において、「ガラス球の平均粒子径」は、次のように測定される値である。先ず、ガラス球を30000個以上となるように採取し、JIS K 8801-1:2019の表2に記載されている補助寸法300μmのJIS試験用ふるいに通し、ガラス球がすべてふるいを通過する場合は下記(1)の方法で平均粒子径の測定を行い、それ以外は下記(2)の方法で平均粒子径の測定を行う。
【0024】
方法(1)
ガラス球の平均粒子径は、JIS Z 8832:2010で規定されている「粒子径分布測定方法-電気的検知帯法」に記載の方法(コールターカウンター法)に準じて測定される体積基準のメジアン径(D50)とする。
【0025】
方法(2)
JIS K 0069:1992で規定される「化学製品のふるい分け試験方法」に記載されている乾式ふるい分けの手動ふるい分け方法に準じて測定し粒子径分布を求める。具体的に、試験用ふるいとして、JIS K 8801-1:2019の表1及び表2に記載されている補助寸法系列の目開きのふるいを全て準備する。測定試料は0.1gまで測定できるはかりを用いて100.0gはかりとる。ふるい分け時間は、試験用ふるいを通過する試料がなくなるまで行う。ふるい網の下側に付着する場合はたたき棒を用いてふるい下とし、ふるい網に詰まった場合はふるい網の下側からブラシで除去しふるい上(残留分)とする。ふるい分けに用いる最大の試験用ふるいは全量通過する目開きとし、最小の試験用ふるいは全量通過しない目開きとする。各試験用ふるいの残留分を0.1gまで測定できるはかりを用いてはかりとり、粒子径分布として、各粒子径範囲に対応するふるい残留分の質量の、全量(100.0g)に対する百分率Aを求める。このとき小数点以下一桁に数字を丸める。ここで、各粒子径範囲とは、上記JIS K 8801-1:2019の表1及び表2に記載されている補助寸法系列の目開きのふるいにより定まる範囲、すなわち、125mm~106mm、106mm~90mm、90mm~75mm、75mm~63mm、63mm~53mm、53mm~45mm、45mm~37.5mm、37.5mm~31.5mm、31.5mm~26.5mm、26.5mm~22.4mm、22.4mm~19mm、19~16mm、16mm~13.2mm、13.2mm~11.2mm、11.2mm~9.5mm、9.5mm~8mm、8mm~6.7mm、6.7mm~5.6mm、5.6mm~4.75mm、4.75mm~4mm、4mm~3.35mm、3.35mm~2.8mm、2.8mm~2.36mm、2.36mm~2mm、2mm~1.7mm、1.7mm~1.4mm、1.4mm~1.18mm、1.18mm~1mm、1000μm~710μm、710μm~600μm、600μm~500μm、500μm~425μm、425μm~355μm、355μm~300μm、300μm~250μm、250μm~212μm、212μm~180μm、180μm~150μm、150μm~125μm、125μm~106μm、106μm~90μm、90μm~75μm、75μm~63μm、63μm~53μm、53μm~45μm及び45μm~38μmである。そして、各粒子径範囲の最大値及び最小値の和を2で除した値(例えば、125mm~106mmの粒子径範囲の場合は(125000μm+106000μm)/2=115500μm)に、前記算出した、当該粒子径範囲に対応するふるい残留分の質量の、全量(100.0g)に対する百分率A/100を乗じ、これを全各粒子径範囲について積算し得られる値を平均粒子径とする。
【0026】
また、本発明のガラス球の粒子径分布については、特に制限されないが、平均粒子径の±50%の範囲内の粒子径のガラス球が、全ガラス球の70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、特に好ましくは100%を占めていることが望ましい。
【0027】
[物理的特性]
(圧縮強度)
本発明のガラス球は機械的強度が高いという特徴があり、本発明のガラス球の一態様として、圧縮強度が100kgf/mm2以上、好ましくは110kgf/mm2以上、より好ましくは120kgf/mm2以上が挙げられる。また、本発明のガラス球が有する圧縮強度の上限値については、特に制限されないが、例えば、200kgf/mm2以下、好ましくは150kgf/mm2以下、より好ましくは135kgf/mm2以下又は130kgf/mm2以下が挙げられる。
【0028】
前記圧縮強度は次の方法によって測定される値である。
【0029】
ガラス球は粒子径が平均粒子径±1%の範囲内になるように顕微鏡で選別したものを測定対象とする。下記式に従って、測定対象のガラス球の平均断面積を算出する。
【数1】
【0030】
次いで、測定対象となるガラス球について、JIS Z 8844:2019で規定されている「微小粒子の破壊強度及び変形強度の測定方法」に記載の「圧縮方法B(変位を一定速度で増加させる変位制御)」に準じて破壊強度を測定する。具体的には、平均粒子径が300μm以下の場合は、引張圧縮試験機の測定テーブルに下ジグとして材質S45C-H製の平板を設置し、引張圧縮試験機のクロスヘッド下部に上ジグとして材質SKH/焼入れ焼き戻し製の押しジグ(直径5mmの円柱形)を設置する。ガラス球を下ジグ上に上ジグの中心に合わせて置き、荷重レンジを100N、試験速度0.1mm/分に設定して圧縮試験を行い、ガラス球が破壊した際の荷重を破壊強度(kgf)として求める。25個のガラス球について、破壊強度を測定して、その平均値を算出する。破壊強度の平均値を、前記平均断面積で除することにより、圧縮強度(kgf/mm2)を算出する。また、平均粒子径が300μm超1000μm以下の場合には、下ジグとして材質SKH/焼入れ焼き戻し製の平板、及び上ジグとして材質SKH/焼入れ焼き戻し製の押しジグ(直径20mmの円柱形)を使用し、荷重レンジを2000N、試験速度0.1mm/分に設定すること以外は、上記平均粒子径が300μm以下のガラス球の場合と同条件で、圧縮強度(kgf/mm2)を求める。また、平均粒子径が1000μm超の場合には、下ジグとして材質SKH/焼入れ焼き戻し製の平板、及び上ジグとして材質SKH/焼入れ焼き戻し製の押しジグ(直径20mmの円柱形)を使用し、荷重レンジを2000N、試験速度1mm/分に設定すること以外は、上記平均粒子径が300μm以下のガラス球の場合と同条件で、圧縮強度(kgf/mm2)を求める。
【0031】
(弾性率)
また、本発明のガラス球の一態様として、弾性率が4700N/mm2以上、好ましくは4800N/mm2以上、より好ましくは5000N/mm2以上が挙げられる。また、本発明のガラス球が有する弾性率の上限値については、特に制限されないが、例えば、6500N/mm2以下、好ましくは6000N/mm2以下、より好ましくは5500N/mm2以下又は5300N/mm2以下が挙げられる。
【0032】
前記弾性率は、次の方法によって求められる値である。前記圧縮強度の測定データから、荷重が0kgfから破壊強度までの変位量(mm)と破壊強度(kgf)から一次最小二乗法により弾性勾配(N/mm)を求め、下記式に従って弾性率(N/mm2)を算出する。
【数2】
【0033】
(ビッカース硬さ)
また、本発明のガラス球の一態様として、ビッカース硬さ(HV)が540以上、好ましくは580以上、より好ましくは590以上が挙げられる。また、本発明のガラス球が有するビッカース硬さ(HV)の上限値については、特に制限されないが、例えば、700以下、好ましくは650以下、より好ましくは630以下又は620以下が挙げられる。
【0034】
前記ビッカース硬さ(HV)は、JIS Z 2244:2009で規定されている「ビッカース硬さ試験-試験方法」に記載の方法に準じ、試験力を25gf、試験力の保持時間を10秒に設定して測定される値であり、具体的な測定方法は以下の通りである。先ず、ガラス球は粒子径が平均粒子径±1%の範囲内になるように顕微鏡で選別したものを測定対象とする。次いで、ガラス板上に接着剤をガラス球が埋まらない厚さに塗布し、ガラス球1個を載せて接着させる。ガラス球を固定したガラス板を試験機の測定台に設置し、試験力を25gf、試験力の保持時間を10秒に設定し、正四角錐のダイヤモンド圧子でガラス球の中心の硬度を測定する。10個のガラス球についてビッカース硬さ(HV)を測定し、その平均値を算出する。
【0035】
[用途]
本発明のガラス球の用途については、特に制限されず、ブラスト材、スペーサー、フィラー等が挙げられるが、好適な一例はブラスト材である。本発明のガラス球をブラスト材として使用する場合、湿式ブラスト又は乾式ブラストのいずれにも適用可能である。
【0036】
[製造方法]
本発明のガラス球の製造方法については、前述する組成を具備できることを限度として特に制限されないが、好適な例として、通常のソーダライム系組成(即ち、K2O含量が1.5質量%以下のソーダライム系組成)のガラス球を、硝酸カリウムを含む溶融塩と接触させることにより、K2O含量を2質量%以上にする工程を含む製造方法が挙げられる。
【0037】
より具体的には、本発明のガラス球の製造方法として、K2Oを0~1.5質量%、SiO2を60~75質量%、Na2Oを10~20質量%、CaOを5~15質量%、Al2 3 を0~5質量%含むガラス組成を有するガラス球(以下、「原料ガラス球」と表記することもある)を、硝酸カリウムを含む溶融塩と接触させることにより、K2O含量を2質量%以上にする工程を含む製造方法が挙げられる。
【0038】
原料ガラス球は、硝酸カリウムを含む溶融塩との接触によってNa2Oの一部がK2Oに置換されるので、原料ガラス球のガラス組成は、Na2O及びK2Oの含量以外(即ち、SiO2、CaO、及びAl2 3 の含量、必要に応じて含有していてもよい成分等)については、前記[ガラス組成]の欄に記載の通りである。
【0039】
原料ガラス球において、Na2Oの含量は10~20質量%であればよいが、好ましくは10~17質量%、より好ましくは12~15質量%が挙げられる。
【0040】
原料ガラス球において、K2Oの含量は、0~1.5質量%である。即ち、原料ガラス球のガラス組成において、K2Oが含まれていなくてもよく、またK2Oが含まれているとしても含量は1.5質量%以下である。原料ガラス球におけるK2Oの含量としては、好ましくは0~1.5質量%、より好ましくは0.5~1.5質量%が挙げられる。
【0041】
原料ガラス球のガラス組成の一例として、JIS Z 8901「試験用粉体2説明書」に規定されているソーダ石灰ガラス(SiO2を70~73質量%、Na2Oを12~15質量%、CaOを7~12質量%、MgOを1~5質量%含有)に該当するものが挙げられる。
【0042】
当該製造方法では、硝酸カリウムを含む溶融塩との接触によってNa2Oの一部をK2Oに置換するため、原料ガラス球の粒径が大き過ぎると、ガラス球全体に占めるK2Oの割合が高まり難く、K2O含量が2質量%に到達しない傾向が現れ易くなる。そのため、原料ガラス球の粒子径は、硝酸カリウムを含む溶融塩との接触によってK2O含量が2質量%以上になり易い程度に小さいことが望ましく、具体的には、平均粒子径として、50~500μm、好ましくは50~300μm、より好ましくは50~200μm、更に好ましくは50~150μmが挙げられる。なお、本発明において、「原料ガラス球の平均粒子径」は、前述する本発明のガラス球の平均粒子径と同様の方法で測定される値である。
【0043】
また、原料ガラス球の粒度分布としては、平均粒子径の±50%の範囲内の粒子径のガラス球が、全ガラス球の70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、特に好ましくは100%を占めていることが望ましい。
【0044】
原料ガラス球は、前記ガラス組成を満たす原料を使用して、浮遊法、液滴法、マーブル形成法、ダイレクトプレス法、モールドプレス法、リヒートプレス法等の方法で製造することができる。原料ガラス球の製造方法の好適な一例として、特開平11-199249号公報に開示されている浮遊法が挙げられる。
【0045】
また、原料ガラス球の製造原料は、前記ガラス組成を有していることを限度として特に制限されず、リサイクルガラス、ガラスフリット等のガラス組成物であってもよく、また、SiO2、Na2O、Al2 3 、CaO等の供給源となる原料(例えば、鉱物や酸化物原料を熔融したものを含む)であってもよい。中でも、ソーダライム系組成のガラスのリサイクルガラスは、安価で大量に入手可能であり、原料ガラス球の製造原料として好適である。
【0046】
また、原料ガラス球として、前記ガラス組成を有するガラス球の市販品を使用することもできる。
【0047】
原料ガラス球は、硝酸カリウムを含む溶融塩に接触させる前に、熱処理(予備加熱処理)を行っておくことが好ましい。当該熱処理を行うことにより、原料ガラス球を当該溶融塩に接触させる際に、原料ガラス球と当該溶融塩との温度差によって原料ガラス球に熱衝撃が与えられ、原料ガラス球の表面がひび割れたり、割れたりするのを緩和することができる。熱処理の温度条件としては、例えば、100℃以上、好ましくは100~500℃、より好ましくは150~400℃、更に好ましくは340~500℃、特に好ましくは380~460℃が挙げられる。また、熱処理時間としては、例えば、15分以上、30~120分が挙げられる。
【0048】
硝酸カリウムを含む溶融塩は、化学強化ガラスの製造に使用されているものであればよく、溶融塩中のKNO3含量としては、例えば、50質量%以上、好ましくは90~100質量%、より好ましくは98~100質量%が挙げられる。
【0049】
また、当該溶融塩には、KNO3以外に、必要に応じて、K2CO3、Na2CO3、KHCO3、NaHCO3、K3PO4、Na3PO4、K2SO4、Na2SO4、KOH、NaOH等の無機塩が含まれていてもよい。
【0050】
硝酸カリウムを含む溶融塩に原料ガラス球を接触させるには、当該溶融塩を収容した槽内に、原料ガラス球を浸漬させればよい。
【0051】
硝酸カリウムを含む溶融塩に原料ガラス球を接触させる際の当該溶解塩の温度としては、例えば、340~500℃、好ましくは380~460℃が挙げられる。
【0052】
硝酸カリウムを含む溶融塩に原料ガラス球を接触させる時間については、当該溶融塩の組成や温度、原料ガラス球の粒子径等に応じて、最終的なK2Oの含量が2質量%以上となる範囲に設定すればよいが、例えば、1時間以上、好ましくは2~24時間、より好ましくは3~12時間が挙げられる。
【0053】
斯くして硝酸カリウムを含む溶融塩に原料ガラス球を接触させることにより、原料ガラス球のNa2Oの一部がK2Oに置換され、K2Oの含量が2質量%以上である本発明のガラス球が得られる。
【0054】
硝酸カリウムを含む溶融塩に原料ガラス球を接触させる工程において、原料ガラス球に対して増加させるK2O増加量としては、例えば1~10質量%、好ましくは1.2~3.0質量%、より好ましくは1.5~3.0質量%が挙げられる。ここで、「K2O増加量」とは、硝酸カリウムを含む溶融塩に原料ガラス球を接触させた後に得られたガラス球のK2O含量から原料ガラス球のK2O含量を差し引いた値である。
【0055】
硝酸カリウムを含む溶融塩との接触後のガラス球は、必要に応じて放冷により冷却した後に、洗浄処理に供して表面付着している溶融塩を除去すればよい。洗浄処理は、純水やイオン交換水等を洗浄液として使用すればよい。また、洗浄処理時の洗浄水の温度は、洗浄効率の観点から、70℃以上であることが好ましい。また、洗浄処理は、洗浄水を入れた容器内にガラス球を入れて撹拌する方法、洗浄水を用いて超音波洗浄する方法、又はこれらを組み合わせた方法等によって行うことができる。洗浄処理後のガラス球は、必要に応じて乾燥処理を行ってもよい。
【実施例
【0056】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0057】
測定方法
以下に示す実施例1~5、比較例1~10、及び参考例1~6のガラス球について、成分含量、平均粒子径、圧縮強度、弾性率、及びビッカース硬さ(HV)を測定した方法を以下に示す。なお、製造原料として使用した原料ガラス球A~Hの成分含量及び平均粒子径も、以下に記載の方法で測定した。
【0058】
[成分含量]
実施例1~5、比較例1~10及び参考例1~6のガラス球、原料ガラス球A~H、並びに標準試料5.0gを粉砕機(シー・エム・ティ社製、TI-100)にて3分粉砕し、粉砕品を粉体試料用塩ビリング30mm(リガク製、外径38mm×内径×高さ5mm)に隙間無く詰め込み、20MPaで加圧成型して測定試料を作製した。試料を波長分散式蛍光X線分析装置(リガク社製、ZSX PrimusII)にて分析し、成分含量を求めた。なお、標準試料は、実施例1~5及び比較例1~10のガラス球並びに原料ガラス球A~Eの場合はJIS R3101:1995で規定されている「ソーダ石灰ガラスの分析方法」に準拠した方法で値付けしたものであり、参考例1~6のガラス球並びに原料ガラス球F、G及びHの場合はJIS R3105:1995で規定されている「ほうけい酸ガラスの分析方法」に準拠した方法で値付けしたものである。また、蛍光X線分析装置による分析は、JIS K0119:2008で規定されている「蛍光X線分析通則」に規定された定量分析方法に準拠して行った。
【0059】
[平均粒子径]
実施例1~5、比較例1、2、参考例1~4のガラス球、並びに原料ガラス球A、B、F及びGの平均粒子径は、JIS Z 8832:2010で規定されている「粒子径分布測定方法-電気的検知帯法」に記載の方法に準じて測定した。具体的には、ガラス球を30000個以上となるように採取し、コールターカウンター(BECKMAN COULTER社製 Multisizer4)を用いて、アパチャー径280μmを選択し、測定個数20000に設定して、体積基準のメジアン径(D50)を測定した。
【0060】
比較例3~10、参考例5、6のガラス球、並びに原料ガラス球C、D、E及びHについては、JIS K 0069:1992で規定される「化学製品のふるい分け試験方法」に記載されている乾式ふるい分けの手動ふるい分け方法に準じて測定し粒子径分布を求めた。具体的に、試験用ふるいとして、JIS K 8801-1:2019の表1及び表2に記載されている補助寸法系列の目開きのふるいを全て準備した。測定試料は0.1gまで測定できるはかりを用いて100.0gはかりとった。ふるい分け時間は、試験用ふるいを通過する試料がなくなるまで行った。ふるい網の下側に付着する場合はたたき棒を用いてふるい下とし、ふるい網に詰まった場合はふるい網の下側からブラシで除去しふるい上(残留分)とした。ふるい分けに用いる最大の試験用ふるいは全量通過する目開きとし、最小の試験用ふるいは全量通過しない目開きとする。各試験用ふるいの残留分を0.1gまで測定できるはかりを用いてはかりとり、粒子径分布として、各粒子径範囲に対応するふるい残留分の質量の、全量(100.0g)に対する百分率Aを求めた。このとき小数点以下一桁に数字を丸めた。ここで、各粒子径範囲とは、上記JIS K 8801-1:2019の表1及び表2に記載されている補助寸法系列の目開きのふるいにより定まる範囲、すなわち、125mm~106mm、106mm~90mm、90mm~75mm、75mm~63mm、63mm~53mm、53mm~45mm、45mm~37.5mm、37.5mm~31.5mm、31.5mm~26.5mm、26.5mm~22.4mm、22.4mm~19mm、19~16mm、16mm~13.2mm、13.2mm~11.2mm、11.2mm~9.5mm、9.5mm~8mm、8mm~6.7mm、6.7mm~5.6mm、5.6mm~4.75mm、4.75mm~4mm、4mm~3.35mm、3.35mm~2.8mm、2.8mm~2.36mm、2.36mm~2mm、2mm~1.7mm、1.7mm~1.4mm、1.4mm~1.18mm、1.18mm~1mm、1000μm~710μm、710μm~600μm、600μm~500μm、500μm~425μm、425μm~355μm、355μm~300μm、300μm~250μm、250μm~212μm、212μm~180μm、180μm~150μm、150μm~125μm、125μm~106μm、106μm~90μm、90μm~75μm、75μm~63μm、63μm~53μm、53μm~45μm及び45μm~38μmである。そして、各粒子径範囲の最大値及び最小値の和を2で除した値(例えば、125mm~106mmの粒子径範囲の場合は、(125000μm+106000μm)/2=115500μm)に、前記算出した、各粒子径範囲に対応するふるい残留分の質量の、全量(100.0g)に対する百分率A/100を乗じ、これを全各粒子径範囲について積算して得られる値を平均粒子径とした。
【0061】
[圧縮強度]
圧縮強度の測定に供するガラス球は顕微鏡で選別したものを使用した。具体的には、圧縮強度の測定に供するガラス球は、粒子径が平均粒子径±1%の範囲内になるように顕微鏡で選別したものを使用した。
【0062】
実施例1~5、比較例1~2及び参考例1~4のガラス球については、次の方法で圧縮強度を測定した。引張圧縮試験機(SDT-503NB-200R3、株式会社今田製作所社製)の測定テーブルに下ジグとして材質S45C-H製の平板(ロックウェル硬さ55、表面粗度Ra0.16)を設置し、引張圧縮試験機のクロスヘッド下部に上ジグとして材質SKH/焼入れ焼き戻し製の押しジグ(ロックウェル硬さ60、直径5mmの円柱形)を設置した。ガラス球を下ジグ上に上ジグの中心に合わせて置き、荷重レンジを100N、試験速度0.1mm/分に設定して圧縮試験を行い、ガラス球が破壊した際の荷重を破壊強度(kgf)として求めた。25個のガラスについて、破壊強度を測定して、その平均値を算出した。破壊強度の平均値を、平均粒子径から算出した平均断面積で除することにより、圧縮強度(kgf/mm2)を求めた。
【0063】
比較例3~10及び参考例5~6のガラス球については、下ジグとして材質SKH/焼入れ焼き戻し製の平板(ロックウェル硬さ60)、及び上ジグとして材質SKH/焼入れ焼き戻し製の押しジグ(ロックウェル硬さ60、直径20mmの円柱形)を使用し、荷重レンジを2000N、試験速度1mm/分に設定したこと以外は、前記と同条件で、圧縮強度(kgf/mm2)を求めた。
【0064】
[弾性率]
前記圧縮強度の測定データから、荷重が0kgfから最大荷重までの変位量(mm)と破壊強度(kgf)から一次最小二乗法により弾性勾配(N/mm)を求め、下記式に従って弾性率(N/mm2)を算出した。
【数3】
【0065】
[ビッカース硬さ(HV)]
ビッカース硬さ(HV)の測定に供するガラス球は顕微鏡で選別したものを使用した。具体的には、ビッカース硬さ(HV)の測定に供するガラス球は、粒子径が平均粒子径±1%の範囲内になるように顕微鏡で選別したものを使用した。
【0066】
ビッカース硬さ(HV)は、JIS Z 2244:2009で規定されている「ビッカース硬さ試験-試験方法」に記載の方法に準じ、マイクロビッカース硬さ試験機(株式会社フューチュアテック社製商品名FM-ARS9000)を用いて、試験力を25gf、試験力の保持時間を10秒に設定して測定した。具体的には、先ず、ソーダライムガラス製のガラス板上に瞬間接着剤(タフDXF、セメダイン株式会社製)をバーコーター(番手No.80)でガラス球が埋まらない厚さに塗布し、ガラス球1個を載せて接着させて固定した。次いで、ガラス球を固定したガラス板を試験機の測定台に設置し、試験力を25gf、試験力の保持時間を10秒に設定し、正四角錐のダイヤモンド圧子(コードNo.M-013、HV用)でガラス球の中心の硬度を測定した。10個のガラス球についてビッカース硬さ(HV)を測定し、その平均値を算出した。
【0067】
試験例1
1.ガラス球の製造
[実施例1]
ソーダライム系組成のリサイクルガラスを粉砕・篩分し、ガラス微粉末をガスバーナのフレーム内の加熱成形ゾーンに空気とともに吹き込むことにより、ガラス球を製造した。得られたガラス球を篩別し、粒子径が90~125μmの範囲内にあり、平均粒子径107μmである原料ガラス球(以下、原料ガラス球A)を得た。原料ガラス球Aの組成を分析した結果を表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
SUS316製の円筒系容器(厚み3mm、内径200mm、容器内高さ500mm)に硝酸カリウム(大塚化学株式会社製、スーパータブレット、融点333℃、硝酸カリウム含有量99.0以上)を10kg加えた。硝酸カリウムを加えた容器を化学強化炉(株式会社共栄電機製、エコホット-Mサイズ)内に入れ、化学強化炉内の雰囲気温度を380℃に設定して8時間かけて加熱して硝酸カリウム溶融塩を調製した。
【0070】
次に、前記原料ガラス球Aを電気炉(株式会社GMEタナカ製、200V1φ、10KW)にて雰囲気温度380℃で60分間で熱処理(予備加熱処理)した。
【0071】
熱処理した原料ガラス球Aを目開き62μmのSUS304製のメッシュで作製された容器(10mm×80mm×110mm)に熱処理した原料ガラス球30gを入れ、原料ガラス球Aが入った容器を380℃の硝酸カリウム溶融塩中に6時間浸漬させてイオン交換を行った。なお、硝酸カリウム溶融塩の温度は、硝酸カリウム溶融塩の中に熱電対(株式会社モトヤマ製、Kシース熱電対)を入れて測定した。その後、硝酸カリウム溶融塩から容器を引き上げ、ガラス球を放冷した。
【0072】
ガラスビーカーに精製水2Lと攪拌子を入れ、ホットスターラー(パソリナホットスターラーCT-5HA、アズワン株式会社製)で熱をかけながら攪拌し、硝酸カリウム溶融塩から引き上げた容器を70℃で40分洗浄した。ガラス球を別のガラスビーカーに移して300mLの精製水を加え、超音波洗浄機(VSF-100、アズワン株式会社製)を用いて28kHzで10分間洗浄した。ガラスビーカー内の精製水を廃棄して、新たな精製水300ml加えて、再度、同条件で超音波洗浄を行った。次いで、精製水を廃棄して、ガラス球を吸引ろ過にて回収し、その後、定温恒温器(DK-43、ヤマト科学株式会社製)を用いて110℃で2時間乾燥し、ガラス球を得た。
【0073】
[実施例2]
硝酸カリウム溶融塩の温度及び予備加熱処理の雰囲気温度を400℃に変更したこと以外は、実施例1と同条件でガラス球を製造した。
【0074】
[実施例3]
硝酸カリウム溶融塩の温度及び予備加熱処理の雰囲気温度を460℃に変更したこと以外は、実施例1と同条件でガラス球を製造した。
【0075】
[実施例4]
ソーダライム系組成のリサイクルガラスを粉砕・篩分し、ガラス微粉末をガスバーナのフレーム内の加熱成形ゾーンに空気とともに吹き込むことにより、ガラス球を製造した。得られたガラス球を篩別し、粒子径が212~300μmの範囲内にあり、平均粒子径250μmである原料ガラス球(以下、原料ガラス球B)を得た。原料ガラス球Bの組成を分析した結果を表に示す。
【0076】
【表2】
【0077】
実施例2と同条件で、硝酸カリウム溶融塩の調製、原料ガラス球の熱処理(予備加熱処理)、熱処理した原料ガラス球の硝酸カリウム溶融塩中への浸漬、洗浄、及び乾燥を行い、ガラス球を得た。
【0078】
[実施例5]
予備加熱処理の雰囲気温度を460℃に変更したこと、及び硝酸カリウム溶融塩の温度を460℃に変更したこと以外は、実施例4と同条件でガラス球を製造した。
【0079】
[比較例1]
実施例1のガラス球の製造に使用した原料ガラス球A(熱処理及び硝酸カリウム溶融塩への浸漬を行っていないガラス球)を準備した。
【0080】
[比較例2]
実施例4のガラス球の製造に使用した原料ガラス球B(熱処理及び硝酸カリウム溶融塩への浸漬を行っていないガラス球)を準備した。
【0081】
[比較例3]
ソーダライム系組成のリサイクルガラスを粉砕・篩分し、得られたガラス微粉末をガラスの軟化点以上に熱した回転しているSUSパイプへ投入することにより、原料ガラス球を製造した。得られたガラス球を篩別し、粒子径が850~1250μmであり、平均粒子径が1000μmである原料ガラス球(以下、原料ガラス球C)を得た。原料ガラス球Cの組成を分析した結果を表3に示す。
【0082】
【表3】
【0083】
実施例1と同条件で、硝酸カリウム溶融塩を調製し、前記原料ガラス球Cを熱処理(予備加熱処理)した。次いで、熱処理した原料ガラス球Cを硝酸カリウム溶融塩に浸漬させる際の容器として目開き283μmのSUS304製のメッシュで作製された容器(10mm×80mm×110mm)を使用したこと以外は、実施例1と同条件で、熱処理した原料ガラス球Cを硝酸カリウム溶融塩中に浸漬させた。その後、実施例1と同条件で、洗浄及び乾燥を行い、ガラス球を得た。
【0084】
[比較例4]
硝酸カリウム溶融塩の温度を400℃に変更したこと、及び予備加熱処理の雰囲気温度を460℃に変更したこと以外は、比較例3と同条件でガラス球を製造した。
【0085】
[比較例5]
硝酸カリウム溶融塩の温度を440℃に変更したこと、及び予備加熱処理の雰囲気温度を460℃に変更したこと以外は、比較例3と同条件でガラス球を製造した。
【0086】
[比較例6]
比較例3のガラス球の製造に使用した原料ガラス球C(熱処理及び硝酸カリウム溶融塩への浸漬を行っていないガラス球)を準備した。
【0087】
[比較例7]
ソーダライム系組成のリサイクルガラスを粉砕・篩分し、得られたガラス微粉末をガラスの軟化点以上に熱した回転しているSUSパイプへ投入することにより、原料ガラス球を製造した。得られたガラス球を篩別し、粒子径が1700~2360μmであり、平均粒子径が2091μmである原料ガラス球(以下、原料ガラス球D)を得た。原料ガラス球Dの組成を分析した結果を表4に示す。
【0088】
【表4】
【0089】
実施例2と同条件で、硝酸カリウム溶融塩の調製、原料ガラス球の熱処理(予備加熱処理)、熱処理した原料ガラス球の硝酸カリウム溶融塩中への浸漬、洗浄、及び乾燥を行い、ガラス球を得た。
【0090】
[比較例8]
比較例7のガラス球の製造に使用した原料ガラス球D(熱処理及び硝酸カリウム溶融塩への浸漬を行っていないガラス球)を準備した。
【0091】
[比較例9]
ソーダライム系組成のリサイクルガラスを粉砕・篩分し、得られたガラス微粉末をガラスの軟化点以上に熱した回転しているSUSパイプへ投入することにより、原料ガラス球を製造した。得られたガラス球を篩別し、粒子径が2800~4000μmであり、平均粒子径が3172μmである原料ガラス球(以下、原料ガラス球E)を得た。原料ガラス球Eの組成を分析した結果を表5に示す。
【0092】
【表5】
【0093】
実施例2と同条件で、硝酸カリウム溶融塩の調製、原料ガラス球の熱処理(予備加熱処理)、熱処理した原料ガラス球の硝酸カリウム溶融塩中への浸漬、洗浄、及び乾燥を行い、ガラス球を得た。
【0094】
[比較例10]
比較例9のガラス球の製造に使用した原料ガラス球E(熱処理及び硝酸カリウム溶融塩への浸漬を行っていないガラス球)を準備した。
【0095】
2.ガラス球の評価結果
実施例1~5の各ガラス球の評価結果を表6に、比較例1~10の各ガラス球の評価結果を表7に示す。平均粒子径が100μmのソーダライム系組成の原料ガラス球及び平均粒子径が250μmのソーダライム系組成の原料ガラス球を硝酸カリウム溶融塩に接触させることにより得られたガラス球は、K2O含量が2質量%以上になっており、硝酸カリウム溶融塩との接触を行っていない場合に比べて、圧縮強度、弾性率、及びビッカース硬さ(HV)が向上していた。また、平均粒子径が1000μm、2091μm、及び3172μmのソーダライム系組成の原料ガラス球を硝酸カリウム溶融塩に接触させたガラス球では、K2O含量が2質量%以上にならず、圧縮強度が不十分であった。なお、実施例1~5並びに比較例3~5、7及び9のガラス球の製造において、硝酸カリウム溶融塩に接触させる前の原料ガラス球と、硝酸カリウム溶融塩との接触後のガラス球とは、平均粒子径及び粒度分布は殆ど変化がなかった。また、実施例1~5及び比較例1~10のガラス球は、いずれも、平均粒子径の±50%の範囲内の粒子径のガラス球が、全ガラス球の100%を占めていた。
【0096】
以上の結果から、K2O含量が2質量%以上であるソーダライム系組成のガラス球は、優れた機械強度を具備できることが明らかとなった。
【0097】
【表6】
【0098】
【表7】
【0099】
参考試験例1
1.ガラス球の製造
[参考例1]
ホウケイ酸ガラス組成のガラス原料を粉砕・篩分し、ガラス微粉末をガスバーナのフレーム内の加熱成形ゾーンに空気とともに吹き込むことにより、ガラス球を製造した。得られたガラス球を篩別し、粒子径が90~125μmのガラス球が80質量%以上あり、平均粒子径107μmである原料ガラス球(以下、原料ガラス球F)を得た。原料ガラス球Fの組成を分析した結果を表8に示す。
【0100】
【表8】
【0101】
原料ガラス球Fを用いて、実施例2と同条件で、熱処理、硝酸カリウム溶融塩への接触、及び洗浄を行い、ガラス球を得た。
【0102】
[参考例2]
参考例1のガラス球の製造に使用した原料ガラス球F(加熱処理及び硝酸カリウム溶融塩への浸漬を行っていないガラス球)を準備した。
【0103】
2.ガラス球の評価結果
参考例1及び2の各ガラス球の評価結果を表9に示す。この結果、Na2Oを殆ど含有しないホウケイ酸系組成のガラス球では、硝酸カリウム溶融塩と接触させても、圧縮強度、弾性率、及びビッカース硬さ(HV)は殆ど変化がなかった。
【0104】
【表9】
【0105】
参考試験例2
1.ガラス球の製造
[参考例3]
ホウケイ酸系組成のリサイクルガラスを粉砕・篩分し、ガラス微粉末をガスバーナのフレーム内の加熱成形ゾーンに空気とともに吹き込むことにより、ガラス球を製造した。得られたガラス球を篩別し、粒子径が90~125μmの範囲内にあり、平均粒子径106μmである原料ガラス球(以下、原料ガラス球G)を得た。原料ガラス球Gの組成を分析した結果を表10に示す。
【0106】
【表10】
【0107】
実施例2と同条件で、硝酸カリウム溶融塩の調製、原料ガラス球の熱処理(予備加熱処理)、熱処理した原料ガラス球の硝酸カリウム溶融塩中への浸漬、洗浄、及び乾燥を行い、ガラス球を得た。
【0108】
[参考例4]
参考例3のガラス球の製造に使用した原料ガラス球G(熱処理及び硝酸カリウム溶融塩への浸漬を行っていないガラス球)を準備した。
【0109】
[参考例5]
ホウケイ酸系組成のリサイクルガラスを粉砕・篩分し、得られたガラス微粉末をガラスの軟化点以上に熱した回転しているSUSパイプへ投入することにより、原料ガラス球を製造した。得られたガラス球を篩別し、粒子径が850~1180μmであり、平均粒子径が1028μmである原料ガラス球(以下、原料ガラス球H)を得た。原料ガラス球Hの組成を分析した結果を表11に示す。
【0110】
【表11】
【0111】
実施例2と同条件で、硝酸カリウム溶融塩の調製、原料ガラス球の熱処理(予備加熱処理)、熱処理した原料ガラス球の硝酸カリウム溶融塩中への浸漬、洗浄、及び乾燥を行い、ガラス球を得た。
【0112】
[参考例6]
参考例5のガラス球の製造に使用した原料ガラス球H(熱処理及び硝酸カリウム溶融塩への浸漬を行っていないガラス球)を準備した。
【0113】
2.ガラス球の評価結果
参考例3~6の各ガラス球の評価結果を表12に示す。
【0114】
【表12】